JP5365663B2 - 熱硬化性樹脂組成物ならびにそれを用いた成形用材料およびポッティング材 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物ならびにそれを用いた成形用材料およびポッティング材 Download PDF

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Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物ならびにそれを用いた成形用材料およびポッティング材に関する。
従来、高圧電気・電子部品の製造法として、ケースまたは金型内に部品をセットし、ポッティング材を常圧または真空下で注入して硬化させるポッティング法が知られている。一般に、上記ポッティング材には、耐熱性や電気絶縁性、特に絶縁破壊特性が要求されることから、ポッティング材としては、エポキシ樹脂に酸無水物およびその硬化促進剤を混合したエポキシ樹脂組成物が用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
近年、電気・電子部品の分野においては、各種のデバイス、装置または機器の小型化が重要な目的にされている。しかしながら、従来のエポキシ樹脂組成物は絶縁破壊特性が十分ではなく、信頼性を維持するためにある程度の量のポッティング材を使用する必要があり、装置等の小型化の障害になることがあった。そのため、これらに用いられるポッティング材にもより優れた特性が要求されてきている。
特開平7−18059号公報 特開平11−5890号公報 特開2000−336249号公報
本発明は、絶縁破壊特性に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討した結果、エポキシ基を有する特定のシリコーン化合物と、酸無水物と、シリカとを含有する熱硬化性樹脂組成物は、優れた絶縁破壊特性を有することを知見した。
また、本発明者は、エポキシ樹脂と、イミダゾールシランと、酸無水物と、シリカとを含有する熱硬化性樹脂組成物は、優れた絶縁破壊特性を有することを知見した。
本発明者は、これらの知見に基づき、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記の(1)〜(17)を提供する。
(1)下記式(1)で表される単位を有し、1分子中に少なくとも3個のR′を有し、アルコキシ基を含有しないシリコーン化合物と、
酸無水物と、
シリカと
を含有する熱硬化性樹脂組成物。

(式中、Rは水素原子または1価の炭化水素基を表し、R′はエポキシ基を有する有機基を表す。)
(2)前記シリコーン化合物が下記式(2)で表される上記(1)に記載の熱硬化性樹脂組成物。

(式中、Rは水素原子または1価の炭化水素基を表し、R′はエポキシ基を有する有機基を表し、cは3〜5の整数を表し、dは0〜2の整数を表し、cとdの和は3〜5の整数である。)
(3)前記R′が、エポキシシクロヘキシル基を有する有機基である上記(1)または(2)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(4)前記シリカを、樹脂組成物全体の20〜75質量%含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(5)前記シリカの平均粒径が5〜30μmである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(6)前記シリカの50質量%以上が粉砕型結晶性シリカである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(7)更に、エポキシ樹脂を含有する上記(1)〜(6)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(8)前記シリコーン化合物を、前記シリコーン化合物と前記エポキシ樹脂との合計の5質量%以上含む上記(7)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(9)エポキシ樹脂と、イミダゾールシランと、酸無水物と、シリカとを含有する熱硬化性樹脂組成物。
(10)前記イミダゾールシランが、下記式(11)〜(15)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である上記(9)に記載の熱硬化性樹脂組成物。

(式中、R1は、それぞれ独立に、水素原子、ビニル基または炭素数1〜5のアルキル基であり、R2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基であり、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ、1〜3の整数であり、kおよびlは、それぞれ、1〜5の整数であり、pは0〜30の整数である。)
(11)前記シリカの含有量が、樹脂組成物全体の20〜75質量%である上記(9)または(10)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(12)前記シリカの平均粒径が5〜30μmである上記(9)〜(11)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(13)前記エポキシ樹脂が、下記式(1)で表される単位を有し、1分子中に少なくとも3個のR′を有し、アルコキシ基を含有しない環状シロキサンであるエポキシシリコーン化合物を含む上記(9)〜(12)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。

(式中、Rは水素原子または1価の炭化水素基であり、R′はエポキシ基を有する有機基である。)
