以下、図面に基づいて、本発明にかかる冷凍装置の実施形態について説明する。
(1)空気調和装置の構成
図1は、本発明にかかる冷凍装置の一実施形態としての空気調和装置1の概略構成図である。空気調和装置1は、冷房運転が可能となるように構成された冷媒回路10を有し、超臨界域で作動する冷媒(ここでは、二酸化炭素)を使用して二段圧縮式冷凍サイクルを行う装置である。
空気調和装置1の冷媒回路10は、主として、圧縮機構2と、熱源側熱交換器4と、膨張機構5、第1後段側インジェクション管19と、エコノマイザ熱交換器20と、利用側熱交換器6と、過冷却熱交換器96とを有している。
圧縮機構2は、本実施形態において、2つの圧縮要素で冷媒を二段圧縮する圧縮機21から構成されている。圧縮機21は、ケーシング21a内に、圧縮機駆動モータ21bと、駆動軸21cと、圧縮要素2c、2dとが収容された密閉式構造となっている。圧縮機駆動モータ21bは、駆動軸21cに連結されている。そして、この駆動軸21cは、2つの圧縮要素2c、2dに連結されている。すなわち、圧縮機21は、2つの圧縮要素2c、2dが単一の駆動軸21cに連結されており、2つの圧縮要素2c、2dがともに圧縮機駆動モータ21bによって回転駆動される、いわゆる一軸二段圧縮構造となっている。圧縮要素2c、2dは、本実施形態において、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素である。そして、圧縮機21は、吸入管2aから冷媒を吸入し、この吸入された冷媒を圧縮要素2cによって圧縮した後に中間冷媒管8に吐出し、中間冷媒管8に吐出された冷媒を圧縮要素2dに吸入させて冷媒をさらに圧縮した後に吐出管2bに吐出するように構成されている。ここで、中間冷媒管8は、圧縮要素2cの前段側に接続された圧縮要素2cから吐出された冷凍サイクルにおける中間圧の冷媒を、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入させるための冷媒管である。また、吐出管2bは、圧縮機構2から吐出された冷媒を放熱器としての熱源側熱交換器4に送るための冷媒管であり、吐出管2bには、油分離機構41と逆止機構42とが設けられている。油分離機構41は、圧縮機構2から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離して圧縮機構2の吸入側へ戻す機構であり、主として、圧縮機構2から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離する油分離器41aと、油分離器41aに接続されており冷媒から分離された冷凍機油を圧縮機構2の吸入管2aに戻す油戻し管41bとを有している。油戻し管41bには、油戻し管41bを流れる冷凍機油を減圧する減圧機構41cが設けられている。減圧機構41cは、本実施形態において、キャピラリチューブが使用されている。逆止機構42は、圧縮機構2の吐出側から放熱器としての熱源側熱交換器4への冷媒の流れを許容し、かつ、放熱器としての熱源側熱交換器4から圧縮機構2の吐出側への冷媒の流れを遮断するための機構であり、本実施形態において、逆止弁が使用されている。
このように、圧縮機構2は、本実施形態において、2つの圧縮要素2c、2dを有しており、これらの圧縮要素2c、2dのうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成されている。
熱源側熱交換器4は、冷媒の放熱器として機能する熱交換器である。熱源側熱交換器4は、その一端が圧縮機構2に接続されており、その他端がエコノマイザ熱交換器20及び過冷却熱交換器96を介して膨張機構5に接続されている。尚、ここでは図示しないが、熱源側熱交換器4には、熱源側熱交換器4を流れる冷媒と熱交換を行う冷却源として水や空気が供給されるようになっている。
膨張機構5は、放熱器としての熱源側熱交換器4から蒸発器としての利用側熱交換器6に送られる冷媒を減圧する機構であり、本実施形態において、膨張弁の一種である電動膨張弁が使用されている。膨張機構5は、その一端が過冷却熱交換器96及びエコノマイザ熱交換器20を介して熱源側熱交換器4に接続され、その他端が利用側熱交換器6に接続されている。また、本実施形態において、膨張機構5は、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒を蒸発器としての利用側熱交換器6に送る前に冷凍サイクルにおける低圧付近まで減圧する。
利用側熱交換器6は、冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。利用側熱交換器6は、その一端が膨張機構5に接続されており、その他端が圧縮機構2に接続されている。尚、ここでは図示しないが、利用側熱交換器6には、利用側熱交換器6を流れる冷媒と熱交換を行う加熱源としての水や空気が供給されるようになっている。
第1後段側インジェクション管19は、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒を分岐して後段側の圧縮要素2dに戻す冷媒管である。本実施形態において、第1後段側インジェクション管19は、放熱器としての熱源側熱交換器4から深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96に送られる冷媒を分岐するように設けられている。より具体的には、第1後段側インジェクション管19は、エコノマイザ熱交換器20の上流側の位置(すなわち、放熱器としての熱源側熱交換器4とエコノマイザ熱交換器20との間)から冷媒を分岐して中間冷媒管8に戻すように設けられている。この第1後段側インジェクション管19には、開度制御が可能な第1後段側インジェクション弁19aが設けられている。第1後段側インジェクション弁19aは、本実施形態において、電動膨張弁である。
エコノマイザ熱交換器20は、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒と第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒(より具体的には、第1後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後の冷媒)との熱交換を行う熱交換器である。本実施形態において、エコノマイザ熱交換器20は、過冷却熱交換器96の上流側の位置(すなわち、第1後段側インジェクション管19が分岐される位置と過冷却熱交換器96との間)を流れる冷媒と第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒との熱交換を行うように設けられており、また、両冷媒が対向するように流れる流路を有している。また、本実施形態において、エコノマイザ熱交換器20は、第1後段側インジェクション管19が分岐される位置よりも下流側に設けられている。このため、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された冷媒は、エコノマイザ熱交換器20を通過する前に第1後段側インジェクション管19に分岐され、エコノマイザ熱交換器20において、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行うことになる。
過冷却熱交換器96は、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒を冷却する深冷熱交換器として機能する熱交換器である。より具体的には、過冷却熱交換器96は、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒と放熱器としての熱源側熱交換器4から蒸発器としての利用側熱交換器6に送られる冷媒を分岐して圧縮機構2の吸入側(すなわち、蒸発器としての利用側熱交換器6と圧縮機構2との間の吸入管2a)に戻す第1吸入戻し管95を流れる冷媒との熱交換を行う熱交換器である。本実施形態において、過冷却熱交換器96は、エコノマイザ熱交換器20の下流側の位置(すなわち、エコノマイザ熱交換器20と膨張機構5との間)を流れる冷媒と第1吸入戻し管95を流れる冷媒との熱交換を行うように設けられており、また、両冷媒が対向するように流れる流路を有している。ここで、第1吸入戻し管95は、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒を分岐して圧縮機構2の吸入側(すなわち、吸入管2a)に戻す冷媒管である。本実施形態において、第1吸入戻し管95は、エコノマイザ熱交換器20から深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96に送られる冷媒を分岐するように設けられている。この第1吸入戻し管95には、開度制御が可能な第1吸入戻し弁95aが設けられており、過冷却熱交換器96において、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒と第1吸入戻し弁95aにおいて低圧付近まで減圧された後の第1吸入戻し管95を流れる冷媒との熱交換を行うようになっている。第1吸入戻し弁95aは、本実施形態において、電動膨張弁である。
さらに、空気調和装置1には、各種のセンサが設けられている。具体的には、中間冷媒管8又は圧縮機構2には、中間冷媒管8を流れる冷媒の圧力を検出する中間圧力センサ54が設けられている。吸入管2a又は圧縮機構2には、圧縮機構2の吸入側を流れる冷媒の圧力を検出する吸入圧力センサ60が設けられている。エコノマイザ熱交換器20の第1後段側インジェクション管19側の出口には、エコノマイザ熱交換器20の第1後段側インジェクション管19側の出口における冷媒の温度を検出するエコノマイザ出口温度センサ55が設けられている。深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96の第1吸入戻し管95側の出口には、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96の第1吸入戻し管95側の出口における冷媒の温度を検出する過冷却熱交出口温度センサ59が設けられている。また、空気調和装置1は、ここでは図示しないが、圧縮機構2、膨張機構5、第1後段側インジェクション弁19a、第1吸入戻し弁95a等の空気調和装置1を構成する各部の動作を制御する制御部を有している。
(2)空気調和装置の動作
次に、本実施形態の空気調和装置1の動作について、図1〜図3を用いて説明する。ここで、図2は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図であり、図3は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された温度−エントロピ線図である。尚、以下の冷房運転における運転制御は、上述の制御部(図示せず)によって行われる。また、以下の説明において、「高圧」とは、冷凍サイクルにおける高圧(すなわち、図2、図3の点D、D’、E、H、Rにおける圧力)を意味し、「低圧」とは、冷凍サイクルにおける低圧(すなわち、図2、図3の点A、F、F’、S、Uにおける圧力)を意味し、「中間圧」とは、冷凍サイクルにおける中間圧(すなわち、図2、図3の点B1、G、J、Kにおける圧力)を意味している。
冷房運転時は、膨張機構5は、開度調節される。また、第1後段側インジェクション弁19aも、開度調節される。より具体的には、本実施形態において、第1後段側インジェクション弁19aは、エコノマイザ熱交換器20の第1後段側インジェクション管19側の出口における冷媒の過熱度が目標値になるように開度調節される、いわゆる過熱度制御がなされるようになっている。本実施形態において、エコノマイザ熱交換器20の第1後段側インジェクション管19側の出口における冷媒の過熱度は、中間圧力センサ54により検出される中間圧を飽和温度に換算し、エコノマイザ出口温度センサ55により検出される冷媒温度からこの冷媒の飽和温度値を差し引くことによって得られる。尚、本実施形態では採用していないが、エコノマイザ熱交換器20の第1後段側インジェクション管19側の入口に温度センサを設けて、この温度センサにより検出される冷媒温度をエコノマイザ出口温度センサ55により検出される冷媒温度から差し引くことによって、エコノマイザ熱交換器20の第1後段側インジェクション管19側の出口における冷媒の過熱度を得るようにしてもよい。また、第1後段側インジェクション弁19aの開度調節は、過熱度制御に限られるものではなく、例えば、冷媒回路10における冷媒循環量等に応じて所定開度だけ開けるようにするものであってもよい。さらに、第1吸入戻し弁95aも、開度調節される。より具体的には、本実施形態において、第1吸入戻し弁95aは、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96の第1吸入戻し管95側の出口における冷媒の過熱度が目標値になるように開度調節される、いわゆる過熱度制御がなされるようになっている。本実施形態において、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96の第1吸入戻し管95側の出口における冷媒の過熱度は、吸入圧力センサ60により検出される低圧を飽和温度に換算し、過冷却熱交出口温度センサ59により検出される冷媒温度からこの冷媒の飽和温度値を差し引くことによって得られる。尚、本実施形態では採用していないが、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96の第1吸入戻し管95側の入口に温度センサを設けて、この温度センサにより検出される冷媒温度を過冷却熱交出口温度センサ59により検出される冷媒温度から差し引くことによって、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96の第1吸入戻し管95側の出口における冷媒の過熱度を得るようにしてもよい。また、第1吸入戻し弁95aの開度調節は、過熱度制御に限られるものではなく、例えば、冷媒回路10における冷媒循環量等に応じて所定開度だけ開けるようにするものであってもよい。
この冷媒回路10の状態において、圧縮機構2を駆動すると、低圧の冷媒(図1〜図3の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧力まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図1〜図3の点B1参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、第1後段側インジェクション管19から後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図1〜図3の点K参照)と合流することで冷却される(図1〜図3の点G参照)。次に、第1後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流した中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図1〜図3の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図2に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器4に送られて、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図1〜図3の点E参照)。そして、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒は、その一部が第1後段側インジェクション管19に分岐される。そして、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、第1後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後に、エコノマイザ熱交換器20に送られる(図1〜3の点J参照)。また、第1後段側インジェクション管19に分岐された後の冷媒は、エコノマイザ熱交換器20に流入し、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図1〜3の点H参照)。一方、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図1〜図3の点K参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒は、その一部が第1吸入戻し管95に分岐される。そして、第1吸入戻し管95を流れる冷媒は、第1吸入戻し弁95aにおいて低圧付近まで減圧された後に、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96に送られる(図1〜3の点S参照)。また、第1吸入戻し管95に分岐された後の冷媒は、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96に流入し、第1吸入戻し管95を流れる冷媒と熱交換を行ってさらに冷却される(図1〜3の点R参照)。一方、第1吸入戻し管95を流れる冷媒は、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図1〜図3の点U参照)、圧縮機構2の吸入側(ここでは、吸入管2a)を流れる冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された後にさらに過冷却熱交換器96において冷却された高圧の冷媒は、膨張機構5によって減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒となり、冷媒の蒸発器として機能する利用側熱交換器6に送られる(図1〜図3の点F参照)。そして、蒸発器としての利用側熱交換器6に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図1〜図3の点A参照)。そして、この蒸発器としての利用側熱交換器6において加熱され蒸発した低圧の冷媒は、圧縮機構2に吸入される。このようにして、冷房運転が行われる。
このように、本実施形態の空気調和装置1では、超臨界域で作動する冷媒(ここでは、二酸化炭素)を使用して二段圧縮式冷凍サイクルを行うことを考慮して、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを採用するようにしている。このため、気液分離器による中間圧インジェクションを採用する場合とは異なり、気液分離器における冷媒の圧力である気液分離器圧力が臨界圧力よりも高い圧力まで上昇して、気液分離器内の冷媒をガス冷媒と液冷媒に分離することが困難な状況になるおそれを考慮する必要がなくなるため、冷凍サイクルの中間圧(ここでは、中間冷媒管8における圧力)が臨界圧力付近まで上昇するような場合であっても、外部への放熱を行うことなく、後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の温度をさらに低く抑えることができる(図3の点B1、G参照)。これにより、圧縮機構2から吐出される冷媒の温度が低く抑えられ(図3の点D、D’参照)、第1後段側インジェクション管19を設けていない場合に比べて、図3の点B1、D’、D、Gを結ぶことによって囲まれる面積に相当する分の放熱ロスを小さくできることから、圧縮機構2の消費動力を減らし、運転効率を向上させることができるようになっている。
しかも、本実施形態の空気調和装置1では、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うにあたり、二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合における冷媒の温度変化に対するエントロピ変化が大きいという特性を考慮して、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒を冷却する深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けるようにすることで、冷凍サイクルにおける低圧付近まで冷媒を減圧する膨張機構5による膨張ロス(冷凍サイクルにおける低圧付近まで冷媒を減圧する膨張機構5による減圧操作の前後で冷媒のエントロピが増加することに起因する熱ロスであり、以下、「膨張弁による膨張ロス」とする)を減らし、冷凍サイクルの成績係数や運転効率をさらに向上させることができるようになっている。
