JP2013137907A - ナトリウムイオン電池用負極活物質およびナトリウムイオン電池 - Google Patents

ナトリウムイオン電池用負極活物質およびナトリウムイオン電池 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、金属Naの析出を抑制したナトリウムイオン電池用負極活物質を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明においては、層間距離d002が3.50Å〜3.77Åの範囲内であり、ラマン分光測定により求められるD/G比が0.80〜1.10の範囲内である炭素材料から構成されることを特徴とするナトリウムイオン電池用負極活物質を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図2

Description

本発明は、金属Naの析出を抑制したナトリウムイオン電池用負極活物質、およびそれを用いたナトリウムイオン電池に関する。
ナトリウムイオン電池は、Naイオンが正極および負極の間を移動する電池である。NaはLiに比べて豊富に存在するため、ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池に比べて低コスト化を図りやすいという利点がある。一般的に、ナトリウムイオン電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、正極活物質層および負極活物質層の間に形成された電解質層とを有する。
ここで、リチウムイオン電池に用いられる負極活物質として、グラファイト材料が知られている。しかしながら、グラファイト材料は、通常、Naイオンを十分に挿入脱離できないため、グラファイト材料をナトリウムイオン電池の負極活物質として適用しても、実用的な電池を得ることは困難である。そのため、グラファイト材料に代わる炭素材料の研究が進められている。このような炭素材料として、例えば特許文献1にはハードカーボンが開示され、特許文献2にはラマン分光測定により得られるR値(ID/IG)が1.07以上3以下である炭素材料が開示され、特許文献3には、ガラス状炭素材料が開示されている。
特開2009−266821号公報 特開2010−251283号公報 特開2009−129741号公報
例えばハードカーボン(難黒鉛化性炭素)は、極めて低い電位(Na基準)でNaイオンと電気化学的に反応するため、金属Naの析出が生じやすく、デンドライトが生じやすいという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、金属Naの析出を抑制したナトリウムイオン電池用負極活物質を提供することを主目的とする。
上記目的を達成するために、本発明においては、層間距離d002が3.50Å〜3.77Åの範囲内であり、ラマン分光測定により求められるD/G比が0.80〜1.10の範囲内である炭素材料から構成されることを特徴とするナトリウムイオン電池用負極活物質を提供する。
本発明によれば、層間距離d002およびD/G比が所定の範囲にあることから、金属Naの析出を抑制したナトリウムイオン電池用負極活物質とすることができる。
また、本発明においては、層間距離d002が3.50Å以上であり、ラマン分光測定により求められるD/G比が0.80〜1.10の範囲内であり、金属Naに対するNa挿入脱離電位が0.30V以上である炭素材料から構成されることを特徴とするナトリウムイオン電池用負極活物質を提供する。
本発明によれば、層間距離d002、D/G比、およびNa挿入脱離電位が所定の範囲にあることから、金属Naの析出を抑制したナトリウムイオン電池用負極活物質とすることができる。
また、本発明においては、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するナトリウムイオン電池であって、上記負極活物質が、上述したナトリウムイオン電池用負極活物質であることを特徴とするナトリウムイオン電池を提供する。
本発明によれば、上述したナトリウムイオン電池用負極活物質を用いることで、金属Naの析出を抑制でき、安全性の高いナトリウムイオン電池とすることができる。
本発明においては、金属Naの析出を抑制したナトリウムイオン電池用負極活物質を提供することができるという効果を奏する。
本発明のナトリウムイオン電池の一例を示す概略断面図である。 実施例1で得られた評価用電池の充放電試験の結果である。 比較例1で得られた評価用電池の充放電試験の結果である。 比較例2で得られた評価用電池の充放電試験の結果である。 比較例3で得られた評価用電池の充放電試験の結果である。 実施例1および比較例1〜3における、層間距離d002と、Na挿入容量およびNa脱離容量との関係、ならびに、D/G比と、Na挿入容量およびNa脱離容量との関係を示すグラフである。
以下、本発明のナトリウムイオン電池用負極活物質およびナトリウムイオン電池について、詳細に説明する。
A.ナトリウムイオン電池用負極活物質
