<第1実施形態>
図1を参照して、本発明の第1実施形態の水処理システム100の概略について説明する。図1は、本発明の第1実施形態の水処理システム100を示す概略構成図である。
図1に示すように、第1実施形態の水処理システム100は、冷却塔110を有しており、商業ビル、工業プラント等において、空調機や冷凍機に代表される熱交換機などの被冷却装置131を冷却するために、冷却水を循環させるシステムである。冷却水は、その節約を図る観点から、冷却塔110で冷却しながら循環して用いられる(循環する冷却水を以下「循環水W110」ともいう)。第1実施形態における冷却塔110は、いわゆる開放式冷却塔からなる。
第1実施形態の水処理システム100は、循環水W110の貯留部116を有する冷却塔110と、被冷却装置131と、冷却塔110と被冷却装置131との間で循環水W110を循環させる循環水ラインL110と、冷却塔110の貯留部116に補給水W120を補給する補給水ラインL120と、冷却塔110の貯留部116から循環水W110を水処理システム100の系外へ強制的に排出する排水ラインL130と、冷却塔110の貯留部116から溢れる循環水W110を排出するオーバーフローラインL140と、循環水W110の電気伝導率を測定する電気伝導率測定装置133と、循環水W110のカルシウム硬度を測定するカルシウム硬度測定装置134と、循環水W110のシリカ濃度を測定するシリカ濃度測定装置135と、水処理システム100の各部の制御を行うシステム制御装置101と、を主体として構成されている。
循環水ラインL110は、貯留部116に貯留された循環水W110を冷却塔110から被冷却装置131へ供給する循環水供給ラインL111と、循環水W110を被冷却装置131から冷却塔110の散水部112へ回収する循環水回収ラインL112と、を有する。
「ライン」とは、流路、経路、管路などの物体の流通が可能なラインの総称である。
第1実施形態における冷却塔110について説明する。冷却塔110は、被冷却装置131を冷却するための循環水W110を、被冷却装置131へ供給する前に、冷却するものである。冷却塔110は、塔本体111と、散水部112と、貯留部116と、ルーバ118と、ファン120と、上部開口部121と、ファン駆動部122と、を備える。
塔本体111は、冷却塔110の外郭を形成するものである。塔本体111の上部には、複数の散水部112、ファン120、上部開口部121及びファン駆動部122が設けられる。塔本体111の下部には、貯留部116が設けられる。塔本体111の側部には、ルーバ118が設けられる。
散水部112は、被冷却装置131を冷却する循環水W110を冷却するために、循環水W110を散布する部位である。散水部112は、循環水回収ラインL112を介して被冷却装置131から回収された循環水W110を、塔本体111の内部に散布(散水)する。
散水部112は、上部水槽113と、散水口114とを備える。上部水槽113には、循環水ラインL110の循環水回収ラインL112が接続されている。上部水槽113は、循環水回収ラインL112を介して被冷却装置131から回収された循環水W110を貯留する。散水口114は、上部水槽113に貯留された循環水W110を散布するために上部水槽113の下側に形成されたノズルからなる。
塔本体111の内部における散水部112の下方には、充填材(図示せず)が設けられる。充填材は、散水部112から散布された循環水W110を滴状にして、循環水W110と外気E1(後述)との接触面積及び接触時間を長くして、循環水W110を効率的に冷却するために設けられる。
貯留部116は、散水部112から散布された循環水W110を貯留する。貯留部116は、塔本体111の下部に設けられる。後述するように、貯留部116に貯留された循環水W110は、塔本体111の内部を落下する過程において冷却される。貯留部116の底部には、循環水ラインL110の循環水供給ラインL111及び排水ラインL130が接続されている。貯留部116に貯留された循環水W110は、循環水供給ラインL111を介して被冷却装置131へ供給される。また、貯留部116に貯留された循環水W110は、排水ラインL130を介して水処理システム100の系外へ排出される。
ルーバ118は、塔本体111の内部へ外気(エア)E1を導入するための通気孔であり、塔本体111の外部と内部とを連通する。ルーバ118を介して、塔本体111の外部のエア(外気)E1は、塔本体111の内部へ流入することができる。
上部開口部121は、塔本体111の上部に形成された開口部であり、塔本体111の内部に位置するエアE1を塔本体111の外部に排出するために設けられる。排出されたエアを「排気E2」ともいう。
ファン120は、上部開口部121に配置されている。ファン120の回転軸120aは、上下方向に延びるように配置されている。ファン120は、ルーバ118から塔本体111の内部へ外気(エア)E1を流入させると共に、塔本体111の内部に位置するエアE1を、上部開口部121を介して塔本体111の外部に排出させるように、気流を発生させる。
ファン駆動部122は、モータ等からなり、ファン120を回転駆動する。ファン駆動部122は、ファン120の上方に配置されており、ファン120の回転軸120aに連結されている。ファン駆動部122は、ファン120の回転駆動の開始又は停止、回転速度の調整(変速)などを行う。
冷却塔110には、循環水ラインL110及び排水ラインL130の他に、補給水ラインL120(原水補給水ラインL122、軟化水補給水ラインL123)及びオーバーフローラインL140が接続されている。これらの各ラインを介して、冷却塔110に対して、循環水W110が導入又は排出されると共に、補給水W120(原水補給水W121、軟化水補給水W122)が補給される。
循環水ラインL110は、冷却塔110と被冷却装置131との間で循環水W110を循環させるラインである。循環水ラインL110は、貯留部116に貯留された循環水W110を冷却塔110から被冷却装置131へ供給する循環水供給ラインL111と、循環水W110を被冷却装置131から冷却塔110の散水部112へ回収する循環水回収ラインL112と、を有する。循環水ラインL110は、循環水供給ラインL111及び循環水回収ラインL112を介して、冷却塔110と被冷却装置131との間で循環水W110を循環させる。
循環水供給ラインL111は、冷却塔110の貯留部116と被冷却装置131とを接続する。循環水供給ラインL111は、貯留部116に貯留された循環水W110を被冷却装置131に供給することができる。
循環水供給ラインL111の途中には、循環水ポンプ132が接続されている。循環水ポンプ132は、循環水ラインL110(循環水供給ラインL111、循環水回収ラインL112)の上流側から下流側へ向けて、循環水W110を送り出すことができる。
循環水回収ラインL112は、被冷却装置131と冷却塔110の散水部112とを接続する。循環水回収ラインL112は、被冷却装置131において熱交換により加温された循環水W110を、冷却塔110の散水部112へ回収することができる。循環水回収ラインL112の下流側は、回収分岐部J111において複数のラインに分岐している。循環水回収ラインL112において、回収分岐部J111よりも上流側のラインを「上流側循環水回収ラインL112a」ともいい、回収分岐部J111よりも下流側の複数のラインを「下流側循環水回収ラインL112b」ともいう。複数の下流側循環水回収ラインL112bの下流側の端部は、それぞれ複数の散水部112に接続されている。
被冷却装置131は、循環水W110による冷却が必要な熱交換機等の各種装置であり、例えば、各種の化学プラントのターボ冷凍機や吸収冷凍機、建築物の空調用冷却機、食品工場の冷水製造機や真空冷却機などである。被冷却装置131は、所要の循環水流路(図示せず)を有している。この循環水流路は、循環水導入部131aと循環水排出部131bとを有している。
そして、循環水導入部131aには、循環水供給ラインL111の下流側の端部が接続されている。循環水排出部131bには、循環水回収ラインL112の上流側の端部が接続されている。このように、循環水流路は、循環水供給ラインL111及び循環水回収ラインL112と共に、冷却塔110の塔本体111と被冷却装置131との間で循環水W110を循環させるための循環経路を形成している。
電気伝導率測定装置133は、循環水W110の電気伝導率を測定する装置である。電気伝導率測定装置133は、循環水ラインL110に接続されている。詳細には、循環水供給ラインL111における循環水ポンプ132と被冷却装置131との間には、測定接続部J112が設けられている。電気伝導率測定装置133は、測定ラインL113を介して、測定接続部J112において循環水供給ラインL111に接続されている。
ところで、循環水W110の濃縮度が高まると、腐食性イオン及びスケール発生因子の濃度が高くなる。これにより、循環水W110の電気伝導率が高くなる。そこで、水処理システム100においては、電気伝導率測定装置133により測定される電気伝導率が所定の閾値よりも高くなった場合には、循環水W110の濃縮度を低下させるため(電気伝導率を低下させるため)に、補給水W120を冷却塔110の貯留部116へ補給し、貯留部116に貯留される循環水W110を希釈する。このように、循環水W110の電気伝導率に基づいて、循環水W110の濃縮度を管理する。
カルシウム硬度測定装置134は、循環水W110のカルシウム硬度を測定する装置である。カルシウム硬度測定装置134により測定されるカルシウム硬度を「実測カルシウム硬度」ともいう。カルシウム硬度測定装置134は、循環水ラインL110に接続されている。詳細には、カルシウム硬度測定装置134は、測定ラインL113を介して、測定接続部J112において循環水供給ラインL111に接続されている。
シリカ濃度測定装置135は、循環水W110のシリカ濃度を測定する装置である。シリカ濃度測定装置135は、循環水ラインL110に接続されている。詳細には、シリカ濃度測定装置135は、測定ラインL113を介して、測定接続部J112において循環水供給ラインL111に接続されている。
カルシウム硬度測定装置134及びシリカ濃度測定装置135としては、例えば、色素を含む試薬を添加したときの発色により、硬度を検出する比色式センサが用いられる。比色式センサは、所定量の試料水を収容した透明容器へ試薬を添加し、色素の反応による試料水の色相変化を、特定波長の光を照射したときの吸光度から測定する。そして、比色式センサは、測定された吸光度に基づいて、試料水中の硬度を判定する。
なお、カルシウム硬度測定装置134及びシリカ濃度測定装置135は、比色式センサに制限されず、電極式センサ、滴定式センサなどでもよい。
補給水ラインL120は、補給水W120を冷却塔110の貯留部116へ補給するラインである。補給水ラインL120は、源流側補給水ラインL121と、補給水分岐部J121と、原水補給水ラインL122と、軟化水補給水ラインL123と、を備える。
補給水分岐部J121は、源流側補給水ラインL121から原水補給水ラインL122と軟化水補給水ラインL123とが分岐する部位である。
源流側補給水ラインL121の上流側は、水道水や工業用水等の原水からなる補給水W120の供給源(図示せず)に接続されている。源流側補給水ラインL121の下流側は、補給水分岐部J121に接続されている。源流側補給水ラインL121には、補給水W120の供給源から供給される補給水W120が流通する。
源流側補給水ラインL121には、上流側から順に、補給水ポンプ141及び補給水バルブ142が接続されている。補給水ポンプ141は、補給水ラインL120(源流側補給水ラインL121、原水補給水ラインL122、軟化水補給水ラインL123)の上流側から下流側へ向けて、補給水W120を送り出すことができる。補給水バルブ142は、補給水分岐部J121と補給水ポンプ141との間において、源流側補給水ラインL121を開閉することができる。
原水補給水ラインL122の上流側の端部は、補給水分岐部J121を介して、源流側補給水ラインL121に接続されている。原水補給水ラインL122には、源流側補給水ラインL121及び補給水分岐部J121を介して、補給水W120が導入され、流通する。なお、原水補給水ラインL122を流通する補給水W120は、源流側補給水ラインL121を流通する補給水W120と同じであるが、説明の便宜上、源流側補給水ラインL121を流通する補給水W120を「原水補給水W121」ともいう。
原水補給水ラインL122は、原水補給水W121を冷却塔110の貯留部116へ補給するラインである。原水補給水ラインL122の下流側の端部153は、冷却塔110の塔本体111に接続されており、貯留部116の上方に離間して位置する。
原水補給水ラインL122には、上流側から順に、補助原水補給水バルブ151及び原水補給水バルブ152が接続されている。
