JP5391382B2 - アスベスト利用方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高温溶融炉による燃焼処理を行うことなく処理されたアスベストを資源として利用するアスベスト利用方法に関する。
建物や各種配管設備、プラント設備等において従来より広く使用されてきたアスベストが社会問題となっている。アスベストの生産や販売は禁止されたが、既に使用されているアスベストをいかに確実に回収し、廃棄処理するかが緊急の課題となっている。そのため、高温溶融炉による処理や、セメントの製造工程においてアスベストを無害化処理する方法等、様々な処理方法が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
特開平08−141537号公報 特開2008−105021号公報
しかしながら、高温溶融炉はその絶対数が足りない上、燃焼温度が高く(1300〜1800℃)、運転コストが嵩む等の問題がある。
また上記高温溶融炉の燃焼温度を600℃前後に下げるために、フッ化水素によりアスベストを燃焼前に予め劣化させて比較的低温でも燃焼しやすくしておくことが考えられる。しかし、その場合には、燃焼処理時にフッ化水素ガスが発生するといった別の問題がある。
また、アスベストを含む廃材をセメント等の建築資材の原料として再利用する場合、セメントのプラントに投入する際、アスベストの飛散防止等の対策を施す必要があり、コスト等が嵩む問題がある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、高温溶融炉による燃焼処理やフッ化水素による劣化処理を特別に行うことなく処理されたアスベスト処理物を資源として有効に利用することを目的とする。
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、アルコキシシランと、フッ化カルシウムを含む2種類以上のカルシウム塩と、を含有するアスベスト処理剤を準備するアスベスト処理剤準備手順と、前記アスベスト処理剤をアスベストに加えて、前記アスベストの水酸基と前記アルコキシシランとを反応させてアルコールを生成し、前記アスベストのマグネシウムと前記カルシウム塩のカルシウムとを置換して、前記アスベストが分解したアスベスト処理物を得るアスベスト処理手順と、前記アスベスト処理物から前記生成したアルコールと固形物質とを分離する分離手順と、を備え、前記生成したアルコールまたは前記固形物質を資源として利用することを特徴とする。
よって、25℃ほどの室温でも、アルコキシシラン等がアスベストにまず反応してから、金属の塩により、金属の塩の金属原子と、アスベスト構成分子内のマグネシウム原子とが置換してアスベストをゲル化して分解させて生じたアスベスト処理物であるため、扱いが容易な資源を得ることができ、アスベストを資源として有効に利用しやすくなる。
したがって、高温溶融炉による燃焼処理やフッ化水素による劣化処理を特別に行うことなく処理されたアスベストを資源として有効に利用できる。さらに、従来の高温溶融炉による燃焼処理とは異なり、他の物質が溶け合ったりしないため、分解されたアスベスト処理物を分離して、それぞれの用途に応じて再利用しやすい。
また、請求項2に記載の発明は、前記フッ化カルシウムを含む2種類以上のカルシウム塩が、フッ化カルシウムおよび硫酸カルシウムであることを特徴とする。
分離手順が、加熱により流動物質と固形物質とを分離する場合、加熱することにより、アスベスト処理物の沸点に応じて分離させるため、アルコール等の蒸発しやすい物質を分離しやすい。また、加熱温度により、流動物質に含まれる物質を加熱温度に応じて更に分離できる。
また、請求項3に記載の発明は、前記アスベスト処理手順において、記アスベストの水酸基と前記アルコキシシランとが反応して生成したアルコールを除去して反応を進めるために、加熱をすることを特徴とする。
流動物質が、前記アルコキシシランのアルコキシ基に対応するアルキル基を有するアルコールを有し、前記アルコールを水蒸気改質させて水素を製造する場合、アルコキシシランから生成したアルコールを水素資源として燃料電池や水素エンジンや水素ボイラーに利用できる。
また、請求項4に記載の発明は、前記アスベスト処理剤が、更に水と、前記アルコキシシランのアルコキシ基に対応するアルキル基を有するアルコールと異なる水溶性の有機溶媒と、を含有することを特徴とする。
固形物質が、前記アスベストから生成した酸化ケイ素と、前記アルコキシシランから生成した酸化ケイ素と、を有し、前記固形物質から前記酸化ケイ素を取り出す酸化ケイ素取出手順を更に備え、前記酸化ケイ素から太陽電池を製造する場合、アスベストが分解されて生成した酸化ケイ素とアルコキシシランから生成した酸化ケイ素とを、シリコンの原料として再利用できる。
特に、太陽電池に使われるシリコンの純度は、IC等に使われるシリコンの半導体グレードほど高純度を必要としないため、太陽電池用の資源として利用しやすい。
固形物質をセメントの原料に利用する場合、酸化ケイ素や金属の塩の反応物がセメントの原料として利用可能である。特に、金属の塩が、カルシウムの塩である場合、セメントの原料として有効である。
アスベスト処理剤が、更に水と、水溶性の有機溶媒と、を含有する場合、アスベスト処理剤は、流動性が高い液体状であり、そのまま、アスベストに添加することにより、すぐにアスベスト処理剤として使える。また、液体状であるため、大量のアスベストに均一にアスベスト処理剤を接触させることができる。
有機溶媒が前記アルコキシシランまたはアルコキシケトンのアルコキシ基に対応するアルキル基を有するアルコールと異なる有機溶媒である場合、アルコキシシランまたはアルコキシケトンとアスベストとが反応して発生するアルコキシ基に対応するアルキル基を有するアルコールと、有機溶媒が異なるので、アスベストの分解反応を阻害しない。また、発生するアルコールに比べ、有機溶媒の分子量が大きく、沸点が高い場合、発生するアルコールの沸点以上、有機溶媒以下の温度に加熱すると、発生するアルコールを蒸発させて反応を促進させることができる。
水が放電により処理された放電処理水である場合、アスベストの分解処理速度を上げることができる水を簡易に生成できる。アスベスト表面部への高い浸透性と親油性を発揮して、種々の汚れ(例えば油、車の排気ガス等)で表面が覆われるアスベストに対しても処理剤の液を十分且つ迅速に浸透させることができる。
放電処理水が、先端が針形状の第1電極と、前記第1電極と対になる第2電極との間に水を移動させ、前記第1電極および第2電極の間に高電圧放電を発生させることにより生成された場合、先端が針形状の第1電極により、放電が効率的に行われ、効率的に放電処理水が生成される。特に、水が循環して水が流れているところに放電をするので、効率よく、水を放電処理できる。
金属の塩が、カリウム、カルシウムおよびナトリウムのうち少なくとも1種の強酸塩であり、かつ前記金属の塩の種類が、2種以上である場合、リチウムやルビジウム等に比べて、低コストの強酸塩となる。また、強酸塩の強酸により、アスベストの分解の反応が促進する。特に、塩の種類が、2種以上あることにより、アスベストのマグネシウム原子と置換した、金属の塩の金属を、他の金属の塩における金属により、マグネシウム原子との置換のために前記金属を供給することができる。そして、他の金属の塩を価格の安いものを使用することにより、アスベスト処理剤のコストを抑えることができる。
この場合、金属の塩の反応物や未反応物がセメントの原料として利用しやすい。
本発明によれば、温溶融炉による燃焼処理やフッ化水素による劣化処理を特別に行うことなく、扱いが容易な資源を得ることができる。
以下、本願の最良の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
まず、本発明の好ましい実施形態におけるアスベスト処理剤について説明する。
本実施形態のアスベスト処理剤は、アルコキシシランまたはアルコキシケトンと、マグネシウムよりもイオン化傾向の高い、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうち少なくとも1つの金属の塩と、を含有する。
アルコキシシランまたはアルコキシケトンは、アスベスト構成分子内の水酸基と反応する機能を有する。このような機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、テトラメトキシシランSi(OCH)やメチルトリメトキシシランCHSi(OCHやジメトキシケトンCO(OCHやメチルメトキシケトンCHCO(OCH)を例示できる(詳細に後述する)。
前記金属の塩(金属塩)は、アスベスト構成分子内のマグネシウム原子の少なくとも一部を当該金属塩の金属の原子と置換する反応を起こさせる物質であり、例えば、マグネシウムよりもイオン化傾向の高い、アルカリ金属およびアルカリ土類金属として、リチウム(Li)、ルビジウム(Rb)、カリウム(K)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)が例示できる。
これらアルコキシシランまたはアルコキシケトンと金属の塩とにより、アスベストの針状結晶を膨張させ、ゲル化させる。このようにアスベストを分解する原理については後に詳細に述べる。
