JP5384809B2 - プリプレグ及び積層板 - Google Patents

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本発明は、プリント配線板用の難燃性を有する樹脂組成物によるプリプレグ、それを用いた積層板、金属張り積層板に関する。
電子機器や通信機、パーソナルコンピューター等に広く用いられている半導体の高集積化・高機能化・高密度実装化はとどまるところを知らず、その進展はますます加速している。特に近年では携帯電話に代表されるモバイル機器の技術が急進し、ユピキタス社会の実現に向けた技術革新が著しい。
半導体パッケージもQFPからBGA・CSPのようなエリア実装型に展開し、さらにMCP・SIP等の高機能型の出現ように、その形態は多種多様になりつつある。そのため、以前にも増して半導体パッケージ用積層板に対する高信頼性の要求が強まっている。
従来、プリント配線板用の積層板としては、エポキシ樹脂をジシアンジアミドで硬化させるFR−4タイプの積層板が広く使用されているが、この手法では高耐熱性の要求に対応するには限界があった。耐熱性に優れるプリント配線板用樹脂としては、シアン酸エステル樹脂が知られており、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂と、他の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂との樹脂組成物をベースにして、近年、半導体パッケージ用積層板に幅広く使用されている。
このビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂は、電気特性、機械特性、耐薬品性、接着性などに優れた特性を有しているが、吸水性や吸湿耐熱性の面では、過酷な条件下では不十分な場合があり、更なる特性の向上を目指して、他の構造を有するシアン酸エステル樹脂の検討が行われている。
他の構造のシアン酸エステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアン酸エステル樹脂の事例が多く見受けられる(例えば特許文献1参照)が、フェノールノボラック型シアン酸エステル樹脂は、シアネート基当量が小さく、その剛直な骨格構造から、硬化時に未反応シアネート基が多く残存し易く、金属箔との密着性、吸水率や吸湿耐熱性などの特性において満足できるものではなかった。
また、ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂を用いる検討も行われており(例えば特許文献2参照)、樹脂骨格の剛直構造の特性を生かし耐熱性を維持するとともに、反応阻害要因を低減させて硬化性を高め、吸水性、吸湿耐熱性に優れる特性を有する樹脂組成物が得られている。
電子機器等に使用されるプリント配線板用積層板の難燃性は、従来、臭素系難燃剤を併用する処方が用いられている(例えば特許文献3参照)が、昨今の環境問題の高まりに呼応して、ハロゲン系化合物を使用しない樹脂組成物が求められている。ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂は、非ハロゲン系エポキシ樹脂と無機充填剤との組み合わせによる樹脂組成物で優れた難燃性が得られているが、さらに高度な難燃性を得るためには、リン化合物の配合や無機フィラーとして水酸化アルミニウム等の水和金属酸化物が必要であった。しかし、リン化合物は燃焼時にホスフィンなどの有毒化合物が発生する恐れがあり、無機フィラー難燃剤として知られている水酸化アルミニウムは、水酸化アルミニウムの一般構造であるギブサイトの添加量が多い場合、アルカリや酸に対する耐薬品性が著しく劣る傾向にあるため、プリント配線板の製造工程におけるエッチング・デスミア・メッキ処理などの過酷なアルカリ性・酸性条件では、絶縁層の信頼性が不十分なものであった。
さらに半導体パッケージの組み立て工程では、ベーキング・ワイヤーボンディング・ダイアタッチ・モールド樹脂硬化等の工程で120〜200℃の熱加工が行われ、半田ボール接続では、環境問題から、従来の鉛半田に替えて無鉛半田になることでリフロー温度が20〜30℃上昇するため、半導体パッケージ用積層板に求められる高耐熱性の要求は留まることがない。難燃剤としてギブサイトを用いた積層板では、ギブサイトの脱水開始温度が200℃をやや超えた付近であることから、200℃以上の高温加工では耐熱性が劣ることがあり、高い信頼性が要求される半導体パッケージ用積層板において、耐熱性に優れたハロゲン系化合物を使用しない積層板の開発が望まれていた。
特開平11-124433号公報 特開2007-45984号公報 特開平11-021452号公報
本発明は、ハロゲン化合物やリン化合物や水和金属酸化物を使用せずに高度の難燃性を保持し、耐薬品性に優れ、ガラス転移温度が高く、優れた半田耐熱性を有するプリント配線板材料用プリプレグ及び積層板を提供する事を課題とする。
本発明者らは、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂と非ハロゲン系エポキシ樹脂に、マレイミド化合物と難燃助剤であるシリコーンパウダー、無機充填剤を配合することで、高度な難燃性が得られることを確認した。さらに無機充填剤には難燃剤である水酸化アルミニウムの代わりにケイ酸化合物を配合しても高度な難燃性を保持できることを見出し、耐薬品性と耐熱性に優れたハロゲンフリー系の難燃性樹脂組成物が得られることができたことから、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、一般式(1)で示されるシアン酸エステル樹脂(A)、非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)、マレイミド化合物(C)、シリコーンパウダー(D)、ならびにケイ酸化合物(E)を含み、水和金属酸化物を含まない樹脂組成物を基材(F)と組み合わせたプリプレグであり、これらプリプレグを硬化して得られる積層板または金属箔張り積層板である。
