本発明の定着装置及び画像形成装置の第1実施形態を図面に基づき説明する。
図1には、画像形成装置としてのプリンタ10が示されている。プリンタ10は、プリンタ10の本体を構成する筐体12内に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及び ブラック(K)の各トナーに対応した光ビームを出射する光走査装置14Y、14M、14C、14Kが固定されている。また、光走査装置14Kに隣接する位置に、プリンタ10の各部の動作を制御する制御部70が設けられている。
光走査装置14Y、14M、14C、14Kは、光源から出射された光ビームを図示しない回転多面鏡(ポリゴンミラー)で走査するとともに、反射ミラー等の複数の光学部品で反射して、各トナーに対応した光ビーム16Y、16M、16C、16Kを出射するようになっている。
光ビーム16Y、16M、16C、16Kは、それぞれ対応する各感光体18Y、18M、18C、18Kに導かれる。各感光体18Y、18M、18C、18Kは、図示しないモータ及びギアからなる駆動手段によって、矢印A方向に回転するようになっている。
感光体18Y、18M、18C、18Kの回転方向上流側には、感光体18Y、18M、18C、18Kの表面を帯電する帯電器20Y、20M、20C、20Kが設けられている。また、感光体18Y、18M、18C、18Kの回転方向下流側には、Y、M、C、Kの各トナーをそれぞれ感光体18Y、18M、18C、18K上に現像する現像器22Y、22M、22C、22Kが設けられている。
感光体18Y、18M、18C、18Kの回転方向で、現像器22Y、22M、22C、22Kの下流側には、現像されたトナー像が一次転写される中間転写ベルト28が配置されている。中間転写ベルト28は、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。
感光体18Y、18M、18C、18Kと中間転写ベルト28が対向する位置で中間転写ベルト28の内側には、感光体18Y、18M、18C、18K上に形成された各色トナー像を中間転写ベルト28に転写する一次転写ロール24Y、24M、24C、24Kが配置されている。この一次転写ロール24Y、24M、24C、24Kによって、感光体18Y、18M、18C、18Kから中間転写ベルト28に一次転写を行う一次転写部25が構成されている。
一次転写ロール24Y、24M、24C、24Kは、図示しないシャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とを有している。シャフトは、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層は、カーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成された円筒ロールである。
また、一次転写ロール24Y、24M、24C、24Kは、中間転写ベルト28を挟んで各感光体18Y、18M、18C、18Kに圧接されている。一次転写ロール24Y、24M、24C、24Kには、図示しない電圧印加手段によって各トナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。
これにより、各々の感光体18Y、18M、18C、18K上のトナー像が中間転写ベルト28に順次、静電吸引され、中間転写ベルト28上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。感光体18Y、18M、18C、18Kの回転方向下流側には、感光体18Y、18M、18C、18K上の残留トナーを除去するクリーナ26Y、26M、26C、26Kが設けられている。
中間転写ベルト28の内側には、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト28を移動させる駆動ロール30と、各感光体18Y、18M、18C、18Kの配置方向に沿って略直線状に延び、中間転写ベルト28を支持する支持ロール32が設けられている。これにより、中間転写ベルト28は、矢印B方向に所定の速度で循環駆動されるようになっている。
また、中間転写ベルト28の内側には、中間転写ベルト28に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト28の蛇行を防止するテンションロール34が設けられている。中間転写ベルト28の移動方向下流側には、中間転写ベルト28上のトナー像を記録用紙P上に転写する二次転写部42が設けられている。
二次転写部42は、中間転写ベルト28のトナー像担持面側に配置される二次転写ロール38と、バックアップロール36とによって構成されている。
二次転写ロール38は、図示しないシャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層は、カーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成された円筒ロールである。
また、二次転写ロール38は、中間転写ベルト28を挟んでバックアップロール36に圧接配置されている。バックアップロール36は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRとのブレンドゴムのチューブ、内部がEPDMゴムで構成されている。硬度は例えば70°(アスカーC)に設定される。
