JP2013092594A - 光吸収部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】可視光の波長領域における入射角が大きな光の反射を防止できる光吸収部材を提供すること。
【解決手段】本発明の光吸収部材(1)は、表面に連続して形成された正弦波形状の凹凸構造(11a)を含む凹凸構造層(11)を有する光吸収部材(1)であって、凹凸構造層(11)は、可視領域の光を吸収する光吸収材料を含んでなることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の光吸収部材(1)は、表面に連続して形成された正弦波形状の凹凸構造(11a)を含む凹凸構造層(11)を有する光吸収部材(1)であって、凹凸構造層(11)は、可視領域の光を吸収する光吸収材料を含んでなることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、光吸収部材に関し、例えば、カメラやプロジェクタなどの光学機器内部において、不要な光を吸収するために用いられる光吸収部材に関する。
一般にカメラやプロジェクタなどの光学機器においては、光学機器内部に入射した入射光が内部の壁で反射又は透過する現象が発生する。特に、光学機器内部の壁に対する入射角の大きな入射光は、設計した光路を外れて迷光となり、光学機器の性能を劣化させる場合がある。迷光による光学機器の性能の劣化を抑制するためには、設計した光路から外れた入射光を吸収し、光学機器内部での入射光の反射又は透過を防止する必要がある。
光の反射を防止するためには、光学部材の表面に凹凸構造を形成し、この凹凸構造と空気との界面で屈折率を徐々に変化させることにより光の反射率を低減できる。このような凹凸構造を用いた光学部材としては、黒色の樹脂材料からなる基材と、この基材表面から上方に突出する円錐形状の凸部からなる反射防止構造体を備えた光吸収部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる光吸収部材においては、反射防止構造体の円錐形状の凸部と空気との界面で屈折率を変化させることにより、入射光の反射を防止すると共に、基材に含まれる黒色材料によって可視光を吸収して入射光の反射を低減する。
しかしながら、特許文献1に記載された光吸収部材においては、基材表面から上方に突出する円錐形状の凸部からなる反射防止構造体によって入射光の反射を低減するため、隣接する凸部間に基材表面と平行な平坦な領域が存在する。このため、この平坦な領域においては、底面と空気との間の屈折率の変化が略一定となり、入射光が平坦面で反射するため、必ずしも十分な反射防止効果が得られない場合がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、可視光の波長領域における入射角が大きな光の反射を防止できる光吸収部材を提供することを目的とする。
本発明の光吸収部材は、表面の面内方向に連続して設けられた正弦波形状の凹凸構造を含む凹凸構造層を有する光吸収部材であって、前記凹凸構造層は、可視領域の光を吸収する光吸収材料を含んでなることを特徴とする。
この構成によれば、表面に設けられた正弦波状の凹凸構造と空気との間で屈折率が連続的に変化するので、入射光の反射率を低減できる。また、入射光の可視領域の光が光吸収材料によっても吸収される。したがって、可視光の波長領域において、入射角が大きな光の反射を防止できる光吸収部材を実現することができる。
本発明の光吸収部材においては、前記凹凸構造層は、凹部の底から凸部の頂点までの高低差の平均値が200nm以上500nm以下であることが好ましい。
本発明の光吸収部材においては、前記凹凸構造層は、隣接する凸部の間隔の平均値が100nm以上300nm以下であることが好ましい。
本発明の光吸収部材においては、前記凹凸構造層は、熱可塑性樹脂組成物を硬化させてなることが好ましい。
本発明の光吸収部材においては、前記凹凸構造層は、光硬化性樹脂組成物を硬化させてなることが好ましい。
本発明の光吸収部材においては、前記凹凸構造層の凸部の配列パターンが、平面視にて六方配列又は四方配列であることが好ましい。
本発明の光吸収部材においては、前記光吸収材料が、染料又は顔料を含むことが好ましい。
本発明の光学機器は、上記光吸収部材を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、可視光の波長領域における入射角が大きな光の反射を防止できる光吸収部材を提供することができる。
本発明者らは、光学機器に用いられる光吸収部材においては、正弦波状の凹凸構造における空気と凹凸構造との界面における屈折率変化を低下させる要因が、凹凸構造の凹部及び凸部間における起伏がない平坦な領域にあることに着目した。そして、本発明者らは、光吸収部材の表面に連続した正弦波状の凹凸構造を設ける共に、凹凸構造に可視領域の光を吸収する光吸収材料を含ませることにより、入射角が大きい光に対しても十分な反射防止性能が得られると共に、光を効率良く吸収できる光吸収部材を実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1Aは、本発明の一実施の形態に係る光吸収部材1の平面模式図であり、図1Bは、図1AのIB線−IB線における断面拡大図である。図2は、本実施の形態に係る光吸収部材1の一部を拡大した電子顕微鏡写真である。図1A,図1Bに示すように、本実施の形態に係る光吸収部材1は、表面の面内方向に連続して設けられた正弦波形状の凹凸構造11aを含む凹凸構造層11を備える。また、凹凸構造層11は、可視領域の光を吸収する光吸収材料を含有する。
凹凸構造層11の凹凸構造11aは、凸部及び凹部(以下、凹部及び凸部をまとめて「凹凸部」ともいう)の連続構造を含んで構成される(図2参照)。凹凸構造層11の凹凸部は、凸部の頂点11b及び凹部の底11cが、平面視において任意の配列パターンとなるように配設される。図1Aにおいては、凹凸構造層11の凸部の頂点11b及び凹部の底11cが、六方格子状になるように設けられた例を示している。
