JP5637906B2 - 冷間圧延機の板厚制御方法及び板厚制御装置 - Google Patents
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Description
係る連続圧延を行う際においては、先行圧延材の板厚を実現するロールギャップ量から後行圧延材の板厚を実現するためのロールギャップ量へと、ワークロール間のギャップを変更する必要がある。このロールギャップ変更は、圧延材を走行させている間に圧延材を止めることなく行われるため、このロールギャップ量の変更を「走間板厚変更」又は略して「走変」と呼ぶ。
このような状況に対応する技術として、例えば、圧延荷重モデルの精度を向上させるセットアップモデルが広く適用されている。このセットアップモデルでは、変形抵抗や板厚は設定通りであることが前提となっている。しかしながら、これら変形抵抗、板厚(特に先端の板厚)は、冷間圧延の前の熱間圧延における板温度分布の影響などにより精確な予測が不可能であり、後行圧延材の先端部の板厚不良の大きな要因となっている。
特許文献1は、圧延機の走間板厚変更を行う際に、ロールギャップ設定動作は動作方向のみを設定して走間板厚変更開始と同時に該動作方向に動作し、後行圧延材の板厚が目標板厚に到達したときに該ロールギャップ設定動作を停止し、AGCによる板厚制御を行うことを特徴とする圧延機の走間板厚変更時の板厚制御方法を開示する。
しかしながら、冷間圧延において、後行圧延材の先端部が硬くなり変形抵抗が大となっている場合には、初期セットアップで求めた圧下量では目標板厚に到達できず、走変完了後でも板厚偏差が残る場合がある。また、ロールギャップ操作を停止して、走変を続けた場合にはロール速度は変更を続けるため、ロールギャップ停止後のロール速度変化による張力変化で板厚が変わってしまう可能性も否めない。特許文献1ではロールギャップ停止後ただちにAGCを作動させることになっているが、これらの操作量不足や張力変化はAGCで十分追従が出来ず、結果として板厚不良が発生してしまう可能性がある。
本発明に係る冷間圧延機の板厚制御方法は、冷間圧延機での圧延であり且つ先行圧延材の後端部と後行圧延材の先端部の突き合わせ部が通過する際に実施される「走間板厚変更」の際に適用される板厚制御方法において、先行圧延材に対するロールギャップ量から後
行圧延材に対するロールギャップ量へ変更する際の変更速度Vpを予め算出しておき、走間板厚変更においては、ロールギャップ量の変更速度をVp+α(Vpとαとは同符号)としてロールギャップを変更し、実績圧延荷重を基にしたゲージメータ式から得られる出側板厚が目標板厚になった時点で、ロールギャップ量の変更操作を停止することとし、前記後行圧延材の先端部に関し、変形抵抗の平均値及び変形抵抗の変動量σを過去の実績より求めておき、前記変形抵抗の平均値に対するロールギャップ量の変化量ΔS1、「変形抵抗の平均値+変動量σ」の際のロールギャップ量の変化量ΔS2、「変形抵抗の平均値−変動量σ」の際のロールギャップ量の変化量ΔS3、走間板厚変更に要する時間tをそれぞれ算出し、(ΔS2−ΔS1)/tの絶対値と(ΔS3−ΔS1)/tの絶対値との大きい方を上記したαとすることを特徴とする。
好ましくは、前記出側板厚と目標板厚との偏差Δhを算出し、算出された偏差Δhが所定の値以下になった際に、ロールギャップ量の変更操作を停止するとよい。
好ましくは、前記ロールギャップ量の変更操作を停止するに際しては、ロールギャップ量の変更操作を停止する冷間圧延機のロール速度の変更を停止すると共に、当該冷間圧延機の上流側及び下流側に配備された冷間圧延機のロール速度の変更も停止するとよい。
また、本発明に係る冷間圧延機の板厚制御装置は、冷間圧延機に備えられており、且つ先行圧延材の後端部と後行圧延材の先端部の突き合わせ部が通過する際に実施される「走
