JP5381764B2 - 樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、多層プリント配線板等の絶縁層形成に好適な樹脂組成物に関する。
近年、電子機器の小型化、高性能化が進み、多層プリント配線板は、電子部品の実装密度を向上させるため、導体配線の微細化が進んでいる。多層プリント配線板の絶縁層に使用する樹脂組成物としては、例えば、エポキシ樹脂とその硬化剤として機能するシアネートエステル樹脂を含有する樹脂組成物が誘電特性に優れた絶縁層を形成できることが知られている。また、配線が高密度化された多層プリント配線板では、導体層と絶縁層との熱膨張係数の違いによるクラック発生等の問題が生じやすくなるため、絶縁層の熱膨張率を低く抑えることが要求される。樹脂組成物への無機充填材の添加は熱膨張率を下げる手段として汎用されており、無機充填材としては、特に物理強度が強く、硬度が高く、また耐熱水性の点で優れるシリカが一般的に広く用いられている。例えば、特許文献1、2には、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、シリカ等を含有する樹脂組成物が開示されている。
国際公開2003/099952号パンフレット 国際公開2008/044766号パンフレット
一方、本発明者らは、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、シリカを含有する樹脂組成物を回路基板に積層し、該樹脂組成物を硬化して形成された絶縁層に対し、高温高湿下での環境試験を行うと、導体層と絶縁層間の剥離強度が著しく低下するという知見を得た。
本発明は、プリント配線板の絶縁層形成に好適な樹脂組成物であって、該樹脂組成物を用いて回路基板を製造することにより、導体層と絶縁層との密着性をより安定的に保つことができる、樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、エポキシ樹脂及びシアネートエステル樹脂を含む樹脂組成物中にタルクを配合した場合には、加速環境試験後の導体層と絶縁層との密着性を安定的に維持できることを見出した。一方、十分な密着性を維持し、また絶縁層の熱膨張率を下げるためにタルクの配合量を多くすると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎてラミネートに適さないことを見出した。本発明者らは、さらに検討した結果、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物において、無機充填材としてタルクとシリカを一定割合で併用することにより、導体層との密着性、低熱膨張率、ラミネート性のバランスがとれた良好な絶縁層が形成されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の内容を含むものである。
[1](A)シアネートエステル樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)熱可塑性樹脂、(D)タルクおよび(E)シリカを含有するプリント配線板用樹脂組成物であって、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、(1)成分(D)タルクと成分(E)シリカの含有量の合計が35質量%〜60質量%であり、かつ(2)成分(D)タルクの含有量が5質量%〜20質量%である樹脂組成物。
[2](A)シアネートエステル樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)熱可塑性樹脂、(D)タルクおよび(E)シリカを含有するプリント配線板用樹脂組成物であって、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、(1)成分(D)タルクと成分(E)シリカの含有量の合計が45質量%〜60質量%であり、かつ(2)成分(D)タルクの含有量が5質量%〜20質量%である樹脂組成物。
[3]成分(D)タルクの平均粒子径が1.3μm以下である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]成分(C)熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂およびポリブチラール樹脂から選択される1種以上の樹脂である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[5]成分(C)熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[6]成分(D)タルクおよび成分(E)シリカが、予め表面処理されている、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]熱膨張率が44ppm以下であり、かつ環境試験前後の密着維持率が40%以上である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]多層プリント配線板の層間絶縁用である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物が支持フィルム上に層形成されてなる接着フィルム。
[10]上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物が繊維からなるシート状補強基材中に含浸されてなるプリプレグ。
[11]上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層と、当該絶縁層上に形成される導体層を備えるプリント配線板。
本発明によれば、多層プリント配線板等の回路基板の絶縁層形成に好適な樹脂組成物であって、ラミネート性に優れ、硬化して絶縁層を形成した場合に、高温高湿下の環境試験後も、導体層と絶縁層との密着性が十分であり、低熱膨張率性にも優れる樹脂組成物が提供される。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[タルク、シリカ]
本発明において使用されるタルクは、特に限定されるわけではなく、各種タルクが使用でき、焼成タルクを用いてもよい。タルクの平均粒子径の上限値は、微細配線化、絶縁信頼性の観点から、5μmが好ましく、4μmがより好ましく、3μmが更に好ましく、2.5μmが更に一層好ましく、1.8μmが殊更好ましく、1.3μmが特に好ましい。一方タルクの平均粒子径の下限値は、樹脂の粘度が高くなりすぎ、微細配線間に樹脂が埋め込まれにくくなるのを防止するという観点から、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましく、0.3μmが更に好ましく、0.4μmが更に一層好ましく、0.5μmが殊更好ましい。
