JP5347839B2 - 電源ノイズ解析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電源ノイズ解析装置に関する。
半導体チップを搭載して構成されたプリント配線基板等において、近年は半導体素子が高速でスイッチング動作する際に生じる過渡電流を高速に供給するために電源プレーンとグランドプレーンを有する多層基板を用いるか、両面基板であっても電源ラインとグランドラインを極力低インピーダンスとなるよう構成している。すなわち電源を供給して動作させると、半導体チップのスイッチング動作による過渡電流が電源プレーンとグランドプレーンから流れるため、電源プレーンとグランドプレーン間に高周波電流が誘起される。この電流がプレーンの端部に電位差を生じさせたり、またプレーンに接続するケーブル等に流れることで、電磁放射が発生する。
電磁放射の影響は、基板に実装した状態で測定することで把握できるが、設計段階で電磁放射を予測することができれば、製品開発を効率的に進めることが可能になる。LSI内部の電圧・電流ノイズの影響についてはたとえば特許文献1に示すようにLSI内部回路の自動レイアウトの情報に基づいて電流源及び電源系モデルを作成して行う論理シミュレーションを基にノイズの推定を行うシミュレーション装置及び方法が知られている。
また、電磁放射については、これら従来技術による解析で得られた電流をプリント配線基板の3次元電磁界解析モデルに注入する方法が試みられている(例えば、非特許文献1参照)。
特開平9−55433号公報
藤原修、他「PCBの電磁放射と電源グラウンド層間入力インピーダンスにおける周波数特性の対応関係」電子情報通信学会論文誌2003/8 Vol.J86−B No.8
本発明の目的は、半導体チップの内部インピーダンスを考慮しないで電源系のノイズ解析を行う場合に比べ、ノイズ解析の精度を高めることが可能な電源ノイズ解析装置を提供することにある。
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の電源ノイズ解析装置を提供する。
[1]解析対象の半導体チップの設計データに基づいた前記半導体チップの模擬動作によって得られた電源電流波形から前記半導体チップの内部インピーダンスを推定し、前記内部インピーダンスに基づいて前記半導体チップが実装される基板を含む電源系のノイズ解析を行う解析部を有し、前記解析部は、前記内部インピーダンスのうち、静電容量を前記電源電流波形の過渡周期及び前記半導体チップの電源系のインダクタンスから求める電源ノイズ解析装置。
]前記解析部は、前記半導体チップの過渡応答波形に基づいて前記電源系のノイズ解析を行う前記[1]に記載の電源ノイズ解析装置。
]前記解析部は、前記基板の設計データに基づく電磁界解析によって得られた前記基板の伝達特性情報、前記半導体チップの設計データ、及び前記半導体チップと前記基板との間を接続する導電部の特性情報に基づいて前記基板に実装された状態での前記半導体チップの模擬動作を行い、この模擬動作の結果の情報と前記推定した前記半導体チップの内部インピーダンスとに基づいて前記基板に実装された状態での前記半導体チップの内部電流を推定し、前記内部電流、前記半導体チップの内部インピーダンス、及び前記基板の設計データに基づいて前記電源系のノイズ解析を行う前記[1]又は[2]に記載の電源ノイズ解析装置。
]前記解析部は、前記基板の伝達特性情報を得るための電磁界解析を行うにあたり、前記基板の大きさに基づいて定めた電磁波の基準周波数よりも低い周波数領域における電磁界解析を前記基準周波数よりも高い周波数領域における電磁界解析より低い精度で行う前記[]に記載の電源ノイズ解析装置。
]前記解析部は、前記基準周波数よりも高い周波数領域における電磁界解析で、前記基板の前記半導体チップが実装される部分の電磁界解析を前記基板の他の部分の電磁界解析よりも高い精度で行う前記[]に記載の電源ノイズ解析装置。
]前記解析部は、前記基板の伝達特性の電磁界解析を行うにあたり、前記基板に実装される素子と前記基板の電源層又は基準電位層との接続点を入出力点として有する伝送モデルを用いる前記[]乃至[]のいずれかに記載の電源ノイズ解析装置。
