JP6543991B2 - 熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な熱硬化性樹脂組成物に関する。
発光ダイオード(LED)等の半導体デバイスの封止材料として、また、白色LED等において蛍光体を担持するマトリックスとして、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂(ポリシロキサン樹脂ともいう)が用いられている。また、シリコーン樹脂にエポキシ樹脂をハイブリッド化したエポキシ−シリコーン樹脂も開発されている(特許文献1、2、3)。さらには、用途に応じて、上記の樹脂にシリカ等の添加物を混合することも検討されている。
エポキシ樹脂の代表的な硬化剤として、ポリアミン系硬化剤、カルボン酸無水物系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤がよく知られている。これらの硬化剤はエポキシ基と反応する官能基を有する化合物である。その他の硬化剤として、エポキシ基の自己重合反応(開環を伴うカチオン重合反応)を触媒するタイプのものがある。この種の硬化剤として、シラノールと、金属錯体(Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、AlまたはZrを含む錯体)とを組合せたものが知られている(特許文献4、5)。
縮合硬化型のシリコーン樹脂のための硬化触媒としてガリウム化合物が知られている(特許文献6)。
特開平8−41168号公報 特開2007−332314号公報 特開2012−92172号公報 特開昭56−18643号公報 特公昭58−017537号公報 特開2010−111756号公報
本発明の主たる目的は、エポキシ化合物を用いた新規な熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。さらには新規な熱硬化性樹脂組成物の提供に新たに機能付与された硬化物の提供に資する樹脂組成物の提供を目的とする。
本発明者らは、エポキシ化合物に対して触媒量のガリウム化合物と、酸性水酸基を含有する化合物とを添加した組成物が熱硬化性を示すことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は以下に存する。
(1)エポキシ化合物と、ガリウム化合物と、酸性水酸基を含有する化合物とを含む、熱硬化性樹脂組成物。
(2)酸性水酸基を含有する化合物が、フェノール源化合物である上記(1)の熱硬化性樹脂組成物。
(3)フェノール源化合物の含有量が、フェノール量性水酸基の当量がエポキシの当量に対して1%以上、200%以下である上記(1)又は(2)の熱硬化性樹脂組成物。
(4)フェノール源化合物の含有量が、フェノール量性水酸基の当量がエポキシの当量に
対して5%以上、100%以下である上記(1)又は(2)の熱硬化性樹脂組成物。
本発明によれば、エポキシ化合物を用いた新規な熱硬化性樹脂組成物が提供される。そのような組成物の提供により、硬化物としては、高強度、耐熱性、幅広い温度領域での安定した線膨張率および弾性といった機能を付与することができる。
以下、本発明を実施の形態に即して説明するが、本発明は本明細書に明示的または黙示的に記載された実施の形態により限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更して実施することができる。
1.熱硬化性樹脂組成物
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ化合物、(B)ガリウム化合物、および(C)酸性水酸基を含有する化合物を含む。この熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて上記(A)〜(C)以外の成分を含有させてもよい。
この熱硬化性樹脂組成物は、その硬化機構の少なくとも一部に、ガリウム化合物と酸性化合物とによって触媒されるエポキシ化合物の自己重合反応が関与するものである。この熱硬化性樹脂組成物は、該自己重合反応のみにより硬化するものであり得るが、限定されるものではない。
以下、この熱硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。
1.1(A)エポキシ化合物
エポキシ化合物は、分子内に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物の総称である。但し、本発明では、後述するエポキシシリコーン樹脂とは区別されるものである。好ましくはシクロヘキシルエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物である。典型的な脂環式エポキシ化合物の構造例を式(1)及び(2)に示す。
Figure 0006543991
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エポキシ化合物はグリシジル基を有する化合物であってもよいが、脂環式エポキシ化合物に比べて自己重合反応の活性が低い場合がある。
グリシジル基を有するエポキシ化合物の好適例として、式(4)〜式(8)に示すような脂環構造を含むグリシジルエーテル、またはエステル化合物、式(9)に示すような脂環構造を含まないグリシジルエーテル化合物、式(11)に示すようなイソシアヌル酸骨格を有するグリシジルアミド化合物がある
Figure 0006543991
