(第1実施形態)
図1、2により、本発明のエジェクタ式冷凍サイクルを冷凍・冷蔵装置に適用した例を説明する。この冷凍・冷蔵装置は、冷却対象空間である冷蔵庫内を0〜10℃程度の低温まで冷却し、さらに、別の冷却対象空間である冷凍庫内を−30〜−10℃程度の極低温まで冷却するものである。図1は、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の全体構成図である。
エジェクタ式冷凍サイクル10において、第1圧縮機11は、冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された第1圧縮機構11aを第1電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機である。第1圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
第1電動モータ11bは、後述する制御装置から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、第1圧縮機構11aの冷媒吐出能力が変更される。従って、第1電動モータ11bは、第1圧縮機構11aの冷媒吐出能力を変更する第1吐出能力変更手段を構成している。
第1圧縮機11の吐出口側には、放熱器12が接続されている。放熱器12は第1圧縮機11から吐出された高圧冷媒と冷却ファン12aにより送風される庫外空気(外気)とを熱交換させることによって、高圧冷媒を放熱させて冷却する放熱用熱交換器である。冷却ファン12aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
なお、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用し、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。従って、放熱器12は冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。また、この冷媒には、第1、第2圧縮手段11a、21aを潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油は冷媒とともにサイクルを循環している。
また、放熱器12の出口側に、放熱器12から流出した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を溜めておく高圧側気液分離器としてのレシーバ(受液器)を設けてもよい。そして、このレシーバから分離された飽和液相冷媒を下流側へ導出させるようにしてもよい。
放熱器12の出口側には、放熱器12から流出した高圧冷媒を減圧膨張させる高圧側減圧手段としての温度式膨張弁17が接続されている。より具体的には、本実施形態の温度式膨張弁17は、放熱器12出口側から後述する分岐部18入口側へ至る冷媒通路に配置されている。
この温度式膨張弁17は、後述する流出側蒸発器14出口側冷媒通路に配置された感温部(図示せず)を有しており、流出側蒸発器14出口側冷媒の温度と圧力とに基づいて、流出側蒸発器14出口側冷媒の過熱度を検出し、この過熱度が予め設定された所定値となるように機械的機構により弁開度(冷媒流量)を調整する可変絞り機構である。
温度式膨張弁17の出口側には、温度式膨張弁17から流出した中間圧冷媒の流れを分岐する分岐部18が接続されている。分岐部18は、3つの流入出口を有する三方継手で構成されており、流入出口のうち1つを冷媒流入口とし、2つを冷媒流出口としたものである。このような三方継手は、管径の異なる配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに通路径の異なる複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。
分岐部18の一方の冷媒流出口には、エジェクタ13のノズル部13a側が接続され、他方の冷媒流出口には、エジェクタ13の冷媒吸引口13b側が接続される。エジェクタ13は、冷媒を減圧膨張させる冷媒減圧手段であるとともに、高速で噴出する冷媒流の吸引作用によって冷媒の循環を行う冷媒循環手段でもある。
より具体的には、エジェクタ13は、分岐部18の一方の冷媒流出口から流出した中間圧冷媒の通路面積を小さく絞って、冷媒を等エントロピ的に減圧膨張させるノズル部13a、ノズル部13aの冷媒噴射口と連通するように配置されて、後述する第2圧縮機21から吐出された冷媒を吸引する冷媒吸引口13b等を有して構成される。
さらに、ノズル部13aおよび冷媒吸引口13bの冷媒流れ下流側部位には、ノズル部13aから噴射する高速度の噴射冷媒と冷媒吸引口13bから吸引された吸引冷媒とを混合する混合部13cが設けられ、混合部13cの冷媒流れ下流側には昇圧部をなすディフューザ部13dが設けられている。
ディフューザ部13dは冷媒通路面積を徐々に大きくする形状に形成されており、冷媒流れを減速して冷媒圧力を上昇させる作用、つまり、冷媒の速度エネルギを圧力エネルギに変換する作用を果たす。また、ディフューザ部13dの出口側には、流出側蒸発器14が接続されている。
流出側蒸発器14は、エジェクタ13のディフューザ部13dから流出した冷媒と送風ファン14aによって循環送風される冷蔵庫内空気とを熱交換させることによって、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。従って、流出側蒸発器14における熱交換対象流体は、冷蔵庫内空気である。
送風ファン14aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。流出側蒸発器14の冷媒出口側には、第1圧縮機11の吸引口が接続されている。
また、分岐部18の他方の冷媒流出口には、固定絞り19を介して、吸引側蒸発器16が接続されている。固定絞り19は、分岐部18にて分岐された中間圧冷媒を減圧膨張させる吸引側減圧手段である。この固定絞り19としては、具体的に、オリフィスやキャピラリチューブを採用できる。
吸引側蒸発器16は、固定絞り19にて減圧膨張された低圧冷媒と送風ファン16aにより循環送風される冷凍庫内空気とを熱交換させることによって、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。従って、吸引側蒸発器16における熱交換対象流体は、冷凍庫内空気である。送風ファン16aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
吸引側蒸発器16の出口側には、第2圧縮機21の吸入口が接続されている。第2圧縮機21の基本的構成は第1圧縮機11と同様である。従って、第2圧縮機21は、固定容量型の第2圧縮機構21aを第2電動モータ21bにて駆動する電動圧縮機である。さらに、第2電動モータ21bは、第2圧縮機構21aの冷媒吐出能力を変更する第2吐出能力変更手段を構成している。
また、前述の如く、第2圧縮機21の吐出口には、エジェクタ13の冷媒吸引口13bが接続されている。
図示しない制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。この制御装置は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行って、上述の各種電気式のアクチュエータ11b、12b、14a、16a、21a等の作動を制御する。
従って、この制御装置は、第1吐出能力変更手段である第1電動モータ11bの作動を制御する第1吐出能力制御手段としての機能、および、第2吐出能力変更手段である第2電動モータ21bの作動を制御する第2吐出能力制御手段としての機能を兼ね備えている。もちろん、第1吐出能力制御手段および第2吐出能力制御手段を異なる制御装置で構成してもよい。
また、制御装置には、外気温を検出する外気センサ、冷蔵庫内温度および冷凍庫内温度を検出する庫内温度センサ等の図示しないセンサ群の検出値や、冷凍機を作動させる作動スイッチ等が設けられた図示しない操作パネルの各種操作信号が入力される。
次に、上記構成における本実施形態の作動を図2のモリエル線図に基づいて説明する。操作パネルの作動スイッチが投入されると、制御装置が第1、第2電動モータ11b、21b、冷却ファン12a、送風ファン14a、16aを作動させる。これにより、第1圧縮機11が冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。この時の冷媒の状態は、図2のa2点である。
第1圧縮機11から吐出された高温高圧状態の気相冷媒は放熱器12へ流入し、冷却ファン12aから送風された送風空気(外気)と熱交換して放熱して凝縮する(図2のa2点→b2点)。放熱器12から流出した冷媒は、温度式膨張弁17へ流入して、等エンタルピ的に減圧膨張して気液二相状態となる(図2のb2点→c2点)。
この際、温度式膨張弁17の弁開度は、流出側蒸発器14出口側冷媒の過熱度(図2のg2点)が予め定めた所定値となるように調整される。温度式膨張弁17から流出した中間圧冷媒は、分岐部18へ流入し、エジェクタ13のノズル部13a側へ流入する冷媒流れとエジェクタ13の冷媒吸引口13b側へ流入する冷媒流れとに分流される。
ここで、本実施形態では、ノズル部13a側へ流入する冷媒流量Gnozと冷媒吸引口13b側へ流入する冷媒流量Geとの流量比Ge/Gnozが、サイクル全体として高いCOPを発揮できる最適流量比となるように、ノズル部13aおよび固定絞り19の流量特性(圧力損失特性)が決定されている。
