以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明者らは、複数の機能を複合化、一体化した複合型機能性フィルムの製造を実現するため、光学機能性基材の表面に微細凹凸パタンをナノインプリントにより転写することを試みた。
具体的には、直線偏光機能を有する基材フィルムの一主面に未硬化の光硬化性樹脂組成物を塗布し、この未硬化の光硬化性樹脂組成物を、表面に微細凹凸パタンを有する金型(以下「モールド」ともいう。)に押し付け、この状態で基材側から光を照射し、ナノインプリントを試みた。この結果、一般的な高光透過性の基材フィルムを用いた場合には見られなかった次のような課題が判明した。なお、直線偏光機能とは、第一の振動方向を有する偏光を透過し、前記第一の振動方向と直交する第二の振動方向を有する偏光を吸収又は反射することをいう。
一つ目の課題は、直線偏光機能を有する基材フィルムを用いた場合、生産効率が低下することである。この基材フィルムは、自然光のようなランダムな方向に振動している光に対しては約50%の光透過性能しか有さないので、基材フィルム側から照射すると、未硬化の光硬化性樹脂層に到達する光が約50%となってしまう。このため、光硬化性樹脂層を十分に硬化させるために、光の照射強度を2倍とするか、照射時間を2倍とすることで露光量を2倍にする必要が生じる。
二つ目の課題は、直線偏光機能を有する基材フィルム、特に吸収型のものを用いた場合、直線偏光機能をもたない高透過基材フィルムのナノインプリントでは顕在化しなかった品位低下が起こることである。直線偏光機能を有する基材フィルムにランダムな方向に振動している光を照射すると、直線偏光機能を有する基材フィルムが透過する振動方向と直交する振動方向の光は、この基材フィルムで吸収か反射されることになる。この時、基材フィルムに吸収された光は、熱へ変化し、基材フィルムの分子配向状態を変化させることによって性能劣化を引き起こしたり、熱による基材フィルムの変形を生じてナノインプリントの転写性に不良を生じたり、ナノインプリント後の複合型機能性フィルムの平坦度が劣化したり、といった直線偏光機能をもたない高透過基材フィルムのナノインプリントでは顕在化しなかった品位低下が起こることを確認した。特に吸収型の直線偏光機能を有する基材フィルムでの品位低下が著しかった。
本実施の形態に係る複合型機能性フィルムの製造方法は、このような課題を解決するために発明されたものであり、第一の振動方向を有する偏光を透過し、前記第一の振動方向と直交する第二の振動方向を有する偏光を反射又は吸収する直線偏光機能を有する基材フィルム、前記基材フィルムの一主面上に設けられた、未硬化の光硬化性樹脂組成物で構成された光硬化性樹脂層、及び、一表面に微細凹凸パタンを有し、前記微細凹凸パタンを前記光硬化性樹脂層に対向するように配置したモールドを積層した状態で、前記第一の振動方向に対して実質的に平行な振動方向を有する直線偏光光を、前記基材フィルム側から照射して前記光硬化性樹脂層を硬化させる工程を具備する要旨とする。
すなわち、本実施の形態に係る複合型機能性フィルムの製造方法は、第一の振動方向を有する偏光を透過し、前記第一の振動方向と直交する第二の振動方向を有する偏光を反射又は吸収する直線偏光機能を有する基材フィルムの一主面上に未硬化の光硬化性樹脂組成物で構成された光硬化性樹脂層を形成する工程と、モールドの表面に設けられた微細凹凸パタンを前記光硬化性樹脂層に押し当てる工程と、前記微細凹凸パタンを前記光硬化性樹脂層に向かって押し当てた状態で、前記基材フィルムを介して前記光硬化性樹脂層に対して前記第一の振動方向に対して実質的に平行な振動方向を有する直線偏光光を照射して前記光硬化性樹脂層を硬化させて光硬化樹脂層を得る工程と、を具備することを特徴とする。
上述の本実施の形態に係る複合型機能性フィルムの製造方法によれば、未硬化の光硬化性樹脂層を硬化させるために、基材フィルムを介して光硬化性樹脂層に光を照射する際、照射光として、直線偏光機能を有する基材フィルムが透過し得る第一の振動方向に実質的に平行な振動方向を有する直線偏光光を用いているので、上記一つ目の課題に対しては、照射強度を2倍に増加させる必要がないという効果を奏し、一方、上記二つ目の課題に対しては、基材フィルムに吸収される熱を発生しないという効果を奏する。
以下、本実施の形態に係る複合型機能性フィルムの製造方法の詳細について説明する。
<複合型機能性フィルム>
図1A〜図1Dは、本実施の形態に係る複合型機能性フィルムを示す断面概略図である。
図1Aに断面を示した第一の態様の複合型機能性フィルム1aは、直線偏光機能を有する基材フィルム2の一面に、微細凹凸パタンを有する光硬化樹脂層3を積層した構造である。図1Bに断面を示した第二の態様の複合型機能性フィルム1bは、図1Aに示す第一の態様の複合型機能性フィルム1aにおける直線偏光機能を有する基材フィルム2を、支持体4と直線偏光機能層5との2層構成としたもので、直線偏光機能層5側に光硬化樹脂層3を積層したものである。図1Cに断面を示した第三の態様の複合型機能性フィルム1cは、第一の態様の複合型基材フィルム1aにおける直線偏光機能を有する基材フィルム2を、支持体4と直線偏光機能層5との2層構成としたもので、支持体4側に光硬化樹脂層3を積層したものである。図1Dに断面を示した第四の態様の複合型機能性フィルム1dは、第一の態様における直線偏光機能を有する基材フィルム2を、2枚の支持体4,6と直線偏光機能層5との3層構成として、支持体6側に光硬化樹脂層3を積層したものである。ここで、支持体4,6は光学的透明な材料が好ましい。また、これらの層以外に光透過性を有する層を有していてもよい。なお、「光硬化樹脂層」とは「光硬化性樹脂層」が光照射により硬化した後のものをいう。
次に、図1Cに断面を示した第三の態様の複合型機能性フィルム1cについて、好ましい例を説明する。図2は、本実施の形態に係る複合型機能性フィルムを示す断面概略図である。複合型機能性フィルム10は、透明フィルム基材11の一方の面に、特定方向に延在する格子状凸部12aが複数形成された樹脂層12を有し、格子状凸部12a上に被覆された誘電体層13と、誘電体層13上に設けられた金属ワイヤ14と、を具備する。なお、図2は、上記特定方向に垂直な方向の断面を示している。
ここで、金属ワイヤ14は、誘電体層13で被覆された格子状凸部12aの頂部より上方に配置された形状である。ワイヤピッチQを一定(80nm〜300nm)とした場合、ワイヤ幅WをワイヤピッチQの0.3倍〜0.6倍程度として、ワイヤ高さGを120nm〜250nmの範囲で比較的高くすることが好ましい。
透明フィルム基材11のもう一方の面には、光反射防止機能を有する光硬化樹脂層20を有する。光硬化樹脂層20は、複数の凸部21及び複数の凹部22を含む微細凹凸パタン20aを有する。複数の凸部21の間には尾根23が存在する。
微細凹凸パタン20aの所定領域において、基準面からの複数の凸部21の頂点21aの高さHが200nm以上であり、隣接する複数の凸部21間の間隔Pが平面視において260nm未満であり、複数の凸部21又は複数の凹部22の配列パタンが六方格子状であって、任意の凸部21と当該任意の凸部21に隣接する6個の凸部21に属する3個又は4個の凸部21との間に尾根23が存在し、任意の凸部21に隣接する6個の凸部21のうち、3個又は4個以外の凸部21が相互に隣接しないことを特徴とする。このように、複合型機能性フィルム10は、異なる機能を複合化した構成である。