このことについて、図1〜図4を用いて詳細に説明する。ここで、図4は、R410Aを使用した冷凍サイクルが図示された圧力−エントロピ線図である。尚、図4では、図3に図示されている点Y、Y’を図示すると、点F、F’に重なった状態で図示されることになるため、ここでは図示を省略している。
まず、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションでは、第1後段側インジェクション管19によって、第1後段側インジェクション管19を流れる冷凍サイクルにおける高圧の冷媒を後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の圧力である冷凍サイクルにおける中間圧付近まで減圧し、この中間圧付近まで減圧された冷媒によって、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒をエコノマイザ熱交換器20において冷却するものであり、このエコノマイザ熱交換器20によって冷却された冷媒は、膨張機構5によって、冷凍サイクルにおける低圧付近まで減圧されることになる。そして、この膨張機構5による減圧操作は、等エンタルピ膨張(冷媒のエンタルピが一定のままで圧力が低下する膨張、すなわち、図2、3の点Rから点Fへの変化)であるため、冷凍サイクルにおける理想的な減圧操作である等エントロピ膨張(冷媒のエントロピが一定のままで圧力が低下する膨張、すなわち、図3の点Rから点Yへの変化)とは異なり、膨張弁(ここでは、膨張機構5)による膨張ロスが生じることになる。そして、膨張弁による膨張ロスは、圧縮機構2における消費動力を増加させることにつながり、これにより、冷凍サイクルの成績係数や運転効率が低下することになるため、膨張弁による膨張ロスを極力減らすことが望ましい。
ここで、本実施形態における膨張弁による膨張ロスを含む4つの場合における膨張弁による膨張ロスを求めると、以下のようになる。尚、以下の膨張弁による膨張ロスを求めるにあたり、冷媒として二酸化炭素を使用する場合(図3参照)及びR410Aを使用する場合(図4参照)のいずれにおいても、蒸発器としての利用側熱交換器6における蒸発温度が0℃(図3、4の点F参照)及び圧縮機構2の吸入側における冷媒の温度が10℃(図3、4の点A参照)となる運転条件において、放熱器としての熱源側熱交換器4の出口における高圧の冷媒の温度を40℃(図3、4の点E参照)とし、エコノマイザ熱交換器20による冷却温度幅を5℃分(図3、4の点Eから点Hへの変化)とし、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96による冷却温度幅を5℃分(図3、4の点Hから点Rへの変化)とし、第1吸入戻し管95から圧縮機構2の吸入側に戻る冷媒の温度を蒸発器としての利用側熱交換器6の出口における温度と同じ(図3、4の点A参照)とした場合を想定するものとする。
このような前提において、本実施形態における膨張弁による膨張ロスは、図3に示されるように、点R(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96によって冷却された後の高圧の冷媒を示す)と、点F(膨張機構5によって、エコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96によって冷却された後の高圧の冷媒を等エンタルピ膨張させた後の低圧の冷媒を示す)と、点Y(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96によって冷却された後の高圧の冷媒を等エントロピ膨張させたものと仮定した場合の低圧の冷媒を示す)とを結ぶことによって囲まれる略直角三角形状の部分の面積に相当し、その値は1.33kJ/kg℃となる。
また、本実施形態において、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けなかった場合(すなわち、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19のみを設けた場合)には、図2、3に示されるように、冷媒回路全体としては、点A→点B1→点D→点E→点H→点F’→点Aの順で変化する深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96による冷却を伴わない冷凍サイクルが行われることになり、この場合における膨張弁による膨張ロスは、図3に示されるように、点H(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を示す)と、点F’(膨張機構5によって、エコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を等エンタルピ膨張させた後の低圧の冷媒を示す)と、点Y’(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を等エントロピ膨張させたものと仮定した場合の低圧の冷媒を示す)とを結ぶことによって囲まれる略直角三角形状の部分の面積に相当し、その値は1.75kJ/kg℃となる。
また、冷媒としてR410Aを使用した場合において、本実施形態と同様、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けた場合における膨張弁による膨張ロスは、図4に示されるように、点R(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96によって冷却された後の高圧の冷媒を示す)と、点F(膨張機構5によって、エコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96によって冷却された後の高圧の冷媒を等エンタルピ膨張させた後の低圧の冷媒を示す)と、点Y(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96によって冷却された後の高圧の冷媒を等エントロピ膨張させたものと仮定した場合の低圧の冷媒を示す)とを結ぶことによって囲まれる略直角三角形状の部分の面積に相当し、その値は0.39kJ/kg℃となる。
さらに、冷媒としてR410Aを使用した場合において、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けなかった場合(すなわち、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19のみを設けた場合)には、図4に示されるように、冷媒回路全体としては、点A→点B1→点D→点E→点H→点F’→点Aの順で変化する深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96による冷却を伴わない冷凍サイクルが行われることになり、この場合における膨張弁による膨張ロスは、図4に示されるように、点H(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を示す)と、点F’(膨張機構5によって、エコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を等エンタルピ膨張させた後の低圧の冷媒を示す)と、点Y’(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を等エントロピ膨張させたものと仮定した場合の低圧の冷媒を示す)とを結ぶことによって囲まれる略直角三角形状の部分の面積に相当し、その値は0.44kJ/kg℃となる。
そして、これらの膨張弁による膨張ロスの値から、冷媒として二酸化炭素を使用した場合においては、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けなかった場合(すなわち、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19のみを設けた場合)に比べて、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けた場合のほうが、膨張弁による膨張ロスが小さく、その差は、0.42kJ/kg℃であり、また、冷媒としてR410Aを使用した場合においても、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けなかった場合(すなわち、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19のみを設けた場合)に比べて、エコノマイザ熱交換器20の下流に深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けた場合のほうが、膨張弁による膨張ロスが小さいが、その差は、0.05kJ/kg℃であることがわかる。そして、冷媒として二酸化炭素を使用した場合には、冷媒としてR410Aを使用した場合に比べて、膨張弁による膨張ロスの値自体が4倍程度大きく、また、冷媒として二酸化炭素を使用した場合、及び、R410Aを使用した場合のいずれにおいても、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けなかった場合(すなわち、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19のみを設けた場合)よりもエコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けた場合のほうが膨張弁による膨張ロスは低減されるが、その膨張弁による膨張ロスの低減の程度は、R410Aを使用した場合に比べて冷媒として二酸化炭素を使用した場合のほうが8倍程度大きいことがわかる。
そして、このことは、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けなかった場合(すなわち、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19のみを設けた場合)におけるエコノマイザ熱交換器20によって冷却された後に膨張機構5に送られる冷媒は、第1後段側インジェクション弁19aによって中間圧付近まで減圧された冷媒の温度に応じた温度レベルまで冷却されているに過ぎず、冷却の程度が十分ではないことに起因するものであり、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けるかどうかが膨張弁(ここでは、膨張機構5)による膨張ロスに影響を及ぼすこと、そして、二酸化炭素のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合(図3参照)には、R410Aのような臨界圧力よりも十分に低い圧力域で作動する冷媒を使用する場合(図4参照)に比べて、冷媒の温度変化に対するエントロピ変化が大きいという特性を有していることに起因するものであり、冷媒としてR22やR410A等のような臨界圧力よりも十分に低い圧力域で作動する冷媒を使用する場合には、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けるかどうかが膨張弁による膨張ロスに及ぼす影響は小さいが、冷媒として二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合には、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けるかどうかが膨張弁による膨張ロスに及ぼす影響は大きく、冷凍サイクルの成績係数や運転効率に対する影響が大きいことを意味している。すなわち、二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用して二段圧縮式冷凍サイクルを行う空気調和装置1において、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うにあたり、膨張弁(ここでは、膨張機構5)による膨張ロスを減らすことは、冷凍サイクルの成績係数や運転効率の向上という観点で非常に重要であることがわかる。
そこで、本実施形態の空気調和装置1では、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うにあたり、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒の温度が高いという問題、及び、二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合における冷媒の温度変化に対するエントロピ変化が大きいという特性(図3参照)を考慮して、上述のように、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒を冷却する深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けるようにしている。このため、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒がエコノマイザ熱交換器20によって冷却された後にさらに深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96によって冷却されることになるため、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けない場合に比べて、膨張機構5によって減圧される冷媒の温度が低下し、その結果、膨張弁(ここでは、膨張機構5)による膨張ロスが大幅に低減されることになる。尚、R22やR410A等のような臨界圧力よりも十分に低い圧力域で作動する冷媒を使用する場合(図4参照)においても、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒を冷却する深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けるようにすれば、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けない場合に比べて、膨張弁による膨張ロスは低減されるものの、二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合(図3参照)に比べて、冷媒の温度変化に対するエントロピ変化が非常に小さいことから、膨張弁による膨張ロスが低減される程度が非常に小さく、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96の追加によるコストアップというデメリットのほうが大きいと考えられる。
また、本実施形態のように、深冷熱交換器として、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒と、放熱器としての熱源側熱交換器4から蒸発器としての利用側熱交換器6に送られる冷媒を分岐して圧縮機構2の吸入側に戻す第1吸入戻し管95を流れる冷媒との熱交換を行う過冷却熱交換器96を使用する場合には、冷凍サイクルにおいて最も温度が低くなる低圧の冷媒(図2、図3の点S、点U参照)を冷却源として使用することになるため、外部の冷却源を必要とせず、しかも、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒を、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒のような比較的温度が高い冷媒によって冷却した後に、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒よりも温度が低い第1吸入戻し管95を流れる冷媒によってさらに冷却することができることから、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒を冷却源の温度レベルに応じて効率的に冷却することができ、十分な深冷効果を得ることができる。しかも、本実施形態では、過冷却熱交換器96として、放熱器としての熱源側熱交換器4(より具体的には、エコノマイザ熱交換器20)から膨張機構5に送られる冷媒と圧縮機構2の吸入側を流れる冷媒とが対向するように流れる流路を有する熱交換器を採用しているため、過冷却熱交換器96における放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒と第1吸入戻し管95を流れる冷媒との温度差を小さくすることができ、高い熱交換効率を得ることができ、深冷効果をさらに高めることができる。
また、本実施形態の空気調和装置1では、エコノマイザ熱交換器20として、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒と第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒とが対向するように流れる流路を有する熱交換器を採用しているため、エコノマイザ熱交換器20における放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒と第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒との温度差を小さくすることができ、高い熱交換効率を得ることができる。
(3)変形例1
上述の実施形態においては、エコノマイザ熱交換器20の下流側に設けられる深冷熱交換器として過冷却熱交換器96を設けるようにしているが、深冷熱交換器としては、過冷却熱交換器96に限定されるものではなく、例えば、図5に示されるように、過冷却熱交換器96及び過冷却熱交換器96の冷却源としての第1吸入戻し管95に代えて、エコノマイザ熱交換器20の下流側に、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒と圧縮機構2の吸入側(ここでは、蒸発器としての利用側熱交換器6と圧縮機構2との間の吸入管2a)を流れる冷媒との熱交換を行う液ガス熱交換器90を設けた冷媒回路110にしてもよい。
尚、本変形例では、液ガス熱交換器90は、エコノマイザ熱交換器20の下流側の位置(すなわち、エコノマイザ熱交換器20と膨張機構5の間)を流れる冷媒と圧縮機構2の吸入側を流れる冷媒とが対向するように流れる流路を有している。
次に、本変形例の構成における冷房運転時の動作について、図5〜図7を用いて説明する。ここで、図6は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図であり、図7は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された温度−エントロピ線図である。尚、以下の冷房運転における運転制御は、上述の実施形態における制御部(図示せず)によって行われる。また、以下の説明において、「高圧」とは、冷凍サイクルにおける高圧(すなわち、図7、図8の点D、D’、E、H、Nにおける圧力)を意味し、「低圧」とは、冷凍サイクルにおける低圧(すなわち、図7、図8の点A、F、F’、Qにおける圧力)を意味し、「中間圧」とは、冷凍サイクルにおける中間圧(すなわち、図7、図8の点B1、G、J、Kにおける圧力)を意味している。
冷房運転時は、膨張機構5は、開度調節される。また、第1後段側インジェクション弁19aは、上述の実施形態と同様の開度調節がなされる。
