JP2020123460A - プレドープ材、プレドープ材を含む正極、並びに、その正極を備えた非水電解質二次電池の製造方法、及び、金属酸化物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プレドープ材を含むペーストを作製し、保管した際、ペーストがゲル化しにくいプレドープ材を提供する。【解決手段】本発明の一態様は、LiaMe1bX1(1−b)O4(5≦a≦6、0.8≦b≦1、Me1はCo、Mn、Fe及びNiからなる群から選択される1種又は2種以上の元素、X1はCo、Mn、Fe及びNi以外の金属元素)で表され、逆蛍石型構造を有する金属酸化物Aと、LipMe2qX2rO2(0≦p≦1、0.5≦q≦1、0≦r<0.1、Me2はCo、Mn、Fe及びNiからなる群から選択される1種又は2種以上の元素、X2はCo、Mn、Fe及びNi以外の金属元素)で表される金属酸化物Bと、を備え、上記金属酸化物Bが上記金属酸化物Aの少なくとも一部を覆っている、プレドープ材である。【選択図】図5
Description
本発明は、プレドープ材、プレドープ材を含む正極、並びに、その正極を備えた非水電解質二次電池の製造方法、及び、金属酸化物の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。非水電解質二次電池は、さらなるエネルギー密度の向上が求められている。
非水電解質二次電池に一般的に用いられるLiCoO2などの正極活物質は、初回充放電時の充電電気量と放電容量の差分、すなわち、初回充放電時の不可逆容量が小さい。一方で、一般的に用いられる炭素質材料などの負極活物質は、初回充電時に、リチウムイオンと、電解液と、の電気化学的な副反応が起こり、負極活物質の表面に反応生成物である被膜(SEI)を形成するため、不可逆容量が大きい。そのため、不可逆容量の小さい正極と、不可逆容量の大きい負極と、を組み合わせた非水電解質二次電池を作製すると、初回充電時に正極から脱離されるリチウムイオンの一部が、負極の被膜にトラップされることによって、正極が備える正極活物質の一部が以降の充放電に寄与できなくなるという問題がある。
上記の問題を解決するため、電気化学的にリチウムイオンの脱離が可能で、上記の脱離反応が不可逆である、リチウムを含む酸化物(プレドープ材)の正極への混合が提案されている。
プレドープ材の分解電位が、正極活物質の充電電位よりも卑で、プレドープ材の分解に伴う充電電気量が、負極活物質の被膜形成に消費される電気量と同等以上の場合、負極の被膜形成において消費されるリチウムイオンをプレドープ材の分解により補うことができ、正極活物質を効率的に充放電に寄与させることができる。そのため、プレドープ材を正極に混合することで、正極が含む正極活物質の量を減らすことが可能となり、質量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を向上させた非水電解質二次電池を提供できる。
プレドープ材の分解電位が、正極活物質の充電電位よりも卑で、プレドープ材の分解に伴う充電電気量が、負極活物質の被膜形成に消費される電気量と同等以上の場合、負極の被膜形成において消費されるリチウムイオンをプレドープ材の分解により補うことができ、正極活物質を効率的に充放電に寄与させることができる。そのため、プレドープ材を正極に混合することで、正極が含む正極活物質の量を減らすことが可能となり、質量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を向上させた非水電解質二次電池を提供できる。
特許文献1の請求項1には「正極に、Li2O及び/又はLi2O2からなるLiドープ材が添加され、これによって、前記初回充電時に負極活物質に取り込まれるリチウムが補填されることを特徴とする、リチウムイオン二次電池。」と記載がある。段落0009には、「初回充電時に2Li2O→4Li+O2、或いはLi2O2→2Li+O2の反応が進行し、過剰のリチウムが電解液中に放出されるので、初回充電時に負極活物質内に不可逆的に取り込まれたLiイオンを補填することができる。・・・その結果、不可逆的なLiイオンの取り込みに起因する充放電容量の低下を抑制して、電池容量を向上させることができる。」と記載があり、段落0036には、「過酸化リチウムを添加した実施例の電池では、初回充電後の放電比容量が163mAh/gとなり、過酸化リチウムを添加していない場合に比べて、放電比容量が向上することが分かった。」と記載がある。
特許文献2の段落0025には「Li6MnO4を有するプリドープ剤を正極活物質とともに正極材料として用いることで、充電時に、正極活物質に含まれるLiの多くを、負極活物質の可逆容量分に充当することができる。正極活物質の充電容量及び放電容量を有効に利用することができる。正極は、負極活物質の可逆容量分に充当されるLi量を含む程度の量の正極活物質を有していればよい。正極活物質の量を、従来よりも減らすことが可能である。」と記載がある。また、プリドープ剤の候補として、「Li6MnO4、Li5FeO4、Li6CoO4がLiをドープすることの出来る理論的な量(理論容量)は、Li6MnO4:1001mAh/g、Li5FeO4:867mAh/g、Li6CoO4:977mAh/gである。Li6MnO4の理論容量は、Li5FePO4及びLi6CoO4に比べて大きい。またLi6MnO4はLi5FePO4やLi6CoO4と比較すると大気中での安定性が最も高い。」(段落0026)と記載がある(なお、Li5FePO4はLi5FeO4の誤記と考えられる)。
非特許文献1には、LiCoO2にLi6CoO4を混合することが提案されている。
非特許文献1に記載があるようにLi6CoO4は大きな初回充電電気量を示すため、プレドープ材として正極活物質と混合することで、負極活物質の不可逆容量を補填することができる。正極活物質及びプレドープ材をあわせた体積及び質量を、プレドープ材を使用しない場合の正極の体積及び質量よりも小さくできるため、従来よりも正極を薄く、軽くでき、二次電池の小型化及び軽量化が可能である。
しかしながら、逆蛍石型構造を有する、Li6CoO4等とバインダーとを含む正極合材ペースト(以下、「ペースト」ともいう)は、大気中の水分が管理されていない環境下ではゲル化しやすく、アルゴン雰囲気のグローブボックス内のような特殊な環境下でしか、正極を作製できないという問題があった。従って、正極合材ペーストを作製する際の環境や、作製した後の時間管理等に注意を払う必要があることから、製造コストが嵩む原因となっていた。また、特許文献1には、Li2Oとバインダーとを含む正極合材ペーストのゲル化のしやすさに関する記載はない。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、プレドープ材を含むペーストを作製し、保管した際、ペーストがゲル化しにくいプレドープ材、及びそのプレドープ材を含む正極、並びに、その正極を備えた非水電解質二次電池の製造方法を提供することである。
本発明の一態様は、LiaMe1bX1(1−b)O4(5≦a≦6、0.8≦b≦1、Me1はCo、Mn、Fe及びNiからなる群から選択される1種又は2種以上の元素、X1はCo、Mn、Fe及びNi以外の金属元素)で表され、逆蛍石型構造を有する金属酸化物Aと、LipMe2qX2rO2(0≦p≦1、0.5≦q≦1、0≦r<0.1、Me2はCo、Mn、Fe及びNiからなる群から選択される1種又は2種以上の元素、X2はCo、Mn、Fe及びNi以外の金属元素)で表される金属酸化物Bと、を備え、上記金属酸化物Bが上記金属酸化物Aの少なくとも一部を覆っている、プレドープ材である。
本発明の他の一様態は、正極活物質と、上記プレドープ材と、を含む正極である。
本発明の他の一様態は、上記正極と、負極と、非水電解質と、を備える非水電解質二次電池を組み立てることを含む、非水電解質二次電池の製造方法である。
本発明の他の一様態は、LiaMe1bX1(1−b)O4(5≦a≦6、0.8≦b≦1、Me1はCo、Mn、Fe及びNiからなる群から選択される1種又は2種以上の元素、X1はCo、Mn、Fe及びNi以外の金属元素)で表され、逆蛍石型構造を有する金属酸化物Aを準備し、酸素含有雰囲気下で熱処理することを含む、金属酸化物の製造方法である。
