JP2010132821A - アスベスト含有物の処理剤、処理方法および利用方法 - Google Patents

アスベスト含有物の処理剤、処理方法および利用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高温溶融炉による燃焼処理やフッ化水素による劣化処理を特別に行うことなくアスベスト含有物中のアスベストを無害化処理できる処理剤及び処理方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも一部にアスベストを含むアスベスト含有物を無害化処理するために用いる、アスベスト含有物の処理剤が、
アルコキシシランと、マグネシウムよりもイオン化傾向の高い、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちより選択された少なくとも1つの金属の塩もしくは酸化物とを含有する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、アスベスト含有物を無害化処理するために用いる、アスベスト含有物の処理剤及び処理方法、並びにその無害化処理した物を資源として有効活用するための利用方法に関する。
本発明において、「アスベスト」とは、蛇紋石、角閃石等のケイ酸塩鉱物中に含まれ又は同ケイ酸塩鉱物より分離、抽出された、有害な針状結晶構造を有する繊維状鉱物をいい、また、「アスベスト含有物」とは、少なくとも一部にアスベストを含む物質であって、例えば、アスベストを一部に含む蛇紋石、角閃石等のケイ酸塩鉱物や、一部又は全部がアスベストである各種資材(例えば建築資材、土木資材等の資材)が含まれる。
建物や各種配管設備、プラント設備等において従前より広く使用されてきたアスベストの人体への有害性が近年、社会問題となっている。そのため、アスベストの生産や販売は禁止されるようになったが、既に使用されているアスベストを如何に確実に回収し、廃棄処理するかが緊急の課題となっている。そこで、高温溶融炉による加熱処理など、様々な処理方法が提案されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
特開平8−141537号公報
しかしながら、高温溶融炉はその絶対数が足りない上、燃焼温度が高く(1300°C〜1800°C)、運転コストが嵩む等の問題がある。
また上記高温溶融炉の燃焼温度を600°C前後に下げるために、フッ化水素によりアスベストを燃焼前に予め劣化させて比較的低温でも燃焼しやすくしておくことが考えられるが、その場合には、燃焼処理時に有害なフッ化水素ガスが発生するといった別の問題が発生してしまう。
また蛇紋石、角閃石等の、アスベストを含むケイ酸塩鉱物は、従来よりアスベストの原材料として使用されてきたが、これらのケイ酸塩鉱物中には有害なアスベストが含まれるため、アスベストの有害性が問題となってきて以降、これらのケイ酸塩鉱物を砕く等して有用な鉱物資源として利用することは、近年、行われていない。
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、アスベスト含有物(即ちアスベストを一部に含むケイ酸塩鉱物、或いは一部又は全部がアスベストである資材)を、高温溶融炉による燃焼処理やフッ化水素による劣化処理を特別に行うことなく無害化処理して有用な資源として活用できるようにした、アスベスト含有物の処理剤、処理方法および利用方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、少なくとも一部にアスベストを含むアスベスト含有物を無害化処理するために用いる、アスベスト含有物の処理剤であって、アルコキシシランと、マグネシウムよりもイオン化傾向の高い、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちより選択された少なくとも1つの金属の塩もしくは酸化物とを含有することを特徴とする。
この請求項1の特徴によれば、この処理剤をアスベスト含有物(即ちアスベストを一部に含むケイ酸塩鉱物、或いは一部又は全部がアスベストである各種資材)に添加、接触させると、25℃ほどの室温でも、アルコキシシランがアスベスト含有物中のアスベスト構成分子内の水酸基に先ず反応して、アスベストの針状結晶を膨脹させると共にゲル化反応を生じてアルコールが発生する。このアルコールを含んだゲル状態物質を加熱(燃焼)させることによって、アスベスト含有物中のアスベストを飛散させずにその分子構造を効率よく破壊することができる。従って、高温溶融炉による燃焼処理やフッ化水素による劣化処理を特別に行うことなく、アスベスト含有物中のアスベストの分子構造破壊が行われて、その物を無害化できる。そして、その無害化された物がシリカ(アモルファスシリカ)およびカンラン石となり、例えば、シリカ(アモルファスシリカ)は太陽電池のシリコンウェファの原材料となり、カンラン石は土壌改良剤となり、何れも有用な資源として活用することができる。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明の前記特徴に加えて、更に水と、水溶性の有機溶媒とを含有することを特徴とする。
この請求項2の特徴によれば、本発明に係る処理剤は、流動性が高い液体状であり、そのまま、上記アスベスト含有物に添加、接触させることができるため、処理剤として高い利便性を以て使用可能である。また、液体状であるため、大量のアスベスト含有物(従ってその含有物中のアスベスト)に均一に処理剤を接触させ、アルコキシシランの上記反応を均一且つ効率よく促進することができる。
また、請求項3の発明は、請求項2の発明の前記特徴に加えて、前記有機溶媒が、前記アルコキシシランに対応するアルキル基を有するアルコールと異なる有機溶媒であることを特徴とする。
この請求項3の特徴によれば、アルコキシシランとアスベスト含有物中のアスベスト構成分子内の水酸基とが反応して発生する、アルコキシ基に対応するアルキル基を有するアルコールと、有機溶媒とが異なるので、アスベスト含有物中のアスベストの分子構造の破壊反応を阻害しない。また、発生するアルコールに比べ、有機溶媒の分子量が大きく、沸点が高い場合には、発生するアルコールの沸点以上、有機溶媒の沸点以下の温度に加熱すると、発生するアルコールを蒸発させて反応を促進させることができる。
また請求項4の発明は、請求項2又は3の発明の前記特徴に加えて、前記水が放電により処理された放電処理水であることを特徴とする。
この請求項4の特徴によれば、アスベスト含有物中のアスベスト構成分子内の水酸基とアルコキシシランとの化学反応処理速度を上げることができる水を簡単に生成可能である。この場合、アルコキシシランがアスベスト構成分子内の水酸基と反応するためには、アルコキシシランと水がアルコール内で縮合反応するゾルゲル反応に酸化剤を添加することで、アルコキシシランが構成分子内の水酸基と反応することが実験により確認された。そして、このような酸化剤としては、ジアゾ化合物、過酸化水素、オゾン水、酸化触媒等が考えられるが、本発明では、安全且つ低コストで処理後物質の資源利用を図る狙いがあるため、発がん性のあるジアゾ化合物や、高価である酸化触媒の使用を避け、放電により処理された放電処理水内にオゾンが含有させていることを利用してゾルゲル反応の酸化剤とした。尚、過酸化水素は、処理後に普通の水となり有害物質の生成を起さないが、ゾルゲル反応により発生したアルコールを利用して燃焼工程を実行する際に、過酸化水素から発生する水素が爆発の危険性をもたらすことにより不適切であると判断される。
また請求項5の発明は、請求項4の発明の前記特徴に加えて、前記放電処理水は、先端が尖った第1電極と、前記第1電極と対をなす第2電極と、前記第1電極および第2電極の間に高電圧放電を発生させる高電圧放電手段とを備えていて、前記第1電極および第2電極の間に配した水を放電処理する放電処理水生成装置により生成されたことを特徴とし、この請求項5の特徴によれば、先端が針形状の第1電極により、放電が効率的に行われ、効率的に放電処理水が生成される。
また請求項6の発明は、請求項5の発明の前記特徴に加えて、前記放電処理水生成装置は、前記第1電極および第2電極の間の水を移動させる水移動手段を更に備えたことを特徴とし、この請求項6の特徴によれば、水が循環して水が流れているところに放電をするので、効率よく、水を放電処理できる。
また、請求項7の発明は、請求項1〜6の何れかの発明の前記特徴に加えて、前記金属の塩の種類が2種以上であることを特徴とする。
この請求項7の特徴によれば、少なくとも1種類はマグネシウムよりイオン化傾向が高く、水と反応するか又は分子水として水を吸収するかの性質を必要とする。アルコキシシランが構成分子内の水酸基と反応するための条件としてアルコキシシランと水がアルコール内で縮合反応するゾルゲル反応に酸化剤を添加することを挙げたが、この反応の速度を上げるためには反応系に存在する水をゾルゲル反応力よりも強い反応力で消費することにより反応速度を上げることができる。分子水吸収の反応で使用する焼石膏(CaSO4 )の場合にゲル化する時間は25°Cで12時間、20°Cで24時間かかるが、水と反応する消石灰(CaO )の場合は25°Cで5分、20°Cで10分と大幅な反応時間の短縮が可能となる。
また、請求項8の発明は、請求項1〜6の何れかの発明の前記特徴に加えて、前記金属の塩が、カリウム、カルシウムおよびナトリウムのうち少なくとも1種の強酸塩であることを特徴とし、この請求項8の特徴によれば、リチウムやルビジウム等に比べて、低コストの強酸塩となる。また、強酸塩の強酸により、アスベスト含有物中のアスベスト構成分子内の水酸基とアルコキシシランとの反応が促進される。
また、請求項9の発明に係るアスベスト含有物の処理方法は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の処理剤をアスベスト含有物に添加、接触させる第1の工程と、前記処理剤を添加、接触させたアスベスト含有物を燃焼または減圧する第2の工程とを備えたことを特徴とする。
この請求項9の特徴によれば、本発明に係る処理剤を添加、接触させたアスベスト含有物を加熱(燃焼)したり、或いは減圧したりすることにより、発生した副生成物を除去することができ、これにより、反応が促進し、アスベスト含有物中のアスベストが無害化され易くなる。
