自転車の前部車体と後部車体とを折り畳む折畳自転車として、特許文献1や特許文献2に開示されたものがある。この種の折畳自転車は、図24〜図26(特許文献1)や図28〜図30(特許文献2)に示すように、ヘッドパイプ101を有する前部車体と立パイプ102を有する後部車体とを連結するフレームパイプ103の中間部が前後に分割されている。そして、フレームパイプ103の前記分割箇所に、ヒンジ軸104を中心として互いに回動可能な一対の蝶番体105(前部蝶番体106と後部蝶番体107とからなる)が設けられ、これらの蝶番体を分離状態にすることで、折畳自転車の前部車体と後部車体とが側面視して重なるように折り畳み可能とされている。
後部蝶番体107には、偏心軸部108aを有する回動軸108が取り付けられ、この回動軸108には、蝶番体106、107同士を閉じて結合する結合用姿勢から、蝶番体106、107同士を開けて分離する分離用姿勢にわたって回動自在とされ、回動軸108を一体的に回動させるヒンジレバー109が取り付けられている。また、回動軸108の偏心軸部108aに、先端に締付ナット110が螺合された締付ボルト111が、その基端側が回転自在な状態で挿通されている。そして、前部蝶番体106に設けられた凹状の収納部106aに、締付ナット110と、この締付ナット110に被せられた締付キャップ112とが収納されるように、締付ボルト111を前方に回動させて配置し、この後に、ヒンジレバー109の先端を後方に回動させることで、回動軸108の偏心軸部108aが挿通された締付ボルト111を、前記偏心軸部108aの偏心量だけ後方へ移動させて、締付ボルト111の締付ナット110により前部蝶番体106が取り付けられている前部車体を引き寄せ、前部車体と後部車体とを結合させるように構成させている。
なお、後部蝶番体107には、締付ボルト111を凹状の収納部106aに収納させる方向に付勢するばね113(図26、図30参照)が取り付けられており、走行時に振動などにより締付ナット110が前部蝶番体106の収納部106aから離脱して、後部蝶番体107と前部蝶番体106とが分離可能な状態となることを防止して、安全性を向上させている。したがって、蝶番体105を分離状態にする(開放姿勢にする)際には、ヒンジレバー109を前方(図28〜図30に示す特許文献2の場合は後方)に回動させた後に、凹状の収納部106aに収納されている締付ボルト111や締付キャップ112に指をかけて締付ボルト111や締付キャップ112を凹状の収納部106aから離脱させ、締付ナット110が前部蝶番体106に対して係合しないようにしてから、前部車体側と後部車体側とを折り畳んでいる。
この折畳自転車の結合構造によれば、折畳自転車の前部車体と後部車体とを良好に結合および分離することができる。
ここで、この種の折畳自転車では、自転車走行時に路面から受ける振動などにより、ヒンジレバー109が結合用姿勢から開放姿勢側に回動しようとする方向に力が作用したり、搭乗者の衣服がヒンジレバー109に引っ掛かるなどして、ヒンジレバー109が結合用姿勢から開放姿勢側に回動しようとしたりすることがある。このようにヒンジレバー109が開放姿勢側に回動すると、締付ボルト111や締付キャップ112が凹状の収納部106aから離脱し、走行中に車体が折れ曲がってしまうおそれがあり、危険である。したがって、この種の折畳自転車では、走行中にヒンジレバー109が開放姿勢側に回動することを防止するためのセーフティロック機構を設ける場合が多い。
例えば、図24〜図26に示す折畳自転車の結合装置では、図27に示すように、フレームパイプ103の後部分割箇所に、ロック用係止片120を回転可能な状態で支持する支持ロッド(図示せず)を立設させ、結合用姿勢にあるヒンジレバー109に前記ロック用係止片120を係合させて、ヒンジレバー109が開放姿勢側に回動することを防止している。なお、停止時にヒンジレバー109を開放姿勢側に回動する際には、ロック用係止片120を、ヒンジレバー109に係合しない位置に回動させる。