請求項1に記載の発明によれば、半導体チップの内部インピーダンスを考慮しないで電源系のノイズ解析を行う場合に比べ、ノイズ解析の精度を高めることができる。
請求項に記載の発明によれば、半導体チップの模擬動作によって得られた電源電流波形から半導体チップの内部インピーダンスの静電容量を算出することができる。
請求項に記載の発明によれば、半導体チップの過渡応答波形に基づいて、計算量を低減したノイズ解析を行うことができる。
請求項に記載の発明によれば、基板に実装された状態での半導体チップの内部電流に基づくノイズ解析を行うことができる。
請求項に記載の発明によれば、基準周波数よりも低い周波数領域における電磁界解析の計算量を低減できる。
請求項に記載の発明によれば、電源ノイズに与える影響の大きい半導体チップが実装される部分の解析の精度を高めることができる。
請求項に記載の発明によれば、基板に実装される半導体チップの他の素子が電源電流に与える影響を考慮したノイズ解析を行うことができる。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る、電源ノイズ解析装置を示すブロック図である。 図2は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体部品の構造を示す概略図である。 図3は、本発明の第1の実施の形態に係る、半導体チップと基板間の接続を示す模式図である。 図4は、本発明の第1の実施の形態に係る、電源ノイズ解析装置の処理に用いられる電源系等価回路モデルである。 図5は、本発明の第1の実施の形態に係る、電源ノイズ解析装置の処理を示すフローチャートである。 図6は、図5に示す解析処理で用いるパッケージ特性のデータ内容の一例を示す図である。 図7は、本発明の第1の実施の形態に係る、電源ノイズ解析装置によるシミュレーションによって得られた電源電流波形を示す図である。 図8は、本発明の第2の実施の形態に係る、半導体チップと基板間の接続を示す模式図である。 図9は、本発明の第2の実施の形態に係る、基板の静電容量、抵抗及びインダクタンスを考慮した等価回路の一部を示す回路図である。 図10は、本発明の第2の実施の形態に係る、基板を多数のメッシュに分割した例を示す説明図である。 図11は、本発明の第2の実施の形態に係る、電源ノイズ解析装置の処理を示すフローチャートである。 図12は、本発明の第3の実施の形態に係る、基準周波数よりも高周波の周波数領域における解析を行う際のメッシュの分割モデルを示す図である。 図13は、本発明の第3の実施の形態に係る、基準周波数よりも高周波の周波数領域における解析を行う際のメッシュの分割モデルの変形例を示す図である。 図14は、本発明の第5の実施の形態における伝送モデルの例を示す説明図である。
(電源ノイズ解析装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電源ノイズ解析装置を示すブロック図である。電源ノイズ解析装置100は、装置全体を制御するCPU(解析部)1と、図示しないキーボード及びマウスを含む入力部2と、電源ノイズの解析に必要なデータを取り込むデータ取込部3と、各種のデータ、解析処理を行うためのプログラム及び演算結果等を記憶するハードディスクドライブ等の記憶媒体による記憶部4と、操作内容、動作内容等を表示する表示部5と、解析結果等を印刷するプリンタ6とを備えている。なお、入力部2、データ取込部3、記憶部4、表示部5及びプリンタ6は、通常、インターフェースを介してCPU1に接続されるが、ここでは図示を省略している。
データ取込部3は、例えば、インターネット接続用のインターフェース、CDドライブ、DVDドライブ等を用いることができる。
図2は、半導体部品の構造を示す概略図である。図2(a)は半導体部品8の半導体チップ80等を封止するモールド樹脂813を二点鎖線で示し、半導体部品8の表面(プリント配線基板側とは反対側の面)から見た図。図2(b)は、図2(a)のA−A断面図である。
