JP5359774B2 - 光学フィルム用保護フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、モスアイ型の反射防止フィルムなどの微細凹凸を有する光学フィルムに使用される保護フィルムに関するものである。
保護フィルムは、基板上に粘着剤層が形成されたものであり、保護フィルムの粘着剤層を被保護体に密着させることで貼り合わせ、被保護体の傷、汚染等を防止するために用いられるものである。例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いられる反射防止フィルム等の光学フィルムには、傷や汚れ等から保護するため、保護フィルムが粘着剤層を介して貼り合わされている。そして、この光学フィルムをフラットパネルディスプレイに貼り合わせる等して表面保護が不要となった段階で保護フィルムは剥離して除去される。
一般的に、粘着剤層を備えた保護フィルムの特性としては、温度、湿度などの環境変化や小さな応力を受けた程度では被保護体から容易に剥離しないこと、被保護面から剥離した際に被保護面に粘着剤及び粘着剤成分が残らないことなどが挙げられる。特に、被保護体が光学フィルムである場合、表面汚染は重要な課題である。
光学フィルムとしては、例えば、凹凸の周期が可視光の波長以下に制御された微細な凹凸パターンが表面に形成された反射防止フィルムが知られている(例えば、特許文献1〜6参照)。これは、いわゆるモスアイ(moth eye(蛾の目))構造の原理を利用したものであり、基板に入射した光に対する屈折率を連続的に変化させ、屈折率の不連続界面を消失させることによって光の反射を防止するものである。
このモスアイ構造のような微細凹凸を有する光学フィルムを、保護フィルムで保護する被保護体として用いた場合、微細凹凸が数nm〜数百nm程度と非常に小さいため、他の被保護体と比較して、保護フィルムを剥離した際に粘着剤及び粘着剤成分が光学フィルム表面に残留しやすいという問題がある。そのため、偏光フィルムや位相差フィルムなどの光学フィルムに使用される保護フィルムであって、粘着剤による表面汚染が少ないとされている保護フィルムであっても、モスアイ構造のような微細凹凸を有する光学フィルムに用いた場合には、粘着剤成分が光学フィルムに移行したり、光学フィルムから剥離した際に粘着剤が光学フィルム表面に残留したりしてしまう。この場合、粘着剤成分が微細凹凸に入り込み、光学フィルムの光学特性が悪化するという問題が生じる。例えば、モスアイ構造を有する反射防止フィルムの場合、反射率が上昇してしまう。
光学フィルム表面の汚染の主な原因は、粘着剤の凝集破壊及び粘着剤に含有される低分子量成分であると考えられる。そこで、表面汚染を抑制するために、低分子量成分の含有量が少ない粘着剤を用いて、微細凹凸へ光学的に悪影響が及ぼされるのを抑制する手法が考えられる。
しかしながら、粘着剤中の低分子量成分の含有量が少ないと、粘着剤層の硬度が大きくなり、光学フィルムとの密着性が低下するという問題が生じる。特に、モスアイ構造のような数nm〜数百nmの微細凹凸を有する光学フィルムでは、保護フィルムの粘着剤層の硬度が大きいと、粘着剤が微細凹凸内部まで入り込まず、他の被保護体に比べて光学フィルムと保護フィルムの粘着剤層との接触面積が小さくなるので、光学フィルムと保護フィルムの密着性が大幅に低下し、光学フィルムの保管時や運搬時に保護フィルムが剥がれてしまう。
被保護体との密着性を向上させる手段としては、基板の表面や粘着剤層の表面を平滑にする手法が提案されている(例えば、特許文献7および8参照)。しかしながら、上述したように、モスアイ構造のような微細凹凸を有する光学フィルムでは、微細凹凸が数nm〜数百nm程度と非常に小さいために、他の被保護体と比較して光学フィルムと保護フィルムの粘着剤層との接触面積が小さいので、特許文献7および8に記載の保護フィルムであっても、密着性が不十分である。
特表2001−517319号公報 特開2004−205990号公報 特開2004−287238号公報 特開2001−272505号公報 特開2002−286906号公報 国際公開第2006/059686号パンフレット 特開平8−323942号公報 特開2008−208173号公報
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、モスアイ構造のような微細凹凸を有する光学フィルムとの密着性に優れ、粘着剤による光学フィルム表面の汚染の少ない光学フィルム用保護フィルムを提供することを主目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明は、ナノメートルオーダーの微細凹凸を有する光学フィルムに用いられる光学フィルム用保護フィルムであって、基板と、上記基板上に形成され、表面粗さRaが0.030μm以下であり、剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度が−35℃以上である粘着剤層とを有することを特徴とする光学フィルム用保護フィルムを提供する。
ここで、本発明においては、粘着剤層の硬度を表す指標として、剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度を採用することとした。対数減衰率上昇温度とは、剛体振り子測定において対数減衰率が急激に上昇し始める温度であり、温度に対する対数減衰率の傾きΔE/ΔT=0.005となる温度と定義する。なお、測定範囲内でΔE/ΔT=0.005となる温度が複数点ある場合は、最も温度が低いものを対数減衰率上昇温度とする。剛体振り子測定では、極低温から温度を上げていき、振り子の減衰率を測定する。温度を上げていくと、粘着剤としての性質(密着性、タック性など)が発現し、振り子の減衰率が大きくなる。この振り子の減衰率が大きくなる温度が高い方が、粘着剤層の硬度が高くなるという傾向がある。そのため、粘着剤層の硬度を表す指標として、対数減衰率上昇温度を採用したのである。