以下、本実施の形態に係る複合型機能性フィルムの製造方法について詳細に説明する。
<直線偏光機能を有する基材フィルム>
まず、直線偏光機能を有する基材フィルムを用意する。直線偏光機能を有する基材フィルムは、吸収型偏光フィルムと反射型偏光フィルムに大別される。吸収型偏光フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコールからなるシートにヨウ素や染料を染色・吸着させ、一軸方向に延伸して配向させ、さらに、このフィルムの機械的強度を確保するために複屈折性を有しない透明フィルムなどの支持体を貼り合わせた積層フィルムを用いることが出来る。
反射型偏光フィルムとしては、例えば、2種の交互ポリマーA、Bを共押し出しし、続いて、多層押し出し物を1つ以上のマルチプライヤダイに通し、次に押し出し物を延伸した多層薄膜構造の反射型偏光フィルム(住友スリーエム社のDBEF)や、特定方向に延在する格子状凸部を有し、格子状凸部上に被覆された誘電体層と、該誘電体層上に設けられた金属ワイヤを具備したワイヤグリッドからなる反射型偏光フィルムを用いることが出来る。
本実施の形態では、後述のように、ロール・ツー・ロール法を用いるため、基材フィルムは、ロールに巻かれたシート状になっている。
<反射防止機能を有する光硬化樹脂層の基本構造>
図2及び図3を参照して本実施の形態に係る反射防止機能を有する光硬化樹脂層について説明する。図3は、本実施の形態に係る反射防止機能を有する光硬化樹脂層の微細凹凸パタンを示す模式的な斜視図である。
本実施の形態に係る複合型機能性フィルム10において、透明フィルム基材11の表面に設けられた光硬化樹脂層20の表面には、微細凹凸パタン20aが設けられている。微細凹凸パタン20aは、複合型機能性フィルム10の基準面Xの面内方向(図2の左右方向及び奥行方向)に連続して延在するように設けられた複数の凸部21及び複数の凹部22を有する。
微細凹凸パタン20aは、複数の凸部21の頂点21aと複数の凹部22の底22aとの間に、基準面Xからの凸部21の頂点21aの高さと凹部22の底22aの高さとの中間の高さを有する領域(以下、「尾根」という)23を有する。この尾根23は、例えば、隣接する凸部21の頂点21a同士を繋ぐ線状の領域であって、凹部22の底22aより高さHが高い領域、又は隣接する凹部22の底22a同士を繋ぐ線状の領域であって、凸部21の頂点21aより高さHが低い領域である。凸部21の頂点21a同士を繋ぐU字状の尾根23の最下点の高さは、凸部21の高さHの20%〜80%とすることで、斜め入光の反射防止性能に優れ、凸部21の強度にも優れるナノ構造体からなる微細凹凸パタン20aを得ることができる。なお、本明細書において、特に断りがない場合、高さHとは、基準面Xに垂直な方向における基準面Xと対象との間の距離とする。また、基準面Xとは、ある範囲内、例えば、走査型プローブ顕微鏡(SPM)や電解放出走査型電子顕微鏡(FE−SEM)の走査範囲内において、複数存在する凹部22の底22aのうち、最も低い点を含み、透明フィルム基材11の表面に略平行な平面である。
複数の凸部21の頂点21aは、微細凹凸パタン20aの所定領域内において、いずれも基準面Xから200nm以上の高さHを有することが好ましい。所定領域内とは、目視で確認できるサイズ以上の領域を意味する。このように凸部21を設けることにより、正面から複合型機能性フィルム10に入光する入射光だけでなく、斜め方向から入光する入射光に対しても、反射防止性能の向上に必要な基準面Xからの凸部21の頂点21aの高さを十分に確保できるので、広い入射光角度範囲で優れた反射防止性能を発現できると共に、近赤外波長領域(700〜1000nm)での反射防止性能を向上させることができる。なお、複合型機能性フィルム10としては、必要な反射防止性能を示す範囲であれば、必ずしも全ての凸部21の頂点21aの高さHが基準面Xから200nm以上である必要はない。これは、所定領域内の反射防止性能に影響しない範囲であれば、凸部21の欠損や高さHが200nm未満の凸部21が存在してもよいことを意味する。また、上記効果を一層発現する観点から、凸部21の頂点21aの高さHは200nm以上であることが好ましく、260nm以上であることがより好ましく、300nm以上であることがさらに好ましく、400nm以上1000nm以下であることが特に好ましい。1000nmより大きくなると微細凹凸パタン20aを安定的にナノインプリントすることが困難になる。なお、「凸部21の頂点21a(又は凹部22の底22a)の高さH」とは、複合型機能性フィルム10の基準面Xに対する垂直方向における基準面Xから凸部21の頂点21a(又は凹部22の底22a)までの距離とする。
また、微細凹凸パタン20aは、複数の凸部21に含まれる任意の凸部21の頂点21aと当該任意の凸部21に最も近接する凸部21の頂点21aとの間隔P(ピッチ)が、平面視において260nm未満50nm以上であることが微細凹凸パタン20aを安定的にナノインプリントする上で好ましい。このように凸部21を設けることにより、回折現象の発生を抑制し、特定波長での反射率の上昇を抑制できるので、可視波長領域での反射防止性能を向上させることができる。近接する凸部21の頂点21a間の間隔Pとしては、上記効果を一層発現する観点から、230nm未満であることが好ましく、200nm未満であることがより好ましい。
また、本実施の形態に係る複合型機能性フィルム10においては、微細凹凸パタン20aが基準面Xに対して直交する垂直方向からの平面視において、複数の凸部21及び複数の凹部22による任意の規則性を有する配列パタンを有することが好ましい。
図4は、本実施の形態に係る微細凹凸パタンの配列パタンの一例を示す平面模式図である。なお、図4は、電子顕微鏡写真に基づいて作製した平面模式図である。また、図4においては、複数の凸部21及び複数の凹部22によって構成される配列パタンが平面視において六方格子状である場合の一例を示している。
図4に示すように、六方格子状の配列パタンとは、基準面Xに対する垂直方向からの平面視において、微細凹凸パタン20aの任意の一の凸部21に対して、当該凸部21に最も近接する凸部21が6個存在し、この6個の凸部21により六角形状24を形成する配列パタンである。この配列パタンにおいては、任意の凸部21−1と当該任意の凸部21−1に隣接する6個の凸部21−2〜21−7との間に4個の尾根23が存在している。具体的には、任意の凸部21−1と当該任意の凸部21−1に隣接する4個の凸部21−2、凸部21−3、凸部21−5及び凸部21−6との間に尾根23が存在しており、当該任意の凸部21−1に隣接する2個の凸部21−4、凸部21−7の間に凹部22が存在している。
このように、本実施の形態に係る複合型機能性フィルム10においては、複数の凸部21及び複数の凹部22による配列パタンが、平面視においてN方格子状であって(Nは4から8である)、任意の凸部21と当該任意の凸部21に隣接するN個の凸部21との間に1個から(N−2)個の尾根23が存在する。このように尾根23を設けることにより、凸部21の高さ及び対象領域の平面視において当該高さ以上の領域が占める面積の割合(以下、「充填率」ともいう)が向上するので高い反射防止性能を得ることが可能となる。また、斜めから入光する光に対しても、なだらかな屈折率勾配をもつ構造となるので、広い入射角度に対し高い反射防止性能を得ることができる。
