図1はこの発明の第1の実施の形態による笠木構造体の全体構造を示す概略断面図である。
尚、図は笠木構造体の短手方向断面を概略的に示すものである。図の左方向が屋外側であり、右方向が屋内側である。
図を参照して、笠木構造体1は、塀、バルコニー手摺、パラペット等の長手方向に延びる躯体40において、木材からなる頂部44を覆うように上方に設置されている。尚、躯体40の屋外側及び屋内側端部には長手方向に延びる一対の外壁下地材41a、41bが配置されている。又、一対の外壁下地材41a、41bの外方(図の左方向又は右方向であって、躯体40から換気部材3a、3bに対する方向)側には、長手方向に所定間隔で複数の胴縁42(一対の胴縁42a、42b)が配置されている。更に、一対の胴縁42a、42bの外方側には、一対のジョイナー49a、49bを介して、窯業系サイディングである一対の外壁材45a、45bが配置されている。そして、外壁下地材41a、41bと外壁材45a、45bとに挟まれる箇所であって、胴縁42a、42bが配置されていない部分は、上下方向に通気可能な通気路48a、48bとなる。通気路48a、48bは、図示しない小屋裏空間に連通しており、小屋裏空間において暖められた空気が上昇して通過可能である。
笠木構造体1は、一対の外壁材45a、45b及び躯体40の上方に設置され長手方向に延びている。又、笠木構造体1は、躯体40の頂部44を覆うように上方に設置され、短手方向断面が略M字型であって、頂部44の天面50に当接する平坦部62を備え鋼板からなる笠木ベース61と、笠木ベース61を覆うように上方に設置され、長手方向に延びる笠木カバー2とから主に構成されている。又、一対の外壁材45a、45bと笠木ベース61との間の箇所には、一対の換気部材3a、3bが設置されている。
笠木ベース61は、上述した平坦部62と、平坦部62の屋外側及び屋内側端部に接続され上方に立ち上がる一対の立ち上がり部63a、63bと、一対の立ち上がり部63a、63bの各々の上方端部に接続され外方に延びる一対の肩部64a、64bと、一対の肩部64a、64bの各々の外方側端部に接続され下方に延びる一対の垂設部65a、65bとから主に構成されている。又、肩部64a、64bはいずれも同一の仮想平面上に含まれる位置関係に設定され、屋外側から屋内側にかけて下方に傾斜するように外方に延びている。
又、平坦部62の短手方向中央箇所には、平坦部62を上下方向に貫通する穿孔68と、穿孔68の周縁に水密に接続され上方に立ち上がる周壁部69とが形成されており、穿孔68には笠木ベース61を躯体40に取り付ける固定手段に含まれるビス70が挿通されている。固定手段は更に、弾性を有し、周壁部69の外径全周に水密に嵌合し、上下方向に貫通する貫通孔71を有するプレート状の板状体である例えばエチレンプロピレンジエンゴムからなるゴム塊72と、ビス70の頭部73とゴム塊72の上面との間に設置される座金部74とを含んでおり、穿孔68及び貫通孔71にはビス70が挿通されている(図10も併せて参照)。固定手段の詳細については後述する。
次に、笠木カバー2は、屋外側から屋内側に向かって下方に傾斜して延び、上述した一対の肩部64a、64bにより支持される天板部6と、天板部6の屋外側及び屋内側端部に接続され下方に延び、その下端において内方(図の中央方向であって、換気部材3a、3bから躯体40に対する方向)への折り返し8a、8bをそれぞれ有する一対の側壁部7a、7bとから構成されている。尚、屋内側の側壁部7bには、長手方向所定間隔において、ビス等の取付具が貫通可能な複数の取付孔(図示せず)が形成されている。
次に、一対の換気部材3a、3bの各々は、内方から外方への通気経路を横断するように長手方向に延びている。通気経路の詳細については後述する。
次に、換気部材の構造について詳細に説明する。
図2は図1で示した“X”部分に含まれる換気部材の構造を示す概略拡大断面図であり、図3は図2で示したIII−IIIラインの矢視図である。
