JP5397798B2 - 層状珪酸塩を前駆体とする新規高シリカナノ多孔体、その設計方法と製造方法 - Google Patents

層状珪酸塩を前駆体とする新規高シリカナノ多孔体、その設計方法と製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、分離・吸着剤、形状選択性固体触媒、イオン交換剤、クロマトグラフィー充填剤、化学反応場等に用いることのできる高シリカゼオライト又は高シリカナノ多孔体の新規合成を睨み、既存の層状珪酸塩を用いてそのシリカ骨格を積木細工的に積み上げ、ナノサイズの細孔構造を構築させるための、新しい設計指針、設計方法及び製造方法を提供し、また、それらにより製造された新規な高シリカゼオライト又は高シリカナノ多孔体を提供するものである。
ゼオライトは、原子レベルで規則的に配列したマイクロ孔(3−10Å程度)を有し、骨格構造がSi、Oからなる高シリカ型は、形状選択的な、あるいは骨格構造に起因した化学的・物理的吸着作用を持つことより、モレキュラーシーブ(分子ふるい)、分離吸着剤、イオン交換体、石油関連触媒としての機能を有する。高シリカゼオライトは、一般的に、高い耐熱性を有し、機械的強度にも優れ、更には耐薬品性にも優れていることから、石油化学を中心とする幅広い産業分野で用いられている。
各ゼオライトは、規則的な細孔構造を持った結晶構造により区別され、一義的なX線回折パターンを与える。そして、結晶構造は、ゼオライトの細孔の形や大きさを規定する。各モレキュラーシーブの吸着特性や触媒性能は、部分的にはその細孔の形や大きさで決まる。従って、特定の応用を考えた場合、ある特定のゼオライトの有用性は、少なくとも部分的にはその結晶構造に依存する。
高シリカ組成のゼオライトは、先に述べた耐熱性が高い、疎水性が高い、という2つの意味で低シリカ組成よりも優れており、充分な機械的強度を備えている。これらの性質は、ゼオライトを有機反応の触媒として使用する場合に重要である。ゼオライト合成研究の初期の段階では、シリカ/アルミナ比の低い生成物しか得られていなかったが、シリカ源からなる出発ゲル中に有機結晶化調整剤を加えることで、ずっとシリカ/アルミナ比の高い組成を持つゼオライト合成が可能になった(非特許文献1)。例えば、MFI型ゼオライトであるシリカライトは、高い疎水性を有し、分離吸着剤として用いられている。
ゼオライトは、一般に、水熱合成法、すなわち大量の水とシリカ源、アルミニウム源、アルカリ金属及びアミン類などの有機構造規程剤:OSDA(生成するゼオライトの細孔を形成する鋳型剤)を所望の化学組成になるように調合し、オートクレーブ等の圧力容器にそれらを封じ込め、加熱することにより、自己圧下で製造されている。近年、触媒・材料分野では、より大孔径の高シリカゼオライトの合成が課題となっているが、その製造コストやOSDAの設計・合成が容易ではないため、実用化が困難となっており、実際に使われている高シリカゼオライトの種類は非常に少ない。
このような背景のもとで、近年、層状珪酸塩を前駆体として用いる高シリカゼオライトを合成について、相次いで報告されている(特許文献1〜4、非特許文献2〜5)。これらによれば、層状珪酸塩のシリカ骨格について、骨格の末端に分布するシラノール基を加熱により脱水重縮合反応させて架橋させながら積木細工的にくみ上げていくことで、1次元ないしは2次元のナノサイズの細孔構造を有したゼオライトが構築できる。
このことは、層状珪酸塩の規則的な骨格構造の制御を行い、分子レベルの構造設計へと発展させることで、ゼオライト合成における新しい概念を提示するものである。しかしながら、先に述べた層状珪酸塩でも、多くの場合で合成時に何らかのOSDAを必要とし、コストの高いものが多い。従って、新規なゼオライトが得られるにしても産業利用へ展開させるには問題が残されている。
更に最近になって、OSDAを含まない既知の層状珪酸塩ilerite(アイレライト)を部品に用いて新しいRWR型ゼオライトが合成できることが報告された(非特許文献6)。古くから知られる層状珪酸塩は、アルカリ金属イオンを層間に含んだ簡単な組成のものが多く、天然にも数多く存在し、しかも合成が非常に容易であることが多い。従って、他の既知の層状珪酸塩からでもゼオライトを作れる可能性がある。
しかし、Marlerらの報告でも、せっかくの低コストな層状珪酸塩であるileriteの層間に、有機アミンからなるOSDAをイオン交換により挿入(インターカレーション)した中間体を調製しなければならず、ileriteを用いる意義は低い。また、ileriteからRWR型ゼオライトに至るまでの、途中過程について詳細、すなわち有機アミンをインターカレートした中間体がどの様なものなのか、構造や組成の詳細が明らかになっておらず、構造変換技術として一般化されたとまで言えない。
以上を踏まえ、OSDAを含まないシリカーアルカリ金属イオンの単純組成から構成される層状珪酸塩を、どの様に調製するかを検討し、合成過程で得られる中間体について構造や物性を解明し、一般化できる合成ルートを確立することが、より低コストな高シリカゼオライト又は高シリカナノ多孔体を設計・製造するためには必要である。
特開2005−041763号公報 特開2005−194113号公報 特開2004−339044号公報 特開2004−175661号公報 R. M. Barrer 1982, Hydrothermal Chemistry of Zeolites, New York: Academic Press, Inc. pp. 157-170 T. Ikeda Y. Akiyama, Y. Oumi, A. Kawai, F. Mizukami, Angew. Chem. Int. Ed. 43(37) (2004) 4892 S. Zanardi, A. Alberti, G. Cruciani, A. Corma, V. Fornes, M. Brunelli, Angew. Chem. Int. Ed. 43(37) (2004) 4933 Y. Wang, B. Marler, H. Gies, U. Muller, Chem. Mater. 17 (2005) 43 D.L. Dorset, G.J. Kennedy, J. Phys. Chem. B108 (2004) 15216 B. Marler, H. Gies, Microporous Mesoporous Mater., 83 (2005) 201
現在主流のOSDAに依存したゼオライト合成では、骨格構造そのものを設計することは困難で、OSDAの構造や大きさによって間接的に細孔径などを制御しているにすぎない。従って、OSDAの設計が非常に重要な役割を持つとされているが、ゼオライトを分子レベルで設計する手法とまでは言いがたい。また、既に報告されている層状珪酸塩を前駆体に用いて合成する新しいタイプのゼオライトでは、層状珪酸塩自体に何らかのOSDAを含んでいる、もしくはインターカレーションによりOSDAに相当する有機アミン分子を挿入したものを前駆体に用いなくてはならない。このため、産業利用を目指したゼオライト開発としては、依然として、OSDAのコストや合成プロセスの複雑さといった問題が解決できていない。仮にOSDAを含まない層状珪酸塩を用いて、尚かつ特殊な有機アミンを用いることなくゼオライトに変換する設計スキームが確立できれば、より低コストな高シリカゼオライトの開発に繋がる。特に、天然に存在する層状珪酸塩を原料に利用できれば、大量合成へも展開することができると期待される。
ここに記載する有機構造規程剤:OSDAとは、一般には、有機アミン全体を指す。近年の開発された大口径ゼオライトの合成に用いられるOSDAは、それ自身の設計・合成がとても複雑でコストも非常に高い有機アミンを意味する。しかしながら、既に実用化で用いられているOSDAも存在する。4級アミン、例えばテトラメチルアンモニウム塩は、それ自身価格も安価で実際のゼオライト製造にも用いられており、産業利用が可能な数少ないOSDAである。
一方、先にも述べたが、層状珪酸塩を用いてゼオライトに変換する試みでは、OSDA又はそれに相当する有機アミン分子の存在が必要不可欠であった。現状では、この問題に対して、(1)低コストな代替ゲスト物質の検討、(2)出発物質である層状珪酸塩から最終生成物であるゼオライトに至るまでのプロセス、(3)その中間体の構造や性質、などが明確にはなっていない。本発明者らは、これらの問題点を鑑み、様々な検討を鋭意行った結果、まず、層状珪酸塩ileriteからRWR型ゼオライトに至るまでのプロセスを解明し、その設計指針となるものが何かを突き止めた。更には、その指針を具体的な設計法に発展させ、それによって、既存の層状珪酸塩から新しい高シリカナノ多孔体を構築させようという発想に至ったもので、本発明は、層状珪酸塩ilerite、magadiite、kenyaiteをナノレベルの部品として用い、新しい設計指針に従った合成プロセスの適用によるRWR型高シリカゼオライト、2つの新規高シリカナノ多孔体、更には、それらの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、OSDAの設計に依存することなく、個々の結晶性層状珪酸塩の持つ骨格構造をそのまま活用し、低コストな有機物や酸を用いて構造を制御し、ゼオライトもしくはナノ多孔体に構造変換するための設計法を編み出した。具体的には、本発明では、構造安定化を目的とした層状珪酸塩の層間へのインターカレーションによる低有機分子の挿入、層間内の脱水とシリカ骨格の規則的な配列をもたらす酸処理、脱水重縮合反応によるシリカシートの架橋の3つの要素を順に行うことで、ゼオライト又はナノ多孔体へ構造変換させるその設計手法、及びその設計手法を適用して得られた新規ナノ多孔体とその製造法を提供するものである。
層状珪酸塩を前駆体に用いたゼオライト合成は、層状珪酸塩の骨格構造を積木細工的に制御・操作、新たに細孔構造を構築させる手法で、従来より一歩進んで分子レベルの構造設計が可能な方法として、近年関心が持たれている。これまでの例では、層状珪酸塩自体に何らかの有機構造規程剤OSDAを含んでいるか、又はインターカレーションによりOSDAに相当する特殊な有機アミン分子を挿入した中間体が必須であるとされている。これは、すなわちOSDA自身の設計やコストに依存していることを意味している。産業利用を目指したゼオライトの開発としては、コストの高いOSDAやそれ自身の設計に依存することのない、新しい手法が求められている。本発明は、層状珪酸塩からのゼオライト又はナノ多孔体への構造変換に最適化した明快な設計手法を提示することを目的とするものである。