この冷媒回路110の状態において、圧縮機構2を駆動すると、低圧の冷媒(図5〜図7の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧力まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図5〜図7の点B1参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、第1後段側インジェクション管19から後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図5〜図7の点K参照)と合流することで冷却される(図5〜図7の点G参照)。次に、第1後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流した中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図5〜図7の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図6に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器4に送られて、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図5〜図7の点E参照)。そして、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒は、その一部が第1後段側インジェクション管19に分岐される。そして、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、第1後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後に、エコノマイザ熱交換器20に送られる(図5〜7の点J参照)。また、第1後段側インジェクション管19に分岐された後の冷媒は、エコノマイザ熱交換器20に流入し、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図5〜7の点H参照)。一方、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図5〜図7の点K参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒は、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90に送られて、圧縮機構2の吸入側(ここでは、吸入管2a)を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図5〜図7の点N参照)。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された後にさらに液ガス熱交換器90において冷却された高圧の冷媒は、膨張機構5によって減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒となり、冷媒の蒸発器として機能する利用側熱交換器6に送られる(図5〜図7の点F参照)。そして、蒸発器としての利用側熱交換器6に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図5〜図7の点Q参照)。そして、この蒸発器としての利用側熱交換器6において加熱され蒸発した低圧の冷媒は、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90において、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒と熱交換を行って加熱された後に、圧縮機構2に吸入される(図5〜図7の点A参照)。このようにして、冷房運転が行われる。
このように、本変形例の構成においても、上述の実施形態と同様、超臨界域で作動する冷媒(ここでは、二酸化炭素)を使用して二段圧縮式冷凍サイクルを行うことを考慮して、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを採用するようにしている。このため、気液分離器による中間圧インジェクションを採用する場合とは異なり、気液分離器における冷媒の圧力である気液分離器圧力が臨界圧力よりも高い圧力まで上昇して、気液分離器内の冷媒をガス冷媒と液冷媒に分離することが困難な状況になるおそれを考慮する必要がなくなるため、冷凍サイクルの中間圧(ここでは、中間冷媒管8における圧力)が臨界圧力付近まで上昇するような場合であっても、外部への放熱を行うことなく、後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の温度をさらに低く抑えることができる(図7の点B1、G参照)。これにより、圧縮機構2から吐出される冷媒の温度が低く抑えられ(図7の点D、D’参照)、第1後段側インジェクション管19を設けていない場合に比べて、図7の点B1、D’、D、Gを結ぶことによって囲まれる面積に相当する分の放熱ロスを小さくできることから、圧縮機構2の消費動力を減らし、運転効率を向上させることができるようになっている。
しかも、本変形例の構成では、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うにあたり、二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合における冷媒の温度変化に対するエントロピ変化が大きいという特性を考慮して、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒を冷却する深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けるようにすることで、上述の実施形態と同様、冷凍サイクルにおける低圧付近まで冷媒を減圧する膨張機構5による膨張ロス(冷凍サイクルにおける低圧付近まで冷媒を減圧する膨張機構5による減圧操作の前後で冷媒のエントロピが増加することに起因する熱ロスであり、以下、「膨張弁による膨張ロス」とする)を減らし、冷凍サイクルの成績係数や運転効率をさらに向上させることができるようになっている。
このことについて、図5〜図8を用いて詳細に説明する。ここで、図8は、R410Aを使用した冷凍サイクルが図示された圧力−エントロピ線図である。尚、図8では、図7に図示されている点Y、Y’を図示すると、点F、F’に重なった状態で図示されることになるため、ここでは図示を省略している。
まず、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションでは、第1後段側インジェクション管19によって、第1後段側インジェクション管19を流れる冷凍サイクルにおける高圧の冷媒を後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の圧力である冷凍サイクルにおける中間圧付近まで減圧し、この中間圧付近まで減圧された冷媒によって、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒をエコノマイザ熱交換器20において冷却するものであり、このエコノマイザ熱交換器20によって冷却された冷媒は、膨張機構5によって、冷凍サイクルにおける低圧付近まで減圧されることになる。そして、この膨張機構5による減圧操作は、等エンタルピ膨張(冷媒のエンタルピが一定のままで圧力が低下する膨張、すなわち、図6、7の点Nから点Fへの変化)であるため、冷凍サイクルにおける理想的な減圧操作である等エントロピ膨張(冷媒のエントロピが一定のままで圧力が低下する膨張、すなわち、図7の点Nから点Yへの変化)とは異なり、膨張弁(ここでは、膨張機構5)による膨張ロスが生じることになる。そして、膨張弁による膨張ロスは、圧縮機構2における消費動力を増加させることにつながり、これにより、冷凍サイクルの成績係数や運転効率が低下することになるため、膨張弁による膨張ロスを極力減らすことが望ましい。
ここで、本変形例における膨張弁による膨張ロスを含む4つの場合における膨張弁による膨張ロスを求めると、以下のようになる。尚、以下の膨張弁による膨張ロスを求めるにあたり、冷媒として二酸化炭素を使用する場合(図7参照)及びR410Aを使用する場合(図8参照)のいずれにおいても、蒸発器としての利用側熱交換器6における蒸発温度が0℃(図7、8の点F参照)及び圧縮機構2の吸入側における冷媒の温度が10℃(図7、8の点A参照)となる運転条件において、放熱器としての熱源側熱交換器4の出口における高圧の冷媒の温度を40℃(図7、8の点E参照)とし、エコノマイザ熱交換器20による冷却温度幅を5℃分(図7、8の点Eから点Hへの変化)とし、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90による冷却温度幅を5℃分(図7、8の点Hから点Nへの変化)とした場合を想定するものとする。
このような前提において、本変形例における膨張弁による膨張ロスは、図7に示されるように、点N(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90によって冷却された後の高圧の冷媒を示す)と、点F(膨張機構5によって、エコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90によって冷却された後の高圧の冷媒を等エンタルピ膨張させた後の低圧の冷媒を示す)と、点Y(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90によって冷却された後の高圧の冷媒を等エントロピ膨張させたものと仮定した場合の低圧の冷媒を示す)とを結ぶことによって囲まれる略直角三角形状の部分の面積に相当し、その値は1.33kJ/kg℃となる。
また、本変形例において、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けなかった場合(すなわち、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19のみを設けた場合)には、図7、8に示されるように、冷媒回路全体としては、点A→点B1→点D→点E→点H→点F’→点Aの順で変化する深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90による冷却を伴わない冷凍サイクルが行われることになり、この場合における膨張弁による膨張ロスは、図7に示されるように、点H(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を示す)と、点F’(膨張機構5によって、エコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を等エンタルピ膨張させた後の低圧の冷媒を示す)と、点Y’(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を等エントロピ膨張させたものと仮定した場合の低圧の冷媒を示す)とを結ぶことによって囲まれる略直角三角形状の部分の面積に相当し、その値は1.75kJ/kg℃となる。
また、冷媒としてR410Aを使用した場合において、本変形例と同様、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けた場合における膨張弁による膨張ロスは、図8に示されるように、点N(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90によって冷却された後の高圧の冷媒を示す)と、点F(膨張機構5によって、エコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90によって冷却された後の高圧の冷媒を等エンタルピ膨張させた後の低圧の冷媒を示す)と、点Y(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90によって冷却された後の高圧の冷媒を等エントロピ膨張させたものと仮定した場合の低圧の冷媒を示す)とを結ぶことによって囲まれる略直角三角形状の部分の面積に相当し、その値は0.39kJ/kg℃となる。
さらに、冷媒としてR410Aを使用した場合において、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けなかった場合(すなわち、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19のみを設けた場合)には、図8に示されるように、冷媒回路全体としては、点A→点B1→点D→点E→点H→点F’→点Aの順で変化する深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90による冷却を伴わない冷凍サイクルが行われることになり、この場合における膨張弁による膨張ロスは、図8に示されるように、点H(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を示す)と、点F’(膨張機構5によって、エコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を等エンタルピ膨張させた後の低圧の冷媒を示す)と、点Y’(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を等エントロピ膨張させたものと仮定した場合の低圧の冷媒を示す)とを結ぶことによって囲まれる略直角三角形状の部分の面積に相当し、その値は0.44kJ/kg℃となる。
そして、これらの膨張弁による膨張ロスの値から、上述の実施形態と同様、冷媒として二酸化炭素を使用した場合には、冷媒としてR410Aを使用した場合に比べて、膨張弁による膨張ロスの値自体が4倍程度大きく、また、冷媒として二酸化炭素を使用した場合、及び、R410Aを使用した場合のいずれにおいても、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けなかった場合(すなわち、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19のみを設けた場合)よりもエコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けた場合のほうが膨張弁による膨張ロスは低減されるが、その膨張弁による膨張ロスの低減の程度は、R410Aを使用した場合に比べて冷媒として二酸化炭素を使用した場合のほうが8倍程度大きいことがわかる。
そして、このことは、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けなかった場合(すなわち、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19のみを設けた場合)におけるエコノマイザ熱交換器20によって冷却された後に膨張機構5に送られる冷媒は、第1後段側インジェクション弁19aによって中間圧付近まで減圧された冷媒の温度に応じた温度レベルまで冷却されているに過ぎず、冷却の程度が十分ではないことに起因するものであり、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けるかどうかが膨張弁(ここでは、膨張機構5)による膨張ロスに影響を及ぼすこと、そして、二酸化炭素のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合(図7参照)には、R410Aのような臨界圧力よりも十分に低い圧力域で作動する冷媒を使用する場合(図8参照)に比べて、冷媒の温度変化に対するエントロピ変化が大きいという特性を有していることに起因するものであり、冷媒としてR22やR410A等のような臨界圧力よりも十分に低い圧力域で作動する冷媒を使用する場合には、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けるかどうかが膨張弁による膨張ロスに及ぼす影響は小さいが、冷媒として二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合には、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けるかどうかが膨張弁による膨張ロスに及ぼす影響は大きく、冷凍サイクルの成績係数や運転効率に対する影響が大きいことを意味している。すなわち、二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用して二段圧縮式冷凍サイクルを行う空気調和装置1において、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うにあたり、膨張弁(ここでは、膨張機構5)による膨張ロスを減らすことは、冷凍サイクルの成績係数や運転効率の向上という観点で非常に重要であることがわかる。
そこで、本変形例の空気調和装置1では、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うにあたり、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒の温度が高いという問題、及び、二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合における冷媒の温度変化に対するエントロピ変化が大きいという特性(図7参照)を考慮して、上述のように、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒を冷却する深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けるようにしている。このため、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒がエコノマイザ熱交換器20によって冷却された後にさらに深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90によって冷却されることになるため、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けない場合に比べて、膨張機構5によって減圧される冷媒の温度が低下し、その結果、膨張弁(ここでは、膨張機構5)による膨張ロスが大幅に低減されることになる。尚、R22やR410A等のような臨界圧力よりも十分に低い圧力域で作動する冷媒を使用する場合(図8参照)においても、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒を冷却する深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けるようにすれば、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けない場合に比べて、膨張弁による膨張ロスは低減されるものの、二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合(図7参照)に比べて、冷媒の温度変化に対するエントロピ変化が非常に小さいことから、膨張弁による膨張ロスが低減される程度が非常に小さく、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90の追加によるコストアップというデメリットのほうが大きいと考えられる。
このように、本変形例の構成においても、上述の実施形態における深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けた場合と同様、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けることで、膨張弁(ここでは、膨張機構5)による膨張ロスを減らし、冷凍サイクルの成績係数や運転効率をさらに向上させることができる。
