JP7342170B1 - 正極活物質、正極、電池、及びリチウム含有化合物の製造方法 - Google Patents

正極活物質、正極、電池、及びリチウム含有化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アルカリ金属を有さない負極との組み合わせが可能である正極活物質を提供すること。【解決手段】以下の組成式(1)で表されると共に、結晶構造内にMX4四面体が稜共有して連なる鎖状構造を有するアルカリ金属含有化合物を含む、正極活物質。AaMbX4・・・(1)(式(1)中、Aはアルカリ金属元素であり、Mは遷移金属元素であり、XはS及びSeの少なくとも一方であり、0<a<5であり、1<b≦2.5である。)【選択図】図1

Description

本発明は、正極活物質、正極及び電池に関する。
アルカリ金属イオンが正極及び負極の間を移動することにより、充電及び放電を行う二次電池が知られている(特許文献1及び非特許文献1)。そのような二次電池の中では、リチウムイオン二次電池が代表的であり、携帯電話やノートパソコンなどの小型電源として既に実用化され、さらに、電気自動車、ハイブリッド自動車等の自動車用電源や分散型電力貯蔵用電源等の大型電源として使用可能であることから、その需要は増大しつつある。しかしながら、リチウムイオン二次電池において、それを構成する材料の製造には、リチウム等の稀少金属元素を含有する原料を多く使用し、大型電源の需要の増大に対応するための原料の供給が懸念されている。
また、近年、ナトリウムイオン二次電池も注目を集めている。リチウムと同じアルカリ金属に属するナトリウムは、リチウムに比べて資源的にも豊富に存在し、リチウムより1桁安価である。また、ナトリウムは標準電位も比較的高いことから、ナトリウムイオン二次電池は高容量な二次電池になり得ると考えられている。
国際公開第2010/084808号
Journal of Materials Chemistry A,2015, issue 15, pp. 7689-7694.
ここで、上記の二次電池の電極活物質材料として、TiS、FeS、FeSe等の硫化物又はセレン化物の電極活物質材料が知られている。硫化物又はセレン化物の電極活物質材料は、柔らかく固体電解質などとの界面がとりやすい、アニオン種の酸化還元が酸化物系の材料よりも生じやすく、高容量な材料が期待される等の利点を有するものの、アルカリ金属を元から含む材料はほとんど例がない。TiS、FeS、FeSe等のようにアルカリ金属を含まない化合物を正極として使用する場合、負極として金属リチウム等のアルカリ金属を含む、高活性の負極材と組み合わせねば電池として機能できないため、デンドライト発生の危険性がある。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、アルカリ金属を有さない負極との組み合わせが可能である正極活物質、並びにそのような正極活物質を含む正極及び電池を提供することを目的とする。また、本発明は、アルカリ金属を有さない負極との組み合わせが可能であるリチウム含有化合物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の正極活物質は、以下の組成式(1)で表されると共に、結晶構造内にMX四面体が稜共有して連なる鎖状構造を有するアルカリ金属含有化合物を含む。
・・・(1)
(式(1)中、Aはアルカリ金属元素であり、Mは遷移金属元素であり、XはS及びSeの少なくとも一方であり、0<a<5であり、1<b≦2.5である。)
上記XがSを含むと好ましい。
上記AがNaであると好ましい。
上記アルカリ金属含有化合物が下記組成式(2)で表される化合物(A)であると好ましい。
Lia1Naa2b1・・・(2)
(式(2)中、0≦a1≦4、0≦a2≦4、1.35≦b1≦2.5、0<a1+a2<5であり、Mは遷移金属元素であり、XはS及びSeの少なくとも一方である。)
上記Mが、Fe、Ni、Mn及びCoからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含むと好ましい。
本発明の正極は、上記正極活物質を含む。
本発明の電池は、上記正極を含む。
本発明のリチウム含有化合物の製造方法は、以下の組成式(4)で表されると共に、結晶構造内にMX四面体が稜共有して連なる鎖状構造を有するナトリウム含有化合物を含む正極と、
a3b2・・・(4)
(式(4)中、Aは、ナトリウムを含むアルカリ金属元素であり、Mは遷移金属元素であり、XはS及びSeの少なくとも一方であり、0<a3<5であり、1<b2≦2.5である。)
リチウムを含む負極と、