半導体部品8は、半導体チップ80とパッケージ部81とから構成されている。半導体チップ80の表面には複数のボンディングパッド801が設けられている。パッケージ部81は、複数のボンディングパッド801のそれぞれに対応して設けられた複数のリード812と、複数のボンディングパッド801及び複数のリード812をそれぞれ接続する複数のワイヤ811と、半導体チップ80,ワイヤ811,リード812を封止するモールド樹脂813等を有する。
ワイヤ811は、ボンディングによって形成されたボンディングワイヤである。リード812は、一端がモールド樹脂813に埋め込まれてワイヤ811に接続されており、他端がモールド樹脂813の外部に露出している。モールド樹脂813は例えばエポキシ樹脂からなる。図2(b)に示すように、複数のリード812及び複数のワイヤ811は、基板と半導体チップ80との間を接続する導電部82を構成する。
リード812は、半導体チップ80に電源を供給するための電源リード812A、半導体チップ80のグランドに接続されたグランドリード812B、及びその他の各種信号線等に接続された非電源リード812Cから構成される。電源リード812Aは電源ワイヤ811Aによって、またグランドリード812Bはグランドワイヤ811Bによって、半導体チップ80のボンディングパッド801に接続されている。
なお、図2に示す例では、電源リード812A及びグランドリード812Bが3つずつ配置されているが、これに限らず、電源リード812A及びグランドリード812Bは1つずつでもよい。また、電源リード812A及びグランドリード812Bを隣接させず、分散して配置してもよい。
図3は、半導体チップと基板間の接続を示す模式図である。電源ノイズ解析装置100が対象とするのは、スイッチング動作をする半導体素子及び回路を有する半導体チップ80が基板7に実装された状態でのノイズ解析であり、図3に示すように、基板7に半導体チップ80を実装した状態において電源9から電源を印加したときの通電状態に基づいて解析を行うものである。なお、図3においては、説明の都合上、半導体チップ80を基板7から離した状態で示している。
基板7は、セラミックス、ポリイミド、ガラスエポキシ等による絶縁体70の片面(図3の下面)に設けられた基準電位層としてのグランドプレーン71と、他面(図3の上面)に設けられた電源層としての電源プレーン72等を備えている。電源プレーン72とグランドプレーン71との間には、例えば3.3Vの直流電圧を出力する電源9が接続されている。
半導体部品8は、グランドプレーン71及び電源プレーン72を介して電源9に接続されている。実際には、半導体チップ80がワイヤ811及びリード812を介して基板7に接続され、基板7と半導体チップ80とはデータ線、制御線等の多数の配線パターンを通して接続されているが、ここでは電源系のみを図示している。半導体チップ80と基板7との間には、導電部82によって生じるインピーダンスZ,Zが生じている。このインピーダンスZ,Zを含む等価回路について図を示して説明する。
図4は、本発明の実施の形態に係る電源ノイズ解析装置の処理に用いられる電源系等価回路モデルである。この等価回路モデルは、電源9の+電極と−電極との間に形成される半導体部品8の回路を簡略化して表現している。この等価回路では、抵抗10、インダクタ11、第1の電流源12、抵抗13、及びインダクタ14が直列接続され、第1の電流源12には、第2の電流源15が並列接続されると共に、コンデンサ16と抵抗17を直列接続した回路が並列接続されている。
抵抗10及びインダクタ11は、半導体チップ80の電源ラインを構成する電源リード812A及びワイヤ811Aの抵抗及びインダクタンス、すなわちインピーダンスZを示している。また、抵抗13及びインダクタ14は、半導体チップ80のグランドラインを構成するグランドリード812B及びワイヤ811Bの抵抗及びインダクタンス、すなわちインピーダンスZを示している。