バックアップロール36は、中間転写ベルト28の裏面側に配置されて二次転写ロール38の対向電極を形成しており、バックアップロール36と接触配置された金属製の給電ロール40を介して二次転写バイアスが安定的に印加されるようになっている。ここで、二次転写ロール38は、接地されるとともにバックアップロール36との間に二次転写バイアスが印加され、二次転写部42に搬送される記録用紙P上にトナー像を二次転写するようになっている。
中間転写ベルト28の移動方向における二次転写部42の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト28上の残留トナーや紙粉を除去する中間転写ベルトクリーナ46が、中間転写ベルト28に対して接離自在に設けられている。中間転写ベルトクリーナ46における中間転写ベルト28の内側には、クリーニングバックアップロール44が設けられている。
イエロートナーに対応する一次転写ロール24Yの上流側で中間転写ベルト28の内側には、各トナーに対応した画像形成のタイミングを合わせるための基準となる信号を発生するホームポジションセンサ48が設けられている。
ホームポジションセンサ48は、中間転写ベルト28の裏側に設けられた所定のマークを検知して基準信号を発生するようになっている。この基準信号に基づいて、前述の制御部70がプリンタ10の各部を動作させ、画像形成を開始するようになっている。また、ブラックトナーに対応する一次転写ロール24Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が設けられている。
一方、プリンタ10の下方側には、記録用紙Pを収納する用紙トレイ50が設けられている。用紙トレイ50の一方端には、記録用紙Pを所定のタイミングで取り出して搬送するピックアップロール52が設けられている。
ピックアップロール52の上方には、図示しないモータ及びギアからなる駆動手段で回転駆動され、ピックアップロール52によって送出された記録用紙Pを前述の二次転写部42に搬送する複数の搬送ロール54、56が設けられている。また、記録用紙Pの搬送方向における搬送ロール56の下流側には、記録用紙Pを二次転写部42へ送り込む搬送シュート58が設けられている。
二次転写部42における記録用紙Pの送出方向には、トナー像の二次転写が終了した記録用紙Pを定着装置100へ搬送する搬送ベルト60が設けられている。搬送ベルト60は、張架ロール57、59によって張架され、図示しないモータ及びギアからなる駆動手段で移動可能に設けられている。
定着装置100の入口側には、記録用紙Pを定着装置100に案内するガイド62が設けられている。また、定着装置100の出口側には、プリンタ10の筐体12に固定された用紙集積トレイ64が設けられている。
次に、プリンタ10の画像形成について説明する。
まず、図示しない画像読取装置やパーソナルコンピュータ等から出力される画像データが、図示しない画像処理装置によって所定の画像処理を施される。画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、光走査装置14Y、14M、14C、14Kに出力される。
光走査装置14Y、14M、14C、14Kは、入力された色材階調データに応じて、光ビーム16Y、16M、16C、16Kを各々の感光体18Y、18M、18C、18Kに照射する。感光体18Y、18M、18C、18Kは、予め帯電器20Y、20M、20C、20Kによって表面が帯電されており、光ビーム16Y、16M、16C、16Kによって表面が露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、現像器22Y、22M、22C、22Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
続いて、感光体18Y、18M、18C、18K上に形成されたトナー像は、一次転写部25において中間転写ベルト28上に転写される。この転写は、一次転写ロール24Y、24M、24C、24Kにより中間転写ベルト28に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト28の表面に順次重ね合わせることで行われる。トナー像が転写された中間転写ベルト28は、二次転写部42に搬送される。
一方、トナー像が二次転写部42に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール52が回転し、用紙トレイ50から所定サイズの記録用紙Pが送出される。ピックアップロール52により送出された記録用紙Pは、搬送ロール54、56により搬送され、搬送シュート58を経て二次転写部42に到達する。この二次転写部42に到達する前に記録用紙Pは一旦停止され、トナー像が担持された中間転写ベルト28の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、記録用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせが行われる。
二次転写部42では、中間転写ベルト28を介して、二次転写ロール38がバックアップロール36に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された記録用紙Pは、中間転写ベルト28と二次転写ロール38との間に挟み込まれる。また、このとき、給電ロール40からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加され、二次転写ロール38とバックアップロール36との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト28上に担持された未定着トナー像は、二次転写ロール38とバックアップロール36とによって押圧され、記録用紙P上に一括して静電転写される。