すなわち、本発明は、以下の技術的手段から構成される。
本発明は、(1)層状珪酸塩を用い、その骨格構造を保持したまま、隣り合うシリカシートを規則的に並べる、寄せる、繋げるの三つの要素を組み合わせ操作し、層間に新たな微細孔を形成させることで、合成される高シリカナノ多孔体の構造設計を行う、高シリカナノ多孔体の構造設計方法に基いて、1)層状珪酸塩の層間への構造安定化を目的とした低有機分子の挿入(インターカレーション)、2)水素結合を伴ったシリカシートの規則的配列化と層間距離の収縮、3)脱水重縮合反応によるシリカシートの架橋、の3つのプロセスによって、層間部分にナノメートルサイズの細孔を形成させることで、合成される高シリカナノ多孔体の構造設計を行い、層状珪酸塩をその基本構造を壊すことなく積木細工的に積み上げることを特徴とする高シリカゼオライトを含む高シリカナノ多孔体の製造方法、また、()ケイ素5員環を骨格構造内に含む任意の層状珪酸塩を用い、1)イオン交換法によりその層間内へ有機分子を構造安定化剤として挿入(インターカレーション)し、2)酸処理によって層間内を脱水及び層間距離を縮小させると同時に、隣接するシリカシートをその表面に分布するシラノール基に水素結合を伴わせることで規則的に配列させ、3)真空下又は大気圧下での加熱焼成により末端シラノール基を脱水重縮合反応させ、シリカシート同士の架橋により層間部分に新たな細孔を形成させることで、合成される高シリカナノ多孔体の構造設計を行う、上記(1)に記載の製造方法、を提供する。
更に、本発明は、()層状珪酸塩ilerite(アイレライト)の層間へTMAOH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)をインターカレーションして、表14のX線回折ピークを示す第1中間体(TMA−ilerite)とし、その第1中間体を酸性水溶液(塩酸、硝酸、酢酸)で酸処理して、表15のX線回折ピークを示すRWR型ゼオライトの前駆体となる第2中間体(H−TMA−ilerite)とし、その第2中間体を加熱焼成し脱水重縮合反応させてRWR型ゼオライトとする、上記()に記載の製造方法、を提供する。
更に、本発明は、()層状珪酸塩magadiite(マガディアイト)を層間へTMAOHをインターカレーションして、表16のX線回折ピークを示す第1中間体(TMA−magadiite)とし、その第1中間体を酸性水溶液(塩酸、硝酸、酢酸)で酸処理して、表17のX線回折ピークを示す第2中間体(H−TMA−magadiite)とし、その第2中間体を加熱焼成し脱水重縮合反応させて、表18のX線回折ピークを示す新規高シリカナノ多孔体(CDS−M)とする、上記()に記載の製造方法、を提供する。
更に、本発明は、()層状珪酸塩kenyaite(ケニヤイト)の層間へTMAOHをインターカレーションして、表19のX線回折ピークを示す第1中間体(TMA−kenyaite)とし、その第1中間体を酸性水溶液(塩酸、硝酸、酢酸)で酸処理して、表20のX線回折ピークを示す第2中間体(H−TMA−kenyaite)とし、その第2中間体を加熱焼成し脱水重縮合反応させて、表21のX線回折ピークを示す新規高シリカナノ多孔体(CDS−K)とする、上記()に記載の製造方法、を提供する。
更に、本発明は、(6)層状珪酸塩ilerite、構造安定化剤(TMAOH,ソルビトール,1,4−dioxan)、酸性水溶液(塩酸、硝酸、酢酸)を同時に混ぜ合わせ、酸性条件下でインターカレーションすることで、表22のX線回折ピークを示す中間体とし、それを焼成してRWR型ゼオライトとする、上記(1)に記載の製造方法、を提供する。
更に、本発明は、(7)層状珪酸塩magadiite、構造安定化剤(TMAOH,ソルビトール,1,4−dioxan)、酸性水溶液(塩酸、硝酸、酢酸)を同時に混ぜ合わせ、酸性条件下でのインターカレーションすることで、表23のX線回折ピークを示す中間体とし、それを焼成して表24のX線回折ピークを示すナノ多孔体(CDS−M)とする、上記(1)に記載の製造方法、を提供する。
更に、本発明は、(8)層状珪酸塩kenyaite、構造安定化剤(TMAOH,トリエチレンテトラミン又は1,4−dioxan)、酸性水溶液(塩酸、硝酸、酢酸)を同時に混ぜ合わせ、酸性条件下でのインターカレーションすることで、表25のXRDパターンを示す中間体とし、それを焼成して表26のXRDパターンを示すナノ多孔体(CDS−K)とする、上記(1)に記載の製造方法、を提供する。
更に、本発明は、(9)層状珪酸塩ileriteを酸性の構造安定化剤として酢酸水溶液のみと混ぜ合わせ撹拌することで、中間体とし、それを焼成してRWR型ゼオライトとする、上記(1)に記載の製造方法、また、(10)層状珪酸塩magadiiteを酸性の構造安定化剤として酢酸水溶液のみと混ぜ合わせ撹拌することで、中間体とし、それを焼成して上記(8)の表2のXRDパターンを示すナノ多孔体(CDS−)とする、上記(1)の製造方法、を提供する。
更に、本発明は、(11)上記(4)に記載の製造方法により製造してなる高シリカナノ多孔体であって、層状珪酸塩magadiiteの層間へTMAOHがインターカレーションしてなる、(4)の表3のX線回折ピークを示す第1中間体(TMA−ilerite)を酸処理してなる、表4のX線回折ピークを示す第2中間体(H−TMA−magadiite)を加熱焼成し脱水重縮合反応させてなる、表5のX線回折ピークを示す高シリカナノ多孔体(CDS−M)である、高シリカナノ多孔体、(12)上記(5)に記載の製造方法により製造してなる高シリカナノ多孔体であって、層状珪酸塩kenyaiteの層間へTMAOHがインターカレーションしてなる、(5)の表6のX線回折ピークを示す第1中間体(TMA−kenyaite)を酸処理してなる、表7のX線回折ピークを示す第2中間体(H−TMA−kenyaite)を加熱焼成し脱水重縮合反応させてなる、表8のX線回折ピークを示す高シリカナノ多孔体(CDS−K)である、高シリカナノ多孔体、を提供する。
更に、本発明は、(13)ナノ多孔体が、窒素ガス吸着測定においてナノ細孔の存在を示唆する吸着等温曲線を示し、窒素骨格を形成するSi原子とO原子の局所構造がSi(OSi) で表されるQ 構造のみで構成される、上記(11)に記載の高シリカナノ多孔体(CDS−M)、また、(14)ナノ多孔体が、窒素ガス吸着測定においてナノ細孔の存在を示唆する吸着等温曲線を示し、骨格を形成するSi原子とO原子の局所構造がSi(OSi) で表されるQ 構造のみで構成される、上記(12)に記載の高シリカナノ多孔体(CDS−K)、を提供する。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
まず、第1に、結晶構造が既知である層状珪酸塩ileriteについて、構造安定化剤にTMAOHを用いたときの、ゼオライトへの変換スキームを説明する。ileriteは、Na[Si3264(OH)・32HO]の組成を持つ層状珪酸塩で、図1(a)に示す構造を有している。その合成法は、既に確立しており、水熱合成で容易に得られる(文献:K. Endo, Y. Sugahara, K. Kuroda, Bull. Chem. Soc. Jpn. 1994, 67, 3352-3355)。このileriteの層間には、Naイオンと水分子が規則的に分布している。
更に、層状珪酸塩ileriteは、特性X線Cu Kαを用いた粉末X線回折パターンにおいて、表27で特徴づけられる回折ピークを示す(図2)。
本発明方法で用いる層状珪酸塩ileriteは、結晶構造はSi−Oの4面体配位の繰り返し単位をシリケート基本構造に持ち、ケイ素5員環による微細孔がシリケート内に含まれた構造を有している。上記の化学組成及びXRDパターンを示すものであれば製法はいとわない。そして、シリカ源と水酸化ナトリウム水溶液のみから層状ケイ酸塩を合成することができる。シリカ源としては、好適には、例えばSiO(具体的には和光純薬工業株式会社製ワコーゲルQ−63)等が使用されるが、これらに制限されるものではない。
これらのシリカ源からの結晶性層状化合物の合成プロセスは、適量の水が存在する状態で加熱処理をする場合、オートクレーブなどの反応容器を用いて加熱する。加熱温度は、好ましくは100−120℃、反応時間は、好ましくは7−14日である。得られた生成物を吸引濾過を用いて水で洗浄した後、60℃の恒温漕で乾燥させ、ileriteの結晶を得る。本発明では、Naイオンを含むことから区別のためにNa−ileriteとする。
層状珪酸塩ileriteは、イオン交換が容易な物質として知られており、様々なゲスト物質をイオン交換により層間に挿入(インターカレーション)できる(文献:Dai Mochizuki, Atsushi Shimojima, Takeshi Imagawa, and Kazuyuki Kuroda, J. Am. Chem. Soc. 127, 7183-7191 (2005))。また、酸処理によって層間に含まれている水分子やアルカリ金属イオンを除去することができ、図1(b)に示される構造を持った既知生成物H−ileriteが得られる(文献:M. Borowski, B. Marler and H. Gies, Z. Kristallogra. 217, 233-241 (2002))。酸処理は、Na−ileriteを塩酸又は硝酸0.1−1.0Mの水溶液に入れ室温にて3−24時間攪拌することで得られる。H−ileriteは、特性X線Cu Kαを用いた場合の粉末X線回折パターンにおいて、表28で特徴づけられる回折ピークを示す(図2)。このH−ileriteも、イオン交換により容易に層間にゲスト物質を取り込むことができる。
