次に、本発明を実施するための実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1に、本発明の第1の実施の形態によるプリント回路基板設計システムの構成を示す。
この第1の実施の形態によるプリント回路基板設計システムは、入力装置1、簡易電圧変動特性導出手段2、電圧変動条件判定手段3、判定基準データベース4、電圧周波数特性導出手段5、電圧周波数条件判定手段6、出力装置7を備える。
入力装置1は、LSIを実装したPCBを構成する回路の設計情報とデータベースとを含む入力情報を簡易電圧変動特性導出手段2に入力する機能を有する。
入力情報として、例えば、LSIに関しては、LSIの全回路接続情報や内部レイアウト情報が含まれるLSIの設計情報、及びLSIの正常動作が可能な電圧変動特性の許容値やLSI内部の遅延情報を含んだLSIデータベースを用意し、PCB及び実装される部品に関しては、レイアウト情報であるCADデータ及び部品の等価回路の情報である部品データベースを用意する。
そして、それらの入力情報から、LSIの電源電圧変動の特性である電圧変動特性を導出する。次にデータベースに含まれる、その電源回路のLSIの電源電圧変動の許容値の特性である電圧変動条件を読み出し、導出された電圧変動特性と電圧変動条件とを比較し、その電源回路が安定かどうかの判定作業を行う。この処理によって、LSIが実装されたPCBの電源回路が安定に設計されているかを自動的に判定することができる。
簡易電圧変動特性導出手段2は、PCB上の電圧変動の時間特性を導出する機能を有する。
電圧変動条件判定手段3は、このPCBの電源回路が安定に設計されているかどうかを自動的に判定する機能を有する。この電圧変動条件判定手段3では、簡易電圧変動特性導出手段2において導出された電圧変動の時間特性と、判定基準データベース4に格納されている電圧変動条件を比較することにより、PCBの電源回路が安定に設計されているかどうかを判定する。
電圧周波数特性導出手段5は、PCB上の電圧の周波数特性を導出する機能を有する。
電圧周波数特性判定手段6は、このPCBの電源回路が安定に設計されているかを自動的に判定する機能を有する。この電圧周波数特性判定手段6では、電圧周波数特性導出手段5において導出された電圧の周波数特性と、判定基準データベース4に格納されている電圧の周波数条件とが比較され、PCBの電源回路が安定に設計されているかどうかを判定する。
出力装置7は、電圧周波数特性判定手段6によって判定された結果を出力する。この出力装置7としては、例えば、ディスプレイ装置やプリンタが利用される。出力装置7によって判定結果が出力されると、システムでの処理が完了する。
図8は、本発明の第1の実施の形態の処理を示したフローチャートである。この処理は、回路設計情報の入力処理(ステップS1)から開始する。ここで入力される回路設計情報は、図23に示されるようなLSI及びその他の部品が実装されて電源回路を構成しているPCBを例に取ると、そのレイアウトや実装されるLSIその他の部品の情報等であって、電源回路における電圧変動特性を導出するのに必要な情報である。これらの情報は、図1の入力装置1から入力される。
次に、入力された回路設計情報から、電源回路の電圧変動特性の導出処理が行われる(ステップS2)。この処理は、図1の簡易電圧変動特性導出手段2において行われる。この処理により、PCBにおける電圧変動の時間特性が導出される。
次に、導出された電圧変動特性と判定基準との比較処理が行われる(ステップS3)。この処理は、図1の電圧変動条件判定手段3において行われる。電圧変動条件判定手段3において、判定基準データベース4内に格納された電圧変動条件と求められた電圧変動特性との比較処理を行い、PCBの電源回路が安定に設計されているかどうかが判定される。
次に、入力された回路設計情報から、電源回路の電圧周波数特性の導出処理が行われる(ステップS4)。この処理は、図1の電圧周波数特性導出手段5において行われる。この処理により、PCBにおける電圧の周波数特性が導出される。
次に、導出された電圧周波数特性と判定基準との比較処理が行われる(ステップS5)。この処理は、図1の電圧周波数特性判定手段6において行われる。電圧周波数特性判定手段6において、判定基準データベース4内に格納された電圧周波数条件と求められた電圧周波数特性との比較処理を行い、PCBの電源回路が安定に設計されているかどうかが判定される。
最後に、結果出力処理において、判定された結果を出力する処理を行う(ステップS6)。この処理により判定結果は、図1の出力装置7に出力される。
この時に出力される結果としては、電源回路が安定に設計されているかどうかの判定結果のみでなく、電圧変動特性と電圧周波数特性、及びそれぞれを電源変動条件と電圧周波数条件との比較が図示された結果等が含まれていても良い。
これらの結果により、どれだけのマージンを持った設計となっているか、どの周波数範囲で問題があるか等を絶対量で評価することが可能となる。
(第1の実施の形態による効果)
本実施の形態によれば、導出した電圧変動特性と判定基準データベース4内に格納された電圧変動条件との比較、導出した電圧周波数特性と判定基準データベース4内に格納された電圧周波数条件との比較処理によって、LSIが実装されたPCBの電源回路が安定に設計されているかを自動的に判定することが可能となる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図2に、本発明の第2の実施の形態によるプリント回路基板設計システムの構成を示す。図2において、図1と同じ参照符号を付した構成要素は、第1の実施の形態と共通の構成要素であり、その詳細は省略する。
第2の実施の形態によるプリント回路基板設計システムにおける概要は以下の通りである。
定量的に電源の電圧変動特性を導出するには、LSIが実装されたPCBの電源系の特性を精度良く見積もった等価回路のモデルを解析するという手段を用いることで実現可能である。
そのとき、LSIの等価回路モデルの生成手法としては、LSIの電源端子に流れる電流を精度良く再現できるモデルがLSIの設計情報から生成される手法を用いれば、LSIの設計情報から自動的にモデルを生成することができる。
さらに、PCBの電源回路が安定に設計されているかどうかを判定するのに、ノード数の少ない簡易な等価回路モデルを作成して、それを用いて過渡解析を行えば、短時間で電圧変動特性を導出することができる。
その結果とライブラリ内の電圧変動条件とを比較すれば、PCBの電源回路が安定かどうかが自動的に判定される。
また、電圧変動条件を満たしても、簡易モデルの結果だけでは条件が満たされたかどうかの判定が困難だと判断される場合には、同様の基板構造を表すノード数の多い詳細な等価回路モデルを用いての検証を行えば良い。
このとき、簡易モデルを構成する回路ブロックの等価回路モデルと、詳細モデルを構成する回路ブロックの等価回路モデルが1対1で対応するようなモデルライブラリを用意しておれば、自動的にPCBの最適構造の検証用の詳細モデルが作成される。
さらに、検証は詳細モデルを用いた交流解析結果を用い、簡易モデルを用いた場合の交流解析結果と比較し、その結果からその基板構造が最適な構造かどうかを判定するという手法を用いる。
交流解析結果同士の比較から安定かどうかを判断すべき基準がライブラリとして用意されておれば、解析結果より自動的に構造が安定かどうか判断することができる。また、詳細モデルを用いていても、交流解析を用いているため、詳細モデルを用いた過渡解析を行うよりも解析時間は充分に小さくて済む。
これらの手法により、自動的にそのPCBの電源回路が安定した動作を行うかどうかを自動的に判定することができる。
第2の実施の形態によるプリント回路基板設計システムにおいては、図1の簡易電圧変動特性導出手段2として、簡易等価回路過渡解析手段8を備えている。
この簡易等価回路過渡解析手段8は、入力装置1から入力される回路設計情報から電源回路の簡易な等価回路モデルを生成する簡易等価回路モデル生成手段9、及び生成された等価回路モデルを用いて電圧変動の時間特性を導出する演算手段10を備える。
また、図1の電圧周波数特性導出手段5として、等価回路交流解析手段11を備えている。
この等価回路交流解析手段11は、入力装置1から入力される回路設計情報から電源回路の詳細な等価回路モデルを生成する詳細等価回路モデル生成手段12、及び生成された等価回路モデルを用いて電圧の周波数特性を導出する演算手段13を備える。
簡易等価回路モデル生成手段9、及び詳細等価回路モデル生成手段12は、大きく分けて2種類の手段を備える。
そのうち一方の手段は、PCBのレイアウト及び断面構造、及び実装される部品の情報等である基板の設計情報及び部品データベースから基板の等価回路モデルを作成する基板の等価回路モデル作成手段である。この基板の等価回路モデル作成手段には、基板の断面構造や材質、レイアウト等の情報を入力することによって、基板の配線等の等価回路モデルを作成することが可能である、フィールドソルバを備えていても良い。
もう一方の手段は、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報、及びLSIの内部を構成している部品のデータベースから図20に記述されるようなLSIの等価回路モデルを作成するLSIの等価回路モデル作成手段である。
このLSIの等価回路モデル作成手段には、特許文献2や特許文献3に記述されるような、LSIの全回路接続情報からLSIの等価回路モデルを自動的に作成する手段を備えていても良い。
簡易等価回路モデル生成手段9で生成されるPCBの簡易モデルと、詳細等価回路モデル生成手段12で生成されるPCBの詳細モデルとでは、モデル化される回路ブロックのサイズが異なる。簡易モデルは詳細モデルと比べてノード数が小さなモデルになっているが、何れも同一の構造をモデル化したものである。
また、演算手段10及び13としては、SPICEに代表されるような回路解析エンジンを利用することが可能であり、演算手段10では過渡解析を、演算手段13では交流解析が行われる。
図9は、本発明の第2の実施の形態における処理を示したフローチャートである。
図9のフローチャートでは、図8に記述された電源回路の電圧変動特性導出処理(ステップS2)の代わりに、簡易等価回路モデル生成処理(ステップS7)と回路過渡解析処理(ステップS8)が行われる。
このうち簡易等価回路モデル生成処理(ステップS7)は、図2の簡易等価回路モデル生成手段9において行われる。一方、回路過渡解析処理(ステップS8)は、図2の演算手段10において行われる。
簡易等価回路モデル生成処理(ステップS7)とは、図2の入力装置1から入力された回路設計情報から、電源回路の簡易モデルを作成する処理である。また、回路過渡解析処理(ステップS8)とは、作成された簡易モデルを用いて過渡解析を実行する処理であり、この処理により、PCBにおける電圧変動特性が導出される。
