JP5857910B2 - 負極活物質および非水系金属イオン電池 - Google Patents

負極活物質および非水系金属イオン電池 Download PDF

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Description

本発明は、非水系金属イオン電池に用いることができ、反応電位が低い負極活物質、および上記負極活物質を用いた非水系金属イオン電池に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として優れた電池の開発が重要視されている。また、情報関連機器や通信関連機器以外の分野では、例えば自動車産業界において、電気自動車やハイブリッド自動車に用いられる金属イオン電池の開発が進められている。
一般的に、金属イオン電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、正極活物質層および負極活物質層の間に形成された電解質層とを有する。例えば、特許文献1では、ナシコン型化合物であるNaTi(POを負極活物質として用い、液体電解質層として水溶液を用いる水溶液系(以下、単に水系と称する場合がある)ナトリウムイオン二次電池が開示されている。また、特許文献2では、ナシコン型化合物であるNaTi(POを負極活物質として用いた水系ナトリウムイオン電池であって、Tiの一部がSnに置換されることが開示されている。
また特許文献3では、負極活物質としてTi等の遷移金属のポリアニオン化合物を有する水系リチウムイオン二次電池が開示されている。また特許文献4では、ナシコン型化合物を陰極用活物質として利用した非水系金属イオン二次電池が開示されている。また、上記ナシコン型化合物は一般式A3x2y(POで表されることが記載されている。
特開2012−003928号公報 特開2012−054208号公報 国際公開第2009/008280号 特開2007−294461号公報
例えば非水系ナトリウムイオン電池の負極活物質として、ナシコン型化合物NaTi(POを使用した場合、反応電位が高いという問題がある。上記実情に鑑みて、本発明は、非水系金属イオン電池に用いることができ、反応電位が低い負極活物質を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明においては、非水系金属イオン電池用の負極活物質であって、NaSn(POの結晶相を含有することを特徴とする負極活物質を提供する。
本発明によれば、NaSn(POの結晶相を含有することで、非水系金属イオン電池に用いることができ、反応電位が低い負極活物質とすることができる。
上記発明においては、上記負極活物質が、NaSn(POの結晶相を主相として含有することが好ましい。
また本発明においては、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成される非水電解質層とを備える非水系金属イオン電池であって、上記負極活物質が、上述した負極活物質であることを特徴とする非水系金属イオン電池を提供する。
本発明によれば、上述した負極活物質を有することで、電位が低い負極活物質層となり、電池電圧の大きい非水系金属イオン電池とすることができる。
上記発明においては、非水系ナトリウムイオン電池であることが好ましい。
上記発明においては、非水系リチウムイオン電池であることが好ましい。
本発明においては、非水系金属イオン電池に用いることができ、反応電位が低い負極活物質とすることができるという効果を奏する。
本発明の非水系金属イオン電池の一例を示す概略断面図である。 合成例で得られる負極活物質のXRD測定結果である。 実施例1で得られる評価用Naイオン電池の充放電特性評価結果である。 実施例2で得られる評価用Liイオン電池の充放電特性評価結果である。
以下、本発明の負極活物質および非水系金属イオン電池について詳細に説明する。
A.負極活物質
まず、本発明の負極活物質について説明する。本発明の負極活物質は非水系金属イオン電池用の負極活物質であって、NaSn(POの結晶相を含有することを特徴とする。
本発明によれば、NaSn(POの結晶相を含有することで、非水系金属イオン電池に用いることができ、反応電位が低い負極活物質とすることができる。
例えばナシコン型化合物であるNaTi(POを非水系ナトリウムイオン電池の負極活物質として用いる場合、NaTi(POは約2V(vs.Na/Na)程度の比較的高い反応電位で作動する。これに対して、本発明は、NaSn(POの結晶相を含有することで、非水系金属イオン電池に用いることができ、反応電位が低い負極活物質とすることができる。NaSn(POの結晶相を含有することで、反応電位が低くなる理由については明らかではないが、次のように考えられる。すなわち、NaTi(POの場合は、レドックス反応電位が比較的高いTiを含有することで、比較的高い反応電位で作動するが、NaSn(POの場合は、レドックス反応電位が比較的低いSnを含有することで、比較的低い反応電位で作動すると考えられる。