本実施の形態においては、凹凸構造11aは、平面視において凸部の頂点11bが丸みを帯び、凹部の底11cに近づくにつれて側面の傾斜がゆるやかになっている略円錐形状を有する。また、凹凸構造11aは、断面視において正弦波のように凹部の底11cおよび凸部の頂点11bにおいて平坦な領域がない正弦波形状を有する。なお、凹凸構造11aの形状としては、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更可能であり、略円錐形状のほか、略楕円錐形状又は略四角錐形状や略六角錐形状などの角錐形状であってもよい。本実施の形態においては、凹凸構造11aを断面視において正弦波形状とすることで、反射防止特性に優れた効果が発現される。
凹凸構造11aの高さHとしては、凹部の底11cから凸部の頂点11bまでの高低差の平均値が200nm以上であることが好ましく、250nm以上であることがより好ましい。高低差を大きくすることで、屈折率がより細かく段階的に変化して、反射防止性能を向上させることができる。一方で、凹凸構造11aは、高さHを高くするほど凹凸構造11aの高低差が大きくなり、凹凸構造11aの機械的強度が弱くなる傾向がある。このため、凹凸構造11aの機械的強度を確保する観点から、凹凸構造11aの高さHとしては、凹部の底11cから凸部の頂点11bまでの高低差の平均値が500nm以下であることが好ましい。
また、凹凸構造11aとしては、隣接する凸部の頂点11bの間隔Pの平均値が300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましい。凸部の頂点11b同士の間隔を300nm以下にすることで、回折光の発生を防ぐことができるので、特定波長での反射率の上昇を抑制することができ、反射防止性能を向上させることができる。一方で、凸部の頂点11b同士の間隔Pを小さくするほど凹凸構造11a作製することが困難となる傾向がある。このため、凹凸構造11aとして、隣接する凸部の頂点11bの間隔Pの平均値が100nm以上であることが好ましい。
凹凸構造11aの高さと、隣接する凸部の頂点11b同士の間隔Pと、の比で定義されるアスペクト比(H/P)の平均値は、反射防止性能を向上する観点から、0.6以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。
凹凸構造11aの凸部の頂点11bの平面視における配列パターンとしては、六方配列、四方配列、ランダム配列のいずれでもよい。これらの中でも、凸部の配列パターンとしては、規則的に配列させることにより、反射防止性能の異方性を抑えられる観点から六方配列又は四方配列であることが好ましい。
凹凸構造層11を構成する材料としては、特に限定されないが、光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物、ガラス、セラミック、金属などが挙げられる。これらの中でも、可視光領域の光を吸収できるものを用いることが望ましい。また、凹凸構造層11としては、これらの中でも、連続生産性の観点から、熱可塑性樹脂組成物、又は光硬化性樹脂組成物を硬化させてなるものであることが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、フッ素系樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂などが挙げることができるが、これに限定されることはない。
光硬化性樹脂組成物としては、単量体及びオリゴマー(以下、単量体成分ともいう。)を含むものを用いてもよい。単量体成分の種類としては、反応速度と連続生産性の観点から、ラジカル重合系単量体成分が好ましい。また、単量体成分の種類としては、ラジカル重合系単量体へ反応寿命の長いカチオン重合系単量体成分を混合したものを用いてもよい。カチオン重合系単量体成分としては、重合性官能基がエポキシ基、ビニルオキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基などを有するカチオン重合系単量体成分が好ましい。
ラジカル系単量体成分として、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、ステアリルアクリレート、n−ブトキシエチルアクリレート、ブトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、カプロラクトンアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート4級化物、アクリル酸、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、PEG#200ジアクリレート、PEG#400ジアクリレート、PEG#600ジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、ビスフェノールA−EO付加物ジアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、テトラフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、パーフロロオクチルエチルアクリレート、ノニルフェノール−EO付加物アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴアクリレート、エチルカルビトールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、ペンタメチルピペリジルアクリレート、テトラメチルピペリジルアクリレート、パラクミルフェノール−EO変性アクリレート、N−