JP5403632B2 - 硫化鉄リチウム複合体の製造方法 - Google Patents

硫化鉄リチウム複合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、硫化鉄リチウム複合体の製造方法、及び該方法で得られる硫化鉄リチウム複合体の用途に関する。
近年の携帯電子機器・ハイブリッド車等の高性能化により、これらの用途に用いられる二次電池(特にリチウム電池)には、益々高容量化が求められている。現行のリチウム二次電池では、負極に比べて正極の高容量化が進んでおらず、比較的高容量と言われるニッケル酸リチウム系材料でも190〜220mAh/g程度である。
一方、硫黄は理論容量が約1670mAh/gと高く、高容量電極材料の有望な候補の一つであるが、硫黄単体は電子伝導性が低く、現行の非水系電解液を用いた電池系では電解液中に溶出するという問題がある。これに対して、金属硫化物は半導性以上の導電性を有し、電解液への溶出が比較的少なく、容量も600〜900mAh/g程度が見込まれるために、現行の酸化物系材料に比べて、高容量化が期待できる。
しかしながら、金属硫化物はサイクル特性に問題があり、その原因として、(1)充放電に伴う構造的な不可逆性、(2)活物質の集電体からの剥離、(3)活物質成分の電解液への溶出、などが指摘されている。更に、リチウムを含んでいないため、現行の負極であるカーボン系材料が使えず、負極としてリチウムを含む化合物を使わなければならず、その選択幅が狭いという問題もある。
サイクル特性の問題に関して、上記の原因(1)および(2)については、Liの挿入・脱離に伴う活物質の構造変化を低減すれば、体積膨張・収縮も抑制され、サイクル特性が改善されると考えられる。そのためには、金属硫化物にあらかじめLiを挿入した化合物を作製しておけば、その脱離・挿入に伴う構造変化および体積変化を抑制できると考えられる。ただし、非水系電解液を用いた電池系で充放電させた際に出現する相を含んだ化合物については、充放電の際に同じ構造変化を経るので、サイクル特性の改善効果は望めない。例えば、FeS2については、非水系電解液を用いた電池系で充放電させた際に、Li2FeS2、FeSy等が中間相として出現するが、その1つであるLi2FeS2を実際に合成して同様に充放電させても、同じ構造変化を経て、最終的にはFeS2の場合と同様の充放電末に至るため、サイクル特性の改善効果は無いと考えられる(非特許文献1)。従って、他の組成・構造を有する含Li化合物を作製する必要がある。
FeS2は、電解液にLiCl-KCl溶融塩、負極にLiAl合金を用いて450℃で作動させれば容量劣化をほとんど起こさず効率良く充放電させることができる。この充放電の際に出現する中間相は、KFeS2、Li3Fe2S4、Li2.33Fe0.67S2、Fe1-xS、Li2FeS2、LiK6Fe24S26Cl等であるが(非特許文献2)、この中で、非水系電解液を用いた電池系で中間相として出現せず、Liを含有しており、その含有比率の高いもの(Li/Fe≧1.5)が上記の含Li化合物の候補になりうる。すなわち、Li3Fe2S4、Li2.33Fe0.67S2を含む金属硫化物複合体を作製すれば、非水系電解液を用いた電池系でサイクル特性が向上すると期待される。しかも、これらはリチウムを含む化合物であるため、負極にリチウム含有化合物を用いる必要がなく、上述した負極の選択幅が狭いという問題も解決する。
これらの化合物(Li3Fe2S4、Li2.33Fe0.67S2)の合成方法については、溶融硫黄を含む溶媒中で、FeSとLi2Sを反応させる方法が報告されている(下記特許文献1参照)。この方法では、反応させるために数時間程度の熱処理が必要とされており、そのため、長時間の加熱により揮発し易いLi、S成分が欠損した化合物が得られ易いと考えられる。また、溶融硫黄を含む溶媒中で反応させるため、過剰の硫黄を蒸発させて除去する工程が必要とされており、そのため、プロセスが多段で煩雑となり、製造コストの観点から不利である。
また、FeS2とLi2Sを塩化リチウム(LiCl)の溶融塩溶媒中でアルゴン雰囲気下、700℃で2時間反応させ、その後、ピリジン中で8時間還流させてLiClを除去する方法も報告されている(下記特許文献2参照)。この方法も上記と同様に長時間の熱処理が必要とされているため、揮発し易いLi、Sが欠損した化合物が得られ易いと考えられる。更に、この方法は反応溶媒に溶融塩を用いているため、反応後、溶融塩を除去するため有機溶媒中で長時間(8時間)の還流処理が必要となり、反応生成物を得るまでに長時間の煩雑なプロセスを要し、しかもエネルギー投入の観点から高コストとなる。
以上の様な従来技術の現状から、高性能リチウム二次電池の普及には、サイクル特性に優れ、高容量を有し、負極の選択幅が広い正極材料となり得るLi3Fe2S4、Li2.33Fe0.67S2等のリチウム含有金属硫化物について、短時間で簡便に効率良く製造できる方法の開発が不可欠と考えられる。
特表2003-502265 特表2004-522674
R. Fang, J. R. Dahn, and C. H. W. Jones, J. Electrochem. Soc., 136, 3206 (1989). Z. Tomczuk, B. Tani, N. C. Otto, M. F. Roche, and D. R. Vissers, J. Electrochem. Soc., 129, 925 (1982).
