JP5390321B2 - ヒドロキシヒドロキノン生成抑制剤 - Google Patents
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Description
本発明はまた、ヒドロキシヒドロキノンの生成を抑制した容器詰コーヒー飲料及び容器詰コーヒー飲料のヒドロキシヒドロキノンの生成抑制方法を提供することを課題とする。
(A)クロロゲン酸類:0.01〜1質量%、及び
(B)ピリドキサール及びピリドキサミンから選択される少なくとも1種
を含有する容器詰コーヒー飲料を提供するものである。
本発明の容器詰コーヒー飲料は、上記ヒドロキシヒドロキノン生成抑制剤を含有することで、ヒドロキシヒドロキノンが生成しやすい長期保存時においてもヒドロキシヒドロキノンの生成が抑制されるため、クロロゲン酸類による生理活性がヒドロキシヒドロキノンにより阻害され難い。
本発明のHHQ生成抑制剤は、ピリドキサール及びピリドキサミンから選択される少なくとも1種を有効成分とすることを特徴とするものである。
本発明のHHQ生成抑制剤の有効成分であるピリドキサール及びピリドキサミンはビタミンB6類の1種であり、ビタミンB6類は生体内でアミノ酸とたんぱく質の代謝に係わる生理活性物質として知られている。
ビタミンB6類としてピリドキシン、ピリドキサール及びピリドキサミン、並びにそれらの5'位のリン酸エステルであるピリドキシン5'−リン酸、ピリドキサール5'−リン酸及びピリドキサミン5'−リン酸等が存在するが、これらの中でピリドキサール及びピリドキサミンが容器詰コーヒー飲料のヒドロキシヒドロキノンの生成を特異的に抑制することを本発明者は見出したものである。
本発明に係る容器詰コーヒー飲料は、当該容器詰コーヒー飲料中に(A)クロロゲン酸類を0.01〜1質量%含有するが、生理活性及び風味の観点から、上限は0.8質量%、更に0.6質量%、より更に0.5質量%、特に0.3質量%であることが好ましく、他方下限は0.05質量%、更に0.08質量%、より更に0.1質量%、特に0.13質量%であることが好ましい。なお、クロロゲン酸類の含有量は、後掲の実施例に記載の「クロロゲン酸類の分析」により測定された値である。
ここで、本明細書において「(A)クロロゲン酸類」とは、3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸及び5−カフェオイルキナ酸の(A1)モノカフェオイルキナ酸と、3−フェルラキナ酸、4−フェルラキナ酸及び3−フェルラキナ酸の(A2)フェルラキナ酸と、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸及び4,5−ジカフェオイルキナ酸の(A3)ジカフェオイルキナ酸を併せての総称である。クロロゲン酸類含量は、上記9種の合計量に基づいて定義される。
先ず、コーヒー豆からコーヒー抽出液を調製する。この場合、コーヒー抽出液に換えて、インスタントコーヒーの水溶液、液体コーヒーエキス等を使用してもよい。
抽出に使用するコーヒー豆の種類は特に限定されないが、例えば、ブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ、キリマンジェロ、マンデリン、ブルーマウンテンが例示される。また、コーヒー豆種としては、アラビカ種、ロブスタ種等がある。コーヒー豆は、1種でもよいし、複数種をブレンドして用いてもよい。
コーヒー豆として焙煎コーヒー豆を使用することが好ましく、焙煎度としては、例えば、ライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティ、フルシティ、フレンチ、イタリアンが例示される。中でも、ライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティがクロロゲン酸類を多く含み、飲用しやすい点で好ましい。
コーヒー豆の焙煎方法は特に制限はなく、焙煎温度、焙煎環境についても何ら制限はなく、通常の方法を採用できる。更に、抽出方法についても何ら制限はなく、例えば、焙煎コーヒー豆又はその粉砕物から水又は熱水(0〜100℃)を用いて10秒〜30分抽出する方法が例示される。抽出方法としては、例えば、ボイリング式、エスプレッソ式、サイホン式、ドリップ式(ペーパー、ネル等)が例示される。
吸着剤としては、活性炭、逆相クロマトグラフ担体等を使用することができる。より具体的には、コーヒー抽出液又はコーヒー抽出液の乾燥品の水溶液に、吸着剤を加え0〜100℃で10分〜5時間撹拌した後、吸着剤を除去すればよい。吸着剤は、コーヒー豆の質量に対して、活性炭の場合は0.02〜1.0倍、逆相クロマトグラフ担体の場合は2〜100倍用いることが好ましい。活性炭としては、ミクロ孔領域における平均細孔半径が5オングストローム(Å)以下、更に2〜5オングストローム、特に3〜5オングストロームであるものが好ましい。