分岐部18からノズル部13a側へ流出した中間圧冷媒は、ノズル部13aで等エントロピ的に減圧膨張する(図2のc2点→d2点)。そして、この減圧膨張時に冷媒の圧力エネルギが速度エネルギに変換されて、冷媒がノズル部13aの冷媒噴射口から高速度となって噴射される。この噴射冷媒の冷媒吸引作用により、冷媒吸引口13bから第2圧縮機21吐出冷媒が吸引される。
さらに、ノズル部13aから噴射された噴射冷媒と冷媒吸引口13bから吸引された吸引冷媒がエジェクタ13の混合部13cにて混合され、ディフューザ部13dに流入する(図2のd2点→e2点、j2点→e2点)。ディフューザ部13dでは通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換されるため、冷媒の圧力が上昇する(図2のe2点→f2点)。
次に、ディフューザ部13dから流出した冷媒は、流出側蒸発器14へ流入し、送風ファン14aによって循環送風された冷蔵庫内空気から吸熱して蒸発する(図2のf2点→g2点)。これにより、冷蔵庫内空気が冷却される。そして、流出側蒸発器14から流出した冷媒は、第1圧縮機11に吸入され、再び圧縮される(図2のg2点→a2点)。
一方、分岐部18から冷媒吸引口13b側へ流出した中間圧冷媒は、固定絞り19にてさらに等エンタルピ的に減圧膨張されて、その圧力を低下させる(図2のc2点→h2点)。固定絞り19にて減圧膨張された冷媒は、吸引側蒸発器16へ流入して、送風ファン16aにより循環送風される冷凍庫内空気から吸熱して蒸発する(図2のh2点→i2点)。これにより、庫内空気が冷却される。
そして、吸引側蒸発器16から流出した冷媒は、第2圧縮機21に吸入され、圧縮される(図2のi2点→j2点)。この際、制御装置は、エジェクタ式冷凍サイクル全体としてのCOPが略最大に近づくように、第1、第2電動モータ11b、21bの作動を制御する。具体的には、第1、第2圧縮機構11a、21aの圧縮効率を向上させるために、第1、第2圧縮機構11a、21aの昇圧量が略同等となるように制御する。
なお、圧縮効率とは、第1、第2圧縮機11、21にて冷媒が等エントロピ圧縮された際の冷媒のエンタルピの増加量をΔH1としたときに、この増加量ΔH1を、実際に第1、第2圧縮機11、21にて冷媒が昇圧された際の冷媒のエンタルピ増加分ΔH2で除した値である。
例えば、第1、第2圧縮機11、21の回転数や昇圧量(吐出圧力と吸入圧力との圧力差)が増加すると、その摩擦熱によって冷媒の温度が上昇して実際のエンタルピ増加分ΔH2が増加するため、圧縮効率も低下することになる。
さらに、第2圧縮機21から吐出された冷媒は、前述の如く、冷媒吸引口13bからエジェクタ13内へ吸引される(図2のj2点→e2点)。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、上述の如く作動するので、以下のような効果を発揮できる。
(A)分岐部18において、流量比Ge/Gnozが最適流量比となるように、冷媒の流れを分流しているので、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16の双方へ適切に冷媒を供給できる。従って、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16の双方で同時に冷却作用を発揮できる。
この際、流出側蒸発器14の冷媒蒸発圧力は、第2圧縮機21およびディフューザ部13dで昇圧した後の圧力となり、一方、吸引側蒸発器16の冷媒蒸発圧力は固定絞り19での減圧直後の圧力となる。
従って、流出側蒸発器14の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)よりも吸引側蒸発器16の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)を十分に低くすることができる。その結果、流出側蒸発器14を低温の冷蔵庫内の冷却用として用い、吸引側蒸発器16を極低温の冷凍庫内の冷却用として用いることができる。
(B)第2圧縮機21(第2圧縮機構21a)を備えているので、例えば、低外気温時等のように、高圧冷媒と低圧冷媒との圧力差が低下して、エジェクタ13の駆動流が流量低下するような運転条件、すなわち、エジェクタ13の吸引能力が低下するような運転条件であっても、第2圧縮機構21aによって、エジェクタ13の吸引能力を補助することができる。
この際、2つの第1、第2圧縮機構11a、21aおよびエジェクタ13のディフューザ部13dの昇圧作用によって冷媒を昇圧できるので、1つの圧縮機構にて冷媒を昇圧する場合に対して、第1、第2圧縮機構11a、21aの駆動動力を低減させてCOPを向上できる。
つまり、ディフューザ部13dの昇圧作用によって、第1圧縮機構11aの吸入圧力を上昇させることで、第1圧縮機構11aの駆動動力を低減できるだけでなく、それぞれの第1、第2圧縮機構11a、21aにおける吸入圧力と吐出圧力との圧力差を縮小できるので、それぞれの第1、第2圧縮機構11a、21aの圧縮効率を向上できる。
さらに、本実施形態では、第1、第2圧縮機構11a、21aの冷媒吐出能力を第1、第2電動モータ11b、21bが独立に変化させることができるので、第1、第2圧縮機構11a、21aの圧縮効率を効果的に向上させることができる。
その結果、駆動流の流量変動が生じてディフューザ部13dの昇圧能力が低下したとしても、エジェクタ式冷凍サイクルを高いCOPを発揮させた状態で安定して作動させることができる。
このことは、例えば、本実施形態のように吸引側蒸発器16の冷媒蒸発温度を−30〜−10℃といった極低温まで低下させる冷凍サイクル装置のように、サイクルの高低圧差を大きく維持しておく必要性がある冷凍サイクル装置では、極めて有効である。
(C)本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、第1圧縮機11→放熱器12→分岐部18→エジェクタ13→流出側蒸発器14→第1圧縮機11の順に冷媒が流れ、さらに、第1圧縮機11→放熱器12→分岐部18→固定絞り19→吸引側蒸発器16→第2圧縮機11→エジェクタ13→流出側蒸発器14→第1圧縮機11という順に冷媒が流れる。
つまり、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16といった蒸発器を通過する冷媒の流れが環状となるので、冷媒に第1、第2圧縮機11、21の潤滑用のオイル(冷凍機油)を混入させても、このオイルが流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16内等に滞留してしまうことを回避できる。
(D)特許文献1のエジェクタ式冷凍サイクルに対して、第1圧縮機11の吸入側に流出側気液分離器としてのアキュムレータを廃止できるので、エジェクタ式冷凍サイクル10全体としての製造コストを低減できる。
(E)高圧側減圧手段として可変絞り機構である温度式膨張弁17を採用しているので、サイクルの負荷変動に応じて、エジェクタ13のノズル部13aへ流入させる冷媒流量を変化させることができる。その結果、負荷変動が生じても、高いCOPを発揮させながら安定してサイクルを作動させることができる。
(F)温度式膨張弁17にて減圧膨張された冷媒(図2のc2点)が気液二相状態となるので、エジェクタ13のノズル部13aへ気液二相状態の冷媒を流入させることができる。
従って、ノズル部13aへ液相冷媒を流入させる場合に対して、ノズル部13aにおける冷媒の沸騰を促進させることができ、ノズル効率を向上させることができる。その結果、回収エネルギ量を増加させて、ディフューザ部13dにおける昇圧量を増加させることができるので、より一層、COPを向上できる。
さらに、ノズル部13aへ液相冷媒を流入させる場合に対して、ノズル部13aの冷媒通路面積を拡大することができるので、ノズル部13aの加工が容易となる。その結果、エジェクタ13の製造コストを低減して、エジェクタ式冷凍サイクル10全体としての製造コストを低減できる。
(第2実施形態)
本実施形態では、図3の全体構成図に示すように、第1実施形態の温度式膨張弁17の配置を、分岐部18出口側からノズル部13a入口側へ至る冷媒通路に変更した例を説明する。なお、図3では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面においても同様である。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
次に、図4のモリエル線図により、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の作動を説明する。なお、図4における冷媒の状態を示す符号は、図2における同様の冷媒の状態を示す符号と同一の符号を用いるとともに、添字のみを変更している。このことは、以下の実施形態で説明するモリエル線図においても同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、放熱器12から流出した冷媒は、分岐部18へ流入し、エジェクタ13のノズル部13a側へ流入する冷媒流れとエジェクタ13の冷媒吸引口13b側へ流入する冷媒流れとに分流される(図4のb4点)。
分岐部18からノズル部13a側へ流出した高圧冷媒は、温度式膨張弁17にて等エンタルピ的に減圧膨張して気液二相状態となる(図4のb4点→c4点)。温度式膨張弁17から流出した中間圧冷媒は、ノズル部13aで等エントロピ的に減圧膨張する(図4のc4点→d4点)。