続いて、トナー像が静電転写された記録用紙Pは、二次転写ロール38によって中間転写ベルト28から剥離された状態でそのまま搬送され、搬送ベルト60へと搬送される。搬送ベルト60では、定着装置100における最適な搬送速度に合わせて、記録用紙Pを定着装置100まで搬送する。定着装置100に搬送された記録用紙P上の未定着トナー像は、定着装置100によって記録用紙P上に定着される。定着後の記録用紙Pは、矢印C方向に排出され、用紙集積トレイ64に集積される。
記録用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト28上に残った残留トナーは、中間転写ベルト28の回転移動に伴って中間転写ベルトクリーナ46まで搬送され、中間転写ベルト28上から除去される。このようにして、プリンタ10の画像形成が行われる。
次に、定着装置100について説明する。
図2に示すように、定着装置100は、記録用紙Pの進入又は排出を行うための開口が形成された筐体106を備えている。筐体106の内側には、両端部にキャップ状の支持部材(図示省略)が嵌められ、矢印D方向へ回転可能に支持された無端状の定着ベルト102が設けられている。
定着ベルト102の外周面と対向する位置には、絶縁性の材料で構成されたボビン108が配置されている。ボビン108は、定着ベルト102の外周面に倣った略円弧状に形成されており、定着ベルト102と反対側に向けて凸部108Aが突設されている。ボビン108と定着ベルト102との間隔は1〜3mmとなっている。
ボビン108には、通電によって磁界Hを発生させる励磁コイル110が、凸部108Aを中心として軸方向(図2の紙面奥行き方向)に複数回巻き回されている。定着ベルト102と反対側で励磁コイル110と対向する位置には、ボビン108の円弧状に倣って略円弧状に形成されたフェライト等の磁性体からなる磁路形成部材112が配置され、ボビン108に支持されている。
ここで、図3(a)に示すように、定着ベルト102は、内側から外側に向けて基層130、発熱層132、保護層134、弾性層136、及び離型層138で構成されており、これらが積層され一体となっている。
基層130は、定着ベルト102の強度を保持するためのベース(土台)となるもので、厚さ50〜200μmで設定されたポリイミドが用いられている。なお、基層130には、ポリイミドのような樹脂の他に、鉄、ニッケル、シリコン、ホウ素、ニオブ、銅、ジルコニウム、コバルト等の金属、又はこれらの合金で構成される金属軟磁性材料を用いてもよい。
発熱層132は、前述の磁界Hを打ち消す磁界を生成するように渦電流が流れる電磁誘導作用により発熱する金属材料で構成される。また、発熱層132は、磁界Hの磁束を貫通させるために、いわゆる表皮深さよりも薄く構成される必要がある。ここで、発熱層132として用いられる金属材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリウム、アンチモン、又はこれらの合金の金属材料を用いることができる。本実施形態では、発熱層132として、厚さ10μmの銅を用いている。
保護層134は、機械的強度が発熱層132より高く、繰り返し歪みに強い材料で、錆びや腐食に強い材料が好ましく、本実施形態では、厚さ10μmのニッケルを用いている。
弾性層136は、優れた弾性と耐熱性が得られる等の観点から、シリコン系ゴム、又はフッ素系ゴムが用いられ、本実施形態では、厚さ200μmのシリコンゴムを用いている。なお、弾性層136の厚さは、200〜600μmのものを用いることが好ましい。
離型層138は、記録用紙P上で溶融されたトナーT(図2参照)との接着力を弱めて、記録用紙Pを定着ベルト102から剥離し易くするために設けられる。優れた表面離型性を得るためには、離型層138として、フッ素樹脂、シリコン樹脂、又はポリイミド樹脂が用いられ、本実施形態ではPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)を用いている。離型層138の厚さは30μmとしている。
一方、図2(a)に示すように、定着ベルト102の内側には、非磁性体であるアルミニウムからなる角柱状の支柱114が、定着ベルト102の幅方向を長手方向として非接触で配置され、両端が定着装置100の筐体106に固定されている。
支柱114は、底面側に長手方向に沿って凹部114Aが形成されており、右側面から外側へ断面略台形状の凸部114Bが突設されている。凹部114Aには、定着ベルト102を所定の圧力で外側に向けて押圧するための樹脂製の押圧パッド116が固定されている。押圧パッド116は、一端面が定着ベルト102の内周面と接触して定着ベルトを外方向へ押圧している。
凸部114Bには、定着ベルト102の内周面に接触して、定着ベルト102表面の温度を検知する温度センサ118が配設されている。温度センサ118は、定着ベルト102表面から与えられる熱量に応じて抵抗値が変化することで、定着ベルト102表面の温度を計測する。また、温度センサ118は、ポリイミド等の樹脂で構成された板ばね119の先端部に固定されており、板ばね119の基端部は、図示しないネジで凸部114Bに固定されている。
