以下、本発明の一実施例に係る空気調和機について図1から図3を用いて説明する。本実施例の空気調和機は冷凍装置の一例として説明するものである。
まず、本実施例の空気調和機50の全体構成に関して図1を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例に係る空気調和機の構成図である。
空気調和機50は、冷凍サイクルと、送風装置と、これらを制御する制御系とを備えて構成されている。なお、この空気調和機50は、室内機と室外機とを冷媒配管、電気配線、信号配線などを介して接続されたセパレート形空気調和機である。
冷凍サイクルは、二段圧縮機1、四方弁2、室外側熱交換器3、第1の減圧装置4、気液分離器5、第2の減圧装置6、室内側熱交換器7、インジェクション制御弁9を備え、これらを冷媒配管を介して接続することにより構成されている。室内側熱交換器7は室内機に収納され、二段圧縮機1、四方弁2、室外側熱交換器3、第1の減圧装置4、気液分離器5、第2の減圧装置6、インジェクション制御弁9は室外機に収納されている。
二段圧縮機1は低段圧縮機部(低圧側圧縮機部)1−1と高段圧縮機部(高圧側圧縮機部)1−2とからなる二段の圧縮機構を有している。低段圧縮機部1−1及び高段圧縮機部1−2は、シリンダ、ロータ、ベーン、端板からなるロータリ式圧縮機部で構成されている。低段圧縮機部1−1と高段圧縮機部1−2とは、密閉容器1−3内に並置された状態で収納されている。
低段圧縮機部1−1の吐出部1bと高段圧縮機部1−2の吸込部1cは、各シリンダの側面に開口するように設けられ、互いに近接するように円周方向で同じ位置に設けられている。低段圧縮機部1−1の吐出部1bと高段圧縮機部1−2の吸込部1cとは、接続配管1−4を介して連通されている。この接続配管1−4(中間圧力空間1−4と呼ぶ場合もある)は、高さの低い略U字状で冷媒の流路長さを短くするように構成され、その両端部が密閉容器1−3を貫通して低段圧縮機部1−1の吐出部1b及び高段圧縮機部1−2の吸込部1cに接続され、その中央部分が密閉容器1−3の外部に露出するように設けられている。係る接続配管1−4を設けることによって、低段圧縮機部1−1の吐出部1bから高段圧縮機部1−2の吸込部1cへの流通抵抗が小さいものとすることができる
四方弁2は冷媒流路切換弁の一例である。この四方弁2は、二段圧縮機1から吐出された冷媒を室外側熱交換器3、第1の減圧装置4、気液分離器5、第2の減圧装置6及び室内側熱交換器7の順に流す冷房サイクルと、二段圧縮機1から吐出された冷媒を室内側熱交換器7、第2の減圧装置6、気液分離器5、第1の減圧装置4及び室外側熱交換器3の順に流す暖房サイクルとに切換えるものである。従って、室外側熱交換器3は、冷房サイクル時に高圧側熱交換器を構成し、暖房サイクル時に低圧側熱交換器を構成する。また、室内側熱交換器7は、暖房サイクル時に高圧側熱交換器を構成し、冷房サイクル時に低圧側熱交換器を構成する。
第1の減圧装置4は、室外側熱交換器3と気液分離器5との間に設けられ、冷房サイクル時に室外側熱交換器3からの冷媒を減圧する高圧側減圧装置を構成し、暖房サイクル時に気液分離器5からの冷媒を減圧する低圧側減圧装置を構成する。第2の減圧装置6は、気液分離器5と室内側熱交換器7との間に設けられ、冷房サイクル時に気液分離器5からの冷媒を減圧する低圧側減圧装置を構成し、暖房サイクル時に室内側熱交換器7からの冷媒を減圧する高圧側減圧装置を構成する。なお、本実施例では、第1の減圧装置4及び第2の減圧装置6は絞り開度が制御可能な膨張弁、例えば電動式などで構成されている。
気液分離器5は、第1の減圧装置4と第2の減圧装置6との間に設けられ、通過する冷媒の気液を分離するためのものである。気液分離器5は、冷房サイクル時に、第1の減圧装置4からの気液混合冷媒の気液を分離して、液冷媒を第2の減圧装置6に流し、ガス冷媒を導入配管8(インジェクション配管8と呼ぶ場合もある)に流すように構成されている。また、気液分離器5は、暖房サイクル時に、第2の減圧装置6からの気液混合冷媒の気液を分離して、液冷媒を第1の減圧装置4に流し、ガス冷媒を導入配管8に流すように構成されている。このように機能させるために、導入配管8が気液分離器5の上部空間に連通されるように設けられ、第1の減圧装置4からの冷媒配管と第2の減圧装置6からの冷媒配管とが気液分離器5の下部空間の両側に連通されるように設けられている。
気液分離器5のガス出口5gと高段圧縮機部1−2の吸込部1cとは、導入配管8及びインジェクション制御弁9を介して連通されている。導入配管8は、気液分離器5のガス出口から中間圧冷媒を高段圧縮機部1−2の吸込側に導いて(即ち、ガスインジェクションして)、低段圧縮機部1−1から吐出される冷媒ガスを気液分離器5のガス出口5gからの冷媒で冷却し、適正な過熱度にして高段圧縮機部1−2に吸込ませるためのものである。そして、導入配管8は、接続配管1−4の密閉容器外側に位置する部分(中間圧力空間である接続配管1−4の途中部分)に接続され、接続配管1−4に導入配管8の先端開口である中間圧冷媒導入口1jが設けられている。係る接続配管1−4と導入配管8とを組合せる構成によって、低段圧縮機部1−1から高段圧縮機部1−2への冷媒流路と気液分離器5から高段圧縮機部1−2への冷媒流路とを容易に形成することができる。そして、インジェクション制御弁9は、電動膨張弁で構成され、導入配管8の途中に設けられて導入配管8の流量を制御し、開閉弁に有りがちな衝撃音を緩和するものである。
空気調和機50における送風装置は、室外機に収納された室外送風装置と、室内機に収納された室内送風装置とからなっている。室外送風装置は、室外側熱交換器3に室外空気を流通させる室外送風機11と、室外送風機11を駆動する室外送風機モーター12とを備えている。室内送風装置は、室内側熱交換器7に室内の空気を流通させる室内送風機13と、室内送風機13を駆動する室内送風機モーター14とを備えている。本実施例では、室外送風機11として軸流ファンを使用し、室内送風機13として横流ファン(貫流ファン)を使用している。
空気調和機50における制御系は、温度検出器20〜24と、室外機に収納された制御装置10とを備えて構成されている。温度検出器20〜24は、高段圧縮機部1−2の吐出部1dの温度を検出する温度検出器20と、室内空気の吸込温度を検出する温度検出器21と、気液分離器5の冷媒の飽和温度を検出する温度検出器(第1の温度検出器)22と、室外空気の吸込温度を検出する温度検出器23と、高段圧縮機部1−2吸込側の中間圧冷媒導入口1j近傍の温度を検出する温度検出器(第2の温度検出器)24とから構成されている。温度検出器20、21、23は第3の温度検出器を構成するものである。なお、近傍の温度には当該部分の温度も当然に含まれる。
ここで、第1の減圧装置4と第2の減圧装置6との間の冷媒の圧力は中間圧となるので、第1の温度検出器22の取付け場所は第1の減圧装置4と第2の減圧装置6との間の冷媒回路上であれば良く、取付け場所選択の自由度が広がり、扱いやすい。
また、冷暖房両用の機能を持つ冷凍サイクルでは、冷房時に気液分離器5の上流側となる第1の減圧装置4と気液分離器5との間に取付けるのが良い。このようにすることにより、インジェクションの逆流が起こった場合でも、第1の温度検出器での検出温度は逆流の影響をまったく受けず、正しく気液分離器内の冷媒圧力の飽和温度に近い温度になる。
そして、第2の温度検出器24は中間圧冷媒導入口1jと接続配管(中間圧力空間)1−4との接続部の近傍の導入配管(インジェクション配管)8における温度を検出するようになっている。これによって、接続配管1−4に第2の温度検出器24を設ける場合に比較して、中間圧冷媒導入口1jに導入される中間圧冷媒の温度を迅速に検出することができ、この温度に基づく制御の精度を向上することができる。
