JP6405663B2 - 熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱性の向上した熱硬化性樹脂組成物、とりわけエポキシ系硬化性樹脂組成物に関する。
近年、電力制御変換用半導体(以下、パワーデバイスと称す)の分野では、パワーデバイス材料としてシリコン(Si)の性能が限界にきており、次世代パワーデバイス材料として炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)が用いられ始めている(特許文献1参照)。それに伴い、これら次世代パワー半導体封止用樹脂には200℃以上の高温に長期耐えられる耐熱性、低膨張性、高熱伝導、高耐湿信頼性などの面で、一層の性能向上が求められている(非特許文献1参照)。この要望に対応するために、従来から用いられているエポキシ系硬化性樹脂組成物といった熱硬化性樹脂組成物においても、当該組成物を構成する、エポキシ系硬化性樹脂や硬化剤など、個別の材料における高性能化が期待されている。
また、封止作業の高効率化を目的として、室温での貯蔵安定性に優れ、加熱時に速やかに硬化が進行するエポキシ樹脂組成物の開発も行われている(非特許文献2参照)。さらには、硬化後の硬化物の重量変化や、外観にシワやヒビが生じることを回避しなければならないといった課題も存在する。
特開2009−272482号公報
「高機能デバイス封止技術と最先端材料」、シーエムシー出版発行、p.101〜113(2009年) 「先端半導体パッケージ材料技術」、技術情報協会発行、p.38(2010年)
本発明の主たる目的は、とりわけパワーデバイス用途に好適である、耐熱性の向上した熱硬化性樹脂組成物、とりわけエポキシ系硬化性樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、とりわけ、エポキシシロキサン化合物を特定のエポキシ化合物と熱硬化性樹脂組成物として混合することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下に存する。
(1)エポキシシロキサン化合物、ガリウム化合物、シラノール源化合物及びグリシジルエステル型エポキシ化合物を含有する、熱硬化性樹脂組成物。
グリシジルエステル型エポキシ化合物が、分子量が3,000以下である、上記(1)の熱硬化性樹脂組成物。
(3)ジグリシジルエステル型エポキシ化合物が、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルからなる群から選ばれる少なくともひとつである(1)又は(2)の熱硬化性樹脂組成物。
(4)グリシジルエステル型エポキシ化合物が、シクロヘキサンジカルボン酸ジリシジルである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかの組成物において、さらに硬化剤を含むことを特徴とする、熱硬化性樹脂組成物。
(6)上記(1)〜(4)のいずれかの組成物において、さらにフェノール樹脂を含むことを特徴とする、熱硬化性樹脂組成物。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかの組成物を熱硬化した熱硬化性樹脂硬化物。
本発明の組成物を硬化して得られる硬化物は、シワやヒビといった外観不良を生じることがなく、さらに高い耐熱性を有するといった効果を奏する。
以下、本発明を実施の形態に即して説明するが、本発明は本明細書に明示的または黙示的に記載された実施の形態により限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更して実施することができる。
1.熱硬化性樹脂組成物
本発明の第一において、熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシシロキサン化合物、(B)ガリウム化合物、(C)シラノール源化合物及び(D)グリシジルエステル型エポキシ化合物を含有する。
また本発明の第二において、上記の(D)グリシジルエステル型エポキシ化合物に代え、(E)脂環式エポキシ化合物を含有する。
この熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて上記(A)〜(E)以外の成分を含有させてもよい。
以下、この熱硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。
(A)エポキシシロキサン化合物
本発明のエポキシシロキサン化合物は、式(1)で表されるオルガノポリシロキサンも含まれる。
(R11 SiO1/2a1(R12 SiO2/2b1(R13SiO3/2c1(SiO4/2d1(O1/2H)e1 ・・・(1)
式(1)において、R11、R12、R13はそれぞれ独立して1価の有機基を示し、かつ、1分子中において少なくとも1つがエポキシ基を含む有機基である。
式(1)において、R11 SiO1/2はMユニット、R12 SiO2/2はDユニット、R13SiO3/2はTユニット、SiO4/2はQユニットを、それぞれ表している。a1、b1、c1およびd1は、それぞれが0以上の整数であり、かつ、a1+b1+c1+d1≧3である。
式(1)において、R11、R12、R13は、好ましくは、炭素数1〜10の炭化水素基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチルエチル基などの置換アルキル基が挙げられる。