また、本変形例のように、深冷熱交換器として、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒と圧縮機構2の吸入側を流れる冷媒との熱交換を行う液ガス熱交換器90を使用する場合には、上述の実施形態における過冷却熱交換器96を使用した場合と同様、冷凍サイクルにおいて最も温度が低くなる低圧の冷媒(図7、図8の点F、点Q参照)を冷却源として使用することになるため、外部の冷却源を必要とせず、しかも、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒を、第1後段側インジェクション管19を流れる中間圧の冷媒のような比較的温度が高い冷媒によって冷却した後に、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒よりも温度が低い第1吸入戻し管95を流れる冷媒によってさらに冷却することができることから、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒を冷却源の温度レベルに応じて効率的に冷却することができ、十分な深冷効果を得ることができる。しかも、本変形例では、液ガス熱交換器90として、放熱器としての熱源側熱交換器4(より具体的には、エコノマイザ熱交換器20)から膨張機構5に送られる冷媒と圧縮機構2の吸入側を流れる冷媒とが対向するように流れる流路を有する熱交換器を採用しているため、液ガス熱交換器90における放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒と圧縮機構2の吸入側を流れる冷媒との温度差を小さくすることができ、高い熱交換効率を得ることができ、深冷効果をさらに高めることができる。
(4)変形例2
上述の実施形態及びその変形例においては、エコノマイザ熱交換器20の下流側に設けられる深冷熱交換器として過冷却熱交換器96又は液ガス熱交換器90を設けるようにしているが、図9に示されるように、深冷熱交換器として過冷却熱交換器96及び液ガス熱交換器90の両方を設けた冷媒回路210にしてもよい。
尚、本変形例では、エコノマイザ熱交換器20の下流側に液ガス熱交換器90を設け、液ガス熱交換器90の下流側に過冷却熱交換器96を設けるようにしているが、これに限定されず、過冷却熱交換器96の下流側に液ガス熱交換器90を設けるようにしてもよい。また、本変形例では、第1吸入戻し管95の圧縮機構2の吸入側への戻し位置を、圧縮機構2の吸入側を流れる冷媒が液ガス熱交換器90に流入する前の位置としているが、これに限定されず、圧縮機構2の吸入側を流れる冷媒が液ガス熱交換器90に流出した後の位置としてもよい。
次に、本変形例の構成における冷房運転時の動作について、図9〜図11を用いて説明する。ここで、図10は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図であり、図11は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された温度−エントロピ線図である。尚、以下の冷房運転における運転制御は、上述の実施形態における制御部(図示せず)によって行われる。また、以下の説明において、「高圧」とは、冷凍サイクルにおける高圧(すなわち、図10、図11の点D、D’、E、H、N、Rにおける圧力)を意味し、「低圧」とは、冷凍サイクルにおける低圧(すなわち、図10、図11の点A、F、F’、Q、S、Uにおける圧力)を意味し、「中間圧」とは、冷凍サイクルにおける中間圧(すなわち、図10、図11の点B1、G、J、Kにおける圧力)を意味している。
冷房運転時は、膨張機構5は、開度調節される。また、第1後段側インジェクション弁19aは、上述の実施形態と同様の開度調節がなされる。さらに、第1吸入戻し弁95aも、上述の実施形態と同様の開度調節がなされる。
この冷媒回路210の状態において、圧縮機構2を駆動すると、低圧の冷媒(図9〜図11の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧力まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図9〜図11の点B1参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、第1後段側インジェクション管19から後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図9〜図11の点K参照)と合流することで冷却される(図9〜図11の点G参照)。次に、第1後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流した中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図9〜図11の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図10に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器4に送られて、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図9〜図11の点E参照)。そして、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒は、その一部が第1後段側インジェクション管19に分岐される。そして、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、第1後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後に、エコノマイザ熱交換器20に送られる(図9〜11の点J参照)。また、第1後段側インジェクション管19に分岐された後の冷媒は、エコノマイザ熱交換器20に流入し、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図9〜11の点H参照)。一方、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図9〜図11の点K参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒は、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90に送られて、圧縮機構2の吸入側(ここでは、吸入管2a)を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図9〜図11の点N参照)。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された後にさらに液ガス熱交換器90において冷却された高圧の冷媒は、その一部が第1吸入戻し管95に分岐される。そして、第1吸入戻し管95を流れる冷媒は、第1吸入戻し弁95aにおいて低圧付近まで減圧された後に、もう一つの深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96に送られる(図9〜11の点S参照)。また、第1吸入戻し管95に分岐された後の冷媒は、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96に流入し、第1吸入戻し管95を流れる冷媒と熱交換を行ってさらに冷却される(図9〜11の点R参照)。一方、第1吸入戻し管95を流れる冷媒は、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図9〜図11の点U参照)、圧縮機構2の吸入側(ここでは、吸入管2a)を流れる冷媒(ここでは、液ガス熱交換器90に流入する前の低圧の冷媒)に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された後にさらに液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96において冷却された高圧の冷媒は、膨張機構5によって減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒となり、冷媒の蒸発器として機能する利用側熱交換器6に送られる(図9〜図11の点F参照)。そして、蒸発器としての利用側熱交換器6に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図9〜図11の点Q参照)。そして、この蒸発器としての利用側熱交換器6において加熱され蒸発した低圧の冷媒は、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90において、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒と熱交換を行って加熱された後に、圧縮機構2に吸入される(図9〜図11の点A参照)。このようにして、冷房運転が行われる。
このように、本変形例の構成においても、上述の実施形態及びその変形例と同様、超臨界域で作動する冷媒(ここでは、二酸化炭素)を使用して二段圧縮式冷凍サイクルを行うことを考慮して、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを採用するようにしている。このため、気液分離器による中間圧インジェクションを採用する場合とは異なり、気液分離器における冷媒の圧力である気液分離器圧力が臨界圧力よりも高い圧力まで上昇して、気液分離器内の冷媒をガス冷媒と液冷媒に分離することが困難な状況になるおそれを考慮する必要がなくなるため、冷凍サイクルの中間圧(ここでは、中間冷媒管8における圧力)が臨界圧力付近まで上昇するような場合であっても、外部への放熱を行うことなく、後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の温度をさらに低く抑えることができる(図11の点B1、G参照)。これにより、圧縮機構2から吐出される冷媒の温度が低く抑えられ(図11の点D、D’参照)、第1後段側インジェクション管19を設けていない場合に比べて、図11の点B1、D’、D、Gを結ぶことによって囲まれる面積に相当する分の放熱ロスを小さくできることから、圧縮機構2の消費動力を減らし、運転効率を向上させることができるようになっている。
しかも、本変形例の構成では、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うにあたり、二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合における冷媒の温度変化に対するエントロピ変化が大きいという特性を考慮して、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒を冷却する深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96を設けるようにすることで、上述の実施形態及びその変形例と同様、冷凍サイクルにおける低圧付近まで冷媒を減圧する膨張機構5による膨張ロス(冷凍サイクルにおける低圧付近まで冷媒を減圧する膨張機構5による減圧操作の前後で冷媒のエントロピが増加することに起因する熱ロスであり、以下、「膨張弁による膨張ロス」とする)を減らし、冷凍サイクルの成績係数や運転効率をさらに向上させることができるようになっている。
このことについて、図9〜図12を用いて詳細に説明する。ここで、図12は、R410Aを使用した冷凍サイクルが図示された圧力−エントロピ線図である。尚、図12では、図11に図示されている点Y、Y’を図示すると、点F、F’に重なった状態で図示されることになるため、ここでは図示を省略している。
まず、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションでは、第1後段側インジェクション管19によって、第1後段側インジェクション管19を流れる冷凍サイクルにおける高圧の冷媒を後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の圧力である冷凍サイクルにおける中間圧付近まで減圧し、この中間圧付近まで減圧された冷媒によって、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒をエコノマイザ熱交換器20において冷却するものであり、このエコノマイザ熱交換器20によって冷却された冷媒は、膨張機構5によって、冷凍サイクルにおける低圧付近まで減圧されることになる。そして、この膨張機構5による減圧操作は、等エンタルピ膨張(冷媒のエンタルピが一定のままで圧力が低下する膨張、すなわち、図10、11の点Rから点Fへの変化)であるため、冷凍サイクルにおける理想的な減圧操作である等エントロピ膨張(冷媒のエントロピが一定のままで圧力が低下する膨張、すなわち、図11の点Rから点Yへの変化)とは異なり、膨張弁(ここでは、膨張機構5)による膨張ロスが生じることになる。そして、膨張弁による膨張ロスは、圧縮機構2における消費動力を増加させることにつながり、これにより、冷凍サイクルの成績係数や運転効率が低下することになるため、膨張弁による膨張ロスを極力減らすことが望ましい。
ここで、本変形例における膨張弁による膨張ロスを含む4つの場合における膨張弁による膨張ロスを求めると、以下のようになる。尚、以下の膨張弁による膨張ロスを求めるにあたり、冷媒として二酸化炭素を使用する場合(図11参照)及びR410Aを使用する場合(図12参照)のいずれにおいても、蒸発器としての利用側熱交換器6における蒸発温度が0℃(図11、12の点F参照)及び圧縮機構2の吸入側における冷媒の温度が10℃(図11、12の点A参照)となる運転条件において、放熱器としての熱源側熱交換器4の出口における高圧の冷媒の温度を40℃(図11、12の点E参照)とし、エコノマイザ熱交換器20による冷却温度幅を5℃分(図11、12の点Eから点Hへの変化)とし、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90による冷却温度幅を5℃分(図11、12の点Hから点Nへの変化)とし、もう一つの深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96による冷却温度幅を5℃分(図11、12の点Nから点Rへの変化)とし、第1吸入戻し管95から圧縮機構2の吸入側に戻る冷媒の温度を蒸発器としての利用側熱交換器6の出口における温度と同じ(図11、12の点Q参照)とした場合を想定するものとする。
このような前提において、本変形例における膨張弁による膨張ロスは、図11に示されるように、点R(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96によって冷却された後の高圧の冷媒を示す)と、点F(膨張機構5によって、エコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96によって冷却された後の高圧の冷媒を等エンタルピ膨張させた後の低圧の冷媒を示す)と、点Y(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96によって冷却された後の高圧の冷媒を等エントロピ膨張させたものと仮定した場合の低圧の冷媒を示す)とを結ぶことによって囲まれる略直角三角形状の部分の面積に相当し、その値は0.87kJ/kg℃となる。
また、本変形例において、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96を設けなかった場合(すなわち、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19のみを設けた場合)には、図11、12に示されるように、冷媒回路全体としては、点A→点B1→点D→点E→点H→点F’→点Aの順で変化する深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96による冷却を伴わない冷凍サイクルが行われることになり、この場合における膨張弁による膨張ロスは、図11に示されるように、点H(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を示す)と、点F’(膨張機構5によって、エコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を等エンタルピ膨張させた後の低圧の冷媒を示す)と、点Y’(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を等エントロピ膨張させたものと仮定した場合の低圧の冷媒を示す)とを結ぶことによって囲まれる略直角三角形状の部分の面積に相当し、その値は1.75kJ/kg℃となる。
また、冷媒としてR410Aを使用した場合において、本変形例と同様、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96を設けた場合における膨張弁による膨張ロスは、図12に示されるように、点R(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96によって冷却された後の高圧の冷媒を示す)と、点F(膨張機構5によって、エコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96によって冷却された後の高圧の冷媒を等エンタルピ膨張させた後の低圧の冷媒を示す)と、点Y(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20及び深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96によって冷却された後の高圧の冷媒を等エントロピ膨張させたものと仮定した場合の低圧の冷媒を示す)とを結ぶことによって囲まれる略直角三角形状の部分の面積に相当し、その値は0.22kJ/kg℃となる。
さらに、冷媒としてR410Aを使用した場合において、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96を設けなかった場合(すなわち、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19のみを設けた場合)には、図12に示されるように、冷媒回路全体としては、点A→点B1→点D→点E→点H→点F’→点Aの順で変化する深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96による冷却を伴わない冷凍サイクルが行われることになり、この場合における膨張弁による膨張ロスは、図12に示されるように、点H(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を示す)と、点F’(膨張機構5によって、エコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を等エンタルピ膨張させた後の低圧の冷媒を示す)と、点Y’(膨張機構5に流入するエコノマイザ熱交換器20のみによって冷却された後の高圧の冷媒を等エントロピ膨張させたものと仮定した場合の低圧の冷媒を示す)とを結ぶことによって囲まれる略直角三角形状の部分の面積に相当し、その値は0.44kJ/kg℃となる。
そして、これらの膨張弁による膨張ロスの値から、上述の実施形態及びその変形例と同様、冷媒として二酸化炭素を使用した場合には、冷媒としてR410Aを使用した場合に比べて、膨張弁による膨張ロスの値自体が4倍程度大きく、また、冷媒として二酸化炭素を使用した場合、及び、R410Aを使用した場合のいずれにおいても、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96を設けなかった場合(すなわち、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19のみを設けた場合)よりもエコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96を設けた場合のほうが膨張弁による膨張ロスは低減されるが、その膨張弁による膨張ロスの低減の程度は、R410Aを使用した場合に比べて冷媒として二酸化炭素を使用した場合のほうが4倍程度大きいことがわかる。