一方、分岐部18から冷媒吸引口13b側へ流出した高圧冷媒は、固定絞り19にて等エンタルピ的に減圧膨張されて、その圧力を低下させる(図4のb4点→h4点)。その他作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の構成においても、第1実施形態の(A)〜(F)と同様の効果を得ることができる。
さらに、本実施形態では、分岐部18において、極めて乾き度の低い冷媒あるいは液相冷媒の流れを分岐することができるので、気相冷媒と液相冷媒とが不均質な状態で混在する気液二相状態の冷媒の流れを分岐する場合に対して、分岐部18の双方の冷媒流出口から流出する冷媒の状態を同質の状態としやすい。
従って、分岐部18にて、分岐される冷媒の流量比Ge/Gnozを最適流量比に近づけやすくなり、より一層、COPを向上できる。
(第3実施形態)
本実施形態では、図5の全体構成図に示すように、第2実施形態の固定絞り19を廃止して、吸引側減圧手段として冷媒を体積膨張させて減圧させるとともに、冷媒の圧力エネルギを機械的エネルギに変換して出力する膨張機20を設けた例を説明する。
本実施形態では具体的に、膨張機20として、スクロール型の容積型圧縮機構を採用している。もちろん、ベーン型、ローリングピストン型といった他の形式の容積型圧縮機構を採用してもよい。そして、容積型圧縮機構を圧縮機構として用いる場合の冷媒流れに対して逆流させるように冷媒を流すことで、冷媒を体積膨張させて減圧させながら、回転軸を回転させて機械的エネルギ(回転エネルギ)を出力させる。
また、膨張機20の回転軸には、発電機20aの回転軸が直結されている。発電機20aは、膨張機20が出力した機械的エネルギ(回転エネルギ)を電気エネルギに変換して出力するものである。さらに、発電機20aが出力した電気エネルギは、バッテリ20bに貯えられる。その他の構成および作動は、第2実施形態と同様である。
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第1実施形態の(A)〜(F)と同様の効果を得ることができるだけでなく、エジェクタ式冷凍サイクル10全体としてのエネルギ効率を向上できる。
すなわち、本実施形態では、第2実施形態の固定絞り19において、冷媒が等エンタルピ的に減圧膨張する際に損失していたエネルギを膨張機20で機械的エネルギとして回収できる。そして、回収した機械的エネルギを電気エネルギに変換することによって、損失していたエネルギを有効に活用することができる。その結果、エジェクタ式冷凍サイクル10全体としてのエネルギ効率を向上できる。
なお、バッテリ20bに蓄えられた電気エネルギは、エジェクタ式冷凍サイクル10の各種電気式アクチュエータ11b、21b、12a、14a、16aに供給してもよいし、サイクル構成機器以外の外部の電気負荷に供給してもよい。
また、膨張機20にて回収された機械的エネルギを、電気エネルギに変換することなく、そのまま機械的エネルギとして利用してもよい。例えば、膨張器20の回転軸と第1、第2圧縮機構11a、21aの回転軸とを連結して、第1、第2圧縮機構11a、21aの補助動力源として利用すれば、エジェクタ式冷凍サイクル10のCOPを向上できる。
もちろん、膨張機20から出力された機械的エネルギを、外部機器の駆動源として利用してもよい。例えば、外部機器としてフライホイールを採用すれば、膨張機にて回収された機械的エネルギを運動エネルギとして蓄えることができる。また、外部機器として発条装置(ぜんまいばね)を採用すれば、膨張機から出力された機械的エネルギを弾性エネルギとして蓄えることもできる。
(第4実施形態)
本実施形態では、図6の全体構成図に示すように、第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、放熱器12から流出した冷媒とサイクルの低圧側冷媒とを熱交換させる内部熱交換器30を追加した例を説明する。
この内部熱交換器30は、高圧側冷媒流路30aを通過する放熱器12から流出した冷媒と低圧側冷媒流路30bを通過するサイクルの低圧側冷媒との間で熱交換を行うものである。より具体的には、本実施形態における放熱器12から流出した冷媒は、放熱器12出口側から分岐部18入口側へ至る冷媒通路を流通する冷媒であり、サイクルの低圧側冷媒は、第2圧縮機構21aへ吸入される冷媒である。
また、内部熱交換器30の具体的構成としては、高圧側冷媒流路30aを形成する外側管の内側に低圧側冷媒流路30bを形成する内側管を配置する二重管方式の熱交換器構成を採用している。もちろん、高圧側冷媒流路30aを内側管として、低圧側冷媒流路30bを外側管としてもよい。
さらに、高圧側冷媒流路30aと低圧側冷媒流路30bとを形成する冷媒配管同士をろう付け接合して熱交換させる構成等を採用してもよい。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
次に、図7のモリエル線図により、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の作動を説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、内部熱交換器30の作用によって、第1実施形態に対して、第2圧縮機構21a吸入側冷媒のエンタルピが増加し(図7のi7点→i’7点)、温度式膨張弁17へ流入する冷媒のエンタルピが減少する(図7のb7点→b’7点)。
これにより、第1実施形態に対して、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16へ流入する冷媒のエンタルピを減少させることができる。その他の作動は、第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成においても、第1実施形態の(A)〜(F)と同様の効果を得ることができる。さらに、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16の入口側冷媒のエンタルピと出口側冷媒のエンタルピとのエンタルピ差を拡大させて冷凍能力を増大させることができるので、より一層、COPを向上できる。
(第5実施形態)
本実施形態では、図8の全体構成図に示すように、第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、放熱器12の構成を変更した例を説明する。
具体的には、本実施形態の放熱器12は、冷媒を凝縮させる凝縮部12b、凝縮部12bから流出した冷媒の気液を分離する気液分離部12c(レシーバ部)、および、気液分離部12cから流出した液相冷媒を過冷却する過冷却部12dを有する、いわゆるサブクール型凝縮器として構成されている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、図9のモリエル線図に示すように、放熱器12の凝縮部12bで凝縮した冷媒が、気液分離部12cにて気液分離される。さらに、気液分離部12cにて分離された飽和液相冷媒が過冷却部12dにて過冷却化される(図9のb9点→b’9点)。
これにより、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16へ流入する冷媒のエンタルピを減少させることができる。その他の作動は、第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成においても、第1実施形態の(A)〜(F)と同様の効果を得ることができる。さらに、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16の入口側冷媒のエンタルピと出口側冷媒のエンタルピとのエンタルピ差を拡大させて冷凍能力を増大させることができる。
さらに、例えば、第4実施形態の内部熱交換器30を用いる場合のように、第2圧縮機構21a吸入側冷媒(サイクルの低圧側冷媒)のエンタルピを不必要に増加させてしまうことがない(図9のi9点)。従って、第2圧縮機構21a吸入冷媒の密度が低下してしまうことを抑制して、第4実施形態に対して、吸引側蒸発器16における冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)を低下させることもできる。
(第6実施形態)
上述の各実施形態では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用し、亜臨界冷凍サイクルを構成した例を説明したが、本実施形態では、冷媒として二酸化炭素を採用し、第1圧縮機11吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成した例を説明する。さらに、本実施形態では、図10の全体構成図に示すように、第1実施形態に対して、温度式膨張弁17を廃止している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
次に、図11のモリエル線図により、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の作動を説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第1圧縮機11吐出冷媒が放熱器12にて放熱して冷却される。この際、放熱器12を通過する冷媒は、凝縮することなく超臨界状態のまま放熱する(図11のa11点→b11点)。
放熱器12から流出した冷媒は、分岐部18へ流入し、エジェクタ13のノズル部13a側へ流入する冷媒流れと固定絞り19側へ流入する冷媒流れとに分流される(図11のb11点)。分岐部18からノズル部13a側へ流出した超臨界状態の高圧冷媒は、ノズル部13aで等エントロピ的に減圧膨張する(図11のb11点→d11点)。