本発明によれば、プレドープ材を含むペーストを作製し、保管した際、ペーストのゲル化しにくいプレドープ材、及びそのプレドープ材を含む正極、並びに、その正極を備えた非水電解質二次電池の製造方法を提供することができる。
本発明の構成及び作用効果について、技術思想を交えて説明する。但し、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限しない。なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、後述の実施形態又は実施例は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内である。
本発明の一態様は、LiaMe1bX1(1−b)O4(5≦a≦6、0.8≦b≦1、Me1はCo、Mn、Fe及びNiからなる群から選択される1種又は2種以上の元素、X1はCo、Mn、Fe及びNi以外の金属元素)で表され、逆蛍石型構造を有する金属酸化物Aと、LipMe2qX2rO2(0≦p≦1、0.5≦q≦1、0≦r<0.1、Me2はCo、Mn、Fe及びNiからなる群から選択される1種又は2種以上の元素、X2はCo、Mn、Fe及びNi以外の金属元素)で表される金属酸化物Bと、を備え、上記金属酸化物Bが上記金属酸化物Aの少なくとも一部を覆っている、プレドープ材である。
上記金属酸化物Aは、例えば、Li6CoO4、Li6MnO4、Li5FeO4、及びLi6NiO4からなる群から選択される1種又は2種以上であってよい。上記金属酸化物Aは、例えば、Li6Co0.8Cr0.2O4やLi6(Mn0.4Co0.4)Ti0.2O4のように、複数の金属酸化物の固溶体であってもよい。上記金属酸化物Aは、金属酸化物Aとバインダーとを含むペーストを作製し保管すると、ゲル化しやすいという問題がある。
なお、本実施形態に係る金属酸化物Aは、本発明の効果を損なわない範囲で、少量の他の元素を含有することを排除するものではない。例えば、合成原料に含まれる若干の不純物が混入してもよい。
上記Li6CoO4、Li6MnO4、Li5FeO4、及びLi6NiO4は逆蛍石型構造と呼ばれる構造を有する。上記のような、1molの化合物中に、5〜6mol等量のリチウムを含む逆蛍石型構造を有する金属酸化物は、リチウムイオンの脱離(充電)過程において、次のような酸化分解反応を起こす。
LiaMeO4 → aLi+ + MeO+ 1.5O2 + ae−
上記の反応は、5〜6mol等量のリチウムイオンの脱離反応であるため、その理論充電電気量は、800〜1000mAh/gと、一般的なリチウムイオン電池の正極活物質の理論充電電気量と比べて、非常に大きい。一方、反応の可逆性が低いため、不可逆容量も大きい。
LiaMeO4 → aLi+ + MeO+ 1.5O2 + ae−
上記の反応は、5〜6mol等量のリチウムイオンの脱離反応であるため、その理論充電電気量は、800〜1000mAh/gと、一般的なリチウムイオン電池の正極活物質の理論充電電気量と比べて、非常に大きい。一方、反応の可逆性が低いため、不可逆容量も大きい。
上記金属酸化物Bは、例えば、LiCoO2、CoO、Co3O4、LiMnO2、Mn3O4、MnO、MnO2、FeO、LiFeO2、Fe2O3、NiO、LiNiO2からなる群から選択される1種又は2種以上あるいは、固溶体であってよい。本実施形態に係る金属酸化物Bは、本発明の効果を損なわない範囲で、少量の他の元素を含有することを排除するものではない。上記の金属酸化物Bは、金属酸化物Bとバインダーとを含むペーストを作製し保管しても、ゲル化しにくい。
上記プレドープ材は、Li6CoO4、Li6MnO4、Li5FeO4及びLi6NiO4からなる群から選択される1種又は2種以上の金属酸化物Aあるいは、それらの固溶体と、LiCoO2、CoO、Co3O4、LiMnO2、Mn3O4、MnO、MnO2、FeO、LiFeO2、Fe2O3、NiO、LiNiO2、Al2O3からなる群から選択される1種又は2種以上の金属酸化物Bあるいは、それらの固溶体とを含んでいてよい。
本発明の一態様に係るプレドープ材が、上記金属酸化物Aと、上記酸化物Bとを含むことにより、上記金属酸化物Aのみや、Li2O、Li2O2からなる従来のプレドープ材に比べ、プレドープ材を含むペーストを作製し、保管した際、ゲル化しにくい。
ここで、本発明の一態様に係るプレドープ材において、上記Me2を構成する元素は、上記Me1を構成する元素に含まれることが好ましい。
このような構成によれば、本発明の一態様に係るプレドープ材を製造するための原料として、金属酸化物Aを製造する原料に含まれる元素以外の元素を含む化合物を準備する必要がない。
このような構成によれば、本発明の一態様に係るプレドープ材を製造するための原料として、金属酸化物Aを製造する原料に含まれる元素以外の元素を含む化合物を準備する必要がない。
上記Me2の平均酸化数は、上記Me1の平均酸化数よりも大きいことが好ましい。
上記Me2の配位数は、上記Me1の配位数よりも大きいものを含むことが好ましい。
一般にLiaMeO4で表される逆蛍石型構造を有する金属酸化物の遷移金属元素(Me)の配位数は4である。例えば、逆蛍石型構造を有するLi6CoO4における、Coの配位数は4である。一方で、岩塩型構造を有するLiCoO2やCoOにおけるCoの配位数は6であり、スピネル型構造を有するCo3O4やLiMn2O4における遷移金属元素の配位数は6と4とが共存する。
上記金属酸化物Bは、上記金属酸化物Aの表面の少なくとも一部を覆っている。図1に示すように、金属酸化物Aの一次粒子又は/及び二次粒子の表面を、金属酸化物Bが層状に完全に覆っていてもよく(図1左)、金属酸化物Aの二次粒子の一部が露出していてもよい(図1中)。また金属酸化物Aの一次粒子又は/及び二次粒子の表面を、粒子状の金属酸化物Bが覆っていてもよい(図1右)。
金属酸化物Bが金属酸化物Aの少なくとも一部を覆っていることは、次の手法で確認できる。
粉末エックス線回折法にて、2つの異なる結晶相を検出した試料について、薄片状に加工した粒子断面を透過型電子顕微鏡にて観察し、粒子の中心部に金属酸化物Aの結晶の格子に対応する格子像を、粒子の表面近傍に金属酸化物Bの結晶の格子に対応する格子像を、それぞれ観察できればよい。
粉末エックス線回折法にて、2つの異なる結晶相を検出した試料について、薄片状に加工した粒子断面を透過型電子顕微鏡にて観察し、粒子の中心部に金属酸化物Aの結晶の格子に対応する格子像を、粒子の表面近傍に金属酸化物Bの結晶の格子に対応する格子像を、それぞれ観察できればよい。
上記金属酸化物Aは主としてプレドープ材としての機能を担う。しかしながら、上記金属酸化物Aは、バインダーと混合し、ペーストを作製し、保管すると、ペーストがゲル化しやすい。
一方で、上記金属酸化物Bは、バインダーと混合し、ペーストを作製し、保管してもゲル化しにくい。そのため、主として上記金属酸化物Aの表面を金属酸化物Bが覆うことで、ペーストを作製し、保管してもゲル化しにくいプレドープ材を提供できる。
一方で、上記金属酸化物Bは、バインダーと混合し、ペーストを作製し、保管してもゲル化しにくい。そのため、主として上記金属酸化物Aの表面を金属酸化物Bが覆うことで、ペーストを作製し、保管してもゲル化しにくいプレドープ材を提供できる。
プレドープ材の単位質量当たりの初回充電電気量は、正極活物質の単位質量当たりの充電電気量より大きいほうが好ましい。そのため、プレドープ材の初回充電電気量は、200mAh/g以上であることが好ましく、300mAh/g以上であることがさらに好ましく、500mAh/g以上であることが最も好ましい。
プレドープ材の初回容量は、次の手順で測定する。プレドープ材に、導電剤と、バインダーとを加えたペーストを基材上に塗布、乾燥したものを作用極、金属リチウムを対極として、非水電解質二次電池を組立て、作用極が含むプレドープ材1gあたり10mAの電流値で、4.5Vまで充電、4.5Vで10h保持(いわゆる定電流定電圧充電)した後、2.0Vまで定電流放電する。そのときの充電電気量(mAh)と放電容量(mAh)とを、作用極が含むプレドープ材の質量(g)で除算したものをそれぞれ、初回充電電気量(mAh/g)、初回放電容量(mAh/g)とする。また、その差分を初回不可逆容量(mAh/g)とする。
