JP3973673B2 - 容器詰ミルクコーヒー飲料 - Google Patents

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Description

本発明は、加熱殺菌後のヒドロキシヒドロキノンを抑えた血圧降下作用を有する容器詰ミルクコーヒー飲料に関する。
高血圧症の治療薬としては、神経因子による調節系に作用する各種神経遮断薬、液性因子に関わる調節系に作用するACE阻害薬、AT受容体拮抗薬、血管内皮由来物質による調節系に関わるCa拮抗薬、腎臓での体液調節系に関わる降圧利尿薬などの医薬品が挙げられ、これらは主として医療機関において、重症の高血圧患者に使用される。しかし、現状において高血圧症対策の目的で使用される医薬品は、有効性に関しては満足できる反面少なからず存在する副作用のため患者にかかる負担は大きい。
このため食餌療法、運動療法、飲酒・喫煙の制限などの生活改善による一般療法が、軽症を含む正常高値高血圧症者から重症な高血圧症者に広く適用されている。一般療法の重要性の認識の高まりに伴い、特に食生活の改善が重要であるといわれ続けている。そして血圧降下作用を有する食品から食品由来の降圧素材の探索がさかんに行われ、その有効成分の分離・同定が数多く行われている。
このうち、コーヒー等の食品に含まれているクロロゲン酸、カフェ酸、フェルラ酸等が優れた血圧降下作用を示すことが報告されている(特許文献1〜3)。しかしながら、クロロゲン酸類を多量に含むことが知られているコーヒー飲料では、明確な血圧降下作用が認められず、逆に血圧を上昇させるという報告もある(非特許文献1)。
特開2002−363075号公報 特開2002−22062号公報 特開2002−53464号公報 Eur.J.Clin.Nutr.,53(11),831(1999)
本発明の目的は、優れた高血圧改善作用を有し、通常摂取できる容器詰ミルクコーヒー飲料を提供することにある。
本発明者は、コーヒー飲料がクロロゲン酸を含んでいるにもかかわらず、十分な血圧降下作用を示さないことに着目し、血圧降下作用とコーヒー飲料成分との関係について種々検討した結果、コーヒー飲料に含まれているヒドロキシヒドロキノンがクロロゲン酸類の血圧降下作用を阻害していることを見出した。そして、クロロゲン酸類量を一定範囲に保持し、ヒドロキシヒドロキノン含量を通常含まれる量より十分少ない一定量以下に低下させれば、優れた血圧降下作用を有するコーヒー組成物が得られることを見出した。
しかし、このコーヒー組成物に乳成分を配合して容器詰ミルクコーヒー飲料とした場合、ヒドロキシヒドロキノン含量を低下させても、加熱殺菌処理工程でヒドロキシヒドロキノンが増加してしまうことが判明した。そこで、更に検討した結果、飲料中のpHを一定範囲とすることで、加熱殺菌処理によるヒドロキシヒドロキノンの増加を抑制でき、かつ風味の良好な容器詰ミルクコーヒー飲料が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、下記の条件(A)〜(C):
(A)クロロゲン酸類 0.01〜1質量%、
(B)ヒドロキシヒドロキノン クロロゲン酸類量の0.1質量%未満
(C)pH5.0〜6.4
である容器詰ミルクコーヒー飲料を提供するものである。
本発明の容器詰ミルクコーヒー飲料は、優れた高血圧改善作用、すなわち血圧降下作用又は血圧上昇抑制作用を有し、かつ長期継続摂取可能である。従って、本発明のミルクコーヒー飲料は、高血圧改善用の医薬として、更には血圧降下のために、又は、血圧上昇抑制のために用いられる旨、又は血圧が高めの方にと表示された飲料として有用である。
本発明の容器詰ミルクコーヒー飲料は、血圧降下作用、血圧上昇抑制作用、及び味の点で、(A)クロロゲン酸類を0.01〜1質量%含有するが、好ましくは0.05〜0.8質量%、より好ましくは0.1〜0.6質量%、更に好ましくは0.13〜0.5質量%、特に好ましくは0.15〜0.4質量%含有する。(A)当該クロロゲン酸類としては(A1)モノカフェオイルキナ酸、(A2)フェルラキナ酸、(A3)ジカフェオイルキナ酸の三種を含有する。ここで(A1)モノカフェオイルキナ酸としては3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸及び5−カフェオイルキナ酸から選ばれる1種以上が挙げられる。また(A2)フェルラキナ酸としては、3−フェルラキナ酸、4−フェルラキナ酸及び5−フェルラキナ酸から選ばれる1種以上が挙げられる。(A3)ジカフェオイルキナ酸としては3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸及び4,5−ジカフェオイルキナ酸から選ばれる1種以上が挙げられる。当該クロロゲン酸類の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することができる。HPLCにおける検出手段としては、UV検出が一般的であるが、CL(化学発光)検出、EC(電気化学)検出、LC−Mass検出等により更に高感度で検出することもできる。
