JP5397135B2 - 多層塗工膜の製造方法 - Google Patents
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Description
このような方法は、水溶系において有効であり、ゼラチンをバインダーとするハロゲン化乳化剤を同時多層塗布し、その後冷却する方法が知られている。この方法は、ゼラチンのゾル−ゲル変換特性を利用して多層膜をゲル化させて超高粘状態にし、層間の混合を起こり難くした上で熱風乾燥等により塗膜(塗工膜)を形成するものである。
しかしながら、この方法においても一定量の界面活性剤を添加するため、上記と同様の課題がある。
しかしながら、この方法では、塗布工程の後、塗布液が拡散混合しないうちに、電子線照射工程を行う必要があり、操作が煩雑であるとともに、おおがかりな装置が必要となるという問題点がある。
[1]複数の塗工液をあらかじめ多層化し、多層化した塗工液を基材上に転移させる工程を有する多層塗工膜の製造方法において、積層しようとする2種の塗工液間に、該2種の塗工液のそれぞれに含まれる被膜形成成分の両方を含み、かつその合計濃度が、前記2種の塗工液の各濃度よりも高い塗工液を中間層として挿入し、多層化することを特徴とする、多層塗工膜の製造方法。
[2]各塗工液に含まれる溶剤が、有機系溶剤である、上記[1]に記載の多層塗工膜の製造方法。
[3]中間層として用いる塗工液における被膜形成成分の濃度が、積層しようとする2種の塗工液における各被膜形成成分の濃度よりも、少なくとも20質量%高い、上記[1]に記載の多層塗工膜の製造方法。
[4]積層しようとする2種の塗工液における各被膜形成成分の濃度が20〜50質量%である、上記[3]に記載の多層塗工膜の製造方法。
[5]複数の塗工液をあらかじめ多層化する際に傾斜したスライド面を使用し、該スライド面の傾斜角度が、水平方向に対して5〜40度である、上記[1]に記載の多層塗工膜の製造方法。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法により得られた多層塗工膜。
[7]複数の塗工液をあらかじめ多層化し、多層化した塗工液を基材上に転移させて多層塗工膜を形成する多層塗工方法において、積層しようとする2種の塗工液間に、該2種の塗工液のそれぞれに含まれる被膜形成成分の両方を含み、かつその合計濃度が、前記2種の塗工液の各濃度よりも高い塗工液を中間層として挿入し、多層化することを特徴とする、多層塗工方法。
上層塗工液A及び下層塗工液Bをあらかじめ多層化する方法に特に制限は無いが、例えば(1)傾斜したスライド面上にて多層化させる方法、(2)水平な平面状にて多層化させる方法、(3)円形シリンダー上にて多層化させる方法、(4)傾斜した放物面上にて多層化させる方法などが挙げられる。これらの中でも、通常、方法(1)が好ましく利用される。
本発明は、膜強度低下等、悪影響を及ぼすと考えられるゲル化剤等を用いずに、積層しようとする2種の塗工液間に、該2種の塗工液A及びBのそれぞれに含まれる被膜形成成分の両方を含み、かつその合計濃度が、前記2種の塗工液の各濃度よりも高い「混合塗工液A/B」を中間層として薄く挿入することで、明確な境界面は形成されないものの、全体としては、同時多層塗工膜の形成を可能にしたものである。
この場合、複数の各塗工液に含まれる溶剤としては、有機系溶剤であることが、本発明の効果の点から、好ましい。
また、積層しようとする2種の塗工液A及びBにおける被膜形成成分の濃度は、多層塗工膜形成性及び生産性などのバランスの観点から、通常20〜50質量%程度、好ましくは25〜45質量%である。
また、中間層として用いる混合塗工液A/Bの溶剤は、塗工液A又はBと同じものであってもよいし、異なるものであってもよく、あるいは塗工液A及びBの溶剤が異なる場合は、両方の溶剤の混合物を用いてもよい。
なお、前記被膜形成成分については後述する。
前記の各塗工液には、被膜形成成分以外に、必要に応じ、各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤などを含有させることができる。
本発明は、ゲル化剤等による粘度調整を利用したものではなく、本来であれば混合してしまう2種の塗工液の被膜形成成分を予め高濃度で混合した塗工液を用意し、2種の塗工液間に中間層として挿入することで、大幅な混合防止効果を得たものである。
本発明においては、前記中間層は、ごく薄い膜厚で挿入されることが好ましい。厚く挿入した場合は、濃度勾配がつきにくく、単純に2種の塗工液が未処理で積層された場合と同様に混合してしまうことが懸念される。該中間層は、ウェット膜厚として、1μm〜100μmで挿入することが好ましく、5μm〜80μmで挿入することがより好ましく、10μm〜50μmで挿入することがさらに好ましい。
本発明において、各塗工液に用いられる被膜形成成分としては、所望の被膜を形成し得るものであればよく、特に制限されず、得られる多層塗工膜の用途に応じて適宜選択される。例えばポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、変性アクリル系樹脂、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは数万〜数百万であり、より好ましくは3万〜50万である。