また特許文献2および3では、ナシコン型化合物NaTi(POおよびナシコン型化合物NaTi(POのTiの一部をSnに置換した化合物を水系金属イオン電池の負極活物質として用いることが記載されているが、いずれも非水系金属イオン電池での使用については検討されていない。ここで、水系金属イオン電池で使用可能な活物質であっても、非水系金属イオン電池において使用可能であるとは限らないと考えられる。その理由としては、水系金属イオン電池と非水系金属イオン電池とでは、電解液の安定な電圧領域、すなわち電位差が異なるためであると考えられる。本発明においては、NaSn(POの結晶相を含有することで、非水系金属イオン電池における負極活物質として使用することができる。
本発明の負極活物質は、NaSn(POの結晶相を含有することを一つの特徴とする。負極活物質におけるNaSn(POの結晶相の存在は、X線回折(XRD)測定法等により確認することができる。上記負極活物質としては、上記NaSn(POの結晶相の割合が大きいことが好ましく、具体的にはNaSn(POの結晶相を主相として含有することが好ましい。ここで、「NaSn(POの結晶相を主相として含有する」とは、負極活物質に含まれる結晶相の中で、NaSn(POの結晶相の割合が最も大きいことをいう。具体的には、80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましく、99.9mol%以上であることがさらに好ましい。また、本発明の負極活物質は、NaSn(POの結晶相のみから構成されることが好ましい。なお、負極活物質に含まれるNaSn(POの結晶相の割合は、例えば、参照強度比(RIR)値と最強線の積分強度とから定量を行うRIR法により決定することができる。
また本発明の負極活物質がNaSn(POの結晶相を含有する場合、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=14.4°、19.8°、20.9°、24.0°、28.9°、31.8°、35.9°、36.5°、45.8°、47.3°、49.2°、52.2°、57.2°、62.8°付近に特徴的なピークを有する。ここで、上記ピークの位置は、後述する合成例で得られた実測値であり、材料組成等によって結晶格子が若干変化し、ピークの位置が多少前後する場合がある。そのため、上記ピークの位置は、±0.5°の範囲を包含するものとする。
また本発明の負極活物質は、上記2θ=20.9°±0.5°のピーク(NaSn(POの結晶相)の回折強度をIとし、2θ=22.5°±0.5°のピーク(不純物相)の回折強度をIとした場合に、I/Iの値が、例えば、0.2以下となることが好ましく、0.1以下となることがより好ましく、0.01以下となることが特に好ましい。I/Iの値が上記範囲内となることでNaSn(POの結晶相の割合が大きい負極活物質とすることができるからである。また、I/Iの値は0であることがさらに好ましい。
また、本発明の負極活物質は、NaSn(POの結晶相を含有するものであれば特に限定されるものではなく、他の結晶相をさらに含有していても良い。このような他の結晶相としては、例えば、一般式NaSn2−x(PO(Mは遷移金属元素、0<x≦2)で表される結晶相を挙げることができる。
上記一般式NaSn2−x(POにおけるMは特に限定されるものではないが、例えば、Snのイオン半径と同程度のイオン半径を有するものであることが好ましい。このようなMとしては、具体的に、V、Ti、Fe、Mn、Mo、Cr、W等を挙げることができる。また上記一般式NaSn2−x(POにおけるxは0<x≦2を満たすものであれば特に限定されるものではない。
本発明の負極活物質における上記一般式NaSn2−x(POで表される結晶相の割合は、特に限定されるものではない。なお、上記一般式NaSn2−x(POで表される結晶相の割合は、上述したNaSn(POの結晶相の割合と同様の方法で求めることができる。
本発明の負極活物質の電位としては、非水系金属イオン電池において負極活物質として機能する程度に低ければ特に限定されるものではないが、例えば金属Naに対して2.0V以下であることが好ましく、1.5V以下であることがより好ましく、1.0V以下であることが特に好ましい。また上記負極活物質の電位は、例えば金属Liに対して、2.5V以下であることが好ましく、2.0V以下であることがより好ましく、1.5V以下であることが特に好ましい。
本発明の負極活物質の形状としては、例えば粒子形状、薄膜形状等を挙げることができる。また、負極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
本発明の負極活物質の製造方法としては、NaSn(POの結晶相を含有する負極活物質を作製できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくともNa源、Sn源およびP源を含有する原料組成物を混合してペレット状に成形した後、焼成炉(例えばマッフル炉)で焼成する方法を挙げることができる。