また、図8に記述された電源回路の電圧周波数特性導出処理(ステップS4)の代わりに、詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)と回路交流解析処理(ステップS10)が行われる。
このうち詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)は、図2の詳細等価回路モデル生成手段12において行われる。一方、回路交流解析処理(ステップS10)は、図2の演算手段13において行われる。
詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)とは、図2の入力装置1から入力された回路設計情報から、電源回路の詳細モデルを作成する処理である。また、回路交流解析処理(ステップS10)とは、作成された詳細モデルを用いて交流解析する処理であり、この処理により、PCBにおける電圧周波数特性が導出される。
簡易モデルと詳細モデルは、同一の構造を異なるサイズの回路ブロック毎に等価回路に置き換えていて、簡易モデルの方が詳細モデルに比べノード数が少ない構造になっている。
ここで、簡易等価回路モデル生成処理(ステップS7)及び詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)について説明する。図12は、簡易等価回路モデル生成処理(ステップS7)及び詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)を説明したフローチャートである。
まず、基板情報入力処理(ステップS20)により、PCBのレイアウト及び断面構造、及び実装される部品の情報等である基板の設計情報及び部品データベースが図2の入力装置1から入力される。
次に、基板パネル分割処理(ステップS21)により、入力された回路構造を、要求される回路ブロック毎に分割する。この回路ブロックのサイズは、簡易等価回路モデル生成処理(ステップS7)と詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)では異なり、その情報は部品データベースに組み込まれているものとする。この解析のために分割された回路ブロックを、基板パネルとも称する。
次に、各基板パネル毎の基板等価回路モデル生成処理(ステップS22)が行われ、LSIを除く、各基板パネル毎に実装される部品を含めた基板の等価回路モデルが、図2の簡易等価回路モデル生成手段9、または詳細等価回路モデル生成手段12によって生成される。
次に、基板等価回路モデル生成処理(ステップS23)により、前処理で生成されたLSIを除く各基板パネル毎の等価回路モデルを結合し、LSIを除く基板の等価回路モデルが、図2の簡易等価回路モデル生成手段9、または詳細等価回路モデル生成手段12によって生成される。
次に、LSI情報入力処理(ステップS24)により、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報、及びLSIの内部を構成している部品のデータベースが図2の入力装置1から入力される。
次に、LSI等価回路モデル生成処理(ステップS25)により、入力された情報からLSIの電源に流れる電流や等価アドミタンス等、LSIの電源系の特性を見積もったLSIの等価回路モデルが、図2の簡易等価回路モデル生成手段9、または詳細等価回路モデル生成手段12において生成される。
このとき、LSIの簡易モデルと詳細モデルは、図21の(a)に示すような簡易構成のものと、図21の(b)に示すようなLSI内も分割されたモデルのようなものが考えられるが、その構造の選択もデータベース内に記されているとする。
図21において、32はLSI電源モデルにおけるアドミタンスモデル、33はLSI電源モデルにおける電源分配回路のモデルである。また、37はLSI電源モデルの分割されたブロックにおける動作部分モデル、38はLSI電源モデルの分割されたブロックにおけるアドミタンスモデル、39はLSI電源モデルの分割されたブロックにおける電源分配回路のモデル、40は回路ブロックに分割されているLSI電源モデルである。
次に、電源回路モデル生成処理(ステップS26)により、生成された基板の等価回路モデルとLSIの等価回路モデルが結合されて、PCBの電源回路モデルが図2の簡易等価回路モデル生成手段9、または詳細等価回路モデル生成手段12によって生成され処理が終了する。
ここで、基板等価回路モデルの生成(ステップS20→ステップS23)と、LSI等価回路モデルの生成(ステップS24→ステップS25)の処理の順序は逆であっても良い。また、先に基板情報入力処理(ステップS20)とLSI情報入力処理(ステップS24)が行われてから、基板等価回路モデル生成処理(ステップS21→ステップS23)とLSI等価回路モデル生成処理(ステップS25)が行われるような順序であっても良い。
図13は、図2の簡易等価回路モデル生成手段9、または詳細等価回路モデル生成手段12内の、基板の等価回路モデル作成手段内部に、フィールドソルバが備えられている場合の、図12の各ブロック毎の基板等価回路モデル生成処理(ステップS20→ステップS22)の具体的な処理を示したフローチャートである。
まず、基板電源系の構造入力処理(ステップS27)が行われ、求める基板パネルにおける基板の電源系の構造情報が図2の入力装置1から入力される。
この処理は、図12の基板情報入力処理(ステップS20)と基板パネル分割処理(ステップS21)が終了した後の情報が入力データとなり、各基板パネル毎の基板構造の情報となっている。
ここで、入力される具体的な情報について、図23に示すようなLSI及びその他の部品が実装されて電源供給系回路を構成しているPCBを例にとって説明する。この場合、電源がベタプレーン構造をしているため、その基板電源構造のレイアウト情報に加え、図18の(a)に例示するような基板の電源層、グランド層、絶縁層の層構成と寸法、及びそれぞれの導電率(σ)や比誘電率(εr)、誘電正接(tanδ)などの構造、材料特性に関する数値を含む。
一方、図18の(b)に示されるように電源がマイクロストリップ配線の構造をしていた場合でも同様に、層構成及び線幅、線長を含めた各部の寸法と、それぞれの材料特性に関する数値を含む。層構成及び各部の寸法は、プリント配線基板の設計CADシステムで持っている情報から抽出することが可能である。また、図18で例示されているのはある配線パターンの基板の構成(断面図)であるが、ここで材料定数の代わりに例えば銅などの材料名を入力し、内部のデータベースから導電率に置き換えるなどの処理を行うことも可能である。
図18において、21はPCBの電源層、22はPCBのグランド層、23はPCBの絶縁層、24はPCBの層構成、25はPCBの電源メタル配線、26はPCBの電源メタル配線の線幅を示している。
上記のように、基板の電源回路の電気的等価回路を求めるのに必要な各部のパラメータ、及び部品のデータベースが入力される。
次に、ソルバ処理(ステップS28)が実行され、基板電源系の等価回路モデルの作成が行われる。この処理は、図2の簡易等価回路モデル生成手段9、または詳細等価回路モデル生成手段12内に備えられたフィールドソルバによって行われる。
ここで行われる処理とは、プリント配線基板における配線パターンの物理的な寸法、材料定数及び層構成等のパラメータをもとに、SPICEなどの回路シミュレータで使用するための、抵抗、インダクタンス、キャパシタンス、コンダクタンスで表した単位長さあたりの集中定数もしくは分布定数で表現された等価回路モデルを作成する処理である。このフィールドソルバとして、PEEC (Partial Element Equivalent Circuit)法やFEM(Finite Element Method)法等を適用した電磁界解析エンジンを利用することができる。
パラメータについては、基板電源系の構造入力処理(ステップS27)で入力された値を用いる。この処理が行われ得られた単位長さ辺りの等価回路モデルの一例を図19の(a)に示す。集中定数で定義されており、配線の単位長さ辺りの抵抗、インダクタンス、容量、コンダクタンスの値はそれぞれ、RU、LU、CU、GUとなっている。またRU及びLUはモデルの単位長さ辺りのインピーダンスZUを表し、CU及び1/GUはモデルの単位長さ辺りのアドミタンスYUを表している。
もし、図18の(a)のように電源がベタプレーン構造を有する場合には、この単位長さ辺りのモデルを図19の(b)のように組み合わせ、ベタプレーン構造を表現する。一方、図18の(b)のように電源が配線構造をしていた場合、この単位長さ辺りのモデルを図19の(c)のようにラダー状に組み合わせ、配線構造を表現する。
このように記述された単位長さ辺りのモデルが寸法分接続されることにより、基板の電源の等価回路モデルが生成されるが、勿論集中定数記述では無く分布定数記述で表現されていても構わない。
次に、部品データ入力処理(ステップS29)が行われ、実装されているLSI以外の部品のデータベースが図2の入力装置1から入力される。
ここで入力される具体的な情報は、図23に示されるPCBを例にとると、直流電源(レギュレータ)及び対策部品(チップコンデンサ)のデータベースであり、ここではデータベース内に各部品の等価回路モデルが入力されるものとする。
図23において、51はPCBの基板部分(電源ベタ構造)、52はPCBに実装されたLSI(パッケージ含む)、53はPCBの電源配線に接続された直流電源、54はPCBに実装された対策部品であるチップコンデンサ、55はPCB上の観測点を示している。
次に、モデル結合処理(ステップS30)により、ソルバ処理(ステップS28)により生成された基板電源における基板パネル毎の等価回路モデルと、各部品の等価回路モデルが、実際のPCBのレイアウトに合わせ、図2の簡易等価回路モデル生成手段9、または詳細等価回路モデル生成手段12内で結合され、この処理が終了する。
こうして、PCBにおける基板電源における等価回路モデルが生成される。なお、処理の順番としては、部品データ入力処理(ステップS29)が最初に行われた後、基板電源系の構造情報の入力処理(ステップS27)とソルバ処理(ステップS28)が行われても良く、先に基板電源系の構造情報の入力処理(ステップS27)と部品データ入力処理(ステップS29)が同時に行なわれた後にソルバ処理(ステップS28)が行われても良い。
図14は、図12のLSI等価回路モデルの生成(ステップS24→ステップS25)の具体的な処理を示したフローチャートである。このとき、図2の簡易等価回路モデル生成手段9、または詳細等価回路モデル生成手段12内のLSIの等価回路モデル作成手段には、特許文献2や特許文献3に記述されている、LSI等価回路モデル作成システムが備えてあるものとする。
先ず、図12の処理と同様に、LSI情報入力処理(ステップS31)により、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報、及びLSIの内部を構成している部品のデータベースが図2の入力装置1から入力される。