TMAOHを構造安定化剤とする場合、Na−ileriteをTMAOH水溶液に入れ室温にて攪拌し、インターカレーションを行った。このときの水溶液の濃度は、好ましくは0.25−2.0Mで、攪拌時間は好ましくは24−96時間である。これを遠心分離により結晶のみを沈降させ、上澄みを捨てた後、乾燥させる、又は吸引濾過によるフィルタレーションで結晶を採取し、乾燥させることで、第1中間体TMA−ileriteを得る。TMAOHをインターカレーションした生成物TMA−ileriteは、Na−ileriteの代わりに、H−ileriteを用いても同様に得られる。
ここで、なぜ低有機分子をインターカレーションすることが構造安定化に繋がるのかであるが、層状珪酸塩を脱水重縮合させる場合、シリカシート末端のシラノール基の位置が隣接するシリカシート間でよく整合していなくては、脱水重縮合反応させることはできない。例えば、インターカレーション無しに酸処理を行うと、脱水作用により層間内の水分子が抜けていき、シリカシートの積層に不整合が起きやすくなる。インターカレーション無しに加熱した場合も同様で、層間に物理吸着している水分子が抜け出る際に、シリカシートの積層に不整合を引き起こす原因となる。結果として、シラノール基の分布が不規則になりやすく、不完全な脱水重縮合を引き起こす原因となる。以上の理由から、構造安定化のためにインターカレーションは必要不可欠な要素である。
この第1中間体TMA−ileriteは、粉末X線回折パターンが表29で特徴づけられる回折ピーク(図2)を示す。また、このTMA−ileriteの結晶構造の概略は非経験的構造解析により、図1(c)で示されるように、層間にTMAイオンを含んだ構造をしている。
こうして得られたNa−ilerite、H−ilerite、TMA−ileriteは、空気雰囲気下(流量500ml/min)、1℃/minの昇温速度で600℃まで上げ、10時間保持し、その後徐冷の順に焼成してもRWR型ゼオライトは得られず、図3で示されるように、底面反射に相当するピークが観測されるだけで、アモルファス成分の多い回折パターンしか与えない。これは、シリカシート同士規則性が乱れたまま縮合したためで、層間に細孔が形成されていないことを意味する。
次の工程として、TMA−ileriteを酸処理する。このとき用いる酸は、好ましくはpH≦2.5となる塩酸、硝酸、酢酸等で、より好ましくは酢酸である。TMA−ileriteを塩酸、硝酸、酢酸水溶液又は酢酸の原液に入れ、室温にて攪拌することで酸処理がなされる。例えば、0.1M濃度の塩酸100mlにTMA−ileriteを0.5−1.0g入れ、室温で12−24時間ほど攪拌する。吸引濾過によるフィルタレーション又は遠心分離で所望する結晶のみを採取し乾燥させる。こうして得られたH−TMA−ileriteは、粉末X線回折パターンは表30で特徴づけられる回折ピーク(図2)を示す。また、このH−TMA−ileriteの結晶構造は、非経験的構造解析の結果から、図1(d)で示されるように、シリカシート同士が最隣接し、層間に細孔に似た規則性のある空隙を形成していることが分かった。
酸処理後のH−TMA−ilerite粉末のみを、パイレックス(登録商標)又は石英ガラス管に入れ、窒素トラップを備えた真空ラインを用いて真空中で加熱処理する、又はマッフル炉を用いて500ml/minの空気を流通させながら加熱処理を行って脱水重縮合させることで、RWR型ゼオライトが得られる。このとき、加熱温度は、好ましくは450−600℃、昇温速度は、好ましくは1.0℃/minである。
図4に、Na−ilerite、H−ilerite、TMA−ilerite及びH−TMA−ileriteのTG−DTA曲線を示す。第2中間体であるH−TMA−ileriteは、図4に示すように、熱処理過程で最大17.5%重量減少することがTG−DTAによる熱分析の結果から分かっている。従って、脱水重縮合による重量減少の他に、H−TMA−ileriteの層間に内包されていた水分子もしくは酢酸分子の脱離によって重量減少したと考えられる。DTA曲線には、250−290℃付近に吸熱反応が見られが、焼成してもRWR型ゼオライトに変化しなかったNa−ilerite、H−ilerite、TMA−ileriteでは、この吸熱ピークは見られなかった。
焼成した生成物の粉末XRD測定では、図2及び表31に示される回折ピークを示され、文献に示されているRWR型ゼオライト固有のものと変わりがないことが確認された。また、このRWR型ゼオライトの結晶構造は、図1(e)で示されるような、ケイ素8員環からなるストレートチャネルが幾何学的な特徴である。また、RWR型ゼオライトの結晶構造には、酢酸分子や水分子は観測されなかった。
得られたRWR型ゼオライトは、灰色−白色をしており、焼成の条件によって炭化物が結晶表面の残留物として付着していることが認められる。残留物の完全除去が必要な場合は、例えば、RWR型ゼオライトの結晶1.0gをアルミナ製のシャーレに入れ、マッフル炉を用いて、0.5−1.0L/minの空気気流下で室温より1.0℃/minで600℃まで昇温し、4時間保持の順でマッフル炉で焼成すればよく、焼成後は、白色の生成物が得られる。
走査型電子顕微鏡(SEM)の観察により、Na−ilerite、H−ilerite、TMA−ilerite、H−TMA−ilerite、RWR型ゼオライトの結晶形態は、図5に示されるように、多少表面の付着物の有無において差があるが、基本的には、板状の結晶形態をしていて、結晶子の大きさは一辺が5μm、厚みが0.5μm程度である。高濃度のTMAOH水溶液で長時間のインターカレーションを行うと、強アルカリにより結晶が融解し、結晶子サイズが縮小する場合がある。
基本骨格が層状構造を有するNa−ilerite、H−ilerite、TMA−ilerite及びH−TMA−ileriteからRWR型ゼオライト構造へ変わったことの証明は、29Si DDMAS NMRの測定から可能である(図6)。層状構造の状態にあるilerite及びその中間体では、その構造から、(SiO)−Si−OHの局所構造を持つQシグナルと(SiO)SiとなるQシグナルの2種類のNMRスペクトルが観測される。これに対し、脱水重縮合後のRWR型ゼオライトでは、縮合が不完全な場合を除いて、Qに帰属するピークだけが観測される。ここで、シリケート化合物一般において、QとQのケミカルシフトの領域は、次の文献に示され、Q:−103ppmから−91ppm、Q:−119ppmから−116ppmと記されている(文献:M. Magi, E. Lippmaa, A. Samoson, G. Engelhardt, and A. R. Grimmer, J. Phys. Chem., 88, 1518 (1984))。
得られたRWR型ゼオライトが有効な細孔を保持しているかどうかは、窒素ガス吸着で調べることができる。測定の結果、吸着量がNa−ileriteに比べ増加していることが分かる。また、一般的に、ゼオライトで見られるI型というよりマクロ孔を多く持つ場合に示すII型に近い等温曲線を示す。しかしながら、相対圧力の低圧領域においては、I型と似ていて、RWR型ゼオライトがナノ細孔の性質と主に粒子間空隙に由来するマクロ孔の両方の性質を有している(図7)。BET法から比表面積は72.3m/gと見積もられた。また、SF法(Saito−Foley法)により解析したところ、平均細孔径が約5.5Åと見積もられたことから、生成物がナノ細孔を持ったRWRゼオライトになっていると説明できる(図8)。このとき、出発物質であるNa−ileriteから最終生成物であるRWRゼオライトに至るまでの、底面反射の格子面間隔は、約4.3Å縮んでいることが確認された。
ここで、構造安定化剤と酸処理を同時に行い、工程の簡略化が可能かを検討した。そこで、構造安定化剤(TMAOH,ソルビトール,1,4−dioxan)を酸性水溶液(塩酸、硝酸、酢酸)に加え、そこに、Na−ileriteを混ぜ、室温で96時間攪拌した。その結果、表30に示される第2中間体と同様の化合物が得られ、更に、それを焼成したところ、RWR型ゼオライトを得ることができた。それを図9に示す、それぞれの中間体及びRWR型ゼオライトは、図2に示されるものと比べ、線幅の広いXRDパターンを示した。
更に、酢酸はそれ自身が有機分子であることから構造安定化剤にもなり得る。これを示すために、pH=2.5の酢酸水溶液の中へNa−ileriteを混ぜ、攪拌し、イオン交換を行い、吸引濾過法で中間体を調製した。その結果、表30と類似したXRDパターンを示したことから、第2中間体H−TMA−ileriteとほぼ同一と見なされる構造であることが分かった。これを焼成したところ、RWR型ゼオライトが得られ、粉末XRDパターンは、図10示される。結晶性は、図9で示されるものより僅かによい結果となった。
第2として、層状珪酸塩magadiite、kenyaiteを扱った場合ついて説明する。この2つの化合物は、非常に古くから知られ、合成法も多数報告されている(文献:K. Kosuge, A. Yamazaki, A. Tsunashima, R. Otsuka, J. Ceramic Soc. Jpn., 100 326-331 (1992))。また、この2つの結晶構造について詳細は明らかになっていない。しかしながら、基本構造としては、ileriteと同様に、Si−Oの4面体配位の繰り返し単位からなり、29Si DDMAS NMRの測定から層状構造であることを裏付けるスペクトルが得られている。更に、層状珪酸塩magadiiteでは、ケイ素5員環がシリカシート骨格内に含まれていることが示唆されている(文献:J.M.Garces, S. C. Rocke, C. E. Crowder, D. L. Hasha, Clays and Clay Minerals 36 409-418 (1988))。
ケイ素5員環がシリカ骨格に組み込まれているかどうかは、フーリエ変換型赤外分光(FT−IR)測定によってを判別できることが報告されている(文献:J. C. Jansen, F. J. Van der Gaag and H. Van Bekkum, Zeolites, 4, 369-372 (1984). A. Zecchina, S. Bordiga, G. Spoto, L. Marchese, G. Petrini, G. Loefanti and M. Padovan, J. Phys. Chem., 96, 4985 (1992))。これによると、ゼオライトでは、550cm−1、1235cm−1付近に現れる吸収ピークは、ケイ素5員環由来のものと定義されており、実際に、本発明で用いた層状珪酸塩kenyaite及びmagadiiteのFT−IRスペクトル(図11)においても観測されている。よって、Na−ileriteの結晶構造にもシリカ骨格にはケイ素5員環が含まれていることを鑑みると、未知構造ではあるものの層状珪酸塩kenyaite及びmagadiiteでも、ケイ素5員環がシリカ骨格に含まれていると推測できる。