上記正極と上記負極との間に配置され、リチウムイオンを含む電解質と、を備える電気化学セルに充電及び放電を行って当該ナトリウム含有化合物に含まれるナトリウムの少なくとも一部をリチウムに置換する工程を備える。
本発明によれば、アルカリ金属を有さない負極との組み合わせが可能である正極活物質、並びにそのような正極活物質を含む正極及び電池を提供することができる。また、本発明によれば、アルカリ金属を有さない負極との組み合わせが可能であるリチウム含有化合物の製造方法を提供することができる。
図1は、実施例1のナトリウム含有硫化物の構造解析の結果を示す図である。 図2は、実施例1のナトリウム含有硫化物を用いて作製したLiハーフセルの充放電後における正極のX線回折チャートである。
本実施形態の正極活物質は、以下の組成式(1)で表されると共に、結晶構造内にMX四面体が稜共有して連なる鎖状構造を有するアルカリ金属含有化合物を含む。
・・・(1)
(式(1)中、Aはアルカリ金属元素であり、Mは遷移金属元素であり、XはS及びSeの少なくとも一方であり、0<a<5であり、1<b≦2.5である。)
正極活物質は、1種の上記アルカリ金属含有化合物を含んでもよく、2種以上の組成の異なる上記アルカリ金属含有化合物を含んでいてもよい。
式(1)中、Aは、Li、Na、K、Rb及びCsのいずれであってもよいが、Li、Na又はKが好ましく、Li又はNaがより好ましい。正極活物質に含まれるアルカリ金属元素は、1種のみであることが好ましい。そのため、例えば、正極活物質に含まれるアルカリ金属の総量に対して、正極活物質に最も多く含まれるアルカリ金属の含有量が90モル%以上であると好ましく、95モル%以上であるとより好ましく、97モル%以上であると更に好ましく、99モル%以上であると特に好ましい。
式(1)中、Mは、Fe、Ni、Mn及びCoからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含むと好ましく、Feを含むとより好ましい。
式(1)中、Xは、Sを含むと好ましい。
アルカリ金属含有化合物は、アルカリ金属含有硫化物であると好ましい。
アルカリ金属含有化合物は、ナトリウム含有化合物であると好ましく、ナトリウム含有硫化物であるとより好ましい。ナトリウム含有硫化物としては、NaFe等が挙げられる。ナトリウム含有セレン化物としては、NaFeSe等が挙げられる。
アルカリ金属含有化合物は、リチウム含有化合物であると好ましく、リチウム含有硫化物であるとより好ましい。リチウム含有硫化物としては、LiFe等が挙げられる。リチウム含有セレン化物としては、LiFeSe等が挙げられる。
式(1)中、aは、1~4.8であると好ましく、2~4.3であるとより好ましく、2.5~3.5であると更に好ましい。bは、1.5~2.5であると好ましく、1.7~2.2であるとより好ましい。
正極活物質は、硫化鉄を含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。ここで、本明細書において硫化鉄とは、鉄と硫黄からなる化合物を意味し、具体的には、FeS(硫化鉄(II))、Fe(硫化鉄(III))、FeS(二硫化鉄)等が挙げられる。正極活物質における硫化鉄の含有量は、正極活物質の全量に対して、8質量以下であってよく、5質量%以下であってよく、3質量%以下であってよく、1質量%以下であってよい。
正極活物質におけるFeSの含有量は、正極活物質の全量に対して、8質量以下であってよく、5質量%以下であってよく、3質量%以下であってよく、1質量%以下であってよい。
正極活物質におけるアルカリ金属含有化合物の含有量は、90質量%以上であってよく、93質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。
アルカリ金属含有化合物が下記組成式(2)で表される化合物(A)であってよい。
Lia1Naa2b1・・・(2)
(式(2)中、0≦a1≦4、0≦a2≦4、1.0≦b1≦2.5、0<a1+a2<5であり、Mは遷移金属元素であり、XはS及びSeの少なくとも一方である。)
化合物(A)は、結晶構造内にMX四面体が稜共有して連なる鎖状構造を有する。
式(2)において、a1+a2は、1~4.8であると好ましく、2~4.3であるとより好ましく、2.5~3.5であると更に好ましい。b1は、1.35~2.5であってよく、1.5~2.5であると好ましく、1.7~2.2であるとより好ましい。化合物(A)は、LiFeであってよい。
式(2)において、a1は、1~4.8であってよく、1.2~3.0であってよく、1.3~2.5であってよく、1.5~2.0であってよい。