第1及び第2の電流源12,15は、半導体チップ80を構成する回路がスイッチング動作をすることによって形成されるものであり、第1の電流源12はL−H遷移の駆動電流と過渡電流(貫通電流)の和、第2の電流源15はH−L遷移の貫通電流である。コンデンサ16は半導体チップ80の内部で同じ電源供給系を共有する全ての回路要素の電源とグランド間の静電容量であり、抵抗17はその抵抗分である。ここで、駆動電流は電流変化の小さい電流であり、貫通電流は周期的、例えばt=3.65nsの周期で変化する電流であり、半導体チップ80から見た電源系インピーダンスが十分に低ければ、その波形(パルス幅、周期、波高等)に大きな変化は生じない。
(電源ノイズ解析装置の動作)
図5は、本発明の実施の形態に係る電源ノイズ解析装置の処理を示すフローチャートである。なお、図5に示す処理を実行するプログラムは、図1に示す記憶部4に格納されている。更に、図6は、図5に示す解析処理で用いるパッケージ特性(パッケージモデル又はLSIライブラリ)のデータ内容の一例を示す図、図7は、本発明の実施の形態に係る電源ノイズ解析装置において図5中のデバイスシミュレーションS103によって得られた電源電流波形(i)及び本電源解析装置によって推定した波源・内部インピーダンスモデルS109による電流波形(ii)を示す図である。なお、図7において、−15Aまで落ち込んでいる波形部分が上記したL−H遷移の駆動電流と過渡電流(貫通電流)による電流ピークであり、その周期の中間で−3Aまで落ち込んでいる部分が上記したH−L遷移の駆動電流によるものである。
まず、解析に先立って、作業者は解析対象の半導体チップ80を製造している半導体製造会社から半導体チップ80のLSI設計データを取得し、これを電源ノイズ解析装置100に取り込む(S101)。更に、作業者は図6に例示したようにRLGCの集中定数マトリクス等で記述されたパッケージモデル20を取得し、これを電源ノイズ解析装置100に取り込む(S102)。パッケージモデル20は、半導体チップ80のリード812,ワイヤ811の断面形状等に基づいて公知の電磁界解析手法を用いて計算された、導電部82の電気的特性を示すモデルである。また、PCB(Printed Circuit Board)モデルを取得して記憶部4に記憶させておく(S110)。
次に、作業者は電源ノイズ解析装置100の入力部2のマウス及びキーボード等を操作し、第1の模擬動作としてのデバイスシミュレーションを開始させる(S103)。このデバイスシミュレーションは、ステップS101で取り込んだLSI設計データとステップS102で取り込んだパッケージモデル20とに基づいて、CPU1が仮想的に半導体チップ80を動作させるものである。また、このデバイスシミュレーションは、基板7をインピーダンスのない理想的な電源として行われる。
CPU1は、上記ステップS103を実行して電源電流波形を生成し、それを表示部5のディスプレイに表示したり、必要に応じてプリンタ6によりプリントアウトする(S104)。
この電源電流波形は、基板7を理想電源と扱って電源供給されるとした場合に、解析対象の半導体チップ80が基板7からパッケージを介して引き込む電源の電流波形である。この電源電流波形は、半導体製造会社が保有するLSI設計ツール上でS101で取り込んだLSI設計データおよびS102で取り込んだパッケージ特性をデータとして計算して得られるものである。この電源電流波形は、上記の計算によって得ることの他、半導体製造会社から入手できる場合もある。
CPU1は、電源電流波形から周期t、電流過渡応答の周波数f(=1/t)を抽出する(S105)。周期tは、インダクタ11のインダクタンスL11とインダクタ14のインダクタンスL14との和のインダクタンスLと、コンデンサ16のキャパシタンスCとの直列共振で決まる。即ち、電流過渡応答の周期tに基づく電流過渡応答の周波数fは、CPU1により次式で求められる。
f=1/(2π√(LC)) ・・・(1)
この(1)式からキャパシタンスCを求めると、次式で表される。この演算は、上記ステップS102で取り込んだパッケージモデルに基づいてCPU1によりステップS107で実行される。
C=(t/2π)2/L ・・・(2)
一例をあげれば、Lが36pHのとき、キャパシタンスCは9.37nF(電流過渡応答の周期が3.65nsのとき)である。なお、キャパシタンスCを上記の様にして求める理由は、CAD(Computer Aided Design)等から得ることが困難だからである。
