上述の空気調和装置においては、圧縮機の後段側の圧縮要素から吐出された後に室外熱交換器又は室内熱交換器において放熱した冷媒の一部を、後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻すことによって、圧縮機の前段側の圧縮要素から吐出されて後段側の圧縮要素に吸入される冷凍サイクルにおける中間圧の冷媒と合流させる中間圧インジェクションを行い、後段側の圧縮要素から吐出される冷媒の温度を低下させるとともに、圧縮機の消費動力を減らし、運転効率の向上を図るようにしている。
しかし、上述の空気調和装置では、一層の圧縮機の消費動力の低減や運転効率の向上を図るために、中間圧インジェクションに加えて、さらに後段側の圧縮要素から吐出される冷媒の温度を低下させて、室外熱交換器や室内熱交換器における放熱ロスを減らすための構成を設けることが望ましい。特に、二酸化炭素のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合には、その臨界温度(例えば、二酸化炭素の臨界温度は、約31℃)が冷媒の放熱器として機能する室外熱交換器の冷却源となる水や空気の温度と同程度であり、R22やR410A等の冷媒に比べて低いことから、室外熱交換器における水や空気による冷媒の冷却が可能になるように、冷凍サイクルの高圧が冷媒の臨界圧力よりも高い状態で運転がなされることになる。このことに起因して、圧縮機の後段側の圧縮要素から吐出される冷媒の温度が高くなるため、冷媒の放熱器として機能する室外熱交換器において、冷却源としての水や空気と冷媒との間の温度差が大きくなってしまい、室外熱交換器における放熱ロスが大きくなることから、高い運転効率が得られにくいという問題がある。
本発明の課題は、冷却運転と加熱運転とを切り換え可能で、かつ、中間圧インジェクションが可能な冷媒回路を有する多段圧縮式の冷凍サイクルを行う冷凍装置において、高い運転効率を得ることにある。
第1の発明にかかる冷凍装置は、圧縮機構と、冷媒の放熱器又は蒸発器として機能する熱源側熱交換器と、冷媒の蒸発器又は放熱器として機能する利用側熱交換器と、切換機構と、後段側インジェクション管と、中間熱交換器と、中間熱交換器バイパス管と、エコノマイザ熱交換器とを備えている。圧縮機構は、複数の圧縮要素を有しており、複数の圧縮要素のうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成されている。ここで、「圧縮機構」とは、複数の圧縮要素が一体に組み込まれた圧縮機や、単一の圧縮要素が組み込まれた圧縮機及び/又は複数の圧縮要素が組み込まれた圧縮機を複数台接続したものを含む構成を意味している。また、「複数の圧縮要素のうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮する」とは、「前段側の圧縮要素」及び「後段側の圧縮要素」という直列に接続された2つの圧縮要素を含むことだけを意味しているのではなく、複数の圧縮要素が直列に接続されており、各圧縮要素間の関係が、上述の「前段側の圧縮要素」と「後段側の圧縮要素」との関係を有することを意味している。切換機構は、圧縮機構、熱源側熱交換器、利用側熱交換器の順に冷媒を循環させる冷却運転状態と、圧縮機構、利用側熱交換器、熱源側熱交換器の順に冷媒を循環させる加熱運転状態とを切り換える機構である。後段側インジェクション管は、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器において放熱した冷媒を分岐して後段側の圧縮要素に戻すための冷媒管である。中間熱交換器は、前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素に吸入させるための中間冷媒管に設けられ、切換機構を冷却運転状態にする冷却運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて前記後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却器として機能する熱交換器である。中間熱交換器バイパス管は、中間熱交換器をバイパスするように中間冷媒管に接続され、切換機構を加熱運転状態にする加熱運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにする冷媒管である。エコノマイザ熱交換器は、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器において放熱した冷媒と後段側インジェクション管を流れる冷媒との熱交換を行う熱交換器である。そして、この冷凍装置は、エコノマイザ熱交換器の後段側インジェクション管側の出口における冷媒の過熱度が目標値になるように、後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量を制御するものであり、加熱運転時における過熱度の目標値が冷却運転時における過熱度の目標値よりも小さくなるように設定されるインジェクション量最適化制御を行う。
この冷凍装置において、中間熱交換器バイパス管を設けることなく中間熱交換器だけを設けた場合には、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションによる後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果に加えて、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が加わるため、中間熱交換器を設けない場合に比べて、最終的に圧縮機構から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができる。これにより、冷却運転時において、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスが小さくなるため、中間圧インジェクションだけの場合に比べて、運転効率をさらに向上させることができる。しかし、加熱運転時においては、中間熱交換器を設けない場合であれば、利用側熱交換器において利用できるはずの熱を中間熱交換器から外部に放熱してしまうことになるため、運転効率が低下してしまうことになる。
このため、この冷凍装置では、中間熱交換器だけでなく中間熱交換器バイパス管を設けて、切換機構を加熱運転状態にする加熱運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにしている。これにより、この冷凍装置では、冷却運転時においては、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、加熱運転時においては、外部への放熱を抑えて利用側熱交換器において利用できるようにすることができる。すなわち、この冷凍装置では、冷却運転時においては、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスを小さくして、運転効率を向上させることができるとともに、加熱運転時には、外部への放熱を抑えて、運転効率の低下を防ぐことができる。
しかし、上述のように、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションの構成に加えて、中間熱交換器及び中間熱交換器バイパス管を設け、切換機構を加熱運転状態にする加熱運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにすると、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が得られないため、その分だけ成績係数が向上しないという問題がある。
そこで、この冷凍装置では、圧縮機構から吐出される冷媒の流量に対する後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量の比であるインジェクション比が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなるように、後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量を制御するインジェクション量最適化制御を行うことで、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションによる後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなるようにしているため、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、外部への放熱を抑えながら、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、これにより、成績係数を向上させることができる。
特に、この冷凍装置では、エコノマイザ熱交換器において、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器において放熱した冷媒と後段側インジェクション管を流れる冷媒との熱交換を行い、この熱交換が行われた後の後段側インジェクション管を流れる冷媒を後段側の圧縮要素に戻す、いわゆるエコノマイザ熱交換器による中間圧インジェクションを行う構成とし、インジェクション量最適化制御として、エコノマイザ熱交換器の後段側インジェクション管側の出口における冷媒の過熱度が目標値になるように、後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量を制御するものを採用しており、加熱運転時における過熱度の目標値が冷却運転時における過熱度の目標値よりも小さくなるように設定しているため、圧縮機構から吐出される冷媒の流量に対する後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量の比であるインジェクション比が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなる。これにより、この冷凍装置では、エコノマイザ熱交換器による中間圧インジェクションによる後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなるため、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、外部への放熱を抑えながら、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、成績係数を向上させることができる。
第2の発明にかかる冷凍装置は、第1の発明にかかる冷凍装置において、加熱運転時における過熱度の目標値は、冷却運転時における過熱度の目標値に対して5℃から10℃だけ小さい値に設定される。
ここで、中間圧インジェクションを行う冷凍装置では、圧縮機構から吐出される冷媒の流量に対する後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量の比をインジェクション比とすると、成績係数が最大になる最適インジェクション比が存在している。そして、この冷凍装置では、冷却運転時における最適インジェクション比よりも加熱運転時における最適インジェクション比のほうが大きくなる傾向にあり、この傾向は、加熱運転時に中間熱交換器を使用しないことが起因しているものと考えられる。すなわち、この冷凍装置では、加熱運転時において、中間圧インジェクションのみによって後段側の圧縮要素に吸入される冷媒を冷却していることから、中間熱交換器と中間圧インジェクションとを併用している冷却運転時に比べて、中間熱交換器による冷却効果に相当する分だけ、加熱運転時における最適インジェクション比が大きくなっているものと考えられる。
そこで、この冷凍装置では、加熱運転時における過熱度の目標値を冷却運転時における過熱度の目標値に対して5℃から10℃だけ小さい値に設定することで、加熱運転時においても、後段側の圧縮要素に吸入される冷媒を、加熱運転時は中間圧インジェクションによって、中間熱交換器及び中間圧インジェクションにより冷媒を冷却する冷却運転時と同程度の過熱度まで冷却するようにして、中間熱交換器による冷却効果に相当する分だけ冷却運転時よりも加熱運転時におけるインジェクション比が大きくなるようにしている。これにより、この冷凍装置では、冷却運転時における過熱度の目標値を冷却運転時の成績係数が最大になる最適インジェクション比に対応する値付近に設定している場合には、加熱運転時においても、加熱運転時の成績係数が最大になる最適インジェクション比に近づくようになり、冷却運転及び加熱運転の両方において、成績係数が最大になる最適インジェクション比で中間圧インジェクションを行うことができる。
第3の発明にかかる冷凍装置は、圧縮機構と、冷媒の放熱器又は蒸発器として機能する熱源側熱交換器と、冷媒の蒸発器又は放熱器として機能する利用側熱交換器と、切換機構と、後段側インジェクション管と、中間熱交換器と、中間熱交換器バイパス管とを備えている。圧縮機構は、複数の圧縮要素を有しており、複数の圧縮要素のうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成されている。ここで、「圧縮機構」とは、複数の圧縮要素が一体に組み込まれた圧縮機や、単一の圧縮要素が組み込まれた圧縮機及び/又は複数の圧縮要素が組み込まれた圧縮機を複数台接続したものを含む構成を意味している。また、「複数の圧縮要素のうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮する」とは、「前段側の圧縮要素」及び「後段側の圧縮要素」という直列に接続された2つの圧縮要素を含むことだけを意味しているのではなく、複数の圧縮要素が直列に接続されており、各圧縮要素間の関係が、上述の「前段側の圧縮要素」と「後段側の圧縮要素」との関係を有することを意味している。切換機構は、圧縮機構、熱源側熱交換器、利用側熱交換器の順に冷媒を循環させる冷却運転状態と、圧縮機構、利用側熱交換器、熱源側熱交換器の順に冷媒を循環させる加熱運転状態とを切り換える機構である。後段側インジェクション管は、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器において放熱した冷媒を分岐して後段側の圧縮要素に戻すための冷媒管である。中間熱交換器は、前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素に吸入させるための中間冷媒管に設けられ、切換機構を冷却運転状態にする冷却運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて前記後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却器として機能する熱交換器である。中間熱交換器バイパス管は、中間熱交換器をバイパスするように中間冷媒管に接続され、切換機構を加熱運転状態にする加熱運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにする冷媒管である。そして、この冷凍装置は、後段側の圧縮要素の吸入における冷媒の過熱度が目標値になるように、後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量を制御するものであり、加熱運転時における過熱度の目標値が冷却運転時における過熱度の目標値よりも小さくなるように設定されるインジェクション量最適化制御を行う。
この冷凍装置において、中間熱交換器バイパス管を設けることなく中間熱交換器だけを設けた場合には、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションによる後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果に加えて、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が加わるため、中間熱交換器を設けない場合に比べて、最終的に圧縮機構から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができる。これにより、冷却運転時において、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスが小さくなるため、中間圧インジェクションだけの場合に比べて、運転効率をさらに向上させることができる。しかし、加熱運転時においては、中間熱交換器を設けない場合であれば、利用側熱交換器において利用できるはずの熱を中間熱交換器から外部に放熱してしまうことになるため、運転効率が低下してしまうことになる。
このため、この冷凍装置では、中間熱交換器だけでなく中間熱交換器バイパス管を設けて、切換機構を加熱運転状態にする加熱運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにしている。これにより、この冷凍装置では、冷却運転時においては、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、加熱運転時においては、外部への放熱を抑えて利用側熱交換器において利用できるようにすることができる。すなわち、この冷凍装置では、冷却運転時においては、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスを小さくして、運転効率を向上させることができるとともに、加熱運転時には、外部への放熱を抑えて、運転効率の低下を防ぐことができる。
しかし、上述のように、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションの構成に加えて、中間熱交換器及び中間熱交換器バイパス管を設け、切換機構を加熱運転状態にする加熱運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにすると、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が得られないため、その分だけ成績係数が向上しないという問題がある。
そこで、この冷凍装置では、圧縮機構から吐出される冷媒の流量に対する後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量の比であるインジェクション比が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなるように、後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量を制御するインジェクション量最適化制御を行うことで、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションによる後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなるようにしているため、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、外部への放熱を抑えながら、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、これにより、成績係数を向上させることができる。
特に、この冷凍装置では、インジェクション量最適化制御として、後段側の圧縮要素の吸入における冷媒の過熱度が目標値になるように、後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量を制御するものを採用しており、加熱運転時における過熱度の目標値が冷却運転時における過熱度の目標値よりも小さくなるように設定されているため、圧縮機構から吐出される冷媒の流量に対する後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量の比であるインジェクション比が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなる。これにより、この冷凍装置では、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションによる後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなるため、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、外部への放熱を抑えながら、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、成績係数を向上させることができる。