(14)前記R′が、エポキシシクロヘキシル基を有する有機基である上記(13)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(15)前記エポキシ樹脂が、前記エポキシシリコーン化合物を5質量%以上含む上記(13)または(14)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(16)上記(1)〜(15)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる成形用材料。
(17)上記(1)〜(15)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなるポッティング材。
本発明の第一態様の熱硬化性樹脂組成物は、絶縁破壊特性に優れる。また、更にエポキシ樹脂を含有する態様では、より優れた絶縁破壊特性を有する。
本発明の第二態様の熱硬化性樹脂組成物は、絶縁破壊特性に優れる。
図1は、絶縁破壊電圧の測定装置の概念図である。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の第一態様の熱硬化性樹脂組成物(以下、「第一態様の組成物」ともいう。)は、上記式(1)で表される単位を有し、1分子中に少なくとも3個のR′を有し、アルコキシ基を含有しないシリコーン化合物と、酸無水物と、シリカとを含有するものである。
このシリコーン化合物は、シロキサン骨格を有するため、それ自体が絶縁破壊特性に優れている。また、一般に、エポキシ樹脂は硬化する際に収縮し、その硬化物には歪み(硬化内部歪み)が生じることがある。この硬化物の歪みは、絶縁破壊特性の低下の原因の一つと考えられている。また、この硬化内部歪みの存在により、硬化物のヒートサイクル性が低下し、クラック等の欠陥も発生しやすくなる。ここで、硬化物中にその様な欠陥が存在すると絶縁破壊特性が低下する。一方、第一態様の組成物に用いられるシリコーン化合物は、従来のエポキシ樹脂よりも硬化収縮が小さい。そのため、エポキシ樹脂と併用したときには硬化物の歪みを低減することができ、優れた絶縁破壊特性を得ることができると考えられる。
ここで、「絶縁破壊特性」とは、絶縁材料が電圧に耐え得る能力を意味する。
<シリコーン化合物>
第一態様の組成物に用いられるシリコーン化合物は、下記式(1)で表される単位を有し、1分子中に少なくとも3個のR′を有し、アルコキシ基を含有しないシリコーン化合物である。特に、作業性に優れる点から、液状のものが好ましい。
上記式(1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子または置換もしくは非置換の1価の炭化水素基である。1価の炭化水素基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜8のものがより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基等の1価の炭化水素基;これらの1価の炭化水素基の水素原子の一部または全部が、グリシジル基(ただし、エポキシシクロヘキシル基は除く)、メタクリル基、アクリル基、メルカプト基、アミノ基等で置換された基が挙げられる。
Rとしては、メチル基、エチル基、水素原子が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記式(1)中、R′は、エポキシ基を有する有機基であり、具体的には、例えば、グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基等が挙げられる。特に、R′は、エポキシシクロヘキシル基を有する有機基であることが硬化収縮が小さいという点から好ましい。
上記シリコーン化合物は、1分子中に少なくとも3個のR′を有し、1分子中に3〜8個有することが好ましい。上記シリコーン化合物がこの範囲でR′を有すると、硬度が高く、靭性にも優れた被膜が得られる。
上記シリコーン化合物は、重合度が3〜100であることが好ましい。重合度がこの範囲であると、シリカとの親和性が良く、また、工業的に合成が容易であるため、入手し易い。これらの特性に加えて、更に硬化収縮を抑えることができる点から、重合度は3〜50がより好ましく、3〜10が更に好ましい。
上記シリコーン化合物は、アルコキシ基を含有しない。そのため、脱アルコール反応による硬化収縮がなく、エポキシ樹脂と併用した場合、優れた絶縁破壊特性を得ることができる。
上記シリコーン化合物としては、例えば、直鎖構造、環構造のものが挙げられる。
直鎖構造体としては、下記式(3)で表される直鎖状シリコーン化合物が挙げられる。
上記式(3)中、RおよびR′は上記と同義であり、R″はRまたはR′を表す。aは1〜10の整数を表し、4〜8の整数が好ましい。bは0〜8の整数を表し、0〜4の整数が好ましい。aとbの和は2〜10の整数であり、4〜8が好ましい。ただし、a=1の場合は両末端のR″はR′であり、a=2の場合はR″の少なくとも1つはR′である。
各R、R′およびR″は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
上記式(3)で表される化合物の中では、下記式(3′)で表される直鎖状シリコーン化合物が好ましい。
上記式(3′)中、R、R′、R″、aおよびbは上記と同義である。
特に、下記式(4)で表される直鎖状シリコーン化合物が好ましい。
上記式(4)中、R′は上記と同義であり、eは3〜10の整数を表す。eは、3〜8の整数が好ましい。
環構造体としては、下記式(2)で表される環状シリコーン化合物が、硬化収縮が小さい点から好適に挙げられる。
上記式(2)中、RおよびR′は上記と同義である。cは3〜5の整数を表し、3〜4の整数が好ましい。dは0〜2の整数を表し、0〜1の整数が好ましい。cとdの和は3〜5の整数であり、4が好ましい。
上記式(2)で表される化合物の中でも、下記一般式(2′)で表される環状シリコーン化合物がより好ましい。
上記式(2′)中、R、R′、cおよびdは、上記と同義である。
特に、下記式(5)で表される環状シリコーン化合物が好ましい。