B.非水系金属イオン電池
次に、本発明の非水系金属イオン電池について説明する。本発明の非水系金属イオン電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成される非水電解質層とを備える非水系金属イオン電池であって、上記負極活物質が、上述した負極活物質であることを特徴とするものである。
図1は、本発明の非水系金属イオン電池の一例を示す概略断面図である。図1に示される本発明の非水系金属イオン電池10は、正極活物質層1と、負極活物質層2と、正極活物質層1および負極活物質層2の間に形成される非水電解質層3と、正極活物質層1の集電を行う正極集電体4と、負極活物質層5の集電を行う負極集電体5とを有するものである。また本発明の非水系金属イオン電池10は、図示はしないが、負極活物質層2が、上記「A.負極活物質」の項に記載した負極活物質を有していることを大きな特徴とする。
本発明によれば、上述した負極活物質を有することで、電位が低い負極活物質層となり、電池電圧の大きい非水系金属イオン電池とすることができる。
以下、本発明の非水系金属イオン電池について、構成ごとに説明する。
1.負極活物質層
本発明における負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する層である。また負極活物質層は、負極活物質の他に、導電化材、結着材および固体電解質材料の少なくとも一つを含有していても良い。
本発明における負極活物質は、通常、上記「A.負極活物質」に記載した負極活物質である。この負極活物質を用いることで、電位が低い負極活物質層となり、電池電圧の大きい非水系金属イオン電池とすることができる。
本発明における導電化材としては、所望の電子伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、VGCF等のカーボンファイバー、グラファイト等を挙げることができる。また結着剤としては、化学的、電気的に安定なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素含有結着材、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系結着材、ポリイミド系結着材、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース結着材等を挙げることができる。また、固体電解質材料としては、所望のイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酸化物固体電解質材料、硫化物固体電解質材料を挙げることができる。なお、固体電解質材料については、後述する「3.非水電解質層」の項で詳細に説明する。
負極活物質層における負極活物質の含有量は、容量の観点からはより多いことが好ましく、例えば60重量%〜99重量%の範囲内、中でも70重量%〜95重量%の範囲内であることが好ましい。また、導電化材の含有量は、所望の電子伝導性を確保できる程度であれば特に限定されるものではなく、例えば5重量%〜80重量%の範囲内、中でも10重量%〜40重量%の範囲内であることが好ましい。導電化材の含有量が少なすぎると、電子伝導性が低くなる可能性があり、また一方、導電化材の含有量が多すぎると、容量が低下する可能性があるからである。また、結着材の含有量は、負極活物質等を安定に固定化できる程度であれば特に限定されるものではなく、例えば1重量%〜40重量%の範囲内であることが好ましい。結着材の含有量が少なすぎると、結着性が低くなる可能性があり、また一方、結着材の含有量が多すぎると、容量が低下する可能性があるからである。また、固体電解質材料の含有量は、所望のイオン伝導性を確保できる程度であれば特に限定されないが、例えば1重量%〜40重量%の範囲内であることが好ましい。
また負極活物質層の厚さは、目的とする非水系金属イオン電池の構成によって大きく異なるものであるが、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
2.正極活物質層
本発明における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層である。また正極活物質層は、正極活物質以外に必要に応じて、導電化材、結着材および固体電解質材料の少なくとも一つをさらに含有していても良い。
正極活物質としては、一般的な正極活物質であれば特に限定されるものではなく、目的とする非水系金属イオン電池の種類等に応じて適宜選択でき、例えばスピネル型活物質、オリビン型活物質等を挙げることができる。具体的には、非水系ナトリウムイオン電池の場合、NaFeO、NaNiO、NaCoO、NaMnO、NaVO、Na(NiMn1−x)O(0<x<1)、Na(FeMn1−x)O(0<x<1)、NaVPOF、NaFePOF、Na(PO等を挙げることができる。また非水系リチウムイオン電池の場合、LiCoO、LiNiO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiVO、LiCrO、LiMn、Li(Ni0.25Mn0.75、LiCoMnO、LiNiMn、LiCoPO、LiMnPO、LiFePO等を挙げることができる。