また、第2の温度検出器24を図5に示すように、導入配管上で中間圧冷媒導入口から15mm以上離間した位置とすると良い(図5には第2の温度検出器24を図示していないが、インジェクション配管8上で少なくとも、中間圧力空間1−4とインジェクション配管8との接続部(中間冷媒導入口1j)からインジェクション制御弁9との間に設けられる。とくに、図5に示す如くインジェクション配管8上の中間冷媒導入口1jから15mm〜100mmに設けることが望ましい)。このようにすることにより、導入配管にサーミスタ取付用のスリーブを蝋付でき、高段圧縮機部の吸込み温度に相関する温度を十分な検出精度、応答早さで検出できる。
更にまた、同一条件で冷凍サイクルを運転して、第2の温度検出器の取付位置を変えて、第2の温度検出器での検出温度と第1の温度検出器での検出温度との差であるインジェクション温度差が低圧側膨張弁(冷房時は第2の減圧装置)の開度に応じてどう変わるか実験した結果を図4に示す。
図4は本実施例の空気調和機の冷房運転時における第2の減圧装置の開度とインジェクション温度差を示すグラフである。図5は図4のインジェクション温度差の圧縮機側測定点を示す図である。
この図を考察すると、弁の開度が小さい所では第2の温度検出器の取付け場所によって違いは有るものの、グラフが鋭く立ち上っている。立上り部より開度が小さい範囲では、気液分離器5内は液冷媒が圧倒的に多いので、第2の温度検出器の取付け場所でインジェクション冷媒の液滴が導入配管8の内管壁に始終衝突し、管壁の温度を飽和温度迄冷却し、インジェクション温度差は0K以下の値となっている。この開度範囲では開度を変えてもインジェクション温度差が変わらず、通常の制御ができない範囲である。
第2の減圧装置の開度が立上り部から少し大きくなると、第2の温度検出器の取付け場所で導入配管8内のインジェクション冷媒の乾き度が上がって液滴の量が減少し、導入配管8の内管壁に衝突する液滴も減少する。このため、低段圧縮機部から吐出される冷媒の熱が中間圧冷媒導入口の接合部を通して伝わり、その熱の影響で管壁の温度が上がる。この範囲は少しの開度の変化でインジェクション温度差が大きく変り、制御に利用できない範囲であり、冷凍サイクルが前記の通常の制御ができない範囲、或いは、制御に利用できない範囲に入った場合は、低圧側減圧装置を全開にするとか、インジェクション制御弁を閉じる、とかしてこの状態から脱出する必要が有る。
もう少し開度を大きくし、弁の開度が小さい所を過ぎてそれに続く中間の開度にすると、やはり取付け場所によって傾きの違いは有るが、ゆるい傾斜になっていて、この範囲を制御に使用することで、良好な制御ができる。更に開度を大きくすると第2の温度検出器の取付け場所で更にインジェクション冷媒の液滴の量が減少し、乾き度が1に近くなり、管壁の温度を少し下げるだけになり、この範囲迄は制御に使用することができる。このグラフから、第2の温度検出器の取付け場所は、導入配管上で中間圧冷媒導入口から15〜100mmの位置とすると更に良い。
このようにすることにより、低段圧縮機部の吐出温度の熱的影響とインジェクション冷媒の湿り度の影響の両方の影響をそれぞれ適度に受けて、第2の温度検出器は高段圧縮機部の吸込み温度に応じて変化する温度を検出できる。
もっと開度を大きくすると、第2の温度検出器の取付け場所で導入配管内にインジェクション液冷媒が含まれなくなり、乾き度が1になる。このため、導入配管の管壁を冷却するのはガス状のインジェクション冷媒だけになって、乾き度が低い時の気液二相流での熱伝達から、熱伝達率の低い気相流での熱伝達に変わる。このため、冷却効果は激減し、管壁の温度は低段圧縮機部から吐出される冷媒の温度の影響を強く受けることになり、管壁の温度は僅かに下がる。この開度から更に開度を大きくしても、管壁の温度はほんの僅かづつ上がって行くだけで、見かけは平坦なグラフとなる。この範囲ではいくら開度を変えてもインジェクション温度差に変化が無く、この部分も制御に不適な部分である。
図4に示した4本のグラフのなかで、中間圧冷媒導入口である合流点より下流では鋭い立ち上りに続いて、いきなり平坦な部分に連なっている。これは、前述の立ち上がり部から平坦部への変化が、少しの開度の変化で、起きるためであると考えられる。このことより、合流部より下流での検出温度ではインジェクション量の制御が困難である。
中間圧力空間(接続配管)1−4の中間圧冷媒導入口1jよりも高段圧縮機部1−1の吸入側に第2の温度検出器24を取り付けることで、インジェクションされた後の冷媒の状態を観察することができると考えられていた。しかし、実際に実験してみると、この付近の配管温度は、圧縮機のチャンバ(密閉容器)の温度に支配され、微妙な温度変化を検出することが困難であることが判った。
制御装置10は、温度検出器24、22の検出結果に基づき、中間圧冷媒導入口1j近傍の温度と気液分離器5のガス出口5g近傍の温度との温度差を演算する機能を有している。これによって、温度センサーとして空気調和機に広く使われている信頼性の高いサーミスタなどを使用することができ、簡単な構成で確実に湿り圧縮、過剰過熱圧縮を起こさない空気調和機50を得ることができる。
また、制御装置10は、各部の温度検出器20〜24の検出温度や使用者の運転指令に基づいて、二段圧縮機1、四方弁2、室外送風機モーター12、室内送風機モーター14、第1の減圧装置4、第2の減圧装置6、インジェクション制御弁9などを制御する。なお、本実施例では、制御装置10は、演算する機能を有する制御装置と、各機器を制御する機能を有する制御装置とを一つで示してあるが、これらが分けて構成されていても良く、或いは各機器を制御する機能を有する制御装置がさらに分けて構成されていても良い。
次に、空気調和機50の運転動作を図1及び図2を参照しながら説明する。図2は本実施例の空気調和機の冷凍サイクルを流れる冷媒の状態を示すモリエル線図である。この図2では、本実施例のガスインジェクションを用いた場合のモリエル線図を実線で示すと共に、ガスインジェクションを用いない比較例の場合のモリエル線図を点線で示してある。
まず、空気調和機50の暖房運転について説明する。暖房運転する際には、四方弁2を図1の破線のように切換えて暖房サイクルを形成すると共に、二段圧縮機1、室外送風機モーター12及び室内送風機モーター14を運転する。
二段圧縮機1に吸込まれたガス冷媒aは、二段圧縮機1で圧縮され、高温高圧のガス冷媒dとなって、図1の破線矢印の方向に流れ、四方弁2を通って暖房サイクル時に凝縮器となる室内側熱交換器7に入り、室内空気と熱交換し冷却されて凝縮され、液または気液混合の冷媒iとなる。図2は液冷媒iの場合を示す。
凝縮して液または気液混合の冷媒となった冷媒iは、第2の減圧装置6に入り、第2の減圧装置6により膨張されて減圧され、気液混合の冷媒hとなる。この気液混合冷媒hは気液分離器5に入って気液が分離される。分離された液冷媒は、気液分離器5の下部空間に溜まり、液冷媒fとなって第1の減圧装置4に流出される。また、分離されたガス冷媒は、気液分離器5の上部空間に溜まり、ガス冷媒gとなって導入配管8に流出される。
気液分離器5から流出された液冷媒fは、第1の減圧装置4で膨張されてさらに減圧され、気液混合冷媒eとなる。この気液混合冷媒eは、暖房サイクル時に蒸発器となる室外側熱交換器3に入り、室外空気と熱交換して加熱され、ガス冷媒aとなって二段圧縮機1に戻る。
係る暖房運転時に導入配管8のインジェクション制御弁9を開くことにより、気液分離器5で液と分離され気液分離器5から出たガス冷媒gは導入配管8を通って中間圧冷媒導入口1jから低段圧縮機部1−1の吐出冷媒bと混合され、吐出冷媒bはガス冷媒gにより冷却され温度を下げられる。この時、インジェクション制御弁9は複数回に分けて段階的に開き、インジェクション弁を開く時の冷凍サイクルの急変による衝撃音が無くす。
混合されたガス冷媒cは、高段圧縮機部1−2に吸込まれ、高段圧縮機部1−2で圧縮されて上述した吐出冷媒dとなる。
上述した暖房サイクルにおける動作を繰り返すことにより、暖房運転が継続される。