まず、本発明のナトリウムイオン電池用負極活物質について説明する。本発明のナトリウムイオン電池用負極活物質は、2つの実施態様に大別することができる。以下、本発明のナトリウムイオン電池用負極活物質について、第一実施態様と、第二実施態様とに分けて説明する。
1.第一実施態様
本発明のナトリウムイオン電池用負極活物質の第一実施態様について説明する。第一実施態様のナトリウムイオン電池用負極活物質は、層間距離d002が3.50Å〜3.77Åの範囲内であり、ラマン分光測定により求められるD/G比が0.80〜1.10の範囲内である炭素材料から構成されることを特徴とするものである。
第一実施態様によれば、層間距離d002およびD/G比が所定の範囲にあることから、金属Naの析出を抑制したナトリウムイオン電池用負極活物質とすることができる。
第一実施態様のナトリウムイオン電池用負極活物質は、層間距離d002が、通常3.50Å〜3.77Åの範囲内であり、3.50Å〜3.75Åの範囲内であることが好ましく、3.50Å〜3.70Åの範囲内であることがより好ましく、3.50Å〜3.65Åの範囲内であることがさらに好ましい。層間距離d002が小さすぎると、Naイオンが挿入されない可能性があり、層間距離d002が大きすぎると、細孔内に金属Naが析出し、安全性が低下する可能性があるからである。層間距離d002とは、炭素材料における(002)面の面間隔をいい、具体的にはグラフェン層間の距離に該当する。層間距離d002は、例えばCuKα線を用いたX線回折(XRD)法により得られるピークから求めることができる。
第一実施態様のナトリウムイオン電池用負極活物質は、ラマン分光測定により求められるD/G比が、通常0.80〜1.10の範囲内であり、0.80〜1.00の範囲内であることが好ましく、0.80〜0.90の範囲内であることがより好ましい。D/G比が小さすぎると、Naイオンが挿入されない可能性があり、D/G比が大きすぎると、例えば電解液分解等の副反応が生じ、不可逆容量が増大する可能性があるからである。D/G比とは、ラマン分光測定(波長532nm)において観察される、1590cm−1付近のグラファイト構造に由来するG−bandのピーク強度に対する、1350cm−1付近の欠陥構造に由来するD−bandのピーク強度をいう。
第一実施態様のナトリウムイオン電池用負極活物質は、金属Naに対するNa挿入脱離電位(V vs. Na/Na)が高いことが好ましい。金属Naの析出をさらに抑制できるからである。第一実施態様においては、Na挿入脱離電位を、Na挿入電位およびNa脱離電位の平均値と定義することができる。Na挿入電位およびNa脱離電位は、後述するようにサイクリックボルタンメトリ(CV)法により決定することができる。上記Na挿入電位は、例えば、0.23V以上であることが好ましく、0.25V以上であることがより好ましく、0.30V以上であることがさらに好ましく、0.35V以上であることが特に好ましい。上記Na脱離電位は、例えば、0.28V以上であることが好ましく、0.30V以上であることがより好ましく、0.35V以上であることがさらに好ましく、0.40V以上であることが特に好ましい。また、上記Na挿入脱離電位は、例えば、0.30V以上であることがより好ましく、0.35V以上であることがさらに好ましく、0.40V以上であることが特に好ましい。一方、上記Na挿入脱離電位は、通常1V以下である。
また、第一実施態様のナトリウムイオン電池用負極活物質は、所定の充放電試験において、0.30V(vs. Na/Na)未満の電位でプラトー部が生じないものであることが好ましい。金属Naの析出をさらに抑制できるからである。所定の充放電試験とは、後述する実施例に記載するように、ナトリウムイオン電池用負極活物質を含有する電極(作用極)と、金属Na電極(対極)とを有する評価用電池を作製し、環境温度25℃、電流レートC/10にて充放電を行う試験をいう。また、プラトー部とは、ある一定電位にて、Naイオンの挿入・脱離容量が発現する領域をいう。
第一実施態様のナトリウムイオン電池用負極活物質は、通常、粒子状である。その平均粒径(D50)は、特に限定されるものではないが、例えば10nm〜10μmの範囲内であることが好ましく、50nm〜5μmの範囲内であることがより好ましく、100nm〜1μmの範囲内であることがさらに好ましい。平均粒径が小さすぎると、凝集しやすく、塗工が困難になる可能性があり、平均粒径が大きすぎると、反応面積が低下してしまう可能性があるからである。平均粒径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置による測定によって求めることができる。
第一実施態様のナトリウムイオン電池用負極活物質の比表面積は、特に限定されるものではないが、例えば1m/g〜1000m/gの範囲内であることが好ましく、5m/g〜100m/gの範囲内であることがより好ましく、10m/g〜30m/gの範囲内であることがさらに好ましい。比表面積が小さすぎると、反応面積が低下してしまう可能性があり、比表面積が大きすぎると、副反応による不可逆容量が増大する可能性があるからである。比表面積は、BET法によって求めることができる。具体的には、液体窒素を用いた測定により、窒素の吸着等温線を作成して求める。