上記式(5)中、R′は上記と同義である。fは3〜5の整数を表し、4が好ましい。特に、上記シリコーン化合物は、上記式(5)中、fが4である化合物を50質量%以上含むのが好ましい。
上記シリコーン化合物の具体例としては、(CH33SiO(R′CH3SiO)5Si(CH33、(CH33SiO(R′CH3SiO)6Si(CH33、(CH33SiO(R′CH3SiO)7Si(CH33、(CH33SiO(R′CH3SiO)8Si(CH33、(CH33SiO(R′CH3SiO)9Si(CH33、(CH33SiO(R′CH3SiO)10Si(CH33、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)2Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)3Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)4Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)5Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)6Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)7Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)8Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)9Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)2((CH32SiO)2Si(CH32R′、
R′(CH32SiO(R′CH3SiO)3((CH32SiO)Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)3((CH32SiO)2Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)4((CH32SiO)Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)4((CH32SiO)2Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)5((CH32SiO)Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)5((CH32SiO)2Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)5((CH32SiO)3Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)6((CH32SiO)Si(CH32R′、
R′(CH32SiO(R′CH3SiO)6((CH32SiO)2Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)6((CH32SiO)3Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)7((CH32SiO)Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)7((CH32SiO)2Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)7((CH32SiO)3Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)7((CH32SiO)4Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)8((CH32SiO)Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)8((CH32SiO)2Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)8((CH32SiO)3Si(CH32R′、
R′(CH32SiO(R′CH3SiO)4(R0CH3SiO)Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)5(R0CH3SiO)Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)6(R0CH3SiO)Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)7(R0CH3SiO)Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)8(R0CH3SiO)Si(CH32R′、R′(CH32SiO(R′CH3SiO)9(R0CH3SiO)Si(CH32R′、(R′CH3SiO)3、(R′CH3SiO)4、(R′CH3SiO)5、(R′CH3SiO)3((CH32SiO)、(R′CH3SiO)3(C37(CH3)SiO)等が挙げられる。ここで、R′は上記と同義であり、R0はメタクリロキシプロピル基を示す。
上記シリコーン化合物は、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、白金化合物等の触媒を用いて、オルガノハイドロジェンポリシロキサンにアリルグリシジルエーテル(例えば、4−ビニルシクロヘキセンオキシド)を付加反応(ヒドロシリル化)させることによって得ることができる。
また、上記シリコーン化合物は、市販品を用いることもできる。例えば、X−40−2670(信越化学工業(株)製)が好適に用いられる。
<酸無水物>
第一態様の組成物は、硬化剤として酸無水物を含有する。硬化剤として酸無水物を用いた場合、絶縁破壊特性に優れる。特に、作業性に優れる点から液状の酸無水物が好ましい。