Figure 0005384809
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは平均値として1から10である。)

本発明によるプリプレグの硬化物は、耐薬品性に優れ、耐熱性が優れており、ハロゲン系難燃材を使用することなく高い難燃性を有することから、高い耐薬品性を要求される過酷条件下で製造され、高耐熱性・高信頼性を要求される高機能化対応のプリント配線板用の材料に好適であり、工業的な実用性は極めて高いものである。
本発明において用いられる一般式(1)で示されるシアン酸エステル樹脂(A)は、α-ナフトールあるいはβ-ナフトール等のナフトール類とp-キシリレングリコール、α,α’-ジメトキシ-p-キシレン、1,4-ジ(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル樹脂とシアン酸とを縮合させて得られるものであり、その製法は特に限定されず、シアン酸エステル合成として現存するいかなる方法で製造してもよい。具体的に例示すると、一般式(2)で示されるナフトールアラルキル樹脂とハロゲン化シアンを不活性有機溶媒中で、塩基性化合物存在下反応させることにより得ることができる。また、同様なナフトールアラルキル樹脂と塩基性化合物による塩を、水を含有する溶液中にて形成させ、その後、ハロゲン化シアンと2相系界面反応を行い、合成する方法を採ることもできる。
Figure 0005384809
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは平均値として1から10である。)
本発明において使用される非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)とは、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、意図的に分子骨格内にハロゲン原子を有しない化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエンなどの2重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられ、特に難燃性を向上させるためにはアラルキルノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。アラルキルノボラック型エポキシ樹脂とは式(3)で表せるものであり、フェノールフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)は、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することが可能である。
Figure 0005384809
G:グリシジル基
(式中、Ar1・Ar2はフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の単環あるいは多環の芳香族炭化水素が置換基になったアリール基を示し、Rx・Ryは水素原子またはアルキル基、アリール基を示し、mは1〜5までの整数を示し、nは1から50までの整数を示す。)

シアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)は、樹脂組成物中のシアン酸エステル樹脂(A)のシアネート基数と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)のエポキシ基数の比(CN/Ep)が0.7〜2.5で配合することが好ましい。CN/Epが0.7未満では積層板の難燃性が低下し、2.5を超える配合では硬化性などが低下する場合がある。
本発明において用いられるマレイミド化合物(C)は1分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。その具体例としては、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、これらマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーなどが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。より好適なものとしては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンが挙げられる。本発明におけるマレイミド化合物(C)の配合量は特に限定されないが、配合量が少なすぎると、得られる積層板の難燃性が低下し、多くなりすぎると、吸水率が高くなるため、シアン酸エステル樹脂(A)とマレイミド化合物(C)の合計配合量の5〜75重量%の範囲が好ましく、10〜70重量%の範囲が特に好適である。
本発明において用いられるシリコーンパウダー(D)は、シロキサン結合が三次元網目状に架橋したポリメチルシルセスキオキサンを微粉末化したもの、ビニル基含有ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンの付加重合物を微粉末化したもの、ビニル基含有ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンの付加重合物による微粉末の表面にシロキサン結合が三次元網目状に架橋したポリメチルシルセスキオキサンを被服させたもの、無機担持体表面にシロキサン結合が三次元網目状に架橋したポリメチルシルセスキオキサンを被服させたもの等である。シリコーンパウダーは燃焼時間を遅らせ、難燃効果を高める難燃助剤としての作用があり、シリコーンパウダーをシアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)、マレイミド化合物(C)の合計配合量100重量部に対して5重量部以上配合すると、他に難燃剤を配合しなくても顕著な難燃効果があることがわかった。シリコーンパウダーの配合量としては、シアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B) とマレイミド化合物(C)の合計配合量100重量部に対して5〜30重量部であり、好適には5〜25重量部である。