一方、CPU1は、上記ステップS104で生成した電源電流波形(図7の波形i)のパルス幅及び波高を抽出する(S106)。更にCPU1は電流源12,15の波形フィッティングを行う(S108)。つまり、CPU1は、上記過渡応答の生じるインパクトとなるスイッチングの瞬間の波形をガウシアン近似したとき、電流源12,15が三角波の波源と仮定し、デバイスシミュレーションで得られる波形がガウシアン波形の波高と半値幅が得られるように三角波の半値および波高を操作する。次に、CPU1は、波形フィッティングの結果に基づいて波源・チップ内部インピーダンスモデルを生成、即ち図7の波形(ii)のようなPCBを含まない過渡応答を再現する(S109)。次にCPU1は、この波源・チップ内部インピーダンスモデル、上記ステップS110で取得済みのPCBモデル、図7の波形(i)、及び上記ステップS102で取り込んだパッケージ特性に基づいて、パワーインテグリティー及びEMI(Electro Magnetic Interface)解析を実行する(S111)。
以上により、基板7を理想的な電源とした場合の半導体部品8の過渡応答特性に基づいて、半導体部品8を基板7に実装したときにどれだけノイズ電流が流れ、どのように電磁放射されるかといった推定が可能になる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。上記第1の実施の形態では、基板7を理想的な電源とした場合における半導体部品8の過渡応答特性に基づく電源ノイズ解析の手法について説明したが、半導体部品8の電源電流は基板7のインピーダンスの影響を受けるので、より精度の高い電源ノイズ解析を行うためには、基板7のインピーダンスを考慮した半導体部品8の過渡応答特性に基づく解析を行う必要がある。そこで、本実施の形態では、PCBモデルを考慮した半導体部品8の過渡応答特性に基づく電源ノイズ解析装置について説明する。
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体チップと基板間の接続を示す模式図である。基板7は、電源プレーン72とグランドプレーン71との間に存在する静電容量を、両者の間に多数のコンデンサCが配置されたものとみなして表現することができる。また、電源プレーン72及びグランドプレーン71を電流が流れる際には抵抗が発生し、インダクタンスも存在する。
図9は、基板7の静電容量、抵抗及びインダクタンスを考慮した等価回路の一部を示す回路図の例である。この等価回路は、抵抗R及びインダクタLを直列に接続したものを1つの辺とする4つの辺からなる格子状のメッシュを面状に多数配列し、各メッシュの頂点にコンデンサCを接続した回路で構成される。この等価回路のコンデンサCの静電容量、抵抗Rの抵抗値、インダクタLのインダクタンスは、基板7の設計データに基づいて求めることができる。
図10は、基板7を多数のメッシュに分割した例を示す説明図である。この図に示すように、基板7は長方形状であり、長辺の長さをW、短辺の長さをWで表す。この図に示す実線(基板7の端面)又は破線で囲まれた四角形の部分が1つのメッシュであり、基板7の全体が均等に分割されている。
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る電源ノイズ解析装置の処理を示すフローチャートである。電源ノイズ解析装置の構成は図1に示すものと同様であり、図10に示すフローチャートを実行するプログラムは記憶部4(図1参照)に格納されている。
解析に先立って、CPU1はPCBモデルを取得して記憶部4に記憶する(S201)。このPCBモデルは、図9に示す等価回路の回路定数(コンデンサCの静電容量、抵抗Rの抵抗値、インダクタLのインダクタンス)として与えられる。また、CPU1は半導体チップ80のLSI設計データを取得して記憶部4に記憶する(S202)。またさらにCPU1は、RLGCの集中定数マトリクス等で記述されたパッケージモデル20を取得して記憶部4に記憶する(S203)。