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、イソシアヌル酸−EO変性ジアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、イソミリスチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、n−ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、カプロラクトンメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート4級化物、メタクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコールメタクリル酸安息香酸エステル、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、PEG#200ジメタクリレート、PEG#400ジメタクリレート、PEG#600ジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ビスフェノールA−EO付加物ジメタクリレート、トリフロロエチルメタクリレート、テトラフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、パーフロロオクチルエチルメタクリレート、ノニルフェノール−EO付加物メタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリメチロールプロパンメタクリル酸安息香酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴメタクリレート、エチルカルビトールオリゴメタクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴメタクリレート、トリメチロールプロパンオリゴメタクリレート、ペンタエリスリトールオリゴメタクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレート、テトラメチルピペリジルメタクリレート、パラクミルフェノール−EO変性メタクリレート、N−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、イソシアヌル酸−EO変性ジメタクリレート、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシ)メチルオキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、オキセタニルシリケート、フェノールノボラックオキセタン、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼンなどを挙げることができる。
凹凸構造層11を構成する材料として、光硬化性樹脂組成物を用いる場合、1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を有する1種類以上の単量体成分20質量部〜60質量部、N−ビニル基を有する単量体成分5質量部〜40質量部、及びその他単量体成分0質量部〜75質量部からなる凹凸部を構成する組成物の単量体成分は合計100質量部であることが好ましい。
1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する1種以上の単量体成分の含有量としては、凹凸構造層11を構成する光硬化性樹脂組成物中の単量体成分合計100質量部中、25質量部〜50質量部であることがより好ましく、30質量部〜40質量部であることがさらに好ましい。20質量部以上にすることで、凹凸構造層11の凹凸構造11aが高強度になり、また高架橋密度となるため、凹凸構造層11からの未反応単量体および低重合度オリゴマーのブリードアウトや副生成物の生成を最小限に抑制することができる。また50質量部以下とすることで、凹凸構造層11を構成する光硬化性樹脂組成物の粘度上昇を抑制でき、凹凸構造層11を構成する光硬化性樹脂組成物のスタンパーの凹凸部のパターンへの充填率低下を防止できる。
1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する単量体成分としては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシ化グリセルトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、3官能以上のポリエステルアクリレートオリゴマー、3官能以上のウレタンアクリレートオリゴマー、3官能以上のエポキシアクリレートオリゴマー、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート、プロポキシ化グリセルトリメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタアクリレート、トリスメタアクリロイルオキシエチルフォスフェート、3官能以上のポリエステルメタアクリレートオリゴマー、3官能以上のウレタンメタアクリレートオリゴマー、3官能以上のエポキシメタアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。ここで、エトキシ化及びプロポキシ化された単量体成分とは、単量体1分子当たり、1当量〜20当量の1種以上のエトキシ基及び/又はプロポキシ基を含む単量体成分をさす。