また、請求項10の発明に係るアスベスト含有物の処理方法は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の処理剤をアスベスト含有物に添加、接触させることで、アスベスト含有物中の少なくともアスベスト構成分子内の水酸基にアルコキシシランを結合させる反応を生じさせて、この反応に基づいてアスベスト含有物中のアスベストの針状結晶を膨張させると共にゲル化反応を生じさせ、そのゲル化後に加熱又は減圧することで前記針状結晶の分子構造を破壊することにより、アスベスト含有物中のアスベストを無害化することを特徴とする。
また、請求項11の発明に係るアスベスト含有物の処理方法は、アルコキシシランをアルコール系溶剤に混ぜた溶液中に、カルシウム塩と、マグネシウムよりもイオン化傾向の高いカリウム、カルシウムまたはナトリウムのうちの少なくとも1種の強酸塩もしくは酸化物とを混ぜて得られる処理溶液を作成し、この処理溶液を、少なくとも一部にアスベストを含むアスベスト含有物に添加、接触させ、更にそのアスベスト含有物に対し放電処理された水を作用させることにより、該アスベスト含有物中のアスベストの針状結晶を膨張させると共にゲル化反応を生じさせ、そのゲル化後に加熱又は減圧することで前記針状結晶の分子構造を破壊することにより、アスベスト含有物中のアスベストを無害化することを特徴とする。
また請求項12の発明に係るアスベスト含有物の利用方法は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の処理剤によりアスベスト含有物を無害化処理して得られた物質中からシリカ、シリコンおよびカンラン石のうちの少なくとも1つを取り出して、有用な資源として利用することを特徴とする。
また請求項13の発明に係るアスベスト含有物の利用方法は、請求項9〜11のいずれか1項に記載の処理方法によりアスベスト含有物を無害化処理して得られた物質中からシリカ、シリコンおよびカンラン石のうちの少なくとも1つを取り出して、有用な資源として利用することを特徴とする。
上記請求項10〜13の各特徴によれば、アスベスト含有物を無害化処理して得られた物質を有用な資源として活用可能となる。
本発明によれば、アルコキシシランと、マグネシウムよりもイオン化傾向の高い、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうち少なくとも1つの金属の塩もしくは酸化物とを含有する処理剤を用いて、アスベスト含有物(即ちアスベストを一部に含むケイ酸塩鉱物、或いは一部又は全部がアスベストである各種資材)中のアスベスト構成分子内の水酸基とアルコキシシランとの反応に基づき、アスベストの針状結晶を膨脹させると共にゲル化反応を生じさせて、アスベストの分子構造を効率よく容易に破壊できるようにしたので、従来のような高温溶融炉による燃焼処理やフッ化水素による劣化処理を特別に行うことなく、アスベスト含有物を低コストで且つ効率よく無害化することができ、またその無害化した物質を有用な資源として活用可能である。
本発明の好ましい実施形態を、図1〜図19を参照して以下に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るアスベスト含有物の処理剤の作成手順の一例を示すフローチャート、図2は、本実施形態の処理剤を用いて行うアスベスト含有物の処理手順の一例を示すフローチャート、図3は、本実施形態の処理剤により無害化処理されたアスベスト含有物の利用方法を示すフローチャート、図4は、本実施形態の処理剤とアスベスト含有物中のアスベストとの反応のプロセスの一例を示すフローチャート、図5は、本実施形態の処理剤とアスベスト含有物中のアスベストとの反応の初期段階(アルコール生成段階)の一例を示す模式図、図6は、アスベストの針状結晶構造の要部の一例を示す模式図、図7は、実施形態の処理剤との反応に基づく、アスベスト含有物中のアスベストの分解のプロセスの一例を示す模式図である。
また図8〜図12は、本実施形態の処理剤に付加すべきプラズマ放電処理水を生成するためのプラズマ放電処理水生成装置を示すものであって、図8は、そのプラズマ放電処理水生成装置の全体縦断面図、図9は、同装置の横断面(図8の9−9線断面図)、図10は、同装置の陽電極部分の拡大縦断面図(図8の10部矢視拡大断面図)、図11は、同装置におけるプラズマ放電の原理を説明するための実験モデル図、図12は、同装置における陽電極と陰電極間でのプラズマ放電流の発生状態を簡略的に示す説明図である。さらに図13は、プラズマ放電処理水生成装置の第1変形例を示す全体縦断面図、図14は、プラズマ放電処理水生成装置の第2変形例を示す全体縦断面図、図15は、プラズマ放電処理水生成装置の第3変形例を示す全体縦断面図である。また図16〜図18は、第3変形例のプラズマ放電処理水生成装置を示すものであって、図16は同装置の平面図、図17は同装置の要部を示す斜視図、図18は、同装置における陽電極と陰電極間でのプラズマ放電流の発生状態を簡略的に示す説明図である。さらに図19は、プラズマ放電処理水生成装置の第4変形例の概要を示す模式図、図20は、プラズマ放電処理水生成装置の第5変形例の概要を示す模式図である。
本実施形態のアスベスト含有物(即ちアスベストを一部に含むケイ酸塩鉱物、或いは一部又は全部がアスベストである各種資材)を無害化処理するために用いる処理剤は、アルコキシシランと、マグネシウムよりもイオン化傾向の高い、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちより選択された少なくとも1つの金属の塩もしくは酸化物とを含有する。
アルコキシシランは、アスベスト含有物中の少なくともアスベスト構成分子内の水酸基と反応する機能を有する。このような機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、テトラメトキシシランSi(OCH3)4 や、メチルトリメトキシシランCH3 Si(OCH3 3 を使用可能である。
前記金属の塩(即ち金属塩)もしくは酸化物は、前記アルコキシシランがアスベスト含有物に含まれるアスベストの構成分子内の水酸基と反応する速度を促進させる物質であり、例えば、マグネシウムよりもイオン化傾向の高い、アルカリ金属およびアルカリ土類金属として、リチウム(Li) 、ルビジウム(Rb) 、カリウム(K) 、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)を例示することができる。
これらアルコキシシランと金属の塩もしくは酸化物とを用いて、アスベスト含有物に含まれるアスベストの針状結晶を膨張させると共にゲル化反応を生じさせる。これによりアスベストの分子構造を破壊する原理については後に詳細に述べる。
ここで、アスベストとしては、例えば、白石綿と呼ばれるクリソタイルすなわちMg6 Si4 10(OH)8 、青石綿と呼ばれるクロシドライトすなわちNa2 (Fe2+,Mg)3 (Fe3+2 Si8 22(OH)2 、茶石綿と呼ばれるアモサイトすなわち(Fe2+,Mg)7 Si8 22(OH)2 が挙げられる、近年、角閃石族のアスベストとしてアンソフィライト、トレモライト、アクチノライトが追加されたが、上記何れのアスベストを構成する分子内にも水酸基分子(OH)が存在している。
アスベストを一部に含むケイ酸塩鉱物としては、例えば、蛇紋石すなわち (Mg,Fe)2 Si2 O5 OH)4、角閃石(苦土普通角閃石)すなわちCa2[Mg4(Al,Fe3+ )]Si7 AlO22(OH)2等が挙げられ、これらケイ酸塩鉱物中の一部(例えばアスベスト)の構成分子内にも水酸基分子(OH)が存在している。
さらに、実際にアスベスト含有物を処理する際は、アルコキシシランと前記金属の塩もしくは酸化物とに、水と、水溶性の有機溶媒とを加えた処理剤、即ち、水と、水溶性の有機溶媒と、アルコキシシランと、前記金属の塩もしくは酸化物とを混合させた処理剤を使用する。
前記水溶性の有機溶媒は、アルコキシシランを溶かす溶剤であり水酸基とゾルゲル反応を起こすための溶媒である。また、水も、アルコキシシランが水酸基とゾルゲル反応を起こすための溶媒である。一方、前記金属の塩もしくは酸化物は、アルコキシシランが水酸基とゾルゲル反応を起こし易くするために、反応物中の水を反応系から奪う役割を果たすとともに反応速度を促進するための反応促進剤でもある。
次に、本実施形態の処理剤を構成するアルコキシシラン、前記金属の塩もしくは酸化物および水溶性の有機溶媒についてそれぞれ詳細に説明する。
まず、アルコキシシランは、水溶性の有機溶媒の沸点以下において、アスベスト含有物(即ちアスベストを一部に含むケイ酸塩鉱物、或いは一部又は全部がアスベストである各種資材)中のアスベストの構成分子内の水酸基と反応して該アスベストと結合する反応物質として利用される。
即ち、アルコキシシランとは、ケイ素(Si)がアルコキシ基(Cn 2n+1O−)と結合した化合物である。例えば、アルキルアルコキシシランとして、Si(O・R1)4 、R2・ Si(O・R1)3、(R2)2 Si(O・R1)2 の一般式で表すことができる。なお、R1、R2はアルキル基であり、R1とR2とは同種であってもよい。
具体的には、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシランの他に、ジメチルジメトキシシラン (CH3)2 Si(OCH3)2 、フェニルトリメトキシシランC6 5 Si(OCH3)3 、ジフェニルジメトキシシラン (C6 5)2 Si(OCH3)2 、ヘキシルトリメトキシシランCH3(CH2)5 Si(OCH3)3 、ヘキシルトリエトキシシランCH3(CH2)5 Si(OCH2 CH3)3 、デシルトリメトキシシランCH3(CH2)9 Si(OC2 5)3 、トリフルオロプロピルトリメトキシシランCF3 CH2 CH2 Si(OCH3)3 、テトラエトキシシランSi(OC2 5)4 、メチルトリエトキシシランCH3 Si(OC2 5)3 、ジメチルジエトキシシラン (CH3)2 Si(OC2 5)2 、フェニルトリエトキシシランC6 5 Si(OC2 5)3 、ジフェニルジエトキシシラン (C6 5)2 Si(OC2 5)2 、テトラプロポキシシランSi(OC3 7)4 、メチルトリプロポキシシランCH3 Si(OC3 7)3 、ジメチルジプロポキシシラン (CH3)2 Si(OC3 7)2 等が挙げられる。
さらに例えば、メタルアルコキシシランとして、チタンオキサイドトリメトキシシランTiOSi(OCH3)3 やチタンオキサイドエトキシシランTiOSi( OC2 5)3 等が挙げられる。