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また、エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物であってもよい。かかるエポキシ化合物の例としては、式(12)に示すようなビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラフルオロビスフェノールAなどのビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂、式(13)に示すようなビフェニル型のエポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等の2価のフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールA、ノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
Figure 0006543991
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エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物を水素化して得られる脂環構造を有するエポキシ化合物であってもよい。
(A−2)エポキシシリコーン
エポキシ化合物は、エポキシ基を有するケイ素含有化合物であってもよい。ケイ素含有化合物とは、シラン化合物やシロキサン化合物である。
エポキシ基を有するケイ素含有化合物には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルト
リエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メチル)ジメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エチル)ジメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メチル)ジエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エチル)ジエトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル〕(メチル)ジメトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エチル)ジメトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メチル)ジエトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エチル)ジエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メトキシ)ジメチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メトキシ)ジエチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エトキシ)ジメチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メトキシ)ジメチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕( エトキシ)ジメチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕( エトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(ジメチル)ジシロキサン、3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシランなどがある。
また、エポキシ基を含有するケイ素化合物には、式(14)で表されるオルガノポリシロキサンも含まれる。
(R11 SiO1/2a1(R12 SiO2/2b1(R13SiO3/2c1(SiO4/2d1(O1/2H)e1 ・・・(14)
式(14)において、R11、R12、R13はそれぞれ独立して1価の有機基を示し、かつ、1分子中において少なくとも1つがエポキシ基を含む有機基である。
式(14)において、R11 SiO1/2はMユニット、R12 SiO2/2はDユニット、R13SiO3/2はTユニット、SiO4/2はQユニットを、それぞれ表している。a1、b1、c1およびd1は、それぞれが0以上の整数であり、かつ、a1+b1+c1+d1≧3である。
式(14)において、R11、R12、R13は、好ましくは、炭素数1〜10の炭化水素基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチルエチル基などの置換アルキル基が挙げられる。
式(14)において、エポキシ基を含む有機基としては、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基などのエポキシアルキル基;2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基などのグリシドキシアルキル基;β−(または2−)(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(または3−)(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基などのエポキシシクロヘキシルアルキル基が例示される。
式(14)においてe1は0以上の整数であり、ケイ素原子に直接結合する水酸基(シラノール)の個数を表している。