これらの図を参照して、換気部材3aは、鋼板からなる枠体20と、枠体20内に取り付けられた通気部材13とから構成されている。
枠体20は、垂直方向に延びる第1垂直部14と、第1垂直部14の上端側に接続され、外方に向かって略水平方向に延びる第1水平部15と、第1水平部15の外方側に接続され、垂直下方に延びる第2垂直部16と、第2垂直部16の下方側に接続され、第1水平部15と平行に、且つ第1垂直部14の方向に所定距離を残して延びる第2水平部17とから構成されている。尚、第2垂直部16には、長手方向に所定間隔で複数の開口18が形成されている。
又、図2でθとして示した、第1垂直部14と第1水平部15との接続角度は87°となるように設定されている。第1垂直部14は垂直方向に設置されるため、第1水平部15及び第2水平部17の各々は、外方に向かって3°下方に傾斜した状態となる。又、第2水平部17の第2垂直部16側の接続部には、長手方向に複数の排水用の水抜き孔24が形成されている。
又、第2水平部17の内方側(図2の右方向)端部23は上方に向かうように曲げられている。
通気部材13は、短手方向(幅方向)断面が矩形形状を有すると共に長手方向に延びる棒形状に形成されている。そして、通気部材13は枠体20の第1水平部15の下方面と第2水平部17の上方面との間に覆われるように取り付けられており、その外方面と第2垂直部16の内方面との間には空間31が設けられている。
又、図3で示すように、換気部材3aは、長手方向において枠体20の一方端(図3の右端)から突き出ると共に枠体20の他方端(図3の左端)から凹むように、枠体20に取り付けられている。換気部材3bも同様である。この効果については後述する。
ここで、換気部材3a及び通気部材13の詳細な構造及び効果について説明する。
図4は図2及び図3で示した通気部材の構造を示す概略斜視図である。
図を参照して、上述したように、通気部材13は幅方向断面が矩形形状を有し、長手方向においては枠体の長手方向の長さと略同一長さである棒形状を有している。具体的には、通気部材13は、その各々が凹凸断面形状を有する合成樹脂シートを複数積層した状態で熱融着によって相互に接続され一体化されている。そして、一方側面(内方面)から他方側面(外方面)へ貫通する通気孔27が多数形成されている。
この実施の形態においては、矩形断面形状の幅方向の長さAは20mmであり、高さに相当する長さBは19mmとなっている。尚、このような通気部材13は、特許第2610342号において開示されている棟カバー材と基本的に同一構造である。これによって、一定条件下にあっては、通気部材13は通気孔27を介しての通気を可能にすると共に、通気孔27を介しての雨水や虫等の侵入を阻止する通気機能及び防水機能を有する。そのため、通気部材13が含まれる換気部材や笠木構造体の通気機能及び防水機能の信頼性が向上する。又、換気部材や笠木構造体の軽量化及びコスト低減に寄与する。
次に、この発明の第1の実施の形態による笠木構造体1を構成する工程について説明する。
図5は図1で示した笠木構造体の第1の組立工程を示す概略図である。
図を参照して、まず、上述したように鋼板をプレス成形してなる枠体20に覆われるように通気部材13を取り付け、図の(1)に示す換気部材3を準備する。
次に、図の(2)を参照して、外壁下地材41の外面に長手方向に所定間隔で複数の胴縁42を配置し、胴縁42の各々の上端部を除いた部分を外壁下地材41に取り付ける。すると、胴縁42はその上端部のみが外壁下地材41に取り付けられていないため、図の(2)の実線の矢印で示すように胴縁42の上端部を外方側に引っ張ることによって、外壁下地材41と胴縁42の上端部との間に隙間57が形成される。