また、本発明においては、塗工液の被膜形成成分として活性エネルギー線硬化型化合物を用いることもできる。
ここで、ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量(例えば5000未満)のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応させてエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオールアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
上記オリゴマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法で測定した標準ポリスチレン換算の値で、好ましくは500〜100,000、より好ましくは1,000〜70,000、さらに好ましくは3,000〜40,000の範囲で選定される。
このオリゴマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記塗工液を塗布する基材に特に制限はなく、多層塗工膜を有する部材の用途によって適宜選択することができる。特に本発明に係る多層塗工膜を光学用部材に用いる場合、光学用フィルムの基材として、公知のプラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等を挙げることができる。
これらの基材の厚さに特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常、15〜250μm、好ましくは30〜200μmの範囲である。また、この基材は、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法等により表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性等の面から、好ましく用いられる。
本発明においては、前述の通り、複数の塗工液をあらかじめ多層化し、多層化した塗工液を基材上に転移させる方法が採られる。
多層化する際に傾斜したスライド面を利用する場合、塗工液を流動させるための、傾斜したスライド面を有するものとしては、例えば図1に示すようなスライドコーターが好ましく挙げられる。なお、本発明においては、スライド面2上の塗工液A及びB用スリット間に、混合塗工液A/B用のスリットを設ける。
スライド面の傾斜角度は、水平方向に対して5〜40度が好ましく、10〜35度がより好ましく、15〜35度がさらに好ましい。また、スライド面上への塗工液の吐出口の中心と、隣り合う塗工液の吐出口の中心との距離は、8〜30cmが好ましく、10〜28cmがより好ましく、12〜26cmがさらに好ましい。さらに、複数のスライド面上への塗工液の吐出口の内、塗工液を基材へ転移する部位に最も近い吐出口の中心と、基材との距離は、2〜14cmが好ましく、3〜12cmがより好ましく、4〜11cmがさらに好ましい。特に、このように設計されたスライドコーターを使用した場合に、本発明の効果が顕著に現れる傾向にある。
以下に、図1のスライドコーターを参照して、塗工液を多層化する方法の一例を詳細に説明する。
塗布ヘッド1における3つのスリット状の吐出口から、それぞれ塗工液A、混合塗工液A/B及び塗工液Bを押し出し、傾斜したスライド面2上を重力の作用により自然流下させ、塗工液A及びBを混合塗工液A/Bを介して多層化する。多層化した塗工液(塗工膜)は、ロール3によって走行する基材4上に転移させる。
一方、塗工液中の被膜形成成分が、前述した活性エネルギー線硬化型化合物である場合には、前記のように加熱、乾燥させたのち、活性エネルギー線を照射して、硬化処理を行い、多層塗工膜を形成する。活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線等が挙げられる。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ、キセノンランプ等で得られる。一方、電子線は、電子線加速器等によって得られる。この活性エネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、光重合開始剤を添加することなく、硬化膜を得ることができる。
活性エネルギー線が紫外線の場合、その光量は、50〜200mJ/cm2程度であることが好ましい。
このようにして形成された多層塗工膜の厚さは、通常、0.1μm〜10μm程度、好ましくは1μm〜5μmであり、各塗工液からなる層が分離している。
この層分離構造は、例えばスラブ型光導波路分光法を利用した界面紫外可視分光測定装置を用いて確認することができる。また、断面の走査型電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡によっても確認することができる。
