(第1実施形態)
図1、2により、本発明のエジェクタ式冷凍サイクルを冷凍機に適用した例を説明する。この冷凍機は、冷却対象空間である冷凍庫内を−30〜−10℃程度の極低温まで冷却するものである。図1は、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100の全体構成図である。
エジェクタ式冷凍サイクル100において、圧縮機10は、冷媒を吸入して、冷媒を多段階に昇圧して吐出するものである。具体的には、本実施形態の圧縮機10は、1つのハウジング10a内に第1、第2圧縮手段11a、21aの2つの圧縮手段および第1、第2圧縮手段11a、21aを駆動する第1、第2電動モータ11b、21bを収容して構成された二段昇圧式の電動圧縮機である。
この第1、第2圧縮手段11a、21aとしては、スクロール型圧縮手段、ベーン型圧縮手段等の各種圧縮機構を採用できる。また、第1、第2電動モータ11b、21bは、後述する制御装置から出力される制御信号によって、それぞれ独立して、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。
そして、この回転数制御によって、第1、第2圧縮手段11a、21aの冷媒吐出能力が、それぞれ独立して変更される。従って、本実施形態の第1、第2電動モータ11b、21bは、それぞれ第1、第2圧縮手段11a、21aの冷媒吐出能力を変更する第1、第2吐出能力変更手段を構成している。
ハウジング10aには、低圧冷媒を吸入する吸入ポート10b、中間圧冷媒を流入させる中間圧ポート10c、および、高圧冷媒を吐出する吐出ポート10dが設けられている。そして、これらの各ポート10b〜10dが、ハウジング10a内部で第1、第2圧縮手段11a、21aに接続されている。
具体的には、吸入ポート10bは、第2圧縮手段21aの吸入口へ接続され、中間圧ポート10cは、第2圧縮手段21aの吐出口と第1圧縮手段11aの吸入口に連通するように接続され、吐出ポート10dは、第1圧縮手段11aの吐出口へ接続される。従って、第1圧縮手段11aは、第2圧縮手段21aから吐出された冷媒と中間圧ポート10cから流入した冷媒とを混合した中間圧冷媒を吸入し圧縮して吐出することになる。
また、図1に示すように、圧縮機10の吐出ポート10dには、放熱器12が接続されている。放熱器12は圧縮機10から吐出された高圧冷媒と冷却ファン12aにより送風される庫外空気(外気)とを熱交換させることによって、高圧冷媒を放熱させて冷却する放熱用熱交換器である。冷却ファン12aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
なお、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用し、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。従って、放熱器12は冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。
放熱器12の出口側には、エジェクタ13が接続されている。エジェクタ13は、冷媒を減圧膨張させる冷媒減圧手段であるとともに、高速で噴出する冷媒流の吸引作用によって冷媒の循環を行う冷媒循環手段でもある。
具体的には、エジェクタ13は、放熱器12から流出した液相冷媒の通路面積を小さく絞って、この液相冷媒を等エントロピ的に減圧膨張させるノズル部13a、ノズル部13aの冷媒噴射口と連通するように配置されて後述する吸引側蒸発器19から流出した冷媒を吸引する冷媒吸引口13b等を有して構成される。
さらに、ノズル部13aおよび冷媒吸引口13bの冷媒流れ下流側部位には、ノズル部13aから噴射する高速度の冷媒流と冷媒吸引口13bからの吸引冷媒とを混合させて昇圧させるディフューザ部13cが設けられている。
ディフューザ部13cは冷媒通路面積を徐々に大きくする形状に形成されており、冷媒流れを減速して冷媒圧力を上昇させる作用、つまり、冷媒の速度エネルギを圧力エネルギに変換する作用を果たす。さらに、ディフューザ部13cの出口側には、アキュムレータ17が接続されている。
アキュムレータ17は、ディフューザ部13cから流出した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を溜める流出側気液分離器である。アキュムレータ17の気相冷媒流出口には、圧縮機10の中間圧ポート10cが接続され、液相冷媒流出口には、電気式の可変絞り機構18を介して、吸引側蒸発器19が接続されている。
可変絞り機構18は、アキュムレータ17から流出した液相冷媒をさらに減圧膨張させる吸引側減圧手段である。より具体的には、可変絞り機構18は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有して構成されている。また、可変絞り機構18は、制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
吸引側蒸発器19は、可変絞り機構18にて減圧膨張された低圧冷媒と送風ファン19aにより循環送風される冷凍庫内空気とを熱交換させることによって、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。従って、本実施形態では、冷凍庫内空気が熱交換対象流体となる。送風ファン19aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
吸引側蒸発器19の出口側には、吸引側蒸発器19から流出した冷媒の流れを分岐する吸引側分岐部22が接続されている。吸引側分岐部22は、3つの流入出口を有する三方継手で構成されており、流入出口のうち1つを冷媒流入口とし、2つを冷媒流出口としたものである。このような三方継手は、管径の異なる配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに通路径の異なる複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。
吸引側分岐部22の一方の冷媒流出口には、エジェクタ13の冷媒吸引口13bが接続され、他方の冷媒流出口には、流量調整手段を構成する流量調整弁38が接続されている。なお、図1から明らかなように、吸引側分岐部22の一方の冷媒流出口から冷媒吸引口13bへ至る冷媒流路には、可変絞り機構等の圧力損失を発生させる機器類は配置されていない。
従って、吸引側分岐部22の一方の冷媒流出口から冷媒吸引口13bへ至る冷媒流路の圧力損失は、流通する冷媒流量によって若干変化するものの、エジェクタ式冷凍サイクル100の作動時に大幅に変化することはない。
また、流量調整弁38の基本的構成は、可変絞り機構18と同等である。より具体的には、流量調整弁38内部の冷媒通路の圧力損失が、可変絞り機構18内部の冷媒通路の圧力損失よりも小さく形成されている。さらに、流量調整弁38の出口側には、圧縮機10の吸入ポート10bが接続されている。
図示しない制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。この制御装置は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行って、上述の各種電気式のアクチュエータ11b、12a、18、19a、21b、38等の作動を制御する。
従って、この制御装置は、第1吐出能力変更手段である第1電動モータ11bの作動を制御する第1吐出能力制御手段としての機能、第2吐出能力変更手段である第2電動モータ21bの作動を制御する第2吐出能力制御手段としての機能を兼ね備えている。もちろん、第1吐出能力制御手段、第2吐出能力制御手段を異なる制御装置で構成してもよい。
また、制御装置には、外気温を検出する外気センサ、庫内温度を検出する庫内温度センサ等のセンサ群(図示せず)の検出値や、冷凍機を作動させる作動スイッチ等が設けられた操作パネル(図示せず)の各種操作信号が入力される。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図2のモリエル線図に基づいて説明する。操作パネルの作動スイッチが投入されると、制御装置が第1、第2電動モータ11b、21b、冷却ファン12a、可変絞り機構18、送風ファン19a、流量調整弁38を作動させる。これにより、圧縮機10が冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。
圧縮機10の第1圧縮手段11aから吐出された冷媒の状態は、図2のa2点である。第1圧縮手段11aから吐出された高温高圧状態の気相冷媒は、放熱器12へ流入し、冷却ファン12aから送風された送風空気(外気)と熱交換して、放熱して凝縮する(a2点→b2点)。
放熱器12にて放熱した冷媒は、エジェクタ13のノズル部13aへ流入して等エントロピ的に減圧膨張する(b2点→c2点)。そして、この減圧膨張時に冷媒の圧力エネルギが速度エネルギに変換されて、冷媒がノズル部13aの冷媒噴射口から高速度となって噴射される。この噴射冷媒の冷媒吸引作用により、冷媒吸引口13bから吸引側分岐部22にて分岐された一方の冷媒が吸引される。
そして、ノズル部13aから噴射された噴射冷媒と冷媒吸引口13bから吸引された吸引冷媒がエジェクタ13のディフューザ部13cに流入して混合される(c2点→d2点およびi2点→d2点)。ディフューザ部13cでは通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換されるため、冷媒の圧力が上昇する(d2点→e2点)。
ディフューザ部13cから流出した冷媒は、アキュムレータ17に流入して気相冷媒および液相冷媒に分離される(e2点→f2点およびe2点→g2点)。アキュムレータ17の気相冷媒出口から流出した気相冷媒は、圧縮機10の中間圧ポートから第1圧縮手段11aに吸入される。
