JP5396764B2 - 液晶ポリエステル粒子及びその成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、液晶ポリエステル粒子及びその樹脂組成物、並びにこれらから得られる成形体に関する。
液晶ポリエステルは耐熱性、機械特性あるいは成形加工性に優れるという特性から、高度のエンジニアリング材料として期待されている。また、材料のさらなる高機能化要求に呼応し、液晶ポリエステルに充填剤を充填して成形することにより、種々の機能材料(成形体)を得ることも検討されている。液晶ポリエステルと充填剤とを含む樹脂組成物から成形体を得る方法としては、一旦液晶ポリエステルと充填剤とを含む組成物ペレットを作製し、該組成物ペレットを射出成形で成形するという方法が広範に用いられている。しかしながら、このような射出成形は複雑形状の成形体を作製しやすい反面、比較的大型の成形体(以下、「大型成形体」と呼ぶことがある)を製造しにくいという問題があった。
かかる問題の改善策として、特定の流動開始温度及び平均粒径の液晶ポリエステル微粉末を用い、この液晶ポリエステル微粉末に充填剤を混合した樹脂組成物をプレス成形して成形体を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2008−75063号公報
特許文献1に開示されている成形体は、その形状が比較的大型であっても、成形体中にある充填剤の分散性が良好であるという好適な効果を発現する。しかしながら、このような大型成形体、特に大型成形板においては、その厚み精度が低くなる傾向があるため、充填剤の分散性の向上には限界があった。
かかる状況下、本発明の目的は、大型成形体、特に大型の成形板を製造する際、厚み精度に優れた成形板を得ることができる液晶ポリエステル粒子、該液晶ポリエステル粒子と充填剤とを含む液晶ポリエステル樹脂組成物及びこれらを用いてなる成形体を提供するものである。
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の<1>を提供するものである。
<1>液晶ポリエステルからなる不定形粒子を高速気流中衝撃法で球形化してなる、改質液晶ポリエステル粒子。
ここで、球形化処理を行う前の液晶ポリエステルからなる不定形粒子(以下、「液晶ポリエステル粒子」という)とは通常、重縮合等で得られる塊状の液晶ポリエステルを機械粉砕して得られるものであり、本発明に使用する好適な液晶ポリエステル粒子に関しては後述する。
さらに、本発明は上記<1>に係る好適な実施態様として、以下の<2>〜<5>を提供する。
<2>体積平均粒径が0.5〜50μmの範囲である、<1>の改質液晶ポリエステル粒子。
<3>安息角が48°以下である、<1>又は<2>の改質液晶ポリエステル粒子。
<4>前記液晶ポリエステルが、流動開始温度が280℃以上の液晶ポリエステルである、<1>〜<3>のいずれかの改質液晶ポリエステル粒子。
<5><1>〜<4>のいずれかの改質液晶ポリエステル粒子と、充填剤とを含んでなり、改質液晶ポリエステル粒子と充填剤の合計量に対して、充填剤が20容量%以上である液晶ポリエステル樹脂組成物。
また、本発明は上記改質液晶ポリエステル粒子又は上記液晶ポリエステル樹脂組成物に係る、以下の<6>及び<7>を提供する。
<6><1>〜<4>のいずれかの改質液晶ポリエステル粒子又は<5>の液晶ポリエステル樹脂組成物をプレス成形することにより得られる成形体。
<7><6>の成形体に導体回路層を形成してなる回路基板。
さらに、本発明は上記改質液晶ポリエステル粒子の製造方法として、<8>、<9>を提供する。
<8>液晶ポリエステルからなる不定形粒子を高速気流中衝撃法で球形化する、改質液晶ポリエステル粒子の製造方法。
<9>前記液晶ポリエステルからなる不定形粒子が安息角48°を越える粒子であり、球形化後の改質液晶ポリエステル粒子が安息角48°以下の粒子である、<8>の改質液晶ポリエステル粒子の製造方法。
本発明の改質液晶ポリエステル粒子は充填剤を併用して、大型の成形板を得た場合、厚み精度が極めて良好な成形板を得ることができる。このような成形板は、成形板中にある充填剤の分散性が極めて良好なものであり、充填剤の偏分散による特性バラツキが抑制されたものとなる。このような成形板は、電気・電子部品の製造用材料、特に回路基板の製造用材料として好適に用いることができるため、工業的に極めて有用である。
本発明の改質液晶ポリエステル粒子(以下、「改質液晶ポリエステル粒子」という)は、液晶ポリエステル粒子を高速気流中衝撃法で球形化してなることを特徴とする。
まず、改質液晶ポリエステル粒子の製造用として使用する液晶ポリエステルからなる不定形粒子に関し、好適な実施態様を説明する。
<液晶ポリエステル粒子>
液晶ポリエステル粒子を構成する液晶ポリエステルは、光学的異方性を有する溶融相を形成する(液晶特性を示すもの)ポリエステルであり、好ましくは、芳香環がエステル結合(−CO−O−又は−O−CO−)により連結してなる全芳香族ポリエステルである。また、該全芳香族ポリエステルのエステル結合の一部がアミド結合(−CO−NH−又は−NH−CO−)に置き換わった全芳香族ポリ(エステル−アミド)も本発明に適用する液晶ポリエステルとして使用することができる。このような全芳香族ポリエステル又は全芳香族ポリ(エステル−アミド)は、得られる成形体(成形板)の機械強度や耐熱性をより良好とする点で好ましい。
好適な液晶ポリエステルとしては、例えば、
(I)芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位、芳香族ジカルボン酸由来の構造単位および芳香族ジオール由来の構造単位の組み合わせからなるもの
(II)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位からなるもの
(III)芳香族ジカルボン酸由来の構造単位と芳香族ジオール由来の構造単位との組み合わせからなるもの
(IV)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させたもの
