JP2017066364A - 樹脂組成物 - Google Patents

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章則 木村
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Toshiyuki Tanaka
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Phuong Thi Kim Dao
ティ キム フォン ダオ
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Abstract

【課題】 多くのフィラーを含む樹脂組成物であっても、フィラーの表面処理や溶媒への分散の必要がない、液状の封止用樹脂組成物を提供することを課題とする。【解決手段】50重量%以上の無機フィラーを含む樹脂組成物であって、Shear rate0.009s−1時の粘度が1500Pa・s以下であることを特徴とする樹脂組成物により解決することができる。前記樹脂組成物には、有機基変性シリコーン樹脂を含むことが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、半導体デバイス等の封止材として好適に用いられる樹脂組成物に関する。
半導体デバイス等の封止材には、絶縁性、熱信頼性に加え、低い線膨張率が求められる。これは、線膨張率が高い樹脂を封止材として用いる場合、半導体デバイスから発生する熱により封止樹脂が膨張したり割れたりすることを防ぐためである。線膨張率を下げるために、封止材に充填剤(フィラー)を加えることが一般的に行われている(例えば、特許文献1又は2)。
またデバイスの封止は、樹脂の種類により封止方法が異なる。一般にエポキシ系の樹脂で封止する際にはトランスファー成形などによる封止が行われ、シリコーン系樹脂ではポッティングによる封止が行われている。いずれの方法であっても封止樹脂には流動性が必要となる。
特開2004−27005号公報 特開2009−67890号公報
前述の通り、封止材の線膨張率を下げるためには、フィラーなどの充填剤を多く含有させる必要がある。しかし、フィラーの量を増加させると、封止材(樹脂組成物)の流動性が低くなり、成形時のハンドリングが困難になる。さらにポッティングした後にレベリングせずに、半導体パッケージ内側の全域および細部まで樹脂が濡れ広がらないことで封止が不完全になるという問題があった。特に、一般的にフィラーを50重量%以上含有させると、粘度が高くなりすぎ、十分な流動性を持つ液状の樹脂組成物の提供はできなかった。
またフィラーを高充填した樹脂組成物の粘度を下げるための手段としては、フィラーの表面をあらかじめ処理する方法、又は溶媒に分散させる方法が一般的である。しかし、フィラーの表面処理にはコストがかかり、溶媒に分散させる方法では溶媒除去にプロセスコストがかかるという問題があった。
さらに耐熱性に優れた汎用シリコーン材料を用いる場合、その極性の低さから他の有機ポリマー及び添加剤との相溶性が著しく悪く、樹脂組成物の流動性が損なわれるという問題があった。
本発明は、多くのフィラーを含む樹脂組成物であっても、フィラーの表面処理や溶媒への分散の必要がない、液状の封止用樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、フィラーを50重量%以上含む樹脂組成物に、特定のシリコーンを加えることで、前記樹脂組成物の流動性を効果的に改善し、ポッティングした後にレべリングしやすく、半導体パッケージ内側の全域および細部まで樹脂が濡れやすいことを見出した。すなわち、本発明は以下のとおりである。[1]50重量%以上の無機フィラーを含む樹脂組成物であって、Shear rate0.009s−1時の粘度が1500Pa・s以下であることを特徴とする樹脂組成物。
[2]前記樹脂組成物は、有機基変性シリコーン樹脂を含むものである、前記[1]記載の樹脂組成物。
[3]有機基変性シリコーン樹脂が、エポキシ基変性シリコーン樹脂、アルコール基変性シリコーン樹脂及びカルボキシル基変性シリコーン樹脂から選択される少なくとも1種である前記[2]記載の樹脂組成物。
[4]有機基変性シリコーン樹脂の重量平均分子量が100以上、10000以下である前記[2]又は[3]記載の樹脂組成物。
[5]エポキシ基変性シリコーン樹脂の重量平均分子量が100以上、4000以下である前記[3]記載の樹脂組成物。
[6]エポキシ基変性シリコーン樹脂の含有量が、樹脂組成物全量を100重量%としたときに、0.1重量%以上、19重量%以下である、前記[3]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]エポキシ基変性シリコーン樹脂のエポキシ価が、100g/eq以上、4000g/eq以下である前記[3]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]無機フィラーが球状フィラーである、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]無機フィラーがシリカである、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]前記樹脂組成物はさらに酸無水物を含むものである、前記[1]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11]前記[1]〜[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を硬化してなる成形体。
[12]前記[1]〜[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて封止してなる半導体デバイス。
本発明によると、フィラーの表面処理や溶媒への分散の必要がない、フィラーを50重量%以上含有する液状の樹脂組成物を提供できる。すなわち、当該樹脂組成物を硬化物とした際の線膨張率を低くでき、且つ組成物としては流動性を有するため、ポッティングによる封止にも対応可能な樹脂組成物を提供できる。本発明の効果を奏する機構は、樹脂組成物として有機基変性シリコーン樹脂を含有することで、それがフィラー表面の極性基とよく親和するために、フィラー間の水素結合などの相互作用を効果的に遮断することで組成物の構造粘性を破壊できるためと考えられる。
以下、本発明を実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は本明細書に明示的又は黙示的に記載された実施形態に限定されるものではない。
以下の説明において、樹脂組成物の粘度に言及する場合、その測定方法は実施例記載の方法に準拠する。
また、以下の説明において、樹脂組成物の硬化物の平均線膨張率に言及する場合、熱機械分析(TMA)装置を用いて、圧縮モードで、JIS K7197規格に準拠して測定した平均線膨張率(CTE)を意味する。
I.樹脂組成物
本発明の第一の実施態様は、「50重量%以上の無機フィラーを含む樹脂組成物であって、Shear rate0.009s−1時の粘度が1500Pa・s以下であることを特徴とする樹脂組成物」である。前記樹脂組成物は液状であることを特徴とする。
本実施態様において液状とは、所定の条件で流動性を持つことをいう。詳細な測定方法については実施例記載の方法に準拠する。
本発明の樹脂組成物は、そのShear rate0.009s−1時の粘度が150
0Pa・s以下であり、好ましくは900Pa・s以下、より好ましくは850Pa・s以下である。この範囲の物性を満たすことにより、特にポッティングによる封止においてハンドリングが容易であるだけでなく、ポッティングした後にシェアをかけることなくレべリングし、半導体パッケージ内側の全域および細部まで樹脂が濡れやすい傾向にある。
以下、樹脂組成物に含まれる構成成分について詳細を説明する。
II.マトリックス樹脂
マトリックス樹脂としては特段限定されないが、熱硬化性樹脂が好ましい、具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、有機基変性シリコーン樹脂などが挙げられる。これらのうちエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、有機基変性シリコーン樹脂が好ましく、特にエポキシ変性シリコーン樹脂を含む樹脂組成物がより好適に用いられる。
熱硬化性樹脂の含有量としては、粘度低減及び硬化性の観点から、樹脂組成物全量を100重量%としたときに、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましい。また、19重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
以下、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及び有機基変性シリコーン樹脂について説明する。
1.エポキシ樹脂