式(1)において、エポキシ基を含む有機基としては、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基などのエポキシアルキル基;2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基などのグリシドキシアルキル基;β−(または2−)(3,4−エポキシシクロヘキシル)エ
チル基、γ−(または3−)(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基などのエポキシシクロヘキシルアルキル基が例示される。反応性の観点からは、脂環式のエポキシが好適に使用される。
式(1)においてe1は0以上の整数であり、ケイ素原子に直接結合する水酸基(シラノール)の個数を表している。
エポキシ化合物は、ケイ素原子に結合する加水分解性基を有するものであって、該加水分解性基を加水分解したときに、式(1)で表されるオルガノポリシロキサン(ただし、e1≧1)を生じる化合物であってもよい。換言すれば、式(1)で表されるオルガノポリシロキサン(ただし、e1≧1)において、ケイ素原子に直接結合した水酸基の全部または一部を加水分解性基に置き換えた化合物であってもよい。
ここで、加水分解性基とは、加水分解によってケイ素原子に結合した水酸基(シラノール)を生じる基であり、具体例としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、水素、アセトキシ基、エノキシ基、オキシム基、ハロゲン基が挙げられる。好ましい加水分解性基はアルコキシ基であり、特に炭素数1〜3のアルコキシ基、すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基である。
上記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン型のエポキシ化合物は、例えば、次の方法で製造することができる。
(方法1)エポキシ基を有するシラン化合物と、エポキシ基を有しないシラン化合物および/またはそのオリゴマーとを、共加水分解および重縮合させる方法。
(方法2)ヒドロシリル基を有するポリシロキサンに、エポキシ基と炭素−炭素二重結合基を有する有機化合物を付加させる方法。
(方法3)炭素−炭素二重結合を含む有機基を有するポリシロキサンの該二重結合部分を酸化させて、エポキシ基に変換する方法。
上記方法1でポリシロキサン型のエポキシ化合物を製造する際に用いることのできる原料は次の通りである。
Mユニットを導入するための原料としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルシラノールなどが例示される。
Dユニットを導入するための原料としては、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシランおよびこれらの加水分解縮合物(オリゴマー)が例示される。
両末端に水酸基を有するジアルキルシロキサンオリゴマーとして、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン共重合体、ポリジフェニルシロキサンなどの両末端をシラノール変性した化合物が市販されている。
Tユニットを導入するための原料としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランおよびこれらの加水分解縮合物が例示される。
Qユニットを導入するための原料としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランおよびこれらの加水分解縮合物が例示される。
エポキシ基を導入するための原料としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシ
ラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メチル)ジメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)( エチル)ジメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メチル)ジエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エチル)ジエトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル〕(メチル)ジメトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エチル)ジメトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メチル)ジエトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エチル)ジエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メトキシ)ジメチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メトキシ)ジエチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エトキシ)ジメチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メトキシ)ジメチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕( エトキシ)ジメチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕( エトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(ジメチル)ジシロキサン、3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシランなどが例示される。