(V)(I)の芳香族ジオール由来の構造単位の一部または全部を、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位及び/又は芳香族ジアミン由来の構造単位に置き換えたもの
(VI)(I)又は(V)の芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位の一部を、芳香族アミノカルボン酸由来の構造単位に置き換えたもの
等が挙げられる。
なお、液晶ポリエステルを製造する際には、上記構造単位を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ジアミン及びフェノール性水酸基を有する芳香族アミンは、そのエステル形成性誘導体やアミド形成性誘導体にしてから使用してもよい。
芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、パラヒドロキシ安息香酸、メタヒドロキシ安息香酸、2―ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2―ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、1―ヒドロキシ−4−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−4’−カルボキシジフェニルエーテル、2,6−ジクロロ−パラヒドロキシ安息香酸、2−クロロ−パラヒドロキシ安息香酸、2,6−ジフルオロ−パラヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−4’−ビフェニルカルボン酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。
芳香族ジオールとしては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン、アセトキシハイドロキノン、ニトロハイドロキノン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2―ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2―ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2―ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2―ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2―ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、1,5―ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルケトン−4,4’−ジカルボン酸、2,2’―ジフェニルプロパン−4,4’−ジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族アミノカルボン酸の例示としてはパラアミノ安息香酸、メタアミノ安息香酸、2―アミノ−6−ナフトエ酸、2―アミノ−3−ナフトエ酸、1―アミノ−4−ナフトエ酸、2−クロロ−パラアミノ安息香酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンの例示としてはp−アミノフェノール、3−アミノフェノール、p−N−メチルアミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェノール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ジアミン由来の例示としては1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の例示の中で、より耐熱性に優れる成形体が得られる点と経済性の点からは、芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、パラヒドロキシ安息香酸及び/又は2―ヒドロキシ−6−ナフトエ酸が好ましく、芳香族ジオールとしては、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン及び2,6−ジヒドロキシナフタレンからなる群から選ばれる1種又は2種以上の芳香族ジオールが好ましく、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸及び2,6―ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上の芳香族ジカルボン酸が好ましく、芳香族アミノカルボン酸としては、パラアミノ安息香酸及び/又は2―アミノ−6−ナフトエ酸が好ましい。
とりわけ好ましい液晶ポリエステルとしては、
(1)パラヒドロキシ安息香酸由来の構造単位と、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位と、テレフタル酸由来の構造単位と、イソフタル酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル
(2)パラヒドロキシ安息香酸由来の構造単位と、ハイドロキノン由来の構造単位と、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位と、テレフタル酸由来の構造単位と、2,6―ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル
(3)パラヒドロキシ安息香酸由来の構造単位と、ハイドロキノン由来の構造単位と、テレフタル酸由来の構造単位と、2,6―ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル
(4)2―ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位と、パラヒドロキシ安息香酸由来の構造単位と、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位と、テレフタル酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル
(5)2―ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位と、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位と、2,6―ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステルマー
(6)2―ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位と、ハイドロキノン由来の構造単位と、テレフタル酸由来の構造単位と、2,6―ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル
(7)2―ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位と、2,6−ジヒドロキシナフタレン由来の構造単位と、2,6―ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル
(8)2―ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位と、2,6−ジヒドロキシナフタレン由来の構造単位と、テレフタル酸由来の構造単位と、2,6―ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル
(9)パラヒドロキシ安息香酸由来の構造単位及び2―ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位からなる全芳香族液晶ポリエステル
を挙げることができる。
上記に例示した全芳香族液晶ポリエステルにおいて、後述するプレス成形に係る加工性が良好であるといった観点から、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位を、該全芳香族液晶ポリエステルを構成する構造単位の合計に対して、30〜70モル%の範囲で含むことが好ましい。より好ましくは40〜65モル%であり、特に好ましくは50〜60モル%である。
次に、液晶ポリエステルの製造方法について説明する。
まず、上記構造単位を誘導する化合物のエステル形成性誘導体、アミド形成性誘導体について説明する。
かかる化合物がカルボキシル基を有するものである場合、そのエステル形成性・アミド形成性誘導体とは、例えば、該カルボキシル基が、エステル生成反応又はアミド生成反応を促進するような、酸塩化物、酸無水物となっているもの、該カルボキシル基が、エステル交換・アミド交換反応によりポリエステル又はポリアミドを生成するように、アルコール類やエチレングリコール等とエステルを形成しているものを挙げることができる。また、フェノール性水酸基を有する化合物のエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、例えば、エステル交換・アミド交換反応により、ポリエステル又はポリアミドを生成するように、フェノール性水酸基が、カルボン酸類とエステルを形成しているものを挙げることができる。またアミノ基を有する化合物のエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、例えば、エステル交換・アミド交換反応によりポリエステル又はポリアミドを生成するように、アミノ基が、カルボン酸類とアミドを形成しているものが挙げられる。
芳香族ジオール由来の構造単位及び芳香族ジアミンと、芳香族ジカルボン酸由来の構造単位とは、上記の芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位及び芳香族アミノカルボン酸由来の構造単位との共重合比により液晶性を発現させる構造単位であるが、これらの構造単位における共重合モル分率は、[芳香族ジオール由来の構造単位及び芳香族ジアミン由来の構造単位の合計]/[芳香族ジカルボン酸由来の構造単位]で表して、85/100〜100/85の範囲が好適である。
上記液晶ポリエステルの製造方法は公知の手段が適用できるが、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ジアミン及びフェノール性水酸基を有する芳香族アミンから選ばれる、アミノ基あるいはフェノール性水酸基を有する化合物を脂肪酸無水物でアシル化してアシル化物を得、該アシル化物のアシル基とカルボキシル基を有する化合物のカルボキシル基とが、エステル交換するかアミド交換するようにしてポリエステルを製造する方法が好適である。
使用される脂肪酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸等の低級脂肪酸無水物が挙げられるが、経済性及び取扱い性の観点からは無水酢酸が好ましい。フェノール性水酸基及びアミノ基をアシル化する際の脂肪酸無水物の使用量は、フェノール性水酸基とアミノ基の合計当量に対して1.05〜1.1倍当量であることが好ましい。アシル化反応は、130〜180℃で30分〜20時間反応させることが好ましく、140〜160℃で1〜5時間反応させることがより好ましい。エステル交換・アミド交換による重縮合反応は、130〜400℃の範囲で0.1〜50℃/分の割合で昇温させながら反応させることが好ましく、150〜350℃の範囲で0.3〜5℃/分の割合で昇温させながら反応させることがより好ましい。