またアルコキシシランのSiの数は1〜3程度が好ましい。即ち、アルコキシシランがアスベスト含有物(即ちアスベストを一部含むケイ酸塩鉱物、或いは一部又は全部がアスベストである各種資材)の構成分子内の水酸基と反応してアルコールを生成する過程で、アスベスト含有物中のアスベストの針状結晶の基礎構造であるマグネシウムMgの環状結晶に結合している水酸基に置換してシリカSiO2 が反応するためには、アルコキシシランのSi の数は少ない方が、反応が促進する。アルコキシシランのSi の数が多いと、直接マグネシウムMgおよびSi の環状結晶中の水酸基に反応しなかったSi O2 が前記針状結晶の基礎構造であるSi の環状構造のSi に直接反応してSi の直鎖結合を作るため、マグネシウムMgおよびSi の環状結晶を分子構造破壊する反応を阻害する。
なお、これらアルコキシシランの類のうち、アスベスト含有物中のアスベストと反応して分解させる反応速度やコストの点からテトラメトキシシランまたはメチルトリメトキシシランが最も好ましい。
次に、マグネシウムよりもイオン化傾向の高い、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうち少なくとも1つの金属の塩もしくは酸化物ついては、強酸塩および水と反応する物質が好ましい。
ここで、強酸とは、ブレーンステッド酸性の強い酸である場合、通常は溶液系では酸解離指数pKが3以下であり、例えば、FClO4 、HClO4 、HF、HCl、H2 SO4 、HNO3 等が挙げられる。即ち、ケイ酸(メタケイ酸H2 SiO3 )より酸性力の強い酸であればよい。
そして、前記強酸塩は、例えば、CaF2 、CaCl2 、CaSO4 、Ca(NO3)2 、KF、KCl、K2 SO4 、KNO3 、NaF、NaCl、Na2 SO4 、NaNO3 等が挙げられる。この場合、コスト面からは、カリウム、カルシウムおよびナトリウムのうち少なくとも1種の強酸塩が更に好ましい。
また、前記酸化物としては、酸化カルシウムCaO(消石灰)が挙げられる。
さらに、金属の塩と酸化物の種類は、2種以上が好ましい。例えば、フッ化カルシウムCaF2 および酸化カルシウムCaO(消石灰)を組み合わせた場合には、フッ化カルシウムが、前記ゾルゲル反応でアルコキシシランがアスベスト含有物中のアスベストの構成分子内の水酸基に反応するための酸の供給源となる。一方、酸化カルシウムCaO(消石灰)は、前記ゾルゲル反応でアルコキシシランがアスベスト含有物中のアスベストの構成分子内の水酸基に反応する速度を促進するための水の奪い手となる。
従って、前記強酸塩もしくは酸化物のうち、特に、アルコキシシランと共にアスベスト含有物中のアスベストと反応してアスベストの分子構造を破壊させる反応の速度やコストの点からは、フッ化カルシウムCaF2 と、酸化カルシウムCaO(消石灰)または塩化カルシウムCaCl2 との組み合わせがより好ましい。
次に、前記水溶性の有機溶媒ついては、アルコールやケトン、カルボン酸、カルボン酸エステル等が使用可能である。
好ましくは、アルコールとして、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n‐ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s‐ブチルアルコール、t ‐ブチルアルコール等の炭素数が1〜4の1価のアルコールが使用できる。さらに、アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数が2〜4の2価のアルコールも使用可能であり、さらにアルコールとして、グリセリン等の炭素数が3の3価のアルコールも使用可能である。
また特に、テトラメトキシシランまたはメチルトリメトキシシランを用いた場合には、メチルアルコール以外の水溶性の有機溶媒が好ましい。
さらにまた、水溶性の有機溶媒がアルコールの場合、前記メチルアルコールより沸点が高いn−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n‐ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s‐ブチルアルコール、t-ブチルアルコール等がより好ましい。
次に、水は、水道水でもよいが、アスベスト含有物中のアスベスト分子内の水酸基に対する作用を更に高めるため、放電により処理された水(放電処理水)がより好ましい。
その放電処理水(特にプラズマ放電処理水)としては、後述する本実施形態のプラズマ放電処理水生成装置により、水道水などの水に対してプラズマ放電を行い、オゾンO3 の濃度が増加し酸化還元電位が低下させられた水を使用可能である。
次に、本実施形態に係る処理剤の成分比率について説明する。
アスベスト含有物に添加すべき処理剤の成分比率は、粉末の前記強酸塩および酸化物を有機溶媒や水に撹拌して分散できる比率が好ましい。さらに、この処理剤をアスベスト含有物に添加した際、その物質中に含浸できる程度の粘性を処理剤が有するような成分比率が好ましい。
例えば、水溶性の有機溶媒がイソプロピルアルコールで、前記強酸塩がフッ化カルシウム、酸化物が消石灰の場合には、成分比率(重量比)は、アルコキシシランを1に対して、フッ化カルシウムが0.1〜2.5、消石灰が0.1〜5、イソプロピルアルコールが0.5〜3、水が0.1〜1程度に設定可能である。
さらに、反応速度やコスト面を考慮して、より好ましい成分比率は、アルコキシシランを1に対して、フッ化カルシウムが1、消石灰が2、イソプロピルアルコールが2、水が0.5と設定可能である。
次に、本発明の好ましい実施形態の処理剤の作成手順について図1のフローチャートに基づき説明する。この場合、アルコキシシランはテトラメトキシシランまたはメチルトリメトキシシランを、また前記金属の塩はフッ化カルシウムを、また酸化物は消石灰を、また水溶性有機溶媒はイソプロピルアルコールを、また水はプラズマ放電処理水を使用した一例として説明する。
まず、アルコール系溶剤の一例である
イソプロピルアルコールにアルコキシシランの一例であるテトラメトキシシランまたはメチルトリメトキシシランを混合し、アルコキシシランのアルコール溶液を作成する(ステップS1)。
次に、このアルコキシシランのアルコール溶液に、粉末状の消石灰とフッ化カルシウムとを加えて混合する(ステップS2)。なお、これら混合するときには、撹拌機を使って強制的に消石灰やフッ化カルシウムを混合、分散させる。
次いで、プラズマ放電処理水を加え、撹拌する(ステップS3)。
このようにして、アスベスト含有物中のアスベストを分解処理する処理剤が作成されるが、こうして作成される処理溶液は、プラズマ放電処理水の添加により溶液の活性が高まりゲル化反応が直ぐに進行するため、処理溶液を作成後に直ちにアスベスト含有物に添加する必要がある。従って、処理溶液を作成後に直ちにアスベスト含有物に添加できないような場合には、処理溶液を二液に分け、即ち、アルコキシシランのアルコール溶液に粉末状の消石灰とフッ化カルシウムとを加えて混合した混合液を先ずアスベスト含有物に添加し、その後にプラズマ放電処理水を添加するようしてもよい。
次に、図2のフローチャートに基づき、本発明の好ましい実施形態の処理剤を用いたアスベスト含有物の処理手順の一例について説明する。この場合、アルコキシシランはテトラメトキシシランまたはメチルトリメトキシシランを、また前記金属の塩はフッ化カルシウムを、また酸化物は消石灰を、また水溶性有機溶媒はイソプロピルアルコールを、また水はプラズマ放電処理水を使用した一例として説明する。
先ず、図2において、アスベスト含有物(即ち、アスベストが露出するように予め細かく粉砕された蛇紋石又は角閃石等のケイ酸塩鉱物、或いはアスベスト設置場所より回収されたアスベストを100 %又は高濃度に含む粉砕状態の資材)が詰められたビニール等の袋に、本実施形態に係る処理剤を注入して該含有物に添加、接触させる(ステップS11)。その後、10分程度、25℃ほどの室温で放置して、前記アスベスト含有物、従ってその含有物中のアスベストをゲル化させる(ステップS12)。このゲル化反応が進むとメチルアルコールが発生する。
次に、副生成物であるメチルアルコールを除去して反応を進めるため、燃焼もしくは加熱する(ステップS13)。その加熱温度は、メチルアルコールの燃焼で得られる645キロジュール以上が好ましい。しかもアスベストの分子構造破壊温度(脱水反応を起こして結晶構造が崩壊して強度を失う温度)は、クリソタイルで450〜700℃、クロシドライトで400〜600℃、またアモサイトで600〜800℃である点を考慮して、800℃くらいがより好ましい。
次いで、前記アスベスト含有物中のアスベストの分子構造が分解されて無害化した物質として、シリカ及びカンラン石を回収する(ステップS14)。
次に、本発明の好ましい実施形態においてアスベスト含有物を無害化したものの利用方法について図3のフローチャートに基づき説明する。
まず、未処理のアスベスト含有物(即ち予め細かく粉砕された蛇紋石又は角閃石等のケイ酸塩鉱物、或いはアスベスト設置場所より回収されたアスベストを100 %又は高濃度に含む破砕状態の資材)に本実施形態に係る処理剤を添加、接触させ、10分ほどかけて前記アスベスト含有物をゲル化する(ステップS21)。
次に、副産物として生成したメチルアルコールを除去して反応を進めるため、そのメチルアルコールを燃焼させる(ステップS22)。この燃焼で800℃程度に温度を上げて、アスベストの針状結晶の分子構造破壊を促進する。尚、アスベスト含有物中には、油分や合成樹脂成分等の可燃物が混じることがあるが、その可燃物は、前記燃焼により消滅するので、その燃焼後には、前記針状結晶の分子構造破壊に基づきシリカとカンラン石の混合物だけが残る。
しかる後、その残ったシリカとカンラン石の混合物を、乳鉢等で破砕してから篩(金網のついたフィルタ器具)でふるい分けることにより、概ねシリカとカンラン石とが分離され、この状態で取り出されたカンラン石は土壌改良剤として再利用することができる(ステップS23)。尚、図25の(a)は、アスベスト含有物を無害化処理した後に生じたシリカとカンラン石の混合物を乳鉢で破砕した状態を示し、また(b)は、その混合物中より篩分けられたシリカを示し、さらに(c)は、その混合物中より篩分けられたカンラン石を示す写真である。
また前記篩で取り出されたシリカの中には、微細なカンラン石が混入しているので、そのカンラン石中のMgを塩酸で除去(下記反応を参照)することで、純度の高いシリカを取り出す(ステップS24)。
Mg2 Si2 4 +2HCl → 2MgCl↓ +2SiO2 + H2
カンラン石 塩酸 塩化マグネシウム シリカ 水素
(沈殿)
尚、前記篩で取り出されたシリカの中には金属シリコンが生成されているが、それは上記反応ではそのままの状態を保つ。