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、Li3Fe2S4、Li2.33Fe0.67S2等のリチウム含有金属硫化物又はこれらを含む複合体を、短時間で簡便に効率良く作製できる方法を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、硫黄含有化合物、鉄含有化合物及びリチウム含有化合物を混合し、水分を含まない非酸化性雰囲気下において、通電焼結法を用いて熱処理する方法によれば、Li3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2のいずれか一方又は両方を含む硫化鉄リチウム複合体を、短時間の熱処理で簡便に効率良く作製できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の硫化鉄リチウム複合体の作製方法およびその用途を提供するものである。
1. 硫黄含有化合物、鉄含有化合物及びリチウム含有化合物からなる原料を、水分を含まない非酸化性雰囲気下において、通電焼結法によって熱処理することを特徴とする、Li3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2のいずれか一方又は両方を50モル%以上含む硫化鉄リチウム複合体の製造方法。
2. 硫黄含有化合物、鉄含有化合物及びリチウム含有化合物からなる原料が、下記(i)〜(iii)項のいずれかに記載したものである上記項1に記載の方法:
(i)硫黄、鉄及びリチウムのいずれかの元素を1種類ずつ含む3種類以上の化合物の混合物、
(ii)硫黄、鉄及びリチウムの内の2種類以上の元素を同時に含む2種類以上の化合物の混合物、
(iii)硫黄、鉄及びリチウムのいずれかの元素を1種類含む1種又は2種以上の化合物と、硫黄、鉄及びリチウムの内の2種類以上の元素を同時に含む1種又は2種以上の化合物の混合物。
3. 通電焼結法による熱処理が、原料を導電性容器に収容し、該容器に直流パルス電流を通電する方法である上記項1又は2に記載の硫化鉄リチウム複合体の製造方法。
4. 水分を含まない非酸化性雰囲気が、不活性ガス雰囲気又は還元性ガス雰囲気である上記項1〜3のいずれかに記載の硫化鉄リチウム複合体の製造方法。
5. 熱処理温度が300〜1600℃である上記項1〜4のいずれかに記載の硫化鉄リチウム複合体の製造方法。
6. 上記項1〜5のいずれかの方法で得られた、Li3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2のいずれか一方又は両方を50モル%以上含む硫化鉄リチウム複合体からなるリチウム二次電池用正極活物質。
7. 上記項6に記載の正極活物質を構成要素とするリチウム二次電池。
以下、本発明の硫化鉄リチウム複合体の製造方法について具体的に説明する。
(I)原料粉末
本発明では、原料として、硫黄含有化合物、鉄含有化合物及びリチウム含有化合物を用いる。
硫黄含有化合物、鉄含有化合物及びリチウム含有化合物の各化合物としては、硫黄、鉄及びリチウムの各元素を一種類ずつ含む化合物を用いる他、硫黄、鉄及びリチウムの内の2種類以上の元素を同時に含む化合物を用いても良い。例えば、硫黄と鉄を含む化合物については、硫黄含有化合物及び鉄含有化合物の両方の化合物として用いることができる。従って、本発明では、原料として、例えば、下記(i)〜(iii)項のいずれかに記載した化合物の組み合わせを用いることができる。
(i)硫黄、鉄及びリチウムのいずれかの元素を1種類ずつ含む3種類以上の化合物の混合物、
(ii)硫黄、鉄及びリチウムの内の2種類以上の元素を同時に含む2種類以上の化合物の混合物、
(iii)硫黄、鉄及びリチウムのいずれかの元素を1種類含む1種又は2種以上の化合物と、硫黄、鉄及びリチウムの内の2種類以上の元素を同時に含む1種又は2種以上の化合物の混合物。
これらの化合物は、リチウム及び鉄以外の金属元素を含まない化合物であることが好ましく、更に、硫黄、鉄及びリチウムの各元素以外の元素については、後述する還元雰囲気での熱処理により離脱・揮発していくものが望ましい。
この様な化合物の具体例としては、硫黄含有化合物として、硫黄(S)、硫化リチウム(Li2S)、ベンゾチオフェン(C8H6S)、硫化鉄(FeS、FeS2)などを例示でき、鉄含有化合物として、金属鉄(Fe)、硫化鉄(FeS、FeS2)、硫酸鉄(FeSO4)などを例示でき、リチウム化合物として、硫化リチウム(Li2S)、炭酸リチウム(Li2CO3)、水酸化リチウム(LiOH)などを例示できる。この中で、特に生成物である硫化鉄リチウムの構成元素のみから成り、最小限の原料数で反応させることのできる硫化鉄(FeS2)と硫化リチウム(Li2S)の組み合わせが最も好ましい。これら原料の形状については特に限定はないが、平均粒径0.1〜100μm程度の粉末状であることが好ましい。