本発明の容器詰ミルクコーヒー飲料のヒドロキシヒドロキノン(B)の含有量はクロロゲン酸類量に対して0.1質量%未満である。クロロゲン酸類量に対してヒドロキシヒドロキノン量が0.1質量%未満であれば、クロロゲン酸類の血圧降下作用が十分に発揮される。クロロゲン酸類量に対してヒドロキシヒドロキノン量は、好ましくは0.001〜0.08質量%、より好ましくは0.002〜0.05質量%、更に好ましくは0.003〜0.04質量%、特に好ましくは0.004〜0.03質量%である。更に、クロロゲン酸類量に対してヒドロキシヒドロキノン量が0.05質量%以下であればクロロゲン酸の血圧降下作用が顕著に現われる。ここで、本発明飲料等中のヒドロキシヒドロキノン含量は0であってもよい。
当該ヒドロキシヒドロキノン含量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することができる。HPLCにおける検出手段としては、UV検出が一般的であるが、CL(化学発光)検出、EC(電気化学)検出、LC−Mass検出等により更に高感度で検出することもできる。特にEC(電気化学)検出が極微量のヒドロキシヒドロキノンを測定できる点で好ましい。なお、HPLCによるヒドロキシヒドロキノン含量の測定にあたっては、コーヒー飲料等を濃縮した後に測定することもできる。
更にヒドロキシヒドロキノン含量は、HPLCで直接測定することもできるが、容器詰ミルクコーヒー飲料又はミルクコーヒー組成物から、各種クロマトグラフィーによりヒドロキシヒドロキノンを濃縮して、その濃縮画分の量を測定することによっても定量できる。
なお、クロロゲン酸類量の測定にあたっては、容器詰ミルクコーヒー飲料を開封後直ちに、例えば50mM酢酸、10mM酢酸ナトリウム、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を含有する5%アセトニトリル溶液にて10倍に希釈した溶液、又は、40〜50mM酢酸、9〜10mM酢酸ナトリウム、0.09〜0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を含有する4〜5(V/V)%アセトニトリル溶液系で測定するのが好ましい。さらに、ヒドロキシヒドロキノンの測定にあたっては、容器詰ミルクコーヒー飲料を開封後直ちに、0.5(W/V)%リン酸、0.5mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を含有する5(V/V)%メタノール溶液にて2倍に希釈した溶液、又は、0.25〜0.5(W/V)%リン酸、0.25〜0.5mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を含有する2.5〜5(V/V)%メタノール溶液系で測定するのが好ましい。
本発明の容器詰ミルクコーヒー飲料は、加熱殺菌処理後のpHが5.0〜6.4、好ましくは、5.4〜6.4、さらに好ましくは5.5〜6.3である。飲料中のpHが5.0未満であるとヒドロキシヒドロキノンの生成量は低くなるものの、飲料の風味や安定性が悪くなり、他方pH6.4を超えるとヒドロキシヒドロキノンの生成量が大きくなってしまう。pH調整は、加熱殺菌処理によるpHの変化を予め試験しておき、加熱殺菌前のpHを加熱殺菌処理後のpHを予測してあらかじめ調整しておくことが好ましい。これは加熱殺菌前後ではpHが変化してしまうからである。従って、加熱殺菌前のミルクコーヒー組成物のpHは、おおよそ5.2〜6.7、好ましくは、5.6〜6.6、さらに好ましくは5.7〜6.5である。また加熱殺菌後、無菌下でpHを上記範囲となるように戻す等の操作により行うこともできる。
本発明の容器詰ミルクコーヒー飲料は、ヒドロキシヒドロキノン含有量を低減させる以外は、通常のコーヒー成分をそのまま含有しているのが好ましい。