また、特許文献2に開示されている折畳自転車の結合構造においては、図28〜図30に示すように、ヒンジレバー109の持ち手部分を大きく形成するとともに、その一部に、ロック用係止片131をスライド可能に配設し、前部蝶番体106やフレームパイプの前部分割箇所133に、前記ロック用係止片131が係合する係止部134を形成している。そして、ヒンジレバー109が結合用姿勢にある際には、ロック用係止片131が係止部134に係合して、ヒンジレバー109が開放姿勢側に回動することを防止している。
このようにセーフティロック機構を設けると、走行中にヒンジレバー109が結合用姿勢から開放姿勢側に回動することが防止されるので、走行中に車体が折れ曲がってしまうことを防止できて、安全性を向上させることができる。
しかしながら、上記従来構成の折畳自転車の結合装置によれば、ヒンジレバー109が結合用姿勢から開放姿勢側に回動することを防止するセーフティロック機構を設けるために、結合用姿勢のヒンジレバー109よりもさらに後方にロック用係止片120(図27参照)や支持ロッドを配設したり、ヒンジレバー109を大きく形成したり(図28〜図30参照)しなければならないなど、セーフティロック機構をも含めた折畳自転車の結合装置として大きな面積を必要とする短所を有していた。
また、図27に示す折畳自転車の結合装置によれば、フレームパイプ103の後部分割箇所に支持ロッドを立設させる必要があり、折畳自転車の結合装置自体の製造、組付工程とは別工程で、フレームパイプ103に支持ロッド1を取り付けなければならず、折畳自転車の種類が異なると、それぞれ異なったフレームパイプの形状などに合わせて支持ロッドを取り付けなければならないなど、多くの手間や時間が掛かる問題点があった。
また、図28〜図30に示すような特許文献2に開示された折畳自転車の結合装置においても、ロック用係止片131が係合する係止部134をフレームパイプの前部分割箇所133に形成する場合には同様の問題を生じていた。
本発明は、上記短所や問題を解決するもので、セーフティロック機構を設ける場合でも折畳自転車の結合装置をコンパクトに形成でき、かつ、フレームパイプの形状に殆ど影響させることなく取り付けることができる折畳自転車の結合装置を提供することを目的とするものである。
前記課題を解決するために、本発明は、折畳自転車のフレームパイプに設けられ、ヒンジ軸を中心として開閉自在に軸支された一対の蝶番体と、前記一対の蝶番体における一方の蝶番体に回動自在に支持され、偏心軸部を有する回動軸と、この回動軸に取り付けられ、蝶番体同士を閉じて結合する結合用姿勢から、蝶番体同士を開けて分離する分離用姿勢にわたって回動自在とされて回動軸を一体的に回動させるヒンジレバーと、前記回動軸にその基端側で回動自在に軸支され、他方の蝶番体に係合する係合部がその先端側に設けられた締付連結体とが備えられ、蝶番体同士を閉じて結合させる際には、前記締付連結体の係合部を他方の蝶番体に係合させた状態で、前記ヒンジレバーにより前記回動軸を回動させて締付連結体を一方の蝶番体側に移動させることにより、締付連結体に係合された他方の蝶番体を前記一方の蝶番体側に引き寄せて結合するように構成されている折畳自転車の結合装置であって、前記締付連結体に、ヒンジレバーの回動経路に対して出退自在とされて、ヒンジレバーが結合用姿勢から分離用姿勢側に回動することを阻止するストッパを配設したことを特徴とする。
この構成によれば、ヒンジレバーが結合用姿勢から分離用姿勢側に回動することを阻止するストッパを、その基端側で回動軸に軸支され他方の蝶番体に係合する締付連結体に配設したので、自転車走行時においてヒンジレバーが分離用姿勢側に回動することを防止できながら、セーフティロック機能を有する結合装置としてコンパクトに配設することができる。また、ストッパを締付連結体に配設したので、セーフティロック機能を実現するための部品をフレームパイプに設けなくても済み、折畳自転車の種類が異なっても、蝶番体をフレームパイプに取り付けるだけの簡単な作業で済み、結合装置の組付け時の手間や時間を最小限に抑えることができる。