また、第一実施態様のナトリウムイオン電池用負極活物質の製造方法は、上述した負極活物質を得ることができる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、炭素を含む有機材料を炭化させる方法を挙げることができる。有機材料としては、石油、石炭、合成樹脂、石油ピッチ、石炭ピッチ、木材等を挙げることができる。合成条件については、上述した負極活物質が得られるように適宜調整すれば良い。
2.第二実施態様
次に、本発明のナトリウムイオン電池用負極活物質の第二実施態様について説明する。第二実施態様のナトリウムイオン電池用負極活物質は、層間距離d002が3.50Å以上であり、ラマン分光測定により求められるD/G比が0.80〜1.10の範囲内であり、金属Naに対するNa挿入脱離電位が0.30V以上である炭素材料から構成されることを特徴とするものである。
第二実施態様によれば、層間距離d002、D/G比、およびNa挿入脱離電位が所定の範囲にあることから、金属Naの析出を抑制したナトリウムイオン電池用負極活物質とすることができる。
第二実施態様のナトリウムイオン電池用負極活物質は、層間距離d002が通常3.50Å以上である。一方、層間距離d002は、3.80Å以下であることが好ましく、3.77Å以下であることがより好ましい。なお、Na挿入脱離電位の好ましい範囲、ナトリウムイオン電池用負極活物質の物性、およびその他の事項については、上記「1.第一実施態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、ナトリウムイオン電池用負極活物質の電位は、例えば、孔の大きさ、層間距離等によりコントロールすることができる。
B.ナトリウムイオン電池
次に、本発明のナトリウムイオン電池について説明する。本発明のナトリウムイオン電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するナトリウムイオン電池であって、上記負極活物質が、上述したナトリウムイオン電池用負極活物質であることを特徴とするものである。
図1は、本発明のナトリウムイオン電池の一例を示す概略断面図である。図1に示されるナトリウムイオン電池10は、正極活物質層1と、負極活物質層2と、正極活物質層1および負極活物質層2の間に形成された電解質層3と、正極活物質層1の集電を行う正極集電体4と、負極活物質層2の集電を行う負極集電体5と、これらの部材を収納する電池ケース6とを有するものである。本発明のナトリウムイオン電池は、負極活物質層2が、上記「A.ナトリウムイオン電池用負極活物質」に記載した負極活物質を含有することを大きな特徴とする。
本発明によれば、上述したナトリウムイオン電池用負極活物質を用いることで、金属Naの析出を抑制でき、安全性の高いナトリウムイオン電池とすることができる。
以下、本発明のナトリウムイオン電池について、構成ごとに説明する。
1.負極活物質層
まず、本発明における負極活物質層について説明する。本発明における負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する層である。また、負極活物質層は、負極活物質の他に、導電化材、結着材および固体電解質材料の少なくとも一つを含有していても良い。
本発明における負極活物質は、通常、上記「A.ナトリウムイオン電池用負極活物質」に記載した負極活物質である。この負極活物質を用いることで、金属Naの析出を抑制でき、安全性の高い電池とすることができる。さらに、より電位の高い活物質が豊富に存在するため、電圧の高いナトリウムイオン電池とすることができる。
導電化材の材料としては、所望の電子伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば炭素材料を挙げることができる。さらに、炭素材料としては、具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛を挙げることができる。また、結着材の材料としては、化学的、電気的に安定なものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系結着材、スチレンブタジエンゴム等のゴム系結着材、ポリプロプレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系結着材、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系結着材等を挙げることができる。また、固体電解質材料としては、所望のイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酸化物固体電解質材料、硫化物固体電解質材料を挙げることができる。なお、固体電解質材料については、後述する「3.電解質層」で詳細に説明する。
