JP2011006629A - 液晶ポリエステル粉体及びその成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】充填剤を配合してプレス成形したとき、比較的大型であっても、充填剤の分散性に優れ、特性のバラツキが十分に抑制された成形体を与える液晶ポリエステル粉体を提供する。
【解決手段】その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過する液晶ポリエステル粉体とする。この液晶ポリエステル粉体は、レーザー回折散乱法で測定される体積平均粒径が0.5〜30μmであるのが好ましく、流動開始温度が280℃以上であるのが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過する液晶ポリエステル粉体とする。この液晶ポリエステル粉体は、レーザー回折散乱法で測定される体積平均粒径が0.5〜30μmであるのが好ましく、流動開始温度が280℃以上であるのが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明は、液晶ポリエステル粉体、及びこの液晶ポリエステル粉体と充填剤とを含む組成物に関する。また、本発明は、この液晶ポリエステル粉体又は組成物をプレス成形してなる成形体に関し、さらには、この成形体に導体回路層を形成してなる回路基板に関する。
液晶ポリエステルは、耐熱性、機械特性及び成形加工性に優れることから、高機能のエンジニアリング材料として期待されている。また、材料のさらなる高機能化要求に呼応し、液晶ポリエステルに充填剤を配合して成形することにより、種々の機能材料(成形体)を得ることも検討されている。液晶ポリエステルと充填剤とを含む組成物から成形体を得る方法としては、一旦、液晶ポリエステルと充填剤とを含む組成物ペレットを作製し、この組成物ペレットを射出成形する方法が広範に用いられている。
前記のような射出成形は、複雑な形状の成形体を作製しやすい反面、比較的大型の成形体(以下、「大型成形体」ということがある)の製造には適しない。このため、例えば、特許文献1には、所定の流動開始温度及び平均粒径を有する液晶ポリエステル粉体を用い、この液晶ポリエステル粉体と充填剤とを含む組成物をプレス成形することが提案されている。
特許文献1の提案によれば、比較的大型であっても、充填剤の分散性が良好な成形体を得ることができるが、僅かながら成形体中で特性にバラツキが生じることがある。そこで、本発明の目的は、充填剤を配合してプレス成形したとき、比較的大型であっても、充填剤の分散性に優れ、特性のバラツキが十分に抑制された成形体を与える液晶ポリエステル粉体を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明は、液晶ポリエステルからなる粉体であって、その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過することを特徴とする液晶ポリエステル粉体を提供する。
また、本発明によれば、前記液晶ポリエステル粉体と充填剤とを含む組成物が提供され、さらには、前記液晶ポリエステル粉体又は組成物をプレス成形してなる成形体、及びこの成形体に導体回路層を形成してなる回路基板が提供される。
本発明の液晶ポリエステル粉体によれば、これに充填剤を配合してプレス成形することにより、比較的大型であっても、充填剤の分散性に優れ、特性のバラツキが十分に抑制された成形体を得ることができる。こうして得られる成形体は、電気・電子部品の製造用材料、特に回路基板の製造用材料として好適に用いることができる。
本発明の液晶ポリエステル粉体は、液晶ポリエステルからなる粉体であって、その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過することを特徴とする。まず、該液晶ポリエステル粉体を構成する液晶ポリエステルについて説明する。
<液晶ポリエステル>
液晶ポリエステル粉体を構成する液晶ポリエステルは、光学的異方性を有する溶融相を形成し、液晶特性を示すポリエステルであり、好ましくは、芳香環がエステル結合(−CO−O−又は−O−CO−)により連結してなる全芳香族ポリエステル、又は該全芳香族ポリエステルのエステル結合の一部がアミド結合(−CO−NH−又は−NH−CO−)に置き換わった全芳香族ポリ(エステル−アミド)である。このような全芳香族ポリエステル又は全芳香族ポリ(エステル−アミド)は、得られる成形体(成形板)の機械強度や耐熱性をより良好とする点で好ましい。
液晶ポリエステル粉体を構成する液晶ポリエステルは、光学的異方性を有する溶融相を形成し、液晶特性を示すポリエステルであり、好ましくは、芳香環がエステル結合(−CO−O−又は−O−CO−)により連結してなる全芳香族ポリエステル、又は該全芳香族ポリエステルのエステル結合の一部がアミド結合(−CO−NH−又は−NH−CO−)に置き換わった全芳香族ポリ(エステル−アミド)である。このような全芳香族ポリエステル又は全芳香族ポリ(エステル−アミド)は、得られる成形体(成形板)の機械強度や耐熱性をより良好とする点で好ましい。
好適な液晶性ポリエステルとしては、例えば、(I):芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位、芳香族ジカルボン酸由来の構造単位及び芳香族ジオール由来の構造単位の組み合わせからなるもの、(II):複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位からなるもの、(III):芳香族ジカルボン酸由来の構造単位と芳香族ジオール由来の構造単位との組み合わせからなるもの、(IV):ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させたもの、(V):(I)の芳香族ジオール由来の構造単位の一部又は全部がフェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位ないし芳香族ジアミン由来の構造単位に置き換わったもの、(VI):(I)又は(V)の芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位の一部が芳香族アミノカルボン酸由来の構造単位に置き換わったもの等が挙げられる。