(B)ガリウム化合物
ガリウム化合物は上記触媒作用を示すものであればよく、次の候補化合物から選択することができる:キレート配位子を有するガリウム錯体、酢酸ガリウム、オキシ酢酸ガリウム、トリエトキシガリウム、トリス(8−キノリノラト)ガリウム、シュウ酸ガリウム、エチルキサントゲン酸ガリウム、ジエチルエトキシガリウム、マレイン酸ガリウム等。n−オクチル酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸などの長鎖カルボン酸のガリウム塩等。
キレート配位子としては、β−ジケトン型化合物と、o−ケトフェノール型化合物が挙げられる。β−ジケトン型化合物には、次の式(15)〜式(17)に示す構造を有するものがある。
Figure 0006405663
式(15)〜式(17)において、Rはアルキル基、またはハロゲン置換アルキル基を表している。
式(15)の化合物の具体例としてはアセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ペンタフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン等が、式(16)の化合物の具体例としてはエチルアセトアセテート等が、式(17)の化合物の具体例としてはジエチルマロネート等が挙げられる。
O−ケトフェノール型化合物は、次の式(18)で表される化合物である。
Figure 0006405663
式(18)において、R’は水素原子、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基またはアルコキシ基を表している。
式(18)の化合物の具体例としては、サリチルアルデヒド、エチル−O−ヒドロキシフェニルケトン等が挙げられる。
キレート配位子を有するガリウム錯体はガリウム化合物の好適例であり、その中でもガリウムアセチルアセトネートは特に好適に使用することができる。
Ga触媒を用いるとAl触媒に比べて硬化物の加熱による重量減少が少ない。特に硬化物がシロキサン構造を含む場合にはAl触媒に比べて硬化物の加熱による重量減少が少ない。
具体的には、150〜200℃×500時間で、重量減少が加熱前の20質量%以下が
好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
ガリウム化合物は、エポキシ化合物100重量部に対して通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、また5.0重量部以下、好ましくは1.0重量部以下である。
(C)シラノール源化合物
シラノール源化合物はシラノールの供給源たる化合物である。シラノールは、前述のガリウム化合物と組み合わされて、エポキシ化合物の自己重合反応の触媒として作用する。
シラノールの役割は、エポキシ化合物の自己重合反応の開始に必要なカチオン源であると考えられる。シラノール源化合物のケイ素原子にフェニル基等の芳香族基が結合している場合には、この芳香族基はシラノール水酸基の酸性度を高める働き、つまり、シラノールのカチオン源としての作用を強める働きをしていると考えられる。
シラノール源化合物は、潜在的なシラノール源であってもよい。例えば、加水分解性基が結合したケイ素原子を有しており、該加水分解基が加水分解されたときにシラノールを生じる化合物である。加水分解性基の具体例としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、水素、アセトキシ基、エノキシ基、オキシム基、ハロゲン基が挙げられる。好ましい加水分解性基はアルコキシ基であり、特に炭素数1〜3のアルコキシ基、すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基である。
シラノール源化合物の一例は、フェニルジメチルシラノール、ジフェニルメチルシラノール、トリフェニルシラノール、ジヒドロキシジフェニルシラン(ジフェニルジシラノール)、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、ジヒドロキシジメチルシラン、トリヒドロキシメチルシランなどの水酸基が結合したケイ素原子を有するモノシラン化合物である。
シラノール源化合物の他の一例は、水酸基が結合したケイ素原子を有する、式(19)で表されるオルガノポリシロキサンである。
(R21 SiO1/2a2(R22 SiO2/2b2(R23SiO3/2c2(SiO4/2d2(O1/2H)e2 ・・・(19)
式(19)において、R21、R22、R23はそれぞれ独立して1価の有機基を示す。
式(19)において、R21 SiO1/2はMユニット、R22 SiO2/2はDユニット、R23SiO3/2はTユニット、SiO4/2はQユニットを、それぞれ表している。a2、b2、c2およびd2は、それぞれが0以上の整数であり、かつ、a2+b2+c2+d2≧3である。e2は1以上の自然数であり、ケイ素原子に直接結合する水酸基(シラノール)の個数を表している。
