JP4723451B2 - 復熱由来の内部割れに係る高炭素鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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(c) バルジング・・・上記複数のロール対は鋳造方向において適宜の間隔(以下、ロールピッチとも称する。)で並設されている。このため、これらのロール対に挟持される凝固シェルは、一のロール対で挟持されているときは鋳片厚みが該ロール対のロールギャップと一致しているが、鋳造方向に隣り合う二対のロール対の鋳造方向における中間近傍においては凝固シェル内の溶鋼の静圧により特に鋳片厚み方向において膨張(バルジング)する。このバルジングした凝固シェルがやがて下流側のロール対に挟持されるとき、増大した鋳片厚みを該ロール対のロールギャップとするよう、凝固シェルは、鋳片厚み方向に該ロール対から大きな圧力を受けて変形(矯正)される。この変形も、凝固シェルの凝固界面における内部割れの発生の一因である。
(d) ロールによる押し込み・・・例えば、鋳造方向において隣り合う二対のロール対のうち上流側のロール対のロールギャップと比較して下流側のロール対のロールギャップが極端に小さくなってしまっている場合や、これらのロールギャップが所望の程度に適宜に設定されていたとしても何れか一のロール対が鋳片厚み方向にズレている場合などは、凝固シェルが鋳片厚み方向に過度の外力を受ける(押し込まれる)。このズレによる外力も、凝固シェルの凝固界面における内部割れの発生の一因である。
溶鋼を冷却して所定の凝固シェルを形成する鋳型の下端のメニスカス距離としての第一メニスカス距離M1[m]から、所定の第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]に至るまでの鋳造経路としてのA経路部IntAにおいては前記鋳片に対して冷却水を所定の冷却水量Wt[L/kgSteel]で直接的に噴霧する。
前記第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]から、前記矯正経路部の上流端のメニスカス距離としての第四メニスカス距離M4(B/Last)[m]に至るまで、の鋳造経路としてのB経路部IntBにおいては前記鋳片に対して冷却水を直接的には噴霧しない。
鋳造速度Vc[m/min]を0.50〜0.65とし、前記第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]を8〜15とし、前記冷却水量Wt[L/kgSteel]を0.25〜1.0とする。
◆前記A経路部IntA内に配設される前記複数のロール対のロールギャップG[mm]の夫々は、(a)該A経路部IntAにおけるロール勾配GRD[mm/m]としてのA経路部ロール勾配GRDA[mm/m]が下記式(1)を満足するように、設定する。
◆前記B経路部IntB内に配設される前記複数のロール対のロールギャップG[mm]の夫々は、下記(b)〜(d)の要件を満たすように設定する。
(b)前記第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]に配置されるロール対のロールギャップGA/Last[mm]と、前記B経路部IntB内に配設される前記複数のロール対のロールギャップG[mm]のうち最大のロールギャップGB/Max[mm]と、が下記式(2)を満足する。
(c)且つ、前記ロールギャップGA/Last[mm]と、前記ロールギャップGB/Max[mm]と、前記第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]と、前記B経路部IntB内に配設される前記複数のロール対のうちロールギャップG[mm]がロールギャップGB/Max[mm]であるロール対が配置されるメニスカス距離としての第三メニスカス距離M3(B/Max)[m]と、が下記式(3)を満足する。
(d) 且つ、前記第三メニスカス距離M3(B/Max)[m]から、前記第四メニスカス距離M4(B/Last)[m]に至るまで、の鋳造経路としてのb経路部Intbにおけるロール勾配GRD[mm/m]としてのb経路部ロール勾配GRDb[mm/m]が下記式(4)を満足する。
GRDA≧0・・・(1)
0.5≦GB/Max-GA/Last≦5.0・・・(2)
0.4≦(GB/Max-GA/Last)/(M3(B/Max)-M2(A/Last))≦8.0・・・(3)
0.25≦GRDb≦0.8・・・(4)