なお、本実施の形態に係る複合型機能性フィルム10において、N方格子としては、複数の凸部21及び複数の凹部22による配列パタンであって、尾根23の分散を許容する格子形状であれば、配列パタンの単位格子の形状及び尾根23の分散構造に特に制限はない。N方格子としては、例えば、四方格子、六方格子、八方格子などが挙げられる。また、本明細書において、N方格子状とは、厳密なN方格子以外にも、必要な反射防止性能を示す範囲で、分散性を許容できる形状を含む。
配列パタンが、六方格子状である場合には、任意の凸部21と当該任意の凸部21に隣接する1個から5個の凸部21との間に尾根23が存在することが好ましい。この場合、任意の凸部21と当該任意の凸部21に隣接する6つの凸部21に属する3個又は4個の凸部21との間に尾根が存在し、任意の凸部21に隣接する6つの凸部21のうち、当該3個又は4個以外の凸部21が相互に隣接しないことがより好ましい。このように微細凹凸パタン20aの複数の凸部21又は複数の凹部22が、平面視において六方格子状に配列されることにより、四方格子状に配列される場合と比較して、凸部21の間隔Pを同一にした場合の凸部21の充填密度を高くすることができる。これにより、複数の凸部21及び複数の凹部22の配列による光学異方性を低減できる共に、屈折率勾配をなだらかに形成しやすくなるので、可視光から近赤外光の広い領域で反射防止性能が向上する。なお、本明細書において、六方格子状とは、厳密な六方格子以外にも、必要な反射防止性能を示す範囲で、分散性を許容できる形状を含む。
また、複数の凸部21及び複数の凹部22によって構成される配列パタンは、平面視において四方格子状としてもよい。四方格子状の配列パタンとは、任意の一の凸部21に対して、当該凸部21に最も近接する凸部21が4個存在し、この4個の凸部21によって四角形状を形成する配列パタンである。配列パタンが、四方格子状である場合には、任意の凸部21と当該任意の凸部21に隣接する4個の凸部21に属する2個又は3個の凸部21との間に尾根23が存在し、任意の凸部に隣接する4つの凸部21のうち、当該2個の凸部21以外の凸部21が相互に隣接しないことが好ましい。なお、本明細書において、四方格子状とは、厳密な四方格子以外にも、必要な反射防止性能を示す範囲で、分散性を許容できる形状を含む。
また、凸部21及び凹部22の配列パタンが、四方格子や六方格子である場合においては、尾根23が基準面Xに属する2方向に向けて延在し、当該2方向において凸部21と尾根23とが交互に存在することが好ましい(例えば、図4においては、凸部21−3、尾根、凸部21−1、尾根、凸部21−6を結ぶ方向と、凸部21−2、尾根、凸部21−1、尾根、凸部21−5を結ぶ方向をいう。)。このように尾根23を設けることにより、微細凹凸パタン20aに規則性が生じる。この規則性により、当該微細凹凸パタン20aの形状が反転されたナノパタンを有する金型からの転写によって複合型機能性フィルム10を製造する際に、金型のナノパタンへの安定した樹脂の充填が可能となると共に、転写後に金型からの複合型機能性フィルム10の剥離が容易となる。この結果、透明フィルム基材11の表面に均一に微細凹凸パタン20aを転写することが可能となり、良好な光学性能を有する複合型機能性フィルム10を得ることができる。
微細凹凸パタン20aの形状としては、複数の凸部21及び複数の凹部22を含む連続構造であって、必要な反射防止性能を示す範囲であれば特に限定されない。連続構造の種類としては、例えば、ラインアンドスペース構造、ドット構造、ハニカム構造、モスアイ構造などが挙げられる。これらの中でも、高い反射防止性能を得る観点から、ドット構造の1つであるモスアイ構造を適用することが好ましい。
また、微細凹凸パタン20aの複数の凸部21及び複数の凹部22を構成する個々の凸部および凹部の形状としては、略角錐形状、略円錐形状、略角錐台形状、略円錐台形状のいずれかであることが好ましい。これらの中でも、複数の凸部21及び複数の凹部22の形状としては、略角錐形状、略円錐形状であることがより好ましく、略円錐形状であるとさらに好ましい。略円錐形状としては、真円錐でも楕円錐でもよく、凸部21の頂点21a又は凹部22の底22aが丸みを帯びているものが好ましい。略円錐形状において凸部21の頂点21a又は凹部22の底22aに丸みを帯びさせることで、さらに反射防止性能を向上させることができる。略円錐形状としては、テント型(凸部21の稜線がへこんだ形状)、ベル型(凸部21の稜線が膨らんだ形状)、三角形型(凸部21の稜線が直線である形状)が挙げられる。広い波長領域、特に、近赤外波長領域(700〜1000nm)で優れた反射防止性能を得られる観点から、ベル型がより好ましい。
<光硬化性樹脂組成物>
以下、本実施の形態に係る複合型機能性フィルムに用いられる光硬化性樹脂組成物について説明する。
・単量体成分
光硬化性樹脂組成物中の単量体及びオリゴマー(以下、単量体成分ともいう。)の種類としては、反応速度と連続生産性の観点から、ラジカル重合系単量体からなる単量体成分が好ましい。また、モールドの微細凹凸パタン深部での反応性を高める観点から、ラジカル重合系単量体からなる成分に反応寿命の長いカチオン重合系単量体からなる単量体成分を混合してもよい。光硬化用のカチオン重合系単量体としては、重合性官能基としてエポキシ基やビニルオキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基などを有する単量体が好ましい。
ラジカル重合系単量体としては、例えば、アクリロイル基(アクリル基)またはメタクリロイル基(メタクリル基)を有する化合物が挙げられる。具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、ステアリルアクリレート、n−ブトキシエチルアクリレート、ブトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、カプロラクトンアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート4級化物、アクリル酸、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、PEG#200ジアクリレート、PEG#400ジアクリレート、PEG#600ジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、ビスフェノールA−EO付加物ジアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、テトラフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、パーフロロオクチルエチルアクリレート、ノニルフェノール−EO付加物アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴアクリレート、エチルカルビトールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、ペンタメチルピペリジルアクリレート、テトラメチルピペリジルアクリレート、パラクミルフェノール−EO変性アクリレート、N−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、イソシアヌル酸−EO変性ジアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、イソミリスチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、n−ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、カプロラクトンメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート4級化物、メタクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコールメタクリル酸安息香酸エステル、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、PEG#200ジメタクリレート、PEG#400ジメタクリレート、PEG#600ジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ビスフェノールA−EO付加物ジメタクリレート、トリフロロエチルメタクリレート、テトラフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、パーフロロオクチルエチルメタクリレート、ノニルフェノール−EO付加物メタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリメチロールプロパンメタクリル酸安息香酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴメタクリレート、エチルカルビトールオリゴメタクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴメタクリレート、トリメチロールプロパンオリゴメタクリレート、ペンタエリスリトールオリゴメタクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレート、テトラメチルピペリジルメタクリレート、パラクミルフェノール−EO変性メタクリレート、N−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、及び、イソシアヌル酸−EO変性ジメタクリレートが挙げられる。
カチオン重合系単量体としては、例えば、オキセタニル基を有する化合物が挙げられる。具体的には、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシ)メチルオキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、オキセタニルシリケート、フェノールノボラックオキセタン、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼンなどが挙げられる。
光硬化性樹脂組成物の組成は、構成する組成物中の単量体成分合計100質量部中、1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を有する1種類以上の単量体成分が20質量部〜60質量部、N−ビニル基を有する単量体成分が5質量部〜40質量部、その他単量体成分が0〜75質量部であることが好ましい。
1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を有する1種類以上の単量体成分の含有量を20質量部以上にすることにより、組成物部分が高強度になり、また高架橋密度となるため、組成物部分からの未反応単量体及び低重合度オリゴマーのブリードアウトや副生成物の生成を最低限抑制することができる。また1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を有する1種類以上の単量体成分の含有量を60質量部以下とすることで、組成物の粘度上昇を抑制でき、モールドの微細凹凸パタンへの組成物の充填率低下を防止できる。1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する1種以上の単量体成分の含有量は、組成物中の単量体成分合計100質量部中、25質量部〜50質量部であることがより好ましく、30質量部〜40質量部であることがさらに好ましい。
1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する単量体成分としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシ化グリセルトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、3官能以上のポリエステルアクリレートオリゴマー、3官能以上のウレタンアクリレートオリゴマー、3官能以上のエポキシアクリレートオリゴマー、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、プロポキシ化グリセルトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート、トリスメタクリロイルオキシエチルフォスフェート、3官能以上のポリエステルメタクリレートオリゴマー、3官能以上のウレタンメタクリレートオリゴマー、及び、3官能以上のエポキシメタクリレートオリゴマーが挙げられる。ここで、エトキシ化及びプロポキシ化された単量体成分とは、単量体1分子当たり、1〜20当量の1種以上のエトキシ基及び/又はプロポキシ基を含む単量体成分をさす。
1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する単量体成分の中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレートは諸物性のバランスが良いので好ましい。中でもトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートが、硬化後のモールドからの複合型機能性フィルムの離型性に優れるため、より好ましい。1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する単量体成分は、1種類又は2種類以上用いても良い。
N−ビニル基を有する単量体成分は、光硬化性樹脂組成物中の単量体成分合計100質量部中、15質量部〜38質量部含有することがより好ましく、25質量部〜35質量部含有することがさらに好ましい。N−ビニル基を有する単量体成分を5質量部以上含有することにより、成型体の基材への付着性を向上でき、かつ硬化後の複合型機能性フィルムのモールドからの離型性を良好にすることができ、また、40質量部以下含有することにより、未反応単量体及び低重合度オリゴマーの成型体からブリードアウトを最低限抑制でき、また、複合型機能性フィルムの過度の吸湿も抑制でき、複合型機能性フィルムの耐湿特性を向上することができる。