次に、動作部分モデル生成処理(ステップS32)により、LSIの設計情報からLSIの電源端子に流れる電流を等価的に流せるように記述されたLSIの動作部分のモデルが、図2の簡易等価回路モデル生成手段9、または詳細等価回路モデル生成手段12において生成される。
ここで生成されるLSIの動作部分のモデルは、図20に記述されたように、電流源で記述することもできるが、同等の電流を流すトランジスタで記述されていても良く、それらのモデルは特許文献2や特許文献3に示される方法によって設計情報から自動的に生成することが可能である。
ここで、LSIの動作部分のモデルに記述される、もしくはトランジスタで記述されたモデルで等価的に流れる電源電流の波形の一例を図22の(a)に示す。
この波形は、時間変動する電流波形を表したものであるが、必要に応じて、図23の(b)に記述されたような周波数特性を示す波形に変換することも可能である。これらの波形の変換は、フーリエ変換、もしくは逆フーリエ変換によって容易に変換可能である。また、電源回路の電圧周波数特性を求める場合には、必要に応じて簡単のため周波数が変動しても一定の振幅を示す交流電源波形に置き換えても良い。
次に、アドミタンスモデル生成処理(ステップS33)により、LSI内の等価的なアドミタンスを表現したアドミタンスモデルが、図2の簡易等価回路モデル生成手段9、または詳細等価回路モデル生成手段12において生成される。
ここで生成される図20に例示したLSIのアドミタンスモデル32は、容量や抵抗で構成されたモデルで表現できるが、等価的なトランジスタで記述されたモデルで記述されていても良く、それらのモデルも特許文献2や特許文献3に示される方法によって設計情報から自動的に生成が可能である。
次に、電源分配回路モデル生成処理(ステップS34)により、LSIの電源分配回路モデルが、図2の簡易等価回路モデル生成手段9、または詳細等価回路モデル生成手段12において生成される。
ここで生成される電源分配回路モデルは、LSIの動作部分モデルとアドミタンスモデルとを合わせたLSI電源モデルと、LSIの2種類の電源端子(電源端子、GND端子)間に接続されるモデルであり、図23に例示したPCBにおいては、LSI内の電源配線のモデルだけではなく、パッケージのモデルを含むものとしても良い。
この電源分配回路モデルの構造としては、図20の(a)に例示したように簡単なインダクタンスのモデル33で表現しても良いが、状況に応じて図20の(b)に例示したように複数の回路ブロックの等価回路によって組み合わされた構造になっていても良い。
図20において、31はLSI電源モデルにおける動作部分モデル、32はLSI電源モデルにおけるアドミタンスモデル、33はLSI電源モデルにおける電源分配回路のモデル、34はLSI電源モデルの第一の電源端子、35はLSI電源モデルの第二の電源端子、36はLSI電源モデルにおける回路ブロックを結合させた電源分配回路のモデルである。
この電源配線のモデルは、データベース内に等価回路モデルを用意しておいて、それを読み込んでも良いが、特許文献2に記載される方法によって作成しても良く、または構造や材料定数と言ったパラメータである入力情報から、図2の簡易等価回路モデル生成手段9、または詳細等価回路モデル生成手段12内に備えられたフィールドソルバによるソルバ処理によって作成しても良い。
次に、モデル結合処理(ステップS35)により、作成されたLSIの動作部分モデルとアドミタンスモデルと電源分配回路モデルを結合させ、図20に例示されるようなLSIの等価回路モデルが生成され、この処理が終了する。こうして、PCBに実装されるLSIの等価回路モデルが生成される。
なお、各モデルの作成処理(ステップS32、ステップS33、ステップS34)の順番は、適宜前後させることも可能である。
上述した処理過程を経て、図9の簡易等価回路モデル生成処理(ステップS7)または詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)により、図23に示すPCBの電源回路モデルの一例は、図24に示すようなモデルとなる。
図24において、61はPCBの基板部分(電源ベタ構造)の等価回路モデル、62はPCBに実装されたLSI(パッケージ含む)の等価回路モデル、63はPCBの電源配線に接続された直流電源の等価回路モデル、64はPCBに実装された対策部品であるチップコンデンサの等価回路モデル、65は等価回路モデル上の観測点上の電圧を示している。
図12における基板の等価回路モデルの生成(ステップS20→ステップS23)の処理により、基板電源モデル、直流電源モデル、チップコンデンサモデルが作成され、図12のLSI等価回路モデルの生成(ステップS24→ステップS25)により、LSI電源モデル、電源分配回路モデル及びパッケージモデルが作成され、図12の電源回路モデル生成処理(ステップS26)により、これらのモデルが結合され、PCBの電源回路モデルを構成する。
なお、基板電源モデルにおいて、端の部分ではインピーダンスが2倍(2ZU)、アドミタンスが1/2もしくは1/4(YU/2もしくはYU/4)となっているが、これはPEEC法では端の部分がこのような値となる。また、メッシュサイズはあくまでも1例であり、簡易モデル及び詳細モデルでは異なる。またメッシュサイズによりYUの値は変動する。
図25は、図24で例示されたようなPCBの電源回路モデルを用いて図9の回路過渡解析処理(ステップS8)を行った場合の、電源電圧値の変動を示した一例である。図25で、71、72はそれぞれ電源電圧変動波形Aと電源電圧変動波形Bを示している。
この回路過渡解析処理(ステップS8)には、電源回路モデルとしては簡易モデルを用いる。この電圧変動特性が図2の判定基準データベース4より読み込まれる電圧変動条件を満たしているかどうかを、図2の電圧変動条件判定手段3が自動的に判定することになる。
ここで、例えば、電圧変動条件が、直流電圧VCCより降下する値がΔVDL以内、LSIのスイッチング動作が生じる時間(ex.t=0)から電圧変動が収まるまでの戻り時間(例えばスイッチング動作が生じてから電圧変動の幅が1%以内になるまでの時間)がtRL以内という条件を満たさなければならないと想定する。
例えば、LSIへの観測点における電源電圧波形Aの特性においては、電圧降下値ΔVDAは、ΔVDA<ΔVDLという条件は満たしているが、戻り時間tRAは、tRA<ΔtRLという条件を満たしていないので、この電源電圧波形Aが生じる回路では、安定動作を行わないと判定される。
一方、LSIへの観測点における電源電圧波形Bの特性においては、戻り時間tRBは、tRB<ΔtRLという条件は満たしているが、電圧降下値ΔVDBは、ΔVDB<ΔVDLという条件を満たしていないので、この電源電圧波形Bが生じる回路でも、安定動作がなされないと判定される。
なお、ここでは、電圧変動条件について、電圧降下値と戻り時間の両者で判定することにしたが、電圧降下値だけが条件になっている場合も考えられる。その場合、電源電圧波形Aが生じる回路は、安定動作を行うと判断され、電源電圧波形Bが生じる回路は安定動作を行わないと判定されることになる。
また、図20で例示されたようなPCBの電源の等価回路モデルにおいて、電源電圧変動値について、図示された点(この場合はLSIの直下)での電圧変動値をモニターしているが、別のモニター点(例えば電源プレーンの端における電源−グランド間の電圧)での電源電圧値について、電圧変動条件が設定されていても良い。こうして、図20で例示されたような電源回路モデルに対して図9の回路過渡解析処理(ステップS8)を行った結果より、電圧変動特性と判定基準との比較処理(ステップS3)が自動的に判定される。
また、図26は、図24で例示されたようなPCBの電源回路モデルを用いて図9の回路交流解析処理(ステップS10)を行った場合の、電圧周波数特性の変動を示した一例である。
この回路交流解析処理(ステップS10)は、電源回路モデルとしては詳細モデルを用いる。この電圧周波数特性が図2の判定基準データベース4より読み込まれる電圧周波数条件を満たしているかどうかを、図2の電圧周波数条件判定手段6が自動的に判定することになる。
ここでは、例えば、判断基準として、「解析すべき周波数範囲(F1→F2)において、簡易モデルを用いて求められた電圧周波数特性における上限ピーク値74よりも、詳細モデルを用いて求められた電圧周波数特性における上限ピーク値73が小さくなる」という基準があったとする。
その場合、簡易モデルを用いて求められた電圧周波数特性が必要とされるが、簡易モデルは既に簡易等価回路モデル生成手段(ステップS7)で作成されているので、そのモデルを用いて回路交流解析処理(ステップS10)で詳細モデルと同時に電圧周波数特性を求めれば良い。
図26では、詳細モデルによる電圧の上限ピーク値(73)VMAXDは、簡易モデルによる電圧の上限ピーク値(74)VMAXEより小さくなっているため、判定基準を満たしている。従って、このPCBの電源回路は安定であると自動的に判定される。
勿論、電圧周波数特性の上限ピーク値では無く、下限ピーク値を判定基準として使用しても良く、例えば、「解析すべき周波数範囲(F1→F2)において、簡易モデルを用いて求められた電圧周波数特性における下限ピーク値76よりも、詳細モデルを用いて求められた電圧周波数特性における下限ピーク値75が絶対値として大きい」といったような判定基準が電圧周波数条件として用意されていても良い。
図26の場合では、詳細モデルによる電圧の下限ピーク(75)値VMINDは、簡易モデルによる電圧の下限ピーク値(76)VMINEより大きくなっているため、やはり判定基準を満たしており、このPCBの電源回路は安定であると自動的に判定されることになる。
また、図9の結果出力処理(ステップS6)により、図2の出力装置7に、判定された結果が出力されることになる。ここで出力される結果は、電源回路が安定に設計されていたかという判定された結果だけでなく、生成された簡易モデル及び詳細モデル、解析された電圧変動特性及び電圧周波数特性、判定基準データベース内の条件との比較が図示された結果等が含まれていても良い。これらの結果により、どれだけのマージンのある設計なのか、どの周波数範囲で問題があるか等も絶対量で評価することが可能となる。
(第2の実施の形態による効果)
本実施の形態において、電源回路の等価回路モデルの生成処理、電源電圧変動特性及び電源周波数特性の解析処理、及び電源回路が安定に設計されているかどうかの判定処理は、入力したデータに対し一定の処理を行わせるだけであるので、自動化が可能であり、LSIやプリント基板配線について深い知識を有さない者でも、容易に電源回路が安定かつ低ノイズに設計されているかどうかの判定を行うことが可能である。
また、LSIの等価回路モデルの作成手法及び装置は、既存の技術を流用することが可能であり、基板の等価回路モデル作成用のフィールドソルバや回路解析ツールも市販のものを流用することが可能であるので、本実施の形態によるシステムを容易に構築すること可能である。