本発明においては、ゲル化剤などの添加剤は用いないため、添加剤による悪影響を排除できるほか、コストダウンにも効果的である。
ポリメチルメタクリレート(関東化学(株)製)42g、溶剤としてメチルイソブチルケトン(関東化学(株)製)58g、及び識別用着色剤「ソルベントレッド24」(関東化学(株)製)0.5gを室温で混合及び攪拌し、塗工液1(ポリメチルメタクリレートの濃度:41.8質量%)を得た。
ポリカーボネート(ACROS社製)38g、溶剤としてトルエン(関東化学(株)製)52g、及び識別用着色剤「ソルベントブルー63」(関東化学(株)製)0.5gを室温で混合及び攪拌し、塗工液2(ポリカーボネートの濃度:42.0質量%)を得た。
ポリメチルメタクリレート(関東化学(株)製)50g、ポリカーボネート(ACROS社製)50g、溶剤としてメチルイソブチルケトン80gを室温で混合及び攪拌し、塗工液3(ポリメチルメタクリレート及びポリカーボネートの合計濃度:55.6質量%)を得た。
下層塗工液として製造例1で製造した塗工液1を用い、上層塗工液として製造例2で製造した塗工液2を用い、また、中間層として製造例3で製造した塗工液3を用い、図1に示すような装置(ただし、スライド面2上に、さらに混合塗工液A/B用のスリットを有する装置を使用。スライド面の傾斜角度;水平方向に対して25度、隣り合う吐出口の距離;8cm、塗工液を基材へ転位する部位に最も近い吐出口の中心と基材との距離;10cm)を用いて、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム「コスモシャインA4100」(東洋紡績(株)製)上に塗工した。塗工後、70℃のオーブン中で2分間乾燥させ、塗膜を硬化させた。
該塗膜の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、識別用着色剤を加えた、上層と下層の2層の塗膜において、識別用着色剤の大幅な混合は見られず、良好な多層塗工膜の形成が確認できた。該塗膜断面のSEM写真図を図2に示す。
実施例1において、中間層を挿入しなかったこと以外は同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗膜を形成した。該塗膜断面をSEMで観察したところ識別用着色剤が混合して、界面が確保されず、積層構造の形成は確認できなかった。
2:スライド面
3:ロール
4:基材
A:上層塗工液
B:下層塗工液
Claims (8)
- 複数の塗工液をあらかじめ多層化し、多層化した塗工液を基材上に転移させる工程を有する多層塗工膜の製造方法において、複数の塗工液に含まれる溶剤が有機系溶剤であって、
積層しようとする2種の塗工液間に、該2種の塗工液のそれぞれに含まれる被膜形成成分の両方を含み、かつその合計濃度が、前記2種の塗工液の各濃度よりも高い塗工液を中間層として挿入し、多層化することを特徴とする、多層塗工膜の製造方法。 - 中間層として用いる塗工液における被膜形成成分の濃度が、積層しようとする2種の塗工液における各被膜形成成分の濃度よりも、少なくとも20質量%高い、請求項1に記載の多層塗工膜の製造方法。
- 積層しようとする2種の塗工液における各被膜形成成分の濃度が20〜50質量%である、請求項2に記載の多層塗工膜の製造方法。
- 複数の塗工液をあらかじめ多層化する際に傾斜したスライド面を使用し、該スライド面の傾斜角度が、水平方向に対して5〜40度である、請求項1〜3のいずれかに記載の多層塗工膜の製造方法。
- 前記有機系溶剤が、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール及びヘキサンから選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の多層塗工膜の製造方法。
- 被膜形成成分が、ポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、変性アクリル系樹脂及びポリカーボネートから選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂であるか、又は活性エネルギー線硬化型化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の多層塗工膜の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られた多層塗工膜。
- 複数の塗工液をあらかじめ多層化し、多層化した塗工液を基材上に転移させて多層塗工膜を形成する多層塗工方法において、複数の塗工液に含まれる溶剤が有機系溶剤であって、
積層しようとする2種の塗工液間に、該2種の塗工液のそれぞれに含まれる被膜形成成分の両方を含み、かつその合計濃度が、前記2種の塗工液の各濃度よりも高い塗工液を中間層として挿入し、多層化することを特徴とする、多層塗工方法。
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