また、本発明の容器詰ミルクコーヒー飲料は、H22(過酸化水素)の含有量が1ppm以下、より好ましくは0.1ppm以下、更に0.05ppm以下、特に0.01ppm以下であるのがコーヒー本来の風味の点で好ましい。過酸化水素の測定は通常用いられる過酸化水素計を用いて行うことができ、例えば、セントラル科学社製の高感度過酸化水素計スーパーオリテクターモデル5(SUPER ORITECTOR MODEL5)等を用いることができる。特にH22は開缶前は殺菌処理により失われているものの、開缶によって空気に触れると時間経過と共に徐々に増加する傾向があることから、特許文献3732782号、3706339号に記載の測定条件に則り、開缶後迅速かつ速やかに分析する。
本発明の容器詰ミルクコーヒー飲料に用いるコーヒー豆の種類は、特に限定されないが、例えばブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ等が挙げられる。コーヒー種としては、アラビカ種、ロブスタ種などがある。コーヒー豆は1種でもよいし、複数種をブレンドして用いてもよい。焙煎コーヒー豆の焙煎方法については特に制限はなく、焙煎温度、焙煎環境についても何ら制限はなく、通常の方法を採用できる。更にその豆からの抽出方法についても何ら制限はなく、例えば焙煎コーヒー豆又はその粉砕物から水〜熱水(0〜100℃)を用いて10秒〜30分抽出する方法が挙げられる。抽出方法は、ボイリング式、エスプレッソ式、サイホン式、ドリップ式(ペーパー、ネル等)等が挙げられる。
また、本発明の容器詰ミルクコーヒー飲料に用いる乳成分としては、生乳、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、脱脂乳、部分脱脂乳、練乳、植物油等が挙げられる。これらの乳成分は、合計で容器詰ミルクコーヒー飲料中に乳固形分換算で0.1〜10質量%、さらに0.5〜6質量%、特に1〜4質量%含有するのが好ましい。
本発明の容器詰ミルクコーヒー飲料は、飲料100gあたりコーヒー豆を生豆換算で1g以上使用したものをいい、好ましくはコーヒー豆を2.5g以上使用しているものである。更に好ましくはコーヒー豆を5g以上使用しているものである。また、容器詰ミルクコーヒー飲料は、シングルストレングスであることが好ましい。ここでシングルストレングスとは、容器詰ミルクコーヒー飲料を開封した後、常態として薄めずにそのまま飲めるものをいう。
本発明の容器詰ミルクコーヒー飲料に用いるミルクコーヒー組成物は、焙煎コーヒー豆抽出物を吸着剤処理してヒドロキシヒドロキノン含量を低減させ、pH5.2〜6.7と調整することにより得られる。吸着剤としては、活性炭、逆相クロマドグラフ担体などが挙げられる。より具体的には、焙煎コーヒー豆抽出液又は焙煎コーヒー豆抽出液の乾燥品の水溶液に、吸着剤を加え0〜100℃で10分〜5時間撹拌した後、吸着剤を除去すればよい。ここで、吸着剤は、焙煎コーヒー豆重量に対して活性炭の場合は0.02〜1.0倍、逆相クロマドグラフ担体の場合は2〜100倍用いるのが好ましい。活性炭としては、ミクロ孔領域における平均細孔半径が5オングストローム(Å)以下、更には、2〜5オングストロームの範囲であることが好ましく、特に3〜5オングストロームの範囲であることが好ましい。本発明におけるミクロ孔領域とは、10オングストローム以下を示し、平均細孔半径は、MP法により測定して得た細孔分布曲線のピークトップを示す細孔半径の値とした。MP法とは、文献(Colloid and Interface Science, 26, 46(1968))に記載の細孔測定法であり、株式会社住化分析センター、株式会社東レリサーチセンター等にて採用されている方法である。
また、活性炭の種類としては、ヤシ殻活性炭が好ましく、更に水蒸気賦活化ヤシ殻活性炭が好ましい。活性炭の市販品としては、白鷺WH2C(日本エンバイロケミカルズ)、太閣CW(二村化学)、クラレコールGW(クラレケミカル)等を用いることができる。逆相クロマドグラフ担体としては、YMC・ODS−A(YMC)、C18(GLサイエンス)等が挙げられる。
これらの吸着剤処理法のうち、特定の活性炭を用いた吸着剤処理法はクロロゲン酸類量を低下させることなく選択的にヒドロキシヒドロキノン含量を低減させることができるだけでなく、工業的にも有利であり、更にカリウム含量を低下させない(質量比で1/5以上、特に1/2以上保持)点からも好ましい。
