調節ペプチダーゼ、更には非特異的なペプチダーゼによるペプチド結合の裂開は、in vivoにおける生理活性ペプチド及びペプチド薬剤の不活化及びペプチドクリアランスにおいて主要役割を果たすな機構である。本発明者はペプチド薬の設計に用いる新規なアプローチを発見した。すなわち、ペプチダーゼを阻害するモチーフを生理活性ペプチドに戦略的に共有結合させることより、ペプチドにペプチダーゼ耐性を付与するというアプローチである。すなわちかかるペプチド−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートは、コンジュゲートしていないペプチドよりも長期にわたる血清半減期を示すことができる。場合によっては、半減期の長期化により、治療効果を損なうことなく、ペプチドの投与量を減少させることができる。また、かかるコンジュゲート中のペプチドは、ペプチド受容体が豊富な部位に、特異的かつ効率的に、ペプチダーゼ阻害剤を輸送するのに役立ちうる。またこれにより、当該ペプチダーゼ阻害剤は、それらの活性部位(例えば受容体)で内在性ペプチド分子上のペプチダーゼ活性を阻害できる。
更に、ペプチダーゼ自体が疾患の兆候又は合併症において治療薬の標的である場合、本願明細書に記載のペプチド−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートは、当該疾患又は合併症の治療において二通りのメカニズムで機能する。この場合、当該ペプチド−ペプチダーゼ阻害剤はペプチド受容体及びペプチダーゼの両方を標的とするため、単一の化学物質の使用により全体的な治療効果を向上させることが可能となる。
本願明細書で開示するP−PIコンジュゲートに用いられる成分ペプチドは、特異的若しくは非特異的なペプチダーゼによって分解させるものが挙げられる。本願明細書で開示するP−PIコンジュゲートに用いられる典型的な成分ペプチドは、調節ペプチダーゼによって分解される。幾つかの実施形態では、当該成分ペプチドはペプチドホルモン、ホルモン活性を有するペプチド断片又は化学的、代謝的及び/又はそれ以外の薬物動態学的安定性を付与するペプチドホルモンの構造モチーフである。当該ペプチドホルモンとしては、天然型ペプチドホルモン、並びに従来技術において公知で本願明細書に記載のペプチドホルモンアゴニスト、アナログ、誘導体、ハイブリッドが挙げられる。幾つかの実施形態では、当該成分ペプチドはペプチドホルモンアンタゴニスト、ホルモンのアンタゴニスト活性を有するペプチド断片、又は化学的、代謝的及び/又はその他の薬物動態学的安定性を付与するペプチドホルモンアンタゴニストの構造モチーフである。ペプチドホルモンアンタゴニストはペプチドホルモン受容体アンタゴニスト、並びに従来技術において公知で本願明細書に記載の他のホルモンアンタゴニスト、アナログ、誘導体及びそのハイブリッドが挙げられる。
本願明細書で開示するP−PIコンジュゲートに用いられる成分ペプチダーゼ阻害剤は、特異的なペプチダーゼ、非特異的なペプチダーゼ又は両方の活性を阻害するか又は低下させるものが挙げられる。本願明細書で開示するP−PIコンジュゲートに用いられる成分ペプチダーゼ阻害剤は、P−PIコンジュゲート複合体中(又はそうでない)において、かかる阻害活性を有する。本願明細書で開示するP−PIコンジュゲートに用いられる典型的な成分ペプチダーゼ阻害剤は、調節ペプチダーゼの阻害剤である。当該ペプチダーゼ阻害剤としては、競争的阻害剤、非競争的阻害剤、それ以外の競争的でない阻害剤及び不可逆的な活性部位における阻害剤などが挙げられる。ペプチダーゼ阻害剤としては、限定されないが、小分子の化学物質及びペプチドが挙げられる。本願明細書に記載の成分ペプチダーゼ阻害剤としては、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、脈管ペプチダーゼ阻害剤、内皮変換酵素阻害剤、人間の中立不偏のエンドペプチターゼ阻害剤、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤及びカルボキシペプチダーゼ阻害剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
「ペプチド−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲート」又は「P−PIコンジュゲート」という用語は、少なくとも1つのペプチドと、少なくとも1つのペプチダーゼ阻害剤が連結している複合体を意味する。かかるコンジュゲートの結合としては、共有結合及び/又は非共有結合性結合が包含される。非共有結合性結合はいかなる非共有結合力によって形成されてもよく、疎水性相互作用、イオン(静電的)結合、金属複合体形成、水素結合、ヴァンデルヴァールス力又はそれらの相互作用の2以上の組合せなどが挙げられる。成分ペプチド及び成分ペプチダーゼ阻害剤は、本願明細書に記載されるか又は当該技術分野で公知のいかなる方法で共有結合されてもよく、限定されないがアミド結合又は化学リンカー基などが挙げられる。
ペプチド−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートには、ペプチダーゼ阻害剤がペプチドの主鎖に共有結合するものと、ペプチダーゼ阻害剤がペプチドの側鎖に共有結合するものが包含される。ペプチドとペプチダーゼ阻害剤は、直接コンジュゲートしてもよく、又はリンカー分子によりコンジュゲートしてもよい。ペプチド−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲート化合物は、限定されないが、図1に示されるようにデザインされる。図1に示すように、ペプチド(ペプチドx)は、ペプチドのカルボキシ末端(a)、ペプチドのアミノ末端(b)、ペプチドのポリペプチド鎖へのPIの挿入(c)、又はペプチドのアミノ酸側鎖(d)において、ペプチダーゼ阻害剤(PI)のモチーフにコンジュゲートすることができる。ペプチド中にAla2を有するペプチド−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートにおいては、Ala2はL若しくはD異性体でもよい。本願明細書に記載のように、ペプチドとペプチダーゼ阻害剤との全ての結合は、直接的な相互作用によって形成されてもよく、又はリンカー分子にを介して形成されてもよい。例えばGIPアナログGIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)(配列番号1)を含むP−PIコンジュゲートとしては、限定されないが以下のものが挙げられる。
典型的には、PYYアナログPYY(3−36)を含むP−PIコンジュゲートとしては、限定されないが以下のものが挙げられる。
また、本願明細書に記載のコンジュゲート分子及び方法で有用な成分ペプチドには、PPFペプチドホルモン(PP及びPYYを含む)が包含される。「PP」とは、あらゆる生理的形態のヒト膵臓ペプチドポリペプチド又はその種変異体のことを意味する。すなわち用語「PP」には、ヒトの全長の36アミノ酸ペプチドのPP、及びPPの種変異体(例えばマウス、ハムスター、チキン、ウシ、ネズミ及びイヌPP)の両方が包含される。この意味では、「PP」、「野生型PP」、及び「天然型PP」(すなわち非修飾型PP)は同義的に用いられる。「PYY」とは、あらゆる生理的形態のヒトペプチドYYポリペプチド又はその種変異体を意味する。すなわち用語「PYY」には、ヒトの全長の36アミノ酸ペプチドのPYY、及びPYYの種変異体(例えばマウス、ハムスター、チキン、ウシ、ネズミ及びイヌPP)の両方が包含される。この意味では、「PYY」、「野生型PYY」、及び「天然型PYY」(すなわち非修飾型PP)は同義的に用いられる。特に明記しない限り、PYYアナログペプチドに関して本願明細書において記載されている変更態様は、天然型のヒトPYYの36アミノ酸の配列に基づく。
天然型PPFペプチドホルモンは当該技術分野で公知であり、同様に機能的なPPFペプチドアゴニスト、アナログ、誘導体及びハイブリッドも公知である。特定の天然型PPFペプチド及びペプチドアゴニスト、アナログ、誘導体及びハイブリッドが本願明細書に記載されているが、あらゆるPPFペプチド又はPPFアゴニスト、PPFアナログ、PPF誘導体又は公知技術のPPFハイブリッドは、本願明細書で開示する組成物及び方法と組合せて使用できることを認識すべきである。典型的なPYY成分ペプチドとしては、ヒトPYY(hPYY)YPIKPEAPGEDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY(配列番号2)及びhPYY(3−36)IKPEAPGEDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY(配列番号3)が挙げられる。幾つかの実施形態では、ペプチダーゼ阻害剤はPYY(3−36)の位置2のLys、又はPYY(3−36)アナログの対応するLysに結合していない。
一実施形態では、PPFアゴニスト、アナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型PPFペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を有する。具体的な実施形態では、PPFアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型PPFペプチドが特異的に結合できる受容体アゴニストである。一実施形態では、PPFアナログ及び誘導体は通常、ポリプロリンのモチーフ及びC末端尾部のモチーフなどの少なくとも2つのPYYのモチーフを含んでなる。かかるアナログは通常、米国の特許出願公開番号2006/0094653に記載されており、その開示内容を本発明に援用する。一実施形態では、PPFアナログ、誘導体又はハイブリッドは、天然型のPPF(例えばPYY)と比較し、約20以下、15以下、10以下、5以下、4以下、3以下、2以下又は1以下の置換、付加又は欠失を有するアミノ酸配列を有する。
「PYYモチーフ」は通常、天然型PPFペプチドの(一次、二次又は三次)構造成分であり、生物学的活性にとりきわめて重大である(すなわち当該モチーフの非存在又は妨害により、生物学的活性が実質的に減少する)。PYYのモチーフとしては、天然型PPFペプチドのN末端ポリプロリンタイプIIのモチーフ、天然型PPFペプチドのタイプIIβ−ターンのモチーフ、天然型PPFペプチドのC末端のαへリックス形のモチーフ、及び天然型PPFペプチドのC末端尾部のモチーフが挙げられる。PPFペプチドの若干の一実施形態では、N末端ポリプロリン領域では、天然型PPFペプチドの残基5及び8に対応するアミノ酸は通常、プロリンとして保存される。タイプIIβ−ターンのモチーフは通常、天然型PPFペプチドの残基12−14に対応するアミノ酸を含む。αへリックス形のモチーフが充分な数のアミノ酸残基を含み、αへリックス形のターンが溶液において形成される限り、αへリックス形のモチーフは通常、凡そ天然型PPFペプチドの残基14に対応するアミノ酸からC末端までのいかなる位置まで続いてもよい。αへリックス形のターンが溶液において形成される限り、αへリックス形のモチーフは、天然型のPPファミリー配列中にアミノ酸置換、挿入及び欠失を有してもよい。C末端尾部のモチーフは一般に、天然型PPFペプチドの最後の約10残基に対応するアミノ酸を含む。幾つかの実施形態では、C末端尾部のモチーフは、天然型PPFペプチドの最後の7つ、6つ又は5つの残基に対応するアミノ酸、又はアミノ酸残基32−35に対応するアミノ酸を含む。
典型的なPYYアナログとしては、ポリプロリンモチーフ及び/又はC末端尾部のモチーフに対応しないPYY分子の領域内部に、欠失、挿入及び置換を有するものが挙げられる。例えば位置4、6、7、9、又は10における内部欠失が挙げられる。
本願明細書で開示するP−PIコンジュゲートの使用の典型的なPPFペプチドとしては、限定されないが以下のものが挙げられる:
PYY(1−36)(配列番号2)、PYY(3−36)(配列番号3)、3Leu−PYY(配列番号4)、3Val−PYY(配列番号5)、4Arg−PYY(配列番号6)、4Gln−PYY(配列番号7)、4Asn−PYY(配列番号8)、25Lys−PYY(配列番号9)、34Pro−PYY(配列番号10)、34His−PYY(配列番号11)、1,36Tyr−PYY(配列番号12)、13Pro14Ala−PYY(配列番号13)、31Leu34Pro−PYY(配列番号14)、4des−PYY(配列番号15)、PYY(1−35)(配列番号16)、PYY(1−30)(配列番号17)、PYY(1−25)(配列番号18)、PYY(1−15)(配列番号19)、PYY(1−10)(配列番号20)、PYY(2−36)(配列番号21)、PYY(4−36)(配列番号22)、及びPYY(5−36)(配列番号23)。他の典型的なPPFペプチドとしては、限定されないが以下のものが挙げられる:isocapPKPEAPGEDASPEELARYYASLRAYINLITRQRY(配列番号24)、isocapYPIKPEAPGEDASPEELAQYAADLRRYINMLTRQRY(配列番号25)、IKPEAPGEDAPAEELARYYASLRAYINLITRQRY(配列番号26)、YPIKPEAPGEDASPEELARYYSALRHYINLITRQRY(配列番号27)、IKPEAPGEDASPEELARYYSALRHYINLITRQRY(配列番号28)、isocapIKPEAPGEDASPEELARYYSALRHYINLITRQRY(配列番号29)、PKPEAPGEDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY(配列番号30)、isocapPKPEHPGEDASAEELARYYASLRAYINLITRQRY(配列番号31)、PKPEHPGEDASPEELARYYASLRAYINLITRQRY(配列番号32)、PKPEHPGEDASAEELARYYASLRAYINLITRQRY(配列番号33)、PKPEAPGEDASPEELAKYYASLRAYINLITRQRY(配列番号34)、isocapPKPEAPGEDASPEELAKYYASLRAYINLITRQRY(配列番号35)、PKPEHPGEDAPAEELAKYYASLRAYINLITRQRY(配列番号36)、PKPEHPGEDAPAEELARYYASLRAYINLITRQRY(配列番号37)、オクタン酸IAPEAPGEDASPEELARYYASLRHYLNLVTRQRY(配列番号38)、Octyl−GlyIKPEAPGEDASPEELARYYSALRHYINLITRQRY(配列番号39)、及びYPIRPEAPGEDASPEELARYYASLRHYINLITRQRY(配列番号40)。
P−PIアナログで有用な典型的なPPFアナログ及び誘導体は、米国特許出願公開第2006/0094653、第2006/0135747号及び第2002/0141985号で開示されており、その各々の内容を本発明に援用する。他の典型的なPPFアナログ及び誘導体は、国際公開第03/026591号、第03/057235号及び第2005/077094号(各々の開示内容を本発明に援用する)に記載されている。
本願明細書で開示する組成物及び方法で有用な成分ペプチドホルモンとしては、限定されないがインクレチンホルモンのファミリー、並びにGLP−1、GLP−2、オキシントモジュリン及びエキセンディンなどの員クレチン擬態物が挙げられる。本願明細書で開示する組成物及び方法で有用な成分ペプチドホルモンとしては、GLP−1ペプチドホルモンが挙げられる。本発明の用語「GLP−1」とは、あらゆる生理的形態のヒトグルカゴン様ペプチド−1又はその種変異型を意味する。「GLP−1」という用語には、ヒトのGLP−1(1−37)、GLP−1(7−37)及びGLP−1(7−36)アミド(全長のヒトGLP−1(1−37)及びGLP−1の種変異体(例えば、ネズミ、ハムスター、チキン、ウシ、ネズミ及びイヌGLP−1など)に関する)が包含される。この意味では、「GLP−1」、「野生型GLP−1」、及び「天然型GLP−1」(すなわち修飾されていないGLP−1)は同義的に用いられる。
天然型GLP−1ペプチドホルモンは従来技術において公知であり、hGLP−1(1−37) HDEFERHAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG(配列番号41)、hGLP−1(7−37) HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG(配列番号42)、hGLP−1(7−36)アミド HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR−NH2(配列番号43)、及びfrog GLP−1(fGLP−1) HAEGTYTNDVTEYLEEKAAKEFIEWLIKGKPKKIRYS−OH(配列番号44)、及びHAEGTFTSDVTQQLDEKAAKEFIDWLINGGPSKEIIS−OH(配列番号45)などが挙げられ、機能的ペプチドのアナログ及び誘導体である。ここで使用するGLP−1とは、全ての天然型のGLP−1ペプチドホルモンを指す。特定の天然型GLP−1ペプチド及びペプチドアゴニスト、アナログ、誘導体及びハイブリッドが本願明細書に記載されているが、あらゆるGLP−1ペプチド又はGLP−1アゴニスト、GLP−1アナログ、GLP−1誘導体又は公知技術のGLP−1ハイブリッドは、本願明細書で開示する組成物及び方法と組合せて使用できることを認識すべきである。
一実施形態では、GLP−1ペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型GLP−1ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を有する。具体的な実施形態では、GLP−1ペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型GLP−1ペプチドが特異的に結合できる受容体アゴニストである。かかるGLP−1アナログは公知のようにアミド化されてもよく、又は、特に明記しない限り酸性型であってもよい。
一実施形態では、GLP−1ペプチドのアナログ、誘導体又はハイブリッドは天然型であってもよく、又は、天然型のGLP−1と比較して1つ以上のアミノ酸置換、欠失、変異又は付加を有してもよい。すなわち、GLP−1ペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型のGLP−1と比較して1つ以上のアミノ酸置換、付加又は欠失を有するアミノ酸配列を有してもよい。一実施形態では、GLP−1ペプチドのアナログ、誘導体又はハイブリッドは、天然型のGLP−1(例えばGLP−1(7−37)と比較し、約25以下、20以下、15以下、10以下、5以下、4以下、3以下、2以下又は1以下の置換、付加又は欠失を有するアミノ酸配列有する。
典型的なGLP−1ペプチドのアナログ及び誘導体には、本願明細書において記載されているものや、従来技術において公知のものが包含される。典型的なGLP−1アナログとしては、限定されないが以下のものが挙げられる:
GLP−1(7−35)(配列番号46)、9Gln−GLP−1(7−37)(配列番号47)、D−9Gln−GLP−1(7−37)(配列番号48)、16Thr−18Lys−GLP−1(7−37)(配列番号49)、18Lys−GLP−1(7−37)(配列番号50)、8Gly−GLP−1(7−36)(配列番号51)、8Aib−GLP−1(7−36)(配列番号297)、acetyl−9Lys−GLP−1(7−37)(配列番号52)、9Thr−GLP−1(7−37)(配列番号53)、D−9Thr−GLP−1(7−37)(配列番号54)、9Asn−GLP−1(7−37)(配列番号55)、D−9Asn−GLP−1(7−37)(配列番号56)、22Ser23Arg24Arg26Gln−GLP−1(7−37)(配列番号57)、23Arg−GLP−1(7−37)(配列番号58)、及び24Arg−GLP−1(7−37)(配列番号59)。PPIアナログで有用な典型的なGLP−1アナログ及び誘導体は米国特許第5188666号、第5512549号、第5545618号及び第6747006号において、及び国際公開第91/11457号及び第99/64061号で開示されてもり、それらの開示内容を本願明細書に援用する。
また、本願明細書で開示する組成物及び方法で有用な成分ペプチドホルモンとしては、GLP−2ペプチドホルモンが挙げられる。本発明の用語「GLP−2」とは、あらゆる生理的形態の、ヒトグルカゴン様ペプチド−2又はその種変異型を意味する。GLP−2は33のアミノ酸ペプチドであり、小腸及び大腸の腸内分泌細胞から、GLP−1とともに共分泌される。天然型のGLP−2ペプチドホルモン(例えばラットGLP−2及びそのホモログ、例えばウシGLP−2、ブタGLP−2、デグーGLP−2、ウシ胎児GLP−2、モルモットGLP−2、ハムスターGLP−2、ヒトGLP−2、ニジマスGLP−2及びニワトリGLP−2など)は当該技術分野で公知であり、機能的ペプチドのアナログ及び誘導体として機能する。ヒトのGLP−2のアミノ酸配列はHADGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIETKITD(配列番号60)であり、カエルGLP−2のアミノ酸配列はHAEGTFTNDMTNYLEEKAAKEFVGWLIKGRP(配列番号61)である。特定のGLP−2天然型ペプチド、ペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドが本願明細書に記載されているが、公知の生物学的活性を呈するいかなる公知のGLP−2ペプチドも、GLP−2アナログ、GLP−2誘導体及びGLP−2ハイブリッドも、本願明細書で開示する組成物及び方法と組合せて使用できると認識すべきである。
一実施形態では、GLP−2ペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型GLP−2ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を有する。具体的な実施形態では、GLP−2ペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型GLP−2ペプチドが特異的に結合できる受容体アゴニストである。幾つかの実施形態では、GLP−2アナログ、誘導体及びハイブリッドには、位置2でGlyをAlaと置換することによって、DPP−IV耐性を付与した、ラット又はヒトのGLP−2が包含される。PPIアナログで有用な典型的なGLP−2ペプチドのアナログ及び誘導体は米国特許番号5789379及び5990077に記載されているものが挙げられ、それらの開示内容を本願明細書に援用する。
一実施形態では、GLP−2ペプチドのアナログ、誘導体又はハイブリッドは、天然型若しくは天然に存在するエキセンディンと比較して1つ以上のアミノ酸置換、欠失、変異又は付加を有してもよいすなわちGLP−2ペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは天然型のGLP−2と比較して1つ以上のアミノ酸置換、加算又は削除を有するアミノ酸配列を有してもよい一実施形態では、GLP−2ペプチドのアナログ、誘導体又はハイブリッドは、天然型のGLP−2と比較し約25以下、20以下、15以下、10以下、5以下、4以下、3以下、2以下又は1以下の置換、加算又は削除を有するアミノ酸配列を有する。
また、本願明細書で開示する組成物及び方法で有用な成分ペプチドホルモンには、オキントモジュリン(OXM)ペプチドホルモンが包含される。本発明の用語「OXM」は、あらゆる生理的形態のヒトオキントモジュリン又はその種変異型を意味する。OXMは、グルカゴンの29のアミノ酸配列、及びそれに続く8アミノ酸のカルボキシ端末延長部を有する、37のアミノ酸ペプチドである。例えば、ヒトOXMのアミノ酸配列はHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNTKRNRNNIA(配列番号62)である。天然型OXMペプチドホルモンは当該技術分野で公知であり、同様に当該機能を有するペプチドのアナログ及び誘導体も公知である。特定の天然型OXMペプチド、ペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドが本願明細書に記載されているが、公知の生物学的活性を呈するいかなる公知のOXMペプチド、OXMアナログ、OXM誘導体、OXMハイブリッドも、本願明細書で開示する組成物及び方法と組合せて使用できると認識すべきである。一実施形態では、OXMペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型OXMペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を有する。具体的な実施形態では、OXMペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型OXMペプチドが特異的に結合できる受容体アゴニストである。
一実施形態では、OXMペプチドのアナログ、誘導体又はハイブリッドは、天然型若しくは天然に存在するOXMと比較して、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、変異又は付加を有してもよい。すなわちOXMペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型のOXMと比較して1つ以上のアミノ酸置換、加算又は削除を有するアミノ酸配列を有してもよい。一実施形態では、OXMペプチドのアナログ、誘導体又はハイブリッドは、天然型のOXMのアミノ酸配列と比較し、約30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、5以下、4以下、3以下、2以下又は1以下の置換、加算又は削除を有する。
また、本願明細書で開示する組成物及び方法で有用な成分ペプチドホルモンには、エキセンディンペプチドホルモンが包含される。「エキセンディン」とは、アメリカドクトカゲ、アリゾナトカゲ及びメキシコドクトカゲ、並びにその変種の唾液中に存在するペプチドホルモンを意味する。エキセンディン−3はHeloderma horridumの唾液に存在し、エキセンディン−4はHeloderma suspectumの唾液に存在する(Engら(1990) J.Biol.Chem.265:20259−20262、Engら(1992) J.Biol.Chem.267:7402−7405)。エキセンディンは、幾つかのグルカゴン様ペプチドファミリーのメンバーと配列類似性を有し、最高53%の同一性(GLP−1)を有することが知られている(Gokeら(1993) J.Biol.Chem.268:19650−19555)。この意味で「エキセンディン」、「野生型エキセンディン」、「天然型エキセンディン」(すなわち修飾されていないエキセンディン)の用語は同義的に用いられる。
天然型エキセンディンペプチドホルモンは当該技術分野で公知であり、同様に、その機能を有するエキセンディンペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドも公知である。エキセンディン−3のアミノ酸配列はHSDGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS(配列番号63)であり、エキセンディン−4のアミノ酸配列はHGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS(配列番号64)である。特定の天然型エキセンディンペプチド、ペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドが本願明細書に記載されているが、公知の生物学的活性を呈するいかなる公知のエキセンディンペプチド、エキセンディンのアナログ、エキセンディン誘導体及びエキセンディンハイブリッドも、本願明細書で開示する組成物及び方法と組合せて使用できると認識すべきである。
一実施形態では、エキセンディンペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型エキセンディンペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を有する。具体的な実施形態では、エキセンディンペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型エキセンディンペプチドが特異的に結合できる受容体アゴニストである。エキセンディンのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、特に明記しない限り公知のようにアミド化されてもよく、又は酸の形態であってもよい。一実施形態では、エキセンディンのアナログ、誘導体又はハイブリッドは天然型若しくは天然に存在するエキセンディンと比較し、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、変異又は付加を有してもよい。すなわちエキセンディンのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然に存在するエキセンディン(例えばエキセンディン−4)と比較して、1つ以上のアミノ酸置換、加算又は削除を有するアミノ酸配列を有してもよい。一実施形態では、エキセンディンのアナログ、誘導体又はハイブリッドは、天然に存在するエキセンディン(例えばエキセンディン−4)のアミノ酸配列と比較して、約30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、5以下、4以下、3以下、2以下又は1以下の置換、付加又は欠失を有する。
典型的なエキセンディンのアナログとしては、限定されないが、エキセンディン−4(1−30)(配列番号65)、エキセンディン−4(1−28)(配列番号66)、14Leu25Phe−エキセンディン−4(配列番号67)、5Ala14Leu25Phe−エキセンディン−4(配列番号68)、14Leu22Ala25Phe−エキセンディン−4(配列番号69)、14Leu−エキセンディン−4(1−28)(配列番号70)、14Leu25Pheエキセンディン−4(1−28)(配列番号71)、14Leu25Pheエキセンディン−4(1−28)(配列番号72)及び14Leu(22Ala)、25Pheエキセンディン−4(1−28)(配列番号73)などが挙げられる。他の典型的なエキセンディンのアナログ及び誘導体は、米国特許番号6858576号、第6956026号及び第6989366号で開示されており、それらの開示内容を本願明細書に援用する。
付加的な典型的なエキセンディンアゴニストは米国特許出願第10/181102号及び国際公開第99/07404号に記載されており、例えばそれらの特許出願の式(I)、式(II)及び式(III)の化合物が包含され、それらの開示内容を参照によって本願明細書に援用する。
他のエキセンディンアゴニストは米国特許出願第09/554533号及び国際公開第99/25727号に記載されており、その開示内容を本発明に援用する。更に他のエキセンディンアゴニストは米国特許出願番号第09/554531号及び国際公開第99/25728号に記載されており、それらの開示内容を、参照により本願明細書に援用する。更に他のエキセンディンアゴニストは、米国特許出願公開第2004/0209803号、第2004/0266692号、第2005/0043238号及び第2005/0215469号に記載されており、それらの開示内容を本願明細書に援用する。
また、本願明細書で開示する組成物及び方法で有用な成分ペプチドホルモンには、GIPペプチドホルモンが包含される。「GIP」とは、いかなる種から得られるか若しくは由来する胃抑制ペプチド又はグルコース依存性のインシュリン分泌性ペプチドホルモンを意味する。「GIP」(全長ヒトGIP(1−42)に関する)という用語には、hGIP(1−42)酸、hGIP(1−42)アミド、GIP(1−30)酸、GIP(1−30)アミド、GIP(1−14)、GIP(19−30)、GIP(1−11)及びGIPの種変異体(例えばマウス、ハムスター、ニワトリ、ウシ、ラット及びイヌなど)が包含される。ヒトGIP(hGIP)のアミノ酸配列はYAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHNITQ(配列番号74)である。ラットGIPのアミノ酸配列はYAEGTFISDYSIAMDKIRQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHNLTQ(配列番号75)である。マウスGIPのアミノ酸配列はYAEGTFISDYSIAMDKIRQQDFVNWLLAQRGKKSDWKHNITQ(配列番号76)である。ブタGIPのアミノ酸配列はYAEGTFISDYSIAMDKIRQQDFVNWLLAQKGKKSDWKHNITQ(配列番号77)である。ウシGIPのアミノ酸配列はYAEGTFISDYSIAMDKIRQQDFVNWLLAQKGKKSDWIHNITQ(配列番号78)である。この意味では、「GIP」、「野生型GIP」、及び「天然型GIP」(すなわち修飾されていないGIP)の用語は同義的に用いられる。
天然型GIPペプチドホルモンは当該技術分野で公知であり、同様にその機能を有するペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドも公知である。特定の天然型GIPペプチド、GIPペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドが本願明細書に記載されているが、公知の生物学的活性を呈するいかなる公知のGIPペプチド、GIPアナログ、GIP誘導体及びGIPハイブリッドも、本願明細書で開示する組成物及び方法に使用できると認識すべきである。一実施形態では、GIPペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型GIPペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を有する。具体的な実施形態では、GIPペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型GIPペプチドが特異的に結合できる受容体アゴニストである。
幾つかの実施形態では、使用されるGIPのアナログ、誘導体又はハイブリッドには、ヒトGIP(1−42)又はhGIP(1−30)と少なくとも約65%の相同性を有し、GIP活性を有するもが包含される。典型的なGIPアナログは、天然型のGIP(1−30)、GIP(1−26)、GIP(1−39)、GIP(1−14)、GIP(19−30)、GIP(19−26)、GIP(19−39)又はGIP(1−42)の分子の全長に対して、各々少なくとも50%の配列同一性を有するものであり、本願明細書に記載の組成物及び方法に用いられる更なる実施形態として本発明に包含される。幾つかの実施形態では、使用するGIPアナログ、誘導体又はハイブリッドには、GIP(1−42)のN末端から少なくとも15のアミノ酸残基を含んでなるものが包含され、位置1から3で最低1つのアミノ酸置換又は変異を有し、生物学な活性を有する。例えば、少なくとも1つのリジン残基のεアミノ基における脂肪酸付加が、分子中に存在する若しくは導入された変更態様が挙げられる。かかる変更態様としては、GIPのTyr1−グルシトール(例えばTyr1−グルシトールGIP(1−42)又はTyr1−グルシトールGIP(1−30))が挙げられる。目的のGIPアナログとしては、1、2及び/又は3位でのD−アミノ酸置換、及び/又はN末端への糖付加、アルキル化、アセチル化若しくはアシル化、又は本願明細書に記載の他のN末端修飾からなる群から選択される置換又は変異を含むものが挙げられる。更なる目的の物質としては、2又は3位のアミノ酸がリジン、セリン、4−アミノブチルアミノ酸、Aib、D−アラニン、ザルコシン又はプロリンで置換されたアナログである。