式(2)において、a2は、0.2~3.0であってよく、0.5~2.5であってよく、0.8~2.0であってよく、1.0~1.5であってよい。
アルカリ金属含有化合物の製造方法としては特に限定されないが、例えば、リチウム以外のアルカリ金属を含むアルカリ金属含有化合物については、アルカリ金属硫化物又はセレン化物と、遷移金属硫化物又はセレン化物とを混合し、加熱する方法により製造することができる。アルカリ金属硫化物としては、NaS、KS等が挙げられる。アルカリ金属セレン化物としては、NaSe、KSe等が挙げられる。遷移金属の硫化物としては、MnS、CoS、NiS、FeS等が挙げられる。遷移金属のセレン化物としては、MnSe、CoS、NiSe、FeSe等が挙げられる。加熱温度としては、700~1100℃が好ましく、800℃~1000℃がより好ましい。
アルカリ金属化合物がリチウム含有化合物である場合、その製造方法としては、リチウム以外のアルカリ金属を含むアルカリ金属含有化合物のアルカリ金属を電気化学的にリチウムに置換する方法が挙げられる。このような方法では、例えば、まず、以下の組成式(4)で表されると共に、結晶構造内にMX四面体が稜共有して連なる鎖状構造を有するナトリウム含有化合物を用意する。
a3b2・・・(4)
(組成式(4)中、Aは、ナトリウムを含むアルカリ金属元素であり、Mは遷移金属元素であり、XはS及びSeの少なくとも一方であり、0<a3<5であり、1<b2≦2.5である。)
組成式(4)において、a3は、1~4.8であると好ましく、2~4.3であるとより好ましく、2.5~3.5であると更に好ましい。b2は、1.35~2.5であると好ましく、1.5~2.5であるとより好ましく、1.7~2.2であると更に好ましい。組成式(4)で表される化合物に含まれるアルカリ金属原子の総量のうち、ナトリウムの割合が80mol%以上であると好ましく、90mol%以上であると好ましく、95mol%以上であってよい。式(4)で表される化合物は、NaFeであってよい。
次に、上記ナトリウム含有化合物を含む正極を用意し、当該正極と、リチウムを含む負極(例えば、金属リチウム等)と、正極及び負極の間に配置され、リチウムイオンを含む電解質とを用いて電気化学セルを組み立てる。作製された電気化学セルに対して充放電を行うと、上記ナトリウム含有化合物におけるナトリウムがリチウムに置換され、対応するリチウム含有化合物が得られる。当該製造方法において、組成式(4)で表される化合物のナトリウムの少なくとも一部が置換されていてもよい。すなわち、当該製造方法は、組成式(4)で表される化合物と、組成式(4)で表される化合物のナトリウムがリチウムに置換された化合物とを含む正極活物質の製造方法であってよい。製造された正極活物質におけるリチウムの含有量(リチウムによる置換率)は、正極活物質に含まれるナトリウムとリチウムの合計量に対して40モル%以上、45モル%以上、又は50モル%以上であってよく、90モル%以下であってもよい。製造された正極活物質におけるリチウムの含有量(リチウムによる置換率)は、正極活物質に含まれるナトリウムとリチウムの合計量に対して40~90モル%であってよく、45~80モル%であってよい。
リチウムイオンを含む電解質としては、リチウム塩を含む電解液等であってよい。リチウム塩としては、ヨウ化リチウム、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等が挙げられる。電解液が含む溶媒としては、後述の電解液に含まれる有機溶媒が挙げられる。
本実施形態の正極活物質は、電池、キャパシタ等の正極材料として使用できる。電池は一次電池及び二次電池のいずれであってもよく、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池等であってよい。
本実施形態の電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に配置された電解質とを有する。
本実施形態の正極は、上記正極活物質を含むものである。正極は、集電体と、当該集電体上に担持された正極合剤とを含む。正極合剤は、集電体上で正極合材層を形成していてもよい。
正極合剤は、上記正極活物質を含み、必要に応じて導電材、バインダー等を含んでいてよい。
導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラックなどの炭素材料などが挙げられる。バインダーとしては、熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(以下では「PVDF」としても言及する)、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ならびにポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどを用いることができる。