次に、図の(1)の一点鎖線の矢印で示すように、隙間57に換気部材3の第1垂直部14を差し込むように、換気部材3を上方から降下させて設置する。すると、第1垂直部14が外壁下地材41の上端部の外方側に沿って設置される。このように換気部材3を設置することによって、換気部材3の外壁下地材41等に対する位置決めが容易になるため、当該笠木下部分(外壁材45と、その上方に設置される図示しない笠木ベースとの間に位置する部分)への取付作業が効率的になる。
続いて、図6は図1で示した笠木構造体の第2の組立工程を示す概略図である。
図を参照して、第1の組立工程により、換気部材3は胴縁42上に第2水平部17が接するように設置されている。そして、胴縁42の上端部を外壁下地材41に取り付けると共に、複数の胴縁42の間隔箇所において換気部材3の第1垂直部14を外壁下地材41に釘58で固定する。
その後、鋼板よりなる長手方向に延びるジョイナー49を、その凸部51の上面と換気部材3の第2水平部17の下面とが接するように、胴縁42に釘59で固定する。そして、外壁材45をその上端とジョイナー49の凸部51の下面とが当接するように、図示しない取付用金具を介して胴縁42に取り付ける。
又、躯体を挟んで反対側に位置する対称構造の笠木下部分(図示せず)にも同様に換気部材を設置する。
次に、このようにして笠木下部分に一対の換気部材が設置された躯体に対して、笠木ベース及び笠木カバーを固定手段により取り付ける。
図7は図1で示した笠木構造体の第3の組立工程を示す概略図であり、図8は図7で示したVIII−VIIIラインの拡大矢視図である。
まず図7を参照して、換気部材3a、3bは、上述したように一対の外壁材45a、45bと笠木ベース61との間の箇所に設置されている。又、換気部材3aの第2水平部17aの下面と、ジョイナー49aの凸部51aの外方面と、外壁材45aの上端との間はシーリング材46aで充填されている。シーリング材46bに関しても同様である。このように、ジョイナー49を用いることによって、シーリング材46の施工を容易としている。又、躯体40の天面50には防水シート47が設けられ、少量の水が躯体40の防水シート47上に浸入しても躯体40内部まで到達することを防止している。
そして、図7の(1)の一点鎖線の矢印で示すように、躯体40の天面50に対して笠木ベース61を各々の短手方向中心が揃うように設置し、笠木ベース61の平坦部62を躯体40の天面50に当接させる。
次に、図7の(2)の一点鎖線の矢印で示すように、ゴム塊72を、その短手方向中央に形成された貫通孔71が平坦部62の短手方向中央に形成された周壁部69の外径全周に嵌合するように上方から押し付けて設置する。
ここで図8を併せて参照して、本実施の形態において、周壁部69は、平面視円形リング状であって、外径が6mm、図示しない内径が5mm、即ち厚さが0.5mmである。厚さ0.8mmの平坦部62に下穴を形成した後、その下穴周囲を絞り加工(バーリング加工)することで、上述したように平坦部62を上下方向に貫通する穿孔68と、穿孔68の周縁に水密に接続され2mm上方に立ち上がる周壁部69を形成している。
又、平面視円形のゴム塊72に形成された上下方向に貫通する平面視円形の貫通孔71の径は直径3mmに設定されている。上述したようにゴム塊72は弾性を有するため、貫通孔71を貫通孔71の径よりも大きい周壁部69の外径に押し付けると、ゴム塊72の下面の貫通孔71周辺は押し広がり形状を回復しようとして周壁部69の上面の外径全周に水密に嵌合することとなる。
尚、平坦部62には、その短手方向屋外側及び屋内側端部に水切り孔75a、75bが形成されている。この水切り孔75a、75bによって平坦部62に浸入した水を排出することができる。この水切り孔の詳細については後述する。
次に、図7の(3)の一点鎖線の矢印で示すように、穿孔68及び貫通孔71には上方からビス70が挿通される。このとき、ビス70はその頭部73の下面に、ゴム塊72と径が略同一の座金部74が設けられているため、ビス70の挿通によってゴム塊72は上方から押し付けられ周壁部69の外径により深く嵌合する。更に、ビス70は躯体40の頂部44まで打ち込まれ、これによって笠木ベース61は躯体40に取り付けられる。このとき、ゴム塊72はビス70の取付けにより押し込まれ、その下面が平坦部62の天面50と当接する状態となる。