重縮合反応後の液晶ポリエステルは、その流動開始温度を200〜270℃とすることが好ましい。重縮合反応後の液晶ポリエステルの流動開始温度をこのような範囲にすると、重縮合反応後に反応釜から液晶ポリエステルを抜出する際の作業性が良好となる。なお、流動開始温度とは、内径1mm、長さ10mmのダイスを取付けた毛細管型レオメーターを用い、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下において昇温速度4℃/分で液晶ポリエステルをノズルから押出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポイズ)を示す温度であり、当該分野で周知の液晶ポリエステルの分子量を表す指標である(例えば、小出直之編、「液晶性ポリマー合成・成形・応用−」、95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。上記の製造方法においては、エステル交換・アミド交換による重縮合反応の条件をコントロールすることで、好適な流動開始温度の液晶ポリエステルを得ることができる。
このようにして得られた液晶ポリエステルは通常塊状であり、この塊状の液晶ポリエステルを、上記高速気流中衝撃法で処理する前に、不定形の粒子(液晶ポリエステル粒子)とする。具体的には、先に本発明者らが、特開2003−268121号公報で提案した方法に準拠して粒子化し、液晶ポリエステル粒子を製造することができる。この公報に開示した方法のように、まず重縮合後の塊状の液晶ポリエステルを粗粉砕して、体積平均粒径0.5〜5mm程度の粗粒子とした後、当該粗粒子を微粉砕して、体積平均粒径0.5〜50μm程度の液晶ポリエステル粒子とする。この粗粉砕と微粉砕の2段階の機械粉砕を経て得られる液晶ポリエステル粒子は通常、不定形の粒子となっている。
なお、粗粉砕後の粗粒子の体積平均粒径は、後述する微粉砕後の液晶ポリエステル粒子の平均粒径測定と同じようにしてレーザー回折式粒度分布計を用いて測定してもよいし、篩いを用いた平均粒径測定により求めてもよい。
微粉砕後の液晶ポリエステル粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計を用い、水を測定溶媒として求められるものである。また、レーザー回折式粒度分布計に用いる測定溶媒(水)に適当な分散剤を添加してもよい。
粗粉砕の方法としては、例えば、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、粗砕カッター等を用いる方法が挙げられる。
また、微粉砕の方法としては、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、パンミル、ローラミル、インパクトミル、円盤形ミル、攪拌摩砕ミル、流体エネルギーミル、ジェットミル等を用いる方法が挙げられる。粗粉砕、微粉砕の粉砕条件は上述の好適な平均粒径の粒子が得られるようにして、用いる粉砕機の種類により適宜最適化されるが、湿式粉砕では液晶ポリエステルが加水分解するおそれがあるため、乾式で粉砕を行うことが好ましい。
なお、粗粉砕においては、上述のように平均粒径0.5〜5mm程度まで粉砕を行うが、かかる平均粒径の粗粒子とするのは、次工程の微粉砕の取扱い性を良好にするためであり、微粉砕に使用する粉砕機に容易に搬送できる程度の平均粒径を目安とすればよい。微粉砕は、例えば、ジエット粉砕機を使用する場合には、ノズル圧を0.5〜1MPaにし、0.5kg/Hr以上の処理速度で行うことが生産性の観点から好ましい。また、粗粉砕及び微粉砕に係る処理温度は25℃程度の室温で行うと、粉砕処理の作業性が良好となるので好ましい。
上記のようにして得られる体積平均粒径0.5〜50μmである液晶ポリエステル粒子は、さらに熱処理を行うことで、熱処理前の液晶ポリエステル粒子よりも高い流動開始温度にすることができる。熱処理の方法としては、例えば、ビフェニルとジフェニルエーテルの混合物やジフェニルスルホンなどの高沸点溶媒中で、該微粉砕品を150〜350℃の温度で攪拌した後、使用した高沸点溶媒を除去する方法、不活性気体雰囲気下又は減圧下に、150〜350℃の温度で1〜20時間熱処理する方法等が挙げられる。熱処理の温度が150℃未満では、流動開始温度の向上効果が低下する傾向があり、350℃を超える温度で熱処理すると、液晶ポリエステル自体の分解反応が生じる場合がある。該不活性気体としては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス等が挙げられる。また、熱処理に使用する装置としては、例えば、乾燥機、反応機、イナートオーブン、電気炉等が挙げられる。
ここで、微粉砕後の液晶ポリエステル粒子を熱処理する際、熱処理の昇温速度や処理温度は、液晶ポリエステル粒子同士が融着しないように適宜最適化することが好ましい。融着が起こると、流動開始温度の向上が妨げられる傾向がある。ただし、熱処理後により融着が生じ粒径が大きくなった場合においても、再度、解砕処理等を行って、その平均粒径を熱処理前と同程度に戻すこともできる。解砕処理としても機械粉砕が好ましく、微粉砕の場合で例示したものと同じ粉砕機が使用可能である。なお、熱処理の雰囲気としては、不活性気体雰囲気又は減圧雰囲気が好ましく、不活性気体の例示は上記と同じである。
上記の粉砕(粗粉砕及び微粉砕)と熱処理との組合わせによる液晶ポリエステル粒子の製造方法においては、まず体積平均粒径0.5〜50μmの液晶ポリエステル粒子を得てから、該液晶ポリエステル粒子を熱処理する方法について説明したが、まず、塊状の液晶ポリエステルを粗粉砕して粗粒子を得、かかる粗粒子を熱処理して液晶ポリエステルの流動開始温度を向上せしめてから、微粉砕して所望の体積平均粒径の液晶ポリエステル粒子としてもよい。この場合においても、熱処理に係る条件及び微粉砕に係る条件は上記と同じ方法を適用することができる。
上記液晶ポリエステル粒子の体積平均粒径は、上記のとおり0.5〜50μm程度であるが、より好ましくは1〜40μmであり、さらに好ましくは3〜30μmである。液晶ポリエステル粒子の体積平均粒径がこのような範囲であると、後の高速気流中衝撃法による球形化処理で得られる改質液晶ポリエステル粒子の体積平均粒径が、球形化処理前の液晶ポリエステル粒子の体積平均粒径に比して著しく変化しないという利点がある。