一方、アキュムレータ17の液相冷媒出口から流出した液相冷媒は、可変絞り機構18にてさらに等エンタルピ的に減圧膨張されて、その圧力を低下させる(g2点→h2点)。可変絞り機構18にて減圧膨張された冷媒は、吸引側蒸発器19へ流入して、送風ファン19aにより循環送風される庫内空気から吸熱して蒸発する(h2点→i2点)。
これにより、庫内空気が冷却される。この際、制御装置は、吸引側蒸発器19における冷媒蒸発温度が操作パネルにて設定された温度となるように、可変絞り機構18の絞り開度を調整する。吸引側蒸発器19から流出した冷媒の流れは、吸引側分岐部22へ流入して、エジェクタ13の冷媒吸引口13b側へ流入する冷媒流れと、流量調整弁38側へ流入する冷媒流れとに分流される。
ここで、流量調整弁38側へ流入する冷媒流量Gβに対する冷媒吸引口13b側へ流入する冷媒流量Gαとの流量比Gα/Gβは、流量調整弁38の弁開度に応じて決定される。吸引側分岐部22から冷媒吸引口13b側へ流入した冷媒は、前述の如く、冷媒吸引口13bからエジェクタ13の内部へ吸引される(i2点→d2点)。
一方、吸引側分岐部22から流量調整弁38側へ流入した冷媒は、流量調整弁38を通過する際に、その圧力損失によって圧力低下する(i2点→j2点)。さらに、流量調整弁38にて流量調整された冷媒は、圧縮機10の第2圧縮手段21aへ吸入されて、中間圧となるまで圧縮される(j2点→k2点)。
この際、制御装置は、エジェクタ式冷凍サイクル100全体としてのCOPが略最大に近づくように、第1、第2圧縮手段11a、21aおよび流量制御弁38の作動を制御する。
具体的には、制御装置は、冷媒吸引口13bから吸引される吸引冷媒流量、すなわち冷媒流量Gαが予め定めた流量以上となるように、流量制御弁38の作動を制御する。さらに、制御装置は、上記の如く流量制御弁38の作動を制御した状態で、第1、第2圧縮手段11a、21aの機械効率を向上させるために、第1、第2圧縮手段11a、21aの昇圧量が略同等となるように制御する。
なお、圧縮効率とは、第1、第2圧縮手段11a、21aにて冷媒が等エントロピ圧縮された際の冷媒のエンタルピの増加量をΔH1としたときに、この増加量ΔH1を、実際に第1、第2圧縮手段11a、21aにて冷媒が昇圧された際の冷媒のエンタルピ増加分ΔH2で除した値である。
例えば、第1、第2圧縮手段11a、21aの回転数や昇圧量(吐出圧力と吸入圧力との圧力差)が増加すると、その摩擦熱によって冷媒の温度が上昇して実際のエンタルピ増加分ΔH2が増加するため、圧縮効率も低下することになる。
第2圧縮手段21aにて昇圧された中間圧冷媒は、圧縮機10内でアキュムレータ17の気相冷媒出口から流出した冷媒と混合される(f2点→l2点およびk2点→l2点)。この混合冷媒は、第1圧縮手段11aに吸入されて再び圧縮される(l2点→a2点)。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100は、上述の如く作動するので、吸引側蒸発器19にて冷媒に吸熱作用を発揮させて冷凍庫内を冷却することができる。
さらに、流量調整弁38の弁開度が、エジェクタ13の冷媒吸引口13bから確実に冷媒を吸引できるように調整されるので、エジェクタ13のディフューザ部13cが確実に昇圧作用を発揮できる。従って、上述したエジェクタ13の昇圧作用による圧縮機10の動力低減効果を確実に得ることができる。
しかも、エジェクタ13の昇圧作用による圧縮機10の動力低減効果を確実に得ながら、第1、第2圧縮手段11a、21aにおける吸入圧力と吐出圧力との圧力差を縮小させるように中間圧を制御できるので、上述したエコノマイザ式冷凍サイクルと同様の圧縮効率向上効果を得ることもできる。
その結果、圧縮手段の圧縮効率向上効果と駆動動力低減効果との双方の効果を充分に得ることができ、エジェクタ式冷凍サイクルのCOPを効果的に向上させることができる。
さらに、第1圧縮手段11aにアキュムレータ17の気相冷媒出口から飽和気相冷媒を吸入させることができるので、第2圧縮手段21a吐出冷媒のみを吸入させる場合に対して、第1圧縮手段11aにおいて冷媒を等エントロピ的に圧縮する際の圧縮仕事量を低減させて、より一層、COPを向上できる。
しかも、放熱器12から流出した冷媒を、直接エジェクタ13のノズル部13aへ流入させるので、エジェクタ13のノズル部13aにおける減圧量、すなわちノズル部13a入口側圧力とノズル部13a出口側圧力との間の圧力差が大きくなる。これにより、ノズル部13a入口側冷媒のエンタルピとノズル部13a出口側冷媒のエンタルピとの差が増加して回収エネルギ量を増加させることができ、より一層、COPを向上できる。
本実施形態の如く、効果的にCOPを向上できることは、高圧冷媒と低圧冷媒との圧力差が大きい冷凍サイクル装置、例えば、本実施形態のように吸引側蒸発器19の冷媒蒸発温度を−30〜−10℃といった極低温まで低下させる冷凍サイクル装置において、極めて有効である。
(第2実施形態)
本実施形態では、図3の全体構成図に示すように、第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100に対して、放熱器12出口側からエジェクタ13のノズル部13a入口側へ流出する冷媒を減圧膨張させる高圧側減圧手段としての固定絞り14を追加した例を説明する。この固定絞り14としては、キャピラリチューブ、オリフィス等を採用できる。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
次に、本実施形態の作動を図4のモリエル線図に基づいて説明する。なお、図4における冷媒の状態を示す符号は、図2における同様の冷媒の状態を示す符号と同一の符号を用いるとともに添字のみを変更している。このことは、以下の実施形態で説明するモリエル線図においても同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100を作動させると、放熱器12から流出した冷媒が固定絞り14にて気液二相状態となるまで減圧膨脹される(b4点→b’4点)。そして、固定絞り14から流出した冷媒がエジェクタ13のノズル部13aへ流入する。その他の作動は、第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、固定絞り14の減圧作用により、エジェクタ13のノズル部13aへ気液二相状態の冷媒を流入させることができ、ノズル部13aへ液相冷媒を流入させる場合に対して、ノズル部13aにおける冷媒の沸騰を促進させることができ、ノズル効率を向上させることができる。
これにより、エジェクタ13の回収エネルギ量を増加させて、ディフューザ部15cにおける昇圧能力を増加させることができるので、より一層、COPを向上できる。さらに、ノズル部13aへ液相冷媒を流入させる場合に対して、ノズル部13aの冷媒通路面積を拡大することができるので、ノズル部13aの加工が容易となる。その結果、エジェクタ13の製造コストを低減できる。
なお、本実施形態では、高圧側減圧手段として固定絞り14を採用した例を説明したが、高圧側減圧手段として、可変絞り機構を採用してもよい。例えば、高圧側減圧手段として、吸引側蒸発器19出口側冷媒の過熱度が予め定めた範囲となるように弁開度を調整する温度式膨脹弁、電気式膨脹弁等を採用してもよい。
(第3実施形態)
本実施形態では、図5の全体構成図に示すように、第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100に対して、内部熱交換器30を追加した例を説明する。この内部熱交換器30は、高圧側冷媒流路30aを通過する放熱器12流出冷媒と、低圧側冷媒流路30bを通過するサイクルの低圧側冷媒との間で熱交換を行うものである。
より具体的には、本実施形態におけるサイクルの低圧側冷媒は、圧縮機10の第2圧縮手段21aへ吸入される冷媒である。また、内部熱交換器30の具体的構成としては、高圧側冷媒流路30aを形成する外側管の内側に低圧側冷媒流路30bを形成する内側管を配置する二重管方式の熱交換器構成を採用している。もちろん、高圧側冷媒流路30aを内側管として、低圧側冷媒流路30bを外側管としてもよい。
さらに、高圧側冷媒流路30aと低圧側冷媒流路30bとを形成する冷媒配管同士をろう付け接合して熱交換させる構成等を採用してもよい。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
次に、本実施形態の作動を図6のモリエル線図に基づいて説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100を作動させると、内部熱交換器30の作用によって、第1実施形態に対して、流量調整弁38から流出した低圧冷媒のエンタルピが増加し(j6点→j’6点)、放熱器12から流出した高圧冷媒のエンタルピが減少する(b6点→b’6点)。その他の作動は、第1実施形態と同様である。
これにより、ノズル部13aから噴射される噴射冷媒の乾き度を低下させて、噴射冷媒の流速を低下させることができるので、ディフューザ部13cから流出する冷媒圧力を低下させることができる。従って、アキュムレータ17内の冷媒のエンタルピを減少させて、アキュムレータ17から吸引側蒸発器19へ流入する液相冷媒のエンタルピも減少させることができる。
従って、第1実施形態と同様の効果を得ることができるだけでなく、吸引側蒸発器19の入口側冷媒のエンタルピと出口側冷媒のエンタルピとのエンタルピ差を拡大させることができる。その結果、エジェクタ式冷凍サイクル100の発揮できる冷凍能力を増大させて、より一層、COPを向上できる。
(第4実施形態)
本実施形態では、図7の全体構成図に示すように、第3実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100に対して、内部熱交換器30の構成を変更した例を説明する。
より具体的には、本実施形態におけるサイクルの低圧側冷媒は、吸引側蒸発器19から流出した冷媒のうち、吸引側分岐部22からエジェクタ13の冷媒吸引口13bへ吸引される冷媒である。もちろん、サイクルの低圧側冷媒を吸引側分岐部22から流量調整弁38側へ流出した冷媒としてもよい。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