空気調和機50の冷房運転をする際には、四方弁2を図1の実線のように切換えて冷房サイクルを形成すると共に、二段圧縮機1、室外送風機モーター12及び室内送風機モーター14を運転する。冷房サイクルのモリエル線図は、冷媒の流れが逆になっている点を除いて、暖房サイクルのモリエル線図と基本的には同じであるので、括弧内にその符号を示すことにより、重複する説明を省略する。
ここで、上述した気液分離器5及び導入配管8によるガスインジェクションサイクルを用いた本実施例の場合と、ガスインジェクションサイクルを用いない比較例の場合との暖房能力及び冷房能力について、図2を参照しながら説明する。
暖房運転において、比較例の場合の凝縮器7の冷媒流量をGとし、本実施例の場合のインジェクションされる冷媒流量をG1とすると、本実施例で凝縮器7を流れる冷媒流量はG+G1となる。従って、凝縮器出入口のエンタルピ差と冷媒流量の積である暖房能力が比較例よりも増加する。
一方、冷房運転おいて、比較例の蒸発能力(即ち、冷房能力)は、a点とe'点とのエンタルピの差で表され、本実施例の蒸発能力(即ち、冷房能力)はa点とe点のエンタルピの差で表される。本実施例のe点のエンタルピは比較例のe'点のエンタルピよりも小さいので、本実施例においては比較例よりも蒸発能力(即ち、冷房能力)が増加する。
次に、空気調和機50の第1の減圧装置4、第2の減圧装置6及びインジェクション制御弁9の制御に関して、図1から図3を参照しながら説明する。図3は本実施例の空気調和機50の暖房運転時における第1の減圧装置4の開度と運転特性を示す線図である。図3(a)は気液分離器5の圧力特性を示し、図3(b)は第1の温度検出器22と第2の温度検出器24との温度差の特性を示し、図3(c)はCOP比率の特性を示すものである。
本実施例の空気調和機50では、運転状態及び周囲の温度状態を検出する温度検出器20、21、23で検出した温度に基づいて高圧側減圧装置4または6を制御し、気液分離器5で分離された中間圧冷媒が高段圧縮機部1−2の吸込側に導入される状態を検出する温度検出器22、24で検出された温度に基づいて低圧側減圧装置6または4を制御するようになっている。このように運転状態に応じて制御する減圧装置とガスインジェクション状態に応じて制御する減圧装置とを特定することにより、制御装置10による制御を極めて簡単なものとすることができる。なお、制御装置10の制御が複雑であっても良い場合には、ガスインジェクション状態に応じて制御する減圧装置を特定することなく、何れか或いは両方の減圧装置を制御するようにしても良い。
そして、ガスインジェクションを用いた運転をする場合には、インジェクション制御弁9を開路すると共に、第1の減圧装置4の絞り量を制御して気液分離器5の圧力、即ち中間圧力Pmを低段圧縮機部1−1の吐出部1bの圧力Pdl及び高段圧縮機部1−2の吸込部1cの圧力Pshよりも高くする。これによって、気液分離器5で気液分離された中間圧力のガス冷媒は、導入配管8を通って中間圧冷媒導入口1jで低段圧縮機部1−1の吐出部1bからのガス冷媒と合流され、高段圧縮機部1−2の吸込部1cに流入される。なお、中間圧力Pmが低段圧縮機部1−1の吐出部1bの圧力より低くなると、低段圧縮機部1−1の吐出部1bからのガス冷媒が導入配管8を通って気液分離器5に流入することとなるので、この場合にはインジェクション制御弁9を閉じることが必要である。
本実施例のような二段圧縮二段膨張サイクルにおいて、中間圧力Pmが高いほど、中間圧冷媒導入口1jにインジェクションされる飽和ガス冷媒gに対して飽和液冷媒hの割合が多くなる。この中間圧力Pmは、二つの膨張弁(第1の減圧装置4及び第2の減圧装置6)により任意に調整できるが、二段圧縮機1の低段圧縮機部1−1の出口部1bの圧力は一定であるので、中間圧力Pmを高くするほど中間圧力Pmと低段圧縮機部1−1の出口部1bとの圧力差が大きくなり、インジェクションされる冷媒量は増加する。したがって、中間圧力Pmを増加させるほど、インジェクションによる冷凍能力を増大することができる。
しかし、ある中間圧力Pm以上になると、中間圧冷媒導入口1jの比エンタルピは飽和ガス線の比エンタルピよりも小さくなる。即ち、この場合、中間圧冷媒導入口1jにはインジェクションする中間圧ガス冷媒中に液冷媒が存在することになる。これによって、高段圧縮機部1−2の吸込部1cから液冷媒が吸込まれることとなり、二段圧縮機1に悪影響を及ぼして信頼性を低下させてしまう。
そこで、本実施例では、中間圧ガス冷媒中に液冷媒が存在するようになる中問圧力Pmとならないように(換言すれば、高段圧縮機部1−2に吸込まれる冷媒がガス領域温度以上になるように)、膨張弁制御を行っている。即ち、制御装置10は、第1の温度検出器22で検出した温度と第2の温度検出器24で検出した温度とに基づいて第1の減圧装置4または第2の減圧装置6を制御するようになっている。具体的には、制御装置10は、第1の温度検出器22で検出した温度と第2の温度検出器24で検出した温度との温度差を演算し、この演算された温度差に基づいて第1の減圧装置4または第2の減圧装置6の絞り量を調節するようになっている。この温度差は高段圧縮機部の吸込み温度に近い温度と高段圧縮機部の吸込み圧力に近い気液分離器内の圧力の飽和温度に近い温度との温度差であり、これは取りも直さず、高段圧縮機部に吸込まれる冷媒の過熱度に近いので、あたかも高段圧縮機部の吸込口冷媒の過熱度制御を行っているかのごとく制御するので安定性も良く、信頼性のある冷凍サイクルを得ることができる。
また、本実施例では制御装置10は第1の減圧装置4または第2の減圧装置6の開度を調節するときに、1回あたりの変化量を制限する。このようにすると、1回あたりの変化量が小さくなって、冷凍サイクル全体に与える影響も小さくなり、他の冷凍サイクル制御機器はこの小さく現れた変化を捉えて、最適な冷凍サイクルへの修復動作を行うので冷凍サイクルは大きく乱れることは無い。
また、またこの温度差が小さ過ぎて高段圧縮機部の吸込み冷媒が液戻りの恐れのあるときには上記の1回あたりの開度の変化量の制限を解除し、1回で所定の開度まで開閉し、液圧縮の危険性を未然に防ぐことができる。この小さすぎる温度差の判定値を第1の所定値とし、予め実験により適正な値に定めておく。実施例ではこれを2K(ケルビン)とした。
第1の減圧装置4または第2の減圧装置6を上述したように制御することにより、中間圧ガス冷媒中に液冷媒が存在しない中間圧力Pm以下とすることができるので、二段圧縮機1の高段側圧縮機1−2に液冷媒が導入されることを防止して二段圧縮機1の信頼性の向上を図ることができる。
ガスインジェクションを行う場合において、高段圧縮機部1−2に吸込まれる冷媒の状態としては、高段圧縮機部1−2の吸込みガスに液冷媒が含まれず且つ温度が最も低いガス冷媒が最適である。このことから、過熱度0K(ケルビン)のガス冷媒を高段圧縮機部1−2の吸込部1cから吸込むようにすることが理想的であるが、過熱度0K(ケルビン)は気液混合状態と同じ温度であるため、実現は困難である。発明者らはこれに近い適正な過熱度を得るため種々検討を重ねた結果、上述したように気液分離器5から高段圧縮機部1−2の吸込側に導入される中間圧冷媒の二箇所の温度に基づいて減圧装置4または6を制御することにより、実用上十分に満足できる空気調和機50を実現できたのである。
図3に示す暖房運転時における各特性を用いてさらに具体的に説明する。低圧側膨張弁4の開度と中間圧力Pmとの相関を調べると、図3(a)のグラフの如く、負の1次相関特性を有していることが分かった。従って、低圧側膨張弁4の開度を制御することにより、中間圧力Pmを容易に制御することができる。
また、低圧側膨張弁4の開度と導入配管温度差(中間圧冷媒導入口1j近傍の温度と気液分離器5のガス出口5g近傍の温度との温度差)との関係を調べると、図3(b)のグラフの如く、低圧側膨張弁4の開度が小さいところから低圧側膨張弁4の開度を上げて行くに従って、導入配管8の温度差は大きくなって行くが、途中僅かな開度の差で導入配管温度差が大きく変わる部分があることが分かった。