<高速気流中衝撃法による球形化>
上記のようにして得られた液晶ポリエステル粒子は、機械粉砕により不定形粒子となっている。このような不定形の液晶ポリエステル粒子は高速気流中衝撃法により球形化される。
かかる高速気流中衝撃法による球形化処理は例えば、奈良機械製作所(株)製ハイブリダイゼーションシステム(NHS−1型)を用いることにより実施できる。このシステムは樹脂の塑性変形性を利用し、衝撃打撃力で不定形粒子を球形状にすることが可能である。
図1は、このハイブリダイゼーションシステムの構成を模式的に表す断面図である。ハイブリダイゼーションシステムは、リング状空間からなる衝撃室(リング状衝撃室)中で微小粒子材料に回転衝撃を与えて、該微小粒子材料を球形化するものであり、当該システムは試料投入口1、排出口2(排出弁2a)、ステーター3、循環回路4、高速回転するロータ5、ブレード6から構成されている。そして、ステーター3には熱媒又は冷媒を循環できるジャケット7を備えている。
液晶ポリエステル粒子は、試料投入口1からリング状衝撃室に供給される。するとロータ5の回転によりリング状衝撃室中の液晶ポリエステル粒子は、高速で衝撃室内を回転しながら飛散し、その間、ステーター3の表面とブレード6に衝突する。衝突した液晶ポリエステル粒子は衝突室に開口している循環回路4の一端口からその管内に入り循環した後、他端口から再び衝突室内に導入される。このようにして、回転衝突はロータ5の回転にしたがって多数回続けられ、所望の球形状となるまで続行される。
かかる高速気流中衝撃法により、当初不定形であった液晶ポリエステル粒子は球形化され、改質された液晶ポリエステル粒子(改質液晶ポリエステル粒子)が形成される。そして、得られた改質液晶ポリエステル粒子は排出口2から衝撃室外に排出される。
このようにして得られる改質液晶ポリエステル粒子は、球形化によって、その安息角が小さくなる。ここで、安息角とは粒子の球形化の度合いを表す指標であり、本発明では粉体計測機(ホソカワミクロン社製、商品名「パウダーテスターPT−E」)を用い、この装置のスタンドに、サンプルロートを乗せ、さらに目開き250μmの標準篩を重ね、固定後、振動させ、サンプルロートを通じ、直径8cmの円形テーブル上に改質液晶ポリエステル粒子を落下させ、改質液晶ポリエステル粒子の山を形成させた後、この山の稜線が明瞭になる程度に振動させる。その後、山の稜線と水平線との角度をレーザー光によって求め、この角度を安息角とする。
機械粉砕(粗粉砕及び微粉砕)により得られる液晶ポリエステル粒子は、その安息角は48°を越えるものであり、その安息角は50°以上となることもある。本発明の改質液晶ポリエステル粒子は、このような液晶ポリエステル粒子を、安息角が48°以下になるまで球形化処理を行って製造することが好ましい。このようにすると、当該改質液晶ポリエステルと充填剤とからなる液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて成形板を得たとき、該成形板は厚み精度が極めて良好なものとなり、充填剤の分散性が良好で特性バラツキを抑制することができる。安息角は小さければ小さいほど厚み精度の向上に寄与するので、改質液晶ポリエステル粒子は、その安息角が47°以下であると、さらに好ましい。
また、本発明の改質液晶ポリエステル粒子は、その体積平均粒径が0.5〜50μmであることが好ましく、球形化処理前の液晶ポリエステル粒子の体積平均粒径と実質的に変化しないようにして、球形化処理を行うことが好ましい。そのため、上記したように体積平均粒径0.5〜50μmの液晶ポリエステル粒子を用いることが好ましく、高速気流中衝撃法の球形化処理の条件においても、処理量(衝撃室内濃度)、ロータ5の周速(回転数)及び処理時間を適宜最適化することが重要である。上記の奈良機械製作所(株)製ハイブリダイゼーションシステム(NHS−1型)を用いた場合を例にとると、1回の処理量は50〜250gであることが好ましく、100〜200gであると特に好ましい。ロータ5の周速は50〜150m/sであると好ましく、75〜125m/sであると特に好ましい。処理時間は1〜120分であると好ましく、3〜90分であると特に好ましい。また、処理温度は20〜80℃が好ましく、30〜60℃が特に好ましい。処理温度は、ステーター3の周部に設けられたジャケットに適当な熱媒又は冷媒を循環させることで調整可能である。このような処理条件を適宜変更した予備実験を行うことで、所望の安息角の改質液晶ポリエステル粒子を得ることができる。
<液晶ポリエステル樹脂組成物>
次に、上記改質液晶ポリエステル粒子と充填剤とを用いてなる液晶ポリエステル樹脂組成物について説明する。
該充填剤の使用量は、目的とする用途にもよるが、改質液晶ポリエステル粒子と充填剤の合計量に対して、充填剤が20容量%以上であると好ましく、充填剤が25容量%以上であるとさらに好ましい。また、大型成形体を製造する際の成形性、特に成形板をプレス成形で製造する際の成形性を良好にする観点から、充填剤は改質液晶ポリエステル粒子と充填剤の合計量に対して、40容量%以下であると好ましい。
かかる充填剤としては、無機充填剤、有機充填剤ともに使用可能であり、その形状も繊維状、粒子状、板状のいずれでもよい。
繊維状充填剤としてはガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、炭素繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸炭素繊維、ウォラストナイトの如き珪酸塩の繊維、硫酸マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属からなる繊維状物等の無機質繊維状物質が挙げられる。