次に、本実施形態の作動を図8のモリエル線図に基づいて説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100を作動させると、内部熱交換器30の作用によって、吸引側分岐部22から冷媒吸引口13b側へ流入する冷媒のエンタルピが増加し(i8点→i’8点)、放熱器12から流出した液相冷媒のエンタルピが減少する(b8点→b’8点)。その他の作動は、第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100を作動させると、第1実施形態と同様の効果を得ることができるだけでなく、第3実施形態と同様に、吸引側蒸発器19の入口側冷媒のエンタルピと出口側冷媒のエンタルピとのエンタルピ差を拡大させることができ、エジェクタ式冷凍サイクル100の発揮できる冷凍能力を増大させることができる。その結果、より一層、COPを向上できる。
(第5実施形態)
本実施形態では、図9の全体構成図に示すように、第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100に対して、エジェクタ13出口側(具体的には、ディフューザ部13c出口側)と圧縮機10の中間圧ポート10cとの間に流出側蒸発器16を配置した例を説明する。
この流出側蒸発器16の基本的構成は、吸引側蒸発器19と同様である。さらに、流出側蒸発器16は、エジェクタ13から流出した冷媒と送風ファン16aから送風された送風空気とを熱交換させることによって、エジェクタ13流出冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。
従って、本実施形態では、送風ファン16aから送風された送風空気も熱交換対象流体となる。送風ファン16aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。その他の構成は第1実施形態と同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルを作動させると、第1実施形態と同様に吸引側蒸発器19において吸熱作用を発揮させることができるだけでなく、流出側蒸発器16において、図10のモリエル線図に示すように、e10点からe’10点へ至る過程の液相冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることができる。これにより、送風ファン16aからの送風空気も冷却できる。その他の作動は第1実施形態と同様である。
この際、流出側蒸発器16では、吸引側蒸発器19における冷媒蒸発温度よりも高い温度で冷媒が蒸発する。つまり、吸引側蒸発器19および流出側蒸発器16では、異なる温度帯で冷媒が蒸発する。これにより、本実施形態では、第1実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、例えば、送風ファン16aで0℃〜10℃の低温で食料、飲料などを保存する冷蔵庫内の庫内空気を冷却することもできる。
(第6実施形態)
図11、12により、本発明のエジェクタ式冷凍サイクル200を冷凍・冷蔵装置に適用した例を説明する。この冷凍・冷蔵装置は、冷却対象空間である冷蔵庫内を0〜10℃程度の低温まで冷却し、さらに、別の冷却対象空間である冷凍庫内を−30〜−10℃程度の極低温まで冷却するものである。図11は、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200の全体構成図である。
なお、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200は、その前提となる第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100に対して、構成機器の変更およびその接続態様の変更、すなわちサイクル構成を変更したものである。そこで、図11では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。このことは、以下の実施形態で説明する全体構成図においても同様である。
エジェクタ式冷凍サイクル200では、放熱器12出口側に、放熱器12から流出した冷媒の流れを分岐する分岐部32が接続されている。この分岐部32の基本的構成は、吸引側分岐部22と同様である。
分岐部32の一方の冷媒流出口には、エジェクタ13のノズル部13a側が接続され、他方の冷媒流出口には、エジェクタ13の吸引側蒸発器19側が接続される。さらに、エジェクタ13のディフューザ部13cの出口側には、第5実施形態と同様の流出側蒸発器16が接続され、流出側蒸発器16の冷媒出口側には、圧縮機10の中間圧ポート10cが接続されている。
また、分岐部32の他方の冷媒流出口には、吸引側減圧手段である可変絞り機構18を介して、吸引側蒸発器19が接続されている。さらに、吸引側蒸発器19の出口側には、吸引側分岐部22が接続されている。吸引側分岐部22の一方の冷媒流出口には、エジェクタ13の冷媒吸引口13bが接続され、他方の冷媒流出口には、流量調整弁38入口側が接続されている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図10のモリエル線図に基づいて説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200を作動させると、放熱器12から流出した冷媒は、分岐部32にて、エジェクタ13のノズル部13a側へ流入する冷媒流れとエジェクタ13の吸引側蒸発器19側へ流入する冷媒流れとに分流される。
ここで、本実施形態では、吸引側蒸発器19の冷媒蒸発温度が予め定めた温度となった時に、ノズル部13a側へ流入する冷媒流量Gnozと冷媒吸引口13b側へ流入する冷媒流量Geとの流量比Ge/Gnozが、サイクル全体として高いCOPを発揮できる最適流量比となるように、ノズル部13aおよび可変絞り機構18の流量特性(圧力損失特性)が決定されている。
分岐部32からノズル部13a側へ流出した中間圧冷媒は、ノズル部13a→ディフューザ部13cの順に流れ(b12点→c12点→d12点→e12点)、流出側蒸発器16へ流入する。
流出側蒸発器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aによって循環送風された冷蔵庫内空気から吸熱して蒸発する(e12点→f12点)。これにより、冷蔵庫内空気が冷却される。そして、流出側蒸発器16から流出した冷媒は、圧縮機10の中間圧ポート10cから第1圧縮手段11aに吸入される。
一方、分岐部32から吸引側蒸発器19側へ流出した中間圧冷媒は、可変絞り機構18にてさらに等エンタルピ的に減圧膨張されて、その圧力を低下させる(b12点→h12点)。可変絞り機構18にて減圧膨張された冷媒は、吸引側蒸発器19へ流入して、送風ファン19aにより循環送風される冷凍庫内空気から吸熱して蒸発する(h12点→i12点)。これにより、冷凍庫内空気が冷却される。
吸引側蒸発器19から流出した冷媒の流れは、吸引側分岐部22へ流入して、エジェクタ13の冷媒吸引口13b側へ流入する冷媒流れと、流量調整弁38側へ流入する冷媒流れとに分流される。
吸引側分岐部22から冷媒吸引口13b側へ流出した冷媒は、冷媒吸引口13bから吸引される(i12点→d12点)。一方、吸引側分岐部22から流量調整弁38側へ流入した冷媒は、流量調整弁38にて流量調整される際にその圧力を低下させ、第2圧縮手段21aへ吸入されて中間圧となるまで昇圧される(i12点→j12点→k12点)。
第2圧縮手段21aにて昇圧された中間圧冷媒は、圧縮機10内で流出側蒸発器16から流出した冷媒と混合される(f12点→l12点およびk12点→l12点)。混合冷媒は、第1圧縮手段11aに吸入されて再び圧縮される(l2点→a2点)。その他の作動は、第1実施形態と同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200は、上述の如く作動するので、冷蔵庫内および冷凍庫内を冷却することができる。つまり、分岐部22において、流量比Ge/Gnozが最適流量比となるように、冷媒の流れを分流しているので、流出側蒸発器16および吸引側蒸発器19の双方へ適切に冷媒を供給できる。従って、流出側蒸発器16および吸引側蒸発器19の双方で同時に冷却作用を発揮できる。
この際、吸引側蒸発器19の冷媒蒸発圧力はディフューザ部13cで昇圧した後にさらに可変絞り機構18で減圧した後の圧力となり、流出側蒸発器16の冷媒蒸発圧力は、吸引側蒸発器19の冷媒蒸発圧力を第2圧縮機21およびディフューザ部13cで昇圧した後の圧力となる。
従って、流出側蒸発器16の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)よりも吸引側蒸発器19の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)を十分に低くすることができる。その結果、流出側蒸発器16を低温の冷蔵庫内の冷却用として用い、吸引側蒸発器19を極低温の冷凍庫内の冷却用として用いることができる。
さらに、第1実施形態と同様に、エジェクタ13の昇圧作用による圧縮機10の動力低減効果とエコノマイザ式冷凍サイクルと同様の圧縮効率向上効果との双方の効果を充分に得ることができ、エジェクタ式冷凍サイクルのCOPを効果的に向上させることができる。
しかも、本実施形態では、圧縮機10→放熱器12→分岐部32→エジェクタ13→流出側蒸発器16→圧縮機10の順に冷媒が流れ、圧縮機10→放熱器12→分岐部22→可変絞り機構18→吸引側蒸発器19→吸引側分岐部22→エジェクタ13→流出側蒸発器16→圧縮機10という順に冷媒が流れ、さらに、圧縮機10→放熱器12→分岐部22→可変絞り機構18→吸引側蒸発器19→吸引側分岐部22→流量調整弁38→圧縮機10という順に冷媒が流れる。
