JP5369474B2 - 成形金型 - Google Patents

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Description

本発明は、成形品を射出成形により製造する成形金型に関する。
従来、例えば歯車などの一部にアンダーカット部を設けた成形品がある。このようなプラスチック成形品は、一般に成形型を用いた射出成形により成形される(例えば、特許文献1、2参照)。
この特許文献1に記載のものは、射出成形機に、成形品の形状に応じたキャビティが設けられる固定型および固定型に対して移動可能な可動型を直接設置し、可動型を固定型側に移動させた後、キャビティ内に溶融樹脂を流し込んで成形品を製造する装置である。この装置では、固定型の一部にアンダーカット部を形成するための型が形成されたスライド部材が設けられ、射出成形後、このスライド部材をスライドさせて成形品を押し出すと同時に、スライド部材をアンダーカット部から離れる方向にスライドさせて成形品を取り出す構成が採られている。
また、特許文献2に記載のものは、射出成形機に、成形品の形状に対応したキャビティを有するカセット金型が取り付け可能な固定側金型および可動側金型をセットした装置である。そして、成形品が射出成形された後、エジェクトピンにより成形品を押し出して取り出す構成が採られている。この装置では、カセット金型を成形品の形状に応じて交換することにより、簡単な構成で複数種類の成形品を成形することが可能となる。
特開2001−150497号公報 特開2005−305777号公報
ところで、上記特許文献1のような装置では、例えば腕時計を構成する歯車のような小型部品を成形する場合、スライド部材の金型部品精度が安定せず、良質な成形品を製造することができないという問題がある。また、射出成形機に接続される固定金型および可動金型のうちいずれか一方にスライド部材を設けているため、複数種類の成形品を製造するためには、これら固定金型および可動金型を設計しなおす必要があるため、製造コストが増大し、金型全体の重量も増大するという問題もある。
また、特許文献2に記載の装置では、カセット金型により複数種類の成形品を製造可能であるが、アンダーカット部を有する成形品を製造するためには、別途アンダーカット部分を製造して組み合わせるなどの必要があり、煩雑であるという問題があった。
本発明は、上記のような問題に鑑みて、アンダーカット部を有する成形品を容易に製造可能な成形金型を提供することを目的とする。
本発明の成形金型は、射出成形機の固定部に固定される固定金型と、前記射出成形機の可動部に、前記固定金型に対して進退移動可能に固定される可動金型と、これらの固定金型および可動金型に着脱可能に固定されるとともに、成形品に対応した形状のキャビティを形成するカセット金型と、を具備し、射出成形により成形品本体、およびこの成形品本体に一体的に設けられるアンダーカット部を備えた成形品を成形する成形金型であって、前記固定金型および可動金型は、前記カセット金型を装着可能な装着部を備え、前記カセット金型は、前記固定金型の前記装着部に装着される固定側カセット金型と、前記可動金型の前記装着部に装着される可動側カセット金型と、前記固定側カセット金型および前記可動側カセット金型のうちいずれか一方に設けられるとともに、前記固定側カセット金型および前記可動側カセット金型の間で、前記可動部の進退方向と略直交する方向にスライド移動可能に設けられる一対のスライドコアと、を備え、前記固定側カセット金型および前記可動側カセット金型のうち少なくともいずれか一方は、他方に対向する面に前記成形品本体を形成する前記キャビティを有し、一対の前記スライドコアは、互いに対向する面に前記アンダーカット部に対応する形状のアンダーカット形成面を有することを特徴とする。
この発明によれば、カセット金型に、成形品本体の形状に対応したキャビティを形成する固定側カセット金型および可動側カセット金型と、アンダーカット部を形成する一対のスライドコアと、が設けられている。このため、射出成形機に固定される固定金型や可動金型にこのようなカセット金型を装着するだけで、容易に所定形状の成形品を製造することができる。すなわち、成形品の形状に応じたカセット金型を、固定金型や可動金型から脱着させることで、固定金型や可動金型を加工することなく、容易に複数種類の成形品を製造することができる。また、このカセット金型にスライドコアを組み込んでいるため、これらスライドコアを設けるために固定金型や可動金型の形状を加工する必要がなく、カセット金型を装着するだけで容易に複数種類の成形品に対応した射出成形を実施することが可能となる。
また、本発明の成形金型では、前記固定側カセット金型および前記可動側カセット金型のうち、前記一対のスライドコアが設けられない一方には、前記可動部を前記固定部側に移動させた際に、一対の前記スライドコアの一端部に当接可能なコア当接部を有し、このコア当接部で前記スライドコアを互いに近接する方向に押し出す一対のブロック部が設けられ、これらのブロック部は、前記コア当接部が前記スライドコアのスライド方向に進退可能に設けられるとともに、一対の前記スライドコアが近接する方向に、前記コア当接部を付勢する付勢手段を備えることが好ましい。