上記した硫黄含有化合物、鉄含有化合物及びリチウム含有化合物からなる原料を混合して熱処理すると、比較的低温で反応し易いFe源とS源の化合物がまず反応してFeSx(1≦x≦2)が生成する。次にこのFeSxとLi源の化合物が反応し、Fe-S-Li相図(非特許文献2参照)に従って、Li3Fe2S4およびLi2+yFe1-yS2(0≦y≦0.33)が生成し、残りがFeS2となると考えられる。但し、Li2+yFe1-yS2は室温に冷却する過程で分解してLi2.33Fe0.67S2となる。すなわち、熱処理による反応は、
LilFemSn→ Li3Fe2S4+ Li2+yFe1-yS2+ FeS2
→ Li3Fe2S4 + Li2.33Fe0.67S2 + FeS2
と表記できる。ここでl、m、nはそれぞれ原料粉に含まれるLi、Fe、Sの原子比である。l/m比およびn/m比が大きいほどLi3Fe2S4とLi2.33Fe0.67S2の生成比が増大し、相対的にFeS2の存在比が低下するので望ましい。
硫黄含有化合物、鉄含有化合物及びリチウム含有化合物からなる原料の混合割合については、特に限定的ではないが、硫黄とリチウムについては、熱処理により揮発・離脱し易いために、鉄に対するリチウムの比率と硫黄の比率を、目的とする硫化鉄リチウム複合体における各元素の比率より多くすることが好ましい。
例えば、鉄に対するリチウムの比率(モル比)については、目的とする複合体における比率より5%程度以上高くすることが好ましく、10%程度以上高くすることが好ましく、10〜50%程度高くすることがより好ましい。鉄に対する硫黄の比率(モル比)についても、目的とする複合体における硫黄の比率より5%程度以上高くすることが好ましく、10%程度以上高くすることが好ましく、10〜50%程度高くすることがより好ましい。但し、硫黄については、目的とする複合体における硫黄の比率より50%程度以上多く含まれていてもよい。以上の基準に従って、使用する原料の種類に応じて、鉄に対するリチウムと硫黄の比率を決めればよい。
原料の混合割合の具体例を挙げれば、Li3Fe2S4とLi2.33Fe0.67S2の内で、鉄に対するリチウムと硫黄の比率がより低いLi3Fe2S4が50モル%含まれる複合体が形成される場合、すなわち、生成物が1/2Li3Fe2S4+1/2FeS2である場合には、各元素の原子比は、Li:Fe:S=1:1:2となり、Li/Fe(モル比)=1およびS/Fe(モル比)=2となる。従って、Li3Fe2S4の存在比が50モル%以上の複合体を得るためには、Li/Fe(モル比)≧1かつS/Fe(モル比)≧2とすることが必要であり、反応途中でLiおよびSが揮発し易いことを考慮すれば、Li/Fe(モル比)≧1.05程度およびS/Fe(モル比)≧2.1程度とすることが好ましい。
また、最終生成物(Li3Fe2S4+Li2.33Fe0.67S2+FeS2)が、Li3Fe2S4とLi2.33Fe0.67S2を1:1のモル比で含み、これらの合計量が50モル%となる場合、すなわち、1/2(Li3Fe2S4+Li2.33Fe0.67S2)+1/2FeS2からなる複合体が形成される場合には、各元素の原子比は、Li:Fe:S=16:11:24となり、Li/Fe(モル比)=1.45およびS/Fe(モル比)=2.18となる。従って、この場合にLi3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2の合計含有量が50モル%程度以上の複合体を形成するためには、Li/Fe(モル比)≧1.45かつS/Fe(モル比)≧2.18とすることが必要であり、反応途中でLiおよびSが揮発し易いことを考慮すれば、Li/Fe(モル比)≧1.5程度およびS/Fe(モル比)≧2.3程度とすることが好ましい。
また、例えば、硫化鉄(FeS2)と硫化リチウム(Li2S)を原料として、Li3Fe2S4を合成する場合には、FeS2:Li2S(モル比)=1:0.75とすれば、Feに対するLiの比率が目的物と同一になるが、LiおよびSが過剰となるように、FeS2:Li2S=1:0.8〜1.13程度の範囲とすることが好ましい。
(II)通電焼結法
本発明では、硫黄含有化合物、鉄含有化合物及びリチウム含有化合物からなる原料を通電焼結法によって熱処理することが必要である。通電焼結法による製造方法では、上記した原料を導電性容器に収容し、該容器に直流パルス電流を通電することによって、ジュール熱による導電性容器の加熱が起こり、容器内の原料が加熱されて出発原料同士が反応して、硫化鉄リチウム複合体が形成される。この方法では、30分以下という短時間で目的とする硫化鉄リチウム複合体を製造できるので、揮発しやすいLiやS等の欠損が少なく、目的とするLi3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2のいずれか一方又は両方を50モル%以上含む硫化鉄リチウム複合体を得ることができる。