次に、上記のようにして取り出されたシリカを炭素により還元し、金属シリコンを取り出す(ステップS25)。この場合、一部のシリカからアルコキシシランを生成し、再利用してもよい。
そして、取り出した金属シリコンを更に精製し、太陽電池グレードのシリコンの多結晶インゴットを取り出す(ステップS26)。そして、このシリコンを用いて太陽電池を作製することができる。
このように、無害化処理したアスベストを捨てるのではなく太陽電池の資源として利用できる。また、アスベストの無害化処理に処理料金を請求できる場合には、低コストで太陽電池等に利用可能なシリコンを得ることができる。なお、太陽電池に使われるシリコンの要求純度は、99.99999%程度であって、IC等に使われるシリコンの半導体グレード(純度99.999999999%)ほど高純度を必要としない。
また、アスベストの原材料として近年は使用されなくなった(即ち資源として有効に利用されていない)蛇紋石、角閃石等のケイ酸塩鉱物を有効に活用して金属シリコンを製造することができる。
金属シリコンへの用途のほかに、分子構造破壊後に生成したカンラン石と反応残渣の消石灰を、酸性汚染土壌に対する中和剤として有効に利用することができる。その場合、カンラン石は酸と反応して硫酸マグネシウムMg2 SO4 (苦土肥料)となり土壌に好影響をもたらす。
次に、本発明の好ましい実施形態の処理剤の作用機序について、図4〜図7に基づき説明する。この場合、アルコキシシランはテトラメトキシシランを、また金属の塩はフッ化カルシウムを、また酸化物は消石灰を、また水溶性有機溶媒はイソプロピルアルコールを、また水はプラズマ放電処理水を使用した一例として説明する。
図4のフローチャートにおいて、まず、アルコキシシランが、アスベスト含有物中のアスベストの構成分子内の水酸基(−OH)と反応する(ステップS101)。この場合、図5に示すように、アルコキシシラン(テトラメトキシシラン)のアルコキシ基がアスベスト構成分子の水酸基と反応してアスベストと結合し、これにより、アルキルアルコール(メチルアルコール)が発生し、アモルファスシリカがアスベストに析出する。なお水酸基は、珪素Siに結合している水酸基でもよい(ステップS102)。
ところでアスベスト(クリソタイル)のマグネシウム原子は、図6に示すように6員の環状結晶構造を形成するとともに、ケイ素原子は4員の環状結晶構造を形成していて強固な構造になっている。そして、アスベスト(クリソタイル)は、これら環状結晶構造が直列に交互に並ぶことで、全体として強固な針状結晶を形成している。しかし、アルコキシシランが前述のようにアスベスト構成分子内の水酸基に反応してアスベスト構成分子とアモルファスシリカとが結び付くことにより、環状結晶構造を形成するマグネシウム原子相互の結合が弱まると考えられる。
次いで、ゲル化反応が生じて、反応系全体が固形化し飛散を防止する(ステップS103)。
そして、前記反応により生成したアルコールを利用して燃焼させることでアスベスト環状結晶構造の分子構造破壊が起こる(ステップS104)。分子構造破壊の様子を電子顕微鏡で観察すると、図7のP1に示すように、まずアスベストの針状結晶の一部に、気泡が現れるように突然、球状の粒が析出する。その析出した粒の直径は、およそ5〜10μmである。なお、アスベストの針状結晶の長さが5μmほどである場合は、針状結晶全体が膨張して球状になることが観察された。そして、時間の経過につれて、図7のP2に示すように針状結晶に球状の粒が次々と現れる。
次に燃焼反応によるアスベストの環状結晶構造の分子構造破壊により、アスベストがシリカ(SiO2 )とカンラン石(Mg2 Si2 4 )に変化して無害化される(ステップS105)。この場合、図7のP3に示したように、球状の粒が針状結晶の全体に出現し、燃焼反応後に分子構造破壊が起きることにより、アスベストの針状結晶がばらばらになる。
ここで、クリソタイルにテトラメトキシシランを加える反応は、
Mg6 Si4 10(OH)8 + 4CH3 OSi(CH3 O)3 ・・・(1)
である。このようにアルコキシ基が、アスベストの水酸基と反応して、アスベストが分解して、カンラン石(Mg2 Si2 4 ),酸化ケイ素即ちシリカ(SiO2 )と、アルキルアルコール(メチルアルコール)等が生じる。
以上、アスベスト含有物(即ちアスベストを一部に含むケイ酸塩鉱物、或いは一部又は全部がアスベストである各種資材)中のアスベスト構成分子内の水酸基にアルコキシシランを結合させる反応に基づいて、そのアスベスト構成分子にアモルファスシリカを析出させると共にゲル化反応を生じさせた後、前記反応で生成したアルコールを利用して燃焼させることにより、前記アスベスト構成分子内のマグネシウム原子の環状結晶構造とケイ素の環状結晶構造を分子構造破壊することにより、アモルファスシリカとカンラン石を生成させることで無害化処理がなされる。
そして、このようなアスベスト無害化のための一連の処理に際しては、従来のように高温処理炉や高温溶融炉による燃焼処理やフッ化水素による劣化処理を特別に行う必要はなくなるため、作業環境を良好に保ちつつコスト節減を図ることができる。またこのようにして無害化(すなわち針状結晶構造が完全に溶解)され、アモルファスシリカとカンラン石に転換されたアスベストは、無害の建設資材として利用できる他、土壌改良剤、太陽電池の材料として再利用できる。
また特に本実施形態では、アルコキシシラン(例えば、テトラメトキシシランSi(OCH3)4 やメチルトリメトキシシランCH3 Si(OCH3 3 )をアルコール系溶剤、例えばイソプロピルアルコール:(CH3 2 CHOHに混ぜた溶液中に、水と反応してゲル化し固化する酸化物、例えば消石灰:CaOと、マグネシウムよりもイオン化傾向の高いK、CaまたはNaのうちの少なくとも1種の強酸塩、例えばフッ化カルシウム:CaF2 (ホタル石)を混ぜて処理溶液を作成する。そして、この処理溶液をアスベスト、例えばクリソタイル(白石綿)Mg6 Si4 10(OH)6 に接触、吸収させ、更にそのクリソタイルに水、好ましくは放電処理水を作用させることにより、そのクリソタイルの有害とされる針状結晶を膨脹、ゲル化させる。そして、そのゲル化後の燃焼反応で前記針状結晶を容易に分子構造破壊できるため、このクリソタイルが無害化される。
また前記処理溶液は、これをアスベスト、例えばクリソタイル(白石綿)Mg6 Si4 10(OH)8 に対し図示しない噴霧手段により噴霧しまたは図示しない塗布手段により塗布することで、クリソタイルに接触、吸収させた後、これに更に水、好ましくはプラズマ放電水を噴霧し、あるいは塗布するようにしてもよい。あるいは、処理タンク内で予め作成、貯溜した前記処理溶液中に、処理すべきクリソタイルを投入、撹拌した後、その処理溶液に前記プラズマ放電水を添加、撹拌するようにしてもよい。
また本実施形態では、前記処理溶液が接触、吸収されたアスベストに作用させる水として、後述するプラズマ放電処理水生成装置A1を用いて得られたプラズマ放電処理水が使用される。このようなプラズマ放電処理水を用いると、そのプラズマ放電処理水がアスベスト表面部への高い浸透性と親油性を発揮して、種々の汚れ(例えば油、車の排気ガス等)で表面が覆われるアスベストに対しても処理溶液を十分且つ迅速に浸透させることができる。その上、このプラズマ放電処理水が、アルコキシシランおよびアルコール系溶剤(例えばイソプロピルアルコール)の混合溶液よりなる処理溶液のゾルゲル反応を効果的に促進して、反応時間の短縮が図られる。それらの結果、処理作業の効率を高めることができる。この場合、プラズマ放電水の添加量は多ければ多いほど反応時間の短縮化が図られるが、処理すべきクリソタイル(白石綿)とほぼ同じ重量が適量である。
なお、前記無害化処理において、水と反応して固化する酸化物としての消石灰に代えて、例えば焼石膏:CaSO4 を用いてもよい。さらにマグネシウムよりもイオン化傾向の高いK、CaまたはNaのうちの少なくとも1種の強酸塩を作るための酸としては、ケイ酸(SiO3)2-より酸性力の強い酸、例えばフッ酸が用いられる。この場合、フッ化カルシウムCaF2 に代えて、例えばホウフッ化カリウムKBF4 を用いてもよい。
次に、本実施形態のプラズマ放電処理水生成装置について、図面に基づき詳細に説明する。
添付図面において、図8〜図13は、本実施形態のアスベスト含有物の処理剤や無害化処理方法等の実施に用いるプラズマ放電処理水を生成するためのプラズマ放電処理水生成装置を示すものである。
図8,図9は、本実施形態のアスベスト処理剤等の実施に用いるプラズマ放電処理水生成装置を示す全体縦断面図である。
図8に示すように、プラズマ放電処理水生成装置A1は、先端が針形状の第1電極の一例である陽電極Pと、第1電極と対になる第2電極の一例である陰電極M1と、第1電極および第2電極の間に高電圧放電を発生させる高電圧放電手段の一例である高周波高電圧パルス放電用電源Eとを備える。陽電極Pは、先端が針形状の放電用針7を有しており、水を貯えた容器(水槽)V1の上方に設置され、一方、陰電極M1は、コイル状で容器V1の底に設置される。高周波高電圧パルス放電用電源Eは、直流電源のように図示されているが、実用的に適用する場合は、陽電極Pおよび陰電極M1に交流を印加する。そして、第1電極および第2電極の間、すなわち、陽電極Pおよび陰電極M1の間に配置された水を放電処理する。
次に上記プラズマ放電処理水生成装置A1の具体的構成を説明すると、固定ベース1上には、水槽支持台2と、その1側に起立する支柱3とが固定的に設けられており、これら固定ベース1、支持台2および支柱3はいずれも絶縁体より構成される。水槽支持台2上には、銅線を渦巻き状に且つ多層に巻き回してなる扁平円板状の渦巻きコイル4が設置、固定されている。更にその渦巻きコイル4の上面に、絶縁体または誘電体製(例えばガラス、PET樹脂等)の水槽V1が設置、固定されている。
その水槽V1内には、プラズマ放電処理すべき水Wが入れられており、その水中に浸漬されてマイナス電荷、すなわち電子を帯電可能な帯電部材(蓄電部材)5が、水槽V1の底壁Va上に設置、固定される。この帯電部材5は、図示例では活性炭素繊維を平板状の所定形状に成形して構成され、その活性炭素繊維の正孔(OH基が除去された空間)に電子を帯電し得るようになっている。尚、本実施形態では、蓄電部材5として活性炭素繊維からなる繊維成形体を用いたが、この活性炭素繊維に代えて、水槽底壁Vaの上面側に集まるマイナス電荷(電子)を蓄電可能であり且つ水中へ放出可能な種々の素材を使用することができる。
而して本実施形態では、絶縁体または誘電体よりなる水槽底壁Vaと、帯電部材5と、渦巻きコイル4とが互いに協働して本発明の陰電極M1を構成している。