この発明によれば、一対のスライドコアを互いに近接する方向にスライド移動させ、アンダーカット形成面によりアンダーカット部を成形するが、この時、ブロック部のコア当接部により、これら一対のスライドコアを互いに近接する方向に押し込むことにより、スライドコア間の隙間を確実に埋めることができ、成形品の原料である溶融樹脂を射出した際、精度よく成形品を製造することができる。
ここで、コア当接部は、スライドコアのスライド方向に移動可能で、付勢手段によりコア当接部がスライドコアのスライド方向に付勢されている。なお、ここで、コア当接部がスライドコアのスライド方向に移動可能である構成としては、コア当接部とスライドコアとの当接位置が変位することを意味する。例えば、ブロック部の一部に、スライドコアの一端部に当接可能なテーパ状のコア当接部を有し、ブロック部がスライドコアのスライド方向に対して略直交する方向に移動することで、コア当接部のテーパ部におけるスライドコアに当接する位置が移動し、スライドコアをスライド方向に押し出す構成であってもよい。また、ブロック部がスライド方向に移動し、スライドコアを押し込む構成などとしてもよい。そして、本発明では、ブロック部は、コア当接部をスライドコアが近接する方向に付勢する付勢手段を備えている。例えば、上記したブロック部がスライドコアのスライド方向に対して略直交する方向に移動可能で、テーパ状のコア当接部によりスライドコアが押し出される構成では、コア当接部におけるスライドコアとの当接点が、一対のスライドコアを近接させる方向に移動するように、ブロック部を進退方向に沿って付勢する。また、ブロック部そのものがスライドコアのスライド方向に移動可能な構成では、ブロック部をスライド方向に沿って、一対のスライドコアが近接する方向に付勢する。
このような構成にすることで、一対のスライドコアによりアンダーカット部を挟み込んだ際に、スライドコアがブロック部のコア当接部に接触した後、付勢手段の付勢力によりスライドコアのスライド移動速度を減少させることができる。したがって、一対のスライドコアにおけるアンダーカット形成面が衝突する際の衝撃を吸収することが可能となり、アンダーカット形成面の破損や、成形品におけるアンダーカット部の破損を防止することができる。
そして、本発明の成形金型では、前記固定側カセット金型は、第一歯車を形成するキャビティを備え、前記可動側カセット金型は、前記第一歯車の歯と所定位相差だけ異なる位置に歯が設けられる第二歯車を形成するキャビティを備え、一対の前記スライドコアは、前記第一歯車および前記第二歯車の間に設けられるとともに、これら第一歯車および第二歯車を連結するアンダーカット部を形成することが好ましい。
この発明によれば、成形金型により小型時計の部品である第一歯車と第二歯車とがアンダーカット部により連結される成形品を容易に成形することができる。すなわち、第一歯車および第二歯車が所定の位相差で組み合わせされる成形品では、第一歯車と第二歯車を別体として形成し、これらを組み合わせる従来の製造方法を用いると、位相差を正確に合わせこむ工程が必要となり、製造工程が増え、生産コストも増大する。これに対して、本発明では、第一歯車と第二歯車とが所定の位相差となるようにカセット金型を設定することで、容易にこれらの第一および第二歯車が所定位相差で組み合わされる成形品を製造することができる。したがって、部品製造における製造工程を減少させることができ、製造コストや製造に要する時間を削減することができる。
以下、本発明の一実施の形態に係る成形金型を備えた射出成形機を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る射出成形機の成形金型の概略を示す断面図である。図2は、本実施の形態の射出成形機により製造される小型歯車を示す斜視図である。図3は、この小型歯車の正面図、および側面図である。図4は、本実施の形態のカセット金型の概略構成を示す断面図であり、可動側カセット金型が固定側カセット金型側に移動した状態を示す図である。図5は、本実施の形態のカセット金型の概略構成を示す断面図であり、可動側カセット金型が固定側カセット金型から離隔する方向に移動した状態を示す図である。図6は、カセット金型におけるキャビティ部分近傍を拡大した断面図である。図7は、スライドコアの構成を示す斜視図である。
図1において、1は、射出成形機であり、この射出成形機1は、プラスチック溶融樹脂をキャビティに射出し、図2および図3に示すような成形品としての小型歯車10を形成する。
[小型歯車の構成]
ここで、射出成形機1により製造される小型歯車10の概略構成について説明する。