この際、形成される硫化鉄リチウム複合体に含まれるLi3Fe2S4とLi2.33Fe0.67S2は、空気中の湿気により容易に加水分解して硫化水素を発生するため、通電焼結法による熱処理は水分の不存在下に行う。更に、原料に含まれる硫黄の酸化などを防止するために、この熱処理は、非酸化性雰囲気下に行う。例えば、Ar、N2などの不活性ガス雰囲気下、H2などの還元性雰囲気下等で反応を行えば、水の不存在下における非酸化性雰囲気中での熱処理反応となる。これにより、空気中の湿気に触れることによる加水分解が防止され、硫黄の酸化も抑制される。尚、水分の不存在下とは、完全に水分が不存在でなくてもよく、例えば、露点-30℃以下程度の微量の水分が含まれていても良い。
通電焼結法による熱処理は、硫黄含有化合物、鉄含有化合物及びリチウム含有化合物からなる原料を導電性容器に収容し、該容器に直流パルス電流を通電することによって行うことができる。
導電性容器の材質については特に限定的ではないが、十分な導電性と、直流パルス電流を通電した際の加熱温度に対する耐熱性を有し、硫黄やリチウムと反応して化合物を生成しない成分から成り、且つ、十分な強度を有するものであればよい。例えば、炭素(黒鉛等)、タングステンカーバイド等を好適に使用できる。
導電性容器として十分な密閉状態を確保できる容器を用いる場合には、該導電性容器内を、不活性ガス雰囲気、還元性雰囲気などとすればよい。
導電性容器は完全な密閉状態でなくてもよく、出発原料、特に硫黄やリチウムの蒸散を防止できる程度の閉鎖状態を確保できれば、不活性ガス、還元性ガスなど気体が多少透過してもよい。この様な不完全な密閉状態の導電性容器を用いる場合には、該導電性容器を反応室内に収容して、該反応室内を不活性ガス雰囲気、還元性雰囲気などとすればよい。これにより、出発原料の反応を水分不存在の非酸化性雰囲気下で行うことが可能となる。この場合、例えば、反応室内を0.1MPa程度以上の不活性ガス雰囲気、還元性ガス雰囲気などとすれば、導電性容器からの硫黄およびリチウムの蒸散を有効に抑制できる。
上記した様に、硫黄含有化合物、鉄含有化合物及びリチウム含有化合物からなる原料を導電性容器中に収容して、該容器に直流パルス電流を通電する方法を採用することによって、溶融、気化した硫黄およびリチウムが該容器から漏出することを防止でき、30分程度以下の短時間で熱処理を完了させることができる。このため、硫黄およびリチウムの蒸散によるロスが少なくなり、硫黄原子比およびリチウム原子比の高いLi3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2のいずれか一方又は両方を含む硫化鉄リチウム複合体を効率良く製造できる。
図1は、上記した通電焼結法に用いる通電処理装置の一例の模式図である。図1に示される通電処理装置1は、原料2を装填するダイ(導電性容器)3と上下一対のスペーサ(該容器の蓋材)4及び5とを有する。スペーサ(蓋材)4及び5は、それぞれパンチ電極6及び7に支持されており、パンチ電極6及び7によって、例えば、1MPa程度の圧力で加圧されてダイ3に押し付けられている。これにより、ダイ3とスペーサ4及び5からなる導電性容器は、密閉状態となり、加熱反応時に硫黄およびリチウムの蒸散を防止できる。
スペーサ(蓋材)4、5は導電性部材で構成されており、パルス電源11により発生した直流パルス電流がパンチ電極6及び7を介して、スペーサ(蓋材)4、5及びダイ(導電性容器)3に供給される。ダイ3,スペーサ4、5及びパンチ電極6及び7からなる通電部は、水冷真空チャンバー8に収容されており、チャンバー内部は雰囲気制御機構15により所定の雰囲気に制御される。これにより、不活性ガス雰囲気、還元性雰囲気などにおける反応が可能となる。図1の装置では、試料近傍が加熱されると硫黄およびリチウムが揮発するが、型材(導電性容器)3の上下がスペーサ(蓋材)4,5で囲われているため、型材外への硫黄およびリチウムの蒸散によるロスは少なく、反応の効率は高い。
制御装置12は、加圧機構13、パルス電源11、雰囲気制御機構15、水冷却機構16、10、及び温度計測装置17を駆動制御するものである。制御装置12は加圧機構13を駆動し、パンチ電極6、7が所定の圧力でスペーサ4,5を圧縮するよう構成されている。
硫黄含有化合物、鉄含有化合物及びリチウム含有化合物からなる原料(例えば、硫化鉄FeS2と硫化リチウムLi2S)を導電性容器に充填する方法については、特に限定的ではないが、反応が均一に進行し易いように、できるだけ均一に充填することが好ましい。