本発明においては、粘着剤層の剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度が所定の値以上であるので、粘着剤層の硬度が所定の値以上となるといえる。本発明によれば、光学フィルムへの表面汚染を抑制するために粘着剤層中の低分子量成分の含有量を比較的少なくして粘着剤層の硬度を所定の値以上とし粘着剤層を硬くするとしても、粘着剤層の表面粗さRaが所定の値以下であるので、微細凹凸を有する光学フィルムに用いた場合には、光学フィルムとの密着性を向上させることが可能である。
また、本発明は、ナノメートルオーダーの微細凹凸を有する光学フィルムに用いられる光学フィルム用保護フィルムであって、基板と、上記基板上に形成され、剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度が−35℃以上である粘着剤層と、上記粘着剤層上に形成され、表面粗さRaが0.030μm以下であるセパレータとを有することを特徴とする光学フィルム用保護フィルムを提供する。
本発明においては、粘着剤層の剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度が所定の値以上であるので、上述のように粘着剤層の硬度が所定の値以上となるといえる。本発明によれば、光学フィルムへの表面汚染を抑制するために粘着剤層中の低分子量成分の含有量を比較的少なくして粘着剤層の硬度を所定の値以上とし粘着剤層を硬くするとしても、セパレータの表面粗さRaが所定の値以下であるので、セパレータ剥離後の粘着剤層の平滑性を良好なものとすることができ、微細凹凸を有する光学フィルムに用いた場合には、光学フィルムとの密着性を向上させることが可能である。
上記発明においては、上記光学フィルムが、光透過性基板と、上記光透過性基板上に形成され、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細凹凸を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムであることが好ましい。このような反射防止フィルムに本発明の光学フィルム用保護フィルムを用いることにより、粘着剤層による反射率の上昇を抑制することができ、反射防止機能に優れる反射防止フィルムを得ることができる。
本発明の光学フィルム用保護フィルムは、ナノメートルオーダーの微細凹凸を有する光学フィルムに用いた場合に、密着性および表面汚染の両方を改善することができるという効果を奏する。
本発明の光学フィルム用保護フィルムの一例を示す概略断面図である。 本発明の光学フィルム用保護フィルムを光学フィルムに用いた場合の一例を示す模式図である。 光学フィルムにおける微細凹凸を特定するパラメータを説明する概略図である。 本発明の光学フィルム用保護フィルムが用いられる反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。 反射防止フィルムにおける微細凹凸を特定するパラメータを説明する概略図である。 本発明の光学フィルム用保護フィルムの他の例を示す概略断面図である。 本発明の光学フィルム用保護フィルムを光学フィルムに用いた場合の一例を示す模式図である。 実施例における温度と対数減衰率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の光学フィルム用保護フィルムおよび反射防止フィルムについて詳細に説明する。
A.光学フィルム用保護フィルム
本発明の光学フィルム用保護フィルムは、その構成により2つの実施態様に分けることができる。以下、各実施態様に分けて説明する。
I.第1実施態様
本発明の光学フィルム用保護フィルムの第1実施態様は、ナノメートルオーダーの微細凹凸を有する光学フィルムに用いられる光学フィルム用保護フィルムであって、基板と、上記基板上に形成され、表面粗さRaが0.030μm以下であり、剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度が−35℃以上である粘着剤層とを有することを特徴とするものである。
本実施態様の光学フィルム用保護フィルムについて図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムの一例を示す概略断面図である。図1において、光学フィルム用保護フィルム1は、基板2と、基板2上に形成され、所定の表面粗さRaおよび剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度(硬度)を有する粘着剤層3とを備えている。
図2は、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムを光学フィルムに貼付した場合の一例を示す模式図である。図2において、光学フィルム11は、基板12と、基板12上に形成され、ナノメートルオーダーの微細凹凸を有する凹凸層13とを有している。上記光学フィルム用保護フィルム1は、この光学フィルム用保護フィルム1の粘着剤層3と光学フィルム11の凹凸層13とが貼り合わされるように、光学フィルム11に貼付される。
なお、「ナノメートルオーダーの微細凹凸」とは、数ナノメートル〜数百ナノメートルの周期で形成されている微細凹凸をいう。「周期」とは、図3に例示するようなPで表される距離を指す。
本実施態様においては、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムを微細凹凸を有する光学フィルムに用いた場合に、粘着剤層中の低分子量成分が光学フィルムに移行したり、光学フィルムから剥離する際に粘着剤層の一部が光学フィルム表面に残存したりして、粘着剤層の成分が光学フィルムの微細凹凸に入り込むのを抑制するために、粘着剤層中の低分子量成分の含有量を比較的少なくして粘着剤層を硬くする、すなわち剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度を所定の値以上とする。このように光学フィルムへの表面汚染を抑制するために剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度を所定の値以上とするとしても、粘着剤層の表面粗さRaが所定の値以下であり、粘着剤層の平滑性が良好であるので、微細凹凸を有する光学フィルムに用いた場合には、粘着剤層が光学フィルムの微細凹凸に均一に接触し、粘着剤層と光学フィルムの微細凹凸との接触面積を増加させることができる。よって、保護フィルムと光学フィルムとの密着力を大幅に向上させることが可能である。したがって本実施態様においては、密着性と低汚染の両立を図ることができる。