一方、分岐部18から冷媒吸引口13b側へ流出した超臨界状態の高圧冷媒は、固定絞り19にて等エンタルピ的に減圧膨張されて、その圧力を低下させる(図11のb11点→h11点)。その他の作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の構成においても、第1実施形態の(A)〜(D)と同様の効果を得ることができる。
さらに、超臨界冷凍サイクルでは、高圧側冷媒圧力が亜臨界冷凍サイクルよりも高くなるので、サイクルの高低圧差(図11では、b11点とd11点の圧力差)が拡大し、エジェクタ13のノズル部13aにおける減圧量が増加する。これにより、ノズル部13a入口側冷媒のエンタルピとノズル部13a出口側冷媒のエンタルピとの差(回収エネルギ量)も増加するので、より一層、COPを向上できる。
(第7実施形態)
本実施形態では、図12の全体構成図に示すように、第2実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、流出側蒸発器14および送風ファン14aを廃止している。さらに、エジェクタ13のディフューザ部13dの出口側にアキュムレータ15を追加するとともに、内部熱交換器31を追加した例を説明する。
アキュムレータ15は、ディフューザ部13dから流出した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を溜める流出側気液分離器である。アキュムレータ15の気相冷媒流出口には、第1圧縮機11の吸入口が接続されている。
内部熱交換器31は、高圧側冷媒流路31aを通過する放熱器12から流出した冷媒と低圧側冷媒流路32bを通過するサイクルの低圧側冷媒との間で熱交換を行うものである。この内部熱交換器31の基本的構成は、第4実施形態の内部熱交換器30と同様である。
より具体的には、本実施形態における放熱器12から流出した冷媒は、分岐部18出口側から固定絞り19入口側へ至る冷媒通路を流通する冷媒であり、サイクルの低圧側冷媒は、第2圧縮機構21aへ吸入される冷媒である。その他の構成は、第2実施形態と同様である。
次に、図13のモリエル線図により、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の作動を説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、放熱器12から流出した冷媒は、分岐部18へ流入し、エジェクタ13のノズル部13a側へ流入する冷媒流れとエジェクタ13の冷媒吸引口13b側へ流入する冷媒流れとに分流される(図13のb13点)。
分岐部18からノズル部13a側へ流出した高圧冷媒は、第2実施形態と同様に、温度式膨張弁17→エジェクタ13のノズル部13a→エジェクタ13のディフューザ部13の順に流れる(図13のc13点→d13点→e13点→f13点)。ディフューザ部13dから流出した冷媒は、アキュムレータ15にて気液分離され、分離された気相冷媒は、第1圧縮機11に吸引されて再び圧縮される(図13のf13点→g13点→a13点)。
一方、分岐部18から冷媒吸引口13b側へ流出した高圧冷媒は、内部熱交換器31にて、そのエンタルピを減少させる(図13のb13点→b’13点)。内部熱交換器31の高圧側冷媒流路31aから流出した冷媒は、第2実施形態と同様に、固定絞り19→吸引側蒸発器16の順に流れる(図13のb’13点→h13点→i13点)。
吸引側蒸発器16から流出した冷媒は、内部熱交換器31にて、そのエンタルピを増加させる(図13のi13点→i’13点)。内部熱交換器31の低圧側冷媒流路31bから流出した冷媒は、第2圧縮機21に吸入され、圧縮されて、エジェクタ13の冷媒吸引口13bから吸引される(図13のi’13点→j13点→e13点)。
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、吸引側蒸発器16にて冷却作用を発揮でき、第1実施形態の(B)、(C)、(E)、(F)と同様の効果を得ることができる。さらに、第2実施形態および第4実施形態と同様のCOP向上効果を得ることができる。
さらに、本実施形態では、内部熱交換器31において、分岐部18出口側から固定絞り19入口側へ至る冷媒通路を流通する高圧冷媒と第2圧縮機構21aへ吸入される低圧冷媒とを熱交換させているので、分岐部18からノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピを不必要に減少させない。
これにより、更なるCOP向上効果を得ることができる。その理由は、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピを不必要に減少させないことで、ノズル部13aにおける回収エネルギ量を増大できるからである。
このことをより詳細に説明すると、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピが増加するに伴って、等エントロピ線の傾きが緩やかになる。そのため、ノズル部13aにて、同じ圧力分だけ等エントロピ膨張させた場合、ノズル部13a入口側冷媒のエンタルピが高いほど、ノズル部13a入口側冷媒のエンタルピとノズル部13a出口側冷媒のエンタルピとの差(回収エネルギ量)が大きくなる。
従って、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピが増加するに伴って、ノズル部13aにおける回収エネルギ量が増大する。そして、この回収エネルギ量の増大に伴って、ディフューザ部13dにおける昇圧量を増大させることができ、更なるCOP向上効果を得ることができる。
さらに、第1圧縮機11の吸入側にアキュムレータ15を配置しているので、第1圧縮機11の液圧縮の問題を回避できる。
(第8実施形態)
本実施形態では、図14の全体構成図に示すように、第7実施形態の内部熱交換器31を、第4実施形態と同様の内部熱交換器30に変更した例を説明する。前述の如く、内部熱交換器30では、放熱器12出口側から分岐部18入口側へ至る冷媒通路を流通する高圧冷媒と、第2圧縮機構21aへ吸入される低圧冷媒とを熱交換させる。その他の構成は、第7実施形態と同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、図15のモリエル線図に示すように、内部熱交換器30の作用によって、第2圧縮機構21a吸入側冷媒のエンタルピが増加し(図15のi15点→i’15点)、分岐部18へ流入する冷媒のエンタルピが減少する(図15のb15点→b’15点)。その他の作動は、第7実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成では、第7実施形態に対して、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピを不必要に減少させないことによるCOP向上効果は低減するものの、第7実施形態と同様に、吸引側蒸発器16にて冷却作用を発揮でき、第1実施形態の(B)、(C)、(E)、(F)と同様の効果を得ることができる。さらに、第2実施形態および第4実施形態と同様のCOP向上効果を得ることができる。
(第9実施形態)
本実施形態では、図16の全体構成図に示すように、第7実施形態に対して、アキュムレータ15および内部熱交換器31を廃止し、内部熱交換器32を設けた例を説明する。この内部熱交換器32の基本的構成は、第4実施形態の内部熱交換器30と同様である。内部熱交換器32は、高圧側冷媒流路32aを通過する放熱器12から流出した冷媒と低圧側冷媒流路32bを通過するサイクルの低圧側冷媒との間で熱交換を行うものである。
より具体的には、本実施形態における放熱器12から流出した冷媒は、分岐部18出口側から固定絞り19入口側へ至る冷媒通路を流通する冷媒であり、サイクルの低圧側冷媒は、第1圧縮機構11aへ吸入される冷媒である。その他の構成は、第7実施形態と同様である。
次に、図17のモリエル線図により、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の作動を説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第7実施形態と同様に、放熱器12から流出した冷媒は、分岐部18へ流入し、エジェクタ13のノズル部13a側へ流入する冷媒流れとエジェクタ13の冷媒吸引口13b側へ流入する冷媒流れとに分流される(図17のb17点)。
分岐部18からノズル部13a側へ流出した高圧冷媒は、第7実施形態と同様に、温度式膨張弁17→エジェクタ13のノズル部13a→エジェクタ13のディフューザ部13の順に流れる(図17のc17点→d17点→e17点→f17点)。ディフューザ部13dから流出した冷媒は、内部熱交換器32にて、そのエンタルピを増加させて第1圧縮機構11aへ吸入される(図17のg17点→g’17点)。
一方、分岐部18から冷媒吸引口13b側へ流出した高圧冷媒は、内部熱交換器32にて、そのエンタルピを減少させる(図17のb17点→b’17点)。内部熱交換器32の高圧側冷媒流路32aから流出した冷媒は、固定絞り19→吸引側蒸発器16→第2圧縮機21→エジェクタ13の冷媒吸引口13bの順に流れる(図17のb’17点→h17点→i13点→j17点→e17点)。