上記した方法では、原料粉末を収容した導電性容器に直流パルス電流を通電することによって、ジュール熱による導電性容器の加熱が起こり、これにより原料が加熱される。その結果、出発原料粉同士の相互拡散による反応が生じて、最終的にはLi3Fe2S4及び/又はLi2.33Fe0.67S2を含む所望の硫化鉄リチウム複合体が生成する。
直流パルス電流を通電することによって加熱される導電性容器の温度は、原料である硫黄含有化合物、鉄含有化合物、及びリチウム含有化合物の種類や形状などに応じて適宜選択することができるが、通常300〜1600℃程度とすればよい。300℃未満では原料粉同士の反応が不十分となる場合があり、また、1600℃以上では生成物からの硫黄およびリチウム脱離による分解が顕著に起こり得るため好ましくない。特に、500〜1400℃程度の加熱が好適である。
加熱のために印加するパルス電流は、例えばパルス幅2〜3ミリ秒程度で、周期は3Hz〜300Hz程度のパルス状ON−OFF直流電流を用いればよい。電流値は導電性容器の種類及び大きさにより異なるが、例えば内径15mm、外径30mmの黒鉛容器を用いた場合には300〜3000A程度が好適である。処理時は、導電性容器の温度をモニターしながら電流値を増減させ、所定の温度を管理できるように電流値を制御するか、もしくは投入電気エネルギー量(Wh値)を制御すればよい。
通電処理による加熱時間については、使用する試料の量、処理温度などによって異なるので、一概に規定できないが、熱処理過程における硫黄およびリチウムの揮発・離脱を抑制するため、通常、室温から上記した加熱温度範囲に1分〜10分程度で到達させればよい。その後、必要に応じて、加熱温度範囲に5分程度まで保持しても良い。この方法によれば、30分を下回る短時間で目的とする硫化鉄リチウム複合体を得ることができる。
所定の温度で通電処理を行った試料は、冷却後、導電性容器を不活性雰囲気下、例えば、アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内に移し、その中で取り出すことによって空気中の湿気との反応による加水分解を防止し、所望の硫化鉄リチウム複合体を回収することができる。反応が十分に進行していない場合には、得られた試料に原料粉を追加するなどして再度上記の通電処理を行えば良い。得られる硫化鉄リチウム複合体は、Li3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2のいずれか一方又は両方を50モル%以上含んでおり、その他に含まれる相としては、これら以外の組成比のLixFeySz(例えば、Li2FeS2)、硫化鉄(FexSy)等が挙げられる。
(III)硫化鉄リチウム複合体
上記した方法によれば、反応開始から反応完了まで30分間未満という短時間で、Li3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2のいずれか一方又は両方を50モル%以上含む硫化鉄リチウム複合体を得ることができる。この複合体中のLiを含む相は、溶融塩電解質を用いた電池系で二硫化鉄(FeS2)を充放電させた際に出現する相であり、非水系電解液を用いた室温作動の電池系で中間相として出現する相ではない。このため、リチウム二次電池の正極活物質とした場合に、充放電の際にLiの挿入・脱離に伴う構造変化が抑制され、高容量を示しかつサイクル特性が向上する。また同様の理由で充放電の際の体積膨張・収縮の変化も少ないため、集電体からの剥離も抑制され、サイクル特性が向上する。更に、該複合体には、最初からLiが含まれており、充電開始により充放電を行えるため、負極の選択幅が飛躍的に広くなる。
該複合体には、Li3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2のいずれか一方又は両方が50モル%程度以上含まれていれば良い。それ以外に含まれる相としては、他の組成比のLixFeySz(例えば、Li2FeS2)、硫化鉄(FexSy)等が許容され、更に、未反応の原料が含まれる場合がある。これ以外の相、例えばLi2CO3など、Liの充放電反応に寄与しない相が含まれる場合には、得られる複合体の充放電容量が低下するので好ましくない。
通常の充放電試験では、電池の構成部材や組み方により、その特性に5〜10%程度の誤差が生じるため、Li3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2のいずれか一方又は両方を50モル%以上含有していれば明瞭なサイクル特性の改善効果が認められる。また、負極の選択幅を広げるためには、充放電可能なリチウムが金属Feに対してLi/Fe(モル比)≧0.5を満たす程度含まれていることが好ましいが、Li3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2のいずれか一方又は両方を50モル%以上含有していれば、Li/Fe(モル比)≧0.5という条件を満たすことができる。
