JP3663634B2 - 循環冷却水系の運転方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は循環冷却水系の運転方法に係り、特に、循環冷却水のブローを不要として、ブロー排水処理コストの低減及び補給水コストの低減を図る循環冷却水系の運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
循環冷却水系では、通常の場合、熱交換により温度が上昇した水を冷却塔で蒸発させ、蒸発潜熱の放出によって再冷却して循環使用する。この型式は石油精製工場、石油化学工場、化学工場などにおける製品の冷却や冷凍機冷媒の冷却などに広く使用されている。
【0003】
このような循環冷却水系においては、循環冷却水の濃縮度合を調整してスケール障害や腐食障害を防止するために、強制ブローにより循環冷却水の一部が排出されている。そして、冷却塔からの蒸発や飛散により失なわれる水量及びブロー水量に相当する水量の補給水を供給することにより、系内の保有水量を一定に保っている。
【0004】
ところで、このような循環冷却水系において、ブロー排水の環境への悪影響の懸念から、また、排水処理コストの低減や節水のためにも、ブローを行わないようにすることが望まれている。従って、ブローを行わずに系内の腐食やスケールトラブルを防止する方法が望まれている。
【0005】
従来、循環冷却水系においてブローを行わない方法として、防食剤を使用すると共に、補給水として軟水、脱アルカリ軟水、脱アルカリ水又は純水を使用し、部分濾過することにより、ブローを行わない方法(特公昭50−35752号公報)が提案されている。この方法において、防食剤としては重クロム酸塩及び縮含リン酸塩が使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特公昭50−35752号公報記載の方法では、次のような問題点がある。
【0007】
▲1▼ 補給水の全量を軟水、純水等とするため、補給水の供給コストが高くつく。
▲2▼ 補給水中に防食成分がないため、重クロム酸塩のような有害な酸化皮膜型防食剤を使用する必要がある。即ち、リン酸塩等の沈澱皮膜型防食剤は、安価な防食剤として広く使用されているが、沈澱皮膜型防食剤は、カルシウム硬度が不足すると軟鋼に対する防食効果が著しく低下し、添加量を大幅に増やして処理する必要があるため、軟水補給水には不適当である。
【0008】
本発明は上記従来の問題点を解決し、ブローを行わずに系内の腐食やスケールトラブルを防止する方法であって、補給水の供給コストを低減すると共に、安価な沈澱皮膜型防食剤の使用を可能とする循環冷却水系の運転方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の循環冷却水系の運転方法は、循環冷却水のブローを行なわない循環冷却水系の運転方法において、循環冷却水に沈澱皮膜型防食剤及びスケール防止剤を添加すると共に、補給水の一部として純水を用いることを特徴とする。
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明において沈澱皮膜型防食剤としては、リン酸系、重合リン酸系、ホスホン酸系、アゾール系等の各種沈澱皮膜型防食剤を用いることができる。
【0012】
また、スケール防止剤としては、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸のホモポリマー又はこれら不飽和カルボン酸のコポリマー、ターポリマー等を用いることができる。なお、マレイン酸系ポリマーはスケール防止剤の他に沈澱皮膜型防食剤としても作用する。
【0013】
これら沈澱皮膜型防食剤及びスケール防止剤は、対象循環冷却水系の種類や規模によっても異なるが、通常の場合、循環冷却水に対して純分換算で沈澱皮膜型防食剤を1〜100mg/l,スケール防止剤を1〜200mg/lとなるように添加するのが好ましい。
【0014】
また、補給水原水としては、井水、河川水、水道水、工水、比較的水質の良い排水等を用いることができ、その一部を逆浸透(RO)膜分離装置やイオン交換樹脂で処理して純水化して用いれば良い。
【0015】
本発明においては、沈澱皮膜型防食剤及びスケール防止剤を添加すると共に、補給水の一部として純水を用いることにより、循環冷却水の水質を下記のように制御するのが好ましい。
【0016】
循環冷却水水水質
カルシウム(Ca)硬度:150〜700mg/l
シリカ(SiO2 )硬度:250mg/l以下
Mアルカリ度:500mg/l以下
電気伝導度:500〜3000μs/cm,より好ましくは、1500〜2500μs/cm
なお、補給水としては、その対象とする循環冷却水系の種類や規模、運転条件等によっても異なるが、下記補給水水質となるように、補給水原水と純水とを混合して供給するのが好ましい。
【0017】
補給水水質
Ca硬度:7〜35mg/l
SiO2 硬度:12mg/l以下