つまり、流出側蒸発器16および吸引側蒸発器19といった蒸発器を通過する冷媒の流れが環状となるので、冷媒に第1、第2圧縮機11、21の潤滑用のオイル(冷凍機油)を混入させても、このオイルが流出側蒸発器16および吸引側蒸発器19内等に滞留してしまうことを回避できる。
(第7実施形態)
本実施形態では、図13の全体構成図に示すように、第6実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200に対して、流出側蒸発器16および送風ファン16aを廃止し、さらに、アキュムレータ17および内部熱交換器30を追加した例を説明する。なお、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200は、第1実施形態と同様の冷凍機に適用されている。
この内部熱交換器30は、高圧側冷媒流路30aを通過する分岐部32から可変絞り機構18側へ流出した高圧側冷媒と低圧側冷媒流路30bを通過する吸引側蒸発器19から流出したサイクルの低圧側冷媒との間で熱交換を行うものである。より具体的には、本実施形態におけるサイクルの低圧側冷媒は、流出側蒸発器19から流出した冷媒である。
もちろん、第3実施形態と同様に、サイクルの低圧側冷媒を第2圧縮手段21aへ吸入される冷媒としてもよい。その他の構成は、第6実施形態と同様である。
次に、本実施形態の作動を図14のモリエル線図に基づいて説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200を作動させると、内部熱交換器30の作用によって、第6実施形態に対して、吸引側蒸発器19から流出した冷媒のエンタルピが増加し(i14点→i’14点)、分岐部32から吸引側蒸発器19側へ流出した冷媒のエンタルピが減少する(b14→b’14点)。
また、エジェクタ13のディフューザ部13cから流出した冷媒は、流出側蒸発器16が廃止されているので、アキュムレータ17に流入して気液分離される(e14点→f14点)。そして、アキュムレータ17にて分離された気相冷媒が、圧縮機10の中間圧ポート10cから第1圧縮手段11aに吸入される。その他の作動は、第6実施形態と同様である。
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200を作動させると、吸引側蒸発器19における冷媒の吸熱作用によって、冷凍庫内を冷却することができる。さらに、第1実施形態と同様に、エジェクタ13の昇圧作用による圧縮機10の動力低減効果とエコノマイザ式冷凍サイクルと同様の圧縮効率向上効果との双方の効果を充分に得ることができ、エジェクタ式冷凍サイクルのCOPを効果的に向上させることができる。
さらに、内部熱交換器30の作用によって、第6実施形態に対して、吸引側蒸発器19へ流入する冷媒のエンタルピを減少させることができる。従って、吸引側蒸発器19の入口側冷媒のエンタルピと出口側冷媒のエンタルピとのエンタルピ差を拡大させて冷凍能力を増大させることができるので、より一層、COPを向上できる。
しかも、本実施形態では、内部熱交換器30において、分岐部32出口側から可変絞り機構18入口側へ至る冷媒通路を流通する高圧冷媒と冷媒吸引口13bへ吸引される低圧冷媒とを熱交換させているので、分岐部32からノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピを不必要に減少させない。
これにより、更なるCOP向上効果を得ることができる。その理由は、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピを不必要に減少させないことで、ノズル部13aにおける回収エネルギ量を増大できるからである。
このことをより詳細に説明すると、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピが増加するに伴って、等エントロピ線の傾きが緩やかに(小さく)なる。そのため、ノズル部13aにて、同じ圧力分だけ等エントロピ膨張させた場合、ノズル部13a入口側冷媒のエンタルピが高いほど、ノズル部13a入口側冷媒のエンタルピとノズル部13a出口側冷媒のエンタルピとの差(回収エネルギ量)が大きくなる。
従って、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピが増加するに伴って、ノズル部13aにおける回収エネルギ量が増大する。そして、この回収エネルギ量の増大に伴って、ディフューザ部13cにおける昇圧量を増大させることができ、更なるCOP向上効果を得ることができる。
(第8実施形態)
図15、16により、本発明のエジェクタ式冷凍サイクル300を、第6実施形態と同様の冷凍・冷蔵装置に適用した例を説明する。図15は、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル300の全体構成図である。
エジェクタ式冷凍サイクル300では、図15に示すように、第5実施形態に対して、アキュムレータ17を廃止するとともに、エジェクタ13のディフューザ部13cの出口側に、ディフューザ部13c流出冷媒の流れを分岐する分岐部42を設けている。
分岐部42の基本的構成は、吸引側分岐部22と同様である。この分岐部42は、ディフューザ部13cから流出した冷媒の流れを分岐して、流出側蒸発器16側および可変絞り機構18側へ流出させるものである。なお、本実施形態においても可変絞り機構18の出口側には、吸引側蒸発器19の入口側が接続されている。
さらに、分岐部42は、一方の冷媒流出口42bから流出側蒸発器16側へ流出する冷媒の流れ方向、および、他方の冷媒流出口42cから可変絞り機構18側へ流出する冷媒の流れ方向が、ディフューザ部13c出口側から冷媒流入口42aへ流入する冷媒の流れ方向に対して、対象方向に向くとともに鋭角に交わるように略Y字型に形成されている。
従って、分岐部42へ流入した冷媒は、その流れが分岐される際に、不必要に流速を低下させることなく分岐部42から流出していく。これにより、分岐部42においてエジェクタ13から流出した冷媒の流速(動圧)が維持される。もちろん、分岐部42はこれに限定されることなく、略T字型等に形成してもよい。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図16のモリエル線図に基づいて説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル300を作動させると、ディフューザ部13cから流出した冷媒は、分岐部42にて、流出側蒸発器16側へ流入する冷媒流れと可変絞り機構18側へ流入する冷媒流れとに分流される。
ここで、本実施形態では、分岐部42の冷媒流出口42b側の冷媒通路面積を、冷媒流出口42c側の冷媒通路面積よりも大きく設定することにより、流出側蒸発器16側へ流入する冷媒流量G1が可変絞り機構18側へ流入する冷媒流量G2よりも多くなるようにしている。
分岐部42から流出側蒸発器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aによって循環送風された冷蔵庫内空気から吸熱して蒸発する(e16点→f16点)。これにより、冷蔵庫内空気が冷却される。そして、流出側蒸発器16から流出した冷媒は、圧縮機10の中間圧ポート10cから第1圧縮手段11aに吸入される。
一方、分岐部42から可変絞り機構18へ流入した冷媒は、さらに等エンタルピ的に減圧膨張されて、その圧力を低下させる(e16→h16点)。可変絞り機構18にて減圧膨張された冷媒は、吸引側蒸発器19へ流入して、送風ファン19aにより循環送風される冷凍庫内空気から吸熱して蒸発する(h16点→i16点)。これにより、冷凍庫内空気が冷却される。その他の作動は、第5実施形態と同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル300は、第5実施形態と同様に、流出側蒸発器16を低温の冷蔵庫内の冷却用として用い、吸引側蒸発器19を極低温の冷凍庫内の冷却用として用いることができる。
さらに、第5実施形態と同様に、エジェクタ13の昇圧作用による圧縮機10の動力低減効果とエコノマイザ式冷凍サイクルと同様の圧縮効率向上効果との双方の効果を充分に得ることができ、エジェクタ式冷凍サイクルのCOPを効果的に向上させることができる。
さらに、分岐部42から流出側蒸発器16側へ流入する冷媒流量G1が、分岐部42から可変絞り機構18側へ流入する冷媒流量G2よりも多くなるようにしているので、より多くの冷媒を放熱器12にて放熱させることができる。これにより、サイクル全体として冷媒の吸熱量、すなわちサイクルの冷凍能力を拡大することができ、より一層、COPを向上できる。
(第9実施形態)
図17、18により、本発明のエジェクタ式冷凍サイクル400を第6実施形態と同様の冷凍・冷蔵装置に適用した例を説明する。図17は、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル400の全体構成図である。
エジェクタ式冷凍サイクル400では、図17に示すように、放熱器12出口側に、放熱器12から流出した冷媒の流れを分岐する第1分岐部32が接続されている。この第1分岐部32の基本的構成は、第6実施形態の分岐部32と同様である。
第1分岐部32の一方の冷媒流出口には、エジェクタ13のノズル部13aが接続され、他方の冷媒流出口には、第1吸引側減圧手段としての第1可変絞り機構18側が接続されている。
さらに、エジェクタ13のディフューザ部13cの出口側には、第2分岐部42の冷媒流入口42aが接続されている。この第2分岐部42の基本的構成は、第8実施形態の分岐部42と同様である。第2分岐部42の一方の冷媒流出口32bには流出側蒸発器16が接続され、他方の冷媒流出口42cには、第2吸引側減圧手段としての第2可変絞り機構28が接続されている。
なお、第1、第2可変絞り機構18、28の基本的構成は、第1実施形態の可変絞り機構18と同様である。さらに、本実施形態の第1、第2可変絞り機構18、28は、その絞り開度を全閉とすることができる。