一実施形態では、GIPアナログ、誘導体又はハイブリッドは天然型若しくは天然に存在するGIPと比較して、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、変異又は付加を有してもよい。すなわちGIPアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型のGIPと比較して、1つ以上のアミノ酸置換、加算又は削除を有するアミノ酸配列を有してもよい。一実施形態では、GIPアナログ、誘導体又はハイブリッドは、天然型のGIPのアミノ酸配列と比較し、約30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、5以下、4以下、3以下、2以下又は1以下の置換、付加又は欠失を有する。
典型的なGIPアナログとしては、限定されないが以下のものが挙げられる:
hGIP(1−30) YAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQK(配列番号79)、GIP(1−26) YAEGTFISDYSIAMDKI HQQDFVNWL(配列番号80)、GIP(1−14) YAEGTFISDYSIAM(配列番号81)、GIP(1−11) YAEGTFISDYS(配列番号82)、GIP(19−30) QQDFVNWLLAQK(配列番号83)、GIP(19−26) QQDFVNWL(配列番号84)、GIP(1−39) YAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHN(配列番号85)、GIP(19−39) QQDFVNWLLAQKGKKNDWKHN(配列番号86)、GIP(1−42) YAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHNITQ(配列番号87)、D2−Ala−GIP(1−42)(配列番号88)、D−Ala2−GIP(1−30)(配列番号293)、D−Ala2Leu14−GIP(1−30)(配列番号294)、及びLeu14−GIP(1−30)(配列番号295)。他の典型的なGIPペプチドのアナログ及び誘導体は、米国特許第6410508号及び第6921748号、米国特許出願公開第2003/0232761号、第2005/0272652号及び第2005/0277590号において開示され、それらの開示内容を本願明細書に援用する。
本願明細書で開示する組成物及び方法で有用な成分ペプチドホルモンとしては、アミリン、アドレノメデュリン(ADM)、カルシトニン(CT)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)。インテルメジン(別名「AFP−6」)及びそれらの関連ペプチドなどのアミリンファミリーのペプチドホルモンが挙げられる。天然型アミリンファミリーペプチドホルモンは当該技術分野で公知であり、同様にその機能を有するアミリンファミリーペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドも公知である。特定の天然型アミリンファミリーペプチド、アナログ、誘導体及びハイブリッドが本願明細書に記載されているが、公知のホルモン活性を呈するいかなる公知のアミリンファミリーペプチドも、アミリンファミリーペプチドのアナログ、アミリンファミリーペプチド誘導体及びアミリンファミリーペプチドハイブリッドも、本願明細書で開示する組成物及び方法に使用できると認識すべきである。
また、本願明細書で開示する組成物及び方法で有用な成分ペプチドホルモンには、アミリンペプチドホルモンが包含される。「アミリン」とは、アミリンと呼ばれるヒトペプチドホルモン及びその種変異体のことを意味する。アミリンは通常栄養の取り込みに応答して、膵臓β細胞によって、インシュリンと共分泌される37アミノ酸のポリペプチドホルモンである(Koudaその他(1992) Lancet 339:1179−1180)。この意味で、「アミリン」、「野生型アミリン」及び「天然型アミリン」(すなわち修飾されていないアミリン)の用語は同義的に用いられる。
天然型アミリンペプチドは従来技術において公知であり、同様に、その機能を有するアミリンペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドも公知である。ヒトアミリン(h−アミリン)のアミノ酸配列はKCNTATCATQRLANFLVHSSNNFGAILSSTNVGSNTY(配列番号89)であり、ラットアミリン(r−アミリン)のアミノ酸配列はKCNTATCATQRLANFLVRSSNNLGPVLPPTNVGSNTY(配列番号90)である。特定の天然型アミリンペプチド、ペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドが本願明細書に記載されているが、公知のホルモン活性を呈するいかなる公知のアミリンペプチド、アミリンペプチドのアナログ、アミリンペプチド誘導体及びアミリンペプチドハイブリッドも、本願明細書で開示する組成物及び方法に使用できると認識すべきである。
一実施形態では、アミリンペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型アミリンペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を有する。具体的な実施形態では、アミリンペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型アミリンが特異的に結合できる受容体アゴニストである。アミリンペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、公知のようにアミド化されてもよく、又は酸の形態であってもよい。
一実施形態では、アミリンのアナログ、誘導体又はハイブリッドは、天然型若しくは天然に存在するアミリンと比較して、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、変異又は付加を有してもよい。すなわちアミリンのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然に存在するアミリンと比較して1つ以上のアミノ酸置換、付加又は欠失を有するアミノ酸配列を有してもよい。一実施形態では、アミリンのアナログ、誘導体又はハイブリッドは、天然に存在するアミリンと比較し、約30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、5以下、4以下、3以下、2以下又は1以下の置換、付加又は欠失を有するアミノ酸配列を有する。
本願明細書で開示する組成物及び方法に用いられるアミリンのアナログとしては、米国特許第5686411号、第6114304号及び第6410511号に記載されているものが挙げられ、それらの全開示内容を参照によに本願明細書に援用する。典型的な化合物としては、以下の式の化合物が挙げられる:
1A1−X−Asn−Thr−5Ala−Thr−Y−Ala−Thr−10Gln−Arg−Leu−B1−Asn−15Phe−Leu−C1−D1−E1−20F1−G1−Asn−H1−Gly−25I1−J1−Leu−K1−L1−30Thr−M1−Val−Gly−Ser−35Asn−Thr−Tyr−Z(配列番号91)、
式中、A1はLys、Ala、Ser又は水素であり、B1はAla、Ser又はThrであり、C1はVal、Leu又はIleであり、D1はHis又はArgであり、E1はSer又はThrであり、F1はSer、Thr、Gln又はAsnであり、G1はAsn、Gln又はHisであり、H1はPhe、Leu又はTyrであり、I1はAla又はProであり、J1はIle、Val、Ala又はLeuであり、K1はSer、Pro、Leu、Ile又はThrであり、L1はSer、Pro又はThrであり、M1はAsn、Asp又はGlnであり、X及びYは各々独立に、分子内結合の形成のために各々化学結合できる側鎖を有するアミノ酸残基から選択され、Zはヒドロキシ(アミノ)アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルオキシ、アリールオキシ又はアラルキルオキシ基である。典型的なアミリンアナログとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる:
des−1Lys−h−アミリン(配列番号92)、28Pro−h−アミリン(配列番号93)、25,28,29Pro−h−アミリン(配列番号94)、18Arg25,28Pro−h−アミリン(配列番号95)、des−1Lys18Arg25,28Pro−h−アミリン(配列番号96)、25Pro26Val28,29Pro−h−アミリン(配列番号97)、18Arg25,28,29Pro−h−アミリン(配列番号98)、des−1Lys18Arg25,28,29Pro−h−アミリン(配列番号99)、des−1Lys25,28,29Pro−h−アミリン(配列番号100)、23Leu25Pro26Val28,29Pro−h−アミリン(配列番号101)、23Leu25Pro26Val28Pro−h−アミリン(配列番号102)、des−1Lys23Leu25Pro26Val28Pro−h−アミリン(配列番号103)、18Arg23Leu25Pro26Val28Pro−h−アミリン(配列番号104)、18Arg23Leu25,28,29Pro−h−アミリン(配列番号105)、18Arg23Leu25,28Pro−h−アミリン(配列番号106)、17Ile23Leu25,28,29Pro−h−アミリン(配列番号107)、17Ile25,28,29Pro−h−アミリン(配列番号108)、des−1Lys17Ile23Leu25,28,29Pro−h−アミリン(配列番号109)、17Ile18Arg23Leu−h−アミリン(配列番号110)、17Ile18Arg23Leu26Val29Pro−h−アミリン(配列番号111)、17Ile18Arg23Leu25Pro26Val28,29Pro−h−アミリン(配列番号112)、13Thr21His23Leu26Ala28Leu29Pro31Asp−h−アミリン(配列番号113)、13Thr21His23Leu26Ala29Pro31Asp−h−アミリン(配列番号114)、des−1Lys13Thr21His23Leu26Ala28Pro31Asp−h−アミリン(配列番号115)、13Thr18Arg21His23Leu26Ala29Pro31Asp−h−アミリン(配列番号116)、13Thr18Arg21His23Leu28,29Pro31Asp−h−アミリン(配列番号117)、及び13Thr18Arg21His23Leu25Pro26Ala28,29Pro31Asp−h−アミリン(配列番号118)。
幾つかの実施形態では、本願明細書で開示する組成物及び方法に用いられるアミリンのアナログ及び誘導体は、米国特許出願第60/543275号、及び国際公開第2006/083254号において記載されているものが挙げられ、それらの開示内容を本願明細書に援用する。かかるアミリンのアナログ及び誘導体は、少なくとも、アミリン又はカルシトニンのループ領域及びそのアナログ、カルシトニンのαへリック領域の少なくとも一部のαへリックス領域若しくはそのアナログ、又はアミリンαへリックス領域の一部及びカルシトニンαへリックス領域を有するαへリックス領域若しくはそれらのアナログ、並びに、アミリン又はカルシトニン又はそのアナログのC末端尾部を含んでなり、但し、カルシトニン又はカルシトニンアナログのC末端尾部はプロリン、ヒドロキシプロリン(Hyp)、ホモセリン(Hse)又はHseの誘導体ではない。したがって、かかるペプチドは本明細書において「LHC」(ループへリックスC末端)ペプチドと称される。典型的なLHCアミリンペプチドとしては、限定されないが、KCNTATCVLGRLSQELHRLQTYPRTNTGSNTY(配列番号119)、イソカプロリル−CNTATCVLGRLSQELHRLQTYPRTNTGSNTY(配列番号120)、CSNLSTCATQRLANELVRLQTYPRTNVGSNTY(配列番号121)、KCNTATCATQRLANELVRLQTYPRTNVGSNTY(配列番号122)、及びCSNLSTCVLGRLSQELHRLQTYPRTNTGSNTY(配列番号123)などが挙げられる。他の典型的なアミリンのアナログ及び誘導体は、米国特許番号6087334及び第6936584号で開示され、それらの開示内容を本願明細書に援用する。
また、本願明細書で開示する組成物及び方法において有用な成分ペプチドとしては、例えは米国特許第5625032号及び第5580953号に記載のアミリンアンタゴニストペプチドが挙げられ、それらの開示内容を本願明細書に援用する。アミリンアンタゴニストはN末端でアセチル化されてもよく、又はアセチル化されなくともよく、また当該分子はアミドの形態であってもよく、酸の形態であってもよい。アミリンアンタゴニストの例として、限定されないが、アセチル−ATQRLANELVRLQTYPRTNVGSNTY(配列番号124)、ATQQLANQLVRLQTYPRTNVGSNTY(配列番号125)、ATQLLANQLVRLQTYPRTNVGSNTY(配列番号126)、ATQRLANQLVRLQTYPRTNVGSNTY(配列番号127)、ATQLLANELVRLQTYPRTNVGSNTY(配列番号128)、及びATQQLANELVRLQTYPRTNVGSNTY(配列番号129)が挙げられる。
また、本願明細書で開示する組成物及び方法に有用な成分ペプチドホルモンとしては、ADMペプチドが挙げられる。「アドレノメデュリン」又は「ADM」は、ヒトペプチドホルモン及びその種変異型のことを意味する。ADMは連続的な酵素分解及びアミド化による185アミノ酸のプレプロホルモンから生じる。このプロセスは52のアミノ酸性生理活性ペプチドの生成により終了する。公知の生物学的活性を呈するいかなる公知のADMペプチド、アナログ、誘導体又はハイブリッドも、本願明細書で開示する組成物及び方法と組合せて使用できる。一実施形態では、ADMペプチド、アナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型ADMペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を有する。具体的な実施形態では、ADMペプチド、アナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型のADMが特異的に結合できる受容体アゴニストである。
また、本願明細書で開示する組成物及び方法に有用な成分ペプチドホルモンとしては、カルシトニン(CT)ペプチドが挙げられる。「カルシトニン」又は「CT」には、ヒトペプチドホルモン及びその種変異体(サーモンカルシトニン(sCT))が包含される。CTは、大分子のプロホルモンから生じる32のアミノ酸ペプチドである。単一のジスルフィド結合を含み、アミノ末端に環状構造を形成する。天然型CTペプチドは従来技術において公知であり、同様に、その機能を有するCTペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドも公知である。ヒトのCT(hCT)のアミノ酸配列はCGNLSTCMLGTYTQDFNKFHTFPQTAIGVGAP(配列番号130)であり、sCTのアミノ酸配列はCSNLSTCVLGKLSQELHKLQTYPRTNTGSGTP(配列番号131)である。公知の生物学的活性を示す公知のいかなるCTペプチドのアナログ、誘導体又はハイブリッドも、本願明細書で開示する組成物及び方法と組合せて使用できる。一実施形態では、CTペプチド、アナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型CTペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を有する。具体的な実施形態では、CTペプチド、アナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型のCTが特異的に結合できる受容体アゴニストである。CTペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、公知のようにアミド化されてもよく、又は酸の形態であってもよい。
一実施形態では、CTアナログ、誘導体又はハイブリッドは、天然型若しくは天然に存在するCTと比較して、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、変異又は付加を有してもよい。すなわちCTアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型のCT(例えばsCT)と比較して1つ以上のアミノ酸置換、加算又は削除を有するアミノ酸配列を有してもよい。一実施形態では、CTアナログ、誘導体又はハイブリッドは、天然型のCT(例えばsCT)のアミノ酸配列と比較し、約25以下、20以下、15以下、10以下、5以下、4以下、3以下、2以下又は1以下の置換、加算又は欠失を有する。
典型的なCTアナログとしては、限定されないが8Gly−CT(配列番号132)、22Leu−CT(配列番号133)、2Gly3Ser8Gly22des−Tyr−CT(配列番号134)、14Gln−sCT(配列番号135)、18Arg−sCT(配列番号136)、11,18Arg−sCT(配列番号137)、14Gln18Arg−sCT(配列番号138)、及び14Gln11,18Arg−sCT(配列番号139)が挙げられる。他の典型的なCTアナログ及び誘導体は、米国特許第4652627号、第4606856号、第4604238号、第4597900号、第4537716号、第4497731号、第4495097号、第4444981号、第4414149号、第4401593号及び第4397780号で開示されてもい、それらの開示内容を本願明細書に援用する。
また、本願明細書で開示する組成物及び方法に有用な成分ペプチドホルモンとしては、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が挙げられる。「カルシトニン遺伝子関連ペプチド」又は「CGRP」は、いかなる生理的形態のヒトペプチドホルモン及びその種変異体のことを意味する。CGRPは37アミノ酸ペプチドであり、カルシトニンpre−mRNAによりコードされ、選択的にスプライシングされて発現する。公知の生物学的活性を呈する、公知のいかなるCGRP、CGRPのアナログ、誘導体又はハイブリッドも、本願明細書で開示する組成物及び方法と組合せて使用できる。一実施形態では、CGRPペプチド、アナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型CGRPの少なくとも1つのホルモン活性を有する。具体的な実施形態では、CGRPペプチド、アナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型CGRPが特異的に結合できる受容体アゴニストである。CGRPペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、公知のようにアミド化されてもよく、又は酸の形態であってもよい。
一実施形態では、CGRPのアナログ、誘導体又はハイブリッドは天然型若しくは天然に存在するCGRPと比較して、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、変異又は付加を有してもよい。すなわちCGRPのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然に存在するCGRPと比較して1つ以上のアミノ酸置換、加算又は削除を有するアミノ酸配列を有してもよい。一実施形態では、CGRPのアナログ、誘導体又はハイブリッドは、天然に存在するCGRPのアミノ酸配列と比較し、約30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、5以下、4以下、3以下、2以下又は1以下の置換、付加又は欠失を有する。
典型的なCGRPアナログとしては、限定されないが、36D−Ser−CGRP(配列番号140)、36D−Thr−CGRP(配列番号141)、36D−Asp−CGRP(配列番号142)、36D−Asn−CGRP(配列番号143)、36Ser−CGRP(配列番号144)、36Hse−CGRP(配列番号145)、36Asp−CGRP(配列番号146)、36Thr−CGRP(配列番号147)、及び36Asn−CGRP(配列番号148)が挙げられる。他の典型的なCGRPのアナログ及び誘導体は、米国特許第4697002号及び第4687839号(本願明細書に援用する)で開示されている。
また、本願明細書で開示する組成物及び方法に有用な成分ペプチドホルモンとしては、インテルメジン又はAFP−6ペプチドが挙げられる。「インテルメジン」又は「AFP−6」とは、いかなる生理的形態のヒトペプチドホルモン及びその種変異型のことを意味する。天然型AFP−6ペプチドは公知であり、同様にその機能を有するAFP−6ペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドも公知である。ヒトAFP−6(又はインテルメジン)のアミノ酸配列はTQAQLLRVGCVLGTCQVQNLSHRLWQLMGPAGRQDSAPVDPSSPHSY(配列番号149)である。公知の生物学的活性を呈する、公知のいかなるAFP−6ペプチド、アナログ、誘導体又はハイブリッドも、本願明細書で開示する組成物及び方法と組合せて使用できる。一実施形態では、AFP−6ペプチド、アナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型AFP−6の少なくとも1つのホルモン活性を有する。具体的な実施形態では、AFP−6ペプチド、アナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型AFP−6が特異的に結合できる受容体アゴニストである。AFP−6ペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、公知のようにアミド化されてもよく、又は酸の形態であってもよい。
典型的なAFP−6アナログとしては、限定されないが、VGCVLGTCQVQNLSHRLWQLMGPAGRQDSAPVDPSSPHSY(配列番号150)、RVGCVLGTCQVQNLSHRLWQLMGPAGRQDSAPVDPSSPHSY(配列番号151)、GCVLGTCQVQNLSHRLWQLMGPAGRQDSAPVDPSSPHSY(配列番号152)、CVLGTCQVQNLSHRLWQLMGPAGRQDSAPVDPSSPHSY(配列番号153)、TQAQLLRVGCVLGTCQVQNLSHRLWQLRQDSAPVDPSSPHSY(配列番号154)、及びTQAQLLRVGCVLGTCQVQNLSHRLWQLDSAPVDPSSPHSY(配列番号155)が挙げられる。他の典型的なAFP−6アナログ及び誘導体は、米国特許第6965013号及び国際公開第2004/048547号及び第2006/042242号で開示されており、それらの開示内容を参照により本願明細書に援用する。
また、本願明細書で開示する組成物及び方法に有用な成分ペプチドホルモンとしては、コレシストキニン(CCK)ホルモンのメンバー(CCKアゴニストを含む)が挙げられる。「CCK」とは、ヒトペプチドホルモン及びその種変異型のことを意味する。より具体的には、CCKはヒトにおいて最初に同定された33アミノ酸の配列であって、ブタ、ラット、チキン、チンチラ、イヌ及びヒトにおいては、8アミノ酸のin vivoC末端断片(CCK−8)を有することが報告されている。他の種変異型としては、ブタ、イヌ及びモルモットに存在する39アミノ酸の配列、及びネコ、イヌ及びヒトに存在する58アミノ酸の配列、及びCCK及びガストリンに相応する47アミノ酸の配列が挙げられる。C末端硫酸化オクタペプチド配列(CCK−8)は、多くの種にわたり比較的よく保存されており、齧歯動物の周辺の生物学的活性を有する最小限配列であってもよい。すなわち用語「CCK−33」は通常、ヒトCCK(1−33)KAPSGRMSIVKNLQNLDPSHRISDRDYMGWMDF(配列番号156)のことを指し、一方、CCK−8(CCK(26−33))は通常、特に明記しない限り、硫酸化された、若しくはされないC末端オクタペプチドのことを指す。硫酸化されたCCK−8はアミノ酸配列DY(SO3)MGWMDF(配列番号157)を有する。更に、ペンタガストリン又はCCK−5はC末端ペプチドCCK(29−33)GWMDF(配列番号158)のことを指し、CCK−4はC末端テトラペプチドCCK(30−33)WMDF(配列番号159)のことを指す。しかしながら、本願明細書で用いられるCCKとしては通常、CCK−33、CCK−8、CCK−5及びCCK−4などの、全ての天然型ホルモンのバリエーションが挙げられ、特に明記しない限り、硫酸化された若しくは硫酸化されない形態であってもよい。CCKs及びその様々なアナログは、従来技術において公知である。
CCKアナログの様々なin vivo及びin vitroスクリーニング方法が公知である。例としては、CCK様の活性を解析しようとする化合物を迅速にイヌ又はモルモットに静注した後、胆嚢を縮小させることを含んでなるin vivoアッセイ、並びに、ウサギ胆嚢のストリップを使用して測定するin vitroアッセイが挙げられる。E.g.,Walsh,“Gastrointestinal Hormones”,In Physiology of the Gastrointestinal Tract(3d ed.1994、Raven Press,New York)を参照。
典型的なCCKs及びCCKアナログとしては、限定されないが、DY(SO3H)MGWMDF(配列番号157)、DYMGWMDF(配列番号160)、MGWMDF(配列番号161)、GWMDF(配列番号158)、WMDF(配列番号159)、KDY(SO3H)MGWMDF(配列番号162)、KDYMGWMDF(配列番号163)、KMGWMDF(配列番号164)、KGWMDF(配列番号165)及びKWMDF(配列番号166)が挙げられる。公知のように、かかるCCKペプチドはアミド化されてもよく、又は任意に酸の形態であってもよい。
また、本願明細書で開示する組成物及び方法に有用な成分ペプチドホルモンとしては、グレリンが挙げられる。幾つかの実施形態では、当該ペプチドは国際公開第01/87335号及び第02/08250号に記載されているようなグレリンアンタゴニストである。グレリンアンタゴニストは、GHS(成長ホルモン分泌促進物質受容体)アンタゴニストとしても公知である。したがって、本発明で提供される組成物及び方法には、グレリンアンタゴニストの代わりにGHSアンタゴニストの使用が包含される。
また、本願明細書で開示する組成物及び方法に有用な成分ペプチドホルモンとしては、レプチンファミリーのペプチドホルモンが挙げられる。「レプチン」とは、あらゆる種に由来する天然に存在するレプチン、並びに天然に存在するレプチン及びその変異体の、生物学的活性を有するD−アイソフォーム若しくはその断片、並びに上記の任意の組合せのことを意味する。レプチンは、米国特許第6001968号にて説明されるような、肥満遺伝子からのポリペプチド生成物である。天然型レプチンファミリーのペプチドホルモンは当該技術分野で公知であり、同様に、その機能を有するペプチドのアナログ、誘導体及びハイブリッドも公知である。特定の天然型レプチンペプチド、そのアナログ、誘導体及びハイブリッドが本願明細書に記載されているが、公知のホルモン活性を呈するいかなる公知のレプチンペプチド、アナログ、誘導体又はハイブリッドも、本願明細書で開示する組成物及び方法に使用できると認識すべきである。一実施形態では、レプチンのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型レプチンの少なくとも1つのホルモン活性を有する。具体的な実施形態では、レプチンのアナログ、誘導体及びハイブリッドは、天然型レプチンが特異的に結合できる受容体アゴニストである。レプチンのアゴニスト活性又はアンタゴニスト活性の試験方法は、例えば米国特許第6007998号及び第5856098号に記載されている。
ヒトレプチンは167アミノ酸長である:
MHWGTLCGFLWLWPYLFYVQAVPIQKVQDDTKTLIKTIVTRINDISHTQSVSSKQKVTGLDFIPGLHPILTLSKMDQTLAVYQQILTSMPSRNVIQISNDLENLRDLLHVLAFSKSCHLPWASGLETLDSLGGVLEASGYSTEVVALSRLQGSLQDMLWQLDLSPGC(配列番号167)。このレプチンポリペプチドは、アミノ酸21(Ala)の後ろに位置するシグナル配列切断部位を有する。したがって、成熟ヒトレプチンタンパク質は、アミノ酸22(Val)からアミノ酸167(Cys)の領域にわたる、146アミノ酸長を有する:
VPIQKVQDDTKTLIKTIVTRINDISHTQSVSSKQKVTGLDFIPGLHPILTLSKMDQTLAVYQQILTSMPSRNVIQISNDLENLRDLLHVLAFSKSCHLPWASGLETLDSLGGVLEASGYSTEVVALSRLQGSLQDMLWQLDLSPGC(配列番号168)。
他の典型的なレプチンのアナログは、成熟レプチンの位置28にはないGlnを有し、145のアミノ酸長の、ヒトレプチンの天然変異体である:
VPIQKVQDDTKTLIKTIVTRINDISHTSVSSKQKVTGLDFIPGLHPILTLSKMDQTLAVYQQILTSMPSRNVIQISNDLENLRDLLHVLAFSKSCHLPWASGLETLDSLGGVLEASGYSTEVVALSRLQGSLQDMLWQLDLSPGC(配列番号169)。幾つかの実施形態では、レプチン成分ペプチドは組換え型であって、N末端でメチオニル残基を有する。
典型的なレプチンのアナログは、以下のように置換されていてもよい:配列番号167の位置43のアミノ酸がAsp又はGluで置換、位置48がAlaで置換、位置49がGluで置換されるか又は不在、位置75がAlaで置換、位置89がLeuで置換、位置93がAsp又はGluで置換、位置98がAlaで置換、位置117がSerで置換、位置139がLeuで置換、位置167がSerで置換、並びにそれらのいかなる組み合わせ。典型的なレプチンアナログとしては、限定されないが、43Asp−leptin(配列番号170)、43Glu−leptin(配列番号171)、48Ala−leptin(配列番号172)、49Glu−leptin(配列番号173)、49Des−leptin(配列番号174)、75Ala−leptin(配列番号175)、89Leu−leptin(配列番号176)、93Asp−leptin(配列番号177)、93Glu−leptin(配列番号178)、98Ala−leptin(配列番号179)、117Ser−leptin(配列番号180)、139Leu−leptin(配列番号181)、167Ser−leptin(配列番号182)、43Asp49Glu−leptin(配列番号183)、43Asp75Ala−leptin(配列番号184)、89Leu117Ser−leptin(配列番号185)、及び93Glu167Ser−leptin(配列番号186)である。
他の典型的なレプチンペプチド、アナログ及び誘導体は、米国特許第5935810号、第6001968号、第6429290号、第6309853号、第5521283号、第5532336号、第6777388号及び第6936439号で開示されており、それらの開示内容を本願明細書に援用する。他の典型的なレプチンペプチド、アナログ及び誘導体は、国際公開第2004/039832号、第97/02004号、第97/06816号、第97/18833号、第97/38014号及び第98/28427号、並びに米国特許出願公開第2004/0072219号、第2003/049693号、第2003/0166847号、第2003/0092126号で開示されており、その全開示内容を本願明細書に援用する。
また、本願明細書で開示する組成物及び方法に有用な成分ペプチドとしては、ハイブリッドポリペプチドが挙げられる。本発明の用語「ハイブリッドポリペプチド」又は「ハイブリッドポリペプチドホルモン」又は「ハイブリッドペプチドホルモン」とは、少なくとも2つのペプチドホルモン部分が結合してなるポリペプチドのことを指し、当該少なくとも2つのペプチドホルモンは同じペプチドホルモンでない。幾つかの実施形態では、ハイブリッドポリペプチドは共有結合する少なくとも2つのペプチドホルモンの部分を含んでなる。幾つかの実施形態では、当該ペプチドホルモン部分は直接結合してもよく、他の実施形態では、当該ペプチドホルモン部分は例えばリンカー基によって間接的に結合してもよい。幾つかの実施形態では、ハイブリッドポリペプチドは、成分ペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を呈する。典型的なハイブリッドポリペプチドとしては、以下成分ペプチドの1つ以上を含んでなるものが挙げられる:
アミリン、ADM、CT、レプチン、PYY、NPY、GLP−1、AFP−6、CCK、CGRP、GLP−2、OXM、エキセンディン及びGIP。
例えば、幾つかのハイブリッドポリペプチドの参照配列としては、ヒトGIP、切断されたGIP、ヒトGLP−1及びエキセンディン−4、典型的なTrp−ケージ(FIEWLKNGGPSSGAPPPS、配列番号187)、典型的な短いエキセンディン尾部(PSSGAPPPS、配列番号188)及び典型的な長いエキセンディン尾部(KNGGPSSGAPPPS、配列番号189)が挙げられる。本願明細書及び援用する文献に開示されているエキセンディン尾部及び/又はTrpケージ配列及びアナログ及び誘導体は、例示的なペプチドエンハンサである。
典型的なGIPハイブリッド分子としては、例えば、[Leu14]GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)(配列番号291)、[D−Ala2]GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)(配列番号292)、及びGIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)(配列番号1)が挙げられる。典型的なエキセンディンハイブリッド分子としては例えば、[Leu14,Gln28]エキセンディン−4(1−31)−fGLP−1(33−37)(配列番号298)が挙げられる。
GIPハイブリッドは、ペプチドエンハンサ:C末端Trp−ケージのモチーフ配列、を含んでなってもよい。かかる一実施形態は、式D−L−C−SのGIPハイブリッドであり、式中、「D」領域は任意に修飾されたN末端GIP配列を含んでなる。式中、「S」領域はTrp−ケージ配列のC末端配列であってもよく、Trp−ケージ配列のN末端部分と隣接した場合にTrp−ケージを形成できる。かかるペプチドエンハンサ配列は、新規なGIPアナログをプロテアーゼ分解から保護し、安定性を向上させると考えられている。S領域は典型的には、少なくとも1つのプロリン又はプロリン様残基を含んでなり、隣接する配列のトリプトファン又はトリプトファン様の残基と相互作用してTrp−ケージを形成できる。領域CにはGIPのC末端配列が含まれる。これらの分子の幾つかの実施形態では、領域Sの少なくとも1つのプロリン又はプロリン様残基と相互作用できるトリプトファン又はトリプトファン様残基は、領域「C」に位置する。別の一実施形態では、領域Cが不在の場合、Trp又はTrp様残基は、リンカー領域「L」に存在してもよい。
典型的なGIPハイブリッドの実施形態では、GIP部分は、修飾又は置換されたGIPのN末端領域を含んでなり、それにより、天然型のGIPよりも高いDPP−IV耐性が提供される。GIPとのハイブリッド分子の形成に適する化合物又はその断片としては、インクレチン(例えばGLP−1、エキセンディン)、アミリンファミリーペプチド(例えばアミリン、カルシトニン、カルシトニン関連遺伝子ペプチド、アドレノメデュリン、インテルメジン)、コレシストキニン(CCK)、ガストリン、PPFs(例えばPP、PYY)、セクレチン、ナトリウム排泄増加性ペプチド、ニューロメディン及び尿コルチンなどが挙げられる。