間板厚変更」の際に適用される板厚制御を行う板厚制御装置であって、前記板厚制御装置には、先行圧延材に対するロールギャップ量から後行圧延材に対するロールギャップ量へ変更する際の変更速度Vpを予め算出しておき、走間板厚変更においては、ロールギャップ量の変更速度をVp+α(Vpとαとは同符号)としてロールギャップを変更し、実績圧延荷重を基にしたゲージメータ式から得られる出側板厚が目標板厚になった時点で、ロールギャップ量の変更操作を停止する制御を行うと共に、前記変更速度Vpを補正しない場合の走変完了時の板厚と目標板厚の偏差の統計量、圧延材の塑性定数、圧延スタンドのミル定数、及び走変開始から終了するまでの時間tに基づいて、前記αを決定する走変制御部が備えられていることを特徴とする。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
冷間タンデム圧延機2は、複数の圧延スタンド1(冷間圧延機)と、圧延後の圧延材Wを巻き取るコイル巻き取り機とを備えたものであり、図1には、冷間タンデム圧延機2の中途部に存在する複数の圧延スタンド1を模式的に示している。
圧延スタンド1の出側には、圧延材Wの板厚を検出する板厚計7や圧延材Wの速度を計測する板速計8が設けられる。圧延スタンド1と圧延スタンド1との間には、各圧延スタンド1間の張力を検出可能な張力計9も備えられている。
この冷間タンデム圧延機2には、圧延スタンド1に設けられた圧下機構5を動かしワークロール3間のギャップ量を制御する板厚制御装置が備えられている。板厚制御装置は、冷間タンデム圧延機2の少なくとも1つ以上又は全ての圧延スタンド1を制御する。
AGC制御部20は、各圧延スタンド1における圧延荷重の偏差に伴うロールギャップ変化量を補償すべく、所定の比例ゲインで各圧延スタンド1のロールギャップを制御する。詳しくは、BISRA−AGCやミル剛性可変制御と呼ばれる制御を行い、板厚変動をゼロに近づける制御を行う。さらに、板厚制御装置は、圧延スタンド1の圧延速度に応じて、AGC制御部20内で使用される比例ゲインを決定するゲイン決定手段などを備えている。ミル剛性Mの同定誤差や定常時のAGC制御との干渉による過応答を防止すべく、チューニング率は1.0以下の値が採用される。
周知の如く、圧延材Wの連続圧延を行う際においては、先行圧延材の板厚を実現するロールギャップ量から後行圧延材の板厚を実現するためのロールギャップ量へと、ワークロール間のギャップを変更する必要がある。このロールギャップ変更は、圧延材を走行させている間に圧延材を止めることなく行われるため、このロールギャップ量の変更を「走間板厚変更」又は略して「走変」と呼ぶ。
・先行圧延材:入側板厚偏差ΔH=0.0、ミル定数M=500ton/mm、出側塑性定数Q=入側塑性常数Q’=500ton/mm
・後行圧延材:入側板厚偏差ΔH=0.8、ミル定数M=510ton/mm、出側塑性定数Q=入側塑性常数Q’=800ton/mm
・ロールギャップ量の操作量:0.4mm
・後行圧延材の変形抵抗が高い場合:Q=Q’=900ton/mm
・後行圧延材の変形抵抗が低い場合:Q=Q’=700ton/mm
である。
しかしながら、例えば、後行圧延材の加熱温度が予定より若干低く、後行圧延材の変形抵抗が高かった場合は、設定したロールギャップ量では圧下量が足りず、板厚が厚いものとなる。逆に、後行圧延材の加熱温度が予定より若干高いなどして後行圧延材の変形抵抗が低かった場合は、設定したロールギャップ量では圧下量が大きすぎて、板厚が薄くなる。
そこで、本実施形態の走変制御部21は、このような不安定状況下となる走変時の圧延を適切に行うべく、次の(i)ステップ〜(iv)ステップを有する圧延を行う。
(ii) 走変時においては、定常時の板厚制御(AGC制御)を停止すると共に、ロールギャップ量の変更速度をVp+αとしてロールギャップ量を、先行圧延材のロールギャップ量→後行圧延材のロールギャップ量とする。ここで、ロールギャップ量の変化方向(ギャップ操作)は常に一方向とする。すなわち、走変時において、ロールギャップ量を増やしたり減らしたりと交互に行うことはしない。ロールギャップ量は増える又は減るのみである。また、Vpと補正量αとは同じ符号とする。
ところで、補正量αの具体的な決め方としては、様々な考えを採用可能であるが、本実施形態では、以下の方法で求めることとした。