上記酸無水物は、分子中に酸無水物基を少なくとも1つ有するものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、メチルハイミック酸無水物、ハイミック酸無水物、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、クロレンド酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸マレイン酸付加物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、水素化メチルナジック酸無水物、グリセロールビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、下記式(6)で表される化合物および下記式(7)で表される化合物等が挙げられる。
上記酸無水物の中でも、液状であるもの、即ち、メチルハイミック酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸マレイン酸付加物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、水素化メチルナジック酸無水物、グリセロールビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、上記式(6)で表される化合物および上記式(7)で表される化合物が好ましい。
上記酸無水物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記酸無水物は、組成物中のエポキシ基の合計に対して酸無水物基が0.7〜1.0当量となる量含有されるのが、硬化物の架橋密度が高く、耐熱性および絶縁破壊特性に優れる点から好ましい。これらの特性により優れる点から、上記酸無水物は、組成物中のエポキシ基の合計に対して酸無水物基が0.8〜1.0当量となる量含有されるのがより好ましい。
<シリカ>
第一態様の組成物に用いられるシリカは、特に限定されず、例えば、粉砕型結晶性シリカ、粉砕型および粉砕溶融型アモルファスシリカ、球状のアモルファスシリカ(球状溶融シリカ)、液状封止用の真球状のアモルファスシリカ(液状封止用シリカ)等を用いることができる。中でも、粉砕型結晶性シリカが、絶縁破壊特性を付与する効果が高く、また、汎用シリカとして入手し易い点から好ましい。
一般に、電圧をかけたときに樹脂とフィラー(シリカ等)の界面で絶縁破壊が生じやすいと考えられている。これに対して、粉砕型結晶性シリカは、その表面が角ばっており、樹脂とシリカの界面でのスムーズな絶縁破壊の進行が阻害されるためであると考えられる。
そのため、第一態様の組成物に用いられるシリカのうち、粉砕型結晶性シリカが40質量%以上含まれることが好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。
上記粉砕型結晶性シリカは、例えば、シリカフラワー、ケイ石、シリカサンド等の天然シリカ原石を粉砕して得ることができる。市販品としては、クリスタライトA1、クリスタライトAA、クリスタライトCMC、ヒューズレックスRD−8、ヒューズレックスE1、ヒューズレックスE2(いずれも、龍森(株)製)等が挙げられる。
上記粉砕型結晶性シリカは、粉砕型結晶性シリカを、シランカップリング剤等で表面処理したものも含む。
上記シリカは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第一態様の組成物に用いられるシリカは、平均粒径が5〜30μmであることが好ましい。この範囲の粒径であれば、絶縁破壊特性を付与する効果が大きく、硬化物の物性のバランスに優れ、組成物の粘度が高くなり過ぎることがない。これらの特性により優れる点から、シリカの平均粒径は6〜25μmがより好ましく、7〜20μmが更に好ましい。
上記シリカの含有量は、組成物全体の20〜75質量%であることが好ましい。含有量がこの範囲であれば、絶縁破壊特性を付与する効果が大きく、硬化物の物性のバランスに優れ、組成物の粘度が高くなり過ぎることがない。これらの特性により優れる点から、シリカの含有量は、組成物全体の30〜70質量%がより好ましく、40〜65質量%が更に好ましい。
<エポキシ樹脂>
第一態様の組成物は、更に、エポキシ樹脂を含有するのが好ましい。このエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、上記シリコーン化合物は除かれる。特に、液状のエポキシ樹脂が好ましい。
上記エポキシ樹脂としては、具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ピロカテコール、レゾルシノール、クレゾールノボラック、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールF、ビキシレノール、ジヒドロキシナフタレン等の多価フェノールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル型;グリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジルエーテル型;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルエステル型;
フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸等のポリカルボン酸から誘導されるポリグリシジルエステル型;アミノフェノール、アミノアルキルフェノール等から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエーテル型;アミノ安息香酸から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエステル型;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン等から誘導されるグリシジルアミン型;さらにエポキシ化ポリオレフィン、グリシジルヒダントイン、グリシジルアルキルヒダントイン、トリグリシジルシアヌレート等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂および下記式(8)で表される化合物等の脂環式エポキシ樹脂が、接着性や硬化物の耐熱性に優れる点から好ましい。
上記エポキシ樹脂の含有量は、上記シリコーン化合物を上記シリコーン化合物と上記エポキシ樹脂との合計の5質量%以上含むような量であることが、優れた絶縁破壊特性を発揮できるため好ましい。絶縁破壊特性により優れ、強度や接着性にも優れる点から、上記シリコーン化合物を、上記シリコーン化合物と上記エポキシ樹脂との合計の7〜100質量%含むことがより好ましく、10〜100質量%含むことが更に好ましい。
<イミダゾールシラン>
第一態様の組成物は、更に、後述する第二態様の組成物に用いられるイミダゾールシランを含有することが好ましい態様の一つである。
<硬化触媒>
第一態様の組成物は、更に、硬化触媒を含有することが好ましい。
硬化触媒としては、具体的には、例えば、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、下記式(9)で表される2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第三級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物、第四級ホスホニウム塩等が挙げられる。中でも触媒作用が強い点から、イミダゾール類および下記式(9)で表される化合物が好ましい。
硬化触媒の含有量は、上記シリコーン化合物および上記エポキシ樹脂の合計に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。
<添加剤>
第一態様の組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損わない範囲で、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤等の各種添加剤等を含有することができる。
充填剤としては、シリカ以外の各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物が挙げられる。充填剤の含有量は、作業性の点で、全組成物中の80質量%以下であるのが好ましい。
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、一般的に、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
第一態様の組成物は、1液型および2液型のいずれとすることもできるが、貯蔵安定性に優れる点から、2液型熱硬化性樹脂組成物として用いるのが好ましい。本発明の2液型熱硬化性樹脂組成物は、上記シリコーン化合物と、所望により用いられる上記エポキシ樹脂とを含有する主剤(第1液)と、上記酸無水物を含有する硬化剤(第2液)とからなる。上記シリカならびに所望により用いられる硬化触媒およびその他の添加剤は、主剤および硬化剤のどちらか一方または両方に配合することができる。
第一態様の組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、反応容器に上記の各必須成分と任意成分とを入れ、減圧下で混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混練する方法を用いることができる。
このようにして得られる第一態様の組成物は、絶縁破壊特性に優れる。また、上記エポキシ樹脂を併用した場合は、硬化物の歪みが低減されるため、より絶縁破壊特性に優れた組成物となる。したがって、絶縁破壊特性が求められる部品等に用いられた場合、それらの部品等をより小型化することが可能となる。
第一態様の組成物の用途としては、特に限定されないが、例えば、フライバックトランス、コンデンサー、モーター、変圧器、イグニッションコイル、LED等の成形用材料およびこれらのポッティング材が好適に挙げられる。
以下、本発明の第二態様の熱硬化性樹脂組成物をより詳細に説明する。
本発明の第二態様の熱硬化性樹脂組成物(以下、「第二態様の組成物」ともいう。)は、エポキシ樹脂と、イミダゾールシランと、酸無水物と、シリカとを含有する熱硬化性樹脂組成物である。
<エポキシ樹脂>
第二態様の組成物に用いられるエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。特に、作業性に優れる点から、液状のエポキシ樹脂が好適に用いられる。
上記エポキシ樹脂としては、具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ピロカテコール、レゾルシノール、クレゾールノボラック、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールF、ビキシレノール、ジヒドロキシナフタレン等の多価フェノールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル型;グリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジルエーテル型;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルエステル型;
フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸等のポリカルボン酸から誘導されるポリグリシジルエステル型;アミノフェノール、アミノアルキルフェノール等から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエーテル型;アミノ安息香酸から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエステル型;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン等から誘導されるグリシジルアミン型;さらにエポキシ化ポリオレフィン、グリシジルヒダントイン、グリシジルアルキルヒダントイン、トリグリシジルシアヌレート等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂および上記式(8)で表される化合物等の脂環式エポキシ樹脂が、接着性や硬化物の耐熱性に優れる点から好ましい。
第二態様の組成物に用いられるエポキシ樹脂は、上記式(1)で表される単位を有し、1分子中に少なくとも3個のR′を有し、アルコキシ基を含有しない環状シロキサンであるエポキシシリコーン化合物を含むのが好ましい。このエポキシシリコーン化合物は、上述した第一態様の組成物に用いられるシリコーン化合物と基本的に同様である。なお、第二態様の組成物においては、エポキシシリコーン化合物をエポキシ樹脂の一種として扱う。
上記エポキシシリコーン化合物は、シロキサン骨格を有するため、それ自体が絶縁破壊特性に優れている。また、上述したエポキシ樹脂(上記エポキシシリコーン化合物を除く)は、通常、硬化する際に収縮し、その硬化物に歪みが生じることがある。この硬化物の歪みは、絶縁破壊特性の低下の原因の一つと考えられている。一方、上記エポキシシリコーン化合物は、通常のエポキシ樹脂よりも硬化収縮が小さい。そのため、硬化物の歪みを低減することができ、優れた絶縁破壊特性を得ることができると考えられる。
上記エポキシシリコーン化合物は、1分子中に少なくとも3個のR′を有し、1分子中に3〜8個有することが好ましい。上記エポキシシリコーン化合物がこの範囲でR′を有すると、硬度が高く、靭性にも優れた被膜が得られる。
上記エポキシシリコーン化合物は、重合度が3〜100であることが好ましい。重合度がこの範囲であると、シリカとの親和性が良く、また、工業的に合成が容易であるため、入手し易い。これらの特性により優れる点から、重合度は3〜10がより好ましい。
上記エポキシシリコーン化合物は、アルコキシ基を含有しない。そのため、脱アルコール反応による硬化収縮がなく、優れた絶縁破壊特性を得ることができる。
上記エポキシシリコーン化合物としては、上記式(2)で表される環状エポキシシリコーン化合物が、硬化収縮が小さい点から好適に挙げられる。
上記式(2)で表される化合物の中でも、上記一般式(2′)で表される環状エポキシシリコーン化合物がより好ましい。
特に、上記式(5)で表される環状エポキシシリコーン化合物が好ましい。
上記エポキシシリコーン化合物の具体例としては、(R′CH3SiO)3、(R′CH3SiO)4、(R′CH3SiO)5、(R′CH3SiO)3((CH32SiO)、(R′CH3SiO)3(C37(CH3)SiO)等が挙げられる。ここで、R′は上記式(1)のR′と同義である。
上記エポキシシリコーン化合物は、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、白金化合物等の触媒を用いて、オルガノハイドロジェンポリシロキサンにアリルグリシジルエーテル、または4−ビニルシクロヘキセンオキシドを付加反応(ヒドロシリル化)させることによって得ることができる。
また、上記エポキシシリコーン化合物は、市販品を用いることもできる。例えば、X−40−2670(信越化学工業(株)製)が好適に用いられる。
第二態様の組成物に用いられるエポキシ樹脂は、優れた絶縁破壊特性を発揮できる点から、上記エポキシシリコーン化合物を5質量%以上含むのが好ましい。絶縁破壊特性により優れ、強度や接着性にも優れる点から、上記エポキシシリコーン化合物を7〜100質量%含むことがより好ましく、10〜100質量%含むことが更に好ましい。
<イミダゾールシラン>
第二態様の組成物に用いられるイミダゾールシランは、1分子中にイミダゾール基と、アルコキシシリル基とを有する化合物である。具体的には、例えば、下記式(11)〜(15)で表される化合物が好適に用いられる。特に、絶縁破壊特性に優れた組成物が得られる点から、下記式(14)で表される化合物および下記式(15)で表される化合物がより好ましい。これらの化合物が絶縁破壊特性に優れた組成物を与える理由は、ヒドロキシ基を有さないため誘電率が低くなるからであると考えられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記式中、R1は、それぞれ独立に、水素原子、ビニル基または炭素数1〜5のアルキル基であり、水素、メチル基、エチル基、ウンデシル基、ヘプタデシル基が好ましい。
2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基であり、水素、メチル基、ビニル基が好ましい。
3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、メチル基、エチル基が好ましい。
m、nは、それぞれ、1〜3の整数であり、2または3が好ましい。
k、lは、それぞれ、1〜5の整数であり、3が好ましい。
pは0〜30の整数であり、0〜10の整数であることが好ましい。
上記イミダゾールシランの合成は、公知の方法により行なうことができる。例えば、特開平5−186479号公報または特開2005−2000号公報に記載の製造方法を用いることができる。具体的には、例えば、80〜200℃の温度に加熱した下記式(16)で表されるイミダゾール化合物に、0.1〜10モル倍量の下記式(17)で表されるエポキシシランを滴下しながら、5分〜2時間程度反応させると、上記式(11)、(12)および(13)で表される化合物が混合物の状態で得られる。
更に、この混合物に下記式(18)で表されるイソシアネートシランを添加し−5〜100℃で反応させると、上記式(11)および(13)の化合物の水酸基と上記イソシアネートシランのイソシアネート基とが反応して上記式(14)および(15)の化合物が得られる。この反応は、反応を穏やかに進行させるために室温下で上記反応混合物中にイソシアネートシランを滴下して行うのが好ましい。上記反応混合物に含まれる式(11)および(13)の化合物と、式(18)で表されるイソシアネートシランとのモル比は、0.8〜1.2が好ましく、0.9〜1.1がより好ましい。