また支柱3の上部には、水槽V1の上部空間に向かって延びる支持腕3aが連なって設けられている。この支持腕3aの先部には、水槽V1の水面Wf上の空中に配置した放電用の陽電極Pが支持される。
次に、この放電用の陽電極Pの構造の一例を、図10を併せて参照して具体的に説明するに、陽電極Pは、水槽V1の水面Wf上の空中に相互に間隔をおいて並べて設けられると共に各先端が水槽V1内の水面に向かって下向きに延びる多数の放電用針7と、それら放電用針7の上部が貫通、支持される絶縁性基板8と、その絶縁性基板8の上面と各放電用針7の膨大頭部との間に備え付けられて各放電用針7を絶縁性基板8上に安定よく支持させるワッシャリング9と、絶縁性基板8の下面に重ねられて各放電用針7相互を電気的に接続する平板状の導電部材10と、絶縁性基板8の上下両面にそれぞれ接着または接合されて各放電用針7の上半部と、ワッシャリング9と導電部材10とを覆う上下一対の絶縁性カバー11とより構成される。その絶縁性カバー11の下面からは各放電用針7の先鋭な下半部7aが突出して延びている。また、導電部材10の一部は、絶縁カバー11の側部から外部に引き出されている。その引き出し部には、後述する高周波高電圧パルス放電用電源Eの印加側端子Eaから延びる印加側の外部配線Laが接続される。
前記放電用針7の構成材料としては、導電性を有する金属、望ましくは耐腐食性の金属(例えばステンレス)が選択される。また前記絶縁性基板8の構成材料としては、絶縁性材料、例えばガラスエポキシ基板、ポリアミド基板、石英ガラス基板等が挙げられる。また前記ワッシャリング9の構成材料としては、放電用針7の頭部に対する固定、支持に適した材料であれば、導電性の有無に関係なく選択される。さらに前記導電部材10の構成材料としては、導電性を有し且つ放電用針7と接続、固定が可能であり且つ外部配線Laとの接続、固定が可能な材料であればよく、例えば、種々の導電性金属、活性炭素繊維成形体、導電性金属メッキ材等が挙げられる。さらに前記絶縁性カバー11としては、絶縁性を有し且つ絶縁性基板8に接着または接合可能な材料、例えばエポキシ系樹脂やポリアミド樹脂が挙げられる。
固定ベース1の一側には、高電圧放電手段としての高周波高電圧パルス放電用電源Eが設置されており、この電源Eの印加側端子Eaに接続した印加側の外部配線Laが、導電部材10を介して前記陽電極Pの放電用針7に接続される。また同電源Eのグランド側端子Ebに接続したグランド側の外部配線Lbは接地Gされており、その外部配線Lbの途中には前記渦巻きコイル4が備え付けられる。すなわち、電源Eのグランド側端子Ebは、渦巻きコイル4を介して接地Gされる。
前記高周波高電圧パルス放電用電源Eは、図示例では周波数が高く(例えば10KHz)、電圧が高い(例えば10KV)の高周波高電圧パルスを少なくとも所定時間(例えば10分)以上放電し得るように構成され、その放電出力波形はサイン波に、電極波形は矩形波に調整される。
そして水槽V1内に水を入れた場合において、その水槽V1の水面Wf上の空中に存する前記陽電極Pと、水槽V1の水中に少なくとも一部(図示例では水槽底壁Vaの上面および帯電部材5)を浸漬させた陰電極M1との間で、高周波高電圧パルス放電用電源Eにより高周波高電圧パルスを放電させると、後述するように陽電極Pと水面Wfとの間でプラズマ放電流Fが生じる。そして、このプラズマ放電流Fを水槽V1内の水Wに作用させることにより、この水が、プラズマ放電前の状態よりもオゾン濃度が高く且つ酸化還元電位が低く且つまた溶存酸素量が少ないプラズマ放電処理水となる。
ここで、プラズマ放電の形態には、暗放電、火花放電、コロナ放電、グロー放電、アーク放電等がある。またプラズマ放電は温度により、低温プラズマ放電と高温プラズマ放電とに分けられる。
次に前記本実施形態のプラズマ放電処理水生成装置A1による作用を説明する。まず、前記プラズマ放電の原理を、図11を併せて参照して説明する。
図11に示す実験モデルでは、前記実施形態における陰電極M1の構造(すなわち渦巻きコイル4と水槽底壁Vaと蓄電部材5相互のサンドイッチ構造)を模して、渦巻きコイル4と絶縁体または誘電体製の平板20(図示例ではガラス板)と、蓄電部材5相互のサンドイッチ構造体とが支持台21の上面に設置、固定されている。その渦巻きコイル4と電池22(例えば8ボルト)と開閉スイッチ23とが閉回路24で直列に接続される。
このモデルにおいて、開閉スイッチ23を手動で小刻み(毎秒数回程度)に開閉操作したときの電子の放出状況を、陰電極M1の上方空間に配した電子測定器25により確認すると、2〜3KV/mの数値が測定された。このことから、次のような事象の発生が推測される。すなわち、上記スイッチ23の開閉に伴い渦巻きコイル4の上方空間に発生する磁場の強弱が、ガラス板20を隔ててコンデンサ作用を起こす。そして、そのガラス板20の下面(コイル接触面)にはプラス電荷が、また同ガラス板20の上面にはマイナス電荷、すなわち電子がそれぞれ集まり、そのガラス板20の上面に集まった電子がガラス板20上の蓄電部材5すなわち活性炭素繊維の正孔(OH基が除去された空間)に蓄電される。このため、スイッチ23の開閉を繰り返すと、蓄電された電子が活性炭素繊維において過飽和になって、その正孔から外部(上方空間)に放出されているものと考えられる。
そして、本実施形態のプラズマ放電処理水生成装置A1において、その高周波高電圧パルス放電用電源Eにより高周波高電圧パルス放電を実施した場合には、その電源Eのグランド側端子Ebに連なる渦巻きコイル4には高周波のマイナスパルスが印加される。すなわち、マイナスの直流電圧が断続的に渦巻きコイル4に通電されることとなり、結果的には、前記実験モデルで開閉スイッチ23を断続的に開閉した状態と同じになる。しかもその開閉の回数は10KHzと極めて高速である。
したがって、水槽V1内に水が貯溜される場合において、陰電極M1における蓄電部材5を構成する活性炭素繊維の正孔には、上記高周波高電圧パルス放電に伴い短時間のうちに極めて多数の電子が水槽V1内の水中に放出されることになる。しかし、その放出電子が、水の保持できるマイナス電荷数を超えると(すなわち水中への電子の放出が過度になされて、水中の電子が過飽和となると)、その放出電子は、水面Wfよりその上方の陽電極Pの放電用針7に向かって空中に飛び出す。そして、この飛び出した多数の電子は、空中の酸素分子と衝突して、例えばマイナス電荷を有する酸素ラジカルと、プラス電荷を有するスーパーオキサイト群を生じさせる。そして、それらが同じ空間に同時に多数混在分布することで、図12に模式的に示すような発光状態のプラズマ放電流Fが、各放電用針7とその直下の水面Wfとの間でそれぞれ発生する。このとき、水面Wfには、各プラズマ放電流Fに対応してすり鉢状の凹部sが形成されており、この凹部sの存在からも、プラズマ放電流Fのエネルギーが放電用針7から水面Wf側に向かい、その水面下に入り込む様子が容易に窺い知れる。
なお、「水中に電子を過度に放出させ」とは、水槽内の水が電子を保持できるマイナス電荷数を超えて水中に多数の電子を放出させること、すなわち水中に電子を過飽和状態となってもなお放出させることを意味している。この電子の過度の放出により、余剰の電子は水面から空中の放電用陽電極に向かって飛び出し可能となる。なお、また空気の主要成分である窒素分子は、酸素分子に比べ安定度が高く、本条件による電子衝突エネルギーではラジカル分子を発生せず、上記プラズマ放電流Fの発生によってもNOx等の有害成分を生じさせないことが確認された。
そして、上記プラズマ放電流Fは、放電用針7から水面Wf側に向かう途中でその周囲空間の酸素分子や上記スーパーオキサイト群を巻き込んでオゾンや酸素ラジカルを生じさせると共に、そのオゾンや酸素ラジカルを水中に強力に引擦り込んでオゾンの水中への分子レベルでの溶解を起こす。またそれと同時に、水中に元々溶解していた一部の酸素分子が空中に放出される。そして、その水に溶解した一部のオゾンと酸素ラジカルが水分子と反応すると、水酸基ラジカル(OH・)とヒドロキシルラジカル(H3 2 ・)および(H3 O・)が発生する。
このようにして得られたプラズマ放電処理水は、溶存酸素量がプラズマ放電処理前と比べて大幅に減少(例えば750ppm→500ppm)すると共に、酸化還元電位がプラズマ放電処理前と比べて大幅に減少(例えば700mV→400mV)する。またプラズマ放電処理水は、オゾン濃度が大幅に増加して0.1ppm〜3ppm程度含まれるようになる。そして、このプラズマ放電処理水は、界面活性効果が高く、灯油等の油とエマルジョンを形成可能な程度の高い親油性を発揮する。また上記ヒドロキシルラジカル(H3 2 ・)および(H3 O・)は、前述のようなアスベスト無害化のための弱酸塩および強酸塩の金属相互の置換反応の反応速度を上げる強酸の代替手段となり得る
こうして、前記プラズマ放電処理水生成装置A1により、水槽V1内の水(例えば水道水)に対し所定時間(例えば10分間)に亘り上記のプラズマ放電処理を行えば、その水は、プラズマ放電前の状態よりもオゾン濃度が高く且つ酸化還元電位が低く且つまた溶存酸素量が少なく且つまた油との親和性が良好なプラズマ放電処理水となる。しかも、このプラズマ放電処理水は、生成後、比較的長期(約1カ月以上)に亘って水中にオゾンを高い濃度のまま溶解させておくことができることが確認された。これは、前述のようにプラズマ放電流Fによりオゾンを水中に強力に引擦り込んで、オゾンの水中への分子レベルでの溶解を促進できるためと考えられる。したがって、上記プラズマ放電処理水は、長期の保存に適したオゾン水となるものであり、しかもこれを生成後すぐに使用する必要がないことから、プラズマ放電処理水生成装置A1を処理水の使用現場(すなわちアスベストの無害化処理施設)近くに設置する必要がなく、利便性や量産性に優れている。
次に、図13を参照して本実施形態のプラズマ放電処理水生成装置の第1変形例を説明する。この変形例に係るプラズマ放電処理水生成装置A2は、前記実施形態における活性炭素繊維からなる蓄電部材5を省略したものであり、その他の構成は、前記実施形態と同じであるので、各構成部材には、前記実施形態と同じ参照符号を付した。
そして本変形例では、水槽V2の底壁Vaのコンデンサ的な作用を強化して陰電極M2から水槽V2内の水中への電子放出を効率よく行わせるために、活性炭素繊維からなる蓄電部材5を水槽V2の底壁Vaを挟んで渦巻きコイル4上に近接配置している、しかし、この蓄電部材5を第1変形例のように省略しても、水槽V2の底壁Va自体のコンデンサ的な作用は得られ、電子の放出効率が多少低下するだけであることから、プラズマ放電流F自体の発生は可能である。この第1変形例では、蓄電部材5の省略によりそれだけ構造簡素化が図られる。