本発明において用いられるケイ酸化合物(E)とは、SiO四面体基本単位が種々の結合様式で連結して縮合ケイ酸基を作り、これにアルカリ金属、アルカリ土類金属などの様々な陽イオンが組み合わさっているものであり、一般に充填材として公知のケイ酸化合物が使用できる。その具体例としては、シリカ、タルク、焼成タルク、ケイ酸塩ガラス、マイカ、ムライト、コージライトなどが挙げられる。ケイ酸化合物(E)の平均粒子径(D50)は特に限定されないが、分散性を考慮すると平均粒子径(D50)が0.2〜5μmであることが好ましい。ケイ酸化合物(E)の配合量は、シアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)、 マレイミド化合物(C)の合計配合量100重量部に対して50〜350重量部であり、ケイ酸化合物(E)の配合量が多すぎると成形性が低下することがあることから50〜300重量部が特に好ましい。
本発明において使用される基材(F)には、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを使用することが出来る。例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、NEガラス、Tガラス等のガラス繊維、あるいはガラス以外の無機繊維、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどの有機繊維が挙げられ、目的とする用途や性能により適宜選択できる。形状としては織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマットなどが挙げられる。厚みについては、特に制限はされないが、通常は0.01〜0.3mm程度を使用する。これら基材のなかでも強度と吸水性の点でガラス繊維による基材が好ましい。
使用するケイ酸化合物(E)に関して、シランカップリング剤や湿潤分散剤を併用することも可能である。これらのシランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン系、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系、フェニルシラン系などが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。また湿潤分散剤とは、塗料用に使用されている分散安定剤であれば、特に限定されるものではない。例えばビッグケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk-110、111、180、BYK-W996、W9010、W903等の酸基を有する共重合体ベースの湿潤分散剤などが挙げられる。
本発明のプリプレグの樹脂組成物には、所期の特性が損なわれない範囲において、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びそのオリゴマー、エラストマー類などの種々の高分子化合物、他の難燃性の化合物、添加剤などの併用も可能である。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、難燃性の化合物では、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素含有化合物、オキサジン環含有化合物などが挙げられる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤等、所望に応じて適宜組み合わせて使用することも可能である。
本発明のプリプレグの樹脂組成物には、必要に応じ、硬化速度を適宜調節するために硬化促進剤を併用することも可能である。これらは、シアン酸エステル樹脂(A)や非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)の硬化促進剤として一般に使用されるものであれば、特に限定されるものではない。これらの具体例としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル等の有機金属塩類、イミダゾール類及びその誘導体、第3級アミン等が挙げられる。
本発明のプリプレグの製造方法は、シアン酸エステル樹脂(A)、非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)、マレイミド化合物(C)、シリコーンパウダー(D)、ケイ酸化合物(E)を必須成分として含有する樹脂組成物と基材(F)とを組み合わせてプリプレグを製造する方法であれば、特に限定されない。例えば、上記樹脂組成物を含む樹脂ワニスを基材(F)に含浸または塗布させた後、100〜200℃の乾燥機中で、1〜60分加熱させる方法などにより半硬化させ、プリプレグを製造する方法などが挙げられる。基材(F)に対する樹脂組成物の付着量は、プリプレグの樹脂含有量(ケイ酸化合物を含む)で20〜90重量%の範囲が好ましい。
前記樹脂ワニスには、必要に応じて、有機溶剤を使用することが可能である。有機溶剤としては、シアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)、マレイミド化合物(C)との混合物が相溶するものであれば、特に限定されるものではない。具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド類等が挙げられる。
本発明の積層板は、前述のプリプレグを用いて積層成形したものである。具体的には前述のプリプレグを1枚あるいは複数枚を重ね、所望によりその片面もしくは両面に、銅やアルミニウムなどの金属箔を配置した構成で、積層成形することにより製造する。使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されない。積層成形条件としては、通常のプリント配線板用積層板および多層板の手法が適用できる。例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機などを使用し、温度は100〜300℃、圧力は2〜100kgf/cm2、加熱時間は0.05〜5時間の範囲が一般的である。また、必要に応じて150〜300℃の温度で後硬化を行っても良い。