式(19)のR21、R22、R23は、通常、炭素数1〜10の炭化水素基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチルエチル基などの置換アルキル基が挙げられる。
シラノール源化合物は、ケイ素原子に結合する加水分解性基を有するものであって、該加水分解性基を加水分解したときに、式(19)で表されるオルガノポリシロキサンを生じる化合物であってもよい。換言すれば、式(19)で表されるオルガノポリシロキサン
において、ケイ素原子に直接結合した水酸基の全部または一部を加水分解性基に置き換えた化合物であってもよい。
シラノール源化合物がオルガノポリシロキサンであって、これをシロキサン構造を含まないエポキシ化合物と共に用いる場合には、該オルガノポリシロキサンと該エポキシ化合物との相溶性を確保する観点から、該オルガノポリシロキサンはケイ素原子に結合した芳香族基を有するものであることが好ましい。
シラノール源化合物がオルガノポリシロキサンである場合、その重量平均分子量については、熱硬化性樹脂組成物の硬化中あるいは硬化後に揮発しないように、500以上であることが好ましく、700以上であることがより好ましい。一方、重合度が高過ぎると粘度が高くなって取り扱い性が悪くなることから、該重量平均分子量は20,000以下であることが好ましく、15,000以下であることがより好ましい。
好適な実施形態では、シラノール源化合物は水酸基または加水分解性基が結合したケイ素原子を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンまたはシラン化合物であってもよい。かかるシラノール源化合物は、加熱されたときにガリウム化合物の作用により重縮合して高分子量化するので、硬化後にブリードアウトすることがない。
シラノール源化合物として好適に使用できるオルガノポリシロキサンとして、上記式(2)、式(20)〜式(23)で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 0006405663
式(22)で表されるオルガノポリシロキサンは、式(2)で表される化合物と式(2
4)で表される化合物(ジヒドロキシジメチルシランまたは両末端に水酸基を有するポリジメチルシロキサン)とを、重縮合することにより得ることができる。重縮合触媒としては、酸、塩基の他、金属触媒を用いることができ、ガリウムアセトアセトネートのようなガリウム化合物を用いることもできる。
式(23)で表されるオルガノポリシロキサンは、式(21)で表される化合物と式(24)で表される化合物とを、重縮合することにより得ることができる。重縮合触媒としては、酸、塩基の他、金属触媒を用いることができ、ガリウムアセトアセトネートのようなガリウム化合物を用いることもできる。
Figure 0006405663
式(20)〜式(24)において、m、n、M、N、m1、m2は、それぞれ、1以上の整数である。これらの数を大きくし過ぎた場合、すなわちポリシロキサンの重合度を高くし過ぎた場合、粘度が高くなり過ぎてハンドリングが容易でなくなる他、シラノールの含有率が下がるために触媒能が低下する傾向が生じることに注意すべきである。ハンドリング性の観点からは、当該オルガノポリシロキサンの粘度あるいは当該オルガノポリシロキサンを用いて得られる熱硬化性樹脂組成物の粘度が10000mPa・s以下、特に5000mPa・s以下となるように、その重合度を設定することが好ましい。
式(2)、式(20)〜式(23)で表されるオルガノポリシロキサンから選ばれる1種以上を、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどの3官能シラン化合物とともに重縮合させて得られるオルガノポリシロキサンも、シラノール源化合物の好適例である。重縮合触媒としては、酸、塩基の他、金属触媒を用いることができ、ガリウムアセトアセトネートのようなガリウム化合物を用いることもできる。かかるオルガノポリシロキサンは、更に酸、塩基またはガリウム化合物などの金属化合物のような縮合触媒を作用させることにより硬化する性質を有する。シラノール源として、モノシラン化合物とオルガノポリシロキサンを併せて用いてもよい。
シラノール源化合物は、エポキシ化合物100重量部に対して通常0.05重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、また500重量部以下、好ましくは200重量部以下である。
また、ガリウム化合物とシラノール源化合物の含有比は重量比で1:0.05〜0.001:100が好ましく、より好ましくは1:10〜0.01:100である。
(D)グリシジルエステル型エポキシ化合物
グリシジルエステル型エポキシ化合物は、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマーを単独あるいは他のモノマーと共重合して得られる重量平均分子量500〜200000のポリマー、又はエピクロロヒドリンと、下記一般式(1)で表される化合物との反応生成物等をいう。
グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマーと共重合するモノマーとしては特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸、炭素数4〜25の置換されていても良いアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルモノマー、ビニリデンモノマー、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、ベンジルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等があげられる。
