JP5385643B2 - 多段圧延機における板厚制御方法及び板厚制御装置 - Google Patents
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Description
ところが、圧延材の先端部や尾端部においては、圧延材が無張力状態であったり圧延速度が大きく変化する非定常状態であり、板厚の制御には、定常部とは異なった制御が必要とされている。特に、圧延材の尾端部は、従来、板厚制御が積極的に行われていない部分であり、この部分の板厚制御を確実に行うことで、製品精度を向上させ製品歩留まりなどを上げることができる。
特許文献1は、仕上げスタンド出側板厚計で実測した板厚偏差を記憶装置に記憶し、圧延材尾端が第(n−1)スタンド抜け時に発生する第nスタンド直下での板厚増加量に対し、記憶装置に記憶された実測板厚偏差を板厚増加量補正演算装置に入力させることにより、増加補正量を求める。この補正量で補正された板厚増加量を尾端用圧下位置指令演算装置に入力し、圧下位置指令を求め自動圧下位置制御装置を使い尾端板厚制御を行う技術を開示する。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、多段圧延機において、板厚制御を確実に行えると共に操業安定性を向上させ得る板厚制御方法及び板厚制御装置を提供することを目的とする。
本発明の多段圧延機の板厚制御方法は、多段圧延機に備えられた複数の圧延スタンドで圧延される圧延材の尾端部の板厚を制御する方法であって、所定の圧延スタンドにおける圧延材の尾端位置のスタンド抜けタイミングを計測し、前記スタンド抜けタイミングにおける、前記所定の圧延スタンドより下流側に位置する各圧延スタンド直下での圧延材の位置をトラッキング点として着目し、前記トラッキング点が、最終圧延スタンドへ到着した際の圧延材の板厚推定値を算出し、算出された板厚推定値から最終圧延スタンドでの板厚目標値修正量を演算し、この板厚目標値修正量を最終圧延スタンドで実現可能か否かを判定し、実現可能な場合には、前記板厚目標値修正量を用いて、最終圧延スタンドのロールギャップを制御し、実現可能でない場合には、前記板厚目標値修正量を修正し、修正後の板厚目標値修正量を用いて、最終圧延スタンドのロールギャップを制御する、ことを特徴とする。
本発明の多段圧延機の板厚制御装置は、多段圧延機に備えられた複数の圧延スタンドで圧延される圧延材の尾端部の板厚を制御する装置であって、所定の圧延スタンドにおける圧延材の尾端位置のスタンド抜けタイミングを計測し、前記スタンド抜けタイミングにおける、前記所定の圧延スタンドより下流側に位置する各圧延スタンド直下での圧延材の位置をトラッキング点として着目し、前記トラッキング点が、最終圧延スタンドへ到着した際の圧延材の板厚推定値を算出し、算出された板厚推定値から最終圧延スタンドでの板厚目標値修正量を演算する「板厚目標値修正量算出部」と、この板厚目標値修正量を最終スタンドで実現可能か否かを判定する「判定部」と、前記判定部における判定結果が実現可能な場合には、前記板厚目標値修正量を用いて、最終圧延スタンドのロールギャップを制御し、実現可能でない場合には、前記板厚目標値修正量を修正し、修正後の板厚目標値修正量を用いて、最終圧延スタンドのロールギャップを制御する「ギャップ制御部」と、を有することを特徴とする。
これら板厚制御方法及び板厚制御装置によれば、最終圧延スタンドの設備仕様の範囲内で、圧延材尾端部の板厚を目標値に可能な限り近づけることができる。そのため、圧延スタンドなどの設備の破損を防止しつつ、圧延材尾端部の製品精度(板厚精度)を向上させ製品歩留まりなどを上げることができる。また、最終圧延スタンドの設備仕様の範囲であって可能な範囲で、ロールギャップの修正を行うものとなっているため、尾端部の制御に伴う板厚ハンチング発生を可及的に低減することができる。その他、通板トラブル発生を抑制、通板安定性を維持することにより製造機会損失を回避できると共に、急峻な板厚変動の抑制により板厚精度を向上することができる。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1は、本実施形態の多段圧延機1(連続圧延機)を模式的に示した図である。
