以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
[第一の実施形態]
図1に通気見切材1の第一の実施形態を示す。この通気見切材1は、例えば金属製の板材に折り曲げ加工や打ち抜き加工等が施されることで形成されたり、アルミニウム押出成形品に孔あけ加工等が施されたりすることで形成される。以下、通気見切材1が外壁材2の屋根3に臨む上端部に取り付けられた状態を想定して、本実施形態に係る通気見切材1の構造を説明する。尚、外壁材2の屋根3に臨む上端部とは、外壁材2の最も屋根3に近接する端縁部分をいい、外壁に複数の外壁材2が設置される場合には、この複数の外壁材2で構成される外壁面の上部における屋根3に沿った縁部に配置される外壁材2の端縁部分をいう。
この通気見切材1は外壁材2の上端面の上方に配置される基体12と、この基体12の屋外側端部から下方に向けて垂下して外壁材2の上端部の屋外側外面に沿って配置される外垂下体13と、基体12の屋内側端部から下方に垂下して外壁材2の上端部の屋内側外面に沿って配置される内垂下体14とから構成される。外垂下体13と内垂下体14との間の幅寸法は、外壁材2の厚み寸法と同一又はこの厚み寸法よりもやや大きく形成される。この通気見切材1は外壁材2の横方向に沿って長い長尺物である。
内垂下体14は平板状に形成される。一方、基体12と外垂下体13の各内部は互いに連通する中空状に形成されている。この基体12と外垂下体13の内部の中空部分が通気路8となる。
通気見切材1の屋外側外面には通気見切材1の長手方向(横方向)に沿って長い外開口6が形成されている。この外開口6を介して、通気見切材1の屋外側の外部と通気路8とが連通している。一方、通気見切材1の基体12の屋内側外面には内開口7が形成されている。この内開口7は通気見切材1の長手方向に沿って長い長孔状であり、且つ通気見切材1の長手方向に沿って複数の内開口7が列設されている。この内開口7を介して、通気見切材1の屋外側の外部と通気路8とが連通している。従って、外開口6と内開口7は通気路8を介して連通している。
内開口7は外開口6よりも上方に位置するように形成される。内開口7と外開口6の高低差は適宜設定されるが、内開口7の下端縁と外開口6の上端縁との間の高低差が25〜70mmの範囲であることが好ましい。また、この内開口7は、基体12内における通気路8の内面の底部よりも上方の位置に形成されている。
通気路8内には通気見切材1の長手方向に沿って水返し9(9a)が設けられている。この水返し9aは、通気路8内において、外垂下体13の屋内側内面の上端縁から上方に向かって延出している。水返し9aの上端縁は、外開口6の上端縁よりも上方に突出している。水返し9aの突出寸法は適宜設定されるが、水返し9aの上端と外開口6の上端縁との高低差が25〜70mmの範囲であることが好ましい。また水返し9aは上端側ほど屋外側に近づくように湾曲し、水返し9aの上端縁は通気路8の屋外側内面に臨むと共に、前記上端縁と内面との間には隙間が形成される。この水返し9aの上端縁からは下方に向けて、通気路8の屋外側内面と対向する補助返し片15が延出している。
また通気路8の上側内面には水返し9として上水返し16が設けられている。上水返し16は水返し9aの上端縁よりも屋内側に、通気見切材1の長手方向に沿って設けられ、下方に向かって垂下するように形成される。
また、外垂下体13の下面には、水抜き孔17が形成されている。この水抜き孔17は通気見切材1の長手方向に沿って長い長孔状であり、且つ通気見切材1の長手方向に沿って複数の水抜き孔17が列設されている。
また基体12の外部の上面には、突出片18が設けられている。この突出片18は通気見切材1の長手方向に沿って設けられ、上方に向かって突出するように形成されている。
[第二の実施形態]
図2に通気見切材1の第二の実施形態を示す。この通気見切材1は、例えば金属製の板材に折り曲げ加工や打ち抜き加工等が施されることで形成されたり、アルミニウム押出成形品に孔あけ加工等が施されたりすることで形成される。以下、本実施形態においても、通気見切材1が外壁材2の屋根3に臨む上端部に取り付けられた状態を想定して、通気見切材1の構造を説明する。
この通気見切材1は外壁材2の上端面の上方に配置される基体12と、この基体12の屋外側端部から下方に向けて垂下して外壁材2の上端部の屋外側外面に沿って配置される外垂下体13と、基体12の屋内側端部から下方に垂下して外壁材2の上端部の屋内側外面に沿って配置される内垂下体14とから構成される。外垂下体13と内垂下体14との間の幅寸法は、外壁材2の厚み寸法と略同一又はこの厚み寸法よりもやや大きく形成される。この通気見切材1は外壁材2の横方向に沿って長い長尺物である。