本発明における容器詰ミルクコーヒー飲料は、HPLCによる分析における、没食子酸を標準物質とした場合の没食子酸に対する相対保持時間が0.54〜0.61の時間領域に実質的にピークを有しないことが好ましい。当該時間領域に実質的にピークを有しないことを確認するには、一般的なHPLCを使用することができ、例えば溶離液として0.05M酢酸水溶液と0.05M酢酸100%アセトニトリル溶液のグラジエントを用い、ODSカラムを用いて、紫外線吸光光度計等により検出することで確認することができる。
本発明において没食子酸に対する相対保持時間が0.54〜0.61の時間領域に実質的にピークを有しないとは、没食子酸の1ppm溶液を分析時の面積値をS1とし、同条件で容器詰ミルクコーヒー飲料を分析した時の前記時間の領域に溶出する成分に由来するピーク面積の総和をS2としたとき、S2/S1<0.01であることを意味する。
本発明の容器詰ミルクコーヒー飲料には、ショ糖、グルコース、フルクトース、キシロース、果糖ブドウ糖液、糖アルコール等の糖分、抗酸化剤、pH調整剤、乳化剤、香料等を添加することができる。
容器詰ミルクコーヒー飲料中のモノカフェオイルキナ酸の構成比としては、4−カフェオイルキナ酸/3−カフェオイルキナ酸質量比が0.6〜1.2であり、5−カフェオイルキナ酸/3−カフェオイルキナ酸質量比が0.01〜3であることがこのましい。
本発明の容器詰ミルクコーヒー飲料の容器は、PETボトル、缶(アルミニウム、スチール)、紙、レトルトパウチ、瓶(ガラス)等容器を用いることができる。この場合、50〜2500mLの容器を用いることができる。容器としては、特に、コーヒー中の成分の変化を防止する観点から、酸素透過度の低い容器が好ましく、例えば、アルミニウムや、スチールなどの缶、ガラス製のビン等を用いるのが良い。缶やビンの場合、リキャップ可能な、リシール型のものも含まれる。ここで酸素透過度とは、容器・フィルム酸素透過率測定器で20℃、相対湿度50%の環境下で測定した酸素透過度(cc・mm/m2・day・atm)であり、酸素透過度が5以下、更に3以下、特に1以下であればより好ましい。
容器詰ミルクコーヒー飲料を製造にする場合、通常殺菌処理が行われるが、当該殺菌処理は、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で行われる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ食品衛生法に定められた条件と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器で高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用される。
本発明の容器詰ミルクコーヒー飲料は、高血圧改善作用を有するクロロゲン酸類を有効量含有しており、かつ加熱殺菌処理後もクロロゲン酸類の高血圧改善作用を阻害しているヒドロキシヒドロキノン量が低減されていることから、血圧降下用、又は血圧上昇抑制医薬組成物、血圧降下用飲料、血圧上昇抑制飲料として有用である。
クロロゲン酸類及びヒドロキシヒドロキノンの分析法は次の通りである。
クロロゲン酸類の分析方法
容器詰ミルクコーヒー飲料又はミルクコーヒー組成物のクロロゲン酸類の分析法は次の通りである。分析機器はHPLCを使用した。装置の構成ユニットの型番は次の通り。UV−VIS検出器:L−2420((株)日立ハイテクノロジーズ)、カラムオーブン:L−2300((株)日立ハイテクノロジーズ)、ポンプ:L−2130((株)日立ハイテクノロジーズ)、オートサンプラー:L−2200((株)日立ハイテクノロジーズ)、カラム:Cadenza CD−C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3μm(インタクト(株))。
分析条件は次の通り。サンプル注入量:10μL、流量:1.0mL/min、UV−VIS検出器設定波長:325nm、カラムオーブン設定温度:35℃、溶離液A:0.05M 酢酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、10mM 酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液、溶離液B:アセトニトリル。
濃度勾配条件
時間 溶離液A 溶離液B