また、簡易モデルと詳細モデルの関係の一例を図27に示す。図27の(a)が簡易モデル、図27の(b)が詳細モデルを示しており、この例では簡易モデルの基板パネルは詳細モデルの基板パネルの9倍(3倍×3倍)のサイズとしている。
ここで、何も部品が乗っていない場合の基板パネルのモデルを考えると、R(抵抗)、L(コイル)、C(コンデンサ)で構成された回路モデルになるが、同じ面積分のモデルを作成しようとすると、(b)に示す詳細モデルでは9倍の端子数のモデルを作成する必要がある。精度良く、高周波までの解析結果を得たい場合には、詳細モデルを使用することが必要である。例えば、図中に示したようにチップコンデンサが搭載された場合など、(a)の簡易モデルではモデルとして1箇所にまとめて一箇所に接続されることになるが、(b)の詳細モデルでは各基板パネル毎にチップコンデンサのモデルを置くことができ、より実装の状態を正確に表すことができる。ただし、詳細モデルを使用した場合、解析時間が膨大になってしまい、過渡解析を実行した場合には膨大な時間がかかることになる。
一方、交流解析により電圧の周波数特性を求める場合は、詳細モデルを用いても、解析時間が大きくはならない。そこで、本実施の形態の特徴である、判定基準内に、互いに相関関係のある電圧変動条件及び電圧周波数条件を用意し、ノードの少ない簡易モデルを用いて過渡解析を行い電圧変動条件を導出し、電圧変動条件との判定を行う。さらに、より正確な詳細モデルを用いて交流解析を行い電圧周波数条件を導出し、電圧周波数条件との判定を行うことによって、PCBの電源系回路が安定に設計されているかどうかの判定を、短時間で精度良く行うことが可能になる。
また、このように一種類の電源系においてその電源回路が安定に設計されているかどうかを自動的に判定することができるので、順次、他の電源系にも同じ処理を繰り返すことで、PCB上の電源系全てについて電源回路が安定に設計されているかどうかの判定を行うことも可能になる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図3に、本発明の第3の実施の形態によるプリント回路基板設計システムの構成を示す。この第3の実施の形態では、図2に示す第2の実施の形態によるシステムに、回路記述変更手段14を追加した構成になっている。
この回路記述変更手段14は、電圧変動条件判定手段3においてPCBの電圧変動特性が電圧変動条件を満たさないと判定されたときに、入力装置1から入力されたPCBの回路記述を変更して、変更された回路記述を再度簡易等価回路解析手段8に入力する手段である。
また、回路記述変更手段14は、電圧変動条件判定手段3においてPCBの電圧変動特性が電圧変動条件を満たすと判定された場合でも、電圧周波数条件判定手段6においてPCBの電圧周波数特性が電圧周波数条件を満たさないと判定されたときに、入力装置1から入力されたPCBの回路記述を変更して、変更された回路記述を再度簡易等価回路解析手段8に入力する。
この回路記述変更手段14を備えることにより、PCBの電源回路を安定な構造に設計し直すことが可能になる。
図10は、本発明の第3の実施の形態における処理内容を示したフローチャートである。このフローチャートでは、図9に示した第2の実施の形態の処理内容を示したフローチャートにおいて、電圧変動特性と判定基準との比較処理(ステップS3)の後、電圧変動条件を満たさなかった場合、及び、電圧周波数特性と判定基準との比較処理(ステップS5)の後、電圧周波数条件を満たさなかった場合に、PCBの電源回路の構造を変更して再度入力する処理(ステップS12〜ステップS14)が加えられている。
図9のフローチャートと同様、図3の入力装置1から回路情報の入力処理(ステップS1)が行われ、図3の簡易等価回路モデル生成手段9において、入力された情報からPCBの簡易等価回路モデルの生成処理(ステップS7)が行われる。また、図3の演算手段10で簡易モデルを用いて回路過渡解析処理(ステップS8)が行われる。
次いで、図3の電圧変動条件判定手段3において、解析された電圧変動特性と図3の判定基準データベース4から読み込まれる電圧変動条件との比較処理(ステップS3)が行われ、電圧変動条件を満たすかどうかの判定処理(ステップS11)が行われる。
ステップS11で判定基準を満たせば、図3の詳細等価回路モデル生成手段12で詳細モデルの生成処理(ステップS9)が行われる。また、図3の演算手段13で詳細モデルを用いて回路交流解析処理(ステップS10)が行われる。
そして、図3の電圧周波数条件判定手段6において、解析された電圧周波数特性と図3の判定基準データベース4から読み込まれる電圧周波数条件との比較処理(ステップS5)が行われ、電圧周波数条件判定手段によって電圧周波数条件を満たすかどうかの判定処理(ステップS15)が行われる。
もし、ステップS15の処理で判定基準を満たせば、出力処理(ステップS16)が行われ、この安定に設計されたと判定された電源回路を有するPCBの構造が図3の出力装置7に出力される。
このときの出力結果に、生成された等価回路モデル、及び解析された電圧変動特性と電圧周波数特性と、判定基準データベース4内の条件との比較が図示された結果等が含まれていても良い。
一方、電圧変動条件を満たすかどうかの判定処理(ステップS11)、及び電圧周波数条件を満たすかどうかの判定処理(ステップS15)で判定基準を満たさなかった場合、電源回路の変更手法の選択処理(ステップS12)が、図3の回路記述変更手段14で行われる。
この処理において、電圧変動条件または電圧周波数条件を満たすために、実装されている対策部品や基板の電源配線構造の変更を行う基板パネル変更処理(ステップS13)を行うか、LSIの構造や能力を変更する処理であるLSI構成変更処理(ステップS14)を行うかが決定される。
この選択処理(ステップS12)は、データベースに記述されている変更指針により、システムの中で自動的に行われるようにすることも可能であるし、操作者からの指示に基づいて行うことも可能である。
例えば、判定基準データベース4内に、「電源変動条件が満たされない場合は基板パネル処理(ステップS13)が優先的に行われる」と記述されていれば、電圧変動条件を満たすかどうかの判定処理(ステップS11)で電圧変動条件を満たしていないと判定されたとき、自動的に基板パネル変更処理(ステップS13)が選択される、といった例を示すことができる。
そして、選択された電源回路の変更処理(ステップS13、ステップS14の何れか)が図3の回路記述変更手段14で実行された後、変更された回路記述を図3の簡易等価回路過渡解析手段8に再度入力する。そして、同じ処理を繰り返し、電圧変動条件と電圧周波数条件の両者を満たすように電源回路が設計されるまでこの処理を繰り返す。
ここで、前のステップで作成された簡易モデルは既に存在しているので、電源回路の構造を変更して再度入力する処理(ステップS12〜ステップS14)を行う際に、LSI以外の基板を構成する基板パネルを部分的に変更するだけにするか、もしくはLSIだけを変更するようにしても良く、その方が現実的である。この一連の処理により、安定に設計されたPCBの電源回路の構造が得られる。
図15は、図10の基板パネル変更処理(ステップS13)の具体的な処理内容を示すフローチャートである。
先ず、基板の電源配線構造や部品の種類や数等、変更する構造を決定し、基板パネル構造変更処理(ステップS36)が行われる。このときの構造を変更する方法としては、先述したように基板を構成している基板パネルの一部の構造だけを変更する方法が現実的であり、それを採用した方法となっている。この基板パネル構造を変更する方法については、操作者からの指示によって行うことも可能であるが、データベースに記述されている変更指針により、システムの中で自動的に行われるようにすることも可能である。
例えば、判定基準データベース4内に、「電圧変動条件を満たさないときは、LSIの下辺の中心から0.5mm離れた位置に0.1μFのチップコンデンサ1個を実装する」というルールが記述されておれば、自動的に、LSIの下辺にあたる基板パネルの構造が変わり、対策部品のデータベースの中から0.1μFのチップコンデンサがLSIの下辺から0.5mm離れた位置に実装された構成のパネルに変更される、といった例を示すことができる。
次に、基板構造変更処理(ステップS37)が行われ、変更が行われた基板パネルと、その他の変更していない部分の基板パネルが接続され、基板の構造変更が終了する。この処理は、図3の回路記述変更手段14で実行される。
先述した例においては、LSIの下辺側に位置する基板パネルが、LSIの下辺の中心から0.5mm離れた位置に、0.1μFのチップコンデンサが接続された基板パネルに変更されることになる。このとき、図27で示したように、簡易モデルと詳細モデルにおける基板パネルのサイズが異なるが、それぞれのモデルにおいて実際の構造に最も近い位置にチップコンデンサのモデルが接続されるとする。この処理が終了することで基板パネル変更処理(ステップS13)が完了する。
図16は、図10のLSI構成変更処理(ステップS14)の具体的な処理内容を示すフローチャートである。
先ず、変更手法選択処理(ステップS38)が行われ、LSIの動作状態を変更するのか、パッケージ構造も含めたLSIの種類の変更を行うのかの選択が行われる。この決定は操作者からの指示よって行うことも可能であるが、データベースに記述されている変更指針により、システムの中で自動的に行われることも可能である。
例えば、判定基準データベース4内に、「電圧変動条件を満たさないときは、LSI内の回路ブロックの動作率を1割減にする」というルールが記述されていれば、自動的に動作状態の変更を行う方法が選択される、といった例を示すことができる。
変更手法選択処理(ステップS38)で動作状態の変更が選択されると、動作状態変更処理(ステップS39)を行い、LSIの動作状態の変更を行う。この処理においてもどのような変更を行うかは操作者からの指示に基づいて行うことも可能であるが、データベースに記述されている変更指針により、システムの中で自動的に行われることも可能である。この場合も判定基準データベース4内のルールに従い、自動的にLSIの動作率を1割減にするという変更を行う、といった例が挙げることができる。
また、変更手法選択(ステップS38)においてLSIの種類の変更が選択された場合、構造変更処理(ステップS40)に進み、LSIの構造の変更処理を行う。この処理においてもどのような変更を行うかは操作者からの指示に基づいて行うことも可能であるが、データベースに記述されている変更指針により、システムの中で自動的に行われることも可能である。