次に、図14を参照して本実施形態のプラズマ放電処理水生成装置の第2変形例を説明する。この第2 変形例に係るプラズマ放電処理水生成装置A3は、高電圧放電手段としての高周波高電圧パルス放電用電源Eのグランド側端子Ebに接続したグランド側の外部配線Lbを水槽V3内に直接引き込むように配線すると共に、その端末部を、水槽V3内底部に設置した導電材製の陰電極M3に接続したものであって、前記実施形態の陰電極Mにおける渦巻きコイル4や蓄電部材5は省略されている。その他の構成は、前記実施形態と同じであるので、各構成部材には、前記実施形態と同じ参照符号を付した。
そして前記実施形態や第1変形例の陰電極構造では、水槽内の水中へ引き込む配線部分を無くして感電のリスクを軽減し得る効果があるが、そのリスクに対し万全の措置をとれれば、本第2変形例のような陰電極構造としても、プラズマ放電流F自体の発生は可能であり、実用上問題はない。この第2変形例では、陰電極構造が簡素化されてコスト節減が図られる。
次に、図15〜図17を参照して本実施形態のプラズマ放電処理水生成装置の第3変形例を説明する。この第3変形例に係るプラズマ放電処理水生成装置A4は、図15に示すように、第1電極および第2電極の間の水を移動させる水移動手段を備えている。即ち、陽電極Pと陰電極M4との間に水が本発明の水移動手段Dにより強制的に流れる。そして、この変形例のプラズマ放電処理水生成装置A4は、量産性を高めるためにプラズマ放電処理を連続的且つ効率よく行えるようにした装置である。
プラズマ放電処理水生成装置A4は、水Wを貯留する水槽V4の内部に堰としての鉛直平板状の堰板40が一体に設けられ、この堰板40により水槽V4内が少なくとも2室(図示例では第1室C1と第2室C2)に画成される。その第1、第2室C1、C2間には、その各々の底部に両端が開口する連通路42が接続される。その連通路42には、第1室C1から第2室C2に向けて水を強制的に還流させる還流手段としてのポンプ41が備え付けられていて、そのポンプ41の運転により第2室C2に還流された水が堰板40の上端部を超えて第1室C1側にオーバフロー可能となっている。堰板40の上端部には、そこをオーバフローしようとする水の中に浸漬されるように陰電極M4が該上端部の長手方向に沿って設けられる。
前記還流手段としてのポンプ41は、堰板40と、第1室C1および第2室C2と、連通路42等と協働して、本発明の水移動手段Dの一例として機能する。
前記陰電極M4は、図示例では導電性の金網で堰板40の上端部にこれを跨ぐように逆U字状に形成されている。一方、陽電極Pは、陰電極M4の斜め上方空間に堰板40の上端部の長手方向に沿って互いに間隔をおいて並べて設けられて各々の先端が該陰電極M4に向かって延びる導電性材料よりなる多数の放電用針7…を備える。なお、それら放電用針7…の取付構造は、前記実施形態と基本的に同様であるので、説明を省略する。
水槽V4の外には、前記実施形態と同様、高電圧放電手段としての高周波高電圧パルス放電用電源Eが設置されており、この電源Eの印加側端子Eaに接続した印加側の外部配線Laが前記陽電極Pの放電用針7に接続される。また同電源Eのグランド側端子Ebに接続したグランド側の外部配線Lbは接地Gされており、その外部配線Lbの途中に前記陰電極M4が備え付けられる。なお、図15に鎖線で示すように、前記外部配線La,Lbの途中(特に高周波高電圧パルス放電用電源Eと陽電極P、陰電極M4との間)には必要に応じて電圧調整用のトランスTを備え付けてもよい。
そして、この第3変形例においては、水槽V4内にプラズマ放電処理すべき水Wを予め入れておき、還流手段としてのポンプ41を連続運転すると、第1室C1内の水Wがポンプ41で第2室C2内に強制的に圧送される。これにより、第2室C2内の水面が上昇して堰板40を超えるようになると、その水Wが堰板40の上部からオーバフローして第1室C1に流れ下る。このようにして第1室C1と第2室C2間で水槽V4内の水Wが強制循環される。この水循環状態において、堰板40の斜め上方で水槽V4内の上部空間に存する前記陽電極Pと、水槽V4の水中(図示例では堰板40の上端部近傍)に浸漬させた陰電極M4との間で、高周波高電圧パルス放電用電源Eにより高周波高電圧パルスを放電させると、本実施形態と同様にして、陽電極P(放電用針7)と、堰板40をオーバフローしようとする水の表面との間でプラズマ放電流Fが生じる。そして、このプラズマ放電流Fを、堰板40をオーバフローしようとする水Wに直接作用させることにより、この水Wが、本実施形態で得られるプラズマ放電処理水と同様のプラズマ放電処理水となる。
この第3変形例によれば、水槽V4の第1室C1と第2室C2間で水を循環させながらその水に対しプラズマ放電処理を継続的且つ十分に行うことができるため、プラズマ放電処理水の量産化やコスト節減を図る上で有利である。しかも図示例では、堰板40の上端部長手方向に沿って配列された多数の放電用針7…から堰板40のオーバフロー流に向かって多数の(したがって広範囲に亘り)プラズマ放電流Fを生じさせることができるから、プラズマ放電処理を連続的に効率よく行うことができる。すなわち、水を循環させ、水が流れているところに放電をするので、効率よく、水を放電処理できる。
次に図19を参照して本実施形態のプラズマ放電処理水生成装置の第4変形例を説明する。その第4変形例に係るプラズマ放電処理水生成装置A5は、陰電極M5と、陽電極Pと、ポンプ51と、連通路(パイプ)52と、を有する。
陰電極M5は、板状の金属板であって、水面Wfの上方に傾斜させて設置され、一方、陽電極Pは、陰電極M5の傾斜に合わせて、放電用針7の先端が陰電極M5の上面とほぼ平行なるように傾斜姿勢で設置されている。陰電極M5と陽電極Pとは、高周波高電圧パルス放電用電源E2に接続されている。
ポンプ51は、パイプ52を介して、水槽V5から水をくみ上げる。そして、ポンプ51は、くみ上げた水を、パイプ52の先端から陰電極M5の上面に注ぐ。
陰電極M5の上面に注がれた水は、陰電極M5の上面を流れ下り、陰電極M5の水面Wf側の下端から、水面Wfに流れ落ちる。このように水は強制循環され、ポンプ51と、パイプ52とが、第1電極および第2電極の間の水を移動させる本発明の水移動手段D′の一例として機能する。
陽電極Pと陰電極M5との間に、高周波高電圧パルス放電用電源E2により放電を行うことで、その両電極P,M5間を流れる水よりプラズマ放電処理水を生成する。而して、本変形例は、第3変形例と異なり、堰板40を設けたり、水槽の底に孔を開けたりする必要がないので、簡易な構成になる。
なお、陰電極M5は、図示例では傾斜配置されているが、これを水平配置として、ポンプ51からの水圧により陰電極M5の上面を流れるようにしてもよい。
次に図20を参照して本実施形態のプラズマ放電処理水生成装置の第5変形例を説明する。この第5変形例に係るプラズマ放電処理水生成装置A6は、陰電極M6と、陽電極Pと、撹拌子55とを有する。陰電極M6は、例えば、金網であり、水槽V6の水Wの流れを妨げない構造ならよい。
陽電極Pは、水面Wfの上方において、水槽V6の中心からずれた位置に設置されている。放電用針7の先端は水面Wfに向いている。また陰電極M6と陽電極Pとは、高周波高電圧パルス放電用電源E2に接続されている。
撹拌子55は、プラスチックで覆われた磁石であり、水槽V6の底面の外側に設置された駆動装置56より回転トルクを付与され、これにより攪拌子55を強制回転できるようになっている。そして、撹拌子55が回転することにより、水槽V6の水Wが、水槽V6の円周方向に流れて、循環し、その円周方向に流れる水Wにより、陰電極M6の上面を水Wが流れる。このとき、円周方向に流れる水Wにより、水面Wfは、遠心力により水槽V6の内壁側が盛り上がる。
このようにして水槽V6内の水Wは循環し、前記撹拌子55及び駆動装置56が互いに協働して、第1電極および第2電極の間の水を移動させる本発明の水移動手段D″の一例として機能する。
陽電極Pと陰電極M6との間に、高周波高電圧パルス放電用電源E2により放電を行い、プラズマ放電処理水を生成する。
本変形例は、第3変形例と異なり、堰板40を設けたり、水槽の底に孔を開けたりする必要がないので、簡易な構成になる。さらに、第3変形例や第4変形例と異なり、ポンプも必要がないため、さらに簡易な構成になる。
以上、本発明の好ましい実施形態によれば、アルコキシシラン(例えば、テトラメトキシシランやメチルトリメトキシシラン)と、マグネシウムよりもイオン化傾向の高い、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうち少なくとも1つの金属の塩(例えば、フッ化カルシウムおよび硫酸カルシウム)と酸化物(例えば、フッ化カルシウムおよび消石灰)と、水溶性の有機溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)と、水(例えば、放電処理水)とを含有する処理剤により、高温溶融炉による燃焼処理やフッ化水素による劣化処理を特別に行うことなく、前記有機溶媒の沸点以下である25℃ほどの室温でアスベスト含有物中をゲル化して、アスベストを無害化できる。
さらに、放電処理水や水溶性の有機溶媒を加えていない状態で本実施形態の処理剤を輸送すれば、輸送コストの低減が図れる。特に、処理剤をアスベスト含有物(即ちアスベストを一部に含むケイ酸塩鉱物、或いは一部又は全部がアスベストである各種資材)に添加、接触させる直前に、放電処理水を作製して該処理剤に加えた場合には、活性が高い処理溶液が得られて、反応が早く進む。
また、アルコキシシランと、水溶性有機溶媒と、前記金属の塩と酸化物とを予め混合しておいて、作業現場で、水を加えてもよい。この場合も、水がない分、輸送コストの低減が図れる。この加える水が放電処理水の場合、処理溶液の活性が高くなり、反応が早く進む。
従来の高温溶融炉による燃焼処理や、フッ化水素による劣化処理後の燃焼処理の場合は、吹き付け剤としてセメントや塩素を含む材料等が溶け合っていたため、再利用することが難しく、また特にフッ化水素による劣化処理の場合は、フルオル酸マグネシウムが発生するため、再利用が難しく、そのまま産業廃棄物として捨てられていたが、本実施形態によれば、分解され無害化したアスベストを再利用し易くなる。
また、水と、水溶性の有機溶媒とを含有する本実施形態の処理剤は、流動性が高い液体状であり、そのまま、アスベストに添加することにより、すぐに処理剤として使用可能である。また、液体状であるため、大量のアスベストに均一に処理剤を接触させることができる。