第4の発明にかかる冷凍装置は、圧縮機構と、冷媒の放熱器又は蒸発器として機能する熱源側熱交換器と、冷媒の蒸発器又は放熱器として機能する利用側熱交換器と、切換機構と、後段側インジェクション管と、中間熱交換器と、中間熱交換器バイパス管と、気液分離器とを備えている。圧縮機構は、複数の圧縮要素を有しており、複数の圧縮要素のうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成されている。ここで、「圧縮機構」とは、複数の圧縮要素が一体に組み込まれた圧縮機や、単一の圧縮要素が組み込まれた圧縮機及び/又は複数の圧縮要素が組み込まれた圧縮機を複数台接続したものを含む構成を意味している。また、「複数の圧縮要素のうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮する」とは、「前段側の圧縮要素」及び「後段側の圧縮要素」という直列に接続された2つの圧縮要素を含むことだけを意味しているのではなく、複数の圧縮要素が直列に接続されており、各圧縮要素間の関係が、上述の「前段側の圧縮要素」と「後段側の圧縮要素」との関係を有することを意味している。切換機構は、圧縮機構、熱源側熱交換器、利用側熱交換器の順に冷媒を循環させる冷却運転状態と、圧縮機構、利用側熱交換器、熱源側熱交換器の順に冷媒を循環させる加熱運転状態とを切り換える機構である。後段側インジェクション管は、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器において放熱した冷媒を分岐して後段側の圧縮要素に戻すための冷媒管である。中間熱交換器は、前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素に吸入させるための中間冷媒管に設けられ、切換機構を冷却運転状態にする冷却運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて前記後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却器として機能する熱交換器である。中間熱交換器バイパス管は、中間熱交換器をバイパスするように中間冷媒管に接続され、切換機構を加熱運転状態にする加熱運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにする冷媒管である。気液分離器は、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器において放熱した冷媒を気液分離する機器である。後段側インジェクション管は、気液分離器において気液分離されたガス冷媒を後段側の圧縮要素に戻すための第1後段側インジェクション管と、放熱器として機能する熱源側熱交換器又は利用側熱交換器と気液分離器との間から冷媒を分岐して後段側の圧縮要素に戻す第2後段側インジェクション管とを有している。
そして、この冷凍装置は、後段側の圧縮要素の吸入における冷媒の過熱度が目標値になるように、第2後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量を制御するものであり、加熱運転時における過熱度の目標値が冷却運転時における過熱度の目標値よりも小さくなるように設定されるインジェクション量最適化制御を行う。
この冷凍装置において、中間熱交換器バイパス管を設けることなく中間熱交換器だけを設けた場合には、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションによる後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果に加えて、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が加わるため、中間熱交換器を設けない場合に比べて、最終的に圧縮機構から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができる。これにより、冷却運転時において、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスが小さくなるため、中間圧インジェクションだけの場合に比べて、運転効率をさらに向上させることができる。しかし、加熱運転時においては、中間熱交換器を設けない場合であれば、利用側熱交換器において利用できるはずの熱を中間熱交換器から外部に放熱してしまうことになるため、運転効率が低下してしまうことになる。
このため、この冷凍装置では、中間熱交換器だけでなく中間熱交換器バイパス管を設けて、切換機構を加熱運転状態にする加熱運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにしている。これにより、この冷凍装置では、冷却運転時においては、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、加熱運転時においては、外部への放熱を抑えて利用側熱交換器において利用できるようにすることができる。すなわち、この冷凍装置では、冷却運転時においては、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスを小さくして、運転効率を向上させることができるとともに、加熱運転時には、外部への放熱を抑えて、運転効率の低下を防ぐことができる。
しかし、上述のように、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションの構成に加えて、中間熱交換器及び中間熱交換器バイパス管を設け、切換機構を加熱運転状態にする加熱運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにすると、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が得られないため、その分だけ成績係数が向上しないという問題がある。
そこで、この冷凍装置では、圧縮機構から吐出される冷媒の流量に対する後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量の比であるインジェクション比が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなるように、後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量を制御するインジェクション量最適化制御を行うことで、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションによる後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなるようにしているため、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、外部への放熱を抑えながら、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、これにより、成績係数を向上させることができる。
特に、この冷凍装置では、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器において放熱した冷媒を気液分離器において気液分離し、この気液分離されたガス冷媒を第1後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻す、いわゆる気液分離器による中間圧インジェクションを採用している。
しかし、気液分離器による中間圧インジェクションでは、気液分離器に流入する冷媒の液ガス比によって第1後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻すことができる冷媒の流量が決まるため、第1後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻す冷媒の流量を制御することが困難である。
そこで、この冷凍装置では、放熱器として機能する熱源側熱交換器又は利用側熱交換器と気液分離器との間から冷媒を分岐して後段側の圧縮要素に戻す第2後段側インジェクション管を設けて、気液分離器による中間圧インジェクションに加えて、第2後段側インジェクションを用いて後段側の圧縮要素に液冷媒を戻す液インジェクションを行う構成にして、インジェクション量最適化制御として、後段側の圧縮要素の吸入における冷媒の過熱度が目標値になるように、第2後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量を制御するものを採用しており、加熱運転時における過熱度の目標値が冷却運転時における過熱度の目標値よりも小さくなるように設定しているため、圧縮機構から吐出される冷媒の流量に対する後段側インジェクション管(ここでは、第1後段側インジェクション管及び第2後段側インジェクション管の両方)を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量の比であるインジェクション比が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなる。これにより、この冷凍装置では、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションによる後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなるため、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、外部への放熱を抑えながら、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、成績係数を向上させることができる。
第5の発明にかかる冷凍装置は、圧縮機構と、冷媒の放熱器又は蒸発器として機能する熱源側熱交換器と、冷媒の蒸発器又は放熱器として機能する利用側熱交換器と、切換機構と、後段側インジェクション管と、中間熱交換器と、中間熱交換器バイパス管と、気液分離器とを備えている。圧縮機構は、複数の圧縮要素を有しており、複数の圧縮要素のうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成されている。ここで、「圧縮機構」とは、複数の圧縮要素が一体に組み込まれた圧縮機や、単一の圧縮要素が組み込まれた圧縮機及び/又は複数の圧縮要素が組み込まれた圧縮機を複数台接続したものを含む構成を意味している。また、「複数の圧縮要素のうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮する」とは、「前段側の圧縮要素」及び「後段側の圧縮要素」という直列に接続された2つの圧縮要素を含むことだけを意味しているのではなく、複数の圧縮要素が直列に接続されており、各圧縮要素間の関係が、上述の「前段側の圧縮要素」と「後段側の圧縮要素」との関係を有することを意味している。切換機構は、圧縮機構、熱源側熱交換器、利用側熱交換器の順に冷媒を循環させる冷却運転状態と、圧縮機構、利用側熱交換器、熱源側熱交換器の順に冷媒を循環させる加熱運転状態とを切り換える機構である。後段側インジェクション管は、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器において放熱した冷媒を分岐して後段側の圧縮要素に戻すための冷媒管である。中間熱交換器は、前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素に吸入させるための中間冷媒管に設けられ、切換機構を冷却運転状態にする冷却運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて前記後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却器として機能する熱交換器である。中間熱交換器バイパス管は、中間熱交換器をバイパスするように中間冷媒管に接続され、切換機構を加熱運転状態にする加熱運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにする冷媒管である。気液分離器は、加熱運転時に前記利用側熱交換器において放熱した冷媒を気液分離する機器である。後段側インジェクション管は、加熱運転時に気液分離器において気液分離されたガス冷媒を後段側の圧縮要素に戻すための第1後段側インジェクション管と、加熱運転時に利用側熱交換器と気液分離器との間から冷媒を分岐して後段側の圧縮要素に戻す第2後段側インジェクション管と、冷却運転時に熱源側熱交換器において放熱した冷媒を分岐して後段側の圧縮要素に戻す第3後段側インジェクション管とを有している。また、この冷凍装置は、冷却運転時に熱源側熱交換器において放熱した冷媒と第3後段側インジェクション管を流れる冷媒との熱交換を行うエコノマイザ熱交換器をさらに備えている。そして、この冷凍装置は、冷却運転時において、後段側の圧縮要素の吸入における冷媒の過熱度が目標値になるように、第3後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量を制御するとともに、加熱運転時において、後段側の圧縮要素の吸入における冷媒の過熱度が目標値になるように、第2後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量を制御するものであり、加熱運転時における過熱度の目標値が冷却運転時における過熱度の目標値よりも小さくなるように設定されるインジェクション量最適化制御を行う。
この冷凍装置において、中間熱交換器バイパス管を設けることなく中間熱交換器だけを設けた場合には、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションによる後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果に加えて、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が加わるため、中間熱交換器を設けない場合に比べて、最終的に圧縮機構から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができる。これにより、冷却運転時において、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスが小さくなるため、中間圧インジェクションだけの場合に比べて、運転効率をさらに向上させることができる。しかし、加熱運転時においては、中間熱交換器を設けない場合であれば、利用側熱交換器において利用できるはずの熱を中間熱交換器から外部に放熱してしまうことになるため、運転効率が低下してしまうことになる。
このため、この冷凍装置では、中間熱交換器だけでなく中間熱交換器バイパス管を設けて、切換機構を加熱運転状態にする加熱運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにしている。これにより、この冷凍装置では、冷却運転時においては、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、加熱運転時においては、外部への放熱を抑えて利用側熱交換器において利用できるようにすることができる。すなわち、この冷凍装置では、冷却運転時においては、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスを小さくして、運転効率を向上させることができるとともに、加熱運転時には、外部への放熱を抑えて、運転効率の低下を防ぐことができる。
しかし、上述のように、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションの構成に加えて、中間熱交換器及び中間熱交換器バイパス管を設け、切換機構を加熱運転状態にする加熱運転時に、前段側の圧縮要素から吐出されて後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにすると、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が得られないため、その分だけ成績係数が向上しないという問題がある。
そこで、この冷凍装置では、圧縮機構から吐出される冷媒の流量に対する後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量の比であるインジェクション比が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなるように、後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量を制御するインジェクション量最適化制御を行うことで、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションによる後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなるようにしているため、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、外部への放熱を抑えながら、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、これにより、成績係数を向上させることができる。
例えば、第4の発明にかかる気液分離器による中間圧インジェクション及び第2後段側インジェクション管による液インジェクションを行う冷凍装置において、互いに並列に接続された複数の利用側熱交換器を有する構成にするとともに、各利用側熱交換器を流れる冷媒の流量を制御して各利用側熱交換器において必要とされる冷凍負荷を得ることができるようにするために各利用側熱交換器に対応するように膨張機構を設けることが考えられる。この場合には、加熱運転において、各利用側熱交換器を通過する冷媒の流量が、各利用側熱交換器に対応して設けられた膨張機構の開度によって概ね決定されることになるが、この際、各膨張機構の開度は、各利用側熱交換器を流れる冷媒の流量だけでなく、複数の利用側熱交換器間の流量分配の状態によって変動することになり、複数の膨張機構間で開度が大きく異なる状態が生じたり、膨張機構が比較的小さい開度になったりする場合があり、このため、加熱運転時における膨張機構の開度制御によって、気液分離器の圧力が過度に低下する場合があり得る。このため、気液分離器による中間圧インジェクションは、気液分離器の圧力と冷凍サイクルにおける中間圧との圧力差が小さい条件であっても使用可能であることから、この構成における加熱運転のように、気液分離器の圧力が過度に低下するおそれの高い場合に有利である。
一方、第1又は第2の発明にかかるエコノマイザ熱交換器による中間圧インジェクションを行う冷凍装置において、互いに並列に接続された複数の利用側熱交換器を有する構成にするとともに、各利用側熱交換器を流れる冷媒の流量を制御して各利用側熱交換器において必要とされる冷凍負荷を得ることができるようにするために各利用側熱交換器に対応するように膨張機構を設けることが考えられる。この場合には、冷却運転時において、熱源側熱交換器において放熱した冷媒がエコノマイザ熱交換器に流入するまでの間に大幅な減圧操作が行われることがなく、冷凍サイクルにおける高圧から冷凍サイクルの中間圧付近までの圧力差を利用できる条件であることから、エコノマイザ熱交換器における熱交換量が大きくなり、後段側の圧縮要素に戻すことができる冷媒の流量が大きくすることができるため、気液分離器による中間圧インジェクションに比べて、その適用が有効である。
このように、互いに並列に接続された複数の利用側熱交換器を有する構成にするとともに、各利用側熱交換器を流れる冷媒の流量を制御して各利用側熱交換器において必要とされる冷凍負荷を得ることができるようにするために各利用側熱交換器に対応するように膨張機構を設ける構成を前提とする場合には、この冷凍装置のように、加熱運転時には、利用側熱交換器において放熱した冷媒を気液分離器において気液分離し、この気液分離されたガス冷媒を第1後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻す、いわゆる気液分離器による中間圧インジェクション及び第2後段側インジェクション管による液インジェクションを、冷却運転時には、エコノマイザ熱交換器において、熱源側熱交換器において放熱した冷媒と後段側インジェクション管を流れる冷媒との熱交換を行い、この熱交換が行われた後の後段側インジェクション管を流れる冷媒を後段側の圧縮要素に戻す、いわゆるエコノマイザ熱交換器による中間圧インジェクションを行う構成にすることが好ましい。そして、インジェクション量最適化制御として、冷却運転時において、後段側の圧縮要素の吸入における冷媒の過熱度が目標値になるように、第3後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量を制御するとともに、加熱運転時において、後段側の圧縮要素の吸入における冷媒の過熱度が目標値になるように、第2後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量を制御するものを採用し、加熱運転時における過熱度の目標値が冷却運転時における過熱度の目標値よりも小さくなるように設定しているため、圧縮機構から吐出される冷媒の流量に対する後段側インジェクション管(冷却運転時には、第3後段側インジェクション管、加熱運転時には、第1後段側インジェクション管及び第2後段側インジェクション管の両方)を通じて後段側の圧縮要素に戻される冷媒の流量の比であるインジェクション比が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなる。これにより、この冷凍装置では、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションによる後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果が、冷却運転時よりも加熱運転時のほうが大きくなるため、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、外部への放熱を抑えながら、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、成績係数を向上させることができる。
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