1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する単量体成分の中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレートは諸物性のバランスが良いので好ましい。中でもトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレートが、硬化後のスタンパーからの硬化成形体の離型性に優れるため、より好ましい。1分子中に3個以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する単量体成分は、1種類又は2種類以上用いても良い。
N−ビニル基を有する単量体成分は光硬化性樹脂組成物中の単量体成分合計100質量部中、15質量部〜38質量部含有することがより好ましく、25質量部〜35質量部含有することがさらに好ましい。N−ビニル基を有する単量体成分を5質量部以上含有にすることにより、成型体の基材への付着性を向上でき、また40質量部以下含有にすることにより、未反応単量体および低重合度オリゴマーの成型体からブリードアウトを最低限抑制でき、また成型体の過度の吸湿も抑制でき、成型体の耐湿特性を向上することができる。
N−ビニル基を有する単量体成分としては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、及びN−ビニルカプロラムタムが、特に好ましく用いることができる。N−ビニル基を有する単量体成分は、1種類又は2種類以上用いても良い。
また、光硬化性樹脂組成物としては、アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコン化合物を含有しても良い。光硬化性樹脂組成物の単量体成分合計100質量部に対し、アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコン化合物を0.1質量部〜10質量部含有することが好ましく、0.2質量部〜5質量部含有することがより好ましく、0.3〜2質量部含有することがさらに好ましい。0.1質量部以上含有することにより、硬化後の離型性をさらに向上でき、10質量部以下含有することにより、凹凸構造層11aの強度が向上する。
また、凹凸構造層11を構成する光硬化性樹脂組成物としては、アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコン化合物を含有するものを用いてもよい。凹凸構造層11を構成する光硬化性樹脂組成物の単量体成分合計100質量部に対し、アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコン化合物を0.1質量部〜10質量部含有することが好ましく、0.2質量部〜5質量部含有することがより好ましく、0.3質量部〜2質量部含有することがさらに好ましい。0.1質量部以上含有させることで、硬化後の離型性をさらに向上でき、10質量部以下含有により、凹凸構造層11の強度を向上できる。
アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコン化合物の種類として、例えばシリコンアクリレート系化合物が挙げることができ、ポリジメチルシロキサン骨格にアクリル基を結合させた、BYK−UV3500、BYK−UV3570(ビックケミー・ジャパン社製)、ebecryl350(ダイセル・サイテック社製)が、硬化後の凹凸構造層11からのブリードアウトも少なく、より好ましい。
アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコン化合物の種類として、例えばシリコンアクリレート系化合物が挙げることができ、ポリジメチルシロキサン骨格にアクリル基を結合させた、BYK−UV3500、BYK−UV3570(ビックケミー・ジャパン社製)、ebecryl350(ダイセル・サイテック社製)が、硬化後の凹凸構造層11からのブリードアウトも少なく、より好ましい。
凹凸構造層11を構成する光硬化性樹脂組成物としては、光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物を用いることもできる。光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、1,2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]エタノン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)などが挙げられる。これらの中でも、高感度で、低揮発性である2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]エタノン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。光重合開始剤の配合比は、光硬化樹脂組成物中の単量体成分合計100質量部に対し、0.1質量部〜5.0質量部であることが好ましい。これら光重合開始剤は単独で適用することも可能であるが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
凹凸構造層11を構成する光硬化性樹脂組成物としては、光重合促進剤及び光増感剤を含むものを用いてもよい。光増感剤の具体例としては、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s−ベンジスイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類のような公知慣用の光増感剤を1種類又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施の形態に係る光吸収部材の入射角0°(基材表面に対して垂直方向)で波長範囲400nm〜800nmにおける透過率としては、5%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.1%以下が更に好ましい。