そして、図7の(4)の一点鎖線の矢印で示すように、笠木カバー2を笠木ベース61の上方に設置する。笠木カバー2の屋外側の側壁部7aの折り返し8aを、笠木ベース61の垂設部65aの下端に引っ掛け、引っ掛けた箇所を中心として笠木カバー2を回転させることで、屋内側の側壁部7bの折り返し8bも笠木ベース61の垂設部65bの下端を乗り越える。
そして、上述したように側壁部7bには、長手方向に所定間隔で取付孔が形成されているため、取付孔に図示しないビスを打ち込み垂設部65bを貫通することで、笠木カバー2を安定的に設置する。尚、当該ビスは、外壁材45bに到達しない長さに設定されており、外壁材45bに傷を付けることがない。
このようにして、笠木ベース61及び笠木カバー2は、躯体40の上方に設置され、図1で示した笠木構造体1が構成される。
次に、図9は図1で示した笠木構造体の使用状態を示す概略断面図である。
上述したように、通気機能及び防水機能を有する通気部材13は、笠木下部分の形状に対応すると共に枠体20に一体化された状態となっている。そのため、換気部材3a、3bの笠木下部分への取り付けが容易となると共に、通気機能及び防水機能の信頼性が向上する。
又、上述したように、通気部材13は、長手方向において枠体20の一方端から突き出ると共に枠体20の他方端から凹むように枠体20に取り付けられている。従って、図3で示すように、長手方向において複数の換気部材3を連続して設置する場合には、換気部材3における通気部材13の突き出た部分を、図3の二点鎖線で示す隣接する換気部材の枠体内に差し込んで設置すれば良い。これによって、隣接する換気部材3の連結が容易となるため、複数の連続した換気部材3の取付作業が効率化する。
そして、笠木構造体1の使用状態にあっては、図9の太い実線の矢印で示すように、建物内の暖まった空気は図示しない小屋裏空間と連通している通気路48を上り、換気部材3aの第1垂直部14と第2水平部17との間へ移動し、通気部材13の通気孔を介して外方側に通過する。そして、通気部材13を通過した空気は、第2垂直部16の開口18の各々を通過して、第2垂直部16と笠木ベース61や笠木カバー2の折り返し8aとの間から笠木構造体1外部へ排出される。一方、外部の空気が建物内に侵入する状況の場合には、図の矢印と反対の流れになる。これによって、笠木内部(通気路48上部)に空気が滞留することを防止し、結露や腐朽の発生を防止する。
又、上述したように、通気部材13の外方面と第2垂直部16の内面との間には空間31が形成されている。従って、通気部材13の外方面の全面が露出され、全ての通気孔を介して通気可能な状態となるため、通気部材13の通気機能が確実に発揮される。
一方、笠木構造体1に向けて降り注ぐ雨水は、笠木カバー2の天板部6が屋内側に向かって下方に傾斜しているため、笠木カバー2の上部に滞留することなく屋内側に流され、躯体40内部に浸入することが防止されている。又、使用状態で上方から雨水等が降り注いだ場合には、天板部6の傾斜によって屋内側に雨水等が誘導される。これによって、笠木カバー2の屋外側の側壁部7aの外方面を流れる雨水等の量が減少し水垢等の汚れの付着を防止することができるため、屋外側から見たときの美観が向上する。
又、笠木構造体1に向けて水平方向や斜め下方向から吹き込む雨水についても、これらは主に屋外方向から屋内方向に向けたものであり、上述したように、換気部材3aと外壁材45の上端部が接する箇所も、シーリング材46によりシールされているため、躯体40内部への浸入が防止されている。
更に、換気部材3aの第2垂直部16の開口18に浸入した雨水は、上述したように、一定条件下にあっては通気部材13の通気孔を介しては内方側に移動することができないように構成されている。