小型歯車10は、図2および図3に示すように、第一歯車11と、第二歯車12と、アンダーカット部13とが一体形成された構成を備えている。アンダーカット部13は、第一歯車11および第二歯車12の径寸法よりも小さい凹状に形成され、これら第一歯車11および第二歯車12を連結している。また、第一歯車11および第二歯車12は、互いに所定の位相差θだけずれて形成されている。
なお、本実施の形態では、射出成形機1により、図2および図3に示すような小型歯車10を製造する例を示すが、成形品としては、この小型歯車10に限定されない。例えば、射出成形機1は、成形品として、第一歯車11の一端面にアンダーカット部13が設けられ、第二歯車が設けられない歯車を製造するものであってもよく、歯車以外のプラスチック成形品を製造するものであってもよい。さらに、プラスチック製の成形品を例示するが、例えば溶融金属などにより、金属製部品を製造するものであってもよい。
[射出成形機の概略構成]
図1に戻り、上記のような射出成形機1は、図示しない固定部と、図示しない可動部と、これらの固定部および可動部に固定される成形金型1Aと、を備えている。この成形金型1Aは、図1に示すように、モールドベース2と、カセット金型100と、を備えている。
固定部は、射出成形機1の上方に設けられ、射出成形機1自体を保持する図示しない基台に固定されている。この固定部には、モールドベース2の固定金型21が例えばボルト締めなどにより固定されている。
可動部は、例えば図示しないモータなどの駆動手段により、固定部側に移動可能に設けられている。この可動部には、モールドベース2の可動金型22が例えばボルト締めなどにより固定されている。
〔モールドベースの構成〕
モールドベース2は、射出成形機1の固定部に固定される固定金型21と、射出成形機1の可動部に固定される可動金型22と、を備えている。
固定金型21は、図1に示すように、複数枚のプレートを重ね合わせることにより形成されている。また、固定金型21の可動金型22と対向する面には、固定側カセット装着孔211が設けられている。
さらに、固定金型21の固定部に固定される面には、ノズル挿通孔212が設けられている。このノズル挿通孔212は、固定側カセット装着孔211の略中心軸延長上に設けられ、固定側カセット装着孔211の内面に連通している。そして、このノズル挿通孔212には、射出成形機1の固定部から延びる射出ノズル213が挿通される。
さらには、固定金型21の可動金型22に対向する面において、固定側カセット装着孔211が形成されていない位置に、軸孔214が形成されており、この軸孔214には、軸合わせピン215が可動部側に突出して固定されている。この軸合わせピン215は、可動部を移動させた際に、可動金型22に設けられる軸合わせ孔225に挿通されることにより軸合わせを実施する。
可動金型22は、固定金型21と同様に複数のプレートを重ね合わせて、連結棒222により連結固定されて構成されている。そして、この可動金型22の固定金型21に対向する面には、固定側カセット装着孔211に対向する可動側カセット装着孔221が形成されている。また、可動金型22には、可動部の進退移動方向に沿って、可動側カセット金型400と連通するイジェクト貫通孔223が設けられている。このイジェクト貫通孔223には、連結部材224が軸方向に進退自在に挿通され、後述する可動側カセット金型400のイジェクトプレートに連結されている。
また、可動金型22には、固定金型21の軸合わせピン215に対応して軸合わせ孔225が形成されており、可動部が固定部側に移動すると、軸合わせピン215が挿通されて軸合わせが実施される。
〔カセット金型の構成〕
カセット金型100は、図4および図5に示すように、固定側カセット金型300と、可動側カセット金型400と、スライドコア500と、を備えている。
(固定側カセット金型の構成))
固定側カセット金型300は、固定金型21の固定側カセット装着孔211に嵌合され、着脱可能に取り付けられている。この固定側カセット金型300は、金型受板310と、固定側カセット金型本体320と、一対のアンギュラピン330と、一対のロッキングブロック340と、を備えている。
金型受板310は、固定側カセット金型本体320に固定されるとともに、固定金型21の固定側カセット装着孔211の固定部側端部に当接する状態で嵌合される。また金型受板310は、射出ノズル213が装着されるノズル装着部311を備えている。
さらに、金型受板310は、後述する一対のロッキングブロック340を可動部側に付勢するコイルスプリング342が装着されるスプリング装着孔312を備えている。
固定側カセット金型本体320は、軸心部に第一キャビティ装着孔321を備え、この第一キャビティ装着孔321に、第一キャビティ構成部材322が固定されている。この第一キャビティ構成部材322は、図6に示すように、第一キャビティ装着孔321に嵌合される第一キャビティ胴部322Aと、第一キャビティ胴部322Aから可動部側に突出する略柱状の第一キャビティ形成部322Bとを備えている。ここで、第一キャビティ胴部の可動部側端面は、固定側カセット金型本体320の可動部側の端面が固定側カセット金型本体320の可動部側の端面と接触する面(PL(パーティングライン)面)よりも固定部側となるように形成されている。一方、第一キャビティ形成部322Bは、可動部側の端面は、PL面と同一面となる位置に配置されるように形成されている。そして、この第一キャビティ形成部322Bにおける可動部側端面には、第一歯車11の形状に対応した第一キャビティ322Cが凹状に形成されている。