エポキシ化合物は、ケイ素原子に結合する加水分解性基を有するものであって、該加水分解性基を加水分解したときに、式(14)で表されるオルガノポリシロキサン(ただし、e1≧1)を生じる化合物であってもよい。換言すれば、式(14)で表されるオルガノポリシロキサン(ただし、e1≧1)において、ケイ素原子に直接結合した水酸基の全部または一部を加水分解性基に置き換えた化合物であってもよい。
ここで、加水分解性基とは、加水分解によってケイ素原子に結合した水酸基(シラノール)を生じる基であり、具体例としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、水素、アセトキシ基、エノキシ基、オキシム基、ハロゲン基が挙げられる。好ましい加水分解性基はアルコキシ基であり、特に炭素数1〜3のアルコキシ基、すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基である。
上記式(14)で表されるオルガノポリシロキサン型のエポキシ化合物は、例えば、次の方法で製造することができる。
(方法1)エポキシ基を有するシラン化合物と、エポキシ基を有しないシラン化合物および/またはそのオリゴマーとを、共加水分解および重縮合させる方法。
(方法2)ヒドロシリル基を有するポリシロキサンに、エポキシ基と炭素−炭素二重結合基を有する有機化合物を付加させる方法。
(方法3)炭素−炭素二重結合を含む有機基を有するポリシロキサンの該二重結合部分を酸化させて、エポキシ基に変換する方法。
上記方法1でポリシロキサン型のエポキシ化合物を製造する際に用いることのできる原料は次の通りである。
Mユニットを導入するための原料としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルシラノールなどが例示される。
Dユニットを導入するための原料としては、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシランおよびこれらの加水分解縮合物(オリゴマー)が例示される。
両末端に水酸基を有するジアルキルシロキサンオリゴマーとして、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン共重合体、ポリジフェニルシロキサンなどの両末端をシラノール変性した化合物が市販されている。
Tユニットを導入するための原料としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランおよびこれらの加水分解縮合物が例示される。
Qユニットを導入するための原料としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランおよびこれらの加水分解縮合物が例示される。
エポキシ基を導入するための原料としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メチル)ジメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)( エチル)ジメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メチル)ジエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エチル)ジエトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル〕(メチル)ジメトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エチル)ジメトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メチル)ジエトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エチル)ジエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メトキシ)ジメチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メトキシ)ジエチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エトキシ)ジメチルシラン、(γ−
グリシドキシプロピル)(エトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メトキシ)ジメチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕( エトキシ)ジメチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕( エトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(ジメチル)ジシロキサン、3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシランなどが例示される。
エポキシシリコーンが酸性水酸基を含む場合には、後述の(C)酸性水酸基を含有する化合物としても作用する。酸性水酸基としては、フェノール性水酸基、シラノール、カルボン酸、オキソカーボン酸等が挙げられる。酸性水酸基がシラノールである場合には、エポキシ化合物の自己重合反応とシラノール縮合反応の両方が硬化に関与する、耐熱性の良好な熱硬化性樹脂組成物が得られる。
また、ビニルシリル基とヒドロシリル基とヒドロシリル化触媒を併用することでエポキシ化合物の自己重合反応とヒドロシリル化反応の両方が硬化に関与する、耐熱性の良好な熱硬化性樹脂組成物が得られる。