層状珪酸塩magadiite及びkenyaiteは、表32、33で特徴づけられる回折ピークを与える。しかしながら、詳細な結晶構造は明らかとなっていない。化学組成は、magadiiteがNaO・14SiO・10HO、kenyaiteがNaO・22SiO・10HOであると見積もられている(文献:G. A. Almond, R. K. Harris and K. R. Franklin, J. Mater. Chem., 7, 681-687 (1997))。
本発明方法で用いる層状珪酸塩magadiite、kenyaiteは、それと特徴づけられるXRDパターンを示すものであれば製法はいとわない。本発明で用いたmagadiite及びkenyaiteは、ileriteの合成法において、シリカ源−水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)が用いられるのに対し、NaOHの一部をKOHに置換することで得られたものである。その比は、Na:K=3:1もしくは2:2が好ましい割合である。シリカ源としては、好適には、例えば、SiO(具体的には和光純薬工業株式会社製ワコーゲルQ−63)等が使用されるが、これらに制限されるものではない。
これらのシリカ源からの結晶性層状化合物の反応プロセスは、適量の水が存在する状態で加熱処理をした場合、オートクレーブなどの反応容器により加熱する。magadiiteでは、加熱温度は、好ましくは110−120℃、反応時間は、好ましくは7−21日である。また、kenyaiteでは、加熱温度は、好ましくは130−140℃、反応時間は、好ましくは7−10日である。得られシリケート粉体は、吸引濾過を用いて水で洗浄した後、60℃の高温漕で乾燥させ、最終生成物とする。本発明方法で用いる層状珪酸塩magadiite、kenyaiteの化学組成は、先の組成と比較して、magadiiteがNa1.5・K0.5O・14SiO・10HO、kenyaiteがNa1.5・K0.5O・22SiO・10HOであると推定される。
次に、構造安定化剤にTMAOHを用いたときの層状珪酸塩magadiite、kenyaiteから、新規ナノ多孔体CDS−M、CDS−Kにおける変換スキームを説明する。これらについても、先に述べたRWR型ゼオライトの合成の場合と同様な操作を行った。ただし、この変換プロセスでは最初のmagadiite又はkenyaiteの塩酸処理のステップを無くしている。すなわち、後述の実施例2で示されるRWR型ゼオライトの合成プロセスと同一であり、層状珪酸塩のみを変えて、0.25−2.0M濃度のTMAOH水溶液にてインターカレーションを行い、層間へTMAイオンを導入し、吸引濾過及び乾燥を行った。これを0.1M塩酸を用いて酸処理した後、再度、吸引濾過及び乾燥を行った。最後にマッフル炉を用いて、500mL/minの空気を流通させながら、450−600℃、昇温速度1.0℃/minとして、加熱焼成を行った。
一連の過程で得られる生成物について構造を調べたところ、粉末XRDパターンは、magadiiteでは図12、kenyaiteでは図13で示され、焼成後の物質は、ともに新規な構造を有していることが分かった。ここで、焼成後に得られた生成物を、magadiiteを出発物質とする場合にCDS−Mと、また、kenyaiteを出発物質としたときにはCDS−Kとそれぞれ定義する。
使用したkenyaiteには、若干のQuartzが含まれていることが確認された。このQuartz成分は、不純物として残存し、中間体やCDS−Kに変化してもそのまま残っていることから、CDS−Kの合成過程には影響していないと考えられる。また、kenyaite及びTMA−kenyaiteの段階では、焼成してもQuartzしか得られないが、H−TMA−kenyaiteの場合だけ焼成によって新規構造を示唆するXRDパターンを示すナノ多孔体CDS−Kが得られた。このとき、出発物質であるmagadiite、kenyaiteからCDS−M、CDS−Kに至るまでの底面反射の格子面間隔は、両者とも4.3Å程度縮んでいることが確認された。
このCDS−M、CDS−Kがナノ多孔体である証拠は、29Si DDMAS NMR測定及び窒素ガス吸着測定から明らかにすることができる。29Si DDMAS NMRスペクトルから、図14に示すように、層状珪酸塩magadiiteではQとQに属するシグナルが観測されているが、多孔体CDS−MではQのみのシグナルが観測されている。また、図15に示すように、層状珪酸塩kenyaiteでも、QとQに属するシグナルが観測されているが、多孔体CDS−Kでは、Qのみのシグナルが観測されている。なお、図15中のアスタリスク(*)は、合成したkenyaite中に含まれていたQuartzに由来するシグナルである。また、窒素ガス吸着による等温曲線からは、magadiiteから多孔体CDS−Mになることで、図16に示すように、吸着量が増加し、比表面積は41.5m/gとなり、また、kenyaiteから多孔体CDS−Kになることで、図17に示すように、吸着量が増加し、比表面積は51.5m/gであった。このことから、先に述べた層状珪酸塩ileriteから、RWR型ゼオライトを得たのと同様に、多孔体CDS−M及び多孔体CDS−Kは、出発物質である層状珪酸塩magadiite及びkenyaiteのシリカシートが架橋して、層間に新たなナノ細孔ができたものであると類推される。
この層状珪酸塩magadiite、多孔体CDS−M、層状珪酸塩kenyaite及び多孔体CDS−Kの結晶形態は、SEM観察から、図18に示される。それぞれ、出発物質から最終生成物に至るまで板状の結晶形態や結晶サイズは殆ど変化していない。
magadiite粉末と構造安定化剤(TMAOH,ソルビトール又は1,4−dioxan)を酸(塩酸、硝酸又は酢酸)性水溶液に同時に混ぜ合わせ、酸性条件下でのイオン交換を行い、その他は同一の操作を行った場合も、CDS−Mを製造することができた。この場合も、中間体及び焼成後のナノ多孔体は、それぞれ、図12記載のXRDパターンと良く一致したXRDパターン(図19)を示す物質が得られた。結晶性は、TMAOHを用い、第1、第2中間体を経て作った時と同程度であった。
構造安定化剤と酸の両面を兼ね備える酢酸のみを用いて水溶液を調製し、そこへmagadiiteの粉末を混ぜ、攪拌しイオン交換及び焼成を行った。本結果でも、図12記載のXRDパターンと良く一致した中間体とナノ多孔体CDS−Mが合成できたことが確認された(図19)。結晶性は、TMAOHを用い、第1、第2中間体を経てを経て作った時と同程度であった。
kenyaite粉末と構造安定化剤(TMAOH,トリエチレンテトラミン(東京化成工業株式会社製)又は1,4−dioxan)を酸(塩酸、硝酸又は酢酸)性水溶液に同時に混ぜ合わせ、酸性条件下でのイオン交換を行い、その他は同一の操作を行った場合も、CDS−Kを製造することができた。この場合も、中間体及び焼成後のナノ多孔体は、それぞれ、図13記載のXRDパターンと良く一致したXRDパターン(図20)を示す物質が得られた。結晶性は、TMAOHを用い、第1、第2中間体を経て作った時と同程度であった。
このilerite、magadiite、kenyaiteの3種類に共通な点として、その出発物質から最終生成物であるRWR型ゼオライト、CDS−M、CDS−Kに至るまでの底面反射の変化は、4.2−4.3Å程度の値を示している。ilerite、magadiite、kenyaiteとも合成条件が類似しており、29Si DDMAS NMRスペクトル及び窒素ガス吸着測定の結果を鑑みると、magadiiteもkenyaiteも結晶構造が明らかではないが、その層間距離やイオン交換能は、ileriteとほぼ同じであると示唆される。上記のilerite、magadiite、kenyaiteで示される結果から、構造安定化剤のインターカレーションと酸処理を同時に行っても、中間体が生成できることが明らかとなった。
本発明での、層状珪酸塩からのゼオライトへの構造変換法についての全ての構造が明らかとなっているileriteを用いた場合について、レイアウトを図21で示す。本発明により、報告されている合成法とは異なる、2つの新しい中間体を含んだ新しいルートによりRWR型ゼオライトの合成が可能である。このレイアウトに従って、層状珪酸塩をmagadiiteやkenyaiteに変えることで、新規ナノ多孔体CDS−MやCDS−Kが合成できる。以上のことから、本発明は、層状珪酸塩から高シリカであるナノ多孔体もしくはゼオライトを構築するための構造設計指針・設計方法を提供するものである。また、構造安定化剤については、層間にイオン交換可能な有機分子であれば、実施例にあげるもの以外でも用いることが可能である。酢酸のように、それ自身が酸性である有機分子は、理想的な構造安定化剤といえる。
本発明による層状珪酸塩からナノ多孔体もしくはゼオライトを構築するための新しい構造設計指針は、従来のゼオライト合成とは異なり、既存の層状珪酸塩からゼオライトを作り出せる大きな可能性をもたらすと考えられ、コスト面で不利な特殊なOSDAによらず、低コストな高シリカゼオライト又はナノ多孔体を合成できる方法として有望である。これまでの長い研究では、一度マクロに結晶化したシリケート化合物を自由に操作する方法について、ほとんど研究されていなかった。しかし、現在、主流のOSDAに依存した合成法が、大変高い技術を要するため、再現性に乏しく、また、コスト的に研究レベルの域から脱却できない現状を鑑みると、本発明の手法のように、既存のシリカ化合物を部品にして、より現実的にゼオライトを構築しようとする発想に至ったことは、従来とは一線を画する合成手法の開発が必要不可欠であるという認識が背景にあることに他ならない。