市販されているタルクとしては、日本タルク(株)製D−600(平均粒子径0.6μm)、D−800(平均粒子径0.8μm)、D−1000(平均粒子径1.0μm)、SG−95S(平均粒子径1.2μm)、SG−95(平均粒子径2.5μm)、P−8(平均粒子径3.3μm)、P−6(平均粒子径4.0μm)、P−4(平均粒子径4.5μm)、P−3(平均粒子径5.0μm)、P−2(平均粒子径7.0μm)、L−1(平均粒子径5.0μm)、K−1(平均粒子径8.0μm)、L−G(平均粒子径5.0μm)等が挙げられる。上記タルクの平均粒子径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。測定サンプルは、タルクを超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、株式会社堀場製作所製LA−500等を使用することができる。
タルクの配合量としては、特に限定されないが、タルクの配合量の上限値は、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、回路基板へのラミネート性が悪化するのを防止するという観点から、20質量%が好ましく、19質量%がより好ましく、18質量%が更に好ましく、17質量%が更に一層好ましく、16質量%が殊更好ましく、15質量%が特に好ましい。一方、タルクの配合量の下限値は、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、環境試験後の導体層と絶縁層との密着強度が低下するのを防止するという観点から、5質量%が好ましく、6質量%がより好ましく、7質量%が更に好ましく、8質量%が更に一層好ましく、9質量%が殊更好ましく、10質量%が特に好ましい。
タルクとシリカの合計配合量は、特に限定されないが、タルクとシリカの合計配合量の上限値は、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、回路基板へのラミネート性が悪化するのを防止するという観点から、70質量%が好ましく、65質量%がより好ましく、62質量%が更に好ましく、60質量%が更に一層好ましく、58質量%が殊更好ましく、56質量%が特に好ましい。一方、タルクとシリカの合計配合量の下限値は、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、絶縁層の熱膨張率を低くするという観点から、35質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、42質量%が更に好ましく、45質量%が更に一層好ましく、47質量%が殊更好ましく、49質量%が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物に配合するシリカは、特には限定されず、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等の各種シリカが用いられ、特に球状の溶融シリカが望ましい。シリカの平均粒子径は特に限定されないが、微細配線形成の観点から、平均粒子径5μm以下が好ましく、特に0.1μm〜1.0μmであるのが好ましい。平均粒子径が小さすぎると、樹脂の粘度が高くなりすぎ、微細配線間に樹脂がフローしにくくなり、5.0μmを超えると、微細配線間、導体層間の絶縁信頼性が低下する傾向がある。
本発明に使用するタルクおよびシリカは、表面処理剤で表面処理してその耐湿性や分散性を向上させたものが好ましい。表面処理剤としては、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。アミノシラン系カップリング剤としては、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。エポキシシラン系カップリング剤としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好ましい。メルカプトシラン系カップリング剤としては、メルカトプロピルトリメトキシシラン、メルカトプロピルトリエトキシシランが好ましい。シラン系カップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシランが好ましい。オルガノシラザン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザンが好ましい。チタネート系カップリング剤としては、ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートが好ましい。
[シアネートエステル樹脂]
本発明において使用されるシアネートエステル樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型等)シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型等)シアネートエステル樹脂およびこれらが一部トリアジン化したプレポリマー等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。シアネートエステル樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは500〜4,500であり、より好ましくは600〜3,000である。
シアネートエステル樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニル)メタン、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー等が挙げられる。
市販されているシアネートエステル樹脂としては、下式(2)で表されるフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、PT30、シアネート当量124)、下式(3)で表されるビスフェノールAジシアネートの一部または全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン(株)製、BA230、シアネート当量232)、ジシクロペンタジエン構造含有シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、DT−4000)等が挙げられる。