そして、上述したように、換気部材3aの第1水平部15及び第2水平部17は互いに平行に配置され、各々は外方に向かって下方に傾斜すると共に、第2水平部17の第2垂直部16側の接続部には水抜き孔24が形成されている。従って、通気部材13内に浸入した雨水は該傾斜に沿って水抜き孔24から自然に排出される。そのため、通気部材13の防水機能が向上する。
又、上述したように、第2水平部17の内方側端部23は上方に曲げられているため、通気部材13の内方面に仮に少量の雨水が到達したとしても、その雨水は通気路48内に浸入し難くなる。そして、雨水はこの内方側端部23と第2水平部17の傾斜とを介して水抜き孔24から外部に排出される。そのため、通気部材13の防水機能の信頼性がより向上する。
尚、躯体40を挟んで屋内側に位置する換気部材3bも、換気部材3aと同様の通気機能及び防水機能を発揮する。
更に、笠木カバー2の屋外側の側壁部7aの折り返し8aは笠木ベース61の垂設部65aの下端に対して掛止しており、側壁部7aの内方面が垂設部65aの外方面に両面テープを介して当接して覆うように、ビス等を打ち込むことなく取り付けられている。そのため、側壁部7aの内方面と垂設部65aの外方面との間の箇所から水が笠木下領域43(笠木ベース61及び笠木カバー2を設置した使用状態において、笠木ベース61と笠木カバー2とに囲われる箇所)に浸入する虞は減少している。又、屋外側から笠木構造体1を見たとき、笠木カバー2にビス等が見えることがなく、美観が向上している。
ここで、笠木下領域43に少量の水は浸入することがある。これに対し、図の“Y”部分に含まれる固定手段の構造により、図の一点鎖線の矢印で示すように当該浸入した水が躯体40内部に浸入することを防止しているため以下説明する。
図10は図9で示した“Y”部分の拡大図であって、周壁部の周辺構造を示すものである。
図を参照して、上述したように、周壁部69が平坦部62の穿孔68の周縁に水密に接続され上方に立ち上がるように構成されていることによって、笠木下領域43に浸入した少量の水は周壁部69が堤防状態となり躯体40内部に浸入することを阻止される。そのため、図9で示した笠木構造体1の防水性能が向上し、躯体の腐朽を防止する。
又、ゴム塊72が周壁部69の外径全周に水密に嵌合していることによって、量や勢いの大きい水であってもその浸入を阻止されるため、笠木構造体1の防水性能が更に向上する。
更に、使用状態を基準として、ゴム塊72の上下方向高さH1は、周壁部69の上縁の上下方向高さH2よりも高く設定されている。又、ビス70の頭部73の下面とゴム塊72の上面との間には座金部74が設置されており、設置時には金属製の座金部74がゴム塊72に押し込まれることで水密に嵌合している。これによって、躯体40内部に浸入しようとする水が、ゴム塊72や周壁部69を乗り越えたり、上方から穿孔68に伝ったりすることを阻止しているため、笠木構造体1の防水性能が更に向上する。
そして、戻って図9を参照して、上述したように平坦部62には水切り孔75が形成されていることによって、図の点線の矢印で示すように、平坦部に浸入した少量の水は水切り孔75により排出されるため、平坦部62に水が滞留する虞が減少し、笠木構造体1の防水性能が更に向上する。
加えて、水切り孔75は平坦部62の短手方向端部に形成されており、平坦部62の短手方向端部は、平面視において外壁下地材41の短手方向端部よりも外方側に位置する。これによって、外壁下地材41より外方側において、水切り孔75により水が排出されるため、排出された水が躯体40内部方向に向かってしまう場合等の躯体40内部に水が浸入する虞が減少し、笠木構造体1の防水性能が更に向上する。
以上説明したように、この発明の第1の実施の形態に係る笠木構造体1にあっては、まず躯体40内部に浸入しようとする水の大半は換気部材3やその周辺構造によってその浸入を阻止される。そして、少量の水が笠木下領域43に浸入し笠木ベース61を躯体40に取り付けるビス70孔から躯体40内部に浸入しようとしても、周壁部69、ゴム塊72等の固定手段の構造により多段的に躯体40内部への水の浸入を阻止し、笠木構造体1の防水性能を更に向上させたものである。