具体的な実施形態では、C末端アミド化ペプチドホルモンが、P−PIコンジュゲートの成分である。他の実施形態では、ペプチドホルモン成分はアミド化されなくともよい。幾つかの実施形態では、アミド化ペプチドホルモンを有するP−PIコンジュゲートとしては、限定されないがアミリンファミリーペプチドホルモン、CCK、PYY、hGLP−1(7−36)及びhGLP−2を有するものが挙げられる。他の実施形態では、アミド化C末端を含まないペプチドホルモンを有するP−PIコンジュゲートとしては、限定されないがエキセンディン−4、エキセンディン−4(1−28)、GIP、GLP−1(7−37)、カエルGLP−1(7−36)及びカエルGLP−2を有するものが挙げられる。しかしながら、他の実施形態では、これらの成分ペプチドホルモンはC末端でアミド化されてもよい。
本願明細書に記載の組成物及び方法に用いられる典型的なハイブリッドポリペプチドとしては、限定されないが以下のものが挙げられる:
エキセンディン−4−PYY(22−36)(配列番号190)、エキセンディン−4−PYY(25−36)(配列番号191)、エキセンディン−4−PYY(18−36)(配列番号192)、エキセンディン−4−βAla−βAla−PYY(22−36)(配列番号193)、エキセンディン−4−βAla−βAla−PYY(25−36)(配列番号194)、エキセンディン−4−βAla−βAla−PYY(31−36)(配列番号195)、エキセンディン−4(1−28)−PYY(22−36)(配列番号196)、エキセンディン−4(1−28)−PYY(25−36)(配列番号197)、エキセンディン−4(1−28)−PYY(18−36)(配列番号198)、エキセンディン−4(1−28)−βAla−βAla−PYY(22−36)(配列番号199)、エキセンディン−4(1−28)−βAla−βAla−PYY(25−36)(配列番号200)、エキセンディン−4(1−28)−βAla−βAla−PYY(31−36)(配列番号201)、5Ala14Leu25Phe−エキセンディン−4(1−28)−PYY(18−36)(配列番号202)、5Ala14Leu25Phe−エキセンディン−4(1−28)−PYY(22−36)(配列番号203)、5Ala14Leu25Phe−エキセンディン−4(1−28)−PYY(25−36)(配列番号204)、5Ala14Leu25Phe−エキセンディン−4(1−17)−PYY(18−36)(配列番号205)、5Ala14Leu25Phe−エキセンディン−4(1−28)−βAla−βAla−PYY(22−36)(配列番号206)、5Ala14Leu25Phe−エキセンディン−4(1−28)−βAla−βAla−PYY(25−36)(配列番号207)、5Ala14Leu25Phe−エキセンディン−4(1−28)−βAla−βAla−PYY(31−36)(配列番号208)、エキセンディン−4−CCK−8(配列番号209)、エキセンディン−4(1−28)−CCK−8(配列番号210)、エキセンディン−4(1−28)−CCK−8(Phe(CH2SO3))(配列番号211)、エキセンディン−4(1−28)−(8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル)−CCK−8(配列番号212)、エキセンディン−4(1−28)−(8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル)−CCK−8(Phe(CH2SO3))(配列番号213)、エキセンディン−4(1−27)−hアミリン(1−7)−14Gln,11,18Arg−sCT(8−27)−アミリン(33−37)(配列番号214)、エキセンディン−4(1−27)−2,7Ala−hアミリン(1−7)−sCT(8−10)(配列番号215)、2912 Ado−エキセンディン(1−28)−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−32)−hアミリン(33−37)(配列番号216)、2912 Ado−エキセンディン(1−28)−1des−Lys−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−32)−hアミリン(33−37)(配列番号217)、293,6−ジオキサオクタノイル−エキセンディン(1−28)−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−32)−hアミリン(33−37)(配列番号218)、293,6−ジオキサオクタノイル−エキセンディン(1−28)−1des−Lys−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−32)−hアミリン(33−37)(配列番号219)、295 Apa−エキセンディン(1−28)−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−32)−hアミリン(33−37)(配列番号220)、295 Apa−エキセンディン(1−28)−1des−Lys−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−32)−hアミリン(33−37)(配列番号221)、29βAla−βAla−エキセンディン(1−28)−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−32)−hアミリン(33−37)(配列番号222)、29βAla−βAla−エキセンディン(1−28)−1des−Lys−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−32)−hアミリン(33−37)(配列番号223)、294,7,10−トリオキサ−13−トリデカナミン スクシンイミジル−エキセンディン(1−28)−hアミリン(1−7) 11,18Arg−sCT(8−32)−hアミリン(33−37)(配列番号224)、294,7,10−トリオキサ−13−トリデカナミン スクシンイミジル−エキセンディン(1−28)−1des−Lys−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−32)−hアミリン(33−37)(配列番号225)、CCK−8−GKR−15Glu−h−アミリン(1−17)−18Arg−sCT(18−26)−アミリン(32−37)(配列番号226)、アミリン(1−18)−PYY(19−36)(配列番号227)、イソカプロイル−STAVL−(Aib)−K(ホルミル)−LSQEL−(Aib)−K(ホルミル)−LQT−PYY(18−36)(配列番号228)、イソカプロイル−STAVL−(Aib)−K(ホルミル)−LSQEL−(Aib)−K(ホルミル)−L−PYY(16−36)(配列番号229)、CCK−8−[スクシノイル−Cys]−PYY(3−36)(配列番号230)、CCK−8−[ビス−Cys(N−アセチル)]−PYY(3−36)(配列番号231)、及びCCK−8−[Gly−アミノキシメチルカルボニル]−PYY(3−36)(配列番号232)。
本願明細書に記載の組成物及び方法に用いられる他の典型的なハイブリッドポリペプチドとしては、限定されないが、以下のものを含んでなる:
GIP(1−30)−(12 Ado)−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−27)−hアミリン(33−37)(配列番号233)、GIP(1−30)−(12 Ado)−1des−Lys−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−27)−hアミリン(33−37)(配列番号234)、GIP(1−30)−(3,6−ジオキサオクタノイル)−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−27)−hアミリン(33−37)(配列番号235)、GIP(1−30)−(3,6−ジオキサオクタノイル)−1des−Lys−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−27)−hアミリン(33−37)(配列番号236)、GIP(1−30)−(5 Apa)−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−27)−hアミリン(33−37)(配列番号237)、GIP(1−30)−(5 Apa)−1des−Lys−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−27)−hアミリン(33−37)(配列番号238)、GIP(1−30)−(βAla−βAla)−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−27)−hアミリン(33−37)(配列番号239)、GIP(1−30)−(βAla−βAla)−1des−Lys−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(27)−hアミリン(33−37)(配列番号240)、GIP(1−30)−(4,7,10−トリオキサ−13−トリデカナミン スクシンイミジル)−hアミリン(1−7) 11,18Arg−sCT(8−27)−hアミリン(33−37)(配列番号241)、GIP(1−30)−(4,7,10−トリオキサ−13−トリデカナミン スクシンイミジル)−1des−Lys−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−27)−hアミリン(33−37)(配列番号242)、GIP(1−30)−(Gly−Gly−Gly)−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−27)−hアミリン(33−37)(配列番号243)、GIP(1−30)−(Gly−Gly−Gly)−1des−Lys−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(27)−hアミリン(33−37)(配列番号244)、GIP(1−30)−(4,7,10−トリオキサ−13−トリデカナミン スクシンイミジル)−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−27)−hアミリン(33−37)(配列番号245)、及びGIP(1−30)−(4,7,10−トリオキサ−13−トリデカナミン スクシンイミジル)−1des−Lys−hアミリン(1−7)−11,18Arg−sCT(8−27)−hアミリン(33−37)(配列番号246)。
本願明細書に記載の組成物及び方法に用いられる典型的なハイブリッドポリペプチドとしては、米国仮特許出願第60/653433号、第60/651647号、第60/707244号、第60/707369号、第60/709316号及び第60/709320号に記載されているのもが挙げられ、それらの分子に関して、本願明細書において援用する。また、本願明細書に記載の組成物及び方法に用いられる典型的なハイブリッドポリペプチドは、米国特許出願第11/201664号、米国出願公開第2006/0094652号及び第2006/0293232号及び国際公開第2005/077072号に記載されているものが挙げられ、それらの分子に関して、本願明細書において援用する。
本願明細書に記載のコンジュゲート分子及び方法に有用な成分ペプチダーゼ阻害剤は、in vivoで活性型の薬剤であってもよく、又はin vivoで活性型に変化するプロドラッグであってもよい。本願明細書において示されるように、リシノプリルエステルを有するP−PIコンジュゲートは、in vitro ACE阻害剤アッセイにおいて不活性であるが、非エステル型のリシノプリルを有するP−PIコンジュゲートはACE阻害活性を示す。典型的な成分ペプチダーゼ阻害剤は活性型の薬剤であっても、若しくは阻害剤のプロドラッグ形態であってもよく、又は、それらのいずれの形態も、本発明のコンジュゲート分子及び方法に使用できる。
本願明細書に記載のコンジュゲート分子及び方法において有用な成分ペプチダーゼ阻害剤としては、脈管ペプチダーゼ阻害剤(例えばアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、中性エンドペプチターゼ(NEP)阻害剤、エンドセリン変換酵素(ECE)阻害剤、ACE/NEP阻害剤、NEP/ECE阻害剤)、及びACE/NEP/ECE阻害剤などが挙げられるが、それらに限定されない。アンギオテンシンI−変換酵素は、アンギオテンシンIをアンギオテンシンII(強力な昇圧剤)及びアルドステロン刺激ペプチドに加水分解することによって、血圧調節及び電解質調節において重要な役割を果たすジペプチジルカルボキシペプチダーゼである。ACEはまた、キニン(例えばブラジキニン)のような、他の生物学的活性ポリペプチドを加水分解できる。ブラジキニンは血管拡張薬であり、血管拡張プロスタグランジンの放出を誘導することによって少なくとも部分的に作用し、ACEによる加水分解により不活性化される。すなわちACEは、少なくとも部分的には、アンギオテンシンII(血管収縮薬)を生じさせ、またブラジキニン(血管拡張薬)を不活性化することによって血圧を増加させる。ACE(ペプチジルジペプチダーゼA(EC3.4.15.1)及びキニナーゼIIとも呼ばれる)は金属ペプチダーゼ(特に亜鉛ペプチダーゼ)である。
本願明細書に記載のコンジュゲート分子及び方法に用いられる典型的なACE阻害剤としては、限定されないが、ベナゼプリル、カプトプリル(1−[(2S)−3−メルカプト−2−メチルプロピオニル]−L−プロリン)セロナプリル、エナラプリル(N−(1−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニル−L−プロリン)エナラプリラット、フェンチアプリル、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル(メルク、アストラゼネカ社製)、モエキシプリル、ペリンドプリル(セルビエ社製)、キナプリル(ワーナー・ランバート社製)、ラミプリル及びトレンドラプリルが挙げられる。本願明細書に使用できるACE阻害剤の他の非限定的な例としては、セタプリル、シラザプリル、デラプリル、インドラプリル(シェーリング社製)、スピラプリル(シェーリング)及びゾフェノプリルなどが挙げられる。幾つかの実施形態では、ACE阻害剤はペプチド(例えばpGluWPRPQIPP又はpGluKWAP)であり、式中、pGluはピログルタミン酸を指す。典型的なACE阻害剤としては、例えば米国特許第4046889号、第4316906号、第4374829号、第4452790号、第4168267号、第4337201号、第4385051号及び第4344949号で開示するものが挙げられる。
本願明細書に記載のように、本願明細書に記載のコンジュゲート分子及び方法に有用な成分ペプチダーゼ阻害剤には、NEP阻害剤が包含される。ACEと同様、NEPは内皮細胞表面メタロプロテイナーゼであり、ナトリウム利尿ペプチドなどの幾つかの調整ペプチドの分解に関与し、それにより、心房性ナトリウム利尿ペプチドの濃度上昇による血管拡張及びナトリウム尿排泄亢進がなされる。NEP阻害剤のとしては、限定されないがホスホラミドン、チオファン、レトロチオルファン、キャンドキサトリル及びアセトルファンなどが挙げられる。また、本願明細書に記載のコンジュゲート分子及び方法に有用な成分ペプチダーゼ阻害剤には、ECE阻害剤が包含される。ECEは生物学的活性を有するエンドセリンペプチド(強力な血管収縮薬)の形成に関与する主要な酵素である。
脈管ペプチダーゼ阻害剤にはまた、NEP及びACE阻害活性を有するNEP/ACE阻害剤が包含される。NEP/ACE阻害剤の例としては、限定されないが、三環ベンズアゼピノンチオール、オマパトリラット、ゲモパトリラット、ミキサンプリル、ラセカドトリル、ファシドトリル、サムパトリラット、MDL100.240、Z13752A、BMS189921、BMS182657及びCGS30008などが挙げられる。本願明細書における使用に適するNEP/ACE阻害剤の例としては、米国特許第5362727号、第5366973号、第5225401号、第4722810号、第5223516号、第4749688号、第5552397号、第5504080号、第5612359号及び第5525723号で開示するものが挙げられる。典型的なNEP/ACE阻害剤には、以下のものが包含される。
脈管ペプチダーゼ阻害剤にはまた、NEP及びECE阻害活性を有するNEP/ECE阻害剤が挙げられる。NEP/ECE阻害剤の例としては、限定されないがホスホラミドンが挙げられる。
Veelkenら(2002) J.Hypertens.20:599−603.参照。
脈管ペプチダーゼ阻害剤にはまた、ACE、NEP及びACE阻害活性を有するNEP/ACE/ECE阻害剤が挙げられる。NEP/ACE/ECE阻害剤の例としては、CGS26582及びN−[2−(インダン−1−イル)−3−メルカプト−プロピオニル]アミノ酸のアナログなどが挙げられるが、これらに限定されない(Inguimbertら(2002) Bioorg.Med.Chem.Lett.12:2001−2005)。典型的なNEP/ACE/ECE阻害剤としては、以下のものが挙げられる。
本願明細書に記載のコンジュゲート分子及び方法において有用な成分ペプチダーゼ阻害剤としては、アンギオテンシン変換酵素関連のカルボキシペプチダーゼ(ACE2)の阻害剤が挙げられる。ACE2は亜鉛金属ペプチダーゼであり、ACEのホモログであるが、ACE2はACEと異なる基質特異性を有する(Vickersら(2002) J.Biol.Chem.277:14838−14843)。ACE2はdes−Argブラジキニン(局地的血管拡張薬)を開裂して不活性化し、炎症又は組織の損傷が発生するとき発現されるブラジキニンB1受容体と結合する機能を発揮する。本願明細書に記載のコンジュゲート分子及び方法に用いられる典型的なACE2阻害剤としては、MLN−4760((S,S)−2−{1−カルボキシ−2−[3−(3,5−ジクロロベンジル)−3H−イミダゾル−4−イル]−エチルアミノ}−4−メチルペンタン酸、Towlerら(2004) J.Biol.Chem.279:17996−18007)、N−(2−アミノエチル)−1アジリジン−エタンアミン(Huentelmanら(2004) Hypertension 44:903−906及びAc−GDYSHCSPLRYYPWWKCTYPDPEGGG−NH2(配列番号247)などのACE2のペプチド阻害剤、並びにHuangら(2003) J.Biol.Chem.278:15532−15540に記載の他の阻害剤が挙げられる。
ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP−IV)(EC3.4.14.5)は、2位においてプロリン又はアラニンを有するペプチド基質から選択的にN末端ジペプチドを加水分解するセリンプロテアーゼである。その基質はGLP−1及びGIPを含むため、DPP−IVはブドウ糖ホメオスタシスの制御に関与する。PFFメンバー(例えばPYY及びNPY)のメンバーはDPP−IVの基質でもある。これらのペプチドからのN末端アミノ酸の裂開により、それらは機能的に不活性となる。したがって、DPP−IVは本願明細書に記載の糖尿病、糖耐性、肥満、食欲調節、心血管疾患、並びに他の症状又は障害において生理的な役割を演じうる。in vivo DPP−IV阻害剤の投与により、GLP−1及びGIPのN末端の分解が防止され、それにより、これらのペプチドの循環時の濃度を高いレベルに維持することができる。更に、DPP−IV阻害剤による処理により、PYY及びNPYの分解が防止される。
したがって、本願明細書に記載のコンジュゲート分子及び方法に有用な成分ペプチダーゼ阻害剤には、DPP−IV阻害剤も包含される。DPP−IV阻害剤の例としては、N−(置換グリシル)−2−シアノピロリジン、テトラヒドロイソキノリン3−カルボキサミド誘導体、フッ化環式アミド、アダマンチルグリシンベースの阻害剤及びグリシンニトリルベースの阻害剤などが挙げられるが、これらに限定されない。シアノピロリジン阻害剤としては、限定されないが、可逆的阻害剤(例えば以下の遅い可逆的阻害剤)が挙げられる。
式中、Rはペプチド修飾のための共有結合又は非共有結合性リンカーである。本発明における使用に適しているDPP−IV阻害剤の例としては、米国特許第6011155号、第6124305号、第6166063号、第6432969号、第6172081号、第6710040号、第6869947号、第6995183号及び第6995180号で開示するそれらが挙げられる。
DPP−IV阻害剤の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない(DPP−IV阻害剤の番号を、構造式の下に示す):
本願明細書における使用に適するDPP−IV阻害剤には、ホウ素含有−及びシアノベースのマレイミドDPP−IV阻害剤が包含される。Kellyら(1993) Tetrahedron 49:1009−1016、Snowら(1994) J.Am.Chem.Soc.116:10860−10869、 Couttsら(1996) J.Med.Chem.39:2087−2094、及びJeanfavreら(1996) Biochem.Pharmacol.52:1757−1765参照。ホウ素ベース(下記の化合物8)及びシアノベース(下記の化合物9)のマレイミドDPP−IV阻害剤の例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる。
2−シアノベースのDPPIV阻害剤(化合物9)の合成は、以下の通り実施できる。
2−ホウ素ベースのDPPIV阻害剤(化合物8)の合成は、以下の通り実施できる。
また、本願明細書に記載のコンジュゲート分子及び方法に有用な成分ペプチダーゼ阻害剤には、セリンプロテアーゼ阻害剤が包含される。セリンプロテアーゼ阻害剤は従来技術において公知である。使用のセリンプロテアーゼ阻害剤の例としては、限定されないが、4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフルオライド(AEBSF)、アプロチニン、エラスチナル、Glu−Gly−Arg−クロロメチルケトン、GGACKロイペプチン、フェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)キモスタチン、アンチトロンビンIII、3,4−ジクロロイソクマリン、トシル−L−リジンクロロメチルケトン(TLCK)、トシル−L−フェニルアラニンクロロメチルケトン(TPCK)、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート(DIFP)アンチパイン及びα2−マクログロブリンなどが挙げられる。幾つかの実施形態では、P−PIコンジュゲートは成分ペプチダーゼ阻害剤としてAEBSFを含む。
また、本願明細書に記載のコンジュゲート分子及び方法に有用な成分ペプチダーゼ阻害剤としては、カルボキシペプチダーゼ阻害剤が挙げられる。一実施形態では、P−PIコンジュゲートに用いられるカルボキシペプチダーゼ阻害剤はペプチドである。幾つかの実施形態では、カルボキシペプチダーゼ阻害剤は、RQRY又はRQRWのカルボキシ末端アミノ酸のモチーフを有する基質ペプチドに作用して当該基質ペプチドからC末端アミノ酸を除去するカルボキシペプチダーゼの活性を阻害する、ペプチドである。幾つかの実施形態では、カルボキシペプチダーゼの基質ペプチドは、PYY(1−36)、PYY(3−36)及びNPY(例えばアミド化されたPYY(1−36)、PYY(3−36)及びNPY)である。
幾つかの実施形態では、カルボキシペプチダーゼ阻害剤は、修飾PYYペプチド又は修飾NPYペプチド(例えば位置36で修飾されるPYY又はNPYペプチド)である。例えば、典型的なカルボキシペプチダーゼ阻害剤としては、Tyr36のα−アミノ窒素においてメチレン基を有するPYY又はNPYペプチド、例えば、36N−メチル−Tyr−PYY(1−36)(配列番号248)、36N−メチル−Tyr−PYY(3−36)(配列番号249)、36N−メチル−Tyr−PYY(12−36)(配列番号250)、36N−メチル−Tyr−PYY(18−36)(配列番号251)、36N−メチル−Tyr−PYY(22−36)(配列番号252)、36N−メチル−D−Tyr−PYY(1−36)(配列番号253)、36N−メチル−D−Tyr−PYY(3−36)(配列番号254)、36N−メチル−D−Tyr−PYY(12−36)(配列番号255)、36N−メチル−D−Tyr−PYY(18−36)(配列番号256)、36N−メチル−D−Tyr−PYY(22−36)(配列番号257)、36N−メチル−Tyr−NPY(配列番号258)、36N−メチル−Tyr−NPY(12−36)(配列番号259)、36N−メチル−Tyr−NPY(18−36)(配列番号260)、36N−メチル−Tyr−NPY(22−36)(配列番号261)、36N−メチル−D−Tyr−NPY(配列番号262)、36N−メチル−D−Tyr−NPY(12−36)(配列番号263)、36N−メチル−D−Tyr−NPY(18−36)(配列番号264)、及び36N−メチル−D−Tyr−NPY(22−36)(配列番号265)が挙げられるが、これらに限定されない。別の典型的なカルボキシペプチダーゼ阻害剤としては、位置36のD−Tyr、位置36のキラルβ−Tyr、位置36のヒドロキシPro、位置36のPhe、位置36のPhe−CH2SO3H又は位置36のTrpを有する、PYY又はNPYペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。典型的なカルボキシペプチダーゼ阻害剤としては、位置36においてかかる変異を有するPYY(1−36)、PYY(3−36)、PYY(12−36)、PYY(18−36)、PYY(22−36)、NPY、NPY(12−36)、NPY(18−36)及びNPY(22−36)が挙げられる。これらのカルボキシペプチダーゼ阻害剤のカルボキシ末端は、−NH2、−NHOH、−NH−CH3、又は−NH−CH2CH3であってもよい。
典型的なカルボキシペプチダーゼ阻害剤としてはまた、記載のような位置36の変異を有し、更に当該ペプチド内の他の部位にも変異を有するPYY又はNPYペプチドが包含される。例えば、本願明細書で説明される36位置の変異を有するPYY又はNPYペプチドはまた、アミノ酸の内部欠失、リンカー基の内部挿入、又は内部アミノ酸の欠失と内部リンカー基の挿入との組合せを有してもよい。このタイプの典型的なカルボキシペプチダーゼ阻害剤としては、限定されないが、36N−メチル−Tyr−PYY(3−10、22−36)IKPEAPGEASLRHYLNLVTRQRY(N−Me)(配列番号266)、36N−メチル−Tyr−PYY(3−10−リンカー−22−36)IKPEAPGE(リンカー)ASLRHYLNLV TRQRY(N−Me)(配列番号296(リンカー)配列番号252)、及び36N−メチル−Tyr−PYY(3−10−リンカー−18−36)IKPEAPGE(リンカー)NRYYASLRHYLNLVTRQRY(N−Me)(配列番号296)(リンカー)(配列番号251)などが挙げられる。これらのカルボキシペプチダーゼ阻害剤のカルボキシ末端は、−NH2、−NHOH、−NH−CH3、又は−NH−CH2CH3であってもよい。例えば、これらのペプチドに用いられるリンカー基を以下に例示する:
式中、n=0−3、R=ペプチド、R’=OH又はNH2、R”=ペプチド。
典型的なカルボキシペプチダーゼ阻害剤にはまた、本願明細書において説明した36位置の変異の有無にかかわらずに、当該ペプチドの範囲内の他の部位にも変異を有するPYY又はNPYペプチドが包含される。例えば、PYY又はNPYペプチドは内部D−アミノ酸、α−アミノ窒素においてメチレン基を有する内部アミノ酸、又はかかるアミノ酸残基の組合せを有してもよいこのタイプの典型的なカルボキシペプチダーゼ阻害剤としては、限定されないが、35N−メチル−Arg−PYY(3−36)(配列番号267)、35D−Arg36N−メチル−Tyr−PYY(3−36)(配列番号268)、35Nメチル−D−Arg−PYY(3−36)(配列番号269)、34N−メチル−Gln−PYY(3−36)(配列番号270)、34D−Gln36N−メチル−Tyr−PYY(3−36)(配列番号271)、34N−メチル−D−Gln−PYY(3−36)(配列番号272)、33N−メチル−Arg−PYY(3−36)(配列番号273)、33D−Arg36N−メチル−Tyr−PYY(3−36)(配列番号274)、33N−メチル−D−Arg−PYY(3−36)(配列番号275)、19N−メチル−Ala−PYY(3−36)(配列番号276)、19D−Ala36N−メチル−Tyr−PYY(3−36)(配列番号277)、19N−メチル−D−Ala−PYY(3−36)(配列番号278)、35N−メチル−Arg−NPY(配列番号279)、35D−Arg36N−メチル−Tyr−NPY(配列番号280)、35Nメチル−D−Arg−NPY(配列番号281)、34N−メチル−Gln−NPY(配列番号282)、34D−Gln36N−メチル−Tyr−NPY(配列番号283)、34N−メチル−D−Gln−NPY(配列番号284)、33N−メチル−Arg−NPY(配列番号285)、33D−Arg36N−メチル−Tyr−NPY(配列番号286)、33N−メチル−D−Arg−NPY(配列番号287)、19N−メチル−Ala−NPY(配列番号288)、19D−Ala36N−メチル−Tyr−NPY(配列番号289)、及び19N−メチル−D−Ala−NPY(配列番号290)などが挙げられる。これらのカルボキシペプチダーゼ阻害剤のカルボキシ末端は、−NH2、−NHOH、−NH−CH3、又は−NH−CH2CH3であってもよい。
コンジュゲート中のペプチドとペプチダーゼ阻害剤は、本願明細書に記載の方法、又は従来技術において公知のいかなる方法で結合させてもよい。かかるコンジュゲート結合には、共有結合結合、非共有結合性結合又はその両方が包含される。安定な結合を用いてもよく、又は切断可能な結合を用いてもよい。非共有結合性結合は、いかなる非共有結合的な力によって形成されてもよく、例えば、疎水的相互作用、イオン(静電的)結合、金属複合体形成、水素結合、ヴァンデルヴァールス力又はそれらの異なる2以上の相互作用の組合せであってもよい。
本願明細書に記載の成分ペプチド及び成分ペプチダーゼ阻害剤は、直接アミド結合していてもよく、又は化学的にリンカー基を介して共有結合していてもよい。コンジュゲートしたペプチド及びペプチダーゼ阻害剤成分は、化学的又はペプチドリンカー基、又はターンインデューサーを介して間接的に結合してもよい。有用な連結手段及び結合の例は、本願明細書において示されるPPIアナログにおいて示される。
一実施形態では、成分ペプチドとペプチダーゼ阻害剤は、第2のモジュールのアミノ基に直接結合してもよい。他の実施形態では、連結基を当該モジュール連結に使用してもよい。典型的な連結基としては、限定されないがアルキル、PEG、アミノ酸(例えばLys、Glu、β−Ala)、ポリアミノ酸(例えばpoly−his、ポリarg、ポリlys、ポリ−Ala、Gly−Lys−Arg(GKR)、二官能性リンカー(例えばPierce Biotechnology社(ロックフォード、IL)から市販されているアミノカプロイル(Aca)、β−アラニル、8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル、並びに公知の他の切断可能及び非切断可能リンカーが挙げられる。
1つの態様では、当該ペプチドは、リンカー又はターンインデューサーを介してペプチダーゼ阻害剤に結合する。リンカー又はターンインデューサーは、化学的な結合でもよく、ペプチド性の結合でもよい。リンカーは、例えば、ペプチドのアミノ末端、ペプチドのカルボキシ末端、又はペプチドの内部アミノ酸側鎖に結合してもよく、またペプチド及びペプチダーゼ阻害剤と共有結合する。リンカーは、ペプチダーゼ阻害剤をペプチドに結合できるいかなるリンカーでもあってもよく、例えばコハク酸、オルトゴナルに結合可能なアミノ酸(例えばGlu又はLys)、及びポリアミノ酸(例えばポリリシン、ポリアルギニン、ポリグリシン)などが挙げられる。幾つかの実施形態では、リンカーは図2に示される群から選択される。幾つかの実施形態では、リンカーは以下からなる群から選択される:
式中、n=0〜3、R=阻害剤又はペプチド、R’=OH又はNH2、R”=ペプチド又は阻害剤である。
一実施形態では、連結基はペプチド擬態を含むことができる。かかる擬態物の使用により、ペプチドの立体構造の形成を誘導若しくは安定させることができる。例えば、β−ターン擬態物には、Ala−Aib及びAla−Proジペプチド、並びに、以下に例示する擬態A及び擬態Bが包含される:
擬態Aは、N−(3S,6S,9S)−2−オキソ−3−アミノ−1−アザビシクロ[4.3.0]−ノナン−9−カルボン酸である。擬態Bは、N−(3S,6S,9R)−2−オキソ−3−アミノ−7−チア−1−アザビシクロ[4.3.0]−ノナン−9−カルボン酸である。
1つの一実施形態では、リンカーは1〜30のアミノ酸残基長の鎖であり、他の実施形態では、リンカーは2〜30のアミノ酸残基長の鎖であり、更に他の実施形態では、リンカーは3〜30のアミノ酸残基長の鎖である。他の実施形態では、リンカーは2〜30のいかなる整数のアミノ酸残基長であってもよく、例えば2、3、4、5、6、7などの整数である。一実施形態では、Glyリンカーを用いる。一実施形態では、3残基のGlyリンカー(Gly−Gly−Gly)を用いる。一実施形態では、β−Alaリンカー(例えばβ−Ala−β−Ala)を用いる。一実施形態では、γ−Abu(γ−アミノ酪酸)リンカーを用いる。
幾つかの実施形態では、P−PIは、成分ペプチドの最低限の生物学的活性を示す。幾つかの実施形態では、P−PIは、成分ペプチダーゼ阻害剤の最低限の阻害活性を示す。他の実施形態では、P−PIは、ペプチドの最低限の生物学的活性、及びペプチダーゼ阻害剤の阻害活性を示す。幾つかの実施形態では、P−PIコンジュゲートは、コンジュゲート複合体中に成分ペプチド若しくは成分プロテアーゼ阻害剤が存在しない場合と比較し、代謝安定性、化学安定性、受容体との相互作用又は高次構造の安定性が少なくとも増加している。
本願明細書に記載のP−PIコンジュゲートは、少なくとも1つのペプチダーゼ阻害剤に結合(共有結合、又は非共有結合)する、少なくとも1つのペプチドを含んでなる。幾つかの実施形態では、P−PIコンジュゲートは、ペプチダーゼ阻害剤分子に結合する2つ以上のペプチドを含んでなる。幾つかの実施形態では、P−PIコンジュゲートは、ペプチドに結合する2つのペプチダーゼ阻害剤分子を含んでなる。幾つかの実施形態では、P−PIコンジュゲートは、ペプチドに結合する2つの異なるペプチダーゼ阻害剤を含んでなる。幾つかの実施形態では、P−PIコンジュゲートは、ペプチドに結合する3つのペプチダーゼ阻害剤分子を含んでなる。3つの阻害剤分子を有するコンジュゲートにおいては、全ての3つの阻害剤は同じでもよく、全ての3つの阻害剤は異なってもよく、又は2つの阻害剤は同じで、第3のものたそれらの2つのものと異なってもよい。
本願明細書に記載の単一のペプチダーゼ阻害剤分子は、1つ以上のタイプのペプチダーゼを阻害してもよい。例えば、NEP/ACE阻害剤は、NEP阻害剤及びACE阻害剤の二重の活性を有する。したがって、1つのペプチダーゼ阻害剤分子を含んでなるP−PIコンジュゲート分子が、複数のペプチダーゼ阻害活性を有する場合もある。幾つかの実施形態では、P−PIコンジュゲートは2つ以上のペプチダーゼ阻害活性を有する。幾つかの実施形態では、P−PIコンジュゲートは3つ以上のペプチダーゼ阻害活性を有する。幾つかの実施形態では、1つ以上のペプチダーゼ阻害剤をペプチドに連結することにより、複数のペプチダーゼ阻害活性を有するP−PIコンジュゲートが得られる。例えば、NEP/ACE阻害剤に結合するペプチドを含んでなるPPIは、単一のペプチダーゼ阻害剤分子の結合により2つの阻害活性を示す。別の例として、NEP/ECE阻害剤及びACE阻害剤に結合するペプチドを含んでなるPPIは、2つの異なるペプチダーゼ阻害剤分子の結合により、3つの阻害活性を示す。