上記式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、n、k、lおよびmは、上記式(11)〜(15)と同義である。
上記混合物は、溶解度の差を利用する方法、カラムクロマトグラフィー等の既知の手段により精製され、単離されうる。これらのイミダゾールシランは必ずしも単離する必要はなく、混合物のまま用いることができる。
この反応は、特に溶媒を必要とはしないが、クロロホルム、ジオキサン、メタノール、エタノール等の有機溶剤を反応溶媒として用いてもよい。なお、この反応は、水分を嫌うので、水分が混入しないように、乾燥した窒素、アルゴン等の水分を含まない気体の雰囲気下で行うことが好ましい。
上記イミダゾールシランの含有量は、エポキシ樹脂全体の0.01〜10質量%であることが好ましい。この範囲であると、60℃程度での可使時間が十分に取れ、得られる組成物の硬化物が、絶縁破壊特性に優れる。また、得られる組成物の接着性および硬化性にも優れる。これらの特性により優れる点から、エポキシ樹脂全体の0.05〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜3質量%であることが更に好ましい。
第二態様の組成物は、上記イミダゾールシランを含有することにより、優れた絶縁破壊特性を有する硬化物が得られる。また、得られる組成物は、接着性にも優れる。
<酸無水物>
第二態様の組成物は、硬化剤として酸無水物を含有する。硬化剤として酸無水物を用いた場合、絶縁破壊特性に優れる。特に、作業性に優れる点から液状の酸無水物が好ましい。上記酸無水物は、上述した第一態様の組成物に用いられる酸無水物と同様である。
上記酸無水物は、樹脂組成物中のエポキシ基の合計に対して酸無水物基が0.7〜1.0当量となる量含有されるのが、硬化物の架橋密度が高く、耐熱性および絶縁破壊特性に優れる点から好ましい。これらの特性により優れる点から、上記酸無水物は、樹脂組成物中のエポキシ基の合計に対して酸無水物基が0.8〜1.0当量となる量含有されるのがより好ましい。
<シリカ>
第二態様の組成物に用いられるシリカは、上述した第一態様の組成物に用いられるシリカと同様である。
上記シリカの含有量は、樹脂組成物全体の20〜75質量%であることが好ましい。含有量がこの範囲であれば、絶縁破壊特性を付与する効果が大きく、硬化物の物性のバランスに優れ、組成物の粘度が高くなり過ぎることがない。これらの特性により優れる点から、シリカの含有量は、樹脂組成物全体の30〜75質量%がより好ましく、40〜70質量%が更に好ましい。
<硬化触媒>
第二態様の組成物は、必要に応じて、更に、硬化触媒を含有することができる。硬化触媒は、上述した第一態様の組成物に用いられる硬化触媒と同様である。
<添加剤>
第二態様の組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損わない範囲で、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤等の各種添加剤を含有することができる。これらの各種添加剤は、上述した第一態様の組成物に用いられる添加剤と同様である。
第二態様の組成物は、1液型および2液型のいずれとすることもできるが、貯蔵安定性に優れる点から、2液型熱硬化性樹脂組成物として用いるのが好ましい。本発明の2液型熱硬化性樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂を含有する主剤(第1液)と、上記酸無水物を含有する硬化剤(第2液)とからなる。上記イミダゾールシラン、シリカならびに所望により用いられる硬化触媒およびその他の添加剤は、主剤および硬化剤のどちらか一方または両方に配合することができる。
第二態様の組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、反応容器に上記の各必須成分と任意成分とを入れ、減圧下で混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混練する方法を用いることができる。
このようにして得られる第二態様の組成物は、絶縁破壊特性に優れた熱硬化性樹脂組成物が得られる。したがって、絶縁破壊特性が求められる部品等に用いられた場合、それらの部品等をより小型化することが可能となる。
なお、第二態様の組成物は、60℃程度に加温し粘度を下げて使用することができる。
第二態様の組成物の用途としては、特に限定されないが、例えば、フライバックトランス、コンデンサー、家電用モーター、ソレノイドコイル等の弱電分野、変圧器、発電機等の重電分野、イグニッションコイル、オルタネーターなどの電装品、LED等の電子分野等の成形用材料およびこれらのポッティング材;航空機部品、プリント基板、スポーツ用品等のFRPが好適に挙げられる。
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1〜11および比較例1〜3>
下記第1表の各成分を、第1表に示す組成(質量部)で、撹拌機を用いて混合し、第1表に示される各組成物を得た。得られた各組成物を用いて下記の方法により絶縁破壊特性を評価した。なお、第1表中、シリカ量とは、組成物全体に対するシリカの量(質量%)を意味する。
<絶縁破壊特性の評価>
得られた各組成物を、100℃で1時間、更に150℃で2時間硬化させることにより、100×100×1.2mmのシート状の試験体を作成した。得られた各試験体について、JIS C2110−1994に準じ、絶縁破壊試験器(HAT300−100RHO形、日化テクノサービス社製)を用いて、絶縁破壊電圧を測定した。以下、具体的な測定方法を図に従って説明する。