先ず、本明細書中において用いる「ロール勾配GRD[mm/m]」を以下の如く定義する。図4は、ロール勾配の定義を説明するための模式図である。
即ち、鋳造経路に沿って複数で並設されるロール対のうち、任意のロール対と、該ロール対に対して前記鋳造経路の下流側に隣り合うように配設されるロール対と、の間のロール勾配GRD1-2[mm/m]は、前者ロール対のロールギャップG1[mm]と、後者ロール対のロールギャップG2[mm]と、両ロール対のロールピッチL1-2と、に基づいて下記式により求められるものとする。
GRD1-2=(G1−G2)/L1-2
なお、ロールギャップG[mm]とは、鋳片を挟んで一対で設けられる両ロールの鋳片幅中央部に対応する位置での面間最短距離[mm]のことである。
次に、本明細書中において用いる「メニスカス距離M[m]」の定義に関して説明する。本明細書中において「メニスカス距離M[m]」とは、注湯された溶鋼を冷却して所定の形状の凝固シェルを形成する鋳型内に収容されている溶鋼の湯面を起点とし、鋳造経路に沿って観念する距離[m]を意味するものとする。
2.前述した図略のタンディッシュから鋳型1へ所定の流量で溶鋼を注湯する。
3.鋳型1内に所定量の溶鋼が注湯されたら、前記のダミーバーを鋳造経路の下流側へ向かって所定の速度で引き抜く。
4.所定のメニスカス距離において上記ダミーバーを適宜の手段により回収し、もって、高炭素鋼は連続的に鋳造され始める。
・Si[wt%]:0.15〜0.70
・Mn[wt%]:0.3〜1.15
・Cr[wt%]:0〜1.60
・P[wt%]:0〜0.025
・S[wt%]:0〜0.025
GRDA≧0・・・(1)
0.5≦GB/Max-GA/Last≦5.0・・・(2)
0.4≦(GB/Max-GA/Last)/(M3(B/Max)-M2(A/Last))≦8.0・・・(3)
0.0≦GRDb≦0.8・・・(4)
同様に、説明の都合上、上記夫々のロール対2・2・・・(2iや2i+jなど)のメニスカス距離Mは、各ロール対2・2・・・の符号に付される添え字を伴って表記することとする。例えば、上記のロール対2iのメニスカス距離Mはメニスカス距離Miと表記し、ロール対2i+jのメニスカス距離Mはメニスカス距離Mi+jと表記する、である。
(1) メニスカス距離Mi[m]に配置されているロール対2iのロールギャップGiを測定する。
例:Gi[mm]=376
(2) メニスカス距離Mi+j[m]に配置されているロール対2i+jと、前記のロール対2iと、の間の距離(Mi+j−Mi)[m]を測定する(設計図面から予め(Mi+j−Mi)[m]がわかっている場合には、測定は省略できる。)。
例:Mi+j−Mi[m]=1.6
(3) 下記式に示す如く、前記のロール対2i+jのロールギャップGi+jを求める。そして、鋳片を挟むように一対で設けられる前記のロールスタンドのうち少なくとも一方を適宜の手段により移動操作することにより、求められたロールギャップGi+jを前記のロール対2i+jに対して適用する。
Gi+j=Gi−GRD×(Mi+j−Mi)
例:GRD[mm]=1.1、Gi+j[mm]=376−1.1×1.6=374.24
(4) メニスカス距離Mi+j[m]に配置されているロール対2i+jと、下流側のロールスタンドに支持されている複数のロール対2・2・・・のうち最も上流側のロール対2i+1と、の間の距離(Mi+j−Mi+1)[m]を求める。
例:(Mi+j−Mi+1)[m]=0.96
(5) 下記式に示す如く、前記のロール対2i+1に対して適用すべきロールギャップGi+1を求める。そして、鋳片を挟むように一対で設けられる前記のロールスタンドのうち少なくとも一方を同様に適宜の手段により移動操作することにより、求められたロールギャップGi+1を前記のロール対2i+1に対して適用する。
Gi+1=Gi+j+GRD×(Mi+j−Mi+1)
例:Gi+1[m]=374.24+1.1×0.96=375.296
・鋳型1の上端における鋳型厚D[mm]は380とし、同じく鋳型幅W[mm]は600とした。
・下記表1中、炭素含有量C[wt%]を0.7〜0.9として行われる試験においてはタイヤコード用鋼を用いた。なお、このタイヤコード用鋼の成分(単位はすべて[wt%])は次の通りである。C: 0.7〜0.9, Si: 0.20, Mn: 0.5, P: 0.01, S: 0.005
・下記表1中、炭素含有量C[wt%]を1.0又は1.1として行われる試験においては軸受鋼を用いた。なお、この軸受鋼の成分(単位はすべて[wt%])は次の通りである。C: 1.0, Si: 0.35, Mn: 0.5, P: 0.01, S: 0.005, Cr: 1.45