本発明方法によって得られる硫化鉄リチウム複合体は、リチウム二次電池用正極活物質として有効に利用できる。該複合体を用いるリチウム二次電池は、公知の手法により製造することができる。すなわち、正極材料として、本発明の複合体を使用する他は、負極材料として、公知の金属リチウム、炭素系材料(黒鉛、活性炭)などを使用し、電解液として、公知のエチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの溶媒に過塩素酸リチウム、LiPF6などのリチウム塩を溶解させた溶液を使用し、さらにその他の公知の電池構成要素を使用して、常法に従って、リチウム二次電池を組立てればよい。
本発明の製造方法によれば、Li3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2のいずれか一方又は両方を50モル%以上含有する硫化鉄リチウム複合体を、比較的簡単な方法によって、短時間に効率良く製造することができる。
本発明方法により得られる硫化鉄リチウム複合体は、ベースとなる硫化鉄系の有する高い充放電容量を維持した上で、サイクル特性が改善されたものであり、例えば、リチウム二次電池の正極材料として使用する場合に、高い理論容量と良好なサイクル性能を有する材料となる。
通電処理装置の一例の概略図である。 実施例1、実施例2および比較例2で作製した試料のX線回折パターンを示す図面である。 実施例1、実施例2、比較例1および比較例2で作製した試料のリチウム二次電池の充放電特性を示すグラフである。 実施例1、実施例2、比較例1および比較例2で作製した試料のリチウム二次電池のサイクル特性および初期放電容量に対する容量維持率を示すグラフである。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。
実施例1
FeS2粉末(平均粒径約6μm)とLi2S(平均粒径約16μm)をモル比1:1で秤量し、遊星ボールミルを用いて200rpmの回転速度で混合し、得られた混合粉末を内径15mmの円筒状の黒鉛型材(導電性容器)内に充填した。これを、図1に示す通電処理装置の真空チャンバー8内にセットし、該チャンバー8内を約20Paまで減圧後、アルゴンガスを大気圧になるまで導入した。次いで、黒鉛型材(導電性容器)3の上下を該型材の蓋となるスペーサ4,5で挟み、上下のパンチ電極6,7によって、約1.5MPaの圧力でスペーサ4,5を黒鉛型材3に押しつけた。これにより、黒鉛型材(導電性容器)3を密閉状態とすると共に、電極6,7と黒鉛型材(導電性容器)3との間の導電性を確保した。次いで、電極6,7より、最大約2050Aのパルス電流(パルス幅2.5ミリ秒のON−OFF直流電流、周期29Hz)を黒鉛型材(導電性容器)3に通電した。黒鉛型材は約200℃/分の昇温速度で加熱され、パルス電流の通電開始約6分後に1200℃に到達した。この温度に到達後、直ちに電流の通電と加圧を停止し(保持時間0分)、自然放冷させた。室温に冷却した後、黒鉛型材を直ちにアルゴンガス雰囲気下のグローブボックスに移し、試料を型材から取り出し、黒灰色の粉末を得た。
得られた試料は図2の粉末X線回折図に示す通り、Li3Fe2S4、Li2.33Fe0.67S2、FeS2から成る複合体であることが分かった。既報の文献(JCPDS 36-1087、36-1089、42-1340)を基に、各相の最強度あるいはそれに準ずる強度を有するピークであり、かつお互いに重ならないピークとして、Li3Fe2S4については2θ=12.5o、Li2.33Fe0.67S2については2θ=20.6o、FeS2については2θ=32.9oのピークを選び、各ピークの強度比を求めると、Li3Fe2S4:Li2.33Fe0.67S2:FeS2=52:35:13となった。従って、Li3Fe2S4とLi2.33Fe0.67S2の合計量は複合体全体の約87モル%程度と推定され、両者の合計量が50モル%を超える試料であることが分かった。
この試料粉末をリチウム二次電池の正極材料として用い、負極にリチウム金属、集電体にアルミニウムメッシュ、電解液としてLiPF6をエチレンカルボネート/ジメチルカルボネート混合液に溶解させたものを用いて、電流密度46.7mA/gにおいて、カットオフ1.0−3.0Vにおける定電流測定で充電開始により充放電試験を行った。
図3に、上記した方法で得られたリチウム二次電池の充放電曲線を示す。初期充電容量は約330mAh/gであり、充電より作動可能な活物質であることが分かった。これは、挿入・脱離可能なリチウムを含むLi3Fe2S4、Li2.33Fe0.67S2が含まれているためであり、初期充電をほとんど示さない金属硫化物のみのFeS2(約0.1mAh/g、比較例1)とは大きな相違点である。このため、上記方法で得られた複合体を正極活物質とすることによって、負極にリチウム含有活物質を用いる必要がなく、負極の選択幅を大幅に広げることが可能となる。