これらの吸着剤処理法のうち、特定の活性炭を用いた吸着剤処理法はクロロゲン酸類含量を低下させることなく選択的にヒドロキシヒドロキノン含量を低減させることができ、しかも工業的に有利に製造することが可能で、カリウム含量を低下させない(質量比で1/5以上、特に1/2以上保持)点からも好ましい。
1)コーヒー豆の焙煎度や抽出時における焙煎豆と抽出液の比率を制御する方法。
2)抽出時に得られる抽出液をフラクションに分けて所望のブリックス値を有するフラクションを抜き取る方法。
3)活性炭処理により特定成分を吸着する方法。
4)別途低焙煎豆や生豆からの抽出液を添加してブリクッス値を調整する方法。
本発明の容器詰コーヒー飲料は、ブラックコーヒー飲料でも、ミルクコーヒー飲料でもよいが、実質的に乳成分を含まないブラックコーヒー飲料が好ましい。また、容器詰コーヒー飲料は、シングルストレングスであることが好ましい。ここで、「シングルストレングス」とは、容器詰コーヒー飲料を開封した後、常態として薄めずにそのまま飲めるものをいう。
本発明の容器詰コーヒー飲料及び該容器詰飲料のHHQ生成抑制方法によれば、加熱殺菌してもヒドロキシヒドロキノンの生成が顕著に抑制されるため、クロロゲン酸類による生理活性がヒドロキシヒドロキノンにより阻害され難く、更には長期保存安定性にも優れるようになる。
分析機器はHPLCを使用した。装置の構成ユニットの型番は次の通りである。
UV−VIS検出器:L−2420((株)日立ハイテクノロジーズ)、
カラムオーブン:L−2300((株)日立ハイテクノロジーズ)、
ポンプ:L−2130((株)日立ハイテクノロジーズ)、
オートサンプラー:L−2200((株)日立ハイテクノロジーズ)、
カラム:Cadenza CD−C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3μm(インタクト(株))。
サンプル注入量:10μL、
流量:1.0mL/min、
UV−VIS検出器設定波長:325nm、
カラムオーブン設定温度:35℃、
溶離液A:0.05M 酢酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、10mM 酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液、
溶離液B:アセトニトリル。
時間 溶離液A 溶離液B
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
15.0分 95% 5%
20.0分 95% 5%
22.0分 92% 8%
50.0分 92% 8%
52.0分 10% 90%
60.0分 10% 90%
60.1分 100% 0%
70.0分 100% 0%
クロロゲン酸類の保持時間(単位:分)
(A1)モノカフェオイルキナ酸:5.3、8.8、11.6の計3点
(A2)フェルラキナ酸:13.0、19.9、21.0の計3点
(A3)ジカフェオイルキナ酸:36.6、37.4、44.2の計3点。
ここで求めた9種のクロロゲン酸類の面積値から5−カフェオイルキナ酸を標準物質とし、クロロゲン酸類の含有量(質量%)を求めた。
分析機器はHPLC−電気化学検出器(クーロメトリック型)であるクーロアレイシステム(モデル5600A、米国ESA社製)を使用した。装置の構成ユニットの名称・型番は次の通りである。
アナリティカルセル:モデル5010、クーロアレイオーガナイザー、
クーロアレイエレクトロニクスモジュール・ソフトウエア:モデル5600A、
溶媒送液モジュール:モデル582、グラジエントミキサー、
オートサンプラー:モデル542、パルスダンパー、
デガッサー:Degasys Ultimate DU3003、
カラムオーブン:505、
カラム:CAPCELL PAK C18 AQ 内径4.6mm×長さ250mm 粒子径5μm((株)資生堂)。
サンプル注入量:10μL、
流量:1.0mL/min、
電気化学検出器の印加電圧:0mV、
カラムオーブン設定温度:40℃、
溶離液C:0.1(W/V)%リン酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、5(V/V)%メタノール溶液、
溶離液D:0.1(W/V)%リン酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、50(V/V)%メタノール溶液。
時間 溶離液C 溶離液D
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
10.1分 0% 100%
20.0分 0% 100%