なお、上記構造単位を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ジアミン及びフェノール性水酸基を有する芳香族アミンは、液晶ポリエステルを製造する際、そのエステル形成性誘導体やアミド形成性誘導体を使用してもよい。
芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−4−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−4’−カルボキシジフェニルエーテル、2,6−ジクロロ−パラヒドロキシ安息香酸、2−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ジフルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−4’−ビフェニルカルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
芳香族ジオールとしては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン、アセトキシハイドロキノン、ニトロハイドロキノン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホンが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルケトン−4,4’−ジカルボン酸、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
芳香族アミノカルボン酸としては、例えば、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、2−アミノ−6−ナフトエ酸、2−アミノ−3−ナフトエ酸、1−アミノ−4−ナフトエ酸、2−クロロ−パラアミノ安息香酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
フェノール性水酸基を有する芳香族アミンとしては、例えば、p−アミノフェノール、3−アミノフェノール、p−N−メチルアミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェノールが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
芳香族ジアミンのとしては、例えば、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記の例示の中で、より耐熱性に優れる成形体が得られる点と経済性の点からは、芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸及び/又は2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸が好ましく、芳香族ジオールとしては、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン及び2,6−ジヒドロキシナフタレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族ジオールが好ましく、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸が好ましく、芳香族アミノカルボン酸としては、p−アミノ安息香酸及び/又は2−アミノ−6−ナフトエ酸が好ましい。
とりわけ好ましい液晶ポリエステルとしては、(1):p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位と、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位と、テレフタル酸由来の構造単位と、イソフタル酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル、(2):p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位と、ハイドロキノン由来の構造単位と、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位と、テレフタル酸由来の構造単位と、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル、(3):p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位と、ハイドロキノン由来の構造単位と、テレフタル酸由来の構造単位と、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル、(4):2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位と、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位と、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位と、テレフタル酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル、(5):2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位と、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位と、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル、(6):2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位と、ハイドロキノン由来の構造単位と、テレフタル酸由来の構造単位と、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル、(7):2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位と、2,6−ジヒドロキシナフタレン由来の構造単位と、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル、(8):2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位と、2,6−ジヒドロキシナフタレン由来の構造単位と、テレフタル酸由来の構造単位と、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位とからなる全芳香族液晶ポリエステル、(9):p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位からなる全芳香族液晶ポリエステルを挙げることができる。
上記例示の中でも、特に好適な全芳香族液晶ポリエステルは、後述するプレス成形に係る加工性が良好であるといった観点から、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位を、該全芳香族液晶ポリエステルを構成する構造単位の合計モル量に対して、30〜70モル%含むことが好ましい。この含有量は、より好ましくは40〜65モル%であり、特に好ましくは50〜60モル%である。
なお、液晶ポリエステルが芳香族ジオール由来の構造単位及び芳香族ジカルボン酸由来の構造単位を含む場合、両者の割合は、芳香族ジオール由来の構造単位/芳香族ジカルボン酸由来の構造単位(モル/モル)で表して、85/100〜100/85であるのがよい。
次に、液晶ポリエステルの製造方法について説明する。まず、上記構造単位を誘導する化合物のエステル形成性誘導体、アミド形成性誘導体について説明する。かかる化合物がカルボキシル基を有するものである場合、そのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、例えば、該カルボキシル基が、エステル生成反応又はアミド生成反応を促進するような、酸塩化物、酸無水物となっているもの、該カルボキシル基が、エステル交換・アミド交換反応によりポリエステル又はポリアミドを生成するように、アルコール類やエチレングリコール等とエステルを形成しているものが挙げられる。また、フェノール性水酸基を有する化合物のエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、例えば、エステル交換・アミド交換反応によりポリエステル又はポリアミドを生成するように、フェノール性水酸基が、カルボン酸類とエステルを形成しているものが挙げられる。またアミノ基を有する化合物のエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、例えば、エステル交換・アミド交換反応によりポリエステル又はポリアミドを生成するように、アミノ基が、カルボン酸類とアミドを形成しているものが挙げられる。
上記液晶ポリエステルの製造方法は公知の手段が適用できるが、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ジアミン及びフェノール性水酸基を有する芳香族アミンから選ばれる、アミノ基又はフェノール性水酸基を有する化合物を脂肪酸無水物でアシル化してアシル化物を得、該アシル化物のアシル基とカルボキシル基を有する化合物のカルボキシル基とが、エステル交換するかアミド交換するようにしてポリエステルを製造する方法が好適である。
使用される脂肪酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸等の低級脂肪酸無水物が挙げられるが、経済性及び取扱い性の観点からは無水酢酸が好ましい。フェノール性水酸基及びアミノ基をアシル化する際の脂肪酸無水物の使用量は、フェノール性水酸基とアミノ基の合計モル量に対して1.05〜1.1モル倍であることが好ましい。アシル化反応は、130〜180℃で30分〜20時間反応させることが好ましく、140〜160℃で1〜5時間反応させることがより好ましい。エステル交換・アミド交換による重縮合反応は、130〜400℃で0.1〜50℃/分の割合で昇温させながら反応させることが好ましく、150〜350℃で0.3〜5℃/分の割合で昇温させながら反応させることがより好ましい。
重縮合反応後の液晶ポリエステルはその流動開始温度を200〜270℃とすることが好ましい。重縮合反応後の液晶ポリエステルの流動開始温度をこのような範囲にすると、重縮合反応後に反応釜から液晶ポリエステルを抜出する際の作業性が良好となる。なお、流動開始温度とは、内径1mm、長さ10mmのダイスを取付けた毛細管型レオメーターを用い、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下において昇温速度4℃/分で液晶ポリエステルをノズルから押出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポイズ)を示す温度であり、当該分野で周知の液晶ポリエステルの分子量を表す指標である(例えば、小出直之編、「液晶性ポリマー合成・成形・応用−」、95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。上記の製造方法においては、エステル交換・アミド交換による重縮合反応の条件をコントロールすることで、好適な流動開始温度の液晶ポリエステルを得ることができる。
<改質液晶ポリエステル粉体>