プレドープ材の初回容量は、次の手順で測定する。プレドープ材に、導電剤と、バインダーとを加えたペーストを基材上に塗布、乾燥したものを作用極、金属リチウムを対極として、非水電解質二次電池を組立て、作用極が含むプレドープ材1gあたり10mAの電流値で、4.5Vまで充電、4.5Vで10h保持(いわゆる定電流定電圧充電)した後、2.0Vまで定電流放電する。そのときの充電電気量(mAh)と放電容量(mAh)とを、作用極が含むプレドープ材の質量(g)で除算したものをそれぞれ、初回充電電気量(mAh/g)、初回放電容量(mAh/g)とする。また、その差分を初回不可逆容量(mAh/g)とする。
上記プレドープ材を正極活物質と混合した正極と、ハードカーボンやSi系負極のような初回充放電時の不可逆容量が大きい負極と、を組み合わせた非水電解質二次電池を作製すると、エネルギー密度が向上した非水電解質二次電池を提供できる。具体的には、負極の初回不可逆容量(mAh)と、プレドープ材と正極活物質とを混合した正極の初回不可逆容量(mAh)との差異が、±5%以内となるような設計の非水電解質二次電池を作製するとよい。プレドープ材の初回充電電気量(mAh/g)が、正極活物質の初回充電電気量(mAh/g)よりも大きい場合、プレドープ材を混合することで、正極が含む正極合材の体積及び質量をより低減できることから好ましい。
上記プレドープ材が備える上記金属酸化物A及び上記金属酸化物Bの合計質量に対する上記金属酸化物Bの質量比率は、低すぎるとペーストを作製し、保管した際、ゲル化しにくいという効果が不十分となり、高すぎるとプレドープ材としての質量あたりの初回充電電気量(mAh/g)が小さくなる。上記プレドープ材が備える上記金属酸化物A及び上記金属酸化物Bの合計質量に対する上記金属酸化物Bの質量比率の上限は、60質量%が好ましく、30質量%がさらに好ましく、20質量%がよりさらに好ましい。下限は、0.1質量%が好ましく、3質量%がさらに好ましく、10質量%が最も好ましい。
上記金属酸化物A及び上記金属酸化物Bの合計質量に対する上記金属酸化物Bの質量比率は、プレドープ材のX線回折測定結果に基づいてRIR法により定量する。RIR法とは、X線回折測定により得られた各ピークの積分強度をもちいて、合成試料の各構成成分の質量比を算出する方法である。RIR法による定量を行うための解析ソフトはX線回折測定装置に付属されていることがある。
X線回折測定は、X線回折装置(Rigaku社の「MiniFlex II」)を用いた粉末X線回折測定によって、線源はCuKα線、管電圧は30kV、管電流は15mAとして行う。また、サンプリング幅は0.02°、スキャンスピードは5°/min、発散スリット幅は0.625°、受光スリット幅は13mm(OPEN)、散乱スリット幅は8mmとする。
本発明の他の一態様は、正極活物質と、上記プレドープ材と、を含む正極である。
本発明の他の一態様は、上記正極と、負極と、非水電解質と、を備える非水電解質二次電池を組み立てることを含む、非水電解質二次電池の製造方法である。
本発明の他の一態様は、LiaMe1bX1(1−b)O4(5≦a≦6、0.8≦b≦1、Me1はCo、Mn、Fe及びNiからなる群から選択される1種又は2種以上の元素、X1はCo、Mn、Fe及びNi以外の金属元素)で表され、逆蛍石型構造を有する金属酸化物Aを準備し、酸素含有雰囲気下で熱処理することを含む、金属酸化物の製造方法である。
具体的には、上記金属酸化物Aを準備し、酸素含有雰囲気下で熱処理すればよい。ここで、上記金属酸化物A及び上記金属酸化物Bの合計質量に対する上記金属酸化物Bの質量比率が大きくなりすぎないように制御するため、準備した上記金属酸化物Aをまず不活性雰囲気で所定の温度まで昇温した後、降温するまでの間に所定の時間のみ酸素含有雰囲気下で熱処理する方法を用いてもよい。
上記金属酸化物Aは、公知の方法で合成したものを用いることができる。上記金属酸化物Aを合成するための雰囲気は、上記金属酸化物Aが含有する元素Me1がCoの場合は、窒素等の不活性雰囲気が好ましく、Me1がMn、Fe又はNiの場合は還元性雰囲気が好ましい。還元性雰囲気としては、水素を混合した窒素雰囲気であってよい。
また、後述する実施例に示すように、上記金属酸化物Aを合成すること、及び金属酸化物Aを酸素含有雰囲気下で熱処理することを一連の工程として行うこともできる。具体的には、上記金属酸化物Aを合成するために必要な原料を準備し、所定の雰囲気下で所定の温度まで昇温した後、降温するまでの間に、所定の時間のみ酸素含有雰囲気とする方法を用いてもよい。このような製造方法によれば、上記金属酸化物Aの表面で化学反応が進行する。そのため、上記金属酸化物Bが、上記金属酸化物A表面を覆っているプレドープ材を簡略な方法で製造することができる。この場合、金属酸化物Bが含有するMe2と金属酸化物Aが含有するMe1は同一の元素となる。
以下、本発明に係る非水電解質二次電池について、さらに詳説する。
<正極>
上記プレドープ材、及び正極活物質を用いて正極を作製することができる。具体的には、例えば正極基材に、上記プレドープ材及び正極活物質を含む正極合材ペーストを塗工し、乾燥させることにより、正極を得ることができる。
上記プレドープ材、及び正極活物質を用いて正極を作製することができる。具体的には、例えば正極基材に、上記プレドープ材及び正極活物質を含む正極合材ペーストを塗工し、乾燥させることにより、正極を得ることができる。
上記正極活物質としては、例えばLixMOy(Mは少なくとも一種の金属を表す)で表される金属酸化物(層状のα−NaFeO2型結晶構造を有するLixCoO2,LixNiO2,LixMnO3,LixNiαCo(1−α)O2,LixNiαMnβCo(1−α−β)O2等、スピネル型結晶構造を有するLixMn2O4,LixNiαMn(2−α)O4等)、LiwMex(AOy)z(Meは少なくとも一種の金属を表し、Aは例えばP、Si、B、V等を表す)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO4,LiMnPO4,LiNiPO4,LiCoPO4,Li3V2(PO4)3,Li2MnSiO4,Li2CoPO4F等)が挙げられる。これらの化合物中の元素又はポリアニオンは、他の元素又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。
上記正極合材ペーストは、正極活物質、上記プレドープ材及び分散媒を含む。正極合材ペーストは、必要に応じて導電剤、バインダー(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含むことができる。
上記正極基材は、導電性を有する。基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はそれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ及びコストのバランスからアルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。また、正極基材の形成形態としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極基材としてはアルミニウム箔が好ましい。なお、アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS−H−4000(2014年)に規定されるA1085P、A3003P等が例示できる。
上記正極活物質と上記プレドープ材との混合比としては特に限定されないが、正極と負極の初回不可逆容量の差異を小さくできる混合比であるほど好ましい。一般的に実用化されている非水電解質二次電池においては、プレドープ材を除く正極合材100質量%に対する上記プレドープ材の添加量の下限としては、0.1質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、2質量%がより好ましい。上記下限以上とすることで、電池のエネルギー密度を十分に向上させることができる。一方、上記プレドープ材の正極合材への添加量の上限としては、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。上記上限以下とすることで、充放電反応に寄与する正極活物質の質量を十分なものとすることができる。