また、第一キャビティ構成部材322には、第一キャビティ322Cの一部と、金型受板310のノズル装着部311とを連通する樹脂射出路322Eが形成されており、射出成形機1の射出ノズル213から溶融樹脂が射出されると、ノズル装着部311からこの樹脂射出路322Eを通過して第一キャビティ322C内に溶融樹脂が射出される。
さらに、第一キャビティ構成部材322には、第一キャビティ322Cの一部(例えば、歯車軸心部の端部に当たる位置)にガス抜き孔322Dが形成されている。このガス抜き孔322Dは、小型歯車の射出成形時に、キャビティ内に封入されるガスを逃がし、樹脂内に気泡などが生じる不都合を回避する機能を有する。
そして、固定側カセット金型本体320は、第一キャビティ構成部材322を挟んで、可動部の進退方向に対して所定の角度で傾斜する一対の傾斜孔323を備え、これらの傾斜孔323にそれぞれアンギュラピン330が挿通されて固定されている。これらのアンギュラピン330は、後述するスライドコア500に係合し、スライドコア500を所定方向に移動させる。
また、固定側カセット金型本体320は、第一キャビティ構成部材322を挟んで、かつ傾斜孔323よりも径外側(第一キャビティ322Cから離れる側)に、金型受板310のスプリング装着孔312に対向するブロック設置孔324を備えている。これらのブロック設置孔324は、それぞれ可動部の進退方向に沿って長手に形成されている。また、ブロック設置孔324の金型受板310側は、他部よりも孔径が大きく形成され、段差部324Aが形成されている。そして、これらのブロック設置孔324には、ブロック部としてのロッキングブロック340が孔内周面に摺動可能に挿通されている。
このロッキングブロック340は、図6に示すように、ブロック本体341と、コイルスプリング342とを備えている。
ブロック本体341は、金型受板310側の端部に、段差部324Aに係止可能な突出部341Aを有している。ここで、突出部341Aが段差部324Aに係止され、可動部側への移動が規制された状態では、ブロック本体341と金型受板310との間には、所定寸法の押出ストロークLが設けられる。また、ブロック本体341の金型受板310側の端面には、コイルスプリング342を固定するスプリング固定孔341Bが設けられている。そして、このスプリング固定孔341Bおよび金型受板310のスプリング装着孔312の間にコイルスプリング342が配設され、コイルスプリング342の付勢力によりブロック本体341は可動部側に付勢されている。
さらに、ブロック本体341の可動部側のアンギュラピン330に対向する面には、固定部側から可動部側に向かうに従って、第一キャビティ322Cから離隔する方向に傾斜するコア当接面341Cが形成されている。
(可動側カセット金型の構成)
可動側カセット金型400は、図4および図5に示すように、可動側受部410と、可動側カセット金型本体420と、コアストッパ430と、を備えている。
可動側受部410は、可動側カセット金型本体420が固定されるとともに、可動金型22の可動側カセット装着孔221の可動部側端部に当接する状態で嵌合される。また可動側受部410は、可動金型22の連結部材224に連結されるイジェクトプレート411を備えている。このイジェクトプレート411は、可動側カセット金型本体420側に図示しないイジェクトピンが固定されている。このイジェクトピンは、可動側カセット金型400に形成されるイジェクト挿通孔423Dに挿通され、後述する第二キャビティ423Cに突出可能に配設されている。そして、可動金型22の連結部材224が軸方向に沿って移動し、イジェクトプレート411が可動側カセット金型本体420側に移動されると、イジェクトピンは、キャビティ内で成形された小型歯車10をキャビティ内から押し出す。また、イジェクトプレート411は、付勢ばね412により可動金型22側に付勢されており、連結部材224が固定部側に移動していない状態では、イジェクトプレート411は可動金型22側に移動し、イジェクトピンがキャビティ内に突出することがない。
また、可動側受部410は、後述するスライドコア500の移動を規制するコアストッパ430を固定部側に付勢するコイルバネを装着するばね装着孔413が形成されている。
可動側カセット金型本体420は、固定部側端面(PL面)に、スライドコア500を設置するコア設置孔421を備えている。このコア設置孔421は、可動部の進退方向と略直交し、かつ可動側カセット金型本体の軸心を挟んで長手状に形成されている。また、コア設置孔の長手方向に沿う両端辺の立上面には、コア設置孔の長手方向に沿って図示しない案内溝が形成されており、この案内溝によりスライドコア500のスライド方向が規制される。