エポキシ樹脂とは、分子内に1個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物の総称である。但し、本発明では、前述した環状エーテル化合物や後述するエポキシ変性シリコーン樹脂とは区別されるものである。すなわち、本発明の樹脂組成物として、後述するシリコーン樹脂やエポキシ変性シリコーン樹脂とは別に公知のエポキシ樹脂を組成物に混合しても良い。
熱硬化後の硬化物の貯蔵弾性率を高くする、特にパワーデバイスなど発熱量の多い場合に重要になる高温時の貯蔵弾性率を高くする観点からは、分子内に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有するエポキシ樹脂が好ましく、また分子内に3個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有するエポキシ樹脂がさらに好ましい。分子内に複数のオキシラン環(エポキシ基)を有することで、マトリクス樹脂の極性を調整でき、フィラーの構造粘性を破壊することでスラリーを低粘度化できる。また有するオキシラン環(エポキシ基)は脂環式エポキシ基、グリシジル基のどちらでも構わない。
具体的には例えば、エポキシ樹脂は芳香族オキシラン環(エポキシ基)含有化合物であってもよい。例としては、式(12)に示すようなビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラフルオロビスフェノールAなどのビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂、式(13)に示すようなビフェニル型のエポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの2価のフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールA、ノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラックなどのノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
Figure 2017066364
Figure 2017066364
[Rは炭素数1〜12の置換されていても良い炭化水素基またはハロゲンを示す]
上記芳香族オキシラン環(エポキシ基)含有化合物は、水素化して脂環構造を有するエポキシ樹脂及びオキセタン樹脂としてもよい。
またエポキシ樹脂は非芳香族オキシラン環(エポキシ基)含有樹脂であってもよい。また有するオキシラン環(エポキシ基)は脂環式エポキシ基、グリシジル基のどちらでも構わない。例としては、EX211L、EX216L、EX722P、EX810P (ナガセケムテックス社製)、セ
ロキサイド2021P(ダイセル社製)、YED216(三菱化学社製)を挙げることができる。また
熱硬化後の硬化物の貯蔵弾性率を高くする、特に高温時の貯蔵弾性率を高くする観点では、オキシラン環(エポキシ基)を3個以上有するエポキシ樹脂が好ましく、例えばEX321L、DLC301、DLC402 (ナガセケムテックス社製)が挙げられる。これらの多官能のエポキシ
樹脂を用いることで硬化物の線膨張係数を低く抑えることもできる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
2.シリコーン樹脂
シリコーン樹脂としては、熱硬化性のシリコーン樹脂であれば、特に限定されない。例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。硬化機構として、縮合型、付加型、UV型など特に限定されない。
3.有機基変性シリコーン樹脂
有機基変性シリコーン樹脂は、分子中に有機基を有する。有機基としては、エポキシ基、アルコール基、カルボキシル基、アクリル基、メタクリル基、チオール基、エーテル基、アラルキル基、アミノ基、アルキル基等が挙げられる。その内、エポキシ基、アルコール基又はカルボキシル基で変性されたシリコーン樹脂の少なくとも1種を使用することが好ましい。また、樹脂組成物として、少なくともエポキシ基で変性されたシリコーン樹脂を含むことがより好ましい。
上記のような有機基変性シリコーン樹脂を樹脂組成物に含有することで、それらがフィラー表面に滞在しやすく、また適度な極性の有機基を有することからフィラーに吸着しやすい。さらに適度な重量平均分子量を有することからフィラー表面に滞在しやすく、フィラーの構造粘性を破壊することができる。
また、ハンドリング、レベリングの向上、着色防止等の効果が得られる場合がある。具体的には有機基変性シリコーン樹脂のシリコーン部分がフィラーの低極性部位に、また有機基部分がフィラーの極性部位に接触することにより、樹脂組成物内の相分離構造を解消する界面活性剤として機能することがある。
さらには、上記有機基がエポキシ基と反応することで、硬化物の貯蔵弾性率を制御する
ことができる。具体的にはエポキシ基を反応する有機基をもつシリコーン樹脂を含む場合、その重量平均分子量が大きいと、硬化物の貯蔵弾性率を低下することができる。またその重量平均分子量が小さいと、貯蔵弾性率を上げることができる。
また上記エポキシ基変性シリコーン樹脂を樹脂組成物に含有することで、樹脂組成物内のエポキシ基の濃度を低減できることから、エポキシ基の反応速度を制御できる点で樹脂組成物の保管安定性を向上できる。
以下、エポキシ基、アルコール基及びカルボキシル基で変性されたシリコーン樹脂について説明する。
(1)エポキシ変性シリコーン樹脂
エポキシ変性シリコーン樹脂は、分子中にエポキシ基を有する。エポキシ基はグリシジル基でも脂環式エポキシ基であってもよく、好ましくはシクロヘキシルエポキシ基を有する脂環式エポキシ基を含む。樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂としては特にエポキシ変性シリコーン樹脂を含むものが好ましい。
エポキシ変性シリコーン樹脂の分子量としては、取扱い性、フィラー表面への濡れ性、粘度低減の観点から、GPCにより測定された重量平均分子量(Mw)が100以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、700以上であることが更に好ましい。また、4000以下であることが好ましく、3500以下であることがより好ましい。
また、熱硬化後の硬化物の貯蔵弾性率を高くする観点からは、GPCにより測定された重量平均分子量(Mw)が100以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、300以上であることが更に好ましい。また、4000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましい。
エポキシ変性シリコーン樹脂の含有量としては、粘度低減の観点から、樹脂組成物全量を100重量%としたときに、0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。また、19重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
以下、このエポキシ変性シリコーン樹脂の各成分について説明する。
エポキシ変性シリコーン樹脂は、エポキシ基を有するケイ素含有化合物である。ケイ素含有化合物とは、シラン化合物やシロキサン化合物である。
エポキシ基を有するケイ素含有化合物には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メチル)ジメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エチル)ジメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メチル)ジエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エチル)ジエトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル〕(メチル)ジメトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エチル)ジメトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メチル)ジエトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エチル)ジエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メトキシ)ジメチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メトキシ)ジエチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エトキシ)ジメチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メトキシ)ジメチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エトキシ)ジメチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕
(ジメチル)ジシロキサン、1,3−ビス(3− グリシドキシプロピル)1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、(3−グリシドキシプロピル)ペンタメチルジシロキサン、3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシランなどがある。
また、エポキシ基を含有するケイ素化合物には、式(1)で表されるオルガノポリシロキサンも含まれる。
(R11 SiO1/2a1(R12 SiO2/2b1(R13SiO3/2c1(SiO4/2d1(O1/2H)e1 ・・・(1)
式(1)において、R11、R12、R13はそれぞれ独立して1価の有機基を示し、かつ、1分子中において少なくとも1つがエポキシ基を含む有機基である。
式(1)において、R11 SiO1/2はMユニット、R12 SiO2/2はDユニット、R13SiO3/2はTユニット、SiO4/2はQユニットを、それぞれ表している。a1、b1、c1及びd1は、それぞれが0以上の整数であり、かつ、a1+b1+c1+d1≧3である。
式(1)において、R11、R12、R13は、好ましくは、炭素数1〜10の炭化水素基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチルエチル基などの置換アルキル基が挙げられる。
式(1)において、エポキシ基を含む有機基としては、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基などのエポキシアルキル基;2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基などのグリシドキシアルキル基;β−(又は2−)(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(又は3−)(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基などのエポキシシクロヘキシルアルキル基が例示される。
式(1)においてe1は0以上の整数であり、ケイ素原子に直接結合する水酸基(シラノール)の個数を表している。
エポキシ樹脂は、ケイ素原子に結合する加水分解性基を有するものであって、該加水分解性基を加水分解したときに、式(1)で表されるオルガノポリシロキサン(ただし、e1≧1)を生じる化合物であってもよい。換言すれば、式(1)で表されるオルガノポリシロキサン(ただし、e1≧1)において、ケイ素原子に直接結合した水酸基の全部又は一部を加水分解性基に置き換えた化合物であってもよい。
ここで、加水分解性基とは、加水分解によってケイ素原子に結合した水酸基(シラノール)を生じる基であり、具体例としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、水素、アセトキシ基、エノキシ基、オキシム基、ハロゲン基が挙げられる。好ましい加水分解性基はアルコキシ基であり、特に炭素数1〜3のアルコキシ基、すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基である。
上記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン型のエポキシ樹脂は、例えば、次の方法で製造することができる。
(方法1)エポキシ基を有するシラン化合物と、エポキシ基を有しないシラン化合物及び/又はそのオリゴマーとを、共加水分解及び重縮合させる方法。
(方法2)ヒドロシリル基を有するポリシロキサンに、エポキシ基と炭素−炭素二重結合基を有する有機化合物を付加させる方法。
(方法3)炭素−炭素二重結合を含む有機基を有するポリシロキサンの該二重結合部分を酸化させて、エポキシ基に変換する方法。
上記方法1でポリシロキサン型のエポキシ樹脂を製造する際に用いることのできる原料は次の通りである。
Mユニットを導入するための原料としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルシラノールなどが例示される。
Dユニットを導入するための原料としては、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン及びこれらの加水分解縮合物(オリゴマー)が例示される。
両末端に水酸基を有するジアルキルシロキサンオリゴマーとして、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン共重合体、ポリジフェニルシロキサンなどの両末端をシラノール変性した化合物が市販されている。
Tユニットを導入するための原料としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン及びこれらの加水分解縮合物が例示される。
Qユニットを導入するための原料としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びこれらの加水分解縮合物が例示される。
エポキシ基を導入するための原料としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メチル)ジメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エチル)ジメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メチル)ジエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エチル)ジエトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メチル)ジメトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エチル)ジメトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メチル)ジエトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エチル)ジエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メトキシ)ジメチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メトキシ)ジエチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エトキシ)ジメチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メトキシ)ジメチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エトキシ)ジメチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(ジメチル)ジシロキサン、1,3−ビス(3− グリシドキシプロピル)1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、(3−グリシドキシプロピル)ペンタメチルジシロキサン、3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシランなどが例示される。
エポキシ変性シリコーン樹脂のエポキシ価は、通常100g/eq以上、好ましくは200g/eq以上、より好ましくは250g/eq以上、さらに好ましくは300g/eq以上、特に好ましくは400g/eq以上であり、また4000g/eq以下、好ましくは3500g/eq以下、より好ましくは3000g/eq以下、さらに好ましくは2
500g/eq以下である。特に熱硬化後の硬化物の貯蔵弾性率を高くする観点からは、エポキシ価は少し低めにすることが好ましく、100g/eq以上、好ましくは150g/eq以上、であり、また4000g/eq以下、好ましくは3000g/eq以下、より好ましくは2000g/eq以下、さらに好ましくは1000g/eq以下である。
エポキシ価をこれら上限値以下とする(これは極性が低くなりすぎず、エポキシ密度が十分であることに対応する)ことにより、フィラー表面に樹脂が滞在しやすくなり、かつ十分に硬化させることが容易になり、硬化物が脆くなることを防ぐことができる。また下限値以上とする(これは極性が高くなりすぎず、エポキシ密度が過剰にならないことに対応する)ことにより、やはりフィラーの表面に樹脂が滞在しやすくなり、かつ硬化物の弾性率が大きくなりすぎることが無く、硬化時や使用中の温度変化によって生じる内部応力により、クラックが発生することを防ぐことが容易になる。