Figure 0005381764
[式中、nは平均値として任意の数を示す。]
Figure 0005381764
樹脂組成物中のシアネートエステル樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、シアネートエステル樹脂の含有量の上限値は、導体層と絶縁層との密着強度が低下するのを防止するという観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、30質量%が更に好ましい。一方で、シアネートエステル樹脂の含有量の下限値は、樹脂組成物の耐熱性が低下するのを防止し、絶縁層の熱膨張率が増加するのを防止するという観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、15質量%が更に好ましい。
[エポキシ樹脂]
本発明において使用されるエポキシ樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。市販されているエポキシ樹脂としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、大日本インキ化学工業(株)製「HP4032」および「HP4032D](ナフタレン型2官能エポキシ樹脂)、大日本インキ化学工業(株)製「HP4700」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、東都化成(株)製「ESN−475V」および「ESN−185V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、「NC3100」および「NC3000」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、東都化成(株)製GK3207(ビフェニル型エポキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX8800」(アントラセン骨格含有型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、好ましくは5〜60質量%であり、より好ましくは10〜50質量%であり、更に好ましくは15〜40質量%である。エポキシ樹脂の含有量が少なすぎると、後述する硬化した組成物表面の粗化処理に際して粗化ムラが発生しやすくなる傾向にある。エポキシ樹脂の含有量が多すぎると、相対的にシアネートエステル樹脂の含有量が減少するため、絶縁層の熱膨張率が増大する傾向がある。
シアネートエステル樹脂のシアネート当量と、エポキシ樹脂のエポキシ当量との比は、好ましくは1:0.4〜1:2であり、より好ましくは1:0.5〜1:1.5である。当量比が上記範囲外であると、後述する湿式粗化工程において絶縁層表面の低粗度化とメッキにより形成した導体層と絶縁層との密着強度との両立が困難となる傾向にある。
[熱可塑性樹脂]
本発明に使用される熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱可塑性樹脂としては、回路基板へのラミネート性が悪化するのを防止するという観点から、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂としては、特にポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−Cおよび6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズおよびBMシリーズ等が挙げられる。フェノキシ樹脂の具体例としては、東都化成(株)製FX280およびFX293、ジャパンエポキシレジン(株)製YX8100、YX6954、YL6974、YL7482、YL7553、YL6794、YL7213およびYL7290等が挙げられる。ポリビニルアセタール樹脂はガラス転移温度が80℃以上のものが特に好ましい。ここでいう「ガラス転移温度」はJIS K 7197に記載の方法に従って決定される。なお、ガラス転移温度が分解温度よりも高く、実際にはガラス転移温度が観測されない場合には、分解温度を本発明におけるガラス転移温度とみなすことができる。なお、分解温度とは、JIS K 7120に記載の方法に従って測定したときの質量減少率が5%となる温度で定義される。
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、5,000〜200,000の範囲であるのが好ましく、10,000〜150,000の範囲であるのがより好ましく、15,000〜100,000の範囲であるのが更に好ましく、20,000〜80,000の範囲であるのが更に一層好ましい。この範囲よりも小さいとフィルム成型能や機械強度向上の効果が十分発揮されない傾向にあり、この範囲よりも大きいとシアネートエステル樹脂及びエポキシ樹脂との相溶性が低下し、絶縁層表面の粗化処理後の粗度が増大する傾向にある。
なお本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは2〜15質量%であり、更に好ましくは3〜10質量%である。熱可塑性樹脂の含有量が少なすぎるとフィルム成型能や機械強度向上の効果が発揮されない傾向となり、また環境試験後の密着維持の効果が発揮されない傾向となり、多すぎると後述の湿式粗化工程後の絶縁層表面の粗度が増大する傾向にある。
本発明の樹脂組成物は(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分および(E)成分を含み、ラミネート性に優れ、硬化して絶縁層を形成した場合に、高温高湿下の環境試験後も、導体層と絶縁層との密着性が十分であり、低熱膨張率性にも優れる樹脂組成物を提供することができる。
本発明の樹脂組成物の硬化物の熱膨張率は、後述する<熱膨張率CTE(coefficient of thermal expansion)の測定及び評価>に記載の測定方法により把握することができる。
本発明の樹脂組成物の硬化物の熱膨張率は、44ppm以下が好ましく、42ppm以下がより好ましく、40ppm以下が更に好ましく、38ppm以下が更に一層好ましく、36ppm以下が殊更好ましく、34ppm以下が特に好ましい。なお、当該熱膨張率の下限値についてもできるだけ低いほうがよく、30ppmが好ましく、25ppmがより好ましく、20ppmが更に好ましく、10ppmが更に一層好ましく、4ppmが殊更好ましい。
本発明の樹脂組成物から形成される絶縁層と導体層との環境試験前後の密着維持率は、後述する<導体層の密着強度(ピール強度)の測定及び評価>に記載の測定方法により把握することができる。
