本発明者らは、微細凹凸構造を有する成形体を微粘着保護材で挟み込み、粘着面同士で貼り合せることにより、微粘着保護材を使っても保護フィルム浮きを軽減できることを見出した。この結果、成形体に微粘着保護フィルムの接着領域を設けなくても、微細凹凸成形体を安定に保護できる汎用性の高い保護形態を提供することができる。
さらに、本発明の保護部材付き成形体における保護形態であれば、剥離の際の成形体の表裏の剥離力差(微細凹凸構造を有する表面の剥離力と微細凹凸構造を有しない表面の剥離力との間の差)から、成形体の表裏を判断することもできる。したがって、表裏の識別が難しい、透明な成形体や、特に光の波長以下のサイズの微細凹凸構造を持つ成形体を保護する場合であっても、剥離の際に表裏を容易に識別することができる。
以下、本発明について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の保護部材付き成形体の一例を示す概略図である。
図1に示す保護部材付き成形体1は、微細凹凸構造10aを有する成形体10と、この成形体10を内包するように設けられた保護材20,20’とから主に構成されている。この成形体10は、一対の主面10b,10cを有しており、この一対の主面10b,10cの少なくとも一方の主面(図1においては主面10b)側に微細凹凸構造10aを有する。したがって、成形体10においては、後述するように、両主面10b,10c側に微細凹凸構造10aを有していても良い(図3)。
成形体10は、主に基材11と表面に微細凹凸構造10aを持つ微細凹凸層12とから構成されている。この場合において、図1に示すように、成形体10が基材11の一方の主面上に、微細凹凸構造10aを外側にして(微細凹凸構造10aが基材11に接触しないで)微細凹凸層12が設けられて構成されていても良く、図3に示すように、成形体10’が基材11の両方の主面上に、微細凹凸構造10a,10a’をそれぞれ外側にして(微細凹凸構造10a,10a’が基材11に接触しないで)微細凹凸層12,12’が設けられて構成されていても良く、図4に示すように、成形体10’ ’が基材11の一方の主面上に、微細凹凸構造10aを外側にして(微細凹凸構造10aが基材11に接触しないで)微細凹凸層12が設けられた部材と、基材11’の一方の主面上に、微細凹凸構造10a’を外側にして(微細凹凸構造10a’が基材11’に接触しないで)微細凹凸層12’が設けられた部材とを接着層13を介して貼り合せて構成されていても良い。なお、成形体10は、用途に応じて、適宜適切な形状、構成であれば特に限定されるものではない。
上述した成形体10は、保護部材により内包されている。保護部材は、基材フィルム22及び基材フィルム22上に形成された微粘着層21を有する保護材20と、基材フィルム22’及び基材フィルム22’上に形成された微粘着層21’を有する保護材20’とで構成されている(一対の保護材)。なお、それぞれの保護材20,20’は、成形体10よりも広い面積を有しており、保護材20,20’同士を貼り合せた際に成形体を内包できるような大きさを有する。
成形体10に保護部材を被覆する場合、例えば、図1に示す構成の場合、一方の保護材20’の微粘着層21’を成形体10の主面10cに貼り付け、他方の保護材20の微粘着層21を成形体10の主面10bに貼り付ける。このとき、他方の保護材20の微粘着層21は成形体10の微細凹凸構造10aの凸部と接触する。そして、一対の保護材20,20’における成形体10の端部からはみ出した領域の微粘着層21,21’同士を貼り合せて成形体10を内包する。また、図3又は図4に示す構成の場合、一方の保護材20’の微粘着層21’を成形体10’ ,10’ ’の主面10c側に貼り付け、他方の保護材20の微粘着層21を成形体10’ ,10’ ’の主面10bに貼り付ける。このとき、一方の保護材20’の微粘着層21’は成形体10’ ,10’ ’の微細凹凸構造10a’の凸部と接触し、他方の保護材20の微粘着層21は成形体10’ ,10’ ’の微細凹凸構造10aの凸部と接触する。そして、一対の保護材20,20’における成形体10’ ,10’ ’の端部からはみ出した領域の微粘着層21,21’同士を貼り合せて成形体10’ ,10’ ’を内包する。
成形体10を保護材20,20’で被覆する場合において、例えば、成形体10が平面視で長方形のとき、成形体10の外周(4辺)が全て保護材20,20’で被覆されていること(成形体10の外周すべてが微粘着層同士の貼り合せ領域となる)が最も好ましいが、微細凹凸構造10の損傷が抑えられるのであれば、成形体10の長辺側のみに微粘着層同士の貼り合せ領域があっても良く、成形体10の短辺側のみに微粘着層同士の貼り合せ領域があっても良く、成形体10の一つの長辺側と一つの短辺側に微粘着層同士の貼り合せ領域があっても良い。また、成形体10が平面視で円、台形等の特殊な形状の場合でも、本発明の効果を満たす範囲であれば、自由な被覆形態をとることができるが、成形体10の外周の50%以上を保護材20,20’で被覆することが好ましい。
図1、図3及び図4に示す構成においては、一対の保護材20,20’で成形体10,10’ ,10’ ’を被覆しているが、本発明はこれに限定されず、図2に示すように、一対の保護材が単一の保護材で構成されていても良い。この場合、保護材20の微粘着層21を成形体10の主面10cに貼り付け、保護材20を成形体10の側面に沿って折り返して保護材20の微粘着層21を成形体10の主面10bに貼り付ける。このとき、保護材20の微粘着層21は成形体10の微細凹凸構造10aの凸部及び主面10cと接触する。そして、保護材20における成形体10の端部からはみ出した領域の微粘着層21同士を貼り合せて成形体10を内包する。
このような保護形態をとることによって、微細凹凸構造の直接的な損傷や粘着成分による汚染を防ぎつつ、粘着力の弱い保護材でも微細凹凸成形体を安定に保護することができる。
ここで、成形体10についてさらに詳細に説明する。
微細凹凸構造10aのパターン形状においては、凸部や凹部の断面形状に制限はなく、例えば、これらの断面形状が台形、矩形、方形、三角形、柱形、錐形、プリズム状や半円状などの正弦波形状や略正弦波形状等であっても良い。特に、凸部の断面形状が、略角錐形状、略円錐形状、略角錐台形状、略円錐台形状等であると、凸部と保護材の微粘着層とが点接触となるため、保護材を剥離する際の剥離性が良くなる。また、凸部は、平面視において特定の方向に延在したライン状に形成され、そのラインが所定の間隔で互いに平行に存在しても良く(ライン&スペース)、各々がドットやピラー状に存在しても良い。凸部と保護材との接触面積を小さくできる点から、凸部はドット状に存在することが好ましい。なお、凸部の配列は、ランダム配列であっても、正規配列であっても良い。また、凸部と凸部の間の凹部が、例えば、尾根のような形態をとることで、保護材を成形体から剥離する際に、パターン損傷等を軽減できるので好ましい。
微細凹凸構造10aの凸部間のピッチは、特に限定されないが、光の波長以下、具体的には1000nm以下であることが好ましい。特に、凸部間のピッチは、可視光の波長以下であることが好ましい(モスアイ形状)。これにより、成形体10の表面と裏面を剥離力差で判断することができる。さらに、凸部間のピッチが300nm以下であると、微細凹凸構造10aを有する主面の回折光が軽減するため、成形体10の表裏を視認することが難しくなるため、剥離力差で判断できるという本発明の効果が重要となる。
微細凹凸構造10aの凸部のアスペクト比は、成形体10の用途に合わせた適切な値であれば問題はないが、凸部のアスペクト比が5以下であると、保護材20,20’越しに押圧された際のパターンダメージを軽減できる。また、成形体10を反射防止材とする場合は、アスペクト比は大きいほど好ましく、0.4以上であることが好ましい。アスペクト比が0.8以上であることで、広帯域な波長の光に対して十分な反射防止機能を示す。ここでのアスペクト比とは、凸部頂部を通るように切断した断面視において、凸部底部から凸部頂部までの高さを凸部底部の幅で割った値である。