N−ビニル基を有する単量体成分としては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、及びN−ビニルカプロラムタムが、特に好ましく用いることができる。N−ビニル基を有する単量体成分は、1種類又は2種類以上用いても良い。
その他の単量体成分としては、1分子中に2個以下のアクリル基及び/又はメタクリル基を有する単量体成分や、光硬化用のカチオン重合系単量体からなる単量体成分が含まれる。
・シリコン化合物
光硬化性樹脂組成物には、アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコン化合物を含有しても良い。組成物の単量体成分合計100質量部に対し、アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコン化合物を0.1質量部〜10質量部含有することが好ましく、0.2質量部〜5質量部含有することがより好ましく、0.3質量部〜2質量部含有することがさらに好ましい。0.1質量部以上含有させることで、硬化後の複合型機能性フィルムをモールドからの離型性をさらに向上でき、10質量部以下含有させることにより、複合型機能性フィルムの微細凹凸パタンの強度を維持できる。
アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコン化合物としては、例えばシリコンアクリレート系化合物を挙げることができる。ポリジメチルシロキサン骨格にアクリル基を結合させた、BYK−UV3500、BYK−UV3570(ビックケミー・ジャパン社製)、ebecryl350(ダイセル・サイテック社製)が、光硬化樹脂層からのブリードアウトも少なく、より好ましい。
・光重合開始剤
光硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤を含有することができる。本実施の形態に用いられる光重合開始剤は、400nm〜430nmの範囲内のいずれかの波長の光で反応することが好ましい。
光学フィルム用途に使用されるフィルム基材の多くには、紫外線による劣化防止のため、紫外線吸収剤が含まれていることが多い。このため、400nm以上の波長に反応感度を持つ光重合開始剤を含有させることで、反応性が高くなり、微細凹凸パタンの転写不良が生じにくい。また、430nm以下の波長で反応する開始剤は、着色や安定性の問題が発生しにくい。
光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、1,2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]エタノン、及び、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)が挙げられるが、特に本発明においては、高感度で、低揮発性である2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]エタノン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)などを好ましく用いることができる。
光重合開始剤の配合比は、光硬化性樹脂組成物中の単量体成分合計100質量部に対し、0.1質量部〜5.0質量部であることが好ましい。これら光重合開始剤は単独で適用することも可能であるが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
・光増感剤
光硬化性樹脂組成物には、光重合促進剤及び光増感剤などと組み合わせて使用することもできる。例えば、光重合促進剤としては、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、ジメチルアミノ安息香酸、N−フェニルグリシンなどを1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。例えば、光増感剤としては、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s−ベンジスイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類を1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
・光硬化性樹脂組成物のろ過
光硬化性樹脂組成物は、ろ過などの手法により、異物を除去したものであることが好ましい。ろ過に使用するフィルター孔径は1μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましい。また、フィルターの異物捕捉効率は、99.9%以上であることが好ましい。異物を除去することにより、モールドの凹凸部への充填率や光硬化反応率を向上し、複合型機能性フィルムの微細凹凸パタンの構造欠陥を実用上問題がないレベルに減少させることができる。
・光硬化性樹脂組成物の粘度
光硬化性樹脂組成物の50℃における粘度は100mPa・s以下であることが好ましい。粘度を100mPa・s以下にすることで、基材表面へ光硬化性樹脂組成物をロール・ツー・ロール方式により塗布する場合、光硬化性樹脂層の厚み均一性を高めることができ、またスタンパーの凹凸構造部への光硬化性樹脂組成物の充填率を高めることができ、結果として複合型機能性フィルムへの転写忠実性を高めることができる。粘度は、50mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下で1mPa・s以上であることがさらに好ましい。また、目的とする光硬化樹脂層の厚みを得るために、光硬化性樹脂組成物中へさらに減粘剤又は増粘剤を添加することで、上記記載の粘度範囲で、適宜粘度調整をしてもよい。
<ロール・ツー・ロール法>
次に、本実施の形態に係る複合型機能性フィルムの製造方法にロール・ツー・ロール法を適用した場合について説明する。
・転写装置の概要
図5は、本実施の形態に係る複合型機能性フィルムの製造方法に用いられる微細凹凸パタンの転写装置を示す説明図である。
この転写装置100は、図示するように、ロール状に巻き付けられた基材フィルムF1を連続して繰り出す繰出しロール110と、この繰出しロール110から繰り出される基材フィルムF1の片面に光硬化性樹脂組成物Jを塗布する塗布部120と、この塗布部120によって光硬化性樹脂組成物Jが塗布された基材フィルムF1に所定の微細凹凸パタンを連続して転写する転写ロール130と、この転写ロール130で転写された基材フィルムF1上の微細凹凸パタンを有する光硬化性樹脂層を硬化する硬化部140と、基材フィルムF1を保護する第一の保護フィルムF2を連続して繰り出して供給する供給ロール150と、硬化部140で硬化された微細凹凸パタン20aを有する光硬化樹脂層20を保護する第二の保護フィルムF3を連続して繰り出して供給する供給ロール151と、この第一及び第二の保護フィルムF2,F3と基材フィルムF1とを重ね合わせるラミネート部160と、重ね合わされた基材フィルムF1並びに第一及び第二の保護フィルムF2,F3の積層体を連続して巻き取る巻取りロール170と、これらの基材フィルムF1並びに第一及び第二の保護フィルムF2,F3の流路を構成する各種案内ロール180〜186とから主に構成されている。