また、本実施形態の処理剤では、これに含まれる金属の塩と酸化物の種類が、フッ化カルシウムおよび酸化カルシウムの2種以上であり、酸化カルシウムは、アスベスト含有物中のアスベストの構成分子の水酸基とアルコキシシランがゾルゲル反応で反応する速度をフッ化カルシウム単独よりも、早くでき処理工程のコストを抑えることができる。早急に処理すべきアスベストは大量にあるので、コストを抑えることは産業上重要な要素である。なお、金属の塩と酸化物の組み合わせ以外に複数の金属の塩の組み合わせも可能であり、例えば、硫酸カルシウムや塩化カルシウムの他に、燐酸カルシウムや酢酸カルシウムでもよい。また、フッ化カルシウムおよび硫酸カルシウムは、金属の塩が、カリウム、カルシウムおよびナトリウムのうち少なくとも1種の強酸塩であるので、リチウムやルビジウム等に比べて、低コストの強酸塩となる。
また、本実施形態の処理剤に含まれる有機溶媒がイソプロピルアルコールの場合、メトキシ基(CH3 O−)を有するアルコキシシランとアスベスト含有物中のアスベスト(水酸基)が反応して発生するメチルアルコールと異なるので、反応を阻害しない。また、メチルアルコールに比べ、イソプロピルアルコールの分子量が大きく、沸点が高いので、メチルアルコールの沸点以上、イソプロピルアルコール以下の温度に加熱すると、メチルアルコールを蒸発させて反応を促進させることができる。
また、従来、例えばアスベストの回収現場において、アスベストを、これが付着したアスベスト施工壁面から人手により剥離し、それらを纏めて高温溶融炉で加熱してアスベストの針状結晶構造を溶融、無害化することが行われている。この場合には、回収現場でアスベストを施工壁面より剥離する際に有害なアスベストが飛散するため、その飛散を防ぐ手だてが必要で作業が非常に煩雑になり、また高温溶融炉はその絶対数が足りない上、燃焼温度が高く(1300〜1600°C)、その運転コストが嵩む等の問題があった。
しかし、本実施形態によれば、現場でアスベストを回収せず、直接、本実施形態の処理剤を散布して、アスベストを分解できるため、アスベストを飛散させずに、アスベストを無害化処理できる。また、飛散を防ぐ大掛かりな作業が不要になる。さらに、高温で処理する必要がないので、運転コストも下げることができる。
また従来、高温溶融炉の燃焼温度を800°C前後に下げるために、フッ化水素によりアスベストを燃焼前に予め劣化させて比較的低温でも燃焼し易くしておくことが考えられ、その場合には、燃焼処理時にフッ化水素ガスが発生するといった別の問題があったが、本実施形態によれば、アスベストの無害化処理に当たりフッ化水素ガスは発生しないため、取り扱いが容易である。
さらに従来、長年使用されてきた建物や各種設備の壁面に付着しているアスベストには、使用に伴う種々の汚れ(例えば油、車の排気ガス等)で表面が覆われ、各種の処理薬剤がアスベストに浸透しにくい問題もあったが、本実施形態やその変形例に係るプラズマ放電処理水生成装置A1〜A6で生成したプラズマ放電処理水を使用することにより、表面が汚れたアスベストでも、25℃程度の室温でも、処理剤が難なく迅速に浸透しやすくなる。
また、本実施形態によれば、アスベスト含有物(即ちアスベストを一部に含むケイ酸塩鉱物、或いは一部又は全部がアスベストである各種資材)中のアスベスト構成分子内の水酸基にアルコキシシランを結合させる反応に基づいて、そのアスベストの針状結晶を膨張させ、ゲル化させて固化させることができ、且つその固化後の燃焼反応で前記針状結晶の分子構造を破壊してシリカとカンラン石に変化させられるようにしたので、アスベスト含有物中のアスベストの有害な針状結晶構造を簡単に消滅させてアスベストを無害化できる。そして、その無害化のために高温溶融炉による燃焼処理やフッ化水素による劣化処理を特別に行う必要はなくなり、処理コストの節減を図ることができる。しかも、このようにアスベストが無害化されたアスベスト含有物は、建設資材として有効に利用できる他、太陽電池の原材料、酸性土壌の中和剤および肥料として有効に利用できる。
また本実施形態によれば、アルコキシシランをアルコール系溶剤に混ぜた溶液中に、水と反応して固化するカルシウム酸化物と、マグネシウムよりもイオン化傾向の高いカリウムK、カルシウムCaまたはナトリウムNaのうちの少なくとも1種の強酸塩とを混ぜて得られる処理溶液を作成し、この処理溶液をアスベスト含有物(即ちアスベストを一部に含むケイ酸塩鉱物、或いは一部又は全部がアスベストである各種資材)に接触、吸収させ、更にそのアスベスト含有物に水を作用させることにより、該アスベスト含有物中のアスベストの針状結晶を膨張させ、ゲル化させ、そして固化させる反応を促進できる。
この場合、前記処理溶液中にアスベスト含有物を投入、撹拌した後、その処理溶液に前記プラズマ放電水を添加、撹拌するようにすれば、処理溶液の活性が高められると共にアスベスト含有物への処理溶液の浸透性、親和性が向上し、従って、アスベスト含有物中のアスベストの針状結晶を膨張させ、ゲル化させ、そして固化させる反応を更に促進可能となる。即ち、プラズマ放電処理水をアスベスト含有物に作用させる水として用いる場合には、そのプラズマ放電処理水がアスベスト表面部への高い浸透性と親油性を発揮して、種々の汚れ(例えば油、車の排気ガス等)で表面が覆われるアスベストに対しても処理溶液を十分且つ迅速に浸透させることができ、その上、このプラズマ放電処理水が、アルコキシシランを含む処理溶液のゾルゲル反応を効果的に促進して、水酸基への反応効率を高めることにより無害化効率を高めることができ、それらの結果、処理作業の効率向上に大いに寄与することができる。
次に、図21A〜図21C,図22A,図22B,図23,図24A〜図24Dに基づき、本発明を実施した具体例について説明する。
図21は、光学顕微鏡(倍率1000倍)により撮影したクリソタイルを示す光学顕微鏡写真である。
図21Aは、無害化処理前の状態、すなわち、本実施形態のアスベスト処理剤により処理される処理前のクリソタイルの状態を示す顕微鏡写真である。
図21Bは、図21Aのクリソタイルが処理されている処理中の状態を示す顕微鏡写真である。クリソタイル上に析出している粒上の物質がアモルファスシリカである。
図21Cは、無害化処理後の状態、すなわち、図21Aのクリソタイルが処理された処理後の状態を示す顕微鏡写真である。
また、図22A,Bは、クリソタイルの針状結晶の状態変化を示すための光学顕微鏡写真の拡大写真であり、このうち図22Aは、本実施形態のアスベスト処理剤によりクリソタイルの針状結晶が溶解(分子構造破壊)した直後(即ち処理開始から10分後)の状態を示す顕微鏡写真であり、また図22Bは、針状結晶が溶解(分子構造破壊)後、アモルファスシリカがガラス化した(即ち処理開始から1時間後の)状態を示す顕微鏡写真である。
図23は、クリソタイルの針状結晶が束になっている部分にアモルファスシリカが析出した直後の状態を示す偏光顕微鏡写真である。倍率は10000倍。束になっている部分でも粒上のアモルファスシリカが析出している様子が観察される。
図24A〜図24Dは、処理前のクリソタイルと処理後のクリソタイルのSEM−EDX(走査型電子顕微鏡)での分析結果を示すものであり、図24Aは処理サンプル中の太く長い繊維を示す顕微鏡写真、図24Bは同サンプル中の太い繊維の拡大図、図24Cは同サンプル中の細い繊維の拡大図、図24Dは分析結果表である。この分析結果によれば、処理前と処理後ではクリソタイル構成分子中のマグネシウムMg含有比率が処理前30%程度から処理後1〜2%程度に減少している。SEM−EDX(走査型電子顕微鏡)は非結晶構造物質の検出ができないことを考慮すると、この分析結果が示すように処理後のクリソタイルは分子構造破壊を起こし非結晶化(ガラス化)していることが窺がえる。
まず、本具体例で使用した処理剤の成分および割合について説明する。アルコキシシラン(テトラメトキシシランCH3 OSi( OCH3)3 )が1に対して、イソプロピルアルコールが2、フッ化カルシウムが1、酸化カルシウムが2、プラズマ放電処理水が1の割合(重量比)で混合して、アスベスト処理剤とした。なお、温度は、25℃ほどの室温状態で行った。また混合手順は、図1のフローチャートに従った。
この処理剤を、スライドガラス上に載せたクリソタイル(白石綿)に加え、顕微鏡により観察を行った。
そして、クリソタイル(白石綿)を無害化処理前から処理後にかけて、光学顕微鏡により撮影した結果、本実施形態の無害化処理方法によりクリソタイルの膨張、ゲル化し、固化した針状結晶が溶解(分子構造破壊)した後、ガラス化されることが確認できた。
すなわち、図21Aは、光学顕微鏡(倍率1000倍)により撮影した無害化処理前のクリソタイルを示した。
また、図21Bは、倍率3000倍で、クリソタイルの一部が分解されている様子を撮影した顕微鏡写真であって、図7のP1かP2に対応する。線状の物質がクリソタイルであり、線状の物質の上に、膨張して、球状の粒に見えるところが、アモルファスシリカが析出し分解され始めたところである。
また図21Cは、倍率5000倍で、本実施形態の処理方法によりクリソタイルの針状結晶がガラス化した状態を示す。この写真では、完全に線状の物質が消え、粒上のガラス玉のような物質が見える。
次に、クリソタイルが分解される前と後とを拡大した顕微鏡写真を示す。
図22Aは、本実施形態の処理方法によりクリソタイルの針状結晶が溶解した直後の状態(処理の開始から10分後)を示す光学顕微鏡写真の拡大写真である。また図22Bは、同方法によりクリソタイルの針状結晶が溶解(分解)後、ガラス化した状態(処理の開始から1時間後)を示す同様の拡大写真である。これら写真によれば、クリソタイル(白石綿)の針状結晶が本実施形態の処理方法により溶解(分解)し、最終的にはガラス化して、無害化されたことが窺い知れる。
図23はクリソタイルの針状結晶が束になっている部分にアモルファスシリカが析出
した直後の状態を示す偏光顕微鏡写真である。倍率は10000倍。束になっている部分でも粒上のアモルファスシリカが析出している様子が観察される。このことはクリソタイルの針状結晶が単独で存在していても、束上に集合していても本実施形態の処理方法が有意義に実施されていることを示している。
図24A〜図24Dは、処理前のクリソタイルと処理後のクリソタイルのSEM−EDX(走査型電子顕微鏡)での分析結果であり、この分析結果から前述のように本発明の処理方法がクリソタイルを無害化していることが明らかである。