そして、このことは、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96を設けなかった場合(すなわち、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19のみを設けた場合)におけるエコノマイザ熱交換器20によって冷却された後に膨張機構5に送られる冷媒は、第1後段側インジェクション弁19aによって中間圧付近まで減圧された冷媒の温度に応じた温度レベルまで冷却されているに過ぎず、冷却の程度が十分ではないことに起因するものであり、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96を設けるかどうかが膨張弁(ここでは、膨張機構5)による膨張ロスに影響を及ぼすこと、そして、二酸化炭素のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合(図11参照)には、R410Aのような臨界圧力よりも十分に低い圧力域で作動する冷媒を使用する場合(図12参照)に比べて、冷媒の温度変化に対するエントロピ変化が大きいという特性を有していることに起因するものであり、冷媒としてR22やR410A等のような臨界圧力よりも十分に低い圧力域で作動する冷媒を使用する場合には、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96を設けるかどうかが膨張弁による膨張ロスに及ぼす影響は小さいが、冷媒として二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合には、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96を設けるかどうかが膨張弁による膨張ロスに及ぼす影響は大きく、冷凍サイクルの成績係数や運転効率に対する影響が大きいことを意味している。すなわち、二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用して二段圧縮式冷凍サイクルを行う空気調和装置1において、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うにあたり、膨張弁(ここでは、膨張機構5)による膨張ロスを減らすことは、冷凍サイクルの成績係数や運転効率の向上という観点で非常に重要であることがわかる。
そこで、本変形例の空気調和装置1では、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うにあたり、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒の温度が高いという問題、及び、二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合における冷媒の温度変化に対するエントロピ変化が大きいという特性(図11参照)を考慮して、上述のように、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒を冷却する深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96を設けるようにしている。このため、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒がエコノマイザ熱交換器20によって冷却された後にさらに深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96によって冷却されることになるため、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96を設けない場合に比べて、膨張機構5によって減圧される冷媒の温度が低下し、その結果、膨張弁(ここでは、膨張機構5)による膨張ロスが大幅に低減されることになる。尚、R22やR410A等のような臨界圧力よりも十分に低い圧力域で作動する冷媒を使用する場合(図12参照)においても、エコノマイザ熱交換器20から膨張機構5に送られる冷媒を冷却する深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けるようにすれば、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90を設けない場合に比べて、膨張弁による膨張ロスは低減されるものの、二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合(図11参照)に比べて、冷媒の温度変化に対するエントロピ変化が非常に小さいことから、膨張弁による膨張ロスが低減される程度が非常に小さく、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96の追加によるコストアップというデメリットのほうが大きいと考えられる。
このように、本変形例の構成においては、深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96の両方を設けることで、上述の実施形態及びその変形例における深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90及び過冷却熱交換器96の一方を設けた場合よりも、膨張弁(ここでは、膨張機構5)による膨張ロスを減らし、冷凍サイクルの成績係数や運転効率をさらに向上させることができる。
(6)変形例3
上述の実施形態及びその変形例においては、超臨界域で作動する冷媒を使用しており冷房運転が可能に構成された二段圧縮式冷凍サイクルを行う空気調和装置1において、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒を分岐して後段側の圧縮要素2dに戻す第1後段側インジェクション管19、及び、放熱器としての熱源側熱交換器4から膨張機構5に送られる冷媒と第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒との熱交換を行うエコノマイザ熱交換器20を設けるとともに、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての液ガス熱交換器90、及び/又は、過冷却熱交換器96を設けるようにしているが、この構成に加えて、冷房運転と暖房運転とを切換可能な構成にしてもよい。
例えば、図13に示されるように、二段圧縮式の圧縮機構2が採用された上述の実施形態の冷媒回路10(図1参照)において、冷房運転と暖房運転とを切換可能にするための切換機構3が設けられ、そして、膨張機構5に代えて第1膨張機構5a及び第2膨張機構5bが設けられるとともに、ブリッジ回路17、及び、レシーバ18が設けられた冷媒回路310にすることができる。
切換機構3は、冷媒回路310内における冷媒の流れの方向を切り換えるための機構であり、冷房運転時には、熱源側熱交換器4を圧縮機構2から吐出される冷媒の放熱器として、かつ、利用側熱交換器6を熱源側熱交換器4において冷却された冷媒の蒸発器として機能させるために、圧縮機構2の吐出側と熱源側熱交換器4の一端とを接続するとともに圧縮機21の吸入側と利用側熱交換器6とを接続し(図13の切換機構3の実線を参照、以下、この切換機構3の状態を「冷却運転状態」とする)、暖房運転時には、利用側熱交換器6を圧縮機構2から吐出される冷媒の放熱器として、かつ、熱源側熱交換器4を利用側熱交換器6において冷却された冷媒の蒸発器として機能させるために、圧縮機構2の吐出側と利用側熱交換器6とを接続するとともに圧縮機構2の吸入側と熱源側熱交換器4の一端とを接続することが可能である(図13の切換機構3の破線を参照、以下、この切換機構3の状態を「加熱運転状態」とする)。本変形例において、切換機構3は、圧縮機構2の吸入側、圧縮機構2の吐出側、熱源側熱交換器4及び利用側熱交換器6に接続された四路切換弁である。尚、切換機構3は、四路切換弁に限定されるものではなく、例えば、複数の電磁弁を組み合わせる等によって、上述と同様の冷媒の流れの方向を切り換える機能を有するように構成したものであってもよい。
このように、切換機構3は、圧縮機構2、熱源側熱交換器4、エコノマイザ熱交換器20、第1膨張機構5a、過冷却熱交換器96、第2膨張機構5b、利用側熱交換器6の順に冷媒を循環させる冷却運転状態と、圧縮機構2、利用側熱交換器6、エコノマイザ熱交換器20、第1膨張機構5a、過冷却熱交換器96、第2膨張機構5b、熱源側熱交換器4の順に冷媒を循環させる加熱運転状態とを切り換えることができるように構成されている。
ブリッジ回路17は、熱源側熱交換器4と利用側熱交換器6との間に設けられており、レシーバ18の入口に接続されるレシーバ入口管18a、及び、レシーバ18の出口に接続されるレシーバ出口管18bに接続されている。ブリッジ回路17は、本変形例において、4つの逆止弁17a、17b、17c、17dを有している。そして、入口逆止弁17aは、熱源側熱交換器4からレシーバ入口管18aへの冷媒の流通のみを許容する逆止弁である。入口逆止弁17bは、利用側熱交換器6からレシーバ入口管18aへの冷媒の流通のみを許容する逆止弁である。すなわち、入口逆止弁17a、17bは、熱源側熱交換器4及び利用側熱交換器6の一方からレシーバ入口管18aに冷媒を流通させる機能を有している。出口逆止弁17cは、レシーバ出口管18bから利用側熱交換器6への冷媒の流通のみを許容する逆止弁である。出口逆止弁17dは、レシーバ出口管18bから熱源側熱交換器4への冷媒の流通のみを許容する逆止弁である。すなわち、出口逆止弁17c、17dは、レシーバ出口管18bから熱源側熱交換器4及び利用側熱交換器6の他方に冷媒を流通させる機能を有している。
第1膨張機構5aは、レシーバ入口管18aに設けられた冷媒を減圧する機構であり、本変形例において、電動膨張弁が使用されている。また、本変形例において、第1膨張機構5aは、冷房運転時には、熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒をエコノマイザ熱交換器20、レシーバ18及び過冷却熱交換器96を介して利用側熱交換器6に送る前に冷媒の飽和圧力付近まで減圧し、暖房運転時には、利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒をエコノマイザ熱交換器20、レシーバ18及び過冷却熱交換器96を介して熱源側熱交換器4に送る前に冷媒の飽和圧力付近まで減圧する。
レシーバ18は、冷房運転と暖房運転との間で冷媒回路310における冷媒の循環量が異なる等の運転状態に応じて発生する余剰冷媒を溜めることができるように、第1膨張機構5aで減圧された後の冷媒を一時的に溜めるために設けられた容器であり、その入口がレシーバ入口管18aに接続されており、その出口がレシーバ出口管18bに接続されている。また、レシーバ18には、レシーバ18内から冷媒を抜き出して圧縮機構2の吸入管2a(すなわち、圧縮機構2の前段側の圧縮要素2cの吸入側)に戻すことが可能な第2吸入戻し管18fが接続されている。この第2吸入戻し管18fには、第2吸入戻し開閉弁18gが設けられている。第2吸入戻し開閉弁18gは、本変形例において、電磁弁である。また、第1吸入戻し管95と第2吸入戻し管18fとは、圧縮機構2の吸入側の部分が一体となっている。
第2膨張機構5bは、レシーバ出口管18bに設けられた冷媒を減圧する機構であり、本変形例において、電動膨張弁が使用されている。また、本変形例において、第2膨張機構5bは、冷房運転時には、第1膨張機構5aによって減圧された冷媒を過冷却熱交換器96及びレシーバ18を介して利用側熱交換器6に送る前に冷凍サイクルにおける低圧になるまでさらに減圧し、暖房運転時には、第1膨張機構5aによって減圧された冷媒を過冷却熱交換器96及びレシーバ18を介して熱源側熱交換器4に送る前に冷凍サイクルにおける低圧になるまでさらに減圧する。
このように、ブリッジ回路17、レシーバ18、レシーバ入口管18a及びレシーバ出口管18bによって、切換機構3を冷却運転状態にしている際には、熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒が、ブリッジ回路17の入口逆止弁17a、エコノマイザ熱交換器20、レシーバ入口管18aの第1膨張機構5a、レシーバ18、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96、レシーバ出口管18bの第2膨張機構5b及びブリッジ回路17の出口逆止弁17cを通じて、利用側熱交換器6に送ることができるようになっている。また、切換機構3を加熱運転状態にしている際には、利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒が、ブリッジ回路17の入口逆止弁17b、エコノマイザ熱交換器20、レシーバ入口管18aの第1膨張機構5a、レシーバ18、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96、レシーバ出口管18bの第2膨張機構5b及びブリッジ回路17の出口逆止弁17dを通じて、熱源側熱交換器6に送ることができるようになっている。
そして、本変形例においては、エコノマイザ熱交換器20が、冷房運転時に放熱器として機能する熱源側熱交換器4又は暖房運転時に放熱器として機能する利用側熱交換器6から第1膨張機構5aに送られる冷媒と第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒との熱交換を行うように設けられており、過冷却熱交換器96が、冷房運転時及び暖房運転時の両方において、エコノマイザ熱交換器20から冷凍サイクルにおける低圧まで冷媒を減圧する第2膨張機構5bに送られる冷媒を冷却するように設けられている。すなわち、本変形例においても、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うにあたり、エコノマイザ熱交換器20から第2膨張機構5bに送られる冷媒の温度が高いという問題、及び、二酸化炭素等のような超臨界域で作動する冷媒を使用する場合における冷媒の温度変化に対するエントロピ変化が大きいという特性を考慮して、エコノマイザ熱交換器20から第2膨張機構5bに送られる冷媒を冷却する深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96が設けられていることになる。
次に、本変形例の空気調和装置1の動作について、図13及び図14を用いて説明する。ここで、本変形例における冷房運転時の冷凍サイクルについては、図14を用いて説明し、暖房運転時の冷凍サイクルについては、図14における点Eと点Fとを入れ替えることによって代用して説明するものとする。尚、以下の冷房運転や暖房運転における運転制御は、上述の実施形態における制御部(図示せず)によって行われる。また、以下の説明において、「高圧」とは、冷凍サイクルにおける高圧(すなわち、図14の点D、D’、E、H、I、Rにおける圧力)を意味し、「低圧」とは、冷凍サイクルにおける低圧(すなわち、図14の点A、F、F’、S、Uにおける圧力)を意味し、「中間圧」とは、冷凍サイクルにおける中間圧(すなわち、図14の点B1、G、J、Kにおける圧力)を意味している。
<冷房運転>
冷房運転時は、切換機構3が図13の実線で示される冷却運転状態とされる。また、第1膨張機構5a及び第2膨張機構5bは、開度調節される。さらに、第1後段側インジェクション弁19a及び第1吸入戻し弁95aは、上述の実施形態と同様の開度調節がなされる。
この冷媒回路310の状態において、圧縮機構2を駆動すると、低圧の冷媒(図13、図14の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧力まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図13、図14の点B1参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、第1後段側インジェクション管19から後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図13、図14の点K参照)と合流することで冷却される(図13、図14の点G参照)。次に、第1後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流した中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図13、図14の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図14に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、切換機構3を経由して、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器4に送られて、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図13、図14の点E参照)。そして、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒は、ブリッジ回路17の入口逆止弁17aを通じてレシーバ入口管18aに流入し、その一部が第1後段側インジェクション管19に分岐される。そして、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、第1後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後に、エコノマイザ熱交換器20に送られる(図13、図14の点J参照)。また、第1後段側インジェクション管19に分岐された後の冷媒は、エコノマイザ熱交換器20に流入し、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図13、図14の点H参照)。一方、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図13、図14の点K参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒は、第1膨張機構5aによって飽和圧力付近まで減圧されてレシーバ18内に一時的に溜められる(図13、図14の点I参照)。そして、レシーバ18内に溜められた冷媒は、レシーバ出口管18bに送られて、その一部が第1吸入戻し管95に分岐される。そして、第1吸入戻し管95を流れる冷媒は、第1吸入戻し弁95aにおいて低圧付近まで減圧された後に、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96に送られる(図13、図14の点S参照)。また、第1吸入戻し管95に分岐された後の冷媒は、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96に流入し、第1吸入戻し管95を流れる冷媒と熱交換を行ってさらに冷却される(図13、図14の点R参照)。一方、第1吸入戻し管95を流れる冷媒は、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図13、図14の点U参照)、圧縮機構2の吸入側(ここでは、吸入管2a)を流れる冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された後にさらに過冷却熱交換器96において冷却された高圧の冷媒は、第2膨張機構5bによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、ブリッジ回路17の出口逆止弁17cを通じて、冷媒の蒸発器として機能する利用側熱交換器6に送られる(図13、図14の点F参照)。そして、蒸発器としての利用側熱交換器6に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図13、図14の点A参照)。そして、この蒸発器としての利用側熱交換器6において加熱され蒸発した低圧の冷媒は、圧縮機構2に吸入される。このようにして、冷房運転が行われる。