第1の発明では、冷却運転時においては、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスを小さくして、運転効率を向上させることができるとともに、加熱運転時には、後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにして、外部への放熱を抑えることができるとともに、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、成績係数を向上させることができる。特に、エコノマイザ熱交換器において、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器において放熱した冷媒と後段側インジェクション管を流れる冷媒との熱交換を行い、この熱交換が行われた後の後段側インジェクション管を流れる冷媒を後段側の圧縮要素に戻す、いわゆるエコノマイザ熱交換器による中間圧インジェクションを行う構成において、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、外部への放熱を抑えながら、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、成績係数を向上させることができる。
第2の発明では、冷却運転及び加熱運転の両方において、成績係数が最大になる最適インジェクション比で中間圧インジェクションを行うことができる。
第3の発明では、冷却運転時においては、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスを小さくして、運転効率を向上させることができるとともに、加熱運転時には、後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにして、外部への放熱を抑えることができるとともに、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、成績係数を向上させることができる。
第4の発明では、冷却運転時においては、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスを小さくして、運転効率を向上させることができるとともに、加熱運転時には、後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにして、外部への放熱を抑えることができるとともに、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、成績係数を向上させることができる。特に、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器において放熱した冷媒を気液分離器において気液分離し、この気液分離されたガス冷媒を第1後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻す、いわゆる気液分離器による中間圧インジェクションを採用した構成において、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、外部への放熱を抑えながら、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、成績係数を向上させることができる。
第5の発明では、冷却運転時においては、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器における放熱ロスを小さくして、運転効率を向上させることができるとともに、加熱運転時には、後段側の圧縮要素に吸入される冷媒が中間熱交換器によって冷却されないようにして、外部への放熱を抑えることができるとともに、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、成績係数を向上させることができる。特に、加熱運転時には、利用側熱交換器において放熱した冷媒を気液分離器において気液分離し、この気液分離されたガス冷媒を第1後段側インジェクション管を通じて後段側の圧縮要素に戻す、いわゆる気液分離器による中間圧インジェクション及び第2後段側インジェクション管による液インジェクションを、冷却運転時には、エコノマイザ熱交換器において、熱源側熱交換器又は利用側熱交換器において放熱した冷媒と後段側インジェクション管を流れる冷媒との熱交換を行い、この熱交換が行われた後の後段側インジェクション管を流れる冷媒を後段側の圧縮要素に戻す、いわゆるエコノマイザ熱交換器による中間圧インジェクションを行う構成において、中間熱交換器による後段側の圧縮要素に吸入される冷媒の冷却効果のない加熱運転時においても、外部への放熱を抑えながら、圧縮機構から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、成績係数を向上させることができる。
第8の発明では、冷却運転及び加熱運転の両方において、成績係数が最大になる最適インジェクション比で中間圧インジェクションを行うことができる。
以下、図面に基づいて、本発明にかかる冷凍装置の実施形態について説明する。
(1)空気調和装置の構成
図1は、本発明にかかる冷凍装置の一実施形態としての空気調和装置1の概略構成図である。空気調和装置1は、冷房運転と暖房運転を切り換え可能に構成された冷媒回路10を有し、超臨界域で作動する冷媒(ここでは、二酸化炭素)を使用して二段圧縮式冷凍サイクルを行う装置である。
空気調和装置1の冷媒回路10は、主として、圧縮機構2と、切換機構3と、熱源側熱交換器4と、ブリッジ回路17と、第1膨張機構5aと、気液分離器としてのレシーバ18と、第1後段側インジェクション管18cと、第2後段側インジェクション管としての液インジェクション管18hと、第2膨張機構5bと、利用側熱交換器6と、中間熱交換器7とを有している。
圧縮機構2は、本実施形態において、2つの圧縮要素で冷媒を二段圧縮する圧縮機21から構成されている。圧縮機21は、ケーシング21a内に、圧縮機駆動モータ21bと、駆動軸21cと、圧縮要素2c、2dとが収容された密閉式構造となっている。圧縮機駆動モータ21bは、駆動軸21cに連結されている。そして、この駆動軸21cは、2つの圧縮要素2c、2dに連結されている。すなわち、圧縮機21は、2つの圧縮要素2c、2dが単一の駆動軸21cに連結されており、2つの圧縮要素2c、2dがともに圧縮機駆動モータ21bによって回転駆動される、いわゆる一軸二段圧縮構造となっている。圧縮要素2c、2dは、本実施形態において、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素である。そして、圧縮機21は、吸入管2aから冷媒を吸入し、この吸入された冷媒を圧縮要素2cによって圧縮した後に中間冷媒管8に吐出し、中間冷媒管8に吐出された冷媒を圧縮要素2dに吸入させて冷媒をさらに圧縮した後に吐出管2bに吐出するように構成されている。ここで、中間冷媒管8は、圧縮要素2cの前段側に接続された圧縮要素2cから吐出された冷媒を、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入させるための冷媒管である。また、吐出管2bは、圧縮機構2から吐出された冷媒を切換機構3に送るための冷媒管であり、吐出管2bには、油分離機構41と逆止機構42とが設けられている。油分離機構41は、圧縮機構2から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離して圧縮機構2の吸入側へ戻す機構であり、主として、圧縮機構2から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離する油分離器41aと、油分離器41aに接続されており冷媒から分離された冷凍機油を圧縮機構2の吸入管2aに戻す油戻し管41bとを有している。油戻し管41bには、油戻し管41bを流れる冷凍機油を減圧する減圧機構41cが設けられている。減圧機構41cは、本実施形態において、キャピラリチューブが使用されている。逆止機構42は、圧縮機構2の吐出側から切換機構3への冷媒の流れを許容し、かつ、切換機構3から圧縮機構2の吐出側への冷媒の流れを遮断するための機構であり、本実施形態において、逆止弁が使用されている。
このように、圧縮機構2は、本実施形態において、2つの圧縮要素2c、2dを有しており、これらの圧縮要素2c、2dのうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成されている。
切換機構3は、冷媒回路10内における冷媒の流れの方向を切り換えるための機構であり、冷房運転時には、熱源側熱交換器4を圧縮機構2によって圧縮される冷媒の冷却器として、かつ、利用側熱交換器6を熱源側熱交換器4において冷却された冷媒の加熱器として機能させるために、圧縮機構2の吐出側と熱源側熱交換器4の一端とを接続するとともに圧縮機21の吸入側と利用側熱交換器6とを接続し(図1の切換機構3の実線を参照、以下、この切換機構3の状態を「冷却運転状態」とする)、暖房運転時には、利用側熱交換器6を圧縮機構2によって圧縮される冷媒の冷却器として、かつ、熱源側熱交換器4を利用側熱交換器6において冷却された冷媒の加熱器として機能させるために、圧縮機構2の吐出側と利用側熱交換器6とを接続するとともに圧縮機構2の吸入側と熱源側熱交換器4の一端とを接続することが可能である(図1の切換機構3の破線を参照、以下、この切換機構3の状態を「加熱運転状態」とする)。本実施形態において、切換機構3は、圧縮機構2の吸入側、圧縮機構2の吐出側、熱源側熱交換器4及び利用側熱交換器6に接続された四路切換弁である。尚、切換機構3は、四路切換弁に限定されるものではなく、例えば、複数の電磁弁を組み合わせる等によって、上述と同様の冷媒の流れの方向を切り換える機能を有するように構成したものであってもよい。
このように、切換機構3は、冷媒回路10を構成する圧縮機構2、熱源側熱交換器4、第1膨張機構5a、レシーバ18、第2膨張機構5b、及び利用側熱交換器6だけに着目すると、圧縮機構2、熱源側熱交換器4、第1膨張機構5a、レシーバ18、第2膨張機構5b、利用側熱交換器6の順に冷媒を循環させる冷却運転状態と、圧縮機構2、利用側熱交換器6、第1膨張機構5a、レシーバ18、第2膨張機構5b、熱源側熱交換器4の順に冷媒を循環させる加熱運転状態とを切り換えることができるように構成されている。
熱源側熱交換器4は、冷媒の放熱器又は蒸発器として機能する熱交換器である。熱源側熱交換器4は、その一端が切換機構3に接続されており、その他端がブリッジ回路17を介して第1膨張機構5aに接続されている。熱源側熱交換器4は、水や空気を熱源(すなわち、冷却源又は加熱源)とする熱交換器である。
ブリッジ回路17は、熱源側熱交換器4と利用側熱交換器6との間に設けられており、レシーバ18の入口に接続されるレシーバ入口管18a、及び、レシーバ18の出口に接続されるレシーバ出口管18bに接続されている。ブリッジ回路17は、本実施形態において、4つの逆止弁17a、17b、17c、17dを有している。そして、入口逆止弁17aは、熱源側熱交換器4からレシーバ入口管18aへの冷媒の流通のみを許容する逆止弁である。入口逆止弁17bは、利用側熱交換器6からレシーバ入口管18aへの冷媒の流通のみを許容する逆止弁である。すなわち、入口逆止弁17a、17bは、熱源側熱交換器4及び利用側熱交換器6の一方からレシーバ入口管18aに冷媒を流通させる機能を有している。出口逆止弁17cは、レシーバ出口管18bから利用側熱交換器6への冷媒の流通のみを許容する逆止弁である。出口逆止弁17dは、レシーバ出口管18bから熱源側熱交換器4への冷媒の流通のみを許容する逆止弁である。すなわち、出口逆止弁17c、17dは、レシーバ出口管18bから熱源側熱交換器4及び利用側熱交換器6の他方に冷媒を流通させる機能を有している。
第1膨張機構5aは、レシーバ入口管18aに設けられた冷媒を減圧する機構であり、本実施形態において、電動膨張弁が使用されている。また、本実施形態において、第1膨張機構5aは、冷房運転時には、熱源側熱交換器4において冷却された冷凍サイクルにおける高圧の冷媒をレシーバ18を介して利用側熱交換器6に送る前に冷媒の飽和圧力付近まで減圧し、暖房運転時には、利用側熱交換器6において冷却された冷凍サイクルにおける高圧の冷媒をレシーバ18を介して熱源側熱交換器4に送る前に冷媒の飽和圧力付近まで減圧する。
レシーバ18は、冷房運転と暖房運転との間で冷媒回路10における冷媒の循環量が異なる等の運転状態に応じて発生する余剰冷媒を溜めることができるように、第1膨張機構5aで減圧された後の冷媒を一時的に溜めるために設けられた容器であり、その入口がレシーバ入口管18aに接続されており、その出口がレシーバ出口管18bに接続されている。また、レシーバ18には、レシーバ18内から冷媒を抜き出して圧縮機構2の吸入管2a(すなわち、圧縮機構2の前段側の圧縮要素2cの吸入側)に戻すことが可能な第1吸入戻し管18fが接続されている。
第1後段側インジェクション管18cは、気液分離器としてのレシーバ18によって気液分離されたガス冷媒を圧縮機構2の後段側の圧縮要素2dに戻す中間圧インジェクションを行うことが可能な冷媒管であり、本実施形態において、レシーバ18の上部と中間冷媒管8(すなわち、圧縮機構2の後段側の圧縮要素2dの吸入側)とを接続するように設けられている。この第1後段側インジェクション管18cには、第1後段側インジェクション開閉弁18dと第1後段側インジェクション逆止機構18eとが設けられている。第1後段側インジェクション開閉弁18dは、開閉制御が可能な弁であり、本実施形態において、電磁弁である。第1後段側インジェクション逆止機構18eは、レシーバ18から後段側の圧縮要素2dへの冷媒の流れを許容し、かつ、後段側の圧縮要素2dからレシーバ18への冷媒の流れを遮断するための機構であり、本実施形態において、逆止弁が使用されている。
第1吸入戻し管18fは、レシーバ18から冷媒を抜き出して圧縮機構2の前段側の圧縮要素2cに戻すことが可能な冷媒管であり、本実施形態において、レシーバ18の上部と吸入管2a(すなわち、圧縮機構2の前段側の圧縮要素2cの吸入側)とを接続するように設けられている。この第1吸入戻し管18fには、第1吸入戻し開閉弁18gが設けられている。第1吸入戻し開閉弁18gは、開閉制御が可能な弁であり、本実施形態において、電磁弁である。
このように、レシーバ18は、第1後段側インジェクション開閉弁18dや第1吸入戻し開閉弁18gを開けることによって第1後段側インジェクション管18cや第1吸入戻し管18fを使用する場合には、熱源側熱交換器4と利用側熱交換器6との間を流れる冷媒を、第1膨張機構5aと第2膨張機構5bとの間において、気液分離する気液分離器として機能し、主として、レシーバ18において気液分離されたガス冷媒をレシーバ18の上部から圧縮機構2の後段側の圧縮要素2dや前段側の圧縮要素2cに戻すことができるようになっている。
第2膨張機構5bは、レシーバ出口管18bに設けられた冷媒を減圧する機構であり、本実施形態において、電動膨張弁が使用されている。第2膨張機構5bは、その一端がレシーバ18に接続され、その他端がブリッジ回路17を介して利用側熱交換器6に接続されている。また、本実施形態において、第2膨張機構5bは、冷房運転時には、第1膨張機構5aによって減圧された冷媒をレシーバ18を介して利用側熱交換器6に送る前に冷凍サイクルにおける低圧になるまでさらに減圧し、暖房運転時には、第1膨張機構5aによって減圧された冷媒をレシーバ18を介して熱源側熱交換器4に送る前に冷凍サイクルにおける低圧になるまでさらに減圧する。
利用側熱交換器6は、冷媒の蒸発器又は放熱器として機能する熱交換器である。利用側熱交換器6は、その一端がブリッジ回路17を介して第1膨張機構5aに接続されており、その他端が切換機構3に接続されている。利用側熱交換器6は、水や空気を熱源(すなわち、冷却源又は加熱源)とする熱交換器である。
このように、ブリッジ回路17、レシーバ18、レシーバ入口管18a及びレシーバ出口管18bによって、切換機構3を冷却運転状態にしている際には、熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒が、ブリッジ回路17の入口逆止弁17a、レシーバ入口管18aの第1膨張機構5a、レシーバ18、レシーバ出口管18bの第2膨張機構5b及びブリッジ回路17の出口逆止弁17cを通じて、利用側熱交換器6に送ることができるようになっている。また、切換機構3を加熱運転状態にしている際には、利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒が、ブリッジ回路17の入口逆止弁17b、レシーバ入口管18aの第1膨張機構5a、レシーバ18、レシーバ出口管18bの第2膨張機構5b及びブリッジ回路17の出口逆止弁17dを通じて、熱源側熱交換器4に送ることができるようになっている。
中間熱交換器7は、中間冷媒管8に設けられており、本実施形態において、冷房運転時に、前段側の圧縮要素2cから吐出されて圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却器として機能させることが可能な熱交換器である。中間熱交換器7は、水や空気を熱源(ここでは、冷却源)とする熱交換器である。このように、中間熱交換器7は、冷媒回路10を循環する冷媒を用いたものではないという意味で、外部熱源を用いた冷却器ということができる。
また、中間冷媒管8には、中間熱交換器7をバイパスするように、中間熱交換器バイパス管9が接続されている。この中間熱交換器バイパス管9は、中間熱交換器7を流れる冷媒の流量を制限する冷媒管である。そして、中間熱交換器バイパス管9には、中間熱交換器バイパス開閉弁11が設けられている。中間熱交換器バイパス開閉弁11は、本実施形態において、電磁弁である。この中間熱交換器バイパス開閉弁11は、本実施形態において、基本的には、切換機構3を冷却運転状態にしている際に閉め、切換機構3を加熱運転状態にしている際に開ける制御がなされる。すなわち、中間熱交換器バイパス開閉弁11は、冷房運転を行う際に閉め、暖房運転を行う際に開ける制御がなされる。
また、中間冷媒管8には、中間熱交換器バイパス管9の前段側の圧縮要素2c側端との接続部から中間熱交換器7の前段側の圧縮要素2c側端までの部分に、中間熱交換器開閉弁12が設けられている。この中間熱交換器開閉弁12は、中間熱交換器7を流れる冷媒の流量を制限する機構である。中間熱交換器開閉弁12は、本実施形態において、電磁弁である。この中間熱交換器開閉弁12は、本実施形態において、基本的には、切換機構3を冷却運転状態にしている際に開け、切換機構3を加熱運転状態にしている際に閉める制御がなされる。すなわち、中間熱交換器開閉弁12は、冷房運転を行う際に開け、暖房運転を行う際に閉める制御がなされる。
また、中間冷媒管8には、前段側の圧縮要素2cの吐出側から後段側の圧縮要素2dの吸入側への冷媒の流れを許容し、かつ、後段側の圧縮要素2dの吸入側から前段側の圧縮要素2cの吐出側への冷媒の流れを遮断するための逆止機構15が設けられている。逆止機構15は、本実施形態において、逆止弁である。尚、逆止機構15は、本実施形態において、中間冷媒管8の中間熱交換器7の後段側の圧縮要素2d側端から中間熱交換器バイパス管9の後段側の圧縮要素2d側端との接続部までの部分に設けられている。
液インジェクション管18hは、第1後段側インジェクション管18cを使用している際、すなわち、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションを行っている際に、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器4又は利用側熱交換器6とレシーバ18との間から冷媒を分岐して後段側の圧縮要素2dに戻すための第2後段側インジェクション管として機能する冷媒管であり、ここでは、レシーバ入口管18aの第1膨張機構5aの上流側の部分と、中間冷媒管8(すなわち、圧縮機構2の後段側の圧縮要素2dの吸入側)とを接続するように設けられている。ここで、第1後段側インジェクション管18cと液インジェクション管18hとは、中間冷媒管8側の部分(より具体的には、第1後段側インジェクション管18cの第1後段側インジェクション開閉弁18d及び第1後段側インジェクション逆止機構18eが設けられた部分から中間冷媒管8との接続部分まで)が一体となっている。また、この液インジェクション管18hには、第2後段側インジェクション弁としての液インジェクション弁18iが設けられている。液インジェクション弁18iは、開度制御が可能な弁であり、本実施形態において、電動膨張弁である。
このように、本実施形態の空気調和装置1は、冷却運転と加熱運転とを切り換え可能で、かつ、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションが可能な冷媒回路10を有する二段圧縮式冷凍サイクルを行う構成において、中間熱交換器7及び中間熱交換器バイパス管9を設けることで、冷房運転時には、前段側の圧縮要素2cから吐出されて後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒を中間熱交換器7によって冷却し、暖房運転時には、前段側の圧縮要素2cから吐出されて後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒が中間熱交換器7によって冷却されないようにするとともに、第1後段側インジェクション管18cを使用している際に、放熱器としての熱源側熱交換器4又は利用側熱交換器6とレシーバ18との間から冷媒を分岐して後段側の圧縮要素2dに戻す第2後段側インジェクション管としての液インジェクション管18hをさらに設けることで、後述のインジェクション量最適化制御を行うようにしている。
さらに、空気調和装置1には、各種のセンサが設けられている。具体的には、中間冷媒管8には、中間冷媒管8を流れる冷媒の圧力である冷凍サイクルにおける中間圧を検出する中間圧力センサ54が設けられている。中間冷媒管8には、第1後段側インジェクション管18cが接続された部分よりも後段側の圧縮要素2d側の位置に、後段側の圧縮要素2dの吸入側における冷媒の温度を検出する中間温度センサ56が設けられている。また、空気調和装置1は、ここでは図示しないが、圧縮機構2、切換機構3、膨張機構5a、5b、中間熱交換器バイパス開閉弁11、中間熱交換器開閉弁12、第1後段側インジェクション開閉弁18d、液インジェクション弁18iと、第1吸入戻し開閉弁18g等の空気調和装置1を構成する各部の動作を制御する制御部を有している。