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
15.0分 95% 5%
20.0分 95% 5%
22.0分 92% 8%
50.0分 92% 8%
52.0分 10% 90%
60.0分 10% 90%
60.1分 100% 0%
70.0分 100% 0%
HPLCでは、試料1gを精秤後、溶離液Aにて10mLにメスアップし、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A,孔径0.45μm,ジーエルサイエンス(株))にて濾過後、分析に供した。
クロロゲン酸類の保持時間(単位:分)
(A1)モノカフェオイルキナ酸:5.3、8.8、11.6の計3点(A2)フェルラキナ酸:13.0、19.9、21.0の計3点(A3)ジカフェオイルキナ酸:36.6、37.4、44.2の計3点。ここで求めた9種のクロロゲン酸類の面積値から5−カフェオイルキナ酸を標準物質とし、質量%を求めた。
HPLC−電気化学検出器によるヒドロキシヒドロキノンの分析方法
容器詰ミルクコーヒー飲料又はミルクコーヒー組成物のヒドロキシヒドロキノンの分析法は次の通りである。分析機器はHPLC−電気化学検出器(クーロメトリック型)であるクーロアレイシステム(モデル5600A、開発・製造:米国ESA社、輸入・販売:エム・シー・メディカル(株))を使用した。装置の構成ユニットの名称・型番は次の通りである。
アナリティカルセル:モデル5010、クーロアレイオーガナイザー、クーロアレイエレクトロニクスモジュール・ソフトウエア:モデル5600A、溶媒送液モジュール:モデル582、グラジエントミキサー、オートサンプラー:モデル542、パルスダンパー、デガッサー:Degasys Ultimate DU3003、カラムオーブン:505。カラム:CAPCELL PAK C18 AQ 内径4.6mm×長さ250mm 粒子径5μm((株)資生堂)。
分析条件は次の通りである。
サンプル注入量:10μL、流量:1.0mL/min、電気化学検出器の印加電圧:0mV、カラムオーブン設定温度:40℃、溶離液A:0.1(W/V)%リン酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、5(V/V)%メタノール溶液、溶離液B:0.1(W/V)%リン酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、50(V/V)%メタノール溶液。
溶離液A及びBの調製には、高速液体クロマトグラフィー用蒸留水(関東化学(株))、高速液体クロマトグラフィー用メタノール(関東化学(株))、リン酸(特級、和光純薬工業(株))、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(60%水溶液、東京化成工業(株))を用いた。
濃度勾配条件
時間 溶離液A 溶離液B
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
10.1分 0% 100%
20.0分 0% 100%
20.1分 100% 0%
50.0分 100% 0%
試料5gを精秤後、0.5(W/V)%リン酸、0.5mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、5(V/V)%メタノール溶液にて10mLにメスアップし、この溶液について遠心分離を行い上清の分析試料を得た。この上清について、ボンドエルートSCX(固相充填量:500mg、リザーバ容量:3mL、ジーエルサイエンス(株))に通液し、初通過液約0.5mLを除いて通過液を得た。この通過液について、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A,孔径0.45μm,ジーエルサイエンス(株))にて濾過し、速やかに分析に供した。
上記の条件におけるHPLC−電気化学検出器による分析において、ヒドロキシヒドロキノンの保持時間は、6.38分であった。得られたピークの面積値から、ヒドロキシヒドロキノン(和光純薬工業(株))を標準物質とし、質量%を求めた。
実施例1