次にCPU1は、ステップS201で取得したPCBモデルに基づいて、基板7の基板長(W又はW)を電気長とする周波数を含む周波数帯における二次元もしくは三次元の電磁界解析手法によって、基板の電源プレーンもしくは電源配線とグランド・プレーンもしくはグランド配線の電磁界解析を行うことで、PCB伝達特性モデルを生成する(S204)。
このPCB伝達特性モデルは、例えばプリント基板の電源入力からプリント基板と接続するLSIの電源ピンまでの伝達特性で、例えば前者をポート1、後者をポート2とした場合に(グランドを参照する)、公知のSパラメタS11,S12,S21,S22として記述される。このSパラメタは、例えば公知のTOUCHSTONEフォーマットで記述され、後述の回路シミュレーションツールに直接取り込みが可能である。また、Sパラメタをよく近似する回路モデルに置き換えて取り込んでもよい。電源ピンが多ピンの場合は上記2ポートに限らず多ポートのSパラメタで記述することもできるし、簡単のためにLSI側のポートを1ポートに集約してもよい。
なお、上記の電気長とは、高周波電流がその物体を流れる際の実際の波長を示し、電気長:λ(m)は、周波数をf1(MHz)とした場合に、次式で求められる。
λ=(300/f1)×短縮率 ・・・(3)
上記(3)式を変形して、次式が得られる。
f1=(300/λ)×短縮率 ・・・(4)
ここで、短縮率とは、その物体を流れる電流の流れを阻害する働きを表し、速度係数とも呼ばれるものである。
次にCPU1は、ステップS204で生成したPCB伝達特性モデル、ステップS202で取得したLSI設計データ、及びステップS203で取得したパッケージモデル20に基づいて、基板7に実装された状態での半導体チップ80を仮想的に動作させる第2のとしての回路シミュレーションを実行する(S205)。
この回路シミュレーションは、PCB伝達特性モデル(Sパラメタまたは近似回路モデル)とパッケージの特性モデル(Sパラメタまたは近似回路モデル)およびLSIのデバイスモデルを用いた節点方程式による電圧・電流解析で、各種市販ツールによって実行することが可能である。このようなツールとしては、例えばSPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)及びそのサブセットが知られている。
次にCPU1は、ステップS202で取得したLSI設計データ、及びステップS203で取得したパッケージモデル20に基づいて、LSI内部インピーダンスを推定する(S206)。このステップS206の処理は、基板7を理想的な電源として行い、その具体的処理内容は第1の実施の形態において図5に示したフローチャートのステップS103,S104,S105,S107の処理と同様である。
次にCPU1は、ステップS205の回路シミュレーションの結果とステップS206で推定したLSI内部インピーダンスに基づいて、LSI内部電流波源の電気的特性の推定を行い、電流源モデルを生成する(S207)。
この電流源モデルは、LSI内部インピーダンスとパッケージモデルを接続したときにパッケージを流れる電流から推定した、LSI内部のトランジスタがスイッチングして生じる電流の総体である。一般の三次元電磁界解析では波源がとして非線形の半導体デバイスモデルを接続できず、図4に示すように本電流源モデルとLSI内部インピーダンスを並列したものを波源として用いる必要がある。
次にCPU1は、ステップS201で取得したPCBモデル、ステップS207で生成した電流源モデル、及びステップS206で推定したLSI内部インピーダンスに基づいて三次元電磁界解析、すなわち放射EMI解析を行う。
以上により、PCBモデルを考慮した半導体部品8を含む回路のシミュレーションに基づく電源ノイズ解析が行える。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態では、上記第2の実施の形態について図11で説明したフローチャートにおけるステップS204のPCB伝達特性モデルを生成する処理が、第2の実施の形態とは異なっている。