集電体に正極合剤を担持させる方法としては、加圧成型する方法、電極合剤について有機溶媒等を用いてペースト化し、集電体上に塗工し、乾燥後プレスするなどして固着する方法等が挙げられる。ペースト化する場合、例えば、上記正極活物質、導電材、バインダー及び有機溶媒からなるスラリーを作製する。有機溶媒としては、N,N-ジメチルアミノプロピリアミン、ジエチルトリアミン等のアミン系;エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のエーテル系;メチルエチルケトン等のケトン系;酢酸メチル等のエステル系;ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。電極合剤を集電体へ塗工する方法としては、例えばスリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等が挙げられる。
電池の負極としては特に限定されず、負極活物質を含み、且つ必要に応じて導電助剤、結合剤等を含むものであってよい。例えば、リチウムイオン電池の負極の場合、Li、Si、Sn、Si-Mn、Si-Co、Si-Ni、In、Auなどの金属及びこれらの金属を含む合金、グラファイト等の炭素材料、当該炭素材料の層間にリチウムイオンが挿入された物質などを挙げることができる。ナトリウムイオン電池の負極の場合、リチウムイオン電池の負極材料として挙げた物質のLiをNaに置き換えた物質を負極材料として使用することができる。
電池の電解質としては、特に限定されず、アルカリ金属塩を有機溶媒に溶解させた電解液を用いることができる。また、電解質は、固体電解質であってもよい。アルカリ金属塩としては、ヨウ化物塩、テトラフルオロボレート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド塩等が挙げられる。
電解液に含まれる有機溶媒としては、特に限定されないが、非水性溶媒、例えば、エチレンカーボネート(EC)またはプロピレンカーボネート(PC)などの環状カーボネートエステル、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、またはエチルメチルカーボネート(EMC)などの直鎖カーボネートエステル、又はスルトン等が挙げられる。溶媒は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(実施例1)
硫化ナトリウム(NaS)0.1895gの粉末と、第一硫化鉄(FeS)0.3557gの粉末とを混合した。得られた混合物を真空下900℃で20時間加熱し、ナトリウム含有硫化物を含む正極活物質を1.05g得た。
<X線回折>
得られた正極活物質に粉末X線回折測定装置(株式会社Rigaku製SmartLab型)を用いて粉末X線回折測定を行った。測定は室温において、活物質を空気/湿気を避けるためにサンプルの上にテフロン(登録商標)テープが付いた専用の基板に充填し、CuKα線源を用い50kV、40mAの出力にて、回折角2θ=5°~80°の範囲を0.02°ステップ、3°/分の速度にて行った。回折パターンから、ナトリウム含有硫化物は、空間群Pnmaに属する結晶構造を有することが分かった。製造されたナトリウム含有硫化物の組成はNaFeであり、正極活物質の全量に対して4質量%の鉄を含んでいた。図1は、上記ナトリウム含有硫化物の結晶構造解析の結果を示す図である。図1に示すように、b軸に沿ってFeS四面体が稜共有して連なる鎖状構造が確認された。また、Naが占めるサイトは2種類あり、それぞれ図1において「Na1」及び「Na2」と記載する。
<充放電性能評価>
(1)正極の作製
実施例1の正極活物質、導電材としてアセチレンブラック(商品名:HS-100、デンカ株式会社製)及びバインダーとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE、品番:6-J、三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社)を、正極活物質:導電材:バインダー=70:20:10(質量比)の組成となるようにそれぞれ秤量した。まず、正極活物質と導電材をメノウ乳鉢で十分に混合し、バインダーを加えさらに混合した。混合物7mgを秤量し、乳鉢上で円形に引き延ばした。引き延ばした混合物を集電体である厚さ110μmのアルミメッシュ(100メッシュ、株式会社ニラコ製)に圧着し、正極活物質を含む正極を得た。
(2)Liハーフセルの作製及び評価