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、吸引側蒸発器16にて冷却作用を発揮でき、第1実施形態の(B)〜(F)と同様の効果を得ることができる。さらに、第2実施形態および第4実施形態と同様のCOP向上効果、および、第7実施形態と同様のノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピを不必要に減少させないことによるCOP向上効果を得ることができる。
(第10実施形態)
本実施形態では、図18の全体構成図に示すように、第9実施形態に対して、内部熱交換器32を廃止し、内部熱交換器33を設けた例を説明する。この内部熱交換器33の基本的構成は、第4実施形態の内部熱交換器30と同様である。内部熱交換器33は、高圧側冷媒流路33aを通過する放熱器12から流出した冷媒と低圧側冷媒流路33bを通過するサイクルの低圧側冷媒との間で熱交換を行うものである。
より具体的には、本実施形態における放熱器12から流出した冷媒は、放熱器12出口側から分岐部18入口側へ至る冷媒通路を流通する冷媒であり、サイクルの低圧側冷媒は、第1圧縮機構11aへ吸入される冷媒である。その他の構成は、第9実施形態と同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、図19のモリエル線図に示すように、内部熱交換器33の作用によって、第1圧縮機構11a吸入側冷媒のエンタルピが増加し(図19のg19点→g’19)、分岐部18へ流入する冷媒のエンタルピが減少する(図19のb19点→b’19点)。その他の作動は、第9実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成では、第9実施形態に対して、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピを不必要に減少させないことによるCOP向上効果は低減するものの、第9実施形態と同様に、吸引側蒸発器16にて冷却作用を発揮でき、第1実施形態の(B)〜(F)と同様の効果を得ることができる。さらに、第2実施形態および第4実施形態と同様のCOP向上効果を得ることができる。
(第11実施形態)
本実施形態では、図20の全体構成図に示すように、第7実施形態に対して、放熱器12を第5実施形態と同様のサブクール型凝縮器として構成した例を説明する。その他の構成は、第7実施形態と同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、図21のモリエル線図に示すように、放熱器12の凝縮部12bで凝縮した冷媒が、気液分離部12cにて気液分離される。そして、分離された飽和液相冷媒が過冷却部12dにて過冷却化される(図21のb21点→b’21点)。
さらに、内部熱交換器31の作用によって、第2圧縮機構21a吸入側冷媒のエンタルピが増加し(図21のi21点→i’21点)、固定絞り19へ流入する冷媒のエンタルピが減少する(図21のb’21点→b”21点)。これにより、吸引側蒸発器16へ流入する冷媒のエンタルピを効果的に減少させることができる。その他の作動は、第7実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成においても、第7実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、第5実施形態と同様に、吸引側蒸発器16における冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)を低下させることもできる。
(第12実施形態)
本実施形態では、図22の全体構成図に示すように、第7実施形態の構成に対して、温度式膨張弁17を廃止するとともに、第6実施形態と同様に、冷媒として二酸化炭素を採用して超臨界冷凍サイクルを構成した例を説明する。その他の構成は、第7実施形態と同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、図23のモリエル線図に示すように、第1圧縮機11吐出冷媒が放熱器12にて放熱して冷却される。この際、放熱器12を通過する冷媒は、凝縮することなく超臨界状態のまま放熱する(図23のa23点→b23点)。さらに、放熱器12から流出した冷媒の流れは、分岐部18にて分岐される。
分岐部18からノズル部13a側へ流出した超臨界状態の高圧冷媒は、ノズル部13aで等エントロピ的に減圧膨張する(図23のb23点→d23点)。一方、分岐部18から冷媒吸引口13b側へ流出した超臨界状態の高圧冷媒は、内部熱交換器31にてさらに放熱した後、固定絞り19にて等エンタルピ的に減圧膨張されて、その圧力を低下させる(図23のb23点→b’23点→h23点)。その他の作動は、第7実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成においても、吸引側蒸発器16にて冷却作用を発揮でき、第1実施形態の(B)、(C)と同様の効果を得ることができる。さらに、第2、第4、第6実施形態と同様のCOP向上効果を得ることができる。
(第13実施形態)
本実施形態では、図24の全体構成図に示すように、第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、温度式膨張弁17を廃止し、さらに、分岐部18の冷媒流れ下流側に配置されて、固定絞り19へ流入する冷媒を放熱させる補助放熱器12eを設けた例を説明する。
補助放熱器12は、放熱器12から流出した高圧冷媒と冷却ファン12aにより送風される庫外空気(外気)とを熱交換させることによって、高圧冷媒をさらに放熱させて冷却する放熱用熱交換器である。また、本実施形態の放熱器12は、上述の各実施形態に対して、熱交換面積を縮小することによって、その熱交換能力を低下させている。
なお、図24では、図示の明確化のため、冷却ファン12aを放熱器12近傍に配置しているが、この冷却ファン12aは、補助放熱器12eにも庫外空気を送風する。もちろん、放熱器12および補助放熱器12eに、それぞれ独立した送風ファンから庫外空気を送風するようにしてもよい。
次に、図25のモリエル線図により、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の作動を説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第1圧縮機11から吐出された高温高圧状態の気相冷媒は、放熱器12にて放熱して気液二相状態となる(図25のa25点→b25点)。これは、上述の各実施形態に対して放熱器12の熱交換能力を低下させているからである。
放熱器12から流出した高圧冷媒は、分岐部18へ流入し、エジェクタ13のノズル部13a側へ流入する冷媒流れとエジェクタ13の冷媒吸引口13b側へ流入する冷媒流れとに分流される(図25のb25点)。分岐部18からエジェクタ13のノズル部13側へ流入した冷媒は、エジェクタ13→流出側蒸発器14の順に流れて、第1圧縮機11にて圧縮される(図25のb25点→d25点→e25点→f25点→g25点→f25点)。
一方、分岐部18から冷媒吸引口13b側へ流出した高圧冷媒は、補助放熱器12eにてさらに冷却されて、液相状態となる(図25のb25点→b’25点)。補助放熱器12eから流出した冷媒は、固定絞り19→吸引側蒸発器16の順に流れて、第2圧縮機21にて圧縮されて冷媒吸引口13bから吸引される(図25のb’25点→h25点→i25点→j25点→e25点)。
従って、本実施形態の構成においても、第1実施形態の(A)〜(D)と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態では、放熱器12の熱交換能力を低下させているので、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピを不必要に減少させない。従って、第7実施形態と同様に、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピを減少させないことによるCOP向上を得ることができる。
また、補助放熱器12eの作用によって、吸引側蒸発器16へ流入する冷媒のエンタルピを減少させることができる。これにより、吸引側蒸発器16の入口側冷媒のエンタルピと出口側冷媒のエンタルピとのエンタルピ差を拡大させて冷凍能力を増大させることができ、より一層、COPを向上できる。
(第14実施形態)
本実施形態では、図26の全体構成図に示すように、第13実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、分岐部18出口側からノズル部13a入口側へ至る冷媒通路に温度式膨張弁17を追加したものである。その他の構成は、第13実施形態と同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、図27のモリエル線図に示すように、分岐部18からエジェクタ13のノズル部13側へ流入する冷媒は、温度式膨張弁17にて、等エンタルピ的に減圧膨張する(図27のb27点→c27点)。その他の作動は、第13実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成においても、第13実施形態と同様の効果を得ることができることに加えて、第1実施形態の(E)、(F)と同様の効果を得ることができる。
(第15実施形態)