内垂下体14は平板状に形成される。一方、基体12と外垂下体13の各内部は互いに連通する中空状に形成されている。この基体12と外垂下体13の内部の中空部分が通気路8となる。外垂下体13の下端部の屋内側の外面には、下方側と屋内側とに開口する凹所25が通気見切材1の長手方向(横方向)に沿って形成されている。
通気見切材1の屋外側外面には通気見切材1の長手方向(横方向)に沿って長い外開口6が形成されている。外開口6は外垂下体13に屋外側に向けて開口するように形成されている。この外開口6を介して、通気見切材1の屋外側の外部と通気路8とが連通している。外開口6の上縁及び下縁からは、屋外側斜め下方に向けてルーバー状の外傾斜片19,20がそれぞれ延出している。またこの外開口6の下縁からは、屋内側斜め上方に向けて内傾斜片21が延出している。下側の外傾斜片20と内傾斜片21とが一体となって排出用傾斜片22を構成している。この排出用傾斜片22の上面には、外開口6に向けて下り傾斜する傾斜面30が形成される。前記内傾斜片21によって、内傾斜片21と外垂下体13の下端との間の空間が通気路8から分断されている。
一方、通気見切材1の基体12の屋内側外面には内開口7が形成されている。この内開口7は通気見切材1の長手方向に沿って長い長孔状であり、且つ通気見切材1の長手方向に沿って複数の内開口7が列設されている。この内開口7を介して、通気見切材1の屋外側の外部と通気路8とが連通している。従って、外開口6と内開口7は通気路8を介して連通している。
内開口7は外開口6よりも上方に位置するように形成される。内開口7と外開口6の高低差は適宜設定されるが、第一の実施形態と同様に内開口7の下端縁と外開口6の上端縁との間の高低差が25〜70mmの範囲であることが好ましい。また、この内開口7は、基体12内における通気路8の内面の底部よりも上方の位置に形成されている。
通気路8内には通気見切材1の長手方向に沿って水返し9(9a)が設けられている。この水返し9aは、外垂下体13の屋内側内面の上端縁から直上に向かって延出している。水返し9aの上端縁は、外開口6の上端縁よりも上方に突出している。水返し9aの突出寸法は適宜設定されるが、水返し9aの上端と外開口6の上端縁との高低差が25〜70mmの範囲であることが好ましい。水返し9aの上端縁と通気路8の上側内面との間には隙間が形成される。この水返し9aの下部の屋外側外面に、上記内傾斜片21の屋内側端縁が接続している。この水返し9aの上端縁からは屋外側に向けて、通気路8の上側内面と対向する補助返し片15が延出している。
また基体12の外部の上面には、突出片18が設けられている。この突出片18は通気見切材1の長手方向に沿って設けられ、上方に向かって突出するように形成されている。
[第三の実施形態]
図3に通気見切材1の第三の実施形態を示す。この通気見切材1は、例えば金属製の板材に折り曲げ加工や打ち抜き加工等が施されることで形成されたり、アルミニウム押出成形品に孔あけ加工等が施されたりすることで形成される。以下、本実施形態においても、通気見切材1が外壁材2の屋根3に臨む上端部に取り付けられた状態を想定して、通気見切材1の構造を説明する。
この通気見切材1は外壁材2の上端面の上方に配置される基体12と、この基体12の屋外側端部から下方に向けて垂下して外壁材2の上端部の屋外側外面に沿って配置される外垂下体13と、基体12の屋内側端部から下方に垂下して外壁材2の上端部の屋内側外面に沿って配置される内垂下体14とから構成される。外垂下体13と内垂下体14との間の幅寸法は、外壁材2の厚み寸法と略同一又はこの厚み寸法よりもやや大きく形成される。また外垂下体13の上下寸法は例えば70mmに形成される。この通気見切材1は外壁材2の横方向に沿って長い長尺物である。
内垂下体14は平板状に形成される。一方、基体12と外垂下体13の各内部は互いに連通する中空状に形成されている。この基体12と外垂下体13の内部の中空部分が通気路8となる。
通気見切材1の屋外側外面には通気見切材1の長手方向(横方向)に沿って長い外開口6が形成されている。外開口6は外垂下体13の下端部で屋外側に向けて開口するように形成されている。外開口6の上下の開口幅は例えば5mmに形成される。この外開口6を介して、通気見切材1の屋外側の外部と通気路8とが連通している。また、外垂下体13の下端部は、屋内側から外開口6の下縁に向けて下り傾斜するように形成され、これにより、外垂下体13内には通気路8の内面の底部に、屋内側から外開口6の下縁に向けて下り傾斜する傾斜面30が形成されて、外開口6の下端と傾斜面30の屋外側端縁の位置が一致するようになっていると共に、外垂下体13の下端部の屋内側の外面に下方側と屋内側とに開口する凹所25が通気見切材1の長手方向(横方向)に沿って形成されている。