この時の圧延材の塑性定数をQとする。この塑性定数Qは、データ解析から求めても良いし、変形抵抗と摩擦係数を用いて理論値としても良い。その際に、δH分さらに圧下する必要があれば、圧延理論より圧下板厚と操作ロールギャップ量δSは、Mを圧延スタンド1のミル定数とすると、δS=δH・(M+Q)/Mとなる。したがって、走変時に本来動かすロールギャップ量ΔSに対して、δSだけ増やす必要がある。この時のロールギャップ操作速度V、走変時間t(走変開始から終了するまでの時間)とすると、V=ΔS/tが設定される。この際、補正量αはα=δS/tとなる。
さて、図4は、上記(i)ステップ〜(iv)ステップを行った際のロールギャップ量の変化やその速度変化を模式的に示している。
図5(a)は、従来から用いられている手法、すなわちセットアップのみで板厚を制御した場合の結果であり、図5(b)は、特許文献1の技術乃至はそれに類似する技術を用いて目標板厚に到達するとロールギャップ操作を停止する板厚制御を行った場合である。図5(c)は、本実施形態の技術を用いて走変時の板厚制御を行った場合である。各図とも、第4圧延スタンドにおける走変中の板厚の絶対値の変化を示す。
・先行圧延材:入側板厚偏差ΔH=0.0、ミル定数M=500ton/mm、出側塑性定数Q=入側塑性常数Q’=500ton/mm
・後行圧延材:入側板厚偏差ΔH=0.8、ミル定数M=510ton/mm、出側塑性定数Q=入側塑性常数Q’=800ton/mm
・ロールギャップ量の操作量:0.4mm
・後行圧延材の変形抵抗が高かった場合:Q=Q’=900ton/mm
・後行圧延材の変形抵抗が低かった場合:Q=Q’=700ton/mm
である。
図5(b)の結果に関しては、後行圧延材が硬い場合は比較的うまく制御できていることが見てとれる。とはいえ、後行圧延材が柔らかい場合には、制御の効果が無く、図5(a)の場合と略同じ状況であることは明らかである。
上記した実施例より、本発明に係る走間板厚変更での板厚制御技術が有効であることは明らかであるが、さらに精確な板厚制御を期するためには、圧延スタンド1のロールギャップ速度(ロールギャップ変更速度)を適切に設定する必要がある。
ところで、補正量αを用いた板厚制御を実施した場合、走変完了時間より早く目標板厚に到達するため、この時点で圧延スタンド1及びその前後の圧延スタンドの速度変化も止めてしまわないと、その後の張力変化による板厚不良が発生する。それ故、ロールギャップ量の変更操作を停止するに際しては、圧延スタンド1のロール速度の変更を停止すると共に、当該圧延スタンド1の上流側及び下流側に配備された圧延スタンドのロール速度の変更も停止するようにするとよい。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
2 冷間タンデム圧延機
3 圧延ロール
4 バックアップロール
5 圧下機構
6 荷重計
7 板厚計
8 板速計
9 張力計
20 AGC制御部(定常制御部)
21 走変制御部
W 圧延材
Claims (7)
- 冷間圧延機での圧延であり且つ先行圧延材の後端部と後行圧延材の先端部の突き合わせ部が通過する際に実施される「走間板厚変更」の際に適用される板厚制御方法において、
先行圧延材に対するロールギャップ量から後行圧延材に対するロールギャップ量へ変更する際の変更速度Vpを予め算出しておき、走間板厚変更においては、ロールギャップ量の変更速度をVp+α(Vpとαとは同符号)としてロールギャップを変更し、実績圧延荷重を基にしたゲージメータ式から得られる出側板厚が目標板厚になった時点で、ロールギャップ量の変更操作を停止することとし、
前記後行圧延材の先端部に関し、変形抵抗の平均値及び変形抵抗の変動量σを過去の実績より求めておき、前記変形抵抗の平均値に対するロールギャップ量の変化量ΔS1、「変形抵抗の平均値+変動量σ」の際のロールギャップ量の変化量ΔS2、「変形抵抗の平均値−変動量σ」の際のロールギャップ量の変化量ΔS3、走間板厚変更に要する時間tをそれぞれ算出し、(ΔS2−ΔS1)/tの絶対値と(ΔS3−ΔS1)/tの絶対値との大きい方を上記したαとする