ここで、アスベストとしては、例えば、白石綿と呼ばれるクリソタイルすなわちMgSi10(OH)、青石綿と呼ばれるクロシドライトすなわちNa(Fe2+,Mg)(Fe3+Si22(OH)、茶石綿と呼ばれるアモサイトすなわち(Fe2+,Mg)Si22(OH)が挙げられ、これらアスベストを構成する分子内にはマグネシウム原子が存在している。なお、クロシドライトの一部には、マグネシウムが含まれず、主に鉄イオンにより構成されるアスベストがある。しかし、鉄は、マグネシウムよりイオン化傾向が小さいため、アルコキシシランと前記金属の塩とによりクロシドライトを分解することができる。
さらに、実際にアスベストを処理する際は、アルコキシシランまたはアルコキシケトンと前記金属の塩とに、水と、水溶性の有機溶媒と、を加えた、すなわち、水と、水溶性の有機溶媒と、アルコキシシランまたはアルコキシケトンと、前記金属の塩と、を含有するアスベスト処理剤を使用する。
前記水溶性の有機溶媒は、アルコキシシランやアルコキシケトンを溶かす溶剤である。
また、水は、アルコキシシランまたはアルコキシケトンの有機溶媒溶液や前記金属の塩を分散させたり、前記金属の塩がイオン化してアスベストのマグネシウム原子に作用する働きを助けたりする機能を有する。
次に、本実施形態のアスベスト処理剤を構成する、アルコキシシランまたはアルコキシケトン、前記金属の塩および水溶性の有機溶媒についてそれぞれ詳細に説明する。
まず、アルコキシシランまたはアルコキシケトンは、水溶性の有機溶媒の沸点以下において、アスベスト構成分子内の水酸基と反応してアスベストと結合する反応物質の一例である。
そして、アルコキシシランとは、ケイ素(Si)がアルコキシ基(C2n+1O−)と結合した化合物である。例えば、アルキルアルコキシシランとして、Si(O・R1)、R2・Si(O・R1)、(R2)Si(O・R1)の一般式で表すことができる。なお、R1、R2はアルキル基であり、R1とR2とは同種であってもよい。
具体的には、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシランの他に、ジメチルジメトキシシラン (CH)Si(OCH)、フェニルトリメトキシシラン CSi(OCH)、ジフェニルジメトキシシラン (C)Si(OCH)、ヘキシルトリメトキシシラン CH(CH)Si(OCH)、ヘキシルトリエトキシシラン CH(CH)Si(OCHCH)、デシルトリメトキシシラン CH(CH)Si(OC)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン CFCHCHSi(OCH)、テトラエトキシシラン Si(OC)、メチルトリエトキシシラン CHSi(OC)、ジメチルジエトキシシラン (CH)Si(OC)、フェニルトリエトキシシラン CSi(OC)、ジフェニルジエトキシシラン (C)Si(OC)、テトラプロポキシシラン Si(OC)、メチルトリプロポキシシラン CHSi(OC)、ジメチルジプロポキシシラン (CH)Si(OC)等が挙げられる。
さらに例えば、メタルアルコキシシランとして、チタンオキサイドトリメトキシシランTiOSi(OCH)やチタンオキサイドエトキシシランTiOSi(OC)等が挙げられる。
また、アルコキシケトンとは、アルコキシシランのケイ素(Si)が炭素(C)と入れ替わった物質であり、炭素(C)がアルコキシ基(C2n+1O−)と結合した化合物である。例えば、アルキルアルコキシケトンとして、C(O・R1)、R2・C(O・R1)、(R2)C(O・R1)の一般式で表すことができる。
例えば、ジメトキシケトンCO(OCH、メチルメトキシケトンCHCO(OCH)、フェニルメトキシケトンCC(OCH)、ヘキシルメトキシケトンCH(CHCO(OCH)、デシルメトキシケトンCH(CHCO(OCH)、トリフルオロプロピルメトキシケトン CFCHCHCO(OCH)、ジエトキシケトンCO(OC、メチルエトキシケトンCHCO(OC)、フェニルエトキシケトンCCO(OC)、ジプロポキシケトンCO(OC、メチルプロポキシケトンCHCO(OC)等が挙げられる。
またアルコキシシランのSiの数は1〜3程度が好ましい。アスベスト分子内の水酸基と反応して、アルコールを生成する過程で、アスベストの針状結晶の基礎構造である、マグネシウムおよびSiの環状結晶を破壊する反応が発生するためには、アルコキシシランのSiの数は少ない方が、反応が促進する。アルコキシシランのSiの数が多いと、直接マグネシウムおよびSiの環状結晶中の水酸基に反応しなかったSiがアスベストの針状結晶の基礎構造であるSiの環状構造のSiに直接反応してSiの直鎖結合を作り、マグネシウムおよびSiの環状結晶を破壊する反応を阻害する。
なお、これらアルコキシシランの類のうち、アスベストと反応して分解させる反応速度やコストの点からテトラメトキシシランまたはメチルトリメトキシシランが最も好ましい。または、アルコキシケトンの類の場合、アスベストと反応してメタノールを生成するメトキシ基を有するジメトキシケトンやメチルメトキシケトン等のアルコキシケトンが好ましい。
次に、マグネシウムよりもイオン化傾向の高い、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうち少なくとも1つの金属の塩ついては、強酸塩が好ましい。
ここで、強酸とは、ブレーンステッド酸性の強い酸である場合、通常は溶液系では酸解離指数pKが3以下であり、例えば、FClO、HClO、HF、HCl、HSO、HNO等が挙げられる。ケイ酸(メタケイ酸HSiO)より酸性力の強い酸ならばよい。
そして、前記強酸塩は、例えば、CaF、CaCl、CaSO、Ca(NO)、KF、KCl、KSO、KNO、NaF、NaCl、NaSO、NaNO等が挙げられる。コスト面から、カリウム、カルシウムおよびナトリウムのうち少なくとも1種の強酸塩が更に好ましい。
さらに、金属の塩の種類は、2種以上が好ましい。特に、フッ化カルシウムCaFおよび硫酸カルシウムCaSO(石膏)が例示できる。フッ化カルシウムは単独でもよいが、アスベスト処理剤のコストを抑えるため、石膏と共に使用すること好ましい。主にフッ化カルシウムが反応に寄与し、石膏はカルシウムの供給源としての機能がある。
したがって、前記強酸塩のうち、特に、アルコキシシランまたはアルコキシケトンと共にアスベストと反応して分解させる反応速度やコストの点からフッ化カルシウムCaFと、硫酸カルシウムCaSO(石膏)または塩化カルシウムCaClと、がより好ましい。
次に、前記水溶性の有機溶媒ついては、アルコールやケトン、カルボン酸、カルボン酸エステル等が例示できる。
好ましくは、アルコールとして、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n‐ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s‐ブチルアルコール、t‐ブチルアルコール等の炭素数が1〜4の1価のアルコールが例示できる。さらに、アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数が2〜4の2価のアルコールを例示できる。またさらに、アルコールとして、グリセリン等の炭素数が3の3価のアルコールを例示できる。
また、好ましくは、ケトンとして、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の炭素数が3〜5のケトンを例示できる。
また、好ましくは、カルボン酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の炭素数が1〜4のカルボン酸が例示できる。
また、好ましくは、カルボン酸エステルとして、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等の炭素数が2〜6のカルボン酸エステルが例示できる。
さらに、前記水溶性の有機溶媒として、アスベストを分解する反応を妨げないように、アルコキシシランまたはアルコキシケトンのアルコキシ基に対応したアルキル基を有するアルコールと異なる水溶性の有機溶媒が好ましい。
特に、テトラメトキシシランまたはメチルトリメトキシシランを用いた場合、メチルアルコール以外の水溶性の有機溶媒が好ましい。
さらにまた、水溶性の有機溶媒がアルコールの場合、前記メチルアルコールより沸点が高いn−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n‐ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s‐ブチルアルコール、t‐ブチルアルコール等がより好ましい。
次に、水は、水道水でもよいが、マグネシウム原子に対する作用を更に高めるため、放電により処理された水(放電処理水)がより好ましい。
放電処理水(プラズマ放電処理水)は、本実施形態のプラズマ放電処理水生成装置(後述)により、水道水などの水に対して放電を行い、水酸基ラジカル(OH・)とヒドロキシルラジカル(H・)および(HO・)の濃度が増加させられた水である。
次に、アスベスト処理剤の成分比率について説明する。
アスベスト処理剤の成分比率は、粉末の前記強酸塩を有機溶媒や水に撹拌して分散できる比率が好ましい。さらに、このアスベスト処理剤をアスベストに加えた際、アスベストに含浸できる程度の粘性をアスベスト処理剤が有する成分比率が好ましい。
例えば、水溶性の有機溶媒が、イソプロピルアルコールで、前記強酸塩が、フッ化カルシウムおよび石膏の場合、成分比率(重量比)は、アルコキシシランを1に対して、フッ化カルシウムが0.1〜2.5、石膏が0.1〜5、イソプロピルアルコールが0.5〜3、水が1と例示できる。