また、本発明のストッパは、締付連結体の先端部分から、出退自在に配設されていることを特徴とし、この構成により、極めて簡単な構成で、ヒンジレバーの分離用姿勢側への回動を阻止でき、コンパクト化および製造コストの低減化を図ることができる。
また、本発明の締付連結体は、回動軸の偏心軸部に係合して、この偏心軸部の係合位置に応じて偏心軸部の偏心方向に移動自在に配設されたボルト体と、このボルト体に螺合して他方の蝶番体に係合する係合ナットと、ボルト体の先端部に固定されたストッパ保持部材と、このストッパ保持部材より出退するストッパとを備え、ストッパがボルト体と同軸心に配設されていることを特徴とする。
この構成によれば、ストッパがボルト体と同軸心に配設されているので、締付連結体を構成する部品の製造誤差や組付誤差があっても、これらの製造誤差や組付誤差の影響を受け難くなり、この結果、製造誤差や組付誤差を極めて少なくすることによる製造コストの増加などを招くことなく、安全性を良好に維持できる。
また、本発明は、ヒンジレバーに、このヒンジレバーが結合用姿勢へ回動する際にストッパに当接して、前記回動動作に伴ってストッパを後退させ、ヒンジレバーの結合用姿勢への回動を許容するテーパ面が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、ヒンジレバーを結合用姿勢へ回動する際に、ストッパを手動で後退させなくても、ヒンジレバーを結合用姿勢側へ回動するだけで、ヒンジレバーに形成したテーパ面がストッパに当接してストッパを後退させ、ヒンジレバーを結合用姿勢まで回動させることができ、この後のヒンジレバーの結合用姿勢への回動を阻止することができる。
本発明によれば、ヒンジレバーが結合用姿勢から分離用姿勢側に回動することを阻止するストッパを、締付連結体に配設したことにより、自転車走行時においてヒンジレバーが分離用姿勢側に回動することを防止できながら、セーフティロック機能を有する結合装置としてコンパクトに配設することができると同時に、折畳自転車の種類が異なっても、蝶番体をフレームパイプに取り付けるだけの簡単な作業で済み、結合装置の組付け時の手間や時間を最小限に抑えることができる。
また、締付連結体において、ストッパをボルト体と同軸心に配設することで、締付連結体を構成する部品の製造誤差や組付誤差があっても、これらの製造誤差や組付誤差の影響を受け難くなり、製造コストの増加などを招くことなく、安全性を良好に維持できる。
また、ヒンジレバーに、ヒンジレバーが結合用姿勢へ回動する際の回動動作に伴ってストッパを後退させ、ヒンジレバーの結合用姿勢への回動を許容するテーパ面を形成したことにより、ヒンジレバーを結合用姿勢へ回動する際に、ストッパを手動で後退させなくても、ヒンジレバーを結合用姿勢まで回動できて、この後のヒンジレバーの結合用姿勢への回動を阻止することができる。
以下に、本発明の実施の形態に係る折畳自転車の結合装置を、図面に基づき詳細に説明する。
図1〜図3に示すように、この折畳自転車は、ヘッドパイプ1を有する前部車体と立パイプ2を有する後部車体とを連結するフレームパイプ3の中間部分が前後に2分割され、このフレームパイプ3の分割箇所に、ヒンジ軸4を中心として互いに回動可能に連結された一対の蝶番体5(前部蝶番体6と後部蝶番体7とからなる)が一体的に設けられている。そして、これらの前部蝶番体6と後部蝶番体7とを、ヒンジ軸4の連結部以外で互いに分離した状態とすることで、折畳自転車の前部車体と後部車体とが重なるように折畳可能に構成されている。なお、本実施の形態中においては、折畳自転車の進行方向に向かって右方向を右側、左方向を左側とする。