光吸収材料としては、可視光領域の光を吸収する材料であれば、特に限定されないが、目視にて黒色となる各種染料や各種顔料などを用いることができる。これらの中でも、光吸収材料としては、容易に入手でき、大量に光吸収部材を作製できる観点から、染料又は顔料を用いることが好ましい。また、染料又は顔料を用いる場合、単独の黒色を用いてもよく、赤色、黄色、橙色、緑色、青色、紫色などの複数の色を混合させて黒色にしてもよい。
例えば、染料を用いる場合、黒色の染料として、Sumiplast Black G−2、Sumiplast Black H3B、Sumiplast Black HLG、Sumiplast Black HB(以上、住友ケムテックス社製)、Black S、Black SF,Black 109、Black 141(以上、中央合成化学社製)、VALIFAST BLACK 1815、VALIFAST BLACK 1821、OIL BLACK 860(以上、オリエント化学工業社製)、Plast Black 8950−N、Plast Black 8970、Oil Black DA−411(以上、有本化学工業社製)などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
赤色の染料としては、Sumiplast Red AS、Sumiplast Red B−2、Sumiplast Red FB、Sumiplast Red 3B、Sumiplast Red HF4G、Sumiplast Red HFG、Sumiplast Red H3G、Sumiplast Red H4GR、Sumiplast Red HL2B、Sumiplast Red HL5B(以上、住友ケムテックス社製)、Red TR−71、Red RC、Red 6B(以上、中央合成化学社製)、VALIFAST RED 1308、VALIFAST RED 1320、VALIFAST RED 1362(以上、オリエント化学工業社製)、Oil Red 5303、Plast Red 8305、Plast Red 8315、Plast Red 8320、Plast Red 8340、Plast Red 8350、Plast Red 8360、Plast Red 8370、Plast Red 8375−N、Plast Red 8380(以上、有本化学工業社製)などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
黄色の染料としては、Sumiplast Yellow FL7G、Sumiplast Yellow GC、Sumiplast Yellow R、Sumiplast Yellow HLR、Sumiplast Lemon Yellow HGN、Sumiplast Lemon Yellow HL(以上、住友ケムテックス社製)、Yellow SS−G、Yellow 93、Yellow GE、Yellow 3G、Yellow 185、Yellow 54(以上、中央合成化学社製)、VALIFAST YELLOW 1101、VALIFAST YELLOW 1108、VALIFAST YELLOW 1109(以上、オリエント化学工業社製)、Oil Yellow 5001、Plast Yellow 8000、Plast Yellow 8005、Plast Yellow 8040、Plast Yellow 8050、Plast Yellow 8070(以上、有本化学工業社製)などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
橙色の染料としては、Sumiplast Orange HLR(以上、住友ケムテックス社製)、Orange S、Orange R、Orange 826N(以上、中央合成化学社製)、Oil Orange 5101、Oil Orange 5108、Plast Orange 8150(以上、有本化学工業社製)などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
緑色の染料としては、Sumiplast Green G(以上、住友ケムテックス社製)、Green 201、Green GB、Green 430(以上、中央合成化学社製)、VALIFAST GREEN 1501(以上、オリエント化学工業社製)、Oil Green 5602、Plast Green 8645(以上、有本化学工業社製)などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
青色の染料としては、Sumiplast Blue OR、Sumiplast Blue SR、Sumiplast Blue GP、Sumiplast Blue S、Sumiplast Blue OA、Sumiplast Turq Blue G(以上、住友ケムテックス社製)、Blue BOM、Blue BA、Blue 94、Blue 8B(以上、中央合成化学社製)、VALIFAST BLUE 1613、VALIFAST BLUE 1631(以上、オリエント化学工業社製)、Oil Blue 5502、Plast Blue 8510、Plast Blue 8514、Plast Blue 8516、Plast Blue 8520、Plast Blue 8540、Plast Blue 8580、Plast Blue 8590(以上、有本化学工業社製)などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
紫色の染料としては、Sumiplast Violet RR、Sumiplast Violet B(以上、住友ケムテックス社製)、Violet MVB(以上、中央合成化学社製)、VALIFAST VIOLET 1701、VALIFAST VIOLET 1704、VALIFAST VIOLET 1731(以上、オリエント化学工業社製)、Plast Violet 8840、Plast Violet 8850、Plast Violet 8855(以上、有本化学工業社製)などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