さらに、反応速度やコスト面を考慮して、より好ましい成分比率は、アルコキシシランが1に対して、フッ化カルシウムが1、石膏が2、イソプロピルアルコールが2、水が1と例示できる。
次に、本発明の好ましい実施形態のアスベスト処理剤の作成手順について1図に基づき説明する。なお、アルコキシシランは、テトラメトキシシランまたはメチルトリメトキシシラン、前記金属の塩は、フッ化カルシウムおよび石膏、水溶性有機溶媒は、イソプロピルアルコール、水はプラズマ放電処理水の場合を一例として説明する。
図1は、本実施形態におけるアスベスト処理剤の作成手順の一例を示すフローチャートである。
まず、アルコール系溶剤の一例であるイソプロピルアルコールにアルコキシシランの一例であるテトラメトキシシランまたはメチルトリメトキシシランを混合し、アルコキシシランのアルコール溶液を作成する(ステップS1)。
次に、このアルコキシシランのアルコール溶液に、粉末状の石膏とフッ化カルシウムとを加えて混合する(ステップS2)。そして、プラズマ放電処理水を加え、撹拌する(ステップS3)。なお、これら混合するとき撹拌装置を使って強制的に石膏やフッ化カルシウムを混合、分散させる。
このように、アスベストを分解するアスベスト処理剤が作成される。なお、プラズマ放電処理水を加えると、アルコキシシランと水とも反応し始めるので、作成されたアスベスト処理剤は、すぐに使用する方が好ましい。また、ステップS2で作成された、プラズマ放電処理水を加える前のアスベスト処理剤をアスベストに加えた後、プラズマ放電処理水を加えてもよい。
次に、図2に基づき、本発明の好ましい実施形態のアスベスト処理剤によるアスベストの処理手順の一例について説明する。なお、アルコキシシランは、テトラメトキシシランまたはメチルトリメトキシシラン、前記金属の塩は、フッ化カルシウムおよび石膏、水溶性有機溶媒は、イソプロピルアルコール、水はプラズマ放電処理水の場合を一例として説明する。
図2は、本実施形態のアスベスト処理剤による処理手順を示すフローチャートである。
まず、回収されたアスベストが詰められたビニール等の袋に、予め準備しておいたアスベスト処理剤を注入して添加する(ステップS5)。数時間、25℃ほどの室温で放置して、アスベストをゲル化させる(ステップS6)。反応が進むとアスベスト処理物における流動物質の一例であるメチルアルコールが発生する。なお、発生するゲル状の物質は、アスベスト処理物における流動物質の一例である。
次に、副生成物であるメチルアルコールを除去して反応を進めるため、加熱する(ステップS7)。加熱温度は、メチルアルコールの沸点64.7℃以上で、水溶性の有機溶媒の一例であるイソプロピルアルコールの沸点82.4℃以下が好ましい。減圧した場合は、加熱しなくてもよい。但し、減圧のもと、メチルアルコールの沸点以上で、水溶性の有機溶媒の一例であるイソプロピルアルコールの沸点以下が好ましい。
アスベストの分解が進むと、アスベスト処理物として、流動物質と固形物質とが生成し、固形物質が沈降する。流動物質には、メチルアルコールやイソプロピルアルコールやフッ素とマグネシウムの化合物等が含まれる。
次に、アスベストが完全に分解したら、更に高温にして加熱して、イソプロピルアルコールも除去しガラス化する。
分解してガラス化した無害化アスベストを回収する(ステップS8)。
なお、発生したメチルアルコールに点火して、メチルアルコールを燃焼させてもよい。
次に、一例を用いて、本発明の好ましい実施形態のアスベスト処理剤の作用機序について、図3から図6に基づき説明する。なお、アルコキシシランは、テトラメトキシシラン、前記金属の塩は、フッ化カルシウムおよび石膏、水溶性有機溶媒は、イソプロピルアルコール、水はプラズマ放電処理水の場合を一例として説明する。
図3は、本実施形態のアスベスト処理剤とアスベストとの反応のプロセスの一例を示すフローチャートである。
図4は、本実施形態のアスベスト処理剤とアスベストとの反応の初期段階の一例を示す模式図である。
図5は、アスベストの針状結晶の一例を示す模式図である。
図6は、本実施形態のアスベスト処理剤によるアスベストの分解の様子を示す模式図である。
まず、アルコキシシランが、アスベスト構成分子内の水酸基(−OH)と反応する(ステップS10)。図5に示すように、アルコキシシラン(テトラメトキシシラン)のアルコキシ基が水酸基と反応してアスベストと結合し、アルキルアルコール(メチルアルコール)が発生する。なお水酸基は、マグネシウムに結合している水酸基でもよい。
ここで、図5に示すように、アスベスト(クリソタイル)のマグネシウム原子は6員の環状結晶構造を形成し、ケイ素原子は4員の環状結晶構造を形成し、強固な構造になっている。これら環状結晶構造が、直列に交互にならび、強固な針状結晶を形成している。しかし、アルコキシシランがアスベストの水酸基に反応して結び付くことにより、環状結晶構造を形成するマグネシウム原子の結合が弱まると考えられる。
次に、フッ化カルシウムのカルシウムイオンと、アスベストのマグネシウム原子の置換が起こる(ステップS11)。強酸塩と弱酸塩とを混合すると、弱酸塩分子中の金属原子が遊離してイオン化する。この化学反応で強酸塩分子中の金属原子のイオン化傾向が弱酸塩分子中の金属原子のイオン化傾向より高い場合、強酸塩分子中の金属原子と弱酸塩分子中の金属原子が入れ替わる(置換する)。したがって、カルシウムは、マグネシウムよりもイオン化傾向が高いので、アスベストのマグネシウム原子の置換が起きやすくなる。
そして、アスベスト環状結晶構造の分解が起こる(ステップS12)。分解の様子を顕微鏡で観察すると、図6のP1に示すように、まずアスベストの針状結晶の一部に、気泡が現れるように突然、球状の粒が析出する。析出した粒の直径は、およそ5〜10μmである。なお、アスベストの針状結晶の長さが5μmほどである場合は、針状結晶全体が膨張して球状になることが観察された。マグネシウム原子とカルシウム原子の大きさの違いに起因してアスベストの針状結晶構造に物理的変化を生じさせて針状結晶の膨張を容易にしていると考えられる。
そして、図6のP2に示すように、時間の経過につれて、針状結晶に球状の粒が次々と現れる。
この環状結晶構造の分解により、アスベストがゲル化して無害化される(ステップS13)。図6のP3に示したように、球状の粒が針状結晶の全体に出現し、最終的に針状結晶がばらばらになる。
次に、副生成物のメチルアルコールやイソプロピルアルコールや水が蒸発することにより、ゲル化したアスベストがガラス化する(ステップS14)。なお、アルコキシシランと水との分量によるが、これらの比率が1:1の場合、水とアルコキシシランとが反応してメチルアルコールができるため、水はほとんどない。
ここで、クリソタイルにテトラメトキシシランを加える反応は、
MgSi10(OH) + 4CHOSi(CHO)・・・(1)
である。このようにアルコキシ基が、アスベストの水酸基と反応して、アスベストが分解して、酸化マグネシウムトリシリケート(2MgO・3SiO),酸化ケイ素(SiO)と、アルキルアルコール(メチルアルコール)等が生じる。なお、これらは、加熱してアルキルアルコールを回収する温度まで上昇させない場合の生成物である。
また、反応過程で高温(800℃程)で揮発分を蒸発させた場合、残留物として、酸化カルシウム(CaO)、酸化ケイ素(SiO)、および硫酸カルシウム(CaSO)が得られ、マグネシウム分は発見されなかった(分析結果については後述)。このことから、マグネシウムは、反応後、例えば、CHMgFのようなハロゲン化アルキルマグネシウム(グリニャール試薬)の形で存在していると考えられる。なお、反応過程で水は、アルコキシシランと反応しているので、水はほとんどない。
なお、アルコキシケトンの場合、アルコキシケトン自体からSiOが生成されないので、アルコキシシランの反応(アスベストの針状結晶を膨張させ、ゲル化させる。そのゲル化後のガラス化反応で前記針状結晶を溶解させた状態でガラス化する)と違い、アスベストの針状結晶を膨張させ、アスベストと反応してメタノールを生成し燃焼することにより無害化する反応となる。一例としてクリソタイルとメチルメトキシケトンCHCO(OCH)を反応させると無害化されたあとの生成物として炭酸マグネシウム(MgCO)と、酸化ケイ素(SiO)と、アルキルアルコール(メチルアルコール)等が生じる。
以上、アスベスト構成分子内のマグネシウム原子の少なくとも一部をカルシウム原子と置換する反応と、前記アスベスト構成分子内の水酸基にアルコキシシランまたはアルコキシケトンを結合させる反応とに基づいて、前記アスベスト構成分子内のマグネシウム原子の環状結晶構造とケイ素の環状結晶構造の一部を分断することにより、アスベストの針状結晶構造を分解して、ゲル化させアスベストを無害化する。このゲル化後、有機溶媒や水や副生成物のアルキルアルコール(例えばメチルアルコール)等を蒸発させてガラス化する。そして、環状結晶構造の一部を分断する過程で、アスベストの針状結晶の一部が膨張する。
これらアスベストの針状結晶を膨張、ゲル化させ、且つそのゲル化後のガラス化反応により、針状結晶を溶解(分解)させた状態でガラス化してアスベストを無害化するために、本実施形態では、アスベスト構成分子内のマグネシウム原子の少なくとも一部をカルシウム原子と置換する反応と、アスベスト構成分子内の水酸基にアルコキシシランまたはアルコキシケトンを結合させる反応とが利用される。このようなアスベスト分子内部でのマグネシウム原子からカルシウム原子への置換によれば、その両原子の大きさの違いに起因してアスベストの針状結晶構造に物理的変化を生じさせて針状結晶の膨張を容易にする。またアスベスト構成分子内の水酸基に結合したアルコキシシランまたはアルコキシケトンがガラス化する過程で、アスベストの膨張、ゲル化した針状結晶が容易に溶解(分解)し、その後にガラス化(固化)する。