・所謂溶鋼過熱度ΔT[℃]は20〜45とした。
・なお、矯正経路部の起点たるメニスカス距離M[m]は22.0、終点たるメニスカス距離M[m]は26.0であり、第一メニスカス距離M1[m]は1.0である。
即ち、各確認試験において鋳造された鋳片の鋳造方向長さ250mm分を評価対象とした。この鋳片の切断面(鋳造方向に垂直な切断面)を研磨し、温塩酸による腐食試験を行い、目視ですべての内部割れの長さを測定し記録した。次に、この鋳片を幅方向中央において切断し、その切断面(鋳片狭面に平行な切断面)に対して同様の腐食試験を行い、目視ですべての内部割れの長さを測定し記録した。そして、これら二の切断面において記録された内部割れの長さを総計して、1サンプルあたりの内部割れの長さの総計が50mm未満の場合の評価を「○」とし、50mm以上の場合の評価を「×」とした。
溶鋼を冷却して所定の凝固シェルを形成する鋳型1の下端のメニスカス距離としての第一メニスカス距離M1[m]から、所定の第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]に至るまでの鋳造経路としてのA経路部IntAにおいては前記鋳片に対して冷却水を所定の冷却水量Wt[L/kgSteel]で直接的に噴霧する。
前記第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]から、前記矯正経路部の上流端のメニスカス距離としての第四メニスカス距離M4(B/Last)[m]に至るまで、の鋳造経路としてのB経路部IntBにおいては前記鋳片に対して冷却水を直接的には噴霧しない。
鋳造速度Vc[m/min]を0.50〜0.65とし、前記第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]を8〜15とし、前記冷却水量Wt[L/kgSteel]を0.25〜1.0とする。
◆前記A経路部IntA内に配設される前記複数のロール対2・2・・・のロールギャップG[mm]の夫々は、(a)該A経路部IntAにおけるロール勾配GRD[mm/m]としてのA経路部ロール勾配GRDA[mm/m]が下記式(1)を満足するように、設定する。
◆前記B経路部IntB内に配設される前記複数のロール対2・2・・・のロールギャップG[mm]の夫々は、下記(b)〜(d)の要件を満たすように設定する。
(b)前記第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]に配置されるロール対2のロールギャップGA/Last[mm]と、前記B経路部IntB内に配設される前記複数のロール対2・2・・・のロールギャップG[mm]のうち最大のロールギャップGB/Max[mm]と、が下記式(2)を満足する。
(c)且つ、前記ロールギャップGA/Last[mm]と、前記ロールギャップGB/Max[mm]と、前記第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]と、前記B経路部IntB内に配設される前記複数のロール対2・2・・・のうちロールギャップG[mm]がロールギャップGB/Max[mm]であるロール対2が配置されるメニスカス距離としての第三メニスカス距離M3(B/Max)[m]と、が下記式(3)を満足する。
(d) 且つ、前記第三メニスカス距離M3(B/Max)[m]から、前記第四メニスカス距離M4(B/Last)[m]に至るまで、の鋳造経路としてのb経路部Intbにおけるロール勾配GRD[mm/m]としてのb経路部ロール勾配GRDb[mm/m]が下記式(4)を満足する。
GRDA≧0・・・(1)
0.5≦GB/Max-GA/Last≦5.0・・・(2)
0.4≦(GB/Max-GA/Last)/(M3(B/Max)-M2(A/Last))≦8.0・・・(3)
0.25≦GRDb≦0.8・・・(4)
また、前記熱膨張が適度に抑制されるようにロール対2・2・・・のロールギャップGが設定されるので、凝固シェルのコーナ部近傍における内部割れを防止できる。
上記実施形態において連続鋳造機100は所謂湾曲型連続鋳造機としたが、これに代えて、鋳型1と円弧経路部との間に鉛直方向に延びる垂直経路部を有する所謂垂直逐次曲げ型連続鋳造機としてもよい。
上述した溶鋼過熱度ΔT[℃]の測定方法を下記第1〜2に詳説する。
即ち、第1に、前述のタンディッシュ内に保持されている(入れ替わっている、流出入している)溶鋼の温度を適宜の温度測定器を用いて測定する。