層状珪酸塩magadiite及びkenyaiteは、粘土鉱物として古くから知られ、多数の合成例が報告され容易に合成が可能である。また、それらを使った多くの応用研究も報告されている。CDS−Mを更に改良することができればコストパフォーマンスの高いナノ多孔材料となり得ると考えられる。更に、CDS−Kも同様である。ここで、あえてCDS−M、CDS−Kをナノ多孔体と定義したのは、結晶構造が未定義だからである。しかしながら、その物理的・化学的性質からはilerite→RWR型ゼオライトの場合と何ら変わるところはなく、高シリカゼオライトとしての特徴を兼ね備えていると言っても問題ない。CDS−M、CDS−Kは、比表面積及び細孔容積ともに小さいものの、耐熱性に有利な高シリカ組成であることから、例えば、近年、燃料電池などで注目されている水素の分離材としての利用価値があるものと期待される。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
以下、粉末X線回折(XRD)パターンは、マックサイエンス社M21X(Cu Kα線)及びブルカー・エイエックスエス社ADVANCE D8 Vario−1(Cu Kα1線)を使用し、0.02゜間隔(M21X)及び0.00874゜間隔(ADVANCE D8)のステップスキャンにより得た。熱重量分析には、マックサイエンス社TG−DTA2000SRを、29Si DDMAS NMR測定には、ブルカーバイオスピン社ANANCE400WBを使用した。ここで、プローブは、7mm MASプローブを用い、測定条件は30゜パルスのHPDECパルスプログラムとし、試料回転速度は5 kHz、待ち時間100秒とした。また、生成物の化学組成は、ICP分析(セイコーインスツルメント株式会社製SPS−1500R)により決定した。窒素ガス吸着は、Quantachrome社製AutoSorb−1MPを用い、液体窒素温度(77K)にて測定を行った。フーリエ型赤外分光(FT−IR)測定には、日本電子製JIR−7000を用い、粉末試料とKBr粉末からペレットを作成し、真空中で20℃から200℃まで昇温、昇温時間は1時間の条件でペレットの加熱処理を行い、その後、3時間200℃で保持し、徐冷したものを測定に用いた。
(RWR型ゼオライトの製造)
本発明で用いる層状珪酸塩Na−ileriteは、SiO(商品名:Ludox AS−40)200g、水酸化ナトリウム(NaOH:和光純薬工業製)26.9g及び純水59.69gを一緒にテフロン(登録商標)内筒を有するオートクレーブに移し、100℃で23日間加熱処理(水熱合成)した。これをオートクレーブから取り出した後、純水で充分洗浄を行いながら吸引濾過を行って結晶を採取し、60℃の温度下で12時間乾燥させることで粉末状の生成物として得られた。収量は47.05gであった。
本生成物が層状化合物Na−ileriteであることは、表34及び図2に示される粉末X線回折パターンから判断できる。また、図5に示すSEM像から、結晶サイズは一辺が3−5μm、厚みが0.1μm程度であった。このNa−ileriteの結晶構造の概略は、図1(a)で示されるように、層状のシリカ骨格で挟まれた隙間に、Naイオンと水分子が規則的に分布している。
Na−ileriteを2.0gとり、0.1M HCl水溶液200ml中へ導入後、室温で1日攪拌した後、純水で十分洗浄し、吸引濾過を行い、H−ileriteを得た。このときの収量は1.44gであった。H−ileriteの粉末X線回折パターンは、表35及び図2で特徴づけられる回折ピークを示した。また、この既知生成物であるH−ileriteの結晶構造の概略は、非経験的構造解析から、図1(b)で示されるように、シリケート層が接近していることが分かった。
次に、TMAOHを構造安定剤とする場合は、H−ilerite0.1gを2.0M濃度のTMAOH水溶液100ml中へ加え、30℃で24時間攪拌しインターカレーションを行った。これを遠心分離により結晶のみを沈降させ、上澄みを捨てた後、乾燥させることで、第1中間体TMA−ileriteを得た。このときの収量は0.14gであった。この生成物TMA−ileriteは、粉末X線回折パターンが表36で特徴づけられる回折ピーク(図2)を示した。また、このTMA−ileriteの結晶構造の概略は、非経験的構造解析から、図1(c)で示されるように、層間にTMAイオンを含んでいることが分かった。
Na−ilerite、H−ilerite、TMA−ileriteを空気雰囲気下(流量500ml/min)、1℃/minの昇温速度で600℃まで上げ、10時間保持、その後、徐冷の順に焼成してもRWR型ゼオライトは得られず、図3に示すように、底面反射に相当するピークのみのアモルファス成分の多いXRDパターンが観測された。これは、シリカシート同士規則性が乱れたまま縮合したため、層間に細孔が形成されていないことを意味する。
TMA−ileriteを酸処理し、第2中間体H−TMA−ileriteを得た。酸処理は、pH=1.274の酢酸水溶液100ml中へTMA−ileriteを0.14gを入れ、温度30℃にて96時間撹拌した後、純水で十分洗浄を行った。遠心分離で結晶を採取し乾燥させ、収量は0.1gであった。こうして得られたH−TMA−ileriteは、粉末X線回折パターンは表37及び図2で特徴づけられる回折ピークを示した。また、このH−TMA−ileriteの結晶構造は、構造解析により。図1(d)で示されるような、シリカシート同士が層間に細孔に似た規則性のある空隙を形成していることが分かった。
次に、H−TMA−ilerite粉末0.1gを、パイレックス(登録商標)又は石英ガラス管に入れ、マッフル炉を用いて加熱した。このとき、空気雰囲気下(流量500ml/min)、1℃/minの昇温速度で600℃まで上げ、10時間保持し、その後、徐冷という順で焼成を行った。焼成後の収量は0.07gであった。
TG−DTA測定により、H−TMA−ileriteは、図4に示すように、熱処理過程で最大17.5%重量減少することが分かった。また、DTA曲線には、250−290℃付近に脱水重縮合反応に起因した吸熱ピークが観測された。得られた粉末生成物は、灰色−白色をしており、焼成の条件によって炭化物が残留物として認められた。残留物の除去が必要な場合は、RWR型ゼオライトの結晶1.0gをアルミナ製のシャーレに入れ、マッフル炉を用いて0.5−1.0L/minの空気気流下で室温より1.0℃/minで600℃まで昇温し、そのまま、4時間保持した。最終の生成物は、白色粉末であった。
焼成した生成物の粉末XRD測定を行ったところ、図2及び表38に示される回折ピーク示し、RWR型ゼオライト固有のものと変わりがないことが確認された。このRWR型ゼオライトの結晶構造は、図1(e)で示されるような、ケイ素8員環からなるストレートチャネルを有している。また、RWR型ゼオライトの結晶構造には、酢酸分子や水分子は観測されなかった。
得られたRWR型ゼオライトは、灰色−白色をしており、焼成の条件によって炭化物が結晶表面の残留物として付着していることが認められる。残留物の完全除去が必要な場合は、例えば、RWR型ゼオライトの結晶1.0gをアルミナ製のシャーレに入れ、マッフル炉を用いて、0.5−1.0L/minの空気気流下で、室温より1.0℃/minで600℃まで昇温し、4時間保持の順でマッフル炉で焼成すればよく、焼成後に、白色の生成物が得られる。
走査型電子顕微鏡(SEM)の観察により、Na−ilerite、H−ilerite、TMA−ilerite、H−TMA−ilerite、及びRWR型ゼオライトの各々の結晶形態は、図5に示されるように、多少表面の付着物の有無において差が見られたが、基本的には板状で結晶の大きさは、一辺が3−5μm、厚みが0.5μm程度であった。
Na−ileriteからRWR型ゼオライトに至るまでの5つの生成物について、29Si DDMAS NMR測定によるスペクトルを図6に示す。層状構造であるNa−ileriteや2つの中間体では、(SiO)−Si−OHの局所構造を持つQシグナルと(SiO)SiとなるQシグナルの2種類のNMRスペクトルが観測された。これに対し、脱水重縮合後のRWR型ゼオライトでは、Qに帰属するピークだけが観測された。この結果は、基本骨格が層状構造であったものが3次元的な構造体へと変わったことを支持している。
本例で得られたRWR型ゼオライトが細孔を有するかどうかを窒素ガス吸着で調べた結果、図7に示すように、吸着量がNa−ileriteに比べ増加していることが分かる。また、一般的に、ゼオライトで見られるI型というよりマクロ孔を多く持つ場合に示すII型に近い等温曲線であった。BET法から、比表面積は72.3m/gと見積もられた。また、SF法(Saito−Foley法)による解析から、平均細孔径が約5.5Åと見積もられた(図8)。このことから、生成物がナノ細孔を持ったゼオライトとなっていることが説明できる。また、出発物質であるNa−ileriteから最終生成物であるRWRゼオライトに至るまでの、底面反射の格子面間隔は、約4.3Å縮んでいることが確認された。
(RWR型ゼオライトの製造)
SiO(商品名:和光純薬工業株式会社製ワコーゲルQ−63)を2.0g取り、水酸化ナトリウム(NaOH:和光純薬工業製)を用いて4 mol/L濃度の水溶液4.0mlと一緒に、テフロン(登録商標)内筒を有するオートクレーブに移し、108℃で10日間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、水で充分洗浄を行い、60℃の温度下で12時間乾燥させ粉末状の生成物としてNa−ileriteを得た。本生成物が層状化合物Na−ileriteであることは、表39及び図22に示される粉末X線回折パターンから判断できる。
TMAOHを構造安定剤とする場合、Na−ilerite1.0gを0.25M濃度のTMAOH水溶液50ml中に入れ、室温にて96時間攪拌し、層間にTMAOHを挿入した。このときの収量は1.4gであった。これをエタノールで十分洗浄し、吸引濾過により結晶のみを採集し、60℃で12時間乾燥させることで第1中間体TMA−ileriteを得た。この生成物TMA−ileriteは、粉末X線回折パターンが表40で特徴づけられる回折ピーク(図22)を示した。