例えば、判定基準データベース4内に、「電圧変動条件を満たさない場合はLSIをチップサイズがワンサイズ大きなタイプに変更する」といるルールが記述されていれば、自動的にLSIをチップサイズがワンサイズ大きなタイプに変更にするという変更を行う、といった例を挙げることができる。これらの処理は、図3の回路記述変更手段14で実行される。この動作状態変更処理(ステップS39)もしくは構造変更処理(ステップS40)が終了することでLSI構成変更処理(ステップS14)が完了する。
(第3の実施の形態による効果)
本実施の形態により、安定に設計された電源回路を有するPCBの構造が得られ、その電圧変動特性及び電圧周波数特性も求めることができる。また、図3の判定基準データベース4内に、電圧変動条件及び電圧周波数条件を満たさない場合における、PCBの電源回路の構造変更のための変更指針を予め用意しておけば、自動的にPCBが電圧変動条件及び電圧周波数条件が満たされるように構造が変更される。
また、電源回路モデルの生成処理、電源電圧変動特性及び電圧周波数特性の解析処理、及び電源回路が安定に設計されているかどうかの判定処理は入力したデータに対し一定の処理を行わせるだけであるので、自動化が可能であり、LSIやプリント基板配線について深い知識を有さない者でも、容易に安定に設計された電源回路を有するPCBを設計することができる。
また、LSIの等価回路モデルの作成手法及び装置は、既存の技術を流用することが可能であり、基板の等価回路モデル作成用のフィールドソルバや回路解析ツールも市販のものを流用することが可能であるので、本実施の形態によるシステムは容易に構築すること可能である。
また、電源変動条件を満たすような電源回路構造を得るために、複数のパターンでの回路構造での等価回路モデルを作成して過渡解析を繰り返す必要がある場合、簡易モデルを用いて複数のパターンの解析を行い、電源回路が安定に設計されている最適と考えられる構造を先ず見つけ出し、その後検証としてその構造に対応した詳細モデルを作成し、その詳細モデルを用いた交流解析の結果からその構造が条件を満たすかどうかを判定するという手法を用いているので、短時間で最適な電源回路構造を持つPCBを自動的に設計可能である。
このようにして、PCB上の一種類の電源系において、自動的にその電源回路を安定に設計変更することが可能であるので、順次、他の電源系にも同じ処理を繰り返すことで、PCB上の電源系全てが構成する電源回路を安定に設計変更することも可能になる。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図4に、本発明の第4の実施の形態によるプリント回路基板設計システムの構成を示す。この第4の実施の形態では、図3に示す第3の実施の形態によるシステムに、詳細電圧変動特性導出手段15と、詳細電圧変動条件判定手段16とを加えた構成になっている。
この詳細電圧変動特性導出手段15は、電圧周波数条件判定手段6においてPCBの電圧周波数特性が電圧周波数条件を満たさないと判定されたときに、詳細等価回路モデル生成手段12で生成された詳細モデルを用いた過渡解析を行い、詳細モデルにおける電圧変動特性を求める手段である。
この詳細電圧変動特性導出手段15は、基本的には簡易等価回路過渡解析手段8内の演算手段10や、等価回路交流解析手段11内の演算手段13と同一のものであっても良い。ここで、この詳細電圧変動特性導出手段15で得られた電圧変動特性を、便宜上詳細電圧変動特性と呼ぶ。
次に、詳細電圧変動特性判定手段16において、この電圧周波数条件を満たしていないPCBの電源回路が安定に設計されているかを自動的に判定する。この詳細電圧変動特性判定手段16では、詳細電圧変動特性導出手段15において導出された詳細電圧変動特性と、本発明の特徴である判定基準データベース4に備えられている電圧変動条件とが比較され、PCBの電源回路が安定に設計されているかどうかを判定する。
この詳細電圧変動特性導出手段15と詳細電圧変動条件判定手段16を備えることにより、より精度よく安定な電源回路を有するPCBの構造を得ることが可能になる。
図11は、本発明の第4の実施の形態による処理内容を示したフローチャートである。このフローチャートでは、図11に示した第3の実施の形態の処理を示したフローチャートにおいて、電圧周波数特性と判定基準との比較処理(ステップS5)の後、電圧周波数条件を満たさなかった場合に、詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)において生成されている詳細モデルを用いた過渡解析により詳細電圧変動特性を導出し、その詳細電圧変動特性と判定基準とを比較して、判定基準を満たすかどうかの判定を行う処理(ステップS17〜ステップS19)が加えられている。
図10のフローチャートと同様、図4の入力装置1から回路情報の入力処理(ステップS1)が行われ、図3の簡易等価回路モデル生成手段9において、入力された情報からPCBの簡易等価回路モデルの生成処理(ステップS7)が行われ、図4の演算手段10で簡易モデルを用いて回路過渡解析処理(ステップS8)が行われる。
次いで、図4の電圧変動条件判定手段3において、解析された電圧変動特性と図4の判定基準データベース4から読み込まれる電圧変動条件との比較処理(ステップS3)が行われた後、図4の電圧変動条件判定手段3で、電圧変動条件を満たすかどうかの判定処理(ステップS11)が行われる。
ステップS11で判定基準を満たせば、図4の詳細等価回路モデル生成手段12で詳細モデルの生成処理(ステップS9)が行われ、図4の演算手段13で詳細モデルを用いて回路交流解析処理(ステップS10)が行われる。
そして、図4の電圧周波数条件判定手段6において、解析された電圧周波数特性と図4の判定基準データベース4から読み込まれる電圧周波数条件との比較処理(ステップS5)が行われた後、図4の電圧周波数条件判定手段6で、電圧周波数条件を満たすかどうかの判定処理(ステップS15)が行われる。
もし、ステップS15の処理で判定基準を満たせば、出力処理(ステップS16)が行われ、この安定に設計されたと判定された電源回路を有するPCBの構造が図4の出力装置7に出力される。
また、このときの出力結果に、生成された等価回路モデル、及び解析された電圧変動特性と電圧周波数特性と、判定基準データベース4内の条件との比較が図示された結果等が含まれていても良い。
また、この判定処理(ステップS15)で電圧周波数特性が判定基準を満たさなかった場合、詳細電源回路モデルの回路過渡解析処理(ステップS17)が図4の詳細電圧変動特性導出手段15において行われ、詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)において生成されている詳細モデルを用いて過渡解析により得られた詳細電圧変動特性と、図4の判定基準データベース4から読み込まれる電圧変動条件との比較処理(ステップS18)が行われ、図4の詳細電圧変動条件判定手段16で、電圧条件を満たすかどうかの判定処理(ステップS19)が行われる。
もし、この処理で判定基準を満たせば、出力処理(ステップS16)が行われ、この安定に設計されたと判定された電源回路を有するPCBの構造が図4の出力装置7に出力される。このときの出力結果には、生成された等価回路モデル、及び解析された電圧変動特性と電圧周波数特性と、詳細電圧変動特性と、判定基準データベース4内の条件との比較が図示された結果等が含まれていても良い。
一方、電圧変動特性が判定基準を満たすかどうかの判定処理(ステップS11)、及び詳細電圧変動特性が判定基準を満たすかどうかの判定処理(ステップS19)で判定基準を満たさなかった場合、電源回路の変更手法の選択処理(ステップS12)が、図3の回路記述変更手段14で行われる。
この処理において、電圧変動条件を満たすために、実装されている対策部品や基板の電源配線構造の変更を行う基板パネル変更処理(ステップS13)を行うか、LSIの構造や能力を変更する処理であるLSI構成変更処理(ステップS14)を行うかが決定される。
この選択処理(ステップS12)は、操作者からの指示に基づいて行うことも可能であるが、第3の実施の形態同様、データベースに記述されている変更指針により、システムの中で自動的に行うことも可能である。
そして、選択された電源回路の変更処理(ステップS13、ステップS14の何れか)が図4の回路記述変更手段14で実行された後、変更された回路記述を図4の簡易等価回路過渡解析手段8に再度入力する。そして、同じ処理を繰り返し、電圧変動条件と電圧周波数条件の両者を満たすように電源回路が設計されるまでこの処理を繰り返す。
ここで、第3の実施の形態同様、電源回路の構造を変更して再度入力する処理(ステップS12〜ステップS14)を行う際に、基板パネルを部分的に変更するだけにする、もしくはLSIだけを変更するとしても良く、その方が現実的である。この一連の処理により、安定に設計されたPCBの電源回路の構造が得られる。
(第4の実施の形態による効果)
本実施形態により、安定に設計された電源回路を有するPCBの構造が得られ、その電圧変動特性及び電圧周波数特性も求めることができる。また、電圧周波数特性を満たしていない場合でも、詳細モデルを用いた詳細電圧変動特性を導出し、その詳細電圧変動特性が判定基準を満たす場合にはその電源回路が安定な構造であると自動的に判定することが可能であるので、より精度良く安定な電源回路を有するPCBの設計が行えることになる。
また、図4の判定基準データベース4内に、第3の実施の形態同様、電圧変動条件及び電圧周波数条件を満たさない場合における、PCBの電源回路の構造変更のための変更指針を予め用意しておけば、自動的にPCBが電圧変動条件及び電圧周波数条件が満たされるように構造が変更される。
また、第3の実施の形態同様に、一連の処理は入力したデータに対し一定の処理を行わせるだけであるので、自動化が可能であり、LSIやプリント基板配線について深い知識を有さない者でも、容易に安定に設計された電源回路を有するPCBを設計することができる。
また、LSIの等価回路モデルの作成手法及び装置は、既存の技術を流用することが可能であり、基板の等価回路モデル作成用のフィールドソルバや回路解析ツールも市販のものを流用することが可能であるので、本実施の形態によるシステムは容易に構築すること可能である。
また、詳細電源変動特性を導出する際に詳細モデルを用いた過渡解析を行っているが、簡易モデルを用いての複数パターンの解析を行って、電源変動条件を満たすような電源回路構造を得ているため、電源回路が安定に設計されている構造に非常に近い構造となっており、基本的には詳細モデルを用いて数多くのパターンでの過渡解析を行う必要は無く、精度良く安定な電源回路構造を有するPCBの設計を比較的短時間で行うことが可能である。
このようにして、PCB上の一種類の電源系において、自動的にその電源回路を安定に設計変更することが可能であるので、順次、他の電源系にも同じ処理を繰り返すことで、PCB上の電源系全てが構成する電源回路を安定に設計変更することも可能になる。