中焙煎度のコーヒー豆に対して8倍量のイオン交換水(95℃)で抽出し、コーヒー抽出液を得た。次に本コーヒー抽出液中のBrixを測定し、Brixに対して50重量%の量の活性炭(白鷺WH2C)を充填したカラム(内径45mm、長さ150mm)を準備した。その後、活性炭を充填したカラムに温度25℃、SV8[1/容量[m3]/流量[m3/hr]]の条件下でコーヒー抽出液を通液し、活性炭処理してヒドロキシヒドロキノンを除去したコーヒー組成物を得た。
こうして得られたヒドロキシヒドロキノンを除去したコーヒー組成物中のCGA量を測定し、イオン交換水で希釈し、牛乳を11.5%になる様に配合し、加熱殺菌処理後のpH値が表1に示す値になるよう重曹にてpH調整を行った。加熱殺菌前のヒドロキシヒドロキノンは、検出限界以下であった(HPLC−電気化学検出器によるヒドロキシヒドロキノンの分析方法)。次にこうして得られたコーヒー組成物を190g缶に充填後、密封し、表3に示す殺菌条件に従いレトルト殺菌処理を施し、容器詰ミルクコーヒー飲料を得た。また加熱殺菌後のヒドロキシヒドロキノンは、HPLC−電気化学検出器によるヒドロキシヒドロキノンの分析方法を用いた。
実施例2〜3並びに比較例1
加熱殺菌処理後のpH値が表1に示す値になるようにそれぞれ制御した以外は実施例1と同様に容器詰ミルクコーヒー飲料を製造した。
実施例4
中焙煎度のコーヒーエキスのBrixに対して、50重量%の活性炭(白鷺WH2C)を充填したカラム(内径45mm、長さ150mm)に、温度25℃,SV8[1/容量[m3]/流量[m3/hr]]の条件下で、前記コーヒーエキスを通液した。
予め乳化剤、カゼインNa、脱脂粉乳を溶解した溶液に、牛乳、砂糖水溶液、及び上記活性炭処理コーヒーエキスを混合し、重曹を溶解した水溶液を用いてpH調整を行った後、CGA量が170mg/100gとなるようにイオン交換水で希釈した。
得られたコーヒー組成物を190g缶に充填後、密封し、135℃で100秒間のレトルト殺菌処理を施し、容器詰ミルクコーヒー飲料を製造した。
比較例2
中焙煎度、及び低焙煎度のコーヒー混合エキスのBrixに対して、50重量%の活性炭(白鷺WH2C)を充填したカラム(内径45mm、長さ150mm)に、温度25℃、SV8[1/容量[m3]/流量[m3/hr]]の条件下で、前記コーヒー混合エキスを通液した。
予め乳化剤、カゼインNa、脱脂粉乳を溶解した溶液に、牛乳、砂糖水溶液、及び上記活性炭処理コーヒーエキスを混合し、重曹を溶解した水溶液を用いてpH調整を行った後、CGA量が350mg/100gとなるようにイオン交換水で希釈した。
得られた、コーヒー組成物を190g缶に充填後、密封し、135℃で100秒間のレトルト殺菌処理を施し、容器詰ミルクコーヒー飲料を製造した。
比較例3
高焙煎度のコーヒーエキスのBrixに対して、50重量%の活性炭(モルシーボンX2M)を充填したカラム(内径45mm、長さ150mm)に、温度25℃、SV8[1/容量[m3]/流量[m3/hr]]の条件下で、前記コーヒーエキスを通液した。
予め乳化剤、カゼインNa、脱脂粉乳を溶解した溶液に、牛乳、砂糖水溶液、及び上記活性炭処理コーヒーエキスを混合し、重曹を溶解した水溶液を用いてpH調整を行った後、CGA量が170mg/100gとなるようにイオン交換水で希釈した。
得られたコーヒー組成物を190g缶に充填後、密封し、127℃で11分間のレトルト殺菌処理を施し、容器詰ミルクコーヒー飲料を製造した。
結果
表1及び表2に示したように、加熱殺菌処理後のpHを5.0〜6.4に制御することで加熱殺菌後のヒドロキシヒドロキノンの増加が抑制されることが判った。
<クロロゲン酸の測定前処理の具体例>
容器詰ミルクコーヒーを開缶後、直ちに1gを精秤後、溶離液A(50mM酢酸、10mM酢酸ナトリウム、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を含有する5(V/V)%アセトニトリル溶液)にて10mLにメスアップし、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A,孔径0.45μm,ジーエルサイエンス(株))にて濾過後、分析に供した。
<ヒドロキシヒドロキノンの測定前処理の具体例>
容器詰ミルクコーヒーを開缶後、直ちに5gを精秤後、0.5(W/V)%リン酸、0.5mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を含有する5(V/V)%メタノール溶液にて10mLにメスアップし、この溶液について遠心分離を行い上清を得た。この上清について、ボンドエルートJR SCX(固相充填量:500mg、ジーエルサイエンス(株))に通液し、初通過液約1.0mLを除いて、通過液を得た。この通過液について、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A,孔径0.45μm,ジーエルサイエンス(株))にて濾過し、速やかに分析に供した。