微細凹凸構造10aを持つ微細凹凸層12を構成する材質としては、ガラス、セラミック、金属等の無機材料や、樹脂等の有機材料を用途に応じて任意に選択することができる。加工容易性の観点から、樹脂製であることが好ましく、その種類は特に限定されるものではない。例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、光硬化組成物、例えば、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等を挙げることができる。中でも、ロール・ツー・ロール成形でき、加工スループット性も良い光硬化性樹脂を用いることが好ましい。
以下、光硬化組成物の一例を挙げる。
単量体及びオリゴマー(以下、単量体成分ともいう。)の種類としては、反応速度と連続生産性の観点から、ラジカル重合系単量体成分がより好ましい。また、微細凹凸層12を形成する際に鋳型を用いるので、鋳型における凹凸構造パターン深部での反応性を高める観点から、ラジカル重合系単量体に反応寿命の長いカチオン重合系単量体成分を混合しても良い。光硬化用のカチオン重合系単量体としては、重合性官能基としてエポキシ基やビニルオキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基などを有する単量体が好ましい。
ラジカル系単量体成分としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、ステアリルアクリレート、n−ブトキシエチルアクリレート、ブトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、カプロラクトンアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート4級化物、アクリル酸、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、PEG#200ジアクリレート、PEG#400ジアクリレート、PEG#600ジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、ビスフェノールA−EO付加物ジアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、テトラフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、パーフロロオクチルエチルアクリレート、ノニルフェノール−EO付加物アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴアクリレート、エチルカルビトールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、ペンタメチルピペリジルアクリレート、テトラメチルピペリジルアクリレート、パラクミルフェノール−EO変性アクリレート、N−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、イソシアヌル酸−EO変性ジアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、イソミリスチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、n−ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、カプロラクトンメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート4級化物、メタクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコールメタクリル酸安息香酸エステル、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、PEG#200ジメタクリレート、PEG#400ジメタクリレート、PEG#600ジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ビスフェノールA−EO付加物ジメタクリレート、トリフロロエチルメタクリレート、テトラフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、パーフロロオクチルエチルメタクリレート、ノニルフェノール−EO付加物メタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリメチロールプロパンメタクリル酸安息香酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴメタクリレート、エチルカルビトールオリゴメタクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴメタクリレート、トリメチロールプロパンオリゴメタクリレート、ペンタエリスリトールオリゴメタクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレート、テトラメチルピペリジルメタクリレート、パラクミルフェノール−EO変性メタクリレート、N−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、イソシアヌル酸−EO変性ジメタクリレート、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシ)メチルオキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、オキセタニルシリケート、フェノールノボラックオキセタン、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン等が挙げられる。
微細凹凸層12を構成する組成物中の組成比は、単量体成分合計100質量部中、1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を有する1種類以上の単量体成分が20質量部〜60質量部、N−ビニル基を有する単量体成分が5質量部〜40質量部、その他単量体成分が0〜75質量部であることが好ましい。1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を有する1種類以上の単量体成分の含有量を20質量部以上にすることにより、微細凹凸層12を構成する組成物部分が高強度になり、また高架橋密度となるため、微細凹凸層12を構成する組成物部分からの未反応単量体及び低重合度オリゴマーのブリードアウトや副生成物の生成を最低限抑制することができる。また1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を有する1種類以上の単量体成分の含有量を60質量部以下とすることで、微細凹凸層12を構成する組成物の粘度上昇を抑制でき、鋳型の凹凸パターンへの組成物の充填率低下を防止できる。1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する1種以上の単量体成分の含有量は、微細凹凸層12を構成する組成物中の単量体成分合計100質量部中、25質量部〜50質量部であることがより好ましく、30質量部〜40質量部であることがさらに好ましい。