TMA−ileriteを酸処理し、第2中間体H−TMA−ileriteを得た。酸処理の条件は0.1M濃度の塩酸水溶液100ml中へTMA−ileriteを1.0gを加え、温度30℃にて96時間撹拌を行った。純水で十分洗浄を行った後、吸引濾過で結晶を採取し、60℃で12時間乾燥させたところ、収量は0.8gであった。こうして得られたH−TMA−ileriteは粉末X線回折パターンは、表41及び図22で特徴づけられる回折ピークを示した。
次に、H−TMA−ilerite粉末1.0gを、パイレックス(登録商標)又は石英ガラス管に入れ、マッフル炉を用いて加熱した。このとき空気雰囲気下(流量500ml/min)、1℃/minの昇温速度で600℃まで上げ、10時間保持、その後、徐冷という順で焼成を行った。焼成後の収量は0.75gであった。焼成後は、図22及び表42に示される回折強度比を有した線幅の広いXRDパターンを示し、RWR型ゼオライト固有のものと変わりがないことが確認された。この場合も、出発物質であるNa−ileriteから最終生成物であるRWRゼオライトに至るまでの底面反射の格子面間隔は、実施例1と同じく、約4.3Å縮んでいることが確認された。
走査型電子顕微鏡(SEM)の観察により、Na−ilerite、TMA−ilerite、H−TMA−ilerite、及びRWR型ゼオライトの各々の結晶形態は、図23に示されるように、多少表面の付着物の有無において差が見られたが、基本的には、板状で結晶の大きさは一辺が5μm厚みが0.5μm程度であった。
(RWR型ゼオライトの製造)
実施例2の製造条件において、1.0M濃度の塩酸水溶液100mlに構造安定化剤TMAOHを加え、0.25M濃度のTMAOH酸性溶液を調製し、そこにNa−ilerite0.5gを混ぜ、96時間攪拌した以外は、実施例2と同一の調製条件とした。その結果、焼成前の中間体は、表30に示される第2中間体と同様の化合物が得られ、更に、それを焼成した結果、RWR型ゼオライトを得ることができた。それぞれの中間体及びRWR型ゼオライトは、図2に示されるものと比べ、線幅の広い粉末XRDパターンを示した(図9)。
(RWR型ゼオライトの製造)
実施例2の製造条件において、1.0M濃度の塩酸水溶液100mlに構造安定化剤ソルビトールを加え、0.25M濃度のソルビトール酸性溶液を調製し、そこにNa−ilerite0.5gを混ぜ、96時間攪拌した以外は、実施例2と同一の調製条件とした。その結果、焼成前の中間体は、表30に示される第2中間体と同様の化合物が得られ、更に、それを焼成した結果、RWR型ゼオライトを得ることができた。それぞれの中間体及びRWR型ゼオライトは、図2に示されるものと比べ、線幅の広い粉末XRDパターンを示した(図9)。
(RWR型ゼオライトの製造)
実施例2の製造条件において、1.0M濃度の塩酸水溶液100mlに構造安定化剤に1,4−dioxanを加え、0.25M濃度の1,4−dioxan酸性溶液を調製し、そこにNa−ilerite0.5gを混ぜ、96時間攪拌した以外は、実施例2と同一の調製条件とした。その結果、焼成前の中間体は、表30に示される第2中間体と同様の化合物が得られ、更に、それを焼成した結果、RWR型ゼオライトを得ることができた。それぞれの中間体及びRWR型ゼオライトは、図2に示されるものと比べ、線幅の広い粉末XRDパターンを示した(図9)。
(RWR型ゼオライトの製造)
実施例2で用いたNa−ilerite0.5gをpH=1.03の酢酸100mlの中へ混ぜ、96時間攪拌を行い、それ以降は、実施例2と同一の調製条件で、試料調製を行った。その結果、焼成前の中間体は、表30と類似したXRDパターンを示し、実施例1の第2中間体H−TMA−ileriteとほぼ同一の構造であることが分かった。これを焼成した後に得られた生成物の粉末XRD測定から、RWR型ゼオライトであることが確認された(図10)。
これ以外にも、RWR型ゼオライトを合成するための、中間体の調製について、実施例1−6の条件を拡張し、多数の検証を行った。それらについての調製条件の一覧を表51に示す。また、表51で示すH−R−ilerite(R=TMAOH,Sorbitol,1,4−dioxan)を、実施例1で示される加熱条件にて焼成したところ、RWR型ゼオライトが合成された。
(新規ナノ多孔体CDS−Mの製造)
本発明で用いる層状珪酸塩magadiiteは、ileriteの合成法において、シリカ源−水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)が用いられるのに対し、NaOHの一部をKOHに置換することで得られたものである。具体的には、SiO(商品名:和光純薬工業株式会社製ワコーゲルQ−63)32.0g、4mol/L濃度のNaOH(和光純薬工業製)水溶液48.0ml及び4mol/L濃度のKOH(和光純薬工業製)水溶液16.0mlをテフロン(登録商標)内筒を有するオートクレーブに移し、120℃で21日間加熱処理(水熱合成)した。オートクレーブから取り出した後、純水で充分洗浄を行いながら吸引濾過を行って結晶を採取し、60℃の温度下で12時間乾燥させることで粉末状の生成物として得られた。本生成物が層状化合物magadiiteであることは、表43及び図12に示される粉末X線回折パターンから判断できた。
実施例2のileriteの場合と同様な操作を行った。第1に0.25M濃度のTMAOH水溶液50ml中にmagadiite1.0gを加え室温で96時間攪拌し、その後、エタノールによる十分な洗浄、吸引濾過及び乾燥を行うことで第1中間体TMA−magadiiteを調製した。第2にTMA−magadiite1.0gを0.1M塩酸50mlに浸し、室温で1日攪拌しH−TMA−magadiiteを得た。第3に電気炉を用いて500mL/minの空気を流通させながら加熱処理を600℃、昇温速度1.0℃/minとして焼成を行い新規高シリカナノ多孔体CDS−Mを得た。この構造変化を調べたところ、第1中間体TMA−magadiite、第2中間体H−TMA−magadiite、新規高シリカナノ多孔体CDS−Mの順で、表44−46及び図12で表される粉末XRDパターンが示された。
29Si DDMAS NMR測定によるスペクトルを図14に示す。層状構造であるmagadiiteでは、(SiO)−Si−OHの局所構造を持つQシグナルと(SiO)SiとなるQシグナルの2種類のNMRスペクトルが観測された。これに対し、脱水重縮合後の新規ナノ多孔体CDS−Mでは、Qに帰属するピークだけが観測された。この結果は、基本骨格が層状構造であったものが、3次元的な構造体へと変わったことを支持している。
本実施例で得られた新規ナノ多孔体CDS−Mが細孔を有するかどうかを窒素ガス吸着で調べた結果、図16に示すように、合成後のmagadiiteに比べ、脱水重縮合後には吸着量が増加した。ゼオライトで見られる典型的なI型というよりマクロ孔を多く持つ場合に示すII型に近い等温曲線を示し、比表面積は41.5m/gであった。これにより、生成物がナノ細孔を持った高シリカ多孔体であると説明できる。また、出発物質であるmagadiiteから最終生成物である新規ナノ多孔体CDS−Mに至るまでの、底面反射の格子面間隔は、約4.3Å縮んでいることが確認された。
(新規ナノ多孔体CDS−Mの製造
実施例7の製造条件において、1.0M塩酸水溶液100mlに構造安定化剤TMAOHを加え、0.25M濃度のTMAOH酸性溶液を調製し、更に、magadiite1.0gを混ぜ、室温で96時間攪拌した以外は、実施例7と同一の調整条件とした。その結果、焼成前の中間体は、表45に示される第2中間体とほぼ同一の構造を有する化合物が得られ、更に、それを焼成することで新規高シリカナノ多孔体CDS−Mが得られた。この場合も、中間体及び焼成後のナノ多孔体は、それぞれ図12記載のXRDパターンと良く一致したXRDパターン(図19)を示す物質が得られた。結晶性は、TMAOHを用いて、第1、第2中間体を経て作った時と同程度であった。
(新規ナノ多孔体CDS−Mの製造)
実施例7の製造条件において、1.0M塩酸水溶液100mlに構造安定化剤のソルビトールを加え、0.25M濃度のソルビトール酸性溶液を調製し、更に、magadiite1.0gを混ぜ、室温で96時間攪拌した以外は、実施例7と同一の調整条件とした。その結果、焼成前の中間体は、表45に示される第2中間体とほぼ同一の構造を有する化合物が得られ、更に、それを焼成することで新規高シリカナノ多孔体CDS−Mが得られた。この場合も、中間体及び焼成後のナノ多孔体は、それぞれ図12記載のXRDパターンと良く一致したXRDパターン(図19)を示す物質が得られた。結晶性は、TMAOHを用いて、第1、第2中間体を経て作った時と同程度であった。
(新規ナノ多孔体CDS−Mの製造)
実施例7の製造条件において、1.0M塩酸水溶液100mlに構造安定化剤の1,4−dioxanを加え、0.25M濃度の1,4−dioxan酸性溶液を調製し、更に、magadiite1.0gを混ぜ、室温で96時間攪拌した以外は、実施例7と同一の調整条件とした。その結果、焼成前の中間体は、表45に示される第2中間体とほぼ同一の構造を有する化合物が得られ、更に、それを焼成することで新規高シリカナノ多孔体CDS−Mが得られた。この場合も、中間体及び焼成後のナノ多孔体は、それぞれ図12記載のXRDパターンと良く一致したXRDパターン(図19)を示す物質が得られた。結晶性は、TMAOHを用いて、第1、第2中間体を経て作った時と同程度であった。
(新規ナノ多孔体CDS−Mの製造)
実施例7で用いたmagadiite2.0gを酢酸100mlの中へ混ぜ、96時間攪拌し、イオン交換を行い、それ以降は、実施例7と同一の調製条件で試料調製を行った。その結果、焼成前の中間体は、表30と類似したXRDパターンを示し、実施例1の第2中間体H−TMA−ileriteとほぼ同一の構造であることが分かった。これを焼成したものについて、粉末XRD測定から、RWR型ゼオライトであることが確認された(図19)。
これ以外にも、ナノ多孔体CDS−Mを合成するための、中間体の調製について、実施例7−11の条件を拡張し、多数の検証を行った。それらについての調製条件の一覧を表52に示す。また、表51で示すH−R−magadiite(R=TMAOH,Sorbitol,1,4−dioxan)を、実施例7で示される加熱条件にて焼成したところ、ナノ多孔体CDS−Mが合成された。