以下、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムにおける各構成について説明する。
1.粘着剤層
本実施態様における粘着剤層は、基板上に形成され、表面粗さRaが0.030μm以下であり、剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度が−35℃以上であるものである。
粘着剤層の表面粗さRaは、0.030μm以下であり、中でも0.027μm以下であることが好ましく、特に0.025μm以下であることが好ましい。表面粗さRaが上記範囲より大きいと、粘着剤層と光学フィルムの微細凹凸との接触面積が減少し、所望の密着力が得られないおそれがあるからである。
なお、上記表面粗さRaは、オリンパス社製白色干渉計RBX3300H Liteにて測定した値とする。
剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度は、−35℃以上であり、好ましくは−35℃〜−15℃の範囲内、さらに好ましくは−35℃〜−20℃の範囲内である。剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度が上記範囲より低いと、粘着剤層の一部が光学フィルム表面に残存してしまうおそれがあるからである。一方、剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度が高すぎると、所望の密着力が得られないおそれがある。
ここで、剛体振り子法とは、剛体振り子を用い、振り子の振動の減衰過程を解析することによって、固体の表面物性等を評価する方法である。
剛体振り子測定では、極低温から温度を上げていき、振り子の減衰率を測定する。本実施態様においては、−100℃から60℃まで3℃/minで昇温させ、振り子の減衰率を測定する。
本実施態様において、対数減衰率上昇温度とは、剛体振り子測定において対数減衰率が急激に上昇し始める温度であり、温度に対する対数減衰率の傾き(ΔE/ΔT)が0.005となる温度をいう。なお、測定範囲内でΔE/ΔT=0.005となる温度が複数点ある場合は、最も温度が低いものを対数減衰率上昇温度とする。
すなわち、本実施態様において、対数減衰率とは、−100℃から60℃まで3℃/minで昇温させたときに得られる対数減衰率の値を意味するものであり、対数減衰率上昇温度とは、剛体振り子測定において−100℃から60℃まで3℃/minで昇温させたときに対数減衰率が急激に上昇し始める温度であり、温度に対する対数減衰率の傾き(ΔE/ΔT)が0.005となる温度を意味するものである。
粘着剤層は、少なくとも粘着剤を含むものである。粘着剤層に用いられる粘着剤としては、上述の表面粗さRaと剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度(硬度)とを満足する粘着剤層を形成することが可能であり、所望の粘着性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ウレタン系、ゴム系、シリコン系、アクリル系の粘着剤を挙げることができる。中でも、アクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤は、透明性、耐久性に優れ、光学フィルム用途として好ましく、また耐熱性が高く、さらに低コストであるからである。
アクリル系粘着剤としては、アクリル酸エステルと、他の単量体とを共重合させたアクリル酸エステル共重合体を挙げることができる。
上記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、アクリル酸グリシジル等を挙げることができる。中でも、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等を好ましく用いることができる。光学フィルムに対する粘着性が良好だからである。上記アクリル酸アルキルエステルは、単独で用いられてもよく、また、複数が混合されて用いられてもよい。
上記他の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸ヒドロキシルエチル、メタクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−tert−ブチルアミノエチル、メタクリル酸nエチルヘキシル等を挙げることができる。中でも、メタクリル酸nエチルヘキシルを好ましく用いることができる。上記他の単量体は、単独で用いられてもよく、また、複数が混合されて用いられてもよい。
アクリル酸エステル共重合体に含まれるアクリル酸エステルと、他の単量体とのユニット比(アクリル酸エステル/他の単量体)としては、上記アクリル酸エステル共重合体が所望の粘着力を発揮することができれば特に限定されるものではなく、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムの用途等に応じて適宜設定することができる。
アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量(Mw)としては、上記アクリル系粘着剤が所望の粘着力を発揮すれば特に限定されるものではない。
粘着剤層は、さらに架橋剤を含んでいてもよい。粘着剤層に用いられる架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系の架橋剤を挙げることができる。