1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する単量体成分としては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシ化グリセルトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、3官能以上のポリエステルアクリレートオリゴマー、3官能以上のウレタンアクリレートオリゴマー、3官能以上のエポキシアクリレートオリゴマー、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート、プロポキシ化グリセルトリメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタアクリレート、トリスメタアクリロイルオキシエチルフォスフェート、3官能以上のポリエステルメタアクリレートオリゴマー、3官能以上のウレタンメタアクリレートオリゴマー、3官能以上のエポキシメタアクリレートオリゴマー等が挙げられる。ここで、エトキシ化及びプロポキシ化された単量体成分とは、単量体1分子当たり、1〜20当量の1種以上のエトキシ基及び/又はプロポキシ基を含む単量体成分をさす。
1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する単量体成分の中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレートは諸物性のバランスが良いので好ましい。中でもトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレートが、硬化後の鋳型(スタンパ)からの硬化成形体の離型性に優れるため、より好ましい。1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する単量体成分は、1種類又は2種類以上用いても良い。
N−ビニル基を有する単量体成分は、微細凹凸層12を構成する組成物中の単量体成分合計100質量部中、15質量部〜38質量部含有することがより好ましく、25質量部〜35質量部含有することがさらに好ましい。N−ビニル基を有する単量体成分を5質量部以上含有することにより、成形体の基材への付着性を向上できる、かつ硬化後の成形体の鋳型からの離型性を良好にすることができ、また40質量部以下含有することにより、未反応単量体及び低重合度オリゴマーの成形体からブリードアウトを最低限抑制でき、また成形体の過度の吸湿も抑制でき、成形体の耐湿特性を向上することができる。
N−ビニル基を有する単量体成分としては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、及びN−ビニルカプロラムタムが、特に好ましく用いることができる。N−ビニル基を有する単量体成分は、1種類又は2種類以上用いても良い。
微細凹凸層12を構成する組成物には、シリコーン成分又はフッ素成分を含有することが好ましい。微細凹凸層12を構成する組成物にシリコーン含有化合物及び/又はフッ素含有化合物を含有することで、微細凹凸層12の表面の表面エネルギーを下げることができ、保護材の微粘着層との間の接着力を弱めることができ、また微粘着層からの移行成分による汚染も防止することができる。
微細凹凸層12を構成する組成物には、アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコーン化合物を含有しても良い。微細凹凸層12を構成する組成物の単量体成分合計100質量部に対し、アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコーン化合物を0.1質量部〜10質量部含有することが好ましく、0.2質量部〜5質量部含有することがより好ましく、0.3質量部〜2質量部含有することがさらに好ましい。0.1質量部以上含有させることで、硬化後の鋳型からの離型性をさらに向上でき、10質量部以下含有させることにより、微細凹凸層12の強度を維持できる。
アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコーン化合物の種類として、例えばシリコンアクリレート系化合物を挙げることができる。ポリジメチルシロキサン骨格にアクリル基を結合させた、BYK−UV3500、BYK−UV3570(ビックケミー・ジャパン社製)、ebecryl350(ダイセル・サイテック社製)が、硬化後の微細凹凸構造10aを構成する層からのブリードアウトも少なく、より好ましい。
微細凹凸層12を構成する組成物には、アクリル基及び/又はメタクリル基を含むフッ素含有化合物(以下、フッ素含有(メタ)アクリレート)を含有しても良い。フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖と、重合性基とを有することが好ましく、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、又は炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入され、且つトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。
ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。また、ポリフルオロアルキレン基は、官能基を有していても良い。
ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、(CF2CF2CF2O)単位及び(CF2O)単位からなる群から選ばれた1種以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位からなることが好ましく、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、又は(CF2CF2CF2O)単位からなることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、含フッ素重合体の物性(耐熱性、耐酸性等)が優れることから、(CF2CF2O)単位からなることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、含フッ素重合体の離型性と硬度が高いことから、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
重合性基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ジオキタセン基、シアノ基、イソシアネート基又は式−(CH2)aSi(M1)3−b(M2)bで表される加水分解性シリル基が好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基がより好ましい。ここで、M1は加水分解反応により水酸基に変換される置換基である。このような置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M1としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M2は、1価の炭化水素基である。M2としては、アルキル基、1以上のアリール基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられ、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。M2がアルキル基である場合、炭素数1〜炭素数4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。M2がアルケニル基である場合、炭素数2〜炭素数4のアルケニル基が好ましく、ビニル基又はアリル基がより好ましい。aは1〜3の整数であり、3が好ましい。bは0又は1〜3の整数であり、0が好ましい。加水分解性シリル基としては、(CH3O)3SiCH2−、(CH3CH2O)3SiCH2−、(CH3O)3Si(CH2)3−又は(CH3CH2O)3Si(CH2)3−が好ましい。
