JP4407481B2 - 中炭素鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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連続鋳造設備は、鋳型から引き抜かれた鋳片に2次冷却を施す形態に応じて、垂直型連続鋳造設備,円弧湾曲型連続鋳造設備,垂直曲げ型連続鋳造設備等に分類される。
このような垂直曲げ型連続鋳造設備を用いて中炭素鋼の連続鋳造を行なう場合は、垂直部RAの後段から曲げ部RBを経て湾曲部RCの前段の範囲で包晶反応が生じ、凝固シェル3が脆化する。特に鋳片の角部は、鋳片5の長辺側に設置された噴射ノズルと短辺側に設置された噴射ノズルから吹き付けられる冷却水によって、冷却速度が大きくなる。その結果、包晶反応による脆化に加えて、凝固シェル3の角部では冷却速度の増加による脆化が起こるので、鋳片5の角部は著しく脆くなる。
すなわち本発明は、垂直曲げ型連続鋳造設備を用いた中炭素鋼の連続鋳造方法において、鋳型の下方の2次冷却を行なう垂直部で水温32〜40℃の冷却水を鋳片の長辺と短辺の全幅に吹き付け、曲げ部および湾曲部で水温32〜40℃の冷却水を鋳片の角部を除く長辺と短辺の中央部に吹き付け、矯正部および水平部で水温32〜40℃の冷却水を鋳片の長辺と短辺の全幅に吹き付けて鋳片を冷却する中炭素鋼の連続鋳造方法である。
中炭素鋼とは、Fe−C系平衡状態図で包晶反応が生じる範囲のC含有量を有する普通鋼または低合金鋼を指す。ただし、C含有量が0.07〜0.3 質量%の普通鋼または低合金鋼に本発明を適用するのが好ましい。
図1は、垂直曲げ型連続鋳造設備の要部を模式的に示す断面図である。図1では、冷却水の噴射ノズルは図示を省略する。
垂直部RA,曲げ部RB,湾曲部RC,矯正部RD,水平部REで鋳片に吹き付ける冷却水の温度はいずれも32〜40℃の範囲内に維持する。本発明では、後述するように鋳片5の角部の冷却水を停止して、角部の冷却速度を低減するが、冷却水の温度が32℃未満では、冷却速度が大きくなるので、角部の冷却水を停止しても、コーナーカギ割れを防止できない。一方、40℃を超える温度では、冷却水を加熱するための装置や燃料に多大な費用を要するばかりでなく、コーナーカギ割れの防止効果のさらなる向上は期待できない。したがって、冷却水の温度は32〜40℃の範囲を満足する必要がある。
ただし曲げ部RBに近い側の垂直部RAでは、凝固シェル3の温度が低下し、包晶反応は起こり易くなる。したがって垂直部RAを鋳型1に近い側(以下、前段という)と曲げ部RBに近い側(以下、後段という)とに分けて、前段では、図2に示すように鋳片の長辺と短辺の全幅に冷却水7を吹き付け、後段では、図3に示すように、鋳片の角部の冷却水の吹き付けを停止して長辺と短辺の中央部に冷却水を吹き付けるのが好ましい。その際には、垂直部RAの後段では、鋳片の長辺および短辺の角部にて冷却水の吹き付けを停止する。
鋳片の角部において冷却水が吹き付けられない領域の幅Wが50mm未満では、角部の冷却速度が十分に低下しないので、コーナーカギ割れを防止できない。一方、 200mmを超えると、凝固シェル3の成長が阻害されて長辺と短辺の厚さが不足し、鋳片の変形(すなわち膨らみ)が生じる。したがって、角部の冷却水が吹き付けられない領域の幅Wは50mm≦W≦200mm を満足するのが好ましい。
図4は、図1中の垂直部RAの前段RAF と後段RAR の配置を模式的に示す断面図である。図4では、サポートロールは図示を省略する。垂直部RAの前段RAF の長さをL(m)とすると、前段RAF の長さLは、鋳型1の下端から前段RAF の下端までの距離に相当する。前段RAF の長さLが 0.2m未満では、冷却速度を低減する領域(すなわち後段RAR )が長くなるので、凝固シェル3の成長が阻害されて長辺と短辺の厚さが不足し、鋳片の変形(すなわち膨らみ)が生じる。一方、 1.5mを超えると、冷却速度を増速する領域(すなわち後段RAF )内で包晶反応が生じるので、コーナーカギ割れが発生し易くなる。したがって鋳型1の下端から前段RAF の下端までの距離Lは、 0.2m≦L≦1.5 mを満足するのが好ましい。より好ましくは 0.3m≦L≦1.0 mとするのが良い。