(COOH)
(式中のrは1〜8の整数であり、Rは炭素数2〜30の炭化水素基(β5)、炭素数2〜30のエーテル酸素(−O−)と炭化水素基のみからなる基、イソシアヌレート環、又はイソシアヌレート環と炭化水素基のみからなる基のいずれかである。)
エピクロロヒドリンと一般式(I)で表される化合物との反応は、エピクロロヒドリンと一般式(I)の化合物のカルボキシル基とが付加反応して得られるクロロヒドリンを、水酸化ナトリウム等の塩基で閉環しグリシジルエステル型エポキシ樹脂を得ることができる。また、グリシジルエステル型エポキシ樹脂のエポキシ基の一部を開環重合させたエポキシ樹脂も使用することができる。
エピクロロヒドリンと一般式(I)で表される化合物の反応生成物は、下記一般式(II)の構造となる。
Figure 0006405663
(式中のr、Rは式1と同義である。)
上述したグリシジルエステル型のエポキシ化合物の具体例としては、例えばフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、ステアリン酸グリシジル、パルミチン酸グリシジル、オレイン酸グリシジル,リノール酸グリシジル,リノレン酸グリシジル、ネオデカン酸グリシジル、トリアルキル酢酸グリシジルエステル、3級カルボン酸グリシジルエステル(新日鉄住金化学社製 ネオトートSなど)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
中でも硬化時に架橋構造を形成するため、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル等のジグリシジルエステルタイプ、またはメタクリル酸グリシジルの共重合体を使用することが好ましい。
上記化合物の分子量としては、150以上、好ましくは250以上、また3,000以下、好ましくは2,000以下である。上述の範囲であれば、組成物を硬化した硬化物がにヒビ等を生じる傾向が軽減できる。
上記グリシジルエステル型エポキシ化合物の(A)エポキシシロキサン化合物に対する添加量は、1%以上、好ましくは5%以上、また200%以下、好ましくは100%以下である。上述の範囲であれば、組成物を硬化した硬化物がにヒビ等を生じる傾向が軽減できる。
(E)脂環式エポキシ化合物
脂環式エポキシ化合物は、分子中に脂環式エポキシ基を有する化合物であり、好ましくはシクロヘキシルエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物である。典型的な脂環式エポ
キシ化合物の構造例を式(1)〜(3)に示す。
Figure 0006405663
上記脂環式エポキシ化合物の組成物に対する添加量は、1%以上、好ましくは5%以上、また200%以下、好ましくは100%以下である。上述の範囲であれば、組成物を硬化した硬化物がにヒビ等を生じる傾向が軽減できる。
ガリウム化合物と、シラノール源化合物から供給されるシラノール基の触媒作用でエポキシシロキサンを硬化させる場合、グリシジルエステル型エポキシ化合物または脂環式エポキシ化合物を同時に硬化させることで反応が良好に進行し、耐熱性の良い架橋構造を形成すると考えられる。
以上、本発明の組成物では、上述した成分を必須成分としているが、本発明の効果を損なわない限り以下に示す化合物等が添加されていても良い。
(F)硬化剤
本発明の実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物には、硬化剤として酸無水物又はフェノール樹脂を含有させることができる。酸無水物の種類に特に制限はないが、耐光性の観点から脂環式カルボン酸無水物を使用することが好ましい。
脂環式カルボン酸無水物としては、例えば、式(25)〜式(30)で表される化合物や、4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物のほか、α−テルピネン、アロオシメン等の共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物やこれらの水素添加物等を挙げることができる。
Figure 0006405663
なお、前記ディールス・アルダー反応生成物やこれらの水素添加物としては、任意の構造異性体および任意の幾何異性体を使用することができる。
また、前記脂環式カルボン酸無水物は、硬化反応を実質的に妨げない限り、適宜に化学的に変性して使用することもできる。
酸無水物を含有することで、エポキシ反応速度の制御、ハンドリング、レベリングの向上、着色防止等の効果が得られる場合がある。酸無水物の含有量としては特に制限はないが、エポキシ量に対して1.5当量以下であることが好ましい。より好ましくは1当量以下、更に好ましくは0.8当量以下である。
フェノール樹脂としてはフェノールノボラック、クレゾールノボラック、変性フェノールノボラックなどのノボラック樹脂、レゾール樹脂、変性レゾール樹脂、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールC型などのフェノール樹脂が挙げられ、中でもノボラック系のフェノール樹脂を使用することが、反応性、耐熱性の点で好ましい。また、アリルフェノールとホルムアルデヒドの縮合物などを用いた液状のフェノール樹脂は取扱いの点で好ましい。