上記分散媒としては、通常、有機溶媒が用いられる。この有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、アセトン、エタノール等の極性溶媒や、キシレン、トルエン、シクロヘキサン等の無極性溶媒を挙げることができ、極性溶媒が好ましく、NMPがより好ましい。
上記導電剤としては、蓄電素子性能に悪影響を与えない導電性材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、天然又は人造の黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、金属、導電性セラミックスなどが挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。
上記バインダー(結着剤)としては、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子などが挙げられる。中でも、PVdFが好ましい。
上記増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。また、増粘剤がリチウムと反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させておくことが好ましい。
上記フィラーとしては、電池性能に悪影響を与えないものであれば特に限定されない。フィラーの主成分としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラスなどが挙げられる。
このような成分を含む正極合材ペーストを正極基材に塗工する。塗工方法としては特に限定されず、ローラーコーティング、スクリーンコーティング、スピンコーティング等の公知の方法により行うことができる。このように塗工された正極合材ペーストを乾燥させることにより、正極基材上に正極合材層が形成される。これにより、正極を得ることができる。
<他の工程>
当該非水電解質二次電池の製造方法は、他の工程を有することができる。他の工程は、従来公知の非水電解質二次電池の製造工程と同様である。例えば、負極を作製する工程、非水電解質を調製する工程、正極及び負極をセパレータを介して積層又は巻回することにより交互に重畳された電極体を形成する工程、正極及び負極(電極体)を電池容器に収容する工程、並びに上記電池容器に上記非水電解質を注入する工程を備えることができる。注入後、注入口を封止することにより非水電解質二次電池を得ることができる。また、当該製造方法においては、非水電解質二次電池の組み立て後、初回の充放電工程を備えていてもよい。当該製造方法においては、この初回の充放電工程により、プレドープ材が高い利用率で消費され、正極活物質中の、電極間を行き来可能なリチウムの減少を抑制することができる。
当該非水電解質二次電池の製造方法は、他の工程を有することができる。他の工程は、従来公知の非水電解質二次電池の製造工程と同様である。例えば、負極を作製する工程、非水電解質を調製する工程、正極及び負極をセパレータを介して積層又は巻回することにより交互に重畳された電極体を形成する工程、正極及び負極(電極体)を電池容器に収容する工程、並びに上記電池容器に上記非水電解質を注入する工程を備えることができる。注入後、注入口を封止することにより非水電解質二次電池を得ることができる。また、当該製造方法においては、非水電解質二次電池の組み立て後、初回の充放電工程を備えていてもよい。当該製造方法においては、この初回の充放電工程により、プレドープ材が高い利用率で消費され、正極活物質中の、電極間を行き来可能なリチウムの減少を抑制することができる。
<負極>
負極は、例えば負極基材に、負極合材ペーストを塗工し、乾燥させることにより得ることができる。
負極は、例えば負極基材に、負極合材ペーストを塗工し、乾燥させることにより得ることができる。
上記負極基材は、正極基材と同様の構成とすることができるが、材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属又はそれらの合金が用いられ、銅又は銅合金が好ましい。つまり、負極基材としては銅箔が好ましい。銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。
上記負極合材ペーストは、負極活物質及び分散媒を含む。負極合材ペーストは、必要に応じて導電剤、バインダー(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含むことができる。負極活物質以外の各成分は、正極合材ペースト中の各成分として例示した物を用いることができる。
上記負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材質が用いられる。具体的な負極活物質としては、例えばSi、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;ポリリン酸化合物;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(ソフトカーボン又はハードカーボン)等の炭素材料等が挙げられる。
上記負極の不可逆容量(mAh)をもとに、上記正極が含有する正極活物質及びプレドープ材の質量を決定することが好ましい。具体的には、プレドープ材を含まない上記正極の初回充電電気量と初回不可逆容量(mAh/g)と、上記負極活物質の初回充電電気量と初回不可逆容量(mAh/g)と、プレドープ材の初回充電電気量(mAh/g)と、を実験により求めたのち、それぞれの容量(mAh/g)及び、質量(g)を元に、プレドープ材を添加した上記正極と上記負極の初回充電電気量(mAh)と初回不可逆容量(mAh)がそれぞれほぼ同じ値になるようにプレドープ材の添加量を決定すればよい。
上記セパレータの材質としては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が用いられる。これらの中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。上記セパレータの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。また、これらの樹脂を複合してもよい。
上記非水電解質としては、一般的な非水電解質二次電池に通常用いられる公知の非水電解質が使用できる。上記非水電解質は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解されている電解質塩を含む。
上記非水溶媒としては、一般的な二次電池用非水電解質の非水溶媒として通常用いられる公知の非水溶媒を用いることができる。上記非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、エステル、エーテル、アミド、スルホン、ラクトン、ニトリル等を挙げることができる。
上記環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート、1,2−ジフェニルビニレンカーボネート等を挙げることができる。
上記鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート等を挙げることができる。
電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等を挙げることができるが、リチウム塩が好ましい。上記リチウム塩としては、LiPF6、LiPO2F2、LiBF4、LiPF2(C2O4)2、LiClO4、LiN(SO2F)2等の無機リチウム塩、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、LiC(SO2CF3)3、LiC(SO2C2F5)3等のフッ化炭化水素基を有するリチウム塩などを挙げることができる。
上記非水電解質には、その他の添加剤が添加されていてもよい。また、上記非水電解質として、常温溶融塩、イオン液体、ポリマー固体電解質などを用いることもできる。
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
<非水電解質二次電池の構成>