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図5に、本発明の第5の実施の形態によるプリント回路基板設計システムの構成を示す。この第5の実施の形態では、図2に記述された第2の実施の形態によるシステムに、各入力情報及びデータベースが記憶された記憶装置17を追加した構成となっている。
記憶装置17内には、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報(LSIの正常動作が可能な電圧変動特性の許容値やLSI内部の遅延情報を含む情報)、及びLSIの内部を構成している部品の情報を含むLSI設計情報/LSIデータベース18と、PCBのレイアウト及び断面構造、及び実装される部品の情報等である基板の設計情報であるCADデータと部品の等価回路の情報である部品データベースを含むCADデータ/部品データベース19と、判定基準データベース4が記憶されている。
この第5の実施の形態において、図9のフローチャートにおける電源回路モデルを生成するための回路設計情報を入力装置1によって入力する代わりに、必要に応じて記憶装置17内にあるCADデータと部品データベースを含むCADデータ/部品データベース19から必要なデータを自動的に抽出させることが可能である。
ここで述べているCADデータにおける電源等の配線情報には、一般的に、配線幅や、配線ルートのXY2軸座標によるルート指定や、配線全長等の情報が含まれ、さらには、接続先の部品名称や型番などの情報を含んでいる。
従って、接続先の部品名称に基づいて、CADデータ/部品データベース19からその部品の等価回路モデルを探索し、モデルを選択するという方法を行うことも可能であり、またより実際的である。またこのとき、入力されたCADデータと連動し、記憶装置17内にある複数のLSIの設計情報を含むLSI設計情報/LSIデータベース18、及び複数の判定基準データベース4から、必要なデータを抽出することも可能であり、またより実際的である。
具体的には、CADデータ/部品データベース19から電源回路に接続されるLSIの名称及びパッケージのデータ等を自動的に抽出し、必要なLSIの全回設計情報とパッケージや電源分配回路の情報が含まれたLSI設計情報/LSIデータベース18、及びその電源回路における電圧変動条件及び電源周波数条件の情報が自動的に選択され入力されるような方法である。
このとき、入力装置1は使用しなくても良いし、入力を開始するためのアクションを入力するためだけに使用しても良い。この処理は、図13のステップS103とステップS104、及び図14のステップS105に相当する。
さらに、図5の電圧変動条件判定手段3及び電圧周波数条件判定手段6によって得られた結果を、記憶装置17内にあるCADデータ/部品データベース19のCADデータに出力することも可能である。この処理は、図9のステップS101に示す処理である。
具体的には、CAD上に表示されたその電源回路における基板の電源配線や、接続された対策部品の情報にエラーが書き込まれる。例えば、CADデータを図として表示した場合、その部分の色を変える等のアラームを出力するような構造にすれば、ユーザーがその電源回路が不安定であり、電源系のレイアウトや基板構造、あるいは対策部品の数、種類、実装数等を変更して対策を行う必要があることを一目で判るようになる。また、電圧変動条件を満たさない場合や、電圧周波数条件を満たさない場合、あるいは両者を満たさない場合でそれぞれ表示する色を変えることにより、どのような対策を行えば良いかの指針も得られることになる。
さらに、図5の電圧変動条件判定手段3及び電圧周波数条件判定手段6によって得られた結果を、記憶装置17内のCADデータ/部品データベース19のCADデータと連動させて、LSI設計情報/LSIデータベース18のLSI設計情報に出力することも可能である。この処理は、図9のステップS102に対応する処理である。
具体的には、CAD上に表示されたそのLSI及びパッケージの情報にエラーが書き込まれる。例えば、CADデータを図として表示した場合、その部分の色が変える等のアラームを出力するような構造にすれば、ユーザーがその電源回路が不安定であり、LSIの動作状態や種類、パッケージの種類等を変更して対策を行う必要があることを一目で判るようになる。また、電圧変動条件を満たさない場合、電圧周波数条件を満たさない場合、あるいは両者を満たさない場合でそれぞれの色を変えることにより、どのような対策を行えば良いかの指針も得られることになる。
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図6に、本発明の第6の実施の形態によるプリント回路基板設計システムの構成を示す。この第6の実施の形態では、図3に記述された第3の実施の形態によるシステムに、各入力情報及びデータベースが記憶された記憶装置17を追加した構成となっている。
記憶装置17内には、第5の実施の形態と同様、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報、及びLSIの内部を構成している部品の情報を含むLSI設計情報/LSIデータベース18と、PCBのレイアウト及び断面構造、及び実装される部品の情報等である基板の設計情報であるCADデータと部品データベースを含むCADデータ/部品データベース19と、判定基準データベース4が記憶されている。
この第6の実施の形態において、図10のフローチャートにおける電源回路モデルを生成するための回路設計情報を図3の入力装置1によって入力する代わりに、必要に応じて記憶装置17内にあるCADデータと部品データベースを含むCADデータ/部品データベース19から必要なデータを自動的に抽出させることが可能である。
CADデータの電源系において、接続先の部品名称に基づいて、CADデータ/部品データベース19からその部品の等価回路モデルを探索し、モデルを選択するという方法を行うことも可能であり、またより実際的である。またこのとき、入力されたCADデータと連動させ、記憶装置17内にある複数のLSIの設計情報を含むLSI設計情報/LSIデータベース18、及び複数の判定基準データベース4から、必要なデータを抽出することも可能であり、またより実際的である。
具体的には、CADデータ/部品データベース19のCADデータから電源回路に接続されるLSIの名称及びパッケージのデータ等を自動的に抽出し、必要なLSIの全回設計情報とパッケージや電源分配回路の情報が含まれたLSI設計情報/LSIデータベース18、及びその電源回路における電圧変動条件及び電圧周波数条件の情報が自動的に選択され入力されるような方法である。
このとき、入力装置1は使用しなくても良いし、入力を開始するためのアクションを入力するためだけに使用しても良い。そして、図10のフローチャートにおいて基板の電源回路の変更処理(ステップS13、ステップS14のいずれか)を行う際には、記憶装置17内にあるCADデータと部品データベースを含むCADデータ/部品データベース19、またはLSIの設計情報を含むLSI設計情報/LSIデータベース18に直接働き、構造の変更や種類の変更等の処理が行われ、その処理によってCADデータの記述が変更される。
この処理は、図15のステップS106とステップS107、及び図16のステップS109に相当する。従って、電圧変動条件及び電圧周波数条件の両方が満たされて図10に記述された処理が完了した際には、PCBのCADデータにおける電源回路は、安定に設計されていることになり、より実際的なシステム構成になっている。
(第7の実施の形態)
次に、本発明の第7の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図7に、本発明の第7の実施の形態によるプリント回路基板設計システムの構成を示す。この第7の実施の形態では、図4に記述された第4の実施の形態によるシステムに、各入力情報及びデータベースが記憶された記憶装置17を追加した構成となっている。
記憶装置17内には、第5及び第6の実施の形態と同様、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報、及びLSIの内部を構成している部品の情報を含むLSI設計情報/LSIデータベース18と、PCBのレイアウト及び断面構造、及び実装される部品の情報等である基板の設計情報であるCADデータと部品データベースを含むCADデータ/部品データベース19と、判定基準データベース4が記憶されている。
この第7の実施の形態において、図11のフローチャートにおける電源回路モデルを生成するための回路設計情報を図4の入力装置1によって入力する代わりに、必要に応じて記憶装置17内にあるCADデータと部品データベースを含むCADデータ/部品データベース19から必要なデータを自動的に抽出させることが可能である。
CADデータの電源系において、接続先の部品名称に基づいて、CADデータ/部品データベース19からその部品の等価回路モデルを探索し、モデルを選択するという方法を行うことも可能であり、またより実際的である。またこのとき、入力されたCADデータと連動させ、記憶装置17内にある複数のLSIの設計情報を含むLSI設計情報/LSIデータベース18、及び複数の判定基準データベース4から、必要なデータを抽出することも可能であり、またより実際的である。
具体的には、CADデータ/部品データベース19のCADデータから電源回路に接続されるLSIの名称及びパッケージのデータ等を自動的に抽出し、必要なLSIの全回設計情報とパッケージや電源分配回路の情報が含まれたLSI設計情報/LSIデータベース18、及びその電源回路における電圧変動条件及び電圧周波数条件の情報が自動的に選択され入力されるような方法である。
このとき、入力装置1は使用しなくても良いし、入力を開始するためのアクションを入力するためだけに使用しても良い。そして、図11のフローチャートにおいて基板の電源回路の変更処理(ステップS13、ステップS14のいずれか)を行う際には、記憶装置17内にあるCADデータと部品データベースを含むCADデータ/部品データベース19、またはLSIの設計情報を含むLSI設計情報/LSIデータベース18に直接働き、構造の変更や種類の変更等の処理が行われ、その処理によってCADデータの記述が変更される。
この処理は、図15のステップS106とステップS107、及び図16のステップS109に相当する。従って、簡易モデルを用いて導出した電圧変動特性及び詳細モデルを用いて導出した詳細電圧変動特性の両者が電圧変動条件を満たすように、図11に記述された処理が完了した際には、PCBのCADデータにおける電源回路は、安定に設計されていることになり、より実際的なシステム構成になっている。
ここで、上記各実施の形態によるプリント回路基板設計システムのハードウェア構成について、図17を参照して説明する。