図1に示す通り、多段圧延機1は、複数の圧延スタンド2と、コイル巻き取り機3と、各圧延スタンド2のギャップ量を制御する板厚制御系4(ギャップ制御部を含む)を備える。
この多段圧延機1においては、圧延材Wは、複数の圧延スタンド2を通ることで、所望の板厚、板幅、板クラウンの製品板へと圧延され、コイル巻き取り機3で巻き取られ次の工程へと搬送される。
本実施形態の多段圧延機1は、従来からの板厚制御系4とは別の制御を行う制御部9を有している。この制御部9は、
(1)所定の圧延スタンド2において、圧延材Wの尾端位置がスタンド抜けするタイミングを計測し、
(2)そのスタンド抜けタイミングでの下流側圧延スタンド2直下の圧延材Wの位置を検出し、
(3)それらの検出位置が最終圧延スタンド2へ到着する時刻を圧延ロール5速度(圧延速度)から計算し、
(4)加えて、スタンド抜けタイミングでの下流側圧延スタンド2直下の圧延材板厚を推定し、
(5)板厚推定値から、最終圧延スタンド2での板厚偏差発生量を演算し、
(6)この板厚偏差発生量から板厚目標値修正量を演算する、
ものとなっている。詳しくは、制御部9は、前述の板厚目標値修正量を演算する板厚目標値修正量算出部と、この板厚目標値修正量を最終スタンドで実現可能か否かを判定する判定部とを含む。
(7)得られた板厚目標値修正量を基に、最終圧延スタンド2のロールギャップを制御する、
(8)しかしながら、判定部の結果で、最終圧延スタンド2で実施可能なロールギャップ変化量を超えている場合は、得られた板厚目標値修正量をさらに修正し、修正後の板厚目標値修正量を用いて、最終圧延スタンド2のロールギャップを制御する、
ものとなっている。
図2に示すフローチャートを基に、本発明の制御部9の中にて行われる板厚制御の手法について順を追って述べることとする。
以下では制御の一例としてPI制御を用いた場合の例を示す。
まず、S1(ステップ1)にて、所定の圧延スタンド2、例えば、図1の第i(=N−3)圧延スタンド2での圧延材Wの尾端抜けタイミングを検出する。例えば、尾端抜けのタイミングは、第i圧延スタンド2の荷重計7の値Piを用いて、式(1)を用いて検出する。
例えば、最終圧延スタンド2の1つ上流側の圧延スタンド2(第(N−1)圧延スタンド2)のトラッキング点が、最終圧延スタンド2に到着する時刻は、式(3)で算出する。
その後、S5にて、最終圧延スタンド2到着時点で板厚の目標修正量の算出を行う。この処理は、板厚目標値修正量算出部で行われる。算出には、例えば、マスフロー一定式(式(4))を用いて得られた式(5)を用いるとよい。
しかし、板厚目標値修正量が大きい場合には、調整するギャップ量が大きくなるため、スタンド間張力制御の性能限界をこえてスタンド間張力が一定ではなくなるために圧延としては不安定となり、板厚偏差が逆に増大したり、圧延トラブルにつながる可能性がある。 そこで、判定部において、板厚目標値修正量を最終スタンドで実現可能か否かを判定し、実現不可能(最終圧延スタンド2は、板厚目標値修正量を実現するギャップ量に変更できない)と判定された場合、圧延トラブルを誘発しない限界の圧下量操作量を実績データあるいは圧延モデルを基に算出する。
以上述べた本発明にかかる板厚制御方法を適用した結果を、以下に示す。
図3には、多段圧延機1により圧延材Wを圧延した結果として、尾端部の板厚変化量と、本実施形態により算出された板厚目標値修正量と、本実施形態の技術で圧延を行った場合の板厚偏差とが示されている。
詳しくは、上流側の圧延スタンド2にて尾端抜けにより後方張力を失うために、圧下荷重の増加、前方張力低下が発生し、それらが要因となり、尾端抜けした圧延スタンド2の下流側の圧延スタンド2にて板厚が厚くなる。それらの結果として、最終圧延スタンド2では、各圧延スタンド抜けのタイミング毎に、各スタンド直下の部分にて板厚増加が発生するため、板厚増加が最終圧延スタンド2に達する毎に板厚が順次増加している。