本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法によって得られた非水電解質二次電池の構成については特に限定されるものではなく、正極、負極及びセパレータを有する円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。
図6に、本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法によって得られた矩形状の非水電解質二次電池1の外観斜視図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図6に示す非水電解質二次電池1は、電極群2が電池容器3に収納されている。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード41を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード51を介して負極端子5と電気的に接続されている。
本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法によって得られた非水電解質二次電池の構成については特に限定されるものではなく、正極、負極及びセパレータを有する円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。
図6に、本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法によって得られた矩形状の非水電解質二次電池1の外観斜視図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図6に示す非水電解質二次電池1は、電極群2が電池容器3に収納されている。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード41を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード51を介して負極端子5と電気的に接続されている。
<蓄電装置の構成>
上記の非水電解質二次電池を複数個集合した蓄電装置も、本発明の実施形態に含まれる。図7に示す蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解質二次電池1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
上記の非水電解質二次電池を複数個集合した蓄電装置も、本発明の実施形態に含まれる。図7に示す蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解質二次電池1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[比較例1−1]
露点−50℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内にて、3.27gのLi2O(高純度化学社製)粉末、及び2.73gのCoO(高純度化学社製)粉末を、瑪瑙製乳鉢をもちいて、十分に混合した。上記混合粉末をシリカ(SiO2)繊維からなる石英綿に充填した。その後、窒素フロー(0.017L/s)下の角型電気炉(内寸:W120mm×H90mm×D220mm)に設置した。昇温速度10℃/minにて900℃まで昇温し、この温度で20h保持した後、自然放冷した。このようにして焼成体を得た。上記焼成体を瑪瑙製乳鉢で解砕することで比較例1−1に係る粉末を得た。上記の工程は特許文献3の記載を参考にした。
露点−50℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内にて、3.27gのLi2O(高純度化学社製)粉末、及び2.73gのCoO(高純度化学社製)粉末を、瑪瑙製乳鉢をもちいて、十分に混合した。上記混合粉末をシリカ(SiO2)繊維からなる石英綿に充填した。その後、窒素フロー(0.017L/s)下の角型電気炉(内寸:W120mm×H90mm×D220mm)に設置した。昇温速度10℃/minにて900℃まで昇温し、この温度で20h保持した後、自然放冷した。このようにして焼成体を得た。上記焼成体を瑪瑙製乳鉢で解砕することで比較例1−1に係る粉末を得た。上記の工程は特許文献3の記載を参考にした。
[実施例1−1]
900℃まで昇温し、この温度で20h保持した後、乾燥空気を0.017L/sで60sフローし、再び窒素フローに切り替えた後、900℃で5h保持したこと以外は比較例1−1と同様にして、実施例1−1に係る粉末を得た。
900℃まで昇温し、この温度で20h保持した後、乾燥空気を0.017L/sで60sフローし、再び窒素フローに切り替えた後、900℃で5h保持したこと以外は比較例1−1と同様にして、実施例1−1に係る粉末を得た。
[実施例1−2]
乾燥空気をフローする時間を180sに変更したことを除いては実施例1−1と同様にして、実施例1−2に係る粉末を得た。
乾燥空気をフローする時間を180sに変更したことを除いては実施例1−1と同様にして、実施例1−2に係る粉末を得た。
[実施例1−3]
乾燥空気をフローする時間を20sに変更したことを除いては実施例1−1と同様にして、実施例1−3に係る粉末を得た。
乾燥空気をフローする時間を20sに変更したことを除いては実施例1−1と同様にして、実施例1−3に係る粉末を得た。
[比較例1−2]
比較例1−1に係る粉末と市販のLiCoO2粉末を82:18の質量比率で混合し、比較例1−2に係る粉末を得た。
比較例1−1に係る粉末と市販のLiCoO2粉末を82:18の質量比率で混合し、比較例1−2に係る粉末を得た。
[実験1;X線回折測定及びRIR法による解析]
上記実施例1−1〜1−3の粉末について、上述の手順でXRD測定をおこなった。ICDDのLi6CoO4とLiCoO2の回折パターンとあわせて、実施例1−1〜1−3について得られたX線回折図を図2に示す。
上記実施例1−1〜1−3の粉末について、上述の手順でXRD測定をおこなった。ICDDのLi6CoO4とLiCoO2の回折パターンとあわせて、実施例1−1〜1−3について得られたX線回折図を図2に示す。
図2から、乾燥空気を20sフローした実施例1−3では、Li6CoO4のピークの他に、LiCoO2由来の小さなピークが見られた。乾燥空気のフロー時間を60s及び180sとした実施例1−1及び実施例1−2では、実施例1−3と比較して、LiCoO2のピークがさらに大きくなった。これは900℃に昇温した後に酸素を含む乾燥空気をフローすることで、Li6CoO4の表面で化学反応がおき、LiCoO2が一部生成したためと考えられる。なお、この場合、Li6CoO4(Coの酸化数は+2)が酸化され、LiCoO2(Coの酸化数は+3)が一部生成した、酸化反応であると考えられる。ここで、Li6CoO4粒子と、酸素を含む乾燥空気と、が接触している箇所から徐々に反応が進行するため、LiCoO2がLi6CoO4の表面を覆っていると考えられる。
[実験2;ペーストの大気安定性試験]
上記実施例1−1〜1−3及び比較例1−1、1−2の粉末について、以下の方法にてペーストの「大気安定性試験」を行った。0.3gの各粉末に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を12質量%溶解させたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液2.8gを加え、瑪瑙製乳鉢で混練してペーストを作製した。底面の直径が10mmφのアルミニウム製円筒容器に上記ペーストを3.1gずつ入れ、45℃、又は60℃のホットプレート上に載置し、所定時間(0.5h、1.0h、1.5h、2.0h、3.5h、8.0h、24.0h)ごとに薬さじで攪拌してペーストの流動性の有無を目視で観察した。その際、NMPが揮発している場合は、NMPを追加し、薬さじで攪拌を試みた。その結果、ペーストが流動性を維持する場合は「ゲル化せず」と判断し、45℃の場合24.0h、60℃の場合8.0hを経過するまで観察を継続した。NMPを追加しても流動性が失われた場合は「ゲル化した」と判断し、以降の観察を終了した。一連の試験はいずれも湿度10〜20%の大気環境下でおこなった。