図17は、プリント回路基板設計システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図17を参照すると、プリント回路基板設計システムは、一般的なコンピュータ装置と同様のハードウェア構成によって実現することができ、CPU(Central Processing Unit)301、RAM(Random Access Memory)等のメインメモリであり、データの作業領域やデータの一時退避領域に用いられる主記憶部302、ネットワークを介してデータの送受信を行う通信制御部303、周辺機器と接続してデータの送受信を行うインタフェース部304、ROM(Read Only Memory)、磁気ディスク、半導体メモリ等の不揮発性メモリから構成されるハードディスク装置である補助記憶部305、本情報処理装置の上記各構成要素を相互に接続するシステムバス306、入力装置1及び出力装置7を備えている。入力装置1と出力装置7については、インタフェース部304を介して外部に配置することも可能である。
本実施の形態によるプリント回路基板設計システムは、その動作を、内部にプリント回路基板の設計プログラムを組み込んだ、LSI 等のハードウェア部品である回路部品を実装することによりハードウェア的に実現することは勿論として、上記した各構成要素の各機能を提供するプログラムを、CPU301で実行することにより、ソフトウェア的に実現することも可能である。
ソフトウェア的に実現する場合、CPU301は、補助記憶部305に格納した負荷分散プログラム60を、主記憶部302にロードして実行することにより、上述したP2P機能部20とサーバ機能部30の機能を実行する。
次に、上述した実施の形態を適用した第1の実施例について説明する。
図28の(a)は、解析すべきPCBの一例であり、パッケージを持つLSIが基板寸法200[mm]×300[mm]の一面を覆うベタの電源層に実装され、直流電源からベタ電源に直流電圧3.3Vが供給され、電源回路が構成されているという構造である。この電源回路が安定に設計されているかどうかについて、本実施の形態によるシステムを用いて検証を行う。
図28で、81は実施例のPCBの基板部分(電源ベタ構造)、82は実施例のPCBに実装されたLSI(パッケージ含む)、83は実施例のPCBの電源配線に接続された直流電源、84は実施例のPCBに実装された対策部品であるチップコンデンサ、85は実施例のPCB上の観測点を示している。
ここでは、システムとして、図5に示される第5の実施の形態によるシステムを用いるものとする。
先ず、入力装置1から入力情報を取り込むという信号を発生させ、記憶装置17内に記憶されたCADデータ/部品データベース19から、図28の(a)に示されるPCBのCADデータ及び実装されている部品の等価回路を含んだデータが入力される。そのCADデータと連動し、同時に記憶装置17内に記憶されたLSI設計情報/LSIデータベース18から、実装されているLSIの全回路設計情報を含んだ設計情報、及びLSIを構成している部品やパッケージの等価回路を含んだデータが入力される。
また同時に、記憶装置17内に記憶された判定基準データベース4から、図28の(a)に示されるPCBにおける電圧変動条件及び電圧周波数条件が入力される。この電圧変動条件及び電圧周波数条件には、観測点の情報とその箇所での瞬時電圧変動特性の判定条件及び電圧周波数特性の判定条件が含まれているものとし、観測点は図28の(a)に示したように、LSIの直下の点であるとする。
この処理が、図9の回路設計情報入力処理(ステップS1)に相当する。また、この処理は、図12のステップS20及びステップS24に相当し、厳密に説明すると、CADデータの入力は図13のステップS103、部品データベースの入力は図13のステップS104、LSI設計情報/LSIデータベース18の入力は図14のステップS105の各処理に相当する。
次に、図12に示すステップS21→ステップS23の一連の処理である、基板の等価回路モデルの作成処理を、図5に示す等価回路モデル生成手段9で実行する。
先ず、基板パネル分割処理(ステップS21)については、入力された基板構造の情報を、簡易モデルを作成するためにメッシュ分割し、各基板パネル毎の情報を用意する。この場合の基板パネルのサイズは、解析時間が膨大にならないようにデータベース内に記述されており、ここでは、1[mm]×1[mm]に設定されていたものとする。
次に、各基板パネル毎の基板等価回路モデル生成処理(ステップS22)を実行する。この処理において、図13のソルバ処理(ステップS28)が、図5に示す等価回路モデル生成手段9内に備えられたフィールドソルバを用いて実行される。ここで、フィールドソルバに入力される、PCBの基板パネルの入力情報は、電源配線43の図18の(a)または(b)に示されるような形状、及び材料定数であり、CADデータからの入力処理(ステップS103)及び基板パネル分割処理(ステップS21)により得られている。
この例では、電源パターンは、図18の(a)に示すように層構造になっており、基板パネルにおける電源の水平面寸法、電源層の厚みt−vcc、グランド層の厚みt−gnd、各絶縁層の厚みt−in、及び各同導電層の導電率σ、各絶縁層の比誘電率εr及び誘電正接tanδの値から、図19の(b)に示したようなメッシュ構造の等価回路モデルを作成する。また、ZU及びYUのパラメータは、基板パネルのメッシュサイズに左右される。こうして、具体例として、RU=7.379[mΩ]、LU=1.257[nH]、CU=3.807[pF]、GU=8.612e−5[S]である基板パネルの電源のメッシュモデルが生成されたものとする。
また、図13のモデル結合処理(ステップS30)が実行され、生成されている基板パネルのモデルと実装されているLSI以外の部品のモデルが結合される。この例では、部品データベースからの入力処理(ステップS104)で入力された直流電源のモデルが、CADデータ上で直流電源が実装されている位置の基板パネルのモデルに結合されるという処理が行われる。こうして、基板パネル毎の等価回路モデルが生成される。
次に、基板等価回路モデル生成処理(ステップS23)が行われ、前処理において生成されている各基板パネルの等価回路モデルを結合することで、基板の等価回路モデルが、図5に示す簡易等価回路モデル生成手段9で作成される。
次に、図12に示すLSI等価回路モデル生成処理(ステップS25)が、図5に示す簡易等価回路モデル生成手段9で実行される。
先ず、図14の動作部分モデル生成処理(ステップS32)が行われ、記憶装置17より入力されたLSI設計情報/LSIデータベース18より、LSIの動作部分のモデルが生成される。ここでは、特許文献3に記述された方法より得られたトランジスタ記述のゲート回路のモデルを、電流源に変換するという手法で生成されたものとする。ここで、24[MHz]でスイッチング動作を起こすLSIの電源端子を流れる電流を模示した動作部分モデルが生成されたものとする。
次に、図14のLSIのアドミタンスモデル生成処理(ステップS33)が実行され、LSIの等価アドミタンスのモデルが生成される。ここでは、例えば、特許文献3に記述された方法を適用し、得られた回路の等価内部容量をまとめるという手法で生成することが可能である。
次に、図14のLSIの電源分配回路モデル生成処理(ステップS34)が実行され、LSIのパッケージを含めた電源分配回路の等価回路モデルが生成される。ここでは、部品データベース内に電源分配回路及びパッケージモデルが用意されていたとし、既にこの情報が入力されているので特に何も処理は行われないものとする。
もし、LSI内の電源配線等が、図18の(b)の基板配線のような情報で記述されていたとした場合、簡易等価回路モデル生成手段9内に備えられたフィールドソルバによるソルバ処理により、等価回路モデルを生成する必要がある。
次に、図14のモデル結合処理(ステップS35)が実行され、LSIの動作部分モデル、等価アドミタンスモデル、及び電源分配回路モデルが結合され、LSIの等価回路モデルが、図5に示す等価回路モデル生成手段9で作成される。
次に、図12に示す電源回路モデル生成処理が、図5に示す簡易等価回路モデル生成手段9で実行される。生成された基板の等価回路モデルとLSIの等価回路モデルが結合され、求めるべきPCBの簡易モデルが、図5に示す等価回路モデル生成手段9で作成される。
図29は、図28の(a)の等価回路モデルの一例を示している。直流電源の等価回路(R=600[mΩ]、L=2.45[nH]の直列抵抗を有する3.3[V]の直流電源)とLSIの等価回路モデルが、1[mm]×1[mm]で分割された基板の等価回路モデルに接続された構成になっている。また、LSIのパッケージは、図に示したようにLCRのラダー回路で表現された形になっており、LPKG=0.479[nH]、RPKG=0.366[mΩ]、CPKG=12.96[pF]である。また、電源分配回路のモデルは、10[Ω]の直列抵抗が電源側とグランド側にそれぞれ存在する構造であり、等価アドミタンスモデルは、5000[pF]の容量に1.2[mΩ]の抵抗が直列に接続されたモデルになっている。また、動作部分モデルは、図に示したような電流波形が24[MHz]周期で繰り返し流れるというモデルとなっている。
図29及び図31において、91は実施例のPCBの基板部分(電源ベタ構造)の等価回路モデル、93は実施例のPCBの電源配線に接続された直流電源の等価回路モデル、94は実施例のPCBに実装された対策部品であるチップコンデンサの等価回路モデル、95は実施例の等価回路モデル上の観測点、96は実施例のPCBに実装されたLSI(パッケージ含む)の等価回路モデルにおける動作部分モデルの電流波形、97は実施例のPCBに実装されたLSI(パッケージ含む)の等価回路モデルにおけるアドミタンスモデル、98は実施例のPCBに実装されたLSI(パッケージ含む)の等価回路モデルにおける電源分配回路のモデル、99は実施例のPCBに実装されたLSI(パッケージ含む)の等価回路モデルにおけるパッケージのモデルを示している。
次に、図9に示す回路過渡解析処理(ステップS8)が、図5に示す演算手段10で実行される。ここで、生成された図29に示される簡易モデルを用いて、図5の演算手段10内に備えられた回路解析エンジンにより過渡解析され、電圧変動特性が導出される。得られた電圧変動特性は図30の(a)に示されるような波形となる。
次に、図9に示す電圧変動特性と判定基準との比較処理(ステップS3)が、図5に示す電圧変動条件判定手段3で実行される。ここで、図5に示す判定基準データベース4より入力された電圧変動条件と解析された電圧変動特性とを比較する。ここで、電圧変動条件は、下限電圧閾値Vth=3.09[V]であったとし、電圧変動特性が一瞬でもこの閾値より下回ったら判定基準を満たさないものとする。
図30の(a)には下限電圧閾値Vthの特性も併記してあるが、この図より、簡易モデルを用いた過渡解析により導出された電圧変動特性は、常に下限電圧閾値Vthより大きくなっているため、電圧変動条件は満たされると判定される。