エポキシ系架橋剤としては、例えば、多官能エポキシ系化合物を用いることができる。上記多官能エポキシ系化合物としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物の3量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、または、このようなウレタンプレポリマーの3量体等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されず、2,4−トリレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアネート、リジンイソシアネート等を挙げることができる。
架橋剤の含有量としては、上記架橋剤の種類によっても異なるが、例えば上記粘着剤100重量部に対して、2.0重量部〜10.0重量部の範囲内とすることができる。
粘着剤層は、さらに金属キレート剤を含んでいてもよい。粘着剤層に用いられる金属キレート剤としては、金属元素と塩形成部位とを有するものであり、上記粘着剤と共に用いた場合、上記金属元素と粘着剤が有するカルボキシル基等とがキレート結合をすることにより、架橋することができるものである。
このような金属キレートの具体例としては、アルミニウムイソプレピレート、アルミニウムブチレート、アルミニウムエチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセネート、アルミニウムアルキルアセトアセネートなどのアルミニウムキレート化合物やジプロポキシ−ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジブトキシチタン−ビス(オクチレングリコレート)、ジプロポキシチタン−ビス(エチルアセトアセテート)、ジプロポキシチタン−ビス(ラクテート)、ジプロポキシチタン−ビス(トリエタノールアミナート)、ジ−n−ブトキシチタン−ビス(トリエタノールアミナート)、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ブチルチタネートダイマー、ポリ(チタンアセチルアセトナート)等のチタンキレート化合物やジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテートなどのジルコニウムキレート化合物、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫等の有機カルボン酸金属塩、アセチルアセトン亜鉛キレート、ベンゾイルアセトン亜鉛キレート、ジベンゾイルメタン亜鉛キレート、アセト酢酸エチル亜鉛キレート等の亜鉛キレート化合物が挙げられる。中でも、アルミニウムイソプレピレート、アルミニウムブチレート、アルミニウムエチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセネート、アルミニウムアルキルアセトアセネートなどのアルミニウムキレート化合物を好ましく用いることができる。上記粘着剤を架橋する架橋速度の調整が容易だからである。
金属キレート剤の含有量としては、上記金属キレート剤の種類によっても異なるが、上記粘着剤100重量部に対して、0.06重量部〜0.50重量部の範囲内であることが好ましい。上記範囲より少ないと、上記粘着剤層を形成する際の架橋速度が遅く生産性が低下するおそれがあるからである。また、上記範囲より多い場合であっても、効果が変わらず、材料費がコストアップとなるからである。
粘着剤層は、他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。また、上記粘着剤が、アクリル系粘着剤を構成するアクリル酸エステルおよび他の単量体のような、光照射により硬化する感光性モノマー成分を重合させてなる感光性粘着剤であって、粘着剤層を、上記感光性モノマー成分を含む粘着剤を塗工した後、紫外線や可視光線の照射により重合させ、硬化させることにより形成する場合においては、上記粘着剤に光重合開始剤が添加される。
本発明においては、粘着剤層中の低分子量成分の含有量を比較的少なくすることが好ましいため、架橋剤、金属キレート剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光重合開始剤等の添加剤が低分子量成分となる場合には、そのような添加剤の含有量は比較的少ない方が好ましく、特に粘着剤層がそのような添加剤を含まないことが好ましい。
粘着剤層の膜厚としては、通常、3μm〜200μmの範囲内であり、中でも4μm〜100μmの範囲内、特に5μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
粘着剤層の形成方法としては、例えば、基板上に粘着剤層形成材料を塗工する方法、基板上に粘着剤層を転写する方法、粘着剤層の構成材料と基板の構成材料とを溶融共押出しして成形する方法、粘着剤層の構成材料と基板の構成材料とをそれぞれ押出し等によりフィルム状に成形した後に接着する方法などを用いることができる。中でも、粘着剤層を平滑性良く形成できることから、基板上に粘着剤層形成材料を塗工する方法が好ましく用いられる。
2.基板
本実施態様に用いられる基板としては、保護対象である光学フィルムに傷が付かないように十分な強度を有するものであれば特に限定されるものではない。このような基板の構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコールもしくはエチレン−ビニルアルコール共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリフッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデンもしくはテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニルもしくはポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、または、ポリアミド系樹脂等を挙げることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレートを好ましく用いることができる。ポリエチレンテレフタレートは、透明性に優れ、光学フィルム用途に適しており、また平滑性の良好な基板が得られるからである。