また、板厚変化量において、変化量が微少な場合には修正を行わないために、全ての時点にて目標値が修正されないが、それに関しても板厚目標値修正量が変化していない部分があることにより確認することができる。
板厚目標値修正量に従い制御を行った結果については、目標値を修正しているために圧延材Wの尾端に至るまで当初の目標値へ制御することはできていないが、修正目標値には追従できていることが確認できる。また、板厚変化量と比較すると、板厚偏差としては改善できていることが確認できる。
図4(a)は、板厚目標値を一定とする従来からの制御を行った結果を示しており、この結果から明らかなように、板厚精度向上のために制御系の応答性を上げていくと、板厚ハンチングを発生し最悪の場合は圧延トラブルに至る可能性が否めない。
図4(b)は、本実施形態の技術を適用した結果であり、板厚偏差に関して緩やかに変化しており、板厚ハンチングは発生していないことが確認できる。これは、板厚目標値修正量の際に、圧延スタンド2の性能(仕様)を維持できる範囲で修正を行うため、板厚ハンチングや圧延トラブルに至ることはないためである。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
2 圧延スタンド
3 コイル巻き取り機
4 板厚制御系
5 圧延ロール
6 バックアップロール
7 荷重計
8 板厚検出計
9 制御部
Claims (4)
- 多段圧延機に備えられた複数の圧延スタンドで圧延される圧延材の尾端部の板厚を制御する方法であって、
所定の圧延スタンドにおける圧延材の尾端位置のスタンド抜けタイミングを計測し、
前記スタンド抜けタイミングにおける、前記所定の圧延スタンドより下流側に位置する各圧延スタンド直下での圧延材の位置をトラッキング点として着目し、
前記トラッキング点が、最終圧延スタンドへ到着した際の圧延材の板厚推定値を算出し、
算出された板厚推定値から最終圧延スタンドでの板厚目標値修正量を演算し、
この板厚目標値修正量を最終圧延スタンドで実現可能か否かを判定し、
実現可能な場合には、前記板厚目標値修正量を用いて、最終圧延スタンドのロールギャップを制御し、実現可能でない場合には、前記板厚目標値修正量を修正し、修正後の板厚目標値修正量を用いて、最終圧延スタンドのロールギャップを制御する、
ことを特徴とする多段圧延機の板厚制御方法。 - 前記板厚目標値修正量の修正は、最終圧延スタンドで実施可能な板厚変化量を基に行うことを特徴とする請求項1に記載の多段圧延機の板厚制御方法。
- 多段圧延機に備えられた複数の圧延スタンドで圧延される圧延材の尾端部の板厚を制御する装置であって、
所定の圧延スタンドにおける圧延材の尾端位置のスタンド抜けタイミングを計測し、前記スタンド抜けタイミングにおける、前記所定の圧延スタンドより下流側に位置する各圧延スタンド直下での圧延材の位置をトラッキング点として着目し、前記トラッキング点が、最終圧延スタンドへ到着した際の圧延材の板厚推定値を算出し、算出された板厚推定値から最終圧延スタンドでの板厚目標値修正量を演算する「板厚目標値修正量算出部」と、
この板厚目標値修正量を最終スタンドで実現可能か否かを判定する「判定部」と、
前記判定部における判定結果が実現可能な場合には、前記板厚目標値修正量を用いて、最終圧延スタンドのロールギャップを制御し、実現可能でない場合には、前記板厚目標値修正量を修正し、修正後の板厚目標値修正量を用いて、最終圧延スタンドのロールギャップを制御する「ギャップ制御部」と、
を有することを特徴とする多段圧延機の板厚制御装置。 - 前記ギャップ制御部は、最終圧延スタンドで実施可能な板厚変化量を基に、板厚目標値修正量の修正を行うことを特徴とする請求項3に記載の多段圧延機の板厚制御装置。
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