(2)空気調和装置の動作
次に、本実施形態の空気調和装置1の動作について、図1〜図8を用いて説明する。ここで、図2は、冷房運転時における空気調和装置1内の冷媒の流れを示す図であり、図3は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図であり、図4は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された温度−エントロピ線図であり、図5は、暖房運転時における空気調和装置1内の冷媒の流れを示す図であり、図6は、暖房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図であり、図7は、暖房運転時の冷凍サイクルが図示された温度−エントロピ線図であり、図8は、インジェクション比と冷房運転時における成績係数比又は暖房運転時における成績係数比との関係を示す図である。尚、以下の冷房運転及び暖房運転における運転制御は、上述の制御部(図示せず)によって行われる。また、以下の説明において、「高圧」とは、冷凍サイクルにおける高圧(すなわち、図3、図4の点D、D’、Eにおける圧力や図6、7の点D、D’、Fにおける圧力を意味し、「低圧」とは、冷凍サイクルにおける低圧(すなわち、図3、4の点A、Fにおける圧力や図6、7の点A、Eにおける圧力)を意味し、「中間圧」とは、冷凍サイクルにおける中間圧(すなわち、図3、4、6、7の点B、C、C’、G、G’、I、L、M、Xにおける圧力)を意味している。
<冷房運転>
冷房運転時は、切換機構3が図1及び図2の実線で示される冷却運転状態とされる。また、第1膨張機構5a及び第2膨張機構5bは、開度調節される。そして、切換機構3が冷却運転状態となるため、中間冷媒管8の中間熱交換器開閉弁12が開けられ、そして、中間熱交換器バイパス管9の中間熱交換器バイパス開閉弁11が閉められることによって、中間熱交換器7が冷却器として機能する状態にされる。さらに、第1後段側インジェクション開閉弁18dは、開状態にされ、液インジェクション弁18iは、開度調節される。より具体的には、本実施形態において、液インジェクション弁18iは、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒(すなわち、前段側の圧縮要素2cから吐出され、中間熱交換器7を通過し、第1後段側インジェクション管18c及び第2後段側インジェクション管としての液インジェクション管18hを通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒と合流した後の冷媒)の過熱度SHが冷房運転時における目標値SHC(図4参照)になるように、液インジェクション管18hを通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量を制御する、いわゆる過熱度制御がなされるようになっている。本実施形態において、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度SHCは、中間圧力センサ54により検出される中間圧を飽和温度に換算し、中間温度センサ56により検出される冷媒温度からこの冷媒の飽和温度値を差し引くことによって得られる。このように、本実施形態の冷房運転時においては、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度SHが目標値SHCになるように、後段側インジェクション管(ここでは、第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18h)を通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量を制御するようになっている。
この冷媒回路10の状態において、低圧の冷媒(図1〜図4の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図1〜図4の点B参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、中間熱交換器7において、冷却源としての水や空気と熱交換を行うことで冷却される(図1〜図4の点C参照)。この中間熱交換器7において冷却された冷媒は、レシーバ18から第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18hを通じて後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図1〜図4の点M、点X参照)と合流することでさらに冷却される(図1〜図4の点G参照)。次に、第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18hから戻る冷媒と合流した(すなわち、気液分離器としてのレシーバ18及び液インジェクション管18hによる中間圧インジェクションが行われた)中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図1〜図4の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図3に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、油分離機構41を構成する油分離器41aに流入し、同伴する冷凍機油が分離される。また、油分離器41aにおいて高圧の冷媒から分離された冷凍機油は、油分離機構41を構成する油戻し管41bに流入し、油戻し管41bに設けられた減圧機構41cで減圧された後に圧縮機構2の吸入管2aに戻されて、再び、圧縮機構2に吸入される。次に、油分離機構41において冷凍機油が分離された後の高圧の冷媒は、逆止機構42及び切換機構3を通じて、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器4に送られる。そして、熱源側熱交換器4に送られた高圧の冷媒は、熱源側熱交換器4において、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図1〜図4の点E参照)。そして、熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒は、ブリッジ回路17の入口逆止弁17aを通じてレシーバ入口管18aに流入し、その一部が液インジェクション管18hに分岐される。そして、液インジェクション管18hを流れる冷媒は、液インジェクション弁18iにおいて中間圧付近まで減圧された後に(図1〜図4の点X参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、液インジェクション管18hで分岐された後の高圧の冷媒は、第1膨張機構5aによって中間圧付近まで減圧されてレシーバ18内に一時的に溜められるとともに気液分離が行われる(図1〜図4の点I、L、M参照)。そして、レシーバ18において気液分離されたガス冷媒は、第1後段側インジェクション管18cによってレシーバ18の上部から抜き出されて、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、レシーバ18内に溜められた液冷媒は、レシーバ出口管18bに送られて、第2膨張機構5bによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、ブリッジ回路17の出口逆止弁17cを通じて、冷媒の蒸発器として機能する利用側熱交換器6に送られる(図1〜図4の点F参照)。そして、利用側熱交換器6に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図1〜図4の点A参照)。そして、この利用側熱交換器6において加熱された低圧の冷媒は、切換機構3を経由して、再び、圧縮機構2に吸入される。このようにして、冷房運転が行われる。
このように、本実施形態の空気調和装置1(冷凍装置)では、第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18hを設けて、熱源側熱交換器4において放熱した冷媒を分岐して後段側の圧縮要素2dに戻す気液分離器としてのレシーバ18や液インジェクション管18hによる中間圧インジェクションを行うことによる後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却効果に加えて、前段側の圧縮要素2cから吐出された冷媒を後段側の圧縮要素2dに吸入させるための中間冷媒管8に中間熱交換器7を設けて、冷房運転時において、中間熱交換器開閉弁12を開け、また、中間熱交換器バイパス開閉弁11を閉めることによって、中間熱交換器7を冷却器として機能する状態にしているため、中間熱交換器7による後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却効果が加わり、中間熱交換器7を設けない場合や中間熱交換器7を使用しない場合(この場合には、図3、図4において、点A→点B→点G’→点D’→点E→点I、X→点L→点Fの順で冷凍サイクルが行われる)に比べて、圧縮要素2cの後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の温度が低下し(図4の点G、G’参照)、最終的に圧縮機構2から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができる(図4の点D、D’参照)。これにより、この空気調和装置1では、冷房運転時において、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器4における放熱ロスが小さくなるため、中間圧インジェクションだけの場合に比べて、運転効率をさらに向上させることができる。
しかも、本実施形態の空気調和装置1では、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションを採用していることから、レシーバ18に流入する冷媒の液ガス比によって第1後段側インジェクション管18cを通じて後段側の圧縮要素2dに戻すことができる冷媒の流量が決まってしまい、第1後段側インジェクション管18cを通じて後段側の圧縮要素2dに戻す冷媒の流量を積極的に制御することが困難であるため、第1後段側インジェクション管18cに加えて、液インジェクション管18hを設けるようにしている。これにより、この空気調和装置1では、この液インジェクション管18hの液インジェクション弁18iの開度調節によって、第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18hを通じて後段側の圧縮要素2dに戻る冷媒の流量を積極的に制御することが可能になり、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度SHを冷房運転時における目標値SHCで一定にすることができる。ここで、本実施形態の空気調和装置1では、圧縮機構2から吐出される冷媒の流量に対する後段側インジェクション管(ここでは、第1後段側インジェクション管18c及び第2後段側インジェクション管としての液インジェクション管18hの両方)を通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量の比であるインジェクション比と成績係数比(インジェクション比が0.20の場合における成績係数を1として他のインジェクション比における成績係数を表した値)との間に、図8に示されるような関係があり、冷房運転時における成績係数が最大になる最適インジェクション比が0.3〜0.4となっている。このため、本実施形態では、冷房運転時における最適インジェクション比に対応するように、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度SHの冷房運転時の目標値SHCを設定して、液インジェクション弁18iの開度調節を行うことで、冷房運転時における成績係数の最大付近にすることができる。
<暖房運転>
暖房運転時は、切換機構3が図1及び図5の破線で示される加熱運転状態とされる。また、第1膨張機構5a及び第2膨張機構5bは、開度調節される。そして、切換機構3が加熱運転状態となるため、中間冷媒管8の中間熱交換器開閉弁12が閉められ、そして、中間熱交換器バイパス管9の中間熱交換器バイパス開閉弁11が開けられることによって、中間熱交換器7が冷却器として機能しない状態にされる。さらに、第1後段側インジェクション開閉弁18dは、開状態にされ、液インジェクション弁18iは、冷房運転時と同様の開度調節がなされる。ここで、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度SHの暖房運転時における目標値をSHH(図7参照)とする。
この冷媒回路10の状態において、低圧の冷媒(図1、図5〜図7の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図1、図5〜図7の点B参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、上述の冷房運転時とは異なり、中間熱交換器7を通過せずに(すなわち、冷却されることなく)、中間熱交換器バイパス管9を通過する(図1、図5〜図7の点C参照)。この中間熱交換器7によって冷却されることなく中間熱交換器バイパス管9を通過した中間圧の冷媒は、レシーバ18から第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18hを通じて後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図1、図5〜図7の点M、点X参照)と合流することで冷却される(図1、図5〜図7の点G参照)。次に、第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18hから戻る冷媒と合流した(すなわち、気液分離器としてのレシーバ18及び液インジェクション管18hによる中間圧インジェクションが行われた)中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図1、図5〜図7の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図6に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、油分離機構41を構成する油分離器41aに流入し、同伴する冷凍機油が分離される。また、油分離器41aにおいて高圧の冷媒から分離された冷凍機油は、油分離機構41を構成する油戻し管41bに流入し、油戻し管41bに設けられた減圧機構41cで減圧された後に圧縮機構2の吸入管2aに戻されて、再び、圧縮機構2に吸入される。次に、油分離機構41において冷凍機油が分離された後の高圧の冷媒は、逆止機構42及び切換機構3を通じて、冷媒の放熱器として機能する利用側熱交換器6に送られて、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図1、図5〜図7の点F参照)。そして、利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒は、ブリッジ回路17の入口逆止弁17bを通じてレシーバ入口管18aに流入し、その一部が液インジェクション管18hに分岐される。そして、液インジェクション管18hを流れる冷媒は、液インジェクション弁18iにおいて中間圧付近まで減圧された後に(図1、図5〜図7の点X参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、液インジェクション管18hで分岐された後の高圧の冷媒は、第1膨張機構5aによって中間圧付近まで減圧されてレシーバ18内に一時的に溜められるとともに気液分離が行われる(図1、図5〜図7の点I、L、M参照)。そして、レシーバ18において気液分離されたガス冷媒は、第1後段側インジェクション管18cによってレシーバ18の上部から抜き出されて、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、レシーバ18内に溜められた液冷媒は、レシーバ出口管18bに送られて、第2膨張機構5bによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、ブリッジ回路17の出口逆止弁17dを通じて、冷媒の蒸発器として機能する熱源側熱交換器4に送られる(図1、図5〜図7の点E参照)。そして、熱源側熱交換器4に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、熱源側熱交換器4において、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図1、図5〜図7の点A参照)。そして、この熱源側熱交換器4において加熱されて蒸発した低圧の冷媒は、切換機構3を経由して、再び、圧縮機構2に吸入される。このようにして、暖房運転が行われる。
このように、本実施形態の空気調和装置1(冷凍装置)では、前段側の圧縮要素2cから吐出された冷媒を後段側の圧縮要素2dに吸入させるための中間冷媒管8に設けられた中間熱交換器7を、暖房運転時において、中間熱交換器開閉弁12を閉め、また、中間熱交換器バイパス開閉弁11を開けることによって、中間熱交換器7を冷却器として機能しない状態にしているため、熱源側熱交換器4において放熱した冷媒を分岐して後段側の圧縮要素2dに戻す気液分離器としてのレシーバ18や液インジェクション管18hによる中間圧インジェクションを行うことによる後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却効果だけになり、中間熱交換器開閉弁12や中間熱交換器バイパス開閉弁11を設けずに中間熱交換器7だけを設けた場合や上述の冷房運転と同様に中間熱交換器7を冷却器として機能させた場合(この場合には、図6、図7において、点A→点B→点C’→点G’→点D’→点F→点I、X→点L→点Eの順で冷凍サイクルが行われる)に比べて、中間熱交換器7から外部への放熱が防止され、後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の温度の低下が抑えられ(図7の点G、G’参照)、最終的に圧縮機構2から吐出される冷媒の温度の低下を抑えることができる(図7の点D、D’参照)。これにより、この空気調和装置1では、暖房運転時において、外部への放熱を抑えて、冷媒の放熱器として機能する利用側熱交換器6において利用できるようにして、運転効率の低下を防ぐことができる。
しかし、上述のように、後段側インジェクション管(ここでは、第1後段側インジェクション管18cや液インジェクション管18h)を用いた中間圧インジェクションの構成に加えて、中間熱交換器7及び中間熱交換器バイパス管9を設け、暖房運転時に、前段側の圧縮要素2cから吐出されて後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒が中間熱交換器7によって冷却されないようにすると、中間熱交換器7による後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却効果が得られないため、その分だけ暖房運転時における成績係数が向上しないという問題がある。
そこで、本実施形態の空気調和装置1では、インジェクション比が、冷房運転時よりも暖房運転時のほうが大きくなるように、後段側インジェクション管(ここでは、第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18h)を通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量を制御するインジェクション量最適化制御を行うようにしている。
より具体的には、本実施形態において、インジェクション量最適化制御は、暖房運転時における過熱度SHの目標値SHHが冷房運転時における過熱度の目標値SHC以下になるように設定することで、液インジェクション弁18iの開度を冷房運転時よりも大きくなるようにして、液インジェクション管18hを通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量(すなわち、第1後段側インジェクション管18c及び第2後段側インジェクション管としての液インジェクション管18hを流れる冷媒の合計流量)を増加させることで、インジェクション比を冷房運転時よりも暖房運転時のほうが大きくなるようにしている。これにより、この空気調和装置1では、後段側インジェクション管(ここでは、第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18h)を用いた中間圧インジェクションによる後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却効果が、冷房運転時よりも暖房運転時のほうが大きくなるため、中間熱交換器7による後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却効果のない暖房運転時においても、外部への放熱を抑えながら、圧縮機構2から吐出される冷媒の温度(図7の点D参照)をさらに低く抑えることができ、成績係数を向上させることができる。