また、低圧側膨張弁4の開度とCOP比率(中間圧冷媒導入無しの場合のCOPと中間圧冷媒導入時のCOPの比率)の関係を調べると、図3(c)の如く、COP比率の良好な低圧側膨張弁4の開度範囲があることが分かった。
この結果を考察してみるに、低圧側膨張弁4の開度の小さいところで導入配管温度差が負になっていることから、この部分では中間圧力Pmが上がりすぎて、液冷媒が過度に供給され、二段圧縮機1の効率が低下していると考えられる。更には、低圧側膨張弁4の開度を大きくし過ぎると、導入配管温度差が大きくなり、COP比率も下がることから、この部分では高段吸込冷媒の過熱度が大きくなり過ぎ、高段吸込冷媒の比容積が大きくなって冷媒循環量が減少すると共に、高段吐出温度が上がり過ぎて、二段圧縮機1の効率が低下していると考えられる。
これらのことから、本実施例では、低圧側膨張弁4の開度を導入配管温度差で制御することで良好な二段圧縮二段膨張冷凍サイクルを得られるようにしている。即ち、制御装置10は、第1の温度検出器22で検出した温度と第2の温度検出器24で検出した温度との温度差が所定範囲内となるように、低圧側膨張弁4の絞り量を調節するようにしている。特に、導入配管温度差を2K(ケルビン)〜12K(ケルビン)に制御すると、低圧側膨張弁4の開度変化に対する温度差変化も大きく、制御が容易であると共に、適切な過熱度のガス冷媒が吸込まれることとなってCOP比率も最高点に近く、効率の良い冷凍サイクルを得ることができる。
また、またこの温度差が大き過ぎて高段圧縮機部の吸込み冷媒の過熱度が過大になり、圧縮機が過熱する恐れのあるときには、前記の1回あたりの開度の変化量の制限を解除し、1回で所定の開度まで開閉し、圧縮機の過熱を防止する。
尚、更に詳細な検討の結果、圧縮機の回転数が上がると低段圧縮機部の吐出温度も上がり、その影響を受けて、正常運転時の適正な過熱度も上がる。このため、過大な過熱度の判定値を圧縮機の回転数に応じて定め、第2の所定値とする。更に、この第2の所定値を
図6、図7に示す如く冷房、暖房等の冷凍サイクルのモード毎に、圧縮機の回転数と正の相関を持つように定めることにより、良好な制御結果を得ることができた。図6は本実施例の空気調和機の冷房運転時における圧縮機回転数と逆流開始時のインジェクション温度差を示すグラフである。図7は本実施例の空気調和機の暖房運転時における圧縮機回転数と逆流開始時のインジェクション温度差を示すグラフである。
また、制御装置10は、温度差の演算結果に基づいて、低圧側膨張弁4の絞り開度を所定開度以上に開いても、第1の温度検出器22で検出した温度と第2の温度検出器24で検出した温度との温度差が所定値以上にならない場合に、インジェクション制御弁9を一気に閉路するように制御するようになっている。これによって、二段圧縮機1の高段側圧縮機1−2に液冷媒が導入されることを速やかに防止して二段圧縮機1の信頼性の向上を図ることができる。
図3における各運転特性を得るため、同様の運転を冷房サイクルでも行った結果、冷房運転時も類似の運転特性が得られることが分かった。従って、冷房運転時も暖房運転時と同様の制御が可能である。本実施例では、冷房サイクルと暖房サイクルを切換可能な四方弁2を備えることにより、冷房サイクルと暖房サイクルを切換えた逆サイクル運転時にも、気液分離器5と低圧側熱交換器3または7との間に設けた膨張弁4または6の開度を調整可能となり、冷房サイクルと暖房サイクルのどちらのサイクルでも高段圧縮機部1−2の吸込み温度を中間圧力Pmに応じた適正な温度に制御することができ、冷房サイクル、暖房サイクルの両方のサイクルで適正な冷凍サイクル運転を行うことができる空気調和機50を得ることができる。
また、本実施例の空気調和機50では、二段圧縮機1と、室外側熱交換器3と、気液分離器5と、減圧装置4、6と、導入配管8と、制御装置10とを室外機に纏めて収納しているので、室内機への収納部品を増やすことが無く、制御装置10を用いて室外機に収納した機器の動作の確認ができる。これによって、室内機を簡単な構成で小型に維持することができ、室外機を信頼性の高いものとしたセパレート型空気調和機を得ることができる。
また、本発明の制御装置10は高圧側減圧装置または低圧側減圧装置の開度を調節するときに、1回あたりの変化量を制限する機能を有している。このようにすると、1回あたりの変化量が小さくなって、冷凍サイクル全体に与える影響も小さくなり、他の冷凍サイクル制御機器はこの小さく現れた変化を捉えて、最適な冷凍サイクルへの修復動作を行うので冷凍サイクルは大きく乱れることは無い。
これを安定して冷房運転している空気調和機を例に採って、低圧側減圧装置の開度を減ずる場合について少し詳しく推考する。1回あたりの絞りの変化量を小さくして開度を減ずる。開度を減ずると、低圧側熱交換器(以下、蒸発器と略す。)に流れ込む冷媒の流量が減少する。
一方、気液分離器では蒸発器に流れ出す冷媒の流量が減少するのに対し、高圧側減圧装置の開度が不変で、低圧側減圧装置の開度を絞る前と同じである。このため、高圧側熱交換器(以下、凝縮器と略す。)から流れ込む冷媒の流量は低圧側減圧装置の開度を絞る前と同じであるので、気液分離器内の冷媒液面が上昇し、上部のガス部の空間を押す。
通常気液分離器は断熱材で覆われ、保温・保冷されているので、押されたガス冷媒は、圧縮され気液分離器内の圧力をわずかに上げる。また、低圧側の冷凍サイクルは蒸発器に流れ込む冷媒の流量が減少しているため、蒸発器出口の冷媒の過熱度が上がる。このため、低段圧縮機部の吸込み冷媒の過熱度も上がり、吸込み冷媒の比容積が増える。
気液分離器内の圧力の上昇はわずかなので、低圧側減圧装置の開度を減じた当初は中間圧冷媒導入口の圧力は変わっていないと考えて良い。これゆえ、比容積が増えた分、低段圧縮機部に吸込まれる冷媒の流量が減少する。吸込み冷媒の流量の減少と過熱度の上昇のため、低段圧縮機部の冷媒の吐出温度は高くなる。
また、この吸込み冷媒の流量の減少量は低圧側減圧装置を絞った当初の冷媒の蒸発器への流入量の減少よりは少なく、このため低段圧縮機の冷媒の吸込み圧力は若干下がる。この若干の圧力減少により低段圧縮機部の吐出圧力も若干下がり、中間圧冷媒導入口の圧力も同様に下がる。他方、インジェクション回路では、気液分離器内では高圧側減圧装置から流入する気液混合冷媒の流動に伴う撹拌作用によってガス部空間に冷媒の液滴が浮遊している。冷媒液面が上昇することにより気液分離器のガス出口部は液面と近くなり、冷媒液滴がより多くなった気液混合冷媒を導入配管に送り込む。
このように、気液分離器の圧力がわずかに上がり、中間圧冷媒導入口の圧力が下がることで気液分離器の圧力と中間圧冷媒導入口の圧力との差圧が増えることになり、インジェクションされる冷媒の流量は低圧側減圧装置の開度を絞る前に較べて増加する。また、インジェクションされる冷媒に含まれる冷媒液滴が多くなることにより、インジェクションされる冷媒の比エンタルピーは低圧側減圧装置の開度を絞る前に較べて減少する。
このため、低段側圧縮機部吐出冷媒とインジェクション冷媒が合流して混合した高段側圧縮機部吸込冷媒の比エンタルピーは低圧側減圧装置の開度を絞る前に較べて減少する。従って、高段側圧縮機部吸込冷媒の温度は 低圧側減圧装置の開度を絞る前に較べて低下し、比容積は減少する。翻って、高圧側の冷媒回路では、低圧側減圧装置の開度を絞った直後は変化はない。
しかし、前述のように高段圧縮機部の吸込冷媒の比容積の減少により、1時的に、高段圧縮機部に吸込まれる冷媒の流量が増加する。これに伴い、高段圧縮機部から吐出される冷媒の流量も増加する。また、高段側圧縮機部吸込冷媒の比エンタルピーの減少により、高段圧縮機部の吐出冷媒の比エンタルピーも減少し、吐出冷媒の温度は低下する。このように、低圧側減圧装置の開度を絞る前に較べて温度が低下したけれども、流量が多くなった冷媒が室外熱交換器に入る。
これにより、室外熱交換器の出口では液冷媒の温度が低圧側減圧装置の開度を絞る前の液冷媒の温度まで達せず、低圧側減圧装置の開度を絞る前の液冷媒の温度よりも上がる。このように、温度が上がって、流量が多くなった液冷媒が高圧側減圧装置に入り、減圧され膨張する。この状態の液冷媒を気液分離器の圧力まで減圧させると、気液混合域での減圧分が低圧側減圧装置の開度を絞る前よりも大きくなる。このため、この気液混合域での抵抗が大きくなって、流量が多くなった冷媒を流しきれなくなる。