本願明細書に記載のP−PIコンジュゲートのいずれも、その成分ペプチドはいかなる長さであってもよい。幾つかの実施形態では、成分ペプチドは200未満のアミノ酸長である。幾つかの実施形態では、成分ペプチドは150未満のアミノ酸長(例えば100未満、50未満、40未満、30未満又は20未満のアミノ酸長)である。一実施形態では、成分ペプチドは約30〜約40アミノ酸残基長である。幾つかの実施形態では、成分ペプチドは約15〜約25アミノ酸長、約20〜約30アミノ酸長、又は約25〜約35アミノ酸長である。幾つかの実施形態では、成分ペプチドは約15、約17、約19、約21、約23、約25、約27、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35又は約36アミノ酸長である。
典型的なP−PIコンジュゲートとしては、限定されないが、ペプチダーゼ阻害剤がペプチドの側鎖に共有結合しているものが挙げられる。
ペプチド−リシノプリルコンジュゲートの例を以下に示す:
式中、n=0、1又は2であり、y=0、1又は2であり、及びペプチド=GLP−1(7−37)、エキセンディン−4、GLP−1(7−37)若しくはエキセンディン−4の他の活性アナログ、又は他の目的の生理活性ペプチドである。
ペプチド−ペプチド/ACE阻害剤コンジュゲートの例を、以下に示す:
式中、n=0、1又は2であり、y=0、1又は2であり、ペプチド=GLP−1(7−37)、エキセンディン−4、GLP−1(7−37)若しくはエキセンディン−4の他の活性アナログ、又は他の目的の生理活性ペプチドである。
具体的な実施形態では、P−PIコンジュゲートは、ペプチダーゼ阻害剤(例えばリシノプリル又はpGluKWAP−OH(ACE阻害剤))と、それらがコンジュゲートするGLP−1又はエキセンディンアナログ(例えばGLP−1(7−37)(配列番号42)又は14Leu−エキセンディン−4(1−28)(配列番号70))を含んでなる。これらのコンジュゲートにおいては、ペプチダーゼ阻害剤は、様々なリンカーを介して、当該ペプチドアナログのカルボキシ末端、当該ペプチドアナログのアミノ末端、又は当該ペプチドアナログ内部のアミノ酸残基と連結させることができる。かかるP−PIコンジュゲートとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる:
GLP−1(7−37)−γ−Abu−β−Ala−CONH−リシノプロピルモノエステル:
14Leu−エキセンディン−4(1−28)−γ−Abu−β−Ala−CONH−リシノプロピルモノエステル:
GLP−1(7−37)−γ−Abu−Lys(pGlu)WAP−OH:
GLP−1(7−37)−γ−Abu−CONH−リシノプロピルモノエステル:
14Leu−エキセンディン−4(1−28)−γ−Abu−CONH−リシノプロピル:
14Leu−エキセンディン−4(1−28)−Gly−Gly−CONH−リシノプロピル:
幾つかの実施形態では、P−PIコンジュゲートはペプチダーゼ阻害剤、及びGLP−1又はエキセンディンペプチド以外のペプチドを含んでなる。したがって、幾つかの実施形態では、P−PIコンジュゲートは、ペプチドと、それに連結している少なくとも1つのペプチダーゼ阻害剤を含んでなり、当該ペプチドは、GLP−1又はGLP−1アナログでない。他の実施形態では、P−PIコンジュゲートは、ペプチドと、それに連結する少なくとも1つのペプチダーゼ阻害剤を含んでなり、当該ペプチドはエキセンディン又はエキセンディンのアナログでない。
具体的な実施形態では、P−PIコンジュゲートは、ペプチダーゼ阻害剤(例えばリシノプリル又はpGluKWAP−OH(ACE阻害剤))と、それにコンジュゲートするGIPアナログ又はGIPハイブリッド分子(例えばGIP(1−30)(配列番号79)、[Leu14]GIP(1−30)(配列番号295)、[Leu14]GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)(配列番号291)、[D−Ala2]GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)(配列番号292)、[D−Ala2]GIP(1−30)(配列番号293)及びGIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)(配列番号1))を含んでなる。ペプチドのAla2を有するペプチド−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートにおいては、Ala2はL若しくはD型の異性体でもよい。これらのコンジュゲートにおいては、GIPアナログのカルボキシ末端、GIPアナログのアミノ末端、又はGIPアナログの内部のアミノ酸残基で、例えば30Lysのεアミンの位置で、様々なリンカーを介してペプチダーゼ阻害剤と連結させてもよい。かかるP−PIコンジュゲートとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる:
[D−Ala2、Leu14]GIP−(1−30)−β−Ala−β−Ala−Lys(α−NH−ピログルタモイル)−Trp−Ala−Pro−COOH:
GIP−(1−30)−Ado−Ado−Aun−βAla−βAla−ε−NH−Lys(α−NH−ピログルタモイル)−Trp−Ala−Pro:
[D−Ala2]GIP−(1−30)−Ado−Ado−Aun−βAla−βAla−ε−NH−Lys(α−NH−ピログルタモイル)−Trp−Ala−Pro(図3に示す)。
具体的な実施形態では、P−PIコンジュゲートは、ペプチダーゼ阻害剤と、それにコンジュゲートするGIPアナログ又はGIPハイブリッド分子(例えばGIP(1−30)(配列番号79)、[Leu14]GIP(1−30)(配列番号295)、[Leu14]GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)(配列番号291)、[D−Ala2]GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)(配列番号292)、[D−Ala2]GIP(1−30)(配列番号293)及びGIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)(配列番号1))を含んでなる。具体的な実施形態では、ペプチダーゼ阻害剤はDPP−IV阻害剤である。これらのコンジュゲートにおいて、GIPアナログのカルボキシ末端で、GIPアナログのアミノ末端で、又はGIPアナログの範囲内のアミノ酸残基で、例えば、30Lysのεアミンの位置で、様々なリンカーによって、DPP−IV阻害剤を、連結できる。かかるP−PIコンジュゲートは以下を含むが、これに限定されない:
[D−Ala2]GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)−(Lys(ε−NH−(Aun−Aun−(γ−L−Glu−(2−(S)シアノピロリジル))))):
Lys30N−ε−(Ado−(γ−L−Glu−2−(S)−シアノピロリジル))GIP(1−30):
GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)−Ado−Lys−N−ε−(2−(S)−シアノピロリジル):
GIP(1−30)−Ado−Lys−N−ε−(2−(S)−シアノピロリジル):
GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)−Ado−Ado−Lys−N−ε−(2−(S)−シアノピロリジル):
GIP(1−30)−Ado−Ado−Lys−N−ε−(2−(S)−シアノピロリジル):
[Leu14]GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)−Ado−Lys−N−ε−(2−(S)−シアノピロリジル):
[Leu14]GIP(1−30)−Ado−Lys−N−ε−(2−(S)−シアノピロリジル):
[D−Ala2]GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)−Ado−Lys−N−ε−(2−(S)−シアノピロリジル):
Lys30N−ε−(Ado−(γ−L−Glu−2−(S)−シアノピロリジル)) GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39):
[D−Ala2,Lys16(ε−NH−(Aun−Aun−(γ−L−Glu−(2−(S)シアノピロリジル))))] GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39):
N−(γ−L−Glu−2−(S)−シアノピロリジル)−Ado−Ado)エキセンディン−4 GIP(1−30)−(31−39):
[D−Ala2,Lys(ε−NH−(Aun−Aun−(γ−L−Glu−(2−(S)シアノピロリジル))))]GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39):
N−(γ−L−Glu−2−(S)−シアノピロリジル)−Ado−Ado)GIP(1−30):
[D−Ala2]GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)−β−Ala−β−Ala−Ado−Ado−Ado−Ado−Lys−N−ε−(2−(S)−シアノピロリジル)、及び[D−Ala2]GIP(1−30)−β−Ala−β−Ala−Ado−Ado−Ado−Ado−Lys−N−ε−(2−(S)−シアノピロリジル)(図3で示す)。本発明の用語「Aun」は11アミノウンデカノン酸の略記であり、「Ado」は8アミノ3,6−ジオキサオクタノン酸の略記である。
具体的な実施形態では、P−PIコンジュゲートは、DPP−IV阻害剤と、それがコンジュゲートするGIPアナログのカルボキシ末端、GIPアナログのアミノ末端、又はGIPアナログの内部のアミノ酸残基で、様々なリンカーを介して、GIPアナログ又はGIPハイブリッド分子を含んでなる。かかるコンジュゲートの例としては、以下のものが挙げられる。
式中、阻害剤が:
であり、MeはR若しくはS型異性体である。かかるP−PIコンジュゲートの例としては、[D−Ala2]GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)−Cys−(S−マレイミド プロパノイル)−Lys−N−ε−(2−(S)−シアノピロリジル))及び[D−Ala2]GIP(1−30)−エキセンディン−4(31−39)−Cys−(S−マレイミド プロパノイル)−(2−(S)−4(s)アミノ)プロ−(2−(S)−ボロ ピロリジル))が挙げられるが、これらに限定されない(図4に示す)。
他の実施形態では、P−PIコンジュゲートは、PYYアナログ、NPYアナログ又はハイブリッド分子(例えばPYY(3−36))にコンジュゲートするセリンプロテアーゼ阻害剤を含んでなる。他の実施形態では、P−PIコンジュゲートは、PYYアナログ、NPYアナログ又はハイブリッド分子(例えばPYY(3−36))にコンジュゲートするカルボキシペプチダーゼ阻害剤を含んでなる。
単数形を示す本発明の用語「1つの」及び「その」は、特に明記しない限り、又は明らかに前後関係から把握できる場合以外、その事物の複数形を包含する。例えば、前後関係から明確であるように、「1つの」ペプチドホルモンには、1つ以上のペプチドホルモンを包含してもよい。
本発明の用語「アナログ」とは、その配列がベースの参照配列又は天然型ペプチドの配列に由来するペプチド(例えばアミリン、PYY)のことを指し、参照アミノ酸配列中に挿入、置換、延長及び/又は欠失を適宜有する。例えば、ベースペプチドに対して、少なくとも50又は55%のアミノ酸配列同一性を有するか、他の場合には例えば、ベースペプチドに対して少なくとも70%、80%、90%又は95%のアミノ酸配列同一性を有するものが挙げられる。かかるアナログは保存的若しくは非保存的なアミノ酸置換(非自然のアミノ酸、及びL及びD形など)を含んでもよい。当該アナログには、アゴニストを有する化合物及びアンタゴニスト活性を有する化合物が包含される。当該アナログは、参照ペプチドに存在しない活性(例えばペプチダーゼ阻害活性)を有する化合物を含んでもよい。また、本願明細書において定められるように、アナログに誘導体が包含される。
「誘導体」とは、上記のように参照ペプチド又はアナログとして定義され、そのアミノ酸の側基、α−炭素原子、末端アミノ基又は末端のカルボン酸基において1つ以上の化学的処理を受けている。化学的処理とは、限定されないが、化学基を更に付加し、新しい結合を形成させ、化学基を取り除くことなどが挙げられる。アミノ酸側基の修飾としては、リジンε−アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジン又はリジンのN−アルキル化、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸のカルボン酸基のアルキル化、及びグルタミン又はアスパラギンの非アミド化が挙げられるが、これらに限定されない。末端アミノ基の修飾としては、des−アミノ、N−低級アルキル、N−ジ−低アルキル、変形アルキル(例えば分岐状、環状、融合、アダマンチル)、及びN−アシル修飾(例えばアルキルアシル、分岐アルキルアシル、アルキルアリール−アシル)が挙げられるが、これらに限定されない。末端カルボキシ基の修飾としては、限定されないが、アミド、低級アルキルアミド、変形アルキル(例えば分岐状、環状、融合、アダマンチル)、ジアルキルアミド、アリールアミド、アルキルアリールアミド及び低級アルキルエステルによる修飾が挙げられる。低級アルキルとはC1−C4アルキルである。更に、1つ以上の側基又は末端基は、通常熟練した当業者に公知の保護基により保護されてもよい。アミノ酸のα−炭素は、モノ−もしくはジメチル化されていてもよい。
一般に、アミノ酸配列に関して、用語「修飾」とは、置換、挿入、伸長、欠失及び誘導体化(それら単独、又は組み合わせ)のことを指す。幾つかの実施形態では、当該ペプチドは「非本質的」アミノ酸残基の1つ以上の修飾を含んでもよい。「非本質的」アミノ酸残基とは例えば、本願明細書においては、新規なアミノ酸配列中において、ペプチド(例えばアナログのペプチド)の活性(例えばアゴニスト活性)を喪失させるか又は実質的に低下させることなく、変更(欠失又は置換)することができる残基のことを指す。幾つかの実施形態では、当該ペプチドは「本質的」アミノ酸残基の1つ以上の修飾を含んでもよい。「本質的」アミノ酸残基とは例えば、本願明細書においては、新規なアミノ酸配列中において、変更(欠失又は置換)されることにより、ペプチド(例えばアナログのペプチド)の活性(例えばアゴニスト活性)を喪失させるか又は実質的に低下させる残基のことを指す。本質的アミノ酸残基が変更される一実施形態では、当該修飾されたペプチドは、使用されるP−PIコンジュゲートの活性(例えばペプチダーゼ阻害活性)を有しうる。P−PIコンジュゲートにおいて使用するペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のアミノ酸残基が欠失してもよい。P−PIコンジュゲートにおいて使用するペプチドは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のアミノ酸が付加されていてもよい。P−PIコンジュゲートにおいて使用するペプチドは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のアミノ酸が置換されていてもよい。
置換には、保存的アミノ酸置換が包含される。「保存的アミノ酸置換」とはアミノ酸残基が同様の側鎖又は同様の物理化学的な特徴(例えば、静電的、水素結合、立体構造、疎水性)を有するアミノ酸残基と置換されることを指す。アミノ酸は天然に生じるものでもよく、非天然のものでもよい。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは従来技術において公知である。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、メチオニン、システイン)、無極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸から構成される。置換には、非保存的な変更も含まれうる。
「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」とは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸及び修飾アミノ酸のことを意味する。特に明記しない限り、いかなるアミノ酸も、通常は、又は具体的な名称を記載する場合、D型及びL型の立体異性体が包含される(但し、それらの構造がかかる立体異性形を許容する場合)。天然アミノ酸には、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、Lysイン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、Ser(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)及びバリン(Val)が包含される。非天然アミノ酸としては、限定されないが、ホモリジン、ホモアルギニン、ホモセリン、アゼチジンカルボン酸、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、βアラニン、アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソブチル酸、3−アミノイソブチル酸、2−アミノピメリン酸、tert−ブチルグリシン、2,4−ジアミノイソブチル酸、デスモシン、2,2’−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ホモプロリン、ヒドロキシリシン、アロヒドロキシリシン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロイソロイシン、N−メチルアラニン、N−メチルグリシン、N−メチルイソロイシン、N−メチルペンチルグリシン、N−メチルバリン、ナフタアラニン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、ペンチルグリシン、ピペコリン酸、ピログルタミン酸及びチオプロリンなどが挙げられる。更なる非天然アミノ酸には、化学的にブロックされた、又は可逆的、不可逆的もしくは化学的にN末端アミノ基又は側鎖基が修飾されている修飾アミノ酸残基が包含され、例えば、Nメチル化されたD及びL型アミノ酸又は残基であって、側鎖官能基が化学的に他の官能基に修飾されているものが挙げられる。例えば、修飾アミノ酸としては、メチオニンスルホキシド、メチオニンスルホン、アスパラギン酸−(βメチルエステル)(アスパラギン酸由来の修飾アミノ酸)、N−エチルグリシン(グリシン由来の修飾アミノ酸)、又はアラニンカルボキサミド(アラニン由来の修飾アミノ酸)などが挙げられる。組み込むことができる更なる残基は、Sandbergら(1998) J.Med.Chem.41:2481−2491.に記載されている。
変形例はマーカッシュ群として記載(例えば複数の可能なアミノ酸を含む各アミノ酸位)される点に留意する必要がある。マーカッシュグループの各メンバーは別個に考慮されるべきであり、またそれにより、他の実施形態も含んでなり、マーカッシュグループは単一のユニットとして解釈すべきでない。
「配列同一性」とは、2つ以上のポリペプチド配列又は2つ以上のポリヌクレオチド配列の関係のことであって、公知の技術において配列を比較することによって定義されるものを指す。従来技術においては、「同一性」とは、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の配列相関性の程度を意味することもあり、それは配列間のマッチングの程度により定まる。「同一性」は、限定されないがComputational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York(1988)、Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993、Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey(1994)、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press(1987)、Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,Stockton Press,New York(1991)、and Carillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J Applied Math,48:1073(1988)に記載されている公知の方法によって容易に算出できる。同一性を測定する方法は、試験される配列間で最もマッチするように設計される。更に、同一性を測定する方法は一般公開されているプログラムを用いて実施できる。2つの配列間の同一性の測定に使用できるコンピュータプログラムとしては、限定されないが、GCG(Devereuxら(1984) Nucleic Acids Research 12:387、5つのBLASTプログラムのセット、ヌクレオチド配列質問用に設計された3プログラム(BLASTN、BLASTX及びTBLASTX)、並びにタンパク質配列質問に設計された2プログラム(BLASTP及びTBLASTN)(Coulson(1994) Trends in Biotechnology 12:76−80、Birrenら(1997)Genome Analysis 1:543−559)などが挙げられる。BLAST XプログラムはNCBI及び他の情報源から一般公開されている(BLAST Manual,Altschul,S.ら,NCBI NLM NIH,Bethesda,MD 20894、 Altschulら(1990) J.Mol.Biol.215:403−410)。公知のSmith Watermanアルゴリズムもまた、同一性をの測定に使用できる。
ポリペプチド配列比較の典型的なパラメータを以下に示す:
アルゴリズム:Needleman and Wunsch(1970) J.Mol.Biol.48:443−453、
比較マトリックス:BLOSSUM62 from Hentikoff and Hentikoff(1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919、
ギャップペナルティ:12、
ギャップ長ペナルティ:4。
これらのパラメータが使用可能であるプログラムは、Genetics Computer Group(“GCG”)(マディソン、WI)から、“gap”プログラムとして一般公開されている。エンドギャップに対するペナルティなしにおける上記パラメータが、ペプチド比較におけるデフォルトパラメータである。一実施形態では、NCBIのBLASTPプログラムが、実質的な調整が必要ない、デフォルトパラメータによって用いられる。
予想値:10、
文字サイズ:3、
BLOSUM62マトリックス、
ギャップ拡張コスト:11、
エンドギャップ拡張コスト:1、
ブラスト拡張のdropoff(X):7(ビット)、
ギャップアラインメントのX dropoff値:15(ビット)、
及びギャップアランメントの最終X dropoff値25:(ビット)。
核酸分子配列比較のパラメータを以下に示す:
アルゴリズム:Needleman and Wunsch(1970) J.Mol.Bio.48:443−453、
比較マトリックス:マッチ±10、
ミスマッチ=0、
ギャップペナルティ:50、
ギャップ長ペナルティ:3。
本発明の用語「%同一性」は、核酸分子配列比較のデフォルトパラメータとしての上記パラメータと、GCGの“gap”プログラム(バージョン10.2)を使用して決定される。
1つの態様では、本願明細書で開示するP−PIコンジュゲート化合物の使用により、血漿中のペプチドホルモンの血漿中半減期を長期化させる方法が提供される。P−PIコンジュゲートの投与により、コンジュゲートしていないペプチドの投与と比較し、コンジュゲートのペプチドの血漿中半減期が長期化する。P−PIコンジュゲートのペプチダーゼ阻害剤は、内在性成分ペプチドの血漿中半減期を増加させることもできる。ペプチドの血漿中半減期の長期化により、ペプチドの有効血漿濃度の長期にわたる維持もしくは上昇がもたらされる。
本発明の用語「血漿中半減期の長期化」とは、適切なコントロールと比較し、血漿中のペプチドの半減期が長期化していることを意味する。例えば、P−PIコンジュゲートのペプチドの血漿中半減期は、コンジュゲートしていないペプチドのそれより長い。一実施形態では、P−PIコンジュゲートは、コンジュゲートしていない成分ペプチドの血漿中半減期と比較し、少なくとも5%ペプチドの血漿中半減期を長期化させる。幾つかの場合には、P−PIコンジュゲートは、コンジュゲートしていない成分ペプチドの血漿中半減期と比較し、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、ペプチドの血漿中半減期を長期化させる。ペプチドの血漿中半減期はin vivo又はin vitroで測定でき、本願明細書に記載の、又は従来技術において公知の方法を使用して測定できる。
別の態様では、本願明細書で開示するP−PIコンジュゲート化合物の使用により、血漿中でのペプチドホルモンのペプチド分解を減少もしくは遅延させる方法が提供される。P−PIコンジュゲートの投与により、コンジュゲートしていないペプチドの投与と比較し、コンジュゲートのペプチドの分解が減少又は遅延する。P−PIコンジュゲートのペプチダーゼ阻害剤はまた、血漿中での内在性成分ペプチドの分解を減少又は遅延させることもできる。血漿のペプチド分解の減少又は遅延により、ペプチドの有効血漿濃度の長期にわたる維持もしくは上昇がもたらされる。
本発明の用語「ペプチド分解」とは、内在性であるか外生のペプチドが生物学的プロセス(例えばペプチダーゼ)によって、in vivo又はin vitroで分解されるプロセスのことを指す。例えば、血漿のP−PIコンジュゲートのペプチド分解は、コンジュゲートしていないペプチドのそれよりも低い程度である。一実施形態では、P−PIコンジュゲートは、コンジュゲートしていない成分ペプチドの血漿中での分解と比較し、血漿中でのペプチド分解を少なくとも5%減少させるか、又は遅延させる。幾つかの場合には、P−PIコンジュゲートは、コンジュゲートしていない成分ペプチドの血漿中での分解と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、ペプチドの血漿中での分解を減少させる。ペプチドの分解はin vivo又はin vitroで測定でき、本願明細書に記載の方法、又は従来技術において公知の方法によって測定できる。
一般に、本願明細書で開示するP−PIコンジュゲート化合物は、個々の成分ペプチド又はペプチダーゼ阻害剤が、それらの生物学的活性に基づいて機能を発揮する方法において有用である。1つの態様では、本願明細書で開示する特定のP−PIコンジュゲートは、コンジュゲートしていないペプチドよりも血清中半減期が長期にわたる。したがって、コンジュゲートは当業者が成分ペプチドを使用する方法において有用である。別の態様では、特定のP−PIコンジュゲートのペプチドは、ペプチダーゼ阻害剤がペプチド受容体リッチな部位に特異的かつ効率的に輸送されることを可能にする。したがって、ペプチダーゼ阻害剤により、活性部位(例えばペプチド受容体)で内在性ペプチド分子上のペプチダーゼ活性が低下する。
1つの一般的態様では、P−PIコンジュゲート化合物の投与による、栄養分の取り込みを減少させる方法を提供する。すなわち、本発明では、栄養分の取り込みの減少により利益が得られる疾患、障害及び/又は症状を治療するための方法を開示する。栄養分の取り込みの減少により利益が得られえる症状、疾患及び障害としては、限定されないが、肥満、肥満関連の状況、摂食障害、高血圧、肺高血圧、異脂肪血症、高脂血症、心血管疾患、インシュリン耐性、異常な食後の高血糖、及びあらゆる種類の真性糖尿病、ダンピング症候群及びメタボリックシンドロームが挙げられる。血清半減期が長期化し、ペプチド単独の場合と比較してコンジュゲートの効果が長期化するため、本願明細書で開示する方法は、少ない治療薬の投与量の若しくは少ない投与頻度でも効果的である。栄養分の取り込みを減少させる方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、PYY、エキセンディン、GLP−1、アミリン、sCT、AFP−6、レプチン、又はこれらのいずれかのハイブリッド、アゴニスト、アナログもしくは誘導体である、コンジュゲートが挙げられる。したがって、成分ペプチドがPYY、エキセンディン、GLP−1、アミリン、sCT、AFP−6、レプチン、又はこれらのいずれかのハイブリッド、アゴニスト、アナログもしくは誘導体であるコンジュゲートは、本願明細書に記載のように、栄養分の取り込みの減少により利益が得られる、症状、疾患及び障害の治療又は予防に有用なP−PIコンジュゲートの非限定的な実施形態である。
「栄養分の取り込みを減少させる」とは、身体が栄養分を脂肪として貯蔵する量を減少させるためのあらゆる方法のことを指す。換言すれば、栄養分の取り込みの減少は、食物摂取の減少、食欲の減退、満腹感を増加させること、食品の選択/嗜好に影響を与えること、代謝を増加させること、栄養分吸収を減少又は阻害すること、又はそれらのあらゆる組合せ(これらに限定されない)によりなされる。影響を受けうる典型的な機構としては、胃排出遅延などが挙げられる。
1つの態様では、患者の肥満を治療もしくは予防する方法の提供に関し、当該方法は、患者に治療的又は予防的有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。また、患者の肥満による症状又は影響を治療又は改善する方法の提供にも関し、当該方法は、患者に治療上有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。「肥満」とは通常、30以上の肥満度指数(BMI、kg/m2)として定義されるが、本発明の開示では、30未満の肥満度指数を有する患者であっても、体重の減少又は体重増加の防止必要とする又は希望する者であれば、「患者」の範囲に包含される。すなわち30〜25(体重超過であるとみなされる)又は25以下のBMIを有する患者は、本願明細書で開示する方法における患者の範囲に包含される。病的な肥満とは、40以上のBMIのことを指す。
幾つかの実施形態では、患者の代謝速度を上昇させるか、患者の代謝速度の減少を抑止するか、又は患者の代謝速度を維持する方法の提供に関する。「代謝速度」とは、単位時間当たりの、放出/消費されるエネルギー量のことを意味する。単位時間当たりの代謝は、摂食量、熱として放出されるエネルギー又は代謝プロセスで使用される酸素の量から推定できる。体重を減少させたいときは通常、高い代謝速度を高めることが望ましい。例えば、高い代謝率をもつ人は、ある活動を実施する際、その活動において低い代謝速度を示す人より、多くのエネルギーを消費できる(例えば、身体がより多くのカロリーを消費する)。
一実施形態では、代謝速度は、エネルギー源として、除脂肪体組織よりも体脂肪の優先的な使用を伴ってもよい。1つの態様では、除脂肪体重はP−PIコンジュゲートの投与後に減少しない。別の態様では、除脂肪体重の減少は、P−PIコンジュゲートの投与後に低減又は防止される。更に別の態様では、除脂肪体重は、P−PIコンジュゲートの投与後に増加する。かかるエネルギーソースとしての脂肪の選択性は、体組織と脂肪組織の量を比較することにより測定でき、治療期間の始めと終わりにおける、総体重及び脂肪量を測定することにより確認される。代謝速度の増加とは、ある期間における、患者によるカロリー又は他のエネルギー源の使用が、実質的に類似もしくは同一の条件下での、P−PIコンジュゲートの投与のない他の期間における、当該患者によるカロリー又は他のエネルギー源の使用するレベルと比較し、より高いレベルであることを指す。一実施形態では、患者における代謝速度が、実質的に類似もしくは同一の条件下での、P−PIコンジュゲートの投与のない他の期間における、当該患者による代謝速度と比較し少なくとも5%増加し、他の一実施形態では、当該代謝速度は、当該患者において少なくとも10%、15%、20%、25%、30%又は35%増加する。代謝速度の増加は例えば、呼吸熱量計を使用して測定できる。
他の実施形態では、患者の代謝速度の減少を低減させる方法の提供に関する。かかる代謝速度の減少は、様々なコンディショニング療法、栄養的もしくは理学的な治療計画に起因して生じうる。例えばカロリー含量の少ない食品の摂取、食事制限又は体重減少に起因して代謝速度が減少するケースが考えられる。食事制限としては、食事中に含まれてもよい食品のタイプ、食品の量又はその両方(必ずしもカロリーベースではない)に関する、供給量、禁止又はその両方が挙げられる。例えば、個々の食事において、身体は、低いカロリー摂取の際、代謝速度の減少でそれを補償する。要約すれば、身体は食品の必要量を下方制御し、それによって少ない食品での生存を可能にする。ダイエットを継続することにより、カロリー摂取の閾値が次第に減少する。ダイエットが終了した後には、カロリー摂取閾値が低下し、基礎代謝速度が低下しているため、その個人は、通常どおりに食事を摂取した場合、リバウンドにより体重が増加する(NIH Technology Assessment Conference Panel(1992) Ann.Intern.Med.116:942−949、Wadden(1993) Ann.Intern.Med.119:688−693)。1つの態様では、患者の代謝速度の減少を低減するための方法の提供に関し、当該代謝速度の減少は、カロリーダイエットの低下又は体重減少の結果である。かかる方法を用いて、患者の代謝速度の減少は、患者において少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は95%低減される。かかる方法においては、PPIコンジュゲートの投与は、代謝速度の損失又は減少につながるコンディショニング療法、栄養的もしくは理学的な療法の開始時に行うのが望ましい。しかしながら、コンディショニング療法、栄養的もしくは理学的な療法の開始前に、P−PIコンジュゲートの投与を開始してもよい。一例を挙げると、代謝速度は呼吸熱量計を使用して測定される。
別の態様では、代謝的なプラトーを減少させる方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。一実施形態では、当該患者は、体重が減少しているか、又は例えばカロリーダイエットを減少させたか、運動量が増加したか又はそれらの組み合わせにより体重を減少させた患者である。「代謝的なプラトー」とは、身体が、カロリー又はエネルギーのインプットの変化に適応している間の、一定の代謝速度が見られる時間間隔のことを意味する。例えば、カロリーインプット又はアウトプットの変化は、カロリーダイエットの減少又は身体運動の増加結果である場合もある。かかるプラトーは例えば、体重減少が減速又は低減する体重減少療法の間に観察されうる。一実施形態では、本発明で提供される方法により、同じ期間にわたり、実質的に類似もしくは同一の条件下で処置した、P−PIコンジュゲートの投与を行わなかった同一の患者の代謝プラトー期間と比較し、患者の代謝プラトー期間が短期化する。他の実施形態では、本発明で提供される方法により、同じ期間にわたり、実質的に類似もしくは同一の条件下で処置した、P−PIコンジュゲートの投与を行わなかった同一の患者の代謝プラトー頻度と比較し、患者の代謝プラトーの頻度が減少する。更に他の実施例では、本発明で提供される方法により、同じ期間にわたり、実質的に類似もしくは同一の条件下で処置した、P−PIコンジュゲートの投与を行わなかった同一の患者の代謝プラトーの開示時期と比較し、患者の代謝プラトーの開始時期が遅延する。一実施形態では、代謝プラトーは、体重減少が低減又はなくなる時期を検出することにより同定される。一実施形態では、少なくとも1つの代謝プラトーが減少する。他の実施形態では、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ又は10の代謝プラトーが減少する。別の態様では、同一もしくは類似の条件下でP−PIコンジュゲートを投与しなかった患者と比較し、代謝プラトーが1日遅延する。他の実施態様として、2日、3日、4日、5日、6日、1週、10日、2週又は3週間、患者の代謝プラトーが遅延する。