負極活物質層における負極活物質の含有量は、容量の観点からはより多いことが好ましく、例えば60重量%〜99重量%の範囲内、中でも70重量%〜95重量%の範囲内であることが好ましい。また、導電化材の含有量は、所望の電子伝導性を確保できれば、より少ないことが好ましく、例えば1重量%〜30重量%の範囲内であることが好ましい。また、結着材の含有量は、負極活物質等を安定に固定化できれば、より少ないことが好ましく、例えば1重量%〜30重量%の範囲内であることが好ましい。また、固体電解質材料の含有量は、所望のイオン伝導性を確保できれば、より少ないことが好ましく、例えば1重量%〜40重量%の範囲内であることが好ましい。
また、負極活物質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであるが、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
2.正極活物質層
次に、本発明における正極活物質層について説明する。本発明における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層である。また、正極活物質層は、正極活物質の他に、導電化材、結着材および固体電解質材料の少なくとも一つを含有していても良い。
正極活物質としては、例えば、層状活物質、スピネル型活物質、オリビン型活物質等を挙げることができる。正極活物質の具体例としては、NaFeO、NaNiO、NaCoO、NaMnO、NaVO、Na(NiMn1−X)O(0<X<1)、Na(FeMn1−X)O(0<X<1)、NaVPOF、NaFePOF、Na(PO等を挙げることができる。
正極活物質の形状は、粒子状であることが好ましい。また、正極活物質の平均粒径(D50)は、例えば1nm〜100μmの範囲内、中でも10nm〜30μmの範囲内であることが好ましい。正極活物質層における正極活物質の含有量は、容量の観点からはより多いことが好ましく、例えば60重量%〜99重量%の範囲内、中でも70重量%〜95重量%の範囲内であることが好ましい。なお、正極活物質層に用いられる、導電化材、結着材および固体電解質材料の種類ならびに含有量については、上述した負極活物質層に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、正極活物質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであるが、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
3.電解質層
次に、本発明における電解質層について説明する。本発明における電解質層は、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成される層である。電解質層に含まれる電解質を介して、正極活物質と負極活物質との間のイオン伝導を行う。電解質層の形態は、特に限定されるものではなく、液体電解質層、ゲル電解質層、固体電解質層等を挙げることができる。
液体電解質層は、通常、非水電解液を用いてなる層である。非水電解液は、通常、ナトリウム塩および非水溶媒を含有する。ナトリウム塩としては、例えばNaPF、NaBF、NaClOおよびNaAsF等の無機ナトリウム塩;およびNaCFSO、NaN(CFSO、NaN(CSO、NaN(FSO、NaC(CFSO等の有機ナトリウム塩等を挙げることができる。非水溶媒としては、ナトリウム塩を溶解するものであれば特に限定されるものではない。例えば高誘電率溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状エステル(環状カーボネート)、γ−ブチロラクトン、スルホラン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)等を挙げることができる。一方、低粘度溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状エステル(鎖状カーボネート)、メチルアセテート、エチルアセテート等のアセテート類、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル等を挙げることができる。高誘電率溶媒および低粘度溶媒を混合した混合溶媒を用いても良い。非水電解液におけるナトリウム塩の濃度は、例えば0.3mol/L〜5mol/Lの範囲内であり、0.8mol/L〜1.5mol/Lの範囲内であることが好ましい。ナトリウム塩の濃度が低すぎるとハイレート時の容量低下が生じる可能性があり、ナトリウム塩の濃度が高すぎると粘性が高くなり低温での容量低下が生じる可能性があるからである。なお、本発明においては、非水電解液として、例えばイオン性液体等の低揮発性液体を用いても良い。
ゲル電解質層は、例えば、非水電解液にポリマーを添加してゲル化することで得ることができる。具体的には、非水電解液に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリマーを添加することにより、ゲル化を行うことができる。