Mアルカリ度:25mg/l以下
電気伝導度:25〜150μs/cm
また、本発明においては、好ましくは、循環冷却水の一部、例えば2〜10%程度を、砂濾過等の濾過手段で濾過して除濁するのが望ましい。この場合、濾過手段は、循環冷却水の一部を抜き出して濾過した後再度循環冷却水系に戻すものであれば良く、例えば、冷却塔の貯水部から水を抜き出して濾過後再び該貯水部に戻すように設けるのが好ましい。
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施例方法を説明する。
【0019】
図1は本発明の循環冷却水系の運転方法の一実施例方法を示す系統図である。図1において、符号10は冷却塔であり。図示しない熱交換器との間には冷却水供給管12と冷却水戻管14が配設され、冷却水供給管12に循環ポンプ16が設けられている。
【0020】
冷却塔10はケーシング18内に冷却器20が設置され、冷却器20の上側に散水器22が設けられている、この散水器22には前記冷却水戻管14が接続されている。冷却器20の下側には散水器22から散水された冷却水を受ける貯水槽24が設けられており、該貯水槽24に前記冷却水供給管12が接続されている。この貯水槽24には水位センサ26と導電率センサ28とが設けられている。また、貯水槽24内の水を抜き出して濾過した後、濾過水を再び貯水槽24に戻す抜き出し配管30、濾過器32及び戻し配管34が設けられている。36は沈澱皮膜型防食剤及びスケール防止剤の供給配管である。
【0021】
本実施例においては、このような冷却塔10への補給水の供給装置ユニット1を設け、また、この供給装置ユニット1を冷却塔10の水位センサ26、導電率センサ28の測定値に基いて自動制御する制御盤1Aを設けた。
【0022】
供給装置ユニット1はカートリッジフィルタ2とRO膜分離装置3を備え、配管38より導入される補給水原水の一部は、バルブ40及びポンプ42を有する配管44、カートリッジフィルタ2、ポンプ46及びバルブ48を備える配管50、RO膜分離装置3を経て純水化された後、配管52、配管54を経て冷却塔10の貯水槽24に送給される。一方、補給水原水の残部は配管56,54を経て、純水化処理されることなく直接冷却塔10の貯水槽24に送給される。58,60,62はバルブ、64は電磁弁、66,68は流量計、70,72は導電率センサである。74は予備給水配管であり、バルブ74Aを備える。76はRO膜分離装置3の濃縮水の排出配管である。
【0023】
制御盤1Aには、冷却塔10の水位センサ26、導電率センサ28の測定値が入力され、この値に基いて、制御盤1Aから電磁弁64の開閉及びRO膜分離装置3への給水ポンプ46(或いは更にカートリッジフィルタ2への給水ポンプ42)の作動を制御する信号が出力される。この制御盤には、導電率センサ70,72及び流量計66,68の測定値も入力されている。
【0024】
本実施例の方法においては、冷却塔10内の貯水槽24内の水の水位及び導電率に応じて、補給水原水とRO膜分離装置3より得られる純水との混合比を自動制御して、防食に好適な硬度成分濃度の補給水を冷却塔10に供給すると共に、配管36より沈澱皮膜型防食剤及びスケール防止剤を供給することにより、ブローを行わずに循環冷却水系内の腐食及びスケール生成を防止することができる。図2は本発明の循環冷却水系の運転方法の他の実施例方法を示す系統図であり、図1に示す部材と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
【0025】
本実施例の方法は、補給水原水を受水槽4に受け、この受水槽4内の水をポンプ42を備える配管44より抜き出し、カートリッジフィルタ2及び、配管50を経てRO膜分離装置3に通水して純水化し、配管78より受水槽4に戻すようにすると共に、この受水槽4内の水を補給水としてポンプ80を備える配管82より冷却塔10に送給するようにしたものである。
【0026】
制御盤1Aには、冷却塔10に設けた導電率センサ28の測定値が入力され、この測定値に基いてポンプ42の作動を自動制御して、防食に好適な硬度成分濃度の補給水を冷却塔10に供給すると共に、配管36より沈澱皮膜型防食剤及びスケール防止剤を供給することにより、ブローを行わずに循環冷却水系内の腐食及びスケール生成を効果的に防止する。なお26は水位センサ(ボールタップ)である。
【0027】
なお、図1,2に示す方法は、本発明の一実施例方法であって、本発明はその要旨を超えない限り、何ら図示の方法に限定されるものではない。例えば、補給水原水の純水化には、RO膜分離装置に限らず、イオン交換樹脂塔(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂又は混床式イオン交換樹脂)を用いても良い。
【0028】
また、場合によっては補給水原水と純水とは、別々の配管により冷却塔に供給することもできる。
【0029】
【作用】