本発明の樹脂組成物から形成される絶縁層と導体層との環境試験前後の密着維持率は、40%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましく、55%以上が更に一層好ましく、60%以上が殊更好ましく、65%以上が特に好ましく、70%以上がとりわけ好ましい。なお、当該密着維持率の上限値についてもできるだけ高いほうがよく、80%が好ましく、82%がより好ましく、84%が更に好ましく、86%が更に一層好ましく、90%が殊更好ましく、100%が特に好ましい。
[有機金属化合物]
本発明の樹脂組成物には、硬化促進の観点から、更に有機金属化合物を添加することができる。有機金属化合物としては、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅化合物;亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛(II)等の有機亜鉛化合物;コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト化合物;ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル化合物;鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄化合物等が挙げられる。有機金属化合物の添加量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、有機金属化合物の金属含有量として、25〜500ppm、より好ましくは40〜200ppmの範囲であるのが好ましい。25ppm未満であると、低粗度で高ピール強度な導体層の形成が困難となるし、500ppmを超えると、樹脂組成物の保存安定性、絶縁性に問題が発生する傾向となる。
[ゴム粒子]
本発明の樹脂組成物には、密着性向上の観点から、ゴム粒子をさらに添加することができる。本発明において使用され得るゴム粒子は、例えば、当該樹脂組成物のワニスを調製する際に使用する有機溶剤にも溶解せず、必須成分であるシアネートエステル樹脂やエポキシ樹脂等とも相溶しないものである。従って、該ゴム粒子は、本発明の樹脂組成物のワニス中では分散状態で存在する。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム成分の分子量を有機溶剤や樹脂に溶解しないレベルまで大きくし、粒子状とすることで調製される。
本発明で使用され得るゴム粒子の好ましい例としては、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子等が挙げられる。
コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のもの等が挙げられる。ガラス状ポリマー層は、例えば、メタクリル酸メチルの重合物等で構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)等で構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N(商品名、ガンツ化成(株)製)、メタブレンKW−4426(商品名、三菱レイヨン(株)製)が挙げられる。
架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(平均粒子径0.5μm、JSR(株)製)等が挙げられる。
架橋スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(平均粒子径0.5μm、JSR(株)製)等が挙げられる。
アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒子径0.1μm)、W450A(平均粒子径0.2μm)(三菱レイヨン(株)製)等が挙げられる。
配合するゴム粒子の平均粒子径は、好ましくは0.005〜1μmの範囲であり、より好ましくは0.2〜0.6μmの範囲である。本発明で使用されるゴム粒子の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤にゴム粒子を超音波等により均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(FPAR−1000;大塚電子(株)製)を用いて、ゴム粒子の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。
ゴム粒子の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1〜10質量%であり、より好ましくは2〜5質量%である。
[難燃剤]
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で難燃剤を含有しても良い。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。
有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のホスフィン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140およびTIBP、北興化学工業(株)製のPPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、東都化成(株)製のFX289、FX310等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂等が挙げられる。
有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルミド化合物、大塚化学(株)製のSPB100およびSPE100、(株)伏見製作所製FP−series等のホスファゼン化合物等が挙げられる。
金属水酸化物としては、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)製のB−30、B−325、B−315、B−308、B−303およびUFH−20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。
[他の成分]