本実施の形態では、基板7の基板長を電気長とする周波数(以下、「基準周波数」という。)よりも高周波の領域と基準周波数よりも低周波の領域とで、精度の異なる手法により電磁界解析を行う。つまり、基準周波数よりも低周波の領域では、計算の負荷を軽減することが可能な簡略化した手法により電磁界解析を行う。
基板7が図10に示すように長方形状の場合には、基準周波数として短辺Wの長さを電気長とする周波数を基準周波数とすることが望ましが、長辺Wの長さを電気長とする周波数を基準周波数としてもよい。即ち、基準周波数は基板の大きさに基づいて定めたものであればよい。
図12は、基準周波数よりも高周波の周波数領域における解析を行う際のメッシュの分割モデルを示す図である。この図に示すように、基準周波数よりも高周波の周波数領域では、半導体部品8の周辺部について、基板7の周縁部の領域よりも細かくメッシュを分割したモデルで解析を行う。図12に示す例では、基板7の周縁部のメッシュの面積は図10に示した分割モデルと同じであるが、半導体部品8の周辺部については、基板7の周縁部のメッシュの4分の1の面積のメッシュにより解析を行う。一方、基準周波数以下の周波数領域では、図10に示したものと同じ分割モデルを用いる。
このように基準周波数よりも高周波の領域と低周波の領域とで異なるモデルを採用し、基準周波数よりも低周波の領域では計算量の負荷を軽減した手法で電磁界解析を行うことで、全ての周波数領域で同じモデル(半導体部品8の周辺部を細かく分割したモデル)を用いる場合よりも計算量を低減する。
なお、基準周波数よりも高周波の周波数領域における解析で用いるメッシュの分割モデルは様々に変形が可能である。例えば図13に示すように、半導体部品8の周辺部を含む長辺に沿った方向及び短辺に沿った方向のメッシュの間隔を、他の部分のメッシュの間隔よりも狭くするようにしてもよい。また、例えばBGA(Ball grid array)パケージの場合には、基準周波数よりも高周波の周波数領域における解析にあたり、1つの電極について1つのメッシュが対応するように細かくメッシュを分割してもよい。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態では、基準周波数よりも高周波の周波数領域と基準周波数よりも低周波の周波数領域で、PCB伝達特性モデルを生成する際の計算方法を変更することにより、基準周波数よりも低周波の周波数領域における電磁界解析の計算の負荷を軽減する。
例えば、基準周波数よりも高周波の周波数領域では有限差分法により電磁界解析を行い、基準周波数よりも低周波の周波数領域では境界要素法により電磁界解析を行う。有限要素法は、領域全体を小領域に分割し、各小領域に共通な補間関数を用いることで単純な数学的モデルによる近似を行う方式である。境界要素法は、境界上の離散化のみで近似解が得られるものであり、境界上の三次元の離散化は、曲面上で行われる。そのため、有限要素法に比較すると精度は低くなるが、離散化に必要な要素や節点の数が少なくて済み、計算の負荷が軽減される。
また、基準周波数よりも低周波の周波数領域では、電気回路を構成する要素間のカップリングが比較的小さいので、例えばTransmission Matrix Methodのような伝送線路理論に基づく等価回路モデルを用いてもよい。
このように、基準周波数よりも低周波の周波数領域では、基準周波数よりも高周波の周波数領域よりも精度が低く計算の負荷が軽減される手法で解析を行うことにより、解析を行う全ての周波数領域で同じ手法(基準周波数よりも高周波の周波数領域の解析で用いる手法)により解析を行う場合に比べ、計算量を低減する。
[第5の実施の形態]
図14は、本発明の第5の実施の形態における伝送モデルの例を示す説明図である。本実施の形態では、基板7に実装される半導体チップ80以外の素子と電源プレーン72又はグランドプレーン71との接続点を入出力ポートとしている。
図14に示す例では、基板7に半導体チップ80の他に、能動素子の一例としてのトランジスタTr、及び受動素子の一例としての抵抗RならびにコンデンサCが実装されている。この図に示すように、半導体チップ80の電源プレーン72及びグランドプレーン71との接続点をポートPとし、トランジスタTr,抵抗R,コンデンサCと電源プレーン72又はグランドプレーン71との接続点をそれぞれポートP,ポートP,ポートPとする。また、電源9と電源プレーン72及びグランドプレーン71との接続点をポートPとする。