このようにして得られた液晶ポリエステルは通常塊状であり、この塊状の液晶ポリエステルを、機械粉砕及び分級することにより、その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過するような液晶ポリエステル粉体を得ることができる。該液晶ポリエステル粉体は、その全ての粒子が目開き45μmの篩を通過するとさらに好ましい。
このようにして得られた液晶ポリエステルは通常塊状であり、この塊状の液晶ポリエステルを、機械粉砕及び分級することにより、その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過するような液晶ポリエステル粉体を得ることができる。該液晶ポリエステル粉体は、その全ての粒子が目開き45μmの篩を通過するとさらに好ましい。
機械粉砕は、まず、塊状の液晶ポリエステルを粗粉砕して、比較的大きな体積平均粒径の粗粉砕粉体を製造し、次いで、かかる粗粉砕粉体を微粉砕するといった2段階の粉砕処理により行うことが好ましい。
このような粗粉砕と微粉砕とを用いた好適な粉砕処理に関して説明する。粗粉砕では、重縮合後の塊状の液晶ポリエステルを、体積平均粒径0.2〜5mm程度の粗粉砕粉体とする。かかる粗粉砕には、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、粗砕カッター等を用いる方法が適用できるが、中でも粗砕カッター型粉砕機を用いることが好ましい。
微粉砕の方法としては、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、パンミル、ローラミル、インパクトミル、円盤形ミル、攪拌摩砕ミル、流体エネルギーミル、ジェットミル等を用いる方法が挙げられるが、中でもジェットミルを用いると好適である。
このジェットミルを用いた場合について微粉砕に係る粉砕条件としては、ノズル圧を0.5〜0.8MPa程度になるようにすることが好ましい。また、粉砕処理速度は、該ジェットミルとして、例えば(株)セイシン企業製のジェットミル“STJ−200”を用いた場合においては、2.5kg/Hr以上になるようにすると好ましい。このようにして微粉砕を行うことにより液晶ポリエステルからなる微粉砕粉体が得られる。
次いで、得られた微粉砕粉体を分級処理することで、粒径の大きい粒子を除去することができ、その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過する液晶ポリエステル粉体を得ることができる。かかる分級処理には、例えば、コアンダ効果利用型分級機等の慣性分級機、自由渦又は半自由渦利用型分級機、強制渦利用型分級機、自由渦及び強制渦利用型分級機等の遠心分級機等が好ましく使用される。これらの中でも、多量の微粉砕粉体を分級処理できるという点で、遠心分級機を使用することが好ましい。なお、この場合、遠心分級機の分級ローターの回転数と風量調節とを適宜調整することで、その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過する液晶ポリエステル粉体を得ることができる。
こうして得られる液晶ポリエステル粉体のレーザー回折散乱法で測定される体積平均粒径は、0.5〜30μmであると好ましく、0.5〜20μmであるとより好ましく、0.5〜15μmであるとさらに好ましい。該液晶ポリエステル粉体の体積平均粒径がこの範囲である場合、充填剤と併用して作製した成形体中での充填剤の偏分散をより効果的に抑制することができる。なお、液晶ポリエステル粉体の粒径分布において、小粒径側からの累積度が100%となる粒径は、篩通過性に対応して、75μm以下、好ましくは45μm以下であるのがよい。
<改質液晶ポリエステル粉体>
上記のようにして得られる液晶ポリエステル粉体は、さらに加熱処理を行うことで、該液晶ポリエステル粉体を構成する液晶ポリエステルよりも高い流動開始温度の改質液晶ポリエステルからなる改質液晶ポリエステル粉体にすることができる。
上記のようにして得られる液晶ポリエステル粉体は、さらに加熱処理を行うことで、該液晶ポリエステル粉体を構成する液晶ポリエステルよりも高い流動開始温度の改質液晶ポリエステルからなる改質液晶ポリエステル粉体にすることができる。
加熱処理の方法としては、例えば、ビフェニルとジフェニルエーテルの混合物やジフェニルスルホン等の高沸点溶媒中で該微粉砕品を150℃〜350℃の温度で攪拌した後、使用した高沸点溶媒を除去する方法、不活性気体雰囲気下又は減圧下に、150〜350℃の温度で1〜20時間熱処理する方法等が挙げられる。加熱処理の温度が150℃未満では、流動開始温度の向上効果が低下する傾向があり、350℃を超える温度で熱処理すると、液晶ポリエステル自体の分解反応が生じる場合がある。該不活性気体としては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガスが挙げられる。また、熱処理に使用する装置としては、例えば、乾燥機、反応機、イナートオーブン、混合機、電気炉が挙げられる。
ここで、上記の液晶ポリエステル粉体を熱処理する際、熱処理の昇温速度や処理温度は、液晶ポリエステル粒子同士が融着しないように適宜最適化することが好ましい。融着が起こると、流動開始温度の向上が妨げられる傾向がある。ただし、熱処理より融着が生じ粒径が大きくなった場合は、再度解砕等の処理を行って、粒径を熱処理前と同程度に戻して使用することもできる。解砕処理としても機械粉砕が好ましい。なお、熱処理の雰囲気としては、不活性気体雰囲気又は減圧雰囲気が好ましく、不活性気体の例示は上記と同じである。
本発明の液晶ポリエステル粉体の加熱処理は、上述のように当該液晶ポリエステル粉体を構成する液晶ポリエステル自身の流動開始温度を向上させる。そして、このように比較的低温の流動開始温度の液晶ポリエステルからなる液晶ポリエステル粉体を、より高温の流動開始温度の改質液晶ポリエステルからなる改質液晶ポリエステル粉体にするという製造方法によれば、高剛性であって粉砕し難い塊状の液晶ポリエステルを機械粉砕することを良好に回避して、好適な特性の改質液晶ポリエステル粉体を得ることができる。