そして、このようなアスベスト無害化のための一連の処理に際しては、従来のように高温処理炉や高温溶融炉による燃焼処理やフッ化水素による劣化処理を特別に行う必要はなくなるため、作業環境を良好に保ちつつコスト節減を図ることができる。またこのようにして無害化(すなわち針状結晶構造が完全に溶解)され、ガラス化されたアスベストは、無害の建設資材として利用できる他、土中にそのまま廃棄しても周囲環境を汚染する心配がない。
ところで、アスベストの構成分子内のマグネシウム原子をカルシウム原子と置換するに当り、例えば水溶液中での弱酸塩および強酸塩の金属相互の置換反応が利用される。そのため、マグネシウム原子とカルシウム原子との上記置換を容易に行うことができる。
また特に本実施形態では、アルコキシシラン(例えば、テトラメトキシシランSi(OCH)やメチルトリメトキシシランCHSi(OCH)を、アルコール系溶剤、例えばイソプロピルアルコール:(CHCHOHに混ぜた溶液中に、水と反応して固化するカルシウム塩、例えば石膏:CaSO・2HOと、マグネシウムよりもイオン化傾向の高いK、CaまたはNaのうちの少なくとも1種の強酸塩、例えばフッ化カルシウム:CaF(ホタル石)を混ぜて処理溶液を作成する。そして、この処理溶液をアスベスト、例えばクリソタイル(白石綿)MgSi10(OH)に接触、吸収させ、更にそのクリソタイルに水、好ましくは放電処理水を作用させることにより、そのクリソタイルの有害とされる針状結晶を膨張、ゲル化させる。そして、そのゲル化後のガラス化反応で前記針状結晶を溶解させた状態でガラス化できるため、このクリソタイルが無害化される。
また前記処理溶液は、これをアスベスト、例えばクリソタイル(白石綿)MgSi10(OH)に対し図示しない噴霧手段により噴霧しまたは図示しない塗布手段により塗布することで、クリソタイルに接触、吸収させた後、これに更に水、好ましくはプラズマ放電水を噴霧し、あるいは塗布するようにしてもよい。あるいは、処理タンク内で作成、貯留した前記処理溶液中に、処理すべきクリソタイルを投入、撹拌した後、その処理溶液に前記プラズマ放電水を添加、撹拌するようにしてもよい。
また本実施形態では、前記処理溶液が接触、吸収されたアスベストに作用させる水として、後述するプラズマ放電処理水生成装置A1を用いて得られたプラズマ放電処理水が使用される。このようなプラズマ放電処理水を用いると、そのプラズマ放電処理水がアスベスト表面部への高い浸透性と親油性を発揮して、種々の汚れ(例えば油、車の排気ガス等)で表面が覆われるアスベストに対しても処理溶液を十分且つ迅速に浸透させることができる。その上、このプラズマ放電処理水が、アルコキシシランおよびアルコール系溶剤(例えばイソプロピルアルコール)の混合溶液よりなる処理溶液のゾルゲル反応を効果的に促進して、反応時間の短縮が図られる。それらの結果、処理作業の効率を高めることができる。この場合、プラズマ放電水の添加量は多ければ多いほど反応時間の短縮化が図られるが、処理すべきクリソタイル(白石綿)とほぼ同じ重量が適量である。
なお、前記無害化処理において、水と反応して固化するカルシウム塩としての石膏に代えて、例えば塩化カルシウム:CaCl・2HOを用いてもよい。さらにマグネシウムよりもイオン化傾向の高いK、CaまたはNaのうちの少なくとも1種の強酸塩を作るための酸としては、ケイ酸SiO 2−より酸性力の強い酸、例えばフッ酸が用いられる。この場合、フッ化カルシウムCaFに代えて、例えばホウフッ化カリウムKBFを用いてもよい。
次に、本実施形態のプラズマ放電処理水生成装置について、図面に基づき詳細に説明する。
添付図面において、図7〜図9は、本実施形態のアスベスト処理剤やアスベスト無害化処理方法等の実施に用いるプラズマ放電処理水を生成するためのプラズマ放電処理水生成装置を示すものである。
図7は、プラズマ放電処理水生成装置を示す全体縦断面図である。
図8は、図7のVIII矢視方向から見た図であり、プラズマ放電処理水生成装置A1の平面図である。
図9は、プラズマ放電処理水生成装置A1の要部を示す斜視図である。すなわち、図7のIX矢視方向より見た斜視図である。
図10は、陽電極と陰電極間でのプラズマ放電流の発生状態を簡略的に示す説明図であり、図9のX−X線における拡大断面図である。
プラズマ放電処理水生成装置(放電処理水生成装置)A1は、図7や図8に示すように、水Wを貯留する水槽V1と、先端が針形状の第1電極の一例である陽電極Pと、第1電極と対になる第2電極の一例である陰電極Mと、第1電極および第2電極の間に高電圧放電を発生させる高電圧放電手段の一例である高周波高電圧パルス放電用電源Eと、第1電極および第2電極の間の水を移動させる水移動手段と、を備えている。この水移動手段により、陽電極Pと陰電極Mとの間に水が流れる。
プラズマ放電処理水生成装置A1は、水槽V1の内部に堰としての鉛直平板状の堰板10が一体に設けられ、この堰板10により水槽V1内が少なくとも2室(図示例では第1室C1と第2室C2)に画成される。その第1、第2室C1、C2間には、その各々の底部に両端が開口する連通路12が接続される。その連通路12には、第1室C1から第2室C2に向けて水を強制的に還流させる還流手段としてのポンプ11が備え付けられていて、そのポンプ11の運転により第2室C2に還流された水が堰板10の上端部を超えて第1室C1側にオーバフロー可能となっている。堰板10の上端部には、そこをオーバフローしようとする水の中に浸漬されるように陰電極Mが該上端部の長手方向に沿って設けられる。
なお、還流手段は、水移動手段の一例である。また、堰板10と、第1室C1および第2室C2と、ポンプ11と、連通路12等も、全体で、水移動手段の一例として機能する。
陽電極Pは、陰電極Mの斜め上方空間に堰板10の上端部の長手方向に沿って互いに間隔をおいて並べて設けられて各々の先端が該陰電極Mに向かって延びる導電性材料よりなる多数の放電用針7…を備える。
前記陰電極Mは、図示例では導電性の金網で堰板10の上端部にこれを跨ぐように逆U字状に形成されている。
高電圧放電手段としての高周波高電圧パルス放電用電源Eは、直流電源のように図示されているが、実用的に適用する場合は、陽電極Pおよび陰電極Mに交流を印加する交流電源である。そして、第1電極および第2電極の間、すなわち、陽電極Pおよび陰電極Mの間に配置された水を放電処理する。
この高周波高電圧パルス放電用電源Eは、水槽V1の外に設置されている。この電源Eの印加側端子Eaに接続した印加側の外部配線Laが陽電極Pの放電用針7に接続される。また同電源Eのグランド側端子Ebに接続したグランド側の外部配線Lbは接地Gされており、その外部配線Lbの途中に陰電極Mが備え付けられる。
なお、図7に鎖線で示すように、前記外部配線La,Lbの途中(特に高周波高電圧パルス放電用電源Eと陽電極P、陰電極Mとの間)には必要に応じて電圧調整用のトランスTを備え付けてもよい。
高周波高電圧パルス放電用電源Eは、周波数が高く(例えば10KHz)、電圧が高い(例えば10KV)の高周波高電圧パルスを少なくとも所定時間(例えば10分)以上放電し得るような構成である。その放電出力波形はサイン波に、電極波形は矩形波に調整される。
次に、放電用の陽電極Pの一構造例を、図9に基づき詳細に説明する。
その陽電極Pは、相互に間隔をおいて並べて設けられると共に各先端が水槽V1における水が流水する水面に向かって斜めに延びる多数の放電用針7と、各放電用針7相互を電気的に接続する平板状の導電部材8と、各放電用針7の上半部と導電部材8とを覆う上下一対の絶縁性カバー9と、より構成される。その絶縁性カバー9の下面からは各放電用針7の先鋭な下半部が突出して延びている。また、導電部材8の一部は、絶縁性カバー9の側部から外部に引き出されている。その引き出し部には、後述する高周波高電圧パルス放電用電源Eの印加側端子Eaから延びる印加側の外部配線Laが接続される。
前記放電用針7の構成材料としては、導電性を有する金属、望ましくは耐腐食性の金属(例えばステンレス)が選択される。前記導電部材8の構成材料としては、導電性を有し且つ放電用針7と接続、固定が可能であり且つ外部配線Laとの接続、固定が可能な材料であればよく、例えば、種々の導電性金属、活性炭素繊維成形体、導電性金属メッキ材等が挙げられる。さらに前記絶縁性カバー9としては、絶縁性を有する材料、例えばエポキシ系樹脂やポリアミド樹脂が挙げられる。
次に本実施形態のプラズマ放電処理水生成装置A1による作用を説明する。
水槽V1内において、ポンプ11により水を流し、C1からC2に水が流れ落ち始めるところに、高周波高電圧パルス放電用電源Eにより高周波高電圧パルス放電を印加すると、陰電極Mから上記高周波高電圧パルス放電に伴い短時間のうちに極めて多数の電子が水槽V1内の水中に放出されることになる。しかし、その放出電子が、水の保持できるマイナス電荷数を超えると(すなわち水中への電子の放出が過度になされて、水中の電子が過飽和となると)、その放出電子は、水面Wfよりその上方の陽電極Pの放電用針7に向かって空中に飛び出す。そして、この飛び出した多数の電子は、空中の酸素分子と衝突して、例えばマイナス電荷を有する酸素ラジカルと、プラス電荷を有するスーパーオキサイト群を生じさせる。そして、それらが同じ空間に同時に多数混在分布することで、図18に模式的に示すような発光状態のプラズマ放電流Fが、各放電用針7とその直下の水面Wfとの間でそれぞれ発生する。このとき、水面Wfには、各プラズマ放電流Fに対応してすり鉢状の凹部sが形成されており、この凹部sの存在からも、プラズマ放電流Fのエネルギーが放電用針7から水面Wf側に向かい、その水面下に入り込む様子が容易に窺い知れる。