一方、通気見切材1の基体12の屋内側外面には内開口7が形成されている。この内開口7は例えば直径8mmの丸孔状であり、且つ通気見切材1の長手方向に沿って所定の間隔(例えば40mm間隔の定ピッチ)をあけて複数の内開口7が列設されている。この内開口7を介して、通気見切材1の屋外側の外部と通気路8とが連通している。従って、外開口6と内開口7は通気路8を介して連通している。
内開口7は外開口6よりも上方に位置するように形成される。内開口7と外開口6の高低差は適宜設定されるが、第一の実施形態と同様に内開口7の下端縁と外開口6の上端縁との間の高低差が25〜70mmの範囲であることが好ましい。また、基体12内には、通気路8の内面の底部に、前記内開口7の下端へ向けて屋外側から通気空間5側へ下り傾斜する傾斜面31が形成され、内開口7の下端と傾斜面31の屋外側端縁の位置が一致するようになっている。
通気路8内には、外開口6の上方に、屋外側の内面から屋内側に向けて通気路8を横切る方向に突出する水返し9(9b)が形成されている。この水返し9bは、通気路8内の外開口6から上方に向かう経路を横切るように形成されている。本実施形態では水返し9bは外垂下体13内の上部に形成されている。また、水返し9bは、先端縁側に向けて若干下り傾斜するように形成されている。
また基体12の外部の上面には、突出片18が設けられている。この突出片18は通気見切材1の長手方向に沿って設けられ、上方に向かって突出するように形成されている。
この通気見切材1は、例えば図4に示すように、金属板材を折り曲げ成形することで形成された上部材34と下部材35とを組み合わせることで作製することができる。
上部材34には、屋内側で下方に垂下する上垂下片37と、上垂下片37の上端縁から屋外側へ延出する上横片38と、上横片38の屋外側端縁から下方に垂下する外垂下片39とが形成されている。上垂下片37の下端部には内開口7が形成されている。また、上横片38には、その一部が上方に向けて逆U字状に突出するように折り曲げ成形されることで、突出片18が形成されている。また、外垂下片39の下端が屋内側へ向けて折り返し成形されることで、この外垂下片39の屋内側に添って折り返し片40が形成されている。折り返し片40の上端からは屋内側へ向けて下り傾斜するように延出する水返し9bが形成されている。
一方、下部材35には、屋内側で下方に垂下する下垂下片48と、下垂下片48の上端縁から屋外側へ延出すると共に屋内側へ向けて下り傾斜する下横片41と、下横片41の屋外側端縁から下方に垂下する内垂下片42と、内垂下片42の下端から屋外側へ向けて下り傾斜するように延出する下片43とが形成されている。下垂下片48の下端縁と下片43の先端縁は共に折り返し成形されている。
この上部材34と下部材35とが、連結部材36を介して組み合わされることで、通気見切材1が構成される。このとき、上部材34の上横片38の下方に下部材35の下横片41を間隔をあけて配置し、上部材34の上垂下片37の下方に上部材34の下垂下片48を、内開口7の下端位置と下垂下片48の上端位置とが重なるようにして配置し、上部材34の外垂下片39の屋内側に下部材35の内垂下片42を間隔をあけて配置する。これにより、外垂下片39、上横片38、上垂下片37、下横片41、内垂下片42及び下片43によって、基体1及び外垂下体13が構成され、この外垂下片39、上横片38、上垂下片37、下横片41、内垂下片42及び下片43で囲まれる空間が、通気路8となる。また下垂下片48によって、内垂下体14が構成される。また、外垂下片39の下端と下片43の先端との間には間隙が形成され、この間隙が外開口6となる。また、下横片41の上面が傾斜面31となり、下片43の上面が傾斜面30となると共に下面が凹所25となる。
連結部材36は、図4に示されるようにスペーサ片44とその上下両端縁からそれぞれ延出する連結片45を有する断面コ字状に形成されており、例えば金属板材を折り曲げ成形することにより形成される。各連結片45にはビス等の固定具47が挿通される固定孔46が形成されていると共に、上部材34の上横片38と下部材35の下横片41にも、前記連結片45の固定孔46に対応する固定孔46が形成されている。この連結部材36を、上部材34の上横片38と、下部材35の下横片41との間に介在させると共に、前記各固定孔46にビス等の固定具47を挿通してこの固定具47で各連結片45をそれぞれ上横片38と下横片41に固定することで、下部材35の下横片41との間隔をスペーサ片44で規制すると共に上部材34と下部材35とを連結することができる。このとき複数の連結部材36を用い、この連結部材36で上部材34と下部材35とを、その長手方向に沿った複数箇所で連結することができる。このため、連結部材36は通気路8内に配置されながらこの通気路8を閉塞することなく上部材34と下部材35とを連結することができる。