次に、図11はこの発明の第2の実施の形態による笠木構造体の周壁部の周辺構造を示すものであって、図10に対応するものである。
尚、第2の実施の形態による笠木構造体の基本的な構成は、上述した第1の実施の形態に係る笠木構造体1と同様であるので、相違点を中心に以下説明する。
図を参照して、ゴム塊33の平面視中央に形成され上下方向に貫通する貫通孔34は、図10に示した第1の実施の形態に係る貫通孔31よりもその径が狭く、ビス35の胴部36に略当接するように設定され、取付けの安定性を向上させている。これに伴って、周壁部32の外径よりも貫通孔34の径がより狭くなっており、固定手段の取付けに際しては、ゴム塊33の貫通孔34を穿孔37に位置合わせして周壁部32上に置き、ビス35を打ち込むことによって、固定手段に含まれるゴム塊33が周壁部32の上縁に水密に係合する。これによって、周壁部32を乗り越えて躯体40内部に浸入しようとする水はその浸入を防止されるため、第1の実施の形態に係る固定手段と同様に、笠木構造体の防水性能が更に向上する。
尚、上記の各実施の形態では、笠木構造体には特定構造の固定手段が備えられていたが、少なくとも笠木ベースを躯体に取り付けることができるビス等の取付具が含まれていれば良い。この場合であっても、周壁部の存在により笠木構造体の防水性能は向上している。又、例えば座金部が無くとも良い。この場合も、ゴム塊はビスの取付けにより上方から押し込まれ、その下面が平坦部の天面と当接する部分が生じる。そのため、平坦部上を伝う水はゴム塊に阻まれ、周壁部に接近することが防止される。更に、固定手段にゴム塊(板状体)、座金部、ビス以外の構成要素が含まれていても良い。
又、上記の各実施の形態では、板状体は特定形状のゴム塊であったが、他の素材や形状の板状体であっても良い。
更に、上記の各実施の形態では、周壁部は特定形状であったが、その厚さ等の寸法は適宜変更することが可能であり、平坦部方向から周壁部上端にかけて狭まったり広がったりして断面形状が変化しても良い。又、周壁部の平面視形状は円形(リング状)であったが、多角形や楕円であっても良い。
更に、上記の各実施の形態では、周壁部は絞り加工により形成されていたが、周壁部を穿孔の周縁に水密に接続されるように形成する方法はこれに限定されず、溶接や接着剤等で形成しても良い。
更に、上記の各実施の形態では、平坦部に水切り孔が特定位置に形成されていたが、他の位置に形成されていても良い。又、水切り孔が形成されていなくとも良い。
更に、上記の各実施の形態では、笠木ベース、笠木カバーや枠体は鋼板からなるものであったが、他の素材からなるものであっても良い。例えばアルミニウムからなるものが挙げられ、笠木ベース、笠木カバーや枠体の各々は押出成形により一体的に成形することも可能である。
更に、上記の各実施の形態では、穿孔は平坦部の短手方向中央に形成されていたが、他の位置に形成されていても良く、その個数も限定されない。
更に、上記の各実施の形態では、笠木ベースが特定形状であったが、少なくとも平坦部を備えていれば他の形状であっても良い。又、笠木ベースは長手方向に延びるものでなくとも良く、例えば、躯体の長手方向に所定間隔で、複数の穿孔の各々に対応する位置にバンド状の笠木ベースが備えられる態様であっても良い。
更に、上記の各実施の形態では、笠木カバーが特定形状であったが、他の形状であっても良い。
更に、上記の各実施の形態では、天板部の短手方向における断面形状が特定のものであったが、上方から降り注いだ雨水等を下方に誘導し、天板部の上部に水が滞留することを防止できるものであれば他の形状であっても良い。例えば、短手方向断面形状が山型であり屋外側及び屋内側に雨水等を誘導する、いわゆる両流れ型が挙げられる。