更に別の実施形態では、患者の代謝速度を維持する方法の提供に関する。一実施形態では、当該患者は、例えば、カロリーダイエット減少もしくは食事制限の開始、又は体重減少が予想されるために、代謝速度が低下するおそれのある患者である。代謝速度の維持とは、ある期間にわたる、ある患者によるカロリー又は他のエネルギー源を使用するレベルが、P−PIコンジュゲートの投与のない実質的に類似であるか同一の条件下の同じ期間にわたるそれ以外は同一の患者による、カロリー又は他のエネルギー源を使用するレベルと比較し、維持されることを意味する。1つの態様では、代謝速度は、代謝速度の減少に結びつく事項の開始前における、患者の代謝速度に対して、15%以内の低下に維持される。他の実施形態では、当該代謝速度の低下は、患者の代謝速度の10%以内、7%以内、5%以内、3%以内に維持される。1つの態様では、P−PIコンジュゲートは、カロリーダイエットの減量、食事制限又は運動療法の開始時において投与される。
他の実施形態では、患者の代謝速度を上昇させることにより脂肪重量を減少させる方法の提供に関する。当該方法は、患者の代謝速度を上昇させることにより脂肪重量を減らすのに効果的な量のPPIを投与することを含んでなる。脂重量は、総体重に対するパーセンテージとして表すことができる。幾つかの場合では、脂肪重量は、治療期間中に少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%又は少なくとも25%減少する。1つの態様では、患者の除脂肪体重は、治療期間を通じて減少しない。別の態様では、患者の除脂肪体重は、治療期間を通じて維持されるか又は増加する。別の態様では、患者はカロリーダイエットの減量又は食事制限を実施している。「カロリーダイエットの減量」とは、患者が、同じ患者の通常の食事と比較して1日あたりのカロリー摂取量を減少させていることを意味する。一例では、患者は1日当たり少なくとも50カロリー少なく消費している。他の例において、患者は1日当たり少なくとも100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、又は1,000カロリー少なく消費している。
本発明の用語「除脂肪重量」又は「除脂肪体重」とは、筋肉及び骨の重量を指す。除脂肪体重が、脂肪フリーの体重を必ずしも示すというわけではない。除脂肪体重においても、中枢神経系(脳及び脊髄)、骨の髄及び内部臓器の範囲内で、少ないパーセンテージで脂肪が含有される(およそ3%)。除脂肪体重とは密度として計量される。一実施形態では、脂肪重量及び除脂肪体重は、水中重量として計量される。
一実施形態では、患者の脂肪分布を変化させる方法の提供に関し、当該方法は、患者の脂肪分布を変化させるのに効果的な量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。「脂肪分布」とは、身体における、脂肪が蓄積する部位のことを意味する。かかる脂肪蓄積の部位としては例えば、皮下、内臓及び異所性の脂肪細胞などが挙げられる。1つの態様では、当該変化は、患者における内臓、異所性脂肪、又はその両方における代謝増加に起因する。幾つかの実施形態では、当該方法により、内臓脂肪もしくは異所性脂肪、又はその両方の代謝を、皮下脂肪のと比較し、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%又は50%高い速度とする。1つの態様では、当該方法により、好ましい脂肪分布となる。一実施形態では、好ましい脂肪分布では、皮下脂肪 対 内蔵脂肪、異所性脂肪又はその両方の比率が増加する。1つの態様では、当該方法では、例えば筋肉細胞塊の増加の結果として、除脂肪体重が増加する。
他の実施形態では、患者の皮下脂肪の量を減らす方法の提供に関し、当該方法は、それを必要とする患者に、患者の皮下脂肪の量を減らすのに効果的な量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。「皮下脂肪」とは、表皮直下における脂質の堆積のことを意味する。患者の皮下脂肪の量は、いかなる皮下脂肪の測定方法を使用して計量できる。一例では、患者において、皮下脂肪の量が少なくとも約5%減少する。他の例では、皮下脂肪の量は、PPIコンジュゲートの投与前の患者と比較し、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%又は50%減少する。
本願明細書に記載の方法は、患者の内蔵脂肪量を減少させるために使用できる。「内臓脂肪」とは、腹腔内脂肪組織としての脂肪の沈着物のことを意味する。内蔵脂肪は内蔵を囲み、肝臓によって代謝され、血液中コレステロールとなる。内蔵脂肪は、例えば多嚢胞性卵巣症候群、メタボリックシンドローム及び心血管疾患などの症状の発症率の増加と関連する。内蔵脂肪は、患者の内蔵脂肪量を測定するためのいかなる方法によっても測定できる。一例では、患者において、内蔵脂肪が少なくとも約5%減少する。他の例では、PPIコンジュゲートの投与前の患者と比較し、患者における内蔵脂肪が少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%又は50%減少する。
一実施形態では、異所性脂肪の蓄積を防止するか、又は患者の異所性脂肪の量を減少させる方法の提供に関し、当該方法は、それらを必要とする患者に、患者の異所性脂肪の蓄積を防止する、又は異所性脂肪の量を減少させるのに効果的な量の、P−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。「異所性脂肪の蓄積」とは、組織の範囲内及び周辺、並びに除脂肪体重を構成する器官(例えば骨格筋、心臓、肝臓、膵臓、腎臓、血管)における脂質沈着物のことを意味する。通常、異所性脂肪の蓄積とは、身体の古典的な脂肪組織の外側における脂質の蓄積のことを指す。一例を挙げると、患者における異所性脂肪の量は、P−PIコンジュゲートの投与前の患者と比較し、少なくとも約5%減少する。他の例では、患者における異所性脂肪の量は、少なくとも約10%、又は少なくとも約15%、20%、25%、30%、40%又は50%減少する。あるいは、異所性脂肪の量は、患者の皮下脂肪と比較し、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少する。異所性脂肪は、患者における異所性脂肪を測定するためのいかなる方法によって測定してもよい。
他の実施形態では、患者においてより好ましい脂肪分布を生じさせる方法の提供に関し、当該方法は、患者において好ましい脂肪分布を生じさせるのに効果的な量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。一実施形態では、患者へのP−PIコンジュゲートの投与により、内蔵脂肪もしくは異所性脂肪の量、又はその両方が減少する。一実施形態では、当該方法では、皮下脂肪の減少よりも、優先的に、内臓もしくは異所性脂肪の量、又はその両方の組合せを減少させる。かかる方法により、皮下脂肪 対 内蔵脂肪又は異所性脂肪の比率が高くなる。かかる比率を改善することにより、心血管疾患、多嚢胞性卵巣症候群、メタボリックシンドローム又はいかなるそれらの組み合わせが進行する危険性が減少する。一実施形態では、異所性若しくは内臓脂肪は、皮下脂肪より5%、代謝速度が高くなる。他の実施形態では、異所性若しくは内臓脂肪は、皮下脂肪より少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%、代謝速度が高くなる。
更に別の態様では、本発明で提供される方法は、副腎皮質ステロイドとの組み合わせで、治療上有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。副腎皮質ステロイドは脂肪重量を増加させ、除脂肪体重を減少させる副作用を有する。したがって、副腎皮質ステロイドの使用が有益である条件下で、P−PIコンジュゲートを、副腎皮質ステロイドと組み合わせて使用してもよい。
本発明はまた、病的に肥満した患者の体重を減少させる方法の提供に関し、当該方法は、最初に患者の体重を、病的肥満の時のレベル以下に減少させ、更に、患者の体重を減少させるのに効果的な量のP−PIコンジュゲートを患者に投与することを含んでなる。患者の体重を病的な肥満のレベル以下に低下させる方法としては、カロリー摂取量の減量、肉体運動の増加、薬物治療、バリアトリック(bariatric)手術(例えば胃バイパス手術)又はそれらの任意の組合せが挙げられる。1つの態様では、更なる抗肥満薬品の投与と組み合わせることにより、患者の体重を減少させる。他の実施形態では、更に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することによって、40以下の肥満度指数を有する患者の肥満度指数を低下させて、患者の体重を減少させる方法の提供に関する。
「体重を減少させる」とは、患者が、一定の治療期間(日、週、月又は年で)において、その総体重の一部を減少させることを意味する。あるいは、「体重を減少させる」とは、脂肪重量 対 除脂肪体重の比率を低下させることとして定義されうる(換言すれば、患者は脂肪重量を落としたが、除脂肪体重は維持されたか又は増加してもよく、必ずしも総体重が低下しなくともよい)。この場合、一実施形態では、投与される有効量のP−PIコンジュゲートとは、治療期間において患者の体重を減少させるのに効果的な量、又はあるいは治療期間において患者の脂肪重量のパーセンテージを減少させるのに効果的な量のことを指す。具体的な実施形態では、治療期間を通じて、患者の体重が、少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%減少する。具体的な実施形態では、治療期間において、患者のBMIが、約35未満〜約30、30未満〜約25、25未満、又は25〜30に低下する。あるいは、治療期間において、患者の脂肪重量のパーセンテージが、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%又は少なくとも25%低下する。
本発明はまた、患者の熱発生を増加させる方法の提供に関し、当該方法は、それを必要とする患者に、有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。熱発生とは、身体の代謝速度を上昇させることによる、熱としてカロリーを解放する方法のことを指す。熱発生は、サプリメント、栄養摂取、運動及び寒さへの曝露などのメカニズムによって活性化される。
本発明はまた、患者の酸化的代謝を増加させる方法の提供に関し、当該方法は、それを必要とする患者に、有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。酸化的代謝とは、酸素を用いて炭水化物(糖)からエネルギーを発生させるプロセスのことを指す。
別の態様では、患者の満腹感を誘導する方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。更に他の態様では、患者の空腹感のコントロール方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。更なる態様では、患者の満腹感を持続させる方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。
更に他の態様では、患者によって摂食される食事の量を減少させることによってカロリー摂取量を減少させる方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。別の態様では、患者による食物摂取のコントロール方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。
更に他の態様では、患者によるカロリー制限又は食事制限の遵守を確実にするか又は援助する方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。更なる態様では、患者のセットポイントを調整し、身体のホメオスタシス傾向を、より好ましいセットポイントに適合させる方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。更に他の態様では、患者において、体重減少を維持するか、又は減少した体重を維持する方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。この態様の一実施形態では、当該体重減少は患者のセットポイントをリセットすることにより維持される。
一実施形態では、栄養分の取り込みの減少により利益を得る代謝疾患又は障害を治療及び/又は予防するのに有用である方法の提供に関する。したがって、これらの方法は、肥満、糖尿病(例えば2型又はインスリン非依存性糖尿病、1型糖尿病及び妊娠糖尿病)、摂食障害、インスリン耐性症候群及び心血管疾患を治療及び/又は予防に有用であると考えられる。また他の実施形態では、摂食障害(例えばプラデル−ウィリ症候群)、過食症、栄養の過剰摂取に伴う障害、又はそれらの組み合わせを治療又は予防する方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。
本発明では、患者の脂肪分布の変化、脂肪重量の減少又はその両方を生じさせるための使用方法の提供に関する。したがって、身体組成を変化させることが好ましい患者は、本発明の方法により利益を得ることもできる。本願明細書「身体組成の変化」とは、例えば除脂肪体重の低下の最小限化、維持又は増加を伴う、体脂肪の減少又は維持のことを指す。かかる状況においては、体重は減少してもよく、また増加してもよい。したがって、これらの用語が通常従来技術において使われるときは、患者はスリムでもよく、体重超過でもよく、肥満でもよい。本発明で提供される方法は、除脂肪体重を維持しつつ、非脂肪組織中の脂肪を減少させてもよい。この方法の用途としては、例えば非アルコール性脂肪肝炎又はリポジストロフィーなどの疾患の治療が挙げられる。
本願明細書に記載のように、成分ペプチドがPYY、エキセンディン、GLP−1、アミリン、sCT、AFP−6、レプチン、又はこれらのいずれかのハイブリッド、アゴニスト、アナログもしくは誘導体であるコンジュゲートは、栄養分の取り込みの減少から利益を得ることができるかかる症状、疾患及び障害の治療又は予防の際に有用なP−PIコンジュゲートの非限定的な例である。したがって、別の態様では、本願明細書において記載されるPPIコンジュゲート及び組成物は、栄養分の取り込みの減少から利益を得ることができるかかる症状、疾患及び障害を治療もしくは予防に有用な薬剤の製造において有用である。
代謝速度は、例えば呼吸熱量計などの、かかる速度を測定できるあらゆる方法を使用して測定できる。かかる代謝速度を測定する方法及び装置は従来技術において公知であり、例えば米国特許番号4572208号、第4856531号、第6468222号、第6616615号、第6013009号及び第6475158号に記載されている。あるいは、動物の代謝速度は、除脂肪体重 対 食事期間の後に動物により異化される脂肪組織を測定することにより測定できる。すなわち総体重及び脂肪の含有量を、食事期間の終わりに測定してもよい。
脂肪重量及び除脂肪体重の測定方法としては、限定されないが、水中重量の測定、空気置換プレチスモグラフ、X線、DEXAスキャン、MRI及びCTスキャンなどが挙げられる。皮下脂肪を測定する方法は公知であり、例えば米国特許第6530886号に記載されている。内蔵脂肪は、患者の内蔵脂肪量の測定に使用できるいかなる手段によっても測定できる。かかる方法としては、例えばCTスキャンによる腹部X線断層撮影、及びMRIが挙げられる。内蔵脂肪を測定する他の方法は、例えば米国特許第6864415号、第6850797号及び第6487445号に記載されている。異所性脂肪は、患者における異所性脂肪の測定に利用できるいかなる方法を使用して測定してもよい。ラットにおいて、全体脂肪の測定に頻繁に使われる方法は、外科的に、後腹膜脂肪パッド、腹膜後腔に位置する体脂肪、後方腹壁と後方体壁腹膜間の領域を除去し、秤量することである。パッド重量は、動物の体脂肪パーセントと直接関連すると考えられる。ネズミの体重と体脂肪には直線的な相関関係があるため、肥満動物では、体脂肪及び後腹膜脂肪パッド重量のパーセンテージが高い。
他の実施形態では、患者の糖尿病の症状又は影響を治療、予防又は改善させる方法の提供に関し、当該方法は、患者に治療的又は予防的有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。当該方法は、2型又はインスリン非依存性糖尿病、1型糖尿病及び妊娠糖尿病などの、いかなるタイプの真性糖尿病の患者においても有用である。本願明細書に記載のように、糖尿病の治療におけるP−PIコンジュゲートの使用には、限定されないが、インシュリン分泌の促進、インスリン感受性の刺激、ブドウ糖により誘発されるインシュリン放出の強化、グルカゴン分泌の低下、空腹の防止、ブドウ糖利用の強化などが挙げられる。したがって、糖尿病の症状又は影響を治療、予防又は改善させる方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物は、成分ペプチドが、エキセンディン、GLP−1、GIP、アミリン、レプチン又はこれらのあらゆるハイブリッド、アゴニスト、アナログ又は誘導体であるコンジュゲートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
別の態様では、患者のインシュリン耐性の兆候又は効果を治療、予防又は改善する方法の提供に関し、当該方法は、患者に治療的又は予防的有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。インシュリン耐性とは、幅広い範囲の濃度にわたる、インシュリンの生物学的活性が減弱することを指す。インシュリン耐性の兆候又は効果を治療、予防又は改善させる方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、エキセンディン、GLP−1、GIP、レプチン、又はこれらのいずれかのハイブリッド、アゴニスト、アナログ若しくは誘導体であるコンジュゲートが挙げられる。
インシュリン耐性及び高脂血症と共に、高血圧は、メタボリックシンドローム(別名インシュリン耐性症候群(IRS)及び症候群X)を特徴づける症状を構成する。別の態様では、患者のメタボリックシンドロームの症状又は効果を治療、予防又は改善させる方法の提供に関し、当該方法は、患者に治療的もしくは予防的有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。メタボリックシンドロームの症状又は効果を治療、予防又は改善させる方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、エキセンディン、GLP−1、GIP、CGRP又はこれらのハイブリッド、アゴニスト、アナログ又は誘導体であるコンジュゲートが挙げられる。
他の一般の態様において、患者の心血管疾患又は症状の兆候又は影響を治療、予防又は改善させる方法の提供に関し、当該方法は、患者に治療的もしくは予防的有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。心血管疾患又は症状としては、限定されないが、高血圧、肺高血圧、心筋虚血、心筋再かん流、脳卒中、心臓不整脈、鬱血性心不全、冬眠心筋、心筋梗塞、心筋症及び冠状動脈疾患などが挙げられる。一実施形態では、患者の肥満と関連した心血管疾患又は症状の兆候又は影響を治療、予防又は改善させる方法の提供に関する。他の実施形態では、患者の肥満と関連ない(すなわち患者は肥満でない)心血管疾患又は症状の兆候又は影響を治療、予防又は改善させる方法の提供に関する。心血管疾患又は症状の兆候又は影響を治療、予防又は改善させる方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、エキセンディン、GLP−1、アミリン、sCT、CGRP又はこれらのハイブリッド、アゴニスト、アナログ又は誘導体であるコンジュゲートが挙げられる。したがって、別の態様では、本願明細書に記載のP−PIコンジュゲート及び組成物は、本願明細書に記載の、患者の心血管疾患又は症状の兆候又は影響を治療、予防又は改善にとり有用な薬剤の製造において有用である。
高血圧とは、多くの患者に生じうる症状であり、その原因となる物質又は障害は不明である。かかる「本質的な」高血圧は、障害(例えば肥満、糖尿病及び高トリグリセリド血症)をしばしば伴う。高血圧は、左室不全、アテローム硬化型心臓病、心筋梗塞、網膜出血、液滲出、乳頭水腫、及び脈管損傷、脳卒中の有無にかかわらない脳血管不全及び腎不全などの多数の合併症にをもたらすこともある。高血圧は網膜出血、液滲出、乳頭水腫及び脈管損傷をもたらすこともある。異常血圧は、具体的な症状又は疾患(例えば心不全)から生じることもある。心不全とは、心臓が身体における代謝に必要なだけの心拍出量を提供できないときに生じる、慢性若しくは急性の症状である。心不全は一般に鬱血性心不全(CHF)と呼ばれる。その理由は、増加した静脈圧の兆候(例えば左心不全を有する肺うっ血、及び右心不全を有する末梢浮腫)がしばしば支配的であるからである。CHFの症状及び徴候としては、疲労、周辺及び肺浮腫、及び内臓鬱血(例えば呼吸困難)などが挙げられる。これらの症状は、心臓から身体の様々な組織に対する血流減少、及び血液供給の不全から生じる、様々な器官における過剰な血液の蓄積によって生じる。心不全は、幾つかの基礎疾患から生じることもあり、最も一般的には、先進工業国においては、心筋梗塞を有するアテローム硬化型冠状動脈疾患から生じる。内分泌の障害に伴う代謝性疾患は心筋症を生じさせることもあり、幾つかの心筋症は、心不全に至ることもある。高血圧、心不全及びそれに関連する症状の兆候又は影響を治療、予防又は改善させる方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、エキセンディン、GLP−1、アミリン、sCT、CGRP又はそれらのハイブリッド、アゴニスト、アナログ又は誘導体であるコンジュゲートが挙げられる。
本願明細書において述べられるように、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤は、高血圧の血管拡張剤としての役割、及びCHFを治療する役割を主に果たし、これらの障害を治療する最も効果的な薬剤の1つとして、従来技術において公知である。また、急性及び慢性心筋梗塞患者のACE阻害剤の使用による延命効果は、一連の国際的に行われた、ランダム化された、コントロールされた臨床研究によって確立されており、公知である。例えば、ACE阻害剤は、急性心筋梗塞による死亡率、及び重度の非致死性心血管事象の発生率を低下させるのに効果的であることが示されている。臨床試験では、ACE阻害剤が広い範囲の心筋梗塞及び心不全患者(心室機能不全を有するが、症状がない個人から、対症心不全を有するが、血圧正常者及び血行力学的に安定である個人まで)に対して延命効果を有することが示されている。高血圧、心不全、心筋梗塞及びそれに関連する症状の兆候又は影響を治療、予防又は改善するための方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、成分ペプチダーゼ阻害剤が、ACE阻害剤又は中性エンドペプチターゼ(NEP)/ACE阻害剤であるコンジュゲートが挙げられるが、これらに限定されない。
一実施形態では、心臓不整脈を治療又は予防するため、又は心臓不整脈の症状を改善するための方法の提供に関し、当該方法は、それを必要とする患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。幾つかの実施形態では、P−PIコンジュゲートの投与により、心筋虚血、心筋再かん流又は鬱血性心不全患者の抗不整脈効果が得られる。例えば、GLP−1投与により心臓損傷が軽減し、これらの障害を有する患者の回復が促進されることが示されている。GLP−1及びエキセンディンは、効果的に、危険な低血糖症を誘発することなく、周縁部におけるブドウ糖取り込みを促進する。GLP−1及びエキセンディンはまた、グルカゴン分泌を協力に抑制し、このことにより、インシュリンによって生じる場合よりもより顕著に、血漿中の遊離脂肪酸(FFA)濃度を低下させる。高いFFAレベルは、心筋虚血の間における主要な中毒メカニズムとして関与している。したがって、P−PIコンジュゲート(GLP−1又はエキセンディンペプチドを含有するものを含む)は、心筋虚血の症状を治療又は改善する際に有用である。もう1つの実施例では、ハイブリッドは心臓不整脈を予防、治療するのに有用であり、確実に再かん流を伴う損傷を減少させる。更に他の一実施形態では、急性の脳卒中又は出血後におけるP−PIコンジュゲートによる治療により、インシュリン分泌を最適化し、脳同化作用を増加させ、グルカゴンを抑制することによりインシュリン効果を強化し、高度の低血糖症又は他の逆副作用の危険性なく正常血糖症又は軽度の低血糖症を維持するための手段が提供される。
他の実施形態では、患者の脂質プロファイルを改善する方法の提供に関し、当該方法は、本願明細書で開示する有効量のP−PIコンジュゲートを患者に投与することを含んでなる。脂質プロファイルの改善には、LDLコレステロールを減少させること、中性脂肪濃度を減少させること、HDLコレステロール濃度を変化させること、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。脂質のプロファイリング方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、エキセンディン、GLP−1、PYY、アミリン、sCT又はそれらのハイブリッド、アゴニスト、アナログ又は誘導体であるコンジュゲートが挙げられる。
高血圧は、インシュリン耐性及び高脂血症と共に、メタボリックシンドローム(別名インシュリン耐性症候群(IRS)及び症候群X)を特徴づける兆候の一群を構成する。別の態様では、患者のメタボリックシンドロームの兆候又は効果を治療、予防又は改善する方法の提供に関し、当該方法は、患者に治療的もしくは予防的有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。メタボリックシンドロームの兆候又は効果を治療、予防又は改善させる方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、エキセンディン、GLP−1、GIP、又はそれらのハイブリッド、アゴニスト、アナログ若しくは誘導体であるコンジュゲートが挙げられる。
他の一般の態様では、膵臓β細胞の喪失又は欠如と関連する疾患又は障害を治療もしくは予防する方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。GLP−1はβ細胞新生に関与し、β細胞塊を増加させ、更にGIPはβ細胞増殖及び細胞生存を促進する。GLP−2は、例えば小島の成長及び増殖によって、膵島の発達を促進する。膵臓β細胞増殖を刺激又は生存させるための方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、エキセンディン、GLP−1、GLP−2、GIP、又はそれらのハイブリッドト、アゴニスト、アナログもしくは誘導体であるコンジュゲーが挙げられる。
別の態様では、ネフロパシを予防及び処理する方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。一実施形態では、ネフロパシ症状を改善するのに効果的な量のP−PIコンジュゲートの投与を含んでなる、ネフロパシ症状の改善方法の提供に関する。かかるネフロパシ症状としては、限定されないが、高血圧ネフロパシ、糖尿病性ネフロパシ、インシュリン耐性関連ネフロパシ及びメタボリックシンドロームを伴うネフロパシなどが挙げられる。例えば、P−PIコンジュゲートは、これらの症状の際に、高血圧、内皮機能、腎機能、糸球体硬化症又はそれらの組み合わせが悪化するのを改善又は予防するため、有用である。本願明細書で開示するP−PIコンジュゲートはまた、血管拡張容量が減少し、糸球体硬化症を有し、又は糸球体濾過における他の減少に罹患する患者の内皮機能の改善にとり有用である。他の実施形態では、本願明細書で開示するP−PIコンジュゲートは、ネフロパシの末期腎疾患への進行の予防若しくは遅延、並びに、蛋白尿、糸球体硬化症又はその両方の進行を予防、治療又は減速のとり有用である。ネフロパシを予防、治療するための方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、エキセンディン、GLP−1又はそれらのハイブリッド、アゴニスト、アナログ若しくは誘導体であるコンジュゲートが挙げられる。
別の態様では、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を治療する方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。本発明の用語「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」は、一種の臨床症候群のことを指す。PCOSと診断される女性は、以下の症状の1つ以上を示す:希発月経、無月経、無排卵、両面の多嚢胞性卵巣、高アンドロゲン症(高い血清中テストステロン及び/又はアンドロステンジオン)、異常な子宮出血、拡大した多小胞卵巣、不妊性、過剰な顔の毛髪の発達、脱毛、ざ瘡、インシュリン耐性、肥満、高インスリン血症、高血圧、高脂血症及び2型糖尿病。したがって、PCOSを有する患者に対するP−PIコンジュゲートの投与により、患者の規則的な月経、規則的な排卵又は生殖能力が復元される。一般に、インシュリン耐性の低減、又はインスリン感受性の増加にとり効果的なP−PIコンジュゲートは、PCOSの治療の際に有用である。幾つかの実施形態では、PCOSを有する患者のインシュリン耐性を低減又は防止する方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。更に別の実施形態では、PCOSを有する患者にP−PIコンジュゲートの投与を行うことにより、患者の2型糖尿病の発症を予防することができる。PCOSを治療する方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、エキセンディン、GLP−1又はそれらのハイブリッド、アゴニスト、アナログ若しくは誘導体であるコンジュゲートが挙げられる。
本願明細書に記載のように、開示されたP−PIコンジュゲート化合物は、成分ペプチドによる抗分泌及び抗運動性特性に関連する幾つかの生物学的活性を含む、幅広い範囲において生物学的活性を示す。抗分泌特性としては、胃及び/又は膵臓における分泌の抑制が挙げられる。したがって、胃若しくは膵臓における分泌に関連する疾患及び障害を治療又は予防する方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。胃若しくは膵臓における分泌と関連する疾患及び障害としては、胃炎、膵炎、バレット食道及び胃食道逆流症(GERD)などが挙げられる。胃若しくは膵臓における分泌と関連する疾患及び障害を治療又は予防する方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、PYY、エキセンディン、GLP−1、アミリン、又はそれらのハイブリッド、アゴニスト、アナログ又はこれらのいずれかの誘導体であるコンジュゲートが挙げられる。
他の実施形態では、特定のP−PIコンジュゲートは、膵島又は膵臓細胞のグルコース応答性を誘導、促進、強化又は復元する際に有用である。かかる活性を測定するためのアッセイは従来技術において公知であり、例えば、米国特許出願公開第2004/0228846号に記載されている。膵島又は膵臓細胞のグルコース応答性を誘導、促進、強化又は復元するのに用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、PYY、NPY、又はそれらのハイブリッド、アゴニスト、アナログ若しくは誘導体であるコンジュゲートが挙げられる。
別の態様では、腸における過剰な電解質及び水の分泌、並びに吸収減少を伴う胃腸障害を治療する方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。かかる胃腸障害としては、伝染性の下痢、炎症性下痢、短腸症候群、又は典型的に外科的手技(例えば回腸造瘻術)の後に生じる下痢などが挙げられる(Harrison’s Principles of Internal Medicine,McGraw−Hill Inc.,New York,12th Ed.)。伝染性の下痢の例としては、急性のウイルス性下痢、急性の細菌下痢(例えばサルモネラ菌、カンピロバクター及びクロストリジウム、又は原虫性感染症に起因する下痢)又は旅行者における下痢(例えばノーウォークウイルス又はロータウイルス)が挙げられるが、これに限定されない。炎症性下痢の例としては、吸収不良症候群、熱帯スプルー、慢性膵炎、クローン疾患、下痢及び過敏性大腸症候群が挙げられるが、これに限定されない。GLP−2は腸の組織の成長を促進し、本願明細書においてリストされるような小腸管粘膜の異常を特徴とする疾患又は症状に罹患する患者にとり有益な効果を生じさせる。幾つかの実施形態では、P−PIコンジュゲートは、例えば、手術後、又はコレラにより、胃腸障害を伴う緊急事態又は致命的な症状を治療する際に使用できる。腸における過剰な電解質及び水の分泌及び吸収減少に関連する胃腸障害を治療するための方法に用いられる典型的なPPIコンジュゲートとしては、成分ペプチドが、GLP−2、PYY、又はそれらのハイブリッド、アゴニスト、アナログ若しくは誘導体であるコンジュゲートが挙げられるが、これらに限定されない。
本願明細書において提供される化合物は、単に腸の損傷(例えば下痢)を伴う症状を治療するだけでなく、腸の損傷の治療又は予防にも有用である。かかる腸の損傷は、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、腸萎縮、損失腸粘膜、腸粘膜機能の損失又はいかなるそれらの組み合わせであるか、又はその結果としての損傷である。かかる活性を測定するためのアッセイは従来技術において公知で、例えば国際公開第03/105763号及びMorrisら(1989) Gastroenterology 96:795−803に記載されている。腸の損傷を治療する方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、PYY又はPYYのあらゆるハイブリッド、アゴニスト、アナログ若しくは誘導体であるコンジュゲートが挙げられる。
別の態様では、膵臓腫瘍を治療又は予防する方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。したがって、膵臓腫瘍細胞の増殖を阻害する又は減少させる方法の提供に関する。また、膵臓腫瘍の成長を阻害する方法の提供にも関する。膵臓腫瘍及び腫瘍細胞は、良性でも悪性でもよい。本願明細書に記載の典型的な方法により治療できる良性の膵臓腫瘍細胞のタイプとしては、漿液嚢胞腺腫、小嚢胞性腫瘍及び充実性嚢胞性腫瘍が挙げられる。本願明細書に記載の典型的な方法により治療できる悪性膵臓腫瘍細胞のタイプとしては、膵臓のダクト、腺房又は小島から生じる癌腫が挙げられる。かかる活性を測定するためのアッセイは従来技術において公知で、例えば米国特許第5574010号に記載されている。膵臓腫瘍の治療方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、PYY、又はあらゆるPYYのハイブリッド、アゴニスト、アナログ又は誘導体であるコンジュゲートが挙げられる。