重合性基の数は、重合性に優れることから1〜4の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましい。2種以上の化合物を用いる場合、重合性基の平均数は1〜3が好ましい。
フッ素含有(メタ)アクリレートは、官能基を有すると透明基板との密着性に優れる。官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、エステル結合を有する官能基、アミド結合を有する官能基、水酸基、アミノ基、シアノ基、ウレタン基、イソシアネート基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基等が挙げられる。特に、カルボキシル基、ウレタン基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基の少なくとも一つの官能基を含むことが好ましい。なお、イソシアヌル酸誘導体には、イソシアヌル酸骨格を有するもので、窒素原子に結合する少なくとも一つの水素原子が他の基で置換されている構造のものが包含される。フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、フルオロ(メタ)アクリレート、フルオロジエン等を用いることができる。フッ素含有(メタ)アクリレートの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
フルオロ(メタ)アクリレートとしては、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)10F、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)8F、CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)6F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)10F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)8F、CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CF2)6F、CH2=CHCOOCH2(CF2)6F、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)6F、CH2=CHCOOCH2(CF2)7F、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)7F、CH2=CHCOOCH2CF2CF2H、CH2=CHCOOCH2(CF2CF2)2H、CH2=CHCOOCH2(CF2CF2)4H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)2H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2CF2)4H、CH2=CHCOOCH2CF2OCF2CF2OCF3、CH2=CHCOOCH2CF2O(CF2CF2O)3CF3、CH2=C(CH3)COOCH2CF2OCF2CF2OCF3、CH2=C(CH3)COOCH2CF2O(CF2CF2O)3CF3、CH2=CHCOOCH2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)3F、CH2=CHCOOCH2CF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)2(CF2)3F、CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF3)OCF2CF(CF3)O(CF2)3F、CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF3)O(CF2CF(CF3)O)2(CF2)3F、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)6CF(CF3)2、CH2=CFCOOCH2CH(CH2OH)CH2(CF2)6CF(CF3)2、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)10F、CH2=CFCOOCH2CH(OH)CH2(CF2)10F、CH2=CHCOOCH2CH2(CF2CF2)3CH2CH2OCOCH=CH2、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2CF2)3CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、CH2=CHCOOCH2CyFCH2OCOCH=CH2、CH2=C(CH3)COOCH2CyFCH2OCOC(CH3)=CH2等のフルオロ(メタ)アクリレートが挙げられる(但し、CyFはペルフルオロ(1,4−シクロへキシレン基)を示す)。
フルオロジエンとしては、CF2=CFCF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF2CF=CF2、CF2=CFOCF(CF3)CF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF(CF3)CF=CF2、CF2=CFOCF2OCF=CF2、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF=CF2、CF2=CFCF2C(OH)(CF3)CH2CH=CH2、CF2=CFCF2C(OH)(CF3)CH=CH2、CF2=CFCF2C(CF3)(OCH2OCH3)CH2CH=CH2、CF2=CFCH2C(C(CF3)2OH)(CF3)CH2CH=CH2等のフルオロジエンが挙げられる。
フッ素含有(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。また、耐摩耗性、耐傷付き、指紋付着防止、防汚性、レベリング性や撥水撥油性等の表面改質剤との併用もできる。例えば、ネオス社製「フタージェント」(例えば、Mシリーズ:フタージェント251、フタージェント215M、フタージェント250、FTX−245M、FTX−290M;Sシリーズ:FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTX−230S;Fシリーズ:FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、フタージェント245F;Gシリーズ:フタージェント208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G;オリゴマーシリーズ:フタージェント730FM、フタージェント730LM;フタージェントPシリーズ:フタージェント710FL、FTX−710HL、等)、DIC社製「メガファック」(例えば、F−114、F−410、F−493、F−494、F−443、F−444、F−445、F−470、F−471、F−474、F−475、F−477、F−479、F−480SF、F−482、F−483、F−489、F−172D、F−178K、F−178RM、MCF−350SF、等)、ダイキン社製「オプツールTM」(例えば、DSX、DAC、AES)、「エフトーンTM」(例えば、AT−100)、「ゼッフルTM」(例えば、GH−701)、「ユニダインTM」、「ダイフリーTM」、「オプトエースTM」、住友スリーエム社製「ノベックEGC−1720」、フロロテクノロジー社製「フロロサーフ」、等が挙げられる。