ここで、塗布部120は、この基材フィルムF1の片面に光硬化性樹脂組成物Jを塗布するためのもので、その構成は、公知のもの(グラビア、ダイ、ロール、スプレー、マイクログラビア)をそのまま用いることができる。すなわち、例えば、図示するように光硬化性樹脂組成物Jが供給される樹脂槽121内にグラビアロール122の下面側を浸漬させると共に、このグラビアロール122の上面側に繰り出し直後の基材フィルムF1の下面側を当接させた状態でこのグラビアロール122を図示矢印方向に回転させることでその基材フィルムF1の下面側に樹脂槽121内の光硬化性樹脂組成物Jを一定の厚さで連続して塗布することができる。
また、転写ロール130は、この基材フィルムF1上に塗布された光硬化性樹脂組成物Jに対して所定の微細凹凸パタンを連続して転写するものであり、図6に示すように、外周面に所定の微細凹凸パタンが形成された転写筒131と、この転写筒131の内側に挿入されてこの転写筒131を着脱自在に保持する回転軸132とから主に構成されている。この転写筒131は、図7に示すように片面に所定の微細凹凸パタンを有する矩形状の転写板133をその微細凹凸パタンが外側に位置するように筒状に曲げ加工すると共に、その両縁部を突き合わせ溶接(図7中Aで示す)してなるものであり、図6に示すようにその端面の開口部から回転軸132の外側に嵌め込むことで回転軸132に対して着脱自在に取り付けられるようになっている。
転写ロール130には、一対のニップロール134,135が並設されており、基材フィルムF1を転写ロール130の転写筒131の外周面に押し付けるようになっている。
次に、硬化部140は、表面に転写ロール130の微細凹凸パタンが転写された、未硬化の光硬化性樹脂組成物を硬化させるためのものである。硬化部140は、ハウジング141の内部に光源142及びリフレクタ143を配置し、転写ロール130の方向に光L1を照射するようになっている。
同じくハウジング141の内部であって光源142よりも転写ロール130側には、反射型偏光子144が配置されている。この反射型偏光子144は、基材フィルムF1を透過することができる第一の振動方向と実質的に平行な振動方向を有する偏光だけを通過させる。光源142から照射された光L1は、ランダムな方向に振動する光であるが、反射型偏光子144によって、基材フィルムF1を透過することができる第一の振動方向と実質的に平行な振動方向を有する偏光L2だけが透過し、ハウジング141に設けられたスリット145を介して、転写ロール130の外周面に向って照射される。
なお、反射型偏光子144により、第一の振動方向と直交する第二の振動方向を有する光L3(図示せず)は反射される。その反射光は、ハウジング141内部のリフレクタ143間で反射を繰返すことで偏光解消して光L1となり、そのうち光L2が反射型偏光子144を透過し、光L3が反射される。これを繰り返すことで、ハウジング141内部で吸収された光以外はついには反射型偏光子144を透過する振動方向の光となりスリット145より照射される。なお、リフレクタ143の表面は、微細な凹凸形状を形成し光拡散させることで効果的に偏光解消できる。このような光のリサイクル作用により、反射型偏光子144の設置前に対し、照度が50%に低下するようなことは無く、光エネルギーの有効活用が可能となる。
ここで、反射型偏光子144についてより詳細に説明する。反射型偏光子144は、耐久性の観点から無機材料で構成されていることが好ましい。例えば、ガラス板に金属ワイヤの格子状凸部を特定方向に延在させたポラテクノ社製の無機偏光板ProFlux(登録商標)を用いることが好ましい。
反射型偏光子144は、透過可能な光の振動方向が、直線偏光機能を有する基材フィルムF1が透過する第一の振動方向に対して実質的に平行になるように配置される。ここで「実質的に平行」とは、完全に平行な場合の他に、本発明の効果を奏する範囲で、両者の間にずれがあっても良いことを意味している。使用する基材フィルムF1及び反射型偏光子144の種類や性能に応じて、互いの透過軸の平行度にずれ角が生じていても良い。両者のずれが0°以上45°未満の範囲であれば、振動方向がランダムな光よりも優れた効果を奏するが、0°以上25°以下が好ましく、0°以上10°以下がより好ましく、0°以上5°以下が最も好ましい。
反射型偏光子144と直線偏光基材フィルムF1との軸合わせの方法を説明する。まず、可視光の照明光源上に直線偏光機能を有する基材フィルムF1を置き、その上に反射型偏光子144を設置し、一番暗くなる回転位置(クロスニコル位置)を基準とする。次に、反射型偏光子144を基準位置から90°回転させた位置(パラレルニコル位置)を透過軸とした。
転写ロール130の外周面上では、図8に示すように、基材フィルムF1側から見て、基材フィルムF1、光硬化性樹脂組成物J(光硬化性樹脂層)及び転写筒131が順次積層されている。転写筒131を構成する転写板133の外周面には微細凹凸パタン133aが形成され、これに未硬化の光硬化性樹脂組成物Jが充填された状態となっている。光L2が照射されることにより、光硬化性樹脂層を構成する光硬化性樹脂組成物Jが硬化して、光硬化樹脂層(図2中20)が形成される。
このように硬化した光硬化樹脂層20を有する基材フィルムF1(すなわち、本実施の形態に係る複合型機能性フィルム10)は、ラミネート部160に搬送される。ラミネート部160では、供給ロール150,151から供給された第1及び第2の保護フィルムF2,F3が、光硬化樹脂層20側の表面及び基材フィルムF1側の表面に重ね合わされ、ラミネート部160の一対のラミネートローラ161,162の間で加圧され、積層される。
積層された基材フィルムF1並びに第1及び第2の保護フィルムF2,F3は、巻取りロール170により連続的に巻き取られ、回収される。
・転写板の表面温度
転写板133の微細凹凸パタン133aが形成された表面(以下、凹凸構造面という)の表面温度は、25℃〜100℃が好ましく、30℃〜80℃がより好ましく、35℃〜70℃がさらに好ましく、40℃〜65℃が最も好ましい。転写板133の凹凸構造面の表面温度を25℃以上にすることで、光硬化性樹脂組成物Jの粘度を下げることができるため、基材フィルムF1と光硬化性樹脂組成物Jとの付着性と、光硬化後の光硬化樹脂層20の転写板133からの離型性とを向上できる。また、転写板133の凹凸構造面の表面温度を100℃以下にすることで、基材フィルムF1の熱変形を抑制することができる。また、転写板133の凹凸構造面の表面温度は、略一定に調節されていることが好ましい。
表面温度を略一定に調整する手段として、温調機を付属した転写板133を用いることができる。転写板133の凹凸構造面の表面温度を一定に維持することで、光硬化性樹脂組成物の粘度も一定に保つことができるため、光硬化性樹脂層20の厚みの均一性を高めることができ、転写板133から複合型機能性フィルム10への転写忠実性を向上することができる。
・光硬化樹脂層の厚み