前部蝶番体6は前部フレームパイプ3Aに溶着され、後部蝶番体7は後部フレームパイプ3Bに溶着されている。また、全ての部品についての図示は行っていないが、ヘッドパイプ1により回動自在に支持されている前ホークの下端に折畳自転車の前輪が回転自在に支持された状態で取り付けられており、立パイプ2やハンガラグ8に取り付けられているバックホーク9やチェーンステー10の後端に折畳自転車の後輪が回転自在に支持された状態で取り付けられている。そして、前輪支持用の前ホークを支持するヘッドパイプ1を有する前部車体と、後輪支持用のチェーンステー10の前端に溶着されたハンガラグ8や立パイプ2を有する後部車体とを、フレームパイプ3にて連結している。なお、ハンガラグ8は、ペダルが取り付けられているクランク軸を回転自在に支持している。
図1などに示すように、フレームパイプ3は、ヘッドパイプ1が連結されている前側が上向きとなるように傾斜して配置されているが、蝶番体5(前部蝶番体6、後部蝶番体7)は、図2に示すように、ヒンジ軸4が、前部蝶番体6の左側部分に設けられた上下一対のヒンジ軸支持筒部6aと、後部蝶番体7の左側部分に設けられたヒンジ軸支持筒部7aとに跨って縦方向に挿通された状態で、鉛直方向に沿う姿勢に配設されている。なお、図4における25は、前部蝶番体6のヒンジ軸支持筒部6aと後部蝶番体7のヒンジ軸支持筒部7aとの間に介装されるワッシャである。なお、6dは、前部フレームパイプ3Aに溶着された前部蝶番体6の本体部、7dは、後部フレームパイプ3Bに溶着された後部蝶番体7の本体部で、折畳自転車が結合状態である際では、これらの前部蝶番体6の本体部6dの外枠部分の内側に後部蝶番体7の本体部7dの一部が収容され、かつ、本体部6d、7d同士が互いに当接された状態(いわゆる閉じられた状態)で結合される。
図4などに示すように、前部蝶番体6には、回動軸11が、本体部6dより右側方に突出する上下2箇所の軸支持部6bに設けられた丸孔6cに縦方向に挿通されており、この回動軸11は、鉛直方向に沿う縦姿勢で回動自在に支持されている。この回動軸11の中央部分には回動軸11の軸心とずれた位置に偏心されて形成された偏心軸部11aが形成され、この回動軸11の偏心軸部11aには、蝶番体5(前部蝶番体6と後部蝶番体7)を結合するための締付連結体13が回動自在に軸支されている。また、回動軸11の上端部と下端部とにはそれぞれ断面角形の角形軸部11bが形成され、これに対応してヒンジレバー12の基端部における上部と下部とには筒状角孔部12aが一体形成されている。そして、これらの筒状角孔部12aに角形軸部11bが嵌め込まれた状態で取り付けられ、ヒンジレバー12のレバー操作に伴って回動軸11が一体的に回動される。なお、11cは、前部蝶番体6の丸孔6cに挿通されている丸軸部である。
図1、図2などに示すように、ヒンジレバー12は、蝶番体5同士(前部蝶番体6、後部蝶番体7)を閉じて結合するための結合用姿勢から、蝶番体5同士(前部蝶番体6、後部蝶番体7)を開けて分離するための分離用姿勢にわたって回動自在とされ、フレームパイプ3の結合時に、後部フレームパイプ3Bの左側面に沿う形状とされている。また、ヒンジレバー12は、側面視して、前側ほど上下に広がる略Uの字形状の、手でつかみやすい形状とされている。なお、図4に示すように、回動軸11の下端部やヒンジ軸4の下端部には、蝶番体5に組みつけられた状態で、C形止め輪31、32が嵌め込まれて、回動軸11やヒンジ軸4の抜け止めとされている。