ここで、「水中に電子を過度に放出させ」とは、水槽内の水が電子を保持できるマイナス電荷数を超えて水中に多数の電子を放出させること、すなわち水中に電子を過飽和状態となってもなお放出させることを意味している。この電子の過度の放出により、余剰の電子は水面から空中の放電用陽電極に向かって飛び出し可能となる。
また、プラズマ放電の形態には、暗放電、火花放電、コロナ放電、グロー放電、アーク放電等がある。またプラズマ放電は温度により、低温プラズマ放電と高温プラズマ放電とに分けられる。
なお、空気の主要成分である窒素分子は、酸素分子に比べ安定度が高く、本条件による電子衝突エネルギーではラジカル分子を発生せず、上記プラズマ放電流Fの発生によってもNOx等の有害成分を生じさせないことが確認された。
そして、上記プラズマ放電流Fは、放電用針7から水面Wf側に向かう途中でその周囲空間の酸素分子や上記スーパーオキサイト群を巻き込んでオゾンや酸素ラジカルを生じさせると共に、そのオゾンや酸素ラジカルを水中に強力に引擦り込んでオゾンの水中への分子レベルでの溶解を起こす。またそれと同時に、水中に元々溶解していた一部の酸素分子が空中に放出される。そして、その水に溶解した一部のオゾンと酸素ラジカルが水分子と反応すると、水酸基ラジカル(OH・)とヒドロキシルラジカル(H・)および(HO・)が発生する。
このようにして得られたプラズマ放電処理水は、溶存酸素量がプラズマ放電処理前と比べて大幅に減少(例えば750ppm→500ppm)すると共に、酸化還元電位がプラズマ放電処理前と比べて大幅に減少(例えば700mV→400mV)する。またプラズマ放電処理水は、オゾン濃度が大幅に増加して0.1ppm〜3ppm程度含まれるようになる。そして、このプラズマ放電処理水は、界面活性効果が高く、灯油等の油とエマルジョンを形成可能な程度の高い親油性を発揮する。また上記ヒドロキシルラジカル(H・)および(HO・)は、前述のようなアスベスト無害化のための弱酸塩および強酸塩の金属相互の置換反応の反応速度を上げる強酸の代替手段となり得る。
こうして、前記プラズマ放電処理水生成装置A1により、水槽V内の水(例えば水道水)に対し所定時間(例えば10分間)に亘り上記のプラズマ放電処理を行えば、その水は、プラズマ放電前の状態よりもオゾン濃度が高く且つ酸化還元電位が低く且つまた溶存酸素量が少なく且つまた油との親和性が良好なプラズマ放電処理水となる。しかも、このプラズマ放電処理水は、生成後、比較的長期(約1カ月以上)に亘って水中にオゾンを高い濃度のまま溶解させておくことができることが確認された。これは、前述のようにプラズマ放電流Fによりオゾンを水中に強力に引擦り込んで、オゾンの水中への分子レベルでの溶解を促進できるためと考えられる。したがって、上記プラズマ放電処理水は、長期の保存に適したオゾン水となるものであり、しかもこれを生成後すぐに使用する必要がないことから、プラズマ放電処理水生成装置A1を処理水の使用現場(すなわちアスベストの無害化処理施設)近くに設置する必要がなく、利便性や量産性に優れている。
そして、本実施形態においては、水槽V1内にプラズマ放電処理すべき水Wを予め入れておき、還流手段としてのポンプ11を連続運転すると、第1室C1内の水Wがポンプ11で第2室C2内に強制的に圧送される。これにより、第2室C2内の水面が上昇して堰板10を超えるようになると、その水Wが堰板10の上部からオーバフローして第1室C1に流れ下る。このようにして第1室C1と第2室C2間で水槽V1内の水Wが強制循環される。この水循環状態において、堰板10の斜め上方で水槽V1内の上部空間に存する前記陽電極Pと、水槽V1の水中(図示例では堰板10の上端部近傍)に浸漬させた陰電極Mとの間で、高周波高電圧パルス放電用電源Eにより高周波高電圧パルスを放電させると、本実施形態と同様にして、陽電極P(放電用針7)と、堰板10をオーバフローしようとする水の表面との間でプラズマ放電流Fが生じる。そして、このプラズマ放電流Fを、堰板10をオーバフローしようとする水Wに直接作用させることにより、この水Wが、本実施形態で得られるプラズマ放電処理水と同様のプラズマ放電処理水となる。
また本実施形態によれば、水槽V1の第1室C1と第2室C2間で水を循環させながらその水に対しプラズマ放電処理を継続的且つ十分に行うことができるため、プラズマ放電処理水の量産化やコスト節減を図る上で有利である。しかも図示例では、堰板10の上端部長手方向に沿って配列された多数の放電用針7…から堰板10のオーバフロー流に向かって多数の(したがって広範囲に亘り)プラズマ放電流Fを生じさせることができるから、プラズマ放電処理を連続的に効率よく行うことができる。すなわち、水を循環させ、水が流れているところに放電をするので、効率よく、水を放電処理できる。
次に図11を参照して本実施形態の第1変形例を説明する。
図11は、図7のプラズマ放電処理水生成装置A1の第1変形例の概要を示す模式図である。
図11に示すように、プラズマ放電処理水生成装置A2は、陰電極M2と、陽電極Pと、ポンプ21と、連通路(パイプ)22と、を有する。
陰電極M2は、板状の金属板であり、水面Wfの上方に傾斜させて設置されている。
陽電極Pは、陰電極M2の傾斜に合わせて、放電用針7の先端が陰電極M2の上面とほぼ平行なるように設置されている。
陰電極M2と陽電極Pとは、高周波高電圧パルス放電用電源E2に接続されている。
ポンプ21は、パイプ22を介して、水槽V2から水をくみ上げる。そして、ポンプ21は、くみ上げた水を、パイプ22の先端から陰電極M2の上面に注ぐ。
陰電極M2の上面に注がれた水は、陰電極M2の上面を流れ下り、陰電極M2の水面Wf側の下端から、水面Wfに流れ落ちる。このように水は循環し、ポンプ21と、パイプ22とが、第1電極および第2電極の間の水を移動させる水移動手段の一例として機能する。
陽電極Pと陰電極M2との間に、高周波高電圧パルス放電用電源E2により放電を行い、プラズマ放電処理水を生成する。
本変形例は、堰板10を設けたり、水槽V1の底に孔を開けたりする必要がないので、簡易な構成になる。
なお、陰電極M2は傾いているが、水平であっても、ポンプ21からの水圧により、陰電極M2の上面を流れるようにしてもよい。
次に、図12を参照して本実施形態の第2変形例を説明する。
図12は、図7のプラズマ放電処理水生成装置A1の第2変形例の概要を示す模式図である。
図12に示すように、プラズマ放電処理水生成装置A3は、陰電極M3と、陽電極Pと、撹拌子25と、を有する。
陰電極M3は、例えば、金網であり、水槽V2の水Wの流れを妨げない構造ならよい。
陽電極Pは、水面Wfの上方に、水槽V2の中心からずれた位置に設置されている。放電用針7の先端は水面Wfに向いている。
陰電極M3と陽電極Pとは、高周波高電圧パルス放電用電源E2に接続されている。
撹拌子25は、プラスチックで覆われた磁石である。撹拌子25は、水槽V2の底面の外側に設置された撹拌装置(図示せず)により、回転する。
撹拌子25が回転することにより、水槽V2の水Wが、水槽V2の円周方向に流れて、循環する。円周方向に流れる水Wにより、陰電極M3の上面を水Wが流れる。円周方向に流れる水Wにより、水面Wfは、遠心力により水槽V2の内壁側が盛り上がる。
このように水は循環し、撹拌子25が、第1電極および第2電極の間の水を移動させる水移動手段の一例として機能する。
陽電極Pと陰電極M3との間に、高周波高電圧パルス放電用電源E2により放電を行い、プラズマ放電処理水を生成する。
本変形例は、堰板10を設けたり、水槽V1の底に孔を開けたりする必要がないので、簡易な構成になる。さらに、本実施形態や第1変形例と異なり、ポンプも必要がないため、さらに簡易な構成になる。
次に、本発明の好ましい実施形態における無害化されたアスベスト処理物を資源として利用する方法について図13に基づき説明する。
図13は、本実施形態のアスベスト処理剤により処理されたアスベストの利用方法を示す説明図である。なお、アルコキシシランまたはアルコキシケトン(例えば、テトラメトキシシランやメチルトリメトキシシラン)と、マグネシウムよりもイオン化傾向の高い、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうち少なくとも1つの金属の塩(例えば、フッ化カルシウムおよび硫酸カルシウム)と、水溶性の有機溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)と、水(例えば、放電処理水)の場合について、処理されたアスベストの利用方法を特に説明する。
まず図13に基づき、アスベストを分解して分留により得られる物質について説明する。
図13に示すように、まず、アスベスト30にアスベスト処理剤31を加えて、アスベスト30を分解させアスベスト処理物を得る。反応が進むと、固形物質が沈降し、ゲル状の流動物質が上澄みとして現れる。
その後、これらのアスベスト処理物を加熱により固形物質と流動物質とに分離する。
この分離は分留により行い、流動物質を沸点の違いにより、分けて回収する。なお、分留は減圧下で行ってもよい。なお、分離は遠心分離によってもよい。
分留としてまず、副生成物として発生するメチルアルコール40が蒸発する温度(例えば64.7℃以上)まで温度を上昇させ、メチルアルコールを回収する。このメチルアルコールをアルコキシシランの原料としてもよいし、水素の原料としてもよい。