フッ素含有(メタ)アクリレートは、分子量Mwが50〜50000であることが好ましく、相溶性の観点から分子量Mwが50〜5000であることが好ましく、分子量Mwが100〜5000であることがより好ましい。相溶性の低い高分子量を使用する際は希釈溶剤を使用しても良い。希釈溶剤としては、単一溶剤の沸点が40℃〜180℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜140℃がさらに好ましい。希
釈剤は2種類以上使用しても良い。
溶剤含量は、少なくとも硬化性樹脂組成物中で分散する量であればよく、硬化性組成物100重量部に対して0重量部超〜50重量部が好ましい。乾燥後の残存溶剤量を限りなく除去することを配慮すると、0重量部超〜10重量部がより好ましい。
特に、レべリング性を向上させるために溶剤を含有する場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、溶剤含量が0.1重量部以上40重量部以下であれば好ましい。溶剤含量が0.5重量部以上20重量部以下であれば、光重合性混合物の硬化性を維持できるためより好ましく、1重量部以上15重量部以下であれば、さらに好ましい。光重合性混合物の膜厚を薄くするために溶剤を含有する場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、溶剤含量が300重量部以上10000重量部以下であれば、塗工後の乾燥工程での溶液安定性を維持できるため好ましく、300重量部以上1000重量部以下であればより好ましい。光重合性混合物は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、フッ素含有(メタ)アクリレートを0.1重量部〜50重量部、光重合開始剤を0.01重量部〜10重量部含有する光重合性混合物である。特に上記の(メタ)アクリレートとしては、非フッ素含有の(メタ)アクリレートであることが好ましい。
(メタ)アクリレート、特に、非フッ素含有の(メタ)アクリレート100重量部に対して、フッ素含有(メタ)アクリレートを、0.1重量部以上であれば離型性に優れ、50重量部以下であれば基材への密着性に優れるため好ましい。加えて、(メタ)アクリレートが、0.8重量部以上であることで、樹脂モールド表面部(微細凹凸構造表面)のフッ素元素濃度を高くすることができるためより好ましく、6重量部以下であることで、樹脂中の平均フッ素元素濃度を低くし、バルク強度と基材界面の密着力を高くできるためより好ましい。更に、(メタ)アクリレートが、1重量部〜6重量部の範囲であれば、樹脂表面の自由エネルギーをより低くすることができ、繰り返し転写性が良好になるため好ましい。
また、光重合開始剤は、(メタ)アクリレート、特に非フッ素含有の(メタ)アクリレート100重量部に対して、0.01重量部以上であれば重合性に優れ、10重量部以下であれば、硬化後の未反応開始剤や分解物の樹脂表面へブリードアウトを低減できるため好ましい。光重合開始剤は、0.5重量部以上であることがより好ましく、1重量部以上であることがさらに好ましい。一方、光硬化剤は、5重量部以下であることがより好ましい。特に、光重合開始剤が、0.5重量部〜5重量部であれば、硬化後の樹脂透過率に優れる。
レベリング性を向上させるために溶剤を含有する場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、溶剤含量が0.1重量部以上40重量部以下であれば好ましい。溶剤含量が0.5重量部以上20重量部以下であれば、光重合性混合物の硬化性を維持できるためより好ましく、1重量部以上15重量部以下であればさらに好ましい。光重合製混合物の膜厚を薄くするために溶剤を含有する場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、300重量部以上10000重量部以下であれば、塗工後の乾燥工程での溶液安定性を維持できるため好ましく、300重量部以上1000重量部以下であれば、より好ましい。
微細凹凸層12を構成する組成物として、光硬化組成物を用いる場合、光重合開始剤を含有することができる。光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、1,2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]エタノン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられるが、特に本発明においては、高感度で、低揮発性である2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]エタノン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等を好ましく用いることができる。光重合開始剤の配合比は、光硬化組成物中の単量体成分合計100質量部に対し、0.1質量部〜5.0質量部であることが好ましい。これら光重合開始剤は単独で適用することも可能であるが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
微細凹凸層12を構成する組成物として、光硬化組成物を用いる場合、光硬化組成物には、光重合促進剤及び光増感剤などと組み合わせて使用することもできる。例えば、光増感剤としては、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s−ベンジスイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン類のような光増感剤を1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
成形体10を構成する基材11は、微細凹凸層12を支持できるものであれば、その材料は特に限定されるものではない。例えば、ガラス、セラミック、金属などの無機材料や、樹脂などの有機材料を用途に応じて任意に選択することができる。特に、反射防止用途の際には、各界面での反射率を低減させるため、各界面間での屈折率差を小さいことが好ましく、0.2以下、0.001以上であることが好ましく、0.1以下、0.001以上であることがより好ましく、0.05以下、0.001以上であることが最も好ましい。
上記樹脂の例として、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA樹脂)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、メタクリル酸メチル−スチレン樹脂(MS樹脂)、スチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂(COP樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN樹脂)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース樹脂(TAC樹脂)、ポリイミド樹脂あるいはアクリル系、エポキシ系、ウレタン系等の紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。特に、PMMA樹脂、アクリル系樹脂、PC樹脂、PS樹脂、スチレン系樹脂、COP樹脂、PET樹脂、PEN樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、TAC樹脂が好ましい。
上記透明な樹脂には、本発明の効果が得られる範囲で、必要に応じて添加剤を加えてもよい。この添加剤は、樹脂に直接含有させても良く、樹脂基材表面に層形成させても良い。添化剤の種類としては、例えば、有機及び/又は無機粒子、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、易接着剤を挙げることができる。