(新規ナノ多孔体CDS−Kの製造)
本発明で用いる層状珪酸塩kenyaiteは、ileriteの合成法において、シリカ源−水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)が用いられるのに対し、NaOHの一部をKOHに置換することで得られたものである。具体的には、SiO(商品名:和光純薬工業株式会社製ワコーゲルQ−63)32.0g、4mol/L濃度のNaOH(和光純薬工業製)水溶液48.0ml及び4mol/L濃度のKOH(和光純薬工業製)水溶液16.0mlをテフロン(登録商標)内筒を有するオートクレーブに移し、140℃で196時間加熱処理(水熱合成)した。オートクレーブから取り出した後、純水で充分洗浄を行いながら吸引濾過を行って結晶を採取し、60℃の温度下で12時間乾燥させることで粉末状の生成物として得られた。本生成物が層状化合物kenyaiteであることは、表47及び図13に示される粉末X線回折パターンから判断できた。
実施例7のmagadiiteの場合と同様な操作を行った。第1に、0.25M濃度のTMAOH水溶液100ml中にkenyaite1.2gを加え、室温で96時間攪拌し、その後、エタノールによる十分な洗浄と吸引濾過及び乾燥を行うことで第1中間体TMA−kenyaiteを調製した。第2に、TMA−kenyaite1.0gを1.0M塩酸100mlに浸し、室温で1日攪拌し、H−TMA−kenyaiteを得た。第3に、電気炉を用いて、500mL/minの空気を流通させながら加熱処理を600℃、昇温速度1.0℃/minとして焼成を行い、新規高シリカナノ多孔体CDS−Kを得た。この構造変化を調べたところ、第1中間体TMA−kenyaite、第2中間体H−TMA−kenyaite、新規高シリカナノ多孔体CDS−Kの順で、表48−50及び図13で表される粉末XRDパターンが示された。なお、使用したkenyaiteには、若干のQuartzが含まれていることがXRDで確認された。このQuartz成分は、不純物として残存し、中間体やCDS−Kに変化してもそのまま残っていることから、CDS−Kの合成に影響するものではない(実施例16、17を参照)。
29Si DDMAS NMR測定によるスペクトルを図15に示す。層状構造であるkenyaiteでは、(SiO)−Si−OHの局所構造を持つQシグナルと(SiO)SiとなるQシグナルの2種類のNMRスペクトルが観測された。これに対し、脱水重縮合後の新規ナノ多孔体CDS−Kでは、Qに帰属するピークだけが観測された。この結果は、基本骨格が層状構造であったものが、3次元的な構造体へと変わったことを支持している。
本実施例で得られた新規ナノ多孔体CDS−Kが細孔を有するかどうかを窒素ガス吸着で調べた結果、図17に示すように、合成後のkenyaiteに比べ、脱水重縮合後には吸着量が増加した。ゼオライトで見られる典型的なI型というよりマクロ孔を多く持つ場合に示すII型に近い等温曲線を示し、比表面積は51.5m/gであった。これにより、生成物がナノ細孔を持った高シリカ多孔体であると説明できる。また、出発物質であるmagadiiteから最終生成物である新規ナノ多孔体CDS−Kに至るまでの、底面反射の格子面間隔は、約4.3Å縮んでいることが確認された。
層状珪酸塩kenyaiteは種結晶を加えることで、短時間でしかも不純物であるQuartzを含まないものが合成できる。具体的には、SiO(商品名:和光純薬工業株式会社製ワコーゲルQ−63)31.0g、種結晶として既存のkenyaite結晶1.0g、4mol/L濃度のNaOH(和光純薬工業製)水溶液48.0ml及び4mol/L濃度のKOH(和光純薬工業製)水溶液16.0 mlをテフロン(登録商標)内筒を有するオートクレーブに移し、140℃で7日間加熱処理(水熱合成)した。オートクレーブから取り出した後、純水で充分洗浄を行いながら吸引濾過を行って、結晶を採取し、60℃の温度下で12時間乾燥させることで粉末状の生成物として得られた。本生成物がQuartzを含まない層状化合物kenyaite単相であることは、図24に示される粉末X線回折パターンから確認することができた。
(新規多ナノ孔体CDS−Kの製造)
実施例12の製造条件において、100mlの塩酸水溶液に構造安定化剤のTMAOHを加え、0.25MのTMAOH酸性溶液を調製し、更に、kenyaite0.5gを混ぜて室温で96時間攪拌した以外は、実施例12と同一の調整条件とした。その結果、焼成前の中間体は、表45に示される第2中間体とほぼ同一の構造を有する化合物が得られ、更に、それを焼成することで新規高シリカナノ多孔体CDS−Kが得られた。この場合も、中間体及び焼成後のナノ多孔体は、それぞれ図13記載のXRDパターンと良く一致したXRDパターン(図20)を示す物質が得られた。結晶性は、TMAOHを用いて、第1、第2中間体を経て作った時と同程度であった。
(新規ナノ多孔体CDS−Kの製造)
実施例12の製造条件において、100mlの塩酸水溶液に構造安定化剤のトリエチレンテトラミン(東京化成工業株式会社製:triethylenetetramine)を加え、0.25Mのトリエチレンテトラミン酸性溶液を調製し、更に、kenyaite0.5gを混ぜて、室温で96時間攪拌した以外は、実施例12と同一の調整条件とした。その結果、焼成前の中間体は、表45に示される第2中間体とほぼ同一の構造を有する化合物が得られ、更に、それを焼成することで新規高シリカナノ多孔体CDS−Kが得られた。この場合も、中間体及び焼成後のナノ多孔体は、それぞれ図13記載のXRDパターンと良く一致したXRDパターン(図20)を示す物質が得られた。結晶性は、TMAOHを用いて、第1、第2中間体を経て作った時と同程度であった。
(新規ナノ多孔体CDS−Kの製造)
実施例12の製造条件において、100mlの塩酸水溶液に構造安定化剤の1,4−dioxanを加え、0.25Mの1,4−dioxan酸性溶液を調製し、更に、kenyaite0.5gを混ぜて、室温で96時間攪拌した以外は、実施例12と同一の調整条件とした。その結果、焼成前の中間体は、表45に示される第2中間体とほぼ同一の構造を有する化合物が得られ、更に、それを焼成することで新規高シリカナノ多孔体CDS−Kが得られた。この場合も、中間体及び焼成後のナノ多孔体は、それぞれ図13記載のXRDパターンと良く一致したXRDパターン(図20)を示す物質が得られた。結晶性は、TMAOHを用いて、第1、第2中間体を経て作った時と同程度であった。
これ以外にも、ナノ多孔体CDS−Kを合成するための、中間体の調製について、実施例12−15の条件を拡張し、多数の検証を行った。それらについての調製条件の一覧を表52に示す。また、表53で示すH−R−kenyaite(R=TMAOH,トリエチレンテトラミン)を実施例7で示される加熱条件にて焼成したところ、ナノ多孔体CDS−Kが合成された。
(新規ナノ多孔体CDS−Kの製造)
実施例12−15では、kenyaiteには、不純物としてQuartzが含まれていた。Cそこで、CDS−Kの製造において、全く異なる合成法で得た不純物を含まないkenyaiteを用いて構造変換を試みた。本実施例で用いるkenyaiteは、TMAOHを用いて合成される。具体的には、原料にワコーゲル(Q−63)、NaOH(メルク、99%)、TMAOH20%水溶液及び純水を用いた。次に、これらの原料をモル比でSiO:OH−:HO=1:0.5:7,NaOH:TMAOH=1:9,OH−/SiO比は一定となるような、仕込みの組成比で混合したものを、オートクレーブに入れ、120℃、20日の水熱合成を行った。
このときのOH−は、NaOHとTMAOHの両方が水溶液中でイオンの状態であるときの水酸基を意味する。水熱反応後、固形沈殿物を取り出し、純水を用いて吸引濾過にて十分に洗浄した後、固形物のみを採取した。これを60℃、12時間乾燥させて最終生成物を得た。得られた生成物は、白色で、図25の粉末X線回折パターンから示されるように、図24で示されるkenyaiteと同様の結晶が得られた。
このようにして得られたkenyaiteを出発物質に用い、実施例1で示される方法で複数の中間体を調製し、それを焼成することでCDS−Kの調製を試みた。すなわち、kenyaiteから塩酸処理でH−kenyaiteを調製し、それをTMAOHによるインターカレーションを行ってTMA−H−kenyaiteを調製し、更に、それを酢酸処理してCH−TMA−H−kenyaiteを調製し、最後に焼成してCDS−Kへの変換を試みた。
このときの、中間体の調製条件を表54(Run No.1−3)に示す。また、焼成条件は、電気炉を用いて500mL/minの空気を流通させながら加熱処理を600℃、昇温速度1.0℃/minとして昇温後、更に、6時間600℃にて保持した。その結果、図25で示される粉末X線回折パターンから、それぞれの中間体と新規多孔体CDS−Kが不純物を含まない状態で得られた。
(新規ナノ多孔体CDS−Kの製造)
実施例16で用いた不純物フリーなkenyaiteを出発物質に用い、実施例2で示される方法で複数の中間体を調製し、それを焼成することでCDS−Kの調製を試みた。すなわち、kenyaiteにTMAOHによるインターカレーションを行ってTMA−kenyaiteを調製し、それを酢酸処理してCH−TMA−kenyaiteを調製し、最後に焼成してCDS−Kへの変換を試みた。このときの、中間体の調製条件を、表54(Run No.4,5)に示す。焼成条件は、実施例16と同一とした。その結果、図26で示される粉末X線回折パターンから、それぞれの中間体と新規多孔体CDS−Kが不純物を含まない状態で得られた。
以上詳述したように、本発明は、層状珪酸塩を前駆体とする新規高シリカナノ多孔体、その設計方法と製造方法に係るものであり、本発明により、高シリカゼオライト又は高シリカナノ多孔体の新規合成技術であって、層状珪酸塩を用い、そのシリカ骨格を積木細工的に積み上げ、ナノサイズの細孔構造を構築することを可能とする、新しい構造設計方法、その製造方法、及びそれらにより製造される新規な高シリカゼオライト又は高シリカナノ多孔体を提供することを実現することができる。本発明は、上記高シリカゼオライト又は高シリカナノ多孔体の合成技術に関する新技術・新製品を提供するものとして有用である。