液晶ポリエステル粉体を構成する液晶ポリエステルの流動開始温度は200〜270℃程度が好ましいものであり、かかる液晶ポリエステル粉体を加熱処理により、より高温の流動開始温度を有する改質液晶ポリエステル粉体とする。かかる改質液晶ポリエステル粉体の流動開始温度は280℃以上とすることが好ましく、280℃〜420℃とすることが好ましく、290〜400℃とすることがさらに好ましい。改質液晶ポリエステル粉体の流動開始温度がこのような範囲であると、改質液晶ポリエステル粉体から得られる成形体が、耐熱性及び機械強度がともに優れたものとなる。特に、該成形体を電気・電子用部品等に使用する際、このような部品がはんだリフロー等のプロセスに曝露されたとしても、ブリスター等の膨れ状欠陥が生じ難くなる傾向がある。
<液晶ポリエステル組成物>
次に、上記改質液晶ポリエステル粉体と充填剤とを用いてなる液晶ポリエステル組成物について説明する。該充填剤の使用量は、目的とする用途にもよるが、改質液晶ポリエステル粉体と充填剤の合計容量に対して、充填剤が20容量%以上であると好ましく、充填剤が25容量%以上であるとさらに好ましい。また、大型成形体を製造する際の成形性、特に成形板をプレス成形で製造する際の成形性を良好にする観点から、充填剤は改質液晶ポリエステル粉体と充填剤の合計容量に対して、40容量%以下であると好ましい。
次に、上記改質液晶ポリエステル粉体と充填剤とを用いてなる液晶ポリエステル組成物について説明する。該充填剤の使用量は、目的とする用途にもよるが、改質液晶ポリエステル粉体と充填剤の合計容量に対して、充填剤が20容量%以上であると好ましく、充填剤が25容量%以上であるとさらに好ましい。また、大型成形体を製造する際の成形性、特に成形板をプレス成形で製造する際の成形性を良好にする観点から、充填剤は改質液晶ポリエステル粉体と充填剤の合計容量に対して、40容量%以下であると好ましい。
かかる充填剤としては、繊維状、粉粒状、板状の無機及び有機の充填剤を配合することができる。繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、炭素繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸炭素繊維、ウォラストナイトの如き珪酸塩の繊維、硫酸マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属からなる繊維状物等の無機質繊維状物質が挙げられる。
一方、粉粒状充填剤としてはカーボンブラック、黒鉛、シリカ、ポーラスシリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土、ウォラストナイトの如き硅酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、誘電体セラミック粉末、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル酸化物、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化珪素、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等のフェライト、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、鉄、ニッケル等の各種金属粉末及びそれらの金属を含有する合金粉末等が挙げられる。
また、板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、タルク、板状アルミナ、各種の金属箔等が挙げられる。
有機充填剤の例を示せば芳香族ポリエステル繊維、液晶性ポリマー繊維、芳香族ポリアミド、ポリイミド繊維等の耐熱性高強度合成繊維である。また、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機質繊維状物質も使用することができる。
これらの無機及び有機充填剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。繊維状充填剤と粒状又は板状充填剤との併用は、特に機械的強度と寸法精度、電気的性質等を兼備する上で好ましい組み合わせである。
なお、前記に例示した充填剤において、改質液晶ポリエステル粉末との混合性を向上させる観点から、該充填剤の体積平均粒径も、0.5〜50μm程度が好ましく、1〜30μmがより好ましい。
本発明においては、かかる充填剤により各種の機能を大型成形体に付与することができ、該充填剤は、目的とする機能によって選択する。例えば、成形体に機械強度を付与する目的では、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、ホウ酸アルミニウム繊維等の繊維状充填剤やマイカ、ガラスフレーク、タルク、板状アルミナ等の板状充填剤が挙げられ、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、タルクがより好ましい。
成形体に磁性を付与する目的では、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等のフェライト、鉄、ニッケル等の各種金属粉末及びそれらの合金粉末が挙げられ、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、鉄、ニッケル等の各種金属粉末及びそれらの金属を含有する合金粉末がより好ましい。
成形体に熱伝導性を付与する目的では、上記例示の中でもアルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、窒化珪素、酸化珪素、炭化硅素、窒化硼素、金属粉末又は金属の酸化物を用いることができる。