また、このコア設置孔421におけるスライドコア500が摺接するコア摺接面421Aには、可動部を固定部側に移動させた際に、前記したアンギュラピン330が挿通されるアンギュラ退避孔421Cが形成されている。また、コア摺接面421Aには、コアストッパ430が設置されるストッパ設置孔421Bが形成されており、このストッパ設置孔421Bにスライドコア500の移動を規制するコアストッパ430が装着されている。このコアストッパ430は、図4ないし図6に示すように、先端部がコア摺接面421Aから突出可能に設けられ、コイルバネの付勢力により常時、スライドコア側に付勢されている。
そして、可動側カセット金型本体420は、軸心部に第二キャビティ装着孔422を備え、この第二キャビティ装着孔422に、第二キャビティ構成部材423が装着されている。この第二キャビティ構成部材423は、図6に示すように、第二キャビティ装着孔422に嵌合される第二キャビティ胴部423Aと、第二キャビティ胴部423Aから固定部側に突出する略柱状の第二キャビティ形成部423Bとを備えている。ここで、第二キャビティ胴部423Aの固定部側端面は、PL面よりも可動部側となるように形成されている。一方、第二キャビティ形成部423Bは、固定部側の端面は、PL面よりも、後述するスライドコア500のキャビティ形成片520の厚み寸法分だけ可動部側となる位置に配置されるように形成されている。そして、この第二キャビティ形成部423Bにおける固定部側端面には、第二歯車12の形状に対応した第二キャビティ423Cが凹状に形成されている。
ここで、第二キャビティ423Cにおける第二歯車12の歯に対応した凹凸部は、第一キャビティ322Cの第一歯車11の歯に対応する凹凸部に対して、所定の位相差分だけずれた位置に設定されている。この位相差分は、第一歯車11の歯と第二歯車12の歯との位相差θ分に設定されている。
そして、第一キャビティ322Cおよび第二キャビティ423Cの間には、後述するスライドコア500により、アンダーカット部13に対応する形状の第三キャビティ523が形成される。
また、可動側カセット金型本体420は、上述したように、第二キャビティ形成部423Bの第二キャビティ423Cには、イジェクト挿通孔423Dが形成され、イジェクトピンが突出可能な構成となっている。
さらに、可動側カセット金型本体420は、第二キャビティ423Cにガス抜き孔423Eが形成されている。このガス抜き孔423Eは、第一キャビティ322Cに設けられるガス抜き孔322Dと同様に、小型歯車の射出成形時に、キャビティ内に封入されるガスを逃がし、樹脂内に気泡などが生じる不都合を回避する機能を有する。
(スライドコアの構成)
一対のスライドコア500は、図4ないし図7に示すように、可動側カセット金型400のコア設置孔421のコア摺接面421Aに、可動部の移動方向と略直交する方向に摺動可能に設けられている。
このスライドコア500は、コア本体510と、キャビティ形成片520とが一体形成されて構成されている。
コア本体510は、コア設置孔421の長手方向に沿って長手状に形成され、長手方向に沿う両サイドに、コア設置孔421に設けられる案内溝に係合される案内係合部511(図7参照)が形成されている。これにより、スライドコア500は、コア設置孔421の長手方向に沿ってのみスライド移動可能となる。
また、コア本体510のキャビティ側(他方のスライドコア500に対向する側)の端面であるコア対向面512には、可動部側端部が他方のスライドコア500に向かって延出している。ここで、このキャビティ形成片520は、固定側カセット金型300に対応する面がPL面と一致するように形成されている。そして、このキャビティ形成片520の他方のスライドコア500に対向する端辺には、半円上のアンダーカット形成面としての切欠部521が形成されている。すなわち、一対のスライドコア500を互いに近接する方向に移動させ、キャビティ形成片520の端面同士を接触させると、互いのキャビティ形成片520の切欠部521により円状のアンダーカット部13の形状に対応した第三キャビティ523が形成される。
また、スライドコア500は、キャビティ形成片520同士が当接して第三キャビティ523が形成された状態において、コア本体510のコア対向面512が可動側カセット金型400の第二キャビティ形成部423Bの側面と所定の間隔を開けて対向するように、コア本体510およびキャビティ形成片520の長手方向の寸法が設定されている。これにより、スライドコア500を移動させた際に、コア対向面512が第二キャビティ形成部423Bに接触せず、衝撃などによるキャビティ形成片520やコア本体510の破損が防止される。
