JP5330314B2 - ワイヤグリッド偏光板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、ワイヤグリッド偏光板及びその製造方法に関する。
近年のフォトリソグラフィー技術の発達により、光の波長レベルのピッチを有する微細構造パターンを形成することができるようになってきた。このように非常に小さいピッチのパターンを有する部材や製品は、半導体分野だけでなく、光学分野において利用範囲が広く有用である。
例えば、金属などで構成された導電体線が特定のピッチで格子状に配列してなるワイヤグリッドは、そのピッチが入射光(例えば、可視光の波長400nmから800nm)に比べてかなり小さいピッチ(例えば、2分の1以下)であれば、導電体線に対して平行に振動する電場ベクトル成分の光をほとんど反射し、導電体線に対して垂直な電場ベクトル成分の光をほとんど透過させるため、単一偏光を作り出す偏光板として使用できる。ワイヤグリッド偏光板は、透過しない光を反射し再利用することができるので、光の有効利用の観点からも望ましいものである。
近年、非常に周期の狭い格子状凸凹構造を有するガラス基板のワイヤグリッド偏光子が開発されている。例えば、特許文献1には、透明ガラス基板の表面上に透明誘電体の膜を堆積させ、次いで、ホログラフィ干渉リソグラフィを使用してフォトレジスト内に微細な格子構造を形成し、次いで、この構造をイオンビームエッチングやリアクティブエッチングにより金属膜に転写して平行なグリッド導電素子のアレイを前記基板上に形成し、その後、このグリッド導電素子をマスクとして基板をエッチングすることで、導電素子を支持する、非常に狭い周期の周期的な格子状凸凹構造を有するリブを作製することが開示されている。
しかしながら、イオンビームエッチングやリアクティブエッチングにより微細格子構造を金属膜に転写していく場合、転写に多大な時間がかかり、また、ガラス基板ではロールプロセスによる製造が不可能であるため生産性に乏しいという欠点がある。
そこで上記問題を解決するワイヤグリッド偏光板の製造方法として、UVナノインプリント方式とロールプロセス技術を組み合わせる方法が考えられる。例えば、UVナノインプリント方式を用いたロールプロセス技術に関しては非特許文献1に、UVナノインプリント方式を用いたフィルム基板のワイヤグリッド偏光板の作製に関しては特許文献2に開示されている。
非特許文献1や特許文献2では、光硬化性樹脂にTSR−820(帝人製機製)や、PAK01(東洋合成製)を使用したUVナノインプリント技術が紹介されているが、非特許文献1や特許文献2で開示された方法では、光硬化性樹脂の粘度が高いためにスタンパを押し当てた時に光硬化性樹脂の樹脂厚みが不均一になりやすく、透過率、偏光性能において面内ばらつきやロット間ばらつきの多い製品となってしまう。
また、光硬化性樹脂の樹脂厚みが不均一であると、スタンパ剥離時の剥離力も不均一にかかってしまい、基板からの光硬化性樹脂の部分剥離を生じ易くさせてしまうという問題がある。そのため、基板からの樹脂剥離に耐えられるように樹脂皮膜の厚みを厚くせざるを得ないことも推測されるが、反面、透過率の減少やフレキシブル性の低下を招いてしまうという問題もある。ここで言う樹脂皮膜の厚みとは、凸凹構造の凹部と樹脂基板との間の樹脂の厚みのことを指す。
また、樹脂皮膜を紫外線硬化樹脂で作製した場合、紫外線硬化樹脂はその特性上波長420nm以下の領域において大きな吸収を示すため、樹脂皮膜の厚みが厚いと低波長領域での透過率の減少が顕著になってしまい、画像表示用途などに使用すると変色を引き起こしてしまうという問題もある。
さらに、特許文献2に開示されたワイヤグリッド偏光子では、樹脂皮膜の厚みが厚く、不均一であることに加え、基板に耐熱湿性に優れない樹脂を用いているために、60℃、85%相対湿度条件で1000時間の耐湿熱試験を行うとワイヤグリッド偏光子全体が大きくカールしてしまい、例えば車載用途などの耐湿熱性を必要とされる部材としては使用できないというのが現状である。また、ワイヤグリッド偏光子全体がカールすると金属ワイヤ部分に歪みが生じ、透過率、偏光度が大きく低下するという問題も発生する。また、特許文献3において開示されたワイヤグリッド偏光子では、樹脂皮膜の厚みが厚く、不均一であり、60℃、85%相対湿度条件で1000時間の耐湿熱試験を行うと、ワイヤグリッド偏光子全体がカールするといった問題が考えられる。
このように、ナノインプリント方式を用いた樹脂基板のワイヤグリッド偏光子においては、樹脂皮膜の厚みを薄く均一にし、且つ、微細で規則的な凸凹構造を高い精度で形成することは非常に難しく、また、耐湿熱性に優れた製品を生産性よく作製することが困難であった。
特表2003−502708号公報 特開2008−145581号公報 特開2008−83657号公報
(株)フロンティア出版発行 平井義彦編「ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開」
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、樹脂皮膜の厚みを薄く均一にすることで、高温高湿下でも透過率の低下、偏光度の劣化、及びカールが少ないワイヤグリッド偏光板を提供すること、また、該ワイヤグリッド偏光板をロールプロセスにより効率良く、安価に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明のワイヤグリッド偏光板の製造方法は、ロールフィルムである樹脂基材上に、ロールプロセスによって樹脂皮膜を連続的に形成する工程と、前記樹脂皮膜上に金属ワイヤを形成して、高さが0.01μm〜0.30μmであり、少なくとも一方向のピッチが0.01μm〜0.15μmの範囲である規則的な凸凹構造を有し、厚さが0.01μm〜3μmである前記樹脂皮膜を表面に有し、3cm角の正方形に切り抜き、60℃、85%相対湿度の環境下で1000時間保持した後に、20℃、55%相対湿度の環境下で平滑で水平な台の上に24時間静置した後の頂点と底面の高さの差が5mm以下であるワイヤグリッド偏光板を得る工程と、を包含し、前記樹脂皮膜を形成する工程は、(a)1分子中に3以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を有する1種以上の単量体を20質量%〜60質量%の範囲で含有し、(b)光硬化反応によって結合して固形となる成分が98質量%以上であり、(c)25℃における粘度が10mPa・s以下の光硬化性樹脂を前記樹脂基材上に塗布する工程を含むことを特徴とする。
本発明のワイヤグリッド偏光板の製造方法において、前記ワイヤグリッド偏光板が、60℃、85%相対湿度の環境下で1000時間保持した前後における特性について、偏光度及び透過率の変動がそれぞれ5%以下であることが好ましい。
本発明のワイヤグリッド偏光板の製造方法において、前記光硬化樹脂、N−ビニル化合物である単量体を5質量%〜40質量%の範囲で含有することが好ましい。