なお、上述の範囲は、前述した貯蔵弾性率の制御手段(例えば、(a)エポキシ樹脂の主鎖中に柔軟性を発現させる分子骨格を導入する方法、(b)可塑剤や反応性希釈剤を添加する方法、(c)エラストマーや熱可塑性樹脂を改質剤として添加する方法等)を用いることを前提としたものである。これらの手段を用いない場合、エポキシシリコーン樹脂のエポキシ価の下限は400g/eq以上であることが望ましい。
また、本発明において、エポキシ価とは、1当量(eq)のエポキシ基を含むエポキシ基含有化合物(重合体を含む)の質量(g)である。
樹脂組成物中の熱硬化性樹脂としては、上述した樹脂から1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。またフィラー表面への濡れ性の観点から、エポキシ変性シリコーン樹脂を含むことが好ましい。
次に、アルコール基で変性されたシリコーン樹脂、カルボキシル基で変性されたシリコーン樹脂について説明する。これらの変性シリコーン樹脂について、その分子量としては、取扱い性、フィラー表面への濡れ性、粘度低減の観点から、GPCにより測定された重量平均分子量(Mw)が100以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、2000以上であることが更に好ましい。また、10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましい。これらの変性シリコーン樹脂の含有量としては、粘度低減、硬化物の貯蔵弾性率制御の観点から、樹脂組成物全量を100重量%としたときに、0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上である。また、19重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
(2)アルコール基変性シリコーン樹脂
アルコール基変性シリコーン樹脂は、分子中に1級アルコール、2級アルコール、3級アルコールのいずれか、もしくは複数を有しており、好ましくは1級アルコールを含む。そのようなシリコーン樹脂としては式(2)のようなものが挙げられる。
Figure 2017066364
(nは、1〜120の整数、aは1〜10の整数、bは1〜10の整数を示す。)
式(2)において、RとRは2価の有機基を示す。RとRの例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、芳香族を含んでもよい炭化水素基を示す。また、RとRは連結せず、またRとRは同一又は各々独立して、置換基を有していてもよい。Ra及びRbは水素原子又は水酸基を示す。
また揮発性の低い点でn=1以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。また溶解性の点でn=120以下が好ましく、100以下がより好ましい。a及びbについては、1以上が好ましく、10以下が好ましい。
アルコール基変性シリコーン樹脂は、式(2)の形態に限定されず、シリコーン部分がTユニット、Qユニットを介して分岐構造を有していてもよい。またMユニットを有していてもよい。また1分子中に含むアルコール基の数に限定はないが、より好ましくは2個である。例えば、下記式(2‘)のようなものが挙げられる。
Figure 2017066364
(式(2‘)中、xは1〜120の整数、yは1〜120の整数を示す。Rは有機基を示す。)
式(2‘)中、Rの有機基としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、芳香族を含んで
もよい炭化水素基が挙げられる。
アルコール基変性シリコーン樹脂の例としては、BY−16−201(東レ・ダウコーニング社製)、SF8427(東レ・ダウコーニング社製)、SF8428(東レ・ダウコーニング社製)、KF−6000(信越化学社製)KF6001(信越化学社製)KF6002(信越化学社製)KF6003(信越化学社製) などが挙げられる。
(3)カルボキシル基変性シリコーン樹脂
カルボキシル基変性シリコーン樹脂としては、式(3)のようなものが挙げられる。
Figure 2017066364
(mは、1〜120の整数を示す。)
式(3)において、R及びRは2価の有機基を示す。R及びRの例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、芳香族を含んでもよい炭化水素基を示す。またRとRは連結せず、またRとRは同一又は各々独立して、置換基を有していてもよい。また揮発性の低い点でm=1以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。また溶解性の点でm=120以下が好ましく、100以下がより好ましい。
カルボキシル基変性シリコーン樹脂は、式(3)の形態に限定されず、シリコーン部分がTユニット、Qユニットを介して分岐構造を有していてもよい。またMユニットを有していてもよい。また1分子中に含むカルボキシル基の数に限定はないが、より好ましくは2個である。
またカルボキシル基変性シリコーン樹脂の例としては、Magnasoft800L(モメンティブ社製)、BY16−880(東レ・ダウコーニング社製)、X−22−3710(信越化学社製)などが挙げられる。
III.フィラー
本発明の樹脂組成物は、50重量%以上のフィラーを含むものである。フィラーとしては、一般的な有機フィラー、無機フィラーのいずれも使用することができる。有機フィラーとしては、スチレン系ポリマー粒子、メタクリレート系ポリマー粒子、エチレン系ポリマー粒子、プロピレン系ポリマー粒子、ポリアミド系ポリマー粒子、ポリナイロン系ポリマー粒子等の合成ポリマー粒子、デンプン、木粉等の天然物、変性されていてもよいセルロース、各種有機顔料などが挙げられる。無機フィラーとしては、無機物もしくは無機物を含む化合物であれば特に限定されないが、具体的に例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機フィラー、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、ガラスフレーク、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。また、適宜表面処理をほどこしてもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、シランカップリング剤による処理等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
組成物に対するフィラーの含有量は、通常、50重量%以上である。樹脂組成物の硬化物の線膨張率を低くするという観点から、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上である。
フィラーを用いることにより、得られる成形体の強度、硬度、弾性率、熱膨張率、熱伝導率、放熱性、電気的特性、光の反射率、難燃性、耐火性、チキソトロピー性、およびガスバリア性等の諸物性を改善することができる。
上記フィラーの中でもシリカフィラーを使用することが好ましい。以下、シリカフィラーについて詳細に説明する。
本発明において、シリカフィラーとは、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカなどのシリカ系無機フィラーなどのフィラーをいう。
通常の樹脂組成物では、フィラーの添加量が増加すると、組成物の粘度上昇が顕著になる。
粘度制御の観点から、形状は、繊維状、不定形のものよりも、球状のものが好ましい。ここで球状とは、真球状であってもよく、楕円状であってもよく、卵形などを含む略球状を意味し、具体的にはアスペクト比(長径と短径の比)が通常1.3以下であり、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
さらに配合の観点から、フィラー表面に水酸基を有することが好ましい。水酸基を有することによりフィラー表面の極性を向上できるために、無機物と比べて極性の高い有機ポリマーを混合しやすくなる。
また、粒径分布の制御により添加量を増やすことも可能である。すなわち、粒径の異なるフィラーを混合することで、より高い充填率が得られる。
平均粒子径は、(Particle Size Analyzer CILAS 1064)を用いて測定され、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。また、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
表面積としては、0.2m/g以上が好ましく、0.5m/g以上がより好ましく、15m/g以下が好ましく、10m/g以下がより好ましい。
また、シリカは適宜表面処理がされていてもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、シランカップリング剤による処理などが挙げられるが、特に限定されるものではない。表面処理により、粒子表面官能基の種類を制御することができる。粘度を低減させる観点から、(グリシジル化)処理されたフィラーを用いることが好ましい。