メチルアルコールが蒸発したら、次に、水溶性有機溶媒41であるイソプロピルアルコールが蒸発する温度(例えば、82.4℃以上)まで温度を上昇させ、イソプロピルアルコールを回収する。回収されたイソプロピルアルコールは、アスベスト処理剤の水溶性有機溶媒41として再利用する。
さらに分留の温度を270℃程まで上昇させ、フッ素とマグネシウムの化合物42を取り出す。例えば、CHMgFのようなハロゲン化アルキルマグネシウム(グリニャール試薬)である。
最後に、固形物質として、酸化カルシウムCaO、酸化ケイ素SiO、硫酸カルシウムCaSO等の残留分43を取り出す。
なお、反応がある程度進んだ、反応の後半に分留を始めてもよい。メチルアルコールを蒸発させることにより、反応がより促進される。
次に、分留により得られたフッ素とマグネシウムの化合物42からフッ化マグネシウム(MgF)44を得る方法について説明する。
これは、フッ素とマグネシウムの化合物42に高温(例えば、450℃以上)の水蒸気を反応させて水素を取り出し、メトキシフッ化マグネシウムを生成させる。さらに高温(例えば、600℃以上)の水蒸気を反応させて水素、酸素、メチルアルコールを取り出す。
これらを反応式で表すと下記のようになる。
CHMgF+HO→ H +CHOMgF ・・・(2)
2CHOMgF+2H
→ H↑+O↑+2CHOH+MgF+MgO・・・(3)
さらに、析出したフッ化マグネシウムと酸化マグネシウムを塩酸で処理して分離する。
MgF+2MgO+2HCl
→ MgF+MgCl↓+HO+O↑・・・(4)
塩化マグネシウム(MgCl)は水に溶け出し、フッ化カルシウム(MgF)を分離できる。
次に、残留分43から酸化ケイ素(SiO)45を得る方法について説明する。
残留分43は、酸化カルシウムCaO、酸化ケイ素SiO、硫酸カルシウムCaSO等の混合物である。この残留分43に水を加え、水溶性の成分は水に溶かす。不溶性の残りに更に水を加え、遠心分離させ、比重の重い酸化ケイ素45を取り出す(水沈殿遠心分離法)。
次に、回収した酸化ケイ素45から太陽電池50用のシリコンを得る方法について説明する。
図14は、本実施形態のアスベスト処理剤により太陽電池用のシリコンを得る方法を示すフローチャートである。
まず、回収した酸化ケイ素45から不純物を取り除く(ステップS15)。例えば、回収した酸化ケイ素45に塩酸を加え、残っているマグネシウムやカルシウムを除去する。
特に、高温にしてフッ素とマグネシウムの化合物42を取り出さず、化合物42と残留分43との混合物に水を加えて利用する場合、2MgO・3SiO等のマグネシウム分が残っている。低温減圧燃焼炉において化合物42が蒸発する温度に上げる場合も、マグネシウムが残留分に残りやすい。なお、遠心分離しないで、硫酸カルシウムが残っていてもよい。
次に、不純物が取り除かれた酸化ケイ素を炭素により還元し、金属シリコンを取り出す(ステップS16)。なお、一部の酸化ケイ素からアルコキシシランを生成し、再利用してもよい。
そして、取り出した金属シリコンを精製し、太陽電池グレードのシリコンの多結晶インゴットを取り出す(ステップS17)。このシリコンから太陽電池50を作製する。
このように、処理したアスベストを捨てるのではなく太陽電池の資源として利用できる。また、アスベストの処理に処理費用が得られる場合、アスベスト利用システム全体として、低コストで太陽電池等に利用できるシリコンを得ることができる。なお、太陽電池に使われるシリコンの純度は、純度99.99999%(7N)を要求されるが、IC等に使われるシリコンの半導体グレード(純度99.999999999%)ほど高純度を必要としない。
次に、残留分43の利用方法について説明する。
残留分43は、セメント等の建築資材51として利用する。一般的なセメントであるポルトランドセメントは、ケイ酸カルシウム(2CaO・SiO、3CaO・SiO)、カルシウムアルミネート(3CaO・Al)、硫酸カルシウム(CaSO・2HO)等を含有する。残留分43の主成分は、酸化カルシウム、酸化ケイ素、硫酸カルシウム等であり、セメントの原料として好適である。
例えば、セメントを製造する場合、残留分43による硫酸カルシウムの量が所定の量になるように、残留分43に対して、石灰石、ケイ石、粘土、および酸化鉄を加えて、キルンに投入して焼成させる。
また、混合セメントの原料としてもよい。さらに、残留分43から酸化ケイ素45を取り除いた物質をセメントの原料にしてもよい。この場合、硫酸カルシウムが多いのでクリンカの添加剤として利用できる。
また、高温にしてフッ素とマグネシウムの化合物42を取り出さず、化合物42と残留分43との混合物を利用した建築資材51でもよい。この場合、マグネシウム分を含み、耐火性の建築資材になる。
次に、メチルアルコール40から水素ガス52を得る方法について説明する。
メチルアルコール40から水素ガス52を得る方法は様々あるが、まず、メチルアルコール40に水蒸気とを触媒下で反応させて水素ガス52を製造する方法が挙げられる。すなわちメチルアルコール40のスチームリフォーミング(水蒸気改質)反応である。触媒として低温活性の高い触媒(例えば、特開2002−79100号公報)を利用するとエネルギー効率がよい。
次に、フッ素とマグネシウムの化合物42の一例であるハロゲン化アルキルマグネシウム(グリニャール試薬)を利用した水素ガス52製造が挙げられる。
回収された化合物42(CHMgF)に水蒸気を混合するとCHMgFの還元作用により、式(2)で示したような化学反応が起こり、発生した水素ガス回収する。さらに、式(3)で示したように、水蒸気を作用させて水素ガスを得る。発生したメチルアルコール(CHOH)は、水蒸気改質による水素製造に利用してもよい。
また、CHOMgFは重合触媒担持体マグネシウムメチラート(CHO)Mgの前駆物質として再利用できる。なお、化合物42は、例えばグリニャール試薬のように、様々な有機化学反応ための有機合成試薬53として利用してもよい。
また、生成したフッ化カルシウムや酸化マグネシウムを、耐火用の建築資材51の原料として利用してもよいが、式(4)で示したように、フッ化マグネシウム(MgF)および酸化マグネシウムMgOに塩酸を加え、フッ化マグネシウム44を取り出してもよい。このフッ化マグネシウム44は光学系材料54として利用できる。
以上、本発明の好ましい実施形態やその変形例は、アルコキシシランまたはアルコキシケトン(例えば、テトラメトキシシランやメチルトリメトキシシラン)と、マグネシウムよりもイオン化傾向の高い、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうち少なくとも1つの金属の塩(例えば、フッ化カルシウムおよび硫酸カルシウム)と、水溶性の有機溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)と、水(例えば、放電処理水)とを含有する本実施形態のアスベスト処理剤31を準備して、アスベスト処理剤31をアスベスト30に加えてアスベスト処理物を得て、アスベスト処理物から流動物質40、41、42と固形物質43とを分離することにより、前記有機溶媒の沸点以下である25℃ほどの室温でアスベストを分解して、扱いが容易な資源を得ることができる。
よって、25℃ほどの室温でも、アルコキシシラン等がアスベスト30にまず反応してから、金属の塩により、金属の塩の金属原子と、アスベスト構成分子内のマグネシウム原子とが置換してアスベストをゲル化して分解させて生じたアスベスト処理物であるため、扱いが容易な資源を得ることができ、アスベストを様々な資源として有効に利用しやすくなる。
したがって、高温溶融炉による燃焼処理やフッ化水素による劣化処理を特別に行うことなく処理されたアスベストを資源として有効に利用できる。例えば、太陽電池50や、セメント等の建築資材51や、水素ガス52等の資源として利用可能である。
さらに、従来の高温溶融炉による燃焼処理とは異なり、他の物質が溶け合ったりしないため、分解されアスベスト処理物を分離して、それぞれの用途に応じて再利用しやすい。アスベスト処理物を無駄なく利用しやすい。
また、加熱により流動物質40、41、42と固形物質43とを分離することにより、アスベスト処理物の沸点に応じて分離させるため、メチルアルコール40やイソプロピルアルコールのような水溶性有機溶媒41等の蒸発しやすい物質を分離しやすい。また、加熱温度により、流動物質に含まれる物質を加熱温度に応じて更に分離できる。水溶性有機溶媒41は回収してアスベスト処理剤の原料として再利用できる。
また、流動物質が、アルコキシシランのアルコキシ基に対応するアルキル基を有するアルコール(メチルアルコール40)を有するので、これを分離してメチルアルコール40を水蒸気改質させて水素ガス52を製造する場合、アルコキシシランから生成したメチルアルコールを水素資源として燃料電池や水素エンジンや水素ボイラーに利用できる。
また、固形物質としての残留分43は、アスベスト30から生成した酸化ケイ素45と、アスベスト処理剤31のアルコキシシランから生成した酸化ケイ素45とを有しているので、この残留分43から酸化ケイ素45を取り出し、この酸化ケイ素45から太陽電池50を製造できる。
この場合、酸化ケイ素45を、シリコンの原料として再利用できる。
また、残留分43を建築資材51であるセメントの原料に利用する。
この場合、強酸塩の反応物の酸化カルシウムや強酸塩の硫酸カルシウムや酸化ケイ素等がセメントの原料として利用可能である。