補助原水補給水バルブ151は、通常、開放しているが、原水補給水バルブ152のメンテナンス時などに閉鎖して用いられる。
原水補給水バルブ152は、制御弁から構成されている。原水補給水バルブ152は、原水補給水ラインL122の下流側の端部153と補給水分岐部J121(補助原水補給水バルブ151)との間において、原水補給水ラインL122を開閉することができる。本実施形態においては、補給水ポンプ141、原水補給水バルブ152等から「原水補給水ラインL122を介して原水補給水W121を貯留部116へ向けて流通させる原水補給水流通手段」が構成されている。
軟化水補給水ラインL123は、軟化水補給水W122を冷却塔110の貯留部116へ補給するラインである。軟化水補給水ラインL123には、上流側から順に、軟水化装置143及び軟化水補給水バルブ144が接続されている。
軟化水補給水ラインL123の上流側の端部は、補給水分岐部J121を介して、源流側補給水ラインL121に接続されている。軟化水補給水ラインL123の下流側の端部は、冷却塔110の塔本体111に接続されており、貯留部116の底部から離間して位置する。
軟化水補給水ラインL123の下流側の端部には、貯留部116に貯留される循環水W110の水位を管理するボールタップ式の給水栓145が設けられている。給水栓145は、貯留部116に貯留される循環水W110の水位が低下すると、ボールタップが作動し、軟化水補給水ラインL123を流通する軟化水補給水W122が貯留部116に補給されるように構成されている。
軟水化装置143は、原水(硬水)からなる補給水W120を軟水化し、軟化水補給水W122を生成する(得る)装置である。軟水化装置143は、補給水W120に含まれる硬度成分、具体的には、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを低減し(除去し)、原水からなる補給水W120から軟化水補給水W122を生成する装置である。
軟化水とは、原水(硬水)に軟水化処理を行うことにより得られる(生成される)、硬度が低減された水をいう。軟化水には、原水(硬水)に純水化処理を行うことにより得られる(生成される)純水も含まれる。つまり、軟化水には純水が含まれ、また、軟水化処理には純水化処理が含まれる。
軟化水は、硬度が10mg/L以下に低減されているものが好ましく、硬度が1mg/L以下に低減されているものが更に好ましい。
軟水化装置143は、軟水化処理を行うことができれば特に制限されない。軟水化装置143としては、イオン交換樹脂を利用して陽イオン交換を行い軟水化処理を行う陽イオン交換装置、イオン交換樹脂を利用して陽イオン交換及び陰イオン交換を行い軟水化処理を行うイオン交換装置、逆浸透膜(RO膜)を利用して濾過を行い軟水化処理を行う逆浸透膜装置、電気透析を利用して軟水化処理を行う電気透析装置(電気式脱イオン装置)などが挙げられる。
軟水化装置143には、原水(硬水)からなる補給水W120からシリカを実質的に低減(除去)するものと、原水(硬水)からなる補給水W120からシリカを実質的に低減(除去)しないものとがある。具体的には、イオン交換装置及び逆浸透膜装置は、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを低減(除去)すると共に、シリカを実質的に低減(除去)して、原水からなる補給水W120から軟化水補給水W122を生成する軟水化装置143である。また、陽イオン交換装置及び電気透析装置は、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを低減(除去)するが、シリカを実質的に低減(除去)せずに、原水からなる補給水W120から軟化水補給水W122を生成する軟水化装置143である。
軟化水補給水バルブ144は、制御弁から構成されている。軟化水補給水バルブ144は、軟化水補給水ラインL123の下流側の端部と軟水化装置143との間において、軟化水補給水ラインL123を開閉することができる。本実施形態においては、補給水ポンプ141、軟化水補給水バルブ144等から「軟化水補給水ラインL123を介して軟化水補給水W122を貯留部116へ向けて流通させる軟化水補給水流通手段」が構成されている。
排水ラインL130は、貯留部116の底部に接続されており、下方に向けて延びている。排水ラインL130は、貯留部116に貯留された循環水W110を、排水W130として水処理システム100の系外へ排出する。排水ラインL130の途中には、排水バルブ161が接続されている。排水ラインL130における排水バルブ161の下流側には、オーバーフローラインL140(後述)が、排水合流部J131を介して接続されている。排水バルブ161は、制御弁から構成されている。排水バルブ161は、貯留部116と排水合流部J131との間において、排水ラインL130を開閉することができる。
オーバーフローラインL140は、貯留部116から溢れる循環水W110を、排水W130として水処理システム100の系外へ排出するラインである。オーバーフローラインL140の上流側の端部162は、冷却塔110の貯留部116から上方に離間した位置に位置する。オーバーフローラインL140は、排水合流部J131において排水ラインL130と接続(合流)する。
貯留部116から溢れる循環水W110は、オーバーフローラインL140の上流側の端部162からオーバーフローラインL140へ流入する。オーバーフローラインL140へ流入した循環水W110は、排水合流部J131を介して排水ラインL130へ流入し、水処理システム100の系外へ排出される。
本実施形態においては、排水バルブ161から、「排水ラインL130を介して貯留部116に貯留された循環水W110を系外へ向けて流通させる排水流通手段」が構成されている。
次に、図2及び図3を参照して、第1実施形態の水処理システム100の制御に係る機能について説明する。図2は、第1実施形態の水処理システム100の制御に係る機能ブロック図である。図3は、メモリ103に記憶される硬度記憶テーブルの内容を示す図である。
システム制御装置101は、第1実施形態の水処理システム100における各部を制御する。図2に示すように、システム制御装置101は、例えば、補給水ポンプ141、軟化水補給水バルブ144、原水補給水バルブ152、排水バルブ161、ファン駆動部122に電気的に接続される。
また、システム制御装置101は、水処理システム100における各測定装置に電気的に接続され、各測定装置から測定情報を受信する。例えば、システム制御装置101は、電気伝導率測定装置133に電気的に接続され、電気伝導率測定装置133により測定された電気伝導率情報を受信する。また、システム制御装置101は、カルシウム硬度測定装置134に電気的に接続され、カルシウム硬度測定装置134により測定されたカルシウム硬度情報を受信する。また、システム制御装置101は、シリカ濃度測定装置135に電気的に接続され、シリカ濃度測定装置135により測定されたシリカ濃度情報を受信する。
また、システム制御装置101は、カルシウム硬度必要値設定手段及びスケール抑制カルシウム硬度値設定手段を備える。カルシウム硬度必要値設定手段は、シリカ濃度測定装置135により測定された循環水W110のシリカ濃度に基づいて、腐食抑制効果を得るために必要なカルシウム硬度であるカルシウム硬度必要値を設定する手段である。スケール抑制カルシウム硬度値設定手段は、シリカ濃度測定装置135により測定された循環水W110のシリカ濃度に基づいて、スケール抑制効果を得るためのカルシウム硬度の上限値であるスケール抑制カルシウム硬度値を設定する手段である。本実施形態においては、カルシウム硬度必要値設定手段及びスケール抑制カルシウム硬度値設定手段は、硬度記憶部187(後述)と、硬度抽出部182(後述)と、硬度設定部183(後述)とを有して構成される。
システム制御装置101は、制御部102と、メモリ103とを備える。制御部102は、濃縮度判定部181と、硬度抽出部182と、硬度設定部183と、硬度判定部184と、流量制御手段としての補給水制御部185と、を有する。
濃縮度判定部181は、電気伝導率測定装置133により測定される循環水W110の電気伝導率が所定の閾値以上であるか否かを判定する。所定の閾値は、例えば、スライムの発生の抑制を確保できる上限の電気伝導率が設定される。
硬度抽出部182は、メモリ103(後述)を参照して、シリカ濃度測定装置135により測定されたシリカ濃度に関連付けられたカルシウム硬度の情報を抽出する。
硬度設定部183は、硬度抽出部182により抽出されたカルシウム硬度の情報をカルシウム硬度必要値及びスケール抑制カルシウム硬度値として設定する。
硬度判定部184は、実測カルシウム硬度(カルシウム硬度測定装置134により測定されるカルシウム硬度)の情報及びカルシウム硬度必要値の情報に基づいて、実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値未満であるか又はカルシウム硬度必要値以上であるかについて判定する。
硬度判定部184は、実測カルシウム硬度(カルシウム硬度測定装置134により測定されるカルシウム硬度)の情報及びスケール抑制カルシウム硬度値の情報に基づいて、実測カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値以下であるか又はスケール抑制カルシウム硬度値よりも高いかについて判定する。
補給水制御部185は、濃縮度判定部181により循環水W110の電気伝導率が所定の閾値以上であると判定された場合に、補給水ポンプ141、軟化水補給水バルブ144、原水補給水バルブ152、排水バルブ161、ファン駆動部122等の制御を行う。補給水制御部185による制御により、補給水W120(原水補給水W121、軟化水補給水W122)は冷却塔110の貯留部116に補給される。
また、実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値設定手段(硬度記憶部187、硬度抽出部182、硬度設定部183)により設定されたカルシウム硬度必要値未満である場合に、補給水制御部185は、実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値よりも高くなるように、原水補給水流通手段(補給水ポンプ141、原水補給水バルブ152)による原水補給水W121の流量、及び/又は、軟化水補給水流通手段(補給水ポンプ141、軟化水補給水バルブ144)による軟化水補給水W122の流量を制御する。
例えば、補給水制御部185は、実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値未満である場合に、軟化水補給水W122の流通を停止するように前記軟化水補給水流通手段を制御すると共に、原水補給水W121の流通を開始するように前記原水補給水流通手段を制御する。
また、補給水制御部185は、実測カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値よりも高い場合に、原水補給水W121の流通を停止するように前記原水補給水流通手段を制御すると共に、軟化水補給水W122の流通を開始するように前記軟化水補給水流通手段を制御する。
スケールの発生を抑制して、循環水(又は散布水)の良好な水質を確保するためには、循環水(又は散布水)として軟化水を極力使用することが好ましい。一方、硬水は、配管系等の腐食抑制の観点から、必要量のみ補給すれば十分である。そのため、循環水W110のカルシウム硬度は、腐食抑制効果を得るために必要なカルシウム硬度であれば十分である。
また、カルシウム硬度必要値(配管系等の腐食抑制効果を得るために必要な循環水W110のカルシウム硬度)及びスケール抑制カルシウム硬度値(スケール抑制効果を得るためのカルシウム硬度の上限値)は、循環水W110のシリカ濃度と関連付けることができる。循環水W110のシリカ濃度は、カルシウム硬度必要値及びスケール抑制カルシウム硬度値を得るための重要な因子となる。
シリカにも、カルシウムと同様に、配管系等の腐食抑制効果がある。そのため、シリカによる腐食抑制効果を考慮すれば、実測カルシウム硬度をカルシウム硬度必要値以上とするために補充するカルシウムの量は、必要最小限に軽減することができる。
そこで、シリカ濃度測定装置135により測定された循環水W110のシリカ濃度に基づいて、循環水W110には、カルシウム硬度必要値(配管系等の腐食抑制効果を得るために必要な循環水W110のカルシウム硬度)及びスケール抑制カルシウム硬度値(スケール抑制効果を得るためのカルシウム硬度の上限値)が設定されている。
カルシウム硬度必要値は、例えば、配管系等の腐食抑制効果を得るために必要なカルシウム硬度の下限値として設定されている。スケール抑制カルシウム硬度値は、例えば、スケール抑制効果を得るためのカルシウム硬度の上限値として設定されている。