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤;オルベン、ベントン等の増粘剤;シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤;イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シラン系カップリング剤等の密着性付与剤;イミダゾール系、アミン系等の硬化促進剤;フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、必須成分であるシアネートエステル樹脂、エポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、タルク、シリカ、必要に応じて硬化促進剤、硬化触媒、ゴム粒子やその他の成分を、回転ミキサー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、接着フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、多層プリント配線板の製造において絶縁層を形成するために好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で回路基板に塗布後、硬化させて絶縁層を形成することもできるが、工業的には一般に、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料の形態で用いるのが好ましい。樹脂組成物の軟化点は、シート状積層材料のラミネート性の観点から40〜150℃が好ましい。
[接着フィルム]
本発明の接着フィルムは、当業者に公知の方法、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて、支持体である支持フィルムに塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
該有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ類;ブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。有機溶剤は2種以上を組みわせて用いてもよい。
有機溶剤を乾燥除去する条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量は10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下となるように乾燥させるのが好ましい。ワニス中の有機溶剤量、有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることにより、有機溶剤の含有量が10質量%以下の樹脂組成物層が形成される。当業者であれば、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
接着フィルムにおいて形成される樹脂組成物層の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層は10〜100μmの厚さを有するのが好ましい。
本発明における支持フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリイミド等からなるフィルム、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔等を挙げることができる。なお、支持フィルム及び後述する保護フィルムには、マット処理、コロナ処理の他、離型処理が施してあってもよい。
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。
樹脂組成物層の支持フィルムが密着していない面には、支持フィルムに準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、1〜40μmが好ましい。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって貯蔵することもできる。
[接着フィルムを用いた多層プリント配線板]
次に、上記のようにして製造した接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法の一例を説明する。
まず、接着フィルムを、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面または両面にラミネートする。回路基板に用いられる基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっているものも、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅マイクロエッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
上記ラミネートにおいて、接着フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて接着フィルム及び回路基板をプレヒートし、接着フィルムを加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。本発明の接着フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネートの条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
真空ラミネートは、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
また、減圧下、加熱及び加圧を行う積層工程は、一般の真空ホットプレス機を用いて行うことも可能である。例えば、加熱されたSUS板等の金属板を支持体層側からプレスすることにより行うことができる。
プレス条件は、減圧度を通常1×10−2MPa以下、好ましくは1×10−3MPa以下の減圧下とする。加熱及び加圧は、1段階で行うことも出来るが、樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。例えば、1段階目のプレスを、温度が70〜150℃、圧力が1〜15kgf/cmの範囲、2段階目のプレスを、温度が150〜200℃、圧力が1〜40kgf/cmの範囲で行うのが好ましい。各段階の時間は30〜120分で行うのが好ましい。市販されている真空ホットプレス機としては、例えば、MNPC−V−750−5−200((株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