また、本発明の効果が得られる範囲で、上記透明な樹脂からなる基材11の表面に、バリア性樹脂層をコーティングなどにより形成しても良い。基材表面に、バリア性樹脂層を形成することで、熱、光、水分、酸素、二酸化炭素、窒素、水素などの劣化要因から基材を保護することができるからである。
一方、基材11がガラスである場合、シランカップリング剤やプライマー処理やUV処理などの表面処理を適用することができる。また、これらの表面処理を組み合わせて用いても良い。また、基材11として、表面コーティングや接着層や干渉低減層が形成されている基材を使用しても良い。
基材11の形態は、例えば、板、シート、フィルム、薄膜、その他任意の形状、及びこれらを複合化したものを、使用目的に応じて適宜選択することができる。
基材11の厚さは、本発明の効果を得られる範囲であれば、使用目的や製造方法に応じて適宜選択可能である。
上記基材11上に形成される微細凹凸層12は、耐傷性効果の観点から、凸部頂部から基材11と接する面までの厚さが、200nm以上が好ましい。透明性の観点から光路長を小さくすることが好ましく、厚さを3μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。また樹脂の硬化収縮によるカールを低減するため、1.5μm以下がさらに好ましく、硬化収縮に伴う表面うねりを低減するため、1μm以下であることが最も好ましい。
本発明に用いられる成形体は一般的に知られる製法で製造することができるが、例えば、微細凹凸構造10aを構成する組成物へ微細凹凸構造10aを有する鋳型を転写することによって製造することができる。転写方法としては、微細凹凸構造10aを構成する組成物の硬化条件に応じて、熱ナノインプリント法、光ナノインプリント法、室温ナノインプリント法やキャスト法などが挙げられ、複数の組み合わせても良い。迅速に転写でき、且つロール・ツー・ロールで連続生産できる観点から、光ナノインプリント法がより好ましい。
ここで、微細凹凸構造10aを構成する組成物として、光硬化性組成物を用いた場合を例として具体的に説明する。
まず、基材上に軟質の光硬化組成物を塗布する(塗布工程)。次に、この光硬化組成物を鋳型の微細凹凸構造に押圧する(押圧工程)。押圧した状態で光硬化組成物を露光して硬化させる(露光工程)。得られた樹脂硬化物層を基材と共に鋳型から剥離して微細凹凸成形体を得る(剥離工程)。
(塗布工程)
基材の面積が鋳型の面積よりも大きい場合、光硬化組成物を基材全面に塗布しても良いし、光硬化組成物を基材の一部に塗布し、型押しする範囲にのみに光硬化組成物が存在するようにしても良い。
基材に光硬化組成物を塗布した後、プリベイクすることで、溶剤を含む場合には溶剤を留去でき、硬化後の残留溶媒に由来するボイド形成を低減できる。他の効果としては、内添した添加剤(例えば、含フッ素重合性(メタ)アクリレートや含シリコーン系(メタ)アクリレート)の表面移行を促進させることができ、樹脂硬化物層の表面のすべり性が良くなる。その結果、樹脂硬化物層の表面の耐傷性が良くなり、また、モールドからの離型性が良くなることで、低欠陥で高品位な樹脂硬化物層を得ることもできる。プリベイク温度は、25℃〜120℃が好ましく、40℃〜100℃がより好ましく、50℃〜100℃がさらに好ましく、60℃〜100℃が最も好ましい。プリベイク時間は30秒〜30分が好ましく、1分〜15分がより好ましく、3分〜10分がさらに好ましい。
基材と樹脂硬化物層との接着性を向上させる処理を施すことが好ましい。例えば基材の接着させる面に、樹脂硬化物層との化学結合や、浸透などの物理的結合のための易接着コーティング、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV/オゾン処理、高エネルギー線照射処理、表面粗化処理、多孔質化処理などを施すことが好ましい。
(押圧工程)
押圧工程においては、気泡が入らないように柔軟性の高い基材を端から静かに鋳型の微細凹凸構造上に被膜し、一定圧力下にて押圧することが好ましい。押圧する際のプレス圧力は、0MPa超〜10MPaが好ましく、0.01MPa〜5MPaがより好ましく、0.01MPa〜1MPaがさらに好ましい。
(露光工程)
露光工程においては、鋳型の光透過性が低い場合、基材側から露光することが好ましい。一方、鋳型が紫外波長の光に対する透過率が高い場合、例えば鋳型材質が合成石英の場合は、基材側又は鋳型側の少なくとも一側面から露光することが好ましく、基材側と鋳型側の両面から露光するとより好ましい。基材を使用せず、光硬化組成物のみを鋳型に塗布して硬化させてもよい。その場合は、酸素による重合阻害を防ぐため、窒素雰囲気下又はアルゴン雰囲気下での露光する方法、又は、接着性の低い基材で被覆し、硬化後、基材及び樹脂硬化物層を剥がしとる方法などで硬化物を製造できる。
使用する露光光源としては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、UV−LEDが好ましい。長時間露光時の発熱を抑える観点から、可視波長以上の波長をカットするフィルター(バンドパスフィルターを含む)を利用することが好ましい。積算光量としては、波長365nmで300mJ/cm2以上が好ましく、反応率の高い硬化物を得る目的で、800mJ/cm2以上が好ましく、800mJ/cm2〜6000mJ/cm2がより好ましく、光による樹脂劣化性を防ぐため、800mJ/cm2〜3000mJ/cm2が特に好ましい。
(剥離工程)
剥離工程においては、露光によって光硬化組成物が硬化してなる樹脂硬化物層を鋳型から剥離する。なお、剥離工程においては、上述したように、鋳型表面に離型処理を施していた場合には、鋳型の表面から樹脂硬化物層を容易に剥離することが可能となる。
以上説明した各工程により、本発明に係る成形体を製造することができるが、この製法に限定されるものではない。
次に、保護材20,20’について詳細に説明する。
保護材20,20’は保護部材として成形体10を保護するものであり、成形体10を内包するように設けられる。本実施の形態においては、保護材20,20’が基材フィルム22,22’と微粘着層21,21’とで構成されている場合について説明しているが、本発明においては、これに限定されず、自己粘着性を有する基材フィルムで保護材を構成しても良い。保護材20,20’は、保護部材付き成形体を、接着層を介して重ねる際の保護材剥離を防止する観点から、その微粘着層を保護したい成形体に向けて貼り付けることが好ましい。
使用する保護材は、図2に示すように1枚の保護材20を折りたたむようにして成形体10を覆っても良く、図1、図3及び図4に示すように、一対の保護材20,20’を使って成形体10,10’,10’ ’を挟み込むように覆っても良い。一対の保護材20,20’を使用する場合、保護材の種類は、後述する剥離力の大小関係を示す範囲であれば自由に選択できる。異なる保護材を用いても良いが、同一の保護材を使用することでコストを安く抑えることができる。
微粘着層21,21’の接着力は、非共有結合性相互作用であれば特に限定されない。例えば、水素結合力、ファンデルワールス力、疎水性相互作用、静電相互作用、イオン相互作用等が挙げられる。
保護材は、例えば基材フィルム上に、微粘着層を構成する材料を含む塗布液を塗布する方法によって製造できる。具体的には、基材フィルムの一方の面上に、微粘着層を構成する材料と、必要に応じて水等の溶媒とを含有する塗布液を所定の位置に塗布し、乾燥して、基材フィルム上に微粘着層を形成することで製造できる。また、本発明を満たす範囲であれば、市販の保護材を用いてもよい。
保護材の基材フィルム22,22’を構成する材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、セロハン、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリブテン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、アセチルセルロース等が挙げられる。中でも柔軟性、透明性などの観点から、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