従って、第1可変絞り機構18が絞り通路を全閉にすると、放熱器12から流出した冷媒の流れは、第1分岐部32にて分岐されることなく、その全流量がエジェクタ13側へ流出する。また、第2可変絞り機構28が絞り通路を全閉にすると、ディフューザ部13cから流出した冷媒の流れは、第2分岐部42にて分岐されることなく、その全流量が流出側蒸発器16側へ流出する。
第1、第2可変絞り機構18、28の出口側には、第1、第2可変絞り機構18、28のそれぞれから流出した冷媒の流れを合流させる合流部20が接続されている。合流部20の基本的構成は、第2分岐部42と同様である。つまり、合流部20では、3つの流入出口20a〜20cのうち2つを冷媒流入口20b、20cとし、1つを冷媒流出口20aとしている。
より具体的には、本実施形態の合流部20では、第1可変絞り機構18から一方の冷媒流入口20bへ流入する冷媒の流れ方向、および、第2可変絞り機構28から他方の冷媒流入口20cへ流入する冷媒の流れ方向が、冷媒流出口20aから吸引側蒸発器19へ流出する冷媒の流れ方向に対して、対象方向に向くとともに鋭角に交わるように略Y字型に形成されている。
従って、合流部20へ流入した冷媒は、その流れが合流される際に、不必要に流速を低下させることなく合流部20から流出していく。これにより、合流部20において第1、第2電気式膨張弁19、29から流出した冷媒の流速(動圧)が維持される。合流部20の冷媒流出口20aには、吸引側蒸発器19が接続されている。その他の構成は、第6実施形態と同様である。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図18のモリエル線図に基づいて説明する。ここで、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル400では、制御装置が第1、第2可変絞り機構18、28を、絞り状態あるいは全閉状態に制御することによって、以下の3種類のサイクル構成を実現することができる。
制御装置が第1可変絞り機構18を全閉状態とし、第2可変絞り機構28を絞り状態とした場合は、第2分岐部42のみで冷媒の流れを分岐するサイクル構成を実現できる(以下、このサイクル構成での運転モードを低圧分岐運転モードという)。この低圧分岐運転モードの作動は第8実施形態と同様である。
制御装置が第1可変絞り機構18を絞り状態とし、第2可変絞り機構28を全閉状態とした場合は、第1分岐部32のみで冷媒の流れを分岐するサイクル構成を実現できる(以下、このサイクル構成での運転モードを高圧分岐運転モードという)。この高圧分岐運転モードの作動は第6実施形態と同様である。
制御装置が第1、2電気式膨張弁19、29の双方を絞り状態とした場合は、第1分岐部32および第2分岐部42で同時に冷媒の流れを分岐するサイクル構成を実現できる(以下、このサイクル構成での運転モードを同時分岐運転モードという)。この同時分岐運転モードの作動については、後述する。
また、上記の各運転モードは、サイクルに要求される冷凍能力あるいは外気温に基づいて切り替えられる。本実施形態では、通常の冷凍能力が要求される通常負荷時には、低圧分岐運転モードに切り替え、通常負荷時よりも高い冷凍能力を必要とし、サイクル内を循環する冷媒流量が通常負荷時よりも増加する高負荷時には、高圧分岐運転モードに切り替える。
さらに、通常負荷時よりも冷凍能力を必要とせず、サイクル内を循環する冷媒流量が通常負荷時よりも低下する低負荷時、あるいは、外気温が予め定めた基準温度よりも低下して、サイクルの高低圧差が所定の圧力差よりも小さくなった時に同時分岐運転モードに切り替えるようにしている。
ここで、同時分岐モードにおける作動を図16のモリエル線図に基づいて説明する。同時分岐運転モードでは、放熱器12から流出した冷媒の流れは、第6実施形態と同様に、第1分岐部32(図18のb18点)にて、エジェクタ13のノズル部13a側へ流入する冷媒流れと吸引側蒸発器19側へ流入する冷媒流れとに分流される。
第1分岐部32からノズル部13a側へ流出した冷媒は、ノズル部13a→ディフューザ部13cの順に流れる(b18点→c18点→d18点→e18点)。一方、第1分岐部32から吸引側蒸発器19側へ流出した冷媒は、可変絞り機構18にてさらに等エンタルピ的に減圧膨張されて、その圧力を低下させる(b18点→kα18点)。
ディフューザ部13cから流出した冷媒は、第2分岐部42にて、流出側蒸発器16側へ流入する冷媒流れと第2可変絞り機構28側へ流入する冷媒流れとに分流される。
第2分岐部42から流出側蒸発器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aによって循環送風された冷蔵庫内空気から吸熱して蒸発する(e18点→f18点)。これにより、冷蔵庫内空気が冷却される。そして、流出側蒸発器16から流出した冷媒は、圧縮機10の中間圧ポート10cから第1圧縮手段11aに吸入される。
一方、第2分岐部42から第2可変絞り機構18へ流入した冷媒は、さらに等エンタルピ的に減圧膨張されて、その圧力を低下させる(e18点→hβ18点)。そして、第2可変絞り機構28にて減圧膨張された冷媒は、合流部20にて、第1可変絞り機構18にて減圧された冷媒と合流する(hβ18点→hγ18点およびhα18点→hγ18点)。
合流部20から流出した冷媒は、吸引側蒸発器19へ流入して、送風ファン19aにより循環送風される冷凍庫内空気から吸熱して蒸発する(hγ18点→i18点)。これにより、冷凍庫内空気が冷却される。その他の作動は、第6、第8実施形態と同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル400は、上述の如く作動するので、低圧分岐モードでは、第8実施形態と同様の効果を得ることができる。また、高圧分岐モードでは、第6実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、同時分岐モードにおいても、流出側蒸発器16を低温の冷蔵庫内の冷却用として用い、吸引側蒸発器19を極低温の冷凍庫内の冷却用として用いることができ、第1実施形態と同様に、エジェクタ13の昇圧作用による圧縮機10の動力低減効果とエコノマイザ式冷凍サイクルと同様の圧縮効率向上効果との双方の効果を充分に得ることができ、エジェクタ式冷凍サイクルのCOPを効果的に向上させることができる。
さらに、同時分岐運転モードでは、第1可変絞り機構18および第2可変絞り機構28の双方から流出した冷媒を吸引側蒸発器19へ供給するサイクル構成を実現できる。これにより、第1可変絞り機構18および第2可変絞り機構28のうちいずれか一方から流出した冷媒を吸引側蒸発器19へ供給するサイクル構成に対して、吸引側蒸発器19へ供給される冷媒流量を増加させ易くなる。
(第10実施形態)
本実施形態では、図19の全体構成図に示すように、第6実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200に対して、分岐部32から可変絞り機構18側へ流出した冷媒をさらに放熱させる補助放熱器12eを設けた例を説明する。
補助放熱器12は、放熱器12から流出した高圧冷媒と冷却ファン12aにより送風される庫外空気(外気)とを熱交換させることによって、高圧冷媒をさらに放熱させて冷却する放熱用熱交換器である。また、本実施形態の放熱器12は、第6実施形態に対して、熱交換面積を縮小することによって、その熱交換能力を低下させている。
なお、図19では、図示の明確化のため、冷却ファン12aを放熱器12近傍に配置しているが、この冷却ファン12aは、補助放熱器12eにも庫外空気を送風する。もちろん、放熱器12および補助放熱器12eに、それぞれ独立した送風ファンから庫外空気を送風するようにしてもよい。その他の構成は、第6実施形態と同様である。
次に、本実施形態の作動を図20のモリエル線図に基づいて説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200を作動させると、圧縮機10の第1圧縮手段11aから吐出された冷媒が、第1実施形態と同様に、放熱器12にて放熱して凝縮し、気液二相状態となる(a20点→b20点)。これは、上述の第6実施形態に対して放熱器12の熱交換能力を低下させているからである。
放熱器12から流出した高圧冷媒は、分岐部32へ流入し、エジェクタ13のノズル部13a側へ流入する冷媒流れとエジェクタ13の吸引側蒸発器19側へ流入する冷媒流れとに分流される。
分岐部32からエジェクタ13のノズル部13側へ流入した冷媒は、第6実施形態と同様に、エジェクタ13のノズル部13a→ディフューザ部13c→流出側蒸発器16の順に流れ、圧縮機10の中間圧ポート10cから第1圧縮手段11aへ吸入される(b20点→c20点→d20点→e20点→f20点)。
一方、分岐部32から吸引側蒸発器19側へ流出した高圧冷媒は、補助放熱器12eにてさらに冷却されて、液相状態となる(b20点→b’20点)。補助放熱器12eから流出した冷媒は、可変絞り機構18→吸引側蒸発器19の順に流れて、吸引側分岐部22へ流入する(b’20点→h20点→i20点)。その他の作動は、第6実施形態と同様である。
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200を作動させると、第6実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、放熱器12の熱交換能力を低下させているので、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピを不必要に減少させない。従って、第7実施形態と同様に、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピを減少させないことによるCOP向上効果を得ることができる。
(第11実施形態)
本実施形態では、図21の全体構成図に示すように、第5実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200に対して、内部熱交換器31を追加した例を説明する。内部熱交換器31は、高圧側冷媒流路を構成する吸引側減圧手段としての固定絞り18aを通過する減圧膨張過程の冷媒と、低圧側冷媒流路31bを通過する圧縮機10の第2圧縮手段21a吸入冷媒との間で熱交換を行うものである。
