JP3622221B2 - 循環冷却水の処理方法および装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は循環冷却水の処理方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ビル空調あるいは工業プラント等において発生する熱を冷却するための循環冷却水系では、熱交換器で負荷の冷却を行うことにより高温となった循環冷却水を冷却塔に導いて冷却し、これに補給水を補給して再び熱交換器において負荷の冷却を行うように循環している。このような循環冷却水系では、冷却塔において循環冷却水が蒸発により濃縮されて塩類濃度が高くなるとともに、大気中から腐食性物質や菌類、その他の不純物が混入するため、循環水の腐食性が高まり、またスケールやスライムが生成しやすくなる。
【0003】
このため循環冷却水系では、腐食抑制剤、スケール防止剤、スライム防止剤等の水処理薬剤を添加する一方、間欠的に循環冷却水をブローして濃縮倍率を一定の範囲に保持し、またサイドフィルタを設けて循環冷却水の一部を濾過することにより、腐食やスケール、スライム等による障害を防止している。この場合、循環冷却水のブローは、循環冷却水の導電率が設定値の上限に達したときに一定量を系外に排出し、それに相当する補給水を補給することにより、希釈して循環水の濃縮倍率を設定値の範囲に保持する。このようなブローは通常数時間に1回の割合で行われる。
【0004】
一方サイドフィルタは循環冷却水中の懸濁物や菌類等を除去するものであり、濾過の継続により目詰まりが起こるため、通常1日に1回の割合で、逆洗と呼ばれる洗浄が行われる。この洗浄は循環水を供給して濾過層を展開し、濾材に捕捉された懸濁物等を除去する操作であり、相当量の循環水が排出され、それに相当する補給水が補給されて、循環水が希釈される。洗浄は通常圧損が上昇したとき、あるいは所定時間経過したときに一定時間行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが従来はブローと洗浄は別々に管理されているため、多量の排水が生じ、水や薬剤が無駄に使用され、コスト高になるとともに、循環水の濃縮倍率が過度に低下することがあった。例えばブローが終了した時点、あるいはその途中に洗浄が開始すると、ブローにより循環水が排出された後に、さらに洗浄により循環水が排水されることになり、水と薬剤が無駄に廃棄される。その上循環水が必要以上に希釈されることになるため、薬剤濃度が低下し、腐食やスケールおよびスライム防止効果が低下する。
一方、循環水中の懸濁物等の濃度は変動するので、負荷が大きくなった場合、洗浄を所定時間毎に行っても濁質を完全に濾過できない場合が生じる。このようなときは循環水の汚れが増大するため、スケールやスライムが生成しやすくなる。
【0006】
本発明の目的は、このような問題点を解決するため、水や薬剤を有効に使用して循環冷却水を低コストで処理し、サイドフィルタを余裕をもって運転するとともに、循環冷却水の濃縮倍率を一定に保持して腐食やスケール、スライム等の生成を防止することができる循環冷却水の処理方法および装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の循環冷却水の処理方法および装置である。
(1)熱交換器を通過した循環冷却水を冷却塔で冷却し、補給水を補給しながら循環する循環冷却水系において、
粒状濾材を充填した濾過層が設けられたサイドフィルタに循環冷却水の一部を供給して、濾過した後循環冷却水系に循環し、
循環冷却水の導電率を測定し、導電率が所定値に達したときに、循環冷却水により濾過層を展開し粒状濾材をほぐしてサイドフィルタの濾材を洗浄し、
循環冷却水のブローを兼ねて洗浄排水を系外に排出し、排出分および損失分に相当する補給水を循環冷却水系に補給する
ことを特徴とする循環冷却水の処理方法。
(2)熱交換器を通過した循環冷却水を冷却塔で冷却し、補給水を補給しながら循環する循環冷却水系と、
粒状濾材を充填した濾過層が設けられ、循環冷却水の一部を濾過して循環するサイドフィルタと、