冷却水の吹き付けを停止するためには、図3に示すように、角部に位置する噴射ノズル6を撤去しても良いし、あるいはバルブを閉じて冷却水の送給を停止しても良い。
図1に示す矯正部RDおよび水平部REでは、凝固シェル3が十分に冷却されており、包晶反応が生じる恐れはない。したがって、垂直部RAの前段RAF と同様に、鋳片の長辺と短辺の全幅に冷却水を吹き付けて、冷却速度を増速する。
垂直部RAと矯正部RDと水平部REでは、図2に示すように、鋳片の長辺と短辺の全幅に冷却水7を吹き付け、曲げ部RBと湾曲部RCでは、図3に示すように、角部の冷却水7の吹き付けを停止して長辺と短辺の中央部に冷却水7を吹き付けた。曲げ部RBと湾曲部RCのW値は、長辺のWL 値と短辺のWS 値を同一とし、W(すなわちWL =WS )= 100mmとした。冷却水7の温度は全て38℃に維持した。これを発明例とする。
また、比較例2として、垂直部RA,曲げ部RB,湾曲部RC,矯正部RD,水平部REで、図2に示すように、鋳片の長辺と短辺の全幅に冷却水7を吹き付けた。冷却水7の温度は全て38℃に維持した。
一方、比較例1では、膨らみが認められ、しかもコーナーカギ割れが発生(発生率:15%)した。比較例2では、膨らみは認められなかったが、コーナーカギ割れが発生(発生率:5%)した。比較例3では、膨らみが認められ、しかもコーナーカギ割れが発生(発生率:1%)した。
発生率(%)= 100×SB /SA
SA :調査した試料の個数
SB :コーナーカギ割れが観察された試料の個数
で算出される値である。
2 溶鋼
3 凝固シェル
4 サポートロール
5 鋳片
6 噴射ノズル
7 冷却水
8 膨らみ
9 コーナーカギ割れ
RA 垂直部
RB 曲げ部
RC 湾曲部
RD 矯正部
RE 水平部
Claims (5)
- 垂直曲げ型連続鋳造設備を用いた中炭素鋼の連続鋳造方法において、鋳型の下方の2次冷却を行なう垂直部で水温32〜40℃の冷却水を鋳片の長辺と短辺の全幅に吹き付け、曲げ部および湾曲部で水温32〜40℃の冷却水を鋳片の角部を除く長辺と短辺の中央部に吹き付け、矯正部および水平部で水温32〜40℃の冷却水を鋳片の長辺と短辺の全幅に吹き付けて前記鋳片を冷却することを特徴とする中炭素鋼の連続鋳造方法。
- 垂直曲げ型連続鋳造設備を用いた中炭素鋼の連続鋳造方法において、鋳型の下方の2次冷却を行なう垂直部の前段で水温32〜40℃の冷却水を鋳片の長辺と短辺の全幅に吹き付け、前記垂直部の後段で前記冷却水を鋳片の角部を除く長辺と短辺の中央部に吹き付け、曲げ部および湾曲部で水温32〜40℃の冷却水を鋳片の角部を除く長辺と短辺の中央部に吹き付け、矯正部および水平部で水温32〜40℃の冷却水を鋳片の長辺と短辺の全幅に吹き付けて前記鋳片を冷却することを特徴とする中炭素鋼の連続鋳造方法。
- 前記鋳型の下端から前記垂直部の前段の下端までの距離L(m)が、 0.2m≦L≦1.5mを満足することを特徴とする請求項2に記載の中炭素鋼の連続鋳造方法。
- 前記鋳片の角部の前記冷却水が吹き付けられない領域の幅W(mm)が、50mm≦W≦200mm を満足することを特徴とする請求項1、2または3に記載の中炭素鋼の連続鋳造方法。
- 前記中炭素鋼が、Cを0.07〜0.3 質量%含有することを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の中炭素鋼の連続鋳造方法。
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