接着フィルムを回路基板にラミネートした後、室温付近に冷却してから、支持フィルムを剥離する場合は剥離し、熱硬化することにより回路基板に絶縁層を形成することができる。熱硬化の条件は、樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量等に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃〜220℃で20分〜180分、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。
硬化前に支持フィルムを剥離しなかった場合は、絶縁層を形成した後に剥離する。次いで必要により、回路基板上に形成された絶縁層に穴開けを行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけは、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけが最も一般的な方法である。
次いで、乾式メッキ又は湿式メッキにより絶縁層上に導体層を形成する。乾式メッキとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。なお、湿式メッキの場合は、予め、硬化した樹脂組成物層(絶縁層)の表面を湿式粗化処理する。湿式粗化処理とは、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理し、凸凹のアンカーを形成する処理である。酸化剤としては、特に過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性過マンガン酸水溶液)が好ましく用いられる。粗化処理に引き続いて、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法等を用いることができる。
このようにして作製された導体層表面を粗化する。導体層表面の粗化は、導体層に接する樹脂との密着性を高める効果を持つ。導体層を粗化するには、有機酸系マイクロエッチング剤CZ−8100、CZ−8101、CZ−5480等を用いることが好ましい。なお、本発明のプリント配線板用樹脂組成物を用いることにより、導体層表面の粗化の程度に係わらず、従来の樹脂組成物よりも密着性が向上するため、低熱膨張率、ラミネート性及び環境試験後の導体層との密着強度等の性能のバランスの取れた絶縁層が形成される。
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱して半硬化させることにより製造することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物が繊維からなるシート状補強基材に含浸した状態となるプリプレグとすることができる。繊維からなるシート状補強基材としては、例えば、ガラスクロスやアラミド繊維等のプリプレグ用繊維として常用されている繊維からなるものを用いることができる。
ホットメルト法は、樹脂を、有機溶剤に溶解することなく、該樹脂との剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状補強基材にラミネートする、あるいは樹脂を、有機溶剤に溶解することなく、ダイコーターによりシート状補強基材に直接塗工する等して、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、接着フィルムと同様にして樹脂を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、このワニスにシート状補強基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状補強基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。
[プリプレグを用いた多層プリント配線板]
次に、上記のようにして製造したプリプレグを用いて多層プリント配線板を製造する方法の一例を説明する。回路基板に本発明のプリプレグを1枚あるいは必要により複数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートで挟み、加圧・加熱条件下でプレス積層する。加圧・加熱条件は、好ましくは、圧力が5〜40kgf/cm(49×10〜392×10N/m)、温度が120〜200℃で20〜100分である。また接着フィルムと同様に、プリプレグを真空ラミネート法により回路基板にラミネートした後、加熱硬化することも可能である。その後、上記で記載した方法と同様にして、硬化したプリプレグ表面を上述のように粗化した後、導体層をメッキにより形成して多層プリント配線板を製造することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量約232、不揮発分75質量%のメチルエチルケトン(以下、MEKと略す)溶液)30質量部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量約124)を10質量部、MEK10質量部と共に攪拌混合し、ナフトール型エポキシ樹脂として東都化成(株)製「ESN−475V」(下記一般式(1)で表される。エポキシ当量約340の不揮発分65質量%のMEK溶液)40質量部、さらに液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」、エポキシ当量約185)8質量部、フェノキシ樹脂溶液(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」、重量平均分子量40000、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンとの混合溶液)20質量部、コバルト(II)アセチルアセトナート(Co(acac)、東京化成(株)製)の1質量%のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液4質量部、タルク(日本タルク(株)製「D−800」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.8μm)6質量部、および球形シリカ((株)アドマテックス製「SO−C2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)42質量部を混合後、MEK20質量部を添加し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物ワニスを作製した。
