JP2010029880A - タンデム圧延装置の板厚張力制御方法及び板厚張力制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の板厚張力制御方法は、連続する2スタンドにおいて、下流スタンド出側板厚とスタンド間張力とを互いの干渉を抑制しながらそれぞれの目標値に追従させるものであって、圧延スタンドでの圧延速度に基づいて、板厚張力制御系の制御ゲインを変更する。詳しくは、圧延材の板厚およびスタンド間張力の干渉系をモデル化した制御対象モデルを更新して、更新された制御対象モデルと現実の制御対象との誤差を小さくすることを用いたILQ設計法により、板厚張力制御系の制御ゲインを算出する。
【選択図】図2
Description
タンデム圧延装置では、圧延材の板厚を所定のものにするために、圧延スタンドにおける圧下荷重やロールギャップなどを制御している。このような制御において、板厚制御と張力制御とを同時に行なうことが多いが、これらを別々の制御器を用いて制御すると互いに干渉が起こり悪影響を与える。この千渉を小さく抑えるためには、板厚・張力干渉系全体を一つの系として捉え、例えば、ILQ(Inverse Linear Quadratic)設計法により制御器を設計して非干渉化する方法が有効である。これらに関して、以下の技術がある。
この制御装置は、プロセスモデルを表現する変数、圧延材の板厚目標値、圧延材のスタンド間張力目標値、板厚およびスタンド間張力の応答を指定するための変数、並びに、板厚およびスタンド間張力の応答を調整するための変数を設定する設定手段と、設定された各変数を所定の制御ゲイン演算式に代入して制御ゲインを数値として求める演算手段と、演算された制御ゲインを用いて、板厚とスタンド間張力との相互干渉を小さくしながら、板厚を板厚目標値に、スタンド間張力をスタンド間張力目標値に追随させる速度指令値およびロールギャップ指令値を演算する制御ゲイン演算手段と、を備えたことを特徴とする。
さらに、特開平8−57513号公報(特許文献2)は、タンデム圧延機の各スタンド間に配置されたルーパの角度とこのルーパが配置されたスタンド間の圧延材張力とを制御するルーパ制御装置を有する圧延機制御装置を開示する。
この制御装置によると、走間変更前後における圧延パススケジュールの変化に影響されないルーパ制御装置の制御パラメータの設定が可能となり、走間変更前後での安定なルーパと張力の最適な制御が可能になる。
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、例えばILQ設計法を用いた板厚・張力制御において、圧延速度が変動しても適正な制御ゲインを設計することにより、干渉を抑えオーバーシュートを小さくすることが可能な、圧延装置の板厚張力制御方法及び圧延装置を提供することを目的とする。
すなわち、本発明に係る板厚張力制御方法は、タンデム圧延装置の連続する2つの圧延スタンドに対し、圧延スタンドの出側板厚とスタンド間張力とを基に板厚張力制御を行う制御方法において、前記圧延スタンドでの圧延速度に基づいて、前記板厚張力制御の制御ゲインを変更するゲイン変更ステップを有することを特徴とする。
この方法によれば、圧延速度に基づいて板厚張力制御系の制御ゲインが算出される。ゆえに、圧延中に圧延速度は大きく変化することがあっても、変化した圧延速度を用いて制御対象の特性を変化させて制御ゲインを算出するので、従来の制御方法に比較して、板厚制御と張力制御との干渉が適正に抑制でき、オーバーシュートが小さくなる等、制御性が向上する。
この制御方法によると、例えばILQ設計法を用いた板厚張力制御において、圧延中に常時、圧延速度に応じて制御対象モデルを更新し、その時点での現実の制御対象との誤差を小さくすることで適正な制御ゲインを設計することができる。そのため、従来の制御方法に比較して、板厚制御と張力制御との干渉が適正に抑制でき、オーバーシュートが小さくなる等、制御性が格段に向上する。
この制御方法によると、サクセシブ制御と本発明の板厚張力制御とが協働することとなり、タンデム圧延装置における板厚張力制御の精度が飛躍的に向上する。
以上述べた制御方法を実現する装置としては、連続する2つの圧延スタンドと、該圧延スタンドの出側板厚とスタンド間張力とを基に板厚張力制御を行う板厚張力制御部と、を有するタンデム圧延装置の制御装置において、前記圧延スタンドでの圧延速度に基づいて、前記板厚張力制御部の制御ゲインを変更する制御ゲイン変更部を有する構成とするとよい。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1は、本実施形態の圧延装置1を示す模式図である。