一方、粒子状充填剤としてはカーボンブラック、黒鉛、シリカ、ポーラスシリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土、ウォラストナイトの如き硅酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、誘電体セラミック粉末、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル酸化物、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化珪素、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等のフェライト、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、鉄、ニッケル等の各種金属粉末及びそれらの金属を含有する合金粉末、等が挙げられる。
また、板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、タルク、板状アルミナ、各種の金属箔等が挙げられる。
有機充填剤の例を示せば芳香族ポリエステル繊維、液晶性ポリマー繊維、芳香族ポリアミド、ポリイミド繊維等の耐熱性高強度合成繊維である。また、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質も使用することができる。
これらの無機充填剤及び有機充填剤は1種を使用してもよく、2種以上を併用することもできる。
なお、前記に例示した充填剤において、改質液晶ポリエステル粒子との混合性を向上させる観点から、該充填剤の体積平均粒径も0.5〜50μm程度が好ましく、1〜40μmがより好ましい。
本発明においては、かかる充填剤により各種の機能を大型成形体に付与することができ、該充填剤は目的とする機能によって選択される。
例えば、成形体に機械強度を付与する目的では、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、ホウ酸アルミニウム繊維等の繊維状充填剤やマイカ、ガラスフレーク、タルク、板状アルミナ等の板状充填剤が挙げられ、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、タルクがより好ましい。
成形体に磁性を付与する目的では、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等のフェライト、鉄、ニッケル等の各種金属粉末及びそれらの合金粉末、が挙げられ、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、鉄、ニッケル等の各種金属粉末及びそれらの金属を含有する合金粉末がより好ましい。
成形体に熱伝導性を付与する目的では、上記例示の中でもアルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、窒化珪素、酸化珪素、炭化硅素、窒化硼素、金属粉末又は金属の酸化物を用いることができる。
また、成形体に誘電特性を付与する目的では、高誘電材料又は低誘電材料からなる充填剤(以下、これらを総じて「誘電性充填剤」と呼ぶこともある)を用いればよく、高誘電材料からなる充填剤としては、上記例示の中でも、比誘電率100以上の誘電体セラミック粉末、より具体的には、チタン、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、カリウム、カルシウム、ジルコニウム、スズ、ネオジム、ビスマス、サマリウム、リチウム、タンタルからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属を含む誘電体セラミック粉末が挙げられる。
一方、低誘電材料からなる充填剤としては、いわゆる中空体からなる充填剤や低誘電樹脂であるフッ素樹脂からなる充填剤が挙げられる。
上記改質液晶ポリエステル粒子は、耐熱性及び機械的特性の観点から、流動開始温度は280℃以上であることが好ましく、さらに290℃〜420℃であることがより好ましい。流動開始温度が280℃より低いと、得られる成形体がアウトガスを生じやすくなるといった問題点に加え、該成形体がはんだリフロー等の熱処理プロセスに曝露される場合に膨れ等が生じる傾向があり、好ましくない。また流動開始温度が420℃を超えると、該成形体の機械強度が低下する傾向がある。このような改質液晶ポリエステル粒子を得るには、粗粉砕前、微粉砕前若しくは高速気流中衝撃法による球形化処理の前の液晶ポリエステル又は液晶ポリエステル粒子に固相重合を行うこともできる。
<成形体の製造>
本発明の改質液晶ポリエステル粒子は充填剤を使用しないで、成形体を得ることもできるが、改質液晶ポリエステル粒子と充填剤とを含む液晶ポリエステル樹脂組成物を用いたプレス成形が、得られる成形体中にある充填剤の分散性を良好にするという好適な効果を奏する。ここでは、この液晶ポリエステル樹脂組成物をプレス成形して得られる成形体について詳述する。なお、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物には、含有される充填剤に係る所望の効果を損なわない範囲であれば、充填剤以外の添加剤を混合することも可能である。かかる添加剤としては、液晶ポリエステル以外の樹脂を混合することもできるし、公知のカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤等を混合することもできる。
次に、プレス成形の成形条件について説明する。プレス成形時の加工温度(Tp)は液晶ポリエステル樹脂組成物の流動開始温度、すなわち該液晶ポリエステル樹脂組成物に含まれる改質液晶ポリエステル粒子を構成する液晶ポリエステルの流動開始温度に対し、以下の関係を満たすようにすることが好ましい。
(流動開始温度−10)[℃] ≦ Tp ≦ (流動開始温度+100)[℃]
加工温度(Tp)が(流動開始温度−10)[℃]より低い場合には、液晶ポリエステル樹脂組成物が溶融し難くなって、十分な強度を有する成形体を得ることが困難になる傾向がある。また加工温度(Tp)が(流動開始温度+100)[℃]より高い場合は、液晶ポリエステル自体が熱分解により劣化するおそれがある。