基板には、上記粘着剤層との密着力を向上するために、基板の粘着剤層を形成する表面にコロナ処理、プラズマ処理といった表面処理や、下塗り剤(プライマ)の塗布等を行ってもよい。
基板は平滑性が良好であることが好ましく、基板の表面粗さRaは、0.030μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.027μm以下、さらに好ましくは0.025μm以下である。例えば、基板上に粘着剤層形成材料を塗工して粘着剤層を形成する場合には、基板の平滑性が粘着剤層の平滑性に影響を及ぼすからである。
基板の厚みとしては、光学フィルムに貼り合わせた際に、密着性良く貼り合わせることができ、傷等から十分に保護することができるものであれば特に限定されるものではなく、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムの用途等に応じて適宜設定される。基板の厚みは、例えば、12μm〜100μmの範囲内であり、中でも16μm〜80μmの範囲内、特に25μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より厚いと、光学フィルムと密着性良く貼り合わせることが困難となるおそれがあるからである。また上記範囲より薄いと、傷等から十分に保護することが困難となるおそれがあるからである。
3.光学フィルム用保護フィルムの特性
本実施態様の光学フィルム用保護フィルムの剥離強度(剥離力)としては、光学フィルムと密着できれば特に限定されるものではないが、微細凹凸を有する被着体との剥離強度が、0.010N/25mm〜5.000N/25mmの範囲内であることが好ましく、中でも0.010N/25mm〜3.000N/25mmの範囲内、特に0.015N/25mm〜1.000N/25mmの範囲内であることが好ましい。上記範囲であることにより、光学フィルムに十分な強度で密着することができ、且つ不要となった際に光学フィルムから剥し易いからである。
なお、上記剥離強度とは、以下の方法で測定した剥離強度をいう。すなわち、光学フィルム用保護フィルムを巾25mm×長さ150mmの大きさの短冊状の試験片にカットした後、JIS Z0237の規格に準拠した条件で、微細凹凸を有する被着体にラミネートする。そして、試験片を剥離角180°、剥離速度300mm/min、室温下の条件で、試験片の長さ方向に剥がしたときの剥離強度を測定する。剥離強度測定には、例えばインストロン社製の万能試験機5565を用いることができる。微細凹凸を有する被着体としては、通常、実際に本発明の光学フィルム用保護フィルムを貼り合わせるものを用いることとする。
4.その他の構成
本実施態様の光学フィルム用保護フィルムは、少なくとも基板と粘着剤層とを有するものであればよいが、中でも、粘着剤層表面にこの粘着剤層を被覆するセパレータが設けられた積層体からセパレータが剥離されたものであることが好ましい。セパレータの表面粗さRaを適宜選択することにより、セパレータ剥離後の粘着剤層の表面粗さRaを制御することができるからである。
なお、セパレータについては、後述の第2実施態様の項に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。
5.用途
本実施態様の光学フィルム用保護フィルムは、ナノメートルオーダーの微細凹凸を有する光学フィルムに用いられるものである。ナノメートルオーダーの微細凹凸を有する光学フィルムとしては、例えば、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細凹凸(以下、「モスアイ構造」と称する場合がある。)を有する反射防止フィルム、ワイヤーグリット偏光板等が挙げられる。中でも、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムは、モスアイ構造を有する反射防止フィルムに好適に用いられる。
以下、好適な反射防止フィルムについて説明する。
図4に例示するように、反射防止フィルム21は、光透過性基板22と、光透過性基板22上に形成され、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細凹凸を有する反射防止層23とを有するものである。以下、反射防止フィルムにおける各構成について説明する。
(1)反射防止層
反射防止フィルムに用いられる反射防止層は、光透過性基板上に形成され、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細凹凸を有するものであり、反射防止フィルムに所望の反射防止機能を付与するものである。
微細凹凸としては、可視光領域の波長以下の周期で形成されたものであれば特に限定されるものではなく、反射防止フィルムの用途等に応じて、任意の形状を選択して用いることができる。中でも、微細凹凸は、円錐、四角錐等の錐形の構造物が周期的に形成されたものであることが好ましい。
微細凹凸として錐形の構造物が周期的に形成されたものが用いられる場合、錐形の構造物としては、頂部が平坦に形成されたものであってもよく、あるいは、頂部が鋭角に形成されたものであってもよい。
微細凹凸として、錐形の構造物が周期的に形成されたものが用いられる場合、反射防止フィルムが備える反射防止機能は、主として錐形の構造物が形成された周期、高さ、間隔に依存することになる。
なお、錐形の構造物が形成された周期、高さ、および間隔は、それぞれ図5におけるP、Q、およびRで表される距離を指すものである。
錐形の構造物の周期は、可視光領域の波長以下であれば特に限定されるものではなく、反射防止フィルムの用途等に応じて適宜決定することができる。ここで、上記周期は、反射防止層の反射率の波長依存性に影響を及ぼすものであり、その周期が長くなるほど可視光領域の短波長側の光に対する反射率が増加する傾向にある。一方、周期が200nm以下においては、周期の変動に伴う可視光領域の反射率の波長依存性の変化は少なくなるものである。このようなことから、上記周期は、50nm〜250nmの範囲内であることが好ましく、70nm〜200nmの範囲内であることがより好ましく、80nm〜150nmの範囲内であることがさらに好ましい。錐形の構造物が形成された周期が上記範囲よりも短いと、個々の構造物の形状が極微小になることから、高精度で構造物を形成することが困難になる場合があるからである。また、周期が上記範囲よりも長いと、反射防止層の短波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。