光硬化樹脂層20の厚みは、0.4μm〜10μm以下であることが好ましい。10μm以下とすることにより、カールを抑制し、折り曲げた際のクラックを抑制できる。光硬化樹脂層20の厚みを0.4μm以上にすることにより、基材フィルムF1と光硬化性樹脂組成物Jとの密着性を向上させ、転写板133の微細凹凸パタン133aを基材フィルムF1へ転写する際の未転写部分の発生を防止できる。また光硬化樹脂層20の厚みを4μm以下にすることで、高温高湿条件下で生じる光硬化樹脂層20のクラック発生と、高温高湿下での光硬化樹脂20の収縮に起因するカール発生とを抑制できる。光硬化樹脂層20の厚みは、0.5μm〜7μm以下であることがより好ましく、0.8μm〜4μm以下であることがさらに好ましい。
微細凹凸パタン20aを構成する光硬化樹脂層20の厚みは、基材フィルムF1と転写板133間の押つけ圧力、転写板133の凹凸構造面の表面温度、光硬化性樹脂組成物Jの温度と粘度などにより光硬化性樹脂層の厚みを調節することで、調節することができる。
・原版の作製方法
複合型機能性フィルム10の製造に用いられる原版の作製方法としては、レーザ光を用いた干渉露光法、電子線描画法、機械加工切削法、ドライエッチング法、リソグラフィー法などが挙げられる。凹凸部の形状、ピッチ、又は高さ、凹凸部の配列パタンやその規則性/不規則性、原版大きさ、コストなどの目的に応じて、任意に作製方法を選択することができる。凹凸部が規則性のある配列パタンで、かつ大面積な原版を得たい場合、レーザ光を用いた干渉露光法が好ましい。
干渉露光法とは、特定の波長のレーザ光を角度θ’の2つの方向から照射して形成される干渉縞を利用した露光法であり、角度θ’を変化させることで使用するレーザの波長で制限される範囲内で様々なピッチを有する凹凸格子の構造を得ることができる。干渉露光に使用できるレーザとしては、TEM00モードのレーザを挙げることができる。TEM00モードのレーザを発振できる紫外光レーザとしては、アルゴンレーザ(波長364nm,351nm,333nm)や、YAGレーザの4倍波(波長266nm)などが挙げられる。
原版の材料の種類として、石英ガラス、紫外線透過ガラス、サファイア、ダイヤモンド、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン材、フッ素樹脂、シリコンウエハ、SiC基板、マイカ基板などが挙げられ、目的に応じて選択することができる。
ナノパタン転写時の離型性をより向上させるために、原版に離型処理を行っても良い。離型処理剤としては、シランカップリング系離型剤が好ましく、フッ素含有離型剤であることがより好ましい。市販されている離型剤の例としては、ダイキン工業社製のオプツールDSX、デュラサーフHD1100やHD2100、住友スリーエム社製のノベック、信越化学工業製のKP−801M、KBM−7103、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のTSL−8257などが挙げられる。
・転写板の作製方法
原版の凹凸構造や配列パタンを転写した転写板133は、原版から、電鋳法や上記のナノインプリント法などにより作製することができる。解像度の点では、電鋳法及び光硬化性樹脂組成物を使用した光ナノインプリント法が好ましい。
また、光ナノインプリント法により、転写を繰り返すことができる。転写を繰り返すことで、(1)転写した凹凸部構造パタン転写物を複数個製造でき、及び/又は(2)凹凸部パタンが反転した反転転写型を得ることができる。
・光源
光源142の種類としては、例えば、UV−LED、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、無電極UVランプが好ましい。また、長時間露光時の発熱を抑える観点から、可視波長以上の波長をカットするフィルター(バンドパスフィルターを含む)を利用することが好ましい。
露光光源の積算光量としては、300mJ/cm2以上であることが好ましく、光硬化性樹脂組成物の光硬化反応率を高くする目的で、800mJ/cm2〜6000mJ/cm2であることがより好ましく、光による樹脂劣化性を防ぐため、800mJ/cm2〜3000mJ/cm2であることがさらに好ましい。
・保護フィルム
上述のように、複合型機能性フィルム10の微細凹凸パタン20aを有する面及び/又は微細凹凸パタン20aを有しない面に対し、第1及び第2の保護フィルムF2,F3を貼合しても良い。第1及び第2の保護フィルムF2,F3を貼合することで、使用するために第1及び第2の保護フィルムF2,F3を剥がすまでの期間、微細凹凸パタン20aの形状を保護し、異物の付着を防止できる。第1及び第2の保護フィルムF2,F3に必要な性能は、(1)剥離時に、第1及び第2の保護フィルムF2,F3の粘着層が残らないこと、又は残っても反射率や透過率に影響を与えないこと、(2)複合型機能性フィルム10の特に微細凹凸パタン20aを有する面を傷つけるような異物を含有しないこと、又は傷つけても反射率や透過率に影響を与えないことである。複合型機能性フィルム10に対し、上記性能を持つ保護フィルムから任意に選択して用いることができる。例えば、保護フィルムとして、東レフイルム加工社製の「トレテック」、きもと社製「RC THS」、サンエー化研社製の「SAT HC1038T−J」、藤森工業社製の「PC−801」、リンテック社製の「SRL−0753C(AS)」がある。
<屈折率>
透明フィルム基材11と微細凹凸パタン20aを構成する光硬化樹脂層20との屈折率差は、両者の界面での屈折や反射を低減するために、0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.05以下がさらに好ましく、0.02以下が最も好ましい。また、透明フィルム基材11と光硬化樹脂層20との間に、易接着性を有する中間層を加えても良い。中間層の屈折率を、透明フィルム基材11及び光硬化樹脂層20のそれぞれの屈折率の間にすることで、中間層がない場合と比較し、干渉を低減でき、干渉縞の発生を抑制できる。
<反射率>
反射防止性能は、正反射率、及び(正+拡散)反射率で評価することができる。これらの値は、いずれも低い方が好ましい。
<用途>
複合型機能性フィルム10は、任意の目的又は用途に使用できる。例えば、携帯端末のディスプレイなどの表示装置、照明装置、プロジェクタ用の偏光ビームスプリッター、及び、偏光サングラスが例示される。
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
<実施例1>
(基材フィルム)
直線偏光機能を有する基材フィルムとして、ポリビニルアルコール―ヨウ素系吸収型偏光フィルムである住友化学社製SRW062AP1を用いた。
(光硬化性樹脂組成物)
1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する単量体成分としてトリメチロールプロパントリアクリレートを32質量部、N−ビニル基を含有する単量体成分としてN−ビニル−2−ピロリドン(NVP)を32質量部、その他の単量体成分として1,9−ノナンジオールジアクリレートを33質量部、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、ダロキュアTPO:波長420nm以下に吸収特性を持ち、波長405nmの吸光係数1.65×102[ml/g cm inアセトニトリル])を2質量部、アクリル基を含有するシリコン化合物としてシリコンジアクリレートを1質量部配合し、孔径1μmのフィルターを用いて異物をろ過して光硬化性樹脂組成物を作製した。得られた光硬化性樹脂組成物の50℃での粘度は5mPa・sであった。当該粘度は、E型粘度計(東機産業社製、型番:RE550L)を用いて50℃で測定した。