20.1分 100% 0%
50.0分 100% 0%
試料を、20℃における糖用屈折計示度(Brix)を、糖度計(Atago RX-5000(Atago社製))を用いて測定した。
過酸化水素分析計(SUPER ORITECTOR MODEL 5、セントラル科学(株))を使用し、標準校正液(過酸化水素1ppm)で校正した後、分析計測定セル内に、0.5%臭素酸カリウム配合の0.2Mリン酸バッファー(pH7.0)を1mL入れた。セル内に窒素を供給しセル内の溶存酸素がゼロになった時点で30℃恒温槽に静置しておいたセルから試料1mLを速やかに抜き取り、測定セル内に加えた。その後、装置の測定手順に従い、発生した酸素濃度をプリンターから読み取った。以後、15分毎に測定し、得られた1時間後までのデータを用いて最小二乗法で直線を引き、発生速度を求めた。ここで、MODEL5の検出限界は0.1mg/kgであった。
60℃で2週間保存前後における各容器詰コーヒー飲料の風味の変化の有無について、パネラー5名により評価し、その後協議により判定した。
多段抽出機を用いて、中焙煎度のコーヒー豆を95℃のイオン交換水で抽出し、コーヒー抽出エキスを得た。次に、コーヒー抽出エキス中のBrixを測定し、Brixに対して50質量%の量の活性炭(白鷺WH2C、日本エンバイロケミカルズ(株))を充填したカラム(内径45mm、長さ150mm)を準備した。その後、活性炭を充填したカラムに温度25℃、SV3[1/容量[m3]/流量[m3/hr]]の条件下でコーヒー抽出液を通液し、活性炭処理してヒドロキシヒドロキノンを除去したコーヒー抽出エキスを得た。
次に、得られたヒドロキシヒドロキノンを除去したコーヒー抽出エキスをイオン交換水で希釈し、加熱殺菌処理後のpH値が6.2となるよう重曹にてpH調整し、更にピリドキサールの配合を行った。なお、加熱殺菌前のヒドロキシヒドロキノンは、検出限界以下であった。
次に、得られたコーヒー組成物を190g缶に充填後、密封し、レトルト殺菌処理(135℃、100秒)を施し、容器詰コーヒー飲料を得た。そして、加熱殺菌後のクロロゲン酸量及びヒドロキシヒドロキノン量の分析、ブッリクス値並びに過酸化水素の測定を行った。次いで、得られた容器詰コーヒー飲料を60℃で2週間保存した後、保存後のクロロゲン酸量及びヒドロキシヒドロキノン量の分析、並びに官能試験を行った。その結果を表1に併せて示す。
ピリドキサールの添加量を換えたこと以外は、実施例1と同様に容器詰コーヒー飲料を製造した。そして、60℃で2週間保存前後の容器詰コーヒー飲料を分析し、官能試験を行った。その結果を表1に併せて示す。
ピリドキサールをピリドキサミンに換えたこと以外は、実施例1と同様に容器詰コーヒー飲料を製造した。そして、60℃で2週間保存前後の容器詰コーヒー飲料を分析し、官能試験を行った。その結果を表1に併せて示す。
ピリドキサールをピリドキサミンに換え、その添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様に容器詰コーヒー飲料を製造した。そして、60℃で2週間保存前後の容器詰コーヒー飲料を分析し、官能試験を行った。その結果を表1に併せて示す。
ピリドキサールをピリドキシンに換えたこと以外は、実施例1と同様に容器詰コーヒー飲料を製造した。そして、60℃で2週間保存前後の容器詰コーヒー飲料を分析し、官能試験を行った。その結果を表1に併せて示す。
ピリドキサールを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様に容器詰コーヒー飲料を製造した。そして、60℃で2週間保存前後の容器詰コーヒー飲料を分析し、官能試験を行った。その結果を表1に併せて示す。
Claims (6)
- ピリドキサール及びピリドキサミンから選択される少なくとも1種を有効成分とする、容器詰コーヒー飲料のヒドロキシヒドロキノン生成抑制剤。
- 当該ヒドロキシヒドロキノン生成抑制剤の容器詰コーヒー飲料中への添加量が0.001〜0.2質量%である、請求項1記載のヒドロキシヒドロキノン生成抑制剤。
- 前記容器詰飲料が0.01〜1質量%のクロロゲン酸類を含有するものである、請求項1又は2記載のヒドロキシヒドロキノン生成抑制剤。
- 次の成分(A)及び(B):
(A)クロロゲン酸類:0.01〜1質量%、及び
(B)ピリドキサール及びピリドキサミンから選択される少なくとも1種:0.001〜0.2質量%
を含有する容器詰コーヒー飲料。 - 当該容器詰コーヒー飲料が加熱殺菌処理したものである、請求項4記載の容器詰コーヒー飲料。
- 当該容器詰コーヒー飲料のブリックス値が1〜2である、請求項4又は5記載の容器詰コーヒー飲料。
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