また、放電処理水や水溶性の有機溶媒を加えない本実施形態のアスベスト処理剤により、輸送すれば、輸送コストの低減が図れる。特に、アスベスト処理剤をアスベストに加える少し前に、放電処理水を作製し、加えた場合、活性が高く、反応が早く進む。
また、アルコキシシランまたはアルコキシケトンと、水溶性有機溶媒と、前記金属の塩とを予め混合しておいて、作業現場で、水を加えてもよい。この場合も、水がない分、輸送コストの低減が図れる。この加える水が放電処理水の場合、活性が高く、反応が早く進む。
さらにまた、本実施形態やその変形例は、分解され無害化したアスベストを再利用しやすい。従来の高温溶融炉による燃焼処理や、フッ化水素による劣化処理後の燃焼処理の場合は、吹き付け剤としてセメントや塩素を含む材料等が溶け合っていたため、再利用することが難しかった。フッ化水素による劣化処理の場合は、フルオル酸マグネシウムが発生するため、再利用が難しく、そのまま産業廃棄物として捨てられていた。
また、水と、水溶性の有機溶媒とを含有するアスベスト処理剤は、流動性が高い液体状であり、そのまま、アスベストに添加することにより、すぐに処理剤として使える。また、液体状であるため、大量のアスベストに均一にアスベスト処理剤を接触させることができる。
また、金属の塩の種類が、フッ化カルシウムおよび硫酸カルシウムの2種以上であり、硫酸カルシウムは、アスベストのマグネシウム原子と置換したフッ化カルシウムのカルシウム原子を補うことで、フッ化カルシウム単独よりも、処理剤のコストを抑えることができる。早急に処理すべきアスベストは大量にあるので、コストを抑えることは産業上重要な要素である。なお、硫酸カルシウムや塩化カルシウムの他に、燐酸カルシウムや酢酸カルシウムでもよい。
また、フッ化カルシウムおよび硫酸カルシウムは、金属の塩が、カリウム、カルシウムおよびナトリウムのうち少なくとも1種の強酸塩であるので、リチウムやルビジウム等に比べて、低コストの強酸塩となる。
また、有機溶媒がイソプロピルアルコールの場合、メトキシ基(CHO−)を有するアルコキシシランとアスベストが反応して発生するメチルアルコールと異なるので、反応を阻害しない。また、メチルアルコールに比べ、イソプロピルアルコールの分子量が大きく、沸点が高いので、メチルアルコールの沸点以上、イソプロピルアルコール以下の温度に加熱すると、メチルアルコールを蒸発させて反応を促進させることができる。
また、従来、例えばアスベストの回収現場において、アスベストを、これが付着したアスベスト施工壁面から人手により剥離し、それらを纏めて高温溶融炉で加熱してアスベストの針状結晶構造を溶融、無害化することが行われている。この場合には、回収現場でアスベストを施工壁面より剥離する際に有害なアスベストが飛散するため、その飛散を防ぐ手だてが必要で作業が非常に煩雑になり、また高温溶融炉はその絶対数が足りない上、燃焼温度が高く(1300〜1600℃)、その運転コストが嵩む等の問題があった。
しかし、本実施形態やその変形例により、アスベストを回収せず、直接、本実施形態のアスベスト処理剤を散布して、アスベストを分解できる。そのため、アスベストを飛散させずに、アスベストを処理できる。また、飛散を防ぐ大掛かりな作業が不要になる。さらに、高温で処理する必要がないので、運転コストも下げることができる。
また従来、高温溶融炉の燃焼温度を600℃前後に下げるために、フッ化水素によりアスベストを燃焼前に予め劣化させて比較的低温でも燃焼しやすくしておくことが考えられていた。この場合には、燃焼処理時にフッ化水素ガスが発生するといった別の問題がある。
しかし、本実施形態やその変形例において、フッ化水素ガスは発生しないため、取り扱いが容易である。
さらに従来、長年使用されてきた建物や各種設備の壁面に付着しているアスベストには、使用に伴う種々の汚れ(例えば油、車の排気ガス等)で表面が覆われ、各種の処理薬剤がアスベストに浸透しにくい問題もある。
しかし、本実施形態やその変形例におけるプラズマ放電処理水を使用することにより、表面が汚れたアスベストでも、25℃程度の室温でも、本実施形態のアスベスト処理剤が浸透しやすくなる。
また、本実施形態やその変形例は、アスベスト構成分子内のマグネシウム原子の少なくとも一部をカルシウム原子と置換する反応と、前記アスベスト構成分子内の水酸基にアルコキシシランを結合させる反応とに基づいて、アスベストの針状結晶を膨張させ、ゲル化させ、固化させ且つその固化後のガラス化反応で前記針状結晶をゲル化により溶解させた状態でガラス化できるようにしたので、アスベストの有害な針状結晶構造を簡単に消滅させてアスベストを無害化できる。そして、その無害化のために高温溶融炉による燃焼処理やフッ化水素による劣化処理を特別に行う必要はなくなり、処理コストの節減を図ることができる。しかも、その無害化されたアスベストは、建設資材として有効に利用できる他、土中にそのまま廃棄しても周囲環境を汚染する心配がない。
また本実施形態やその変形例は、アルコキシシランをアルコール系溶剤に混ぜた溶液中に、水と反応して固化するカルシウム塩と、マグネシウムよりもイオン化傾向の高いカリウムK、カルシウムCaまたはナトリウムNaのうちの少なくとも1種の強酸塩とを混ぜて得られる処理溶液を作成し、この処理溶液をアスベストに接触、吸収させ、更にそのアスベストに水を作用させることにより、該アスベストの針状結晶を膨張させ、ゲル化させ、そして固化させる。その固化後のガラス化反応で前記針状結晶をゲル化して溶解させた状態でガラス化して、アスベストを無害化する。
また本実施形態やその変形例は、予めプラズマ放電処理された水を、前記アスベストに作用させる前記水として用いる。
また本実施形態やその変形例は、水(W)を貯留した水槽(V)と、この水槽(V)の水面(Wf)上の空間に配設される放電用の陽電極(P)と、この水槽(V)の水中に少なくとも一部を臨ませた陰電極(M)と、その陰電極(M)より水中に電子を過度に放出させて陽電極(P)と水面(Wf)との間でプラズマ放電を生じさせ得るように該陽電極(P)と陰電極(M)との間で高電圧放電を行うための高電圧放電手段(E)とを少なくとも備えたプラズマ放電処理水生成装置を用いてプラズマ放電処理水を作成し、そのプラズマ放電処理水を、前記アスベストに作用させる前記水として用いる。
また本実施形態やその変形例は、前記処理溶液中にアスベストを投入、撹拌した後、その処理溶液に前記プラズマ放電水を添加、撹拌することにより、アスベストの針状結晶を膨張させ、ゲル化させ、固化させる。その固化後のガラス化反応で前記針状結晶を溶解させた状態でガラス化する。
これらプラズマ放電処理水を用いる場合、予めプラズマ放電処理された水を、アスベストに作用させる水として用いるので、そのプラズマ放電処理水がアスベスト表面部への高い浸透性と親油性を発揮して、種々の汚れ(例えば油、車の排気ガス等)で表面が覆われるアスベストに対しても処理溶液を十分且つ迅速に浸透させることができる。その上、このプラズマ放電処理水が、アルコキシシランを含む処理溶液のゾルゲル反応を効果的に促進して、反応時間の短縮を図ることができ、それらの結果、処理作業の効率向上に大いに寄与することができる。
また本実施形態やその変形例は、アスベスト処理方法の実施に用いるプラズマ放電処理水生成装置であって、前記水槽(V)が、その内部を少なくとも2室(C1,C2)に分割する堰(10)を備え、その2室(C1,C2)間には、その第1室(C1)から第2室(C2)に向けて水を強制的に還流させる還流手段(11)が設けられていて、その第2室(C2)に還流された水が前記堰(10)の上端部を超えて第1室(C1)側にオーバフロー可能であり、前記堰(10)の上端部には、そこをオーバフローしようとする水の中に少なくとも一部が浸漬されるように前記陰電極(M)が該上端部の長手方向に沿って配設される。
この場合、水槽の第1室と第2室間で水を連続的に循環させながらその水に対しプラズマ放電処理を継続的且つ十分に行うことができるため、プラズマ放電処理水の量産化やコスト節減を図る上で有利である。
さらに本実施形態やその変形例は、前記プラズマ放電処理水生成装置の構成に加えて、前記陰電極(M)は、金網で前記堰(10)の上端部にこれを跨ぐように形成され、前記陽電極(P)は、前記陰電極(M)の上方空間に前記堰(10)の上端部の長手方向に互いに間隔をおいて並設されて各々の先端が該陰電極(M)に向かって延びる導電性材料よりなる多数の放電用針(7)を備える。
この場合、多数の放電用針から水面に向かって多数の(したがって広範囲に亘り)プラズマ放電流を発生させることができ、そのプラズマ放電効果によりプラズマ放電処理を効率よく行うことができる。
なお、本実施形態やその変形例を詳述したが、本実施形態はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。例えば、本実施形態の方法は、建物や種々の設備の壁面に付着したアスベストを無害化処理するのに実施可能であることは勿論のこと、他物に固定されていないアスベスト、例えば建物や種々の設備の壁面より分離、回収されて特定場所に集められたアスベストを無害化処理するのにも実施可能である。なお、ここでいうアスベストには、アスベスト単体状態で使用されるものが含まれることは元より、ロックウール、スレートその他の建築資材と混在した状態で使用されているアスベストも含まれる。
またプラズマ放電処理水生成装置A1の実施形態では蓄電部材5として活性炭素繊維からなる繊維成形体を用いたが、この活性炭素繊維に代えて、水槽底壁Vaの上面側に集まるマイナス電荷(電子)を蓄電可能であり且つ水中へ放出可能な種々の素材を使用することができる。