正極活物質の形状としては、例えば粒子状を挙げることができる。正極活物質が粒子状である場合、その平均粒径(D50)は、例えば1nm〜100μmの範囲内、中でも10nm〜30μmの範囲内であることが好ましい。正極活物質層における正極活物質の含有量は、容量の観点からはより多いことが好ましく、例えば60重量%〜99重量%の範囲内、中でも70重量%〜95重量%の範囲内であることが好ましい。なお、正極活物質層に用いられる導電化材、結着材および固体電解質材料の種類ならびに含有量については、上述した負極活物質層と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、正極活物質層の厚さは、目的とする非水系金属イオン電池の構成によって大きく異なるものであるが、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
3.非水電解質層
本発明における非水電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層である。非水電解質層に含まれる非水電解質を介して、正極活物質および負極活物質の間の金属イオン伝導を行う。上記非水電解質としては、水を含まない電解質であれば特に限定されるものではない。非水電解質層の形態としては特に限定されるものではなく、例えば、液体電解質層(非水電解液)、ゲル電解質層、固体電解質層等を用いることができる。
液体電解質層は、非水電解液を用いてなる層である。非水電解液は、通常、支持塩および非水溶媒を含有する。上記支持塩は、目的とする非水系金属イオン電池の種類に応じて適宜選択されるものである。例えば非水系ナトリウムイオン電池の場合、支持塩であるナトリウム塩としては、例えば、NaPF、NaBF、NaClOおよびNaAsF等の無機ナトリウム塩;およびNaCFSO、NaN(CFSO、NaN(CSO、NaC(CFSO等の有機ナトリウム塩等を挙げることができる。また、例えば非水系リチウムイオン電池の場合、支持塩であるリチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClOおよびLiAsF等の無機リチウム塩;およびLiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO等の有機リチウム塩等を挙げることができる。
また上記非水溶媒としては、上述した支持塩を溶解するものであれば特に限定されるものではない。例えば高誘電率溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状エステル(環状カーボネート)、γ−ブチロラクトン、スルホラン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)等を挙げることができる。一方、低粘度溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状エステル(鎖状カーボネート)、メチルアセテート、エチルアセテート等のアセテート類、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル等を挙げることができる。高誘電率溶媒および低粘度溶媒を混合した混合溶媒を用いても良い。
非水電解液における支持塩の濃度は、例えば0.3mol/L〜5.0mol/Lの範囲内であることが好ましく、0.8mol/L〜1.5mol/Lの範囲内であることがより好ましい。支持塩の濃度が低すぎると、ハイレート時の容量が低下する可能性があり、また一方、支持塩の濃度が高すぎると、粘性が高くなり低温での容量が低下する可能性があるからである。なお、本発明においては、非水電解液として、例えばイオン性液体等の低揮発性液体を用いても良い。
ゲル電解質層は、例えば、非水電解液にポリマーを添加してゲル化することで得ることができる。具体的には、非水電解液に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリマーを添加することにより、ゲル化を行うことができる。
