JP3381423B2 - 銅合金用防食剤 - Google Patents
銅合金用防食剤Info
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Description
食を防止するための銅合金用防食剤に関するものであ
る。 【0002】 【従来の技術】火力発電所、原子力発電所、その他各種
産業プラントの冷却水系では銅合金製熱交換器が用いら
れ、海水その他の冷却水による冷却が行われている。こ
こで冷却水、特に海水と接触する熱交換器の銅合金は冷
却水により腐食されるため、硫酸第一鉄を防食剤として
添加して防食する方法が一般に行われている(例えば特
公昭49−10577号、特公昭57−40222号
等)。この硫酸第一鉄による防食作用は、冷却水中に注
入された第一鉄イオン(Fe2+)が銅合金表面で析出し
て形成されるオキシ水酸化鉄の保護皮膜によるものであ
り、第二鉄イオン(Fe3+)にはこの作用がない。従っ
て銅合金用防食剤としては、第一鉄イオンを安定な形で
供給できることが重要である。 【0003】従来、防食剤として用いる硫酸第一鉄とし
ては、結晶硫酸第一鉄を水に溶解して所定濃度の水溶液
とし、これを冷却水中の第一鉄イオン濃度が所望の濃度
になるように注入する方法がとられていた。しかし、こ
の方法では、硫酸第一鉄を水に溶解する作業が繁雑なば
かりでなく、得られる水溶液が不安定であって、短期間
のうちに第一鉄イオンが酸化され、第二鉄イオンの水酸
化物となって析出してしまう問題があった。この点を改
善するために、第一鉄イオンの酸化速度が溶液のpHに
依存することから、硫酸第一鉄水溶液に新たに酸を加え
て溶液pHを1〜2に維持し、これによって安定化した
硫酸第一鉄水溶液を用いる方法が提案されている(特公
昭52−44965号)。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな方法でも結晶硫酸第一鉄を溶解して用いるため、溶
解装置および作業が必要であり、得られる硫酸第一鉄水
溶液の安定化のために、pH調整の操作が必要であるな
どの問題点があった。本発明はこのような問題点を解決
するため、従来のような溶解およびpH調整のための装
置や操作が必要でなく、防食に必要な装置および作業を
簡素化でき、廃棄物を利用して液性の管理も容易で安価
な銅合金用防食剤を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は鉄鋼の硫酸洗浄
排液から、一部の遊離硫酸を残留させるように遊離硫酸
を回収して、pHを0.5〜2にした排液を含むことを
特徴とする銅合金用防食剤である。 【0006】本発明において防食の対象となる銅合金
は、水と接触する銅合金であり、例えば火力発電所、原
子力発電所、その他各種産業プラント等の冷却水系に設
けられた銅合金製の熱交換器など、工業用水、海水等の
冷却水と接触する部分に配置されている銅合金があげら
れ、特に海水と接触する銅合金が対象として適してい
る。 【0007】本発明の銅合金用防食剤は、鉄鋼の硫酸洗
浄排液から、一部の遊離硫酸を残留させるように遊離硫
酸を回収して、pHを0.5〜2にした排液を成分とし
て含むものである。ここで鉄鋼の硫酸洗浄排液とは、鉄
鋼表面のさび、酸化皮膜、変質層等の除去を目的とし
て、鉄鋼を硫酸溶液に接触させて処理する酸洗(ピック
リング)工程から排出される使用済の硫酸溶液である。 【0008】一般に鉄鋼の酸洗には、濃度10〜30重
量%の硫酸水溶液が使用される。このような硫酸溶液を
鉄鋼の酸洗工程に使用すると、硫酸溶液は酸洗ととも
に、鉄の溶解により鉄イオン(第一鉄イオン)濃度が次
第に増加して酸濃度が低下し、やがて酸洗能力を失う。
このため新しい硫酸水溶液に更新される。これにより生
成する硫酸洗浄排液は高濃度の硫酸第一鉄と未反応の硫
酸を含んでいるため、従来はこの硫酸洗浄排液を中和・
濃縮および析出操作を行って、結晶硫酸第一鉄を回収し
ており、従来はこの結晶硫酸第一鉄が銅合金の防食剤等
として利用されていた。 【0009】本発明は硫酸洗浄排液から結晶硫酸第一鉄
を回収することなく防食剤として利用するものであり、
硫酸洗浄排液から遊離硫酸を回収し、一部の遊離硫酸を
残留させることにより、防食剤に適したpH0.5〜2
とし、これをそのまま銅合金用防食剤として利用する。
回収した硫酸は酸洗工程に戻して酸洗に再利用される。 【0010】すなわち硫酸回収前の硫酸洗浄排液は硫酸
第一鉄を含むため、そのまま防食剤として利用すること
も理論的には可能であるが、実際には硫酸濃度が高過ぎ
てそのままでは使用できない。そこで本発明では硫酸洗
浄排液から、一部の遊離硫酸を残留させるように遊離硫
酸を回収して酸洗に利用し、その後に得られる硫酸回収
後のpHを0.5〜2にした排液を銅合金用の防食剤と
して使用する。このような硫酸回収後のpHを0.5〜
2にした排液は硫酸第一鉄を含み、かつ適度の硫酸を含
むため、硫酸第一鉄が安定な状態に保たれる。 【0011】硫酸洗浄排液から硫酸を回収する手段とし
ては、特に制限はないが、一般に拡散透析、電気透析等
の透析が採用される。透析は一般にアニオン交換膜を挟
んで一方の流路に硫酸洗浄排液を導入し、反対側の流路
に水(希硫酸)を導入して向流または並流で通液し、拡
散透析の場合は濃度差を利用して硫酸を拡散透過させ、
水側に硫酸を濃縮して回収する。電気透析の場合は、水
側を正極、硫酸洗浄排液側を負極として通電することに
より、硫酸イオンを水側に移動させ、硫酸を濃縮状態で
回収する。 【0012】このような透析の終点は経済的に透析が行
われる限界点であるが、通常透析装置の出口液、すなわ
ち硫酸回収後の排液のpHが0.5〜2、好ましくは1
〜1.5となる範囲である。こうして得られる硫酸回収
後の排液は硫酸第一鉄を主成分とし、遊離硫酸を含む
が、硫酸第二鉄の含量は少ない。第一鉄イオン濃度は