このようにして通気見切材1を構成すると、金属板を折り曲げ成形して得られる部材を組み合わせて通気見切材1を構成することができ、通気見切材1を低コストで容易に得ることができるようになる。
[第四の実施形態]
図5に通気見切材1の第四の実施形態を示す。この通気見切材1は、第三の実施形態において、更に通気見切材1の長手方向に沿って水返し9(9a)が設けられている。この水返し9aは、通気路8内において、外垂下体13の屋内側内面の上端縁から上方に向かって延出している。水返し9aの上端縁は、外開口6の上端縁よりも上方に突出している。水返し9aの突出寸法は適宜設定されるが、第一の実施形態と同様に水返し9aの上端と外開口6の上端縁との高低差が25〜70mmの範囲であることが好ましい。この水返し9aの上端縁からは屋外側に向けて、補助返し片15が延出している。補助返し片15の先端縁は通気路8の屋外側内面に臨むと共に、前記上端縁と内面との間には隙間が形成される。水返し9bは、前記水返し9aの補助返し片15の先端縁よりも下方に形成されている。
また、外垂下体13には、外開口6の下端から下方に延出する水切片33が形成されている。
他の構成は第三の実施形態と同一である。
[建築物の外壁構造]
第一の実施形態に係る通気見切材1は、図1に示すように、次のようにして軒側の外壁材2の屋根3に臨む上端部に取り付けられる。
下地板や防水シート等で構成される壁下地4の屋外側外面に、上下方向に長い複数の部材(縦胴縁23)が、壁下地4に沿って間隔をあけて設置される。この縦胴縁23に対して、外壁材2が設置される。このため外壁材2と壁下地4との間に縦胴縁23が介在し、隣り合う縦胴縁23同士の間で、外壁材2と壁下地4との間に通気空間5が形成される。外壁材2と縦胴縁23は、共に軒天井材24よりも下方に設置される。前記壁下地4は、改装前の建築物における既存の外壁材であっても良く、この場合、壁下地4の屋外側に設置される外壁材2は建築物の改装のための新たな外壁材2である。
この外壁材2の屋根3に臨む上端部(軒天井材24と対向する端部)に通気見切材1が取り付けられる。通気見切材1の基体12は外壁材2の上端面の上方に配置され、且つ外垂下体13と内垂下体14とがそれぞれ外壁材2の屋外側外面と屋内側外面に沿って配置される。更に突出片18の上端は軒天井材24の下側外面に当接している。基体12の下側外面と外壁材2の上端面との間にはシーリング材10が介装されている。このシーリング材10は、外壁材2に取り付けられる前の通気見切材1の基体12の下側外面に予め取り付けられていても良い。基体12の上側外面と軒天井材24の下側外面との間にもシーリング材10が介装されている。この上側のシーリング材10は屋外側から前記基体12の上側外面と軒天井材24の下側外面との隙間に押し入れられることでこの隙間に充填されるが、このシーリング材10は屋内側で突出片18によって支持されるため、充填作業が容易である。勿論、このシーリング材10も、外壁材2に取り付けられる前の通気見切材1に予め取り付けられていても良い。尚、シーリング材10としては、例えば一般に湿式系と称される変性シリコン等から成るコーキング剤、乾式系と称される発泡樹脂や発泡ゴムなどからなるガスケットなどが使用される。
このように通気見切材1が取り付けられると、通気見切材1の外開口6が屋外に開口すると共に、内開口7が壁下地4と外壁材2との間の通気空間5に開口し、外開口6、通気路8及び内開口7を通じて、前記通気空間5が屋外と連通する。このため、通気空間5と外気との間の通気性が確保され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が抑制される(図1中の矢印参照)。
また、外開口6から雨水等が通気路8内に浸入した場合、この水は外開口6から外垂下体13内に落ち込む。また風等により雨水等が外開口6から通気路8内に吹き込んでも、内開口7は外開口6よりも上方に位置するため水は内開口7まで到達しにくくなる。更に外開口6と内開口7との間には水返し9aが設けられているので、水の流入が水返し9aによって遮られ、この水は水返し9aに沿って外垂下体13内に落ち込む。この水返し9aに付着した水が更に風等により吹き上げられても、この水は水返し9aの上端で補助返し片15によって遮られ、この補助返し片15から外垂下体13内に落ち込むことになる。更に水が通気路8の屋外側内面と補助返し片15との隙間から吹き込んでも、この水は上返し片16によって遮蔽される。このため、屋外から通気空間5への水の流入が防止され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が更に抑制される。