図4などに示すように、締付連結体13は、前部蝶番体6の上下2箇所の軸支持部6b間に配設され、その回動の中心となる基端部側に設けられた挿通孔14aに偏心軸部11aが挿通された基部ナット14と、基部ナット14の中央部に形成された横ねじ孔14bから横方向に延びるように配設され、その基端側ねじ部15aが前記横ねじ孔14bに螺合されたボルト体15と、基部ナット14に圧接する姿勢で基端側ねじ部15aに螺合されて、基部ナット14に対するボルト体15の相対位置が移動しないように位置決めするための固定用ナット16と、ボルト体15の先端側ねじ部15bに螺合され、その鍔状部分で、後部蝶番体7の右側方に突出する上下2つの突出片部7bおよびその近傍部に係合離脱自在とされた係合部としての係合ナット17と、係合ナット17に外嵌する姿勢でねじ18により取り付けられたキャップ体19と、キャップ体19の先端部にねじで取り付けられたキャップカバー20と、キャップカバー20から出退自在に配設されたピン状のストッパ21と、ストッパ21を突出方向に付勢する突出用ばね22とから構成されている。そして、締付連結体13の先端側に配設されたキャップカバー20からストッパ21が出退自在な状態で突出されている。また、ボルト体15の中間部には、ボルト体15を介して、締付連結体13の先端側が、蝶番体5に近接する方向に付勢する引っ張りばね24の一端部が係止されており、この引っ張りばね24の他端部は、前部蝶番体6のヒンジ軸寄り箇所にねじ23で取り付けられている。
なお、この実施の形態では、キャップ体19とキャップカバー20とにより、ストッパ21を保持するストッパ保持部材が構成されているが、これに限るものではない。また、この実施の形態では、ボルト体15と、固定用ナット16と、係合ナット17と、キャップ体19と、キャップカバー20と、ストッパ21とが同軸心に配設されている。
ここで、図11〜図14に示すように、締付連結体13の基部ナット14には、挿通孔14aの上端部と下端部とにそれぞれ続いて座ぐり孔14cが、挿通孔14aと同心かつ大径で形成され、この座ぐり孔14cには、回動軸11における上部側の丸軸部11cの下端部と、下部側の丸軸部11cの上端部とがそれぞれ嵌合されている。また、図12に示すように、基部ナット14の挿通孔14aは、回動軸11の偏心軸部11aよりも大径とされ(この実施の形態では、基部ナット14の挿通孔14aは、前部蝶番体6の丸孔6cとほぼ同径とされているが、これに限るものではない)、回動軸11の丸軸部11cに対する偏心軸部11aの偏心寸法A(図11(b)参照:偏心軸部11aは、平面視して、丸軸部11cと一部で外周が一致し、他方の端部で前記偏心寸法Aだけ段差が生じている)は、基部ナット14の挿通孔14aと座ぐり孔14cとの段差寸法Bよりも大きく形成されている(偏心軸部の挿通状態を簡略的に示す図13を参照のこと)。また、ボルト体15における基端側ねじ部15aの端部15cは、基部ナット14の横ねじ孔14bを通って挿通孔14a内に突入されており、この基端側ねじ部15aの端部(突出部とも称す)15cが、回動軸11の偏心軸部11aに係合可能に配設されている。
そして、詳しい動作については後述するが、ヒンジレバー12を、図1、図5〜図7などに示す結合用姿勢から、図2、図15〜図23に示すように、分離用姿勢に回動させると、この回動動作の途中で、回動軸11の偏心軸部11aが、締付連結体13のボルト体15における基端側ねじ部15aの端部(突出部)15cに当接して係合し、回動軸11に締付連結体13が連動してこの締付連結体13が離脱姿勢側に回動される構成とされている。つまり、この折り畳み自転車の結合装置においては、上記のように、ヒンジレバー12の回動動作の途中で、ヒンジレバー12による回動軸11の回動動作を、締付連結体13に伝達して連動させる連動機構を備えた構成とされている。なお、この実施の形態では、連動機構は、回動軸11の偏心軸部11aで締付連結体13を後方(後部蝶番体7から離脱させる方向)へ移動させる機構である、回動軸11の偏心軸部11aおよび丸軸部11cと、締付連結体13の基部ナット14の挿通孔14aおよび座ぐり孔14cと、締付連結体13のボルト体15の基端側ねじ部15aとにより構成され、これらの構成要素が連動機構としても兼用されている。なお、基部ナット14、ボルト体15の突出部15c、基端側ねじ部15a、先端側ねじ部15b、固定用ナット16、係合ナット17、キャップ体19、キャップカバー20、ストッパ21は同軸心となるように配設されている。