図3(b)に示すように、温度センサ118は、配線140を介して、前述の制御部70(図1参照)の内部に設けられた制御回路142に接続されている。また、制御回路142は、配線144を介して通電回路146に接続されており、通電回路146は、配線148、150を介して前述の励磁コイル110に接続されている。通電回路146は、制御回路142から送られる電気信号に基づいて駆動又は駆動停止され、配線148、150を介して励磁コイル110に所定の周波数の交流電流を供給又は供給停止するようになっている。
ここで、制御回路142は、温度センサ118から送られた電気量に基づいて定着ベルト102の内周側の温度を測定し、外周側の温度に換算してから、この換算温度と予め記憶させてある定着設定温度(本実施形態では170℃)とを比較する。そして、換算温度が定着設定温度よりも低い場合は、通電回路146を駆動して励磁コイル110に通電し、磁気回路としての磁界H(図2参照)を発生させる。換算温度が定着設定温度よりも高い場合は、通電回路146を停止させる。
図2(a)に示すように、定着ベルト102の内側で温度センサ118よりも下流側には、図示しない配線で前述の制御部70(図1参照)に接続されたサーモスタット129が配置されている。サーモスタット129は、略L字状の支持部材127に取付けられており、支持部材127は、支柱114に固定されている。ここで、サーモスタット129は、定着ベルト102の内周面に接触しており、定着ベルト102が所定の温度(例えば200℃)になったときに、内部のスイッチがONとなる。これにより、励磁コイル110への通電が遮断され、定着ベルト102の過剰な昇温が抑制されている。
次に、図2(b)に示すように、押圧パッド116は、側面116Aから外側(定着ベルト102の内周面側)へ向けて、断面略扇状の位置決め部120が突設されている。位置決め部120は、押圧パッド116の長手方向に所定の間隔をあけて2箇所(120A、120B)配置されており、各位置決め部120A、120Bには、それぞれ、定着ベルト102の内周面と接触される曲面部122A、122Bが形成されている。
一方、図2(a)に示すように、定着ベルト102の外周面と対向する位置には、定着ベルト102を押圧パッド116に向けて加圧するとともに、駆動モータ154(図4参照)及び図示しないギアからなる駆動機構により矢印E方向に回転する加圧ロール104が配置されている。
加圧ロール104は、アルミニウム等の金属からなる芯金105の周囲に、シリコンゴム及びPFAが被覆された構成となっている。ここで、加圧ロール104が定着ベルト102を押圧パッド116側に加圧しており、定着ベルト102と加圧ロール104の接触部であるニップ部107が形成されている。
ニップ部107の出口側(定着ベルト102の回転方向下流側)近傍で、定着ベルト102を挟んで位置決め部120と対向する位置には、所定の間隔をあけて、剥離板124が設けられている。剥離板124は、定着ベルト102の長手方向の幅と略等しい幅の矩形状に形成されており、上面に板材125が立設されている。
板材125の上部には、定着ベルト102の長手方向に沿って貫通した貫通孔126が形成されている。貫通孔126は、剥離板124の面内方向と略平行な長孔となっており、ネジ128が挿通される。ここで、筐体106に取付けられた図示しないブラケットに、板材125がネジ128で締結されることにより、剥離板124が筐体106に固定される。
なお、剥離板124は、貫通孔126が長孔となっているため、ネジ128を緩めることで、略水平方向(前後方向)に位置調整可能となっている。また、筐体106は、一部に取外し可能なカバー部材(図示省略)が設けられており、剥離板124の位置調整時はカバー部材が取り外され、剥離板124の位置調整後にカバー部材が筐体106に取付けられるようになっている。
ここで、位置決め部120の取付位置及び押圧パッド116からの突出量は、定着ベルト102が非回転かつ非加熱時に、曲面部122A、122Bが定着ベルト102の内周面と接触する位置又は近傍(所定の間隔を設けた位置)に配置されるように設定されており、且つ定着ベルト102の回転時、あるいは、回転及び加熱時に、定着ベルト102と位置決め部120が非接触となるように予め設定されている。
位置決め部120の取付位置(押圧パッド116からの突出量を含む)及び剥離板124の配置設定は、加圧ロール104が定着ベルト102を加圧した状態で、回転しているときの定着ベルト102の、非加熱かつ非回転時の定着ベルト102の形状からみた半径方向の変形量ΔR1と、回転及び加熱(定着設定温度)したときの定着ベルト102の、非加熱かつ非回転時の定着ベルト102の形状からみた半径方向の変形量ΔR2と、を予め測定しておき、変形量ΔR1及び変形量ΔR2と、定着ベルト102と剥離板124の定着時の必要離間距離D(規格値)と、定着ベルト102の厚さdtとに基づいて設定される。
例えば、ΔR1<ΔR2であったとすると、曲面部122A、122Bから剥離板124の先端までの必要距離Lは、L=ΔR2+dt+Dとなり、この距離Lに調整できるように調整ばらつきも考慮して、位置決め部120及び剥離板124の配置が設定されることになる。なお、本実施形態では、押圧パッド116と位置決め部120は一体で形成されているが、これらを独立して形成し、押圧パッド116に位置決め部120を取付けてもよい。
次に、制御部70の接続構成について説明する。
図4に示すように、制御部70は、プリンタ10の各種制御を行う中央処理ユニット(CPU)71と、各種制御プログラムが記憶されたプログラム記憶部(ROM)72と、温度センサ118で測定された温度測定データ又はその他の測定データを一時的に記憶し、又は消去するデータ記憶部(RAM)74と、所定のクロックで動作するタイマ76とを有している。なお、制御部70は、制御回路142(図3(b)参照)を含んでいる。