上記正極と、セパレータとしてポリエチレン製多孔質フィルム(厚み16μm)、非水電解液として1MのLiPF溶液(溶媒は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とを30:35:35の体積比で含む混合溶媒)、及び対極として金属リチウムを用いてコイン型電池CR2032タイプを組み立てた。なお、電池の組み立てはアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。作製したコイン型電池を用いて、25℃、2.0~3.0Vの電圧の範囲(容量:0~150mAh/g)で以下の条件により充放電試験を行った。初回充放電容量の測定結果を表1に示す。
充放電条件:15mA/gで10時間定電流(CC)充電を行った。
放電時条件:15mA/gで10時間定電流(CC)放電を行った。
充電初期では正極活物質中のFeの酸化に伴い、Naが結晶構造中から引き抜かれていると考えられた。充電開始前の正極活物質であるNaFeのFeの形式酸化数は2.5+であるが、充電容量が87mAh/gでFeの形式酸化数は3+となる。一般的に正極活物質中のFeが3+以上の酸化数をとることはあまり知られていないため、充電容量87mAh/g以上の充電では正極活物質中のアニオン種であるSが酸化されていると考えられた。放電時には電解液に含まれるLiが正極活物質の結晶中に挿入され、FeやSが還元していると考えられた。Liハーフセル試験の充放電容量から、試験後の正極活物質の組成は、Li1.72Na1.27Feであると考えられた。充放電後の電極を回収し、電極から活物質を含む混合物を剥離し、XRD測定を行うとNaFeと同様のパターンが観測された。図2に充放電の前後における正極のXRD回折チャートを示す。充放電後の混合物のXRDピークの位置はNaFeと比較して高角側に観測され、充放電過程においてNaFeの空間群Pnmaに属する構造を基にNaの脱離、Liの挿入が起こっていることが確認された。充放電前のNaFeでは、格子定数がa=6.631(5)、b=10.629(17)、c=10.688(12)であったところ、充放電後には、a=6.6(3)、b=9.4(18)、c=10.4(5)であり、NaがLiに置換されたことによる格子の収縮が見られた(格子定数の単位はすべてÅである。)。
(3)Naハーフセルの作製及び評価
上記正極と、セパレータとしてポリエチレン製多孔質フィルム(厚み16μm)、非水電解液として1Mのナトリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(NaTFSA)溶液(溶媒は、プロピレンカーボネート(PC))、及び対極として金属ナトリウムを用いてコイン型電池CR2032タイプを組み立てた。なお、電池の組み立てはアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。作製したコイン型電池を用いて、25℃、1.5~3.0Vの電圧の範囲で以下の条件により充放電試験を行った。初回充放電容量の測定結果を表1に示す。
充放電条件:15mA/gで定電流(CC)充電を行った。
放電時条件:15mA/gで定電流(CC)放電を行った。
(4)フルセルの作製及び評価
負極の作製:
ハードカーボン(商品名:クラノード、株式会社クラレ製)とポリビニリデンフルオリド(PVDF)を12質量%含むN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液をハードカーボンとPVDFが94:6(質量比)となるように秤量し、NMP(富士フィルム和光純薬社製)を適量加えて引き続き均一になるように混合し、負極用ペーストを調製した。得られた負極用ペーストを集電体である厚さ40μmの銅箔上に、アプリケータを用いて3.5mg/cm(乾燥重量)の担持量で塗工した。負極用ペーストが塗工された集電体を60℃の乾燥機に入れ、NMPを除去しながら乾燥した。乾燥後の電極シートをロールプレスし、その後150℃の真空乾燥機で8時間追加乾燥し、電極シートを得た。この電極シートを電極打ち抜き機で直径14.5mmに打ち抜き、負極活物質を含む負極を得た。
正極の作製:
上記の負極の活物質量に300を掛けた値をAとし、正極活物質量に70を掛けた値をCとしたとき、A/C=1.25となるように正極作製時の活物質重量を調整し、正極を作製した。