また、通気路8内に水が溜まっている状態で強風時に気流が外開口6から通気路8内に勢いよく流れ込んで通気路8内の圧力が通気空間5内の圧力よりも高くなると、圧力差により通気路8から通気空間5へ向けて強い気流が発生し、この気流に乗って通気路8内の水が内開口7を介して通気空間5に流れ込むおそれがあるが、本実施形態では外開口6から通気路8内に流れ込んだ気流は水返し9a及び上水返し16によって遮蔽されるため、通気路8内の水返し9a及び上水返し16を介した外開口6側の圧力が上昇しても、内開口7側の圧力の上昇は抑制される。このため、通気路8内の内開口7側と通気空間5との間に圧力差が生じることが抑制され、通気路8内から通気空間5への水の流入が防止されて、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が更に抑制される。
また、通気路8内に浸入した水の大部分は外垂下体13に落ち込むが、この水は水抜き孔17を介して屋外に排出されるため、通気路8内には水が溜まりにくくなる。このため、通気路8内で蒸発した水分が内開口7を介して通気空間5に流入することが抑制され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が更に抑制される。
また、通気見切材1と外壁材2の上端部との間にはシーリング材10が介装しているため、この通気見切材1と外壁材2との間への水の浸入も防止され、更に通気見切材1と軒天井材24との間にもシーリング材10が介装しているため通気見切材1と軒天井材24との間への水の浸入も防止される。このため、通気空間5への水の流入が更に抑制され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が更に抑制される。
第二の実施形態に係る通気見切材1も、図2に示すように、第一の実施形態の場合と同様に、軒側の外壁材2の屋根3に臨む上端部に取り付けられる。この場合も通気見切材1の基体12は外壁材2の上端面の上方に配置され、且つ外垂下体13と内垂下体14とがそれぞれ外壁材2の屋外側外面と屋内側外面に沿って配置される。更に突出片18の上端は軒天井材24の下側外面に当接している。外垂下体13の凹所25にはシーリング材10が充填され、これにより通気見切材1と外壁材2との間にシーリング材10が介装されている。このシーリング材10は通気見切材1が外壁材2の上端に取り付けられた状態で屋外側から凹所25へ押し入られることでこの凹所25に充填されるため、充填作業が容易である。勿論、外壁材2に取り付けられる前の通気見切材1の凹所25に予めシーリング材10が充填されていても良い。また、基体12の上側外面と軒天井材24の下側外面との間にもシーリング材10が介装されている。この上側のシーリング材10は屋外側から前記基体12の上側外面と軒天井材24の下側外面との隙間に押し入れられることでこの隙間に充填されるが、このシーリング材10は屋内側で突出片18によって支持されるため、充填作業が容易である。勿論、このシーリング材10も、外壁材2に取り付けられる前の通気見切材1に予め取り付けられていても良い。
このように通気見切材1が取り付けられると、通気見切材1の外開口6が屋外に開口すると共に、内開口7が壁下地4と外壁材2との間の通気空間5に開口し、外開口6、通気路8及び内開口7を通じて、前記通気空間5が屋外と連通する。このため、通気空間5と外気との間の通気性が確保され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が抑制される(図2中の矢印参照)。
また、外開口6から通気路8内への雨水等の流入は、上側の外傾斜片19によって抑制される。外開口6から雨水等が通気路8内に浸入した場合は、この水は排出用傾斜片22の上面の傾斜面30に沿って屋外へ排出される。また風等により雨水等が外開口6から通気路8内に吹き込んでも、内開口7は外開口6よりも上方に位置するため水は内開口7まで到達しにくなる。更に外開口6と内開口7との間には水返し9aが設けられているので、水の流入が水返し9aによって遮られ、この水は水返し9aに沿って排出用傾斜片22へ到り、排出用傾斜片22の上面の傾斜面30に沿って屋外へ排出される。この水返し9aに付着した水が更に風等により吹き上げられても、この水は水返し9aの上端で補助返し片15によって遮られ、同様に排出用傾斜片22の上面の傾斜面30に沿って屋外へ排出される。このため、屋外から通気空間5への水の流入が防止され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が更に抑制される。