本発明のワイヤグリッド偏光板の製造方法において、前記光硬化性樹脂が、アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコン化合物を0.1質量%〜10質量%含有することが好ましい。
本発明のワイヤグリッド偏光板の製造方法において、前記樹脂基材が、PC樹脂、COP樹脂、及びTAC樹脂のいずれかであることが好ましい。
本発明のワイヤグリッド偏光板の製造方法は、ロールフィルムである樹脂基材上に、ロールプロセスによって樹脂皮膜を連続的に形成する工程と、前記樹脂皮膜上に金属ワイヤを形成して、高さが0.01μm〜0.30μmであり、少なくとも一方向のピッチが0.01μm〜0.15μmの範囲である規則的な凸凹構造を有し、厚さが0.01μm〜3μmである前記樹脂皮膜を表面に有し、厚みが0.01μm〜3μmであり、3cm角の正方形に切り抜き、60℃、85%相対湿度の環境下で1000時間保持した後に、20℃、55%相対湿度の環境下で平滑で水平な台の上に24時間静置した後の頂点と底面の高さの差が5mm以下であるワイヤグリッド偏光板を得る工程と、を包含し、前記樹脂皮膜を形成する工程は、(a)1分子中に3以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を有する1種以上の単量体を20質量%〜60質量%の範囲で含有し、(b)光硬化反応によって結合して固形となる成分が98質量%以上であり、(c)25℃における粘度が10mPa・s以下の光硬化性樹脂を前記樹脂基材上に塗布する工程を含むので、透過率性能に優れ、且つ、高温多湿下でも透過率の低下、偏光度の低下、及びカールが少ないワイヤグリッド偏光板を得ることができる
本発明の実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板の一部を示す概略断面図である。 樹脂皮膜の厚みが0.1μmの格子状凸凹構造転写フィルムの断面の代表的なSEM画像である。 樹脂皮膜の厚みが0.01μmの格子状凸凹構造転写フィルムの断面の代表的なSEM画像である。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の製造方法で得られるワイヤグリッド偏光板の一部を示す概略断面図である。この概略図に基づき、本発明のワイヤグリッドを説明する。図1に示すワイヤグリッド偏光子は、樹脂基材Aと、この樹脂基材A上に形成された樹脂皮膜Bと、この樹脂皮膜B上に形成された金属ワイヤCと、を包含する。樹脂皮膜Bは、規則的な凸凹構造Eを表面に有しており、金属ワイヤCは、この凸凹構造E上に形成されている。また、金属ワイヤCと樹脂皮膜Bとの間には、誘電体層Dが形成されている。
(本発明に用いる樹脂基材Aに関する説明)
樹脂基材Aに用いる樹脂は、可視光領域で実質的に透明な樹脂であればよい。例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート(以下PC)樹脂、ポリスチレン(以下PST)樹脂、シクロオレフィン(以下COP)樹脂、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート(以下PAR)樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド(以下PEI)樹脂、ポリエーテルサルフォン(以下PES)樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート(以下PEN)樹脂、ポリエチレン(以下POM)樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、トリアセテートセルロース(以下TAC)樹脂や、あるいは、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂も挙げられる。また、基材としてガラスなどの無機基板と上記樹脂基材Aとを組み合わせた構成とすることもできる。ワイヤグリッド偏光板の基材を樹脂フィルムにすることで、フレキシブル性、加工性、生産性、耐衝撃性が向上するというメリットがある。
前記樹脂素材には、本来の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の従来の添加物、例えば流動調整剤、レベリング剤、有機及び無機の染料及び顔料、増量剤、可塑剤、潤滑剤、補強剤、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、沈降防止剤、消泡剤、耐磨耗性付与剤、摩擦低減剤、帯電防止剤、防曇剤、粘着剤などを含むことが出来る。これらは樹脂素材に直接配合することも、これらを含む層として基材を積層させても良い。また、熱や光、水分などの劣化要因から基材を保護する為に、目的とする樹脂基材に耐湿熱、耐光性の高い樹脂を積層、コーティングさせる方法や、接着性を向上させる為にUV照射やコロナ照射による表面改質や易接着層を積層するなどの手段を講じることも出来る。
ワイヤグリッド偏光板の樹脂基材Aに必要な条件としては、(a)使用目的に応じた波長領域で実質的に透明であり、(b)光学的異方性が少ない、(c)機械物性が優れている、ことが挙げられる。また好ましくは(d)価格が安い、ことも挙げられる。以上の点から、樹脂基材Aに用いる樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂、PC樹脂、COP樹脂、PET樹脂、PEN樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、TAC樹脂が好ましい。さらに、高耐湿熱性が要求されるワイヤグリッド偏光板の場合には、樹脂基材の寸法収縮により金属ワイヤに歪みが生じることを防ぐ、高温高湿条件下での偏光度の低下を防ぐ、表示材料などに使用する際の透過像の歪みを少なくする、などの理由により、高温高湿条件下で(e)寸法変化率が小さく、(f)ヘイズの上昇が少なく(g)カールが小さい、樹脂基材を使用する必要がある。以上の点を考慮すると、樹脂基材(A)としては高耐湿熱性を有するPC樹脂、COP樹脂、TAC樹脂を使用することが好ましく、特にCOP樹脂が好ましい。
(本発明に用いる樹脂皮膜Bに関する説明)
樹脂皮膜Bは、樹脂基材A上に形成された高さが0.01μm〜20μmであり、少なくとも一方向のピッチが0.01μm〜20μmの範囲である規則的な凸凹構造Eを表面に有する、厚みが0.01μm〜20μmの光硬化性樹脂の成型体である。
ワイヤグリッド偏光板の特性として、樹脂皮膜Bの凸凹構造EのピッチP(樹脂皮膜の凸部頂点から隣りの凸部頂点までの距離を指す。頂上が平面である場合、頂上の中心を頂点とする。)が偏光特性を求める波長の4分の1以下である時に十分な偏光性能が得られ、また、ピッチが小さくなるほどその偏光性能が向上することが知られている。波長がサブミリ波以上の電波領域での偏光特性を考慮した場合、ピッチPは20μm程度まで大きくすることができ、可視光領域での偏光特性を考慮する場合は、ピッチは150nm以下であることが好ましい。より好ましくは、ピッチは120nm以下であると400nm近傍の短波長光であっても十分な偏光特性が得られる。また、ピッチPは10nm程度まで狭くすると、波長100nm程度の紫外領域での偏光特性を求める場合など特殊用途にも利用でき、さらに好ましい。