次に、図に基づき、実施例について説明する。
図21は、光学顕微鏡(倍率1000倍)により撮影したクリソタイルを示す光学顕微鏡写真である。
図21Aは、無害化処理前の状態、すなわち、本実施形態のアスベスト処理剤により処理される処理前のクリソタイルの状態を示す顕微鏡写真である。
図21Bは、図21Aのクリソタイルが処理されている処理中の状態を示す顕微鏡写真である。
図21Cは、無害化処理後の状態、すなわち、図21Aのクリソタイルが処理された処理後の状態を示す顕微鏡写真である。
また、図22は、クリソタイルの針状結晶の状態変化を示すための光学顕微鏡写真の拡大写真である。
図22Aは、本実施形態のアスベスト処理剤によりクリソタイルの針状結晶が溶解(分解)した直後の状態を示す顕微鏡写真である。なお、処理の開始から2時間後の顕微鏡写真である。
図22Bは、針状結晶が溶解(分解)後、ガラス化した状態を示す顕微鏡写真である。
なお、処理の開始から3日後の顕微鏡写真である。
まず、使用した、アスベスト処理剤の成分および割合について説明する。
アルコキシシラン(メチルトリメトキシシランCHSi(OCH))が1に対して、イソプロピルアルコールが2、フッ化カルシウムが1、硫酸カルシウムが2、プラズマ放電処理水が1の割合(重量比)で混合して、アスベスト処理剤とした。なお、温度は、25℃ほどの室温状態で行った。また混合手順は、図1のフローチャートに従った。
このアスベスト処理剤を、スライドガラス上に載せたクリソタイル(白石綿)に加え、顕微鏡により観察を行った。
そして、クリソタイル(白石綿)を無害化処理前から処理後にかけて、光学顕微鏡により撮影した結果、本実施形態の無害化処理方法によりクリソタイルの膨張、固化(ゲル化)した針状結晶が溶解(分解)した後、ガラス化されることが確認できた。
すなわち、図21(A)は、光学顕微鏡(倍率1000倍)により撮影した無害化処理前のクリソタイルを示した。
また、図21(B)は、倍率3000倍で、クリソタイルの一部が分解されている様子を撮影した顕微鏡写真である。図7のP1かP2に対応する。線状の物質がクリソタイルであり、線状の物質の上に、膨張して、球状の粒に見えるところが、分解され始めたところである。
また図21(C)は、倍率5000倍で、本実施形態の方法によりクリソタイルの針状結晶がガラス化した状態を示す。完全に線状の物質が消え、粒上のガラス玉のような物質が見える。
次に、クリソタイルが分解される前と後とを拡大した顕微鏡写真を示す。
図22(A)は、本実施形態の方法によりクリソタイルの針状結晶が溶解した直後の状態(処理の開始から2時間後)を示す光学顕微鏡写真の拡大写真である。また図22(B)は、同方法によりクリソタイルの針状結晶が溶解(分解)後、ガラス化した状態(処理の開始から3日後)を示す同様の拡大写真である。これら写真によれば、クリソタイル(白石綿)の針状結晶が本実施形態の方法により徐々に溶解(分解)し、最終的にはガラス化して、無害化されたことが窺い知れる。
次に、アルコキシシランとして、テトラメトキシシランSi(OCH、メチルトリメトキシシランCHSi(OCH)、ジメチルジメトキシシラン(CHSi(OCH)、テトラエトキシシランSi(OC、メチルトリエトキシシランCHSi(OC、ジメチルジエトキシシラン(CHSi(OC、チタンオキサイドトリメトキシシランTiOSi(OCHをそれぞれ用い場合において、図9における球状の粒子が析出する時間を測定した。なお、実験条件は前記のメチルトリメトキシシランを用いた場合と同じである。
メチルトリメトキシシランの場合、3〜15分ほどで、テトラメトキシシランの場合、2〜6分ほど、ジメチルジメトキシシランの場合、10〜30分ほどで、チタンオキサイドトリメトキシシランの場合、3〜15分で、球状の粒子が析出した。
一方、テトラエトキシシランや、メチルトリエトキシシランや、ジメチルジエトキシシランの場合は、球状の粒子が析出するまでに、30分以上かかった。
次に、図17に基づき、本実施形態のアスベスト処理剤により処理されたクリソタイルの分析結果について説明する。
図17は、本実施形態のアスベスト処理剤により処理されたクリソタイルの分析結果を示す表である。
図17に示すように、処理される前のクリソタイルは、マグネシウム分が43.52%であるが、処理後の物質には、マグネシウム分がなくなっている。この処理後の物質は、図13に示したように、残留分43に関しての分析結果である。
この結果より、アスベスト(クリソタイル)の針状結晶構造の核となるマグネシウムMgがSiOから分離されていることが分かる。したがって、アスベストの針状結晶構造が破壊されていることが分かる。
さらに、アスベスト処理物の固形物質にマグネシウム分が存在しないことから、CHMgFのようなハロゲン化アルキルマグネシウム(グリニャール試薬)の形で存在していると考えられる。
なお、図17におけるCaOやSO3は、アスベスト処理剤に含まれている硫酸カルシウムやフッ化カルシウムに由来する。
また、クリソタイルの標準試薬として、アスベスト(クリソタイル型)を用いたが、Feが含まれていた。このFeもかなり減少していることが分析結果から分かる。アスベスト構成分子内の鉄原子は、マグネシウムよりもイオン化傾向が低いので、カルシウム原子と置換され、ハロゲン化アルキル金属に変化したと考えられる。このようにアスベスト構成分子内に鉄原子を有するアスベストも、本実施形態のアスベスト処理剤により分解されたことが分かる。
なお、この分析は、日本電子社のエネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いた。酸化物として各元素の分量を示している。
本発明における実施形態のアスベスト処理剤の作成手順の一例を示すフローチャートである。 本実施形態のアスベスト処理剤による処理手順の一例を示すフローチャートである。 本実施形態のアスベスト処理剤とアスベストとの反応のプロセスの一例を示すフローチャートである。 本実施形態のアスベスト処理剤とアスベストとの反応の初期段階の一例を示す模式図である。 アスベストの針状結晶の一例を示す模式図である。 本実施形態のアスベスト処理剤によるアスベストの分解の様子の一例を示す模式図である。 本実施形態のプラズマ放電処理水生成装置を示す全体縦断面図である。 図7のプラズマ放電処理水生成装置の平面図である。 図7のプラズマ放電処理水生成装置の要部を示す斜視図である。 図7のプラズマ放電処理水生成装置における陽電極と陰電極間でのプラズマ放電流の発生状態を簡略的に示す説明図である。 図7のプラズマ放電処理水生成装置の第1変形例の概要を示す模式図である。 図7のプラズマ放電処理水生成装置の第2変形例の概要を示す模式図である。 本実施形態のアスベスト処理剤により処理されたアスベストの利用方法を示す説明図である。 本実施形態のアスベスト処理剤により処理されたアスベストから太陽電池用のシリコンを得る方法を示すフローチャートである。 本実施形態のアスベスト処理剤により処理される処理前のクリソタイルの状態を示す顕微鏡写真である。 図15Aのクリソタイルが処理されている処理中の状態を示す顕微鏡写真である。 図15Aのクリソタイルが処理された処理後の状態を示す顕微鏡写真である。 本実施形態のアスベスト処理剤によりクリソタイルの針状結晶が分解した直後の状態を示す顕微鏡写真である。 図16Aの針状結晶が分解後、ガラス化した状態を示す顕微鏡写真である。 本実施形態のアスベスト処理剤により処理されたクリソタイルの分析結果を示す表である。
符号の説明
30・・・アスベスト
31・・・アスベスト処理剤
40・・・メタノール
41・・・水溶性有機溶媒
43・・・残留分(固形物質)
45・・・酸化ケイ素
50・・・太陽電池
51・・・建築資材(セメントの原料)
52・・・水素ガス(水素)

Claims (4)

  1. アルコキシシランと、フッ化カルシウムを含む2種類以上のカルシウム塩と、を含有するアスベスト処理剤を準備するアスベスト処理剤準備手順と、
    前記アスベスト処理剤をアスベストに加えて、前記アスベストの水酸基と前記アルコキシシランとを反応させてアルコールを生成し、前記アスベストのマグネシウムと前記カルシウム塩のカルシウムとを置換して、前記アスベストが分解したアスベスト処理物を得るアスベスト処理手順と、
    前記アスベスト処理物から前記生成したアルコールと固形物質とを分離する分離手順と、
    を備え、
    前記生成したアルコールまたは前記固形物質を資源として利用することを特徴とするアスベスト利用方法。
  2. 前記フッ化カルシウムを含む2種類以上のカルシウム塩が、フッ化カルシウムおよび硫酸カルシウムであることを特徴とする請求項1に記載のアスベスト利用方法。
  3. 前記アスベスト処理手順において、記アスベストの水酸基と前記アルコキシシランとが反応して生成したアルコールを除去して反応を進めるために、加熱をすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアスベスト利用方法。
  4. 前記アスベスト処理剤が、更に水と、前記アルコキシシランのアルコキシ基に対応するアルキル基を有するアルコールと異なる水溶性の有機溶媒と、を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアスベスト利用方法。
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