制御部70は、各種信号の入出力が行われる入出力インターフェース80に接続されており、この入出力インターフェース80を介して、温度センサ118、スイッチ82、ユーザーインターフェース(UI)84、サーモスタット129、駆動モータ154、及び通電回路146に接続されている。
スイッチ82は、プリンタ10の電源をON/OFFするためのスイッチであり、ユーザーインターフェース84は、画像形成等の実行をユーザーが直接指示するための入力パネル等で構成されている。また、駆動モータ154は、加圧ロール104を回転駆動させる駆動機構の一部である。
ここで、温度センサ118、スイッチ82、ユーザーインターフェース84、及びサーモスタット129から入出力インターフェース80を介してCPU71に信号が入力されるようになっている。一方、CPU71からの制御信号は、入出力インターフェース80を介して、駆動モータ154及び通電回路146に出力されるようになっている。なお、駆動モータ156については、後述する第3実施形態において用いられるものであり、第1実施形態では使用しない。
次に、定着装置100の定着動作について説明する。
図1〜図4に示すように、前述のプリンタ10の画像形成工程を経て、トナーTが転写された記録用紙P(あるいは封筒)が定着装置100に送られる。定着装置100では、制御部70によって図示しない駆動モータが駆動され、加圧ロール104が矢印E方向へ回転して、定着ベルト102が矢印D方向へ従動回転する。このとき、制御回路142からの電気信号に基づいて通電回路146が駆動され、励磁コイル110に交流電流が供給される。
励磁コイル110に交流電流が供給されると、励磁コイル110の周囲に磁気回路としての磁界Hが生成消滅を繰り返す。そして、磁界Hが定着ベルト102の発熱層132を横切ると、磁界Hの変化を妨げる磁界が生じるように発熱層132に渦電流が発生する。発熱層132は、発熱層132の表皮抵抗、及び発熱層132を流れる渦電流の大きさに比例して発熱し、これによって定着ベルト102が加熱される。
定着ベルト102表面の温度は、温度センサ118で検知され、定着設定温度に到達していない場合は、制御回路142が通電回路146を駆動制御して励磁コイル110に所定の周波数の交流電流を通電する。また、定着設定温度に到達している場合は、温度を維持できるように制御回路142が通電回路146を制御する。
続いて、定着装置100に送り込まれた記録用紙Pは、所定の定着設定温度となっている定着ベルト102と、加圧ロール104とによって加熱押圧され、トナー画像が記録用紙P表面に定着される。そして、定着された記録用紙Pは、用紙集積トレイ64に排出される。
次に、本発明の第1実施形態の作用について説明する。
図5(a)〜図5(d)は、定着ベルト102と剥離板124の先端との離間距離の調整工程を示したものである。なお、筐体106及び励磁コイル110等の図示は省略している。
図5(a)に示すように、定着ベルト102と剥離板124の離間距離がd1となっていて未調整であったとする。このとき、剥離板124のネジ128(図2(a)参照)は緩められている。ここで、離間距離の調整を行うために、板厚tの調整板158が、定着ベルト102と剥離板124の間に挿入され、定着ベルト102の表面に接触されて位置決めされる。なお、予め、板厚tは、前述の必要離間距離Dと変形量ΔR2を用いてt=D+ΔR2に設定されており、t>ΔR2となっているものとする。
続いて、図5(b)に示すように、剥離板124が、矢印F方向にスライド移動され、調整板158と接触剥離して位置決めされる。この状態でネジ128が締結され、分離板124が固定される。
続いて、図5(c)に示すように、調整板158が引き抜かれ、定着ベルト102と分離板124の間に、距離d2の隙間が形成される。調整板158を引き抜いた直後は、距離d2は調整板158の板厚に等しいため、d2=tとなっている。
続いて、図5(d)に示すように、定着装置100の定着動作が開始され、定着ベルト102が矢印D方向に回転し加熱されると、定着ベルト102は外側へ向けて撓み、位置決め部120(曲面部122A、122B)と定着ベルト102の内周面との間に距離d4の隙間ができる。距離d4は、前述のΔR2と略等しい距離となる。
一方、定着ベルト102の表面と分離板124の先端の離間距離d3は、d3=d2−d4=t−ΔR2=Dであり、必要離間距離となるため、分離板124は、定着ベルト102の表面と接触しない。また、記録用紙P(図2参照)が、ニップ部107から排出されたときに定着ベルト102の表面に巻き付きそうになっても、先端が分離板124の先端に接触して定着ベルト102から分離されるので、定着ベルト102への巻付きが発生しにくくなる。
なお、定着ベルト102を加熱しているときに、位置決め部120が定着ベルト102の内周面と接触していないため、位置決め部120に熱伝導して定着ベルト102の温度が低下するということはない。
図6(a)及び図6(b)は、従来例と本実施形態において、定着ベルト102と分離板124の離間距離の調整値のばらつきを、n数=20の定着装置で測定した結果である。なお、離間距離は、レーザ変位計を用いて定着ベルト102の表面と分離板124の高さの差(段差)を測定し、この測定値から分離板124の厚さを引いて求めている。また、位置決め部120の無い定着装置100を従来例としている。