層状珪酸塩ileriteから RWR型ゼオライトに至るまでの構造変化を示す図である。(a)Na−ilerite、(b)H−ilerite、(c)TMA−ilerite、(d)H−TMA−ilerite、(e)RWR型ゼオライト。 実施例1におけるNa−ileriteからRWR型ゼオライトに至るまでのそれぞれの粉末XRDパターンを示す図である。 実施例1におけるNa−ilerite、H−ilerite、TMA−ileriteの焼成後の粉末XRDパターンを示す図である。 実施例1におけるNa−ileriteからH−TMA−ileriteに至るまでのそれぞれのTG−DTA曲線を示す図である。 実施例1における層状珪酸塩からゼオライトに至るまでの構造変化を示すSEM像である。(a)Na−ilerite、(b)H−ilerite、(c)TMA−ilerite、(d)H−TMA−ilerite、(e)RWR型ゼオライト。 実施例1におけるNa−ileriteからRWR型ゼオライトに至るまでの29Si−MAS NMRスペクトルを示す図である。 RWR型ゼオライトの窒素ガス吸着等温曲線を示す図である。 RWR型ゼオライトの窒素ガス吸着等温曲線からSF法によって見積もられた細孔分布を示す図である。 構造安定化剤のインターカレーションと酸処理を同時に行ったときのilerite中間体と、それを焼成して得られたRWR型ゼオライトの粉末XRDパターンを示す図(一部を拡大したものも併記)である。 酢酸のみを用いたときのilerite中間体及びそれを焼成して得られたRWR型ゼオライトの粉末XRDパターンを示す図である。 層状珪酸塩magadiite及びkenyaiteのFT−IRスペクトルを示す図である。 層状珪酸塩magadiiteから新規ナノ多孔体CDS−Mに至るまでの構造変化を表す粉末XRDパターンを示す図(一部を拡大したものも併記)である。 層状珪酸塩kenyaiteから新規ナノ多孔体CDS−Mに至るまでの構造変化を表す粉末XRDパターンを示す図(一部を拡大したものも併記)である。 層状珪酸塩magadiite及び新規ナノ多孔体CDS−Mの29Si−MAS NMR測定によるスペクトル図である。 層状珪酸塩kenyaite及び新規ナノ多孔体CDS−Kの29Si−MAS NMR測定によるスペクトル図である。 層状珪酸塩magadiite及び新規ナノ多孔体CDS−Mの窒素ガス吸着等温曲線を示す図(一部を拡大したものも併記)である。 層状珪酸塩kenyaite及び新規ナノ多孔体CDS−Kの窒素ガス吸着等温曲線を示す図である。 層状珪酸塩からゼオライトに至るまでの構造変化を示すSEM像である。(a)magadiite、(b)CDS−M、(c)kenyaite、(d)CDS−K。 構造安定化剤を変えたときのmagadiite中間体と、それを焼成して得られた新規ナノ多孔体CDS−Mの粉末XRDパターンを示す図である。 構造安定化剤を変えたときのkenyaite中間体と、それを焼成して得られた新規ナノ多孔体CDS−Kの粉末XRDパターンを示す図である。 層状珪酸塩ileriteから RWR型ゼオライトを製造するための設計スキームを表す図である。 実施例2におけるNa−ileriteからRWR型ゼオライトに至るまでのそれぞれの粉末XRDパターンを示す図である。 実施例2における層状珪酸塩からゼオライトに至るまでの構造変化を示すSEM像である。(a)Na−ilerite、(b)TMA−ilerite、(c) H−TMA−ilerite、(d)RWR型ゼオライト。 種結晶を用いて短時間で合成したkenyaiteの粉末XRDパターンを示す図(一部を拡大たものも併記)である。 実施例16における不純物フリーのkenyaiteから新規ナノ多孔体CDS−Kに至るまでのそれぞれの粉末XRDパターンを示す図である。 実施例17における不純物フリーのkenyaiteから新規ナノ多孔体CDS−Kに至るまでのそれぞれの粉末XRDパターンを示す図である。

Claims (14)

  1. 層状珪酸塩を用い、その骨格構造を保持したまま、隣り合うシリカシートを規則的に並べる、寄せる、繋げるの三つの要素を組み合わせ操作し、層間に新たな微細孔を形成させることで、合成される高シリカナノ多孔体の構造設計を行う高シリカナノ多孔体の構造設計方法に基いて、
    1)層状珪酸塩の層間への構造安定化を目的とした低有機分子の挿入(インターカレーション)、2)水素結合を伴ったシリカシートの規則的配列化と層間距離の収縮、3)脱水重縮合反応によるシリカシートの架橋、の3つのプロセスによって、層間部分にナノメートルサイズの細孔を形成させることで、合成される高シリカナノ多孔体の構造設計を行い、層状珪酸塩をその基本構造を壊すことなく積木細工的に積み上げることを特徴とする高シリカゼオライトを含む高シリカナノ多孔体の製造方法。
  2. ケイ素5員環を骨格構造内に含む任意の層状珪酸塩を用い、1)イオン交換法によりその層間内へ有機分子を構造安定化剤として挿入(インターカレーション)し、2)酸処理によって層間内を脱水及び層間距離を縮小させると同時に、隣接するシリカシートをその表面に分布するシラノール基に水素結合を伴わせることで規則的に配列させ、3)真空下又は大気圧下での加熱焼成により末端シラノール基を脱水重縮合反応させ、シリカシート同士の架橋により層間部分に新たな細孔を形成させることで、合成される高シリカナノ多孔体の構造設計を行う、請求項1に記載の製造方法。
  3. 層状珪酸塩ilerite(アイレライト)の層間へTMAOH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)をインターカレーションして、表1のX線回折ピークを示す第1中間体(TMA−ilerite)とし、その第1中間体を酸性水溶液で酸処理して、表2のX線回折ピークを示すRWR型ゼオライトの前駆体となる第2中間体(H−TMA−ilerite)とし、その第2中間体を加熱焼成し脱水重縮合反応させてRWR型ゼオライトとする、請求項1に記載の製造方法。
  4. 層状珪酸塩magadiite(マガディアイト)の層間へTMAOHをインターカレーションして、表3のX線回折ピークを示す第1中間体(TMA−magadiite)とし、その第1中間体を酸性水溶液で酸処理して、表4のX線回折ピークを示す第2中間体(H−TMA−magadiite)とし、その第2中間体を加熱焼成し脱水重縮合反応させて、表5のX線回折ピークを示す高シリカナノ多孔体(CDS−M)とする、請求項1に記載の製造方法。
  5. 層状珪酸塩kenyaite(ケニヤイト)の層間へTMAOHをインターカレーションして、表6のX線回折ピークを示す第1中間体(TMA−kenyaite)とし、その第1中間体を酸性水溶液で酸処理して、表7のX線回折ピークを示す第2中間体(H−TMA−kenyaite)とし、その第2中間体を加熱焼成し脱水重縮合反応させて、表8のX線回折ピークを示す高シリカナノ多孔体(CDS−K)とする、請求項1に記載の製造方法。
  6. 層状珪酸塩ilerite、構造安定化剤、酸性水溶液を同時に混ぜ合わせ、酸性条件下でインターカレーションすることで、表9のX線回折ピークを示す中間体とし、それを焼成してRWR型ゼオライトとする、請求項1に記載の製造方法。
  7. 層状珪酸塩magadiite、構造安定化剤、酸性水溶液を同時に混ぜ合わせ、酸性条件下でのインターカレーションすることで、表10のX線回折ピークを示す中間体とし、それを焼成して表11のX線回折ピークを示すナノ多孔体(CDS−M)とする、請求項1に記載の製造方法。
  8. 層状珪酸塩kenyaite、構造安定化剤、酸性水溶液を同時に混ぜ合わせ、酸性条件下でのインターカレーションすることで、表12のX線回折ピークを示す中間体とし、それを焼成して表13のX線回折ピークを示すナノ多孔体(CDS−K)とする、請求項1に記載の製造方法。
  9. 層状珪酸塩ileriteを酸性の構造安定化剤として酢酸水溶液のみと混ぜ合わせ撹拌することで、中間体とし、それを焼成してRWR型ゼオライトとする、請求項1に記載の製造方法。
  10. 層状珪酸塩magadiiteを酸性の構造安定化剤として酢酸水溶液のみと混ぜ合わせ撹拌することで、中間体とし、それを焼成して請求項8の表13のX線回折ピークを示すナノ多孔体(CDS−K)とする、請求項1に記載の製造方法。
  11. 請求項4に記載の製造方法により製造してなる高シリカナノ多孔体であって、層状珪酸塩magadiiteの層間へTMAOHがインターカレーションしてなる、請求項4の表3のX線回折ピークを示す第1中間体(TMA−magadiite)を酸処理してなる、表4のX線回折ピークを示す第2中間体(H−TMA−magadiite)を加熱焼成し脱水重縮合反応させてなる、表5のX線回折ピークを示す高シリカナノ多孔体(CDS−M)である、高シリカナノ多孔体。
  12. 請求項5に記載の製造方法により製造してなる高シリカナノ多孔体であって、層状珪酸塩kenyaiteの層間へTMAOHがインターカレーションしてなる、請求項5の表6のX線回折ピークを示す第1中間体(TMA−kenyaite)を酸処理してなる、表7のX線回折ピークを示す第2中間体(H−TMA−kenyaite)を加熱焼成し脱水重縮合反応させてなる、表8のX線回折ピークを示す高シリカナノ多孔体(CDS−K)である、高シリカナノ多孔体。
  13. ナノ多孔体が、窒素ガス吸着測定においてナノ細孔の存在を示唆する吸着等温曲線を示し、窒素骨格を形成するSi原子とO原子の局所構造がSi(OSi)で表されるQ構造のみで構成される、請求項11に記載の高シリカナノ多孔体(CDS−M)。
  14. ナノ多孔体が、窒素ガス吸着測定においてナノ細孔の存在を示唆する吸着等温曲線を示し、骨格を形成するSi原子とO原子の局所構造がSi(OSi)で表されるQ構造のみで構成される、請求項12に記載の高シリカナノ多孔体(CDS−K)。
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