循環水W110の硬度は、カルシウム硬度必要値からスケール抑制カルシウム硬度値の間の所定の範囲内である場合に、腐食抑制効果を得るために必要な硬度を有していると共に、スケールの発生を抑制する必要な硬度を有していることが好ましい。カルシウム硬度必要値(下限値)は、腐食抑制効果を得るために必要な循環水W110の必要な硬度を得るための下限の閾値である。スケール抑制カルシウム硬度値(上限値)は、カルシウム硬度必要値よりも高く設定され、腐食抑制効果を得るために必要な硬度を得ると共に、スケールの発生を抑制する上限の閾値である。硬水は必要量のみ補給すれば十分であるため、循環水W110のカルシウム硬度必要値(下限値)は、スケール抑制カルシウム硬度値(上限値)に近い値に設定されることが好ましい。
補給水制御部185は、実測カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値(上限値)よりも高い場合には、循環水W110は、腐食抑制効果を得るために必要な硬度を有していると認められるため、補給水制御部185は、前記原水補給水流通手段を制御することにより原水補給水W121の補給を停止し、前記軟化水補給水流通手段を制御することにより軟化水補給水W122の補給を開始又は継続する。
一方、補給水制御部185は、実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値(下限値)未満である場合には、循環水W110は、腐食抑制効果を得るために必要な硬度を有していないと認められるため、補給水制御部185は、前記軟化水補給水流通手段を制御することにより軟化水補給水W122の補給を停止し、前記原水補給水流通手段を制御することにより原水補給水W121の補給を開始又は継続する。
また、循環水W110の実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値からスケール抑制カルシウム硬度値の間の所定の範囲内である場合には、循環水W110は腐食抑制効果を得るために必要な硬度を有していると共に、スケールの発生の抑制効果を得るために必要な硬度を有していると認められるため、補給水制御部185は、前記原水補給水流通手段を制御することにより原水補給水W121の補給を停止又は維持し、及び前記軟化水補給水流通手段を制御することにより軟化水補給水W122の補給を停止又は維持する。
メモリ103は、所定のパラメータや各種テーブル等を記憶する。具体的には、メモリ103は、各種機能を動作させるアプリケーションプログラムや、各種データを記憶する。メモリ103は、硬度記憶部187を有する。硬度記憶部187は、循環水W110のシリカ濃度の情報と関連付けてカルシウム硬度の情報を記憶する。例えば、硬度記憶部187には、循環水W110のシリカ濃度が高くなる程、循環水W110のカルシウム硬度必要値が低くなる傾向があることが記憶されている。
また、図2及び図3に示すように、硬度記憶部187は、循環水W110のシリカ濃度が高くなる程カルシウム硬度必要値が低くなるという傾向を実現するため、硬度記憶テーブル187aを有する。硬度記憶テーブル187aは、循環水W110のシリカ濃度とカルシウム硬度必要値とが関連付けられた対応関係を示すテーブルである。例えば、硬度記憶テーブル187aには、シリカ濃度測定装置135により測定されたシリカ濃度に対応した具体的なカルシウム硬度必要値の情報が記憶されている。具体的には、硬度記憶テーブル187aには、シリカ濃度における複数の所定範囲それぞれに対応した一定のカルシウム硬度必要値が記憶されている。また、カルシウム硬度必要値は、シリカ濃度が高くなる場合に、シリカ濃度に対応して低くなる傾向がある。
次に、図1及び図2を参照して、第1実施形態の水処理システム100の動作について説明する。
循環水ポンプ132が作動することにより、冷却塔110の貯留部116に貯留される循環水W110は、循環水ラインL110(循環水供給ラインL111、循環水回収ラインL112)の上流側から下流側へ向けて送り出される。
詳細には、循環水W110は、循環水供給ラインL111を介して、被冷却装置131に供給される。循環水W110は、被冷却装置131の循環水導入部131aから前記循環水流路を通過して被冷却装置131を冷却し、循環水排出部131bから循環水回収ラインL112へ排出される。
循環水回収ラインL112へ排出された循環水W110は、散水部112の上部水槽113へ導入される。上部水槽113へ導入された循環水W110は、散水口114から塔本体111の内部へ散布される。散布された循環水W110は、図1に点線で示すように、塔本体111の内部を落下して、貯留部116に受け止められる。このようにして、貯留部116に貯留される循環水W110は、循環水ラインL110、散水部112等を介して循環する。
また、冷却塔110において、システム制御装置101によりファン駆動部122を作動させ、ファン120を回転させる。これにより、ルーバ118を通じて塔本体111の内部へ外気(エア)E1が流入する。エアE1は、塔本体111の内部を通過し、排気E2として上部開口部121から塔本体111の外部へ排出される。
塔本体111の内部を落下する循環水W110は、塔本体111の内部へ流入する外気E1に触れて冷却される。このように冷却されて貯留部116へ戻る(落下する)循環水W110は、循環水供給ラインL111を介して再び被冷却装置131へ供給され、循環水回収ラインL112を介して冷却塔110の散水部112へ戻る。従って、貯留部116に貯留された循環水W110は、循環水供給ラインL111、被冷却装置131の循環水流路及び循環水回収ラインL112を循環して、被冷却装置131を冷却する冷却水として機能する。
また、循環水W110の濃縮が進んでいる場合には、循環水W110の濃縮を解消し、スライム、藻類などの発生を抑制するために、冷却塔110の貯留部116へ補給水W120(原水補給水W121、軟化水補給水W122)の補給を行う。
具体的には、第1実施形態の水処理システム100においては、電気伝導率測定装置133により測定された電気伝導率に基づいて、濃縮度判定部181により循環水W110が濃縮していると判定された場合には、補給水制御部185は、補給水ポンプ141、軟化水補給水バルブ144、原水補給水バルブ152などを制御して、補給水ラインL120を介して、冷却塔110の貯留部116へ補給水W120(軟化水補給水W122又は原水補給水W121)の補給を開始する。また、補給水制御部185は、補給水W120の補給とほぼ同時に、排水バルブ161を制御して、貯留部116に貯留される循環水W110を、排水ラインL130を介して水処理システム100の系外へ排出する。
原水補給水W121は、軟水化処理がされておらず、スケール発生因子である硬度成分を含んでいるため、循環水W110として極力用いない方が好ましい。そこで、通常の補給時には、軟化水補給水W122を貯留部116へ補給する。一方、硬度成分を含む原水補給水W121には、腐食抑制効果があるため、腐食抑制効果を確保できる程度に、原水補給水W121を貯留部116へ補給する必要がある。
詳述すると、実測カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値よりも高い場合には、補給水制御部185は、カルシウム硬度成分を補充する必要がないため、スケールの発生抑制効果を重視して、軟化水補給水W122の補給を行う。ここでは、補助原水補給水バルブ151が常時開放しているものとして説明する。
具体的には、補給水バルブ142を開放し且つ原水補給水バルブ152を閉鎖した状態で、補給水制御部185は、補給水ポンプ141を作動させると共に、軟化水補給水バルブ144を開放する。これにより、源流側補給水ラインL121、補給水分岐部J121及び軟化水補給水ラインL123を介して、原水からなる補給水W120を軟水化装置143へ供給する。その結果、補給水W120は、軟水化装置143において硬度成分が除去されて、軟化水からなる軟化水補給水W122となる。この軟化水補給水W122は、軟水化装置143から、軟化水補給水ラインL123及び軟化水補給水バルブ144を介して、冷却塔110の貯留部116へ補給され、貯留される。なお、軟化水補給水W122は、軟水化装置143の軟水化手段の方式によっては、補給水W120からシリカが実質的に除去されずに硬度成分が除去される場合がある。
補給水制御部185は、貯留部116への軟化水補給水W122の補給とほぼ同時に、排水バルブ161を開放し、貯留部116に貯留される循環水W110を、排水ラインL130を介して水処理システム100の系外へ排出する。
その後、電気伝導率測定装置133により測定された電気伝導率に基づいて、濃縮度判定部181により循環水W110が濃縮していないと判定された場合には、補給水制御部185は、補給水ポンプ141、軟化水補給水バルブ144、原水補給水バルブ152などを制御して、補給水ラインL120を介して、冷却塔110の貯留部116へ補給水W120(軟化水補給水W122及び原水補給水W121)の補給を停止する。また、補給水W120の補給の停止とほぼ同時に、補給水制御部185は、排水バルブ161を閉鎖し、貯留部116からの循環水W110(原水補給水W121、軟化水補給水W122を含む)の水処理システム100の系外への排出を停止する。それらの結果、貯留部116における循環水W110の濃縮度が低下する。
ところで、軟化水補給水W122の補給を繰り返すと、循環水W110の蒸発による濃縮を考慮したとしても、循環水W110の硬度は、低下し、やがて必要硬度以下となる。この場合、腐食抑制効果が十分に得られないので、循環水W110に硬度成分を補給し、循環水W110の硬度を高める必要がある。
詳述すると、補給水制御部185は、軟化水補給水バルブ144を閉鎖すると共に、原水補給水バルブ152を開放する。これにより、貯留部116には、軟化水補給水W122に代わり、原水補給水W121が補給されることになる。
具体的には、補給水バルブ142を開放し且つ軟化水補給水バルブ144を閉鎖した状態で、補給水制御部185は、補給水ポンプ141を作動させると共に、原水補給水バルブ152を開放する。これにより、源流側補給水ラインL121、補給水分岐部J121及び原水補給水ラインL122を介して、原水からなる補給水W120は、原水補給水W121として冷却塔110の貯留部116へ補給され、貯留される。
補給水制御部185は、貯留部116への原水補給水W121の補給とほぼ同時に、排水バルブ161を開放し、貯留部116に貯留される循環水W110を、排水ラインL130を介して水処理システム100の系外へ排出する。
その後、電気伝導率測定装置133により測定された電気伝導率に基づいて、濃縮度判定部181により循環水W110が濃縮していないと判定された場合には、補給水制御部185は、補給水ポンプ141、軟化水補給水バルブ144、原水補給水バルブ152などを制御して、補給水ラインL120を介して、冷却塔110の貯留部116へ補給水W120(軟化水補給水W122及び原水補給水W121)の補給を停止する。また、補給水W120の補給の停止とほぼ同時に、補給水制御部185は、排水バルブ161を閉鎖し、貯留部116からの循環水W110(原水補給水W121、軟化水補給水W122を含む)の水処理システム100の系外への排出を停止する。これらの結果、貯留部116における循環水W110の硬度がカルシウム硬度必要値以上に高まり、延いては、循環水ラインL110を流通する循環水W110の硬度がカルシウム硬度必要値以上に高まる。
貯留部116に貯留された軟化水補給水W122及び原水補給水W121は、貯留部116に貯留されていた循環水W110と合わさり、被冷却装置131を冷却するための循環水W110として、被冷却装置131へ供給される。
このように、実測カルシウム硬度の情報、カルシウム硬度必要値及びスケール抑制カルシウム硬度値の情報に基づいて、補給水W120(軟化水補給水W122、原水補給水W121)の補給(流通)の制御を行うことにより、腐食抑制効果を得るのに必要な循環水W110の硬度を確保しつつ、スケールの発生の抑制も図ることができる。
次に、第1実施形態の水処理システム100の動作の第1実施例について、図4を参照しながら説明する。図4は、第1実施形態の水処理システム100の動作を示すフローチャートである。
第1実施例では、電気伝導率測定装置133により測定された電気伝導率に基づいて、濃縮度判定部181により循環水W110が濃縮していると判定された場合に、補給水制御部185が、補給水ポンプ141、軟化水補給水バルブ144、原水補給水バルブ152などを制御して、補給水ラインL120を介して、冷却塔110の貯留部116へ補給水W120(軟化水補給水W122又は原水補給水W121)の補給を開始した後のフローについて説明する。