圧延装置1は複数(図では#1〜#4)の圧延スタンドを有するタンデム型である。#1圧延スタンドに圧延材4が通された後、#2〜#4圧延スタンドを通過する毎に圧下され、#4圧延スタンドを出たところで所定の仕上げ板厚となり、巻き取り装置2で巻き取られる。各圧延スタンドにおけるロール速度やロールギャップ等が板厚張力制御装置3により制御されるものとなっている。
一般に、冷間圧延鋼板等の薄板を製造する圧延装置1において、製品である薄板の板厚を目標値に一致させ、かつ、薄板全般に渡って板厚を均一に保つため、AGCによる板厚制御が適用されている。そして、冷間圧延加工中に圧延材4に作用する張力を破断限界内に保たなければ安定な操業にならないため、ルーパ制御などによる張力制御も適用されているのが普通である。板厚及び張力の2つの目標値に対して、圧延装置1のワークロール10の回転速度と、上下のワークロール10の間隔の2つの操作量を適当に操作することで、自動板厚制御と自動張力制御の2つの制御を同時に実現することができる。
図1において、上下のワークロール10はそれぞれバックアップロール12を備える。最終の圧延スタンド出側には、圧延材4の板厚を検出する板厚検出器が設けられる。また、各圧延スタンド間の張力を検出する張力検出器29が設けられる。これらの板厚検出器及び張力検出器29から入力された信号等に基づいて、板厚張力制御装置3が、圧延材4の板厚及び張力を制御する。このとき、板厚張力制御装置3は、速度制御装置22及び圧下装置30を制御する。
図2に、本実施形態に係る圧延装置1(タンデム圧延装置)における任意の連続する2つのスタンド、及び、その制御ブロックを示す。各圧延スタンドは、それぞれ圧下装置30、圧延機駆動主電動機20(主機20)、主機20の速度を制御する速度制御装置22を有する。
以下に、図2〜図4の説明で用いる記号を示す。
スタンド間には張力検出器29が設けられている。板厚張力制御装置3には、制御ゲイン演算装置31により演算した制御ゲインの値、スタンド間張力偏差、下流スタンド出側板厚偏差、上流スタンド主機速度偏差、下流スタンドロールギャップ偏差が入力される。板厚張力制御装置3からは、上流スタンド主機速度偏差指令値、下流スタンドロールギャップ偏差指令値が出力される。
下流スタンド出側板厚推定器34からは、下流スタンドの出側板厚の推定値が出力される。推定方法としては、ゲージメータ式やマスフロー一定式を用いた推定や、板厚計の測定値を用いる方法、又は、これらを適宜組み合わせた方法などがある。実施可能な範囲で、なるべく実際の板厚との誤差が小さく、むだ時間が少ない方法を選択することが好ましい。
本実施形態の制御においては、前述のゲイン変更ステップが、圧延材の板厚及びスタンド間張力の関係(干渉系)をモデル化した制御対象モデルを圧延速度に基づいて更新するモデル更新ステップと、モデル更新ステップにより更新された制御対象モデルに基づいて板厚張力制御の制御ゲインを算出するゲイン算出ステップと、を含み、このゲイン算出ステップでは、更新された制御対象モデルと現実の制御対象との誤差が最小となるように制御ゲインを算出するものとなっている。
ここで、ILQ設計法を行なう際には、図3の右側に示す制御対象モデルに基づいて設計を行なう。図3の右側に示す制御対象モデルは、前述した先行技術(特許文献)における制御対象モデルのように、張力や板厚もしくはロールギャップから張力発生系への影響を単一の影響係数として表わしたものではなく、上流スタンド先進率への影響係数(張力から先進率への影響係数)と上流スタンド基準主機速度指令値との積や、下流スタンド後進率への影響係数(張力から後進率への影響係数、板厚から後進率への影響係数)と下流スタンド主機速度指令値との積として表わしており、上流スタンド基準主機速度指令値及び下流スタンド主機速度指令値が陽に現れる制御対象モデルとなっている。このため、圧延中の各時点における上流スタンド基準主機速度指令値及び下流スタンド主機速度指令値の値を用いて制御対象モデルを更新することができる。
圧延開始前において、張力目標値及び板厚目標値を目標値設定装置33に設定し、さらに、図3の右側に示す制御対象モデルのパラメータのうち、先進率ロックオン値、上流スタンド基準主機速度指令値及び下流スタンド主機速度指令値以外のパラメータと、設定パラメータTt、Th、σt、σhとを、パラメータ設定装置32に設定する。なお、設定パラメータの詳細については、後述する。
図3の右側の制御対象モデルのブロック図を、状態方程式で書くと、以下の式(3)〜式(12)のようになる。
図3の左側の制御ゲインは、ILQ設計法により設計した、以下の式(13)〜式(21)のようになる。