また、初期放電容量は約740mAh/gであり、FeS2を正極活物質とする場合(約790mAh/g)とほぼ同程度であったが、Li3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2を含んでいるため放電平均電圧は約1.67Vであり、FeS2を正極活物質とする場合(約1.45V)より高く、また、放電容量と放電平均電圧の積である電力量も約1230mWh/gであり、FeS2を正極活物質とする場合(約1150mWh/g)よりも大きい値を示した。
図4に、実施例1の方法で得られた複合体を正極活物質とするリチウム二次電池のサイクル特性を示す。該複合体を活物質とするリチウム二次電池は、20サイクル後の放電容量は約350mAh/g(容量維持率約48%)であり、FeS2を活物質とする場合(約140mAh/g、容量維持率約18%、比較例1)に比べて、著しくサイクル特性が改善されていた。図3に示す通り、20サイクル目の放電平均電圧は約1.68Vであり、FeS2を活物質とする場合(約1.55V)よりも高く、放電容量と放電平均電圧の積である電力量も約590mWh/gとなり、FeS2を活物質とする場合(約220mWh/g)よりも著しく高い値を示した。
以上から、実施例1で得られた硫化鉄リチウム複合体は、充電より作動可能な活物質であって、金属硫化物単体と比較して、サイクル特性が良好で、高容量を示すリチウム二次電池の正極活物質であることが判る。
実施例2
FeS2(平均粒径約6μm)とLi2S(平均粒径約16μm)をモル比1:1で秤量し、以下、1000℃で熱処理した以外は実施例1と全く同様にして試料を作製した。
得られた試料は図2の粉末X線回折図に示す通り、Li3Fe2S4、Li2.33Fe0.67S2、FeS2から成る複合体であることが分かった。実施例1の場合と同様にして、各相のピーク強度比を求めると、Li3Fe2S4:Li2.33Fe0.67S2:FeS2=31:27:42となり、Li3Fe2S4とLi2.33Fe0.67S2の合計量は複合体全体の約58モル%程度と推定され、両者の合計量が50モル%を超える試料であることが分かった。
上記した方法で得られた試料粉末をリチウム二次電池の正極材料として用いること以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、充放電試験を行った。充放電特性は図3に示す通りであり、初期充電は約280mAh/gであり、充電より作動可能な活物質であることが分かった。これは、挿入・脱離可能なリチウムを含むLi3Fe2S4、Li2.33Fe0.67S2が含まれているためで、初期充電をほとんど示さない金属硫化物のみのFeS2(約0.1mAh/g、比較例1)と著しい相違である。このため、上記方法で得られた複合体を正極活物質とすることによって、負極にリチウム含有活物質を用いる必要がなく、負極の選択幅を大幅に広げることが可能となる。
また、初期放電容量は約670mAh/gであり、FeS2を正極活物質とする場合(約790mAh/g)よりも低い値であったが、Li3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2を含んでいるため放電平均電圧は約1.65Vであり、FeS2を正極活物質とする場合(約1.45V)より高く、また、放電容量と放電平均電圧の積である電力量は約1100mWh/gであり、FeS2を正極活物質とする場合(約1150mWh/g)と同程度の値を示した。
また、実施例2の方法で得られた複合体を正極活物質とするリチウム二次電池のサイクル特性は、図4に示す通りであり、20サイクル後の放電容量は約220mAh/g(容量維持率約33%)であり、FeS2を活物質とする場合(約140mAh/g、容量維持率約18%、比較例1)に比べて改善されていた。また、図3に示す通り、20サイクル目の放電平均電圧は約1.73Vであり、FeS2を活物質とする場合(約1.55V)よりも高く、放電容量と放電平均電圧の積である電力量は約390mWh/gであり、FeS2を活物質とする場合(約220mWh/g)よりも高い値を示した。
以上から、実施例2で得られた硫化鉄リチウム複合体は、充電より作動可能な活物質であって、金属硫化物単体と比較して、サイクル特性が良好で、高容量を示すリチウム二次電池の正極活物質であることが判る。
比較例1