次に、かかる樹脂組成物ワニスをポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm、以下PETフィルムと略す)上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、80〜120℃(平均100℃)で6分間乾燥した(樹脂組成物層中の残留溶媒量:約1.5質量%)。次いで、樹脂組成物層の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の接着フィルムを幅507mmにスリットし、507×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
Figure 0005381764
(nは平均値として1〜6の数を示し、Xはグリシジル基又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、炭化水素基/グリシジル基の比率は0.05〜2.0である。)
[実施例2]
実施例1のD800を10質量部、SO−C2を38質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[実施例3]
実施例1のD800を12質量部、SO−C2を36質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[実施例4]
実施例1のD800を16質量部、SO−C2を32質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[実施例5]
実施例1のD800を18質量部、SO−C2を30質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[実施例6]
実施例1のD800を22質量部、SO−C2を26質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[実施例7]
実施例1のD800を24質量部、SO−C2を24質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[実施例8]
実施例1のD800を11質量部、SO−C2を28質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[実施例9]
実施例1のD800を15質量部、SO−C2を57質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[実施例10]
実施例1のD800を18質量部、SO−C2を90質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[実施例11]
実施例1のD800を8質量部、SO−C2を66質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[実施例12]
実施例1のD800を22質量部、SO−C2を50質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[実施例13]
実施例1のD800の代わりにSG−95(アミノシランで表面処理したもの、平均粒子径2.5μm)を15質量部、SO−C2を57質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[比較例1]
実施例1のD800を用いずに、SO−C2を48質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[比較例2]
実施例1のD800を4質量部、SO−C2を45質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[比較例3]
実施例1のD800を30質量部、SO−C2を18質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[比較例4]
実施例1のD800を48質量部、SO−C2を用いない以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[比較例5]
実施例1のD800を10質量部、SO−C2を21質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[比較例6]
実施例1のD800を21質量部、SO−C2を115質量部とした以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
[比較例7]
実施例1のD800を13質量部、SO−C2を54質量部とし、YX6954を配合しない以外は、実施例1と同様にして、接着フィルムを得た。
<密着強度測定サンプルの調製>
(1)積層板の下地処理
導体層と絶縁層との密着強度を評価するため、内層回路を形成した両面銅張積層板[銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.3mm、松下電工(株)製R5715ES]の両面をメック(株)製メックエッチボンドCZ−8100に浸漬して回路表面に粗化処理(Ra値=1μm)をおこなった。
(2)接着フィルムのラミネート
実施例1〜10及び比較例1〜6で作成した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP-500(名機(株)製商品名)を用いて、積層板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
(3)銅箔の下地処理
三井金属鉱山(株)製3EC−III(電界銅箔、35μm)の光沢面をメック(株)製メックエッチボンドCZ−8100に浸漬して銅箔表面に粗化処理(Ra値=1μm)をおこなった。
(4)銅箔のラミネートと絶縁層形成
上記(2)においてラミネートされた接着フィルムからPETフィルムを剥離し、(3)で処理した銅箔の処理面を樹脂組成物層側にし、(2)と同様の条件で、銅箔を回路基板両面に形成された樹脂組成物層上にラミネートを行った。190℃、90分の硬化条件で樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成することで、サンプルを作製した。
<熱膨張率CTE(coefficient of thermal expansion)の測定及び評価>