(原版の作製方法)
均一な厚みのフォトレジスト層が形成されているガラスプレートへ、レーザ干渉露光法により、ビームスプリッターで分けられた2本のレーザ光を照射して干渉稿を得た。次に、ガラスプレートを60°回転して同様に干渉稿を得た。その後、フォトレジストを現像して凹部及び凸部を含むモスアイ状の連続構造を有する原版を作製した。当該原版において、凹部及び凸部の配列パタンは、それぞれ六方格子状であった。
(スタンパーロールA)
上記原版から、電鋳法により凹凸構造を転写して、ニッケルメッキされたモスアイ状の凹凸連続構造を有するスタンパー(平板状、厚み0.2mm)を作製した。当該スタンパーにおいて、凹凸構造の凸部頂点間の間隔(ピッチ)は240nm、高さは310nmであった。また、当該スタンパーにおいて、凹部及び凸部の配列パタンは、それぞれ六方格子状であった。その後、当該スタンパーを円筒状に加工して、凹部及び凸部を含むモスアイ状連続構造を有するスタンパーロールAを得た。該スタンパーロールAの表面には、離型剤(ダイキン工業社製、デュラサーフHD−2100)を用いて、離型処理を行った。
(複合型機能性フィルムの作製方法)
グラビアコーターを用いて、上記の直線偏光機能を有する基材フィルム上に幅200mm、厚み0.5μmになるように上記光硬化性樹脂組成物を塗布して光硬化性樹脂層を形成した。塗布は、ロール・ツー・ロール方式で連続的に行った。基材フィルムの走行速度(インプリント速度)は、1m/minとした。その後、基材フィルム上の光硬化性樹脂層と上記スタンパーロールAのモスアイ状の微細凹凸パタンの形成面とを接触させ、基材フィルム側から下記条件でUV光を照射し、上記光硬化性樹脂層を光硬化させた。その後、得られた光硬化樹脂層をスタンパーロールAから剥離し、スタンパーロールAのモスアイ状連続構造面が転写されたモスアイ状連続構造面を有する、直線偏光機能を有する基材フィルムからなる複合型機能性フィルムのロール(長さ250m)を得た。
・照射条件
図5に示す硬化部140の構造を有する照射装置
照射ランプ:LED
照度:800mW/cm2(照射ランプと基材フィルムとの間に反射型偏光子(図5中144)を配置しない状態でスタンパーロールAの位置で測定。)
主波長λ:405nm
反射型偏光子:あり
透過軸の平行度のずれ角:1°
ここで使用した反射型偏光子は、ポラテクノ社製の無機偏光板ProFlux(登録商標)の型番PFU05Cを用いた。
なお、透過軸の平行度のずれ角の調整は、直線偏光機能を有する基材フィルムに対し調整した反射型偏光子の透過軸を基準0°として分度器により算出し、反射型偏光子を回転させズレ角度を決定した。
上述のようにして得られた複合型機能性フィルムの特性を評価した。評価は、以下のように行った。また、評価結果を下記表1に示す。
(パタン転写性)
パタン転写性は、電界放出走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で表面を複数個所観察し、凸部の形状が均一に形成され金型のレプリカである忠実な反転形状が得られているか否かを判定した。パタン転写性が悪いケースは、未硬化成分を多く含んでいることが多く電子顕微鏡の撮像解像度が悪くなり、凸部形状が不均一で一部が欠けたような状態(高さが不十分)となっていた。
(直線偏光機能を有する基材フィルムの変形)
複合型機能性フィルムの平坦度は、フィルムを100mm角で切り出し、定盤の上に置いた際のフィルムの浮き高さにより判定した。判断の基準は、フィルムの浮き高さが0〜1mm以下を○とし、1mmを超えた浮きを×と判定した。
<実施例2>
照度を400mW/cm2に変更した以外は、実施例1と同様にして複合型機能性フィルムを作製し、評価した。その結果を下記表1に記す。
<実施例3>
照度を400mW/cm2に、直線偏光機能を有する基材フィルムを下記に示すワイヤグリッド偏光フィルムに、透過軸の平行度のずれ角を8°に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして複合型機能性フィルムを作製し、評価した。その結果を下記表1に示す。
(ワイヤグリッド偏光フィルム)
TACフィルム(富士写真フイルム社製TD80UL−M)の表面上にワイヤグリッドを次の通りに形成した。
グラビアコーターを用いて、TACフィルム上に幅200mm、厚み0.1μmになるように紫外線硬化性樹脂を約0.01mm塗布し、塗布面を140nmピッチの微細凹凸格子を表面に有するロールスタンパ上に接触させ、フィルム側からUV−LED光源(主波長405nm、照度800mW/cm2)の紫外線を1M/minのライン速度で照射し、ロールスタンパの微細凹凸格子を連続的に転写した後、ロール状に巻き取った。以下、このロールを原反ロールと呼ぶことにする。次に原反ロールの格子状凸部転写面に誘電体形成用及び金属ワイヤを形成するため真空チャンバへと移した。誘電体形成には反応性ACマグネトロンスパッタリング法を用いた。ターゲットサイズ127mm×750mm×10mmtのシリコンターゲットを2枚並べ、基板からターゲットの距離80mm、アルゴンガス流量200sccm、窒素ガス流量300sccm、出力11kW、周波数37.5kHz、走行速度5m/分で、原反ロールをほどきながら、かつ、フィルム搬送用ロールで巻取ロール側に送りながら窒化珪素層を設け、ロール状に巻き取った。次に原反ロールの格子状凸部転写面にスパッタリングした時と逆方向に原反フィルムを送り、抵抗加熱蒸着法にて格子状凸部転写面に金属ワイヤを形成し、ロール状に巻き取った。
<比較例1>
反射型偏光子を用いなかった以外は、実施例1と同様にして複合型機能性フィルムを作製し、評価した。その結果を下記表1に記す。
<比較例2>
反射型偏光子を用いなかった以外は、実施例2と同様にして複合型機能性フィルムを作製し、評価した。その結果を下記表1に記す。
<比較例3>
透過軸の平行度のずれ角を45°に変更した以外は、実施例3と同様にして複合型機能性フィルムを作製し、評価した。その結果を下記表1に記す。
以上説明した実施例1〜3及び比較例1〜3に基づいて、以下の点が確認された。実施例1〜3に見られるように、直線偏光機能を有する基材フィルム越しにナノインプリントする際には、直線偏光機能を有する基材フィルムと同じ透過軸(略平行)で振動する光を照射することにより、平坦性を損なうことなく安定した微細パタンの転写が可能となり、かつ生産性を落とすことなく高品位の複合型機能性フィルムを得ることができる。これに対し、比較例1、2のようにUV照射光源と直線偏光機能を有する基材フィルムとの間に反射型偏光子を入れずに、ランダムな振動方向の光を照射した場合は、パタン転写性と基材フィルムの平坦性の両立が難しく、高品位の複合型機能性フィルムを安定生産することが難しい。また、実施例3のように反射型偏光子を、直線偏光機能を有する基材フィルムの透過軸に対し略平行からずれた角度で設置した場合も光量の不足により、パタンの転写性で不良を生じる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。