ここで、必要離間距離Dを中心値0.5mm、許容調整誤差を0.2mmとして、0.3mm<D<0.5mmを規格設定したところ、従来例では、約40%の割合で規格外となった。これは、調整板158が定着ベルト102に接触したとき、または分離板124に調整板158に接触したときに、定着ベルト102が内側に変形し、その変形の度合いが調整板158を定着ベルト102に押し当てる力加減等によってばらつくためと予想される。特に、定着ベルト102が通紙領域において径方向に無張架である場合、そのばらつきはより大きくなると考えられる。
一方、本実施形態の定着装置100では、全て規格内となり、平均値も規格中心に近い0.49mmとなった。これは、本実施形態のように位置決め部120が存在する場合、定着ベルト102の内側への変形度合いのばらつきが従来例と比較して小さく抑えられたためと考えられる。よって、従来例に比べ剥離板124と定着ベルト102の表面との離間距離のばらつきをより抑えることができ、定着ベルト102と剥離板124とが離れすぎることによる記録用紙Pの剥離不良や、定着ベルト102と剥離板124とが接触してしまうことによる定着ベルトの傷の発生をより少なく抑えることができる。
次に、本発明の定着装置及び画像形成装置の第2実施形態を図面に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図7(a)及び図7(b)には、定着装置160が示されている。定着装置160は、前述の定着装置100(図2参照)の押圧パッド116と位置決め部120を、押圧パッド162と位置決め部材164に置き換えたものである。押圧パッド162は樹脂製であり、押圧パッド162と位置決め部材164は別体で構成されている。また、位置決め部材164は、曲率半径がR1の曲面部164Aが形成されている。
位置決め部材164の位置は、剥離板124の位置調整後の定着装置160による定着時に、定着ベルト102と剥離板124の離間距離が必要離間距離D=d5となるように、予め設定されている。なお、定着ベルト102の曲率半径はR2となっており、R1<R2となっている。
次に、本発明の第2実施形態の作用について説明する。
図7(a)に示すように、定着ベルト102と剥離板124の離間距離の調整を行うため、所定の板厚の調整板166が、定着ベルト102と剥離板124の間に挿入され、定着ベルト102の表面に接触される。調整板166が定着ベルト102に接触したとき、定着ベルト102は内側に窪もうとするが、位置決め部材164によって支えられることにより、位置決め部材164が存在しない場合に比べて内側への変形の度合いのばらつきがより小さく抑えられる。これにより、調整板166が位置決めされる。
続いて、剥離板124がスライド移動され、調整板166と接触して位置決めされる。調整板166と剥離板124が接触した後、ネジ128(図2参照)が締結され、剥離板124が固定される。そして、調整板166が引き抜かれ、定着ベルト102と剥離板124の間に、所定の距離の隙間が形成される。
続いて、図7(b)に示すように、定着動作が開始され、定着ベルト102が矢印D方向に回転し加熱されると、定着ベルト102は外側へ向けて撓むようになる。ここで、曲面部164Aの曲率半径R1は変わらないが、定着ベルト102の曲率半径はR2からさらに大きくなるため、曲面部164Aから定着ベルト102が離れ、位置決め部材164と定着ベルト102の間に距離d6の隙間が形成される。
このとき、定着ベルト102と剥離板124の離間距離は、必要離間距離であるd5となるため、剥離板124は、定着ベルト102の表面と接触しない。また、記録用紙P(図2参照)がニップ部107から排出されたときに、定着ベルト102の表面に巻き付きそうになっても、先端が剥離板124の先端に接触して定着ベルト102から引き離されるので、定着ベルト102への巻き付きが発生しにくくなる。
次に、本発明の定着装置及び画像形成装置の第3実施形態を図面に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図8には、定着装置170が示されている。定着装置170は、前述の定着装置100(図2参照)の加圧ロール104を定着ベルト102に接触又は離間させるリトラクト機構部172が設けられている。
リトラクト機構部172は、略への字形状の板金で構成され、加圧ロール104の両端部を回転可能に支持する図示しないベアリングが固定されたアーム部材174を有している。アーム部材174は、定着装置170の筐体106(図示省略)の内側で加圧ロール104の両端部に立設された一対の側板176に、円柱状の支持ピン178によって取り付けられ、矢印R1方向に揺動可能となっている。
側板176の側面には、ボルト180が、側板176の側面と略平行に設けられている。ボルト180は、先端部が、側板176に突設された板状の固定部182の穴部184に締結され、後端部が、図示しない係合部に接着されて、側板176に固定されるようになっている。また、アーム部材174の支持ピン178と反対側の端部には、ボルト180が挿通可能な大きさの穴部186が形成された板状の付勢部188が突設されている。
ここで、ボルト180が付勢部188の穴部186に挿通されると共に、所定の弾性力のバネ190がボルト180に外挿され、さらに、ボルト180の先端部が、穴部184に締結されることにより、固定部182と付勢部188の間にバネ190が配設されている。これにより、アーム部材174がバネ190の付勢力によって下側へ付勢されると、加圧ロール104が、定着ベルト102から離れるようになっている。