更に、上記の各実施の形態では、笠木カバーの側壁部が折り返しを有し、笠木ベースの垂設部の下端に掛止するようにして取り付けられていたが、折り返しを有していなくとも良く、他の方法で取り付けられても良い。例えば、接着剤、両面テープ、ビスや釘等の取付具等を用いる方法が挙げられる。
更に、上記の各実施の形態では、通気部材は特定の構造を有するものであったが、内方から外方への通気機能及び防水機能を有するものであれば他の構造であっても良い。例えば、長手方向に延びる複数の金属板が互いに短手方向(内方から外方への方向)に所定間隔離れて垂直方向に延びるように構成される通気部材であって、複数の金属板の各々には長手方向に所定間隔で複数の開口(通気孔)が形成されたもの(いわゆるバッフル構造)が挙げられる。この場合、上記の各実施の形態における通気部材と同様に、外方から内方へ雨水等が浸入することを防止しながら、内方から外方への通気を可能とすることができる。
更に、上記の各実施の形態では、笠木構造体が換気部材を備えていたが、換気部材を備えていなくとも良い。
更に、上記の各実施の形態では、平坦部が穿孔、周壁部及び水切り孔を除いて略全面が平坦に構成されていたが、水返しや防水板といった他の構造を付加しても良いし、少なくとも一部に傾斜を備えていても良い。
更に、上記の各実施の形態では、屋内側の側壁部の内面と垂設部の外面とが取付孔を貫通するビスで取り付けられていたが、他の取付手段であっても良い。この場合、取付孔が形成されていなくとも良い。
更に、上記の各実施の形態では、第1垂直部と第1水平部との接続角度は特定の角度であったが、他の角度であっても良い。
更に、上記の各実施の形態では、第1水平部や第2水平部は外方に向かって特定の角度で下方に傾斜していたが、他の角度であっても良い。又、下方に傾斜していなくとも良い。
更に、上記の各実施の形態では、第1垂直部は外壁下地材と胴縁との間の隙間に差し込むようにして設置されているが、第1垂直部は外壁下地材の上端部の外方側に対して設置されていれば、例えば外壁下地材の外面に直接取り付ける等、他の設置態様であっても良い。
更に、上記の各実施の形態では、換気部材の枠体が特定の構造であったが、他の構造であっても良い。例えば、第1垂直部に相当する部位が存在せず、第1水平部の内方端部を外壁下地材や躯体の上端部に両面テープ等で固定する等して設置するものであっても良い。
更に、上記の各実施の形態では、第1水平部と第2水平部とは平行に配置されていたが、これらは平行に配置されていなくとも良い。この場合、第2水平部の傾斜態様によっては水抜き孔の位置を変更しても良い。又、水抜き孔が無くとも良い。
更に、上記の各実施の形態では、水平部の内方側端部は上方に向かうように曲げられていたが、該部分は無くとも良い。
更に、上記の各実施の形態では、通気部材が枠体に対して長手方向において特定の配置態様で取り付けられていたが、通気部材はその全体が枠体内に配置された状態で取り付けられていても良い。
更に、上記の各実施の形態では、通気部材が特定の寸法及び形状であったが、同様の通気機能及び防水機能を発揮するものであれば、他の寸法及び形状であっても良い。この場合、特許第2610342号の明細書に記載されている風雨試験と同一の条件で同一の効果を奏するものであることが好ましい。
更に、上記の各実施の形態では、笠木下領域にブラケット等の笠木カバーを支持する支持体を設置していなかったが、笠木下領域にブラケット等の支持体を設置していても良い。この場合、設置状態における笠木カバーの形状安定性が向上する。
更に、上記の各実施の形態では、笠木構造体において換気部材が一対設けられていたが、例えば外壁材や通気路が一方側にしか存在しない態様の躯体等に対しては、換気部材が当該一方側にのみ存在するものであっても良い。
更に、上記の各実施の形態では、躯体の天面に防水シートが設けられていたが、防水シートとは防水紙、透湿防水フィルム、鞍掛シート、防水テープ等が含まれる。又、胴縁と外壁下地材との間の箇所にも設けられていても良い。