実施例および比較例において、支持体にフッ素樹脂系離型剤(ETFE)処理したPET(三菱樹脂(株)製「フルオロージュRL50KSE」を用いた以外は同様にして、各実施例、比較例と同じ樹脂組成物層を有する接着フィルムを得た。得られた接着フィルムを190℃で90分間加熱することで熱硬化させ、支持体を剥離することによりシート状の硬化物を得た。その硬化物を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置Thermo Plus TMA8310((株)リガク製)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの平均線熱膨張率(ppm)を算出した。CTEの値が35ppm未満の場合を「◎」とし、35ppm以上40ppm未満の場合を「○」とし、40ppm以上45ppm未満の場合を「△」とし、45ppm以上の場合を「×」と評価した。得られた結果を表1、2に示す。
<ラミネート性の評価>
実施例および比較例のフィルムを上記(3)に記載したラミネート条件で、回路基板にラミネートを行い、外観の検査によって、以下のように判定を行った。結果を表1、2に示す。
○:回路基板の回路部分にボイドがなく、樹脂が十分フローしている。
×:回路基板の回路基板にボイドが発生しており、樹脂のフローが不足している。
<導体層との密着強度(ピール強度)の測定及び評価>
上記(4)記載のサンプル510×340mmを150×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、幅10mm、長さ100mmの部分に切り込みをいれ、銅箔の一端を剥がしてつかみ具で掴み、インストロン万能試験機を用いて室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重を測定し、環境試験前のピール強度とした。
さらに、同一サンプルを高度加速寿命試験装置PM422(楠本化成(株)製)にて、130℃、85%RHの条件で100時間の加速環境試験の後に、同様の方法で引き剥がし強さを測定し、環境試験後のピール強度とした。「環境試験後のピール強度÷環境試験前のピール強度×100」の値を密着維持率(%)として、加速環境試験前後のピール強度の比較を行った。密着維持率が75%以上の場合を「◎」とし、75%未満50%以上の場合を「○」とし、50%未満40%以上の場合を「△」とし、40%未満の場合を「×」と評価した。結果を表1、2に示す。
Figure 0005381764
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表1、2の結果より、実施例においては、低熱膨張率、ラミネート性及び環境試験後の密着強度にいずれにも優れ、これらの性能のバランスがとれたものとなっている。一方、比較例1、2はタルク含量が少ないため、環境試験後の密着強度の低下が著しくなっている。また比較例3、4はタルクの含量が多すぎるため、ラミネート性が悪化している。さらに、比較例5はタルクとシリカの総含有量が少ないため、熱膨張率が増大する結果となっている。また比較例6はタルクとシリカの総含有量が多すぎるため、ラミネート性が悪化している。比較例7は、無機フィラー比率及びタルク比率が同じである実施例9、13と比較すると、必須成分である熱可塑性樹脂が配合されていないために、環境試験前後のピール強度の密着維持率が低くなってしまっている。また、フェノキシ樹脂が配合されていないことにより、粘度が低くなりすぎ、ラミネート性も悪化している。
本発明の樹脂組成物は、導体層と絶縁層との密着が良好で、環境試験後の密着の低下の少ない、接着フィルム、プリプレグ、多層プリント配線板を提供できるようになった。更にこれらを搭載した、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、テレビ、等の電気製品や、自動二輪車、自動車、電車、船舶、航空機、等の乗物も提供できるようになった。

Claims (11)

  1. (A)シアネートエステル樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)熱可塑性樹脂、(D)タルクおよび(E)シリカを含有するプリント配線板用樹脂組成物であって、
    樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、
    (1)成分(D)タルクと成分(E)シリカの含有量の合計が35質量%〜60質量%であり、かつ(2)成分(D)タルクの含有量が5質量%〜20質量%である樹脂組成物。
  2. (A)シアネートエステル樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)熱可塑性樹脂、(D)タルクおよび(E)シリカを含有するプリント配線板用樹脂組成物であって、
    樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、
    (1)成分(D)タルクと成分(E)シリカの含有量の合計が45質量%〜60質量%であり、かつ(2)成分(D)タルクの含有量が5質量%〜20質量%である樹脂組成物。
  3. 成分(D)タルクの平均粒子径が1.3μm以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 成分(C)熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂およびポリブチラール樹脂から選択される1種以上の高分子樹脂である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  5. 成分(C)熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  6. 成分(D)タルクおよび成分(E)シリカが、予め表面処理されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 熱膨張率が44ppm以下であり、かつ環境試験前後の密着維持率が40%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. 多層プリント配線板の層間絶縁用である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物が支持フィルム上に層形成されてなる接着フィルム。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物が繊維からなるシート状補強基材中に含浸されてなるプリプレグ。
  11. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層と、当該絶縁層上に形成される導体層を備えるプリント配線板。
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