JP4878012B2 - 圧延材の張力制御方法及び圧延装置 - Google Patents
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Description
このようなスタンド間の張力を制御する「張力制御方法」は、従来より数々開発されている。
また、スタンド間における張力を抑制するものとして、特許文献2に開示されているものがある。特許文献2のスタンド間張力制御方法は、不特定の原因により発生する圧延スタンドの入側での入側板厚変動を板厚計や圧延スタンドにおけるゲージメータ板厚計算値により検出し、前記入側板厚変動に起因する後方張力変動(圧延スタンドの後進率の変動)を演算し、後方張力変動を抑制するための出側板厚変動を演算して、前記出側板厚変動に基づいて入側板厚変動に起因する張力発生を抑制している。
しかしながら、特許文献1の技術は、圧延材の先端部の通過後の定常部のみを想定した制御方法であって、圧延材中途部での張力制御を行うことは可能であるが、先端部での張力抑制は困難である。
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、圧延材の先端部の圧延時におけるスタンド間の張力の変動を防ぎ、安定した操業を可能とする圧延機における圧延材の張力制御方法及び圧延装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、複数の圧延スタンドを有する圧延機で圧延材を圧延する際に、前記圧延スタンドのロール速度を調整することによりスタンド間張力を制御する圧延材の張力制御方法において、予め、スタンド間張力の張力偏差を制約条件として前記ロール速度に対する制御ゲインを複数求めると共に、各制御ゲインをスタンド間張力ごとに分類した制御ゲインテーブルを作成しておき、前記圧延材の先端部を圧延する際に、前記制御ゲインテーブルと張力偏差の実績値とから制御ゲインを求め、当該制御ゲインに基づいてロール速度を求め、前記圧延スタンドに適用することが好ましい。
前記スタンド間張力が高く、張力変動から板厚変動への影響が少ない場合においては、板厚の制御を優先させるべく、制約条件をスタンド間張力の張力偏差の時間変化量を考慮した式(1)とし、前記スタンド間張力が低く圧延トラブルが生ずる場合においては、張力制御を優先させるべく、制約条件をスタンド間張力の張力偏差の二乗値を考慮した式(3)とし、前記スタンド間張力が目標値近傍である中間の場合の制約条件をスタンド間張力の張力偏差の値自体を考慮した式(2)としていることが好ましい。
前記制御ゲインの変更に伴うロール速度の変更量の急激な変動を抑制すべく、前記ロール速度に対する速度補正量を求め、この速度補正量と制御ゲインとに基づいてロール速度を求めることが好ましい。
本発明における課題解決のための他の技術的手段は、複数の圧延スタンドを有する圧延機と、前記圧延スタンドのロール速度を調整することによりスタンド間張力を制御する制御装置とを備えた圧延装置において、制御装置は、前記スタンド間の張力偏差を制約条件として求められた前記ロール速度に対する制御ゲインを、張力偏差ごとに分類して有する制御ゲインテーブルと、前記圧延材の先端部を圧延する際に、前記制御ゲインテーブルと張力偏差の実績値とから制御ゲインを決定する制御ゲイン決定部と、制御ゲインに基づいてロール速度を求めるロール速度算出部とを備えている点にある。
図1は本発明の圧延装置を示している。この圧延装置1は、鉄やアルミニウム等の圧延材6(例えば、スラブ)を薄板に圧延するもので、図示しない粗圧延機及び中間圧延機、仕上げ圧延機2、巻き取り機3、これらを制御する制御装置4とを備えている。
以降、説明の便宜上、仕上げ圧延機を単に圧延機2と呼ぶ。図1には仕上げ圧延機2が示されている。
圧延機2は、多段圧延機(タンデム圧延機)であって、複数の圧延スタンド5と、圧延スタンド5,5間の圧延材6の張力(以降、スタンド間張力、又は、単に張力ということがある)を測定可能なルーパ装置7とを備えている。
図2に示すように、制御装置4はプロセスコンピュータにより構成されている。このプロセスコンピュータ4は、制御ゲインテーブル12と、制御ゲイン決定部13と、ロール速度算出部14を備えている。
まず、制御ゲインテーブル12に記憶された制御ゲインについて説明する。
制御ゲインGは、式(4)〜式(8)に示される圧延制御モデルに最適制御理論を適用して求められたものである。
例えば、高張力とはスタンド間張力が目標値の10%よりも大きいときであり、中張力とはスタンド間張力が目標値の±10%の範囲のときであり、低張力とはスタンド間張力が目標値の10%未満のときである。これら高張力、中張力、低張力の基準は圧延装置1及び圧延材6の寸法、強度などによって決定するもので、適宜変更されるものである。
また、低張力は、長時間に亘って圧延を継続した場合に圧延材6がルーパ装置7から離れてしまう等の圧延トラブルが生ずる虞がある状態であって、式(3)の制約条件によって張力制御を優先させることができるようにしている。
以上、制約条件をスタンド間張力により分けた上で、スタンド間張力の張力偏差の制約条件を決めているので、高張力の場合には、急峻な張力変動発生を抑制して張力制御により張力変動を緩やかにすることができる。目標張力近辺の中張力では、バンド幅内の張力変化であれば板厚偏差への影響は極小であるとの考えに基づき、バンド幅を設定する。低張力の場合は通板状態が不安定となり圧延トラブルとなるため板厚偏差への影響よりも張力制御を優先することを優先し、張力をできる限りはやく目標張力へ追従するように制御することが可能となる。