本実施の形態に係る光吸収部材は、凹凸構造層11の凹凸構造11aと同一パターンを有する原版を作製し、この原版からの転写によって作製したスタンパーの凹凸構造を基材表面に転写することにより製造できる。また、光吸収部材は、スタンパーを用いたナノインプリント法により、繰り返し転写して製造することができる。転写を繰り返すことより、一個のスタンパーから転写物を複数個製造できる。
原版の作製方法としては、レーザ光を用いた干渉露光法、電子線描画法、機械加工切削法、ドライエッチング法、リソグラフィー法などが挙げられる。凹凸部の形状、ピッチ、凹凸部の高さ、凹凸部の配列パターンやその規則性/不規則性、原版大きさ、コストなどに応じて、任意に作製方法を選択することができる。凹凸部が規則性のある配列パターンであり、かつ大面積な原版を得たい場合、レーザ光を用いた干渉露光法を用いることが好ましい。
干渉露光法とは、特定の波長のレーザ光を角度θ’の2つの方向から照射して形成される干渉縞を利用した露光法であり、角度θ’を変化させることで使用するレーザの波長で制限される範囲内で色々なピッチを有する凹凸格子の構造を得ることができる。干渉露光に使用できるレーザとしては、TEM00モードのレーザに限定され、TEM00モードのレーザ発振できる紫外光レーザとしては、アルゴンレーザ(波長364nm,351nm,333nm)や、YAGレーザの4倍波(波長266nm)などが挙げられる。
原版の材料の種類としては、石英ガラス、紫外線透過ガラス、サファイア、ダイヤモンド、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン材、フッ素樹脂、シリコンウエハ、SiC基板、マイカ基板などが挙げられる。原版の材料の種類は、原版の使用目的に応じて適宜選択することができる。
ナノパターン転写時の離型性をより向上させるために、離型処理剤により原版に離型処理を行ってもよい。離型処理剤としては、シランカップリング系離型処理剤が好ましく、フッ素含有離型処理剤であることがより好ましい。市販されている離型処理剤の例としては、ダイキン工業社製のオプツールDSX、デュラサーフHD1101、デュラサーフHD2101、住友スリーエム社製のノベック、信越化学工業社製のKP−801M、KBM−7103、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のTSL−8257などが挙げられる。
原版の凹凸構造や配列パターンを転写したスタンパーは、原版から電鋳法やナノインプリント法などにより作製できる。解像度の点では、電鋳法及び光硬化組成物を使用した光ナノプリント法により製造することが好ましい。
光吸収部材を構成する組成物に熱可塑性物を用いる場合の光吸収部材の作製方法として、熱ナノインプリント法が挙げられる。熱ナノインプリント法のうち、熱プレス法、射出成形法等が好ましい。
熱プレス法においては、熱可塑性樹脂組成物のシート、フィルム、板を加熱して、スタンパーをプレスして凹凸構造を形成する。射出成形法においては、加熱して軟化した樹脂を型に流し込み、冷却して、凹凸構造を形成する。これらの方法により、簡単な工程で大量に作製することができる。
また、光吸収部材を構成する組成物に光硬化性物を用いる場合の光吸収部材の作製方法として、光ナノインプリント法が好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム上に黒色となる染料や顔料を含んだ光硬化性物から成る凹凸構造を作製した後、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムから光硬化性物を剥離させて作製してもよい。
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例及び比較例に基いて、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
まず、本発明者らは、可視領域の光を吸収する光吸収材料を含み正弦波形状の凹凸構造層を有する光吸収部材(実施例1)、正弦波形状の凹凸構造層のみを有する光吸収部材(比較例1)、光吸収材料のみを含む光吸収部材(比較例2)及び光吸収材料を含まず、かつ凹凸構造層もない光吸収部材(比較例3)を作製し、その反射率及び透過率について調べた。
(実施例1)
実施例1においては、基材として、光吸収材料としての黒色の染料を含むアクリル系樹脂の板を使用した。このアクリル系樹脂の板の一方の主面に、170℃で5分間、90kgf/cm2の圧力の条件で熱プレス法によって、断面視にて正弦波形状の凹凸構造を含み、凹部及び凸部間に平坦な領域のない凹凸構造層を形成して光吸収部材を作製した。凹凸構造の形状は、凹部の底から凸部の頂点までの高低差の平均値が260nmであり、凸部の頂点同士の間隔の平均値が290nmであった。
実施例1においては、基材として、光吸収材料としての黒色の染料を含むアクリル系樹脂の板を使用した。このアクリル系樹脂の板の一方の主面に、170℃で5分間、90kgf/cm2の圧力の条件で熱プレス法によって、断面視にて正弦波形状の凹凸構造を含み、凹部及び凸部間に平坦な領域のない凹凸構造層を形成して光吸収部材を作製した。凹凸構造の形状は、凹部の底から凸部の頂点までの高低差の平均値が260nmであり、凸部の頂点同士の間隔の平均値が290nmであった。
(比較例1)
比較例1においては、基材として、光吸収材料を含まない無色透明のアクリル系樹脂の板を使用した。このアクリル系樹脂の板の一方の主面に、実施例1と同様の条件で、断面視にて正弦波形状の凹凸構造を含み、凹部及び凸部間に平坦な領域のない凹凸構造層を設けた。凹凸構造の形状は、凹部の底から凸部の頂点までの高低差の平均値が260nmであり、凸部の頂点同士の間隔の平均値が290nmであった。このアクリル系樹脂の板の他方の主面(凹凸構造非形成面)に黒色塗料スプレーを塗工して光吸収部材を作製した。