4.5〜5.5重量%、遊離硫酸濃度は0.9〜1重量
%であるが、第二鉄イオンは300〜500mg/lで
あり、従来の結晶硫酸第一鉄の20重量%水溶液の第一
鉄イオン濃度3.3重量%、遊離硫酸濃度0.45重量
%、第二鉄イオン濃度4,000mg/lに比べて、遊
離硫酸濃度が高くてpHが低く、第二鉄イオン濃度が低
い。 【0013】本発明では、上記のような鉄鋼の硫酸洗浄
排液から、一部の遊離硫酸を残留させるように遊離硫酸
を回収して、pHを0.5〜2にした排液をそのまま銅
合金用防食剤とすることができるが、このような排液を
さらに希釈、濃縮、精製その他の処理を行ってもよく、
他の防食剤、安定剤等の成分を配合してもよい。 【0014】こうして得られる本発明の銅合金用防食剤
は、銅合金と接触する水に添加して防食に使用する。使
用方法は防食剤を貯槽に貯留し、銅合金と接触する水系
に連続的または間欠的に注入する方法が一般的である。
注入場所は任意であるが、冷却水系のように水が流れる
系では、銅合金と接触する部分例えば熱交換器の前の部
分で注入するのが好ましい。防食剤の添加量は水質、温
度その他の条件により変わるが、一般的には0.1〜1
mg/l程度である。 【0015】このように本発明の防食剤を銅合金と接触
する水に添加することにより、銅合金の表面にオキシ水
酸化鉄の保護皮膜が形成され、従来の結晶硫酸第一鉄に
よる防食と同程度の防食が行われる。防食剤は第二鉄イ
オン濃度が低く、またpHが約1程度であるため安定で
あり、新たな第二鉄イオンの生成もほとんどない。この
ためそのまま貯留しても、水酸化鉄の沈殿や、配管等の
目詰まりはほとんど生じない。 【0016】 【発明の効果】本発明によれば、鉄鋼の硫酸洗浄排液か
ら、一部の遊離硫酸を残留させるように遊離硫酸を回収
して、pHを0.5〜2にした排液を銅合金用防食剤と
するため、従来のような溶解のための装置と操作が不要
で、廃棄物を有効利用できるとともに、硫酸第一鉄濃度
が高くて、優れた防食効果を有し、第二鉄イオン濃度が
低く、適度のpHを有するため安定で、新たな第二鉄イ
オンの生成が少なく、このため水酸化鉄の析出が少なく
て配管等の閉塞はほとんどない。 【0017】 【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。各
例中%は重量%である。 実施例1、比較例1 鉄鋼の硫酸洗浄排液から電気透析により遊離硫酸を回収
した後の排液を実施例1の防食剤とし、結晶硫酸第一鉄
の20%水溶液を比較例1の防食剤とした。それぞれの
分析値を表1に示す。 【0018】 【表1】 【0019】海水に上記実施例1および比較例1の防食
剤をそれぞれFeとして1mg/lとなるように注入し
て混合した液を、第一のBsTF管、第二のBsTF管
および10%CuNi管に1.5m/secでシリーズ
に流し、さらに30%CuNi管に1.2m/secで
流し、100時間後の付着物総重量を付着物重量法によ
り測定し、また鉄付着量を付着物中の鉄含有量からFe
(OH)3に換算値を求めた。結果を表2に示す。 【0020】 【表2】【0021】表2の結果から、実施例1、比較例1とも
ほぼ同等の保護皮膜が形成されており、ほぼ同等の防食
効果が得られることがわかる。 【0022】次に、発電所の復水器(材質BSTFの新
品管)を対象として、本発明の効果を確認した。すなわ
ち冷却海水に対し、Fe2+イオンが0.01mg/lと
なるように結晶硫酸第一鉄を溶解し、これを防食剤とし
て使用していたときは、注入配管に沈殿物が詰まり、運
転中にポンプの吐出圧力が上昇して注入不能となった
り、定期点検時に溶解タンク底部に多量の沈殿物が観察
された。これに対し、実施例1の防食剤を使用した場合
は、使用開始後1年半経過しても詰まり等のトラブルは
全く発生せず、注入配管、貯槽とも内部は清浄であっ
た。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 鉄鋼の硫酸洗浄排液から、一部の遊離硫
酸を残留させるように遊離硫酸を回収して、pHを0.
5〜2にした排液を含むことを特徴とする銅合金用防食
剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30099794A JP3381423B2 (ja) | 1994-12-05 | 1994-12-05 | 銅合金用防食剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30099794A JP3381423B2 (ja) | 1994-12-05 | 1994-12-05 | 銅合金用防食剤 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08158076A JPH08158076A (ja) | 1996-06-18 |
JP3381423B2 true JP3381423B2 (ja) | 2003-02-24 |
Family
ID=17891590
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP30099794A Expired - Lifetime JP3381423B2 (ja) | 1994-12-05 | 1994-12-05 | 銅合金用防食剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3381423B2 (ja) |
-
1994
- 1994-12-05 JP JP30099794A patent/JP3381423B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08158076A (ja) | 1996-06-18 |
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