プレス成形時の圧力は、得られる成形体の反りを低減するといった観点から400kgf/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは200kgf/cm2以下、さらに好ましくは100kgf/cm2である。また、プレス成形時における最高温度での保持時間としては、1〜180分であることが加工性と生産性の観点から好ましく、5〜120分であることがより好ましい。
プレス成形は真空中や不活性ガス(窒素など)雰囲気下で実施しても構わない。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物によれば、比較的大型の成形体、とりわけ大型の成形板を得たとき、厚み精度が極めて良好な成形板を得ることができる。このように厚み精度に優れた成形板は充填剤の分散性が良好となるので、成形板の特性バラツキを良好に防止することが可能である。かかる成形体は、液晶ポリエステル樹脂組成物の成形加工法として広く利用されている射出成形法では実現困難な、例えば250×250mmサイズの大型成形板も成形することができる。
また、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は種々の大型成形体を得ることを可能とするが、比較的形状の小さな成形体や、フィルム状成形体に加工することもできる。更に、プレス成形に係る金型を種々変更することにより、例えば、円筒形状、四角形状、歯車や軸受け等の機械部品の形状など任意形状に加工できるし、一旦シート形状に成形した成形体から所望の形状に切り出して加工することもできる。
前記のように、充填剤の分散性に優れた成形体、特に成形板は、電気・電子部品の部材に好適であり、かかる部品の一例として回路基板について説明する。
該回路基板は、成形板に導体層を形成することで製造することができ、導体層を形成する手段としては、銅箔などの金属箔を成形体に熱プレスにより貼り合わせる方法、接着剤を介して金属箔を貼り合わせる方法等が、当該分野で広範に使用されている手段が用いられる。
また、成形板にスパッタリング法やイオンプレーティング、真空蒸着法、無電解めっきなどで導体層を形成してもよい。さらに、上記に例示した方法により導体層を形成した後、電解めっき等を用いて導体層をさらに積層させてもよい。また、導体層を形成する前に成形板表面と導体層との密着性を上げる目的で、紫外線処理、プラズマ処理、コロナ処理、酸アルカリ処理、サンドブラスト処理等の各種の表面処理を成形板に行っても構わない。
このようにして導体層を形成した後、各種の用途に応じて任意の回路形成が可能であり、回路形成により前記のアンテナ基板やプリント配線板を製造することができる。
本発明の成形体は前記のとおり、とりわけ電気・電子部品に係る回路基板等に好適に使用できるが、他の用途に適用してもよい。
具体的には、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、コンピュータ関連部品等の電気・電子部品はもとより、
VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具等の家庭電気製品部品;
ランプリフレクター、ランプホルダー等の照明器具部品;
コンパクトディスク、レーザーディスク、スピーカー等の音響製品部品;
光ケーブル用フェルール、電話機部品、ファクシミリ部品、モデム等の通信機器部品;
分離爪、ヒータホルダー等の複写機、印刷機関連部品;
インペラー、ファン歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース等の機械部品;
自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品等の自動車部品;
マイクロ波調理用鍋、耐熱食器等の調理用器具;
床材、壁材などの断熱、防音用材料、梁、柱などの支持材料、屋根材等の建築資材、または土木建築用材料;
航空機、宇宙機、宇宙機器用部品;
原子炉等の放射線施設部材、海洋施設部材、洗浄用治具、光学機器部品、バルブ類、パイプ類、ノズル類、フィルター類、膜、医療用機器部品及び医療用材料、センサー類部品、サニタリー備品、スポーツ用品、レジャー用品等にも、用いることができる。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
(体積平均粒径)
粗粉砕後の粒子(粗粉砕粒子)、微粉砕後の液晶ポリエステル粒子及び改質液晶ポリエステル粒子の平均粒径は、測定溶媒として分散剤(花王(株)製ノニオン界面活性剤エマルゲン)を数十ppm程度溶解させた水を用いて、レーザー回折式粒径分布測定を行い、体積平均粒径を求めた。なお、レーザー回折式粒度分布測定機には、(株)セイシン企業製LMS−30を使用した。
(安息角)
粉体計測機(ホソカワミクロン社製、商品名「パウダーテスターPT−E」)を用い、この装置のスタンドに、サンプルロートを乗せ、さらに目開き250μmの標準篩を重ね、固定後、振動させ、サンプルロートを通じ、直径8cmの円形テーブル上に改質液晶ポリエステル粒子を落下させ、トナーの山を形成させた後、この山の稜線が明瞭になる程度に振動させた。その後、山の稜線と水平線との角度をレーザー光で測定し、この角度を安息角とした。
(成形板の厚み精度)
図2に示すプレス成形板中9箇所の厚みをマイクロメータにて測定した。測定された9箇所全ての厚み結果に基づき、統計的に平均値と標準偏差を算出した。この標準偏差の値が小さいものほど厚み精度が良好であると判定される。
(成形板中にある充填剤の分散性)
図2に示すプレス成形板中9箇所の比誘電率をインピーダンスアナライザー(HP製4291A)を用い、測定周波数1GHz、測定温度25℃、測定湿度50%RHの条件で測定した。測定された9箇所全ての比誘電率結果に基づき、統計的に平均値と標準偏差を算出した。標準偏差の値が小さいものほど成形板中にある充填剤の分散性が良好であると判定される。