図1は、絶縁破壊電圧の測定装置の概念図である。試験体1をオイルバス3中で、金属製の直径20mmの球状電極7と、金属製の直径25mmの円柱電極9とで挟んで固定した後、オイルバス3内をシリコン油5で満たし、150℃に加熱した。150℃で2分保持後、昇電圧速度2kV/秒で電圧をかけ始め、試験体1が破壊したときの電圧を測定した。このときの電圧を絶縁破壊電圧という。
測定された絶縁破壊電圧を試験体の厚さ(1.2mm)で除した値(絶縁破壊強さ(kV/mm))を第1表に示す。
上記第1表に示す各成分は、以下のとおりである。
・シリコーン化合物(下記式(19)で表される化合物):X−40−2670、信越化学工業(株)製
・エポキシ樹脂1(ビスフェノールA型エポキシ樹脂):EP4100E、旭電化工業(株)製
・エポキシ樹脂2(上記式(8)で表される脂環式エポキシ樹脂):セロキサイド2021P、ダイセル化学工業(株)製
・酸無水物1(上記式(6)で表される化合物):MT500TZ、新日本理化(株)製
・酸無水物2(上記式(7)で表される化合物):MTA15、新日本理化(株)製
・硬化触媒1:1−メチルイミダゾール、関東化学(株)製
・硬化触媒2(上記式(9)で表される化合物):2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、関東化学(株)製
・エポキシシラン:KBM403、信越化学工業(株)製
・シリカ1(粉砕型結晶性シリカ):クリスタライトA1、平均粒径12μm、(株)龍森製
・シリカ2(粉砕型結晶性シリカ):クリスタライトAA、平均粒径6μm、(株)龍森製
・シリカ3:上記シリカ1をエポキシシラン(KBM403、信越化学工業(株)製)で表面処理したもの
第1表に示す結果から明らかなように、シリカを含有しない組成物(比較例3)は、絶縁破壊強さが20(kV/mm)未満であり絶縁破壊特性が悪かったが、シリコーン化合物を含有しないが、シリカを含有するエポキシ樹脂組成物(比較例1および2)は、絶縁破壊特性が良好であった。一方、シリコーン化合物およびシリカを含有する組成物(実施例1)は、絶縁破壊強さが31.9(kV/mm)であり比較例1〜3の組成物に比べて優れていた。更にエポキシ樹脂を含有する組成物(実施例2〜11)は、実施例1と同等またはそれ以上の絶縁破壊強さを有していた。中でも、実施例11の組成物は、絶縁破壊強さが38.2(kV/mm)であり、比較例1に比べて約37%絶縁破壊強さが向上した。
<参考例1〜9および比較例4〜7>
下記第2表の各成分を、第2表に示す組成(質量部)で、撹拌機を用いて混合し、第2表に示される各組成物を得た。得られた各組成物を用いて上記の方法により絶縁破壊特性を評価した。結果を第2表に示す。
上記第2表に示す各成分は、以下のとおりである。
・エポキシ樹脂1(ビスフェノールA型エポキシ樹脂):EP4100E、旭電化工業(株)製、エポキシ当量188
・エポキシ樹脂3(上記式(19)で表される化合物):X−40−2670、信越化学工業(株)製、エポキシ当量200
・酸無水物1(上記式(6)で表される化合物(メチルテトラヒドロ無水フタル酸)):MT500TZ、新日本理化(株)製
・酸無水物3(メチルジナック酸無水物):カヤハードMCD、日本化薬(株)製
・シリカ1(粉砕型結晶性シリカ):クリスタライトA1、平均粒径12μm、(株)龍森製
・イミダゾールシラン1(上記式(1)〜(3)で表される化合物の混合物):IM1000、(株)日鉱マテリアルズ製
・イミダゾールシラン2(上記式(4)および(5)で表される化合物の混合物):IS1000、(株)日鉱マテリアルズ製
・エポキシシラン:KBM403、信越化学工業(株)製
・硬化触媒1:1−メチルイミダゾール、関東化学(株)製
第2表に示す結果から明らかなように、参考例1〜9の組成物の硬化物は、比較例4〜7の組成物の硬化物と比較して、優れた絶縁破壊特性を有していた。
1 試験体
3 オイルバス
5 シリコン油
7 球状電極
9 円柱電極

Claims (10)

  1. 下記式(2)で表されるシリコーン化合物と、
    酸無水物と、
    シリカと
    を含有する熱硬化性樹脂組成物。

    (式中、Rは、それぞれ独立に、1価の炭化水素基を表し、R′はエポキシシクロヘキシル基を有する有機基を表し、cは3〜5の整数を表す。)
  2. 前記シリカを、樹脂組成物全体の20〜75質量%含有する請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記シリカの平均粒径が5〜30μmである請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記シリカの50質量%以上が粉砕型結晶性シリカである請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 更に、前記シリコーン化合物以外のエポキシ樹脂を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 前記シリコーン化合物を、前記シリコーン化合物と前記エポキシ樹脂との合計の5質量%以上含む請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. 更に硬化触媒を含有し、前記硬化触媒の量が、前記シリコーン化合物および前記エポキシ樹脂の合計に対して0.01〜10質量%である請求項5または6に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 前記酸無水物は、組成物中のエポキシ基の合計に対して酸無水物基が0.7〜1.0当量となる量で含有される請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる成形用材料。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなるポッティング材。
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