また、成形体に誘電特性を付与する目的では、高誘電材料又は低誘電材料からなる充填剤(以下、これらを総じて「誘電性充填剤」と呼ぶこともある)を用いればよく、高誘電材料からなる充填剤としては、上記例示の中でも、比誘電率100以上の誘電体セラミック粉末、より具体的には、チタン、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、カリウム、カルシウム、ジルコニウム、スズ、ネオジウム、ビスマス、サマリウム、リチウム、タンタルからなる郡より選ばれる少なくとも1種類の金属を含む誘電体セラミック粉末が挙げられる。
一方、低誘電材料からなる充填剤としては、いわゆる中空体からなる充填剤や低誘電樹脂であるフッ素樹脂からなる充填剤が挙げられる。
<成形体>
次に、上記の液晶ポリエステル粉末と充填剤を含む液晶ポリエステル組成物を用いてなる成形体、特に該液晶ポリエステル組成物を、プレス成形して得られる成形体について説明する。なお、本発明の液晶ポリエステル組成物には、含有される充填剤に係る所望の効果を損なわない範囲であれば、充填剤以外の添加剤を混合することも可能である。かかる添加剤を混合する場合、液晶性ポリマー以外の樹脂を混合することもできるし、公知のカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤等を混合することもできる。
次に、上記の液晶ポリエステル粉末と充填剤を含む液晶ポリエステル組成物を用いてなる成形体、特に該液晶ポリエステル組成物を、プレス成形して得られる成形体について説明する。なお、本発明の液晶ポリエステル組成物には、含有される充填剤に係る所望の効果を損なわない範囲であれば、充填剤以外の添加剤を混合することも可能である。かかる添加剤を混合する場合、液晶性ポリマー以外の樹脂を混合することもできるし、公知のカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤等を混合することもできる。
次に、プレス成形の成形条件について説明する。プレス成形時の加工温度(Tp)は液晶ポリエステル組成物の流動開始温度、すなわち該液晶ポリエステル組成物にある液晶ポリエステルの流動開始温度に対し以下の関係を満たす条件下で加工することが好ましい。
(流動開始温度−10)[℃] ≦ Tp ≦ (流動開始温度+100)[℃]
(流動開始温度−10)[℃] ≦ Tp ≦ (流動開始温度+100)[℃]
加工温度(Tp)が(流動開始温度−10)[℃]より低い場合には、液晶ポリエステル組成物が溶融せず、十分な強度を有する成形体を得ることが困難となる傾向がある。また加工温度(Tp)が(流動開始温度+100)[℃]より高い場合は、液晶ポリエステル自体が熱分解により劣化する傾向がある。
プレス成形時の圧力は、得られる成形体の反りを低減するといった観点から400kgf/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは200kgf/cm2以下、更に好ましくは100kgf/cm2である。また、プレス成形時における最高温度での保持時間としては、1〜180分であることが加工性と生産性の観点から好ましく、5〜120分であることがより好ましい。
プレス成形は真空中や不活性ガス(窒素等)雰囲気下で実施しても構わない。
本発明によれば、比較的大型の成形体を得たとき、充填剤の分散性に優れるために成形板の特性バラツキを良好に防止することが可能である。かかる成形体は、液晶ポリエステル組成物の成形加工法として広く利用されている射出成形法では実現困難な、例えば250×250mmサイズの大型成形体板も作製可能である。
また、本発明に適用する液晶ポリエステル組成物は種々の大型成形体を得ることを可能とするが、比較的形状の小さな成形体や、フィルム状成形体に加工することもできる。更に、プレス成形に係る金型を種々変更することにより、例えば、円筒形状、四角形状、歯車や軸受け等の機械部品の形状等、任意形状に加工できるし、一旦シート形状に成形した成形体から所望の形状に切り出して加工することもできる。
前記のように、充填剤の分散性に優れた成形体は、電気・電子部品の部材に好適であり、かかる部品の一例として回路基板について説明する。該回路基板は、成形体に導体層を形成することで製造することができ、導体層を形成する手段としては、銅箔等の金属箔を成形体に熱プレスにより貼り合わせる方法、接着剤を介して金属箔を貼り合わせる方法等が、当該分野で広範に使用されている手段が用いられる。
また、成形体にスパッタリング法やイオンプレーティング、真空蒸着法、無電解めっき等で導体層を形成する方法等も利用してもよい。さらに、上記に例示した方法に導体層を形成した後、電解めっき等を用いて導体層を積層させてもよい。また、導体層を形成する前に成形体表面と導体層との密着性を上げる目的で、紫外線処理、プラズマ処理、コロナ処理、酸アルカリ処理、サンドブラスト処理等の各種の表面処理を成形体に行っても構わない。
このようにして導体層を形成した後、各種の用途に応じて任意の回路形成が可能であり、回路形成により前記のアンテナ基板やプリント配線板を製造することができる。
本発明の成形体は前記のとおり、とりわけ電気・電子部品に係る部材に好適に使用できるが、他の用途に適用してもよい。具体的には、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、コンピュータ関連部品等の電気・電子部品はもとより、VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具等の家庭電気製品部品;ランプリフレクター、ランプホルダー等の照明器具部品;コンパクトディスク、レーザーディスク、スピーカー等の音響製品部品;光ケーブル用フェルール、電話機部品、ファクシミリ部品、モデム等の通信機器部品;分離爪、ヒータホルダー等の複写機、印刷機関連部品;インペラー、ファン歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース等の機械部品;自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品等の自動車部品;マイクロ波調理用鍋、耐熱食器等の調理用器具;床材、壁材等の断熱、防音用材料、梁、柱等の支持材料、屋根材等の建築資材、又は土木建築用材料;航空機、宇宙機、宇宙機器用部品;原子炉等の放射線施設部材、海洋施設部材、洗浄用治具、光学機器部品、バルブ類、パイプ類、ノズル類、フィルター類、膜、医療用機器部品及び医療用材料、センサー類部品、サニタリー備品、スポーツ用品、レジャー用品等にも、用いることができる。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。測定方法ないし評価方法は以下のとおりである。