そして、本変形例の構成においては、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒を第1膨張機構5aによって飽和圧力付近まで減圧し、この冷媒をレシーバ18内に一時的に溜められた後ではあるが、レシーバ18内に溜められた高圧の冷媒を深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96によってさらに冷却した後に、第2膨張機構5bによって冷凍サイクルにおける低圧まで冷媒を減圧するようにしているため、上述の実施形態と同様、膨張弁(ここでは、第2膨張機構5b)による膨張ロスを減らし、冷凍サイクルの成績係数や運転効率をさらに向上させる効果を得ることができる。
<暖房運転>
暖房運転時は、切換機構3が図9の破線で示される加熱運転状態とされる。また、第1膨張機構5a及び第2膨張機構5bは、開度調節される。さらに、第1後段側インジェクション弁19a及び第1吸入戻し弁95aは、冷房運転時と同様の過熱度制御によって開度調節される。
この冷媒回路310の状態において、圧縮機構2を駆動すると、低圧の冷媒(図13、図14の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧力まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図13、図14の点B1参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、第1後段側インジェクション管19から後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図13、図14の点K参照)と合流することで冷却される(図13、図14の点G参照)。次に、第1後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流した中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図13、図14の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図14に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、切換機構3を経由して、冷媒の放熱器として機能する利用側熱交換器6に送られて、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図13、図14の点Eを点Fに読み替えて参照)。そして、放熱器としての利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒は、ブリッジ回路17の入口逆止弁17bを通じてレシーバ入口管18aに流入し、その一部が第1後段側インジェクション管19に分岐される。そして、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、第1後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後に、エコノマイザ熱交換器20に送られる(図13、図14の点J参照)。また、第1後段側インジェクション管19に分岐された後の冷媒は、エコノマイザ熱交換器20に流入し、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図13、図14の点H参照)。一方、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、放熱器としての利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図13、図14の点K参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒は、第1膨張機構5aによって飽和圧力付近まで減圧されてレシーバ18内に一時的に溜められる(図13、図14の点I参照)。そして、レシーバ18内に溜められた冷媒は、レシーバ出口管18bに送られて、その一部が第1吸入戻し管95に分岐される。そして、第1吸入戻し管95を流れる冷媒は、第1吸入戻し弁95aにおいて低圧付近まで減圧された後に、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96に送られる(図13、図14の点S参照)。また、第1吸入戻し管95に分岐された後の冷媒は、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96に流入し、第1吸入戻し管95を流れる冷媒と熱交換を行ってさらに冷却される(図13、図14の点R参照)。一方、第1吸入戻し管95を流れる冷媒は、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図13、図14の点U参照)、圧縮機構2の吸入側(ここでは、吸入管2a)を流れる冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された後にさらに過冷却熱交換器96において冷却された高圧の冷媒は、第2膨張機構5bによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、ブリッジ回路17の出口逆止弁17dを通じて、冷媒の蒸発器として機能する熱源側熱交換器4に送られる(図13、図14の点Fを点Eに読み替えて参照)。そして、蒸発器としての熱源側熱交換器4に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図13、図14の点A参照)。そして、この蒸発器としての熱源側熱交換器4において加熱され蒸発した低圧の冷媒は、圧縮機構2に吸入される。このようにして、暖房運転が行われる。
そして、本変形例の構成においては、暖房運転においても冷房運転と同様の運転が行われることになるため、暖房運転においても、冷房運転と同様、膨張弁(ここでは、第2膨張機構5b)による膨張ロスを減らし、冷凍サイクルの成績係数や運転効率をさらに向上させる効果を得ることができる。
また、本変形例では、深冷熱交換器として、過冷却熱交換器96を使用した例を説明したが、上述の変形例1、2のように、過冷却熱交換器96に代えて液ガス熱交換器90を使用したり、過冷却熱交換器96とともに液ガス熱交換器90を使用してもよい。
(7)変形例4
上述の変形例3における冷媒回路310(図13参照)においては、上述のように、切換機構3を冷却運転状態にする冷房運転及び切換機構3を加熱運転状態にする暖房運転のいずれにおいても、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うことで、後段側の圧縮要素2dから吐出される冷媒の温度を低下させるとともに、圧縮機構2の消費動力を減らし、運転効率の向上を図るようにしている。そして、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションは、冷凍サイクルにおける中間圧が臨界圧力付近まで上昇した条件においても使用可能であることから、上述の実施形態及びその変形例における冷媒回路10、110、210、310(図1、5、9、13参照)のように、1つの利用側熱交換器6を有する構成では、超臨界域で作動する冷媒を使用する場合には、有利であると考えられる。
しかし、複数の空調空間の空調負荷に応じた冷房や暖房を行うこと等を目的として、互いに並列に接続された複数の利用側熱交換器6を有する構成にするとともに、各利用側熱交換器6を流れる冷媒の流量を制御して各利用側熱交換器6において必要とされる冷凍負荷を得ることができるようにするために、気液分離器としてのレシーバ18と利用側熱交換器6との間において各利用側熱交換器6に対応するように利用側膨張機構5cを設ける場合がある。
例えば、詳細は図示しないが、上述の変形例3におけるブリッジ回路17を有する冷媒回路310(図13参照)において、互いが並列に接続された複数(ここでは、2つ)の利用側熱交換器6を設けるとともに、気液分離器としてのレシーバ18(より具体的には、ブリッジ回路17)と利用側熱交換器6との間において各利用側熱交換器6に対応するように利用側膨張機構5cを設け(図15参照)、レシーバ出口管18bに設けられていた第2膨張機構5bを削除し、また、ブリッジ回路17の出口逆止弁17dに代えて、暖房運転時に冷凍サイクルにおける低圧まで冷媒を減圧する第3膨張機構を設けることが考えられる。
そして、このような構成においても、切換機構3を冷却運転状態にする冷房運転のように、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された後に熱源側膨張機構としての第1膨張機構5a以外に大幅な減圧操作が行われることなく、冷凍サイクルにおける高圧から冷凍サイクルの中間圧付近までの圧力差を利用できる条件においては、上述の変形例2と同様、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションが有利である。
しかし、切換機構3を加熱運転状態にする暖房運転のように、各利用側膨張機構5cが放熱器としての各利用側熱交換器6において必要とされる冷凍負荷が得られるように放熱器としての各利用側熱交換器6を流れる冷媒の流量を制御しており、放熱器としての各利用側熱交換器6を通過する冷媒の流量が、放熱器としての各利用側熱交換器6の下流側でかつエコノマイザ熱交換器20の上流側に設けられた利用側膨張機構5cの開度制御による冷媒の減圧操作によって概ね決定される条件においては、各利用側膨張機構5cの開度制御による冷媒の減圧の程度が、放熱器としての各利用側熱交換器6を流れる冷媒の流量だけでなく、複数の放熱器としての利用側熱交換器6間の流量分配の状態によって変動することになり、複数の利用側膨張機構5c間で減圧の程度が大きく異なる状態が生じたり、利用側膨張機構5cにおける減圧の程度が比較的大きくなったりする場合があるため、エコノマイザ熱交換器20の入口における冷媒の圧力が低くなるおそれがあり、このような場合には、エコノマイザ熱交換器20における交換熱量(すなわち、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒の流量)が小さくなってしまい使用が困難になるおそれがある。特に、このような空気調和装置1を、主として圧縮機構2、熱源側熱交換器4及びレシーバ18を含む熱源ユニットと、主として利用側熱交換器6を含む利用ユニットとが連絡配管によって接続されたセパレート型の空気調和装置として構成する場合には、利用ユニット及び熱源ユニットの配置によっては、この連絡配管が非常に長くなることがあり得るため、その圧力損失による影響も加わり、エコノマイザ熱交換器20の入口における冷媒の圧力がさらに低下することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20の入口における冷媒の圧力が低下するおそれがある場合には、気液分離器圧力が臨界圧力よりも低い圧力であれば気液分離器圧力と冷凍サイクルにおける中間圧(ここでは、中間冷媒管8を流れる冷媒の圧力)との圧力差が小さい条件であっても使用可能な気液分離器による中間圧インジェクションが有利である。
そこで、本変形例では、図15に示されるように、レシーバ18を気液分離器として機能させて中間圧インジェクションを行うことができるようにするために、レシーバ18に第2後段側インジェクション管18cを接続するようにして、冷房運転時には、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行い、暖房運転時には、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションを行うことが可能な冷媒回路410としている。
しかし、このような冷房運転と暖房運転との間で2つの中間圧インジェクションの手法を使い分ける場合には、冷房運転時には、レシーバ18における冷媒の圧力も比較的高い圧力で維持されることから、レシーバ18の下流側に深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けることで、冷凍サイクルにおける低圧まで冷媒を減圧する膨張弁(ここでは、利用側膨張機構5c)による膨張ロスを減らす効果が大きくなるが、暖房運転時には、エコノマイザ熱交換器20を使用しないことから、冷房運転時のようなエコノマイザ熱交換器20から膨張弁(ここでは、熱源側膨張機構としての第1膨張機構5a)に送られる冷媒の温度が高いという問題が生じず、また、利用側膨張機構5cによる冷媒の減圧操作によって気液分離器としてのレシーバ18における気液分離器圧力が低くなるため、レシーバ18の下流側に深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けたとしても、冷凍サイクルにおける低圧まで冷媒を減圧する膨張弁(ここでは、熱源側膨張機構としての第1膨張機構5a)による膨張ロスを減らす効果も小さい。このため、本変形例では、過冷却熱交換器96を冷房運転時のみに使用することとし、これにより、エコノマイザ熱交換器20や過冷却熱交換器96への冷媒の流通方向を冷房運転及び暖房運転を問わず一定にする必要がなくなるため、ブリッジ回路17を省略して、冷媒回路410の構成を簡単なものとしている。
尚、第2後段側インジェクション管18cは、レシーバ18から冷媒を抜き出して圧縮機構2の後段側の圧縮要素2dに戻す中間圧インジェクションを行うことが可能な冷媒管であり、本変形例において、レシーバ18の上部と中間冷媒管8(すなわち、圧縮機構2の後段側の圧縮要素2dの吸入側)とを接続するように設けられている。この第2後段側インジェクション管18cには、第2後段側インジェクション開閉弁18dと第2後段側インジェクション逆止機構18eとが設けられている。第2後段側インジェクション開閉弁18dは、開閉動作が可能な弁であり、本変形例において、電磁弁である。第2後段側インジェクション逆止機構18eは、レシーバ18から後段側の圧縮要素2dへの冷媒の流れを許容し、かつ、後段側の圧縮要素2dからレシーバ18への冷媒の流れを遮断するための機構であり、本実施形態において、逆止弁が使用されている。尚、第2後段側インジェクション管18cと第2吸入戻し管18fとは、レシーバ18側の部分が一体となっている。また、第2後段側インジェクション管18cと第1後段側インジェクション管19とは、中間冷媒管8側の部分が一体となっている。また、本変形例において、利用側膨張機構5cは、電動膨張弁である。
次に、本変形例の空気調和装置1の動作について、図15、図14及び図16を用いて説明する。ここで、図16は、暖房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図である。また、本変形例における冷房運転時の冷凍サイクルについては、図14を用いて説明するものとする。尚、以下の冷房運転及び暖房運転における運転制御は、上述の実施形態における制御部(図示せず)によって行われる。また、以下の説明において、「高圧」とは、冷凍サイクルにおける高圧(すなわち、図14の点D、D’、E、H、I、Rや図16の点D、D’、Fにおける圧力)を意味し、「低圧」とは、冷凍サイクルにおける低圧(すなわち、図14の点A、F、F’、Sや図16の点A、Eにおける圧力)を意味し、「中間圧」とは、冷凍サイクルにおける中間圧(すなわち、図14の点B1、G、J、Kや図16の点B1、G、I、L、Mにおける圧力)を意味している。
<冷房運転>
冷房運転時は、切換機構3が図15の実線で示される冷却運転状態とされる。熱源側膨張機構としての第1膨張機構5a及び利用側膨張機構5cは、開度調節される。そして、切換機構3を冷却運転状態にしている際には、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションを行わずに、第1後段側インジェクション管19を通じて、エコノマイザ熱交換器20において加熱された冷媒を後段側の圧縮要素2dに戻すエコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うようにしている。より具体的には、第2後段側インジェクション開閉弁18dは閉状態にされて、第1後段側インジェクション弁19aは、上述の実施形態と同様の開度調節がなされる。また、切換機構3を冷却運転状態にしている際には、過冷却熱交換器96を使用するため、第1吸入戻し弁95aについても、上述の実施形態と同様の開度調節がなされる。
この冷媒回路410の状態において、圧縮機構2を駆動すると、低圧の冷媒(図15、図14の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧力まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図15、図14の点B1参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、第1後段側インジェクション管19から後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図15、図14の点K参照)と合流することで冷却される(図15、図14の点G参照)。次に、第1後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流した(すなわち、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションが行われた)中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図15、図14の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図14に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、切換機構3を経由して、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器4に送られて、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図15、図14の点E参照)。そして、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒は、その一部が第1後段側インジェクション管19に分岐される。そして、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、第1後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後に、エコノマイザ熱交換器20に送られる(図15、図14の点J参照)。また、第1後段側インジェクション管19に分岐された後の冷媒は、エコノマイザ熱交換器20に流入し、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図15、図14の点H参照)。一方、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図15、図14の点K参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒は、第1膨張機構5aによって飽和圧力付近まで減圧されてレシーバ18内に一時的に溜められる(図15、図14の点I参照)。そして、レシーバ18内に溜められた冷媒は、その一部が第1吸入戻し管95に分岐される。そして、第1吸入戻し管95を流れる冷媒は、第1吸入戻し弁95aにおいて低圧付近まで減圧された後に、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96に送られる(図15、図14の点S参照)。また、第1吸入戻し管95に分岐された後の冷媒は、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96に流入し、第1吸入戻し管95を流れる冷媒と熱交換を行ってさらに冷却される(図15、図14の点R参照)。一方、第1吸入戻し管95を流れる冷媒は、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図15、図14の点U参照)、圧縮機構2の吸入側(ここでは、吸入管2a)を流れる冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された後にさらに過冷却熱交換器96において冷却された高圧の冷媒は、利用側膨張機構5cに送られて、利用側膨張機構5cによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、冷媒の蒸発器として機能する利用側熱交換器6に送られる(図15、図14の点F参照)。そして、蒸発器としての利用側熱交換器6に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図15、図14の点A参照)。そして、この蒸発器としての利用側熱交換器6において加熱され蒸発した低圧の冷媒は、圧縮機構2に吸入される。このようにして、冷房運転が行われる。