このため、流しきれなかった冷媒は必然的に室外熱交換器に滞留し、凝縮圧力を上昇させる。凝縮圧力の上昇に伴い、高段圧縮機部の吐出圧力が上昇し、高段圧縮機部の容積効率が悪化して、高段圧縮機部から吐出される冷媒の流量が減少する。この説明から判るように、気液分離器内の液面の上昇は低圧側減圧装置の絞り動作と同時に始まる。その結果、インジェクション量の増加とインジェクション冷媒の乾き度の減少もすぐに始まる。
インジェクション冷媒がこの導入配管を通り抜けるのにわずかな時間を必要とする。このわずかな時間の後に、導入配管の接続配管への中間圧冷媒導入口の温度の変化が始まる。導入配管は細い銅パイプで構成され、その長さは同じ室外機内にある二段圧縮機と気液分離器の間を結ぶだけである。一般に、導入配管の長さの決定にあたっては圧縮機の振動を吸収して振動の伝播防止のために必要な長さを考慮する必要がある。
しかし、この長さを考慮しても、導入配管の長さは主冷媒回路の全体の長さに比べると数分の一に留まる。それゆえ、導入配管の熱容量も小さく、インジェクション冷媒の状態の変化をほとんど遅延させることはない。このため、低圧側減圧装置の開度の変化は、数秒〜10数秒の後には中間圧冷媒導入口の温度変化として現れる。この変化を更に、低圧側減圧装置の制御にフィードバックすることで目標とする冷凍サイクルの状態に速やかに近づくことができる。
また、本発明では、圧縮機の回転数が上がると、冷媒の循環量が大きくなるが、熱交換器の大きさは不変なので、低回転数の時の凝縮温度、蒸発温度のままでは凝縮、蒸発が十分行われなくなる。これを補うように凝縮圧力が上がって凝縮温度が高くなり、蒸発圧力が下がって蒸発温度が低くなる。一方、低段圧縮機部の吐出圧力は高段圧縮機部の吐出圧力と低段圧縮機部の吸込圧力との相乗平均に近くなる。
このため、低段圧縮機部の吐出圧力は近似的に変わらずに、吸込圧力だけが下がる状態になる。こうして、低段圧縮機部の圧縮比が大きくなり、吸込冷媒の過熱度を、低回転数の時の過熱度と同じにしても、低段圧縮機部の吐出冷媒の過熱度は大きくなる。この状態では、仮にインジェクション量が同じで有っても、低段圧縮機部の高温になった吐出冷媒の影響で中間圧冷媒導入口近傍の温度は上昇する。
このように、逆流が起きていなくても圧縮機の回転数が上がることによって中間圧冷媒導入口の過熱度が上昇する。このうえ、逆流が起きると更に中間圧冷媒導入口の過熱度が上昇するので、逆流の恐れの有る過熱度を圧縮機の回転数に応じて定めるのが良い。更に、熱源側熱交換器、利用側熱交換器の熱的な状況の変化によって中間圧力が変動することを考慮に入れると更に良い。中間圧冷媒導入口近傍の温度と気液分離器の温度との温度差で逆流の恐れの有無を判定し、低圧側減圧装置の開度の制御を行う。
実験によれば、暖房運転に較べて冷房運転の方が逆流が起こり易いことが分かった。これは、空気調和機においては冷房時には室内空気の湿度を取ることも要求されるため、蒸発温度は室内の露点温度以下の適宜な低温にする必要がある。これと共に、室内の狭いスペースに室内機を置かなければならない。このため、室内熱交換器の大きさが制限され、要求される熱交換量を満たすためには、やはり、蒸発温度を下げる必要が有る。
これに対し、室外機は寸法の大きさの制限が室内機ほどは厳しくなく、室外熱交換器を多少、大きくしても実用上の障害にはならない。このことはまた、室外熱交換器の凝縮圧力を下げることになり、圧縮機の消費電力が低減されるので省エネルギーの大きな手段となっている。このように空気調和機では室内熱交換器が小さく、室外熱交換器が大きい構成になっている。このような熱交換器を有する空気調和機を暖房運転し、膨張弁などで適正な冷凍サイクルに調整することができる。
このとき、冷媒量の分布は冷房サイクルに較べて、室外熱交換器では冷房時に液域のサブクールに要した分が、暖房時には不要になるので、この分が減少する。室内熱交換器では逆に冷房時に低乾き度域から過熱ガス域迄の分より、暖房時に液域のサブクールに要する分が、必要になるので、増加する。ここで、室外熱交換器の方が室内熱交換器より大きいので、差し引きでは、適正な冷凍サイクルとなるに要する冷媒量は暖房時のほうが少なくて済む。
実用上は両方の必要量に近い量を種々の条件下での実験で確認の上、冷凍サイクルに封入する。この余分となった冷媒はアキュムレータに吸収され、吸収できなかった分が気液分離器内の液位の上昇となる。気液分離器の液位が上昇するとガス出口との距離が縮まり、少しの温度変化で液インジェクションになりやすくなる。
逆に、冷房運転時には、少しの温度変化で液位が下がり、低圧側減圧装置に気液混合ガスが流れる様になり、気液分離器が働かなくなって、冷凍サイクルが異常になってしまう。また、室温が上がって冷房負荷が増してくると、蒸発器での冷媒の蒸発が促進され、蒸発器出口での冷媒温度が上がる。冷媒温度が上がるので冷媒の比容積は大きくなり、蒸発圧力を押し上げ、気液分離器との差圧が小さくなり、気液分離器から蒸発器に流入する冷媒の流量が減少する。
気液分離器では蒸発器に流れ出す冷媒の流量が減少するのに対し、高圧側減圧装置の開度が不変であるので、凝縮器から流れ込む冷媒の流量は以前と同じとなり、気液分離器内の冷媒液面が上昇し、上部のガス部の空間を押す。通常気液分離器は断熱材で覆われ、保温・保冷されているので、押されたガス冷媒は、圧縮され気液分離器内の圧力をわずかに上げる。気液分離器内の圧力がわずかに上がることにより、凝縮器から高圧側減圧装置を通って気液分離器に流れ込む冷媒の流量が減少するが、上昇した液面を引き下げるほどではない。
一方、蒸発圧力の上昇は蒸発器の下流側にも影響し、蒸発圧力が上がったことにより、低段圧縮機部の吸込み圧力も上昇する。この圧力上昇により、吸込まれる冷媒の比容積が小さくなり、吸込まれる冷媒の流量が増える。これに伴ない、低段圧縮機部の吐出側に吐出される冷媒の流量が増え、低段圧縮機部の吐出圧力も上昇する。この圧力の上昇と気液分離器内の圧力の上昇は、冷凍サイクルの仕様と環境条件の違いにより千差万別で一概にどちらが大きいとは言えない。
気液分離器内では高圧側減圧装置から流入する気液混合冷媒の流動に伴う撹拌作用によってガス部空間に冷媒の液滴が浮遊している。このため気液分離器内の圧力の上昇のほうが大きい場合は、気液分離器内の冷媒液面が上昇することにより気液分離器のガス出口部は液面と近くなり、冷媒液滴がより多くなった気液混合冷媒を導入配管に送り込む。
高段圧縮機部は圧力の上昇した低段圧縮機部からの冷媒を吸込むため高段圧縮機部が吐出する冷媒の流量が増し、吐出圧力も上がる。このため、凝縮圧力、凝縮温度が上がり、流量の増加した冷媒を凝縮器で放熱させ、凝縮させる。凝縮圧力が上がるので高圧側減圧装置を流れる冷媒の流量が増え、気液分離器内の冷媒液面を押し上げる。
また、気液分離器内の冷媒圧力が上がることにより、低圧側減圧装置を通る冷媒流量が増え、気液分離器内の冷媒液面を下降させる。このような挙動がサイクリックにその時々の冷媒の圧力、冷媒の分布、周囲環境の温度等に従って行なわれ、更に圧縮機の回転数、膨張弁の絞りの変化が制御器からの指令に基いて加えられ、周囲環境の変化に応じた最適な冷凍サイクルへと収束して行く。以上に述べた挙動は低段圧縮機部の吐出圧力の上昇より気液分離器内の圧力の上昇のほうが大きい場合である。
次に、気液分離器内の圧力の上昇のほうが小さい場合について、温度検出の観点から各部の温度変化を考察する。この場合、低段圧縮機部の吐出冷媒の一部が導入配管を逆流して気液分離器に流れる。気液分離器に入った低段圧縮機部の吐出冷媒は気液分離器の上部の内壁で冷やされ一部は凝縮するが大部分は凝縮せずに冷媒の液面を押し下げる。このような状態になると気液分離器の機能が失われ、気液が分離できず、冷媒の液面が低圧側減圧装置側への流出口迄下がり、低圧側減圧装置側の配管に高圧側減圧装置からの気液混合の状態に加えて、低段圧縮機部の吐出冷媒が混じるようになる。