1.3(B)ガリウム化合物
ガリウム化合物は、後段で詳述する酸性水酸基と組み合わされて、エポキシ化合物の自己重合反応の触媒として作用する成分である。
ガリウム化合物は上記作用を示すものであればよく、次の候補化合物から選択することができる:キレート配位子を有するガリウム錯体、酢酸ガリウム、オキシ酢酸ガリウム、トリエトキシガリウム、トリス(8−キノリノラト)ガリウム、シュウ酸ガリウム、エチルキサントゲン酸ガリウム、ジエチルエトキシガリウム、マレイン酸ガリウム等。n−オクチル酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸などの長鎖カルボン酸のガリウム塩等。
キレート配位子としては、β−ジケトン型化合物と、o−ケトフェノール型化合物が挙げられる。β−ジケトン型化合物には、次の式(15)〜式(17)に示す構造を有するものがある。
Figure 0006543991
式(15)〜式(17)において、Rはアルキル基、またはハロゲン置換アルキル基を表している。
式(15)の化合物の具体例としてはアセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ペンタフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン等が、式(16)の化合物の具体例としてはエチルアセトアセテート等が、式(17)の化合物の具体例としてはジエチルマロネート等が挙げられる。
O−ケトフェノール型化合物は、次の式(18)で表される化合物である。
Figure 0006543991
式(18)において、R’は水素原子、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基またはアルコキシ基を表している。
式(18)の化合物の具体例としては、サリチルアルデヒド、エチル−O−ヒドロキシフェニルケトン等が挙げられる。
キレート配位子を有するガリウム錯体はガリウム化合物の好適例であり、その中でもガリウムアセチルアセトネートは特に好適に使用することができる。
Ga触媒を用いるとAl触媒に比べて硬化物の加熱による重量減少が少ない。特に硬化物がシロキサン構造を含む場合にはAl触媒に比べて硬化物の加熱による重量減少が少ない。
具体的には、150〜200℃×500時間で、重量減少が加熱前の20質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
(B)ガリウム化合物は、(A)エポキシ化合物100重量部に対して通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、また5.0重量部以下、好ましくは1.0重量部以下である。
1.4(C)酸性水酸基を含有する化合物
本発明において、酸性水酸基は前述のガリウム化合物と組み合わされて、エポキシ化合物の自己重合反応の触媒としても作用する。また、エポキシ化合物と付加反応を起こすことで硬化剤としても作用する。酸性水酸基としては、フェノール性水酸基、シラノール、カルボン酸、オキソカーボン酸等が挙げられる。酸性水酸基は一種または二種以上を併用することもできる。
中でもフェノール性水酸基であることが反応性、耐熱性の点で好ましい。フェノール性水酸基を含有する化合物の具体例としては、フェノール、クレゾール、ヒンダードフェノールなどのフェノール化合物、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、変性フェノールノボラックなどのノボラック樹脂、レゾール樹脂、変性レゾール樹脂、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールC型などのフェノール樹脂が挙げられ、中でもノボラック系のフェノール樹脂を使用することが、反応性、耐熱性の点で好ましい。また、アリルフェノールとホルムアルデヒドの縮合物などを用いた液状のフェノール樹脂は取扱いの点で好ましい。
加熱等によりフェノール性の水酸基源は潜在的なフェノール性水酸基源であってもよい。例えば、加水分解性基が結合したフェニル基を有しており、該加水分解基が加水分解されたときにフェノールを生じる化合物である。加水分解性基の具体例としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、水素、アセトキシ基、エノキシ基、オキシム基、ハロゲン基が挙げられる。好ましい加水分解性基はアルコキシ基であり、特に炭素数1〜3のアルコキシ基
、すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基である。
上記酸性水酸基を含有する化合物は、本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ化合物に対して、0.5%以上、好ましくは1%以上で添加する。上述の範囲であれば、良好な触媒効果が得られる。
酸性水酸基が、フェノール性水酸基である場合、該フェノール性水酸基を含有する化合物は、水酸基の当量がエポキシの当量に対して1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上となるように添加する。また、水酸基の当量がエポキシの当量に対して200%以下、好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下で添加する。
フェノール性水酸基の場合、触媒硬化だけでなくエポキシの硬化剤としても作用するため、硬化性、耐熱性に優れた組成物が得られる。水酸基の当量がエポキシの当量に対して1%以下の場合には硬化不足となる可能性があり、200%以上の場合には反応せずに残ったフェノール性水酸基が耐熱性、保存性に悪影響を与える場合がある。