このような伝送モデルにより、半導体チップ80以外の能動素子又は受動素子の電源プレーン72,グランドプレーン71との接続を考慮した電磁界解析を行う。
[他の実施の形態]
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
例えば、基板7は長方形状に限らず、L字型や円弧状でもよい。この場合、基準周波数は、基板のいずれかの辺の長さ、又は基板の複数の辺の長さの間の値に基づいて定めることができる。
また、半導体チップ80を、リード812を介することなく、直接基板7に実装してもよい。
1…CPU、2…入力部、3…データ取込部、4…記憶部、5…表示部、6…プリンタ、7…基板、8…半導体部品、80…半導体チップ、81…パッケージ、801…ボンディングパッド、811…ワイヤ、811A…ワイヤ、811B…ワイヤ、812…リード、812A…電源リード、812B…グランドリード、812C…非電源リード、813…モールド樹脂、82・・・導電部、9…電源、10…抵抗、11…インダクタ、12…電流源、13…抵抗、14…インダクタ、15…電流源、16…コンデンサ、17…抵抗、20…パッケージモデル、70…絶縁体、71…グランドプレーン、72…電源プレーン、73…スルーホール、100…電源ノイズ解析装置、C…キャパシタンス、C…コンデンサ、f…周波数、L…インダクタ、W…長辺、W…短辺、L11…インダクタンス、L14…インダクタンス、P,P,P,P,P…ポート、R…抵抗、R…抵抗、t…周期、Tr…トランジスタ、Z,Z…インピーダンス

Claims (6)

  1. 解析対象の半導体チップの設計データに基づいた前記半導体チップの模擬動作によって得られた電源電流波形から前記半導体チップの内部インピーダンスを推定し、前記内部インピーダンスに基づいて前記半導体チップが実装される基板を含む電源系のノイズ解析を行う解析部を有し、
    前記解析部は、前記内部インピーダンスのうち、静電容量を前記電源電流波形の過渡周期及び前記半導体チップの電源系のインダクタンスから求める電源ノイズ解析装置。
  2. 前記解析部は、前記半導体チップの過渡応答波形に基づいて前記電源系のノイズ解析を行う請求項1に記載の電源ノイズ解析装置。
  3. 前記解析部は、前記基板の設計データに基づく電磁界解析によって得られた前記基板の伝達特性情報、前記半導体チップの設計データ、及び前記半導体チップと前記基板との間を接続する導電部の特性情報に基づいて前記基板に実装された状態での前記半導体チップの模擬動作を行い、この模擬動作の結果の情報と前記推定した前記半導体チップの内部インピーダンスとに基づいて前記基板に実装された状態での前記半導体チップの内部電流を推定し、前記内部電流、前記半導体チップの内部インピーダンス、及び前記基板の設計データに基づいて前記電源系のノイズ解析を行う請求項1又は2に記載の電源ノイズ解析装置。
  4. 前記解析部は、前記基板の伝達特性情報を得るための電磁界解析を行うにあたり、前記基板の大きさに基づいて定めた電磁波の基準周波数よりも低い周波数領域における電磁界解析を前記基準周波数よりも高い周波数領域における電磁界解析より低い精度で行う請求項に記載の電源ノイズ解析装置。
  5. 前記解析部は、前記基準周波数よりも高い周波数領域における電磁界解析で、前記基板の前記半導体チップが実装される部分の電磁界解析を前記基板の他の部分の電磁界解析よりも高い精度で行う請求項に記載の電源ノイズ解析装置。
  6. 前記解析部は、前記基板の伝達特性の電磁界解析を行うにあたり、前記基板に実装される素子と前記基板の電源層又は基準電位層との接続点を入出力点として有する伝送モデルを用いる請求項乃至のいずれか1項に記載の電源ノイズ解析装置。
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