また、締付連結体13の先端部分から突出するストッパ21は、先端部が半球形状とされた円柱形状で、基部側が鍔状に広がった形状とされているがこれに限るものではない。このストッパ21は、ヒンジレバー12の先端湾曲部に内側より係合離脱自在に配設されている。また、ヒンジレバー12の先端湾曲部内側における、ヒンジレバー12が、図15、図16に示す結合用姿勢となった際に、ストッパ21が当接する部分(先端湾曲部内側の裏面部)には、内側ほど薄肉となるテーパ面12bが形成されている。したがって、蝶番体5同士(前部蝶番体6、後部蝶番体7)を閉じるとともに、後部蝶番体7の突出片部7bに係合ナット17を係合させた状態で、ヒンジレバー12を分離用姿勢側から結合用姿勢に回動させると、ストッパ21は、図15、図16に示すように、ヒンジレバー12のテーパ面12bに当接して案内されながら、突出用ばね22の付勢力に抗してキャップカバー20内に一旦後退し、さらに、ヒンジレバー12がストッパ21の頂部を通過した後は、図5〜図9に示すように、ストッパ21は、ヒンジレバー12の表面部側に突出するように構成されており、これにより、ヒンジレバー12の結合用姿勢への回動を許容する。
上記構成において、この折畳自転車は、結合姿勢では、図1、図5、図6などに示すように、締付連結体13のボルト体15が後部蝶番体7の突出片部7b間に突入され、締付連結体13の係合ナット17が、後部蝶番体7の突出片部7bおよび本体部7dにおける突出片部7bの近傍箇所に当接されて係合されている。また、ヒンジレバー12は、後部蝶番体7の前端部左側面に沿った結合用姿勢とされ、締付連結体13のストッパ21がヒンジレバー12よりも左側位置で後方に突出する姿勢に保持されている。これによって、自転車走行時の振動によりヒンジレバー12が結合用姿勢から開放姿勢側に回動しようとした場合でも、このような回動動作がストッパ21により阻止され、良好な安全性が維持される。また、搭乗者の衣服がヒンジレバー12に引っ掛かるなどして、ヒンジレバー12が結合用姿勢から開放姿勢側に回動しようとしたりする際でも、この回動動作がストッパ21により阻止され、良好な安全性が維持される。
次に、本発明の実施の形態に係る折畳自転車の折畳動作について説明する。折畳自転車を、図1、図5〜図9などに示す結合姿勢から折り畳む際には、ストッパ21をキャップカバー20の内側に向けて手で押した状態で、ヒンジレバー12を、図15、図16に示すように、前方側に(開放姿勢側に)回動させる。これにより、回動軸11の偏心軸部11aが後方に移動し、これに伴って締付連結体13が後方に移動可能な状態となり、係合ナット17が後部蝶番体7の突出片部7bから離反可能な状態となる。
ここで、図24〜図26に示すような、従来の折畳自転車の結合構造では、この状態から、締付ナット110が螺合された締付ボルト111を手で回動させて前部蝶番体106から離脱させる必要があり、この動作を行わないと、前部蝶番体106と後部蝶番体107とを分離して折り畳み姿勢に移行できなかった。このように、従来の折畳自転車の結合構造では、締付連結体に相当する締付ナット110および締付ボルト111を他方の蝶番体より離脱させる動作を手動で行わなくてはならないため、多くの手間がかかっていた。
これに対して、本発明では連動機構を設けているので、ヒンジレバー12を、結合用姿勢から開放姿勢側に回動した際に、その回動動作の途中で、回動軸11の偏心軸部11aが、締付連結体13のボルト体15における基端側ねじ部15aの端部(突出部)15cに当接して係合し、回動軸11に締付連結体13が連動して離脱姿勢側に移動される。この結果、ヒンジレバー12を回動させるだけで、締付連結体13のボルト体15および係合ナット17が後部蝶番体7の突出片部7b間から離脱し、締付連結体13を手動で離脱方向に回動させなくても、前部蝶番体6と後部蝶番体7とを分離して折畳姿勢に移行させることができる。