ことを特徴とする走間板厚変更での板厚制御方法。 - 冷間圧延機での圧延であり且つ先行圧延材の後端部と後行圧延材の先端部の突き合わせ部が通過する際に実施される「走間板厚変更」の際に適用される板厚制御方法において、
先行圧延材に対するロールギャップ量から後行圧延材に対するロールギャップ量へ変更する際の変更速度Vpを予め算出しておき、走間板厚変更においては、ロールギャップ量の変更速度をVp+α(Vpとαとは同符号)としてロールギャップを変更し、実績圧延荷重を基にしたゲージメータ式から得られる出側板厚が目標板厚になった時点で、ロールギャップ量の変更操作を停止することとし、
前記変更速度Vpを補正しない場合の走変完了時の板厚と目標板厚の偏差の統計量、圧延材の塑性定数、圧延スタンドのミル定数、及び走変開始から終了するまでの時間tに基づいて、前記αを決定する
ことを特徴とする走間板厚変更での板厚制御方法。 - 前記出側板厚と目標板厚との偏差Δhを算出し、
算出された偏差Δhが所定の値以下になった際に、ロールギャップ量の変更操作を停止
することを特徴とする請求項1又は2に記載の走間板厚変更での板厚制御方法。 - 上記したαを、過去の実績値より得られた「先行圧延材と後行圧延材との板厚差」、「先行圧延材と後行圧延材との強度差」、「先行圧延材と後行圧延材との板幅差」ごとに層別化しておくことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の走間板厚変更での板厚制御方法。
- 前記ロールギャップ量の変更操作を停止するに際しては、
ロールギャップ量の変更操作を停止する冷間圧延機のロール速度の変更を停止すると共に、当該冷間圧延機の上流側及び下流側に配備された冷間圧延機のロール速度の変更も停止することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の走間板厚変更での板厚制御方法。 - 冷間圧延機に備えられており、且つ先行圧延材の後端部と後行圧延材の先端部の突き合わせ部が通過する際に実施される「走間板厚変更」の際に適用される板厚制御を行う板厚制御装置であって、
前記板厚制御装置には、先行圧延材に対するロールギャップ量から後行圧延材に対するロールギャップ量へ変更する際の変更速度Vpを予め算出しておき、走間板厚変更においては、ロールギャップ量の変更速度をVp+α(Vpとαとは同符号)としてロールギャップを変更し、実績圧延荷重を基にしたゲージメータ式から得られる出側板厚が目標板厚になった時点で、ロールギャップ量の変更操作を停止する制御を行うと共に、前記後行圧延材の先端部に関し、変形抵抗の平均値及び変形抵抗の変動量σを過去の実績より求めておき、前記変形抵抗の平均値に対するロールギャップ量の変化量ΔS1、「変形抵抗の平均値+変動量σ」の際のロールギャップ量の変化量ΔS2、「変形抵抗の平均値−変動量σ」の際のロールギャップ量の変化量ΔS3、走間板厚変更に要する時間tをそれぞれ算出し、(ΔS2−ΔS1)/tの絶対値と(ΔS3−ΔS1)/tの絶対値との大きい方を上記したαとして決定する走変制御部が備えられていることを特徴とする冷間圧延機の板厚制御装置。 - 冷間圧延機に備えられており、且つ先行圧延材の後端部と後行圧延材の先端部の突き合わせ部が通過する際に実施される「走間板厚変更」の際に適用される板厚制御を行う板厚制御装置であって、
前記板厚制御装置には、先行圧延材に対するロールギャップ量から後行圧延材に対するロールギャップ量へ変更する際の変更速度Vpを予め算出しておき、走間板厚変更においては、ロールギャップ量の変更速度をVp+α(Vpとαとは同符号)としてロールギャップを変更し、実績圧延荷重を基にしたゲージメータ式から得られる出側板厚が目標板厚になった時点で、ロールギャップ量の変更操作を停止する制御を行うと共に、前記変更速度Vpを補正しない場合の走変完了時の板厚と目標板厚の偏差の統計量、圧延材の塑性定数、圧延スタンドのミル定数、及び走変開始から終了するまでの時間tに基づいて、前記αを決定する走変制御部が備えられていることを特徴とする冷間圧延機の板厚制御装置。
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