このように、本変形例の空気調和装置1では、切換機構3を冷却運転状態にする冷房運転においては、放熱器としての熱源側熱交換器4の下流側かつ熱源側膨張機構としての第1膨張機構5aの上流側における冷媒の圧力が高いままで保たれており、冷凍サイクルにおける高圧から冷凍サイクルにおける中間圧付近までの圧力差を利用できる条件であるため、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを使用する運転を行うことで、後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量が極力確保されるようにして、中間圧インジェクションによる運転効率の向上を最大限に図れるとともに、上述の実施形態と同様、膨張弁(ここでは、利用側膨張機構5c)による膨張ロスを減らし、冷凍サイクルの成績係数や運転効率をさらに向上させる効果を得ることができる。
<暖房運転>
暖房運転時は、切換機構3が図15の破線で示される加熱運転状態とされる。熱源側膨張機構としての第1膨張機構5a及び利用側膨張機構5cは、開度調節される。そして、切換機構3を加熱運転状態にしている際には、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行わずに、第2後段側インジェクション管18cを通じて、気液分離器としてのレシーバ18から冷媒を後段側の圧縮要素2dに戻すレシーバ18による中間圧インジェクションを行うようにしている。より具体的には、第2後段側インジェクション開閉弁18dが開状態にされて、第1後段側インジェクション弁19aが全閉状態にされる。また、切換機構3を加熱運転状態にしている際には、過冷却熱交換器96を使用しないため、第1吸入戻し弁95aについても全閉状態にされる。
この冷媒回路410の状態において、圧縮機構2を駆動すると、低圧の冷媒(図15、図16の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧力まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図15、図16の点B1参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、レシーバ18から第2後段側インジェクション管18cを通じて後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図15、図16の点M参照)と合流することで冷却される(図15、図16の点G参照)。次に、第2後段側インジェクション管18cから戻る冷媒と合流した(すなわち、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションが行われた)中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図15、図16の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、冷房運転時と同様、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図16に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、切換機構3を経由して、冷媒の放熱器として機能する利用側熱交換器6に送られて、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図15、図16の点F参照)。そして、放熱器としての利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒は、利用側膨張機構5cによって中間圧付近まで減圧された後に、レシーバ18内に一時的に溜められるとともに気液分離が行われる(図15、図16の点I、L、M参照)。そして、レシーバ18において気液分離されたガス冷媒は、第2後段側インジェクション管18cによってレシーバ18の上部から抜き出されて、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、レシーバ18内に溜められた液冷媒は、第1膨張機構5aによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、冷媒の蒸発器として機能する熱源側熱交換器4に送られる(図15、図16の点E参照)。そして、蒸発器としての熱源側熱交換器4に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図15、図16の点A参照)。そして、この蒸発器としての熱源側熱交換器4において加熱され蒸発した低圧の冷媒は、圧縮機構2に吸入される。このようにして、暖房運転が行われる。
このように、本変形例の空気調和装置1では、切換機構3を加熱運転状態にする暖房運転においては、利用側膨張機構5cの下流側における冷媒の圧力が低くなるおそれがあり、気液分離器圧力と冷凍サイクルにおける中間圧との圧力差が小さい条件であるため、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションを使用する運転を行うことで、後段側の圧縮要素2dに戻される冷媒の流量が極力確保されるようにして、中間圧インジェクションによる運転効率の向上を最大限に図れるようになっている。
また、本変形例では、深冷熱交換器として、過冷却熱交換器96を使用した例を説明したが、上述の変形例1、2のように、過冷却熱交換器96に代えて液ガス熱交換器90を使用したり、過冷却熱交換器96とともに液ガス熱交換器90を使用してもよい。
(8)変形例5
上述の変形例4における冷媒回路410(図15参照)においては、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションや気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションを行うことで、後段側の圧縮要素2dから吐出される冷媒の温度を低下させるとともに、圧縮機構2の消費動力を減らし、運転効率の向上を図るようにし、しかも、エコノマイザ熱交換器20の下流側に深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96を設けることで、膨張弁(ここでは、利用側膨張機構5c)による膨張ロスを減らし、冷凍サイクルの成績係数や運転効率をさらに向上させる効果を得ることができるようになっているが、この構成に加えて、前段側の圧縮要素2cから吐出された冷媒を後段側の圧縮要素2dに吸入させるための中間冷媒管8に前段側の圧縮要素2cから吐出されて後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却器として機能する中間冷却器7をさらに設けるようにしてもよい。
例えば、図17に示されるように、上述の変形例4における冷媒回路410(図15参照)において、中間冷却器7及び中間冷却器バイパス管9が設けられた冷媒回路510にすることができる。
中間冷却器7は、中間冷媒管8に設けられており、前段側の圧縮要素2cから吐出されて圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却器として機能する熱交換器である。中間冷却器7は、水や空気を熱源(すなわち、冷却源)とする熱交換器である。このように、中間冷却器7は、冷媒回路510を循環する冷媒を用いたものではないという意味で、外部熱源を用いた冷却器ということができる。
また、中間冷媒管8には、中間冷却器7をバイパスするように、中間冷却器バイパス管9が接続されている。この中間冷却器バイパス管9は、中間冷却器7を流れる冷媒の流量を制限する冷媒管である。そして、中間冷却器バイパス管9には、中間冷却器バイパス開閉弁11が設けられている。中間冷却器バイパス開閉弁11は、本変形例において、電磁弁である。この中間冷却器バイパス開閉弁11は、本変形例において、基本的には、切換機構3を冷却運転状態にしている際に閉め、切換機構3を加熱運転状態にしている際に開ける制御がなされる。すなわち、中間冷却器バイパス開閉弁11は、冷房運転を行う際に閉め、暖房運転を行う際に開ける制御がなされる。
また、中間冷媒管8には、中間冷却器バイパス管9との接続部から中間冷却器7側の位置(すなわち、中間冷却器7の入口側の中間冷却器バイパス管9との接続部から中間冷却器7の出口側の接続部までの部分)に、冷却器開閉弁12が設けられている。この冷却器開閉弁12は、中間冷却器7を流れる冷媒の流量を制限する機構である。冷却器開閉弁12は、本変形例において、電磁弁である。この冷却器開閉弁12は、基本的には、切換機構3を冷却運転状態にしている際に開け、切換機構3を加熱運転状態にしている際に閉める制御がなされる。すなわち、冷却器開閉弁12は、冷房運転を行う際に開け、暖房運転を行う際に閉める制御がなされる。尚、冷却器開閉弁12は、本変形例において、中間冷却器7の入口側の位置に設けられている。
また、中間冷媒管8には、前段側の圧縮要素2cの吐出側から後段側の圧縮要素2dの吸入側への冷媒の流れを許容し、かつ、後段側の圧縮要素2dの吐出側から前段側の圧縮要素2cへの冷媒の流れを遮断するための逆止機構15が設けられている。逆止機構15は、本変形例において、逆止弁である。尚、逆止機構15は、本変形例において、中間冷媒管8の中間冷却器7の出口側から中間冷却器バイパス管9との接続部までの部分に設けられている。
そして、中間冷却器7及び中間冷却器バイパス管9は、いずれも第1後段側インジェクション管19及び第2後段側インジェクション管18cの上流側(すなわち、前段側の圧縮要素2cと第1後段側インジェクション管19及び第2後段側インジェクション管18cとの間)に位置するように設けられている。
次に、本変形例の空気調和装置1の動作について、図17、図18、図16を用いて説明する。ここで、図18は、本変形例における冷房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図である。また、本変形例における暖房運転時の冷凍サイクルについては、図16を用いて説明するものとする。尚、以下の冷房運転及び暖房運転における運転制御は、上述の実施形態における制御部(図示せず)によって行われる。また、以下の説明において、「高圧」とは、冷凍サイクルにおける高圧(すなわち、図18の点D、E、H、I、Rや図16の点D、D’、Fにおける圧力)を意味し、「低圧」とは、冷凍サイクルにおける低圧(すなわち、図18の点A、F、S、Uや図16の点A、Eにおける圧力)を意味し、「中間圧」とは、冷凍サイクルにおける中間圧(すなわち、図18の点B1、C1、G、J、Kや図16の点B1、G、I、L、Mにおける圧力)を意味している。
<冷房運転>
冷房運転時は、切換機構3が図17の実線で示される冷却運転状態とされる。熱源側膨張機構としての第1膨張機構5a及び利用側膨張機構5cは、開度調節される。そして、切換機構3を冷却運転状態にしている際には、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションを行わずに、第1後段側インジェクション管19を通じて、エコノマイザ熱交換器20において加熱された冷媒を後段側の圧縮要素2dに戻すエコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行うようにしている。より具体的には、第2後段側インジェクション開閉弁18dは閉状態にされて、第1後段側インジェクション弁19aは、上述の実施形態と同様の開度調節がなされる。また、切換機構3を冷却運転状態にしている際には、過冷却熱交換器96を使用するため、第1吸入戻し弁95aについても、上述の実施形態と同様の開度調節がなされる。さらに、冷却器開閉弁12が開けられ、また、中間冷却器バイパス管9の中間冷却器バイパス開閉弁11が閉められることによって、中間冷却器7が冷却器として機能する状態とされる。
この冷媒回路510の状態において、圧縮機構2を駆動すると、低圧の冷媒(図17、図18の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧力まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図17、図18の点B1参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、中間冷却器7において、冷却源としての水や空気と熱交換を行うことで冷却される(図17、図18の点C1参照)。この中間冷却器7において冷却された冷媒は、第1後段側インジェクション管19から後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図17、図18の点K参照)と合流することでさらに冷却される(図17、図18の点G参照)。次に、第1後段側インジェクション管19から戻る冷媒と合流した(すなわち、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションが行われた)中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図17、図18の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図18に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、切換機構3を経由して、冷媒の放熱器として機能する熱源側熱交換器4に送られて、冷却源としての水や空気と熱交換を行って冷却される(図17、図18の点E参照)。そして、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒は、その一部が第1後段側インジェクション管19に分岐される。そして、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、第1後段側インジェクション弁19aにおいて中間圧付近まで減圧された後に、エコノマイザ熱交換器20に送られる(図17、図18の点J参照)。また、第1後段側インジェクション管19に分岐された後の冷媒は、エコノマイザ熱交換器20に流入し、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒と熱交換を行って冷却される(図17、図18の点H参照)。一方、第1後段側インジェクション管19を流れる冷媒は、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図17、図18の点K参照)、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒は、第1膨張機構5aによって飽和圧力付近まで減圧されてレシーバ18内に一時的に溜められる(図17、図18の点I参照)。そして、レシーバ18内に溜められた冷媒は、その一部が第1吸入戻し管95に分岐される。そして、第1吸入戻し管95を流れる冷媒は、第1吸入戻し弁95aにおいて低圧付近まで減圧された後に、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96に送られる(図17、図18の点S参照)。また、第1吸入戻し管95に分岐された後の冷媒は、深冷熱交換器としての過冷却熱交換器96に流入し、第1吸入戻し管95を流れる冷媒と熱交換を行ってさらに冷却される(図17、図18の点R参照)。一方、第1吸入戻し管95を流れる冷媒は、エコノマイザ熱交換器20において冷却された高圧の冷媒と熱交換を行って加熱されて(図17、図18の点U参照)、圧縮機構2の吸入側(ここでは、吸入管2a)を流れる冷媒に合流することになる。そして、エコノマイザ熱交換器20において冷却された後にさらに過冷却熱交換器96において冷却された高圧の冷媒は、利用側膨張機構5cに送られて、利用側膨張機構5cによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、冷媒の蒸発器として機能する利用側熱交換器6に送られる(図17、図18の点F参照)。そして、蒸発器としての利用側熱交換器6に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図17、図18の点A参照)。そして、この蒸発器としての利用側熱交換器6において加熱され蒸発した低圧の冷媒は、圧縮機構2に吸入される。このようにして、冷房運転が行われる。
そして、本変形例の構成においては、エコノマイザ熱交換器20及び第1後段側インジェクション管19を用いた中間インジェクションに加えて、中間冷却器7による後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却により、後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の温度をさらに低く抑えることができるため(図18の点C1、G参照)、上述の変形例4における効果に加えて、圧縮機構2から吐出される冷媒の温度をさらに低く抑えることができる(図18の点D参照)。これにより、圧縮機構2の消費動力をさらに減らし、運転効率の向上をさらに図ることができる。
<暖房運転>
暖房運転時は、切換機構3が図17の破線で示される加熱運転状態とされる。熱源側膨張機構としての第1膨張機構5a及び利用側膨張機構5cは、開度調節される。そして、切換機構3を加熱運転状態にしている際には、エコノマイザ熱交換器20による中間圧インジェクションを行わずに、第2後段側インジェクション管18cを通じて、気液分離器としてのレシーバ18から冷媒を後段側の圧縮要素2dに戻すレシーバ18による中間圧インジェクションを行うようにしている。より具体的には、第2後段側インジェクション開閉弁18dが開状態にされて、第1後段側インジェクション弁19aが全閉状態にされる。また、切換機構3を加熱運転状態にしている際には、過冷却熱交換器96を使用しないため、第1吸入戻し弁95aについても全閉状態にされる。さらに、冷却器開閉弁12が閉められ、また、中間冷却器バイパス管9の中間冷却器バイパス開閉弁11が開けられることによって、中間冷却器7が冷却器として機能しない状態とされる。