保護材の基材フィルム22,22’の厚さは特に限定しないが、保護材の弾力性、成形体に貼着した際の基材フィルムの撓み防止、フィルムの柔軟性を考慮して、20〜100μmが好ましい。
保護材の微粘着層21,21’を構成する材料としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合(EVA)系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられる。中でも耐水性、耐候性、柔軟性の観点から、EVA系粘着剤が好ましい。
微粘着層21,21’の厚さは特に限定しないが、成形体への保護材の貼着性を考慮すると、1〜50μmが好ましい。
本発明の保護材には、市販の保護フィルムを使用してもよい。具体例としては、藤森工業(株)製“ZNB702”、(株)サンエー化研製“SAT HC1038T−J”、“SAT107T−JSL”、“SAT106T−JSL”、“SAT2038T−JSL”、日立化成工業(株)製“L−7320”、(株)スミロン製“TG−9000AS”、“TG−9000AS−2”、リンテック(株)製“SRL−0753”、“SRL−0758(AS)”、(株)きもと製“EP−MS”、ニッパ(株)製“M−CPF100(75)−SL”、“T−CPF100(75)SX−F”、“T−CPF100(75)−SL”、“T−CPF50(75)−SA−F”、CPF50(75)−SL等が挙げられる。特に、微粘着性であることがより好ましく、例として、(株)サンエー化研製“サニテクト”、日立化成工業(株)製“ヒタレックス”、東レフィルム加工(株)製“トレテック”、藤森工業(株)製“マスタックPC−801”、(株)サンエー化研製“JA16F”、日立化成工業(株)製“DP−1010、ML−2010、DT−4200S”、リンテック(株)製“SRL−050F(SF)、SRL−0753C(AS)、SRL−125F(SF)、SRL−050F(SFCL)”、(株)きもと製“RC THS、RC SHR、SQD3、SQ、EP−LS”等が、挙げられる。
本発明の保護部材付き成形体は、図5に示すように、貼り合された一対の保護材の剥離力(保護材同士の剥離力(以下、剥離力(A)))、保護材と前記微細凹凸構造の凸部との間の剥離力(保護材と成形体の主面10b側との剥離力(以下、剥離力(B)))、保護材と他方の主面との間の剥離力(保護材と成形体の主面10c側との剥離力(以下、剥離力(C)))の大小関係を利用することで、微細凹凸構造の凸部と保護材との接着力が弱い場合でも、浮き等による意図しない保護材の剥離等が生じにくく、また、透明成形体であっても成形体の表と裏の判断を簡易に判断できる効果が得られる。なお、剥離力(C)については、成形体の主面10cに図3や図4に示すように微細凹凸構造10a’が形成されていても良い。
なお、ここでの剥離力は、剥離する行為によって効果が得られる点から、剥離力という言葉を用いたが、本発明の効果が得られる範囲である限り、接着力や、密着力等の別の表現を代用しても構わない。
剥離力(A)>剥離力(B)の関係であることで、成形体の主面10b側と保護材間に浮きが発生した場合でも、周囲が固定されていることで浮きや不用意な保護材剥離が発生し難くなる。また、この大小関係には、保護材と成形体の主面10b側とが実質接着しない場合、すなわち、剥離力Bがゼロ、又は限りなくゼロである場合も含まれる。したがって、微細凹凸構造の凸部と接着しない保護材を選択することで、可塑剤、添加剤等が、意図せずブリードアウトし、微細凹凸構造の表面を汚染することを防ぐことができる。
剥離力(C)>剥離力(B)の関係であることで、剥離した際に、成形体の表面と裏面を識別できる。例えば、微細凹凸構造10aを有する側と、基材11側とを簡易に識別することができる。また、成形体と保護材との剥離力(B)が非常に弱い場合でも、基材11側と保護材との接着力が勝ることで、成形体10はスリップ等が生じなくなる。
本発明において、上記理由により、剥離力(A)〜(C)のうち剥離力(B)が最もも小さいことが好ましい。したがって、剥離力(C)≧剥離力(A)>剥離力(B)や、剥離力(A)≧剥離力(C)>剥離力(B)の関係であれば良い。これらの条件を満たすことで、微細凹凸構造10aと保護材20との間の接着力が弱い場合でも、基材11側と保護材20’との接着力により成形体10のスリップ等の動きを抑制でき、さらに成形体10の周囲が保護材同士の接着力により、ラミネートされることで、成形体10の不用意なスリップ等を防ぐことが可能となる。さらに、この保護部材付き成形体において、保護材同士が接着している箇所から剥がし取っていくと、成形体の微細凹凸構造側の保護材が先に剥離する。このため、保護材が始めに剥離した側が微細凹凸構造を有する主面であり、保護材が成形体と接着した状態の主面が基材側であることが分かる。
(剥離力(B))
本発明の保護部材付き成形体に適した保護材は、微細凹凸構造の凸部と接着力が弱く、微細凹凸構造の凸部に接着させただけでは、保護材として不十分であることが好ましい。保護材として不十分とは、初期粘着力が弱く浮きが発生するような保護材であったり、また、室温下で貼着後、80℃で1日以上の加熱環境下に置くことで、初めて浮きが発生する保護材であっても良い。また、貼着後、保護部材付き成形体を曲げると保護材が容易に浮くような保護材も含む。なお、浮きとは、端部の保護材が浮き上がる現象や、端部から浮いた気泡が成形体を内包する部分に移行して気泡噛みが発生している現象を呼ぶ。以上の理由から、剥離力(B)は、0.05N/25mm以下であると、微細凹凸構造の凸部に実質接着せず、0.01N/25mmN以下又はゼロであると、保護材からの移行成分等による微細凹凸構造の表面汚染リスクを限りなく無くすことができる。
(剥離力(A)及び(C))
剥離力(A)及び(C)については、ともに、前記大小関係が成立することを前提に、剥離力(B)よりも0.01N/25mm以上加算された剥離力であることで、微細凹凸構造を有する面と基材側の面の識別し易くなる。このため、剥離力(C)と剥離力(B)との間の差が0.01N/25mm以上であることが好ましい。また、剥離力(A)及び(C)は、剥離力(B)よりも0.03N/25mm以上加算された剥離力であることで、成形体のスリップ防止、又は、曲げ等の操作による不用意な保護材浮きを防止できる。
また、図3及び図4のような、成形体の両側の主面に微細凹凸構造が形成されている場合でも、上述したような剥離力差があれば、同様に本発明を適応することができる。すなわち、基材の一方の主面に微細凹凸構造D、基材の他方の主面に微細凹凸構造Eが設けられている成形体の場合、「保護材と微細凹凸構造D側の主面との剥離力(B)」と「保護材と微細凹凸構造E側の主面との剥離力(B’)」との関係が同等でない限り、すなわち、剥離力(B)>剥離力(B’)、又は、剥離力(B’)>剥離力(B)が成り立てば良い。また、両面が同一の凹凸形状からなる微細凹凸構造であった場合は、保護材の組み合わせを変えることで、剥離力(B)>剥離力(B’)、又は、剥離力(B’)>剥離力(B)の関係を成立させることができる。
本発明において、保護材の剥離力の測定は、JIS Z1528に準拠した粘着テープ90度剥離試験治具を用いて引張試験機にて行った。なお、剥離力は、23℃、50%RHの室内で剥離速度300mm/分の条件で測定した。測定試料としては、例えば、幅25mm、長さ100mmの短冊状に裁断したものを用いた。
(実施例)
以下、本発明の効果を明確にするための実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
(微細凹凸構造を構成する組成物)