比較例1においては、基材として、光吸収材料を含まない無色透明のアクリル系樹脂の板を使用した。このアクリル系樹脂の板の一方の主面に、実施例1と同様の条件で、断面視にて正弦波形状の凹凸構造を含み、凹部及び凸部間に平坦な領域のない凹凸構造層を設けた。凹凸構造の形状は、凹部の底から凸部の頂点までの高低差の平均値が260nmであり、凸部の頂点同士の間隔の平均値が290nmであった。このアクリル系樹脂の板の他方の主面(凹凸構造非形成面)に黒色塗料スプレーを塗工して光吸収部材を作製した。
(比較例2)
比較例2においては、基材として、実施例1で用いた黒色の光吸収材料として黒色の染料を含むアクリル系樹脂の板を使用した。このアクリル系樹脂の板を、凹凸構造層を設けずにそのまま光吸収部材として用いた。
比較例2においては、基材として、実施例1で用いた黒色の光吸収材料として黒色の染料を含むアクリル系樹脂の板を使用した。このアクリル系樹脂の板を、凹凸構造層を設けずにそのまま光吸収部材として用いた。
(比較例3)
比較例3においては、基材として、比較例1で用いた光吸収材料を含まない無色透明のアクリル系樹脂を使用した。このアクリル系樹脂の板の一方の主面に黒色塗料スプレーを塗工して黒色にした後、凹凸構造層を設けずにそのまま光吸収部材として用いた。
比較例3においては、基材として、比較例1で用いた光吸収材料を含まない無色透明のアクリル系樹脂を使用した。このアクリル系樹脂の板の一方の主面に黒色塗料スプレーを塗工して黒色にした後、凹凸構造層を設けずにそのまま光吸収部材として用いた。
以上の実施例1及び比較例1〜比較例3に係る光吸収部材について、下記の条件で反射率及び透過率を測定した。
(反射率測定)
実施例1及び比較例1に係る光吸収部材の一方の主面(凹凸構造層形成面)、比較例2及び比較例3の他方の主面(非塗工面)に対して、分光光度計(島津製作所社製、型式:MPC−2200)を用いて、入射角5°で波長範囲400〜800nmにおける反射率を0.5nm毎に測定した。
実施例1及び比較例1に係る光吸収部材の一方の主面(凹凸構造層形成面)、比較例2及び比較例3の他方の主面(非塗工面)に対して、分光光度計(島津製作所社製、型式:MPC−2200)を用いて、入射角5°で波長範囲400〜800nmにおける反射率を0.5nm毎に測定した。
(透過率)
実施例1に係る光吸収部材の一方の主面(凹凸構造形成面)及び比較例2に係る光吸収部材に対して、分光光度計(島津製作所社製、型式:MPC−2200)を用いて、入射角0°(光吸収部材表面に対する垂直方向)で波長範囲400〜800nmにおける透過率を0.5nm毎に測定した。
実施例1に係る光吸収部材の一方の主面(凹凸構造形成面)及び比較例2に係る光吸収部材に対して、分光光度計(島津製作所社製、型式:MPC−2200)を用いて、入射角0°(光吸収部材表面に対する垂直方向)で波長範囲400〜800nmにおける透過率を0.5nm毎に測定した。
上記反射率の結果を図3に示し、透過率測定の結果を図4に示し、反射率及び透過率の評価結果を表1に示す。
表1から分かるように、凹部及び凸部間に平坦な領域のない凹凸構造層を有し、光吸収材料を含有する実施例1に係る光吸収部材においては、反射率及び透過率を十分に低減できることが分かる。また、光吸収材料を含まず、他方の主面(凹凸構造非形成面)を黒色に塗工した点においてのみ相違する比較例1と実施例1とを対比すると、400nmから800nmの範囲における反射率が実施例1の方が低いことが分かる。この結果から、光吸収部材を含むことにより、反射率を低減できることが分かる。
また、図3から分かるように、凹凸構造を有さない点においてのみ相違する比較例2と実施例1とを対比すると、凹凸構造を設けることにより、反射率を大幅に低減できることが分かる。また、透過率においても有意差が見られないことから、凹凸構造を設けても透過率が悪化しないことが分かる。さらに、互いに凹凸構造を有さず、光吸収部材を含有しない点においてのみ相違する比較例2と比較例3とを対比すると、反射率及び透過率に有意差がないことから、単に光吸収部材を含有するだけでは、反射防止性能が不十分であることが分かる。以上の結果から、上記実施の形態に係る光吸収部材においては、表面の面内方向に連続する正弦波形状の凹凸構造を含む凹凸構造層を有し、凹凸構造層が可視光領域の光を吸収する光吸収材料を含むことにより、可視から近赤外の広い波長領域において、光の反射を防止できると共に、光を吸収できる反射防止性能に優れた光吸収部材を実現できることが分かる。
次に、本発明者らは、以下の実施例2及び比較例4において、基材上に設けた凹凸構造の形状と反射率との関係についてシミュレーションを実施した。実施例2及び比較例4に係るシミュレーションにおいては、凹凸構造の断面形状が異なる光吸収部材を作製し、入射光の入射角を所定の範囲で変化させた場合の光の反射率の変化について、シミュレーションを実施した。
(実施例2)
実施例2においては、一対の主面を有する屈折率が1.5の材料の一方の主面に、断面視にて正弦波形状の凹凸構造を含み凹部及び凸部に平坦な領域がない(図1B参照)凹凸構造層を設けた光吸収部材についてシミュレーションを実施した。凹凸構造の形状は、凹部の底から凸部の頂点までの高低差を250nmとし、隣接する凸部の頂点同士の間隔が250nmとした。光吸収部材は、凹凸構造の凸部の頂点と他方の主面(凹凸構造非形成面)との間の距離を2μmとし、吸収係数の値を0.3とした。この光吸収部材の波長550nmでの透過率は0.25%である。