ここで、成績係数が最大になる最適インジェクション比は、図8に示されるように、冷房運転時における最適インジェクション比(0.3〜0.4)よりも暖房運転時における最適インジェクション比(0.35〜0.45)のほうが大きくなる傾向にあり、この傾向は、暖房運転時に中間熱交換器7を使用しないことが起因しているものと考えられる。すなわち、この空気調和装置1では、暖房運転時において、中間圧インジェクションのみによって後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒を冷却していることから、中間熱交換器7と中間圧インジェクションとを併用している冷房運転時に比べて、中間熱交換器7による冷却効果に相当する分だけ、暖房運転時における最適インジェクション比が大きくなっているものと考えられる。このため、本実施形態においては、暖房運転時における過熱度SHの目標値SHH(図7参照)を冷房運転時における過熱度SHの目標値SHCと同じ値に設定することで、暖房運転時においても、後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒を、暖房運転時は中間圧インジェクションによって、中間熱交換器7及び中間圧インジェクションにより冷媒を冷却する冷房運転時と同じ過熱度SHまで冷却するようにして、中間熱交換器7による冷却効果に相当する分だけ冷房運転時よりも暖房運転時におけるインジェクション比が大きくなるようにすることが好ましい。これにより、この空気調和装置1では、上述のように、冷房運転時における過熱度SHの目標値SHCを冷房運転時の成績係数が最大になる最適インジェクション比に対応する値付近に設定している場合には、暖房運転時においても、暖房運転時の成績係数が最大になる最適インジェクション比に近づくようになり、冷房運転及び暖房運転の両方において、成績係数が最大になる最適インジェクション比で中間圧インジェクションを行うことができる。
(3)変形例1
上述の実施形態では、切換機構3によって冷房運転と暖房運転とを切換可能に構成された空気調和装置1において、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションを行うための第1後段側インジェクション管18cを設けて、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションを行うようにしているが、このレシーバ18による中間圧インジェクションに代えて、第3後段側インジェクション管19及びエコノマイザ熱交換器20を設けて、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うようにすることが考えられる。
例えば、図9に示されるように、上述の実施形態において、第1後段側インジェクション管18cに代えて、第3後段側インジェクション管19、及び、エコノマイザ熱交換器20が設けられた冷媒回路110にすることができる。
ここで、第3後段側インジェクション管19は、熱源側熱交換器4又は利用側熱交換器6において冷却された冷媒を分岐して圧縮機構2の後段側の圧縮要素2dに戻す機能を有している。本変形例において、第3後段側インジェクション管19は、レシーバ入口管18aを流れる冷媒を分岐して後段側の圧縮要素2dの吸入側に戻すように設けられている。より具体的には、第3後段側インジェクション管19は、レシーバ入口管18aの第1膨張機構5aの上流側の位置(すなわち、切換機構3を冷却運転状態にしている際には、熱源側熱交換器4と第1膨張機構5aとの間、また、切換機構3を加熱運転状態にしている際には、利用側熱交換器6と第1膨張機構5aとの間)から冷媒を分岐して中間冷媒管8の中間熱交換器7の下流側の位置に戻すように設けられている。この第3後段側インジェクション管19には、開度制御が可能な第3後段側インジェクション弁19aが設けられている。第3後段側インジェクション弁19aは、本変形例において、電動膨張弁である。
また、エコノマイザ熱交換器20は、熱源側熱交換器4又は利用側熱交換器6において放熱した冷媒と第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒(より具体的には、第3後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後の冷媒)との熱交換を行う熱交換器である。本変形例において、エコノマイザ熱交換器20は、レシーバ入口管18aの第1膨張機構5aの上流側の位置(すなわち、切換機構3を冷却運転状態にしている際には、熱源側熱交換器4と第1膨張機構5aとの間、また、切換機構3を加熱運転状態にしている際には、利用側熱交換器6と第1膨張機構5aとの間)を流れる冷媒と第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒との熱交換を行うように設けられており、また、両冷媒が対向するように流れる流路を有している。また、本変形例において、エコノマイザ熱交換器20は、レシーバ入口管18aの第3後段側インジェクション管19の上流側に設けられている。このため、熱源側熱交換器4又は利用側熱交換器6において放熱した冷媒は、レシーバ入口管18aにおいて、エコノマイザ熱交換器20において熱交換される前に第3後段側インジェクション管19に分岐され、その後に、エコノマイザ熱交換器20において、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行うことになる。
また、上述の実施形態においては、第1後段側インジェクション管18cを通じて後段側の圧縮要素2dに戻す冷媒の流量を積極的に制御することが困難であることを考慮して、液インジェクション管18hを設けて、第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18hを通じて後段側の圧縮要素2dに戻る冷媒の流量を積極的に制御することができるようにしているが、本変形例においては、第3後段側インジェクション管19及びエコノマイザ熱交換器20を用いたエコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行う構成を採用しており、第3後段側インジェクション管19を通じて後段側の圧縮要素2dに戻る冷媒の流量を積極的に制御することができるため、上述の実施形態とは異なり、液インジェクション管18hを省略している。
次に、本変形例の空気調和装置1の動作について、図9〜図15を用いて説明する。ここで、図10は、冷房運転時における空気調和装置1内の冷媒の流れを示す図であり、図11は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図であり、図12は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された温度−エントロピ線図であり、図13は、暖房運転時における空気調和装置1内の冷媒の流れを示す図であり、図14は、暖房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図であり、図15は、暖房運転時の冷凍サイクルが図示された温度−エントロピ線図である。尚、以下の冷房運転及び暖房運転における運転制御は、上述の制御部(図示せず)によって行われる。また、以下の説明において、「高圧」とは、冷凍サイクルにおける高圧(すなわち、図11、12の点D、D’、E、Hにおける圧力や図14、15の点D、D’、F、Hにおける圧力を意味し、「低圧」とは、冷凍サイクルにおける低圧(すなわち、図11、12の点A、Fにおける圧力や図14、15の点A、Eにおける圧力)を意味し、「中間圧」とは、冷凍サイクルにおける中間圧(すなわち、図11、12、14、15の点B、C、C’、G、G’、J、Kにおける圧力)を意味している。
<冷房運転>
冷房運転時は、切換機構3が図9及び図10の実線で示される冷却運転状態とされる。また、第1膨張機構5a及び第2膨張機構5bは、開度調節される。そして、切換機構3が冷却運転状態となるため、中間冷媒管8の中間熱交換器開閉弁12が開けられ、そして、中間熱交換器バイパス管9の中間熱交換器バイパス開閉弁11が閉められることによって、中間熱交換器7が冷却器として機能する状態にされる。さらに、第3後段側インジェクション弁19aは、開度調節される。より具体的には、本変形例において、第3後段側インジェクション弁19aは、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒(すなわち、前段側の圧縮要素2cから吐出され、中間熱交換器7を通過し、第3後段側インジェクション管19を通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒と合流した後の冷媒)の過熱度SHが冷房運転時における目標値SHC(図12参照)になるように、第3後段側インジェクション管19を通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量を制御する、いわゆる過熱度制御がなされるようになっている。本変形例において、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度SHCは、中間圧力センサ54により検出される中間圧を飽和温度に換算し、中間温度センサ56により検出される冷媒温度からこの冷媒の飽和温度値を差し引くことによって得られる。このように、本変形例の冷房運転時においては、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度SHが目標値SHCになるように、第3後段側インジェクション管19を通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量を制御するようになっている。
この冷媒回路110の状態において、低圧の冷媒(図9〜図12の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図9〜図12の点B参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、中間熱交換器7において、冷却源としての水や空気と熱交換を行うことで冷却される(図9〜図12の点C参照)。この中間熱交換器7において冷却された冷媒は、第3後段側インジェクション管19から後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図9〜図12の点K参照)と合流することでさらに冷却される(図9〜図12の点G参照)。次に、第3後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流した(すなわち、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションが行われた)中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図9〜図12の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図11に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、油分離機構41を構成する油分離器41aに流入し、同伴する冷凍機油が分離される。また、油分離器41aにおいて高圧の冷媒から分離された冷凍機油は、油分離機構41を構成する油戻し管41bに流入し、油戻し管41bに設けられた減圧機構41cで減圧された後に圧縮機構2の吸入管2aに戻されて、再び、圧縮機構2に吸入される。次に、油分離機構41において冷凍機油が分離された後の高圧の冷媒は、逆止機構42及び切換機構3を通じて、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器4に送られる。そして、熱源側熱交換器4に送られた高圧の冷媒は、熱源側熱交換器4において、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図9〜図12の点E参照)。そして、熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒は、ブリッジ回路17の入口逆止弁17aを通じてレシーバ入口管18aに流入し、その一部が第3後段側インジェクション管19に分岐される。そして、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、第3後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後に、エコノマイザ熱交換器20に送られる(図9〜図12の点J参照)。また、第3後段側インジェクション管19に分岐された後の冷媒は、エコノマイザ熱交換器20に流入し、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図9〜図12の点H参照)。一方、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図9〜図12の点K参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒は、第1膨張機構5aによって飽和圧力付近まで減圧されてレシーバ18内に一時的に溜められる(図9及び図10の点I参照)。そして、レシーバ18内に溜められた冷媒は、レシーバ出口管18bに送られて、第2膨張機構5bによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、ブリッジ回路17の出口逆止弁17cを通じて、冷媒の蒸発器として機能する利用側熱交換器6に送られる(図9〜図12の点F参照)。そして、利用側熱交換器6に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図9〜図12の点A参照)。そして、この利用側熱交換器6において加熱された低圧の冷媒は、切換機構3を経由して、再び、圧縮機構2に吸入される。このようにして、冷房運転が行われる。
このように、本変形例の空気調和装置1では、第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18hではなく、第3後段側インジェクション管19を設けて、熱源側熱交換器4において放熱した冷媒を分岐して後段側の圧縮要素2dに戻すエコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うようにしている点は異なるが、冷房運転時において、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、本変形例では、上述の実施形態における図8と同様、圧縮機構2から吐出される冷媒の流量に対する第3後段側インジェクション管19を通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量の比であるインジェクション比と成績係数比(インジェクション比が0.20の場合における成績係数を1として他のインジェクション比における成績係数を表した値)との間に、冷房運転時における成績係数が最大になる最適インジェクション比が存在する。このため、本変形例においても、冷房運転時における最適インジェクション比に対応するように、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度SHの冷房運転時の目標値SHCを設定して、第3後段側インジェクション弁19aの開度調節を行うことで、冷房運転時における成績係数の最大付近にすることができる。
<暖房運転>
暖房運転時は、切換機構3が図9及び図13の破線で示される加熱運転状態とされる。また、第1膨張機構5a及び第2膨張機構5bは、開度調節される。そして、切換機構3が加熱運転状態となるため、中間冷媒管8の中間熱交換器開閉弁12が閉められ、そして、中間熱交換器バイパス管9の中間熱交換器バイパス開閉弁11が開けられることによって、中間熱交換器7が冷却器として機能しない状態にされる。さらに、第3後段側インジェクション弁19aは、冷房運転時と同様の開度調節がなされる。ここで、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度SHの暖房運転時における目標値をSHH(図15参照)とする。
この冷媒回路110の状態において、低圧の冷媒(図9、図13〜図15の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図9、図13〜図15の点B参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、上述の冷房運転時とは異なり、中間熱交換器7を通過せずに(すなわち、冷却されることなく)、中間熱交換器バイパス管9を通過する(図9、図13〜図15の点C参照)。この中間熱交換器7によって冷却されることなく中間熱交換器バイパス管9を通過した中間圧の冷媒は、第3後段側インジェクション管19から後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図9、図13〜図15の点K参照)と合流することで冷却される(図9、図13〜図15の点G参照)。次に、第3後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流した(すなわち、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションが行われた)中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図9、図13〜図15の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図14に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、油分離機構41を構成する油分離器41aに流入し、同伴する冷凍機油が分離される。また、油分離器41aにおいて高圧の冷媒から分離された冷凍機油は、油分離機構41を構成する油戻し管41bに流入し、油戻し管41bに設けられた減圧機構41cで減圧された後に圧縮機構2の吸入管2aに戻されて、再び、圧縮機構2に吸入される。次に、油分離機構41において冷凍機油が分離された後の高圧の冷媒は、逆止機構42及び切換機構3を通じて、冷媒の放熱器として機能する利用側熱交換器6に送られて、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図9、図13〜図15の点F参照)。そして、利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒は、ブリッジ回路17の入口逆止弁17bを通じてレシーバ入口管18aに流入し、その一部が第3後段側インジェクション管19に分岐される。そして、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、第3後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後に、エコノマイザ熱交換器20に送られる(図9、図13〜図15の点J参照)。また、第3後段側インジェクション管19に分岐された後の冷媒は、エコノマイザ熱交換器20に流入し、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図9、図13〜図15の点H参照)。一方、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、放熱器としての利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図9、図13〜図15の点K参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒は、第1膨張機構5aによって飽和圧力付近まで減圧されてレシーバ18内に一時的に溜められる(図9及び図13の点I参照)。そして、レシーバ18内に溜められた冷媒は、レシーバ出口管18bに送られて、第2膨張機構5bによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、ブリッジ回路17の出口逆止弁17dを通じて、冷媒の蒸発器として機能する熱源側熱交換器4に送られる(図9、図13〜図15の点E参照)。そして、熱源側熱交換器4に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、熱源側熱交換器4において、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図9、図13〜図15の点A参照)。そして、この熱源側熱交換器4において加熱されて蒸発した低圧の冷媒は、切換機構3を経由して、再び、圧縮機構2に吸入される。このようにして、暖房運転が行われる。
このように、本変形例の空気調和装置1では、第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18hではなく、第3後段側インジェクション管19を設けて、熱源側熱交換器4において放熱した冷媒を分岐して後段側の圧縮要素2dに戻すエコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うようにしている点は異なるが、暖房運転時において、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、本変形例においても、インジェクション比が、冷房運転時よりも暖房運転時のほうが大きくなるように、第3後段側インジェクション管19を通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量を制御するインジェクション量最適化制御を行うようにしている。より具体的には、本変形例において、インジェクション量最適化制御は、暖房運転時における過熱度SHの目標値SHHが冷房運転時における過熱度の目標値SHC以下になるように設定することで、中間熱交換器7による後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却効果のない暖房運転時においても、外部への放熱を抑えながら、圧縮機構2から吐出される冷媒の温度(図15の点D参照)をさらに低く抑えることができ、成績係数を向上させることができる。