また、本実施形態では外開口6から通気路8内に流れ込んだ気流は水返し9aによって遮蔽されるため、通気路8内の水返し9aを介した外開口6側の圧力が上昇しても、内開口7側の圧力の上昇は抑制される。このため、通気路8内の内開口7側と通気空間5との間に圧力差が生じることが抑制され、通気路8内から通気空間5への水の流入が防止されて、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が更に抑制される。
また、通気路8内に浸入した水の大部分は排出用傾斜片22の上面の傾斜面30に沿って屋外へ排出されるため、通気路8内には水が溜まりにくくなる。このため、通気路8内で蒸発した水分が内開口7を介して通気空間5に流入することが抑制され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が更に抑制される。
また、通気見切材1と外壁材2の上端部との間にはシーリング材10が介装しているため、この通気見切材1と外壁材2との間への水の浸入も防止され、更に通気見切材1と軒天井材24との間にもシーリング材10が介装しているため通気見切材1と軒天井材24との間への水の浸入も防止される。このため、通気空間5への水の流入が更に抑制され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が更に抑制される。
第三の実施形態に係る通気見切材1も、図3に示すように、第一の実施形態の場合と同様に、軒側の外壁材2の屋根3に臨む上端部に取り付けられる。この場合も通気見切材1の基体12は外壁材2の上端面の上方に配置され、且つ外垂下体13と内垂下体14とがそれぞれ外壁材2の屋外側外面と屋内側外面に沿って配置される。更に突出片18の上端は軒天井材24の下側外面に当接している。外垂下体13の凹所25にはシーリング材10が充填され、これにより通気見切材1と外壁材2との間にシーリング材10が介装されている。このシーリング材10は通気見切材1が外壁材2の上端に取り付けられた状態で屋外側から凹所25へ押し入られることでこの凹所25に充填されるため、充填作業が容易である。勿論、外壁材2に取り付けられる前の通気見切材1の凹所25に予めシーリング材10が充填されていても良い。また、本実施形態では基体12の上側外面と軒天井材24の下側外面との間にはシーリング材10は介装されていないが、第一及び第二の実施形態と同様にシーリング材10を介装してもよい。
このように通気見切材1が取り付けられると、通気見切材1の外開口6が屋外に開口すると共に、内開口7が壁下地4と外壁材2との間の通気空間5に開口し、外開口6、通気路8及び内開口7を通じて、前記通気空間5が屋外と連通する。このため、通気空間5と外気との間の通気性が確保され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が抑制される(図3中の矢印参照)。
また、外開口6から雨水等が通気路8内に浸入した場合、この水は外開口6から外垂下体13内に落ち込む。また風等により雨水等が外開口6から通気路8内に吹き込んでも、内開口7は外開口6よりも上方に位置するため水は内開口7まで到達しにくくなる。更に外開口6と内開口7との間には、外開口6の上方に水返し9bが設けられているので、水の流入が水返し9bによって遮られ、この水は水返し9bから外垂下体13内に落ち込む。このため、屋外から通気空間5への水の流入が防止され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が更に抑制される。このとき、水返し9bの下面に付着した水はこの水返し9bの傾斜によって誘導されて水返し9bの先端側から落下し、また水返し9bの上面側に水が付着した場合もこの水は同様に前記傾斜によって誘導されて水返し9bの先端側から落下するため、水返し9bに付着した水が通気路8内に残留することが抑制される。
また、通気路8内に浸入した水の大部分は外垂下体13に落ち込むが、この水は外垂下体13の底部の傾斜面30の傾斜によって外開口6まで誘導され、屋外側へ排出されるため、通気路8内には水が溜まりにくくなる。このため、通気路8内で蒸発した水分が内開口7を介して通気空間5に流入することが抑制され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が更に抑制される。