制御ゲイン決定部13は、制御ゲインテーブル12と張力偏差の実績値及び張力の実績値とから制御ゲインGを決定するものである。この制御ゲイン決定部13は、具体的には、式(10)を具備していて、ルーパ装置7から送られてきた張力の実績値と予め定められた張力の目標値との差により張力偏差を求める。そして、制御ゲイン決定部13は、張力の実績値から張力が高張力、中張力、低張力であるか判断して、制御ゲインテーブル12からグループを選択し、予め求めておいた張力偏差の切り換え判断基準に属する制御ゲインGを選択するようになっている。
フィルタ部15は、制御ゲイン決定部13が制御ゲインGを決定した際に、式(13)及び式(14)に示される制御ゲインGが切り替わったフラグを見て、切り換えフラグが立ち上がっている、即ち、式(13)のときに、式(15)に基づき、速度補正量αを算出するようになっている。求められた速度補正量αは変更量を求める際に適用される。式(15)におけるg(Δtf(i)t)は式(11)において速度補正量αを0とした場合のロール速度指令値ΔVr(i)tを示す。
図3のフローチャートに基づき、圧延装置の動作について説明する。
まず、圧延材6が圧延機1に搬入されて、圧延材6の先端部が当該圧延スタンドiに噛み込んだ後、次の圧延スタンドi+1に噛み込むと、当該圧延スタンドiと次の圧延スタンドi+1との間のスタンド間張力を当該スタンドiに噛み込んでから数秒後にルーパ装置7を用いて計測する。そして、制御ゲイン決定部13により圧延スタンドiと次の圧延スタンドi+1との間のスタンド間張力に対する張力偏差を式(10)に基づき算出する(S1)。
次に、決定した制御ゲインGが、前回の制御ゲインGに比べて変化しているか否か、即ち、切り換えフラグが立っているか否かを判断する(S3)。切り換えフラグが立っていなければ、速度補正量αを0とする(S4)。切り換えフラグが立っていれば、速度補正量αを式(15)に基づいて算出する(S5)。
ロール速度算出部14により、当該圧延スタンドiにおいて、今回求められた張力偏差と、1サンプリング前の張力偏差と、制御ゲインG及び速度補正量αを用いて、式(11)によりロール速度の変化量を求める(S6)。
制御対象となっている当該圧延スタンドiに対して圧延材6の先端部を圧延が終了しているか否かを判断する(S9)。
各図における破線は、本発明の圧延材の張力制御方法を適用しない場合の例を示す(比較例)。図4及び図5に示す比較例では、圧延材6の先端部が最終圧延スタンドに噛み込むと、当該スタンド間張力が略1.10近くまで急激に上昇し、それに応じて従来からあるロール速度算出部によりロール速度を変更するような制御がなされる。
一方、図4の実線に示す実施例では、張力値は板噛みこみ時の高張力状態から緩やかに目標張力近辺へ変化し目標張力近辺においても緩やかに変動していることがわかる。これにより、ロール速度指令値も比較例と比較して急峻な変更がなく緩やかに変更されていることが確認できる。これにより板厚偏差およびロールギャップ修正量も緩やかに変化し、比較例に見られた板厚が振動的に変化する状況は確認されない。逆に言えば、実施例では、目標張力への収束を多少犠牲にしても板厚変動を抑えるようにしている。
以上の結果、板厚偏差低減、オフゲージ長さ短縮が実現していることが確認でき、板厚精度向上を実現している。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
2 圧延機
4 制御装置
6 圧延材
7 ルーパ装置
12 制御ゲインテーブル
13 制御ゲイン決定部
14 ロール速度決定部
Claims (6)
- 複数の圧延スタンドを有する圧延機で圧延材を圧延する際に、前記圧延スタンドのロール速度を調整することによりスタンド間張力を制御する圧延材の張力制御方法において、
予め、スタンド間張力の張力偏差を制約条件として前記ロール速度に対する制御ゲインを複数求めると共に、各制御ゲインをスタンド間張力ごとに分類した制御ゲインテーブルを作成しておき、
前記圧延材の先端部を圧延する際に、前記制御ゲインテーブルと張力偏差の実績値とから制御ゲインを求め、
当該制御ゲインに基づいてロール速度を求め、前記圧延スタンドに適用することを特徴とする圧延材の張力制御方法。 - スタンド間張力が高い場合、スタンド間張力が目標値近傍である中間の場合、スタンド間張力が低い場合のそれぞれで異なった制約条件を採用するようにしていることを特徴とする請求項1に記載の圧延材の張力制御方法。
- 前記張力偏差が圧延材の板厚へ及ぼす影響を考慮するために、張力偏差と板厚との積をパラメータとする評価関数を定め、この評価関数が最小となるように前記制御ゲインを求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧延材の張力制御方法。
- 前記制御ゲインの変更に伴うロール速度の変更量の急激な変動を抑制すべく、前記ロー
ル速度に対する速度補正量を求め、この速度補正量と制御ゲインとに基づいてロール速度を求めることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧延材の張力制御方法。 - 複数の圧延スタンドを有する圧延機と、前記圧延スタンドのロール速度を調整することによりスタンド間張力を制御する制御装置とを備えた圧延装置において、
前記制御装置は、
前記スタンド間張力の張力偏差を制約条件として求められた前記ロール速度に対する複数の制御ゲインを、スタンド間張力ごとに分類して有する制御ゲインテーブルと、
前記圧延材の先端部を圧延する際に、前記制御ゲインテーブルと張力偏差の実績値とから制御ゲインを決定する制御ゲイン決定部と、
制御ゲインに基づいてロール速度を求めるロール速度算出部とを備えていることを特徴とする圧延装置。
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