固体電解質層は、固体電解質材料を用いてなる層である。固体電解質材料としては、Naイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば酸化物固体電解質材料および硫化物固体電解質材料を挙げることができる。酸化物固体電解質材料としては、例えばNaZrSiPO12、βアルミナ固体電解質(NaO−11Al等)等を挙げることができる。硫化物固体電解質材料としては、例えばNaS−P等を挙げることができる。
本発明における固体電解質材料は、非晶質であっても良く、結晶質であっても良い。また、固体電解質材料の形状は、粒子状であることが好ましい。また、固体電解質材料の平均粒径(D50)は、例えば1nm〜100μmの範囲内、中でも10nm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
電解質層の厚さは、電解質の種類および電池の構成によって大きく異なるものであるが、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
4.その他の構成
本発明のナトリウムイオン電池は、上述した負極活物質層、正極活物質層および電解質層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および、負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができる。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができる。また、正極集電体および負極集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状、多孔質状等を挙げることができる。
本発明のナトリウムイオン電池は、正極活物質層および負極活物質層の間に、セパレータを有していても良い。より安全性の高い電池を得ることができるからである。セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、セルロース、ポリフッ化ビニリデン等の多孔膜;および樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等を挙げることができる。また、セパレータは、単層構造(例えばPE、PP)であっても良く、積層構造(例えばPP/PE/PP)であっても良い。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的な電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。
5.ナトリウムイオン電池
本発明のナトリウムイオン電池は、上述した正極活物質層、負極活物質層および電解質層を有するものであれば特に限定されるものではない。また、本発明のナトリウムイオン電池は、電解質層が固体電解質層である電池であっても良く、電解質層が液体電解質層である電池であって良く、電解質層がゲル電解質層である電池であっても良い。さらに、本発明のナトリウムイオン電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。また、本発明のナトリウムイオン電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。また、ナトリウムイオン電池の製造方法は、特に限定されるものではなく、一般的なナトリウムイオン電池における製造方法と同様である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
負極活物質として、炭素材料(平均粒径D50=200nm、比表面積14m/g、層間距離d002=3.564Å、D/G比=0.86)を用意した。この負極活物質と、結着材(ポリフッ化ビニリデン、PVDF)とを、活物質:結着材=92.5:7.5の重量比で混合し、混練することにより、ペーストを得た。次に、得られたペーストを、銅箔上にドクターブレードにて塗工し、乾燥し、プレスすることにより、厚さ10μmの試験電極を得た。
その後、CR2032型コインセルを用い、作用極として上記試験電極を用い、対極として金属Naを用い、セパレータとしてポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの多孔質セパレータ(厚さ25μm)を用いて評価用電池を得た。電解液には、EC(エチレンカーボネート)およびDMC(ジメチルカーボネート)を同体積で混合した溶媒にNaPFを濃度1mol/Lで溶解させたものを用いた。これにより、評価用電池を得た。
[比較例1]
負極活物質として、グラファイト(三菱化学社製、平均粒径D50=10μm、比表面積3m/g、層間距離d002=3.364Å、D/G比=0.12)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価用電池を得た。