固体電解質層は、固体電解質材料を用いてなる層である。固体電解質材料としては、金属イオン(例えばNaイオン、Liイオン)伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酸化物固体電解質材料および硫化物固体電解質材料を挙げることができる。具体的に、Naイオン伝導性を有する酸化物固体電解質材料としては、例えば、NaZrSiPO12、βアルミナ固体電解質(例えばNaO−11Al)等を挙げることができる。またLiイオン伝導性を有する酸化物固体電解質材料としては、例えば、Li1+xAlGe2−x(PO(0≦x≦2)、Li1+xAlTi2−x(PO(0≦x≦2)、LiLaTiO(例えば、Li0.34La0.51TiO)、LiPON(例えば、Li2.9PO3.30.46)、LiLaZrO(例えば、LiLaZr12)等を挙げることができる。またNaイオン伝導性を有する硫化物固体電解質材料としては、例えば、NaS−P等を挙げることができる。またLiイオン伝導性を有する硫化物固体電解質材料としては、例えば、LiS−P化合物、LiS−GeS化合物等を挙げることができる。
本発明における固体電解質材料は、非晶質であっても良く、結晶質であっても良い。また、固体電解質材料の形状は、粒子状であることが好ましい。また、固体電解質材料の平均粒径(D50)は、例えば、1nm〜100μmの範囲内、中でも10nm〜30μmの範囲内であること好ましい。
非水電解質層の厚さは、電解質の種類および非水系金属イオン電池の構成によって大きく異なるものであるが、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
4.その他の構成
本発明の非水系金属イオン電池は、上述した負極活物質層、正極活物質層および非水電解質層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。集電体の材料としては、電子伝導性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、SUS、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、鉄、カーボン等を挙げることができる。また集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状、多孔質形状等をあげることができる。
さらに本発明の非水系金属イオン電池は、正極活物質層および負極活物質層の間に、セパレータを有していても良い。より安全性の高い電池を得ることができるからである。このようなセパレータとしては、多孔質膜であれば特に限定されるものではなく、有機材料であっても良く、無機材料であっても良い。具体的には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の単層のセパレータ、PP/PE/PPの積層のセパレータを挙げることができる。
5.非水系金属イオン電池
本発明の非水系金属イオン電池の種類としては、例えば、ナトリウムイオン電池、リチウムイオン電池、マグネシウムイオン電池およびカルシウムイオン電池等を挙げることができ、中でも、ナトリウムイオン電池およびリチウムイオン電池であることが好ましく、特に、ナトリウムイオン電池であることが好ましい。高容量な電池とすることができるからである。
また上記非水系金属イオン電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。なお、上記一次電池とは、例えば一次電池的利用が可能な電池、すなわち、まず十分に充電を行い、その後放電を行う電池をいう。このような非水系金属イオン電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
本発明の非水系金属イオン電池の製造方法は、上述した非水系金属イオン電池を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、一般的な電池における製造方法と同様である。例えば、上述した負極活物質を含有するペーストを調製して負極集電体上に塗工し、乾燥およびプレスして負極活物質層を形成した後、負極活物質層、非水電解質層および正極活物質層をこの順に積層する方法等を挙げることができる。負極活物質を含有するペーストの塗工方法としては、例えばドクターブレード法、静電塗布法、ディップコート法、スプレーコート法等を挙げることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[合成例]
出発原料として、炭酸ナトリウム(NaCO)、酸化スズ(SnO)、五酸化二リン(P)を用意した。次に、NaCO、SnOおよびPをmol比で1:4:3となるように秤量し、エタノール中でボールミルにより混合して原料組成物を得た。続いて、エタノールを乾燥除去した後、ペレット状に成形しマッフル炉にて700℃、5時間の条件で焼成した。これにより、本発明の負極活物質を得た。
(試験電極の作製)
得られた負極活物質の粉末と、導電化材(アセチレンブラックおよびVGCF)と、結着材(PVdF)とを、負極活物質:導電化材:結着材=70:25:5の重量比で混錬することにより、ペーストを得た。次に、得られたペーストを、銅箔上にドクターブレード法にて塗工し、乾燥し、プレスすることにより、厚さ20μmの試験電極を得た。
[評価1]
(X線回折測定)