例えばエポキシ当量が130(g/eq)のエポキシ樹脂3gに対し、水酸基当量が141(g/eq)であるフェノール性水酸基を1.01g加えた場合、エポキシの当量に対する水酸基の当量は以下のように計算される。
(1.01/141)/(3/130)×100=31%
1.5(C−2)シラノール源化合物
シラノール源化合物はシラノールの供給源たる化合物である。シラノールは、前述の酸性水酸基の一種で、前述のガリウム化合物と組み合わされて、エポキシ化合物の自己重合反応の触媒としても作用する。
シラノールの役割は、エポキシ化合物の自己重合反応の開始に必要なカチオン源であると考えられる。シラノール源化合物のケイ素原子にフェニル基等の芳香族基が結合している場合には、この芳香族基はシラノール水酸基の酸性度を高める働き、つまり、シラノールのカチオン源としての作用を強める働きをしていると考えられる。
シラノール源化合物は、潜在的なシラノール源であってもよい。例えば、加水分解性基が結合したケイ素原子を有しており、該加水分解基が加水分解されたときにシラノールを生じる化合物である。加水分解性基の具体例としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、水素、アセトキシ基、エノキシ基、オキシム基、ハロゲン基が挙げられる。好ましい加水分解性基はアルコキシ基であり、特に炭素数1〜3のアルコキシ基、すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基である。
シラノール源化合物の一例は、フェニルジメチルシラノール、ジフェニルメチルシラノール、トリフェニルシラノール、ジヒドロキシジフェニルシラン(ジフェニルジシラノール)、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、ジヒドロキシジメチルシラン、トリヒドロキシメチルシランなどの水酸基が結合したケイ素原子を有するモノシラン化合物である。
シラノール源化合物の他の一例は、水酸基が結合したケイ素原子を有する、式(19)で表されるオルガノポリシロキサンである。
(R21 SiO1/2a2(R22 SiO2/2b2(R23SiO3/2c2(SiO4/2d2(O1/2H)e2 ・・・(19)
式(19)において、R21、R22、R23はそれぞれ独立して1価の有機基を示す。
式(19)において、R21 SiO1/2はMユニット、R22 SiO2/2はDユニット、R23SiO3/2はTユニット、SiO4/2はQユニットを、それぞれ表
している。a2、b2、c2およびd2は、それぞれが0以上の整数であり、かつ、a2+b2+c2+d2≧3である。e2は1以上の自然数であり、ケイ素原子に直接結合する水酸基(シラノール)の個数を表している。
式(19)のR21、R22、R23は、通常、炭素数1〜10の炭化水素基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチルエチル基などの置換アルキル基が挙げられる。
シラノール源化合物は、ケイ素原子に結合する加水分解性基を有するものであって、該加水分解性基を加水分解したときに、式(19)で表されるオルガノポリシロキサンを生じる化合物であってもよい。換言すれば、式(19)で表されるオルガノポリシロキサンにおいて、ケイ素原子に直接結合した水酸基の全部または一部を加水分解性基に置き換えた化合物であってもよい。
シラノール源化合物がオルガノポリシロキサンであって、これをシロキサン構造を含まないエポキシ化合物と共に用いる場合には、該オルガノポリシロキサンと該エポキシ化合物との相溶性を確保する観点から、該オルガノポリシロキサンはケイ素原子に結合した芳香族基を有するものであることが好ましい。
シラノール源化合物がオルガノポリシロキサンである場合、その重量平均分子量については、熱硬化性樹脂組成物の硬化中あるいは硬化後に揮発しないように、500以上であることが好ましく、700以上であることがより好ましい。一方、重合度が高過ぎると粘度が高くなって取り扱い性が悪くなることから、該重量平均分子量は20,000以下であることが好ましく、15,000以下であることがより好ましい。
好適な実施形態では、シラノール源化合物は水酸基または加水分解性基が結合したケイ素原子を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンまたはシラン化合物であってもよい。かかるシラノール源化合物は、加熱されたときにガリウム化合物の作用により重縮合して高分子量化するので、硬化後にブリードアウトすることがない。
シラノール源化合物として好適に使用できるオルガノポリシロキサンとして、上記式(2)、式(20)〜式(23)で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 0006543991
Figure 0006543991
式(22)で表されるオルガノポリシロキサンは、式(2)で表される化合物と式(24)で表される化合物(ジヒドロキシジメチルシランまたは両末端に水酸基を有するポリジメチルシロキサン)とを、重縮合することにより得ることができる。重縮合触媒としては、酸、塩基の他、金属触媒を用いることができ、ガリウムアセトアセトネートのようなガリウム化合物を用いることもできる。
式(23)で表されるオルガノポリシロキサンは、式(21)で表される化合物と式(24)で表される化合物とを、重縮合することにより得ることができる。重縮合触媒としては、酸、塩基の他、金属触媒を用いることができ、ガリウムアセトアセトネートのようなガリウム化合物を用いることもできる。