本発明においては、循環冷却水系の補給水の一部として純水を適当量混合することにより、補給水原水中のカルシウム成分等の防食性イオンを積極的に利用して、沈澱皮膜型防食剤による防食を可能とするものである。
【0030】
即ち、前述の如く、沈澱皮膜型防食剤は、カルシウム硬度が不足すると防食効果が著しく低下するが、本発明の方法においては、補給水の全体を純水とするのではなく、補給水の一部を純水とすることにより、下記▲1▼,▲2▼の効果を得る。
【0031】
▲1▼ 純水を用いることにより、スケール成分となる補給水中の硬度成分の低減を図り、循環冷却水系内のスケール生成を防止する効果
▲2▼ 補給水原水を用いることにより、補給水中に沈澱皮膜型防食剤による防食に必要なカルシウム成分を残留させる効果
また、スケール防止剤によるスケール防止効果と共に、沈澱皮膜型防食剤による防食に当り、スケール成分となる補給水中の硬度成分が利用されて硬度成分が低減することによって、スケールの析出も防止される。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0033】
実施例1
200RTの冷凍能力を有するターボ型圧縮冷凍機の循環冷却水(保有水量4.2m2 )において、図2に示す方法を採用して運転を行った。
【0034】
用いた補給水原水(工水)の水質は次の通りである。
【0035】
補給水原水の水質
導電率:260μs/cm
Ca硬度:38mg/l
Mアルカリ度:50mg/l
SiO2 硬度:25mg/l
受水槽(容積4m3 )4に上記補給水原水を供給し、受水槽4内の水はカートリッジフィルタ2に通水した後、ポリスルホン製のRO膜を装着したRO膜分離装置3で処理し、透過水を受水槽4に返送するようにし、冷却塔10内の水の導電率を監視して、純水製造装置用給水ポンプ42の稼働により、冷却塔10内の水の導電率が2200〜2450μs/cmとなるように制御盤1Aで制御した。
【0036】
この受水槽4内の水は、冷凍機の運転状況に応じて、循環水量の1〜2%/hrの割合で冷却塔10に補給した。また、冷却塔10には、スケール防止剤としてポリマレイン酸(分子量4500)を、また沈澱皮膜型防食剤として銅用防食剤のベンゾトリアゾールを各々10mg/lづつ添加した。
【0037】
また、循環冷却水の2%を常時砂濾過器で部分濾過した。
【0038】
その結果、冷凍機運転開始直後から純水製造装置用給水ポンプ42が稼働した。この運転を3ヶ月継続したところ、その間の受水槽4内の水質は平均で次の通りであった。
【0039】
受水槽内の平均水質
導電率:97μs/cm
Ca硬度:15mg/l
Mアルカリ度:17mg/l
SiO2 硬度:10mg/l
また、冷却塔10内の水(循環冷却水)の水質は次の通りであり、従来、3ヶ月間で140m3 のブロー水が系外に排出される循環冷却水系において、ブローを全く行うことなく運転を行うことができた。
【0040】
循環冷却水の水質
導電率:2200〜2450μs/cm
Ca硬度:285mg/l
Mアルカリ度:270mg/l
SiO2 硬度:180mg/l
また、この運転期間中、冷却塔10内の水中に、軟鋼製テストピースと銅製テストピースとを浸漬しておき、その腐食速度を測定したところ、軟鋼テストピースの腐食速度は3.5mdd,銅製テストピースの腐食速度は0.2mddと極めて良好な結果を示した。
【0041】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の循環冷却水系の運転方法によれば、ブローを行うことなく循環冷却水水質を所定の水質範囲に維持することができることから、系内の腐食及びスケール障害を有効に防止することができる。このため、水の高度利用によるブロー排水処理コストの低減及び補給水コストの低減を図ることができ、循環冷却水系の運転コストを大幅に低減することができる。
【0042】
しかも、本発明の方法においては、補給水の全量ではなく一部を純水とするため純水コストの低減が図れ、また、安価な沈澱皮膜型防食剤を用いて良好な防食効果を得ることができることから、経済的に極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の循環冷却水系の運転方法の一実施例方法を示す系統図である。
【図2】本発明の循環冷却水系の運転方法の他の実施例方法を示す系統図である。
【符号の説明】
1 供給装置ユニット
1A 制御盤
2 カートリッジフィルタ
3 RO膜分離装置
4 受水槽
10 冷却塔
26 水位センサ
28,70,72 導電率センサ
32 濾過器
64 電磁弁
66,68 流量計
Claims (1)
- 循環冷却水のブローを行なわない循環冷却水系の運転方法において、循環冷却水に沈澱皮膜型防食剤及びスケール防止剤を添加すると共に、補給水の一部として純水を用いることを特徴とする循環冷却水系の運転方法。
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