加熱等によりフェノール性の水酸基源は潜在的なフェノール性水酸基源であってもよい。例えば、加水分解性基が結合したフェニル基を有しており、該加水分解基が加水分解されたときにフェノールを生じる化合物である。加水分解性基の具体例としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、水素、アセトキシ基、エノキシ基、オキシム基、ハロゲン基が挙げられる。好ましい加水分解性基はアルコキシ基であり、特に炭素数1〜3のアルコキシ基、すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基である。
上記酸性水酸基を含有する化合物は、本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ化合物に対して、0.5%以上、好ましくは1%以上で添加する。上述の範囲であれば、良好な触媒効果が得られる。
酸性水酸基が、フェノール性水酸基である場合、該フェノール性水酸基を含有する化合物は、水酸基の当量がエポキシの当量に対して1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上となるように添加する。また、水酸基の当量がエポキシの当量に対して200%以下、好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下で添加する。
(G)エポキシ樹脂の硬化触媒
ガリウム化合物と、シラノール源化合物から供給されるシラノール基の触媒作用を阻害しない限りにおいて、通常のエポキシ樹脂硬化に使用される触媒を併用することができる。例えば、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミン等の3 級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2 ’−メチルイミダゾリル−(1′)〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2 ’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1′)〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1′)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物等のイミダゾール類;ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン系化合物;ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラブチルホスホニウムジエチルホスホジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレート等の4 級フォスフォニウム塩類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類;オクチル酸亜鉛、アクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物;テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類;三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物のほか、ジシアンジアミドやアミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤; 前記イミダゾール類、有機リン系化合物や4級フォスフォニウム塩類等の硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化剤促進剤; ガリウム化合物以外のルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等の潜在性硬化促進剤等を挙げることができる。
(H)シラノールの縮合触媒
本発明の組成物では、ガリウム化合物と、シラノール源化合物から供給されるシラノール基の触媒作用を阻害しない限りにおいて、通常のシラノール硬化に使用される触媒を併用することができる。
具体例として、脱水・脱アルコール縮合反応触媒が挙げられる。前記反応触媒には、有
機金属錯体触媒、金属と有機酸の塩、ルイス酸・ルイス塩基触媒からなる群から選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。脱水・脱アルコール縮合反応触媒に含まれる金属成分としては、Sn、Zn、Fe、Ti、Zr、Bi、Hf、Y、Al、B、Gaなどから選ばれる1以上を用いるのが好ましく、中でもSn、Ti、Al、Zn、Zr、Hf、Gaは反応活性が高いという点で好ましく、発光デバイス用部材として用いる場合に電極腐食や光吸収が少なく適度な触媒活性を有し、ジメチルポリシロキサン鎖の不要な切断劣化が起こりにくいZrやHfが特に好ましい。
(I)酸化防止剤
本発明の実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物には、使用環境下での黄変を抑制するために、酸化防止剤を含有させることができる。また、上述したTEMPO等のヒドロキシラジカルと併用することにより、耐熱安定性の効果が期待できる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系等が好適に用いられるが、なかでも、フェノール水酸基の片側あるいは両側のオルト位にアルキル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤が特に好適に用いられる。