錐形の構造物の高さについても、反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で、適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではない。ここで、上記高さは高いほど反射防止層の反射率を低くすることができ、一方、低くなると長波長側の反射率が増加する傾向にある。このようなことから、錐形の構造物の高さは、100nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、150nm〜400nmの範囲内であることがより好ましく、200nm〜350nmの範囲内であることがさらに好ましい。
構造物の高さが上記範囲よりも高いと、個々の構造物が損壊しやすくなってしまう場合があり、また高さが上記範囲よりも低いと、長波長側の反射率が増加する傾向にあるからである。
錐形の構造物が形成された間隔は、広くなるほど可視光の全波長領域において反射率が増加する傾向にあり、狭くなるほど可視光の全波長領域において反射率が低下する傾向にある。このようなことから、錐形の構造物が形成された間隔は、反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で、適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではないが、なかでも100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。構造物が形成された間隔が上記範囲よりも長いと、十分な反射防止性能が発揮できない場合があるからである。
なお、上記間隔はすべての構造物において均一ではない場合があるが、その場合における上記距離は、単位面積あたりに形成された構造物間の間隔の平均距離を指すものとする。
反射防止層は、硬化性樹脂からなるものである。硬化性樹脂としては、所望の形状を有するモスアイ構造を形成できるものであれば特に限定されるものではない。
反射防止層の反射防止機能は、反射防止層に用いられる硬化性樹脂の屈折率、および光透過性基板の屈折率にも依存するものである。すなわち、反射防止層に用いられる硬化性樹脂の屈折率と光透過性基板の屈折率との差が小さいほど、反射防止層と光透過性基板との界面における屈折率の不連続界面において光が反射されるのを防止することができるため、反射防止層の反射防止機能を向上させることができる。このような観点から、硬化性樹脂の屈折率と、後述する光透過性基板の屈折率との差は、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましく、ゼロであることがさらに好ましい。なお、硬化性樹脂の具体的な屈折率の値は、後述する光透過性基板との関係で決定されるものであり、特に好ましい値が特定されるものではないが、通常、1.40〜1.70の範囲内とされる。
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂を挙げることができ、いずれの硬化性樹脂であっても好適に用いることができる。中でも、硬化性樹脂として光硬化性樹脂を用いることが好ましい。光硬化性樹脂を用いることで熱硬化性樹脂よりも高スループットで製品を生産することが可能になる。
光硬化性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、スチロール樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン−イソプレンゴム等を挙げることができる。これらの光硬化性樹脂の中から、光透過性基板の屈折率と近い屈折率を有する樹脂を適宜選択して用いることができる。
(2)光透過性基板
反射防止フィルムに用いられる光透過性基板は、上述した反射防止層を支持するものであり、上記反射防止層と相まって反射防止フィルムに所望の反射防止機能を付与するものである。
光透過性基板は、可視光に対する透過性を備えるものであれば特に限定されるものではないが、なかでも可視光の全波長範囲に対する光の透過率が、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
ここで、上記光透過率は、例えば島津製作所製紫外可視光分光光度計UV−3600により測定することができる。
光透過性基板は、屈折率が上記反射防止層に用いられる硬化性樹脂の屈折率と同程度であることが好ましい。光透過性基板の屈折率と反射防止層に用いられる硬化性樹脂の屈折率との差が大きいと、反射防止層と光透過性基板との界面における屈折率の不連続界面において光が反射されることにより、反射防止フィルムの反射防止機能が損なわれることになるが、光透過性基板の屈折率と反射防止層に用いられる硬化性樹脂の屈折率とを同程度とすることで、これを防止することができるからである。なお、光透過性基板の屈折率の値は、上述した硬化性樹脂の屈折率との関係において決定されるものであるから、特に好ましい値はないが、通常、1.40〜1.70の範囲内とされる。
光透過性基板を構成する材料としては、上述した光透過性を示し、かつ所望の屈折率を有する光透過性基板を得ることができるものであれば特に限定されるものではない。光透過性基板に用いられる材料としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子(代表的にはノルボルネン系樹脂等があるが、例えば、日本ゼオン株式会社製の製品名「ゼオノア」、JSR株式会社製の「アートン」等がある)等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、或いは、ガラス(セラミックスを含む)等を挙げることができる。
光透過性基板の厚みは、10μm〜300μmの範囲内であることが好ましく、20μm〜200μmの範囲内であることがより好ましく、40μm〜100μmの範囲内であることがさらに好ましい。