さらに、本変形例においても、上述の実施形態における図8と同様、冷房運転時における最適インジェクション比よりも暖房運転時における最適インジェクション比のほうが中間熱交換器7による冷却効果に相当する分だけ大きくなる傾向にあるため、暖房運転時における過熱度SHの目標値SHH(図15参照)を冷房運転時における過熱度SHの目標値SHCと同じ値に設定することが好ましい。これにより、本変形例においても、上述のように、冷房運転時における過熱度SHの目標値SHCを冷房運転時の成績係数が最大になる最適インジェクション比に対応する値付近に設定している場合には、暖房運転時においても、暖房運転時の成績係数が最大になる最適インジェクション比に近づくようになり、冷房運転及び暖房運転の両方において、成績係数が最大になる最適インジェクション比で中間圧インジェクションを行うことができる。
尚、上述においては、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度SHが目標値SHCや目標値SHHになるように、第3後段側インジェクション管19を通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量を制御するようにしているが、これに代えて、エコノマイザ熱交換器20の第2後段側インジェクション管19側の出口における冷媒の過熱度が目標値になるように開度調節されるものであってもよい。この場合において、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度は、中間圧力センサ54により検出される中間圧を飽和温度に換算し、エコノマイザ出口温度センサ55(図9、10、13に破線で図示)により検出されるエコノマイザ熱交換器20の第2後段側インジェクション管19側の出口における冷媒の温度からこの冷媒の飽和温度値を差し引くことによって得られる。尚、本変形例では採用していないが、エコノマイザ熱交換器20の第2後段側インジェクション管19側の入口に温度センサを設けて、この温度センサにより検出される冷媒温度をエコノマイザ出口温度センサ55により検出される冷媒温度から差し引くことによって、エコノマイザ熱交換器20の第2後段側インジェクション管19側の出口における冷媒の過熱度を得るようにしてもよい。そして、この場合においては、暖房運転時における過熱度の目標値を冷房運転時における過熱度の目標値に対して5℃から10℃だけ小さい値(この値が、中間熱交換器7による冷却効果に相当する)に設定することで、暖房運転時においても、後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒を、暖房運転時は中間圧インジェクションによって、中間熱交換器7及び中間圧インジェクションにより冷媒を冷却する冷房運転時と同じ過熱度SHまで冷却するようにして、中間熱交換器7による冷却効果に相当する分だけ冷房運転時よりも暖房運転時におけるインジェクション比が大きくなるようにすることが好ましい。
(4)変形例2
上述の実施形態及びその変形例における冷媒回路10、110(図1、図9参照)においては、冷房運転時の熱源側熱交換器4における放熱ロスを低減するために、前段側の圧縮要素2cから吐出された冷媒を後段側の圧縮要素2dに吸入させるための中間冷媒管8に前段側の圧縮要素2cから吐出されて後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却器として機能する中間熱交換器7が設けられるとともに、暖房運転時においては、外部への放熱を抑えて、冷媒の放熱器として機能する利用側熱交換器6において利用できるようにするために、中間熱交換器7をバイパスする中間熱交換器バイパス管9を設けて、暖房運転時に中間熱交換器7を使用しない状態にしている。このため、中間熱交換器7は、暖房運転時には利用されない機器となっている。
そこで、暖房運転時における中間熱交換器7の有効利用を図るために、本変形例では、図16に示されるように、上述の変形例1の冷媒回路110において、中間熱交換器7の一端と圧縮機構2の吸入側とを接続させるための第2吸入戻し管92を設けるとともに、利用側熱交換器6と熱源側熱交換器4との間と中間熱交換器7の他端とを接続させるための中間熱交換器戻し管94を設けることで、冷媒回路210を構成するようにしている。
ここで、第2吸入戻し管92は、中間熱交換器7の一端(ここでは、前段側の圧縮要素2c側端)に接続されており、中間熱交換器戻し管94は、中間熱交換器7の他端(ここでは、後段側の圧縮要素2d側端)に接続されている。この第2吸入戻し管92は、中間熱交換器バイパス管9を通じて前段側の圧縮要素2cから吐出された冷媒を後段側の圧縮要素2dに吸入させる状態にしている際に、中間熱交換器7の一端と圧縮機構2の吸入側(ここでは、吸入管2a)とを接続させるための冷媒管である。また、この中間熱交換器戻し管94は、中間熱交換器バイパス管9を通じて前段側の圧縮要素2cから吐出された冷媒を後段側の圧縮要素2dに吸入させる状態にし、かつ、切換機構3を加熱運転状態にしている際に、利用側熱交換器6と熱源側熱交換器4との間(ここでは、冷凍サイクルにおける低圧になるまで冷媒を減圧する熱源側膨張機構としての第1膨張機構5aと蒸発器としての熱源側熱交換器4との間)と中間熱交換器7の他端とを接続させるための冷媒管である。本変形例において、第2吸入戻し管92は、その一端が、中間冷媒管8の中間熱交換器バイパス管9の前段側の圧縮要素2c側端との接続部から中間熱交換器7の前段側の圧縮要素2c側端までの部分に接続されており、他端が、圧縮機構2の吸入側(ここでは、吸入管2a)に接続されている。また、中間熱交換器戻し管94は、その一端が、第1膨張機構5aから熱源側熱交換器4までの部分に接続されており、他端が、中間冷媒管8の中間熱交換器7の前段側の圧縮要素2c側端から逆止機構15までの部分に接続されている。そして、第2吸入戻し管92には、第2吸入戻し開閉弁92aが設けられており、中間熱交換器戻し管94には、中間熱交換器戻し開閉弁94aが設けられている。第2吸入戻し開閉弁92a及び中間熱交換器戻し開閉弁94aは、本変形例において、電磁弁である。この第2吸入戻し開閉弁92aは、本変形例において、基本的には、切換機構3を冷却運転状態にしている際に閉め、切換機構3を加熱運転状態にしている際に開ける制御がなされる。また、中間熱交換器戻し開閉弁94aは、基本的には、切換機構3を冷却運転状態にしている際に閉め、切換機構3を加熱運転状態にしている際に開ける制御がなされる。
このように、本変形例では、主として、中間熱交換器バイパス管9、第2吸入戻し管92及び中間熱交換器戻し管94によって、冷房運転時には、中間冷媒管8を流れる中間圧の冷媒を中間熱交換器7によって冷却することができ、暖房運転時には、中間冷媒管8を流れる中間圧の冷媒を中間熱交換器バイパス管9によって、中間熱交換器7をバイパスさせるとともに、第2吸入戻し管92及び中間熱交換器戻し管94によって、利用側熱交換器6において冷却された冷媒の一部を中間熱交換器7に導いて蒸発させ、圧縮機構2の吸入側に戻すことができるようになっている。
次に、本変形例の空気調和装置1の動作について、図16、図17、図11、図12、図18〜図20を用いて説明する。ここで、図17は、冷房運転時における空気調和装置1内の冷媒の流れを示す図であり、図18は、暖房運転時における空気調和装置1内の冷媒の流れを示す図であり、図19は、暖房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図であり、図20は、暖房運転時の冷凍サイクルが図示された温度−エントロピ線図である。尚、以下の冷房運転及び暖房運転における運転制御は、上述の制御部(図示せず)によって行われる。また、以下の説明において、「高圧」とは、冷凍サイクルにおける高圧(すなわち、図11、12の点D、D’、E、Hにおける圧力や図19、20の点D、D’、F、Hにおける圧力を意味し、「低圧」とは、冷凍サイクルにおける低圧(すなわち、図11、12の点A、Fにおける圧力や図19、20の点A、E、Vにおける圧力)を意味し、「中間圧」とは、冷凍サイクルにおける中間圧(すなわち、図11、12、19、20の点B、C、C’、G、G’、J、Kにおける圧力)を意味している。
<冷房運転>
冷房運転時は、切換機構3が図16及び図17の実線で示される冷却運転状態とされる。また、第1膨張機構5a及び第2膨張機構5bは、開度調節される。そして、切換機構3が冷却運転状態となるため、中間冷媒管8の中間熱交換器開閉弁12が開けられ、そして、中間熱交換器バイパス管9の中間熱交換器バイパス開閉弁11が閉められることによって、中間熱交換器7が冷却器として機能する状態にされるとともに、第2吸入戻し管92の第2吸入戻し開閉弁92aが閉められることによって、中間熱交換器7と圧縮機構2の吸入側とが接続していない状態にされ、また、中間熱交換器戻し管94の中間熱交換器戻し開閉弁94aが閉められることによって、利用側熱交換器6と熱源側熱交換器4との間と中間熱交換器7とが接続していない状態にされる。さらに、第3後段側インジェクション弁19aは、上述の変形例1における冷房運転時と同様の開度調節がなされる。
この冷媒回路210の状態において、低圧の冷媒(図16、図17、図11、図12の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図16、図17、図11、図12の点B参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、中間熱交換器7において、冷却源としての水や空気と熱交換を行うことで冷却される(図16、図17、図11、図12の点C参照)。この中間熱交換器7において冷却された冷媒は、第3後段側インジェクション管19から後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図16、図17、図11、図12の点K参照)と合流することでさらに冷却される(図16、図17、図11、図12の点G参照)。次に、第3後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流した(すなわち、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションが行われた)中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図16、図17、図11、図12の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図11に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、油分離機構41を構成する油分離器41aに流入し、同伴する冷凍機油が分離される。また、油分離器41aにおいて高圧の冷媒から分離された冷凍機油は、油分離機構41を構成する油戻し管41bに流入し、油戻し管41bに設けられた減圧機構41cで減圧された後に圧縮機構2の吸入管2aに戻されて、再び、圧縮機構2に吸入される。次に、油分離機構41において冷凍機油が分離された後の高圧の冷媒は、逆止機構42及び切換機構3を通じて、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器4に送られる。そして、熱源側熱交換器4に送られた高圧の冷媒は、熱源側熱交換器4において、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図16、図17、図11、図12の点E参照)。そして、熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒は、ブリッジ回路17の入口逆止弁17aを通じてレシーバ入口管18aに流入し、その一部が第3後段側インジェクション管19に分岐される。そして、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、第3後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後に、エコノマイザ熱交換器20に送られる(図16、図17、図11、図12の点J参照)。また、第3後段側インジェクション管19に分岐された後の冷媒は、エコノマイザ熱交換器20に流入し、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図16、図17、図11、図12の点H参照)。一方、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図16、図17、図11、図12の点K参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒は、第1膨張機構5aによって飽和圧力付近まで減圧されてレシーバ18内に一時的に溜められる(図16及び図17の点I参照)。そして、レシーバ18内に溜められた冷媒は、レシーバ出口管18bに送られて、第2膨張機構5bによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、ブリッジ回路17の出口逆止弁17cを通じて、冷媒の蒸発器として機能する利用側熱交換器6に送られる(図16、図17、図11、図12の点F参照)。そして、利用側熱交換器6に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図16、図17、図11、図12の点A参照)。そして、この利用側熱交換器6において加熱された低圧の冷媒は、切換機構3を経由して、再び、圧縮機構2に吸入される。このようにして、冷房運転が行われる。
このように、本変形例の空気調和装置1では、冷房運転時においては、上述の変形例1と同様の作用効果が得られる。
<暖房運転>
暖房運転時は、切換機構3が図16及び図18の破線で示される加熱運転状態とされる。また、第1膨張機構5a及び第2膨張機構5bは、開度調節される。そして、切換機構3が加熱運転状態となるため、中間冷媒管8の中間熱交換器開閉弁12が閉められ、そして、中間熱交換器バイパス管9の中間熱交換器バイパス開閉弁11が開けられることによって、中間熱交換器7が冷却器として機能しない状態にされるとともに、第2吸入戻し管92の第2吸入戻し開閉弁92aが開けられることによって、中間熱交換器7と圧縮機構2の吸入側とを接続されている状態にされ、かつ、中間熱交換器戻し管94の中間熱交換器戻し開閉弁94aが開けられることによって、利用側熱交換器6と熱源側熱交換器4との間と中間熱交換器7とが接続されている状態にされる。さらに、第3後段側インジェクション弁19aは、上述の変形例1における暖房運転時と同様の開度調節がなされる。
この冷媒回路210の状態において、低圧の冷媒(図16、図18〜図20の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図16、図18〜図20の点B参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、上述の冷房運転時とは異なり、中間熱交換器7を通過せずに(すなわち、冷却されることなく)、中間熱交換器バイパス管9を通過する(図16、図18〜図20の点C参照)。この中間熱交換器7によって冷却されることなく中間熱交換器バイパス管9を通過した中間圧の冷媒は、第3後段側インジェクション管19から後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図16、図18〜図20の点K参照)と合流することで冷却される(図16、図18〜図20の点G参照)。次に、第3後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流した(すなわち、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションが行われた)中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図16、図18〜図20の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図19に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、油分離機構41を構成する油分離器41aに流入し、同伴する冷凍機油が分離される。また、油分離器41aにおいて高圧の冷媒から分離された冷凍機油は、油分離機構41を構成する油戻し管41bに流入し、油戻し管41bに設けられた減圧機構41cで減圧された後に圧縮機構2の吸入管2aに戻されて、再び、圧縮機構2に吸入される。次に、油分離機構41において冷凍機油が分離された後の高圧の冷媒は、逆止機構42及び切換機構3を通じて、冷媒の放熱器として機能する利用側熱交換器6に送られて、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図16、図18〜図20の点F参照)。そして、利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒は、ブリッジ回路17の入口逆止弁17bを通じてレシーバ入口管18aに流入し、その一部が第3後段側インジェクション管19に分岐される。そして、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、第3後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後に、エコノマイザ熱交換器20に送られる(図16、図18〜図20の点J参照)。また、第3後段側インジェクション管19に分岐された後の冷媒は、エコノマイザ熱交換器20に流入し、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図16、図18〜図20の点H参照)。一方、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、放熱器としての利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図16、図18〜図20の点K参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒は、第1膨張機構5aによって飽和圧力付近まで減圧されてレシーバ18内に一時的に溜められる(図16及び図18の点I参照)。そして、レシーバ18内に溜められた冷媒は、レシーバ出口管18bに送られて、第2膨張機構5bによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、ブリッジ回路17の出口逆止弁17dを通じて、冷媒の蒸発器として機能する熱源側熱交換器4に送られるとともに、中間熱交換器戻し管94を通じて、冷媒の蒸発器として機能する中間熱交換器7にも送られる(図16、図18〜図20の点E参照)。そして、熱源側熱交換器4に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、熱源側熱交換器4において、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図16、図18〜図20の点A参照)。また、中間熱交換器7に送られた低圧の気液二相状態の冷媒も、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図16、図18〜図20の点V参照)。そして、この熱源側熱交換器4において加熱されて蒸発した低圧の冷媒は、切換機構3を経由して、再び、圧縮機構2に吸入される。また、この中間熱交換器7において加熱されて蒸発した低圧の冷媒も、第2吸入戻し管92を通じて、再び、圧縮機構2に吸入される。このようにして、暖房運転が行われる。
このように、本変形例の空気調和装置1では、暖房運転時においては、上述の変形例1と同様の作用効果が得られるとともに、熱源側熱交換器4とともに、中間熱交換器7を利用側熱交換器6において放熱した冷媒の蒸発器として機能させるようにして、暖房運転時にも有効利用し、これにより、暖房運転時における冷媒の蒸発能力を高めて、暖房運転時の運転効率を向上させることができる。
(5)変形例3
上述の実施形態における気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクション及び第2後段側インジェクション管としての液インジェクション管18hによる液インジェクションを行う冷媒回路10(図1参照)において、互いに並列に接続された複数の利用側熱交換器6を有する構成(図21参照)にするとともに、各利用側熱交換器6を流れる冷媒の流量を制御して各利用側熱交換器6において必要とされる冷凍負荷を得ることができるようにするために各利用側熱交換器6に対応するように利用側膨張機構5c(図21参照)を設けることが考えられる。この場合には、暖房運転において、各利用側熱交換器6を通過する冷媒の流量が、各利用側熱交換器6に対応して設けられた利用側膨張機構5cの開度によって概ね決定されることになるが、この際、各利用側膨張機構5cの開度は、各利用側熱交換器6を流れる冷媒の流量だけでなく、複数の利用側熱交換器6間の流量分配の状態によって変動することになり、複数の利用側膨張機構5c間で開度が大きく異なる状態が生じたり、利用側膨張機構5cが比較的小さい開度になったりする場合があり、このため、加熱運転時における利用側膨張機構5cの開度制御によって、気液分離器としてのレシーバ18の圧力が過度に低下する場合があり得る。このため、レシーバ18による中間圧インジェクションは、レシーバ18の圧力と冷凍サイクルにおける中間圧との圧力差が小さい条件であっても使用可能であることから、この構成における暖房運転のように、レシーバ18の圧力が過度に低下するおそれの高い場合に有利である。