実施例2においては、一対の主面を有する屈折率が1.5の材料の一方の主面に、断面視にて正弦波形状の凹凸構造を含み凹部及び凸部に平坦な領域がない(図1B参照)凹凸構造層を設けた光吸収部材についてシミュレーションを実施した。凹凸構造の形状は、凹部の底から凸部の頂点までの高低差を250nmとし、隣接する凸部の頂点同士の間隔が250nmとした。光吸収部材は、凹凸構造の凸部の頂点と他方の主面(凹凸構造非形成面)との間の距離を2μmとし、吸収係数の値を0.3とした。この光吸収部材の波長550nmでの透過率は0.25%である。
(比較例4)
比較例4においては、一対の主面を有する屈折率が1.5の材料の一方の主面に、断面視にて略三角形状の凹凸構造を含み凹凸構造の凸部の側面が平坦な斜面となっている(図5参照)凹凸構造層を設けた光吸収部材についてシミュレーションを実施した。凹凸構造の形状は、凹部の底から凸部の頂点までの高低差Hを250nmとし、凸部の頂点同士の間隔Pを250nmとした。光吸収部材は、凹凸構造の凸部の頂点と他方の主面(凹凸構造被形成面)との間の距離を2μmとし、吸収係数の値を0.3とした。この光吸収部材の波長550nmでの透過率は0.25%である。
比較例4においては、一対の主面を有する屈折率が1.5の材料の一方の主面に、断面視にて略三角形状の凹凸構造を含み凹凸構造の凸部の側面が平坦な斜面となっている(図5参照)凹凸構造層を設けた光吸収部材についてシミュレーションを実施した。凹凸構造の形状は、凹部の底から凸部の頂点までの高低差Hを250nmとし、凸部の頂点同士の間隔Pを250nmとした。光吸収部材は、凹凸構造の凸部の頂点と他方の主面(凹凸構造被形成面)との間の距離を2μmとし、吸収係数の値を0.3とした。この光吸収部材の波長550nmでの透過率は0.25%である。
(反射率のシミュレーション)
実施例2及び比較例4に係る光吸収部材については、RSoft社DiffractMODを用いて、RCWA法計算を実施することにより反射率を求めた。具体的には、実施例2及び比較例4の凹凸構造の形状を2DCAD上に入力し、入射光の偏光をTEモードに設定した場合とTMモードに設定した場合とで、回折光を含む全光線の反射率計算を実施し、2つのモードの平均値をプロットしたものを足して2で割ることにより、入射光が自然光となるように計算した。反射率シミュレーションの結果を図6に示し、評価結果を下記表2、下記表3に示す。
実施例2及び比較例4に係る光吸収部材については、RSoft社DiffractMODを用いて、RCWA法計算を実施することにより反射率を求めた。具体的には、実施例2及び比較例4の凹凸構造の形状を2DCAD上に入力し、入射光の偏光をTEモードに設定した場合とTMモードに設定した場合とで、回折光を含む全光線の反射率計算を実施し、2つのモードの平均値をプロットしたものを足して2で割ることにより、入射光が自然光となるように計算した。反射率シミュレーションの結果を図6に示し、評価結果を下記表2、下記表3に示す。
表2及び表3から分かるように、表面に連続した正弦波形状の凹凸構造を有する実施例2に係る光吸収部材においては、凹部及び凸部間に起伏のない平坦な領域(平滑な斜面)のある凹凸構造を有する比較例4に係る光吸収部材に対して、反射率を低減できていることが分かる。特に、図6からも分かるように、比較例4に係る光吸収部材の反射率は、入射角の大きい領域において、実施例2に係る光吸収部材の反射率に対して大幅に増大していることが分かる。この結果は、入射角が大きくなるにつれて、光が凹凸構造の側面に入射する際に、比較例4の凸部の側面は平面であるために、側面に対して垂直に近い角度で入光し、屈折率差が実施例2と比較して大きくなるためと考えられる。以上のシミュレーションの結果から、平坦な領域を有さない連続した正弦波形状の凹凸構造により、特に可視光領域における入射角の大きい範囲において入射光の反射率を低減できることが分かる。
本発明は、可視光の波長領域における入射角が大きな光の反射を防止できる光吸収部材を実現できるという効果を有し、特に、デジタル一眼レフカメラのミラーボックス内の側面や、カメラやプロジェクタなどの光学機器内部に配置する光吸収部材として好適に用いることが可能である。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
1 光吸収部材
11 凹凸構造層
11a 凹凸構造
11b 凸部の頂点
11c 凹部の底
11 凹凸構造層
11a 凹凸構造
11b 凸部の頂点
11c 凹部の底
Claims (8)
- 表面の面内方向に連続して設けられた正弦波形状の凹凸構造を含む凹凸構造層を有する光吸収部材であって、前記凹凸構造層は、可視領域の光を吸収する光吸収材料を含んでなることを特徴とする光吸収部材。
- 前記凹凸構造層は、凹部の底から凸部の頂点までの高低差の平均値が、200nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光吸収部材。
- 前記凹凸構造層は、隣接する凸部の間隔の平均値が、100nm以上300nm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光吸収部材。
- 前記凹凸構造層は、熱可塑性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光吸収部材。
- 前記凹凸構造層は、光硬化性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光吸収部材。
- 前記凹凸構造層の凸部の配列パターンが、平面視にて六方配列又は四方配列であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の光吸収部材。
- 前記光吸収材料が、染料又は顔料を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の光吸収部材。
- 請求項1から請求項7のいずれかに記載の光吸収部材を備えたことを特徴とする光学機器。
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