(3)その他の構成
反射防止フィルムは、少なくとも反射防止層と光透過性基板とを有するものであればよく、必要に応じて他の任意の構成を有していてもよい。任意の構成としては、反射防止層と光透過性基板との間に形成されるハードコート層、および光透過性基板の反射防止層が形成された面とは反対面上に形成される粘着層を挙げることができる。
II.第2実施態様
本発明の光学フィルム用保護フィルムの第2実施態様は、ナノメートルオーダーの微細凹凸を有する光学フィルムに用いられる光学フィルム用保護フィルムであって、基板と、上記基板上に形成され、剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度が−35℃以上である粘着剤層と、上記粘着剤層上に形成され、表面粗さRaが0.030μm以下であるセパレータとを有することを特徴とするものである。
本実施態様の光学フィルム用保護フィルムについて図面を参照しながら説明する。
図6は、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムの一例を示す概略断面図である。図6において、光学フィルム用保護フィルム1は、基板2と、基板2上に形成され、所定の剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度(硬度)を有する粘着剤層3と、粘着剤層3上に形成され、所定の表面粗さRaを有するセパレータ4とを備えている。
図7は、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムを光学フィルムに用いた場合の一例を示す模式図である。図7において、光学フィルム11は、基板12と、基板12上に形成され、ナノメートルオーダーの微細凹凸を有する凹凸層13とを有している。図7に例示するように、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムを光学フィルムに用いる際には、粘着剤層3からセパレータ4を剥離した後、粘着剤層3と光学フィルム11の凹凸層13とが貼り合わされるように、光学フィルム11に貼付する。すなわち、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムにおいて、光学フィルムの微細凹凸と貼り合わされるのは、セパレータではなく粘着剤層である。また、光学フィルムの微細凹凸と貼り合わされるのは、粘着剤層のセパレータが形成されている面である。
本実施態様においては、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムをセパレータの剥離後に光学フィルムに貼付した場合に、粘着剤層の低分子量成分が光学フィルムに移行したり、光学フィルムから剥離する際に粘着剤層の一部が光学フィルム表面に残存したりするのを防ぎ、粘着剤層の成分が光学フィルムの微細凹凸に入り込むのを抑制するために、粘着剤層中の低分子量成分の含有量を比較的少なくして粘着剤層の硬さを硬くする、すなわち剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度を所定の値以上とする。一方、本実施態様においては、セパレータの表面粗さRaが所定の値以下であり、セパレータの平滑性が良好であるので、セパレータの粘着剤層が形成されている面においても平滑性が良好であるといえる。よって、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムからセパレータを剥離した場合には、粘着剤層表面の平滑性を良好なものとすることができる。したがって、光学フィルムへの表面汚染を抑制するために剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度を所定の値以上とするとしても、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムをセパレータの剥離後に光学フィルムに貼付した場合には、粘着剤層が光学フィルムの微細凹凸に均一に接触し、粘着剤層と光学フィルムの微細凹凸との接触面積を増加させることができる。その結果、保護フィルムと光学フィルムとの密着力を大幅に向上させることが可能である。このように本実施態様においては、密着性と低汚染の両立を図ることができる。
なお、基板、光学フィルム用保護フィルムの特性、および用途等については、上記第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、本実施態様の光学フィルム用保護フィルムにおける他の構成について説明する。
1.セパレータ
本実施態様に用いられるセパレータは、粘着剤層上に形成され、表面粗さRaが0.030μm以下であるものである。
セパレータの表面粗さRaは、0.030μm以下であり、中でも0.027μm以下であることが好ましく、特に0.025μm以下であることが好ましい。セパレータの表面粗さRaが上記範囲より大きいと、セパレータ剥離後の粘着剤層の表面粗さRaが大きくなり、粘着剤層と光学フィルムの微細凹凸との接触面積が減少し、所望の密着力が得られないおそれがあるからである。
なお、上記表面粗さRaは、オリンパス社製白色干渉計RBX3300H Liteにて測定した値とする。
セパレータとしては、上述の表面粗さRaを満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエステルフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどを用いることができる。
セパレータには、必要に応じて、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、長鎖アルキル(炭素数12〜22のもの)系樹脂もしくは脂肪酸アミド系樹脂、またはこれらの変性体の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理を行ってもよい。特に、セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜行うことにより、粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