他の一般の態様では、骨疾患(例えば骨減少症及び骨粗鬆症)を治療する方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。特定のP−PIコンジュゲートは、骨形成を促進し、骨吸収を減少させ、血漿中カルシウムを減少させ、鎮痛効果を誘導するのに有用である。更に他の一実施形態では、特定のP−PIコンジュゲートは、疼痛及び疼痛を伴う神経障害を治療するのに有用である。かかる疼痛又は骨疾患の治療方法に用いられる典型的なPPIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、エキセンディン、GLP−1、GLP−2、アミリン、sCT又はそれらのハイブリッド、アゴニスト、アナログ若しくは誘導体であるコンジュゲートが挙げられる。
他の一般の態様では、ニューロンの損失又は機能不全を伴う神経病理学的及び神経系障害の進行を治療、予防又は遅延させる方法の提供に関し、当該方法は、患者に有効量のP−PIコンジュゲートを投与することを含んでなる。かかる神経病理学的及び神経系障害としては、限定されないが、パーキンソン疾患、アルツハイマー疾患、ハンチントン疾患、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、注意欠陥障害、神経精神病学的症候群、神経変性障害、記憶障害及び認識障害が挙げられる。かかる神経病学的及び神経系障害の進行を治療、予防又は遅延させる方法に用いられる典型的なP−PIコンジュゲート化合物としては、限定されないが、成分ペプチドが、エキセンディン、GLP−1、GIP、PYY、NPY又はそれらのハイブリッド、アゴニスト、アナログ若しくは誘導体であるコンジュゲートが挙げられる。例えば、米国特許第6734166号では、PYY受容体アゴニストの使用により、治療しようとする中枢神経系のアルミニウム濃度を低下させて、アルツハイマー疾患を治療、予防又はその発症を遅延させる方法について開示している。
したがって、別の態様では、本願明細書に記載のPPIコンジュゲート及び組成物は、本願明細書に記載の疾患又は症状を治療、予防又は改善するのに有用な薬剤の製造に利用できる。
「患者」には、本願明細書において開示した組成物及び方法から利益を得ることができ、代謝性疾患、体重又は心血管疾患に問題を有する、ヒト、霊長類及び他の哺乳類(ラット、マウス、ペット(例えばネコ、イヌ)、家畜(例えばウマ、ウシ、ヒツジ及びヤギ)、並びにニワトリ、シチメンチョウ及び他の動物)などのあらゆる動物が包含される。
本発明で用いられる、従来技術において公知の「治療」とは、臨床結果などの有益若しくは所望の結果を得るためのアプローチのことを指す。疾患、障害又は症状を「治療」又は「緩和」するとは、症状、障害又は疾患状態の範囲及び/又は望ましくない臨床症状が低減することを意味し、及び/又は、当該障害を治療しない場合と比較し、時間経過に伴う進行が遅延又は長期化することを意味する。例えば、肥満の治療(体重の減少)では、例えば少なくとも体重の5%の減少が、望ましい治療結果である。本願明細書で開示する方法の場合、有益若しくは所望の臨床結果は、1つ以上の症状の緩和もしくは好転、疾患の程度の軽減、疾患の状態を安定させる(すなわち悪化させない)こと、疾患進行の遅延又は長期化、疾患状態の緩和及び緩解、改善(部分又は全体)などが挙げられるがこれらに限定されず、それらは検出可能であっても不可能であってもよい。「治療」はまた、治療を受けなかった場合に予想される生存期間と比較し、生存期間が延長されることを意味する場合もある。更に、治療は1回の薬物投与によって必ずしも生じるわけではなく、一連の薬物投与に応じて生じる場合も多い。すなわち、治療的有効量、緩和にとり十分な量、又は疾患、障害又は症状の治療に十分な量の薬物が、1回以上の回数で投与されてもよい。
本発明の用語「治療的有効量」とは、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医によって所望されている、組織、系又は患者における生物学的若しくは医学的な応答(治療されている障害の症状の緩和又は改良を含む)を誘発する組成物中の活性化合物の量を意味する。
本発明の用語「予防的有効量」とは、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医によって、目的の障害、症状又は疾患の発症を防止しようとしている組織、系もしくは患者、又はそのような危険性(例えば、患者における肥満又は肥満関連の障害、症状又は疾患に発展する危険性を有する、肥満又は肥満関連の障害、症状又は疾患)を有する患者の生物学的若しくは医学的な応答を誘発する組成物中の活性化合物の量を意味する。
本願明細書に記載の成分ペプチド及びペプチド−ペプチダーゼ阻害剤(PPI)コンジュゲートは、例えば従来技術において公知の化学ペプチド合成技術(自動若しくは半自動ペプチド合成装置、標準的な組換え技術、又はその両方)を使用して調製できる。
成分ペプチド及びP−PIコンジュゲートは、従来技術に従い、溶液中で合成してもよく、又は固体支持体上で合成してもよい。市販の様々な自動合成装置を用いて、公知のプロトコルに従って合成できる。Stewartら(1984) Solid Phase Peptide Synthesis,2d.ed.,Pierce Chemical Co.、Tamら(1983) J.Am.Chem.Soc.105:6442、Merrifield(1986) Science 232:341−347、及びBaranyら(1979) The Peptides,Grossら,eds.,Academic Press,NY,1−284を参照。固相ペプチド合成は、自動若しくは半自動ペプチド合成装置を使用して実施できる。典型的には、かかる技術を用いて、α−N−カルバモイル被保護アミノ酸と、樹脂上で伸長するペプチド鎖に結合するアミノ酸とを、室温で、不活性溶剤(例えばジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン又はメチレンクロライド)中で、カップリング剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)の存在下、塩基(例えばジイソプロピルエチルアミン)の存在下でカップリングさせる。α−N−カルバモイル保護基は、試薬(例えばトリフルオロ酢酸又はピペリジン)を使用して、得られるペプチド−樹脂から除去され、当該ペプチド鎖に次の所望のN保護されたアミノ酸を付加させて、当該カップリング反応を繰り返す。適切なN保護基は公知であり、例としてはt−ブチルオキシカルボニル(tBoc)及びフルオロメトキシカルボニル(Fmoc)が挙げられる。例えば、固相ペプチド合成は、自動ペプチド合成装置(例えばModel 430A,Applied Biosystems Inc.,Foster City,CA)により、NMP/HOBt(オプション1)システム、及びtBocもしくはFmoc化学によるキャッピングにより実施してもよい(Applied Biosystems User’s Manual for the ABI 430A Peptide Synthesizer,Version 1.3B July 1,1988,section 6:49−70)。ペプチドは、Advanced ChemTech Synthesizer(モデルMPS 350、ルイビル、KY)を用いて合成してもよい。ペプチドは例えば、Waters(登録商標)DELTA−PREP(登録商標)3000システム(ウォーターズ社、ミルフォード、MA)、及びC4、C8又はC18調製用カラム(10μ、2.2×25cm、Grace Vydac、Hasperia、CA)を使用して、RP−HPLC(調製用及びアッセイ用)で精製してもよい。ペプチドは容易に合成でき、更に特定の活性を有するペプチドを同定するためにデザインされたアッセイにおいてスクリーニングすることができる。ペプチドを合成し、精製する他の方法も、当業者に公知である。
あるいは、本願明細書で開示する成分ペプチド及びPPI阻害剤コンジュゲートを、公知の組換え技術によって調製してもよい。Sambrookら(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor,NYを参照。組換え技術によって得られるペプチドは、ポリヌクレオチドから発現させることができる。当業者であれば、ポリヌクレオチド(DNA及びRNAを含み、かかる様々なペプチド断片をコードする)を、コドン使用頻度を考慮に入れて、野生型cDNAから調製することもでき、又は希望通りデザインすることもできる。これらのポリヌクレオチド配列には、微生物宿主中でのmRNAの転写及び翻訳を効率化するためのコドンを組み込んでもよい。かかる人工配列は、公知技術の方法に従って容易に構築することができる。上記のポリヌクレオチドは、N末端メチオニン残基を任意にコードしてもよい。上記のポリヌクレオチドは、適当なアミド形成のため、C末端グリシン残基を任意にコードしてもよい。本願明細書において提供される組成物及び方法にとり有用な非ペプチド化合物は、公知技術の方法により調製できる。例えば、リン酸含有アミノ酸及びかかるアミノ酸を含有するペプチドは、公知技術の方法を使用して調製できる。Bartlettら(1986) Bioorg.Chem.14:356−377を参照。
様々な細胞タイプ(例えば細菌、酵母、藻類、昆虫細胞、植物細胞及び動物細胞(例えば哺乳類及び鳥類細胞)を用いて、ペプチドをコードする配列を導入し、発現させることができる。様々な発現ベクター/宿主システムが使用可能であり、限定されないが、例えば組換えバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターによって形質転換した微生物(細菌)、酵母発現ベクトルによって形質転換した酵母、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)でトランスフェクトした昆虫細胞系、ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、タバコモザイク病ウイルス(TMV)によってトランスフェクトした植物細胞系、又は細菌発現ベクター(例えばTi又はpBR322プラスミド)によって形質転換した動物細胞系などが挙げられる。組換えタンパク質の調製において有用な哺乳動物細胞及び細胞株としては、VERO(アフリカのミドリザル腎臓)細胞、ヒーラ細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系、COS細胞(例えばCOS−7)、WI38(ヒト肺線維芽細胞)、乳児ハムスター腎臓(BHK)細胞、HepG2、3T3、RIN、マディン−ダービー犬腎臓上皮細胞(MDCK)、A549、PC12、K562及び293細胞などが挙げられるが、それらに限定されない。ポリペプチドの組換え発現のための典型的なプロトコルは、公知技術である。
宿主細胞株は、発現されたペプチドのプロセシング、又は特定の翻訳後修飾を行う特定の能力に基づき選択することができる(それらは活性型ペプチドを提供する際に重要である)。ポリペプチドのかかる修飾としては、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、アシル化及びアミド化(例えばカルボキシ末端アミド化)などが挙げられるが、これらに限定されない。翻訳後プロセシング(「プレプロ」型のポリペプチドを切断する)は、正しい挿入、フォールディング及び/又は機能にとって重要となりうる。それぞれの宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、293、WI38など)はかかる翻訳後活性のための特定の細胞器官及び特有のメカニズムを有し、それらを適宜選択することにより、導入された異種タンパク質の正しい修飾及びプロセシングを確実に実施できる。
本願明細書に記載の成分ペプチド及びPPI阻害剤コンジュゲートは、自動ペプチド合成及び組換え技術の組合せを使用して調製することもできる。例えば、ペプチドにおいて、PEG化による欠失、置換及び挿入などの修飾の組合せを導入してもよい。かかるペプチドは段階的に調製してもよい。例えば、第一段階では、記載した組換え技術によって、欠失、置換、挿入及びそれらのあらゆる組み合わせによる修飾を有する中間体ペプチドを調製してもよい。更に、任意の洗浄工程の後、中間体ペプチドに対して、適当なPEG化試薬(例えば、Nektar Therapeutics、サンカルロス、CA)で、化学的処理によるPEG化を行い、所望のペプチドを調製する。ペプチドのアミド化は段階的に実施してもよい。当業者であれば、上記の手順を、欠失、置換、挿入、誘導体化及び公知の、本願明細書において考察される他の修飾方法から選択される修飾の組合せを有するペプチドに適用して一般化できることを認識するであろう。
本願明細書に記載の成分ペプチド及びPPI阻害剤コンジュゲートは、公知技術の化学的ライゲーションスキームを使用して調製してもよく、例えば、米国特許出願公開第2003/0191291号、第2003/0208046号及び第2004/0115774号に記載されている方法が挙げられる。化学的ライゲーションとは、2つの化学基の共有結合が行われる化学選択的な反応のことを指し、その個々の部分は、他の部分と不可逆的な共有結合を独立に形成することが独自にできる反応性官能基を有している。第1及び第2の成分に存在する、独特の相互に反応性を有する官能基を用いて、ライゲーション反応を化学選択的にすることができる。例えば、ペプチド及びポリペプチドの化学的ライゲーションには、互換性のある、独特の、相互に反応性を有するC末端及びN末端アミノ酸残基を有するペプチド又はポリペプチド部分どうしの化学選択的な反応が包含される。化学的ライゲーションには、(1)独自に反応性C末端基を有する第1のペプチド又はポリペプチドと、(2)独自に反応性N末端基を有する第2のペプチド又はポリペプチドの共有結合によるライゲーションも包含され、それは、当該C末端及びN末端反応性基が、共有結合による不可逆的結合を形成することを特徴とする。また、N末端同士、及びC末端同士のライゲーションも包含される。特に、化学的ライゲーションには、保護されていないペプチド部分へのライゲーションに適用できるいかなる化学選択的な化学反応も包含される。幾つかの異なる化学反応がこの目的で利用されが、その例としては、ネイティブの化学的ライゲーション、オキシム形成化学的ライゲーション、チオエステル形成ライゲーション(Schnolzerら(1992) Science 256:221−225、Gieselmanら(2001) Org.Lett.3:1331−1334)、チオエーテル形成ライゲーション(Englebretsenら(1995) Tot.Leffs.36:8871−8874)、ヒドラゾン形成ライゲーション(Gaertnerら(1994) Bioconj.Chem.5:333−338)、並びにチアゾリジン形成ライゲーション及びオキサゾリジン形成ライゲーション(Zhangら(1998) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:9184−9189、国際公開第95/00846号、米国特許第5589356号)、並びにシュタウディンガーアミド形成化学的ライゲーション(Saxonら(2000) Org.Leff.2:2141−2143)などが挙げられる。
所与のライゲーション化学反応のための反応条件は通常、ライゲーションに使用されるペプチド又はポリペプチド部分の所望の相互作用が維持されるように選択される。例えば、pH及び温度、ライゲーション成分の水溶性、第2の部分に対する第1の部分の比率、含水量及び反応混合物の組成を適宜変化させ、ライゲーションを最適化できる。更に試薬を添加し又は除去して、そこに溶解するライゲーション成分の濃度を変化させることにより、所望のライゲーション反応の特異性及び速度を調節(すなわち曝露のコントロール、及びペプチド又はポリペプチド部分の溶解性を操作することによる反応性基の露出及び提示をコントロール)することが可能となる。反応条件は、1つ以上の内部及び/又は外部コントロールと比較した、所望の化学選択的な反応生成物の生成をアッセイすることにより容易に決定できる。これらの方法論は、ライゲーションサイトにおけるネイティブなアミド結合を生成するための確固たる方法論であることが証明されている。
P−PIコンジュゲートのデザインとの組合せで、ポリペプチド主鎖の合成に利用されるペプチド又はポリペプチド部分が構築される。ペプチド及びポリペプチド主鎖の合成において有用な方法は、例えば以下の文献に記載されている:米国特許出願公開第2004/0138412(拡張されたネイティブ化学的ライゲーション)、第2003/0208046号(擬ネイティブ化学的ライゲーション)、第2005/0261473号(望ましくない副産物の形成を除去するための、化学的ライゲーションにおける酸性C末端アミノ酸のカルボキシ保護ストラテジー)、第2005/0064538号及び第2005/0113563号(3つ以上の成分を用いた、反応効率の改善されたネイティブ化学的ライゲーション及び化学的ライゲーション)、国際公開第2004/105685号(取り外し可能なリンカーを用いた水相溶性の固相化学的ライゲーション)及び国際公開第2004/060925号(水溶性ポリマー保護基、及び目的のアダクトを用いたそれらの置換による、多重ポリマーライゲーション)、並びに、米国特許第6307018号及び第6184344号(ネイティブ化学的ライゲーション)、第6326468号(固相ネイティブ化学的ライゲーション)、第6217873号(ポリオキシム化合物)、第6174530号(均一なポリオキシム粗製物)、第6001364号(ヘテロ型ポリオキシム化合物)及び第6451543号(脂質−マトリックスの補助による合成)。一般に、化学的ライゲーションによるペプチド又はポリペプチド主鎖の合成では、適切なライゲーション部位の選択が行われ、その選択は、様々なポリペプチド主鎖部分を構成するために選択されるライゲーション化学反応、所与の標的ペプチドのために選択される可逆的(又は切断可能)ポリマー結合化学反応、及び具体的なポリマー結合部位に基づき行われる。ネイティブの化学的ライゲーションを使用するときは、システインライゲーション部位は、標的のポリペプチド主鎖のアミノ酸配列中における、適切な天然型システイン残基をスキャンすることにより決定される。「拡張された化学的ライゲーション」を使用するときは、ライゲーション部位は、標的ポリペプチド主鎖のアミノ酸配列中における、強力なライゲーションを可能にする適切な天然型のライゲーション部位ジャンクションをスキャンすることにより選択できる。拡張された天然型の化学的ライゲーションは、システイン残基におけるライゲーションに限定されないため、任意の数の残基を、ライゲーション部位ジャンクションとして機能させることができる。幾つかの場合には、ネイティブの、及び拡張されたネイティブの化学的ライゲーションの組合せを、当該デザインの一部としてもよい。
一実施形態では、ネイティブの化学的ライゲーションを用いて、全長のポリペプチド鎖の一部又は全部を調製してもよい。天然に存在するタンパク質又はペプチド主鎖に存在するシステインを、化学的ライゲーション部位として用いることが可能である。あるいは所望のライゲーションジャンクションが適切なシステインを有さない場合、その位置のシステイン以外のアミノ酸を、システインで置換してもよく、又はその部位におけるネイティブの化学的ライゲーションを可能にするためにシステイン残基を挿入してもよい。必要に応じて、新たに導入されたシステインを、その位置で、最初のアミノ酸に対応する疑似アミノ酸残基に変換させてもよい。ネイティブの化学的ライゲーション部位におけるシステインの変換による疑似アミノ酸の形成のことを、「擬ネイティブ化学的ライゲーション」と称する。あるいは、システインをポリマー保護基による修飾部位に導入する場合、チオール反応性の水溶性ポリマー構築物と結合させるために側鎖チオールを用いてもよいが、但し、修飾することを望まない、標的ポリペプチド中の全てのシステイン残基が保護されていることを必要とする。他の実施形態では、拡張されたネイティブの化学的ライゲーションを、全長ポリペプチドの一部又は全部を調製する用途に利用できる。チオエステルにより媒介されるライゲーション(例えばネイティブの化学的ライゲーション)に使用するペプチドは、例えば米国特許第6307018号及び第6184344号に記載の標準的プロトコルに従い調製することができる。
本発明の用語「精製ペプチド」とは、他の成分から分離された組成物であって、当該ペプチドが、その天然の状態と比較し、ある程度で精製されている組成物のことを指す。ゆえに、精製ペプチドはまた、それが天然の状態で生じる際の環境から隔離されている、ペプチドのことを指す。通常、「精製された」とは、分離工程に供して様々な他の成分と隔離させた、成分ペプチド又はP−PIコンジュゲート組成物のことを指し、その組成物は、実質的に生物学的活性を保持している。用語「実質的に精製された」とは、成分ペプチド又はP−PI組成物が、組成物中の主成分であって、例えば、組成物中に、成分ペプチド又はP−PIコンジュゲートが、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%又はそれ以上含まれる状態のことを指す。
本願明細書に記載の方法によって調製される成分ペプチド及びPPIコンジュゲートを、精製するのが好ましい。ペプチド精製技術は当業者にとり公知である。これらの技術は、最初の段階では、細胞培養液を、ポリペプチド画分と非ポリペプチド画分とに粗分画する。当該ポリペプチドを他のタンパク質から分離した後、目的のポリペプチドを、クロマトグラフィ及び電気泳動技術を使用して更に精製し、部分的若しくは完全に精製(又は純粋なレベルにまで精製)することができる。精製技術としては、例えば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体などによる沈殿、熱変性及びそれに続く遠心分離、クロマトグラフィ工程(例えばイオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイト及び親和性クロマトグラフィ)、等電点電気泳動、ゲル電気泳動及びそれらの組合せ、並びに他の適切な技術が挙げられる。特に純粋なペプチドの調製に適する分析方法は、イオン交換クロマトグラフィ、限外濾過クロマトグラフィ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動及び等電点電気泳動である。特に効率的なペプチド精製方法は逆相HPLCであり、更に、液体クロマトグラフィ/質量アッセイ(LC/MS)及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)による質量アッセイにより精製された物質のアッセイを行う。更なる純度分析は、アミノ酸分析により実施する。従来技術において一般に公知であるように、様々な精製ステップを、適宜順序を変更して実施してもよく、又はある特定のステップを省略してもよく、それでもなお、実質的に精製されたタンパク質又はペプチドの調製が可能である。
通常、ペプチド又はP−PIコンジュゲートは、常に最も精製された状態である必要はない。実際、実質的に精製度の低い生成物を特定の実施形態で利用することも十分可能であると考えられる。少ない数の精製ステップを組合せで用い、又は同様の精製方法に若干を加えることにより、部分的な精製を実施してもよい。例えば、実施しようとする陽イオン交換カラムクロマトグラフィ(HPLC装置を利用)では通常、低圧クロマトグラフィシステムを利用する場合よりも、「数倍」規模での精製が可能になると考えられる。相対的に精製度の低い方法は、タンパク質生成物の完全なリカバリー、又はペプチド若しくはPPIはコンジュゲートの活性を維持という意味で有効である。幾つかの実施形態では、陰イオン交換及び免疫アフィニティクロマトグラフィの組合せを、精製ペプチド又は本願明細書に記載のP−PIコンジュゲート組成物の調製に使用することができる。
本願明細書で開示するP−PIコンジュゲート化合物は、単独で、又は薬理学的に許容できる担体又は賦形剤と組み合わせて、単回投与若しくは多回投与することができる。したがって、本発明は、P−PIコンジュゲート化合物の輸送にとり有用な、薬理学的に許容できる希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、補助剤及び/又は担体と共に、治療的若しくは予防的有効量の少なくとも1つのP−PIコンジュゲート化合物、又はその薬理学的に許容できる塩を含有する医薬組成物の提供に関する。医薬組成物に関する一般的説明及び調製技術は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences by E.W.Martin and in Wangら(1988) J.of Parenteral Sci.and Tech.,Technical Report No.10,Supp.42:2S.に開示されている。
個々の成分ペプチド又はペプチダーゼ阻害剤が、それらの薬理学的特性からみて有用であると同様に、本発明のP−PIコンジュゲート化合物は通常有用である。1つの典型的な使用としては、かかるP−PIコンジュゲート化合物を、代謝異常及び障害の治療又は予防を目的として、末梢投与することが挙げられる。一実施形態では、本発明のP−PI化合物は、栄養分の取り込みを減少させ、食物摂取を減少させ、体重を減少させ、又はそれらの任意の組み合わせを可能にする薬剤としての活性を有する。他の実施形態では、本発明のP−PI化合物は、糖尿病又は糖尿病関連の症状及び障害の治療を目的として投与される。他の実施形態では、本発明のP−PI化合物は、心血管疾患又は障害(例えば鬱血性心不全)の治療を目的として投与される。
本発明のP−PIコンジュゲート化合物は、末梢投与用に製剤化してもよく、当業者に公知のように、注射用、経口投与用、鼻投与用、肺投与用、局所投与用又は他のタイプの投与用に製剤化してもよい。本願明細書に記載の医薬組成物の投与は、そのルートを介して標的組織に至る限り、いかなる通常の投与ルートで実施してもよい。一実施形態では、当該医薬組成物はいかなる公知の末梢投与方法によっても患者に投与でき、例えば、静脈内、皮内、筋肉内、乳房内、腹膜内、クモ膜下腔内、眼内、肺内(例えば末端放出)、鼻内、肛門内、経口、舌下、膣内又は経皮内送達、或いは特定部位への外科的インプラントなどが挙げられる。幾つかの実施形態では、提供される医薬組成物は非経口投与用(例えば注入又は注射用)に製剤化されてもよい。当該治療は、単回の投与、又は一定期間にわたる複数回の投与により実施してもよい。P−PI組成物を連続的に制御放出する態様も包含される。非経口投与は、最初にボーラス投与を行い、その後に持続的に点滴を行い、薬剤の治療的循環レベルを維持することにより実施してもよい。貯蔵型又は「デポー」型遅延放出製剤を調製し、薬剤の治療的有効量が、経真皮注入又は輸送の後に、多くの時間又は日数にわたり血流中に分配させるようにしてもよい。当業者であれば、個々の患者の臨床的協力及び臨床状態を考慮して、有効な投与量及び投与計画を容易に最適化できる。
医薬組成物は、様々な形状(例えば固体、液体、半固体又は半液体)で調製できる。本明細書で用いられる用語「固体」とは、例えば粉末及び凍結乾燥製剤などの、この用語が通常適用される用途のことを指す。本発明に記載されている製剤は、例えば再調製して使用するために凍結乾燥状態であってもよい。水性組成物は通常、有効量のP−PIコンジュゲートが、薬理学的に許容できる担体又は水性溶媒中に溶解若しくは分散した形で含有される。「医薬的に若しくは薬理学的に許容できる」という用語は、動物又はヒトに投与したときに、逆作用、アレルギー若しくは他の望ましくない反応をもたらさない分子及び組成物のことを指す。本発明の用語「薬理学的に許容できる担体」としては、あらゆる溶媒、分散溶媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌薬、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的活性物質に対する、かかる溶媒及び物質の使用は公知である。活性成分との適合性を有さないものを除き、あらゆる従来の溶媒又は物質を用いて治療用組成物を調製でき、それらは本発明に包含される。補助活性成分を組成物に組み込んでもよい。場合によっては、P−PIコンジュゲート化合物と共に、他の化合物(例えば食物摂取を減少させ、糖尿病を治療し、血漿グルコースを低下させ、又は血漿脂質を変化させる薬剤)、アミリン、アミリンアゴニストアナログ、CCK若しくはCCKアゴニスト、又はレプチン若しくはレプチンアゴニスト、又はエキセンディン若しくはエキセンディンアゴニストアナログなどを、単一の組成物又は溶液として投与するのが簡便である。あるいは、P−PIコンジュゲートとは別に、更なる薬剤を投与することがより有利である場合もある。例えば、2つの組成物を用いる場合、個々の薬剤を同じタイミングで(すなわち並行して)投与してもよく、あるいは他の薬剤とは別個に(投与前又は投与後に順次)投与してもよい。幾つかの実施形態では、当該投与は、各々の組成物の投与間隔がオーバーラップする態様で実施してもよい。
幾つかの実施形態では、本願明細書において提供されるP−PIコンジュゲートは、フリーの塩基溶液として調製して投与してもよく、又は薬理学的に許容できる塩の水溶液として、適宜界面活性剤(例えばヒドロキシプロピルセルロース)と混合して調製して投与してもよい。薬理学的に許容できる塩には、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基により形成)が包含され、それらは無機酸(例えば塩化水素若しくはリン酸)又は有機酸(例えば酢酸、蓚酸、酒石酸、マンデル酸など)を用いて調製できる。遊離カルボキシル基により形成される塩は、例えば無機塩基(例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は水酸化鉄(III))、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基を用いて調製してもよい。かかる生成物は、当業者に公知の手順によって容易に調製される。また、グリセロール、液体状のポリエチレングリコール及びそれらの混合物、並びに油中の分散液を調製してもよい。典型的には、これらの調製物中には微生物の増殖を防止するための防腐剤を添加する。
バッファ、緩衝液及び緩衝溶液(水素イオン濃度又はpHに関して使用する場合)という用語は、酸又はアルカリの添加、又は溶媒による希釈に対するpH変化を緩衝するシステム(特に水溶液)のことを指す。緩衝溶液(酸又は塩基の添加においてもpHの変動が小さい)の特徴としては、弱酸及び弱酸塩、又は弱塩基及び弱塩基塩の存在が挙げられる。上記のシステムの例は、酢酸及びナトリウム酢酸塩である。添加されるヒドロニウムイオン又は水酸化物イオンの量が、それを中和するバッファシステムの能力を上回らない限り、pHの変更はわずかである。幾つかの実施形態では、P−PIコンジュゲートは約3.0〜約8.0のpH、約3.5〜約7.4のpH、約3.5〜約6.0のpH、又は約3.5〜約5.0のpHで、水性担体(例えば等張性緩衝液)中に懸濁させることができる。具体的な実施形態では、製剤のpHは約3.5〜6.5の範囲で維持され、幾つかの実施形態では約3.7〜約4.3、又は約3.8〜約4.2の範囲で維持される。幾つかの実施形態では、pHは約4.0でもよい。
有用なバッファとしては、クエン酸ナトリウム/クエン酸、リン酸ナトリウム/リン酸及び酢酸ナトリウム/酢酸バッファが挙げられる。具体的な実施形態では、本願明細書において提供される化合物を有するバッファは、酢酸バッファ(例えば約1〜5mMから約60mMの最終製剤濃度)、リン酸バッファ(例えば約1〜5mMから約30mMの最終製剤濃度)、グルタミン酸バッファ(例えば約1〜5mMから約60mMの最終製剤濃度)、又はクエン酸バッファ(例えば約1〜5mMから約60mMの最終製剤濃度)である。幾つかの実施形態では、バッファは酢酸塩(例えば、約5〜約30mMの最終製剤濃度)である。
注射用途に適する医薬組成物は、滅菌された注射用水溶液又は分散液を即時調製するための、滅菌済み注射用溶液又は分散液、並びに無菌の粉末を含んでなる。全ての場合において、それは無菌である必要があり、またシリンジ操作を簡単に行うために一定以上の流動性を有する必要がある。P−PIコンジュゲートは通常、製造及び貯蔵の条件下で安定で、また、微生物(例えばバクテリア及び菌類)による汚染から保護されることが望ましい。
薬理学的に許容できる担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。例えばレシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要とされる粒度の維持により、及び界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。
安定化剤をP−PIコンジュゲートの調製において含有させてもよいが、必ずしも必要ではない点に留意すべきである。しかしながら、含有させる場合には、本発明の組成物にとり有用な安定化剤は炭水化物又はポリオールである。典型的な適切な安定化剤は、約1.0〜10%(w/v)の炭水化物又はポリオールである。すなわち、ポリオール類及び炭水化物は、同じ特徴の主鎖:−CHOH−CHOH−を有し、それらはタンパク質を安定させる役割を果たす。ポリオールの例としては、ソルビトール、マンニトール、グリセロール及びポリエチレングリコール(PEGs)などの化合物が挙げられる。これらの化合物は直鎖状分子である。炭水化物(例えばマンノース、リボース、蔗糖、フルクトース、トレハロース、マルトース、イノシトール及びラクトース)は、一方では、ケト又はアルデヒド基を有することができる環状分子でもありうる。これらの2つの種類の化合物は、高い温度によって、及び凍結−融解によって生じる変性に対するタンパク質の安定化、又は凍結乾燥工程の実施において効果的であることが証明されている。適切な炭水化物としては、ガラクトース、アラビノース又はラクトースが挙げられる。糖尿病患者への投与用に製剤化する場合、使用する炭水化物は、糖尿病患者に逆作用を及ぼさないものでなければならない(すなわち、炭水化物が代謝されず、それにより血液中のグルコース濃度が許容範囲外にまで上昇する)。糖尿病患者に適する態様のかかる炭水化物は公知である。蔗糖及びフルクトースは、糖尿病でない場合の用途(例えば肥満の治療)のためのコンジュゲートに適している。
具体的な実施形態では、安定化剤を含有させる場合、P−PIコンジュゲート化合物は、ポリオール(例えば、分子量200、400、1,450、3,350、4,000、6,000及び/又は8000などの様々なPEGs)、並びにソルビトール、マンニトール、イノシトール、グリセロール、キシリトール及びポリプロピレン/エチレングリコール共重合体などにより安定化させることができる。マンニトールは、幾つかの実施形態に係る典型的なポリオールである。
本願明細書において提供される凍結乾燥された製剤の他の有用な特徴は、同じ製剤成分であっても、本願明細書に記載の凍結乾燥製剤では浸透圧が維持されることであり、それにより安定性が維持される。幾つかの実施形態では、マンニトールはこのために使用する典型的なポリオールである。多くの場合、等張剤(例えば糖又は塩化ナトリウム)を含有させてもよい。場合によっては、賦形剤を用いて、化合物全体の浸透圧を維持してもよい。賦形剤を、様々な濃度で本発明の製剤中に添加してもよい。例えば、賦形剤を約0.02%〜約20%で、例えば約0.02%〜0.5%、0.02%〜約10%、又は1%〜約20%濃度範囲(重量%)で含有させることができる。更に、本発明の製剤自体と同様に、賦形剤を、固体(粉末を含む)、液体、半固体又はゲル中に含有させることもできる。典型的な非経口的製剤は等張性であってもよく、実質的に等張性であってもよい。