このような運転は、二段圧縮二段膨張冷凍サイクルの本来の運転状態とはかけ離れたものなので早急に本来の運転状態に回復する必要がある。このような状態が続くと、気液分離器の上部と導入配管の温度は低段圧縮機部の吐出温度と略等しくなる。また、低圧側減圧装置までの下流側配管の温度は逆流してくるガス冷媒の量があまり多くない場合は一緒に流れる液冷媒と熱交換して気液分離器内冷媒圧力の飽和温度に近い温度になる。
しかし、逆流してくるガス冷媒の量が多くなると一緒に流れる液冷媒と熱交換が十分行なわれずに、低段圧縮機部の吐出温度と気液分離器内冷媒圧力の飽和温度との間の温度を示すようになる。また、気液分離器の下部は気液分離器内冷媒圧力の飽和温度を示す場合が多いが、気液分離器は高圧側減圧装置からの気液混合冷媒の流れを減速して効率よく気液を分離するため、その内径が太くなっている。このため、耐圧性を確保するため肉厚が厚くなって、熱容量が大きくなり、速やかな熱的応答が期待できない。
一方、高圧側減圧装置と気液分離器とを結ぶ配管では、配管内部を高圧側減圧装置で気液分離器内の冷媒圧力まで絞られ、飽和温度になった気液混合の冷媒が流れ、正しい温度が得られる。また、上流配管は冷房時は気液混合冷媒を流し、暖房時は液冷媒を流すため、ガス冷媒を流す管より細くて済み、肉厚も薄くでき、従って、熱容量が小さいため、時間遅れの小さい温度情報を得ることができる。
これらのことから、本発明では、気液分離器内冷媒圧力の飽和温度を検出する場所として、高圧側減圧装置と気液分離器との間の上流配管に定めた。このように定めたことにより、逆流が起こったときでも継続して制御ができるようになる。これを詳細に説明すると、低段圧縮機部の吐出圧力が気液分離器内の圧力より、高くなっている場合なので、高段圧縮機部に吸込まれる冷媒の流量が増える。これに伴ない、高段圧縮機部から吐出される冷媒の流量も上がり、これを凝縮器に押し込む。
他方、気液分離器内の冷媒圧力も上がっているので、凝縮圧力との差が小さくなり、凝縮器出口に連なる高圧側減圧装置の開度は変わっていないので、高圧側減圧装置を通る冷媒の流量は減少する。凝縮器に流入する冷媒の流量が増えるにも係わらず、流出する流量が減るので、凝縮圧力が上がり、吐出圧力も上がる。吐出圧力が上がることにより、一端上がった高段圧縮機部から吐出される冷媒の流量が少し減るが、室内温度が上がる前の流量までは下がらず、若干それより上がった状態になる。
他方、凝縮圧力が上がることにより、一端下がった高圧側減圧装置を通過する冷媒の流量が少し増え、高段圧縮機部から吐出される冷媒の流量に見合った量の増加となる。これにより、気液分離器内の冷媒液面が上昇し、気液分離器内の冷媒圧力も上昇する。また、低段圧縮機部の吐出圧力が高くなるので、低段圧縮機部に吸込まれる冷媒の流量が少し減ずる。このため、一端上がった蒸発圧力はすこし減少するが、室内温度が上がる前の蒸発圧力までは下がらず、若干、上がった状態となる。
低圧側減圧装置を通る冷媒の流量は高圧側減圧装置から流入する冷媒の流量に導入配管を逆流してくるガス冷媒の流量を加えた流量である。上述した高圧側減圧装置からの冷媒流入量の増加に伴う気液分離器内冷媒圧力の上昇により、この流量を流しだすために気液分離器内の冷媒圧力は増加する。この圧力の増加により、低段圧縮機部に吸込まれる冷媒の流量に見合う冷媒の量が低圧側減圧装置を通過して蒸発器に流入する。
このような状態で運転されている冷凍サイクルに本発明を適用すると、高段圧縮機部の吸込み温度に相関する温度を検出するために中間圧冷媒導入口の近傍に設けた第2の検出部での検出温度は、逆流が起こっているため、低段圧縮機部の吐出温度に近い温度となる。他方、気液分離器内の冷媒圧力の飽和温度に相関する温度を検出するために、高圧側減圧装置と気液分離器の間の上流配管に取付けた第1の検出部での検出温度は高圧側減圧装置の出口温度、すなわち、気液分離器内の冷媒圧力の飽和温度に近い温度となる。
このように、第1の検出部での検出温度は逆流の影響をまったく受けず、正しく気液分離器内の冷媒圧力の飽和温度に近い温度になる。二つの検出部での温度差が圧縮機の回転数で応じて定めた第2の所定温度差である場合には、低圧側減圧装置の開度を一気に所定開度まで絞る。このように制御することにより、気液分離器内の冷媒圧力が上がると共に、蒸発器に流入する冷媒の流量が減じ、低段圧縮機部の吸込み圧力が下がる。このため、低段圧縮機部の吐出圧力も下がり、導入配管から気液分離器内の冷媒がインジェクションされる。
所定開度をあらかじめ実験により、周囲環境の温度に応じた適正な値に設定しておくことにより、逆流が起こって、冷凍サイクルが大きく乱れる前に、速やかに適正な冷凍サイクルへの制御が行われるので、冷凍サイクルの信頼性が向上する。第2の温度検出器の取付け位置は高段圧縮機部の吸込み温度と相関が取れている温度を示す部位で検出するのが良く、また、導入配管からの液冷媒の多寡を判定して、液圧縮を未然に防ぐことができる位置が良い。
このために、本発明ではこの両方を兼ね備える位置として、導入配管上で、中間圧冷媒導入口とインジェクション制御弁との間の位置に定めた。このような位置は、導入配管が圧縮機の接続配管と合流する中間圧冷媒導入口から、導入配管の管壁を伝わる低段圧縮機部の吐出温度の熱的な影響を受ける。インジェクション冷媒に含まれる冷媒の液滴が導入配管中を流れるときに導入配管の管壁に衝突して、管壁から熱を奪って蒸発する。このため、この熱的影響は緩和され、管壁の温度は飽和温度と低段圧縮機部の吐出温度の間の温度になる。
この中間圧冷媒導入口からの熱的影響のためインジェクション冷媒に含まれる液冷媒の量が少ないときには、中間圧冷媒導入口から導入配管を遠く遡った位置から、インジェクション冷媒の過熱が始まる。反対に、インジェクション冷媒に含まれる液冷媒の量が多いときには、中間圧冷媒導入口でもインジェクション冷媒に液冷媒が混じり、液圧縮の危険性が高まる。
これを利用し、導入配管の適切な位置に第2の温度検出器の取付け位置を定め、その位置に第2の温度検出器を取付け、検出した温度と気液分離器内の冷媒圧力の飽和温度と相関する第1の温度検出器で検出した温度との温度差が第1の所定値(例えば、2K(ケルビン))以下であった場合は、高段圧縮機部に液戻りする危険性が高まっていると判断する。この判断に基づき、低圧側減圧装置を一気に所定開度まで開け、気液分離器内の冷媒圧力を下げて、インジェクション量を減らし、液圧縮の危険性を即刻、回避できる。
更に、インジェクション冷媒に全く液冷媒が含まれないガスインジェクションになると、中間圧冷媒導入口からの低段圧縮機部の吐出温度の熱的影響を緩和する導入冷媒に含まれる液滴の導入配管への衝突による温度降下がなくなる。このため、第2の温度検出部の温度は導入配管内を流れるガス冷媒の温度より高い温度になり、更に、ガスインジェクションの量が少なくなってくると圧縮機の過熱の危険性が高まると同時に、第2の温度検出部の温度は更に高くなってくる。
更にまた、インジェクションの逆流が起こると、高圧側減圧装置からの気液混合冷媒は逆流して来た低段圧縮機部の吐出冷媒と混合する。このため、気液混合冷媒は逆流冷媒によって乾き度が上がった状態で低圧側減圧装置に流入し、気液分離器の機能が失われる。
更に、インジェクションによる冷却が行なわれない冷媒がそのまま高段圧縮機部に吸込まれるので、高段圧縮機部の冷媒吐出温度が上昇する。この場合に、周囲の温度条件が悪いと冷媒吐出温度が異常に高くなり、冷媒回路中の合成樹脂部品等の変形や変性を引き起こす恐れがある。このような逆流の状態が続くと冷凍サイクルの信頼性が損なわれるので、逆流が続かないようにする必要が有る。このような逆流の状態では、中間圧冷媒導入口近傍の温度はインジェクションによる冷却がなくなるので、気液分離器の温度よりかなり高い温度になる。
これを利用し、気液分離器内の冷媒圧力の飽和温度と相関する第1の温度検出器との温度差が第2の所定値(例えば、12K(ケルビン))以上であった場合は、インジェクションによる圧縮機の冷却の必要ありと判断する。この判断に基づき、低圧側減圧装置を一気に所定開度まで閉め、気液分離器内の冷媒圧力を上げて、インジェクション冷媒中の液滴の量を増加させると共に、インジェクション量も増加させ、圧縮機の過熱の危険性を即刻、回避できる。このようにすることにより、第2の温度検出器の検出温度は高段圧縮機部の吸込み温度と適切な相関を得ることができ、液圧縮の危険性を未然に防ぎ、かつ、インジェクションの逆流による圧縮機の過熱を防止できる。
一般に、冷媒配管の温度を検出する検出部は配管に円筒状のスリーブを蝋付けし、スリーブの内部にサーミスタの温度検出部をすっぽり嵌め込むように取付けている。これは、配管の温度を蝋付け部を介してスリーブ全体に伝え、そのスリーブにすっぽり嵌めこまれたサーミスタの温度検出部を周囲からの熱伝導で加熱または冷却することで、サーミスタの温度検出部の温度を配管の温度と素早く同一にし、誤差を小さくするためである。導入配管の先端と圧縮機の接続配管との蝋付けは、スリーブと導入配管との蝋付けより前でも後でも機能的には影響無い。
そこで、蝋付け時のバーナーの炎の方向や指し蝋の方向等を考慮して工程を組むことが行なわれている。しかし、後工程の作業の時に、前工程で行なった蝋付け部の蝋材が溶けてしまうと蝋付け部の信頼性(接合部の場合は強度、濡れ線距離、蝋材の肉盛。スリーブの場合は濡れ線距離、蝋材の肉盛)が確保できなくなる。これを確保するためには、前後の蝋付け個所間の距離をある程度離すことが必要になる。
発明者等の試行錯誤の末、応答の早さや蝋付け作業性、温度の誤差等を考慮し、全体として、インジェクション配管と接続配管との接合部から導入配管の管軸方向に測ったサーミスタ中心部までの間隔が15mm以上であれば、検出精度、応答早さを損なうことなく蝋付け可能であることが判った。
第2の温度検出器の設置場所が中間圧冷媒導入口から近すぎると低段圧縮機部の吐出温度の熱的影響が強すぎてインジェクション冷媒の湿り度の影響が殆ど無くなり、圧縮機への液戻りを事前に検出することが困難になる。また、第2の温度検出器の設置場所が中間圧冷媒導入口から離れ過ぎると低段圧縮機部の吐出温度の熱的影響が少なくなり、インジェクション冷媒そのものの温度を検出するようになり、高段圧縮機部の吸込み温度との相関が悪くなってしまう。
中間圧冷媒導入口からサーミスタの位置迄の管軸に沿った距離を変えて実験した結果、蝋付の製作上の制限である15mmを含めて、15mmから100mmであれば実用的な制御ができることが判った。
次に、インジェクション制御弁の開閉による冷凍サイクルの挙動について述べる。インジェクション制御弁を開くと気液分離器内の冷媒が液滴を含んで高段圧縮機部の吸込み口にインジェクションされる。このため高段圧縮機部の吸込温度は急激に下がって、吐出温度も急激に下がる。一方、気液分離器内ではインジェクション冷媒が圧縮機に流出することにより、気液分離器内の冷媒圧力が低下し、蒸発器に流出する冷媒の流量が減り、凝縮器から流入する冷媒の流量が増える。これにより、蒸発圧力が下がり、低段圧縮機部に吸込まれる冷媒の流量が減り、凝縮圧力も下がって、高段圧縮機部から吐出される冷媒の流量も増える。
従って、低段圧縮機部の吐出圧力が下がり、インジェクションされる冷媒の流量がまた増える。このように一端はインジェクション量が増え圧縮機の吐出温度が下がるが冷凍サイクルの制御のインターバルが来ると、吐出温度が下がっているため高圧側減圧装置が絞られる。更に、中間圧冷媒導入口近傍の温度と気液分離器の温度が接近しているため低圧側減圧装置が開いて、インジェクション制御弁を開いたことによる影響を打ち消す方向に冷凍サイクルが制御される。
インジェクション制御弁の開閉に伴い、導入配管に衝撃波が発生し、この衝撃波は気液分離器内の冷媒圧力と高段圧縮機部の吸込み圧力との差が大きいほど強い。この衝撃波が冷媒配管を伝わって、室内に異常音として聞こえてくる場合があり、このとき、使用者に無用の不審感、不安感を与える。これを防ぐため本発明では、インジェクション弁として電動膨張弁を採用し、開く時には電動膨張弁を徐々に開き、閉める時にはこれより早い速度で閉めるようにした。このようにすることにより、インジェクション弁を開く時の衝撃音が無くなり、閉めるときの衝撃音が緩和される。閉める時に徐々に閉めないのは、運転中にインジェクション弁を閉めるのは、圧縮機への液戻りの恐れのある時で有り、圧縮機の信頼性が失われ、冷凍サイクルが機能しなくなることを回避するために、緊急避難的にいち早く閉めるためである。
尚、実施例では冷房時と暖房時の二系列で正の1次相関で近似して第2の所定温度差を定めたが、本発明はこれに限定されるものではない。冷凍サイクルの用途に応じて冷房、暖房以外の機能毎に系列を定めても良く、また、同じ機能の中でより細分化した温度領域毎に系列を定めても同様の効果を得ることができる。また、冷凍サイクルの諸元の違いにより1次相関以外の相関でも良いことは言うまでも無い。尚、実施例では冷暖房両用の空気調和機の場合について説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、冷房専用または暖房専用の空気調和機でも同様の効果を得ることができる。
以上説明したように本実施例によれば、高段圧縮機部及び低段圧縮機部を有する二段圧縮機と、高圧側熱交換器と、気液分離器と、低圧側熱交換器と、前記高圧側熱交換器と前記気液分離器との間に設けた上流側減圧装置と、前記気液分離器と前記低圧側熱交換器との間に設けた下流側減圧装置と、前記気液分離器のガス出口から中間圧冷媒を前記高段圧縮機部の吸込側に導く導入配管と、前記導入配管の途中に設けたインジェクション制御弁とを備えた冷凍装置において、前記高段圧縮機部の吸込口の冷媒過熱度に応じて変化する温度差の検出手段と、前記温度差検出手段で検出した温度差に基づいて前記上流側減圧装置又は/及び前記下流側減圧装置の開度を、変化量を制限しつつ制御する開度制限機能を有する制御装置とを設ける。
これにより、1回の制御での減圧装置の開度の変化が制限された小さな量であるため、冷凍サイクル全体の状態変化が小さく、気液分離器の圧力もわずかに変化する。しかし、元々、気液分離器の圧力と低段圧縮機部の吐出圧力差は小さく、このわずかな圧力差の変化でインジェクション量は確実に変化する。インジェクション導入配管と低段圧縮機部の吐出配管の中間圧冷媒導入口の温度はこのインジェクション量の変化に敏感に反応する。このため、この部の温度は冷凍サイクル全体の変化に先行して変化する。この先行して変化する温度を捕え、更に、減圧装置の開度を制御する。
このため、大きなオーバーシュートも、ハンチングも起こすことなく、冷凍サイクルを速やかに安定させることができ、制御機器の動作回数が減って信頼性が向上すると共に、使用者に無用の不安を与えることも無い冷凍装置を得ることができる。また、あたかも高段圧縮機部の吸込口の冷媒過熱度制御を行っているかのごとく制御するので安定性も良く、信頼性のある冷凍サイクルを得ることができる。
また、前記制御装置を、前記温度差の検出手段で検出した温度差が液圧縮を回避するために予め定めた第1の所定温度差以下、または、圧縮機過熱を回避するために予め定めた第2の所定温度差以上である場合に、前記開度制限機能の一部又は全部を解除する開度制限解除機能を有する制御装置とする。
導入配管から高段圧縮機部吸込み口にインジェクションされる冷媒中に含まれる液冷媒の量が多すぎると液圧縮の恐れが出てくる。この場合には、中間圧冷媒導入口近傍の温度が下がり、気液分離器の温度との差が小さくなる。これを利用して、この温度差が小さくなったら、液圧縮の恐れが強まっていると判断し、急速に低圧側減圧装置を所定開度迄開く。
また、気液分離器の圧力が低段圧縮機部の吐出圧力より低くなると低段圧縮機部から吐出された冷媒が導入配管を逆流して気液分離器に侵入することも有る。この逆流が起きると、高圧側減圧装置からの気液混合冷媒は逆流して来た低段圧縮機部の吐出冷媒と混合する。このため、気液混合冷媒は逆流冷媒によって乾き度が上がった状態で低圧側減圧装置に流入し、気液分離器の機能が失われる。