シリカは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
フィラー量を増大させることで、低シェア時の粘度を低下させ、一方で高シェア時の粘度を増加させることがある。低シェア時の粘度とは、後述に記載の方法で粘度測定した際のShear rate0.1s−1以下の粘度のことである。また高シェア時の粘度とはShear rate1s以上の粘度のことである。これはフィラー量を増大させる
ことでフィラーの運動性を阻害し、低シェア時にフィラーが二次構造を形成しにくくなるためであると考えられる。
IV.硬化触媒及び硬化剤
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて硬化剤および/または硬化触媒を含んでもよい。硬化剤および/または硬化触媒は使用する樹脂の種類により適宜含有させればよい。熱硬化性樹脂を用いる場合、熱硬化性樹脂を硬化させ得る化合物であれば硬化触媒は特に限定されない。以下、エポキシ樹脂又はエポキシ変性シリコーン樹脂、シリコーン樹脂について硬化触媒と硬化剤の例を示す。
(1)エポキシ樹脂又はエポキシ変性シリコーン樹脂の硬化触媒
エポキシ樹脂及び/又はエポキシ変性シリコーン樹脂を用いる場合、通常のエポキシ樹脂硬化に使用される触媒を使用することができる。例えば、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミンなどの3級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジ
ル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2 ’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2 ’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物などのイミダゾール類;ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニルなどの有機リン系化合物;ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラブチルホスホニウムジエチルホスホジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレートなどの4級フォスフォニウム塩類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩などのジアザビシクロアルケン類;オクチル酸亜鉛、アクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体、ガリウム化合物、インジウム化合物などの有機金属化合物;テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイドなどの4級アンモニウム塩類;三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニルなどのホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫などの金属ハロゲン化合物のほか、ジシアンジアミドやアミンとエポキシ樹脂との付加物などのアミン付加型促進剤などの高融点分散型潜在性硬化促進剤;前記イミダゾール類、有機リン系化合物や4級フォスフォニウム塩類などの硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;アミン塩型潜在性硬化剤促進剤;ガリウム化合物以外のルイス酸塩、ブレンステッド酸塩などの高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤などの潜在性硬化促進剤などを挙げることができる。
これらのうち、強い触媒活性が必要であることから、好ましくは無機化合物であり、さらに好ましくはガリウム化合物又はインジウム化合物であり、特に好ましくはガリウム化合物である。
中でも特に好ましいのは、ガリウムアセチルアセトネート及び酢酸ガリウムである。
ガリウム化合物は、後段で詳述するシラノール源化合物から供給されるシラノールと組み合わされて、エポキシ樹脂の自己重合反応の触媒として作用する成分である。ガリウム化合物としては、金属原子としてガリウムを含む化合物であれば特に限定されるものではなく、酸化物、塩、キレート錯体など、各種形態のものを使用することができる。キレート配位子を有するガリウム錯体、酢酸ガリウム、オキシ酢酸ガリウム、トリエトキシガリウム、トリス(8−キノリノラト)ガリウム、シュウ酸ガリウム、エチルキサントゲン酸ガリウム、ジエチルエトキシガリウム、マレイン酸ガリウム、n−オクチル酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸などの長鎖カルボン酸のガリウム塩等を例示することができる
キレート配位子としては、β−ジケトン型化合物及びo−ケトフェノール型化合物が挙げられる。β−ジケトン型化合物には、次の式(15)〜式(17)に示す構造を有するものがある。
Figure 2017066364
式(15)〜式(17)において、Rはアルキル基又はハロゲン置換アルキル基を表している。
式(15)の化合物の具体例としてはアセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ペンタフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトンなどが、式(16)の化合物の具体例としてはエチルアセトアセテートなどが、式(17)の化合物の具体例としてはジエチルマロネートなどが挙げられる。
o−ケトフェノール型化合物は、次の式(18)で表される化合物である。
Figure 2017066364
式(18)において、R’は水素原子、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基又はアルコキシ基を表している。
式(18)の化合物の具体例としては、サリチルアルデヒド、エチル−O−ヒドロキシフェニルケトンなどが挙げられる。
キレート配位子を有するガリウム錯体はガリウム化合物の好適例であり、その中でもガリウムアセチルアセトネートは特に好適に使用することができる。2種類以上のガリウム化合物を任意に組み合わせて用いることもできる。
Ga触媒を用いるとAl触媒に比べて硬化物の加熱による重量減少が少ない。特に硬化物がシロキサン構造を含む場合にはAl触媒に比べて硬化物の加熱による重量減少が少ない。
具体的には、150〜200℃×500時間で、重量減少が加熱前の20重量%以下が好ましく、10重量%以下が更に好ましい。
ガリウム化合物は、エポキシ樹脂100重量部に対して通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、また5.0重量部以下、好ましくは1.0重量部以下である。
V.シラノール源化合物
シラノール源化合物は、シラノールの供給源たる化合物である。シラノールは、前述の
ガリウム化合物と組み合わされて、エポキシ樹脂の自己重合反応の触媒として作用する。
シラノールの役割は、エポキシ樹脂の自己重合反応の開始に必要なカチオン源であると考えられる。シラノール源化合物のケイ素原子にフェニル基などの芳香族基が結合している場合には、この芳香族基はシラノール水酸基の酸性度を高める働き、つまり、シラノールのカチオン源としての作用を強める働きをしていると考えられる。
シラノール源化合物は、潜在的なシラノール源であってもよい。例えば、加水分解性基が結合したケイ素原子を有しており、該加水分解基が加水分解されたときにシラノールを生じる化合物である。加水分解性基の具体例としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、水素、アセトキシ基、エノキシ基、オキシム基、ハロゲン基が挙げられる。好ましい加水分解性基はアルコキシ基であり、特に炭素数1〜3のアルコキシ基、すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基である。
シラノール源化合物の一例は、フェニルジメチルシラノール、ジフェニルメチルシラノール、トリフェニルシラノール、ジヒドロキシジフェニルシラン(ジフェニルジシラノール)、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、ジヒドロキシジメチルシラン、トリヒドロキシメチルシランなどの水酸基が結合したケイ素原子を有するモノシラン化合物である。
シラノール源化合物の他の一例は、水酸基が結合したケイ素原子を有する、式(19)で表されるオルガノポリシロキサンである。
(R21 SiO1/2a2(R22 SiO2/2b2(R23SiO3/2c2(SiO4/2d2(O1/2H)e2 ・・・(19)
式(19)において、R21、R22、R23はそれぞれ独立して1価の有機基を示す。