一方、アーム部材174の近傍には、略円柱状の支持ピン192を軸として矢印R2方向へ揺動する偏芯カム194が設けられている。偏芯カム194には、所定の歯数のギア部196が設けられている。ギア部196には、所定の歯数の駆動ギア198が噛合している。また、駆動ギア198は、図示しない電源によって駆動される駆動モータ200の正転(時計回り)、逆転(反時計回り)によって、偏芯カム194を揺動するようになっている。
ここで、駆動モータ200が正転ONとなり、駆動ギア198が正転方向へ回転すると、偏芯カム194は上側に揺動する。これにより、偏芯カム194の先端が、アーム部材174の接触部202と接触して、アーム部材174を定着ベルト102側へ揺動させ、加圧ロール104が定着ベルト102に接触する。
また、駆動モータ200が逆転ONとなり、駆動ギア198が逆転方向へ回転すると、偏芯カム194は下側に揺動する。これにより、偏芯カム194が、アーム部材174の接触部202から離れ、アーム部材174が、バネ190で下側へ付勢されて、加圧ロール104が定着ベルト102から離れる。
次に、本発明の第3実施形態の作用について説明する。
図9(a)に示すように、定着ベルト102と加圧ロール104が離間し、且つ定着ベルト102と剥離板124が距離d7で離間した状態で、所定の板厚の調整板204が、定着ベルト102と剥離板124の間に挿入される。そして、調整板204が、定着ベルト102の表面に接触される。このとき、定着ベルト102は内側に窪もうとするが、位置決め部120によって支えられることにより、位置決め部120が存在しない場合に比べて内側への変形の度合いのばらつきが抑えられる。これにより、調整板204が位置決めされる。
続いて、図9(b)に示すように、剥離板124が矢印F方向にスライド移動され、調整板204と接触して位置決めされる。調整板204と剥離板124が接触した後、ネジ128(図2参照)が締結され剥離板124が固定される。この後、調整板204が引き抜かれ、定着ベルト102と剥離板124の間に所定の離間距離の隙間が形成される。
続いて、定着装置のウォームアップが開始されると、定着ベルト102と加圧ロール104が離間した状態で定着ベルト102が回転し加熱される。離間した状態でウォームアップすることで、よりウォームアップタイムを短縮することが可能になる。
続いて、図8及び図9(c)に示すように、リトラクト機構部172の駆動モータ200が正転ONとなり、駆動ギア198が正転方向へ回転して、偏芯カム194が上側に揺動する。これにより、アーム部材174が上側に揺動して、加圧ロール104が定着ベルト102に接触する。ここで、定着ベルト102は、加圧ロール104で加圧されることにより変形して、位置決め部120と定着ベルト102の間に距離d9の隙間が形成され、定着ベルト102の表面と剥離板124の先端の間に必要離間距離Dの隙間が形成される。このため、分離板124は、定着ベルト102の表面と接触しない。また、記録用紙P(図2参照)が、ニップ部107から排出されたときに、定着ベルト102の表面に巻き付きそうになっても、先端が剥離板124の先端に接触して定着ベルト102から引き離されるので、定着ベルト102への巻き付きが発生しにくくなる。
次に、本発明の定着装置及び画像形成装置の第4実施形態を図面に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図10(a)には、定着装置210が示されている。定着装置210は、前述の第3実施形態の定着装置170において、位置決め部120に代えて、押圧パッド116の長手方向に等間隔で樹脂製の位置決め部212(212A、212B、212C)が設けられている。位置決め部212A、212Cは、それぞれ端部側に配置されており、位置決め部212Bは中央部に配置されている。位置決め部212A〜212Cの曲面の曲率半径は、定着ベルト102の曲率半径よりも小さくなっている。
また、温度センサ118は、定着ベルト102の幅方向(長手方向)に所定の間隔で2箇所(118A、118B)設けられており、サーモスタット129は、温度センサ118Aと温度センサ118Bの間に配置されている。ここで、定着ベルト102の幅方向において、位置決め部212A、212B、212C、温度センサ118A、サーモスタット129、温度センサ118Bの配置位置をそれぞれA、B、C、D、E、Fとする。
次に、本発明の第4実施形態の作用について説明する。
図10(b)に示すように、定着ベルト102と剥離板124の離間距離の調整を行うために、調整板158が定着ベルト102と剥離板124の間に挿入され、定着ベルト102の表面に接触される。調整板158が定着ベルト102に接触したとき、定着ベルト102は内側に窪もうとするが、3箇所の位置決め部212A、212B、212Cによって支えられることにより、位置決め部が存在しない場合に比べて内側への変形の度合いのばらつきがより小さく抑えられる。これにより、調整板158が位置決めされる。
また、位置決め部212が複数箇所に設けられているため、位置決め部を部分的に1箇所設けた場合と比べて調整板158の長手方向の傾きが抑えられる。これにより、剥離板124をスライドさせて調整板158に接触させ、剥離板124を固定したときに、定着ベルト102の長手方向各部(両端部、中央部)において、定着ベルト102と剥離板124の離間距離のばらつきが抑えられる。