更に、インジェクションによる冷却が行なわれない冷媒がそのまま高段圧縮機部に吸込まれるので、高段圧縮機部の冷媒吐出温度が上昇する。この場合に、周囲の温度条件が悪いと冷媒吐出温度が異常に高くなり、冷媒回路中の合成樹脂部品等の変形や変性を引き起こす恐れがある。このような逆流の状態が続くと冷凍サイクルの信頼性が損なわれるので、逆流が続かないようにする必要が有る。このような逆流の状態では、中間圧冷媒導入口近傍の温度はインジェクションによる冷却がなくなるので、気液分離器の温度よりかなり高い温度になる。
これを利用し、この温度差が大きくなり過ぎた場合は、逆流の恐れが強まっていると判断し、急速に低圧側減圧装置を目標開度迄閉じる。このようにして、液圧縮と逆流の危険性を未然に防ぐことができるので、液圧縮と導入配管からのインジェクションの逆流が防止され冷凍サイクルの信頼性が向上する冷凍装置を得ることができる。
また、前記制御装置を、前記第2の所定温度差を圧縮機の回転数に応じて定める演算手段を有する制御装置とする。
圧縮機の回転数が上がると低段圧縮機部の吐出温度も上がり、その影響を受けて、正常運転時の適正な過熱度も上がる。このため、高速の高負荷運転の時でも低速の低負荷運転の時でも確実に逆流の防止ができると共に、逆流の恐れの有る時のみ、低圧側減圧装置の急速な制御を行なう。通常時は、できるだけ緩やかな変化での運転を継続して、冷凍サイクルの急変を避け、機器に不要なストレスを与えないので、冷凍サイクルの信頼性の向上が図れ、同時に冷凍サイクルの急変による使用者の無用な不安感を避けることができる。冷凍装置を得ることができる。
また、前記第2の所定温度差が冷凍サイクルのモード毎に定めた圧縮機の回転数と正の相関を有する値とする。
熱源側熱交換器、利用側熱交換器の温度条件が大きく変わる冷房時、暖房時ともに、高負荷運転の時でも低負荷運転の時でも確実に逆流の防止ができると共に、逆流の恐れの有る時のみ、低圧側減圧装置の急速な制御を行なう。通常時は、できるだけ緩やかな変化での運転を継続して、冷凍サイクルの急変を避け、機器に不要なストレスを与えないので、冷房時も、暖房時も冷凍サイクルの信頼性の向上が図れ、同時に冷凍サイクルの急変による使用者の無用な不安感を避けることができる冷凍装置を得ることができる。
また、前記温度差の検出手段が前記高段圧縮機部の吸込冷媒の圧力に相当する飽和温度に相関する温度を検出する第1の温度検出器と前記吸込冷媒の温度に相関する温度を検出する第2の温度検出器とを有し、前記第1の温度検出器の取付位置を前記上流側減圧装置と、下流側減圧装置の間に設ける。
上流側減圧装置と下流側減圧装置の間の圧力は気液分離器の圧力と等しく、気液分離器の圧力は高段圧縮機部の吸込圧力に近いので、気液分離器の圧力の飽和温度に近い温度を検出することで、高段圧縮機部の吸込圧力の飽和温度に相関する温度とすることができる。これにより、低圧側減圧装置の制御が的確になるので、冷凍サイクルが安定して運転できるようにすると共に、検出場所の選択の自由度が増し、冷凍サイクルの要求に最適な場所を選ぶことができる冷凍装置を得ることができる。
また、前記第1の温度検出器の取付位置を前記上流側減圧装置と前記気液分離器との間に設けることにより、第1の温度検出器での検出温度は逆流の影響をまったく受けず、正しく気液分離器内の冷媒圧力の飽和温度に近い温度になるので、逆流が起こって、冷凍サイクルが大きく乱れる前に、速やかに適正な冷凍サイクルへの制御が行われるので、冷凍サイクルの信頼性が向上した冷凍装置を備えた空気調和機を得ることができる。
また、低段吐出部から高段吸込部に至る冷媒通路上に耐圧容器外に露出した接続配管を有する二段圧縮機と、前記接続配管に合流する前記導入配管とを備え、前記第2の温度検出器の取付位置を前記導入配管上で前記中間圧冷媒導入口と前記インジェクション制御弁の間に設ける。
これにより、制御の結果を敏感に反映する部位の温度を検出して低圧側減圧装置の制御をするので、制御の結果が速やかに表れる。従って、従来のように熱容量の大きい部位の温度の変化で制御する場合に較べて時間的な遅れが小さくなる。このため、時間的な遅れが大きい時に発生しやすい過大なオーバーシュートやハンチングを防ぐことができる。
また、第2の温度検出器は高段圧縮機部の吸込み温度と適切な相関を得ることができる。第1の温度検出器との温度差が第1の所定値以下であった場合は、高段圧縮機部に液戻りする危険性が高まっていると判断し、低圧側減圧装置を一気に所定開度まで開け、気液分離器内の冷媒圧力を下げて、インジェクション量を減らす。更に、第1の温度検出器との温度差が第2の所定値以上であった場合は、インジェクションによる圧縮機の冷却の必要ありと判断し、低圧側減圧装置を一気に所定開度まで閉め、気液分離器内の冷媒圧力を上げて、インジェクション冷媒中の液滴の量を増加させると共に、インジェクション量も増加させるので、液圧縮の危険性を未然に防ぎ、かつ、インジェクションの逆流による圧縮機の過熱を防止できる冷凍装置を得ることができる。
また、前記第2の温度検出器の取付位置を前記導入配管上で前記中間圧冷媒導入口から15mm以上離間した位置とすることにより、導入配管にサーミスタ取付用のスリーブを蝋付でき、高段圧縮機部の吸込み温度に相関する温度を十分な検出精度、応答早さで検出できる。また、前記第2の温度検出器の取付位置を前記導入配管上で前記中間圧冷媒導入口から15〜100mmの位置とすることにより、低段圧縮機部の吐出温度の熱的影響とインジェクション冷媒の湿り度の影響の両方の影響をそれぞれ適度に受けて、第2の温度検出器は高段圧縮機部の吸込み温度に相関する温度を検出できるので、液圧縮の危険性を未然に防ぎ、かつ、インジェクションの逆流による圧縮機の過熱を防止できる冷凍装置を得ることができる。
また、前記インジェクション制御弁として電動膨張弁を使用し、前記インジェクション制御弁の開度を増すときは複数回に分けて開度を増すことにより、インジェクション弁を開く時の冷凍サイクルの急変による衝撃音が無くなり、閉めるときの衝撃音が緩和される。また、圧縮機への液戻りの恐れのある時、いち早くインジェクション弁を閉めるので、インジェクション弁の開閉に伴う衝撃音を低下させ、使用者に無用の不審や、不安が起きるのを防止すると共に、圧縮機の信頼性を確保できる冷凍装置を得ることができる。
1…二段圧縮機、1−1…低段圧縮機部、1−2…高段圧縮機部、1−3…密閉容器、1−4…接続配管(中間圧力空間)、1a…低段圧縮機部の吸込部、1b…低段圧縮機部の吐出部、1c…高段圧縮機部の吸込部、1d…高段圧縮機部の吐出部、1j…中間圧冷媒導入口、2…四方弁、3…室外側熱交換器、3e…冷房時凝縮器出口、4…第1の減圧装置(膨張弁)、5…気液分離器、5f…冷房時気液分離器入口、5g…気液分離器ガス出口、5h…冷房時気液分離器液出口、6…第2の減圧装置(膨張弁)、7…室内側熱交換器、7i…冷房時蒸発器入口、8…導入配管(インジェクション配管)、9…インジェクション制御弁(膨張弁)、10…制御装置、11…室外送風機、12…室外送風機モーター、13…室内送風機、14…室内送風機モーター、20…高段吐出温度検出器(第3の温度検出器)、21…室内温度検出器(第4の温度検出器)、22…気液分離器ガス出口温度検出器(第1の温度検出器)、23…室外温度検出器(第5の温度検出器)、24…中間圧冷媒導入口温度検出器(第2の温度検出器)、a…低段圧縮機部の吸込冷媒、b…低段圧縮機部の吐出冷媒、c…高段圧縮機部の吸込冷媒、d…高段圧縮機部の吐出冷媒、e/(e)…暖房/冷房時室外側熱交換器と第1の減圧装置との間の冷媒、f/(f)…暖房/冷房時第1の減圧装置と気液分離器との間の冷媒、g…気液分離器のガス出口冷媒、h/(h)…暖房/冷房時気液分離器と第2の減圧装置との間の冷媒、i/(i)…暖房/冷房時第2の減圧装置と室内側熱交換器との間の冷媒、Ps…低段吸込圧力、Pd…高段吐出圧力、Pm…中間圧力(気液分離器の圧力)、Pdl…低段吐出圧力、Psh…高段吸込圧力。