内部熱交換器31の具体的構成としては、低圧側冷媒流路31bを形成する外側管の内側に、キャピラリチューブ等で構成される固定絞り18を配置する二重管方式の熱交換器構成を採用している。もちろん、固定絞り18aと低圧側冷媒流路31bを形成する冷媒配管とをろう付け接合して熱交換させる構成等を採用してもよい。
さらに、吸引側減圧手段として可変絞り機構18を採用する場合は、可変絞り機構18の絞り通路の外周表面に低圧側冷媒流路31bを形成する冷媒配管とをろう付け接合して熱交換させる構成を採用できる。その他の構成は、第6実施形態と同様である。
次に、本実施形態の作動を図22のモリエル線図に基づいて説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200を作動させると、内部熱交換器31の作用によって、第5実施形態に対して、吸引側分岐部22へ流入する冷媒のエンタルピが増加し(i22点→i’22点)、固定絞り18aにおける減圧膨張過程のエンタルピが減少する(b22点→h22点)。
換言すると、固定絞り18aを通過する冷媒は、減圧膨張しながら吸引側蒸発器19流出冷媒の温度と同等となるまで冷却されて、そのエンタルピを減少させる。これにより、第6実施形態に対して、流出側蒸発器16および吸引側蒸発器19へ流入する冷媒のエンタルピを減少させることができる。その他の作動は、第6実施形態と同様である。
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200を作動させると、第6実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、内部熱交換器31の作用によって、第6実施形態に対して、吸引側蒸発器19へ流入する冷媒のエンタルピを減少させることができる。これにより、吸引側蒸発器19の入口側冷媒のエンタルピと出口側冷媒のエンタルピとのエンタルピ差を拡大させて冷凍能力を増大させ、より一層、COPを向上できる。
(第12実施形態)
図23、24により、本発明のエジェクタ式冷凍サイクル500を第6実施形態と同様の冷凍・冷蔵装置に適用した例を説明する。図23は、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル500の全体構成図である。
エジェクタ式冷凍サイクル500では、図23に示すように、圧縮機10の吐出口側に、第6実施形態と同様の分岐部32が接続されている。そして、分岐部32の一方の冷媒流出口には、放熱器12が接続され、他方の冷媒流出口には、分岐冷媒放熱器12dが接続されている。
分岐冷媒放熱器12dは、分岐部32の他方の冷媒流出口から流出した高圧冷媒と、冷却ファン12fにより送風される庫外空気(外気)とを熱交換させて、高圧冷媒を放熱させて冷却する放熱用熱交換器である。
さらに、本実施形態では、第1放熱器12の熱交換面積を、分岐冷媒放熱器12dに対して縮小させることによって、第1放熱器12の熱交換能力(放熱性能)を分岐冷媒放熱器12dの熱交換能力よりも低下させている。冷却ファン12fは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
また、第1放熱器12の出口側には、エジェクタ13のノズル部13aが接続され、分岐冷媒放熱器12dの出口側には、可変絞り機構18が接続されている。その他の構成は、第6実施形態と同様である。
次に、本実施形態の作動を図24のモリエル線図に基づいて説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル500を作動させると、圧縮機10の第1圧縮手段11aから吐出された冷媒(図24のa24点)が、分岐部32へ流入し、第1放熱器12側へ流入する冷媒流れと分岐冷媒放熱器12d側へ流入する冷媒流れとに分流される。
ここで、本実施形態では、第1放熱器12側へ流入する冷媒流量Gr1と分岐冷媒放熱器12d側へ流入する冷媒流量Gr2との流量比Gr1/Gr2が、サイクル全体として高いCOPを発揮できる最適流量比となるように、分岐部32内の各冷媒通路の通路面積(圧力損失特性)が決定されている。
第1放熱器12側へ流入した冷媒は、冷却ファン12aから送風された送風空気(外気)と熱交換して放熱して凝縮する(a24点→b124点)。一方、分岐冷媒放熱器12d側へ流入した冷媒は、冷却ファン12fから送風された送風空気(外気)と熱交換して放熱して凝縮する(a24点→b224点)。
この際、第1放熱器12の熱交換能力が、分岐冷媒放熱器12dの熱交換能力よりも低く設定されているので、第1放熱器12から流出した冷媒のエンタルピは、分岐冷媒放熱器12dから流出した冷媒のエンタルピよりも大きくなる。
第1放熱器12から流出した冷媒は、第6実施形態と同様に、エジェクタ13のノズル部13a→ディフューザ部13c→流出側蒸発器16の順に流れ、圧縮機10の中間圧ポート10cから第1圧縮手段11aへ吸入される(b124点→c24点→d24点→e24点→f24点)。
一方、分岐冷媒放熱器12dから流出した冷媒は、可変絞り機構18→吸引側蒸発器19の順に流れて、吸引側分岐部22へ流入する(b224点→h24点→i24点)。その他の作動は、第6実施形態と同様である。
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル200を作動させると、第6実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、第1放熱器12および分岐冷媒放熱器12dの放熱性能を独立に変化させることができるので、例えば、分岐冷媒放熱器12dの放熱性能と吸引側蒸発器19の吸熱性能とを容易に適合させること、および、第1、2放熱器12、12dの放熱性能と流出側蒸発器16の吸熱性能とを容易に適合させることができる。従って、サイクルの作動を安定化させやすい。
また、第1放熱器12の熱交換能力を、分岐冷媒放熱器12dの熱交換能力よりも低下させているので、エジェクタ13のノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピが不必要に減少してしまうことを回避できる。従って、第7実施形態と同様に、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピを減少させないことによるCOP向上効果を得ることができる。
(第13実施形態)
本実施形態では、図25の全体構成図に示すように、第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100に対して、バイパス通路25および開閉弁26を追加した例を説明する。
バイパス通路25は、圧縮機10の第1圧縮手段11aから吐出された高圧冷媒を、放熱器12を迂回させて、吸引側蒸発器19へ導く冷媒流路である。具体的には、バイパス通路25は、圧縮機10と放熱器12との間および可変絞り機構18と吸引側蒸発器19との間を接続する冷媒配管によって構成されている。
開閉弁26は、バイパス通路25を開閉する開閉手段であって、制御装置から出力される制御信号によって開閉作動が制御される電磁弁である。さらに、開閉弁26が開弁した際の冷媒通路面積は、バイパス通路25の冷媒通路面積よりも小さく形成されている。従って、バイパス通路25を流通する冷媒は、開閉弁26を通過する際に減圧される。
このように開閉弁26として、減圧機能を有する減圧機能付き開閉弁を採用する理由は、圧縮機10入口側冷媒の圧力と出口側冷媒の圧力との圧力差を確保するだけでなく、圧縮機10から吐出した高圧冷媒を直接吸引側蒸発器19へ流入させると、吸引側蒸発器19内の冷媒圧力が吸引側蒸発器19の耐圧を超えてしまうことが懸念されるからである。
そこで、本実施形態では、開閉弁26の冷媒通路面積を小さく形成して、吸引側蒸発器19へ流入する冷媒の圧力を、吸引側蒸発器19の耐圧能力よりも低くなるまで低下させている。
従って、バイパス通路25に、減圧機能を有していない開閉弁26を配置する場合は、バイパス通路25にバイパス通路側減圧手段を配置することが望ましい。そして、このバイパス通路側減圧手段としては、キャピラリチューブ、オリフィス等で構成される固定絞り機構を採用できる。
次に、上記構成における本実施形態の作動を説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル100では、庫内を冷却する通常運転モードと吸引側蒸発器19の除霜を行う除霜運転モードとを切り替えることができる。通常運転モードでは、制御装置が開閉弁26を閉弁状態とする。これにより、第1実施形態と全く同様に作動する。
除霜運転モードでは、制御装置が冷却ファン12aの作動を停止させ、可変絞り機構18を全閉状態とし、さらに、開閉弁26を開く。これにより、圧縮機11の第1圧縮手段11aから吐出された高温冷媒は、バイパス通路25へ流入する。
この際、本実施形態では、圧縮機10→放熱器12→エジェクタ13→アキュムレータ17→圧縮機10の順で循環する冷媒回路の圧力損失に対して、圧縮機10→バイパス通路25→吸引側蒸発器19→エジェクタ13→アキュムレータ17→圧縮機10の順で循環する冷媒回路の圧力損失を小さく設定しているので、圧縮機10から吐出された冷媒の大半がバイパス通路25へ流入する。
もちろん、バイパス通路25の入口側接続部あるいは出口側接続部に、三方弁を配置して、通常運転モードでは、圧縮機10から吐出された冷媒を放熱器12側のみへ流出させ、除霜運転モードでは、圧縮機10から吐出された冷媒をバイパス通路25側のみへ流出させるように冷媒流路を切り替えてもよい。
また、バイパス通路25の入口側接続部から放熱器12入口側へ至る冷媒通路に、減圧機能を有していない通常の補助開閉弁を配置して、通常運転モードでは補助開閉弁を開弁し、除霜運転モードでは補助開閉弁を閉弁するようにして、冷媒流路を切り替えてもよい。