式(19)において、R21 SiO1/2はMユニット、R22 SiO2/2はDユニット、R23SiO3/2はTユニット、SiO4/2はQユニットを、それぞれ表している。a2、b2、c2及びd2は、それぞれが0以上の整数であり、かつ、a2+b2+c2+d2≧3である。e2は1以上の自然数であり、ケイ素原子に直接結合する水酸基(シラノール)の個数を表している。
式(19)のR21、R22、R23は、通常、炭素数1〜10の炭化水素基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチルエチル基などの置換アルキル基が挙げられる。
シラノール源化合物は、ケイ素原子に結合する加水分解性基を有するものであって、該加水分解性基を加水分解したときに、式(19)で表されるオルガノポリシロキサンを生じる化合物であってもよい。換言すれば、式(19)で表されるオルガノポリシロキサンにおいて、ケイ素原子に直接結合した水酸基の全部又は一部を加水分解性基に置き換えた化合物であってもよい。
シラノール源化合物がオルガノポリシロキサンであり、これを、シロキサン構造を含まないエポキシ樹脂と共に用いる場合には、該オルガノポリシロキサンと該エポキシ樹脂との相溶性を確保する観点から、該オルガノポリシロキサンはケイ素原子に結合した芳香族基を有するものであることが好ましい。
シラノール源化合物がオルガノポリシロキサンである場合、その重量平均分子量については、熱硬化性樹脂組成物の硬化中あるいは硬化後に揮発しないように、500以上であることが好ましく、700以上であることがより好ましい。一方、重合度が高過ぎると粘度が高くなって取り扱い性が悪くなることから、該重量平均分子量は20,000以下であることが好ましく、15,000以下であることがより好ましい。
好適な実施形態では、シラノール源化合物は水酸基又は加水分解性基が結合したケイ素原子を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン又はシラン化合物であってもよい。かかるシラノール源化合物は、加熱されたときにガリウム化合物の作用により重縮合して高分子量化するので、硬化後にブリードアウトすることがない。
シラノール源化合物として好適に使用できるオルガノポリシロキサンとして、上記式(20)〜式(23)で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 2017066364
Figure 2017066364
式(22)で表されるオルガノポリシロキサンは、式(20)で表される化合物と式(24)で表される化合物(ジヒドロキシジメチルシラン又は両末端に水酸基を有するポリジメチルシロキサン)とを、重縮合することにより得ることができる。重縮合触媒としては、酸、塩基の他、金属触媒を用いることができ、ガリウムアセチルアセトネートのようなガリウム化合物を用いることもできる。
式(23)で表されるオルガノポリシロキサンは、式(21)で表される化合物と式(24)で表される化合物とを、重縮合することにより得ることができる。重縮合触媒としては、酸、塩基の他、金属触媒を用いることができ、ガリウムアセチルアセトネートのようなガリウム化合物を用いることもできる。
Figure 2017066364
式(20)〜式(24)において、m、n、M、N、m1、m2は、それぞれ、1以上の整数である。これらの数を大きくし過ぎた場合、すなわちポリシロキサンの重合度を高くし過ぎた場合、粘度が高くなり過ぎてハンドリングが容易でなくなる他、シラノールの含有率が下がるために触媒能が低下する傾向が生じることに注意すべきである。ハンドリング性の観点からは、当該オルガノポリシロキサンの粘度あるいは当該オルガノポリシロキサンを用いて得られる樹脂組成物の粘度が、30℃、1atmにおいて、50,000cp以下、好ましくは40,000cp以下、より好ましくは30,000cp以下、更に好ましくは20,000cp以下、特に好ましくは15,000cp以下、最も好ましくは10,000cp以下となるように、その重合度を設定することが好ましい。
式(20)〜式(23)で表されるオルガノポリシロキサンから選ばれる1種以上を、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどの3官能シラン化合物とともに重縮合させて得られるオルガノポリシロキサンも、シラノール源化合物の好適例である。重縮合触媒としては、酸、塩基の他、金属触媒を用いることができ、ガリウムアセチルアセトネートのようなガリウム化合物を用いることもできる。かかるオルガノポリシロキサンは、更に酸、塩基又はガリウム化合物などの金属化合物のような縮合触媒を作用させることにより硬化する性質を有する。シラノール源として、モノシラン化合物とオルガノポリシロキサンを併せて用いてもよい。
シラノール源化合物は、エポキシ樹脂100重量部に対して通常0.05重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、また500重量部以下、好ましくは200重量部以下である。
また、ガリウム化合物とシラノール源化合物の含有比は重量比で1:0.05〜0.001:100が好ましく、より好ましくは1:10〜0.01:100である。
熱硬化性樹脂組成物における硬化触媒の含有量は、熱硬化性樹脂組成物100重量%に対して0.003重量%〜0.3重量%となるように調製することが好ましい。
エポキシ変性シリコーン樹脂においては、エポキシ樹脂とシラノール源化合物のいずれか一方、又は両方が、オルガノポリシロキサン構造部分を有し得る。その場合に、オルガノポリシロキサン構造部分にシラノールを導入すると、ガリウム化合物がシラノール間の脱水縮合触媒として作用するので、エポキシ樹脂の自己重合反応とシラノール縮合反応の両方が硬化に関与する、耐熱性の良好な熱硬化性樹脂組成物が得られる。ガリウム化合物はシラノールとアルコキシ基の間の脱アルコール縮合反応の触媒にもなるので、オルガノポリシロキサン構造部分にシラノールとアルコキシ基を導入した場合も同様の効果が得られる。熱硬化性樹脂がシラノール基を有する場合、ガリウム化合物はシロキサン縮合の触媒にもなり、架橋系が同時に進行するので好ましい。また、シロキサンやシリカとの相性が良好であり、シリカの分散に寄与する。さらに、エポキシシリコーンをガリウム触媒で反応させると、得られる硬化物の線膨張率が広い範囲で一定になる。
他の一例では、エポキシ樹脂が有するオルガノポリシロキサン構造部分とシラノール源化合物が有するオルガノポリシロキサン構造部分の一方にヒドロシリル基、他方にビニルシリル基を導入するとともに、白金化合物のようなヒドロシリル化反応触媒を添加することにより、エポキシ樹脂の自己重合反応とヒドロシリル化反応の両方が硬化に関与する、硬化性の良好な熱硬化性樹脂組成物が得られる。
あるいは、エポキシ樹脂とシラノール源化合物のいずれか一方又は両方が有するオルガノポリシロキサン構造部分にヒドロシリル基を導入するとともに、ビニルシリル基を有するオルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応触媒を添加することによっても、エポキシ樹脂の自己重合反応とヒドロシリル化反応の両方が硬化に関与する熱硬化性樹脂組成物が得られる。この例を変形して、エポキシ樹脂とシラノール源化合物のいずれか一方又は両方が有するオルガノポリシロキサン構造部分にビニルシリル基を導入し、添加するオルガノポリシロキサンをヒドロシリル基が導入されたものとしてもよい。
(2)エポキシ樹脂又はエポキシ変性シリコーン樹脂の硬化剤
エポキシ基との反応により架橋物を形成する硬化剤としては、アミン、ポリアミド樹脂、酸無水物、フェノールなどが挙げられる。線膨張率の低減、重合速度の制御、粘度の低減の観点から、酸無水物を用いることが好ましい。酸無水物としては、脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物、ハロゲン系酸無水物、非環状カルボン酸無水物などが挙げられる。該樹脂組成物を光半導体デバイスに使用する場合には、耐光性の観点から脂環式カルボン酸無水物を使用することが好ましい。また硬化時および使用中の温度変化によって生じる内部応力が抑えることでクラックが生じにくくする観点から非環状カルボン酸無水物が好ましい。
酸無水物の含有量としては特に制限はないが、多すぎると酸無水物のTgが、得られる硬化物の線膨張率に影響を与える場合がある。
脂環式カルボン酸無水物としては、例えば、式(25)〜式(30)で表される化合物や、4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物のほか、α−テルピネン、アロオシメンなどの共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物やこれらの水素添加物などを挙げることができる。
Figure 2017066364
なお、前記ディールス・アルダー反応生成物やこれらの水素添加物としては、任意の構造異性体及び任意の幾何異性体を使用することができる。