図4に示すように、ステップST101において、シリカ濃度測定装置135は、循環水W110のシリカ濃度を測定する。シリカ濃度測定装置135により測定されたシリカ濃度の情報は、システム制御装置101の制御部102の硬度抽出部182に入力される。
ステップST102において、硬度抽出部182は、メモリ103の硬度記憶部187の硬度記憶テーブル187aを参照して、シリカ濃度測定装置135により測定されたシリカ濃度に関連付けられたカルシウム硬度の情報を抽出する。硬度抽出部182により抽出されたカルシウム硬度の情報は、システム制御装置101の制御部102の硬度設定部183に入力される。
ステップST103において、硬度設定部183は、硬度抽出部182により抽出されたカルシウム硬度の情報をカルシウム硬度必要値(下限値)として設定する。同様に、硬度設定部183は、硬度抽出部182により抽出されたカルシウム硬度の情報をスケール抑制カルシウム硬度値(上限値)として設定する。硬度設定部183により設定されたカルシウム硬度必要値の情報及びスケール抑制カルシウム硬度値の情報は、システム制御装置101の制御部102の硬度判定部184に入力される。
ステップST104において、カルシウム硬度測定装置134は、循環水W110のカルシウム硬度を測定する。実測カルシウム硬度(カルシウム硬度測定装置134により測定されたカルシウム硬度)の情報は、システム制御装置101の制御部102の硬度判定部184に入力される。
ステップST105において、硬度判定部184は、実測カルシウム硬度の情報及び入力されたカルシウム硬度必要値の情報に基づいて、実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値未満であるか又はカルシウム硬度必要値以上であるかついて判定する。実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値未満である(YES)場合には、ステップST106へ進む。実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値以上である(NO)場合には、ステップST107へ進む。
実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値未満である(YES)場合には、循環水W110のカルシウム硬度は、腐食抑制効果を得るための十分な高さを有していない。そのため、ステップST106において、カルシウム硬度を高め、腐食の抑制を図る必要があり、(硬度成分を多く含む)原水補給水W121の補給を行う。詳細には、補給水制御部185は、軟化水補給水W122の補給が行われている場合には、軟化水補給水W122の流通を停止するように軟化水補給水バルブ144等を制御する。また、補給水制御部185は、原水補給水W121の流通を開始するように原水補給水バルブ152等を制御する。これにより、原水補給水W121が冷却塔110の貯留部116へ供給され、貯留部116に貯留される循環水W110のカルシウム硬度が高まる。
ステップST106の後、カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値未満になる場合があるため、ステップST101へ戻り、カルシウム硬度測定装置134は、循環水W110のカルシウム硬度を再度測定する。
実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値よりも高い(NO)の場合には、循環水W110のカルシウム硬度は、腐食抑制効果を得るための十分な高さを有している。そのため、循環水W110のカルシウム硬度を高める必要はなく、スケールの発生の抑制を重視して、硬度判定部184は、ステップST107において、入力された実測カルシウム硬度の情報に基づいて、循環水W110のカルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値よりも高いか又はスケール抑制カルシウム硬度値以下であるかについて判定する。
ステップST107において、硬度判定部184は、入力された実測カルシウム硬度の情報に基づいて、循環水W110の実測カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値よりも高いか又はスケール抑制カルシウム硬度値以下であるかについて判定する。カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値よりも高い(YES)場合には、ステップST108へ進む。実測カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値以下である(NO)場合には、ステップST109へ進む。
実測カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値よりも高い(YES)場合には、循環水W110のカルシウム硬度は、スケールの発生を抑制できない高さを有している。そのため、ステップST108において、スケールの発生の抑制を重視して、軟化水補給水W122の補給を行う。詳細には、補給水制御部185は、原水補給水W121の補給が行われている場合には、原水補給水W121の流通を停止するように原水補給水バルブ152等を制御する。また、補給水制御部185は、軟化水補給水W122の流通を開始するように軟化水補給水バルブ144等を制御する。これにより、軟化水補給水W122が冷却塔110の貯留部116へ供給される。軟化水補給水W122は、硬度成分をほとんど含んでいないため、貯留部116に貯留される循環水W110のカルシウム硬度は低くなる。
ステップST108の後、カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値未満になる場合や、カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値よりも高くなる場合があるため、ステップST101へ戻り、カルシウム硬度測定装置134は、循環水W110のカルシウム硬度を再度測定する。
実測カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値以下である(NO)場合には、循環水W110のカルシウム硬度は、カルシウム硬度必要値からスケール抑制カルシウム硬度値の間の所定の範囲内であるため、腐食抑制効果を得るために必要な硬度を有すると共に、スケールの発生を抑制する必要な硬度を有している。ここで、循環水W110のカルシウム硬度は、必要な硬度を有しているが、冷却塔110の貯留部116へ補給水W120(軟化水補給水W122又は原水補給水W121)の補給により、循環水W110が濃縮している可能性がある。そのため、電気伝導率測定装置133により測定された電気伝導率に基づいて、濃縮度判定部181は、循環水W110が濃縮しているか否かについて判定する必要がある。
ステップST109において、電気伝導率測定装置133は、循環水W110の電気伝導率を測定する。電気伝導率測定装置133により測定された循環水W110の電気伝導率の情報は、システム制御装置101の制御部102の濃縮度判定部181に入力される。
ステップST110において、濃縮度判定部181は、入力された電気伝導率の情報に基づいて、循環水W110の電気伝導率が所定の閾値未満であるか否かを判定する。電気伝導率が所定の閾値未満(YES)である場合には、補給水W120(軟化水補給水W122及び原水補給水W121)の補給を停止する。電気伝導率が所定の閾値以上(NO)である場合には、ステップST101へ戻る。
詳細には、電気伝導率が所定の閾値未満(YES)である場合には、循環水W110が濃縮しておらず、且つ腐食抑制効果を得るために必要な硬度を有すると共に、スケールの発生を抑制する必要な硬度を有しているため、補給水W120(軟化水補給水W122及び原水補給水W121)の補給を停止する。
一方、電気伝導率が所定の閾値より高い(NO)場合には、循環水W110が濃縮しているため、補給水W120(軟化水補給水W122又は原水補給水W121)の補給を継続する。ステップST110の後、ステップST101において、カルシウム硬度測定装置134は、循環水W110のカルシウム硬度を再度測定する。
第1実施形態の水処理システム100によれば、例えば、次のような効果が奏される。
第1実施形態の水処理システム100は、循環水W110のシリカ濃度を測定するシリカ濃度測定装置135と、循環水W110のカルシウム硬度を測定するカルシウム硬度測定装置134と、シリカ濃度測定装置135により測定された循環水W110のシリカ濃度に基づいて、腐食抑制効果を得るために必要なカルシウム硬度であるカルシウム硬度必要値を設定するカルシウム硬度必要値設定手段と、カルシウム硬度測定装置134により測定されるカルシウム硬度である実測カルシウム硬度が、カルシウム硬度必要値設定手段により設定されたカルシウム硬度必要値未満である場合に、実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値以上となるように、原水補給水W121の流量及び/又は軟化水補給水W122の流量を制御する補給水制御部185と、を備える。
そのため、例えば前述の第1実施例のように、通常の補給時には、軟化水補給水W122を貯留部116へ補給する一方で、循環水W110のシリカ濃度に基づいて、腐食抑制効果を確保できる程度に原水補給水W121を貯留部116へ補給することができる。従って、循環水W110について、スライム、スケール等の発生の抑制及び配管系等の腐食の抑制を一層確実に行うことができる。
また、第1実施形態のカルシウム硬度必要値設定手段は、循環水W110のシリカ濃度と関連付けてカルシウム硬度を記憶する硬度記憶部187と、硬度記憶部187を参照してシリカ濃度測定装置135により測定されたシリカ濃度に関連付けられたカルシウム硬度を抽出する硬度抽出部182と、硬度抽出部182により抽出されたカルシウム硬度をカルシウム硬度必要値として設定する硬度設定部183とを有する。
そのため、簡易な構成で、カルシウム硬度必要値を設定することができる。従って、循環水W110について、スライム、スケール等の発生の抑制及び配管系等の腐食の抑制を、簡易な構成で、一層確実に行うことができる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態については、主として、第1実施形態とは異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第2実施形態において特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用又は援用される。
<第2実施形態>
図5を参照して、第2実施形態の水処理システム100Aの制御に係る機能について説明する。図5は、第2実施形態の水処理システム100Aの制御に係る機能ブロック図である。
第2実施形態の水処理システム100Aは、第1実施形態の水処理システム100に比して、システム制御装置101Aの構成が主として異なる。具体的には、第2実施形態のシステム制御装置101Aは、第1実施形態のシステム制御装置101に比して、硬度記憶部187を有さない点、硬度抽出部182を有さない点及び硬度算出部186を有する点が主として異なる。
第2実施形態のシステム制御装置101Aは、カルシウム硬度必要値設定手段及びスケール抑制カルシウム硬度値設定手段を備える。カルシウム硬度必要値設定手段は、シリカ濃度測定装置135により測定された循環水W110のシリカ濃度に基づいて、腐食抑制効果を得るために必要なカルシウム硬度であるカルシウム硬度必要値を設定する手段である。スケール抑制カルシウム硬度値設定手段は、シリカ濃度測定装置135により測定された循環水W110のシリカ濃度に基づいて、スケール抑制効果を得るためのカルシウム硬度の上限値であるスケール抑制カルシウム硬度値を設定する手段である。本実施形態においては、カルシウム硬度必要値設定手段及びスケール抑制カルシウム硬度値設定手段は硬度算出部186(後述)と、硬度設定部183(後述)とを有して構成される。
システム制御装置101Aは、制御部102と、メモリ103とを備える。制御部102は、濃縮度判定部181と、硬度算出部186と、硬度設定部183と、硬度判定部184と、流量制御手段としての補給水制御部185と、を有する。
濃縮度判定部181は、電気伝導率測定装置133により測定される循環水W110の電気伝導率が所定の閾値以上であるか否かを判定する。所定の閾値は、例えば、スライムの発生の抑制を確保できる上限の電気伝導率が設定される。
硬度算出部186は、メモリ103(後述)に記憶された算出プログラムにより、循環水W110のシリカ濃度に対応するカルシウム硬度を算出する。
硬度設定部183は、硬度算出部186により算出されたカルシウム硬度の情報をカルシウム硬度必要値及びスケール抑制カルシウム硬度値として設定する。