バイパス通路25へ流入した高温高圧冷媒は、開閉弁26を通過する際に、等エンタルピ的に減圧膨脹する(o26点→p26点)。開閉弁26を通過した高温低圧状態の気相冷媒は、可変絞り機構18の絞り開度が全閉状態となっているので、アキュムレータ17側へ流れ込むことなく、吸引側蒸発器19へ流入する。
吸引側蒸発器19へ流入した冷媒は、吸引側蒸発器19にその熱量を放熱する(p26点→Q26点)。これにより、吸引側蒸発器19の除霜がなされる。吸引側蒸発器19にて放熱した冷媒は、エジェクタの冷媒吸引口13b→ディフューザ部13c→アキュムレータ17を通過する際の圧力損失によって減圧される(q26点→r26点)。
アキュムレータ17から流出した気相冷媒は、圧縮機10に吸入されて再び圧縮される(r26点→o26点)。
以上の如く、本実施形態の通常運転モードでは、第1実施形態と全く同様の効果を得ることができる。また、除霜運転モードでは、吸引側蒸発器19の除霜を行うことができる。
なお、本実施形態では、吸引側減圧手段として可変絞り機構18を採用し、除霜運転時に可変絞り機構18の絞り開度を全閉状態としているが、もちろん、吸引側減圧手段として固定絞りを採用し、さらに、吸引側減圧手段出口側とバイパス通路25の接続部との間に配置されて、吸引側減圧手段側から吸引側蒸発器19側へ冷媒が流れることのみを許容する逆止弁を設けてもよい。
(第14実施形態)
次に、図27により、本発明の第13実施形態を説明する。本実施形態では、本発明のエジェクタ式冷凍サイクルを、冷温保存庫に適用している。図27は、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル600の全体構成図である。
このエジェクタ式冷凍サイクル600は、熱交換対象流体である庫内空気を冷却する冷却運転モードと、庫内空気を加熱する加熱運転モードを切替可能に構成されている。なお、図5における実線矢印は、冷却運転モード時における冷媒の流れを示し、破線矢印は、加熱運転モードにおける冷媒の流れを示している。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル600では、圧縮機10の第1圧縮手段11aの吐出口(吐出ポート10d)に、第1電気式四方弁51が接続されている。この第1電気式四方弁51は、制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される冷媒流路切替手段である。
具体的には、第1電気式四方弁51は、圧縮機10の吐出ポート10d側と室外熱交換器53入口側との間および可変絞り機構18出口側と利用側熱交換器54との間を同時に接続する冷媒流路(図27の実線矢印で示す回路)と、圧縮機10吐出ポート10d側と利用側熱交換器54入口側との間および可変絞り機構18出口側と室外熱交換器53入口側との間を同時に接続する冷媒流路(図5の破線矢印で示す回路)とを切り替える。
図27の実線矢印で示す冷媒流路のように、冷却運転モードにおける圧縮機10の吐出ポート10dには、第1電気式四方弁51を介して、室外熱交換器53が接続されている。室外熱交換器53は、その内部を通過する冷媒と送風ファン53aにより送風される室外空気とを熱交換させる熱交換器である。送風ファン53aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
さらに、冷却運転モードにおける室外熱交換器53の出口側には、第2電気式四方弁52が接続されている。この第2電気式四方弁52は、制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される冷媒流路切替手段であり、その基本的構成は、第1電気式四方弁51と同様である。
具体的には、第2電気式四方弁52は、室外熱交換器53出口側と高圧側減圧手段である固定絞り14入口側との間および利用側熱交換器54出口側と吸引側分岐部22入口側との間を同時に接続する冷媒流路(図27の実線矢印で示す回路)と、室外熱交換器53出口側と吸引側分岐部22入口側との間および利用側熱交換器54出口側と固定絞り14入口側との間を同時に接続する冷媒流路(図27の破線矢印で示す回路)とを切り替える。
利用側熱交換器54は、その内部を通過する冷媒と送風ファン54aにより送風される熱交換対象流体である室内送風空気とを熱交換させる熱交換器である。送風ファン54aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
なお、本実施形態の可変絞り機構18は、アキュムレータ17の液相冷媒出口側と第1電気式四方弁51との間に配置されている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
次に、上記構成における本実施形態の作動を説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル600では、庫内空気を冷却する冷却運転モードおよび庫内空気を加熱する加熱運転モードを切り替えることができる。
冷却運転モードは、操作パネルの作動スイッチにより冷却運転モードが選択されると実行される。冷却運転モードでは、制御装置が、第1、第2電動モータ11b、21b、流量調整弁38、送風ファン53a、54aを作動させる。
さらに、制御装置が、圧縮機10の吐出ポート10d側と室外熱交換器53入口側との間および可変絞り機構18出口側と利用側熱交換器54入口側との間を同時に接続するように第1電気式四方弁51を切り替え、室外熱交換器53出口側と固定絞り14入口側との間および利用側熱交換器54出口側と吸引側分岐部22入口側との間を同時に接続するように第2電気式四方弁52を切り替える。
これにより、図27の実線矢印に示すように、圧縮機10の吐出ポート10d(→第1電気式四方弁51)→室外熱交換器53(→第2電気式四方弁52)→固定絞り14→ノズル部13a→アキュムレータ17の気相冷媒出口→圧縮機10の中間圧ポート10cの順に冷媒が循環するとともに、アキュムレータ17の液相冷媒出口→可変絞り機構18(→第1電気式四方弁51)→利用側熱交換器54(→第2電気式四方弁52)→吸引側分岐部22矢印冷媒吸引口13b→アキュムレータ17の順に冷媒が循環し、さらに、吸引側分岐部22→流量調整弁38→圧縮機10の吸入ポート10bが接続される。
従って、圧縮機10の第1圧縮手段11aは、第2圧縮手段21aから吐出された冷媒およびエジェクタ13から流出してアキュムレータ17にて分離された気相冷媒を混合した中間圧冷媒を圧縮して吐出することになる。
さらに、第1圧縮手段11aから吐出された冷媒は室外熱交換器53にて放熱し、室外熱交換器53にて放熱した冷媒は高圧側減圧手段である固定絞り14へ流入する。また、アキュムレータ17で分離された液相冷媒は利用側熱交換器54へ流入し、利用側熱交換器54にて蒸発した冷媒は冷媒吸引口13bから吸引されることになる。
その結果、本実施形態の冷却運転モードでは、室外熱交換器53が第1実施形態における放熱器12に対応し、利用側熱交換器54が第1実施形態における吸引側蒸発器19に対応する構成となり、第1実施形態と同様に作動して庫内空気を冷却でき、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
一方、加熱運転モードは、操作パネルの作動スイッチにより加熱運転モードが選択されると実行される。加熱運転モードでは、制御装置が、第1、第2電動モータ11b、21b、流量調整弁38、送風ファン53a、54aを作動させる。
さらに、制御装置が、圧縮機10の吐出ポート10d側と利用側熱交換器54入口側との間および可変絞り機構18出口側と室外熱交換器53入口側との間を同時に接続するように第1電気式四方弁51を切り替え、室外熱交換器53出口側と吸引側分岐部22入口側との間および利用側熱交換器54出口側と固定絞り14入口側との間を同時に接続するように第2電気式四方弁52を切り替える。
これにより、図27の破線矢印に示すように、圧縮機10の吐出ポート10d(→第1電気式四方弁51)→利用側熱交換器54(→第2電気式四方弁52)→固定絞り14→ノズル部13a→アキュムレータ17の気相冷媒出口→圧縮機10の中間圧ポート10cの順に冷媒が循環するとともに、アキュムレータ17の液相冷媒出口→可変絞り機構18(→第1電気式四方弁51)→室外熱交換器53(→第2電気式四方弁52)→吸引側分岐部22→冷媒吸引口13b→アキュムレータ17の順に冷媒が循環し、さらに、吸引側分岐部22→流量調整弁38→圧縮機10の吸入ポート10bが接続される。
従って、圧縮機10の第1圧縮手段11aは、第2圧縮手段21aから吐出された冷媒およびエジェクタ13から流出してアキュムレータ17にて分離された気相冷媒を混合した中間圧冷媒を圧縮して吐出することになる。
さらに、第1圧縮手段11aから吐出された冷媒は利用側熱交換器54にて放熱し、利用側熱交換器54にて放熱した冷媒は高圧側減圧手段である固定絞り14へ流入する。また、アキュムレータ17で分離された液相冷媒は室外熱交換器53へ流入し、室外熱交換器53にて蒸発した冷媒は冷媒吸引口13bから吸引されることになる。
従って、本実施形態の加熱運転モードでは、室外熱交換器53が第1実施形態における吸引側蒸発器19に対応し、利用側熱交換器54が第1実施形態における放熱器12に対応する構成となり、第1実施形態と同様に作動して庫内空気を加熱でき、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
その結果、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル600を作動させると、冷却運転モードおよび加熱運転モードのいずれの運転モードにおいても、第1実施形態と同様に、エジェクタ13の昇圧作用による圧縮機10の動力低減効果とエコノマイザ式冷凍サイクルと同様の圧縮効率向上効果との双方の効果を充分に得ることができ、エジェクタ式冷凍サイクルのCOPを効果的に向上させることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の各実施形態では、第1、第2圧縮手段11a、21aを、それぞれ異なる第1、第2電動モータ11b、21bにて駆動する例を説明したが、第1、第2圧縮手段11a、21aの回転軸を共通化して、共通する駆動源から供給される駆動力によって双方の圧縮手段を駆動するようにしてもよい。