また、前記脂環式カルボン酸無水物は、硬化反応を実質的に妨げない限り、適宜に化学的に変性して使用することもできる。
酸無水物を含有することで、エポキシ反応速度の制御、ハンドリング、レベリングの向上、着色防止などの効果が得られる場合がある。酸無水物の含有量としては特に制限はないが、エポキシ量に対して1.5当量以下であることが好ましい。より好ましくは1当量以下、更に好ましくは0.8当量以下、更に好ましくは0.6当量以下である。
非環状カルボン酸無水物としては、例えば式(31)のようなものが挙げられる。
Figure 2017066364
(式(31)において、RとRは連結せず、またRとRは同一又は各々独立して、置換していてもよい炭化水素基を示す。)
炭化水素基としては、脂肪族、脂環式及び芳香族のいずれの炭化水素基でもよい。脂肪族炭化水素基としては、直鎖状又は分岐状の、飽和炭化水素又は不飽和炭化水素であり、例えば、炭素数2〜18の脂肪族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、式(32)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2017066364
(nは、0〜18の整数を示す。)
式(32)において、揮発性の低い点でn=0以上が好ましく、2以上がより好ましく、4以上が更に好ましい。また溶解性の点でn=15以下が好ましく、12以下がより好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、ビフェニル−4−イル基、ビフェニル−3−イル基、ビフェニル−2−イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、α−ナフチルエチル基、及びβ−ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
また上記炭化水素基に置換していてもよい置換基としては、水酸基、アルキル基、ニトロ基、アミノ基、メルカプト基、アセチル基、プロピオニル基、アクリオニル基、メタクリハロゲン(Cl、Br、F)等が挙げられる。
非環状カルボン酸無水物を含有することで、硬化後に反応点が架橋点とならないことで、硬化時および使用中の温度変化によって生じる内部応力が抑えられ、クラックが生じにくくなる。また、樹脂硬化物の貯蔵弾性率を低下させることができる。また炭素水素鎖部分が樹脂硬化物内で可塑性を発現することも期待できる。
また非環状カルボン酸無水物を含有することで、エポキシ基の反応速度を制御できる点で樹脂組成物の保管安定性を向上できる。
さらに非環状カルボン酸無水物を含有することで、ハンドリング、レベリングの向上、着色防止等の効果が得られる場合がある。具体的には非環状カルボン酸無水物のエステル結合部分が高極性部位また式(31)のRおよびRが非極性部位に当たることで、樹脂組成物内の相分離構造を解消する界面活性剤として機能することがある。
非環状カルボン酸無水物の含有量としては特に制限はないが、含有量の下限は、エポキシ量に対して0.015当量以上、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは0.12当量以上、さらに好ましくは0.15当量以上である。またその上限は、エポキシ量に対して、1.5当量以下、好ましくは1.0当量以下、より好ましくは0.8当量以下、さらに好ましくは0.6当量以下である。
(3)シリコーン樹脂の硬化触媒
マトリクス樹脂としてシリコーン樹脂を用いる場合、硬化触媒としては金属化合物などが挙げられる。金属化合物としては、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、スズ、亜鉛、チタン又はガリウムの、キレート錯体、有機酸塩、無機塩又はアルコキシドなどを用いることができる。硬化物の線膨張係数の観点から、上述したガリウム化合物を用いることが好ましい。
VI.熱可塑性樹脂
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては特段限定されないが、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などビニル系ポリマー,ポリ乳酸樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル,ナイロン、ポリアミドアミンなどのポリアミド、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルベンザール、ポリビニルブチラール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネイト、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ABS樹脂、LCP(液晶ポリマー)、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、エラストマー、またはこれらの樹脂の変性品などがあげられる。
これらのうち、特にポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール、(メタ)アクリル樹脂などのビニル系樹脂が好ましく、特にポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタールが好ましい。ポリビニルアセタールは水酸基を持ち、分散性に優れる他、硬化剤が水酸基との反応性を持つもの(酸無水物など)である場合には一部が取り込まれるため熱硬化樹脂との分離が起こりにくい。予め、酸無水物で変性することで積極的に反応性基を導入することも可能である。
また、熱可塑性樹脂は伸び性がある方が好ましい。伸び性があることで応力を緩和することができ、クラックを抑制する。
熱可塑性樹脂の最大伸び率は5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の最大伸び率はJIS K7113またはASTM D638に準拠した測定方法で測定した値とする。
また、熱可塑性樹脂は樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の少なくとも一成分に可溶であることが好ましい。熱硬化性樹脂の少なくとも一成分に1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上可溶である。
熱可塑性樹脂が熱硬化性樹脂の少なくとも一成分に可溶であることで、組成物の均一性が保たれ、応力が分散されやすくなり、また界面を生じないことでクラックが生じにくくなる。
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含量は樹脂組成物中の0.001%〜10.0%であることが好ましく、0.003%〜5.0%であることがより好ましく、0.005%〜2.0%であることが更に好ましい。
VII.その他
本発明の実施形態に係る樹脂組成物には、上述の成分の他に、物性改善、機能付与など
の観点から、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、着色剤、変性剤、レベリング剤、光拡散剤、熱伝導性、難燃剤、反応性又は非反応性の希釈剤、接着、密着性向上剤などの添加剤をさらに含有してもよい。
(1)酸化防止剤
本発明の実施形態に係る樹脂組成物には、使用環境下での黄変を抑制するために、酸化防止剤を含有させることができる。フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系などが好適に用いられるが、n中でも、フェノール水酸基の片側あるいは両側のオルト位にアルキル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤が特に好適に用いられる。
(2)シランカップリング剤
本発明の樹脂組成物には、金属部品や無機フィラーに対する接着性を良好にするためにシランカップリング剤を含有させることができる。具体例として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
VIII.樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物は、フィラー及び特定の環状エーテルと、必要に応じて前述した樹脂、希釈剤、酸化防止剤などのその他の成分を混合することにより製造することができる。フィラーの混合の順序としては、特に限定されない。例えば、混合時の発熱による硬化反応の進行を防ぐため、ガリウム化合物、シラノール源化合物、その他のエポキシ樹脂硬化に使用される触媒の非存在下でエポキシ樹脂と混合することが望ましい。
フィラーを混合する手段としては、特に限定されるものではないが、具体的に例えば、2本ロールあるいは3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサーなどの撹拌機、プラストミルなどの溶融混練機などが挙げられる。混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよく、また、常圧下で行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。混合する際の温度が高いと、成形する前に組成物が硬化する場合がある。