続いて、定着動作が開始され、定着ベルト102が回転し加熱されると、定着ベルト102は外側へ向けて撓み、定着ベルト102の表面と剥離板124の先端の離間距離は、必要離間距離となる。このとき、位置決め部212A、212B、212Cは、定着ベルト102の内周面と非接触状態になっている。
ここで、図11(a)には、位置決め部212A〜212Cが、定着ベルト102の内周面と非接触状態(本実施形態)の定着ベルト温度のグラフ(T1)と、比較例として、位置決め部212A〜212Cが、定着ベルト102の内周面と接触状態にあるときの定着ベルト温度のグラフ(T2)とが示されている。
図11(a)において、接触状態のグラフT2では、位置決め部212A、212B、212Cの配置位置A、B、Cにおいて温度低下が見られる。これは、熱容量体である位置決め部212A〜212Cが接触することで、定着ベルト102の熱量を吸収するためである。
一方、非接触状態のグラフT1では、温度センサ118A、118B、及びサーモスタット129の配置位置D、F、Eにおいて温度低下がみられることはグラフT2と同様であるものの、配置位置A、B、Cの温度低下は、グラフT2の温度低下と比べて小さく、定着ベルト幅方向全体では、温度分布のばらつきもグラフT2と比べ小さい。このように、位置決め部212A〜212Cを定着ベルト102と非接触とすることで、定着温度の低下が抑制される。
また、図11(b)には、本実施形態の定着ベルト温度のグラフ(T1)と、比較例として、位置決め部212A、212Bを温度センサ118A、118Bと同じ配置位置D、Fの上流側に接触配置させたときの定着ベルト温度のグラフ(T3)とが示されている。
図11(b)において、グラフT3では、定着ベルト102の同一内周上に温度センサ118Aと位置決め部212A、又は温度センサ118Bと位置決め部212Bが接触しているため、配置位置D、Fにおいて、温度低下が見られる。
一方、非接触状態のグラフT1では、温度センサ118A、118B、及びサーモスタット129の配置位置D、F、Eにおいて温度低下がみられるものの、位置決め部212A〜212Cと、温度センサ118A、118B、及びサーモスタット129との配置位置が異なっているため、グラフT3と比べると温度低下は小さい。
次に、本発明の定着装置及び画像形成装置の第5実施形態を図面に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図12(a)には、定着装置220が示されている。定着装置220は、前述の第3実施形態の定着装置170において、位置決め部120に代えて、位置決め部222A、222Bが設けられている。ここで、定着ベルト102の記録用紙Pの通過領域をW2、非通過領域(W2の外側)をW1、W3としたとき、位置決め部222Aは非通過領域W1に、位置決め部222Bは非通過領域W3に配置されている。位置決め部222A、222Bの曲面の曲率半径は、定着ベルト102の曲率半径よりも小さくなっている。
次に、本発明の第5実施形態の作用について説明する。
図12(b)に示すように、定着ベルト102と剥離板124の離間距離の調整を行うために、調整板158が定着ベルト102と剥離板124の間に挿入され、定着ベルト102の表面に接触される。調整板158が定着ベルト102に接触したとき、定着ベルト102は内側に窪もうとするが、2箇所の位置決め部222A、222Bによって支えられることにより、位置決め部が存在しない場合に比べて内側への変形の度合いのばらつきがより小さく抑えられる。これにより、調整板158が位置決めされる。
また、位置決め部222が複数箇所(222A、222B)に設けられているため、位置決め部を部分的に1箇所設けた場合と比べて調整板158の長手方向の傾きが抑えられる。これにより、剥離板124をスライドさせて調整板158に接触させ、剥離板124を固定したときに、定着ベルト102の長手方向各部(両端部、中央部)において、定着ベルト102と剥離板124の離間距離のばらつきが抑えられる。
続いて、定着動作が開始され、定着ベルト102が回転し加熱されると、定着ベルト102は外側へ向けて撓み、定着ベルト102の表面と剥離板124の先端の離間距離は、必要離間距離となる。このとき、仮に、位置決め部222A、222Bが定着ベルト102の内周面と接触することがあっても、位置決め部222A、222Bは、定着が行われる記録用紙P通過領域W2の外側(非通過領域W1、W3)にあるため、通過領域W2の定着温度への影響は位置決め部が通過領域W2の内側にある場合に比べて小さい。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
プリンタ10は、固体の現像剤を用いる乾式の電子写真方式だけでなく、液体現像剤を用いるものであってもよい。また、定着ベルト102の温度の検知手段として、温度センサ118の代わりに熱電対を用いてもよい。
位置決め部120は、定着ベルト102の長手方向に延びる一本の部材であってもよい。なお、この場合は、定着時に定着ベルト102と位置決め部120が非接触状態となるように配置する必要がある。
位置決め部120の断面形状は、円弧状に限られず、多角形状であってもよい。また、調整板158を定着ベルト102の表面に接触させるとき、位置決め部120は、定着ベルト102の内周面に必ずしも接触している必要はなく、調整の許容範囲の中で僅かに定着ベルト102と離間していてもよい。
さらに、位置決め部120の取付け位置は、押圧パッド116の側面116Aだけでなく、各部材の大きさ及び配置位置に応じて、例えば、支柱114の側面や、押圧パッドにフレーム部材を設けて、該フレーム部材に取付けるようにしてもよい。