この際の動作について、詳細に説明する。上述したように、図1、図5〜図9などに示すような結合状態では、ヒンジレバー12は、後部フレームパイプ3Bの前端部左側面に沿った結合用姿勢とされ、回動軸11の偏心軸部11aは、図9、図13、図14(a)に示すように、最も前方に位置している姿勢とされ、これにより、締付連結体13の係合ナット17が、後部蝶番体7の突出片部7bを前方に引き寄せ、後部蝶番体7を前部蝶番体6に強く押圧して結合させている。なお、この際には、図14(a)に示すように、回動軸11の丸軸部11cは、平面視して、基部ナット14の座ぐり孔14cとは重なっていない状態とされている。
この状態から、ストッパ21をキャップカバー20内側に押し込むなどしながら、ヒンジレバー12を、図14〜図22に示すように、前方側に(開放姿勢側に)回動させると、ヒンジレバー12の回動に伴って、図14(b)、(c)に示すように、回動軸11の偏心軸部11aがC方向に回動する。
そして、図14(c)、(d)に示すように、ヒンジレバー12を90度を超える角度まで回動させると、回動軸11の偏心軸部11aが、丸軸部11cに対して、後方側に寄った姿勢となるので、この結果、係合ナット17を含めた締付連結体13が、後方側に移動可能な状態となって、締付連結体13の係合ナット17が後部蝶番体7の突出片部7bから後方に移動し、後部蝶番体7の突出片部7bに対して隙間を有する状態、あるいは緩やかに接触する状態となる。また、回動軸11の偏心軸部11aが、締付連結体13のボルト体15における基端側ねじ部15aの端部(突出部)15cに当接して係合し始める。
このように、回動軸11の偏心軸部11aが基端側ねじ部15aの端部(突出部)15cに一旦、当接すると、さらに、回動軸11の偏心軸部11aがC方向に回動した際に、回動軸11に対して、図13(c)、(d)に示す場合では、基部ナット14が相対的に斜め左後方に移動し、その結果、回動軸11の偏心軸部11aが基端側ねじ部15aの端部(突出部)15cに当接するだけでなく、回動軸11の丸軸部11cが、基部ナット14の座ぐり孔14cの壁面(平面視して、右前部分)14c’に当接する。この結果、回動軸11に対して基部ナット14がその姿勢を変更できない状態で係合し、これ以降は、ヒンジレバー12により回動軸11を回動させると、図14(e)、(f)、図19、図20に示すように、基部ナット14を含む締付連結体13が、引張りばね24の付勢力に抗して、回動軸11やヒンジレバー12と一体的にA方向に回動するように連動し、締付連結体13のボルト体15および係合ナット17が後部蝶番体7の突出片部7b間から離脱する。そして、この状態から、図3および図21〜図23に示すように、前部蝶番体6と後部蝶番体7とを分離して折畳姿勢に移行させることができる。
このように、ヒンジレバー12を回動させるだけで、最終的には、締付連結体13のボルト体15および係合ナット17が後部蝶番体7の突出片部7b間から離脱するので、締付連結体13を手動で離脱方向に回動させる手間を省きながら、前部蝶番体6と後部蝶番体7とを分離して折畳姿勢に移行させることができる。したがって、折畳自転車の前部車体と後部車体とを良好に分離することができながら、蝶番体5を分離状態にする際での手間を最小限に抑えることができる。
なお、折畳自転車を折畳状態から結合する場合においても、前部蝶番体6と後部蝶番体7とが付き合わされるように前部車体と後部車体とを移動させた後に、ヒンジレバー12を分離用姿勢から結合用姿勢側に回動させるだけで、最初は、ヒンジレバー12および回動軸11に連動して締付連結体13が反C方向に回動してそのボルト体15および係合ナット17が後部蝶番体7の突出片部7b間に入り込むとともに、その後は、引張りばね24の付勢力によりその姿勢が維持された状態で、前部蝶番体6(前部車体)に対して後部蝶番体7(後部車体)が引き寄せられて、折畳自転車の前部車体と後部車体とを良好に結合することができ、この際の手間も最小限に抑えることができる。