第2実施形態における硬度判定部184及び補給水制御部185の構成及び動作は、第1実施形態における硬度判定部184及び補給水制御部185の構成及び動作と同様である。そのため、第1実施形態における硬度判定部184及び補給水制御部185の構成及び動作についての説明を援用して、第2実施形態における硬度判定部184及び補給水制御部185の構成及び動作についての説明を省略する。
メモリ103は、所定のパラメータや各種テーブル等を記憶する。具体的には、メモリ103は、各種機能を動作させるアプリケーションプログラムや、各種データを記憶する。本実施形態においては、メモリ103には、硬度算出部186によりカルシウム硬度を算出するための算出プログラムが記憶されている。
第2実施形態における水処理システム100Aの動作は、第1実施形態における水処理システム100の動作と同様である。そのため、第1実施形態における水処理システム100の動作についての説明を援用して、第2実施形態における水処理システム100Aの動作についての説明を省略する。
次に、第2実施形態の水処理システム100Aの動作の第2実施例について、図6を参照しながら説明する。図6は、第2実施形態の水処理システム100Aの動作を示すフローチャートである。
第1実施例では、ステップST102(制御フロー、図4参照)において、硬度抽出部182は、メモリ103の硬度記憶部187の硬度記憶テーブル187aを参照して、シリカ濃度測定装置135により測定されたシリカ濃度に関連付けられたカルシウム硬度の情報を抽出するのに対して、第2実施例では、図6に示すように、ステップST202において、硬度算出部186がシリカ濃度に対応するカルシウム硬度を算出する点において主として異なる。この点を勘案した上で、第2実施例については、主として、第1実施例とは異なる点を中心に説明し、第1実施例と同様の動作については、制御フローのうちのステップに同じ番号(ただし、3桁の数字のうち百の位を「1」から「2」に代えている)を付し、詳細な説明を省略する。第2実施例において特に説明しない点は、第1実施例についての説明が適宜適用又は援用される。
具体的には、第1実施例におけるステップST102、ST103(制御フロー、図4参照)の動作は、図6に示すように、第2実施例におけるステップST202、ST203(制御フロー、図6参照)の動作と異なる。
ステップST202において、硬度算出部186は、シリカ濃度測定装置135により測定された循環水W110のシリカ濃度に基づいて、メモリ103(後述)に記憶された算出プログラムにより、循環水W110のシリカ濃度に対応するカルシウム硬度を算出する。硬度算出部186により算出されたカルシウム硬度の情報は、システム制御装置101Aの制御部102の硬度設定部183に入力される。
ステップST203において、硬度設定部183は、硬度算出部186により算出されたカルシウム硬度の情報をカルシウム硬度必要値及びスケール抑制カルシウム硬度値として設定する。硬度設定部183により設定されたカルシウム硬度必要値及びスケール抑制カルシウム硬度値の情報は、システム制御装置101Aの制御部102の硬度判定部184に入力される。
第2実施例におけるステップST204からST210の動作は、第1実施例におけるステップST104からST110(制御フロー、図4参照)の動作と同様であるため、第1実施例についての説明を援用して、第2実施例におけるステップST204からST210の動作についての説明を省略する。
第2実施形態の水処理システム100Aによれば、例えば、次のような効果が奏される。
第2実施形態のカルシウム硬度必要値設定手段は、循環水W110のシリカ濃度に対応するカルシウム硬度を算出する硬度算出部186と、硬度算出部186により算出されたカルシウム硬度をカルシウム硬度必要値として設定する硬度設定部183とを有する。
そのため、第1実施形態のように硬度記憶部187を有さず、簡易な構成で、カルシウム硬度必要値を設定することができる。従って、循環水W110について、スライム、スケール等の発生の抑制及び配管系等の腐食の抑制を、簡易な構成で、一層確実に行うことができる。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態については、主として、第1実施形態とは異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号(ただし、3桁の数字のうち百の位を「1」から「2」に代えている)を付し、詳細な説明を省略する。他の実施形態において特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用又は援用される。
<第3実施形態>
図7を参照して、本発明の第3実施形態の水処理システム200の概略について説明する。図7は、本発明の第3実施形態の水処理システム200を示す概略構成図である。
第3実施形態の水処理システム200は、第1実施形態の水処理システム100に比して、冷却塔210が密閉式冷却塔からなる点が主として異なる。密閉式冷却塔は、開放式冷却塔に比して、冷却塔210に、被冷却装置231を冷却する循環液W210が密閉状態で流通する冷却塔内部ラインL250と、冷却塔内部ラインL250に位置する循環液W210を冷却するために散布水W240を冷却塔内部ラインL250の外側へ散布する散水部212と、散布された散布水W240を貯留する貯留部216とが設けられている点、及び、冷却塔210に、散水部212から散布され貯留部216に貯留された散布水W240を循環させる散布水ラインL260が接続されている点が、主として異なる。
図7に示すように、第3実施形態の水処理システム200は、冷却塔210を有しており、被冷却装置231を冷却するために、冷却液を循環させるシステムである。冷却液は、その節約を図る観点から、冷却塔210で冷却しながら循環して用いられる(循環する冷却液を以下「循環液W210」ともいう)。第3実施形態における冷却塔210は、いわゆる密閉式冷却塔からなる。
第3実施形態の水処理システム200は、散布水W240の貯留部216を有する冷却塔210と、被冷却装置231と、冷却塔210と被冷却装置231との間で循環液W210を循環させる循環液ラインL210と、散布水W240を循環させる散布水ラインL260と、冷却塔210の貯留部216に補給水W220を補給する補給水ラインL220と、冷却塔210の貯留部216から散布水W240を水処理システム200の系外へ強制的に排出する排水ラインL230と、冷却塔210の貯留部216から溢れる散布水W240を排出するオーバーフローラインL240と、散布水W240の電気伝導率を測定する電気伝導率測定装置233と、散布水W240のカルシウム硬度を測定するカルシウム硬度測定装置234と、散布水W240のシリカ濃度を測定するシリカ濃度測定装置235と、水処理システム200の各部の制御を行うシステム制御装置201と、を主体として構成されている。
冷却塔210は、循環液W210が密閉状態で流通する冷却塔内部ラインL250と、冷却塔内部ラインL250に位置する循環液W210を冷却するために散布水W240を冷却塔内部ラインL250の外側へ散布する散水部212と、散布された散布水W240を貯留する貯留部216とを有する。
循環液ラインL210は、冷却塔内部ラインL250に位置する循環液W210を冷却塔210から被冷却装置231へ供給する循環液供給ラインL211と、循環液W210を被冷却装置231から冷却塔210の冷却塔内部ラインL250へ回収する循環液回収ラインL212と、を有する。循環液ラインL210は、循環液供給ラインL211、循環液回収ラインL212及び冷却塔内部ラインL250を介して、冷却塔210と被冷却装置231との間で循環液W210を循環させる。
散布水ラインL260は、貯留部216に接続されると共に散水部212に接続されている。散布水ラインL260は、散水部212から散布され貯留部216に貯留された散布水W240を、冷却塔110の外部において循環させる。
「ライン」とは、流路、経路、管路などの物体の流通が可能なラインの総称である。
第3実施形態における冷却塔210について説明する。冷却塔210は、被冷却装置231を冷却するための循環液W210を、被冷却装置231へ供給する前に、冷却するものである。循環液W210は、一般的には、水(水溶液)であるが、水以外の液体でもよい。
冷却塔210は、塔本体211と、冷却塔内部ラインL250と、散水部212と、貯留部216と、ルーバ218と、ファン220と、上部開口部221と、ファン駆動部222と、を備える。
塔本体211は、冷却塔210の外郭を形成するものである。塔本体211の上部には、複数の散水部212、ファン220、上部開口部221及びファン駆動部222が設けられる。塔本体211の内部には、冷却塔内部ラインL250が設けられる。塔本体211の下部には、貯留部216が設けられる。塔本体211の側部には、ルーバ218が設けられる。
散水部212は、被冷却装置231を冷却する循環液W210を冷却するために、散布水W240を、循環液W210が位置する(流通する)冷却塔内部ラインL250の外側に散布する部位である。散水部212は、散布水ラインL260を介して循環する散布水W240を、塔本体211の内部において冷却塔内部ラインL250の外側へ散布(散水)する。
散水部212は、上部水槽213と、散水口214とを備える。上部水槽213には、散布水ラインL260が接続されている。上部水槽213は、散布水ラインL260を介して循環する散布水W240を貯留する。散水口214は、上部水槽213に貯留された散布水W240を散布するために上部水槽213の下側に形成されたノズルからなる。
冷却塔内部ラインL250は、塔本体211の内部において、循環液W210が密閉状態で流通するラインである。冷却塔内部ラインL250は、塔本体211の内部において散布水W240との接触面積を確保するために蛇行している。詳細には、冷却塔内部ラインL250は、塔内部分岐部J251において、第1内部ラインL250aと第2内部ラインL250bとに分岐する。第1内部ラインL250aと第2内部ラインL250bとは、塔内部合流部J252において合流する。第1内部ラインL250a及び第2内部ラインL250bは蛇行している。第1内部ラインL250a及び第2内部ラインL250bは、それぞれ散水部212の下方に配置している。
冷却塔内部ラインL250の下流側の端部は、循環液供給ラインL211に接続されている。冷却塔内部ラインL250の上流側の端部は、循環液回収ラインL212に接続されている。
塔本体211の内部における散水部212の下方には、充填材(図示せず)が設けられる。充填材は、散水部212から散布された散布水W240を滴状にして、散布水W240と外気E1(後述)との接触面積及び接触時間を長くして、冷却塔内部ラインL250及びその内部の循環液W210を効率的に冷却するために設けられる。
貯留部216は、散水部212から散布された散布水W240を貯留する。貯留部216は、塔本体211の下部に設けられる。後述するように、貯留部216に貯留された散布水W240は、塔本体211の内部を落下する過程において冷却される。貯留部216の底部には、散布水ラインL260及び排水ラインL230が接続されている。貯留部216に貯留された散布水W240は、散布水ラインL260を介して塔本体211の外部において循環する。貯留部216に貯留された散布水W240は、排水ラインL230を介して水処理システム200の系外へ排出される。
ルーバ218は、塔本体211の内部へ外気(エア)E1を導入するための通気孔であり、塔本体211の外部と内部とを連通する。ルーバ218を介して、塔本体211の外部のエア(外気)E1は、塔本体211の内部へ流入することができる。
上部開口部221は、塔本体211の上部に形成された開口部であり、塔本体211の内部に位置するエアE1を塔本体211の外部に排出するために設けられる。排出されたエアを「排気E2」ともいう。
ファン220は、上部開口部221に配置されている。ファン220の回転軸220aは、上下方向に延びるように配置されている。ファン220は、ルーバ218から塔本体211の内部へ外気(エア)E1を流入させると共に、塔本体211の内部に位置するエアE1を、上部開口部221を介して塔本体211の外部に排出させるように、気流を発生させる。
ファン駆動部222は、モータ等からなり、ファン220を回転駆動する。ファン駆動部222は、ファン220の上方に配置されており、ファン220の回転軸220aに連結されている。ファン駆動部222は、ファン220の回転駆動の開始又は停止、回転速度の調整(変速)などを行う。
冷却塔210には、循環液ラインL210、散布水ラインL260及び排水ラインL230の他に、補給水ラインL220(原水補給水ラインL222、軟化水補給水ラインL223)及びオーバーフローラインL240が接続されている。これらの各ラインを介して、冷却塔210に対して、散布水W240が導入又は排出されると共に、補給水W220(原水補給水W221、軟化水補給水W222)が補給される。