Figure 0006543991
式(20)〜式(24)において、m、n、M、N、m1、m2は、それぞれ、1以上の整数である。これらの数を大きくし過ぎた場合、すなわちポリシロキサンの重合度を高くし過ぎた場合、粘度が高くなり過ぎてハンドリングが容易でなくなる他、シラノールの含有率が下がるために触媒能が低下する傾向が生じることに注意すべきである。ハンドリング性の観点からは、当該オルガノポリシロキサンの粘度あるいは当該オルガノポリシロキサンを用いて得られる熱硬化性樹脂組成物の粘度が10000mPa・s以下、特に5000mPa・s以下となるように、その重合度を設定することが好ましい。
式(2)、式(20)〜式(23)で表されるオルガノポリシロキサンから選ばれる1種以上を、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどの3官能シラン化合物とともに重縮合させて得られるオルガノポリシロキサンも、(C)シラノール源化合物の好適例である。重縮合触媒としては、酸、塩基の他、金属触媒を用いることができ、ガリウムアセトアセトネートのようなガリウム化合物を用いることもできる。かかるオルガノポリシロキサンは、更に酸、塩基またはガリウム化合物などの金属化合物のような縮合触媒を作用させることにより硬化する性質を有する。シラノール源として、モノシラン化合物とオルガノポリシロキサンを併せて用いてもよい。
(C)シラノール源化合物は、(A)エポキシ化合物100重量部に対して通常0.05重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、また500重量部以下、好ましくは200重量部以下である。
また、(B)ガリウム化合物と(C)シラノール源化合物の含有比は重量比で1:0.05〜0.001:100が好ましく、より好ましくは1:10〜0.01:100である。
1.6 その他の成分
本発明の実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物には、上述の成分の他に、物性改善、機能付与等の観点から、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、着色剤、変性剤、レベリング剤、光拡散剤、熱伝導性、難燃剤、反応性または非反応性の希釈剤、接着、密着性向上剤等の添加剤または各種フィラーをさらに含有してもよい。
1.6.1 フィラー
フィラーとしては、一般的な有機フィラー、無機フィラーのいずれも使用することができる。有機フィラーとしては、スチレン系ポリマー粒子、メタクリレート系ポリマー粒子、エチレン系ポリマー粒子、プロピレン系ポリマー粒子、ポリアミド系等の合成ポリマー粒子、デンプン、木粉等の天然物、変性されていてもよいセルロース、各種有機顔料などが挙げられる。無機フィラーとしては、無機物もしくは無機物を含む化合物であれば特に限定されないが、具体的に例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機フィラー、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、ガラスフレーク、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉等を挙げることができる。
これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。また、適宜表面処理をほどこしてもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、シランカップリング剤による処理等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
フィラーの添加量は特に限定されない。
フィラーを用いることにより、得られる成形体の強度、硬度、弾性率、熱膨張率、熱伝導率、放熱性、電気的特性、光の反射率、難燃性、耐火性、チキソトロピー性、およびガスバリア性等の諸物性を改善することができる。
フィラーの混合の順序としては、特に限定されないが、混合時の発熱による硬化反応の進行を防ぐため、ガリウム化合物、酸性水酸基源化合物、その他のエポキシ樹脂硬化に使用される触媒の非存在下でエポキシ化合物と混合することが望ましい。
フィラーを混合する手段としては、特に限定されるものではないが、具体的に例えば、2本ロールあるいは3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサー等の撹拌機、プラストミル等の溶融混練機等が挙げられる。混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよく、また、常圧下で行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。混合する際の温度が高いと、成型する前に組成物が硬化する場合がある。
本樹脂組成物を封止材として使用する場合、隣接する部材との間に生じる熱膨張率差を抑えることを主目的として、無機フィラー、特に、シリカ微粒子を添加することがある。添加量を増やすことでより高い効果が得られ、エポキシ樹脂100重量部に対し、40重量部以上、好ましくは70重量部以上、さらに好ましくは80重量部以上の添加が望ましい。添加量を増やす手段として、粒径分布の制御がよく用いられる。粒径の異なるフィラーを混合することで、より高い充填率が得られる。