この冷媒回路510の状態において、圧縮機構2を駆動すると、低圧の冷媒(図17、図16の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧力まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図17、図16の点B1参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、冷房運転時とは異なり、中間冷却器7を通過せずに(すなわち、冷却されることなく)、中間冷却器バイパス管9を通過して(図17の点C1参照)、レシーバ18から第2後段側インジェクション管18cを通じて後段側の圧縮機構2dに戻される冷媒(図17、図16の点M参照)と合流することで冷却される(図17、図16の点G参照)。次に、第2後段側インジェクション管18cから戻る冷媒と合流した(すなわち、気液分離器としてのレシーバ18による中間圧インジェクションが行われた)中間圧の冷媒は、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図17、図16の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、冷房運転時と同様、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図16に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、切換機構3を経由して、冷媒の放熱器として機能する利用側熱交換器6に送られて、冷却源としての空気や水と熱交換を行って冷却される(図17、図16の点F参照)。そして、放熱器としての利用側熱交換器6において冷却された高圧の冷媒は、利用側膨張機構5cによって中間圧付近まで減圧された後に、レシーバ18内に一時的に溜められるとともに気液分離が行われる(図17、図16の点I、L、M参照)。そして、レシーバ18において気液分離されたガス冷媒は、第2後段側インジェクション管18cによってレシーバ18の上部から抜き出されて、上述のように、前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒に合流することになる。そして、レシーバ18内に溜められた液冷媒は、第1膨張機構5aによって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、冷媒の蒸発器として機能する熱源側熱交換器4に送られる(図17、図16の点E参照)。そして、蒸発器としての熱源側熱交換器4に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、加熱源としての水や空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図17、図16の点A参照)。そして、この蒸発器としての熱源側熱交換器4において加熱され蒸発した低圧の冷媒は、圧縮機構2に吸入される。このようにして、暖房運転が行われる。
そして、本変形例の構成においては、上述の変形例4と同様に、レシーバ18及び第1後段側インジェクション管19を用いた中間インジェクションによって、後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の温度を低く抑えることができるため、圧縮機構2から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができる。しかし、冷房運転時とは異なり、中間冷却器7を冷却器として機能させない状態にして、冷房運転と同様に中間冷却器7を冷却器として機能させた場合に比べて、中間冷却器7による外部への放熱ロスを抑えて、放熱器としての利用側熱交換器6における加熱能力の低下を抑えるようにしている。
(9)変形例6
上述の実施形態及びその変形例では、1台の一軸二段圧縮構造の圧縮機21によって、2つの圧縮要素2c、2dのうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮する二段圧縮式の圧縮機構2が構成されているが、三段圧縮式等のような二段圧縮式よりも多段の圧縮機構を採用してもよいし、また、単一の圧縮要素が組み込まれた圧縮機及び/又は複数の圧縮要素が組み込まれた圧縮機を複数台直列に接続することで多段の圧縮機構を構成してもよい。また、利用側熱交換器6が多数接続される場合等のように、圧縮機構の能力を大きくする必要がある場合には、多段圧縮式の圧縮機構を2系統以上並列に接続した並列多段圧縮式の圧縮機構を採用してもよい。
例えば、図19に示されるように、上述の変形例5における冷媒回路510(図17参照)において、二段圧縮式の圧縮機構2に代えて、二段圧縮式の圧縮機構103、104を並列に接続した圧縮機構102を採用した冷媒回路610にしてもよい。
第1圧縮機構103は、本変形例において、2つの圧縮要素103c、103dで冷媒を二段圧縮する圧縮機29から構成されており、圧縮機構102の吸入母管102aから分岐された第1吸入枝管103a、及び、圧縮機構102の吐出母管102bに合流する第1吐出枝管103bに接続されている。第2圧縮機構104は、本変形例において、2つの圧縮要素104c、104dで冷媒を二段圧縮する圧縮機30から構成されており、圧縮機構102の吸入母管102aから分岐された第2吸入枝管104a、及び、圧縮機構102の吐出母管102bに合流する第2吐出枝管104bに接続されている。尚、圧縮機29、30は、上述の実施形態及びその変形例における圧縮機21と同様の構成であるため、圧縮要素103c、103d、104c、104dを除く各部を示す符号をそれぞれ29番台や30番台に置き換えることとし、ここでは、説明を省略する。そして、圧縮機29は、第1吸入枝管103aから冷媒を吸入し、この吸入された冷媒を圧縮要素103cによって圧縮した後に中間冷媒管8を構成する第1入口側中間枝管81に吐出し、第1入口側中間枝管81に吐出された冷媒を中間冷媒管8を構成する中間母管82及び第1出口側中間枝管83を通じて圧縮要素103dに吸入させて冷媒をさらに圧縮した後に第1吐出枝管103bに吐出するように構成されている。圧縮機30は、第1吸入枝管104aから冷媒を吸入し、この吸入された冷媒を圧縮要素104cによって圧縮した後に中間冷媒管8を構成する第2入口側中間枝管84に吐出し、第2入口側中間枝管84に吐出された冷媒を中間冷媒管8を構成する中間母管82及び第2出口側中間枝管85を通じて圧縮要素104dに吸入させて冷媒をさらに圧縮した後に第2吐出枝管104bに吐出するように構成されている。中間冷媒管8は、本変形例において、圧縮要素103d、104dの前段側に接続された圧縮要素103c、104cから吐出された冷媒を、圧縮要素103c、104cの後段側に接続された圧縮要素103d、104dに吸入させるための冷媒管であり、主として、第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cの吐出側に接続される第1入口側中間枝管81と、第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cの吐出側に接続される第2入口側中間枝管84と、両入口側中間枝管81、84が合流する中間母管82と、中間母管82から分岐されて第1圧縮機構103の後段側の圧縮要素103dの吸入側に接続される第1出口側中間枝管83と、中間母管82から分岐されて第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104dの吸入側に接続される第2出口側中間枝管85とを有している。また、吐出母管102bは、圧縮機構102から吐出された冷媒を切換機構3に送るための冷媒管であり、吐出母管102bに接続される第1吐出枝管103bには、第1油分離機構141と第1逆止機構142とが設けられており、吐出母管102bに接続される第2吐出枝管104bには、第2油分離機構143と第2逆止機構144とが設けられている。第1油分離機構141は、第1圧縮機構103から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離して圧縮機構102の吸入側へ戻す機構であり、主として、第1圧縮機構103から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離する第1油分離器141aと、第1油分離器141aに接続されており冷媒から分離された冷凍機油を圧縮機構102の吸入側に戻す第1油戻し管141bとを有している。第2油分離機構143は、第2圧縮機構104から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離して圧縮機構102の吸入側へ戻す機構であり、主として、第2圧縮機構104から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油を冷媒から分離する第2油分離器143aと、第2油分離器143aに接続されており冷媒から分離された冷凍機油を圧縮機構102の吸入側に戻す第2油戻し管143bとを有している。本変形例において、第1油戻し管141bは、第2吸入枝管104aに接続されており、第2油戻し管143cは、第1吸入枝管103aに接続されている。このため、第1圧縮機構103内に溜まった冷凍機油の量と第2圧縮機構104内に溜まった冷凍機油の量との間に偏りに起因して第1圧縮機構103から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油の量と第2圧縮機構104から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油の量との間に偏りが生じた場合であっても、圧縮機構103、104のうち冷凍機油の量が少ない方に冷凍機油が多く戻ることになり、第1圧縮機構103内に溜まった冷凍機油の量と第2圧縮機構104内に溜まった冷凍機油の量との間の偏りが解消されるようになっている。また、本変形例において、第1吸入枝管103aは、第2油戻し管143bとの合流部から吸入母管102aとの合流部までの間の部分が、吸入母管102aとの合流部に向かって下り勾配になるように構成されており、第2吸入枝管104aは、第1油戻し管141bとの合流部から吸入母管102aとの合流部までの間の部分が、吸入母管102aとの合流部に向かって下り勾配になるように構成されている。このため、圧縮機構103、104のいずれか一方が停止中であっても、運転中の圧縮機構に対応する油戻し管から停止中の圧縮機構に対応する吸入枝管に戻される冷凍機油は、吸入母管102aに戻ることになり、運転中の圧縮機構の油切れが生じにくくなっている。油戻し管141b、143bには、油戻し管141b、143bを流れる冷凍機油を減圧する減圧機構141c、143cが設けられている。逆止機構142、144は、圧縮機構103、104の吐出側から切換機構3への冷媒の流れを許容し、かつ、切換機構3から圧縮機構103、104の吐出側への冷媒の流れを遮断するための機構である。
このように、圧縮機構102は、本変形例において、2つの圧縮要素103c、103dを有するとともにこれらの圧縮要素103c、103dのうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成された第1圧縮機構103と、2つの圧縮要素104c、104dを有するとともにこれらの圧縮要素104c、104dのうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成された第2圧縮機構104とを並列に接続した構成となっている。
中間冷却器7は、本変形例において、中間冷媒管8を構成する中間母管82に設けられており、第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒と第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cから吐出された冷媒とが合流したものを冷却する熱交換器である。すなわち、中間冷却器7は、2つの圧縮機構103、104に共通の冷却器として機能するものとなっている。このため、多段圧縮式の圧縮機構103、104を複数系統並列に接続した並列多段圧縮式の圧縮機構102に対して中間冷却器7を設ける際の圧縮機構102周りの回路構成の簡素化が図られている。
また、中間冷媒管8を構成する第1入口側中間枝管81には、第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cの吐出側から中間母管82側への冷媒の流れを許容し、かつ、中間母管82側から前段側の圧縮要素103cの吐出側への冷媒の流れを遮断するための逆止機構81aが設けられており、中間冷媒管8を構成する第2入口側中間枝管84には、第2圧縮機構103の前段側の圧縮要素104cの吐出側から中間母管82側への冷媒の流れを許容し、かつ、中間母管82側から前段側の圧縮要素104cの吐出側への冷媒の流れを遮断するための逆止機構84aが設けられている。本変形例においては、逆止機構81a、84aとして逆止弁が使用されている。このため、圧縮機構103、104のいずれか一方が停止中であっても、運転中の圧縮機構の前段側の圧縮要素から吐出された冷媒が中間冷媒管8を通じて、停止中の圧縮機構の前段側の圧縮要素の吐出側に達するということが生じないため、運転中の圧縮機構の前段側の圧縮要素から吐出された冷媒が、停止中の圧縮機構の前段側の圧縮要素内を通じて圧縮機構102の吸入側に抜けて停止中の圧縮機構の冷凍機油が流出するということが生じなくなり、これにより、停止中の圧縮機構を起動する際の冷凍機油の不足が生じにくくなっている。尚、圧縮機構103、104間に運転の優先順位を設けている場合(例えば、第1圧縮機構103を優先的に運転する圧縮機構とする場合)には、上述の停止中の圧縮機構に該当することがあるのは、第2圧縮機構104に限られることになるため、この場合には、第2圧縮機構104に対応する逆止機構84aだけを設けるようにしてもよい。
また、上述のように、第1圧縮機構103を優先的に運転する圧縮機構とする場合においては、中間冷媒管8が圧縮機構103、104に共通に設けられているため、運転中の第1圧縮機構103に対応する前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒が中間冷媒管8の第2出口側中間枝管85を通じて、停止中の第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104dの吸入側に達し、これにより、運転中の第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒が、停止中の第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104d内を通じて圧縮機構102の吐出側に抜けて停止中の第2圧縮機構104の冷凍機油が流出して、停止中の第2圧縮機構104を起動する際の冷凍機油の不足が生じるおそれがある。そこで、本変形例では、第2出口側中間枝管85に開閉弁85aを設け、第2圧縮機構104が停止中の場合には、この開閉弁85aによって第2出口側中間枝管85内の冷媒の流れを遮断するようにしている。これにより、運転中の第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒が中間冷媒管8の第2出口側中間枝管85を通じて、停止中の第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104dの吸入側に達することがなくなるため、運転中の第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒が、停止中の第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104d内を通じて圧縮機構102の吐出側に抜けて停止中の第2圧縮機構104の冷凍機油が流出するということが生じなくなり、これにより、停止中の第2圧縮機構104を起動する際の冷凍機油の不足がさらに生じにくくなっている。尚、本変形例においては、開閉弁85aとして電磁弁が使用されている。
また、第1圧縮機構103を優先的に運転する圧縮機構とする場合においては、第1圧縮機構103の起動に続いて第2圧縮機構104を起動することになるが、この際、中間冷媒管8が圧縮機構103、104に共通に設けられているため、第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素103cの吐出側の圧力及び後段側の圧縮要素103dの吸入側の圧力が、前段側の圧縮要素103cの吸入側の圧力及び後段側の圧縮要素103dの吐出側の圧力よりも高くなった状態から起動することになり、安定的に第2圧縮機構104を起動することが難しい。そこで、本変形例では、第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cの吐出側と後段側の圧縮要素104dの吸入側とを接続する起動バイパス管86を設けるとともに、この起動バイパス管86に開閉弁86aを設け、第2圧縮機構104が停止中の場合には、この開閉弁86aによって起動バイパス管86内の冷媒の流れを遮断し、かつ、開閉弁85aによって第2出口側中間枝管85内の冷媒の流れを遮断するようにし、第2圧縮機構104を起動する際に、開閉弁86aによって起動バイパス管86内に冷媒を流すことができる状態にすることで、第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cから吐出される冷媒を第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素104cから吐出される冷媒に合流させることなく、起動バイパス管86を通じて後段側の圧縮要素104dに吸入させるようにして、圧縮機構102の運転状態が安定した時点(例えば、圧縮機構102の吸入圧力、吐出圧力及び中間圧力が安定した時点)で、開閉弁85aによって第2出口側中間枝管85内に冷媒を流すことができる状態にし、かつ、開閉弁86aによって起動バイパス管86内の冷媒の流れを遮断して、通常の冷房運転に移行することができるようになっている。尚、本変形例において、起動バイパス管86は、その一端が第2出口側中間枝管85の開閉弁85aと第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104dの吸入側との間に接続され、その他端が第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cの吐出側と第2入口側中間枝管84の逆止機構84aとの間に接続されており、第2圧縮機構104を起動する際に、第1圧縮機構103の中間圧部分の影響を受けにくい状態にできるようになっている。また、本変形例においては、開閉弁86aとして電磁弁が使用されている。
また、本変形例の空気調和装置1の冷房運転や暖房運転等の動作は、圧縮機構2に代えて設けられた圧縮機構102によって、圧縮機構102周りの回路構成がやや複雑化したことによる変更点を除いては、上述の変形例5における動作(図17、図18、図16及びその関連記載)と基本的に同じであるため、ここでは、説明を省略する。
そして、本変形例の構成においても、上述の変形例5と同様の作用効果を得ることができる。
また、本変形例では、深冷熱交換器として、過冷却熱交換器96を使用しているが、上述の変形例1、2のように、過冷却熱交換器96に代えて液ガス熱交換器90を使用したり、過冷却熱交換器96とともに液ガス熱交換器90を使用してもよい。
(10)他の実施形態
以上、本発明の実施形態及びその変形例について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上述の実施形態及びその変形例においては、エコノマイザ熱交換器20の冷却源となる冷媒が流れる第1後段側インジェクション管19が、エコノマイザ熱交換器20の上流側の位置から分岐されているが、エコノマイザ熱交換器20の下流側の位置から分岐するようにしてもよい。また、上述の実施形態及びその変形例においては、過冷却熱交換器96の冷却源となる冷媒が流れる第1吸入戻し管95が、過冷却熱交換器96の上流側の位置から分岐されているが、過冷却熱交換器96の下流側の位置から分岐するようにしてもよい。
また、上述の実施形態及びその変形例において、利用側熱交換器6を流れる冷媒と熱交換を行う加熱源又は冷却源としての水やブラインを使用するとともに、利用側熱交換器6において熱交換された水やブラインと室内空気とを熱交換させる二次熱交換器を設けた、いわゆる、チラー型の空気調和装置に本発明を適用してもよい。
また、上述のチラータイプの空気調和装置の他の型式の冷凍装置であっても、超臨界域で作動する冷媒を冷媒として使用して多段圧縮式冷凍サイクルを行うものであれば、本発明を適用可能である。
また、超臨界域で作動する冷媒としては、二酸化炭素に限定されず、エチレン、エタンや酸化窒素等を使用してもよい。