また、水返し9bを越えて通気路8内の内開口7の付近まで達した僅かな水は、基体12の底部の傾斜面31の傾斜によって内開口7まで誘導され、通気空間5側へ排出される。このため、通気路8内に雨水等が溜まりにくくなり、通気見切材1に錆びなどの腐食が発生することが抑制される。この場合、通気空間5側へ排出される水は僅かであるため、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇は充分に抑制される。また外開口6から通気路8内に流れ込んだ気流は水返し9bによって遮蔽されるため、通気路8内の水返し9bを介した外開口6側の圧力が上昇しても、内開口7側の圧力の上昇は抑制される。このため、通気路8内の内開口7側と通気空間5との間に圧力差が生じることが抑制され、これにより内開口7から通気空間5側へ排出される水が壁下地4まで吹き飛ばされることが抑制されて、壁下地4に水が付着することによる腐食等の発生が抑制される。
また、通気見切材1と軒天井材24との間にもシーリング材10が介装しているため通気見切材1と軒天井材24との間への水の浸入が防止される。このため、通気空間5への水の流入が更に抑制され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が更に抑制される。
第四の実施形態に係る通気見切材1も、図5に示すように、第一の実施形態の場合と同様に、軒側の外壁材2の屋根3に臨む上端部に取り付けられる。この場合も通気見切材1の基体12は外壁材2の上端面の上方に配置され、且つ外垂下体13と内垂下体14とがそれぞれ外壁材2の屋外側外面と屋内側外面に沿って配置される。更に突出片18の上端は軒天井材24の下側外面に当接している。外垂下体13の凹所25にはシーリング材10が充填され、これにより通気見切材1と外壁材2との間にシーリング材10が介装されている。このシーリング材10は通気見切材1が外壁材2の上端に取り付けられた状態で屋外側から凹所25へ押し入られることでこの凹所25に充填されるため、充填作業が容易である。勿論、外壁材2に取り付けられる前の通気見切材1の凹所25に予めシーリング材10が充填されていても良い。また、本実施形態では基体12の上側外面と軒天井材24の下側外面との間にはシーリング材10は介装されていないが、第一及び第二の実施形態と同様にシーリング材10を介装してもよい。
このように通気見切材1が取り付けられると、通気見切材1の外開口6が屋外に開口すると共に、内開口7が壁下地4と外壁材2との間の通気空間5に開口し、外開口6、通気路8及び内開口7を通じて、前記通気空間5が屋外と連通する。このため、通気空間5と外気との間の通気性が確保され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が抑制される(図5中の矢印参照)。
また、外開口6から雨水等が通気路8内に浸入した場合、この水は外開口6から外垂下体13内に落ち込む。また風等により雨水等が外開口6から通気路8内に吹き込んでも、内開口7は外開口6よりも上方に位置するため水は内開口7まで到達しにくくなる。更に外開口6と内開口7との間には、外開口6の上方に水返し9bが設けられているので、水の流入が水返し9bによって遮られ、この水は水返し9bから外垂下体13内に落ち込む。このとき、水返し9bの下面に付着した水はこの水返し9bの傾斜によって誘導されて水返し9bの先端側から落下し、また水返し9bの上面側に水が付着した場合もこの水は同様に前記傾斜によって誘導されて水返し9bの先端側から落下するため、水返し9bに付着した水が通気路8内に残留することが抑制される。更に水が通気路8の屋外側内面と水返し9bとの隙間から吹き込んでも、この水は水返し9aによって遮蔽され、この水は水返し9aから外垂下体13内に落ち込む。この水返し9aに付着した水が更に風等により吹き上げられても、この水は水返し9aの上端で補助返し片15によって遮られ、外垂下体13内に落ち込む。このため、屋外から通気空間5への水の流入が防止され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が更に抑制される。
また、通気路8内に浸入した水の大部分は外垂下体13に落ち込むが、この水は外垂下体13の底部の傾斜面30の傾斜によって外開口6まで誘導され、屋外側へ排出されるため、通気路8内には水が溜まりにくくなる。このため、通気路8内で蒸発した水分が内開口7を介して通気空間5に流入することが抑制され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が更に抑制される。外開口6から屋外側へ排出された水は、水切片33に沿って下方に落下することになり、通気見切材1に水滴が付着して残存することが抑制されると共にこの水滴が外壁材2の外面に付着して雨筋汚れが生じるようなことが抑制される。