さらに、上述の各実施形態では、第1、第2圧縮手段11a、21aを異なる圧縮機構で構成して例を説明したが、第1、第2圧縮手段11a、21aを同一の圧縮機構で構成することもできる。
例えば、スクロール型の圧縮機構で、所定の圧縮過程にある圧縮室と連通する連通ポートを設けて、連通ポートを介して中間圧の冷媒を導入する構成を採用できる。この場合は、圧縮室が連通ポートよりも上流側(低圧側)に位置する部位を第2圧縮手段21aとし、連通ポートよりも下流側(高圧側)に位置する部位を第1圧縮手段11aとすればよい。
(2)上述の各実施形態では、第1、第2圧縮手段11a、21aを第1、第2電動モータ11b、21bで駆動する例を説明したが、例えば、エンジン等を駆動源としてもよい。
また、圧縮手段として、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整できる可変容量型圧縮機構を採用してもよい。この場合は、吐出容量変更手段が、吐出能力変更手段となる。また、電磁クラッチの断続により駆動源との接続を断続的に変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機構を使用してもよい。この場合は、電磁クラッチが、吐出能力変更手段となる。
さらに、第1、第2圧縮手段11a、21aとして、同一の形式の圧縮機構を採用してもよいし、異なる形式の圧縮機構を採用してもよい。
(3)上述の実施形態では、エジェクタ13としてノズル部13aの絞り通路面積が固定された固定式のエジェクタ13を採用しているが、ノズル部の絞り通路面積を変更可能に構成された可変エジェクタを採用してもよい。
また、上述の実施形態において、流量調整弁38として、冷媒通路を全閉とすることができる全閉機能付流量調整弁を採用してもよい。流量調整弁を全閉とした場合は、第2圧縮手段21aの作動を停止させることで、従来技術のエジェクタ式冷凍サイクルと同様の作動を実現できる。
(4)上述の実施形態では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用した例を説明したが、冷媒の種類はこれに限定されない。例えば、炭化水素系冷媒、二酸化炭素等を用いてもよい。さらに、本発明のエジェクタ式冷凍サイクルを、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルとして構成してもよい。
さらに、エジェクタ式冷凍サイクル100〜600を超臨界冷凍サイクルとする場合には、高圧側減圧手段として、高圧側冷媒圧力を、放熱器12の出口側の高圧側冷媒温度に基づいてCOPが略最大となるように決定される目標高圧に調整する圧力制御弁を採用してもよい。
このような圧力制御弁としては、具体的に、放熱器12出口側に設けられた感温部を有し、この感温部の内部に放熱器12出口側の高圧冷媒の温度に対応した圧力を発生させ、感温部の内圧と放熱器12出口側の冷媒圧力とのバランスで弁開度を機械的機構により調整する構成を採用できる。
(5)上述の実施形態では、高圧側減圧手段および低圧側減圧手段として、絞り機構を採用しているが、高圧側減圧手段および低圧側減圧手段として、冷媒を体積膨張させて減圧させるとともに、冷媒の圧力エネルギを機械的エネルギに変換して出力する膨張機を採用してもよい。
このような膨張機としては、具体的に、スクロール型、ベーン型、ローリングピストン型といった容積型圧縮手段を採用できる。そして、容積型圧縮手段を圧縮手段として用いる場合の冷媒流れに対して逆流させるように冷媒を流すことで、冷媒を体積膨張させて減圧させながら、機械的エネルギを出力させることができる。
(6)上述の各実施形態に記載された手段は、他の実施形態に適用することができる。例えば、第6、第8〜第13実施形態に対して、第1実施形態と同様のアキュムレータ17を設けてもよい。また、例えば、第6〜第13実施形態に対して、第2実施形態と同様の高圧側減圧手段を設けてもよい。さらに、例えば、第6、第8〜第10、第12、第13実施形態に対して、第2、3実施形態と同様の内部熱交換器30を設けてもよい。
この内部熱交換器30としては、高圧側冷媒流路における冷媒流れ方向と低圧側冷媒流路における冷媒流れ方向が異なる方向となる対向流型の熱交換器を採用してもよいし、高圧側冷媒流路における冷媒流れ方向と低圧側冷媒流路における冷媒流れ方向が同一方向となる並向流型の熱交換器を採用してもよい。
さらに、第10、第12実施形態については、流出側蒸発器16および送風ファン16aを廃止して、内部熱交換器30を採用してもよい。
例えば、図28に示す実施形態では、第10実施形態に対して、流出側蒸発器16および送風ファン16aを廃止して、補助放熱器12eから流出した高圧側冷媒とディフューザ部13cから流出した低圧側冷媒、すなわち第2圧縮手段21aへ吸入される低圧側冷媒とを熱交換させる内部熱交換器30を採用した例である。
また、これに対して、図29に示すように、補助放熱器12eから流出した高圧側冷媒と領域α、β、γに示す冷媒流路を流通する低圧側冷媒、すなわち吸引側蒸発器19から流出した低圧側冷媒とを熱交換させる内部熱交換器30を採用してもよい。この場合は、ディフューザ部13cの出口側にアキュムレータ17を設けることが望ましい。
さらに、例えば、図30に示す実施形態では、第12実施形態に対して、流出側蒸発器16および送風ファン16aを廃止して、分岐冷媒放熱器12dから流出した高圧側冷媒とディフューザ部13cから流出した低圧側冷媒、すなわち第2圧縮手段21aへ吸入される低圧側冷媒とを熱交換させる内部熱交換器30を採用した例である。
また、これに対して、図31に示すように、分岐冷媒放熱器12dから流出した高圧側冷媒と領域α、β、γに示す冷媒流路を流通する低圧側冷媒、すなわち吸引側蒸発器19から流出した低圧側冷媒とを熱交換させる内部熱交換器30を採用してもよい。この場合は、ディフューザ部13cの出口側にアキュムレータ17を設けることが望ましい。
(7)上述の第6、第8〜第12実施形態では、流出側蒸発器16および吸引側蒸発器19にて異なる冷却対象空間(冷蔵庫内空間、冷凍庫内空間)を冷却する例を説明したが、同一の冷却対象空間を冷却するようにしてもよい。この場合は、流出側蒸発器16および吸引側蒸発器19を一体構造に組み付けて、送風ファンから送風された空気を流出側蒸発器16→吸引側蒸発器19の順に通過させることが望ましい。
その理由は、吸引側蒸発器19の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)は、流出側蒸発器16の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)よりも低くなるからである。つまり、送風ファンからの送風空気を上記の如く通過させることで、流出側蒸発器16および吸引側蒸発器19の冷媒蒸発温度と送風空気との温度差を確保して、効率的に送風空気を冷却できる。
(8)上述の第9実施形態では、高負荷運転時に高圧分岐運転モードに切り替え、通常運転時に低圧分岐運転モードに切り替え、さらに、低負荷運転時に同時分岐運転モードに切り替えるようにしているが、もちろん、各運転モードの切り替えは、これに限定されない。
例えば、高負荷運転時に高圧分岐運転モードに切り替え、通常運転時に同時分岐運転モードに切り替え、さらに、低負荷運転時に低圧分岐運転モードに切り替えるようにしてもよい。つまり、エジェクタ式冷凍サイクル400を作動させる際に、いずれかの運転モードのうち最も高いサイクル効率を発揮できる運転モードに切り替えればよい。
また、同時分岐運転モードを実現することなく、高圧分岐運転モードと低圧分岐運転モードとを切り替えるサイクル構成としてもよい。この場合は、第1、第2分岐部22、28を三方弁で構成して冷媒流路を切り替えるようにしてもよい。
(9)第13実施形態では、操作パネルの切替スイッチの操作信号に基づいて、通常運転モードと除霜運転モードとの切り替えを行っているが、通常運転モードと除霜運転モードとの切り替えはこれに限定されない。
例えば、制御装置が、通常運転モードと除霜運転モードとを所定時間毎に交互に切り替えるようにしてもよい。つまり、通常運転モードが予め定めた第1基準時間以上継続された場合に、除霜運転モードへ切り替え、さらに、除霜運転モードが予め定めた第2基準時間以上継続された場合に、通常運転モードへ切り替えるようにしてもよい。
また、上述のバイパス通路25および開閉弁26を第6〜第12実施形態に対して、第12実施形態と同様に適用すれば、エジェクタ式冷凍サイクル200〜500において、除霜運転モードを実現できる。
(10)第14実施形態では、冷媒流路切替手段として、第1、第2電気式四方弁51、52を採用した例を説明したが、冷媒流路切替手段は、これに限定されない。例えば、図32に示すように、電気式四方弁51の代わりに、2つの電気式三方弁51aを組み合わせて構成してもよいし、図33に示すように、4つの開閉弁(電磁弁)51bを組み合わせて構成してもよい。
(11)上述の各実施形態では、本発明のエジェクタ式冷凍サイクル100〜500を冷凍機、冷凍・冷蔵装置、冷温保存庫に適用した例を説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、エジェクタ式冷凍サイクルを、空調装置、その他の定置型の冷凍サイクル装置、車両用空調装置等に適用してもよい。
(12)上述の第1〜第13各実施形態では、流出側蒸発器16および吸引側蒸発器19を利用側熱交換器として、放熱器12を大気側へ放熱する室外熱交換器として構成しているが、第13実施形態のように、流出側蒸発器16および吸引側熱交換器16を大気等の熱源から吸熱する室外側熱交換器として構成し、放熱器12を空気あるいは水等の被加熱冷媒を加熱する室内側熱交換器として構成するヒートポンプサイクルとしてもよい。