具体的には、 BASF社製のIRGANOX 1010,IRGANOX 1010
FF,IRGANOX 1035,IRGANOX 1035 FF,IRGANOX
1076,IRGANOX 1076 FD,IRGANOX 1076 DWJ,IRGANOX 1098,IRGANOX 1135,IRGANOX 1330,IRGANOX 1726,IRGANOX 1425 WL,IRGANOX 1520 L,IRGANOX 245,IRGANOX 245 FF,IRGANOX 259,IRGANOX 3114,IRGANOX 5057,IRGANOX 565,IRGAMOD 295 ,IRGAFOS 168,IRGAFOS38,
IRGASTAB PUR 68,IRGASTAB FS 042,IRGASTAB
FS 301 FF,IRGASTAB FS 110 FS ,IRGASTAB FS 210 FF ,IRGASTAB FS 410 FF,IRGANOX E 201 ,IRGANOX MD 1024,等があげられる。
酸化防止剤の組成物に対する添加量は、選択した酸化防止剤の種類、上述した効果を奏する範囲を考慮し、適宜選択されるが、例えば0.03%以上、好ましくは0.1%以上、また10%以下、好ましくは5%以下である。
(J)フィラー
フィラーとしては、一般的な有機フィラー、無機フィラーのいずれも使用することができる。有機フィラーとしては、スチレン系ポリマー粒子、メタクリレート系ポリマー粒子、エチレン系ポリマー粒子、プロピレン系ポリマー粒子、ポリアミド系等の合成ポリマー粒子、デンプン、木粉等の天然物、変性されていてもよいセルロース、各種有機顔料などが挙げられる。無機フィラーとしては、無機物もしくは無機物を含む化合物であれば特に限定されないが、具体的に例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機フィラー、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、ガラスフレーク、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉等を挙げることができる。
これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。また、適宜表面処理をほどこしてもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、シランカップリング剤による処理等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
フィラーの添加量は特に限定されない。
フィラーを用いることにより、得られる成形体の強度、硬度、弾性率、熱膨張率、熱伝導率、放熱性、電気的特性、光の反射率、難燃性、耐火性、チキソトロピー性、およびガスバリア性等の諸物性を改善することができる。
フィラーの混合の順序としては、特に限定されないが、混合時の発熱による硬化反応の進行を防ぐため、ガリウム化合物、シラノール源化合物、その他のエポキシ樹脂硬化に使用される触媒の非存在下でエポキシ化合物と混合することが望ましい。
フィラーを混合する手段としては、特に限定されるものではないが、具体的に例えば、2本ロールあるいは3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサー等の撹拌機、プラストミル等の溶融混練機等が挙げられる。混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよく、また、常圧下で行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。混合する際の温度が高いと、成型する前に組成物が硬化する場合がある。
本樹脂組成物を封止材として使用する場合、隣接する部材との間に生じる熱膨張率差を抑えることを主目的として、無機フィラー、特に、シリカ微粒子を添加することがある。添加量を増やすことでより高い効果が得られ、エポキシ樹脂100重量部に対し、40重量部以上、好ましくは70重量部以上、さらに好ましくは80重量部以上の添加が望ましい。添加量を増やす手段として、粒径分布の制御がよく用いられる。粒径の異なるフィラーを混合することで、より高い充填率が得られる。
また、添加量が増加すると、組成物の粘度上昇が顕著になる。用途、成型法によっては、粘度上昇を抑制する必要があるが、その場合、フィラーの形状、表面構造が大きく影響する。形状は、繊維状、不定形のものよりも、球状のものを選択することで、粘度を低く抑えることが出来る。また、粒子表面官能基の種類、量により、粒子間および粒子−エポキシ樹脂等からなるマトリックス組成物間の相互作用を制御し、適当な粘度を得ることが出来る。
(K) その他の成分
本発明の実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物には、上述の成分の他に、物性改善、機能付与等の観点から、酸化防止剤、分散剤、消泡剤、着色剤、変性剤、レベリング剤、光拡散剤、熱伝導性、難燃剤、反応性または非反応性の希釈剤、接着、密着性向上剤等の添加剤、シランカップリング剤等をさらに含有してもよい