〔粉体の篩通過性〕
目開き75μmの篩(直径200mm、高さ45mm、線径52μ、200メッシュ)を装着した電動篩(日陶科学(株)の“ANF−30”)を用いて、回転数2800rpmで、粉体100gを篩い、全ての粒子が通過するか否かを判定した。
目開き75μmの篩(直径200mm、高さ45mm、線径52μ、200メッシュ)を装着した電動篩(日陶科学(株)の“ANF−30”)を用いて、回転数2800rpmで、粉体100gを篩い、全ての粒子が通過するか否かを判定した。
〔粉体の体積平均粒径〕
粉体を、分散剤(花王(株)製の“エマルゲン”:ノニオン界面活性剤)を数十ppm程度溶解させた水に分散させて、レーザー回折式粒度分布測定機((株)セイシン企業製の“LMS−30”)を用いて測定した。
粉体を、分散剤(花王(株)製の“エマルゲン”:ノニオン界面活性剤)を数十ppm程度溶解させた水に分散させて、レーザー回折式粒度分布測定機((株)セイシン企業製の“LMS−30”)を用いて測定した。
〔成形板の比誘電率〕
図1に示す成形板の9箇所について、インピーダンスアナライザー(HP製の“4291A”)を用いて、測定周波数1GHz、測定温度25℃、測定湿度50%RHの条件で測定した。測定された9箇所の比誘電率に基づき、統計的に標準偏差を算出した。標準偏差の値が小さいほど、成形板中にある充填剤の分散性が良好であると判定される。
図1に示す成形板の9箇所について、インピーダンスアナライザー(HP製の“4291A”)を用いて、測定周波数1GHz、測定温度25℃、測定湿度50%RHの条件で測定した。測定された9箇所の比誘電率に基づき、統計的に標準偏差を算出した。標準偏差の値が小さいほど、成形板中にある充填剤の分散性が良好であると判定される。
製造例1(液晶ポリエステル粗粉砕粉体の製造)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸911g(6.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル409g(2.2モル)、テレフタル酸274g(1.65モル)、イソフタル酸91g(0.55モル)及び無水酢酸1235g(12.1モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて300℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、溶融状態で内容物をバットの中に取り出して冷却した。得られた液晶ポリエステルの収量は1430gであった。室温程度まで冷却した液晶ポリエステルを竪型粉砕機((株)セイシン企業製の“オリエントVM−16”)で、その平均粒径が1mm以下になるまで粗粉砕した。こうして得られた粗粉砕粉体の流動開始温度を測定したところ252℃であり、280℃以上の温度では溶融状態で光学異方性を示した。また、この粗粉砕粉体の体積平均粒径は249μmであった。
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸911g(6.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル409g(2.2モル)、テレフタル酸274g(1.65モル)、イソフタル酸91g(0.55モル)及び無水酢酸1235g(12.1モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて300℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、溶融状態で内容物をバットの中に取り出して冷却した。得られた液晶ポリエステルの収量は1430gであった。室温程度まで冷却した液晶ポリエステルを竪型粉砕機((株)セイシン企業製の“オリエントVM−16”)で、その平均粒径が1mm以下になるまで粗粉砕した。こうして得られた粗粉砕粉体の流動開始温度を測定したところ252℃であり、280℃以上の温度では溶融状態で光学異方性を示した。また、この粗粉砕粉体の体積平均粒径は249μmであった。
実施例1
製造例1で得られた粗粉砕粉体を、ジェットミル((株)セイシン企業製の“STJ−200”)を用い、ノズル圧0.7MPa、粉砕処理量3.0kg/hrの条件で微粉砕した後、分級機((株)セイシン企業製の“N−50”)を用いて粒径40μm以上の粒子を取り除き、体積平均粒径8.9μm、体積粒径40μm以下の累積度が100%の液晶ポリエステル粉体Aを得た。この液晶ポリエステル粉体Aの篩通過性を評価した結果、その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過した。
製造例1で得られた粗粉砕粉体を、ジェットミル((株)セイシン企業製の“STJ−200”)を用い、ノズル圧0.7MPa、粉砕処理量3.0kg/hrの条件で微粉砕した後、分級機((株)セイシン企業製の“N−50”)を用いて粒径40μm以上の粒子を取り除き、体積平均粒径8.9μm、体積粒径40μm以下の累積度が100%の液晶ポリエステル粉体Aを得た。この液晶ポリエステル粉体Aの篩通過性を評価した結果、その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過した。