上記実施例1−1〜1−3及び比較例1−1、1−2の粉末について、以下の方法にてペーストの「大気安定性試験」を行った。0.3gの各粉末に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を12質量%溶解させたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液2.8gを加え、瑪瑙製乳鉢で混練してペーストを作製した。底面の直径が10mmφのアルミニウム製円筒容器に上記ペーストを3.1gずつ入れ、45℃、又は60℃のホットプレート上に載置し、所定時間(0.5h、1.0h、1.5h、2.0h、3.5h、8.0h、24.0h)ごとに薬さじで攪拌してペーストの流動性の有無を目視で観察した。その際、NMPが揮発している場合は、NMPを追加し、薬さじで攪拌を試みた。その結果、ペーストが流動性を維持する場合は「ゲル化せず」と判断し、45℃の場合24.0h、60℃の場合8.0hを経過するまで観察を継続した。NMPを追加しても流動性が失われた場合は「ゲル化した」と判断し、以降の観察を終了した。一連の試験はいずれも湿度10〜20%の大気環境下でおこなった。
RIR法により得られたLi6CoO4とLiCoO2の成分比率及び、「大気安定性試験」の結果を表1に示す。ここで、「大気安定性試験」において「ゲル化せず」と判断したものを○印で示し、「ゲル化した」と判断したものを×印で示し、最後に観察した時点の載置開始からの経過時間を併記した。
表1から、乾燥空気のフロー時間が長くなるにつれ、LiCoO2の成分比率が高くなることがわかる。焼成炉の大きさ、焼成試料の質量によって、焼成温度や乾燥空気のフロー時間を適宜選択することで、両者の比を制御可能である。
比較例1−1に係る粉末を用いたペーストでは、45℃で3.5h経過した時点でゲル化が観察された。また、室温においても、24.0h経過後にはゲル化が観察され、後述の手法で基材上への塗布を試みたが、できなかった。この要因は定かではないが、以下の要因が推察される。水に不安定な塩基性塩であるLi6CoO4が、大気やNMPに含まれる微量の水分によって加水分解することでペーストが塩基性を呈することによって、PVdFがゲル化したものと考えられる。PVdFは塩基と反応してゲル化することが知られている。(例えば、特開2012−186054号公報)
同様の現象は、Li6CoO4と同様に逆蛍石型構造を有し、塩基性塩である、Li6MnO4、Li5FeO4、及びLi6NiO4及びそれらの固溶体でも観察されると考えられる。
同様の現象は、Li6CoO4と同様に逆蛍石型構造を有し、塩基性塩である、Li6MnO4、Li5FeO4、及びLi6NiO4及びそれらの固溶体でも観察されると考えられる。
実施例1−1〜1−3に係る粉末を用いたペーストでは、60℃で8.0h経過してもゲル化しなかった。この要因は、水に対する安定性が高いLiCoO2がLi6CoO4の表面を覆っているために、Li6CoO4の加水分解反応が抑えられたためであると考えられる。
Li6CoO4の粒子とLiCoO2の粒子が混合されてなる比較例1−2に係る粉末を用いたペーストでは、45℃で3.5h経過するとゲル化が観察された。これは、Li6CoO4がLiCoO2で覆われていないことから、ペースト中にLiCoO2が存在していても、Li6CoO4の加水分解が抑えられなかったためであると考えられる。
Li2Oの粉末に関しても上述と同様の手順でペーストを作製し、大気安定性試験を実施した結果、室温で8.0h経過後にはゲル化が観察された。
[実験3;実施例1−1に係る粉末の電気化学特性評価]
<実施例2−1>
実施例1−1に係る粉末、アセチレンブラック(AB)、PVdFを12質量%溶解させたNMP溶液及びNMPを用いて、ペーストを作製し、これをアルミニウムメッシュに塗布し、120℃で一晩減圧乾燥した。乾燥後、プレス機にてプレスして実施例2−1に係る作用極を得た。
<実施例2−1>
実施例1−1に係る粉末、アセチレンブラック(AB)、PVdFを12質量%溶解させたNMP溶液及びNMPを用いて、ペーストを作製し、これをアルミニウムメッシュに塗布し、120℃で一晩減圧乾燥した。乾燥後、プレス機にてプレスして実施例2−1に係る作用極を得た。
非水電解質二次電池(以下、「評価セル」ともいう)として三極式ビーカーセルを作製した。作用極には上記の作用極を使用し、対極及び参照極には金属リチウムを使用した。非水電解質には、ECとEMCとDMCとを30:35:35の体積比で混合した非水溶媒に、1mol/Lの濃度でLiPF6を溶解させたものを使用した。このようにして実施例2−1に係る評価セルを作製した。
<充放電試験>
上記三極式ビーカーセルについて、25℃の環境下、2回の充放電試験を行った。充電は、上限電位4.5V(vs.Li/Li+)の定電流定電圧(CCCV)充電とし、充電終止条件は、4.5Vで10h経過した時点とした。放電は、下限電位2.75V(vs.Li/Li+)の定電流放電とした。充電及び放電の電流値は、作用極が含む実施例1−1に係る粉末の質量に対して10mA/gとした。
上記三極式ビーカーセルについて、25℃の環境下、2回の充放電試験を行った。充電は、上限電位4.5V(vs.Li/Li+)の定電流定電圧(CCCV)充電とし、充電終止条件は、4.5Vで10h経過した時点とした。放電は、下限電位2.75V(vs.Li/Li+)の定電流放電とした。充電及び放電の電流値は、作用極が含む実施例1−1に係る粉末の質量に対して10mA/gとした。
図3に上記の試験で得られた充放電曲線を示す。横軸は得られた容量(mAh)を作用極が含む実施例1−1に係る粉末の質量で除算した容量(mAh/g)とした。また、容量を表2にまとめた。
実施例1−1に係る粉末を作用極、金属リチウムを対極とした非水電解質二次電池を作製し、上記の試験条件で充放電すると、初回充電電気量(1回目充電電気量)は569.8mAh/gであり、初回不可逆容量(1回目不可逆容量)は510.4mAh/gであった。これは充電過程でLi6CoO4の分解反応が進行したが、放電過程では、逆の反応が起きなかったためと考えられる。また、2回目の充放電では、1回目の充放電時に見られた大きな不可逆容量は見られなかった。以下、実施例1−1に係る粉末を「プレドープ材1」ともいう。
[実験4;プレドープ材1を含む正極の電気化学特性評価]
<比較例3−3に係る正極の作製>
湿度10〜20%の大気環境下で、正極活物質として市販のLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM111)、導電剤としてAB、及び結着剤としてPVdFを、NCM111:AB:PVdF=90:5:5の質量比(固形分換算)で含有し、NMPを分散媒とする正極合材ペーストを作製した。上記の正極合材ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔に塗布したのち、120℃で16h減圧乾燥した。乾燥後、プレス機にてプレスして比較例3−3に係る正極を得た。
<比較例3−3に係る正極の作製>
湿度10〜20%の大気環境下で、正極活物質として市販のLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM111)、導電剤としてAB、及び結着剤としてPVdFを、NCM111:AB:PVdF=90:5:5の質量比(固形分換算)で含有し、NMPを分散媒とする正極合材ペーストを作製した。上記の正極合材ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔に塗布したのち、120℃で16h減圧乾燥した。乾燥後、プレス機にてプレスして比較例3−3に係る正極を得た。
<実施例3−1に係る正極の作製>
正極合材ペーストの調製において、正極活物質100質量%に対してプレドープ材1を5質量%添加したことを除いては比較例3−3と同様にして、実施例3−1に係る非水電解質二次電池を得た。
正極合材ペーストの調製において、正極活物質100質量%に対してプレドープ材1を5質量%添加したことを除いては比較例3−3と同様にして、実施例3−1に係る非水電解質二次電池を得た。
<比較例3−3及び実施例3−1に係る非水電解質二次電池の作製>