さらに、コア本体510の長手方向に沿うコア対向面と反対側面には、キャビティ形成片520から離隔するに従って固定部側から可動部側に傾斜する押出面513が形成されている。そして、一対のスライドコア500は、この押出面513がロッキングブロック340のコア当接面341Cに当接して押圧されることで、互いに近接する方向に押し出される。
また、このコア本体510には、固定部から可動部に向かって、キャビティ形成片520から遠ざかる方向に傾斜する、アンギュラ操作孔514が形成されている。このアンギュラ操作孔514は、可動部を固定部側に移動させた際に、アンギュラピン330が挿通される。すなわち、一対のスライドコア500は、アンギュラピン330に押し出されることにより、互いに接離する方向にスライド移動する。
そして、コア本体510のコア摺接面421Aに摺接する面には、ストッパ凹部515が形成されている。このストッパ凹部515は、可動部が固定部から十分に離隔し、アンギュラピン330がアンギュラ操作孔514から抜かれた際に、前記したコアストッパ430の先端部が係合される。これにより、スライドコア500は、アンギュラピン330によりスライド操作されない状態では、コアストッパ430により所定位置に位置決めされ、例えば成形された小型歯車を取り出す工程において、スライドコア500が移動するなどの不都合を防止できる。
[射出成形機の動作]
次の上述したような射出成形機1における小型歯車の製造動作について、説明する。
上述したような射出成形機1では、先ず、小型歯車10の形状に対応したカセット金型をモールドベース2に装着、すなわち固定金型21の固定側カセット装着孔211および可動金型22の可動側カセット装着孔221にそれぞれ固定側カセット金型300および可動側カセット金型400を嵌合して、装着しておく。
そして、可動部の駆動手段を制御して、可動部を固定部側に移動させ、可動金型22に装着された可動側カセット金型400も固定部側に移動する。可動側カセット金型400が所定量固定部側に移動すると、スライドコア500のアンギュラ操作孔514に固定側カセット金型300のアンギュラピン330が挿通される。これにより、一対のスライドコア500が、アンギュラピン330の傾斜により案内され、コア設置孔421の長手方向に沿って、互いに近接する方向にスライド移動する。
そして、可動部を固定部側に移動させると、一対のスライドコア500の押出面513にロッキングブロック340のコア当接面341Cが当接する。この状態からさらに可動部を固定部側に移動させると、ロッキングブロック340のコア当接面341Cによりスライドコア500の押出面513が押し出される。この時、ロッキングブロック340のブロック本体341は、コイルスプリング342により可動部側に付勢力を受けているため、可動部を固定部側に移動させると、コイルスプリング342が撓み、可動部の移動に伴う応力が緩和される。すなわち、コイルスプリング342のバネ力が緩衝力となり、可動部の移動に伴う応力が直接スライドコア500に伝達されない。これにより、一対のスライドコア500のキャビティ形成片520が当接した際に、過度の衝撃が加わらず、キャビティ形成片520の破損が防止される。
そして、さらに可動部を固定部側に移動させ、固定側カセット金型本体320および可動側カセット金型本体420がPL面で接触すると、第一キャビティ322C、第二キャビティ423C、および第三キャビティ523により、小型歯車10の形状に対応したキャビティが形成される。
この後、射出成形機1は、射出ノズル213からプラスチック成形品の原料である溶融樹脂をキャビティ内に射出する。この時、キャビティ内に封入されていたガスは、一時的にガス抜き孔322D,423Eに逃がされる。そして、例えば溶融樹脂が硬化するのに要する所定時間経過後、または図示しない冷却手段により溶融樹脂を冷却硬化させた後、可動部を固定部から離隔する方向に移動させる。
可動部を固定部から離隔させると、一対のスライドコア500もアンギュラピン330の傾斜に沿って、互いに離隔する方向にスライド移動する。そして、アンギュラピン330がスライドコア500のアンギュラ操作孔514から抜かれると、コアストッパ430の突出部がスライドコア500のストッパ凹部515に係合し、スライドコア500の移動を規制する。
この後、連結部材224を固定部側に移動させることで、イジェクトピンが第二キャビティ423C内に突出し、小型歯車10がキャビティから取り出される。
[射出成形機の作用効果]
上述したように、上記射出成形機1では、固定金型21の固定側カセット装着孔211、および可動金型22の可動側カセット装着孔221にそれぞれ固定側カセット金型300および可動側カセット金型400を嵌合して装着する。また、可動側カセット金型400には、コア設置孔421が設けられ、このコア設置孔421に一対のスライドコア500がスライド移動可能に設けられている。