上述の変形例1、2におけるエコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行う冷媒回路110、210(図1、16参照)において、互いに並列に接続された複数の利用側熱交換器6を有する構成(図21参照)にするとともに、各利用側熱交換器6を流れる冷媒の流量を制御して各利用側熱交換器6において必要とされる冷凍負荷を得ることができるようにするために各利用側熱交換器6に対応するように利用側膨張機構5c(図21参照)を設けることが考えられる。この場合には、冷房運転において、熱源側熱交換器4において放熱した冷媒がエコノマイザ熱交換器20に流入するまでの間に大幅な減圧操作が行われることがなく、冷凍サイクルにおける高圧から冷凍サイクルの中間圧付近までの圧力差を利用できる条件であることから、エコノマイザ熱交換器20における熱交換量が大きくなり、後段側の圧縮要素2dに戻すことができる冷媒の流量が大きくすることができるため、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションに比べて、その適用が有効である。
このように、互いに並列に接続された複数の利用側熱交換器6を有する構成にするとともに、各利用側熱交換器6を流れる冷媒の流量を制御して各利用側熱交換器6において必要とされる冷凍負荷を得ることができるようにするために各利用側熱交換器6に対応するように利用側膨張機構5cを設ける構成を前提とする場合には、本変形例の空気調和装置1のように、暖房運転時には、利用側熱交換器6において放熱した冷媒をレシーバ18において気液分離し、この気液分離されたガス冷媒を第1後段側インジェクション管18cを通じて後段側の圧縮要素2dに戻す中間圧インジェクション及び液インジェクション管18hによる液インジェクションを、冷房運転時には、エコノマイザ熱交換器20において、熱源側熱交換器4において放熱した冷媒と第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒との熱交換を行い、この熱交換が行われた後の第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒を後段側の圧縮要素2dに戻すエコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行う構成にすることが好ましい。
また、上述のように、複数の空調空間の空調負荷に応じた冷房や暖房を行うこと等を目的として、互いに並列に接続された複数の利用側熱交換器6を有する構成にするとともに、各利用側熱交換器6を流れる冷媒の流量を制御して各利用側熱交換器6において必要とされる冷凍負荷を得ることができるようにするために、レシーバ18と利用側熱交換器6との間において各利用側熱交換器6に対応するように利用側膨張機構5cを設けた構成を採用した場合には、冷房運転時において、第1膨張機構5aによって飽和圧力付近まで減圧されてレシーバ18内に一時的に溜められた冷媒(図21の点L参照)が、各利用側膨張機構5cに分配されるが、レシーバ18から各利用側膨張機構5cに送られる冷媒が気液二相状態であると、各利用側膨張機構5cへの分配時に偏流を生じるおそれがあるため、レシーバ18から各利用側膨張機構5cに送られる冷媒をできるだけ過冷却状態にすることが望ましい。
そこで、本変形例では、図21に示されるように、上述の変形例2の構成(図16参照)において、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクション及び液インジェクション管18hによる液インジェクションを行うことができるようにするために、レシーバ18に第1後段側インジェクション管18cを接続し、かつ、利用側膨張機構5cとレシーバ18との間に液インジェクション管18hを接続して、冷房運転時には、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行い、暖房運転時には、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクション及びを行うことを可能にするとともに、レシーバ18と利用側膨張機構5cとの間に、冷却器としての過冷却熱交換器96及び第3吸入戻し管95を設けた冷媒回路310としている。
ここで、第3吸入戻し管95は、放熱器としての熱源側熱交換器4から蒸発器としての利用側熱交換器6に送られる冷媒を分岐して圧縮機構2の吸入側(すなわち、吸入管2a)に戻す冷媒管である。本変形例において、第3吸入戻し管95は、レシーバ18から利用側膨張機構5cに送られる冷媒を分岐するように設けられている。より具体的には、第2吸入戻し管95は、過冷却熱交換器96の上流側の位置(すなわち、レシーバ18と過冷却熱交換器96との間)から冷媒を分岐して吸入管2aに戻すように設けられている。この第3吸入戻し管95には、開度制御が可能な第3吸入戻し弁95aが設けられている。第3吸入戻し弁95aは、本変形例において、電動膨張弁である。
また、過冷却熱交換器96は、放熱器としての熱源側熱交換器4から蒸発器としての利用側熱交換器6に送られる冷媒と第3吸入戻し管95を流れる冷媒(より具体的には、第3吸入戻し弁95aにおいて低圧付近まで減圧された後の冷媒)との熱交換を行う熱交換器である。本変形例において、過冷却熱交換器96は、利用側膨張機構5cの上流側の位置(すなわち、第3吸入戻し管95が分岐される位置と利用側膨張機構5cとの間)を流れる冷媒と第3吸入戻し管95を流れる冷媒との熱交換を行うように設けられている。また、本変形例において、過冷却熱交換器96は、第3吸入戻し管95が分岐される位置よりも下流側に設けられている。このため、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された冷媒は、冷却器としてのエコノマイザ熱交換器20を通過した後に、第3吸入戻し管95に分岐され、過冷却熱交換器96において、第3吸入戻し管95を流れる冷媒と熱交換を行うことになる。
また、第1後段側インジェクション管18cと第3後段側インジェクション管19とは、中間冷媒管8側の部分が一体となっている。また、第1吸入戻し管18fと第3吸入戻し管95とは、圧縮機構2の吸入側の部分が一体となっている。また、本変形例において、利用側膨張機構5cは、電動膨張弁である。また、本変形例では、上述のように、第3後段側インジェクション管19及びエコノマイザ熱交換器20を冷房運転時に使用し、第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18hを暖房運転時に使用するようにしていることから、エコノマイザ熱交換器20への冷媒の流通方向を冷房運転及び暖房運転を問わず一定にする必要がないため、ブリッジ回路17を省略して、冷媒回路310の構成を簡単化している。
また、吸入管2a又は圧縮機構2には、圧縮機構2の吸入側を流れる冷媒の圧力を検出する吸入圧力センサ60が設けられている。過冷却熱交換器96の第3吸入戻し管95側の出口には、過冷却熱交換器96の第3吸入戻し管95側の出口における冷媒の温度を検出する過冷却熱交出口温度センサ59が設けられている。
次に、本変形例の空気調和装置1の動作について、図21〜図27を用いて説明する。ここで、図22は、冷房運転時における空気調和装置1内の冷媒の流れを示す図であり、図23は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図であり、図24は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された温度−エントロピ線図であり、図25は、暖房運転時における空気調和装置1内の冷媒の流れを示す図であり、図26は、暖房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図であり、図27は、暖房運転時の冷凍サイクルが図示された温度−エントロピ線図である。尚、以下の冷房運転及び暖房運転における運転制御は、上述の制御部(図示せず)によって行われる。また、以下の説明において、「高圧」とは、冷凍サイクルにおける高圧(すなわち、図23、24の点D、D’、E、H、I、Rにおける圧力や図26、27の点D、D’、Fにおける圧力を意味し、「低圧」とは、冷凍サイクルにおける低圧(すなわち、図23、24の点A、F、S、Uにおける圧力や図26、27の点A、E、Vにおける圧力)を意味し、「中間圧」とは、冷凍サイクルにおける中間圧(すなわち、図23、24の点B、C、C’、G、G’、J、Kにおける圧力や図26、27の点B、C、C’、G、G’、I、L、M、X)を意味している。
<冷房運転>
冷房運転時は、切換機構3が図21及び図22の実線で示される冷却運転状態とされる。熱源側膨張機構としての第1膨張機構5a及び利用側膨張機構5cは、開度調節される。そして、切換機構3が冷却運転状態となるため、中間冷媒管8の中間熱交換器開閉弁12が開けられ、そして、中間熱交換器バイパス管9の中間熱交換器バイパス開閉弁11が閉められることによって、中間熱交換器7が冷却器として機能する状態にされるとともに、第2吸入戻し管92の第2吸入戻し開閉弁92aが閉められることによって、中間熱交換器7と圧縮機構2の吸入側とが接続していない状態にされ、また、中間熱交換器戻し管94の中間熱交換器戻し開閉弁94aが閉められることによって、利用側熱交換器6と熱源側熱交換器4との間と中間熱交換器7とが接続していない状態にされる。また、切換機構3を冷却運転状態にしている際には、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションを行わずに、第3後段側インジェクション管19を通じて、エコノマイザ熱交換器20において加熱された冷媒を後段側の圧縮要素2dに戻すエコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うようにしている。より具体的には、第1後段側インジェクション開閉弁18dは閉状態にされて、第3後段側インジェクション弁19aは、上述の変形例2における冷房運転時と同様の開度調節(但し、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度SHが目標値SHCになるように制御するもの)がなされる。さらに、切換機構3を冷却運転状態にしている際には、過冷却熱交換器96を使用するため、第3吸入戻し弁95aについても、開度調節される。より具体的には、本変形例において、第3吸入戻し弁95aは、過冷却熱交換器96の第3吸入戻し管95側の出口における冷媒の過熱度が目標値になるように開度調節される、いわゆる過熱度制御がなされるようになっている。本変形例において、過冷却熱交換器96の第3吸入戻し管95側の出口における冷媒の過熱度は、吸入圧力センサ60により検出される低圧を飽和温度に換算し、過冷却熱交出口温度センサ59により検出される冷媒温度からこの冷媒の飽和温度値を差し引くことによって得られる。尚、本変形例では採用していないが、過冷却熱交換器96の第3吸入戻し管95側の入口に温度センサを設けて、この温度センサにより検出される冷媒温度を過冷却熱交出口温度センサ59により検出される冷媒温度から差し引くことによって、過冷却熱交換器96の第3吸入戻し管95側の出口における冷媒の過熱度を得るようにしてもよい。また、第3吸入戻し弁95aの開度調節は、過熱度制御に限られるものではなく、例えば、冷媒回路310における冷媒循環量等に応じて所定開度だけ開けるようにするものであってもよい。
この冷媒回路310の状態において、低圧の冷媒(図21〜図24の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図21〜図24の点B参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、中間熱交換器7において、冷却源としての水や空気と熱交換を行うことで冷却される(図21〜図24の点C参照)。この中間熱交換器7において冷却された冷媒は、第3後段側インジェクション管19から後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図21〜図24の点K参照)と合流することでさらに冷却される(図21〜図24の点G参照)。次に、第3後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流した(すなわち、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションが行われた)中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図21〜図24の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図23に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、油分離機構41を構成する油分離器41aに流入し、同伴する冷凍機油が分離される。また、油分離器41aにおいて高圧の冷媒から分離された冷凍機油は、油分離機構41を構成する油戻し管41bに流入し、油戻し管41bに設けられた減圧機構41cで減圧された後に圧縮機構2の吸入管2aに戻されて、再び、圧縮機構2に吸入される。次に、油分離機構41において冷凍機油が分離された後の高圧の冷媒は、逆止機構42及び切換機構3を通じて、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器4に送られる。そして、熱源側熱交換器4に送られた高圧の冷媒は、熱源側熱交換器4において、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図21〜図24の点E参照)。そして、熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒は、その一部が第3後段側インジェクション管19に分岐される。そして、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、第3後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後に、エコノマイザ熱交換器20に送られる(図21〜図24の点J参照)。また、第3後段側インジェクション管19に分岐された後の冷媒は、エコノマイザ熱交換器20に流入し、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図21〜図24の点H参照)。一方、第3後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図21〜図24の点K参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒は、第1膨張機構5aによって飽和圧力付近まで減圧されてレシーバ18内に一時的に溜められる(図21〜図24の点I参照)。そして、レシーバ18内に溜められた冷媒は、その一部が第3吸入戻し管95に分岐される。そして、第3吸入戻し管95を流れる冷媒は、第3吸入戻し弁95aにおいて低圧付近まで減圧された後に、過冷却熱交換器96に送られる(図21〜図24の点S参照)。また、第3吸入戻し管95に分岐された後の冷媒は、過冷却熱交換器96に流入し、第3吸入戻し管95を流れる冷媒と熱交換を行ってさらに冷却される(図21〜図24の点R参照)。一方、第3吸入戻し管95を流れる冷媒は、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図21〜図24の点U参照)、圧縮機構2の吸入側(ここでは、吸入管2a)を流れる冷媒に合流することになる。この過冷却熱交換器96において冷却された冷媒は、利用側膨張機構5cに送られて、利用側膨張機構5cよって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、冷媒の蒸発器として機能する利用側熱交換器6に送られる(図21〜図24の点F参照)。そして、利用側熱交換器6に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図21〜図24の点A参照)。そして、この利用側熱交換器6において加熱された低圧の冷媒は、切換機構3を経由して、再び、圧縮機構2に吸入される。このようにして、冷房運転が行われる。
このように、本変形例の空気調和装置1では、冷房運転時においては、放熱器としての熱源側熱交換器4の下流側かつ熱源側膨張機構としての第1膨張機構5aの上流側における冷媒の圧力が高いままで保たれており、冷凍サイクルにおける高圧から冷凍サイクルの中間圧付近までの圧力差を利用できる条件であることから、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションが採用されており、上述の変形例1、2と同様の作用効果を得ることができる。
また、本変形例では、レシーバ18から利用側膨張機構5cへ送られる冷媒(図23、図24の点I参照)を過冷却熱交換器96によって過冷却状態まで冷却することができるため(図23、図24の点R参照)、各利用側膨張機構5cへの分配時に偏流を生じるおそれを少なくすることができる。
<暖房運転>
暖房運転時は、切換機構3が図21及び図25の破線で示される加熱運転状態とされる。また、熱源側膨張機構としての第1膨張機構5a及び利用側膨張機構5cは、開度調節される。そして、切換機構3が加熱運転状態となるため、中間冷媒管8の中間熱交換器開閉弁12が閉められ、そして、中間熱交換器バイパス管9の中間熱交換器バイパス開閉弁11が開けられることによって、中間熱交換器7が冷却器として機能しない状態にされるとともに、第2吸入戻し管92の第2吸入戻し開閉弁92aが開けられることによって、中間熱交換器7と圧縮機構2の吸入側とを接続されている状態にされ、かつ、中間熱交換器戻し管94の中間熱交換器戻し開閉弁94aが開けられることによって、利用側熱交換器6と熱源側熱交換器4との間と中間熱交換器7とが接続されている状態にされる。また、切換機構3を加熱運転状態にしている際には、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行わずに、第1後段側インジェクション管18cを通じて、気液分離器としてのレシーバ18から冷媒を後段側の圧縮要素2dに戻すレシーバ18による中間圧インジェクション、及び、第2後段側インジェクション管としての液インジェクション管18hを通じて冷媒を後段側の圧縮要素2dに戻す液インジェクション管18hによる中間圧インジェクションを行うようにしている。より具体的には、第3後段側インジェクション弁19aが全閉状態にされて、第1後段側インジェクション開閉弁18dは開状態にされ、かつ、液インジェクション弁18iは上述の実施形態における暖房運転と同様の開度調節(すなわち、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度SHが目標値SHHになるように制御するもの)がなされる。さらに、切換機構3を加熱運転状態にしている際には、過冷却熱交換器96を使用しないため、第3吸入戻し弁95aは全閉状態にされる。
この冷媒回路310の状態において、低圧の冷媒(図21、図25〜図27の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図21、図25〜図27の点B参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、上述の冷房運転時とは異なり、中間熱交換器7を通過せずに(すなわち、冷却されることなく)、中間熱交換器バイパス管9を通過する(図21、図25〜図27の点C参照)。この中間熱交換器7によって冷却されることなく中間熱交換器バイパス管9を通過した中間圧の冷媒は、レシーバ18から第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18hを通じて後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図21、図25〜図27の点M、点X参照)と合流することで冷却される(図21、図25〜図27の点G参照)。次に、第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18hから戻る冷媒と合流した(すなわち、気液分離器としてのレシーバ18及び液インジェクション管18hによる中間圧インジェクションが行われた)中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図21、図25〜図27の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図26に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、油分離機構41を構成する油分離器41aに流入し、同伴する冷凍機油が分離される。また、油分離器41aにおいて高圧の冷媒から分離された冷凍機油は、油分離機構41を構成する油戻し管41bに流入し、油戻し管41bに設けられた減圧機構41cで減圧された後に圧縮機構2の吸入管2aに戻されて、再び、圧縮機構2に吸入される。次に、油分離機構41において冷凍機油が分離された後の高圧の冷媒は、逆止機構42及び切換機構3を通じて、冷媒の放熱器として機能する利用側熱交換器6に送られて、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図21、図25〜図27の点F参照)。そして、利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒は、利用側膨張機構5cを通過した後に、その一部が液インジェクション管18hに分岐される。そして、液インジェクション管18hを流れる冷媒は、液インジェクション弁18iにおいて中間圧付近まで減圧された後に(図21、図25〜図27の点X参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、液インジェクション管18hで分岐された後の高圧の冷媒は、レシーバ18内に一時的に溜められるとともに気液分離が行われる(図21、図25〜図27の点I、L、M参照)。そして、レシーバ18において気液分離されたガス冷媒は、第1後段側インジェクション管18cによってレシーバ18の上部から抜き出されて、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、レシーバ18内に溜められた液冷媒は、第1膨張機構5aによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、冷媒の蒸発器として機能する熱源側熱交換器4に送られるとともに、中間熱交換器戻し管94を通じて、冷媒の蒸発器として機能する中間熱交換器7にも送られる(図21、図25〜図27の点E参照)。そして、熱源側熱交換器4に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図21、図25〜図27の点A参照)。また、中間熱交換器7に送られた低圧の気液二相状態の冷媒も、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図21、図25〜図27の点V参照)。そして、この熱源側熱交換器4において加熱されて蒸発した低圧の冷媒は、切換機構3を経由して、再び、圧縮機構2に吸入される。また、この中間熱交換器7において加熱されて蒸発した低圧の冷媒は、第2吸入戻し管92を通じて、再び、圧縮機構2に吸入される。このようにして、暖房運転が行われる。