合成例で得られた負極活物質を用いて、CuKα線によるX線回折(XRD)測定を行った。その結果を図2に示す。図2に示されるように、上記負極活物質では、2θ=14.4°、19.8°、20.9°、24.0°、28.9°、31.8°、35.9°、36.5°、45.8°、47.3°、49.2°、52.2°、57.2、62.8°°付近にNaSn(POの結晶相を示す特徴的なピークが確認された。また、2θ=20.9°±0.5°のピークの回折強度をIとし、2θ=22.5°±0.5°のピーク(不純物相)の回折強度をIとした場合に、I/Iの値が0.11となることが確認された。これより、合成例で得られた負極活物質はNaSn(POの結晶相を主相として有していることが確認できた。
[実施例1]
(評価用Naイオン電池の作製)
CR2032型コインセルを用い、作用極として上述した試験電極を用い、対極としてNa金属を用い、セパレータとしてポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)の多孔質セパレータ(厚さ25μm)を用いた。また電解液として、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを、EC:DMC=1:1の体積比で混合した溶媒に、支持塩であるNaPFを濃度1mol/Lで溶解させたものを用いた。これらを用いて評価用Naイオン電池を得た。
[評価2]
(電池評価)
実施例1で得られた評価用Naイオン電池について、電池評価環境温度25℃、電流レートC/10、0.01V〜3.0Vの電圧範囲において充放電を行い、充放電特性を評価した。上記評価用Naイオン電池の充放電容量の結果を図3に示し、また2サイクル目におけるNaイオンの挿入脱離容量およびその充放電効率を表1に示す。
Figure 0005857910
図3および表1の結果から、実施例1の評価用Naイオン電池において、本発明の負極活物質は伝導イオンであるNaイオンを挿入脱離できることが確認された。また金属Naに対する負極活物質のNa挿入電位は、0.6V(Na/Na)付近であり、Na脱離電位は、1.0V(Na/Na)付近であることが確認できた。これより、本発明の負極活物質は、非水系ナトリウムイオン電池において、反応電位が低くなることが確認できた。
[実施例2]
(評価用Liイオン電池の作製)
CR2032型コインセルを用い、作用極として上述した試験電極を用い、対極としてLi金属を用い、セパレータとしてポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)の多孔質セパレータ(厚さ25μm)を用いた。また電解液として、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを、EC:DMC:EMC=3:4:3の体積比で混合した溶媒に、支持塩であるLiPFを濃度1mol/Lで溶解させたものを用いた。これらを用いて評価用Liイオン電池を得た。
[評価3]
(電池特性)
実施例2で得られた評価用Liイオン電池について、電池評価環境温度25℃、電流レートC/10、0.01V〜3.0Vの電圧範囲において充放電を行い、充放電特性を評価した。上記評価用Liイオン電池の充放電容量の結果を図4に示し、また2サイクル目におけるLiイオンの挿入脱離容量およびその充放電効率を表1に示す。
図4および表1の結果から、実施例2の評価用Liイオン電池において、本発明の負極活物質は伝導イオンであるLiイオンを挿入脱離できることが確認された。また金属Liに対する負極活物質のLi挿入電位は、0.8V(Li/Li)付近であり、Li脱離電位は、1.0V(Li/Li)付近であることが確認できた。これより、本発明の負極活物質は、非水系リチウムイオン電池において、反応電位が低くなることが確認できた。
1 … 正極活物質層
2 … 負極活物質層
3 … 非水電解質層
4 … 正極集電体
5 … 負極集電体
10 … 非水系金属イオン電池

Claims (5)

  1. 非水系金属イオン電池用の負極活物質であって、
    NaSn(POの結晶相を含有することを特徴とする負極活物質。
  2. 前記負極活物質が、NaSn(POの結晶相を主相として含有することを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
  3. 正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成される非水電解質層とを備える非水系金属イオン電池であって、
    前記負極活物質が、請求項1または請求項2の負極活物質であることを特徴とする非水系金属イオン電池。
  4. 非水系ナトリウムイオン電池であることを特徴とする請求項3に記載の非水系金属イオン電池。
  5. 非水系リチウムイオン電池であることを特徴とする請求項3に記載の非水系金属イオン電池。
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