また、添加量が増加すると、組成物の粘度上昇が顕著になる。用途、成型法によっては、粘度上昇を抑制する必要があるが、その場合、フィラーの形状、表面構造が大きく影響する。形状は、繊維状、不定形のものよりも、球状のものを選択することで、粘度を低く抑えることが出来る。また、粒子表面官能基の種類、量により、粒子間および粒子−エポキシ樹脂等からなるマトリックス組成物間の相互作用を制御し、適当な粘度を得ることが出来る。
1.6.2 酸化防止剤
本発明の実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物には、使用環境下での黄変を抑制するために、酸化防止剤を含有させることができる。
フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系等が好適に用いられるが、なかでも、フェノール水酸基の片側あるいは両側のオルト位にアルキル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤が特に好適に用いられる。
1.6.3 エポキシ樹脂の硬化触媒
ガリウム化合物と、酸性水酸基源化合物から供給される酸性水酸基の触媒作用を阻害しない限りにおいて、通常のエポキシ樹脂硬化に使用される触媒を併用することができる。例えば、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミン等の3 級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2 ’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2 ’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物等のイミダゾール類;ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン系化合物;ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラブチルホスホニウムジエチルホスホジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレート等の4 級フォスフォニウム塩類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類;オクチル酸亜鉛、アクチル酸錫、アルミニウムアセチルア
セトン錯体等の有機金属化合物;テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類;三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物のほか、ジシアンジアミドやアミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤; 前記イミダゾール類、有機リン系化合物や4級フォスフォニウム塩類等の硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤; アミン塩型潜在性硬化剤促進剤; ガリウム化合物以外のルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等の潜在性硬化促進剤等を挙げることができる。
1.6.4 酸無水物
本発明の実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物には、硬化助剤として酸無水物を含有させることができる。酸無水物の種類に特に制限はないが、該樹脂組成物を光半導体デバイスに使用する場合には、耐光性の観点から脂環式カルボン酸無水物を使用することが好ましい。
脂環式カルボン酸無水物としては、例えば、式(25)〜式(30)で表される化合物や、4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物のほか、α−テルピネン、アロオシメン等の共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物やこれらの水素添加物等を挙げることができる。
Figure 0006543991
なお、前記ディールス・アルダー反応生成物やこれらの水素添加物としては、任意の構造異性体および任意の幾何異性体を使用することができる。
また、前記脂環式カルボン酸無水物は、硬化反応を実質的に妨げない限り、適宜に化学的に変性して使用することもできる。
酸無水物を含有することで、エポキシ反応速度の制御、ハンドリング、レベリングの向上、着色防止等の効果が得られる場合がある。酸無水物の含有量としては特に制限はないが、エポキシ量に対して1.5当量以下であることが好ましい。より好ましくは1当量以下、更に好ましくは0.8当量以下である。
1.6.5 シランカップリング剤
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、金属部品や無機フィラーに対する接着性を良好にするためにシランカップリング剤を含有させることができる。
具体例として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、
ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
1.6.6 シラノールの縮合触媒
ガリウム化合物と、酸性水酸基源化合物から供給される酸性水酸基の触媒作用によるエポキシの反応を阻害しない限りにおいて、通常のシラノール硬化に使用される触媒を併用することができる。