循環冷却水の導電率を測定する導電率計と、
導電率が所定値に達したときに、循環冷却水により濾過層を展開し粒状濾材をほぐしてサイドフィルタの濾材を洗浄し、循環冷却水のブローを兼ねて洗浄排水を系外に排出する洗浄装置と、
排出分および損失分に相当する補給水を循環冷却水系に補給する給水装置と
を備えていることを特徴とする循環冷却水の処理装置。
【0008】
本発明における循環冷却水系は、ビル空調、工業プラント等の熱の発生源において、負荷となる熱源を冷却するための熱交換器を通して冷却水を循環し、熱交換器を通過して高温となった循環冷却水を冷却塔で冷却して循環するように構成される。冷却塔では冷却水の一部が蒸発および飛散により失われるため、補給水を補給して循環する。このようにして循環冷却を行うと循環冷却水は濃縮され導電率が上昇する。
【0009】
サイドフィルタは循環冷却水の一部を導入して濾過することにより、循環冷却水中の懸濁物や菌類を除去し、濾過水を循環冷却水系に返送するように構成される。このようなサイドフィルタとしては、砂、アンスラサイト等の粒状濾材を充填した濾過層が設けられたものを用いるが、上向流で濾過するものでも、下向流で濾過するものでもよい。サイドフィルタは濾過の継続により濾過層が目詰まりするので、本発明では循環冷却水の導電率が上昇して所定値となったときに濾材の洗浄を行い、循環冷却水のブローを兼ねて洗浄排水を系外に排出する。このとき洗浄排水量を少なくするために、サイドフィルタ内に強制攪拌装置を設けたものが好ましい。
【0010】
循環冷却水の導電率の測定は循環冷却水系に設けた導電率計により行う。導電率計は循環冷却水系の任意の位置に設けることができるが、冷却塔下部の冷却水ピットに設けるのが好ましい。導電率計は連続的に循環冷却水の導電率を測定し、導電率が所定値に上昇したときに洗浄装置を始動して、自動的に濾材の洗浄を開始するように設けるのが好ましい。
【0011】
濾材の洗浄は、一般に逆洗と呼ばれる操作であり、循環冷却水により濾過層を展開し、濾材に捕捉されたる懸濁物、菌類等の濁質を洗浄除去する。洗浄は洗浄水を上向流で流して濾過層を展開することができるが、サイドフィルタ内に強制攪拌装置を設けた場合は、槽内の水のみで洗浄を行うことができる。洗浄装置は洗浄水の供給ポンプ、洗浄排水を排出するための弁等を含むが、これらはサイドフィルタに備付けたものをそのまま利用することができる。
【0012】
補給水を補給するための給水装置は、洗浄排水の排出分と、冷却塔における蒸発、飛散等による損失分に相当する量の補給水を補給する装置であり、これにより循環冷却水は一定量に保たれる。このような給水装置としては、循環冷却水量、特に冷却塔のピットの水位が一定となるように給水するものが好ましい。
【0013】
【作用】
上記のように本発明では、循環冷却水の導電率が上昇した段階でサイドフィルタの洗浄を行うことにより、濾材に捕捉されていた濁質が洗浄除去され、濾過性能が回復する。洗浄排水をそのまま系外に排出することにより、循環冷却水の一部がブローされる。従って洗浄排水の排出分と、冷却塔における蒸発、飛散による損失分に相当する補給水を補給して循環することにより、循環冷却水は希釈され、所定の濃縮倍率を維持することができる。このため従来のブローと洗浄を別々に行う場合よりも、水および薬剤の無駄がなく、しかも循環冷却水の濃縮倍率を一定に維持して腐食やスケール、スライム等の生成が防止される。
【0014】
また導電率の上昇は濾過層の目詰まりよりも早く生じるので、導電率の上昇によって洗浄を行うと、濾過層が完全に目詰まりする前に洗浄が行われる。このためサイドフィルタは安全サイドで運転され、濁質がサイドフィルタを素通りすることはなく、循環冷却水は常に清浄に保たれ、スケール、スライム生成が抑制される。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
図1は実施例の循環冷却水処理装置を示す系統図である。