このような構成では、固定金型21および可動金型22にカセット金型100を装着するだけで、小型歯車10に対応するキャビティを設置することができる。すなわち、アンダーカット部13を有する小型歯車10を複数種類形成する場合に、モールドベース2の加工が不要であり、カセット金型100を交換するだけで、容易にこれらの小型歯車10を製造することができる。したがって、モールドベース2を複数製造する必要がなく、製造コストの増大を抑えることができる。
また、ロッキングブロック340と金型受板310との間に、所定の押出ストロークLが設けられ、ロッキングブロック340は、可動部の移動方向にこの押出ストロークLの分だけ進退可能に設けられている。そして、このロッキングブロック340は、ブロック本体341とコイルスプリング342を有し、コイルスプリング342によりブロック本体341が可動部側に付勢され、スライドコア500の押出面513を押し出している。
上記したように、可動部が固定部側に移動し、一対のスライドコア500が互いに近接する方向に所定量移動すると、一対のスライドコア500は,ロッキングブロック340により押し出されて、キャビティ形成片520同士が接触する。この際、コイルスプリング342の付勢力が緩衝力として作用するため、スライドコア500に加わる応力が軽減され、キャビティ形成片520同士の接触時における衝撃も抑えられ、キャビティ形成片520の破損を防止できる。
また、第一キャビティ322Cの第一歯車11の歯に対応した凹凸位置と、第二キャビティ423Cの第二歯車12の歯に対応した凹凸位置とは、所定の位相差θだけずれた位置関係に配置調整されている。このため、射出成形により形成される小型歯車10は、第一歯車11および第二歯車12の歯が所定位相差θに設定され、アンダーカット部によりこれら第一歯車11および第二歯車12が連結された形状に形成される。すなわち、第一歯車11および第二歯車12の位相差θを調整する調整工程が不要となるため、製造工程を短縮することができる。また、上記のように所定位相差θに位相設定された小型歯車10を大量生産する場合、位相差の調整工程が不要になる分、製造工程を大幅に短縮することができ、生産コストも低減することができる。
さらに、可動部が固定部側に移動することで、アンギュラピン330がスライドコア500のアンギュラ操作孔514に挿通され、スライドコア500がスライド移動する。
このため、可動部の進退移動に応じてスライドコア500がスライド移動するので、スライドコア500をスライド移動させる駆動手段を別途設ける必要がなく、カセット金型100内にスライドコア500を容易に収納することができる。したがって、カセット金型100が大型化せず、簡単な構成で、小型歯車10に対応したキャビティを有する金型を形成することができる。
そして、ガス抜き孔322D,423Eが設けられているため、溶融樹脂の射出時に、キャビティ内のガスをガス抜き孔322D,423Eに逃がすことができ、樹脂内に気泡が生じるなどの不都合を防止することができ、良質な小型歯車10を製造することができる。
また、ブロック本体341は、コイルスプリング342により可動部の進退方向に沿って可動部側に付勢されている。そして、ブロック本体341は、固定部から可動部に向かうに従って、第一キャビティ322Cから離隔する方向に傾斜するコア当接面341Cが形成され、スライドコア500の押出面513は、固定部から可動部に向かうに従って、キャビティ形成片520から離隔する方向に傾斜する形状に形成されている。
このため、ブロック部のコア当接面341Cが押出面513に当接した状態で、ブロック本体341が可動部側に付勢されると、コア当接面341Cは、押出面513をキャビティ側に押し出すとともに、可動部側にも付勢する。したがって、スライドコア500はコア設置孔421に押し付けられるため、可動部から固定部に向かう軸方向への振動が防止される。よって、スライドコア500が正確な位置にスライド移動されて、キャビティ形成片520の端面同士が、制度よく所定位置で接触する。したがって、アンダーカット部13の製造誤差を抑えることができ、精度よく小型歯車10を形成することができる。
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記実施の形態では、可動側カセット金型400にスライドコア500を摺動可能に取り付ける構成を示したが、例えば固定側カセット金型300に設けられる構成などとしてもよい。この場合、可動側カセット金型400にアンギュラピン330やロッキングブロック340を配置する構成とすることでスライドコア500をスライド移動させることができる。
また、上記実施の形態では、成形品として小型歯車10を成形する例を示したが、前記したように、成形品として小型歯車10に限定されず、例えば第一歯車11にアンダーカット部13が設けられるのみの歯車や、その他の小型部品を製造するものであってもよい。また、上記実施の形態の小型歯車10のような小型部品に限られず、比較的大型の成形品を製造するものであってもよい。さらに、成形品としてプラスチック部品を製造するものに限られず、例えば溶融金属を射出する構成などとすることで、金属部品を製造する者であってもよい。この場合、カセット金型100として、より耐熱性に優れた金属型を用いることが好ましい。