次に、アルコキシシランとして、テトラメトキシシランSi(OCH3)4 、メチルトリメトキシシランCH3 Si(OCH3)3 、ジメチルジメトキシシラン (CH3)2 Si(OCH3)2 、テトラエトキシシランSi(OC2 5)4 、メチルトリエトキシシランCH3 Si(OC2 5)3 、ジメチルジエトキシシラン( CH3)2 Si(OC2 5)2 、チタンオキサイドトリメトキシシランTiOSi(OCH3)3 をそれぞれ用い場合において、図7における球状の粒子が析出する時間を測定した。なお、実験条件は前記のテトラメトキシシランを用いた場合と同じである。
メチルトリメトキシシランの場合、3〜5分ほどで、テトラメトキシシランの場合、1〜2分ほど、ジメチルジメトキシシランの場合、5〜10分ほどで、チタンオキサイドトリメトキシシランの場合、5〜10分で、球状の粒子が析出した。
一方、テトラエトキシシランや、メチルトリエトキシシランや、ジメチルジエトキシシランの場合は、球状の粒子が析出するまでに、30分以上かかった。
以上、本発明の好ましい実施形態やその変形例、具体例を詳述したが、本発明は、前記実施形態やその変形例、具体例に限定されず、その発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、本発明の方法は、建物や種々の設備の壁面に付着したアスベストを無害化処理するのに実施可能であることは勿論のこと、他物に固定されていないアスベスト、例えば建物や種々の設備の壁面より分離、回収されて特定場所に集められたアスベストを無害化処理するのにも実施可能である。
また前述のように、本発明においては、「アスベスト」が、蛇紋石、角閃石等のケイ酸塩鉱物中に含まれ又は同鉱物より分離、抽出された、有害な針状結晶構造を有する繊維状鉱物であると定義され、また「アスベスト含有物」が、少なくとも一部にアスベストを含む物質であって、例えば、アスベストを一部に含む蛇紋石、角閃石等のケイ酸塩鉱物や、一部又は全部がアスベストである各種資材(例えば建築資材、土木資材等の資材)が含まれると定義されている。
従って、本発明が対象とする「アスベスト含有物」には、アスベスト単体状態で使用される建築資材が含まれることは元より、ロックウール、スレートその他の各種資材と混在した状態で使用されているアスベスト混入製品も含まれる。また、アスベストの原材料となる蛇紋石、角閃石等のケイ酸塩鉱物そのものも「アスベスト含有物」に含まれ、そのケイ酸塩鉱物の資源化を図るべく、そのケイ酸塩鉱物を破砕しアスベストを無害化処理するための処理剤、処理方法、利用方法としても本発明は適用可能である。
本発明の実施形態に係るアスベスト含有物の処理剤の作成手順の一例を示すフローチャート 本実施形態の処理剤を用いて行うアスベスト含有物の処理手順の一例を示すフローチャート 本実施形態の処理剤により無害化処理されたアスベスト含有物の利用方法を示すフローチャート 本実施形態の処理剤とアスベスト含有物中のアスベストとの反応のプロセスの一例を示すフローチャート 本実施形態の処理剤とアスベスト含有物中のアスベストとの反応の初期段階(アルコール生成段階)の一例を示す模式図 アスベストの針状結晶構造の要部の一例を示す模式図 本実施形態の処理剤との反応に基づく、アスベスト含有物中のアスベストの分解のプロセスの一例を示す模式図 本実施形態の処理剤に付加すべきプラズマ放電処理水を生成するためのプラズマ放電処理水生成装置を示す全体縦断面図 前記プラズマ放電処理水生成装置の横断面(図8の9−9線断面図) 前記プラズマ放電処理水生成装置の陽電極部分の拡大縦断面図(図8の10部矢視拡大断面図) 前記プラズマ放電処理水生成装置におけるプラズマ放電の原理を説明するための実験モデル図 前記プラズマ放電処理水生成装置における陽電極と陰電極間でのプラズマ放電流の発生状態を簡略的に示す説明図 プラズマ放電処理水生成装置の第1変形例を示す全体縦断面図 プラズマ放電処理水生成装置の第2変形例を示す全体縦断面図 プラズマ放電処理水生成装置の第3変形例を示す全体縦断面図 第3変形例のプラズマ放電処理水生成装置の平面図 第3変形例のプラズマ放電処理水生成装置の要部を示す斜視図 第3変形例のプラズマ放電処理水生成装置における陽電極と陰電極間でのプラズマ放電流の発生状態を簡略的に示す説明図 プラズマ放電処理水生成装置の第4変形例の概要を示す模式図 プラズマ放電処理水生成装置の第5変形例の概要を示す模式図 本実施形態の処理剤により処理される処理前のクリソタイルの状態を示す顕微鏡写真 図21Aのクリソタイルの処理途中の状態を示す顕微鏡写真 図21Aのクリソタイルの処理終了後の状態を示す顕微鏡写真 クリソタイルの針状結晶の状態変化を示すための光学顕微鏡写真の拡大写真であって、処理剤によりクリソタイルの針状結晶が分子構造破壊した直後(即ち処理開始から10分後)の状態を示す クリソタイルの針状結晶の状態変化を示すための光学顕微鏡写真の拡大写真であって、針状結晶が分子構造破壊後、アモルファスシリカがガラス化した(即ち処理開始から1時間後の)状態を示す クリソタイルの針状結晶が束になっている部分にアモルファスシリカが析出した直後の状態を示す偏光顕微鏡写真(倍率は10000倍) 処理前後のクリソタイルのSEM−EDX(走査型電子顕微鏡)での分析結果をしめす顕微鏡写真であって、処理サンプル中の太く長い繊維を示す 処理前後のクリソタイルのSEM−EDX(走査型電子顕微鏡)での分析結果を示す顕微鏡写真であって、処理サンプル中の太い繊維の拡大写真 処理前後のクリソタイルのSEM−EDX(走査型電子顕微鏡)での分析結果をしめす顕微鏡写真であって、処理サンプル中の細い繊維の拡大写真 処理前後のクリソタイルのSEM−EDX(走査型電子顕微鏡)での分析結果を示す表 (a)は、アスベスト含有物を無害化処理した後に生じたシリカとカンラン石の混合物を乳鉢で破砕した状態を示し、また(b)は、その混合物中より篩分けられたシリカを示し、さらに(c)は、その混合物中より篩分けられたカンラン石を示す写真
符号の説明
A1〜A6・・プラズマ放電処理水生成装置
D,D′,D″・・水移動手段
E・・・・・・高周波高電圧パルス放電用電源(高電圧放電手段)
M1〜M6・・陰電極
P・・・・・・陽電極
W・・・・・・水

Claims (13)

  1. 少なくとも一部にアスベストを含むアスベスト含有物を無害化処理するために用いる、アスベスト含有物の処理剤であって、
    アルコキシシランと、マグネシウムよりもイオン化傾向の高い、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちより選択された少なくとも1つの金属の塩もしくは酸化物とを含有することを特徴とする、アスベスト含有物の処理剤。
  2. 更に水と、水溶性の有機溶媒とを含有することを特徴とする、請求項1に記載のアスベスト含有物の処理剤。
  3. 前記有機溶媒が、前記アルコキシシランに対応するアルキル基を有するアルコールと異なる有機溶媒であることを特徴とする、請求項2に記載のアスベスト含有物の処理剤。
  4. 前記水が放電により処理された放電処理水であることを特徴とする、請求項2又は3に記載のアスベスト含有物の処理剤。
  5. 前記放電処理水は、
    先端が尖った第1電極(P)と、前記第1電極(P)と対をなす第2電極(M1〜M6)と、前記第1電極(P)および第2電極(M1〜M6)の間に高電圧放電を発生させる高電圧放電手段(E)とを備えていて、前記第1電極(P)および第2電極(M1〜M6)の間に配した水を放電処理する放電処理水生成装置(A1〜A6)により生成されたことを特徴とする、請求項4に記載のアスベスト含有物の処理剤。
  6. 前記放電処理水生成装置(A4〜A6)は、前記第1電極(P)および第2電極(M1〜M6)の間の水を移動させる水移動手段(D,D′,D″)を更に備えたことを特徴とする、請求項5に記載のアスベスト含有物の処理剤。
  7. 前記金属の塩の種類が2種以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアスベスト含有物の処理剤。
  8. 前記金属の塩が、カリウム、カルシウムおよびナトリウムのうち少なくとも1種の強酸塩であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアスベスト含有物の処理剤。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の処理剤をアスベスト含有物に添加、接触させる第1の工程と、
    前記処理剤を添加、接触させたアスベスト含有物を燃焼または減圧する第2の工程とを備えたことを特徴とする、アスベスト含有物の処理方法。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の処理剤をアスベスト含有物に添加、接触させることで、アスベスト含有物中の少なくともアスベスト構成分子内の水酸基にアルコキシシランを結合させる反応を生じさせて、この反応に基づいてアスベスト含有物中のアスベストの針状結晶を膨張させると共にゲル化反応を生じさせ、そのゲル化後に加熱又は減圧することで前記針状結晶の分子構造を破壊することにより、アスベスト含有物中のアスベストを無害化することを特徴とする、アスベスト含有物の処理方法。
  11. アルコキシシランをアルコール系溶剤に混ぜた溶液中に、カルシウム塩と、マグネシウムよりもイオン化傾向の高いカリウム、カルシウムまたはナトリウムのうちの少なくとも1種の強酸塩もしくは酸化物とを混ぜて得られる処理溶液を作成し、この処理溶液を、少なくとも一部にアスベストを含むアスベスト含有物に添加、接触させ、更にそのアスベスト含有物に対し放電処理された水を作用させることにより、該アスベスト含有物中のアスベストの針状結晶を膨張させると共にゲル化反応を生じさせ、そのゲル化後に加熱又は減圧することで前記針状結晶の分子構造を破壊することにより、アスベスト含有物中のアスベストを無害化することを特徴とする、アスベスト含有物の処理方法。
  12. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の処理剤によりアスベスト含有物を無害化処理して得られた物質中からシリカおよびシリコンのうちの少なくとも1つを取り出して、有用な資源として利用することを特徴とする、アスベスト含有物の利用方法。
  13. 請求項9〜11のいずれか1項に記載の処理方法によりアスベスト含有物を無害化処理して得られた物質中からシリカ、シリコンおよびカンラン石のうちの少なくとも1つを取り出して、有用な資源として利用することを特徴とする、アスベスト含有物の利用方法。
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