また、図3の左側に示すσtはTtにより指定した張力の出力応答波形にどれだけ近づけるかを調整するパラメータであり、σhはThにより指定した板厚の出力応答波形にどれだけ近づけるかを調整するパラメータである。σt、σhを大きくすると、指定した出力応答波形に漸近するが、一般に、上流スタンド主機速度指令値の偏差、下流スタンドロールギャップ指令値の偏差が大きくなるため、極端に大きな値は現実的ではない。そこで、指定した出力応答波形への板厚・張力の漸近の程度と、上流スタンド主機速度指令値の偏差、下流スタンドロールギャップ指令値の偏差の大きさとのトレードオフの関係に基づいて、設定パラメータσt、σhを設定する。
次に、以上述べた本願発明の板厚張力制御を用いたシミュレーションの結果を説明する。
図4には、下流スタンド主機速度指令値、上流スタンド基準主機速度指令値の時間変化が示されている。下流スタンド主機速度指令値、上流スタンド基準主機速度指令値ともに、時間τ=0〜5[sec]の間は加速し、時間τ=5〜10[sec]の間は一定速度としている。これは、板先端部では低速で、そこから最高速度まで加速していき、最高速度に到達した後は一定速度で圧延する状況を模擬している。
この図5と比較するために、制御ゲインを固定し、圧延速度を変化させ、それ以外の条件は同じにして、板厚・張力制御を行なったシミュレーション結果(従来の装置)を、図6〜図8に示す。
図7は、下流スタンド主機速度指令値を247.5[mpm]、上流スタンド基準主機速度指令値を165[mpm]としてILQ設計法により設計した制御ゲインで固定して板厚・張力制御を行なったシミュレーション結果である。すなわち、時間τ=2.5[sec]における、下流スタンド主機速度指令値及び上流スタンド基準主機速度指令値に対して最適になるように制御ゲイン設計を行なっている。
図5〜図8を比較すると、出側板厚偏差については大きな差異はないが、スタンド間張力については以下のような違いがある。
図7,図8においても、加速中に張力がオーバーシュートしており、高張力又は低張力となっている。特に、図8におけるロックオン直後の高張力側へのオーバーシュートは著しく不都合な状況である。本発明の結果である図5には、このような不都合はみられない。
以上のようにして、本実施形態に係る板厚・張力制御方法及びその制御方法を適用した圧延装置によると、タンデム圧延機の連続する2つの圧延スタンドにおける、板厚・張力制御を行なうときに、圧延速度が加減速中であっても、板厚制御と張力制御との干渉を抑制し、その結果、オーバーシュートを防止するとともに、目標値からの偏差を低減して、整定時間を短縮することができる。
2 巻き取り装置
3 板厚張力制御装置
4 圧延材
10 ワークロール
12 バックアップロール
20 電動機
22 速度制御装置
23 速度指令装置
29 張力検出器
30 圧下制御装置
31 制御ゲイン演算装置
32 パラメータ設定装置
33 目標値設定装置
34 下流スタンド出側板厚推定器
Claims (5)
- タンデム圧延装置の連続する2つの圧延スタンドに対し、圧延スタンドの出側板厚とスタンド間張力とを基に板厚張力制御を行う制御方法において、
前記圧延スタンドでの圧延速度に基づいて、前記板厚張力制御の制御ゲインを変更するゲイン変更ステップを有することを特徴とするタンデム圧延装置の板厚張力制御方法。 - 前記ゲイン変更ステップは、
圧延材の板厚及びスタンド間張力の関係をモデル化した制御対象モデルを、圧延速度に基づいて更新するモデル更新ステップと、
前記モデル更新ステップにより更新された制御対象モデルに基づいて、板厚張力制御の制御ゲインを算出するゲイン算出ステップとを含み、
前記ゲイン算出ステップは、更新された制御対象モデルと現実の制御対象との誤差が最小となるように制御ゲインを算出することを特徴とする請求項1に記載のタンデム圧延装置の板厚張力制御方法。 - 前記板厚張力制御でサクセシブ制御が実行されている際に、
前記ゲイン変更ステップは、サクセシブ制御に用いられる圧延速度を用いて、前記板厚張力制御の制御ゲインを算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のタンデム圧延装置の板厚張力制御方法。 - 連続する2つの圧延スタンドと、該圧延スタンドの出側板厚とスタンド間張力とを基に板厚張力制御を行う板厚張力制御部と、を有するタンデム圧延装置の制御装置において、
前記圧延スタンドでの圧延速度に基づいて、前記板厚張力制御部の制御ゲインを変更する制御ゲイン変更部を有することを特徴とするタンデム圧延装置の板厚張力制御装置。 - 前記板厚張力制御部でサクセシブ制御が実行されている場合に、
前記制御ゲイン変更部では、サクセシブ制御に用いられる圧延速度を用いて、前記板厚張力制御部の制御ゲインを算出することを特徴とする請求項4に記載のタンデム圧延装置の板厚張力制御装置。
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