1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する単量体成分としてトリメチロールプロパントリアクリレートを32質量部、N−ビニル基を含有する単量体成分としてN−ビニル−2−ピロリドン(NVP)を32質量部、その他の単量体成分として1,9−ノナンジオールジアクリレートを33質量部、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、ダロキュアTPO)を2質量部、内部離型剤としてアクリル基を含有するシリコーン化合物であるシリコーンジアクリレートを1質量部配合し、孔径1μmのフィルターを用いて異物をろ過して微細凹凸構造を構成する組成物を作製した。得られた微細凹凸構造を構成する光硬化組成物の50℃での粘度は5mPa・sであった。当該粘度は、E型粘度計(東機産業社製、型番:RE550L)を用いて50℃で測定した。この調合品を樹脂組成物とした。
(原版の作製方法)
均一な厚みのフォトレジスト層が形成されているガラスプレートへ、レーザ干渉露光法により、ビームスプリッターで分けられた2本のレーザ光を照射して干渉稿を得た。次に、ガラスプレートを60°回転して同様に干渉稿を得た。その後、フォトレジストを現像して凹部及び凸部を含むモスアイ状の連続構造を有する原版を作製した。当該原版において、凹部及び凸部の配列パターンは、それぞれ六方格子状であった。
(スタンパAの作製方法)
上記原版から、電鋳法により微細凹凸構造を転写して、ニッケルメッキされたモスアイ状の微細凹凸構造を有するスタンパ(平板状、厚み0.2mm)を作製した。当該スタンパにおいて、微細凹凸構造の凸部頂点間の間隔(平均ピッチ)は240nm、高さは290nmであった。また、凸部の平均直径は240nmであった。また、当該スタンパにおいて、凹部及び凸部の配列パターンは、それぞれ六方格子状であった。該スタンパ表面には、離型剤(ダイキン工業社製、デュラサーフHD−2101Z)を用いて、離型処理を行った。
(成形体の作製方法)
上記作製したスタンパを用いて、光ナノインプリント法にてパターンをフィルムに転写した。厚み80μmのトリアセチルセルロース樹脂(以下、TACと略す)フィルム(TD80UL−H/富士フィルム社製、屈折率1.48)に樹脂組成物を塗布し、塗布面を下にしてスタンパとTACフィルムとの間に空気が入らいないように被せた。TACフィルム側からメタルハライドランプを用いて紫外線を1500mJ/cm2で照射し、樹脂を硬化後、剥離するとスタンパの微細凹凸構造を転写した、成形体を得た。成形体のパターン面のSEM観察より、スタンパの反転形状が転写されていることが確認された。
次に、上述のようにして得られた成形体に保護材を用いて保護した際の保護形態について評価を行った。
(実施例1)
<東レフィルム加工(株)製“トレテック”を使った保護形態評価>
成形体(500mm□)の微細凹凸構造を有する主面側に、保護材であるトレテック♯7332(700mm□)を平行に重ねて、その微粘着層で微細凹凸構造を保護し、端部からゴムローラーで加圧して被覆した。しかしながら、保護材は微細凹凸構造の凸部とは全く接着しなかった。そこで、保護材としてトレテック♯7332(700mm□)を二枚用意し、それぞれの保護材の微粘着層で成形体の両面全面被さるように重ね、エアを噛まないように注意しながらゴムローラーで加圧して被覆した。
その結果、成形体よりも外側の保護材同士でしっかりと接着されており、成形体の微細凹凸構造の凸部には保護材が依然接着されていないにもかかわらず、安定に固定されることが確認された。また、曲げても浮きが発生しないことも確認された。
次に、成形体の両面を保護した保護材を同時に剥がそうとすると、一方の主面側が容易に剥がれ、他方の主面側は保護材に接着したままであった。保護材を剥がした成形体をSEM観察したところ、モスアイ構造が確認され、微細凹凸構造を有する面であることが確認された。また、保護材貼着前の成形体の反射率と保護材剥離後の成形体の反射率を調べたところ反射率に変動はなかった。また、微細凹凸構造への汚染もないことが確認された。なお、各剥離力については下記表1に記載した。
(実施例2)
<(株)きもと製“RC THS”を使った保護形態評価>
成形体(200mm□)の微細凹凸構造を有する主面側に、保護材であるRC THS(300mm□)を平行に重ねて、その微粘着層で微細凹凸構造を保護し、端部からゴムローラーで加圧して被覆した。このとき、フィルム浮きは見られなかったが、保護部材付き成形体を曲げたところ容易にフィルムが浮いてしまい、剥がれてしまった。そこで、保護材としてRC THS(400mm□)を二枚用意し、それぞれの保護材の微粘着層で成形体の両面全面被さるように重ね、エアを噛まないように注意しながらゴムローラーで加圧して被覆した。その結果、成形体よりも外側の保護材同士でしっかりと接着されており、曲げても浮きが発生しないことも確認された。
次に、成形体の両面を保護した保護材を同時に剥がそうとすると、剥離力の差で、一方の主面側が容易に剥がれ、他方の主面側は保護材に接着したままであった。保護材を剥がした成形体をSEM観察したところ、モスアイ構造が確認され、微細凹凸構造を有する面であることが確認された。また、保護材貼着前の成形体の反射率と保護材剥離後の成形体の反射率を調べたところ反射率に変動はなかった。また、微細凹凸構造への汚染もないことが確認された。なお、各剥離力については下記表1に記載した。
次に、耐熱試験による結果について記述する(表2)。耐熱試験においては、保護材の付いた成形体を、80℃の乾燥機で7日間静置し、試験後、23℃、50%RHの室内で約2時間放置して、保護材の成形体からの浮き発生具合や、粘着材付着によるモスアイ構造面への汚染具合について評価した。
汚染具合については、試験前後のモスアイ構造面の反射率差より評価した。波長400nmから700nmにおける0.5nm毎の反射率を測定し、各波長における反射率差の平均値により算出した。以下に、これらの実施例、比較例について述べる。
(実施例3)
<(株)きもと製“RC THS”を使った両面保護形態>
実施例2と同様にして、成形体の両面を保護し、成形体を内包した形態を作製した。このサンプルを、前記耐熱試験にかけたところ、エア噛み等による保護材浮きもなく、テスト初期状態と変わりがない保護形態が保持されていることが確認された。また、保護材を剥離後、モスアイ構造面の反射率を測定した結果、初期反射率と変わりがなく、パターン面が汚染されていないことも確認された。
(比較例1)
<(株)きもと製“RC THS”を使った片面保護形態>
実施例2に記載の、モスアイ構造面のみを保護した状態を作製した。貼合直後、室温条件下で静置した状態では、保護材浮きは観察されなかったが、耐熱試験後、静置させていたにもかかわらず、成形体端部と保護材の間が浮く現象が確認された。これは、保護材とモスアイ構造面の粘着力が弱く、加熱することにより、保護材側の粘着層の体積収縮等が生じ、これがモスアイ構造面との粘着力に勝ったためと推察される。
(比較例2)
<サンエー化研製“SAT106T−JSL”を使った片面保護形態>
モスアイ構造面との接着性が良好で、初期剥離力が、0.49N/25mmである保護材“SAT106T−JSL”を用いてモスアイ面だけ保護した。貼合直後の室温条件下では、モスアイ構造面からの剥離性に変動もなく、また目立った粘着材残りは生じなかった。このサンプルを耐熱試験したところ、保護材浮きは生じず、また剥離力が0.55N/25mmと上昇し、より接着性を増した。モスアイ構造面を保護した保護材を剥離し、モスアイ構造面の反射率を測定したところ、反射率変化が|ΔR|=1.30%と大きく変化した。これは、加熱により保護材の粘着成分がモスアイ構造面移行したものと考察される。
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。また、上述した本発明の態様及び微細凹凸構造の実施の形態等は適宜組み合わせて実施することが可能である。その他、本発明は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。