得られた液晶ポリエステル粉体Aを窒素雰囲気下に、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、次いで250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、さらに285℃に到達した後、同温度で3時間加熱するといった加熱処理を行った。加熱処理後の改質液晶ポリエステル粉体を冷却して取り出した後、ジェットミル((株)セイシン企業製の“STJ−200”)及び分級機((株)セイシン企業製の“N−50”)を用いて解砕処理し、体積平均粒径8.9μm、流動開始温度328℃の改質液晶ポリエステル粉体Aを得た。この改質液晶ポリエステル粉体Aの篩通過性を評価した結果、その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過した。
得られた改質液晶ポリエステル粉体A70容量%を、チタン酸ストロンチウム(富士チタン工業(株)製;数平均粒径1μm)30容量%とブレンドした後、プレス機を用いて、プレス成形温度360℃、プレス圧力150kgf/cm2、プレス時間20分の加工条件にてプレス成形を行い、成形板(寸法:150mm×150mm×1mm)を得た。得られた成形板の比誘電率の評価を行い、結果を表1に示した。
比較例1
製造例1で得られた粗粉砕粉体を、ジェットミル((株)セイシン企業製の“STJ−200”)を用い、ノズル圧0.7MPa、粉砕処理量3.0kg/hrの条件で微粉砕し、体積平均粒径9.3μmの液晶ポリエステル粉体Bを得た。この液晶ポリエステル粉体Aの篩通過性を評価した結果、その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過せず、メッシュ上に多数の固形物が残留した。
製造例1で得られた粗粉砕粉体を、ジェットミル((株)セイシン企業製の“STJ−200”)を用い、ノズル圧0.7MPa、粉砕処理量3.0kg/hrの条件で微粉砕し、体積平均粒径9.3μmの液晶ポリエステル粉体Bを得た。この液晶ポリエステル粉体Aの篩通過性を評価した結果、その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過せず、メッシュ上に多数の固形物が残留した。
得られた液晶ポリエステル粉体Bを窒素雰囲気下に、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、次いで250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、さらに285℃に到達した後、同温度で3時間加熱するといった加熱処理を行った。加熱処理後の改質液晶ポリエステル粉体を冷却して取り出した後、ジェットミル((株)セイシン企業製の“STJ−200”)を用いて解砕処理し、体積平均粒径9.3μm、流動開始温度327℃の改質液晶ポリエステル粉体Bを得た。この改質液晶ポリエステル粉体Bの篩通過性を評価した結果、その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過せず、メッシュ上に多数の固形物が残留した。
得られた液晶ポリエステル改質粉体B70容量%を、チタン酸ストロンチウム(富士チタン工業(株)製;数平均粒径1μm)30容量%とブレンドした後、プレス機を用いて、プレス成形温度360℃、プレス圧力150kgf/cm2、プレス時間20分の加工条件にてプレス成形を行い、成形板(寸法法:150mm×150mm×1mm)を得た。次いで、得られた成形板の比誘電率の評価を行い、結果を表1に示した。
Claims (7)
- 液晶ポリエステルからなる粉体であって、その全ての粒子が目開き75μmの篩を通過することを特徴とする液晶ポリエステル粉体。
- レーザー回折散乱法で測定される体積平均粒径が0.5〜30μmであり、流動開始温度が280℃以上である請求項1に記載の液晶ポリエステル粉体。
- 請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル粉体と充填剤とを含む組成物。
- 充填材の含有量が、液晶ポリエステル粉体及び充填剤の合計容量に対して、20容量%以上である請求項3に記載の組成物。
- 請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル粉体をプレス成形してなる成形体。
- 請求項3又は4に記載の組成物をプレス成形してなる成形体。
- 請求項5又は6に記載の成形体に導体回路層を形成してなる回路基板。
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JP2009153517A JP2011006629A (ja) | 2009-06-29 | 2009-06-29 | 液晶ポリエステル粉体及びその成形体 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2013249330A (ja) * | 2012-05-30 | 2013-12-12 | Canon Inc | 成形体およびその製造方法 |
US10233294B2 (en) | 2013-01-09 | 2019-03-19 | Murata Manufacturing Co., Ltd. | Treated liquid crystal polymer powders, paste containing the same, and liquid crystal polymer sheet including the former, stack, and method of manufacturing treated liquid crystal polymer powders |
US11879041B2 (en) | 2019-02-15 | 2024-01-23 | Sumitomo Chemical Company, Limited | Film and laminate |
-
2009
- 2009-06-29 JP JP2009153517A patent/JP2011006629A/ja active Pending
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