具体例として、脱水・脱アルコール縮合反応触媒が挙げられる。前記反応触媒には、有機金属錯体触媒、金属と有機酸の塩、ルイス酸・ルイス塩基触媒からなる群から選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。脱水・脱アルコール縮合反応触媒に含まれる金属成分としては、Sn、Zn、Fe、Ti、Zr、Bi、Hf、Y、Al、B、Gaなどから選ばれる1以上を用いるのが好ましく、中でもSn、Ti、Al、Zn、Zr、Hf、Gaは反応活性が高いという点で好ましく、発光デバイス用部材として用いる場合に電極腐食や光吸収が少なく適度な触媒活性を有し、ジメチルポリシロキサン鎖の不要な切断劣化が起こりにくいZrやHfが特に好ましい。
2.熱硬化性樹脂組成物の製造方法
本発明の実施形態に係る上記熱硬化性樹脂組成物は、上記成分(A)〜(C)と、必要に応じてフィラー、希釈剤、酸化防止剤などのその他の成分を混合することにより製造することができる。
この熱硬化性樹脂組成物は、保存安定性を考慮して2液硬化型としてもよい。
2液硬化型とする場合は、例えば、A液をエポキシ化合物を含む液とし、B液をガリウム化合物と酸性水酸基源化合物を含む液とすることができる。また、A液をエポキシ化合物と酸性水酸基源化合物を含む液とし、B液をガリウム化合物を含む液とすることもできる。また、A液をエポキシ化合物とガリウム化合物を含む液とし、B液を酸性水酸基源化合物を含む液とすることもできる。
3.熱硬化性樹脂組成物の硬化方法
本発明の実施形態に係る上記熱硬化性樹脂組成物を硬化させるために行う加熱の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱風循環式加熱、赤外線加熱、高周波加熱等の従来公知の方法を採用することができる。
熱処理条件は、熱硬化性樹脂組成物を所望の硬化状態にすることができればよく、特に制限はない。
4.熱硬化性樹脂組成物の用途
本発明の実施形態に係る上記熱硬化性樹脂組成物の用途は特に限定されず、LEDデバイスのような発光デバイスを含む各種の半導体デバイスに、封止材等として用いることができる。
発光デバイスにおいては、例えば、半導体発光素子の封止材料、半導体発光素子をパッケージ、リードフレーム等に固定するための接着剤(ダイボンド剤)、パッケージを構成する構造材料、高反射コーティング材など、各種の用途に使用することができる。
用途に応じて、その他の成分を添加することができ、例えば、波長変換素子として用いる場合は蛍光体、フュームドシリカ、球状シリカなどを添加できる。ダイボンド剤として用いる場合は熱伝導剤、フュームドシリカなどを添加できる。パッケージ用の構造材料や高反射コーティング材として用いる場合はチタニア粒子やアルミナ粒子などを添加することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。まず、熱硬化性樹脂組成物の硬化機構の同定を行った。
<実施例1>
エポキシ化合物として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル‐3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート[(株)ダイセル社製 CEL2021P エポキシ当量130(g/eq)]3g、Ga化合物としてガリウムアセチルアセトナート(Ga(acac))0.0012g、ポリスチレン換算の重量平均分子量約900のポリメチルフェニルシロキサン(BLUESTARS SILICONES社製 FLD516)0.18g、フェノール樹脂としてMEH−8000H(明和化成社製 アリルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂 水酸基当量141(g/eq))1.01gを加え、硬化性組成物PGO−1を得た。
<実施例2>
FLD516を加えなかった以外は、実施例1と同様にしてPGO−2を得た。
<比較例1>
Ga(acac)を加えなかった以外は、実施例2と同様にしてPGO−3を得た。
<比較例2>
FLD516を加えなかった以外は、実施例3と同様にしてPGO−4を得た。
<実施例3>
実施例1のエポキシ化合物をC2021PからjER828(三菱化学社製)に変えた以外は実施例1と同様にしてPGO−5を得た。
<実施例4>
フェノール樹脂としてMEH−8000H 1.01gに変えてCRM−990 (昭和高分子社製 クレゾールノボラック樹脂水酸基当量約110〜130(g/eq))0.92gを加えた以外は実施例2と同様にしてPGO−6を得た。
上記で調製した組成物をそれぞれ5mmφのアルミ皿に2〜4g取り、オーブンで80℃30min、120℃120min、150℃60minの加熱を順次行い硬化を実施し、硬化性を確認した。結果は表1に示した。硬化していたものを○、硬化していなかったものを×で示す。
結果、エポキシ化合物、ガリウム化合物及び酸性水酸基を含有する化合物を含む組成物は、硬化が確認できた。
Figure 0006543991

Claims (3)

  1. エポキシ化合物と、ガリウムアセチルアセトナートと、フェノール性水酸基を含有するフェノール源化合物とを含む、熱硬化性樹脂組成物。
  2. フェノール源化合物の含有量が、フェノール性水酸基の当量がエポキシの当量に対して1%以上、200%以下である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. フェノール源化合物の含有量が、フェノール性水酸基の当量がエポキシの当量に対して5%以上、100%以下である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
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