2.熱硬化性樹脂組成物の製造方法
本発明の実施形態に係る上記熱硬化性樹脂組成物は、上述した成分を混合することにより製造することができる。
3.熱硬化性樹脂組成物の硬化方法
本発明の実施形態に係る上記熱硬化性樹脂組成物を硬化させるために行う加熱の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱風循環式加熱、赤外線加熱、高周波加熱等の従来公知の方法を採用することができる。
熱処理条件は、熱硬化性樹脂組成物を所望の硬化状態にすることができればよく、特に制限はない。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
<合成例1>
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン64.8g、トリ
メチルエトキシシラン40.1g、イソプロピルアルコール45g及び1N塩酸24.39gを混合し、室温で3h攪拌し、さらに水酸化カリウム1.51gとイソプロピルアルコール148gを加えてイソプロピルアルコールの還流条件で4時間過熱攪拌操作を行った。その後、リン酸二水素ナトリウム水溶液(10質量%)で反応液を中和してから、洗浄後の水が中性になるまで水洗後、減圧下で揮発成分を除去してMw=1000のエポキシシロキサン化合物(エポキシシリコーン)EPSi−1を得た。
<実施例1、2>
組成物液として上記EPSi−1、添加剤として1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル(グリシジルエステル型エポキシ樹脂:DGCHDCと略す)、真球状フィラーHL−3100(龍森社製)を表1に示す重量比で撹拌、混合を行った。
この液に、硬化剤として酸無水物MH700(新日本理化社製)、ポリスチレン換算の重量平均分子量約900のポリメチルフェニルシロキサン(BLUESTARS SILICONES社製 FLD516)に、ガリウムアセチルアセトナート2wt%を溶解した液を表1に示す重量比で加えた。
当該組成物をそれぞれ5mmφのアルミ皿に3〜4.5g取り、オーブンで80℃30min、120℃120min、150℃60min、200℃60minの加熱を順次行い、硬化を行った。
加熱硬化後、アルミ皿から剥がし、2〜2.6gに切断し、これを175℃の耐熱試験にかけた。100h後または500h後に硬化物の外観を観察した。
<比較例1>
実施例1において、グリシジルエステル型エポキシ樹脂の代わりに、YED216D(三菱化学社製 アルキルジグリシジルエーテル)を添加し、表1に示す組成物を調製した。調製した組成物は実施例1と同様に硬化し、硬化物の外観を観察した。
<実施例3、4>
本実施例では実施例1及び2の組成物において、硬化剤として添加した酸無水物の代わりに、フェノール系硬化剤MEH−8000H(明和化成社製 アリルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂)を添加した。さらに酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤:IRGANOX 1010(BASF社製)及びリン系加工熱安定剤:IRAGAFOS 168(BASF社製))を添加し、表1に示す組成物を調製した。調製した組成物は実施例1と同様に硬化し、硬化物の外観を観察した。
<比較例2>
実施例3において、グリシジルエステル型エポキシ樹脂の代わりに、YED216D(三菱化学社製 アルキルジグリシジルエーテル)を添加し、表1に示す組成物を調製した。調製した組成物は実施例3と同様に硬化し、硬化物の外観を観察した。
結果、グリシジルエステル型エポキシ樹脂を添加した組成物を硬化した硬化物は、耐熱試験後にヒビを生じにくい傾向が見られた。
また硬化剤や酸化防止剤の添加した系についても、グリシジルエステル型エポキシ樹脂を添加した組成物を硬化した硬化物は、耐熱試験後にヒビを生じにくい傾向が見られた。
Figure 0006405663

Claims (7)

  1. エポキシシロキサン化合物、ガリウム化合物、シラノール源化合物及びグリシジルエステル型エポキシ化合物を含有する、熱硬化性樹脂組成物。
  2. グリシジルエステル型エポキシ化合物が、分子量が3,000以下である、請求項記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. ジグリシジルエステル型エポキシ化合物が、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルからなる群から選ばれる少なくともひとつである請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. グリシジルエステル型エポキシ化合物が、シクロヘキサンジカルボン酸ジリシジルである請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物において、さらに酸無水物を含むことを特
    徴とする、熱硬化性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物において、さらにフェノール樹脂を含むこ
    とを特徴とする、熱硬化性樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を熱硬化した熱硬化性樹脂硬化物。
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