また、樹脂皮膜Bと金属ワイヤCとの間の密着性を向上させるために、誘電体層Dを該樹脂皮膜B表面の凸部及び、その側面部の少なくとも一部を覆うように設けることが望ましい。なお、誘電体層Dは、設けなくても良い。
誘電体層Dを構成する誘電体は、可視光領域で実質的に透明な誘電体であれば良い。樹脂基材Aを構成する材料及び金属ワイヤCを構成する金属との間の密着性が強い誘電体材料を好適に用いることができる。例えば、珪素(Si)の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はその複合物や、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、銅(Cu)などの金属の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はそれらの複合物(誘電体単体に他の元素、単体又は化合物が混ざった誘電体)を用いることができる。
また、樹脂皮膜Bの表面の凸凹構造Eの高さH(凸部の高さ)は、良好な光学特性を得たり、樹脂基材Aと誘電体層Dとの間の密着性を高め、誘電体層Dを該凸凹構造Eの凸部上に選択的に高く積層することを考慮すると、該凸凹構造Eのピッチの0.5倍から2.0倍、特に、1.0倍から2.0倍であることが好ましい。
該樹脂皮膜Bの凸凹構造Eの断面形状に制限はない。これらの断面形状は、台形、矩形、方形、プリズム状や、半円状などの正弦波状であってもよい。ここで、正弦波状とは凹部と凸部の繰り返しからなる曲線部をもつことを意味する。なお、曲線部は湾曲した曲線であればよく、例えば、凸部にくびれがある形状も正弦波状に含める。また、該樹脂皮膜の凸部及びその側面の少なくとも一部を誘電体が覆いやすくする観点から、前記形状の端部又は頂点、谷は緩やかな曲率をもって湾曲していることが好ましい。また、樹脂基材と誘電体層との密着強度を高くする観点から、これらの断面形状は正弦波状であることがより好ましい。
樹脂皮膜Bの厚みは薄ければ薄いほど、(a)光硬化性樹脂による光の吸収を抑えることができ、透過率が向上する、(b)UV硬化樹脂からの揮発性残留成分を抑えることができるため金属を真空蒸着させる際の真空度を高く保つことが出来る、などのメリットがあるため、樹脂皮膜の厚さは連続転写が可能な範囲で出来るだけ薄い方が好ましい。該ワイヤグリッド偏光板のフレキシブル性を確保するためにも樹脂皮膜Bの厚みは20μm以下であることが好ましく、高温高湿条件下における光硬化性樹脂層でのクラックの発生を抑えるためにも樹脂皮膜Bの厚みは10μm以下であることがより好ましい。さらに、高温高湿下での光硬化性樹脂の収縮に起因するカールを出来るだけ抑制するためにも樹脂皮膜Bの厚みは1μm以下であることがより好ましい。しかし、樹脂基材Aからの光硬化性樹脂の剥離や未転写部分の発生を防ぐためにも樹脂皮膜Bの厚みは0.01μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.1μm〜0.6μmである。
(光硬化性樹脂について)
樹脂皮膜の厚みを薄くするためには、使用する光硬化性樹脂の(a)粘度が低く、(b)スタンパからの離型性が良く、(c)基材フィルムとの接着性が良い、ことが求められる。以下、本発明に使用した光硬化性樹脂について説明する。
該光硬化性樹脂は、(a)1分子中に3以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する1種以上の単量体(以下、3官能以上のアクリレート及び/又はメタクリレートと称す)を、20質量%〜60質量%の範囲で含有すること、(b)光硬化反応によって結合して固形となる成分が98質量%以上であること、(c)25℃における粘度が10mPa・s以下であることを同時に満たすものである。
(a)の単量体としては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシ化グリセルトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、3官能以上のポリエステルアクリレートオリゴマー、3官能以上のウレタンアクリレートオリゴマー、3官能以上のエポキシアクリレートオリゴマー、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート、プロポキシ化グリセルトリメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタアクリレート、トリスメタアクリロイルオキシエチルフォスフェート、3官能以上のポリエステルメタアクリレートオリゴマー、3官能以上のウレタンメタアクリレートオリゴマー、3官能以上のエポキシメタアクリレートオリゴマーなどの1種以上が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、エトキシ化及びプロポキシ化された単量体というのは、単量体1分子当たり、1当量〜20当量の範囲の、1種以上のエトキシ基及び/又はプロポキシ基が含まれる単量体を指す。
これらの単量体の中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレートは諸物性のバランスが良いので好ましい。中でもトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレートを用いた光硬化性樹脂は、光反応後のモールドからの離型性が優れるため、特に好ましい。
本発明の光硬化性樹脂は、上記のような、1分子中に3以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する1種以上の単量体を、20質量%〜60質量%の範囲で含有する。含有量を20質量%以上とすることで、十分な強度の成型体が得られる上、高架橋密度となり、成型体からブリードアウトしてしまうような、低重合度オリゴマーの副生及びブリードアウトを最低限に抑えることができる。また、含有率を60質量%以下とすることで、本発明の光硬化性樹脂の25℃における粘度を10mPa・s以下とする条件を満たしつつ、組成を設計することが容易になる上、成型体の硬化収縮によるそり変形を最低限に抑えることが出来る。より好ましくは25質量%〜50質量%の範囲であり、さらに好ましくは30質量%〜40質量%の範囲である。
本発明の光硬化性樹脂は、平坦で大面積の成型体を精度良く製造する目的から、光硬化反応によって結合して固形となる成分が98質量%以上である。光硬化反応によって結合して固体となる成分とは、分子内に1つ以上のアクリル基、メタクリル基、ビニル基、エポキシ基、オキセタン基などの反応性基を有する成分である。他の希釈溶剤など、反応性基を有さない成分は、成型プロセスにおいて揮発したり、ブリードアウトしたりして成型不良となる場合があるので、2質量%以下がよい。光硬化反応によって結合して固体となる成分は、後加工での品質への影響を考慮すると99質量%以上であることがより好ましく、99.5質量%以上であることがさらに好ましい。