被冷却装置231は、所要の循環液流路(図示せず)を有している。この循環液流路は、循環液導入部231aと循環液排出部231bとを有している。そして、循環液導入部231aには、循環液供給ラインL211の下流側の端部が接続されている。循環液排出部231bには、循環液回収ラインL212の上流側の端部が接続されている。このように、循環液流路は、循環液供給ラインL211、循環液回収ラインL212及び冷却塔内部ラインL250と共に、冷却塔210の塔本体211と被冷却装置231との間で循環液W210を循環させるための循環経路を形成している。
循環液供給ラインL211は、冷却塔210の冷却塔内部ラインL250と被冷却装置231とを接続する。循環液供給ラインL211は、冷却塔内部ラインL250に位置する循環液W210を被冷却装置231に供給することができる。
循環液供給ラインL211の途中には、循環液ポンプ232が接続されている。循環液ポンプ232は、循環液ラインL210(循環液供給ラインL211、循環液回収ラインL212)の上流側から下流側へ向けて、循環液W210を送り出すことができる。
循環液回収ラインL212は、被冷却装置231と冷却塔210の冷却塔内部ラインL250とを接続する。循環液回収ラインL212は、被冷却装置231において熱交換により加温された循環液W210を、冷却塔210の冷却塔内部ラインL250へ回収することができる。
散布水ラインL260は、貯留部216に貯留された散布水W240を冷却塔210から散布水ポンプ239へ供給する散布水供給ラインL261と、散布水W240を散布水ポンプ239から冷却塔210の散水部212へ回収する散布水回収ラインL262と、を有する。散布水ラインL260は、散布水供給ラインL261及び散布水回収ラインL262を介して、冷却塔210の外部において散布水W240を循環させる。
散布水回収ラインL262の下流側は、散布水分岐部J241において複数のラインに分岐している。散布水ラインL260において、散布水分岐部J241よりも上流側のラインを「上流側散布水回収ラインL262a」ともいい、散布水分岐部J241よりも下流側の複数のラインを「下流側散布水回収ラインL262b」ともいう。複数の下流側散布水回収ラインL262bの下流側の端部は、それぞれ複数の散水部212に接続されている。
散布水ポンプ239は、散布水ラインL260の途中(散布水供給ラインL261と散布水回収ラインL262との間)に接続されている。散布水ポンプ239は、散布水ラインL260(散布水供給ラインL261、散布水回収ラインL262)の上流側から下流側へ向けて、散布水W240を送り出すことができる。
電気伝導率測定装置233は、散布水W240の電気伝導率を測定する装置である。電気伝導率測定装置233は、散布水ラインL260に接続されている。詳細には、散布水供給ラインL261には、測定接続部J242が設けられている。電気伝導率測定装置233は、測定ラインL263を介して、測定接続部J242において散布水供給ラインL261に接続されている。
散布水W240の濃縮度が高まると、腐食性イオン及びスケール発生因子の濃度が高くなる。これにより、散布水W240の電気伝導率が高くなる。そこで、水処理システム200においては、電気伝導率測定装置233により測定される電気伝導率が所定の閾値よりも高くなった場合には、散布水W240の濃縮度を低下させるため(電気伝導率を低下させるため)に、補給水W220を冷却塔210の貯留部216へ補給し、貯留部116に貯留される散布水W240を希釈する。このようにして、散布水W240の電気伝導率に基づいて、散布水W240の濃縮度を管理する。
カルシウム硬度測定装置234は、散布水W240のカルシウム硬度を測定する装置である。カルシウム硬度測定装置234により測定されるカルシウム硬度を「実測カルシウム硬度」ともいう。カルシウム硬度測定装置234は、散布水ラインL260に接続されている。詳細には、カルシウム硬度測定装置234は、測定ラインL263を介して、測定接続部J242において散布水供給ラインL261に接続されている。
シリカ濃度測定装置235は、散布水W240のシリカ濃度を測定する装置である。シリカ濃度測定装置235は、散布水ラインL260に接続されている。詳細には、シリカ濃度測定装置235は、測定ラインL263を介して、測定接続部J242において散布水供給ラインL261に接続されている。
第3実施形態における補給水ラインL220に関する構成は、第1実施形態における補給水ラインL120に関する構成(図1参照)と同様である。そのため、第1実施形態における補給水ラインL120に関する構成についての説明を援用して、第3実施形態における補給水ラインL220に関する構成についての説明を省略する。
排水ラインL230は、貯留部216の底部に接続されており、下方に向けて延びている。排水ラインL230は、貯留部216に貯留された散布水W240を、排水W230として水処理システム200の系外へ排出する。排水ラインL230の途中には、排水バルブ261が接続されている。排水ラインL230における排水バルブ261の下流側には、オーバーフローラインL240(後述)が、排水合流部J231を介して接続されている。排水バルブ261は、制御弁から構成されている。排水バルブ261は、貯留部216と排水合流部J231との間において、排水ラインL230を開閉することができる。
オーバーフローラインL240は、貯留部216から溢れる散布水W240を、排水W230として水処理システム200の系外へ排出するラインである。オーバーフローラインL240の上流側の端部262は、冷却塔210の貯留部216から上方に離間した位置に位置する。オーバーフローラインL240は、排水合流部J231において排水ラインL230と接続(合流)する。
貯留部216から溢れる散布水W240は、オーバーフローラインL240の上流側の端部262からオーバーフローラインL240へ流入する。オーバーフローラインL240へ流入した散布水W240は、排水合流部J231を介して排水ラインL230へ流入し、水処理システム200の系外へ排出される。
本実施形態においては、排水バルブ261から、「排水ラインL230を介して貯留部216に貯留された散布水W240を系外へ向けて流通させる排水流通手段」が構成されている。
次に、図8を参照して、第3実施形態の水処理システム200の制御に係る機能について説明する。図8は、第3実施形態の水処理システム200の制御に係る機能ブロック図である。
システム制御装置201は、第3実施形態の水処理システム200における各部を制御する。図8に示すように、システム制御装置201は、例えば、補給水ポンプ241、軟化水補給水バルブ244、原水補給水バルブ252、排水バルブ261、ファン駆動部222に電気的に接続される。
また、システム制御装置201は、水処理システム200における各測定装置に電気的に接続され、各測定装置から測定情報を受信する。例えば、システム制御装置201は、電気伝導率測定装置233に電気的に接続され、電気伝導率測定装置233により測定された電気伝導率情報を受信する。また、システム制御装置201は、カルシウム硬度測定装置234に電気的に接続され、カルシウム硬度測定装置234により測定されたカルシウム硬度情報を受信する。また、システム制御装置201は、シリカ濃度測定装置235に電気的に接続され、シリカ濃度測定装置235により測定されたシリカ濃度情報を受信する。
また、システム制御装置201は、カルシウム硬度必要値設定手段及びスケール抑制カルシウム硬度値設定手段を備える。カルシウム硬度必要値設定手段は、シリカ濃度測定装置235により測定された散布水W240のシリカ濃度に基づいて、腐食抑制効果を得るために必要なカルシウム硬度であるカルシウム硬度必要値を設定する手段である。スケール抑制カルシウム硬度値設定手段は、シリカ濃度測定装置235により測定された散布水W240のシリカ濃度に基づいて、スケール抑制効果を得るためのカルシウム硬度の上限値であるスケール抑制カルシウム硬度値を設定する手段である。本実施形態においては、カルシウム硬度必要値設定手段及びスケール抑制カルシウム硬度値設定手段は、硬度記憶部287(後述)と、硬度抽出部282(後述)と、硬度設定部283(後述)とを有して構成される。
システム制御装置201は、制御部202と、メモリ203とを備える。制御部202は、濃縮度判定部281と、硬度抽出部282と、硬度設定部283と、硬度判定部284と、流量制御手段としての補給水制御部285と、を有する。
第3実施形態におけるシステム制御装置201の構成及び動作は、第1実施形態におけるシステム制御装置101の構成及び動作と同様である。ただし、第1実施形態では、循環水W110の電気伝導率及び硬度に基づいて補給水W120の補給(流通)の制御を行うのに対して、第3実施形態では、散布水W240の電気伝導率及び硬度に基づいて補給水W220の補給(流通)制御を行う点が、両実施形態で異なる。この点を勘案した上で、第1実施形態におけるシステム制御装置101の構成及び動作についての説明を援用し、第3実施形態におけるシステム制御装置201の構成及び動作についての説明を省略する。
次に、図7及び図8を参照して、第3実施形態の水処理システム200の動作について説明する。
詳細には、循環液ポンプ232が作動することにより、冷却塔210の冷却塔内部ラインL250に位置する循環液W210は、循環液ラインL210(循環液供給ラインL211、循環液回収ラインL212)の上流側から下流側へ向けて送り出される。
詳細には、循環液W210は、循環液供給ラインL211を介して、被冷却装置231に供給される。循環液W210は、被冷却装置231の循環液導入部231aから前記循環液流路を通過して被冷却装置231を冷却し、循環液排出部231bから循環液回収ラインL212へ排出される。循環液回収ラインL212へ排出された循環液W210は、冷却塔110の冷却塔内部ラインL250へ導入される。このようにして、循環液W210は、循環液ラインL210、冷却塔内部ラインL250等を介して循環する。
また、散布水ポンプ239が作動することにより、冷却塔210の貯留部216に貯留される散布水W240は、散布水ラインL260(散布水供給ラインL261、散布水回収ラインL262)の上流側から下流側へ向けて送り出される。
散布水ラインL260へ送り出された散布水W240は、散水部212の上部水槽213へ導入される。上部水槽213へ導入された散布水W240は、散水口214から塔本体211の内部において冷却塔内部ラインL250の外側へ散布される。散布された散布水W240は、図7に点線で示すように、塔本体211の内部を落下して、貯留部216に受け止められる。このようにして、貯留部216に貯留される散布水W240は、散布水ラインL260、散水部212等を介して循環する。
また、冷却塔210において、システム制御装置201によりファン駆動部222を作動させ、ファン220を回転させる。これにより、ルーバ218を通じて塔本体211の内部へ外気(エア)E1が流入する。エアE1は、塔本体211の内部を通過し、排気E2として上部開口部221から塔本体211の外部へ排出される。
塔本体211の内部を落下する散布水W240は、塔本体211の内部へ流入する外気E1に触れて冷却される。このように冷却されて貯留部216へ戻る(落下する)散布水W240は、散布水ラインL260を介して再び冷却塔210の散水部212へ戻る。従って、貯留部216に貯留された散布水W240は、散布水ラインL260を循環して、冷却塔内部ラインL250及びその内部の循環液W210を冷却する冷却水として機能する。
第3実施形態における補給水W220(原水補給水W221、軟化水補給水W222)の補給(流通)の制御に係る構成及び動作は、第1実施形態における補給水W120(原水補給水W121、軟化水補給水W122)の補給(流通)の制御に係る構成(図2参照)及び動作(制御フロー、図3参照)と同様である。ただし、第1実施形態では、循環水W110の電気伝導率及び硬度に基づいて補給水W120の補給(流通)の制御を行うのに対して、第3実施形態では、散布水W240の電気伝導率及び硬度に基づいて補給水W220の補給(流通)の制御を行う点が、両実施形態で異なる。この点を勘案した上で、第1実施形態における補給水W120の補給(流通)の制御に係る構成及び動作についての説明を援用し、第3実施形態における補給水W220の補給(流通)の制御に係る構成及び動作についての説明を省略する。
次に、第3実施形態の水処理システム200の動作の第3実施例について、図9を参照しながら説明する。図9は、第3実施形態の水処理システム200の動作を示すフローチャートである。