非水電解質には、ECとEMCとDMCとを30:35:35の体積比で混合した非水溶媒に、1mol/Lの濃度でLiPF6を溶解させたものを使用した。セパレータとして、ポリアクリレートで表面改質したポリプロピレン製の微孔膜を用いた。外装体には、ポリエチレンテレフタレート(15μm)/アルミニウム箔(50μm)/金属接着性ポリプロピレンフィルム(50μm)からなる金属樹脂複合フィルムを用いた。比較例3−3に係る正極あるいは実施例3−1に係る正極、及び金属リチウム負極を、前記セパレータを介して対向させ、正極端子及び負極端子の開放端部が外部露出するように前記外装体に収納し、前記金属樹脂複合フィルムの内面同士が向かい合った融着代を注液孔となる部分を除いて気密封止し、前記非水電解質を注液後、注液孔を封止して、非水電解質二次電池を得た。
非水電解質には、ECとEMCとDMCとを30:35:35の体積比で混合した非水溶媒に、1mol/Lの濃度でLiPF6を溶解させたものを使用した。セパレータとして、ポリアクリレートで表面改質したポリプロピレン製の微孔膜を用いた。外装体には、ポリエチレンテレフタレート(15μm)/アルミニウム箔(50μm)/金属接着性ポリプロピレンフィルム(50μm)からなる金属樹脂複合フィルムを用いた。比較例3−3に係る正極あるいは実施例3−1に係る正極、及び金属リチウム負極を、前記セパレータを介して対向させ、正極端子及び負極端子の開放端部が外部露出するように前記外装体に収納し、前記金属樹脂複合フィルムの内面同士が向かい合った融着代を注液孔となる部分を除いて気密封止し、前記非水電解質を注液後、注液孔を封止して、非水電解質二次電池を得た。
<充放電試験>
上記手順で作製した比較例3−3及び実施例3−1に係る非水電解質二次電池を25℃の環境下、2回の充放電試験を行った。充電は、上限電圧4.5Vの定電流定電圧(CCCV)充電とし、充電終止条件は、4.5Vで10h経過した時点とした。放電は、下限電圧2.75Vの定電流放電とした。充電及び放電の電流は、作用極が含む正極活物質の質量に対して10mA/gとした。
上記手順で作製した比較例3−3及び実施例3−1に係る非水電解質二次電池を25℃の環境下、2回の充放電試験を行った。充電は、上限電圧4.5Vの定電流定電圧(CCCV)充電とし、充電終止条件は、4.5Vで10h経過した時点とした。放電は、下限電圧2.75Vの定電流放電とした。充電及び放電の電流は、作用極が含む正極活物質の質量に対して10mA/gとした。
図4に得られた充放電曲線を示す。ここで、横軸の容量(mAh/g)は、得られた容量(mAh)を、それぞれの正極が含有する正極活物質の質量で除算したものである。
実施例3−1と比較例3−3とを比較すると、実施例3−1の正極では、プレドープ材1を混合することで、初回充電電気量(1回目充電電気量)が約50mAh/g大きくなった。一方で、1回目の放電以降では、実施例3−1と比較例3−3とで充放電曲線及び容量に大きな差異は見られなかった。
以上の結果から、プレドープ材1のような構成のプレドープ材をNCM111のような正極活物質と組み合わせた正極としても、プレドープ材1のような構成のプレドープ材は初回の充放電過程で大きな充電電気量及び大きな不可逆容量を示すことがわかった。
[実験5;プレドープ材1を含む正極を備えた非水電解質二次電池の電気化学特性評価]
<負極の作製>
負極としてハードカーボン(HC)、及び結着剤としてPVdFを、HC:PVdF=90:10の質量比(固形分換算)で含有し、NMPを分散媒とする負極合材ペーストを作製した。上記負極合材ペーストを厚さ20μmの銅箔の片面に塗布したのち、120℃で16h減圧乾燥した。乾燥後、プレス機にてプレスして負極を得た。
負極としてハードカーボン(HC)、及び結着剤としてPVdFを、HC:PVdF=90:10の質量比(固形分換算)で含有し、NMPを分散媒とする負極合材ペーストを作製した。上記負極合材ペーストを厚さ20μmの銅箔の片面に塗布したのち、120℃で16h減圧乾燥した。乾燥後、プレス機にてプレスして負極を得た。
<比較例4−3に係る正極の作製>
湿度10〜20%の大気環境下で、NCM111、AB、及びPVdFを、NCM111:AB:PVdF=90:5:5の質量比(固形分換算)で含有し、NMPを分散媒とする正極合材ペーストを作製した。上記正極合材ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布したのち、120℃で16h減圧乾燥した。乾燥後、プレス機にてプレスして比較例4−3に係る正極を得た。
湿度10〜20%の大気環境下で、NCM111、AB、及びPVdFを、NCM111:AB:PVdF=90:5:5の質量比(固形分換算)で含有し、NMPを分散媒とする正極合材ペーストを作製した。上記正極合材ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布したのち、120℃で16h減圧乾燥した。乾燥後、プレス機にてプレスして比較例4−3に係る正極を得た。
<実施例4−1に係る正極の作製>
湿度10〜20%の大気環境下で、プレドープ材1、NCM111、AB、PVdFを、プレドープ材1:NCM111:AB:PVdF=2.7:87.3:5:5の質量比(固形分換算)で含有し、NMPを分散媒とする正極合材ペーストを作製した。上記正極合材ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布したのち、120℃で16h減圧乾燥した。乾燥後、プレス機にてプレスして実施例4−1に係る正極を得た。ここで、プレドープ材1の混合の効果を加味し、比較例4−3に係る正極と比べて、単位面積当たりの合材塗布質量が、小さくなるように塗布した。また、多孔度が同一となるようプレス後の正極合材厚さを調整した結果、アルミニウムを除く、正極合材厚さは9%減となった。
湿度10〜20%の大気環境下で、プレドープ材1、NCM111、AB、PVdFを、プレドープ材1:NCM111:AB:PVdF=2.7:87.3:5:5の質量比(固形分換算)で含有し、NMPを分散媒とする正極合材ペーストを作製した。上記正極合材ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布したのち、120℃で16h減圧乾燥した。乾燥後、プレス機にてプレスして実施例4−1に係る正極を得た。ここで、プレドープ材1の混合の効果を加味し、比較例4−3に係る正極と比べて、単位面積当たりの合材塗布質量が、小さくなるように塗布した。また、多孔度が同一となるようプレス後の正極合材厚さを調整した結果、アルミニウムを除く、正極合材厚さは9%減となった。
<比較例4−3及び実施例4−1に係る非水電解質二次電池の作製>
非水電解質には、ECとEMCとDMCとを30:35:35の体積比で混合した非水溶媒に、1mol/Lの濃度でLiPF6を溶解させたものを使用した。セパレータとして、ポリアクリレートで表面改質したポリプロピレン製の微孔膜を用いた。外装体には、ポリエチレンテレフタレート(15μm)/アルミニウム箔(50μm)/金属接着性ポリプロピレンフィルム(50μm)からなる金属樹脂複合フィルムを用いた。比較例4−3に係る正極あるいは実施例4−1に係る正極、及び前記HC負極を、前記セパレータを介して対向させ、正極端子及び負極端子の開放端部が外部露出するように前記外装体に収納し、前記金属樹脂複合フィルムの内面同士が向かい合った融着代を注液孔となる部分を除いて気密封止し、前記非水電解質を注液後、注液孔を封止して、非水電解質二次電池を得た。
非水電解質には、ECとEMCとDMCとを30:35:35の体積比で混合した非水溶媒に、1mol/Lの濃度でLiPF6を溶解させたものを使用した。セパレータとして、ポリアクリレートで表面改質したポリプロピレン製の微孔膜を用いた。外装体には、ポリエチレンテレフタレート(15μm)/アルミニウム箔(50μm)/金属接着性ポリプロピレンフィルム(50μm)からなる金属樹脂複合フィルムを用いた。比較例4−3に係る正極あるいは実施例4−1に係る正極、及び前記HC負極を、前記セパレータを介して対向させ、正極端子及び負極端子の開放端部が外部露出するように前記外装体に収納し、前記金属樹脂複合フィルムの内面同士が向かい合った融着代を注液孔となる部分を除いて気密封止し、前記非水電解質を注液後、注液孔を封止して、非水電解質二次電池を得た。
<充放電試験>