図1において、1は冷却塔、2は循環ポンプ、3は熱交換器であり、循環水路4により連絡して循環冷却水系を構成している。冷却塔1は散水管1aから散水された冷却水が充填材層1bを流下する間にルーバ1cから導入される空気と接触して冷却されて、ピット1dに貯留され、蒸気を含む空気はファン1eにより大気中に排気されるように構成されている。
【0016】
5はサイドフィルタであり、内部に砂等の粒状濾材を充填した濾過層5aおよびこの濾過層を強制攪拌するための強制攪拌器5bが設けられ、上向流で濾材を上に押付けて濾過を行うように構成されている。冷却塔1とサイドフィルタ5は濾過ポンプ6および弁7aを有する流路8a、および弁7bを有する流路8bにより連絡している。サイドフィルタ5の下部には弁7cを有する排水路8cが連絡している。
【0017】
9はセンサー9aを有する導電率計であって、冷却塔1のピット1dに設けられており、制御装置10に接続している。制御装置10は導電率が設定値に達したときに洗浄が開始するように、弁7a〜7cを制御するように構成されている。11は補給水路であって、レベルスイッチを有する弁12により、ピット1dに連絡している。13は薬剤注入路で、直接冷却塔のピット1dに薬注するようにされている。
【0018】
上記の循環冷却水の処理装置においては、循環ポンプ2を駆動して冷却塔1のピット1dから冷却水を熱交換器3に供給して負荷の冷却を行う。熱交換器3において高温となった冷却水は、冷却塔1において一部が蒸発することにより冷却されてピット1dに流下し、再び循環する。冷却水の蒸発飛散による損失分を補うため補給水路11から補給水が供給され、ピット1dの水位を一定に保つ。冷却塔1では冷却水の一部が蒸発することにより循環冷却水は濃縮されて、塩分濃度が上昇する。また大気中からゴミ等の異物が混入したり、循環冷却水系のスケールやスライムが剥離して、循環冷却水系には濁質が含まれるようになる。このような循環冷却水による腐食やスケール、スライム等の生成を防止するために、薬剤注入路13から水処理薬剤を注入する。
【0019】
サイドフィルタ5による濾過は、制御装置10の指令により弁7a,7bを開き、弁7cを閉じた状態で濾過ポンプ6を駆動して行う。このときピット1dの循環冷却水が流路8aからサイドフィルタ5に入り、上向流で濾材を上に押付けて、上部に濾過層5aを形成し、この濾過層5aで濾過されて流路8bからピット1dに戻る。これにより循環冷却水は濁質が除去されて、スケール、スライムの生成が抑制される。
【0020】
導電率計9が設定値の導電率を検出したとき、制御装置10の指令により弁7a,7bを閉じ、強制攪拌器5bを回転させて濾材の洗浄に移る。これにより濾過層5aを構成する濾材は少しずつほぐされて、捕捉された濁質が剥離する。次いで弁7cを開き、剥離した濁質を含む洗浄排水は排水路8cから系外に排出される。
サイドフィルタ5内の水が洗浄排水として排出された段階で洗浄を終了することができるが、さらに洗浄水を導入して同様の操作を行ってもよい。
【0021】
洗浄終了時には制御装置10の指令により弁7a,7bを開き、弁7cを閉じて循環冷却水をサイドフィルタ5に導入し、上向流で濾材を上に押付けて濾過層5aを形成して濾過を再開する。この間補給水路11からピット1dの水位を一定にするように補給水が供給されているため、洗浄排水が排出されると、循環冷却水は希釈により濃縮倍率が低くなっている。このため濃縮により導電率が上限に達するまでは、そのまま循環冷却水による冷却およびサイドフィルタ5による濾過が行われる。なお弁7bは逆止弁を用いてもよい。
【0022】
循環冷却水の濃縮倍率の上限および下限は運転条件により任意に決定することができるが、例えば上限は6〜10倍、下限は4〜8倍の範囲とすることができる。この場合の導電率は水質等により変わるが、例えば上限は120〜200mS/m、下限は80〜160mS/mとすることができる。洗浄水量は導電率の上限値から下限値にするのに必要な洗浄水量であり、条件により変わるが、一般的には濾材容積の1〜4倍量とするのが好ましい。
【0023】