また、本発明の光硬化性樹脂は、大面積ロールプロセスに適した加工性を実現する目的で、25℃における粘度が10mPa・s以下であることが求められる。従来光ナノインプリント技術に使用される樹脂、特に希釈溶剤をほとんど含有しないような樹脂では、25℃における粘度が10mPa・sより高いのものが選択されてきた。これは、25℃における粘度が10mPa・s以下であるような従来の光硬化性樹脂の硬化物は、一般にモールドとの密着性が高い上、成型体の強度が弱いために、微細な凸凹構造のモールドを使用した場合、光反応後のモールドからの剥離時に成型体が破壊され、モールド側に硬化物の一部が付着して残る問題があったためである。また、ロールプロセス以前の、平板モールドを使用する光ナノインプリント技術においては、光硬化性樹脂の液膜が重力や表面張力、静電気力などによって飛散したり、厚みむらを生じたりしない程度の、25℃における粘度が70mPa・s程度の光硬化性樹脂が多用されており、同じ理由からロールプロセスにおいても25℃における粘度が70mPa・s程度の光硬化性樹脂が選択されてきたものと推測される。
本発明者らは鋭意検討した結果、驚くべきことに特定の単量体を、特定の含有量で配合した光硬化性樹脂は、25℃における粘度が10mPa・s以下であるにも係らず、光反応後のモールドからの離型性が優れている上、成型体の強度も高く、剥離したモールド側に硬化物の一部を付着し残す問題が無いので、薄い樹脂皮膜でありながら、微細且つ高精度の凸凹構造を成型し得ることを見出した。また、意外なことにロールプロセスにおいては、光硬化性樹脂の25℃における粘度が10mPa・s以下であることによって、より平坦でより大面積の成型体をより高ラインスピードで製造でき、好ましいことを見出した。本発明の光硬化性樹脂の、25℃における粘度は、9mPa・s以下であることがより好ましく、8.5mPa・s以下であることがさらに好ましく、8mPa・s以下であることが特に好ましい。一方、25℃における粘度の実質的な下限としては、2mPa・s以上である。
また、本発明の光硬化性樹脂においては、N−ビニル化合物である単量体を、5質量%〜40質量%の範囲で含有することが好ましい。ここで特に好ましく用いられる、N−ビニル化合物である単量体としては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、及びN−ビニルカプロラムタムの少なくとも1種以上が挙げられる。これらのN−ビニル化合物類を配合することにより、成型体の基材への付着性を向上できる一方で、光反応後のモールドからの離型性も良好であるので好ましい。これらの単量体の含有量は上記効果を発揮するには5質量%以上であることが好ましく、また40質量%以下であることによって、成型体からブリードアウトしてしまうような、低重合度オリゴマーの副生を最低限に抑えることができ、また成型体の過度の吸湿も抑制でき成型体の耐湿特性が向上するので好ましい。これらの単量体の含有量は15質量%〜38質量%の範囲であることがより好ましく、25質量%〜35質量%の範囲であることがさらに好ましい。
さらに、本発明の光硬化性樹脂においては、アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコン化合物を0.1質量%〜10質量%の範囲で含有することが好ましい。化合物の一例としては、ポリジメチルシロキサン骨格にアクリル基を結合させた、BYK−UV3500、BYK−UV3570(ビックケミー・ジャパン製)、ebecryl350(ダイセル・サイテック製)などの、シリコンアクリレート化合物が挙げられる。これらの化合物を配合することにより、光反応後の成型体のモールドからの離型性をさらに向上できる上、該化合物は成型体からのブリードアウトも少ないので、精密な凸凹構造を成型する目的に対して好ましい。これらの化合物の含有量は上記効果を発揮するには0.1質量%以上であることが好ましく、また10質量%以下であることによって、成型体の強度低下の悪影響も少ないので好ましい。0.2質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましく、0.3質量%〜2質量%の範囲であることがさらに好ましい。
本発明の光硬化性樹脂は、上述の単量体の他に、粘性の調整及び、硬化物の諸物性を調整する目的で別の単量体を配合することが好ましく、光重合開始剤を配合することも好ましい。前記の単量体としては特に制限は無いが、光硬化性樹脂の粘性を調整する必要から、25℃における粘度が10mPa・s以下の比較的低粘性の単量体を使用することが好ましく、また比較的少量の25℃における粘度が10mPa・sを越える単量体及びオリゴマーと組み合わせて使用することも好ましい。
使用できる単量体及びオリゴマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、ステアリルアクリレート、n−ブトキシエチルアクリレート、ブトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、カプロラクトンアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート4級化物、アクリル酸、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、PEG#200ジアクリレート、PEG#400ジアクリレート、PEG#600ジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、ビスフェノールA−EO付加物ジアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、テトラフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、パーフロロオクチルエチルアクリレート、ノニルフェノール−EO付加物アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴアクリレート、エチルカルビトールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、ペンタメチルピペリジルアクリレート、テトラメチルピペリジルアクリレート、パラクミルフェノール−EO変性アクリレート、N−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、イソシアヌル酸−EO変性ジアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、イソミリスチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、n−ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、カプロラクトンメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート4級化物、メタクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコールメタクリル酸安息香酸エステル、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、PEG#200ジメタクリレート、PEG#400ジメタクリレート、PEG#600ジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ビスフェノールA−EO付加物ジメタクリレート、トリフロロエチルメタクリレート、テトラフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、パーフロロオクチルエチルメタクリレート、ノニルフェノール−EO付加物メタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリメチロールプロパンメタクリル酸安息香酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴメタクリレート、エチルカルビトールオリゴメタクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴメタクリレート、トリメチロールプロパンオリゴメタクリレート、ペンタエリスリトールオリゴメタクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレート、テトラメチルピペリジルメタクリレート、パラクミルフェノール−EO変性メタクリレート、N−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、イソシアヌル酸−EO変性ジメタクリレート、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシ)メチルオキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、オキセタニルシリケート、フェノールノボラックオキセタン、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
また後記の、光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]―フェニル}−2−メチル−プロパン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、1,2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]エタノン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)などが挙げられる。特に本発明においては、高感度で、低揮発性である2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]エタノン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)などが好ましく用いられる。これら光重合開始剤は単独で適用することも可能であるが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。このほか公知の光重合促進剤及び増感剤などと組み合わせて適用することもできる。本発明の光重合開始剤の配合比は質量%で0.1%〜5.0%の範囲であることが好ましい。
また本発明の光硬化性樹脂は、本来の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の従来の添加物、例えば流動調整剤、レベリング剤、有機及び無機の染料及び顔料、増量剤、可塑剤、潤滑剤、補強剤、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、沈降防止剤、消泡剤、耐磨耗性付与剤、摩擦低減剤、帯電防止剤、防曇剤などを含むことが出来る。
また本発明の光硬化性樹脂は、異物(パーティクル)が、ろ過などの手法で除去されているものが好ましい。ろ過の場合、捕捉出来る最小粒子径が1μm以下のフィルターを使用することが好ましく、0.5μm以下のものがさらに好ましい。いずれの最小粒子径でも、フィルターの捕捉効率は99.9%以上であることが好ましい。
またCOPやTACなどの樹脂に対しては従来の光硬化性樹脂では強固な接着をなし得ないため転写賦型は困難であったが、驚くべきことに本発明の光硬化性樹脂を用いることでこれらの樹脂フィルムにおいてもJIS K−5600−5−6に準拠した碁盤目剥離試験で分類1以上の基材付着性を示すことができ、良好な転写が可能となった。これは高浸透性で官能基含有量の高い単量体を多く含む組成の効果であると考えられる。
樹脂基材Aと樹脂皮膜Bとの間に両樹脂の混合層Fを有することが、該樹脂基材Aと該樹脂皮膜Bの接着性を向上させるために好ましい。混合層Fの厚みが1nm〜400nmであることが、接着性、基材の変形性の面から見ても好ましく、より好ましくは10nm〜200nmである。混合層Fの厚みは樹脂基材AをUV照射やコロナ照射によって表面改質する方法や樹脂基材Aに光硬化性樹脂を塗布してから硬化させるまでの時間を調整するなどの方法によって調節することができる。なお、図1に示すように、混合層Fの厚さは、樹脂皮膜Bの厚みHに含まれる。
(本発明に用いる金属ワイヤCに関する説明)
本発明で用いる金属ワイヤCを構成する金属としては、可視光領域で光の反射率が高く、誘電体層Dを構成する材料との間の密着性のよいものであることが好ましい。例えば、アルミニウム(Al)、銀又はそれらの合金で構成されていることが好ましい。コストの観点からAl又はその合金で構成されていることがさらに好ましい。
金属ワイヤの幅(W)は、誘電体層2の頂部における幅を指すが、偏光度や透過率などの光学特性及びワイヤグリッドの構造強度の観点から樹脂基材Aの凸凹構造EのピッチPの0.3倍から0.6倍であることが好ましい。
樹脂皮膜Bの格子状凸部を被覆した誘電体層Dが形成する凹凸格子の、凸部の上に形成した金属ワイヤCの厚みH(以下、金属ワイヤの高さという)は、誘電体層Dの頂点と金属ワイヤ層Cの頂点の高さの差を指すが、光学特性や金属ワイヤCと誘電体層Dとの間の密着強度、ワイヤグリッド偏光板の構造強度、積層に要する処理時間を考慮すると、20nm〜220nm、好ましくは50nmから200nmである。
高温高湿条件下でも透過率、偏光性能の劣化が少ないワイヤグリッド偏光板を作製する方法として、(a)高温高湿条件下で透過率低下が少ない樹脂基材を使用する、(b)樹脂皮膜の厚みを薄くして、光硬化性樹脂層の劣化による透過率の低下を抑える、(c)金属ワイヤ層を保護して劣化を抑える、などが挙げられる。また、ワイヤグリッド偏光板に寸法変化やカールが生じると金属ワイヤ層に歪みが生じ、透過率、偏光度の大幅な低下を招いてしまうことを考慮して、(d)高温高湿条件下で寸法変化やカールが少ない樹脂基材を使用する、(e)樹脂皮膜の厚みを薄くして、光硬化性樹脂の収縮によるカールを抑える、などの手段を講じることが好ましい。