以下に合成例、実施例、比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(合成例1)α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂の合成-1
Figure 0005384809
式(4)で表されるα−ナフトールアラルキル樹脂(SN485、OH基当量:219g/eq.軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製) 103g(OH基0.47モル)をクロロホルム 500mlに溶解後、トリエチルアミン 0.7モルを添加混合し、これを 0.93モルの塩化シアンのクロロホルム溶液 300gに、-10℃で1.5時間かけて滴下し、30分撹拌した後、更に 0.1モルのトリエチルアミンとクロロホルム 30gの混合溶液を滴下し、30分撹拌して反応を完結させた。生成するトリエチルアミンの塩酸塩を濾別した後、得られた濾液を 0.1N塩酸 500mlで洗浄した後、水 500mlでの洗浄を4回繰り返した。ついで、クロロホルム/水混合溶液のクロロホルム層を分液処理により抽出、クロロホルム溶液に硫酸ナトリウムを添加し脱水処理を行った。硫酸ナトリウムを濾別した後、75℃でエバポレートし、更に90℃で減圧脱気することにより、褐色固形の式(5)で表されるα−ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂を得た。赤外吸収スペクトルにおいて、2264cm-1付近にシアン酸エステル基の吸収を確認。また、13C-NMR及び1H-NMRにより、構造を同定し、OH基からOCN基への転化率は、99%以上であった。
Figure 0005384809
(合成例2)α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂の合成-2
α−ナフトールアラルキル樹脂(SN485、OH基当量:219g/eq.軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製)の代わりにα−ナフトールアラルキル樹脂(SN4105、OH基当量:226g/eq.軟化点:105℃、新日鐵化学(株)製) 102g(OH基0.45モル)を使用し、塩化シアンの使用量を0.90モルとした以外は合成法1と同様の手法にて合成した。
(実施例1)
ビス(3-エチル-5-メチル-4マレイミドフェニル)メタン(BMI-70、ケイアイ化成製)37重量部と合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)55重量部、フェノールフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(ザイロック型エポキシ樹脂,エポキシ当量:240g/eq.、日本化薬(株)製)41重量部、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂(HP-4032D、エポキシ当量:140g/eq.、大日本インキ化学工業(株)製)4重量部をメチルエチルケトンで溶解混合し、更にシリコーンパウダー(X52-1621、信越化学工業(株)製)14重量部、焼成タルク(BST-200L、日本タルク(株)製)165重量部、オクチル酸亜鉛 0.03重量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ 0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で 4分間加熱乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
(実施例2)
ビス(3-エチル-5-メチル-4マレイミドフェニル)メタン(BMI-70、ケイアイ化成製)28重量部と合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)42重量部、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH,エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)52重量部、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂(HP-4032D、エポキシ当量:140g/eq.、大日本インキ化学工業(株)製)6重量部、シランカップリング剤(Z6040、東レ・ダウコーニング製)4重量部、湿潤分散剤(BYK-W996、ビッグケミージャパン(株)製)4重量部をメチルエチルケトンで溶解混合し、更にシリコーンパウダー(X52-1621、信越化学工業(株)製)7重量部、ガラスビーズ(EMB10、ポッターズ・バロティーニ(株)製)385重量部、オクチル酸亜鉛 0.03重量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ 0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で 4分間加熱乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
(実施例3)