第3実施例では、電気伝導率測定装置233により測定された電気伝導率に基づいて、濃縮度判定部281により散布水W240が濃縮していると判定された場合に、補給水制御部285が、補給水ポンプ241、軟化水補給水バルブ244、原水補給水バルブ252などを制御して、補給水ラインL220を介して、冷却塔210の貯留部216へ補給水W220(軟化水補給水W222又は原水補給水W221)の補給を開始した後のフローについて説明する。
図9に示すように、ステップST301において、シリカ濃度測定装置235は、散布水W240のシリカ濃度を測定する。シリカ濃度測定装置235により測定されたシリカ濃度の情報は、システム制御装置201の制御部202の硬度抽出部282に入力される。
ステップST302において、硬度抽出部282は、メモリ203の硬度記憶部287の硬度記憶テーブル287aを参照して、シリカ濃度測定装置235により測定されたシリカ濃度に関連付けられたカルシウム硬度の情報を抽出する。硬度抽出部282により抽出されたカルシウム硬度の情報は、システム制御装置201の制御部202の硬度設定部283に入力される。
ステップST303において、硬度設定部283は、硬度抽出部282により抽出されたカルシウム硬度の情報をカルシウム硬度必要値(下限値)として設定する。同様に、硬度設定部283は、硬度抽出部282により抽出されたカルシウム硬度の情報をスケール抑制カルシウム硬度値(上限値)として設定する。硬度設定部283により設定されたカルシウム硬度必要値の情報及びスケール抑制カルシウム硬度値の情報は、システム制御装置201の制御部202の硬度判定部284に入力される。
ステップST304において、カルシウム硬度測定装置234は、散布水W240のカルシウム硬度を測定する。実測カルシウム硬度(カルシウム硬度測定装置234により測定されたカルシウム硬度)の情報は、システム制御装置201の制御部202の硬度判定部284に入力される。
ステップST305において、硬度判定部284は、実測カルシウム硬度の情報及び入力されたカルシウム硬度必要値の情報に基づいて、実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値未満であるか又はカルシウム硬度必要値以上であるかについて判定する。実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値未満である(YES)場合には、ステップST306へ進む。実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値以上である(NO)場合には、ステップST307へ進む。
実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値未満である(YES)場合には、散布水W240のカルシウム硬度は、腐食抑制効果を得るための十分な高さを有していない。そのため、ステップST306において、カルシウム硬度を高め、腐食の抑制を図る必要があり、(硬度成分を多く含む)原水補給水W221の補給を行う。詳細には、補給水制御部285は、軟化水補給水W222の補給が行われている場合には、軟化水補給水W222の流通を停止するように軟化水補給水バルブ244等を制御する。また、補給水制御部285は、原水補給水W221の流通を開始するように原水補給水バルブ252等を制御する。これにより、原水補給水W221が冷却塔210の貯留部216へ供給され、貯留部216に貯留される散布水W240のカルシウム硬度が高まる。
ステップST306の後、カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値未満になる場合があるため、ステップST301へ戻り、カルシウム硬度測定装置234は、散布水W240のカルシウム硬度を再度測定する。
実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値よりも高い(NO)の場合には、散布水W240のカルシウム硬度は、腐食抑制効果を得るための十分な高さを有している。そのため、散布水W240のカルシウム硬度を高める必要はなく、スケールの発生の抑制を重視して、硬度判定部284は、ステップST307において、入力された実測カルシウム硬度の情報に基づいて、散布水W240のカルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値よりも高いか又はスケール抑制カルシウム硬度値以下であるかについて判定する。
ステップST307において、硬度判定部284は、入力された実測カルシウム硬度の情報に基づいて、散布水W240の実測カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値よりも高いか又はスケール抑制カルシウム硬度値以下であるかについて判定する。カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値よりも高い(YES)場合には、ステップST308へ進む。実測カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値以下である(NO)場合には、ステップST309へ進む。
実測カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値よりも高い(YES)場合には、散布水W240のカルシウム硬度は、スケールの発生を抑制できない高さを有している。そのため、ステップST308において、スケールの発生の抑制を重視して、軟化水補給水W222の補給を行う。詳細には、補給水制御部285は、原水補給水W221の補給が行われている場合には、原水補給水W221の流通を停止するように原水補給水バルブ252等を制御する。また、補給水制御部285は、軟化水補給水W222の流通を開始するように軟化水補給水バルブ244等を制御する。これにより、軟化水補給水W222が冷却塔210の貯留部216へ供給される。軟化水補給水W222は、硬度成分をほとんど含んでいないため、貯留部216に貯留される散布水W240のカルシウム硬度は低くなる。
ステップST308の後、カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値未満になる場合や、カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値よりも高くなる場合があるため、ステップST301へ戻り、硬度測定装置234は、散布水W240のカルシウム硬度を再度測定する。
実測カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値以下である(NO)場合には、散布水W240のカルシウム硬度は、カルシウム硬度必要値からスケール抑制カルシウム硬度値の間の所定の範囲内であるため、腐食抑制効果を得るために必要な硬度を有すると共に、スケールの発生を抑制する必要な硬度を有している。ここで、散布水W240のカルシウム硬度は、必要な硬度を有しているが、冷却塔210の貯留部216へ補給水W220(軟化水補給水W222又は原水補給水W221)の補給により、散布水W240が濃縮している可能性がある。そのため、電気伝導率測定装置233により測定された電気伝導率に基づいて、濃縮度判定部281は、散布水W240が濃縮しているか否かについて判定する必要がある。
ステップST309において、電気伝導率測定装置233は、散布水W240の電気伝導率を測定する。電気伝導率測定装置233により測定された散布水W240の電気伝導率の情報は、システム制御装置201の制御部202の濃縮度判定部281に入力される。
ステップST310において、濃縮度判定部281は、入力された電気伝導率の情報に基づいて、散布水W240の電気伝導率が所定の閾値未満であるか否かを判定する。電気伝導率が所定の閾値未満(YES)である場合には、補給水W220(軟化水補給水W222及び原水補給水W221)の補給を停止する。電気伝導率が所定の閾値以上(NO)である場合には、ステップST301へ戻る。
詳細には、電気伝導率が所定の閾値未満(YES)である場合には、散布水W240が濃縮しておらず、且つ腐食抑制効果を得るために必要な硬度を有すると共に、スケールの発生を抑制する必要な硬度を有しているため、補給水W220(軟化水補給水W222及び原水補給水W221)の補給を停止する。
一方、電気伝導率が所定の閾値より高い(NO)場合には、循環水W110が濃縮しているため、補給水W220(軟化水補給水W222又は原水補給水W221)の補給を継続する。ステップST310の後、ステップST301において、カルシウム硬度測定装置234は、散布水W240のカルシウム硬度を再度測定する。
第3実施形態の水処理システム200によれば、例えば、次のような効果が奏される。
第3実施形態の水処理システム200は、散布水W240のシリカ濃度を測定するシリカ濃度測定装置235と、散布水W240のカルシウム硬度を測定するカルシウム硬度測定装置234と、シリカ濃度測定装置235により測定された散布水W240のシリカ濃度に基づいて、腐食抑制効果を得るために必要なカルシウム硬度であるカルシウム硬度必要値を設定するカルシウム硬度必要値設定手段と、カルシウム硬度測定装置234により測定されるカルシウム硬度である実測カルシウム硬度が、カルシウム硬度必要値設定手段により設定されたカルシウム硬度必要値未満である場合に、実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値以上となるように、原水補給水W221の流量及び/又は軟化水補給水W222の流量を制御する補給水制御部285と、を備える。
そのため、例えば前述の第3実施例のように、通常の補給時には、軟化水補給水W222を貯留部216へ補給する一方で、散布水W240のシリカ濃度に基づいて、腐食抑制効果を確保できる程度に原水補給水W221を貯留部216へ補給することができる。従って、散布水W240について、スライム、スケール等の発生の抑制及び配管系等の腐食の抑制を一層確実に行うことができる。
また、第3実施形態のカルシウム硬度必要値設定手段は、散布水W240のシリカ濃度と関連付けてカルシウム硬度を記憶する硬度記憶部287と、硬度記憶部287を参照してシリカ濃度測定装置235により測定されたシリカ濃度に関連付けられたカルシウム硬度を抽出する硬度抽出部282と、硬度抽出部282により抽出されたカルシウム硬度をカルシウム硬度必要値として設定する硬度設定部283とを有する。
そのため、簡易な構成で、カルシウム硬度必要値を設定することができる。従って、散布水W240について、スライム、スケール等の発生の抑制及び配管系等の腐食の抑制を、簡易な構成で、一層確実に行うことができる。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態については、主として、第3実施形態とは異なる点を中心に説明し、第3実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第4実施形態において特に説明しない点は、第3実施形態についての説明が適宜適用又は援用される。
<第4実施形態>
図10を参照して、第4実施形態の水処理システム200Aの制御に係る機能について説明する。図10は、第4実施形態の水処理システム200Aの制御に係る機能ブロック図である。
第4実施形態の水処理システム200Aは、第3実施形態の水処理システム200に比して、システム制御装置201Aの構成が主として異なる。具体的には、第4実施形態のシステム制御装置201Aは、第3実施形態のシステム制御装置201に比して、硬度記憶部287を有さない点、硬度抽出部282を有さない点及び硬度算出部286を有する点が主として異なる。
第4実施形態のシステム制御装置201Aは、カルシウム硬度必要値設定手段及びスケール抑制カルシウム硬度値設定手段を備える。カルシウム硬度必要値設定手段は、シリカ濃度測定装置235により測定された散布水240のシリカ濃度に基づいて、腐食抑制効果を得るために必要なカルシウム硬度であるカルシウム硬度必要値を設定する手段である。スケール抑制カルシウム硬度値設定手段は、シリカ濃度測定装置235により測定された散布水W240のシリカ濃度に基づいて、スケール抑制効果を得るためのカルシウム硬度の上限値であるスケール抑制カルシウム硬度値を設定する手段である。本実施形態においては、カルシウム硬度必要値設定手段及びスケール抑制カルシウム硬度値設定手段は、硬度算出部286(後述)と、硬度設定部283(後述)とを有して構成される。
システム制御装置201Aは、制御部202と、メモリ203とを備える。制御部202は、濃縮度判定部281と、硬度算出部286と、硬度設定部283と、硬度判定部284と、流量制御手段としての補給水制御部285と、を有する。