高温高湿条件下での透過率、偏光度の低下は少なければ少ないほど良いが、ワイヤグリッド偏光板を60℃、85%相対湿度の環境下で1000時間保持した前後で偏光度及び透過率の変動がそれぞれ5%以下であることがテレビなどの表示材料部材や家電製品への応用という面で好ましく、85℃、85%相対湿度の環境下で1000時間保持した前後で偏光度及び透過率の変動がそれぞれ5%以下であることが車載用途への応用という面でより好ましい。中でも、3%以下であるものがより好ましく、0.5%以下であるものがさらに好ましい。
高温高湿条件下でのワイヤグリッド偏光板のカールは小さければ小さいほど良いが、ワイヤグリッド偏光板を3cm角の正方形に切り抜き、60℃、85%相対湿度の環境下で1000時間保持した後に、20℃、55%相対湿度の環境下で平滑で水平な台の上に24時間静置した後の頂点と底面の高さの差が5mm以下であると透過像の歪みが少なく、テレビなどの表示材料部材への応用を考慮した場合好ましい。さらに、85℃、85%相対湿度の環境下で1000時間保持した後に、20℃、55%相対湿度の環境下で平滑で水平な台の上に24時間静置した後の頂点と底面の高さの差が5mm以下であることが車載用途への応用という面で好ましい。中でも、3mm以下であるものがより好ましく、1mm以下であるものがさらに好ましい。
本発明の光硬化性樹脂による格子状凸凹構造を有する成型体は、光ナノインプリント技術を応用することで作製が可能であり、該成型体の表面構造の反転形状となる、凹凸構造を有するモールドに、本発明の新規な光硬化性樹脂を流し込み、光硬化させることで製造することが出来る。特に平坦で大面積の成型体を製造する場合には、ロールプロセスを採用することが好ましい。光硬化性樹脂をモールドに流し込む方法としては、基材に光硬化性樹脂を薄膜状に塗布した後で、モールドと接触させ、モールドの凹凸構造と基材の間に充填する方法や、モールドの表面に光硬化性樹脂を薄膜状に塗布した後、基材と接触させることでモールドの凹凸構造と基材の間に充填する方法が挙げられる。光硬化性樹脂を塗布する方法に関しては特に制限は無く、例えば、ロールコーター法、(マイクロ)グラビアコーター法、エアドクタコーター法、ブレ−ドコーター法、ナイフコーター法、ロッドコーター法、カーテン(フロー)コーター法、キスコーター法、ビードコーター法、キャストコーター法、ロータリースクリーン法、浸漬コーティング法、スロットオリフィスコーター法、バーコード法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、押出コーター、ファウンテンコーター法、電着コーティング法、スパッタ法のような物理的な蒸着法、CVD法のような気相法などの方法が挙げられる。
いずれの方法にせよ、モールドの凹凸構造内に気泡を混入させないことと、モールドと基材間に保持した樹脂の、面内での厚みむらを小さくすることが肝要であるが、本発明の光硬化性樹脂を使用することによって、これらの条件を高度に満足することが可能になった。ここで、該モールドの温度を25℃〜100℃の範囲に保つことによって、上記の条件をさらに高度に満足することが出来るので好ましい。モールドの温度が25℃以上であることによって、光硬化性樹脂の流動性を一層改善すると共に、成型体と基材との付着性を向上する効果や、光反応後のモールドからの離型性を向上させる効果があるため好ましく、100℃以下であることによって、基材の熱変形を抑制する効果があるため好ましい。30℃〜80℃の範囲がより好ましく、35℃〜70℃の範囲がさらに好ましく、40℃〜65℃の範囲が特に好ましい。また、モールドの温度は一定に調節されていることが好ましい。樹脂皮膜Bの厚みは、樹脂基材Aとモールドを押し当てる際の圧力を調節することでコントロールすることが出来る。
金属ワイヤCを形成するために金属を誘電体層D上に積層する方法としては、誘電体層Dを構成する材料と金属ワイヤCとを構成する金属との間で十分な密着性が得られる方法であれば特に限定されない。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法を好適に用いることができる。中でも、金属を誘電体層Dの凸部に選択的に、又は誘電体層Dの凸部の一方の側面に偏って選択積層できるような方法が好ましい。そのような方法として、例えば、真空蒸着法が挙げられる。
また、光学特性の観点から、微細凸凹格子の凹部底及びその付近に積層する金属量は少ないほど良い。したがって、これらの部分に金属が堆積するのを避けるため、更には、堆積した場合に、後述するエッチング(による洗浄)を容易にすることを考慮すると、斜め積層法を用いて金属を積層することが好ましい。本発明でいう斜め積層法とは、微細な格子状の凸凹構造Eの格子長手方向と垂直に交わる平面内で、基材面の法線と蒸着源とのなす角度(入射角度)θが30°以下、好ましくは10°から20°の方向から金属を積層する方法である。
(ワイヤグリッド偏光板の製造方法)
本発明のワイヤグリッド偏光板は、上述の透明な樹脂基材Aと該基材上に形成された規則的な格子状凸凹構造Eを表面に有する樹脂皮膜B、及び、該凸凹構造E上に金属ワイヤCを形成することにより製造される。中でも、樹脂基材Aがロールフィルムであり、ロールプロセスによって樹脂皮膜Bを連続的に形成することが、生産性の面から好ましい。
次に、本発明を明確にするために行った実施例について説明する。
(粘度の測定)
E型粘度計(東機産業製型番RE550L)を用い、試料量1.0mlで評価した。粘度の測定は全て25℃で行った。
(モールドからの離型性)
樹脂基材に光硬化性樹脂を塗布し、これに35mm×100mmの大きさのモールドを押し付けて、基材側からメタルハライドランプ(ウシオ電機製型番UVC−2519−1MNSC7−MS01)で、1J/cmの光量で光硬化させた試料について、引張試験機(エー・アンド・デイ製型番RTG−1210)を用い、室温(23℃)にて、1m/分の速度で90度剥離試験を行い、モールドからの離型性を評価した。
(透過率、偏光度の測定)
得られた実施例、比較例のワイヤグリッド偏光板について、分光光度計(V-7100 日本分光製)を用い偏光度及び光線透過率を測定した。ここでは、直線偏光に対する平行ニコル、直交ニコル状態での透過光強度を測定し、偏光度、光線透過率は下記式より算出した。また、測定波長は550nmとした。
偏光度=[(Imax−Imin)/(Imax+Imin)]×100 %
光線透過率=[(Imax+Imin)/2]×100 %
ここで、Imaxは平行ニコル時の透過光強度であり、Iminは直交ニコル時の透過光強度である。
(カール度の測定)
得られた実施例、比較例のワイヤグリッド偏光板を、各辺がそれぞれ透過軸と略平行及び略直交するように3cm角の正方形に切り抜き、60℃、85%相対湿度条件下又は80℃、85%相対湿度条件下で1000時間保持した後、20℃、55%相対湿度の環境下で平滑で水平な台の上に24時間静置した後の、ワイヤグリッド偏光板の頂点と該水平台との高さの差を測定した。このワイヤグリッド偏光板の頂点と該水平台との高さの差をカール度と定義した。