さらに、ロッキングブロック340は、可動部の進退方向に沿って進退可能に設けられる構成としたが、これに限定されず、スライドコアのスライド方向に沿って移動可能に設けられ、一対のスライドコア500が近接する方向にコイルスプリングなどの付勢手段により付勢される構成としてもよい。この場合、固定側カセット金型に、スライドコア500を可動部側に付勢する付勢手段を設けることで、スライドコア500のがたなどを防止することができる。
そして、上記実施の形態では、一対のスライドコア500により第三キャビティ523を形成する構成としたが、例えば、3つ以上のスライドコアにより第三キャビティ523を形成する構成としてもよい。この場合、例えば互いに対向する一対を可動側カセット金型400に設置し、他方の一対の固定側カセット金型300に設置するなどしてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
本発明の一実施の形態に係る射出成形機における成形金型の概略を示す断面図である。 前記実施の形態の射出成形機により製造される小型歯車を示す斜視図である。 図2に示される小型歯車の正面図、および側面図である。 前記実施の形態のカセット金型の概略構成を示す断面図であり、可動側カセット金型が固定側カセット金型側に移動した状態を示す図である。 前記実施の形態のカセット金型の概略構成を示す断面図であり、可動側カセット金型が固定側カセット金型から離隔する方向に移動した状態を示す図である。 前記実施の形態のカセット金型におけるキャビティ部分近傍を拡大した断面図である。 前記実施の形態のカセット金型を構成するスライドコアを示す斜視図である。
符号の説明
1…射出成形機、10…小型歯車、11…第一歯車、12…第二歯車、13…アンダーカット部、1A…成形金型、21…固定金型、22…可動金型、100…カセット金型、211…装着部としての固定側カセット装着孔、221…装着部としての可動側カセット装着孔、300…固定側カセット金型、322C…第一キャビティ、340…ブロック部としてのロッキングブロック、341C…コア当接部としてのコア当接面、342…付勢手段としてのコイルスプリング、400…可動側カセット金型、423C…第二キャビティ、500…スライドコア、521…アンダーカット形成面としての切欠部、523…第三キャビティ。

Claims (2)

  1. 射出成形機の固定部に固定される固定金型と、前記射出成形機の可動部に、前記固定金型に対して進退移動可能に固定される可動金型と、これらの固定金型および可動金型に着脱可能に固定されるとともに、成形品に対応した形状のキャビティを形成するカセット金型と、を具備し、射出成形により成形品本体、およびこの成形品本体に一体的に設けられ
    るアンダーカット部を備えた成形品を成形する成形金型であって、
    前記固定金型および可動金型は、前記カセット金型を装着可能な装着部を備え、
    前記カセット金型は、前記固定金型の前記装着部に装着される固定側カセット金型と、
    前記可動金型の前記装着部に装着される可動側カセット金型と、前記固定側カセット金型および前記可動側カセット金型のうちいずれか一方に設けられるとともに、前記固定側カセット金型および前記可動側カセット金型の間で、前記可動部の進退方向と略直交する方向にスライド移動可能に設けられる一対のスライドコアと、を備え、
    前記固定側カセット金型および前記可動側カセット金型のうち少なくともいずれか一方は、他方に対向する面に前記成形品本体を形成する前記キャビティを有し、
    一対の前記スライドコアは、互いに対向する面に前記アンダーカット部に対応する形状のアンダーカット形成面を有し、
    前記固定側カセット金型および前記可動側カセット金型のうち、前記一対のスライドコアが設けられない一方には、前記可動部を前記固定部側に移動させた際に、一対の前記スライドコアの一端部に当接可能なコア当接部を有し、このコア当接部で前記スライドコアを互いに近接する方向に押し出す一対のブロック部が設けられ、
    これらのブロック部は、前記コア当接部が前記スライドコアのスライド方向に進退可能に設けられるとともに、一対の前記スライドコアが近接する方向に、前記コア当接部を付勢する付勢手段を備えたことを特徴とした成形金型。
  2. 請求項1に記載の成形金型であって、
    前記固定側カセット金型は、第一歯車を形成するキャビティを備え、
    前記可動側カセット金型は、前記第一歯車の歯と所定位相差だけ異なる位置に歯が設けられる第二歯車を形成するキャビティを備え、
    一対の前記スライドコアは、前記第一歯車および前記第二歯車の間に設けられるとともに、これら第一歯車および第二歯車を連結するアンダーカット部を形成することを特徴とした成形金型。
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