濃縮度判定部281は、電気伝導率測定装置233により測定される散布水W240の電気伝導率が所定の閾値以上であるか否かを判定する。所定の閾値は、例えば、スライムの発生の抑制を確保できる上限の電気伝導率が設定される。
硬度算出部286は、メモリ203(後述)に記憶された算出プログラムにより、散布水W240のシリカ濃度に対応するカルシウム硬度を算出する。
硬度設定部283は、硬度算出部286により算出されたカルシウム硬度の情報をカルシウム硬度必要値及びスケール抑制カルシウム硬度値設定手段として設定する。
第4実施形態における硬度判定部284及び補給水制御部285の構成及び動作は、第3実施形態における硬度判定部284及び補給水制御部285の構成及び動作と同様である。そのため、第3実施形態における硬度判定部284及び補給水制御部285の構成及び動作についての説明を援用して、第4実施形態における硬度判定部284及び補給水制御部285の構成及び動作についての説明を省略する。
メモリ203は、所定のパラメータや各種テーブル等を記憶する。具体的には、メモリ203は、各種機能を動作させるアプリケーションプログラムや、各種データを記憶する。本実施形態においては、メモリ203には、硬度算出部286によりカルシウム硬度を算出するための算出プログラムが記憶されている。
第4実施形態における水処理システム200Aの動作は、第3実施形態における水処理システム200の動作と同様である。そのため、第3実施形態における水処理システム200の動作についての説明を援用して、第4実施形態における水処理システム200Aの動作についての説明を省略する。
次に、第4実施形態の水処理システム200Aの動作の第4実施例について、図11を参照しながら説明する。図11は、第4実施形態の水処理システム200Aの動作を示すフローチャートである。
第3実施例では、ステップST302(制御フロー、図9参照)において、硬度抽出部282は、メモリ203の硬度記憶部287の硬度記憶テーブル287aを参照して、シリカ濃度測定装置235により測定されたシリカ濃度に関連付けられたカルシウム硬度の情報を抽出するのに対して、第4実施例では、図11に示すように、ステップST402において、硬度算出部286がシリカ濃度に対応するカルシウム硬度を算出する点において主として異なる。この点を勘案した上で、第4実施例については、主として、第3実施例とは異なる点を中心に説明し、第3実施例と同様の動作については、制御フローのうちのステップに同じ番号(ただし、3桁の数字のうち百の位を「3」から「4」に代えている)を付し、詳細な説明を省略する。第4実施例において特に説明しない点は、第3実施例についての説明が適宜適用又は援用される。
具体的には、第3実施例におけるステップST302、ST303(制御フロー、図9参照)の動作は、図11に示すように、第4実施例におけるステップST402、ST403の動作と異なる。
ステップST402において、硬度算出部286は、シリカ濃度測定装置235により測定された散布水W240のシリカ濃度に基づいて、メモリ203(後述)に記憶された算出プログラムにより、散布水W240のシリカ濃度に対応するカルシウム硬度を算出する。硬度算出部286により算出されたカルシウム硬度の情報は、システム制御装置201Aの制御部202の硬度設定部283に入力される。
ステップST403において、硬度設定部283は、硬度算出部286により算出されたカルシウム硬度の情報をカルシウム硬度必要値及びスケール抑制カルシウム硬度値して設定する。硬度設定部283により設定されたカルシウム硬度必要値及びスケール抑制カルシウム硬度値の情報は、システム制御装置201Aの制御部202の硬度判定部284に入力される。
第4実施例におけるステップST404からST410の動作は、第3実施例におけるステップST304からST310(制御フロー、図9参照)の動作と同様であるため、第3実施例についての説明を援用して、第4実施例におけるステップST404からST410の動作についての説明を省略する。
第4実施形態の水処理システム200Aによれば、例えば、次のような効果が奏される。
第2実施形態のカルシウム硬度必要値設定手段は、散布水W240のシリカ濃度に対応するカルシウム硬度を算出する硬度算出部286と、硬度算出部286により算出されたカルシウム硬度をカルシウム硬度必要値として設定する硬度設定部283とを有する。
そのため、第3実施形態のように硬度記憶部287を有さず、簡易な構成で、カルシウム硬度必要値を設定することができる。従って、散布水W240について、スライム、スケール等の発生の抑制及び配管系等の腐食の抑制を、簡易な構成で、一層確実に行うことができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、開放式冷却塔を含む第1実施形態においては、カルシウム硬度測定装置134は、循環水ラインL110に接続され、循環水ラインL110を流通する循環水W110の硬度を測定しているが、これに制限されない。例えば、カルシウム硬度測定装置134は、冷却塔110の貯留部116に接続され、貯留部116に貯留される循環水W110のカルシウム硬度を測定してもよい。また、カルシウム硬度測定装置134は、冷却塔110の散水部112に接続され、散水部112に位置する循環水W110のカルシウム硬度を測定してもよい。
また、開放式冷却塔を含む第1実施形態においては、シリカ濃度測定装置135は、循環水ラインL110に接続され、循環水ラインL110を流通する循環水W110のシリカ濃度を測定しているが、これに制限されない。例えば、シリカ濃度測定装置135は、冷却塔110の貯留部116に接続され、貯留部116に貯留される循環水W110のシリカ濃度を測定してもよい。また、シリカ濃度測定装置135は、冷却塔110の散水部112に接続され、散水部112に位置する循環水W110のシリカ濃度を測定してもよい。
また、密閉式冷却塔を含む第3実施形態においては、カルシウム硬度測定装置234は、散布水ラインL260に接続され、散布水ラインL260を流通する散布水W240の硬度を測定しているが、これに制限されない。例えば、カルシウム硬度測定装置234は、冷却塔210の貯留部216に接続され、貯留部216に貯留する散布水W240のカルシウム硬度を測定してもよい。また、カルシウム硬度測定装置234は、冷却塔210の散水部212に接続され、散水部212に位置する散布水W240のカルシウム硬度を測定してもよい。
また、密閉式冷却塔を含む第3実施形態においては、シリカ濃度測定装置235は、散布水ラインL260に接続され、散布水ラインL260を流通する散布水W240のシリカ濃度を測定しているが、これに制限されない。例えば、シリカ濃度測定装置235は、冷却塔210の貯留部216に接続され、貯留部216に貯留する散布水W240のシリカ濃度を測定してもよい。また、シリカ濃度測定装置235は、冷却塔210の散水部212に接続され、散水部212に位置する散布水W240のシリカ濃度を測定してもよい。
第1実施形態では、原水補給水W121と軟化水補給水W122とはそれぞれ独立して、冷却塔110の貯留部116に補給されているが、これに制限されない。例えば、原水補給水W121及び軟化水補給水W122は、冷却塔110の外部で合流した状態で、冷却塔110の貯留部116に補給されてもよい。第2実施形態、第3実施形態及び第4実施形態においても同様である。
開放式冷却塔を含む第1実施形態においては、原水補給水ラインL122は、原水補給水W121を貯留部116へ補給し、軟化水補給水ラインL123は、軟化水補給水W122を貯留部116へ補給しているが、これに制限されない。例えば、原水補給水ラインL122は、原水補給水W121を散水部112、貯留部116及び循環水ラインL110のうちのいずれか1つ以上へ補給してもよい。また、軟化水補給水ラインL123は、軟化水補給水W122を散水部112、貯留部116及び循環水ラインL110のうちのいずれか1つ以上へ補給してもよい。
図12から図17を参照して、第1実施形態における原水補給水W121及び軟化水補給水W122の補給位置に関する変形例について具体的に説明する。図12は、第1実施形態における原水補給水W121及び軟化水補給水W122の補給位置に関する第1変形例を示す図である。図13は、第1実施形態における原水補給水W121及び軟化水補給水W122の補給位置に関する第2変形例を示す図である。図14は、第1実施形態における原水補給水W121及び軟化水補給水W122の補給位置に関する第3変形例を示す図である。図15は、第1実施形態における原水補給水W121及び軟化水補給水W122の補給位置に関する第4変形例を示す図である。図16は、第1実施形態における原水補給水W121及び軟化水補給水W122の補給位置に関する第5変形例を示す図である。図17は、第1実施形態における原水補給水W121及び軟化水補給水W122の補給位置に関する第6変形例を示す図である。図12から図17においては、システム制御装置101及びシステム制御装置101に関連する制御線を省略している。
図12に示す第1変形例のように、原水補給水ラインL122は、原水補給水W121を貯留部116へ補給し、軟化水補給水ラインL123は、軟化水補給水W122を散水部112へ補給してもよい。また、図13に示す第2変形例のように、原水補給水ラインL122は、原水補給水W121を散水部112へ補給し、軟化水補給水ラインL123は、軟化水補給水W122を貯留部116へ補給してもよい。
また、図14に示す第3変形例のように、原水補給水ラインL122は、原水補給水W121を散水部112へ補給し、軟化水補給水ラインL123は、軟化水補給水W122を散水部112へ補給してもよい。また、図15に示す第4変形例のように、原水補給水ラインL122は、原水補給水W121を循環水ラインL110へ補給し、軟化水補給水ラインL123は、軟化水補給水W122を循環水ラインL110へ補給してもよい。
また、図16に示す第5変形例のように、原水補給水ラインL122は、原水補給水W121を循環水ラインL110へ補給し、軟化水補給水ラインL123は、軟化水補給水W122を貯留部116へ補給してもよい。また、図17に示す第6変形例のように、原水補給水ラインL122は、原水補給水W121を貯留部116へ補給し、軟化水補給水ラインL123は、軟化水補給水W122を循環水ラインL110へ補給してもよい。
また、密閉式冷却塔を含む第3実施形態においては、原水補給水ラインL222は、原水補給水W221を貯留部216へ補給し、軟化水補給水ラインL223は、軟化水補給水W222を貯留部216へ補給しているが、これに制限されない。例えば、原水補給水ラインL222は、原水補給水W221を散水部212、貯留部216及び散布水ラインL260のうちのいずれか1つ以上へ補給してもよい。また、軟化水補給水ラインL223は、軟化水補給水W222を散水部212、貯留部216及び散布水ラインL260のうちのいずれか1つ以上へ補給してもよい。
具体的には、第3実施形態における原水補給水ラインL222は、第1実施形態における原水補給水W121の補給位置に関する前記第1変形例から前記第6変形例(図12から図17参照)と同様に、原水補給水W221を貯留部216以外へ補給してもよい。また、第3実施形態における軟化水補給水ラインL223は、第1実施形態における軟化水補給水W122の補給位置に関する前記第1変形例から前記第6変形例(図12から図17参照)と同様に、軟化水補給水W222を貯留部216以外へ補給してもよい。
前記第1実施例では、実測カルシウム硬度がスケール抑制カルシウム硬度値よりも高い場合には、原水補給水W121の流通を停止し、軟化水補給水W122の流通を開始しているが、これに制限されない。例えば、原水補給水W121の流通を継続したまま、軟化水補給水W122の流通を開始してもよい。この場合には、軟化水補給水W122を主体とし、少量の原水補給水W121を併せて、冷却塔110の貯留部116に補給することが好ましい。
また、前記第1実施例では、実測カルシウム硬度がカルシウム硬度必要値未満である場合には、軟化水補給水W122の流通を停止し、原水補給水W121の流通を開始しているが、これに制限されない。例えば、軟化水補給水W122の流通を継続したまま、原水補給水W121の流通を開始してもよい。この場合には、原水補給水W121を主体として少量の軟化水補給水W122を併せて、冷却塔110の貯留部116に補給することが好ましい。
前記第1実施例では、冷却塔110の貯留部116への補給水W120の補給の際に、排水ラインL130を介して、貯留部116に貯留された循環水W110を冷却塔110の外部へ強制的に排出しているが、これに制限されない。例えば、排水ラインL130を介した循環水W110の強制的な排出を行わずに、オーバーフローラインL140を介した循環水W110の排出のみを行ってもよい。
第1実施例の変形に関する説明は、第2実施例、第3実施例及び第4実施例にも適宜適用又は援用される。