本実施形態では、図28の全体構成図に示すように、第14実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、第7実施形態と同様の内部熱交換器31を追加した例を説明する。内部熱交換器31は、補助放熱器12e出口側から固定絞り19入口側へ至る冷媒通路を流通する冷媒と、第2圧縮機構21a吸入冷媒とを熱交換させるものである。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、図29のモリエル線図に示すように、内部熱交換器31作用によって、第2圧縮機構21a吸入側冷媒のエンタルピが増加し(図29のi29点→i’29点)、補助放熱器12eから流出した冷媒のエンタルピが減少する(図29のb’29点→b”29点)。その他の作動は、第14実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成においても、第14実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第7実施形態と同様に、内部熱交換器31によるCOP向上効果を得ることができる。
(第16実施形態)
本実施形態では、図30の全体構成図に示すように、第14実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、第9実施形態と同様の内部熱交換器32を追加した例を説明する。本実施形態の内部熱交換器32は、補助放熱器12e出口側から固定絞り19入口側へ至る冷媒通路を流通する冷媒と、第1圧縮機構11a吸入冷媒とを熱交換させる。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、図31のモリエル線図に示すように、内部熱交換器32作用によって、第1圧縮機構11a吸入側冷媒のエンタルピが増加し(図31のg31点→g’31点)、補助放熱器12eから流出した冷媒のエンタルピが減少する(図31のb’31点→b”31点)。その他の作動は、第14実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成においても、第14実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第9実施形態と同様に、内部熱交換器32によるCOP向上効果を得ることができる。
(第17実施形態)
本実施形態では、図32の全体構成図に示すように、放熱器12として第5実施形態と同様のサブクール型凝縮器を採用することによって、第13実施形態と略同等のサイクル構成を実現する例を説明する。
本実施形態では、分岐部18を廃止して、放熱器12の気液分離部12cに液相冷媒を流出させる2つの流出口を設けている。そして、一方の流出口から第5実施形態と同様に過冷却部12dへ飽和液相冷媒を流出させ、他方の流出口からエジェクタ13のノズル部13a側へ飽和液相冷媒を流出させる。つまり、気液分離部12cによって冷媒の流れを分岐する分岐部を構成している。
これにより、放熱器12の凝縮部12bおよび過冷却部12dを、それぞれ第13実施形態の放熱器12および補助放熱器12eと同様に機能させることができる。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、図33のモリエル線図に示すように、第13実施形態とほぼ同様に作動する。
本実施形態の構成では、気液分離部12cによって分岐部を構成しているので、ノズル部13aでは飽和液相冷媒を等エントロピ的に減圧膨張させる(図33のb33点→d33点)。このため、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピを不必要に減少させないことによるCOP向上効果は低減するものの、第13実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第1実施形態の(E)、(F)と同様の効果を得ることができる。
(第18実施形態)
本実施形態では、第13実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10において、第6実施形態と同様に、冷媒として二酸化炭素を採用して超臨界冷凍サイクルを構成した例を説明する。従って、本実施形態におけるエジェクタ式冷凍サイクル10の全体構成は、第13実施形態の図24と同様である。
次に、図34のモリエル線図により、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の作動を説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第1圧縮機11吐出冷媒が放熱器12にて放熱して冷却される。この際、放熱器12を通過する冷媒は、凝縮することなく超臨界状態のまま放熱する(図34のa34点→b34点)。さらに、放熱器12から流出した冷媒の流れは、分岐部18にて分岐される。
分岐部18からノズル部13a側へ流出した超臨界状態の高圧冷媒は、ノズル部13aで等エントロピ的に減圧膨張する(図34のb34点→d34点)。一方、分岐部18から冷媒吸引口13b側へ流出した超臨界状態の高圧冷媒は、補助放熱器12eにてされに冷却された後、固定絞り19にて等エンタルピ的に減圧膨張されて、その圧力を低下させる(図34のb34点→b’34点→h34点)。その他の作動は、第13実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成においても、第13実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第6実施形態と同様のCOP向上効果を得ることができる。
(第19実施形態)
本実施形態では、図35の全体構成図に示すように、第18実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、第7実施形態と同様の内部熱交換器31を追加した例を説明する。内部熱交換器31は、補助放熱器12e出口側から固定絞り19入口側へ至る冷媒通路を流通する冷媒と、第2圧縮機構21a吸入冷媒とを熱交換させるものである。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、図36のモリエル線図に示すように、内部熱交換器31作用によって、第2圧縮機構21a吸入側冷媒のエンタルピが増加し(図36のi36点→i’36点)、補助放熱器12eから流出した冷媒のエンタルピが減少する(図36のb’36点→b”36点)。その他の作動は、第18実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成においても、第18実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第7実施形態と同様に、内部熱交換器31によるCOP向上効果を得ることができる。
(第20実施形態)
本実施形態では、図37の全体構成図に示すように、第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、内部熱交換器34を追加した例を説明する。内部熱交換器34は、高圧側冷媒流路として固定絞り19を通過する減圧膨張過程の冷媒と、低圧側冷媒流路34bを通過する第2圧縮機構21a吸入冷媒との間で熱交換を行うものである。
この内部熱交換器34の具体的構成としては、低圧側冷媒流路34bを形成する外側管の内側に、キャピラリチューブ等で構成される固定絞り19を配置する二重管方式の熱交換器構成を採用している。もちろん、固定絞り19と低圧側冷媒流路30bを形成する冷媒配管とをろう付け接合して熱交換させる構成等を採用してもよい。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
次に、図38のモリエル線図により、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の作動を説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、内部熱交換器34の作用によって、第1実施形態に対して、第2圧縮機構21a吸入側冷媒のエンタルピが増加し(図38のi38点→i’38点)、固定絞り19における減圧膨張過程のエンタルピが減少する(図38のb38点→h38点)。
換言すると、固定絞り19を通過する冷媒は、減圧膨張しながら第2圧縮機構21a吸入冷媒の温度と同等となるまで冷却されて、そのエンタルピを減少させる。これにより、第1実施形態に対して、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16へ流入する冷媒のエンタルピを減少させることができる。その他の作動は、第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成においても、第1実施形態の(A)〜(F)と同様の効果を得ることができる。さらに、内部熱交換器34の作用によって、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16の入口側冷媒のエンタルピと出口側冷媒のエンタルピとのエンタルピ差を拡大させて冷凍能力を増大させることができるので、より一層、COPを向上できる。
(第21実施形態)
本実施形態では、図39の全体構成図に示すように、第2実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、内部熱交換器34を追加した例を説明する。その他の構成は、第2実施形態と同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、図40のモリエル線図に示すように、内部熱交換器34の作用によって、第2実施形態に対して、第2圧縮機構21a吸入側冷媒のエンタルピが増加し(図40のi40点→i’40点)、固定絞り19における減圧膨張過程のエンタルピが減少する(図40のb40点→h40点)。