セパレータの厚みは、通常、5μm〜200μm程度であり、好ましくは5μm〜100μmの範囲内である。
2.粘着剤層
本実施態様に用いられる粘着剤層は、基板上に形成され、剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度が−35℃以上であるものである。
なお、粘着剤層の剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度、構成材料、膜厚、および形成方法等については、上記第1実施態様に記載したので、ここでの説明は省略する。
本実施態様の光学フィルム用保護フィルムからセパレータを剥離した後の、粘着剤層の表面粗さRaは、0.030μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.027μm以下、さらに好ましくは0.025μm以下である。表面粗さRaが上記範囲より大きいと、粘着剤層と光学フィルムの微細凹凸との接触面積が減少し、所望の密着力が得られないおそれがあるからである。
なお、上記表面粗さRaは、オリンパス社製白色干渉計RBX3300H Liteにて測定した値とする。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
粘着剤層の形成には、主剤としてポリアクリル酸ブチル(アクリル系粘着剤)およびイソシアネート系架橋剤を用いた。また、セパレータとしてPETフィルムを用いた。
まず、基材となる厚み38μmのPETの上に粘着剤溶液を塗工し、乾燥後に膜厚が10μmとなるように乾燥させ粘着層を形成した。次に、乾燥後の粘着層に厚み25μmのPETフィルム(セパレータ)をラミネートし、エージング処理をして保護フィルムAを作製した。
[実施例2]
セパレータをOPPに変更した以外は、実施例1と同様にして保護フィルムBを作製した。
[比較例1]
保護フィルムとして東セロ株式会社保護フィルムLA10を用いた。
[比較例2]
保護フィルムとして日東電工株式会社保護フィルムTP300を用いた。
[比較例3]
保護フィルムとして日東電工株式会社保護フィルムRP300を用いた。
[評価]
(剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度)
粘着剤層について、剛体振り子物性試験機(型番:RPT−3000W 株式会社エー・アンド・デイ社製)を用いて、−100℃〜60℃の温度範囲で対数減衰率ΔEの測定を行った。得られたグラフを図8に示す。図8よりΔE/ΔT=0.005となる温度を求めた。
(表面粗さ)
粘着剤層の表面粗さ、セパレータの表面粗さについては、オリンパス社白色干渉計RBX3300H Liteにて測定を行った。
(剥離強度)
保護フィルムの剥離強度については、インストロン社製の万能試験機5565を用いた。光学フィルム用保護フィルムを巾25mm×長さ150mmの大きさの短冊状の試験片にカットした後、JIS Z0237の規格に準拠した条件で、微細凹凸を有する被着体(錐形の構造物の周期100nm、高さ300nm、間隔20nm)にラミネートした。そして、試験片を剥離角180°、剥離速度300mm/min、室温下の条件で、試験片の長さ方向に剥がしたときの剥離強度を測定した。
(被着体汚染)
被着体汚染については、貼り付け後24時間放置し、剥離後、蛍光灯下、目視で保護フィルム貼り付け部分の反射率変化が確認できるものを×、確認できないものを○とした。
Figure 0005359774
1 … 光学フィルム用保護フィルム
2 … 基板
3 … 粘着剤層
4 … セパレータ
11 … 光学フィルム
12 … 基板
13 … 凹凸層

Claims (2)

  1. ナノメートルオーダーの微細凹凸を有する光学フィルムに用いられる光学フィルム用保護フィルムであって、
    基板と、
    前記基板上に形成され、表面粗さRaが0.030μm以下であり、剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度が−35℃〜−15℃の範囲内である粘着剤層と
    を有し、
    前記光学フィルムが、光透過性基板と、前記光透過性基板上に形成され、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細凹凸を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムであり、
    前記微細凹凸は、錐形の構造物が周期的に形成されたものであり、
    前記錐形の構造物の周期は、50nm〜250nmの範囲内であり、
    前記錐形の構造物の高さは、100nm〜500nmの範囲内である
    ことを特徴とする光学フィルム用保護フィルム。
  2. ナノメートルオーダーの微細凹凸を有する光学フィルムに用いられる光学フィルム用保護フィルムであって、
    基板と、
    前記基板上に形成され、剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度が−35℃〜−15℃の範囲内である粘着剤層と、
    前記粘着剤層上に形成され、表面粗さRaが0.030μm以下であるセパレータと
    を有し、
    前記光学フィルムが、光透過性基板と、前記光透過性基板上に形成され、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細凹凸を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムであり、
    前記微細凹凸は、錐形の構造物が周期的に形成されたものであり、
    前記錐形の構造物の周期は、50nm〜250nmの範囲内であり、
    前記錐形の構造物の高さは、100nm〜500nmの範囲内である
    ことを特徴とする光学フィルム用保護フィルム。
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