上記正極と、セパレータとしてポリエチレン製多孔質フィルム(厚み16μm)、非水電解液として1Mのナトリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(NaTFSA)溶液(溶媒は、プロピレンカーボネート(PC))、及び上記負極を用いてコイン型電池CR2032タイプを組み立てた。なお、電池の組み立てはアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。作製したコイン型電池を用いて、25℃、1.5~3.0Vの電圧の範囲で以下の条件により充放電試験を行った。
充放電条件:15mA/gで定電流定電圧(CC-CV)充電を行った。
放電時条件:15mA/gで定電流(CC)放電を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
上記実施例1の正極活物質に代えてFeSを用いたこと以外は、実施例1と同様に、正極を作製した。作製した正極を用いて上記(4)と同様にフルセルを作製し、充放電試験を行った。初回及び2回目の充放電容量の測定結果を表1に示す。
Figure 0007342170000002

Claims (11)

  1. 正極活物質であって、
    以下の組成式(1)で表されると共に、結晶構造内にMX四面体が稜共有して連なる鎖状構造を有するアルカリ金属含有化合物を含み、
    前記正極活物質におけるアルカリ金属含有化合物の含有量は、前記正極活物質の全量に対して90質量%以上である、正極活物質。
    ・・・(1)
    (式(1)中、Aはアルカリ金属元素であり、Mは遷移金属元素であり、XはS及びSeの少なくとも一方であり、0<a<5であり、1<b≦2.5である。)
  2. 正極活物質であって、
    以下の組成式(1)で表されると共に、結晶構造内にMX 四面体が稜共有して連なる鎖状構造を有するアルカリ金属含有化合物を含み、
    前記正極活物質におけるFeS の含有量は、前記正極活物質の全量に対して8質量%以下である、正極活物質。
    ・・・(1)
    (式(1)中、Aはアルカリ金属元素であり、Mは遷移金属元素であり、XはS及びSeの少なくとも一方であり、0<a<5であり、1<b≦2.5である。)
  3. AがNaを含む、請求項1又は2に記載の正極活物質。
  4. 前記アルカリ金属含有化合物が下記組成式(2)で表される、請求項1~3のいずれか一項に記載の正極活物質。
    Lia1Naa2b1・・・(2)
    (式(2)中、0≦a1≦4、0≦a2≦4、1.35≦b1≦2.5、0<a1+a2<5であり、Mは遷移金属元素であり、XはS及びSeの少なくとも一方である。)
  5. 正極活物質であって、
    以下の組成式(2)で表されると共に、結晶構造内にMX 四面体が稜共有して連なる鎖状構造を有するアルカリ金属含有化合物を含む、正極活物質。
    Lia1Naa2b1・・・(2)
    (式(2)中、0≦a1≦4、0.2≦a2≦4、1.35≦b1≦2.5、0<a1+a2<5であり、Mは遷移金属元素であり、XはS及びSeの少なくとも一方である。)
  6. 正極活物質であって、
    以下の組成式(1)で表されると共に、結晶構造内にMX 四面体が稜共有して連なる鎖状構造を有するアルカリ金属含有化合物を含む、正極活物質。
    ・・・(1)
    (式(1)中、Aはアルカリ金属元素であると共にNaを含み、Mは遷移金属元素であり、XはS及びSeの少なくとも一方であり、0<a<5であり、1<b≦2.5である。)
  7. XがSを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の正極活物質。
  8. Mが、Fe、Ni、Mn及びCoからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の正極活物質。
  9. 請求項1~のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、正極。
  10. 請求項に記載の正極を含む、電池。
  11. 以下の組成式(4)で表されると共に、結晶構造内にMX四面体が稜共有して連なる鎖状構造を有するナトリウム含有化合物を含む正極と、
    a3b2・・・(4)
    (式(4)中、Aは、ナトリウムを含むアルカリ金属元素であり、Mは遷移金属元素であり、XはS及びSeの少なくとも一方であり、0<a3<5であり、1<b2≦2.5である。)
    リチウムを含む負極と、
    前記正極と前記負極との間に配置され、リチウムイオンを含む電解質と、を備える電気化学セルに充電及び放電を行って前記ナトリウム含有化合物に含まれるナトリウムの少なくとも一部をリチウムに置換する工程を備える、リチウム含有化合物の製造方法。
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