(実施例1)
(樹脂基板の選定)
ワイヤグリッド偏光板の基板に必要な条件としては、(a)使用目的に応じた波長領域で実質的に透明である、(b)光硬化樹脂との接着性が良い、(c)光学的異方性が少ない、ことが挙げられる。さらに高耐湿熱性が要求されるワイヤグリッド偏光板の場合には、基板が高温高湿条件下での(d)寸法変化率が小さく、(e)ヘイズの上昇が少ない、必要がある。以上条件を満たすフィルムとしてTAC樹脂であるフジタック(富士フイルム製)を使用した。
(光硬化性樹脂の作製)
三官能以上のアクリレート化合物である単量体としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を32質量%、N−ビニル化合物である単量体としてN−ビニル−2−ピロリドン(NVP)を32質量%、その他の単量体として1,9−ノナンジオールジアクリレートを33質量%、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(ダロキュアTPO チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)を2質量%、アクリル基を含有するシリコン化合物としてシリコンジアクリレートを1質量%を配合し、異物をろ過して光硬化性樹脂(組成物1)を作成した。組成物1の粘度は7.9mPa・sであった。組成物1には微量の不純物は含まれるものの、99質量%以上が光硬化反応によって結合して固体となる成分からなる、光硬化性樹脂であった。
組成物1は、一般に光硬化性樹脂との付着性が不良であるといわれているTAC樹脂やCOP樹脂への接着も良好であった。
(凹凸格子形状の樹脂皮膜が転写されたCOP板の作製)
ピッチが230nmで、凹凸格子の高さが230nmである凹凸格子を表面に有するニッケルスタンパを準備した。この凹凸格子は、レーザ干渉露光法を用いたパターニングにより作製されたものであり、その断面形状は正弦波状で、上面からの形状は縞状格子形状であった。また、その平面寸法は縦横ともに500mmであった。このニッケルスタンパを用いて、熱プレス法により厚さ0.5mm、縦横がそれぞれ520mmのCOP樹脂の表面に凹凸格子形状の樹脂皮膜を転写し、凹凸格子形状の樹脂皮膜を転写したCOP板を作製した。
(延伸によるピッチの縮小)
次いで、この凹凸格子形状が転写されたCOP板を520mm×460mmの長方形に切り出し、被延伸部材としての延伸用COP板とした。このとき、520mm×460mmの長手方向(520mm)と凹凸格子の長手方向とが互いに略平行になるように切り出した。
次いで、この延伸用COP板の長手方向の両端10mmを延伸機のチャックで固定し、その状態で113±1℃に温度調節された循環式空気オーブン中に延伸用COP板を10分間放置した。その後チャック間の距離が2.7倍延伸したところで延伸を終え、20秒後に延伸したCOP板(延伸済みCOP板)を室温雰囲気下に取り出し、チャック間の距離を維持したまま冷却した。
この延伸済みCOP板の表面と断面を、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)にて観察したところ、微細凹凸格子のピッチと高さがそれぞれ、140nm/140nm(ピッチ/高さ)であり、その断面形状が正弦波状で、上面からの形状が縞状格子状となっており、実質的に延伸前の凹凸格子形状と相似で縮小されていたことが分かった。
(ニッケルスタンパ作製)
得られた、140nmピッチの延伸済みCOP板表面に、それぞれ導電化処理として金をスパッタリングにより30nm被覆した後、それぞれニッケルを電気メッキし、厚さ0.3mm、縦300mm、横180mmの微細凹凸格子を表面に有するニッケルスタンパを作製した。
(ロールスタンパ作成)
同様にしてニッケルスタンパを計2枚作成し、2枚のスタンパをロール面に接合し、ロールスタンパとした。
(凸凹構造を有する樹脂皮膜の作製)
厚み0.10mm、幅250mmのTAC樹脂のロール(フィルム長250m)に連続的に上記光硬化性樹脂(組成物1)を幅200mm、厚み0.5μm塗布し、塗布面を上記140nmピッチの微細凹凸格子を表面に有するロールスタンパ上に接触させ、フィルム側から中心波長365nmの紫外線ランプを用いて紫外線を1000mJ/cm照射し、ロールスタンパの格子状凸凹構造を連続的に転写した後、ロール状に巻き取った。以下、このロールを原反ロールと呼ぶことにする。この時得られた格子状凸凹構造転写フィルムをFE−SEMにより観察したところ樹脂皮膜の厚みが0.3μmとなっており、格子状凸凹形状の断面形状は正弦波状であり、上面からの形状が縞状格子状となっていることを確認した。縞状格子と樹脂基材Aの搬送方向とは直交するように形成されている。
(スパッタリング法を用いた誘電体層の形成)
原反ロールを誘電体形成及び金属ワイヤ形成用の真空チャンバへ移した。その際、フィルムの格子状凸部が設けられている面と反対側の面がフィルム搬送用ロール(メインローラー)と接するように通紙した。誘電体形成にはスパッタリング法を用いた。原反ロールをほどきながらフィルム搬送用ロールで巻取ロール側に送りながら窒化珪素層を設け、その後ロール状に巻き取った。同じ条件でSiチップに窒化珪素を成膜し、エリプソメーターにて窒化珪素層の厚みを算出したところ、3nmであった。
(アルミニウム蒸着)
原反ロールの格子状凸部転写面に誘電体層として窒化珪素をスパッタリング法にて形成した後、フィルムを連続搬送しながら、真空蒸着法にて金属ワイヤを形成し、ロール状に巻き取った。本実施例では、金属としてアルミニウム(Al)を用いた場合について説明する。
アルミニウムの蒸着には斜め蒸着法を用い、格子状凸凹構造の延在方向と垂直に交わる平面内において、格子状凸凹構造の延在方向とアルミの蒸着角度が70度になるようにマスクを配置し、さらに蒸着ボート上に蒸着源用の純度99.9%以上、線径1.7mmのアルミワイヤを配置した。蒸着ボート加熱前の真空度は0.005Paであった。
以上のような条件にて、格子状凸凹構造転写フィルムを走行させながらアルミニウムを蒸着した。蒸着中の真空度は0.007Paであった。
(エッチングによる不要金属の除去)
Alを積層させた後、室温下の0.5質量%のNaOHaq槽内に浸漬させ、次いで水洗・風乾して、目的とするワイヤグリッド偏光板を得た。ワイヤグリッド偏光板の大きさは、縦300mm、横180mmであった。
(60℃85%相対湿度条件下での耐湿熱性試験結果)
作製したワイヤグリッド偏光板を、各辺がそれぞれ透過軸と略平行及び略直交するような3cm角の正方形に切り抜き、60℃85%相対湿度条件下の恒温恒湿槽(ETAC FX406C 楠本化成製)に1000時間保持した後、20℃、55%相対湿度の環境下で平滑で水平な台の上に24時間静置した後のカール度を測定した。カール度は2.0mmであり、60℃85%相対湿度条件下で1000時間経過後であっても形状変化の非常に少ないワイヤグリッド偏光板を作製することができた。その結果を表1にまとめて記した。