[比較例2]
負極活物質として、ハードカーボン(クレハ社製カーボトロンP type(J)、平均粒径D50=9μm、比表面積5m/g、層間距離d002=3.782Å、D/G比=0.88)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価用電池を得た。
[比較例3]
負極活物質として、ケッチェンブラック(KB international社製KB_ECP600JD、平均粒径D50=40μm、比表面積1300m/g、層間距離d002=3.771Å、D/G比=1.13)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価用電池を得た。
[評価]
(充放電試験)
実施例1および比較例1〜3で得られた評価用電池に対して、充放電試験を行った。具体的には、環境温度25℃、電流レートC/10、電圧範囲0.01V〜2.0Vの条件で行った。その結果を表1および図2〜図5に示す。
Figure 2013137907
図2に示すように、実施例1で用いた炭素材料では、可逆的なNaイオンの挿入脱離が十分に生じることが確認できた。炭素材料へのNaイオンの挿入脱離反応の詳細なメカニズムは未だ明確になっていないが、層間距離d002がグラファイトよりも大きく、ハードカーボンよりも小さいことから、このグラフェン層間にNaが挿入されたためであると考えられる。これに対して、図3に示すように、比較例1で用いたグラファイトでは、Naイオンの挿入反応がほぼ生じないことが確認できた。これは、比較例1で用いたグラファイトは、層間距離d002が小さく、D/G比も小さいためであると考えられる。また、図4に示すように、比較例2で用いたハードカーボンでは、可逆的なNaイオンの挿入脱離が十分に生じることが確認できた。しかしながら、プラトー部が極めて低い電位に出現しており(Na挿入脱離電位は後述するように0.25V)、金属Naが析出しやすいことが確認できた。ハードカーボンへのNaイオンの挿入脱離反応の詳細なメカニズムは未だ明確になっていないが、実施例1と同様に、0.3Vよりも高い電位でグラフェン層間に挿入される可能性はあるものの、主として、0.25V程度の電位において、ハードカーボン中の細孔にNaイオンが挿入されると推察される。図5に示すように、比較例3では、Na挿入容量は大きいものの、Na脱離容量が小さく、Naイオンの脱離反応がほぼ生じないことが確認できた。これは、比表面積およびD/G比が大きいために、電解液分解等の副反応が支配的になっていると考えられる。
また、実施例1および比較例1〜3における、層間距離d002と、Na挿入容量およびNa脱離容量との関係、ならびに、D/G比と、Na挿入容量およびNa脱離容量との関係を図6に示す。図6に示すように、層間距離d002が3.50Å以上となり、D/G比が0.80以上になると、Na挿入脱離反応が十分に進行することが確認された。また、図6(d)に示すように、D/G比が1.10を超えると、Na脱離反応(可逆性)が大幅に低下することが確認できた。
(サイクリックボルタンメトリ測定)
実施例1および比較例2で得られた評価用電池に対して、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定を行うことにより、金属Naに対する活物質のNa挿入脱離電位を算出した。測定条件は、電気化学測定装置システム(ソーラトロン社製、147055BEC型)を用い、電位範囲0.01V〜2.5V(vs Na/Na)、掃引速度0.1mV/secとした。その結果を表2に示す。
Figure 2013137907
表2に示すように、実施例1で用いた炭素材料は、比較例2で用いたハードカーボンよりもNa挿入脱離電位が高く、金属Naの析出を抑制できることが確認された。
1 … 正極活物質層
2 … 負極活物質層
3 … 電解質層
4 … 正極集電体
5 … 負極集電体
6 … 電池ケース
10 … ナトリウムイオン電池

Claims (3)

  1. 層間距離d002が3.50Å〜3.77Åの範囲内であり、ラマン分光測定により求められるD/G比が0.80〜1.10の範囲内である炭素材料から構成されることを特徴とするナトリウムイオン電池用負極活物質。
  2. 層間距離d002が3.50Å以上であり、ラマン分光測定により求められるD/G比が0.80〜1.10の範囲内であり、金属Naに対するNa挿入脱離電位が0.30V以上である炭素材料から構成されることを特徴とするナトリウムイオン電池用負極活物質。
  3. 正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するナトリウムイオン電池であって、
    前記負極活物質が、請求項1または請求項2に記載のナトリウムイオン電池用負極活物質であることを特徴とするナトリウムイオン電池。
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