ビス(3-エチル-5-メチル-4マレイミドフェニル)メタン(BMI-70、ケイアイ化成製)57重量部と合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)38重量部、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH,エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)54重量部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(EPICLON N-770、エポキシ当量:190 g/eq.,大日本インキ化学工業(株)製) 8重量部、シランカップリング剤(Z6040、東レ・ダウコーニング製)4重量部、湿潤分散剤(BYK-W903、ビッグケミージャパン(株)製)5重量部をメチルエチルケトンで溶解混合し、更にシリコーンパウダー(トスパール130、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 製)31重量部、モリブデン酸亜鉛をタルクにコートしたもの(ケムガード911C、モリブデン酸亜鉛担持:10重量%、シャーウィン・ウイリアムズ・ケミカルズ製)5重量部、焼成タルク(BST-200L、日本タルク(株)製)188重量部、ガラスビーズ(EMB10、ポッターズ・バロティーニ(株)製)8重量部、オクチル酸亜鉛 0.03重量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ 0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で 4分間加熱乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
(実施例4)
ビス(3-エチル-5-メチル-4マレイミドフェニル)メタン(BMI-70、ケイアイ化成製)17重量部と合成例2で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)40重量部、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH,エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)60重量部、湿潤分散剤(BYK-W903、ビッグケミージャパン(株)製)4重量部をメチルエチルケトンで溶解混合し、更にシリコーンパウダー(トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 製)12重量部、焼成タルク(BST-200L、日本タルク(株)製)111重量部、球状溶融シリカ(SC2050MB、アドマテックス(株)製)140重量部、オクチル酸亜鉛 0.03重量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ 0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で 4分間加熱乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
(実施例5)
ビス(3-エチル-5-メチル-4マレイミドフェニル)メタン(BMI-70、ケイアイ化成製)15重量部と合成例2で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)60重量部、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH,エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)35重量部、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂(HP-4032D、エポキシ当量:140g/eq.、大日本インキ化学工業(株)製)5重量部、湿潤分散剤(BYK-W996、ビッグケミージャパン(株)製)1.5重量部をメチルエチルケトンで溶解混合し、更にシリコーンパウダー(トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 製)28重量部、モリブデン酸亜鉛をタルクにコートしたもの(ケムガード911C、モリブデン酸亜鉛担持:10重量%、シャーウィン・ウイリアムズ・ケミカルズ製)3.5重量部、球状溶融シリカ(SC2050MB、アドマテックス(株)製)63重量部、オクチル酸亜鉛 0.02重量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ 0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で 4分間加熱乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
(比較例1)
実施例1において、ビス(3-エチル-5-メチル-4マレイミドフェニル)メタン(BMI-70、ケイアイ化成製)37重量部を除いた以外は実施例1と同様にプリプレグを得た。
(比較例2)
実施例1において、シリコーンパウダー(X52-1621、信越化学工業(株)製)14重量部を除いた以外は実施例1と同様にプリプレグを得た。
(比較例3)
比較例2において、焼成タルク(BST-200L、日本タルク(株)製)165重量部の代わりに、ギブサイト(水酸化アルミニウムCL303、住友化学(株)製)165重量部を使用する以外は、比較例2と同様にプリプレグを得た。
(比較例4)
比較例1において、シリコーンパウダー(X52-1621、信越化学工業(株)製)14重量部を除き、焼成タルク(BST-200L、日本タルク(株)製)165重量部の代わりに、球状溶融シリカ(SC2050MB、アドマテックス(株)製)150重量部を使用する以外は比較例1と同様にプリプレグを得た。
(比較例5)
実施例3において、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)38重量部の代わりに、2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(BT2070,シアネート当量:139g/eq.、三菱ガス化学(株)製)38重量部を使用する以外は、実施例3と同様にプリプレグを得た。
(比較例6)