<過酸化水素の測定具体例>
過酸化水素分析計SUPER ORITECTOR MODEL 5(セントラル科学(株))を使用し、標準校正液(過酸化水素1ppm)で校正した後、分析計測定セル内に、0.5%臭素酸カリウム配合の0.2Mリン酸バッファー(pH7.0)を1mL入れる。窒素送付によりセル内の溶存酸素がゼロになった時点で30℃恒温槽に静置しておいた市販缶コーヒーならびに試験サンプルを開缶し1mLを速やかに抜き取り、測定セル内に加える。後は、装置の測定手順に従い、発生した酸素濃度をプリンターから読み取る。尚、外そうする場合には、以後、15分毎に測定し、得られた1時間後までのデータを用いて最小二乗法で直線を引き、求める。ここでMODEL5の検出限界は0.1mg/kgであった。
<風味の評価>
25℃にてパネラー3名で開缶後すぐに飲用して評価した。
Figure 0003973673
Figure 0003973673
参考例1
コーヒー組成物Qを次の方法で製造した。
活性炭処理コーヒーの製造
市販インスタントコーヒー(ネスカフェ(登録商標)ゴールドブレンド赤ラベル)20gを、蒸留水1400mLに溶解したのち(このコーヒーをコーヒー組成物Pという)、活性炭白鷺WH2C 28/42(日本エンバイロケミカルズ)を30g加え、1時間攪拌したのち、メンブレンフィルター(0.45μm)を用いてろ過し、ろ液を得た(このコーヒーをコーヒー組成物Qという)。得られたろ液を、凍結乾燥し、褐色粉末15.8gを得た。この褐色粉末を蒸留水に溶解し、HPLC分析により、クロロゲン酸類及びヒドロキシヒドロキノンの定量を行なったところ、クロロゲン酸類は4.12質量%含まれ、ヒドロキシヒドロキノンは検出限界以下であった。また、ICP発光分光分析法でカリウム含量を測定したところ、原料インスタントコーヒー及び活性炭処理コーヒーのいずれも約4.2質量%であった。
参考例2
参考例1で作製したコーヒー組成物Qの血圧降下評価
実験材料及び方法
(a)13−14週齢の雄性自然発症高血圧ラット(SHR)を予備的に5日間連続で市販のラット用非観血式血圧測定装置(ソフトロン社製)を用いて血圧測定することにより、ラットを血圧操作に十分慣れさせた後、評価試験を測定した。ラットはすべて温度25±1℃、相対湿度55±10%、照明時間12時間(午前7時〜午後7時)の条件下(ラット区域内飼育室)で飼育した。
(b)投与方法及び投与量;試験群では参考例1で作製したコーヒー組成物Q(活性炭処理コーヒー)を用いた。対照群は市販のインスタントコーヒーを使用した。活性炭処理コーヒーとインスタントコーヒーをそれぞれ生理食塩水に溶解し、総クロロゲン酸量として200mg/kgの投与量となるように作製した。投与方法は経口用ゾンデを用いて、経口投与を行った。投与量は5mL/kgとした。
(c)試験方法;SHRを1群4−6匹使用した。経口投与前と12時間後の尾静脈の収縮期血圧を測定し、投与前血圧から12時間後の血圧変化率を算出した。
(d)統計学処理方法;得られた測定結果は、平均値及び標準誤差を表してStudent’s t−testを行い、有意水準は5%とした。
結果;表3から明らかなように、コーヒー組成物Qを摂取することにより、通常のインスタントコーヒーを摂取した場合に比較して、著明な血圧降下を認めた。
Figure 0003973673

Claims (3)

  1. 下記の条件(A)〜(C):
    (A)クロロゲン酸類 0.01〜1質量%、
    (B)ヒドロキシヒドロキノン クロロゲン酸類量の0.1質量%未満
    (C)pH5.0〜6.4
    である容器詰ミルクコーヒー飲料。
  2. 4−カフェオイルキナ酸/3−カフェオイルキナ酸質量比率が0.6〜1.2であり、且つ、5−カフェオイルキナ酸/3−カフェオイルキナ酸質量比率が0.01〜3である請求項1記載の容器詰ミルクコーヒー飲料。
  3. 容器の酸素透過度が5[cc・mm/m2・day・atm]以下である請求項1又は2項記載の容器詰ミルクコーヒー飲料。
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