このように、本変形例の空気調和装置1では、暖房運転時においては、互いに並列に接続された複数の利用側熱交換器6を有する構成にするとともに、各利用側熱交換器6を流れる冷媒の流量を制御して各利用側熱交換器6において必要とされる冷凍負荷を得ることができるようにするために各利用側熱交換器6に対応するように利用側膨張機構5cを設けていることに起因して、レシーバ18の圧力と冷凍サイクルにおける中間圧との圧力差が小さい条件であることから、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションが採用されており、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、本変形例では、上述の変形例2と同様に、暖房運転時に中間熱交換器7が冷媒の蒸発器として機能しており、中間熱交換器7の有効利用が図られている。
しかも、本変形例では、上述のような中間圧インジェクションの冷房運転と暖房運転との使い分けに伴って、インジェクション量最適化制御として、冷房運転時において、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度SHが目標値SHCになるように、第3後段側インジェクション管19を通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量を制御するとともに、暖房運転時において、後段側の圧縮要素2dの吸入における冷媒の過熱度SHが目標値SHHになるように、第2後段側インジェクション管としての液インジェクション管18hを通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量を制御するものを採用しており、暖房運転時における過熱度SHの目標値SHHが冷房運転時における過熱度SHの目標値SHC以下になるように設定しているため、圧縮機構2から吐出される冷媒の流量に対する後段側インジェクション管(冷房運転時には、第3後段側インジェクション管19、暖房運転時には、第1後段側インジェクション管18c及び液インジェクション管18hの両方)を通じて後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量の比であるインジェクション比が、冷房運転時よりも暖房運転時のほうが大きくなる。これにより、本変形例では、上述の実施形態及びその変形例と同様に、後段側インジェクション管を用いた中間圧インジェクションによる後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却効果が、冷房運転時よりも暖房運転時のほうが大きくなるため、中間熱交換器7による後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却効果のない暖房運転時においても、外部への放熱を抑えながら、圧縮機構2から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができ、成績係数を向上させることができる。また、本変形例においても、上述の実施形態及びその変形例と同様、暖房運転時における過熱度SHの目標値SHH(図27参照)を冷房運転時における過熱度SHの目標値SHCと同じ値に設定することで、暖房運転時においても、後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒を、暖房運転時は中間圧インジェクションによって、中間熱交換器7及び中間圧インジェクションにより冷媒を冷却する冷房運転時と同じ過熱度SHまで冷却するようにして、中間熱交換器7による冷却効果に相当する分だけ冷房運転時よりも暖房運転時におけるインジェクション比が大きくなるようにすることが好ましい。
(6)変形例4
上述の実施形態及びその変形例では、1台の一軸二段圧縮構造の圧縮機21によって、2つの圧縮要素2c、2dのうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮する二段圧縮式の圧縮機構2が構成されているが、三段圧縮式等のような二段圧縮式よりも多段の圧縮機構を採用してもよいし、また、単一の圧縮要素が組み込まれた圧縮機及び/又は複数の圧縮要素が組み込まれた圧縮機を複数台直列に接続することで多段の圧縮機構を構成してもよい。また、利用側熱交換器6が多数接続される場合等のように、圧縮機構の能力を大きくする必要がある場合には、多段圧縮式の圧縮機構を2系統以上並列に接続した並列多段圧縮式の圧縮機構を採用してもよい。
例えば、図28に示されるように、上述の変形例3における冷媒回路310(図21参照)において、二段圧縮式の圧縮機構2に代えて、二段圧縮式の圧縮機構103、104を並列に接続した圧縮機構102を採用した冷媒回路410にしてもよい。
ここで、第1圧縮機構103は、本変形例において、2つの圧縮要素103c、103dで冷媒を二段圧縮する圧縮機29から構成されており、圧縮機構102の吸入母管102aから分岐された第1吸入枝管103a、及び、圧縮機構102の吐出母管102bに合流する第1吐出枝管103bに接続されている。第2圧縮機構104は、本変形例において、2つの圧縮要素104c、104dで冷媒を二段圧縮する圧縮機30から構成されており、圧縮機構102の吸入母管102aから分岐された第2吸入枝管104a、及び、圧縮機構102の吐出母管102bに合流する第2吐出枝管104bに接続されている。尚、圧縮機29、30は、上述の実施形態及びその変形例における圧縮機21と同様の構成であるため、圧縮要素103c、103d、104c、104dを除く各部を示す符号をそれぞれ29番台や30番台に置き換えることとし、ここでは、説明を省略する。そして、圧縮機29は、第1吸入枝管103aから冷媒を吸入し、この吸入された冷媒を圧縮要素103cによって圧縮した後に中間冷媒管8を構成する第1入口側中間枝管81に吐出し、第1入口側中間枝管81に吐出された冷媒を中間冷媒管8を構成する中間母管82及び第1出口側中間枝管83を通じて圧縮要素103dに吸入させて冷媒をさらに圧縮した後に第1吐出枝管103bに吐出するように構成されている。圧縮機30は、第2吸入枝管104aから冷媒を吸入し、この吸入された冷媒を圧縮要素104cによって圧縮した後に中間冷媒管8を構成する第2入口側中間枝管84に吐出し、第2入口側中間枝管84に吐出された冷媒を中間冷媒管8を構成する中間母管82及び第2出口側中間枝管85を通じて圧縮要素104dに吸入させて冷媒をさらに圧縮した後に第2吐出枝管104bに吐出するように構成されている。中間冷媒管8は、本変形例において、圧縮要素103d、104dの前段側に接続された圧縮要素103c、104cから吐出された冷媒を、圧縮要素103c、104cの後段側に接続された圧縮要素103d、104dに吸入させるための冷媒管であり、主として、第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cの吐出側に接続される第1入口側中間枝管81と、第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cの吐出側に接続される第2入口側中間枝管84と、両入口側中間枝管81、84が合流する中間母管82と、中間母管82から分岐されて第1圧縮機構103の後段側の圧縮要素103dの吸入側に接続される第1出口側中間枝管83と、中間母管82から分岐されて第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104dの吸入側に接続される第2出口側中間枝管85とを有している。また、吐出母管102bは、圧縮機構102から吐出された冷媒を切換機構3に送るための冷媒管であり、吐出母管102bに接続される第1吐出枝管103bには、第1油分離機構141と第1逆止機構142とが設けられており、吐出母管102bに接続される第2吐出枝管104bには、第2油分離機構143と第2逆止機構144とが設けられている。第1油分離機構141は、第1圧縮機構103から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離して圧縮機構102の吸入側へ戻す機構であり、主として、第1圧縮機構103から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離する第1油分離器141aと、第1油分離器141aに接続されており冷媒から分離された冷凍機油を圧縮機構102の吸入側に戻す第1油戻し管141bとを有している。第2油分離機構143は、第2圧縮機構104から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離して圧縮機構102の吸入側へ戻す機構であり、主として、第2圧縮機構104から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離する第2油分離器143aと、第2油分離器143aに接続されており冷媒から分離された冷凍機油を圧縮機構102の吸入側に戻す第2油戻し管143bとを有している。本変形例において、第1油戻し管141bは、第2吸入枝管104aに接続されており、第2油戻し管143cは、第1吸入枝管103aに接続されている。このため、第1圧縮機構103内に溜まった冷凍機油の量と第2圧縮機構104内に溜まった冷凍機油の量との間に偏りに起因して第1圧縮機構103から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油の量と第2圧縮機構104から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油の量との間に偏りが生じた場合であっても、圧縮機構103、104のうち冷凍機油の量が少ない方に冷凍機油が多く戻ることになり、第1圧縮機構103内に溜まった冷凍機油の量と第2圧縮機構104内に溜まった冷凍機油の量との間の偏りが解消されるようになっている。また、本変形例において、第1吸入枝管103aは、第2油戻し管143bとの合流部から吸入母管102aとの合流部までの間の部分が、吸入母管102aとの合流部に向かって下り勾配になるように構成されており、第2吸入枝管104aは、第1油戻し管141bとの合流部から吸入母管102aとの合流部までの間の部分が、吸入母管102aとの合流部に向かって下り勾配になるように構成されている。このため、圧縮機構103、104のいずれか一方が停止中であっても、運転中の圧縮機構に対応する油戻し管から停止中の圧縮機構に対応する吸入枝管に戻される冷凍機油は、吸入母管102aに戻ることになり、運転中の圧縮機構の油切れが生じにくくなっている。油戻し管141b、143bには、油戻し管141b、143bを流れる冷凍機油を減圧する減圧機構141c、143cが設けられている。逆止機構142、144は、圧縮機構103、104の吐出側から切換機構3への冷媒の流れを許容し、かつ、切換機構3から圧縮機構103、104の吐出側への冷媒の流れを遮断するための機構である。
このように、圧縮機構102は、本変形例において、2つの圧縮要素103c、103dを有するとともにこれらの圧縮要素103c、103dのうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成された第1圧縮機構103と、2つの圧縮要素104c、104dを有するとともにこれらの圧縮要素104c、104dのうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成された第2圧縮機構104とを並列に接続した構成となっている。
また、中間熱交換器7は、本変形例において、中間冷媒管8を構成する中間母管82に設けられており、冷房運転時には、第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒と第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cから吐出された冷媒とが合流したものを冷却する熱交換器である。すなわち、中間熱交換器7は、冷房運転時には、2つの圧縮機構103、104に共通の冷却器として機能するものとなっている。このため、多段圧縮式の圧縮機構103、104を複数系統並列に接続した並列多段圧縮式の圧縮機構102に対して中間熱交換器7を設ける際の圧縮機構102周りの回路構成の簡素化が図られている。
また、中間冷媒管8を構成する第1入口側中間枝管81には、第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cの吐出側から中間母管82側への冷媒の流れを許容し、かつ、中間母管82側から前段側の圧縮要素103cの吐出側への冷媒の流れを遮断するための逆止機構81aが設けられており、中間冷媒管8を構成する第2入口側中間枝管84には、第2圧縮機構103の前段側の圧縮要素104cの吐出側から中間母管82側への冷媒の流れを許容し、かつ、中間母管82側から前段側の圧縮要素104cの吐出側への冷媒の流れを遮断するための逆止機構84aが設けられている。本変形例においては、逆止機構81a、84aとして逆止弁が使用されている。このため、圧縮機構103、104のいずれか一方が停止中であっても、運転中の圧縮機構の前段側の圧縮要素から吐出された冷媒が中間冷媒管8を通じて、停止中の圧縮機構の前段側の圧縮要素の吐出側に達するということが生じないため、運転中の圧縮機構の前段側の圧縮要素から吐出された冷媒が、停止中の圧縮機構の前段側の圧縮要素内を通じて圧縮機構102の吸入側に抜けて停止中の圧縮機構の冷凍機油が流出するということが生じなくなり、これにより、停止中の圧縮機構を起動する際の冷凍機油の不足が生じにくくなっている。尚、圧縮機構103、104間に運転の優先順位を設けている場合(例えば、第1圧縮機構103を優先的に運転する圧縮機構とする場合)には、上述の停止中の圧縮機構に該当することがあるのは、第2圧縮機構104に限られることになるため、この場合には、第2圧縮機構104に対応する逆止機構84aだけを設けるようにしてもよい。
また、上述のように、第1圧縮機構103を優先的に運転する圧縮機構とする場合においては、中間冷媒管8が圧縮機構103、104に共通に設けられているため、運転中の第1圧縮機構103に対応する前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒が中間冷媒管8の第2出口側中間枝管85を通じて、停止中の第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104dの吸入側に達し、これにより、運転中の第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒が、停止中の第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104d内を通じて圧縮機構102の吐出側に抜けて停止中の第2圧縮機構104の冷凍機油が流出して、停止中の第2圧縮機構104を起動する際の冷凍機油の不足が生じるおそれがある。そこで、本変形例では、第2出口側中間枝管85に開閉弁85aを設け、第2圧縮機構104が停止中の場合には、この開閉弁85aによって第2出口側中間枝管85内の冷媒の流れを遮断するようにしている。これにより、運転中の第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒が中間冷媒管8の第2出口側中間枝管85を通じて、停止中の第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104dの吸入側に達することがなくなるため、運転中の第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒が、停止中の第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104d内を通じて圧縮機構102の吐出側に抜けて停止中の第2圧縮機構104の冷凍機油が流出するということが生じなくなり、これにより、停止中の第2圧縮機構104を起動する際の冷凍機油の不足がさらに生じにくくなっている。尚、本変形例においては、開閉弁85aとして電磁弁が使用されている。
また、第1圧縮機構103を優先的に運転する圧縮機構とする場合においては、第1圧縮機構103の起動に続いて第2圧縮機構104を起動することになるが、この際、中間冷媒管8が圧縮機構103、104に共通に設けられているため、第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cの吐出側の圧力及び後段側の圧縮要素104dの吸入側の圧力が、第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cの吸入側の圧力及び後段側の圧縮要素103dの吐出側の圧力よりも高くなった状態から起動することになり、安定的に第2圧縮機構104を起動することが難しい。そこで、本変形例では、第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cの吐出側と後段側の圧縮要素104dの吸入側とを接続する起動バイパス管86を設けるとともに、この起動バイパス管86に開閉弁86aを設け、第2圧縮機構104が停止中の場合には、この開閉弁86aによって起動バイパス管86内の冷媒の流れを遮断し、かつ、開閉弁85aによって第2出口側中間枝管85内の冷媒の流れを遮断するようにし、第2圧縮機構104を起動する際に、開閉弁86aによって起動バイパス管86内に冷媒を流すことができる状態にすることで、第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cから吐出される冷媒を第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cから吐出される冷媒に合流させることなく、起動バイパス管86を通じて後段側の圧縮要素104dに吸入させるようにして、圧縮機構102の運転状態が安定した時点(例えば、圧縮機構102の吸入圧力、吐出圧力及び中間圧力が安定した時点)で、開閉弁85aによって第2出口側中間枝管85内に冷媒を流すことができる状態にし、かつ、開閉弁86aによって起動バイパス管86内の冷媒の流れを遮断して、通常の冷房運転や暖房運転に移行することができるようになっている。尚、本変形例において、起動バイパス管86は、その一端が第2出口側中間枝管85の開閉弁85aと第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104dの吸入側との間に接続され、その他端が第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cの吐出側と第2入口側中間枝管84の逆止機構84aとの間に接続されており、第2圧縮機構104を起動する際に、第1圧縮機構103の中間圧部分の影響を受けにくい状態にできるようになっている。また、本変形例においては、開閉弁86aとして電磁弁が使用されている。
また、本変形例の空気調和装置1の冷房運転や暖房運転の動作は、圧縮機構2に代えて設けられた圧縮機構102によって、圧縮機構102周りの回路構成がやや複雑化したことによる変更点を除いては、上述の変形例3における動作(図21〜図27及びその関連記載)と基本的に同じであるため、ここでは、説明を省略する。
そして、本変形例の構成においても、上述の変形例3と同様の作用効果を得ることができる。
(7)他の実施形態
以上、本発明の実施形態及びその変形例について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上述の実施形態及びその変形例において、利用側熱交換器6を流れる冷媒と熱交換を行う加熱源又は冷却源としての水やブラインを使用するとともに、利用側熱交換器6において熱交換された水やブラインと室内空気とを熱交換させる二次熱交換器を設けた、いわゆる、チラー型の空気調和装置に本発明を適用してもよい。
また、上述のチラータイプの空気調和装置の他の型式の冷凍装置であっても、超臨界域で作動する冷媒を冷媒として使用して多段圧縮式冷凍サイクルを行うものであれば、本発明を適用可能である。
また、超臨界域で作動する冷媒としては、二酸化炭素に限定されず、エチレン、エタンや酸化窒素等を使用してもよい。