(例)この温度測定器とは例えばその先端部に温度感知部を備える熱電対型のものが挙げられ、この場合、この温度感知部をタンディッシュ内に保持されている溶鋼の中へ深さ50mm以上浸漬させて該溶鋼の温度を測定することとする。なお、熱電対は測定対象の温度に応じてその出力電圧を昇降させる特性を有するのは周知の通りであるから、溶鋼の温度を測定することは、熱電対が出力する電圧を適宜の手段により読み取ることと換言できる。
第2に、第1で測定された溶鋼の温度と、該溶鋼の溶鋼成分により唯一に決まる所謂凝固開始温度と、を比較する。そして上述した溶鋼過熱度ΔT[℃]は、前者から後者を除いた(引いた)残りとして求めることができる。
上述した鋳型内溶鋼攪拌強度M-EMS[gauss]の測定方法を説明する。
即ち、この鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[gauss]は、鋳型1の幅方向中央であって、鉛直方向にはM-EMSの鉄芯の中心と同じ高さ位置で、且つ、鋳型の広面側内壁面から15mmだけ離れた地点において適宜のガウスメータにより測定される平均値(単位は[gauss]とする。)とするものとする。尚、M-EMSの磁場の周波数は1〜4Hzとした。
2 ロール対
100 連続鋳造機
Claims (1)
- 所定の円弧半径を有し、円弧状に延びる円弧経路部と、
該円弧経路部の下流側に設けられ、水平方向に延びる水平経路部と、
前記の円弧経路部及び水平経路部の間に設けられ、前記円弧半径を漸増させることにより前記の円弧経路部及び水平経路部を接続する矯正経路部と、
を少なくとも含む鋳造経路に沿って並設された複数のロール対により鋳片を挟持しつつ、
溶鋼を冷却して所定の凝固シェルを形成する鋳型の下端のメニスカス距離としての第一メニスカス距離M1[m]から、所定の第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]に至るまでの鋳造経路としてのA経路部IntAにおいては前記鋳片に対して冷却水を所定の冷却水量Wt[L/kgSteel]で直接的に噴霧し、
前記第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]から、前記矯正経路部の上流端のメニスカス距離としての第四メニスカス距離M4(B/Last)[m]に至るまで、の鋳造経路としてのB経路部IntBにおいては前記鋳片に対して冷却水を直接的には噴霧しない、
炭素含有量C[wt%]が0.8〜1.1である高炭素鋼の連続鋳造方法において、
鋳造速度Vc[m/min]を0.50〜0.65とし、
前記第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]を8〜15とし、
前記冷却水量Wt[L/kgSteel]を0.25〜1.0とし、
◆前記A経路部IntA内に配設される前記複数のロール対のロールギャップG[mm]の夫々は、
(a)該A経路部IntAにおけるロール勾配GRD[mm/m]としてのA経路部ロール勾配GRDA[mm/m]が下記式(1)を満足するように、設定し、
◆前記B経路部IntB内に配設される前記複数のロール対のロールギャップG[mm]の夫々は、
(b)前記第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]に配置されるロール対のロールギャップGA/Last[mm]と、前記B経路部IntB内に配設される前記複数のロール対のロールギャップG[mm]のうち最大のロールギャップGB/Max[mm]と、が下記式(2)を満足するように、
(c)且つ、前記ロールギャップGA/Last[mm]と、前記ロールギャップGB/Max[mm]と、前記第二メニスカス距離M2(A/Last)[m]と、前記B経路部IntB内に配設される前記複数のロール対のうちロールギャップG[mm]がロールギャップGB/Max[mm]であるロール対が配置されるメニスカス距離としての第三メニスカス距離M3(B/Max)[m]と、が下記式(3)を満足するように、
(d) 且つ、前記第三メニスカス距離M3(B/Max)[m]から、前記第四メニスカス距離M4(B/Last)[m]に至るまで、の鋳造経路としてのb経路部Intbにおけるロール勾配GRD[mm/m]としてのb経路部ロール勾配GRDb[mm/m]が下記式(4)を満足するように、設定する、
ことを特徴とする高炭素鋼の連続鋳造方法
GRDA≧0・・・(1)
0.5≦GB/Max-GA/Last≦5.0・・・(2)
0.4≦(GB/Max-GA/Last)/(M3(B/Max)-M2(A/Last))≦8.0・・・(3)
0.25≦GRDb≦0.8・・・(4)
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