防腐剤は、通常の製薬おいては、微生物の増殖を防止又は阻害する物質であると認識されており、微生物による製剤の損傷を回避するため、それを医薬組成物に添加してもよい。防腐剤の使用量は多くはないものの、ペプチド全体の安定性に影響を及ぼすこともある。微生物活性の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、及びチメロサールなどの様々な抗菌剤及び抗真菌剤の使用により実施できる。医薬組成物に用いる防腐剤の濃度は、一般的に0.005〜1.0%(w/v)であってもよく、幾つかの実施形態では、以下の防腐剤を、以下の濃度範囲で用いる:ベンジルアルコール(0.1−1.0%)、又はm−クレゾール(0.1−0.6%)、又はフェノール(0.1−0.8%)、又はメチル若しくはエチルパラベン(0.05−0.25%)と、プロピル若しくはブチルパラベン(0.005%−0.03%)の組み合わせ。パラベンは、パラ−ヒドロキシ安息香酸性酸の低級アルキルエステルである。
界面活性剤の使用は、しばしばタンパク質の変性を生じさせる(疎水的崩壊及び塩橋分離による)。比較的低い濃度の界面活性剤によっても、界面活性剤半分と、タンパク質上の反応性部位との強い相互作用のため、強力な変性が生じうる。しかしながら、この相互作用を有効利用することにより、界面的若しくは表層変性に対してタンパク質を安定化させることができる。P−PIコンジュゲートを更に安定化できる界面活性剤を、任意に全製剤に対して約0.001〜0.3%(w/v)の範囲で含有させてもよく、そのような物質としてはポリソルベート80(すなわちポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレイレート)、CHAPS(登録商標)(すなわち3[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]1−プロパンスルホネート)、Brij(登録商標)(例えばBrij35、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル)ポロキサマー又は他の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。
非経口投与用製剤に使用する典型的なビヒクルは水である。非経口投与用の適切な品質の水は、蒸留又は逆浸透により調製できる。注入用の水は、典型的には、医薬組成物に用いられる水性ビヒクルである。
他の成分を医薬組成物中に存在させてもよい。かかる更なる成分としては、例えば湿潤剤、乳化剤、油、酸化防止剤、増量剤、浸透圧調節剤、キレート剤、金属イオン、油性ビヒクル、タンパク質(例えばヒト血清アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)、及び双性イオン(例えばアミノ酸(例えばベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジン及びヒスチジン)などが挙げられる。更に、ポリマー溶液又はポリマー混合物を用いることにより、ペプチドの徐放が可能となる。吸収遅延剤(例えばアルミニウムモノステアレート及びゼラチン)の組成物への使用によって、注射可能な組成物の長期にわたる吸収が可能となる。かかる更なる成分はもちろん、本発明の医薬製剤の全体の安定性に悪影響を与えてはならない。
具体的実施形態では、本発明の医薬製剤は所定の濃度範囲でP−PIコンジュゲート化合物を含有してもよく、例えば、約0.01%〜約98%(w/w)、又は1%〜約98%(w/w)、又は80%〜90%(w/w)、又は約0.01%〜約50%(w/w)、又は約10%〜約25%(w/w)の濃度範囲であってもよい。注入の際、充分な水量を用いて溶液の濃度を所望の濃度にしてもよい。
本発明に包含される典型的な医薬組成物は、約0.01〜1.0%(w/v)(具体的なケースでは0.05〜1.0%(w/v))のP−PIコンジュゲート化合物と、約0.02〜0.5%(w/v)の酢酸、リン酸、クエン酸又はグルタミン酸バッファ(最終組成物のpHを約3.0〜約7.0にする)、約1.0〜10%(w/v)の炭水化物又はポリオール系浸透圧調節剤、及び任意に、約0.005〜1.0%(w/v)の防腐剤(m−クレゾール、ベンジルアルコール、メチル、エチル、プロピル及びブチルパラベン(及びフェノール)からなる群から選択される)を含んでなる。製剤化されたペプチドが、複数使用を目的としている場合、通常かかる防腐剤を添加するのが望ましい。
滅菌された注射溶液は、必要量の活性化合物を、適当な溶媒中に、必要に応じて上記で列挙した他の様々な成分と共に、フィルタ滅菌処理の後に添加して調製することができる。通常、分散液は、様々な滅菌済みの活性成分を、本願明細書において列挙される基本的な分散媒体と、必要となる他の成分とを含有する滅菌済みのビヒクルに添加して調製する。滅菌された注射溶液の調製に、滅菌済みの粉末を用いる場合、典型的な調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、それを用いることにより、事前にフィルター滅菌処理処理を行った溶液から、活性成分と、更なる所望の成分とを含有する粉末が得られる。具体的な実施形態では、当該調製手順においては、成分を特定の順序で溶解させるステップ(例えば防腐剤、安定化剤/浸透圧調節剤、バッファ及びペプチドの順)、又は同時に溶解させるステップを含んでなる。場合によっては、P−PIコンジュゲートは再調製に備えて、バイアル、シリンジ又はカートリッジ中で凍結乾燥させてもよい。得られる液体製剤は、1若しくは2個のチャンバーを有するカートリッジ、又は1若しくは2個のチャンバーを有するシリンジに充填してもよい。
他の製剤(例えば非非経口投与用)では、滅菌処理が不要である場合もある。しかしながら、滅菌処理の実施が好ましい又は必要である場合、何らかの適切な滅菌プロセスを実施し、本願明細書において提供されるペプチド医薬製剤を調製してもよい。典型的な滅菌プロセスとしては、濾過、蒸気(蒸気加熱)、乾熱、ガス(例えばエチレンオキシド、ホルムアルデヒド、二酸化塩素、酸化プロピレン、βプロピオールアセトン、オゾン、クロロピクリン、過酢酸臭化メチルなど)、放射線照射及び滅菌操作などが挙げられる。濾過は、得られる液体製剤の典型的な滅菌方法である。当該滅菌処理は、0.45μm及び0.22μm(1又は2)のフィルターによる濾過により実施することができ、それらを直列に連結して実施してもよい。濾過後、適当なバイアル又は容器に溶液を充填する。
通常、本発明のP−PIコンジュゲート治療的もしくは予防的有効量は、受容者の年齢、体重及び健康状態、又は疾患、症状又は障害の重症度を元に決定される。適切な投与量は、適切な用量反応データを組み合わせた、代謝異常又は障害のレベルを測定するための確立したアッセイにより確認することができる。最終的な投与計画は、薬の作用に影響を与えうる諸因子(例えば薬剤の特有の活性、患者における損傷の程度及び反応、患者の年齢、健康状態、体重、性別及び食事、感染症の重症度、投与時間、並びにその他の臨床的要因)などを考慮して、主治医により決定される。試験の実施により、具体的な疾患及び症状に対する適当な投与量レベル及び治療期間に関する詳しい情報が得られる。
典型的には、約0.001μg/kg体重/日間〜約1000μg/kg体重/日までの量で使用されるが、当業者に自明なように、その量を適宜増減させてもよい。典型的な投与量は、1日当たり、約1μg、5μg、10μg、50μg、約100μg(下限)から、100μg、500μg、1mg、5mg、10mg、50mg又は100mg(上限)の医薬化合物を含有する量である。1日における投与は、別々の単位投与形態として実施してもよく、24時間連続的に提供してもよく、あるいは24時間の間に分割して投与してもよい。1日あたりの投与回数は、1〜約4回であってもよく、あるいはそれはより多くてもよい。投与は1日あたり1回以上行ってもよく、あるいはそれより少ない頻度(1週間若しくは1ヶ月に1回以上)で行ってもよく、また、本願明細書に記載の他の組成物と組合せて投与してもよい。なお、本発明の方法及び組成物は、本願明細書において詳述された投与量に限定されないことに留意すべきである。
典型的な投与量は、1日当たり約0.5μg、1μg、5μg、10μg、50μg、約100μg(下限)から、約100μg、500μg、1mg、5mg、10mg、50mg又は100mgの医薬化合物を含有する量である。1日における投与は、別々の単位投与形態として実施してもよく、24時間連続的に提供してもよく、あるいは24時間の間に分割して投与してもよい。1日あたりの投与回数は、1〜約4回であってもよく、あるいはそれはより多くてもよい。
幾つかの実施形態では、有効量は、50kgの患者の場合、典型的には、約1〜30μgから約5mg/日、約10〜30μgから約2mg/日、約5〜100μgから約1mg/日、又は約5μgから約500μg/日の範囲であり、単回若しくは複数回で投与される。幾つかの実施形態では、投与量は約0.01〜約100μg/kg/投与である。他の実施形態では、本発明の組成物は、1μg/kg〜100mg/kg体重/日、又は0.1mg/kg〜約50mg/kg体重/日の範囲で、P−PIコンジュゲートが提供される態様で製剤化される。特定の投与経路(例えば経口投与)の場合、少ない生物学的利用能を補うため、例えば投与量を約5〜100倍増加させてもよい。
投与頻度は、薬剤の薬物動態学的パラメータ及び投与ルートに部分的に依存する。医薬組成物は、物理的状態、安定性、in vivo放出速度及び投与される薬剤のin vivoクリアランス速度に影響を与えうる。投与のルートに応じて、体重、体表面積又は器官のサイズに従って適切な量を算出できる。適切な治療的投与量を決定するために再度算出を行ってもよく、特に本願明細書で開示される投与量に関する情報及びアッセイ、並びに動物又はヒトの臨床試験において観察される薬物動態学的データを考慮し、過度の実験を要することなく、当業者によって日常的に実施できる。
所望の効果(例えば栄養分の取り込み、食物摂取、体重、血糖値又は血漿中の脂質の変化の抑制)が受容者にとり好適である場合に、投与を開始するのが好ましく、例えば、症状の最初の徴候、又は肥満、真性糖尿病又はインスリン耐性症候群の診断の直後に開始するのが好ましい。本願明細書において提供される医薬組成物及び治療方法は、医学及び獣医学の分野において有用であることはいうまでもない。
更に、P−PIコンジュゲート化合物、製薬用途で用いる、前記P−PIコンジュゲート化合物の調製に適する成分、並びに、製薬用途で用いる前記P−PIコンジュゲート及び前記成分の使用説明書を含んでなるキットの提供に関する。
本願明細書に記載の様々な液体ビヒクルの使用は、ペプチド系の抗肥満剤の調製に適する(例えば水又は水性/有機溶媒混合物又は懸濁液)。
本願明細書に記載の医薬組成物の投与は、標的組織がそのルートを介して利用できる限り、いかなる通常投与ルートから行ってもよい。一実施形態では、P−PIコンジュゲートを患者に末梢投与する。一実施形態では、P−PIコンジュゲートを患者に局所投与する。幾つかの実施形態では、液体状のP−PIコンジュゲートの医薬組成物を非経口投与する。適切な投与ルートとしては、筋肉内、静脈内、皮下、皮内、関節内、クモ膜下腔内、乳房内、腹膜内、肺内(例えば末端放出)、眼内などが挙げられる。幾つかの実施形態では、皮下投与ルートが有用である。ある実施形態では、経粘膜輸送であってもよい。これらのルートとしては、限定されないが、液体、半固体又は固体状のコンジュゲートを、口内、鼻内、舌下、肺、頬側、肛門内、膣内及び経真皮ルートによる投与が挙げられる。これらのルートによる投与は、非経口配達と比較して生物学的利用能が低いため、実質的により多くのコンジュゲートが、所望の生物学的効果を得るためには必要となる。非経口投与は、最初にボーラス投与を行い、その後に持続的に点滴を行い、薬剤の治療的循環レベルを維持することにより実施してもよい。
P−PIコンジュゲート組成物を連続的に制御放出する態様も包含される。連続的な輸送を、連続的な点滴により実施してもよい。典型的な投与量及び注入速度は、各々の投与あたり0.005nmol/kg〜約20nmol/kgであるか、又は連続的な点滴の場合には0.01/pmol/kg/分〜約10pmol/kg/分である。これらの投与及び注入は、静脈内投与(i.v.)又は皮下投与(s.c.)によって実施してもよい。i.v.による医薬組成物の典型的な全投与/輸送量は約2μg〜約8mg/日であってもよく、s.cによる医薬組成物の全投与/輸送量は約6μg〜約6mg/日であってもよい。
貯蔵型又は「デポー」型遅延放出製剤を調製し、薬剤の治療的有効量が、経真皮注入又は輸送の後に、多くの時間又は日数にわたり血流中に分配させるようにしてもよい。当業者であれば、個々の患者の臨床的協力及び臨床状態を考慮して、有効な投与量及び投与計画を容易に最適化できる。非経口的徐放輸送は、ポリマー性のマイクロカプセル、マトリックス、溶液、インプラント及び装置を調製し、それらを非経口的又は外科的手段によって投与することにより実施できる。徐放製剤の例としては、米国特許第6368630号、第6379704号及び第5766627号に記載されている。これらの剤形は、ポリマーマトリックス又は装置中にコンジュゲートを封入するため、生物学的利用能が低くなる傾向を示す。例えば米国特許第6379704号、第6379703号及び第6296842号を参照。
以下に実施例を示すが、それらは本発明を例示するものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
実施例1:
ペプチド−ぺプチダーゼ阻害剤コンジュゲートの合成
コンジュゲート分子は、ペプチドGLP−1(7−37)(配列番号42)又は[Leu14]−エキセンディン(1−28)(配列番号70)をアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤に連結することにより調製された。使用した薬は、小分子リシノプリル及びペプチドpGluKWAP−OHを含むものであった。以下は、阻害剤モチーフがGLP−1(7−37)及び[Leu14]−エキセンディン−(1−28)のC末端に配置されるコンジュゲート分子である3633/21、3633/24、3633/42/1、3633/42/2、3633/42/3及び3633/38の合成スキームを表す。AA1及びAA2は、2個又は3個の炭素鎖である。
樹脂結合型中間体の調製:
0.75gのH−プロリン−トリチル−レジン(0.68mmol/g)を、フリットを有する20mLのポリプロピレン製シリンジ内で、ジメチルホルムアミド(DMF)中、20分間膨潤させた。その樹脂スラリーに対し、Fmoc−Lys(alloc)−OH(0.6g、2.6当量)、HBTU(0.51g、2.6当量)、HOBt(0.174g)及びN−メチルモルホリン(0.22mL、4当量)の混合物を加えた。樹脂を室温にて2.5時間振とうした。クロラニル試験は、陰性を示した。DMF(4×)、DCM(2×)、MeOH(2×)、DCM及びMeOHにて樹脂を洗浄し、高真空下で乾燥させた。重量増加により、樹脂へのロード量を算出した(0.54mmol/g、収率100%)。
樹脂に結合した中間体2の調製:
樹脂1をDMF中で10分間膨潤させ、液を除いた後、20%ピペリジンのDMF溶液中で15分間処理し、DMF(6×)にて洗浄し、この手順を繰り返した。クロラニル試験は、陽性を示した。次いで樹脂を、10mLのトリメチルオルトギ酸塩(TMOF)中で膨潤させた。この混合物に対し、1mLのTMOF中に溶解したエチル−2−オキソ−4−フェニル酪酸塩(2.2g、20当量)を添加した。その樹脂を1時間振とうし、次いで、5.1mLのTMOF及び0.7mLのMeOHに溶解したNaBH3CN(0.673g、20当量)を添加した。樹脂スラリーを室温にて5時間振とうし、次いでTMOFにて洗浄し、この手順を繰り返した。DCM中に溶解した1%TFAにより樹脂のサンプルを切断し、LCMSにより粗生成物を分析した。C27H39N3O7(M+H)+の計算される質量である518.28が、518.3として見出された。
樹脂に結合した中間体3の調製:
樹脂2(0.78g)を、アルゴン下で、乾燥DMF中、10分間膨潤させた。混合物に対し、Me2NH−BH3(0.141g、6当量)を添加し、次いで5分後にPd(PPh3)4(0.047g、10mol%)を追加した。10分後に、溶液を除き、樹脂をDCM(4×)により洗浄した。この手順を繰り返し、次いで樹脂をDCM(8×30秒間)、5%DIEAのDCM溶液(3×60秒間)及びDCM(5×30秒間)により洗浄した。この樹脂は、クロラニル試験陽性を示した。DCM中に溶解した1%TFAにより樹脂のサンプルを切断し、LCMSにより粗生成物を分析した。C23H35N3O5(M+H)+の計算される質量である434.26が、434.3として見出された。
樹脂に結合した中間体4の調製:
AA1=CH2−CH2、AA2=CH2−CH2−CH2樹脂3(0.51g、0.4mmol/g)をDMF中、10分間膨潤させ、溶液を除き、3mLのDMFに溶解したβ−Ala−OH(0.094g、1.5当量)、HBTU(0.115g、1.5当量)、HOBT(0.041g、1.5当量)及びN−メチルモルホリン(0.066mL、3当量)の混合物により処理した。3時間後、クロラニル試験は、負の試験を示した。樹脂をDMFにて洗浄(6×30秒間)し、次いで20%のピペリジンにより処理(2×15分間)し、DMFにて洗浄(6×30秒間)し、γ−Abu−OH(0.1g、1.5当量)、HOBT、HBTU及びN−メチルモルホリンの混合物を用いてカップリングした。3時間後、クロラニル試験により示されるように、カップリングは終了した。樹脂をDMF(6×)、DCM及びMeOHにて洗浄し、乾燥した。DCM中に溶解した1%TFAにより樹脂のサンプルを切断し、LCMSにより粗生成物を分析した。C30H47N5O7(M+H)+の計算される質量である589.35が、589.3として見出された(>90%の純度)。
GLP−1−(7−37)−γ−Abu−β−Ala−CONH−リシノプリル(3633/42/1)の合成
計算上110μmolの修飾されたトリチル樹脂4をSymphony(登録商標)ペプチド合成装置(Protein Technologies社製)の反応容器に秤量し、Fmocペプチド合成プロトコルに従ってペプチド伸長を実施した。20mLのTFA/フェノール/H2O/TIPS(95:2:2:1)により、ペプチドを樹脂から切り出した。tert−ブチルメチルエーテルを用いて、粗ペプチドを沈殿させた。C174H265N43O53(M+H)+の計算される質量である3807.31が、LC−MSでの1269.1(M+3H)3として見出された。粗ペプチドを、1mLのH2O/ACNの60:40の混合物中に溶解し、この混合物にLiOHの2M溶液を0.2mL添加した。混合物を、室温にて3時間撹拌した。粗ペプチドをLCMS−PrepExpress(分子量による回収)(C18、0.1%TFA/H2O溶液中、30分間にわたる25−60%のCH3CNの勾配)により精製し、標記の化合物を白色粉体(23.3mg、5.7%)として得た:RP−HPLC(C18、0.1%TFA/H2O溶液中、15分間にわたる5−75%のCH3CNの勾配)の保持時間は9.64である。C172H261N43O53(M+H)+の計算される質量である3779.25が、LC−MSでの1259.7(M+3H)3として見出された。
GLP−1−(7−37)−γ−Abu−β−Ala−CONH−リシノプリル(3633/42/2)の合成:
計算上110μmolの修飾されたトリチル樹脂4をSymphony(登録商標)ペプチド合成装置の反応容器に秤量し、Fmocペプチド合成プロトコルに従ってペプチド伸長を実施した。20mLのTFA/フェノール/H2O/TIPS(95:2:2:1)により、ペプチドを樹脂から切り出した。tert−ブチルメチルエーテルを用いて、粗ペプチドを沈殿させた。C174H266N42O52(M+H)+の計算される質量である3778.31が、LC−MSでの1259.4(M+3H)3として見出された。粗ペプチドを、1mLのH2O/ACNの60:40の混合物中に溶解し、この混合物にLiOHの2M溶液を0.2mL添加した。混合物を、室温にて3時間撹拌した。粗ペプチドをLCMS−PrepExpress(分子量による回収)(C18、0.1%TFA/H2O溶液中、30分間にわたる25−60%のCH3CNの勾配)により精製し、標記の化合物を白色粉体(21mg、5.5%)として得た:RP−HPLC(C18、0.1%TFA/H2O溶液中、15分間にわたる5−75%のCH3CNの勾配)の保持時間は9.80である。C172H262N42O52(M+H)+の計算される質量である3750.26が、LC−MSでの1250.1(M+3H)3として見出された。
GLP−1−(7−37)−γ−Abu−β−Ala−CONH−リシノプリル(3633/42/3)の合成
計算上110μmolの修飾されたトリチル樹脂4をSymphony(登録商標)ペプチド合成装置(Protein Technologies社製)の反応容器に秤量し、Fmocペプチド合成プロトコルに従ってペプチド伸長を実施した。20mLのTFA/フェノール/H2O/TIPS(95:2:2:1)により、ペプチドを樹脂から切り出した。粗ペプチドをtert−ブチルメチルエーテルを用いて沈殿させ、LCMS−PrepExpress(分子量による回収)(C18、0.1%TFA/H2O溶液中、30分間にわたる25−60%のCH3CNの勾配)により精製し、エステル化合物を白色粉体(5.8mg、1.2%)として得た:RP−HPLC(C18、0.1%TFA/H2O溶液中、15分間にわたる5−50%のCH3CNの勾配)の保持時間は8.13であり;C181H273N45O53(M+H)+の計算される質量である3927.36が、LC−MSでの1310.7(M+3H)3として見出された。粗ペプチドを、1mLのH2O/ACNの60:40の混合物中に溶解し、この混合物にLiOHの2M溶液を0.160mL添加した。混合物を、室温にて3時間撹拌した。粗ペプチドをLCMS−PrepExpress(分子量による回収)(C18、0.1%TFA/H2O溶液中、30分間にわたる25−60%のCH3CNの勾配)により精製し、標記の化合物を白色粉体(11mg、2.4%)として得た:RP−HPLC(C18、0.1%TFA/H2O溶液中、15分間にわたる5−75%のCH3CNの勾配)の保持時間は9.51である。C179H269N45O53(M+H)+の計算される質量である3899.41が、LC−MSでの1300.81250.(M+3H)3として見出された。
[Leu 14 ]−エキセンディン−4−(1−28)−γ−Abu−β−Ala−CONH−リシノプリル(3633/21)の合成
上記の手順は、中間体4の調製へと進められた。計算上120μmolの修飾されたトリチル樹脂4をSymphony(登録商標)ペプチド合成装置の反応容器に秤量し、Fmocペプチド合成プロトコルに従ってペプチド伸長を実施した。20mLのTFA/フェノール/H2O/TIPS(95:2:2:1)により、ペプチドを樹脂から切り出した。粗ペプチドをtert−ブチルメチルエーテルを用いて沈殿させ、LCMS−PrepExpress(分子量による回収)(C18、0.1%TFA/H2O溶液中、30分間にわたる25−60%のCH3CNの勾配)により精製し、エステル化合物を白色粉体(11mg、2.2%)として得た:RP−HPLC(C18、0.1%TFA/H2O溶液中、15分間にわたる5−75%のCH3CNの勾配)の保持時間は8.13であり;C177H271N45O53(M+H)+の計算される質量である3849.39が、LC−MSでの1284.7(M+3H)3として見出された。100μLのH2O中に0.8mgの精製されたエステル前駆体を含む溶液を、12μLの2MのLiOH溶液により処理した。2時間後、LCMSにより、所望の化合物3633/21への定量的な変換が示された。C175H267N45O53(M+H)+のLCMSで計算される質量である3821.34が、LC−MSでの1274.7(M+3H)3として見出された。
GLP−1−(7−37)−γ−Abu−CONH−リシノプリル(3633/24)の合成
上記の手順は、中間体4の調製へと進められた。計算上120μmolの修飾されたトリチル樹脂4をSymphony(登録商標)ペプチド合成装置の反応容器に秤量し、Fmocペプチド合成プロトコルに従ってペプチド伸長を実施した。20mLのTFA/フェノール/H2O/TIPS(95:2:2:1)により、ペプチドを樹脂から切り出した。粗ペプチドをtert−ブチルメチルエーテルを用いて沈殿させ、LCMS−PrepExpress(分子量による回収)(C18、0.1%TFA/H2O溶液中、30分間にわたる25−60%のCH3CNの勾配)により精製し、エステル化合物を白色粉体(6.2mg、2.2%)として得た:RP−HPLC(C18、0.1%TFA/H2O溶液中、15分間にわたる5−75%のCH3CNの勾配)の保持時間は8.86であり;C179H272N44O51(M+H)+の計算される質量である3856.43が、LC−MSでの1286.7(M+3H)3、965.5(M+4H)4として見出された。100μLのH2O中に0.8mgの精製されたエステル前駆体を含む溶液を、12μLの2MのLiOH溶液により処理した。2時間後、LCMSにより、所望の化合物3633/21への定量的な変換が示された。C176H264N44O52(M+H)+の計算される質量である3828.33が、LC−MSでの1277.1(M+3H)3として見出された。
GLP−1−(7−37)−γ−Abu−N ε2 Lys−(Pyr)−WAP−OH(3633/38)の合成
計算上340μmolの修飾されたH−プロ−トリチル−レジン(0.68mmol/g)を手動のペプチド合成装置の反応容器に秤量し、以下のアミノ酸を用いた標準的なFmocペプチド合成プロトコルに従ってペプチド伸長を実施した:FmocAla−OH、FmocTrp(Boc)−OH、FmocLys(Alloc)−OH及びピログルタミン酸−OH。次いで、ペンタペプチドを、乾燥DCM中、アルゴン下で10分間膨潤させた。混合物に対し、Me2NH−BH3(0.073g、6当量)を撹拌しながら加え、次いで5分後、Pd(PPh3)4(0.024g、10mol%)を添加した。10分後、溶液を排出し、樹脂をDCM(4×)により洗浄した。この手順を繰り返し、次いで樹脂をDCM(8×30秒間)、5%DIEAのDCM溶液(3×60秒間)及びDCM(5×30秒間)により洗浄力した。樹脂は、クロラニル試験で陽性を示す。修飾されたトリチル樹脂をSymphony(登録商標)ペプチド合成装置の反応容器に秤量し、Fmocペプチド合成プロトコルに従ってペプチド伸長を実施した。20mLのTFA/フェノール/H2O/TIPS(95:2:2:1)により、ペプチドを樹脂から切り出した。粗ペプチドをtert−ブチルメチルエーテルを用いて沈殿させ、LCMS−PrepExpress(分子量による回収)(C18、0.1%TFA/H2O溶液中、30分間にわたる25−60%のCH3CNの勾配)により精製し、エステル化合物を白色粉体(8.5mg、2.1%)として得た。RP−HPLC(C18、0.1%TFA/H2O溶液中、15分間にわたる5−75%のCH3CNの勾配)の保持時間は9.86であり;C185H274N48O54(M+H)+の計算される質量である4034.54が、LC−MSでの1344.8(M+3H)3として見出された。
Glu(γ−メチルアミド)−(2)−S−シアノピロリジンアミドの合成
以下は、DPP−IV阻害剤をベースとした分子であるGlu(γ−メチルアミド)−(2)−S−シアノピロリジンアミドの合成スキームを示す。
Lys(ε−NH−アセトイル)−(2)−S−シアノピロリジンアミドの合成
以下は、DPP−IV阻害剤をベースとした分子であるLys(γ−メチルアミド)−(2)−S−シアノピロリジンアミドの合成スキームを示す。
マレイミドDPP−IV阻害剤−GIPアナログの合成
以下は、(例えば図4に示されるような)GIPペプチドに対してマレイミドDPP−IV阻害剤アナログをカップリングさせるための典型的な手順である。
25mMのHEPESバッファ(5mL)を、アルゴン下で約10分間脱気し、遊離のシステインと共に、所望のペプチド(10mg 1:1(v/v) CH3CN:H2O)に対し加えた。マレイミド−DPPIVアナログ(約2〜3当量)の1:1(v/v) CH3CN:H2O溶液(5mL)をこのペプチドに加え、アルゴン空気下で溶液を撹拌した。1時間後、LCMSにより、所望の生成物への完全な変換が示されたときに、反応物を凍結し、凍結乾燥した。溶離剤としてCH3CN及びH2Oの勾配を用いた逆相HPLCにより、粗ペプチドを精製した。
実施例2:
GLP−1−ぺプチダーゼ阻害剤コンジュゲートの合成
コンジュゲート分子は、ペプチドGLP−1をペプチダーゼ阻害剤に連結することにより調製された。使用するペプチダーゼ阻害剤は、DPP−IV阻害剤及びバソペプチダーゼ(中性エンドペプチターゼ、ACE及びエンドセリン変換酵素−1)阻害剤を含んでいた。以下は、阻害剤のモチーフがGLP−1のC末端に配置されるGLP−1/DPP−IV阻害剤コンジュゲート分子である4844及び4845、及び、阻害剤のモチーフがGLP−1のN末端に配置される及びGLP−1/バソペプチダーゼ阻害剤コンジュゲート分子である4983及び4984の合成スキームを示す。
チアゾリジニル(S)−2−アミノ−6−(フルオレニルメトキシカルボニル)アミノヘキシルカルバメート(1)の調製:
Boc−Lys(Fmoc)−OH(0.703g、1.5mmol)、ポリスチレン−HOBt(1mmol/g、1g、1mmol)、8mlのCH2Cl2及び2mlのDMFを20mlの反応容器に加え、混合物を室温にて2時間、水平振とう機にて穏やかに撹拌した。懸濁液を濾過し、樹脂をDMF、次いで乾燥CH2Cl2によって、十分に洗浄した。樹脂を10mlの乾燥CH2Cl2中に再懸濁し、チアゾリジン(83μl、1.0mmol)をこの懸濁液に添加した。混合物を次いで、室温にて一晩、水平振とう機にて穏やかに撹拌した。樹脂を濾過して取り除き、濾液を回収して、減圧下で乾燥させた。残渣を次いで、10mlの50%TFAのCH2Cl2溶液にて、室温で2時間処理した。真空において一晩乾燥後、所望の生成物をTFA塩として得た(0.41g、収率73%):1H−NMR(CDCl3、300MHz)δ7.74(d、J=4.5Hz、2H)7.57(d、J=4.1Hz、2H)7.38(t、J=4.5Hz、2H)7.29(t、J=4.4Hz、2H)5.21(s、b、1H)4.53(t、J=、6.2Hz、1H)4.41(m、1H)4.34(d、J=4.3Hz、2H)4.26(m、1H)4.17(m、1H)3.84(m、1H)3.64(m、1H)3.14(m、2H)3.03(t、J=3.3Hz、1H)2.94(t、J=3.8Hz、1H)1.86(m、2H)1.48(m、4H);RP−HPLC(C18、0.1%TFA/H2O中、5分にわたる30−95%のCH3CN)の保持時間は2.91であり;C24H30N3O3S(M+H)+の計算される質量である440.2が、LC−MSでの440.2として見出された。
2−シアノチアゾリジニル(S)−2−アミノ−6−(フルオレニルメトキシカルボニル)アミノヘキシルカルバメート(2)の調製:
Boc−Lys(Fmoc)−OH(0.487g、1.0mmol)、ポリスチレン−HOBt(1mmol/g、1g、1mmol)、8mlのCH2Cl2及び2mlのDMFを25mlの反応容器に加え、混合物を室温にて2時間、水平振とう機にて穏やかに撹拌した。懸濁液を濾過し、樹脂をDMF、次いで乾燥CH2Cl2によって、十分に洗浄した。樹脂を10mlの乾燥CH2Cl2中に再懸濁し、2−シアノチアゾリジン塩酸塩(0.172g、1.1mmol)をこの懸濁液に添加した。混合物を次いで、室温にて一晩、水平振とう機にて穏やかに撹拌した。懸濁液を濾過し、樹脂を10mlのCH2Cl2により洗浄した。濾液を集め、減圧下で蒸発乾燥させた。残渣を60%のCH2Cl2/Et0Acにより溶出するシリカゲルクロマトグラフィーに供し、完全に保護された生成物を、結晶状固体として得た(0.186g、33%)。固体を10mlの50%TFAのCH2Cl2溶液にて、室温で2時間処理し、溶媒を減圧下で除去した。残渣を逆相HPLCカラム(C18、0.1%TFA/H2O中、30分にわたる20−50%のCH3CN勾配)にかけ、標記化合物を白色粉体として得た(0.142g、94%):1H−NMR(CDCl3、300MHz)δ7.74(d、J=4.5Hz、2H)7.56(m、2H)7.38(t、J=4.5Hz、2H)7.29(t、J=4.5Hz、2H)5.27(s、b、1H)5.10(m、1H)4.66(d、J=5.1Hz、1H)4.50(d、J=4.8Hz、1H)4.33(d、J=4.1Hz、2H)4.18(m、1H)3.22(m、2H)3.13(m、2H)1.91(m、2H)1.47(m、4H);RP−HPLC(C18、0.1%TFA/H2O中、5分にわたる30−95%のCH3CN)の保持時間は2.96であり;C25H29N4O3S(M+H)+の計算される質量である465.2が、LC−MSでの465.3として見出された。
GLP−1−(7−37)−GG−(S)−2,6−ジアミノ−1−(チアゾリジン−3−イル)ヘキサン−1−オンアミド(3、4844)の調製:
チアゾリジニル(S)−2−アミノ−6−(フルオレニルメトキシカルボニル)アミノヘキシルカルバメート(1)(0.41g、0.93mmol)、トリチル塩化物樹脂(1.0mmol/g、0.25g、0.25mmol)、15mlの無水DMFを25mlの反応容器に加え、混合物を一晩室温で穏やかに旋回した。懸濁液を濾過し、樹脂を30mlのDMF、30mlのCH2Cl2、30mlのCH2Cl2/MeOH/DIPEA(17:2:1)、及び30mlのCH2Cl2によって順次洗浄した。真空下、KOHにて、樹脂を一晩乾燥した。試験切断生成物のLC−MSは、最初に結合された断片の存在を示した。計算上50μmolの修飾されたトリチル樹脂をSymphonyペプチド合成装置の反応容器に秤量し、標準的なFmocペプチド合成プロトコルに従ってペプチド伸長を実施した。10mLのTFA/H2O/TIPS(95:2.5:2.5)により、ペプチドを樹脂から切り出し、逆相HPLCカラム(C18、0.1%TFA/H2O中、30分にわたる20−50%のCH3CN勾配)にかけ、標記化合物を白色粉体として得た(5.5mg、3%):RP−HPLC(C18、0.1%TFA/H2O中、15分にわたる15−45%のCH3CN)の保持時間は10.52であり;C164H252N45O49S(M+H)+の計算される質量である3670.2が、LC−MSでの1836.0(M+2H)2+、1224.7(M+3H)3+、918.5(M+4H)4+として見出された。
GLP−1−(7−37)−GG−(S)−2,6−ジアミノ−1−(チアゾリジン−2−シアノ−3−イル)ヘキサン−1−オンアミド(4、4845)の調製:
2−シアノチアゾリジニル(S)−2−アミノ−6−(フルオレニルメトキシカルボニル)TFA塩(2)(0.045g、0.078mmol)、トリチル塩化物樹脂(1.0mmol/g、0.10g、0.10mmol)、DIEA(4μl、0.078mmol)、5mlの無水CH2Cl2を25mlの反応容器に加え、混合物を一晩室温で、穏やかに旋回した。懸濁液を濾過し、樹脂を30mlのDMF、30mlのCH2Cl2、30mlのCH2Cl2/MeOH/DIPEA(17:2:1)、及び30mlのCH2Cl2によって順次洗浄した。真空下、KOHにて、樹脂を一晩乾燥した。試験切断生成物のLC−MSは、最初に結合された断片の存在を示した。計算上50μmolの修飾されたトリチル樹脂をSymphonyペプチド合成装置の反応容器に秤量し、標準的なFmocペプチド合成プロトコルに従ってペプチド伸長を実施した。10mLのTFA/H2O/TIPS(95:2.5:2.5)により、ペプチドを樹脂から切り出し、逆相HPLCカラム(C18、0.1%TFA/H2O中、30分にわたる20−50%のCH3CN勾配)にかけ、標記化合物を白色粉体として得た(1.7mg、0.9%):RP−HPLC(C18、0.1%TFA/H2O中、15分にわたる15−45%のCH3CN)の保持時間は10.60であり;C165H251N46O49S(M+H)+の計算される質量である3695.2が、LC−MSでの1848.0(M+2H)によって、2+、1232.7の(M+3H)3+、924.5の(M+4H)4+として見出された。