上記手順で作製した比較例4−3及び実施例4−1に係る非水電解質二次電池を25℃の環境下、下記の手順で充放電試験を行った。
充電は、定電流(CCCV)充電とし、充電終止電圧は4.4Vとした。放電は、定電流放電とし、放電終止電圧は0.5Vとした。充電及び放電の電流は、正極が含む正極活物質の質量に対して10mA/gとした。
上記手順で作製した比較例4−3及び実施例4−1に係る非水電解質二次電池を25℃の環境下、下記の手順で充放電試験を行った。
充電は、定電流(CCCV)充電とし、充電終止電圧は4.4Vとした。放電は、定電流放電とし、放電終止電圧は0.5Vとした。充電及び放電の電流は、正極が含む正極活物質の質量に対して10mA/gとした。
得られた放電容量(mAh)を表3に示す。ここで、得られた放電容量(mAh)を、正極の反応面積(cm2)と正極合剤厚さ(μm)から得られた正極合材の体積(cm3)で除算した、正極合材の「体積当たりの容量密度(mAh/cm3)」、及び、得られた放電容量(mAh)を、正極が含む活物質質量で除算した、正極活物質の「質量当たりの容量密度(mAh/g)」と、あわせて示した。
前記のとおり、実施例4−1と比較例4−3では、負極は同一のものを用いているが、正極合材の体積及び質量は、実施例4−1に係る正極のほうが小さい。しかしながら、非水電解質二次電池の放電容量は、実施例4−1と比較例4−3とで同じである。そのため、体積当たり及び質量当たりの容量密度は実施例4−1に係る非水電解質二次電池の方が大きくなる。すなわち、正極がプレドープ材1のような構成のプレドープ材を含むことで、非水電解質二次電池の質量当たり及び体積当たりの容量密度を向上させることができる。
上記のように非水電解質二次電池の容量密度が向上した要因を検討するため、正極の結晶構造の観点から調査を行った。上記充放電後の実施例4−1及び比較例4−3に係る非水電解質二次電池をアルゴン雰囲気のグローブボックス内で解体した。解体して取り出した正極は、ジメチルカーボネートを用いて電極に付着した非水電解質を洗浄した後、一昼夜室温で乾燥し、アルミニウム箔から合材を剥離して採取した。
上記手順で採取した充放電試験後の正極から採取した合材、及び充放電試験前のNCM111粉末を、上記X線回折測定の条件でX線回折測定を行った。付属のソフトウェアを用いて、空間群をR−3mとしてa軸及びc軸の格子定数(Å)を算出した。
得られた格子定数を表4に示す。なお、「aの差分」、「cの差分」は「(充放電後の比較例4−3あるいは実施例4−1の格子定数)−(充放電前の格子定数)」とした。
NCM111のような金属酸化物は一般的に、充放電(リチウムイオンの脱離挿入)にともない格子定数が変化することが知られている。充放電前を基準とすると、リチウムイオンの脱離に伴い、a軸は縮み、c軸は伸びる(ただし、正極電位が4.2V(vs.Li/Li+)以上のような高い電位ではc軸は逆に縮む)といわれている。すなわち、「aの差分」及び「cの差分」の値が小さいことは、初回充電により正極から脱離したリチウムイオンが、放電により正極に再挿入されていることを意味する。
比較例4−3と実施例4−1とを比較すると、実施例4−1に係る非水電解質二次電池から採取した正極合材のほうが、「aの差分」及び「cの差分」はいずれも小さくなっている。すなわち、充電に伴い正極から脱離したリチウムイオンが、放電に伴い、より多く正極に挿入されていることが示唆された。
放電容量及び、格子定数に関して得られた結果を、図5を用いて詳細に説明する。図5は、負極と正極の充放電曲線を一つのグラフ上に模式的に表したものである。
HCのような不可逆容量の大きい負極と、NCM111のような不可逆容量が小さい正極とを組み合わせた比較例に係る非水電解質二次電池では、放電過程において、正極電位と負極電位の差(電圧)が所定の値に到達した点(図中点A)では、正極に若干の放電可能な容量が残存している。一方で、プレドープ材を混合し、正負極の不可逆容量がほぼ同じになるよう設計された実施例に係る非水電解質二次電池では、放電過程において、正極電位と負極電位の差(電圧)が所定の値に到達した点(図中点B)では、正極に放電可能な容量はほとんど残存していない。これらの結果は、充放電前後の格子定数の差分に関する結果とよくあっている。
すなわち、プレドープ材を含む正極とすることで、正極活物質をより効率的に充放電反応に寄与させることができることがわかる。
HCのような不可逆容量の大きい負極と、NCM111のような不可逆容量が小さい正極とを組み合わせた比較例に係る非水電解質二次電池では、放電過程において、正極電位と負極電位の差(電圧)が所定の値に到達した点(図中点A)では、正極に若干の放電可能な容量が残存している。一方で、プレドープ材を混合し、正負極の不可逆容量がほぼ同じになるよう設計された実施例に係る非水電解質二次電池では、放電過程において、正極電位と負極電位の差(電圧)が所定の値に到達した点(図中点B)では、正極に放電可能な容量はほとんど残存していない。これらの結果は、充放電前後の格子定数の差分に関する結果とよくあっている。
すなわち、プレドープ材を含む正極とすることで、正極活物質をより効率的に充放電反応に寄与させることができることがわかる。
上記の通り、酸素含有雰囲気下で熱処理することで、逆蛍石型構造を有するLi6CoO4の表面に酸化数の高いLiCoO2が形成された金属酸化物が生成する。上記の構成の金属酸化物をプレドープ材として含むペーストは、ゲル化しにくい。また、上記金属酸化物と、正極活物質とを含む正極を、不可逆容量の大きい負極と組み合わせると、正極が含む正極活物質の量を減らすことができ、結果として非水電解質二次電池の容量密度を向上させることができる。
逆蛍石型構造を有するLi6MnO4、Li5FeO4、及びLi6NiO4とそれらの固溶体はいずれも同様の効果を奏する。
逆蛍石型構造を有するLi6MnO4、Li5FeO4、及びLi6NiO4とそれらの固溶体はいずれも同様の効果を奏する。
本発明は、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車などの電源として使用される非水電解質二次電池を製造する方法等に適用できる。
1 非水電解質二次電池
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
41 正極リード
5 負極端子
51 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
41 正極リード
5 負極端子
51 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
Claims (5)
- LiaMe1bX1(1−b)O4(5≦a≦6、0.8≦b≦1、Me1はCo、Mn、Fe及びNiからなる群から選択される1種又は2種以上の元素、X1はCo、Mn、Fe及びNi以外の金属元素)で表され、逆蛍石型構造を有する金属酸化物Aと、
LipMe2qX2rO2(0≦p≦1、0.5≦q≦1、0≦r<0.1、Me2はCo、Mn、Fe及びNiからなる群から選択される1種又は2種以上の元素、X2はCo、Mn、Fe及びNi以外の金属元素)で表される金属酸化物Bと、
を備え、上記金属酸化物Bが上記金属酸化物Aの少なくとも一部を覆っている、プレドープ材。 - 上記Me2の平均酸化数は、上記Me1の平均酸化数よりも大きい、請求項1に記載のプレドープ材。
- 正極活物質と、請求項1又は請求項2に記載のプレドープ材と、を含む正極。
- 請求項3に記載の正極と、負極と、非水電解質と、を備える非水電解質二次電池を組み立てることを含む、非水電解質二次電池の製造方法。
- LiaMe1bX1(1−b)O4(5≦a≦6、0.8≦b≦1、Me1はCo、Mn、Fe及びNiからなる群から選択される1種又は2種以上の元素、X1はCo、Mn、Fe及びNi以外の遷移金属元素)で表され、逆蛍石型構造を有する金属酸化物Aを準備し、酸素含有雰囲気下で熱処理することを含む、金属酸化物の製造方法。
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-
2019
- 2019-01-29 JP JP2019013670A patent/JP2020123460A/ja active Pending
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