上記の循環冷却水の処理方法では、循環冷却水の濃縮倍率が高くなり、導電率が上限に達した段階で濾材の洗浄を行うので、ブローを兼ねて洗浄を行うことができ、従来のようにブローと洗浄を行う場合に比べて水および薬剤を無駄にすることなく有効に利用することができる。また循環冷却水は所定の濃縮倍率に維持されることから、薬剤の有効濃度が維持される。このほかサイドフィルタが安全サイドで運転されるため、循環水から効率よく濁質を除去することができ、循環水が清浄に維持される。このため、腐食や、スケール、スライムの生成が抑制される。
【0024】
図1の装置において、ビル空調用循環冷却水系として、保有水量10m3、冷却塔能力300RTとし、補給水として導電率20mS/mの水道水を用い、濃縮倍率7〜8倍、平均負荷30%で運転した。サイドフィルタとして濾過能力20m3/hr、濾材量300 literの内部に攪拌器付の砂濾過器を用い、循環冷却水の一部を濾過した。そして循環冷却水の導電率が160mS/mとなったときに濾材の洗浄を行い、濃縮倍率を8倍から7倍にするのに必要な洗浄水として約1000 literを流して洗浄した。このときの導電率の下限値は140mS/mであった。濾過再開後濃縮倍率8倍の160mS/mになるまでの濾過時間は約10時間であった。
【0025】
【発明の効果】
本発明では、粒状濾材を充填した濾過層が設けられたサイドフィルタに循環冷却水の一部を供給して、濾過した後循環冷却水系に循環し、循環冷却水の導電率を測定し、導電率が所定値に達したときに、循環冷却水により濾過層を展開し粒状濾材をほぐしてサイドフィルタの濾材を洗浄し、循環冷却水のブローを兼ねて洗浄排水を系外に排出し、排出分および損失分に相当する補給水を循環冷却水系に補給するようにしたので、循環冷却水のブローを兼ねて低コストで洗浄を行うことができ、これにより水と薬剤の無駄をなくして有効に利用し、かつ循環水の濃縮倍率を一定に保持して薬剤濃度を有効濃度に保持し、またサイドフィルタを余裕をもって運転して、腐食やスケール、スライムの生成を防止することが可能になる。
【0026】
またサイドフィルタとして攪拌器付の濾過器を用いることにより、洗浄排水量を少なくして効率よく洗浄を行うことができ、これにより水、薬剤をさらに有効に利用できるとともに、薬剤濃度の低下を防止して腐食、スケール、スライム防止効果を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の循環冷却水処理装置の系統図である。
【符号の説明】
1 冷却塔
1a 散水管
1b 充填材層
1c ルーバ
1d ピット
1e ファン
2 循環ポンプ
3 熱交換器
4 循環水路
5 サイドフィルタ
5a 濾過層
5b 強制攪拌器
6 濾過ポンプ
7a,7b,7c,12 弁
8a,8b 流路
8c 排水路
9 導電率計
9a センサー
10 制御装置
11 補給水路
13 薬剤注入路
Claims (2)
- 熱交換器を通過した循環冷却水を冷却塔で冷却し、補給水を補給しながら循環する循環冷却水系において、
粒状濾材を充填した濾過層が設けられたサイドフィルタに循環冷却水の一部を供給して、濾過した後循環冷却水系に循環し、
循環冷却水の導電率を測定し、導電率が所定値に達したときに、循環冷却水により濾過層を展開し粒状濾材をほぐしてサイドフィルタの濾材を洗浄し、
循環冷却水のブローを兼ねて洗浄排水を系外に排出し、排出分および損失分に相当する補給水を循環冷却水系に補給する
ことを特徴とする循環冷却水の処理方法。 - 熱交換器を通過した循環冷却水を冷却塔で冷却し、補給水を補給しながら循環する循環冷却水系と、
粒状濾材を充填した濾過層が設けられ、循環冷却水の一部を濾過して循環するサイドフィルタと、
循環冷却水の導電率を測定する導電率計と、
導電率が所定値に達したときに、循環冷却水により濾過層を展開し粒状濾材をほぐしてサイドフィルタの濾材を洗浄し、循環冷却水のブローを兼ねて洗浄排水を系外に排出する洗浄装置と、
排出分および損失分に相当する補給水を循環冷却水系に補給する給水装置と
を備えていることを特徴とする循環冷却水の処理装置。
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