FeS2を正極活物質として用い、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、充放電試験を行った。その結果、図3に示す通り、FeS2を正極活物質とする場合には、初期充電容量がほとんど得られなかった(約0.1mAh/g)。これは、活物質中にリチウムが含まれていないため、充電開始により充放電を行うことができないことを意味しており、負極としてリチウム含有の活物質を用いなければならず、その選択幅が狭いことを示している。また初期放電容量は約790mAh/gと比較的高容量を示すものの、図4に示す通り、サイクル劣化が大きく、20サイクル後には初期放電容量の約18%程度まで低下した。
以上の結果から、金属硫化物であるFeS2からなる試料は、充電開始による充放電が不可能で、また充放電時のLi挿入・脱離に伴う構造的な不可逆性が大きく、サイクル劣化が大きいことが分かった。
比較例2
FeS2(平均粒径約6μm)とLi2S(平均粒径約16μm)をモル比1:1で秤量し、遊星ボールミルを用いて200rpmの回転速度で混合した。得られた試料は図2に示す通り、Li2SおよびFeS2の混合物であった。
この混合物を正極活物質として用い、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、充放電試験を行った。その結果、図3に示す通り、初期充電容量はほとんど得られなかった(約0.4mAh/g)。この混合物がリチウムを含んでいるにもかかわらず初期充電容量が得られないのは、リチウムが挿入・脱離可能な化合物(LixFeSy)の状態で含まれていないためであると考えられる。
また、初期放電容量は約650mAh/gであり、FeS2を活物質とする場合(約790mAh/g、比較例1)よりも低く、また放電平均電圧は約1.46Vであり、FeS2を活物質とする場合(約1.45V)と同程度であった。放電容量と放電平均電圧の積である電力量は約950mWh/gであり、FeS2(約1150mWh/g)を活物質とする場合よりも低い値を示した。サイクル特性は図4に示す通りであり、19サイクル後の放電容量は約110mAh/g(容量維持率約16%)であり、FeS2を活物質とする場合の20サイクル後の放電容量(約140mAh/g、容量維持率約18%、比較例1)よりも低く、サイクル特性は改善されなかった。
以上の結果から、硫黄含有化合物、鉄含有化合物及びリチウム含有化合物を混合したのみでは、挿入・脱離可能な形態でLiが存在せず、充電開始より充放電ができず、またサイクル特性も改善されないことが分かった。
本発明によれば、リチウム二次電池の正極材料として有用な硫化鉄リチウム複合体を、比較的簡単な方法によって短時間に効率良く製造できる。
1 通電焼結装置
2 試料
3 ダイ(導電性容器)
4、5 スペーサー
6,7 パンチ電極
8 水冷真空チャンバー
9 冷却水路
10、16 水冷却機構
11 パルス電源
12 制御装置
13 加圧機構
14 位置計測機構
15 雰囲気制御機構
17 温度計測装置

Claims (4)

  1. 硫黄含有化合物、鉄含有化合物及びリチウム含有化合物からなる原料を、水分を含まない非酸化性雰囲気下において、通電焼結法によって300〜1600℃で熱処理することを特徴とする、Li3Fe2S4及びLi2.33Fe0.67S2のいずれか一方又は両方を50モル%以上含む硫化鉄リチウム複合体の製造方法であって、
    原料における鉄に対するリチウムのモル比を、目的とする複合体における鉄に対するリチウムのモル比より5%以上高く設定し、
    原料における鉄に対する硫黄のモル比を、目的とする複合体における鉄に対するイオウのモル比より5%以上高く設定し、
    室温から熱処理温度範囲に到達する時間を1〜10分とし、熱処理温度範囲に保持する時間を5分以内とする、
    ことを特徴とする、硫化鉄リチウム複合体の製造方法。
  2. 硫黄含有化合物、鉄含有化合物及びリチウム含有化合物からなる原料が、下記(i)〜(iii)項のいずれかに記載したものである請求項1に記載の方法:
    (i)硫黄、鉄及びリチウムのいずれかの元素を1種類ずつ含む3種類以上の化合物の混合物、
    (ii)硫黄、鉄及びリチウムの内の2種類以上の元素を同時に含む2種類以上の化合物の混合物、
    (iii)硫黄、鉄及びリチウムのいずれかの元素を1種類含む1種又は2種以上の化合物
    と、硫黄、鉄及びリチウムの内の2種類以上の元素を同時に含む1種又は2種以上の化合物の混合物。
  3. 通電焼結法による熱処理が、原料を導電性容器に収容し、該容器に直流パルス電流を通電する方法である請求項1に記載の硫化鉄リチウム複合体の製造方法。
  4. 水分を含まない非酸化性雰囲気が、不活性ガス雰囲気又は還元性ガス雰囲気である請求項1に記載の硫化鉄リチウム複合体の製造方法。
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