この樹脂組成物は、1液硬化型であってもよく、保存安定性を考慮して2液硬化型としてもよい。
IX.樹脂硬化物
本実施態様に係る樹脂組成物は、シリカフィラーが50重量%以上含有されていることから、その硬化物の線膨張率は非常に低く、70〜100℃における平均線膨張率が通常100ppm/K以下であることが好ましく、75ppm/K以下であることがより好ましく、50ppm/K以下であることが更に好ましく、40ppm/K以下であることが更に好ましく、30ppm/K以下であることが特に好ましい。
また、210〜240℃における平均線膨張率が通常100ppm/K以下であり、75ppm/K以下であることが好ましく、50ppm/K以下であることがより好ましい。
また、70〜210℃の平均線膨張率が100ppm/K以下であることが好ましく、50ppm/K以下であることがより好ましく、40ppm/K以下であることが更に好ましい。
また、25℃貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×1010Pa以下であるこ
とが好ましく、1.0×10Pa以上1.0×1010Pa以下であることが更に好ましい。25℃での貯蔵弾性率が1.0×1010Pa以上であると応力緩和が十分でなく、クラック発生の要因となる。1.0×10Pa未満であると組成物の機械的強度が十分でなく、振動によるワイヤー倒れ等の懸念がある。
線膨張率が小さく、貯蔵弾性率が小さいことで硬化時や温度変化における基板との線膨張差による応力を低減でき、クラック発生が抑制できる。
X.封止方法
本発明の樹脂組成物は、半導体デバイスの封止材として使用することが好適であるが、封止の方法は通常行われる方法で行えばよい。
封止の方法としては、例えばトランスファー成形やポッティングなどが挙げられる。本発明の樹脂組成物は常温で流動性のある樹脂組成物であるので、中でも、ポッティングに好適に用いられる。具体的には、樹脂組成物を含有する液と硬化触媒を含有する液をそれぞれ作製し、その後混合して混合液を作製し、ポッティングに供することができる。ハウジング内に部品を置き、これに上記混合液を注型する。次いで、硬化させる。用いるマトリクス樹脂により、室温硬化あるいは加熱硬化すればよい。加熱硬化には、例えば、熱風循環式加熱、赤外線加熱、高周波加熱などの従来公知の方法を採用することができる。熱処理条件は、樹脂組成物を所望の硬化状態にすることができればよく、マトリクス樹脂、触媒濃度や当該組成物で形成しようとする部材の厚みなどに応じて定めればよい。
本発明のマトリクス樹脂は熱硬化性樹脂を含む。硬化温度を、最初は100℃付近とし、次いで150℃付近に上げることにより、組成物中の残留溶媒や溶存水蒸気による発泡を防ぐことができる。また、深部と表面の硬化速度差を小さくできるので、表面が平滑でシワの無い、外観の良好な硬化物を得ることができる。深部と表面の硬化速度差が小さいと、硬化状態が均一となるので硬化物中における内部応力の発生が抑制され、ひいてはクラックの発生が防止できる。
XI.樹脂組成物の用途
本発明の実施形態に係る上記樹脂組成物の用途は特に限定されず、LEDデバイスのような発光デバイスを含む各種の半導体デバイスに、封止材などとして用いることができる。また、本発明の樹脂組成物を硬化させた成形体は、シリカフィラーを50重量%以上含むので高温でも低い熱膨張率を有し、かつ応力を緩和することでクラックの生じにくく信頼性に優れるので、特にパワーデバイスに好適に使用される。パワーデバイスとしては、例えば、整流、周波数変換、レギュレータ、インバータなどとして使用されるものが挙げられる。本発明の樹脂組成物は、組成物としては流動性を有し、ポッティングによる封止にも好適に用いることができ、硬化物とした際の線膨張率が非常に低いので、幅広いサイズのパワーデバイスに好適に使用できる。家電機器、コンピュータなどのパワーデバイスに用いることもできるし、自動車、鉄道車両や変電所の制御用などの大型のパワーデバイスに用いることもできる。
以下、実験例(実施例、比較例)により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、下記の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
[実施例1]
X−22−169AS(信越化学社製)を2.8g、真球状フィラーHL−3100(株式会社龍森製)30gをTHIKY社製Planetary Vacuum Mixe
r ARV−300 を用いて撹拌し、混合した。その後、非環状カルボン酸無水物オクタン酸無水物(東京化成社製)0.34gを加え、両末端ヒドロキシ基ポリメチルフェニルシロキサン YF3804(モメンティブ社製)0.14gにガリウムアセチルアセトネート(Strem Chemicals, Inc.社製)0.0060g、ジフェニルシランジオール(東京化成社製)0.015gを溶解した液を加えてさらに撹拌、混合を行い、組成物を得た。
[実施例2〜14]
実施例1の方法に準拠し、表1に示す化合物を添加し、樹脂組成物を得た。
[比較例1〜4]
実施例1の方法に準拠し、表1に示す化合物を添加し、樹脂組成物を得た。
<組成物の流動性の評価>
本実施態様において、Shear rate0.009s−1時の粘度を以下のように定義する。レオメータVISCOANALYSER(Reologica Inst. A.B.社製)で樹脂組成物の粘度を測定した。測定条件は温度を25℃、使用プレートをΦ20パラレルプレート、ギャップを0.800mm、プレシェア条件を0.1(1/s) で60秒、平衡時間(測定前の待ち時間)を25.0秒、ディレイタイム(データを取り込まない時間)40秒、積算時間(データを取り込む時間)80秒、測定せん断速度範囲;0.001〜600(1/s)とした。測定手順としては、樹脂組成物を試料ステージに適量載せて、治具を降下し、上記条件でせん断速度を上昇させた時の粘度を測定することで、0.009s−1時の粘度を算出した。
本実施態様において、流動性を以下のように定義する。持手付アルミカップ No.2(アズワン社製)に樹脂組成物を2g秤量し、25℃において90度に傾けた際に30分以上樹脂が形態を保持できないことをいう。
Figure 2017066364
Figure 2017066364
Figure 2017066364
表1〜表3の結果から明らかな通り、実施例1〜14の樹脂組成物は、流動性があった。一方、比較例1〜4の樹脂組成物は流動性がなかった。

Claims (12)

  1. 50重量%以上の無機フィラーを含む樹脂組成物であって、
    Shear rate0.009s−1時の粘度が1500Pa・s以下であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記樹脂組成物は、有機基変性シリコーン樹脂を含むものである、請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 有機基変性シリコーン樹脂が、エポキシ基変性シリコーン樹脂、アルコール基変性シリコーン樹脂及びカルボキシル基変性シリコーン樹脂から選択される少なくとも1種である請求項2記載の樹脂組成物。
  4. 有機基変性シリコーン樹脂の重量平均分子量が100以上、10000以下である請求項2又は3記載の樹脂組成物。
  5. エポキシ基変性シリコーン樹脂の重量平均分子量が100以上、4000以下である請求項3記載の樹脂組成物。
  6. エポキシ基変性シリコーン樹脂の含有量が、樹脂組成物全量を100重量%としたときに、0.1重量%以上、19重量%以下である、請求項3〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. エポキシ基変性シリコーン樹脂のエポキシ価が、100g/eq以上、4000g/eq以下である請求項3〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
  8. 無機フィラーが球状フィラーである、請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
  9. 無機フィラーがシリカである、請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
  10. 前記樹脂組成物はさらに酸無水物を含むものである、請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物を硬化してなる成形体。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて封止してなる半導体デバイス。
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