実施例5において、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)60重量部の代わりに、フェノールノボラック型シアネート(PT-30,シアネート当量:126g/eq.、Lonza社製)60重量部を使用する以外は、実施例5と同様にプリプレグを得た。
金属箔張り積層板1の作成
実施例1〜5および比較例1〜6で得られたプリプレグを、それぞれ4枚重ねて18μm厚の電解銅箔(3EC-III、三井金属鉱業(株)製)を上下に配置し、圧力30 kgf/cm2、温度 220℃で120分間の積層成形を行い、絶縁層厚さ 0.4mmの銅張り積層板を得た。
金属箔張り積層板2の作成
実施例1〜5および比較例1〜6で得られたプリプレグを、それぞれ8枚重ねて18μm厚の電解銅箔(3EC-III、三井金属鉱業(株)製)を上下に配置し、圧力30 kgf/cm2、温度 220℃で120分間の積層成形を行い、絶縁層厚さ 0.8mmの銅張り積層板を得た。
金属箔張り積層板3の作成
実施例1〜5および比較例1〜6で得られたプリプレグを、それぞれ2枚重ねて18μmの電解銅箔(3EC-III、三井金属鉱業(株)製)を上下に配置し、圧力30 kgf/cm2、温度 220℃で120分間の積層成形を行い、絶縁層厚さ 0.2mmの銅張り積層板を得た。
得られた金属箔張り積層板1から3を用いて、、ガラス転移温度、はんだ耐熱性、吸湿耐熱性、難燃性、耐薬品性を評価した結果を表1に示す。
ガラス転移温度・はんだ耐熱性・吸湿耐熱性の評価は、金属箔張り積層板1をエッチングにより銅箔を除去した後、下記方法で行った。
ガラス転移温度:JIS C6481に従い、動的粘弾性分析装置(TAインスツルメント製)で測定した。
はんだ耐熱性:5cmx5cmのサンプルを115℃で20時間乾燥した後、288℃の半田浴に浮かし、ふくれるまでの時間を計測した。
表1のはんだ耐熱性の記号は、○:30分以上ふくれ無し ×:30分未満でふくれ発生 である。
吸湿耐熱性:5cmx5cmのサンプルを115℃で20時間乾燥した後、プレッシャークッカー試験器(平山製作所製 PC-3型)で121℃、2気圧で4時間処理後、260℃の半田浴に60秒浸漬し、膨れ有無を目視観察した。
表1の吸湿耐熱性の記号は、○:異常なし △:ミーズリング発生 ×:ふくれ発生 である。
難燃性の評価は、金属箔張り積層板1と2をエッチングにより銅箔を除去した後、下記方法で行った。
燃焼試験:UL94垂直燃焼試験法に準拠して評価した。
表1の難燃性1は金属張り積層板1、難燃性2は金属張り積層板2を用いた結果である。
耐アルカリ性と耐酸性の評価は、金属箔張り積層板3をエッチングにより銅箔を除去した後、下記方法で行った。
耐アルカリ性:5cmx5cmのサンプルを(1)115℃で20時間乾燥し、(2)70℃の1N 水酸化ナトリウム水溶液に60分浸漬後、(3)115℃で20時間乾燥した後の重量変化率を測定した。(1)後のサンプル重量をW1、(3)後のサンプル重量をW2とし、重量変化率を以下の式で算出した。
重量変化率[wt%] = (W1-W2)x100/W1
耐酸性:5cmx5cmのサンプルを(4)115℃で20時間乾燥し、(5)60℃の4N 塩酸水溶液に60分浸漬後、(6)115℃で20時間乾燥した後の重量変化率を測定した。(4)後のサンプル重量をW3、(6)後のサンプル重量をW4とし、重量変化率を以下の式で算出した。
重量変化率[wt%] = (W3-W4)x100/W3
表1の耐アルカリ性と耐酸性の記号は、○:重量変化0.1wt%未満 ×:重量変化0.1wt%以上 である。
Figure 0005384809
(表1)は、本発明による実施例1〜5が、ビス(3-エチル-5-メチル-4マレイミドフェニル)メタンが配合されていない比較例1、シリコーンパウダーを用いていない比較例2、ビス(3-エチル-5-メチル-4マレイミドフェニル)メタンとシリコーンパウダーを用いていない比較例4、2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパンのプレポリマーを用いた比較例5より難燃性に優れ、ギブサイトを難燃剤として用いた比較例3より耐薬品性とはんだ耐熱性に優れ、フェノールノボラック型シアネートを用いた比較例6より吸湿耐熱性に優れていることを示した。よって本発明により得られるプリプレグによる積層板は、耐薬品性、耐熱性に優れ、リン化合物とハロゲン系難燃剤を用いることなく難燃性がUL94V−0を達成できることを確認した。

Claims (5)

  1. 一般式(1)で示されるシアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)、マレイミド化合物(C)、シリコーンパウダー(D)、ケイ酸化合物(E)を含み、水和金属酸化物を含まない樹脂組成物と基材(F)からなるプリプレグ。
    Figure 0005384809
    (式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは平均値として1から10である。)
  2. 前記シリコーンパウダー(D)がシアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)マレイミド化合物(C)の合計配合量100重量部に対して、5〜30重量部である請求項1記載のプリプレグ。
  3. 前記ケイ酸化合物(E)の配合量がシアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)、 マレイミド化合物(C)の合計配合量100重量部に対して、50〜350重量部である請求項1又は2に記載のプリプレグ。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載のプリプレグを硬化して得られる積層板。
  5. 請求項1から3のいずれかに記載のプリプレグと金属箔とを積層して硬化して得られる金属箔張り積層板
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