また、水返し9b及び水返し9aを越えて通気路8内の内開口7の付近まで達した僅かな水は、基体12の底部の傾斜面31の傾斜によって内開口7まで誘導され、通気空間5側へ排出される。このため、通気路8内に雨水等が溜まりにくくなり、通気見切材1に錆びなどの腐食が発生することが抑制される。この場合、通気空間5側へ排出される水は僅かであるため、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇は充分に抑制される。また外開口6から通気路8内に流れ込んだ気流は水返し9b及び水返し9aによって遮蔽されるため、通気路8内の水返し9b及び水返し9aを介した外開口6側の圧力が上昇しても、内開口7側の圧力の上昇は抑制される。このため、通気路8内の内開口7側と通気空間5との間に圧力差が生じることが抑制され、これにより内開口7から通気空間5側へ排出される水が壁下地4まで吹き飛ばされることが抑制されて、壁下地4に水が付着することによる腐食等の発生が抑制される。
また、通気見切材1と軒天井材24との間にはシーリング材10が介装しているため通気見切材1と軒天井材24との間への水の浸入が防止される。このため、通気空間5への水の流入が更に抑制され、壁下地4と外壁材2との間の湿気の上昇が更に抑制される。
各実施形態に係る通気見切材1は、軒側の外壁材4、妻側の外壁材4のいずれにも取り付けられる。通気見切材1が妻側の外壁材2に取り付けられる場合、通気見切材1は、妻側の壁下地4に対して縦胴縁23を介して設置された妻側の外壁材2の上端部と、屋根3の妻側の天井材(妻側の軒天井材24)との間に取り付けられる。図6に示すように、妻側の外壁が複数の外壁材4で構成される場合、複数の外壁材4のうち、屋根3に沿って配置される外壁材2の、屋根3に沿って傾斜する端縁部分が、通気見切材1が取り付けられる上端部となる。
このように妻側の外壁材2に通気見切材1が取り付けられると通気見切材1は傾斜して配置されるため、通気見切材1に水返し9aが設けられていない場合には外開口6から浸入した水が傾斜に沿って軒側に移動しながら屋内側に移動して内開口7まで到達してしまうおそれがある。しかし、第一、第二及び第四の実施形態では水返し9aを備える通気見切材1が妻側の外壁に取り付けられるため、水が内開口7まで到達することが防止される。
通気見切材1が妻側の外壁材2に取り付けられる場合、各実施形態に係る通気見切材1の軒側端部1aには、端部水抜き孔11が形成されていることが好ましい。
図7(a)は、第一の実施形態に係る通気見切材1に形成される端部水抜き孔11の一例を示す。この通気見切材1の軒側端部1aの端面では、通気路8が端面閉塞片26で閉塞されている。この端面閉塞片26に、通気路8に連通する端部水抜き孔11が形成されている。端部水抜き孔11は基体12の下端部に形成され、この端部水抜き孔11(11a)は基体12の下面に沿って長いスリット状に形成されている。また、端部水抜き孔11は外垂下体13の下端部にも形成され、この端部水抜き孔11(11b)は外垂下体13の下面に沿って長いスリット状に形成されている。
図7(b)は、第二の実施形態に係る通気見切材1に形成される端部水抜き孔11の一例を示す。この通気見切材1の軒側端部1aの端面も通気路8が端面閉塞片26で閉塞されている。この端面閉塞片26に、通気路8に連通する端部水抜き孔11が形成されている。端部水抜き孔11は基体12の下端部に形成され、この端部水抜き孔11は基体12の下面に沿って長いスリット状に形成されている。
通気見切材1が妻側の外壁材4に取り付けられる場合、通気見切材1は屋根3の傾斜に沿って斜めに傾斜するように取り付けられるため、通気路8内に僅かでも水が溜まると、この水が傾斜に沿って軒側に移動する。しかし、通気見切材1に端部水抜き孔11が形成されていると、水はこの端部水抜き孔11から屋外へ排出される。このため、通気路8内の軒側に大量の水が溜まることが防止され、この水が内開口7から通気空間5へ溢れ出したり、この水から大量の水分が蒸発して通気空間5へ流入したりすることが防止される。
また、第三及び第四の実施形態の場合には、妻側の外壁材2に取り付けられる通気見切材1の軒側端部1aが、端部水抜き孔11を有さない端面閉塞片26で閉塞されていてもよい。この場合、既に説明したとおり通気路8内の内開口7の付近まで達した僅かな雨水等は傾斜面31によって内開口7まで誘導されて通気空間5へ排出されるため、通気路8内の軒側に大量の水が溜まることが防止される。またこの場合は通気見切材1の軒先側端部から水が一気に排出されて落下するようなことがないため、この通気見切材1の軒先の下方における地面等が水によって侵食されることや、外壁に雨筋汚れが生じることが抑制される。尚、第三及び第四の実施形態の場合に、通気見切材1に端部水抜き孔11が形成されることで、通気空間5へ排出されずに通気見切材1の軒先まで到達した水を端部水抜き孔11から屋外へ排出されるようにしてもよい。