8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル−GLP−1−(7−36)アミド(5、4992)の調製:
標記ペプチドを、標準的なFastMocプロトコルに従ってABI−433Aペプチド合成装置により0.20mmol Rinkアミド樹脂(0.610mmol/g、0.328g)上に作製した。最終的なFmoc基は除去され、樹脂を真空下で乾燥させ、0.90gの重量を得た。樹脂の3分の1(0.30g)は、濾過フリット付きの反応容器中で10mlのTFA/H2O/TIPS(95:2.5:2.5)により2時間処理し、切断溶液を35mlのTMBEへと濾過した。遠心分離によって沈殿物は集められ、逆相HPLCカラム(C18、0.1%TFA/H2O中、30分にわたる20−50%のCH3CN勾配、20ml/分の流速)にかけ、標記化合物を白色粉体として得た(3.0mg、1.3%):RP−HPLC(C18、0.1%TFA/H2O中、15分にわたる15−45%のCH3CN)の保持時間は10.99であり;C155H238N41O48(M+H)+の計算される質量である3443.9が、LC−MSでの1722.9(M+2H)、2+、1148.6の(M+3H)3+、861.5の(M+4H)4+として見出された。
(R,S)−1−[N 2 −(1−カルボキシ−3−フェニルプロピル)−L−ala]−L−pro−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル−GLP−1−(7−36)アミド(6、4983)の調製:
8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル−GLP−1−(7−36)断片を上記のように作製し、樹脂の3分の1である0.30gを、標準的なFastMocプロトコルに従って、Fmoc−Pro−OH及びFmoc−Ala−OHと順次カップリングさせた。Fmoc基を除去し、樹脂を4mLのDMF/HOAc(99:1)中に溶解した2−ケト−4−フェニル酪酸(0.117g、0.66mmol)、NaBH3CN(0.045g、0.72mmol)と混合した。DMF、CH2Cl2及びMeOHによって樹脂を十分に洗浄し、真空下で乾燥させた。次いで樹脂を、濾過フリット付きの反応容器中で10mlのTFA/H2O/TIPS(95:2.5:2.5)により2時間処理し、切断溶液を35mlのTMBEへと濾過した。遠心分離によって沈殿物は集められ、逆相HPLCカラム(C18、0.1%TFA/H2O中、30分にわたる20−50%のCH3CN勾配、20ml/分の流速)にかけ、標記化合物を白色粉体として得た(1.8mg、0.7%):RP−HPLC(C18、0.1%TFA/H2O中、15分にわたる15−45%のCH3CN)の保持時間は10.58であり;C173H260N43O52(M+H)+の計算される質量である3774.3が、LC−MSでの1888.0(M+2H)によって、2+、1258.7の(M+3H)3+、944.5の(M+4H)4+として見出された。
(R,S)−1−[N 2 −(1−カルボキシ−3−フェニルプロピル)−L−ala]−L−pro−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル−GLP−1−(7−36)アミド(7、4984)の調製:
8−アミノ−3,6−ジオキサオクタノイル−GLP−1−(7−36)断片を上記のように作製し、樹脂の3分の1である0.30gを、標準的なFastMocプロトコルに従って、Fmoc−Pro−OH及びFmoc−Ala−OHと順次カップリングさせた。Fmoc基を除去し、樹脂を4mLのDMF/HOAc(99:1)中に溶解した2−ケト−4−フェニル酪酸(0.117g、0.66mmol)、NaBH3CN(0.045g、0.72mmol)とともにインキュベートされた。DMF、CH2Cl2及びMeOHによって樹脂を十分に洗浄し、真空下で乾燥させた。次いで樹脂を、濾過フリット付きの反応容器中で10mlのTFA/H2O/TIPS(95:2.5:2.5)により2時間処理し、切断溶液を35mlのTMBEへと濾過した。遠心分離によって沈殿物は集められ、逆相HPLCカラム(C18、0.1%TFA/H2O中、30分にわたる20−50%のCH3CN勾配、20ml/分の流速)にかけ、標記化合物を白色粉体として得た(6.4mg、2.4%):RP−HPLC(C18、0.1%TFA/H2O中、15分にわたる15−45%のCH3CN)の保持時間は11.49であり;C179H271N44O55(M+H)+の計算される質量である3919.4が、LC−MSでの1961.1(M+2H)によって、2+、1307.7の(M+3H)3+、980.5の(M+4H)4+として見出された。
実施例3:
GLP−1−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートの特性決定
阻害剤が接合するGLP−1−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートのGLP−1受容体結合活性(RBA)を、受容体供給源がRIN m5f細胞によって発現された内在性GLP−1受容体である結合置換アッセイを用いて評価した。膜画分は、RIN m5f細胞の密集培養物から調製した。ホモジェナイズしたRINm5F細胞膜を、40,000cpm[125I]のGLP−1トレーサを含む20mMのHEPESバッファ及び様々な濃度の試験化合物の中でインキュベートした。反応混合物を、23℃にて2時間、一定して混合した。0.3%のPEI溶液に予め浸漬され、氷冷されたリン酸バッファ溶液ですすいだガラスフィルターパッドを用いて、反応混合物を濾過した。フィルターパッドと結合している数を、シンチレーションカウンターを使用して測定し、結合親和性をGraphPad PRISM(登録商標)ソフトウェア(GraphPad Software社、サンディエゴ、カリフォルニア州)を使用して算出した。
GLP−1−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートは、以下の通りにGLP−1シクラーゼアッセイで評価した。膜画分は、RIN m5f細胞の密集培養物から調製した。試験化合物は、アッセイバッファで連続希釈し、次に、ATP/GTP混合物中にRIN m5f細胞膜を含む96ウェルアッセイプレートに添加した。シクラーゼ活性は、GLP−1受容体の活性化により誘導されるcAMPの産生を測定することにより調べた。cAMP産生の定量化は、Perkin Elmer Fusion(商標)−Alpha Microplate Analyzer(AlphaScreen(商標)technology)を使用し、ビオチン化cAMPプローブを用いて、競合的化学蛍光アッセイによって実現された。この化合物のEC50値は、GraphPad PRISM(登録商標)ソフトウェア内の4−パラメータ方程式へ濃度反応曲線をフィッティングすることにより得られた。受容体結合及びシクラーゼアッセイからの結果は、表1に示される。
GLP−1−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲート化合物4844及び4845は、精製DPP−IV酵素及び発色性基質を用いたDPP−IV阻害アッセイにおいて評価した。組換えDPP−IV(Chemicon International社、Temecula、CA、純度>95%、比活性5.66±0.49mU)を、100μlバッファ(20mMのTris−HCl、pH8.0、5mMのCaCl2、1mMのZnCl2、0.05%のNaN3、pH8.0)中に溶解し、溶液を10本の微小遠心管に分け、−20℃にて保存した。阻害アッセイのために、2μlのH−Gly−Pro−pNA(5mM、PBSバッファ中に溶解、pH7.4)を、37℃にて、96ウェル平底マイクロタイタープレート中、様々な濃度で1μlの化合物4844又は4845を含む146μlのアッセイバッファ(25mMのTris−HCl、140mMのNaCl、10mMのKCl、pH7.4)中でインキュベートした。反応は各ウェルに1μlのDPP−IV酵素(0.05mU)を添加することにより開始し、410nmにおける吸光度を、SpectraMaxプレートリーダー(Molecular Devices社、Sunnyvale、CA)を使用して、30分間にわたり20秒間隔で測定した。様々な阻害剤濃度における各反応速度を計算し、互恵的な速度はDixonグラフ中に、阻害剤濃度に対して速度の逆数をプロットした。反応速度のIC50値を、プロットを一次方程式にフィッティングすることにより計算した。DPP−IV酵素阻害物質Diprotin A(lle−Pro−lle、Calbiochem、EMD Biosciences、San Diego、CA)を、反応のための陽性対照として使用した。Diprotin Aに対するIC50値は5.1μMであると測定され、これは公表値の3.5μMと密接に対応している(Leiting et al. (2003) Biochem. J. 371:525)。DPP−IV阻害剤アッセイからの結果は、表1に示される。
ペプチド安定性アッセイは、様々なペプチダーゼが豊富な調製物であるヒト腎臓刷子縁膜(hKBBM)中に含まれるGLP−1−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートを用いて行った。50%のACN(300μM、70μl)中のペプチド(化合物4992、4983、4984及び対照ペプチド)の溶液を、各々100μlのHEPESバッファ(25mM、pH7.4)中に0.78μlのhKBBMを含むLoBind微小遠心管(Eppendorf North America、Westbury、NY)に移した。この管を、500RPM、37℃にてボルテックスされるVorTemp56(商標)(Eurotech Labs、UK)中でインキュベートした。0、1、2、3、4、及び5時間の時点で、200μlのSTOP溶液(50%のACN、1%のギ酸)を所定の管に添加し、サンプルを、実験の終わりまでインキュベートした。サンプルは5時間後に回収し、遠心分離し、上澄みの200μlの上清を質量分析バイアル中に移した。各バイアルの母イオンの強度は、API 150EX(商標)質量分析計(Applied Biosystems、Foster City、CA)で分析し、ANALYST(商標)プログラムを使用して定量化した。hKBBM安定性アッセイからの結果は、表1に示される。
ペプチド−ACEペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートを、精製ACE酵素及び発色性基質を用いたACE阻害アッセイにおいて評価した。ACEストック溶液は、0.640mLのHEPESバッファ(0.1M、pH=8)中に0.1単位の酵素(ウサギ肺由来ACE、Sigma Chemical社、St.Louis、MO)を溶解させることにより調製した。基質(N−ベンジルオキシカルボニル−Phe−His−Leu−OH)の2mMストック溶液は、メタノール中に溶解した。ACE阻害剤化合物は、0.0、1、10、20、60及び100μMの濃度で、リン酸バッファ(0.1M、pH=8)中に溶解した。阻害アッセイのために、6本の2mL微小遠心管を、1.45mLのリン酸バッファpH=8、0.05mLの10%NaCl及び0.015mLの基質溶液を含むように調製した。各微小遠心管に、0.015mLのACE阻害剤化合物のストック溶液の1つに添加した。この溶液を、37℃にて、約5分間加熱した。反応は5μLのACEストック溶液を各管混合物に添加することにより開始した(30秒間隔)。反応混合物は、37℃にてインキュベートした。5分、10分、30分及び60分後に、100μLのアリコートを各管から採取した(各サンプルは、30秒間隔で採取した)。100μLのサンプルを含む試験管を、沸騰している水浴中で5分間の浮かし、次に、冷却した。次に、反応サンプルを、20μLの2M NaOH及び20μLの0.1% フタルジアルデヒド溶液で処理した。試験管を4分間振盪し、10μLの6M HClを添加した。60〜90分後に、120μLのこの溶液を96ウェル平底−非結合性−表面プレート定盤(上部が測定される)へ移し、蛍光はλex=365nmにて測定され、FlexStation(登録商標)分光蛍光計(Molecular Devices Corp.,Sunnyvale,CA)を使用した場合、λem=500であった。初速度は、生成物放出曲線の直線部分から測定した。すべてのアッセイにおける開始基質濃度は20μMであった。ACEに対する阻害剤の見かけの結合定数
(式中、v
0は阻害剤非存在下での反応速度であり、[I]は阻害剤濃度である)にフィッティングさせることにより測定した。フィッティングは、KaleidaGraph 3.6(Synergy Software,Reading PA)を用いて最小二乗法により行われた。ACE阻害アッセイからの結果は、表2に示される。
表1.GLP−1/ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲート活性アッセイ
表2.GLP−1アナログ/ACE阻害剤コンジュゲート活性アッセイ
実施例2において記載したように、化合物4844及び4845は、阻害剤のモチーフがGLP−1(7−37)のC末端であるGLP−1/DPP−IV阻害剤コンジュゲートである。化合物4983及び4984は、阻害剤のモチーフがGLP−1(7−37)のN末端であるGLP−1/バソペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートである。化合物4992はN末端にリンカーを有するGLP−1(7−37)であり、このリンカーは化合物4983及び4984におけるものと同じである。化合物3633/21、3633/24、3633/42/1、3633/42/2、3633/42/3及び3633/38は、ACE阻害剤のモチーフがGLP−1(7−37)のC末端又は実施例1において記載したような[Leu14]−エキセンディン(1−28)であるコンジュゲート化合物である。
表1及び2に示されるように、GLP−1又はエキセンディン−1アナログのC末端に対するペプチダーゼ阻害剤のモチーフの結合は、受容体結合アッセイ及びシクラーゼアッセイの両方で示されるように、GLP−1受容体と相互作用するコンジュゲートの能力を維持する。例えば、化合物4844及び4845の結果をGLP−1による結果と比較されたい。試験されたコンジュゲート化合物は、DPP−IV又はACE阻害活性も維持した。
GLP−1のN末端に対するペプチダーゼ阻害剤のモチーフの結合は、受容体結合アッセイにおいて約55〜80倍及びシクラーゼアッセイにおいて約500〜800倍までGLP−1活性を減らす。例えば、化合物4983及び4984の結果をGLP−1による結果と比較されたい。化合物4992は、化合物4983及び4984と同じ位置にリンカーを有し、活性の同様の低下を受ける。したがって、化合物4983及び4984において見られる活性の減少は、基本的に、リンカー及び阻害剤のモチーフの位置的効果に起因し得る。
図5は、親イオンがインキュベーション工程を通じて追跡され、イオン強度によって定量化されるLC−MSシステムにより分析される、hKBBMのペプチド安定性の分析を表す。図5aに示されるように、GLP−1(7−36)ペプチド(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR−NH2)は1時間で急速に分解したのに対し、N末端がアシル化されたGLP−1アナログ4992はより遅い速度で分解した。インクレチン擬似体であるエキセンディン−4(HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS−NH2)は、インキュベーション工程時にわたり基本的に完全な安定性を示した。GLP−1コンジュゲート化合物4983及び4984は、GLP−1(7−36)と比較して著しく安定であり、N末端がアシル化されたGLP−1は、80%を超える損なわれていない化合物が4時間後に存在した。hKBBMアッセイは、バリンピロリジド(DPP−IV阻害剤)の存在下でも行われた。図5bに示されるように、バリンピロリジド存在下において、試験するすべてのペプチドの安定性がある程度改善された。安定性が限界まで改善されなかったので、hKBBMアッセイは他のペプチダーゼを含んでいると思われる。
ACE阻害剤リシノプリルとのさらなるコンジュゲートを、生物学的活性について評価するように作製した。これらのコンジュゲート化合物は、図2に示されるように、様々なリンカーによってペプチドのC末端でリシノプリルと結合している。このペプチド成分には、表3に示されるエキセンディン−4及びGLP−1アナログを含む。化合物を、本願明細書において記載されるACE阻害アッセイで試験した。これらのアッセイからの結果は、表3に示される。
表3に記載されているコンジュゲートは、内在的に発現されるGLP−1受容体のペプチドにより誘発される活性化によって細胞系のcAMPの増加を測定する全細胞アッセイを用いて、GLP−1シクラーゼ活性について試験した。甲状腺c−細胞癌系統6−23由来の細胞を、密集するまで増殖させ、ベルセン(0.5M EDTA)を用いて処理することにより回収した。回収時、細胞はEDTAを含まないように洗浄し、2.5x10−6細胞/mlの濃度で、刺激バッファ(1X HBSS、0.1%のBSA、5mMのHEPES、500μM IBMX、pH7.4)中で再懸濁した。cAMPの蓄積は、384ウェル様式で、cAMPアッセイキット(Cisbio−US,Inc.,Bedford,MA)を用いるコンジュゲート又は対照物質による処理の30分後に測定した。化合物は、1μM〜10pMの最終濃度で試験した。細胞−コンジュゲート混合物は、室温にて、30分間インキュベートし、それから、キットで提供されたα−cAMPクリプターゼ溶液の添加により反応を停止させた。次に、プレートを密封し、室温で一晩保存することにより、成分が完全に平衡になるようにした。cAMP含有量を、次に、時間分解蛍光により測定した。試験した物質の有効性は、10μMフォルスコリン(アデニル酸シクラーゼの構成的アクチベーター)による細胞処理と比較して測定し、試験物質の効力(EC50)は、4−パラメータモデルにフィッティングさせる非線形回帰分析を用いて、濃度反応曲線の分析により測定した。GLP−1シクラーゼアッセイからの結果は、表3に示される。表3の他の結果とは異なり、化合物5711のGLP−1シクラーゼアッセイの結果は、上記した細胞膜アッセイに由来するものであった。
表3.
ACE阻害剤リシノプリルとのさらなるコンジュゲートを、生物学的活性について評価するように作製した。これらのコンジュゲート化合物は、図2に示されるように、様々なリンカーによってペプチドのC末端でリシノプリルと結合している。このペプチド成分には、表3に示されるエキセンディン−4及びGLP−1アナログを含む。化合物を、本願明細書において記載されるGLP−1シクラーゼアッセイ及びACE阻害アッセイで試験した。これらのアッセイからの結果は、表3に示される。
実施例4:
GLP−1−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートの安定性の特性決定
GLP−1−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲート化合物のDPP−IVに対する抵抗性も質量分析を使用して評価した。質量分析は、in vitroにおいてペプチドの分解生成物を分析するための、優れたツールを提供する。安定性アッセイのために、2μlのGLP−1、化合物4844、又は化合物4845(1mM、PBSバッファ中に溶解、pH7.4、2nmol)を、微小遠心管中、室温で15時間、2μlの組換えDPP−IV(0.05mU/μl)を含む146μlのアッセイバッファ(25mMのTris−HCl、140mMのNaCl、10mMのKCl、pH7.4)中でインキュベートした。次に、ペプチドを脱塩し、オートサンプラー(Michrom Bioresources,Inc.)によるLTQ FT(商標)質量分析計(Thermo−Electron Corp.,Waltham,MA)への導入の前に、C18ペプチドマイクロトラップ(Michrom Bioresources,Inc.,Auburn,CA)で濃縮した。ペプチドは、500nl/分の流速で、50分にわたる5〜60%のアセトニトリル/水の勾配を使用して、C5パック済75μm溶融シリカピコ―フリットカラム(New Objective,Inc.,Woburn,MA)から溶出させた。最も優位な荷電状態の計算m/z値のために抽出されたイオン質量ウィンドウは、親化合物及び所定のクロマトグラム内の理論的加水分解生成物の両方について調べるために使用した。正確な質量は、FTにより、各荷電状態について確認した。DPP−IVによって触媒される加水分解のパーセンテージは、合計(親+生成物)イオンの面積によって生成物イオンの面積を除することにより推定した。
図6において示されるように、GLP−1(9−36)を生じるGLP−1(7−36)のDPP−IVによる切断は、高感度でESI−MSによりモニターすることができ、母イオン及び生成物イオンの両方の存在が、イオン−抽出プロトコルを使用して定量化することができる。図6aはアッセイバッファ中の50fmolのGLP−1の結果を表し、図6bはアッセイバッファ中の0.1mUのDPP−IV酵素で12時間処理した50fmolのGLP−1の結果を表す。図6cはアッセイバッファ中の0.1mUのDPP−IV酵素で12時間処理した200fmolのコンジュゲート化合物4844の結果を表し、図6dはアッセイバッファ中の0.1mUのDPP−IV酵素で12時間処理した200fmolのコンジュゲート化合物4845の結果を表す。N末端の2残基が切断された生成物は、GLP−1においてのみ観察され(図6b)、化合物4844、化合物4845又はGLP−1単独(それぞれ、図6c、図6d、図6a)では観察されなかった。推定される切断生成物の変換は、全イオン([母イオン]5++[生成物イオン]5+)の領域と比較した[生成物イオン]5+に対するイオン抽出領域(ピーク頂部に示される)の比率に基づく。予想されるイオンを探すために用いられるm/z比率は、プロットの右側に示されている。
GLP−1については、DPP−IVによって触媒された切断は、17%の収率でGLP−1(9−36)生成物を生じることが判明した。化合物4844及び4845(GLP−1のC末端と結合したDPP−IV阻害モチーフ)については、予想される生成物イオンは観察されず、このことは、これらの2つの化合物が試験条件下でDPP−IV抵抗性であることを示している。したがって、本コンジュゲート化合物は、ペプチダーゼにより媒介される切断に対してペプチド安定性を向上した。
実施例5:
GLP−1−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートの活性の特性決定
GLP−1アナログペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートのブドウ糖低下効果は、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で測定した。試験化合物は、2時間絶食させたNIH/Swissマウスのベースライン測定直後(t=0分)に腹腔に注入した。血液サンプルは、注入してから60、120及び180分後に採取した。いくらかのアッセイにおいて、サンプルは、注入してから240分後にも採取された。血中ブドウ糖は、One−Touch(登録商標)Ultra(登録商標)ブドウ糖メーター(LifeScan,Inc.,Milipitas,CA)を用いて測定した。差異分析(ANOVA)を実施し、図4及び5に、データは平均±SEMとして表わされ、ビヒクル対照に対する有意差は*(p値<0.05)により示される。
コンジュゲート化合物4844及び4845を用いたブドウ糖低下アッセイからの結果は、図7に示される。コンジュゲート化合物4983及び4984を用いたブドウ糖低下アッセイからの結果は、図8に示される。これらのデータは、これらのコンジュゲート化合物がGLP−1のブドウ糖低下活性を保持するだけでなく、GLP−1と比較して増大したブドウ糖低下作用を一般的に提供することを、示している。コンジュゲート化合物4984は、例えば、投与4時間後に持続的効果を示した。化合物4983及び4984は、GLP−1シクラーゼアッセイ(表1参照)においてin vitroで活性が有意に低かったが、これらのコンジュゲートによる作用の持続的継続がin vivoにおけるペプチドの半減期の重要性を裏付けている。
実施例6:
GIP−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲート
ペプチド成分としてのGIPアナログとのペプチド−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲート分子は、本願明細書に記載されているペプチダーゼ阻害剤及びリンカー成分を用いて調製した。いくつかのコンジュゲートにおいては、N−(置換グリシル)−2−シアノピロリジンがDPP−IV阻害剤として用いられた。
GIPアナログ−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートのGIP受容体結合活性(RBA)は、受容体供給源がヒトGIP受容体(HEK−GIPR)を安定発現するHEK293細胞系である結合置換アッセイを用いて評価した。膜画分は、HEK−GIPRの密集細胞培養物から調製し、瞬間凍結し、使用するまで−80℃にて保存した。アッセイ時、膜を氷上で解凍し、氷冷結合バッファ(20mMのHEPES(pH7.4)、0.5%のBSA、5mMのMgCl2、1mMのCaCl2、170μMのホスホルアミドン、1.5mMのベスタチン−HCl及び70mMのバシトラシン)中で0.02mg/mLまで希釈した。非相同結合アッセイは、膜を、アッセイバッファ中に希釈した30pM125I−GIP及び10nM非標識GIP−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートと結合させることにより開始した。反応は、一定して振盪させながら、室温にて、90分間、平衡になるまで進行させた。次に、反応混合物を、放射性リガンドの結合画分と非結合画分とを分離する96ウェルのガラスファイバーフィルタープレートで濾過した。各コンジュゲートの放射性リガンドとの置換を、ヒトGIPによる最大の置換(100%)及び任意の競合リガンドの非存在下での非特異的結合(0%)と比較して計算した。GIP RBAの結果(10nMにおける阻害%)は、表4に示される。
GIPアナログ−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートのブドウ糖低下効果は、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で測定した。試験は、実施例5に記載されるようにして実行した。30nM/kgでコンジュゲートを使用するブドウ糖低下アッセイ(最大限の減少%)からの結果は、表4に示される。
表4.
GIPアナログ−DPPIV阻害剤コンジュゲート及び対照化合物を用いるDPP−IV阻害アッセイは、実施例3に記載されるようにして実施した。DPP−IV阻害アッセイ(IC50)からの結果は、表5に示される。表5のIC50(nM)値は、少なくとも3つの独立した測定値の平均SEMとして表される。
表5.
ペプチド安定性アッセイは、さまざまなペプチダーゼが豊富な調製物であるヒト腎臓膜タンパク質中のGIPアナログ−DPPIV阻害剤コンジュゲートを用いて実施した。アッセイに用いられる腎臓膜タンパク質(KMP)溶液は、KMP調製物(5mMのTris−HCl中、約7.7ugのタンパク質/μl溶液)をリン酸バッファ(PBS)中、1:125に希釈することにより調製した。希釈されたKMP溶液(630μl)は深いウエルプレート中に分注し、コンジュゲート化合物又は対照ペプチド(200ug/mlの70μl)はKMP溶液と混合した。5時間にわたり500PRMで混合しながら、深底ウエルプレートを37℃にてVorTemp56(商標)インキュベーター/振盪機(Labnet International, Inc.,Woodbridge,NJ)中でインキュベートした。0、1、2、3、4、4、及び5時間の時点で、25μlのアリコートを各ウェルから除去し、4ug/mlの最終的なコンジュゲート又はペプチド濃度になるように、100μlの5%リン酸を混合した。すべてのサンプルは、時間的経過を通じ三連で分析した。プレートはプレートマットで被覆し、API 4000 Q TRAP又はAPI 3000 LC/MS/MSシステムのオンライン固相抽出LC/MS法により分析した。
LC/MSの結果は、選択された化合物イオンが取り込まれ、三組でピーク領域として、6つの時点で示される定量テーブルを作成することにより、ANALYST(商標)ソフトウェアを用いて定量した。陽性対照及び陰性対照化合物を分析に含まれ、最終結果は曲線下の面積%として表わされ、100%の陽性対照に対して正規化される。コンジュゲート化合物のいくつかに対するこのアッセイからの結果は図9に示され、KMPの時間に対するピーク面積比率に基づき、残存している親ペプチドの割合%としてプロットされる。
表4に示されるように、GIPアナログのN末端又はC末端に対するペプチダーゼ阻害剤モチーフの結合は、コンジュゲートがGIP受容体と相互作用する能力を保持する。GIPのN末端に結合したペプチダーゼ阻害剤のモチーフを有する表4に示される4つのコンジュゲートのうち3つは、GIPのC末端に結合したペプチダーゼ阻害剤のモチーフを有するコンジュゲートと比較して低いGIP受容体結合能を示した。GIPアナログ−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲート化合物は、ブドウ糖低下活性を有する(表4)。GIPアナログ−DPPIV阻害剤コンジュゲート化合物は、DPP−IV阻害剤活性を保持した(表5)。図9は、親イオンがインキュベーション工程を通じて追跡され、イオン強度によって定量化される、LC−MSシステムにより分析される腎臓膜抽出物におけるペプチド安定性の分析を表す。図9に示されるように、GIPアナログ−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲートは、腎臓膜アッセイにおけるGIPと比較して著しく安定であった。
実施例7:
カルボキシペプチダーゼ阻害剤活性の特性決定
PYY(3−36)からPYY(3−35)を形成するC末端チロシルアミドの切断は、ラット、マウス及びヒト血漿において示された。その活性がメタロプロテアーゼ阻害剤EDTA又はホスホルアミドン(1mMの最終濃度の各プロテアーゼ阻害剤)によってではなく4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフルオライド(AEBSF)により阻害されることから、この血漿カルボキシペプチダーゼはセリンプロテアーゼであると思われる。カルボキシペプチダーゼ活性アッセイは、その物質のカルボキシペプチダーゼ阻害剤活性を調べるためにさまざまな物質の存在下で行われた。
カルボキシペプチダーゼ活性アッセイは、0時点から開始して、60分間10分毎に100μLのサンプルを除去するために、十分量のヒト血清中基質として10μg/mlのアミド化PYY(3−36)を調製することにより行われた。基質PYY(3−36)のヒト血漿への添加後、サンプルを穏やかに混合し、100μlの混合物サンプルを、0時点を表すために微小遠心管に移した。残りのサンプルは37℃でインキュベーター中に置き、600RPM/分、60分間混合した。10分間隔で、100μlの混合物サンプルを除去し、別々の微小遠心管に移した。0時点及び各10分間隔での100μLのサンプルの移送後、それぞれ回収したサンプルは、混合しながら、100μlの冷却0.2%ギ酸:アセトニトリルを緩徐に添加することにより抽出した。アセトニトリル溶液の添加後、サンプルは、15秒間、高速でボルテックス混合した。抽出された試料は、−20℃にて少なくとも20分間保存し、次に、11,000x g、5℃にて10分間遠心分離した。各サンプルの上清は、新しい微小遠心管に移し、再び遠心分離して、最終的にLC/MS分析のために移された。MS分析は、親分子及び対象のペプチド断片で最も強度の高いイオンを検出するQ1単一イオンモニター方法であった。カルボキシペプチダーゼ活性は、PYY(3−35)の出現により測定した。
図10に示すように、ヒト血漿中でPYY(3−36)をインキュベーションすることにより、PYY(3−36)の代謝物質であるPYY(3−35)の出現に伴って、PYY(3−36)の消失が引き起こされる。
PYY、PYY(6N−メチル−Tyr−アミド−PYY(3−36))及びこのペプチドのN末端を切り詰めたもののTyr36におけるα−アミノ窒素に対してメチル基を加えることにより、一連のペプチドをベースとした阻害剤が作られた。ペプチドをベースとした阻害剤は、カルボキシペプチダーゼ活性のアッセイで阻害剤活性を試験された。36N−メチル−Tyr−アミド−PYY(3−36)は、ヒト血漿中0.5mMで、PYY(3−36)存在下、PYY(3−35)の生成を〜100%阻害する阻害活性を示した。例えば、図11を参照されたい。図12に示すように、36N−メチル−Tyr−アミド−PYY(22−36)(0.5mM)では、PYY(3−35)の生成を阻害する活性は、測定可能ではあるが、より低かった。このペプチドのより短い断片である、36N−メチル−Tyr−アミド−PYY(34−36)及びNメチル−Tyr−NH2は、0.5mMでPYY(3−35)の生成を阻害しなかった(それぞれ図13及び14)。
実施例8:
鬱血性心不全アッセイにおけるペプチド−ペプチダーゼ阻害剤コンジュゲート
エキセンディンのアナログ及びACE阻害剤のリシノプリルから成るP−PIコンジュゲートを、in vivoアッセイでの鬱血性心不全(CHF)において試験した。試験されるコンジュゲートは、表3に示すように、化合物5715及び5131であった。この分析において、ダール塩感受性(DSS)オスラットは21日齢で離乳させ、2週間の低塩(LS)食(0.2%のNaCl)で飼育した。ラットを5週齢でケタミン/キシラジン(50mg/kg/10mg/kg、IP)で麻酔し、遠隔測定法送信機(DataSciences社)を大動脈動脈に挿入した。手術後、BP(収縮期及び拡張期の圧力)を記録する前に、ラットを回復のため10日間休ませた。
5週齢から、DSSラットは高塩(HS)食(8%のNaCl)を与えられ、5週間の間、浸透圧alzetポンプ(Durect社、クパチーノ、CA)を介して、皮下に、コンジュゲート化合物5715(10μg/kg/day)(n=3ラット)、又はコンジュゲート化合物5131(10μg/kg/day)(n=7ラット)を注入された。HS対照動物(n=10ラット)はビヒクル(50%のDMSO)のみを投与され、同様にHSを与えられた。LS対照動物(n=5ラット)は、LS食で飼育された。
図15は、第5週目に測定された平均拡張期(図15a)及び収縮期の(図15b)血圧を表す(各グループの全ての動物の平均)。第5週目に測定された時、HS食の動物に対するP−PIコンジュゲートの投与は、HS対照(拡張期167mmHg及び収縮期213mmHg)の動物の測定値と比較してより低い平均拡張期血圧(化合物5131に関し、134mmHg、化合物5715に関し112mmHg)及び平均収縮期血圧(化合物5131に関し175mmHg、規化合物5715に関し161mmHg)をもたらした。同様に第5週目で、動物の平均心拍数は、化合物5131を投与されたもので363、化合物5715を投与されたもので381、HS対照動物では401、LS対照動物では386であった。
上記の説明により本発明を例示したが、それらは説明のみを目的とするものであり、本発明の実施には、特許請求範囲に記載された発明の範囲内としての、通常行われうるバリエーション、改変又は変更態様の全てが包含されることが理解されよう。従って、以上の記載及び実施例は、添付の特許請求の範囲によって記載される本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。