JPH06102731B2 - サーモトロピック液晶性ポリエステル微小球状体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、新規なサーモトロピック液晶性ポリエステル
微小球状体に関するものである。このものは、粉末成形
用原料、焼結成形用原料、熱可塑性高分子材料及び熱硬
化性高分子材料の充てん材、耐熱性塗料やエナメル、接
着剤の充てん材などに有用である。

従来の技術 従来、高分子の微粒子の製造法としては、固体状の高分
子を粉砕することにより製造される。また、懸濁重合法
によって球状粒子を得る方法も知られている。

しかしながら、前者の方法では、球状体は得られず不定
形の微粒子やフィブリル状の微粒子しか得られないとい
う欠点がある。また、後者の方法では、懸濁重合により
得られる素材が限定されるという欠点がある。そして、
液晶性高分子の場合は、これらのいずれの方法によって
も微小球状粒子とすることはできなかた。

発明が解決しようとする課題 本発明は、耐熱性や耐薬品性に優れた特定の液晶性高分
子から成る新規な球状粒子体を提供することを目的とし
てなされたものである。

課題を解決するための手段 本発明者らは、前記した好ましい性質を有する液晶性高
分子球状粒子体を開発するために種々研究を重ねた結
果、所定平均粒子径を有する実質的に真球状のサーモト
ロピック液晶性ポリエステル微小球状体がその目的に適
合することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成
するに至った。

すなわち、本発明は、平均粒子径0.5〜10μｍをもつ実
質的に真球状のサーモトロピック液晶性ポリエステル微
小球状体を提供するものである。

本発明の液晶性ポリエステル微小球状体は、自己配向性
を有するサーモトロピック液晶性ポリエステルと溶媒に
可溶なポリエチレンテレフタレートとを重量比30:70な
いし10:90の範囲で混合したのち、該液晶性ポリエステ
ル及び該ポリエチレンテレフタレートの融解温度以上で
かつ該液晶性ポリエステルが液晶状態を維持しうる温度
に加熱して押出成形し、次いで該ポリエチレンテレフタ
レートを溶媒で溶解除去することによって製造すること
ができる。

この製造の際に用いられるサーモトロピック液晶性ポリ
エステルとしては、例えばベクトラＡのような芳香族系
のものが好ましい。

この製造法において、サーモトロピック液晶性ポリエス
テルの混合割合が30重量％よりも多くなるとサーモトロ
ピック液晶性ポリエステルがフィブリル状のネットワー
クとなり、ポリエチレンテレフタレートを溶媒で溶解し
たときに、球状粒子が得られないし、また10重量％より
も少なくなると平均粒子径が0.5〜10μｍのサーモトロ
ピック液晶性ポリエステルが得られない。

上記製造法における押出成形は、常法に従い、一軸スク
リュー押出しや、二軸スクリュー押出し、ギヤーポンプ
押出しなどにより、ストランド状あるいはシート状に成
形することにより行われる。

スクリュー押出しの際に、スクリュー先端部からストラ
ンドダイやシートダイに至る溶融樹脂の流路にブレーカ
ープレートを挿入して押出しが行われるが、メッシュは
挿入しない。また、ストランドダイを使用する場合はダ
イの平行部長さ（Ｌ）とダイの出口直径（Ｄ）の比、L/
Dは４以下であることが好ましい。

この押出成形においては、サーモトロピック液晶性ポリ
エステルが液晶状態を維持しうる成形温度等の成形条件
の下で行われる。

上記製造法においては、このように押出成形して得られ
た成形体から、溶媒により選択的にポリエチレンテレフ
タレートを溶解し、ろ過又は遠心分離等により分離して
除去する。

このような溶媒としては、サーモトロピック液晶性ポリ
エステルを溶解することなく、ポリエチレンテレフタレ
ートのみを選択的に溶解するものであれば特に制限はな
いが、例えばニトロベンゼン、フェノール、ｍ−クレゾ
ール、Ｏ−クロロフェノール、トリフルオロ酢酸、芳香
族炭化水素、四塩化炭素、メチルエチメケトン、アセト
ン、酢酸エチル、塩化エチレン、ギ酸、ジメチルホルム
アミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テ
トラメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシド、塩
化メチレンなどが用いられる。

こうして得られたサーモトロピック液晶性ポリエステル
微小球状体は、溶媒から分離され、エタノール、アセト
ン又は水などでよく洗浄したのち、風乾又は減圧乾燥し
て精製される。

このようにして得られた球状粒子は、0.5〜10μｍの平
均粒子径を有し、多くの有機溶媒に対し耐溶剤性を示
し、250℃まで形状変化を示さないなどの性質を有して
いる。

発明の効果 本発明のサーモトロピック液晶性ポリエステル微小球状
体は、融液状態で液晶を形成し、液晶ドメイン内の分子
鎖が配列した液晶構造から固化することで、規則性があ
り、表面が平滑な固体構造を示す新規なものであり、従
来において例を見ない液晶性高分子球状粒子であって、
耐熱性や耐薬品性や耐溶剤性に優れるという、顕著な効
果を奏する。

従って、本発明のサーモトロピック液晶性ポリエステル
微小球状体は、このような優れた特性と利用して、例え
ば粉末成形用原料、焼結成形用原料、熱可塑性高分子材
料及び熱硬化性高分子材料の充てん材、耐熱性塗料やエ
ナメル、接着剤の充てん材などに有用である。

実施例 次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。

実施例１、比較例１〜２ 芳香族液晶性ポリエステル（ベクトラA 950、ポリプラ
スチック社製）のペレットと、ポリエチレンテレフタレ
ートのペレットとを所定量混合し、90℃で12時間、さら
に150℃で４時間乾燥したのち、シリンダー内径30mmの
押出機とシートダイを用いて押出温度310℃で押出し、
厚さ0.3〜1mmの長尺シートを成形した。このとき、シリ
ンダーとシートダイをつなぐクロスヘッドの融液流路の
入口部にはブレーカープレートを挿入した。このように
して得られた固体シートを冷却後、トリフルオロ酢酸に
浸漬し、ポリエチレンテレフタレートを溶解し、ろ過に
より球状粒子を得た。得られた球状粒子の電子顕微鏡写
真を図に示した。また、この球状粒子の平均粒子径を表
に示した。

実施例２ 芳香族液晶性ポリエステル（ベクトラA 950）のペレッ
トとポリエチレンテレフタレートのペレットとを所定量
混合し、90℃で12時間、さらに150℃で４時間乾燥した
のち、シリンダー内径30mmの押出機とギヤーポンプ、ス
トランドダイ（L/Dは２、出口直径4mm）を用いて押出温
度300℃で押出し、ストランドを成形した。このように
して得られたストランドを冷却後、トリフルオロ酢酸に
浸漬し、ポリエチレンテレフタレートを溶解し、ろ過に
より球状粒子を得た。

【図面の簡単な説明】

図は、本発明の実施例１で得た球状粒子の構造を示す電
子顕微鏡写真である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】平均粒子径0.5〜10μｍをもつ実質的に真
   球状のサーモトロピック液晶性ポリエステル微小球状
   体。