さらに、60℃85%相対湿度条件下で1000時間保持した前後での偏光度、透過率の変動を測定した。波長550nmにおける透過率の変動が0.2%、偏光度の変動が0.02%となり、60℃85%相対湿度条件下で1000時間経過後であっても性能変化の非常に少ないワイヤグリッド偏光板を作製することができた。その結果を表1にまとめて記した。なお、表1中の光線透過率、偏光度は波長550nmの光に対する値である(以下光線透過率、偏光度も同様)。
(実施例2〜実施例5)
〈本発明の光硬化性樹脂の効果について〉
実施例1に示したワイヤグリッド偏光板の他に、樹脂基材がTAC樹脂で、樹脂皮膜Bの厚みが0.1μm(実施例2)と0.01μm(実施例3)のワイヤグリッド偏光板と、樹脂基材がCOP樹脂で、樹脂皮膜Bの厚みが0.1μm(実施例4)と3μm(実施例5)のワイヤグリッド偏光板を作製した。その他の工程は実施例1と同様とした。本発明の光硬化性樹脂は非常に粘度が低く、また、モールドからの離型性も良いため、ロールプロセス法で作製した場合であっても樹脂皮膜の厚みを薄く均一にすることができ、且つ、長時間の連続転写にも耐えうることが出来た。さらに、樹脂膜厚の厚みを高い精度で均一にすることができるため、格子状凸凹構造転写後のフィルムを蛍光灯の光で透かして目視検査をしても厚みムラによる透過光の歪みが生じていないことがわかった。その結果を表2にまとめて記す。実施例2のワイヤグリッド偏光板の断面のSEM画像を図2に、実施例3のワイヤグリッド偏光板の断面のSEM画像を図3に示す。
(85℃85%相対湿度条件下での耐湿熱性試験結果)
実施例5で作製したワイヤグリッド偏光板を、各辺がそれぞれ透過軸と略平行及び略直交するような3cm角の正方形に切り抜き、85℃85%相対湿度条件下の恒温恒湿槽(ETAC FX406C 楠本化成製)に1000時間保持した後、20℃、55%相対湿度の環境下で平滑で水平な台の上に24時間静置した後のカール度を測定した。カール度は0.71mmであり、85℃85%相対湿度条件下で1000時間経過後であっても形状変化の非常に少ないワイヤグリッド偏光板を作製することができた。その結果を表3にまとめて記した。
さらに、85℃85%相対湿度条件下で1000時間保持した前後での偏光度、透過率の変動を測定した。波長550nmにおける透過率の変動が0.5%以下、偏光度の変動が0.11%以下となり、85℃85%相対湿度条件下で1000時間経過後であっても性能変化の非常に少ないワイヤグリッド偏光板を作製することができた。その結果を表3にまとめて記した。
(比較例1)
樹脂皮膜Bに使用した光硬化性樹脂を組成物1からPAK−01(東洋合成製)に変更し、その他の工程を実施例1と同様にしてワイヤグリッド偏光板を作製した。粘度の高い光硬化性樹脂を用いロールプロセス法で作製した場合、樹脂皮膜の厚みを薄く作製することが難しく、また、モールドの剥離力が高いため、離型時にモールドに樹脂が付着してしまい、連続転写性に問題が生じてしまった。さらに、樹脂膜厚の厚みを均一にすることが困難なため、格子状凸凹構造転写後のフィルムを蛍光灯の光で透かして目視観察してみると、厚みムラによる透過光の歪みが生じていることがわかった。その結果を表2にまとめて記す。
(樹脂皮膜の厚みの差とカール度の差について)
樹脂皮膜の厚みが耐湿熱試験後のカール度に与える影響を調べるために、比較例1で使用したワイヤグリッド偏光板を60℃85%相対湿度条件下で1000時間経過させた後、各辺がそれぞれ透過軸と略平行及び略直交するような3cm角の正方形に切り抜き、60℃、85%相対湿度の環境下で1000時間保持した後に、20℃、55%相対湿度の環境下で平滑で水平な台の上に24時間静置した後の頂点と底面の高さの差を調べ、実施例1との結果と比較した。その結果を表4に示す。ただし、比較例1に関してはUV照射による格子状凸凹構造の転写直後から大きくカールしており、さらに60℃、85%相対湿度の環境下で750時間経過後に光硬化樹脂層にクラックが入ってしまったため正確な計測が出来なかった。
また、樹脂皮膜の厚みが耐湿熱試験後の透過率、偏光度に与える影響を調べるために比較例1で使用したワイヤグリッド偏光板を60℃85%相対湿度の環境下におき耐湿熱試験を行い実施例1の結果と比較した。しかし、比較例1のワイヤグリッド偏光板は樹脂皮膜の厚みが厚かったため、750時間経過後に光硬化樹脂層にクラックが入ってしまい正確な計測が出来なかった。その結果を表5に示す。
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態における部材の材質、配置、形状などは例示的なものであり、適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
A 樹脂基材
B 樹脂皮膜
C 金属ワイヤ
D 誘電体層
E 凸凹構造
F 混合層

Claims (5)

  1. ロールフィルムである樹脂基材上に、ロールプロセスによって樹脂皮膜を連続的に形成する工程と、前記樹脂皮膜上に金属ワイヤを形成して、高さが0.01μm〜0.30μmであり、少なくとも一方向のピッチが0.01μm〜0.15μmの範囲である規則的な凸凹構造を有し、厚さが0.01μm〜3μmである前記樹脂皮膜を表面に有し、3cm角の正方形に切り抜き、60℃、85%相対湿度の環境下で1000時間保持した後に、20℃、55%相対湿度の環境下で平滑で水平な台の上に24時間静置した後の頂点と底面の高さの差が5mm以下であるワイヤグリッド偏光板を得る工程と、を包含し、
    前記樹脂皮膜を形成する工程は、(a)1分子中に3以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を有する1種以上の単量体を20質量%〜60質量%の範囲で含有し、(b)光硬化反応によって結合して固形となる成分が98質量%以上であり、(c)25℃における粘度が10mPa・s以下の光硬化性樹脂を前記樹脂基材上に塗布する工程を含むことを特徴とするワイヤグリッド偏光板の製造方法。
  2. 前記ワイヤグリッド偏光板が、60℃、85%相対湿度の環境下で1000時間保持した前後における特性について、偏光度及び透過率の変動がそれぞれ5%以下であることを特徴とする請求項に記載のワイヤグリッド偏光板の製造方法。
  3. 前記光硬化樹脂、N−ビニル化合物である単量体を5質量%〜40質量%の範囲で含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイヤグリッド偏光板の製造方法。
  4. 前記光硬化性樹脂が、アクリル基及び/又はメタクリル基を含むシリコン化合物を0.1質量%〜10質量%含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のワイヤグリッド偏光板の製造方法。
  5. 前記樹脂基材が、PC樹脂、COP樹脂、及びTAC樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のワイヤグリッド偏光板の製造方法。
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