これにより、第2実施形態に対して、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16へ流入する冷媒のエンタルピを減少させることができる。その他の作動は、第2実施形態と同様である。従って、本実施形態の構成においても、第20実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第2実施形態と同様のCOP向上効果を得ることもできる。
(第22実施形態)
本実施形態では、図41の全体構成図に示すように、第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、内部熱交換器35を追加した例を説明する。
内部熱交換器35は、高圧側冷媒流路として固定絞り19を通過する減圧膨張過程の冷媒と、低圧側冷媒流路34bを通過する第1圧縮機構11a吸入冷媒との間で熱交換を行うものである。この内部熱交換器35の基本的構成は、第20実施形態の内部熱交換器34と同様である。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
次に、図42のモリエル線図により、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の作動を説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、内部熱交換器35の作用によって、第1実施形態に対して、第1圧縮機構11a吸入側冷媒のエンタルピが増加し(図42のg42点→g’42点)、固定絞り19における減圧膨張過程のエンタルピが減少する(図42のc42点→h’42点→h42点)。
換言すると、固定絞り19を通過する冷媒は、減圧膨張しながら第1圧縮機構11a吸入冷媒の温度と同等となるまで冷却されて、そのエンタルピを減少させる。これにより、第2実施形態に対して、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16へ流入する冷媒のエンタルピを減少させることができる。
なお、図42のh’42点→h42点において、固定絞り19通過冷媒が等エンタルピ的に減圧膨張する理由は、固定絞り19通過冷媒は、b’42点に到達すると、第1圧縮機構11a吸入側冷媒と同程度の温度まで冷却されて、以降の熱の授受がなくなってしまうからである。その他の作動は、第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成においても、第1実施形態の(A)〜(F)と同様の効果を得ることができる。さらに、内部熱交換器35の作用によって、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16の入口側冷媒のエンタルピと出口側冷媒のエンタルピとのエンタルピ差を拡大させて冷凍能力を増大させることができるので、より一層、COPを向上できる。
(第23実施形態)
本実施形態では、図43の全体構成図に示すように、第2実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、内部熱交換器35を追加した例を説明する。その他の構成は、第2実施形態と同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、図44のモリエル線図に示すように、内部熱交換器35の作用によって、第2実施形態に対して、第1圧縮機構11a吸入側冷媒のエンタルピが増加し(図44のg44点→g’44点)、固定絞り19における減圧膨張過程のエンタルピが減少する(図42のb44点→h’44点→h44点)。
これにより、第2実施形態に対して、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16へ流入する冷媒のエンタルピを減少させることができる。その他の作動は、第2実施形態と同様である。従って、本実施形態の構成においても、第22実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第2実施形態と同様のCOP向上効果を得ることもできる。
(第24実施形態)
本実施形態では、図45に示すように、第20実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10において、温度式膨張弁17を廃止して、圧力制御弁27を採用するとともに、第6実施形態と同様に、冷媒として二酸化炭素を採用して超臨界冷凍サイクルを構成した例を説明する。
圧力制御弁27は、放熱器12から流出した高圧冷媒を減圧膨張させる高圧側減圧手段であるとともに、高圧側冷媒圧力が目標高圧となるように、弁開度(絞り開度)を機械的機構にて調整する圧力制御手段である。
より具体的には、圧力制御弁27は、放熱器12出口側に設けられた感温部を有し、この感温部の内部に放熱器12出口側の高圧冷媒の温度に対応した圧力を発生させ、感温部の内圧と放熱器12出口側の冷媒圧力とのバランスで弁開度を調整するようになっている。また、目標高圧は、放熱器12の出口側の高圧側冷媒温度に基づいて、COPが略最大となるように決定される値である。
次に、図46のモリエル線図により、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の作動を説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第1圧縮機11吐出冷媒が放熱器12にて放熱して冷却される。この際、放熱器12を通過する冷媒は、凝縮することなく超臨界状態のまま放熱する(図46のa46点→b46点)。
さらに、放熱器12から流出した冷媒の流れは、圧力制御弁27にて等エンタルピ的に減圧膨張されて気液二相状態となる(図46のb46点→c46点)。この際、圧力制御弁27では、COPが略最大となるように決定された目標高圧に近づくように高圧側冷媒圧力を調整する。
分岐部18からノズル部13a側へ流出した冷媒は、ノズル部13aで等エントロピ的に減圧膨張する(図46のc46点→d46点)。一方、分岐部18から冷媒吸引口13b側へ流出した冷媒は、固定絞り19にて減圧膨張しながら、そのエンタルピを減少させる(図46のc46点→h46点)。その他の作動は、第20実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成においても、第1実施形態の(A)〜(F)と同様の効果を得ることができる。さらに、第20実施形態と同様に、内部熱交換器34によるCOP向上効果を得ることができる。なお、本実施形態の圧力制御弁27は、分岐部18出口側からノズル部13a入口側へ至る冷媒通路に配置してもよい。
(第25実施形態)
本実施形態では、図47の全体構成図に示すように、第24実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、圧力制御弁27を廃止した例を説明する。その他の構成は、第24実施形態と同様である。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、図48のモリエル線図に示すように、放熱器12で放熱した超臨界状態の冷媒が分岐部18にて分岐される(図48のb48点)。
分岐部18からノズル部13a側へ流出した高圧冷媒は、ノズル部13aで等エントロピ的に減圧膨張する(図48のb48点→d48点)。一方、分岐部18から冷媒吸引口13b側へ流出した高圧冷媒は、固定絞り19にて減圧膨張しながら、そのエンタルピを減少させる(図48のb48点→h48点)。その他の作動は、第20実施形態と同様である。
従って、本実施形態の構成においても、第1実施形態の(A)〜(D)と同様の効果を得ることができる。さらに、第20実施形態と同様に、内部熱交換器34によるCOP向上効果を得ることができる。
(第26実施形態)
本実施形態では、図49の全体構成図に示すように、第13実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、第9実施形態と同様の内部熱交換器32を追加するとともに、流出側蒸発器14および送風ファン14aを廃止した例を説明する。
この内部熱交換器32は、分岐部18出口側から固定絞り19入口側へ至る冷媒通路を流通する高圧側冷媒のうち、補助放熱器12e出口側から固定絞り19入口側へ至る冷媒通路を流通する冷媒と、ディフューザ部13dから流出して第1圧縮機構11aへ吸入される冷媒とを熱交換させるものである。その他の構成は、第13実施形態と同様である。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、図50のモリエル線図に示すように、内部熱交換器32の作用によって、ディフューザ部13dから流出した冷媒が内部熱交換器32の低圧側冷媒流路32bにて蒸発して、第1圧縮機構11a吸入側冷媒のエンタルピが増加する(図50のf50点→g50点)。さらに、補助放熱器12eから流出した冷媒のエンタルピが減少する(図50のb’50点→b”50点)。
その他の作動は、第13実施形態と同様である。従って、本実施形態では、吸引側蒸発器16にて冷却作用を発揮できるだけでなく、第1実施形態の(B)〜(D)と同様の効果を得ることができる。
さらに、第13実施形態と同様に、ノズル部13aへ流入する冷媒のエンタルピを減少させないことによるCOP向上効果、並びに、吸引側蒸発器16へ流入する冷媒のエンタルピを減少させることによるCOP向上効果を得ることができる。さらに、第9実施形態と同様の内部熱交換器32によるCOP向上効果を得ることができる。