また、上記構成によれば、後部蝶番体7に対して締付連結体13の係合部である係合ナット17を引き寄せて係合させる、回動軸11の偏心軸部11a、締付連結体13の基部ナット14やボルト体15などの結合機構を、連動機構としても兼用しているので、基部ナット14に座ぐり孔14cを形成し、ボルト体15の基端側ねじ部15aを偏心軸部11aに係合可能に配設しただけの極めて簡単な構成でありながら、連動機構を良好に実現でき、製造コストの増加を最小限に抑えることができる利点もある。
なお、ボルト体15と係合ナット17との係合位置を調整して、基部ナット14の挿通孔14aにおける基端側ねじ部15aの端部15cの突出量を変更することで、回動軸11の偏心軸部11aが、基端側ねじ部15aの端部15cに当接するタイミングを調整でき、ひいては、締付連結体13が回動軸11やヒンジレバー12に連動し始めるタイミングを調整できる。すなわち、突出部としての基端側ねじ部15aの端部15cの、挿通孔14aへの突出量が大きくなるように変更することで、ヒンジレバー12の開放姿勢側への回動角度が小さくても連動し始めるように調整でき、基端側ねじ部15aの端部15cの突出量が小さくなるように変更することで、ヒンジレバー12の開放姿勢側への回動角度が大きくなってから連動し始めるように調整できる。
また、この構成によれば、ヒンジレバー12が結合用姿勢から分離用姿勢側に回動することを阻止するストッパ21を、その基端側で回動軸11に軸支され後部蝶番体7の突出片部7bに係合する締付連結体13の先端部に配設したので、セーフティロック機能を有する結合装置としてコンパクトに配設することができる。すなわち、従来の折畳自転車の結合装置の構造によれば、結合用姿勢のヒンジレバー109よりもさらに後方にロック用係止片120(図27参照)や支持ロッドを配設したり、ヒンジレバー130を大きく形成したり(図28〜図30参照)しなければならないなど、セーフティロック機構をも含めた折畳自転車の結合装置として大きな面積を必要とする短所を有していたが、本発明によれば、ストッパ21を締付連結体13の先端部に配設して結合用姿勢のヒンジレバー12に係合するように構成したので、極めてコンパクトに配設することができる。
また、ストッパ21を締付連結体13に配設して結合用姿勢のヒンジレバー12に係合するように構成し、前部蝶番体6と後部蝶番体7とからなる蝶番体5だけで、ヒンジレバー12のセーフティロック機構を実現した構造としたので、セーフティロック機能を実現するための部品を従来の結合装置のようにフレームパイプに設けなくても済み、他の形状のフレームに適用する場合でも、このフレームに対してセーフティロック機構を設けるための加工しなくても済み、設計の自由度を向上させることができる。したがって、折畳自転車の種類が異なっても、蝶番体5をフレームパイプ3に取り付けるだけの簡単な作業で済み、結合装置の組付け時の手間や時間を最小限に抑えることができる。
また、上記構成によれば、ストッパ21がボルト体15などの締付連結体13を構成する部品と同軸心に配設されているので、締付連結体13を構成する部品の製造誤差や組付誤差があっても、これらの製造誤差や組付誤差の影響を受け難くなり、この結果、製造誤差や組付誤差を極めて少なくすることによる製造コストの増加などを招くことなく、安全性を良好に維持できる。
なお、上記の実施の形態では、締付連結体13のボルト体15における基端側ねじ部15aの端部15cを突出部として利用したので、部品点数の増加を最小限に抑えることができるとともに、その突出量の調整も容易に行うことができて作業性も良好である。しかし、これに限るものではなく、図24に示すように、基部ナット14の挿通孔14a内に突出する突出部としてのねじ40などを設けて、この突出部としてのねじ40に対して、回動軸11の偏心軸部11aが係合可能となるように配設することもできる。