製造例1(液晶ポリエステル粒子の製造)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p―ヒドロキシ安息香酸 911g(6.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル 409g(2.2モル)、テレフタル酸 274g(1.65モル)、イソフタル酸91g(0.55モル)及び無水酢酸 1235g(12.1モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて300℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、溶融状態で内容物をバットの中に取り出して冷却した。得られた液晶ポリエステルの収量は1430gであった。室温程度まで冷却した液晶ポリエステルをセイシン企業製・オリエントVM−16竪型粉砕機で、その平均粒径が1mm以下になるまで粗粉砕した。粗粉砕後の粗粒子の流動開始温度を測定したところ252℃であり、280℃以上の温度では溶融状態で光学異方性を示した。この粗粉砕後の粗粒子の体積平均粒径は197μmであった。
この粗粉砕後の粗粒子(体積平均粒径197μm)を、セイシン企業(株)製STJ−200ジェットミルにて、体積平均粒径7.9μmの粒子となるまで微粉砕した。微粉砕後の粒子を窒素雰囲気下に、室温から250℃まで1時間かけて昇温するといった熱処理を行い、次いで250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、さらに285℃で3時間保持した後、冷却して取り出した。熱処理後の液晶ポリエステル粒子をセイシン企業(株)製STJ−200ジェットミルにて再度解砕(微粉砕)した結果、平均粒径8.3μm、流動開始温度328℃の液晶ポリエステル粒子が得られた。この液晶ポリエステル粒子の安息角は52°であった。この液晶ポリエステル粒子の外観を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した写真(倍率:5000倍)を図3に示す。
実施例1(改質液晶ポリエステル粒子の製造)
製造例1で得られた液晶ポリエステル粒子を、奈良機械製作所(株)製のNHS−1型にて球形化処理した結果、平均粒径7.9μmの改質液晶ポリエステル粒子が得られた。この改質液晶ポリエステル粒子の安息角は46°であった。また、この改質液晶ポリエステル粒子の流動開始温度を測定したところ、328℃であり、球形化処理前の液晶ポリエステル粒子と同等であった。この改質液晶ポリエステル粒子の外観を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した写真(倍率:5000倍)を図4に示す。球形化処理前の液晶ポリエステル粒子に比して、球形化されたことを確認した。
実施例2〜4(プレス成形サンプルの作製)
実施例1で得られた改質液晶ポリエステル粒子を、表1に示す割合でチタン酸ストロンチウム(ST:富士チタン工業(株)製 数平均粒径1μm)とブレンドした後、プレス機を用いて表1に示す加工条件にてプレス成形を行い、成形板(寸法サイズ;150mm×150mm×1mm)を得た。次いで、得られた成形板の厚み、比誘電率の評価を行った。厚み及び比誘電率の結果を表2に示す。
比較例1〜3(プレス成形サンプルの作製)
製造例1で得られた液晶ポリエステル粒子を、表1に示す割合でチタン酸ストロンチウム(ST:富士チタン工業(株)製 数平均粒径1μm)とブレンドした後、プレス機を用いて表1に示す加工条件にてプレス成形を行い、成形板(寸法サイズ;150mm×150mm×1mm)を得た。次いで、得られた成形板の厚み、比誘電率の評価を行った。厚み及び比誘電率の結果を表2に示す。
Figure 0005396764
Figure 0005396764
ハイブリダイゼーションシステムの主要部を模式的に表す断面図である。 実施例、比較例で得られた成形板の測定部を模式的に表す上面図である。 製造例1で得られた液晶ポリエステル粒子の外観を表すSEM写真である。 実施例1で得られた改質液晶ポリエステル粒子の外観を表すSEM写真である。
符号の説明
1;試料投入口、2;排出口、3;ステーター、4;循環回路、5;ロータ5
6;ブレード6、7;ジェケット

Claims (9)

  1. 液晶ポリエステルからなる不定形粒子を高速気流中衝撃法で球形化する、改質液晶ポリエステル粒子の製造方法。
  2. 前記改質液晶ポリエステル粒子の体積平均粒径が0.5〜50μmの範囲である、請求項1記載の改質液晶ポリエステル粒子の製造方法
  3. 前記改質液晶ポリエステル粒子の安息角が48°以下である、請求項1又は2に記載の改質液晶ポリエステル粒子の製造方法
  4. 前記液晶ポリエステル流動開始温度が280℃以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の改質液晶ポリエステル粒子の製造方法
  5. 前記液晶ポリエステルからなる不定形粒子安息角48°を越える、請求項1〜4のいずれかに記載の改質液晶ポリエステル粒子の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の製造方法により改質液晶ポリエステル粒子を得、前記改質液晶ポリエステル粒子と、充填剤とを、前記改質液晶ポリエステル粒子と前記充填剤の合計量に対して、前記充填剤が20容量%以上になるように、混合する、液晶ポリエステル樹脂組成物の製造方法
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の製造方法により改質液晶ポリエステル粒子を得、前記改質液晶ポリエステル粒子をプレス成形する成形体の製造方法
  8. 求項記載の製造方法により液晶ポリエステル樹脂組成物を得、前記液晶ポリエステル樹脂組成物をプレス成形する成形体の製造方法
  9. 請求項7又は8に記載の製造方法により成形体を得、前記成形体に導体回路層を形成する、回路基板の製造方法
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