(第27実施形態)
本実施形態では、図51の全体構成図に示すように、第26実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、第7実施形態と同様のアキュムレータ15および吸引側気液分離器15aを追加したものである。
吸引側気液分離器15aは、吸引側蒸発器16から流出した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を溜めるものである。さらに、吸引側気液分離器15aの気相冷媒流出口には、第2圧縮機21の吸入口が接続されている。その他の構成は、第26実施形態と同様である。
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第26実施形態と同様に作動して、吸引側蒸発器16にて冷却作用を発揮でき、第1実施形態の(B)、(C)と同様の効果、および、第26実施形態と同様のCOP向上効果を得ることができる。
また、アキュムレータ15および吸引側気液分離器15aの作用によって、それぞれ、第1、第2圧縮機11、21の液圧縮の問題を回避できる。なお、本実施形態では、アキュムレータ15および吸引側気液分離器15aの双方を設けた例を説明しているが、いずれか一方を設ける構成としてもよい。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、第1、第2圧縮機11、21として、それぞれ別体で構成された圧縮機を採用した例を説明したが、第1、第2圧縮機構11a、21aおよび第1、第2電動モータ11b、21bを一体的に構成してもよい。
例えば、第1、第2圧縮機構11a、21aおよび第1、第2電動モータ11b、21bを同一のハウジング内に収容して一体的に構成してもよい。この場合には、第1、第2圧縮機構11a、21aの回転軸を共通化して、共通する駆動源から供給される駆動力によって双方の圧縮機構を駆動するようにしてもよい。
これにより、第1、第2圧縮機構11a、21aを小型化して、エジェクタ式冷凍サイクル全体としての小型化を図ることができる。
(2)上述の実施形態では、第1、第2圧縮機11、21として、電動圧縮機を採用した例を説明したが、第1、第2圧縮機11、21の形式はこれに限定されない。
例えば、エンジン等を駆動源として、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整できる可変容量型圧縮機を採用してもよい。この場合は、吐出容量変更手段が、吐出能力変更手段となる。また、電磁クラッチの断続により駆動源との接続を断続的に変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機を使用してもよい。この場合は、電磁クラッチが、吐出能力変更手段となる。
さらに、第1、第2圧縮機11、21に、同一の形式の圧縮機構を採用してもよいし、異なる形式の圧縮機構を採用してもよい。
(3)上述の実施形態では、エジェクタ13としてノズル部13aの絞り通路面積が固定された固定式のエジェクタ13を採用しているが、ノズル部の絞り通路面積を変更可能に構成された可変エジェクタを採用してもよい。同様に、吸引側減圧手段として可変絞り機構を採用してもよい。
また、上述の実施形態では、高圧側減圧手段として、流出側蒸発器14出口側冷媒の過熱度が予め設定された所定値となるように調整する温度式膨張弁17を採用しているが、もちろん、吸引側蒸発器16出口側冷媒の過熱度が予め設定された所定値となるように調整する温度式膨張弁を採用してもよい。
さらに、高圧側減圧手段として、絞り開度(弁開度)を外部からの電気的制御信号によって調整可能な電気式膨張弁を採用してもよいし、可変絞り機構を採用することなく、固定絞り19と同様の構成の固定絞り機構を採用してもよい。
また、第6、第12、第18、第25、第26、第27実施形態のように、高圧側減圧手段を廃止してもよいし、さらに、第24実施形態で説明した圧力制御弁27を、その他の実施形態(例えば、第6、第12、第18実施形態)に適用してもよい。
(4)上述の第3実施形態では、吸引側減圧手段として膨張機20を採用した例を説明したが、その他の実施形態においても吸引側減圧手段として膨張機を採用してもよい。さらに、高圧側減圧手段として膨張機を採用してもよい。
(5)上述の第7、第8、第11、第12実施形態では、流出側気液分離器としてのアキュムレータ15を配置したエジェクタ式冷凍サイクルについて説明したが、その他の実施形態においても第1圧縮機構11aの吸入側にアキュムレータ15を配置してもよい。これにより、アキュムレータ15にて分離された気相冷媒のみを第1圧縮機構11aへ供給することができ、第1圧縮機構11aの液圧縮の問題を回避できる。
同様に、上述の第27実施形態では、吸引側気液分離器15aを配置したエジェクタ式冷凍サイクルについて説明したが、その他の実施形態においても第2圧縮機構21aの吸入側に吸引側気液分離器を配置してもよい。これにより、吸引側気液分離器にて分離された気相冷媒のみを第2圧縮機構21aへ供給することができ、第2圧縮機構21aの液圧縮の問題を回避できる。
また、第7、第8、第11、第12、第27実施形態のサイクルからアキュムレータ15を廃止してもよい。
(6)上述の第1〜第6、第13〜第25実施形態では、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16にて異なる冷却対象空間(冷蔵庫内空間、冷凍庫内空間)を冷却する例を説明したが、同一の冷却対象空間を冷却するようにしてもよい。この場合は、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16を一体構造に組み付けて、送風ファンから送風された空気を流出側蒸発器14→吸引側蒸発器16の順に通過させることが望ましい。
その理由は、前述の如く、吸引側蒸発器16の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)は、流出側蒸発器14の冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)よりも低くなるからである。つまり、送風ファンからの送風空気を上記の如く通過させることで、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16の冷媒蒸発温度と送風空気との温度差を確保して、効率的に送風空気を冷却できる。
また、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16を一体構造に組み付ける具体的手段として、例えば、双方の蒸発器14、16の構成部品をアルミニウムで構成してろう付け等の接合手段により一体構造に接合してもよい。さらに、ボルト締め等の機械的係合手段によって一体的に結合する構成でもよい。
また、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16として、フィンアンドチューブタイプの熱交換器を採用し、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16のフィンを共通化し、冷媒を通過させるチューブのパス構成(流路構成)で、2つの蒸発器に分割する構成としてもよい。
さらに、流出側蒸発器14および吸引側蒸発器16にて同一の冷凍庫内を冷却するように構成すると、送風空気流れの下流側の配置される吸引側蒸発器16の冷媒蒸発温度が着霜の生じる温度(0℃以下)になる。これに対して、流出側蒸発器14における冷媒蒸発温度を調整することで、吸引側蒸発器16に流入する送風空気の絶対湿度を予め低下させることができる。
これにより、吸引側蒸発器16における着霜の発生を抑制できる。さらに、着霜による送風空気の流通が妨げられることが防止できるので、吸引側蒸発器16のフィンピッチ等を縮小して、吸引側蒸発器16の小型化を図ることもできる。
(7)上述の実施形態では、第1、第2圧縮機構11a、21aのみを備えるエジェクタ式冷凍サイクル10について説明したが、さらに、追加の圧縮機構を設けてもよい。例えば、第1実施形態の吸引側蒸発器16に対して、並列的に追加の蒸発器を配置して、この蒸発器から流出した冷媒のみを吸入して圧縮するように追加の圧縮機構を設けてもよい。
(8)上述の実施形態では、本発明のエジェクタ式冷凍サイクル10を冷凍・冷蔵装置に適用した例を説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、エジェクタ式冷凍サイクル10を、その他の定置用の冷凍サイクル装置、車両用空調装置等に適用してもよい。
(9)上述の実施形態では、吸引側蒸発器16を利用側熱交換器として、放熱器12を大気側へ放熱する室外熱交換器として構成しているが、逆に、吸引側熱交換器16を大気等の熱源から吸熱する室外側熱交換器として構成し、放熱器12を空気あるいは水等の被加熱冷媒を加熱する室内側熱交換器として構成するヒートポンプサイクルとしてもよい。
(10)上述の各実施形態の内部熱交換器30〜35では、高圧側冷媒流路における冷媒流れ方向と低圧側冷媒流路における冷媒流れ方向について言及していないが、高圧側冷媒流路における冷媒流れ方向と低圧側冷媒流路における冷媒流れ方向が同一方向となる並向流としてもよいし、高圧側冷媒流路における冷媒流れ方向と低圧側冷媒流路における冷媒流れ方向が異なる方向となる対向流としてもよい。また、第26、第27実施形態において、サイクルの低圧側冷媒を第2圧縮機21吸入冷媒としてもよい。