次に、図9に示す詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)が、図5に示す詳細等価回路モデル生成手段12で実行される。この処理においては、既に生成されている簡易モデルの各基板パネルが、詳細モデル用の基板パネルに置き換えられる。
ここでは、基板構造の情報が変化しないので、詳細等価回路モデル生成手段12内に備えられたフィールドソルバによるソルバ処理により基板モデルを生成する場合でも、入力のデータは基板パネルのサイズ以外は変更されず、そのままの情報を利用できる。
また、今回のモデルにおいては、LSIモデル及びその他の実装部品(直流電源)のモデルは変更せず、基板パネルのサイズだけが変更されるとする。このような簡易モデルと詳細モデルとの関係性は、予めライブラリ上に記述されているとする。
得られる詳細モデルは、図29に示されたモデルにおいて、0.25[mm]×0.25[mm]で分割された基板の等価回路モデルに、簡易モデルと共通のLSIの等価回路モデル及び直流電源の等価回路モデルが、位置情報に併せて接続された構造となり、この場合における基板パネルにおける基板等価回路モデルのパラメータは、RU=7.379[mΩ]、LU=1.257[nH]、CU=0.238[pF]、GU=5.382e−6[S]となっているとする。
次に、図9に示す回路交流解析処理(ステップS10)が、図5に示す演算手段13で実行される。ここで、生成された図29に示される詳細モデルを用いて、図5の演算手段13内に備えられた回路解析エンジンにより交流解析され、電圧周波数特性が導出される。
このとき、LSIの等価回路モデルの動作部分モデルの電流波形は、交流解析用に周波数特性での表現に変換される。得られた電圧周波数特性は図30の(b)に示されるような波形になる。ここでは、動作部分の電流波形の周期24[MHz]の高周波成分を上限1[GHz]まで求めている。
次に、図9に示す電圧周波数特性と判定基準との比較処理(ステップS5)が、図5に示す電圧周波数条件判定手段6で実行される。ここで、図5に示す判定基準データベース4より入力された電圧周波数条件と解析された電圧周波数特性を比較する。
ここで、電圧周波数条件は、下限電圧閾値Vfth=0.06[V](10〜100[MHz])及び0.006[V](100[MHz]〜1[GHz])であったとし、電圧周波数特性が一瞬でもこの閾値より上回ったら判定基準を満たさないものとする。
図30の(b)には、下限電圧閾値Vfthの特性も併記してあるが、この図より、詳細モデルを用いた交流解析により導出された電圧周波数特性は、10〜100[MHz]の範囲では常にVfthより小さくなっているが、100[MHz]〜1[GHz]の範囲ではVfthよりも大きくなっている周波数が存在するので、電圧周波数条件は満たされないと判定される。
次に、図9の結果出力処理(ステップS6)が行われ、電圧変動特性と判定基準との比較処理(ステップS3)における判定結果(電圧変動条件を満たすとという判定結果)と、電圧周波数特性と判定基準との比較処理(ステップS5)における判定結果(電圧周波数条件を満たさないという判定結果)が、図5の出力装置7に出力され、一連の処理が終了する。
ここでは、同時に、図29に記述されたPCBの簡易モデルと詳細モデル、及びそのモデルを使用した解析比較結果として図30の(a)、(b)に示された特性が出力されるとする。
また、同時に、図9のCADデータへの結果出力処理(ステップS101)が行われ、図5の記憶装置17内のCADデータ19の記述が変更されるとする。ここでは、CADデータ内の基板電源配線に、電圧変動条件は満たすが電圧周波数条件を満たさない、というエラーが書き込まれ、図28の(a)のCADデータが図示された際、基板電源配線の色が、例えば緑色に変化して表示され、電圧変動条件は満たすが電圧周波数条件を満たさないということが直ちに判るようになる。
以上の処理により、図28の(a)に示されたPCBの電源回路が安定に設計されているかどうかが自動的に判定される。別の例として、電圧変動条件と電圧周波数条件の両者を満たす、電圧変動条件は満たさないが電圧周波数条件は満たす、電圧変動条件と電圧周波数条件の両者を満たさない、というそれぞれの場合には、それぞれ別の色によって出力されるようにしておけば、CADデータ上を表示したとき、どのような条件かが一目で分かるようになる。
次に、第2の実施例について説明する。この場合のシステムとしては、図6に示される第6の実施の形態によるシステムを用いるものとする。
先ず、用意するPCBのデータとしては図28の(a)のものを用いる。このPCBの電源回路について安定に設計されているかどうか判定し、安定でなかった場合は安定になるように、本実施の形態によるシステムを用いてPCBの構造の変更を行う。
最初に、入力装置1から入力情報を取り込むという信号を発生させ、記憶装置17内に記憶されたCADデータ/部品データベース19から、図28の(a)に示されるPCBのCADデータ及び実装されている部品の等価回路を含んだデータベースが入力される。そのCADデータと連動し、同時に記憶装置17内に記憶されたLSI設計情報/LSIデータベース18から、実装されているLSIの全回路設計情報を含んだ設計情報、及びLSIを構成している部品やパッケージの等価回路を含んだデータベースが入力される。
また同時に、記憶装置17内に記憶された判定基準データベース4から、図28の(a)に示されるPCBにおける電圧変動条件及び電圧周波数条件が入力される。この電圧変動条件及び電圧周波数条件には、観測点の情報とその箇所での瞬時電圧変動特性の判定条件及び電圧周波数特性の判定条件が含まれているものとし、観測点はLSIの直下の点であるとする。
この処理が、図10の回路設計情報入力処理(ステップS1)に相当する。また、この処理は、図12のステップS20及びステップS24に相当し、厳密には、CADデータの入力は図13のステップS103、部品データベースの入力は図13のステップS104、LSI設計情報とLSIデータベースの入力は図14のステップS105の各処理に相当する。
次に、図12に示すステップS21→ステップS23の一連の処理である、基板の等価回路モデルの作成処理を、図6に示す等価回路モデル生成手段9で実行される。
先ず、基板パネル分割処理(ステップS21)については、入力された基板構造の情報を、簡易モデルを作成するためにメッシュ分割し、各基板パネル毎の情報を用意する。この場合の基板パネルのサイズは、は解析時間が膨大にならないようにデータベース内に記述されており、ここでは1[mm]×1[mm]に設定されていたものとする。
次に、各基板パネル毎の基板等価回路モデル生成処理(ステップS22)を実行する。この処理において、図13のソルバ処理(ステップS28)が、図6に示す等価回路モデル生成手段9内に備えられたフィールドソルバを用いて実行される。ここで、フィールドソルバに入力される情報は、CADデータからの入力処理(ステップS103)及び基板パネル分割処理(ステップS21)により得られている。この処理により、図19の(b)に示すようなメッシュ構造の等価回路モデルを作成する。
また、図13のモデル結合処理(ステップS30)が実行され、生成されている基板パネルのモデルと実装されているLSI以外の部品のモデルが結合される。この例では、部品データベースからの入力処理(ステップS104)にて入力された直流電源のモデルが、CADデータ上で直流電源が実装されている位置の基板パネルのモデルに結合されるという処理が行われる。こうして、基板パネル毎の等価回路モデルが生成される。
次に、基板等価回路モデル生成処理(ステップS23)が行われ、前処理において生成されている各基板パネルの等価回路モデルを結合することで、基板の等価回路モデルが、図6に示す簡易等価回路モデル生成手段9で作成される。
次に、図12に示すLSI等価回路モデル生成処理(ステップS25)が、図6に示す簡易等価回路モデル生成手段9で実行される。
先ず、図14の動作部分モデル生成処理(ステップS32)が行われ、記憶装置17より入力されたLSI設計情報/LSIデータベース18より、LSIの動作部分のモデルが生成される。ここでは、例えば、特許文献3に記述された方法より得られたトランジスタ記述のゲート回路のモデルを、電流源に変換するという手法で生成することが可能である。
次に、図14のLSIのアドミタンスモデル生成処理(ステップS33)が実行され、LSIの等価アドミタンスのモデルが生成される。ここでは、例えば、特許文献3に記述された方法を適用し、得られた回路の等価内部容量をまとめるという手法で生成することが可能である。
次に、図14のLSIの電源分配回路モデル生成処理(ステップS34)が実行され、LSIのパッケージを含めた電源分配回路の等価回路モデルが生成される。ここでは、部品データベース内に電源分配回路及びパッケージモデルが用意されていたとし、既にこの情報が入力されているので特に何も処理は行われないものとする。
次に、図14のモデル結合処理(ステップS35)が実行され、LSIの動作部分モデル、等価アドミタンスモデル、及び電源分配回路モデルが結合され、LSIの等価回路モデルが、図6に示す等価回路モデル生成手段9で作成される。
次に、図12に示す電源回路モデル生成処理が、図6に示す簡易等価回路モデル生成手段9で実行される。生成された基板の等価回路モデルとLSIの等価回路モデルが結合され、求めるべきPCBの簡易モデルが、図6に示す等価回路モデル生成手段9で作成される。生成された簡易モデルは、図29に示す簡易モデルの構成となっている。
次に、図10に示す回路過渡解析処理(ステップS8)が、図6に示す演算手段10で実行される。ここで、生成された図29に示される簡易モデルを用いて、図6の演算手段10内に備えられた回路解析エンジンにより過渡解析され、電圧変動特性が導出される。得られた電圧変動特性は図30の(a)に示されるような波形となる。
次に、図10に示す電圧変動特性と判定基準との比較処理(ステップS3)が、図6に示す電圧変動条件判定手段3で実行される。ここで、図6に示す判定基準データベース4より入力された電圧変動条件と解析された電圧変動特性とを比較する。ここで、電圧変動条件は、下限電圧閾値Vth=3.09[V]であったとし、電圧変動特性が一瞬でもこの閾値より下回ったら判定基準を満たさないものとする。
この処理により、図30の(a)に示したように、簡易モデルを用いた過渡解析により導出された電圧変動特性と、下限電圧閾値Vthの特性を比較する。
次に、図10に示す判定基準を満たしているかどうかの処理(ステップS11)が、図6に示す電圧変動条件判定手段3で実行される。ここで、図30の(a)より電圧変動特性は常に下限電圧閾値Vthより大きくなっているため、電圧変動条件は満たされると判定される。
そこで、次のステップである図10に示す詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)に進む。もし、ここで電圧変動条件が満たされなかった場合、図10に示す電源回路の変更手法の選択処理(ステップS12)に進む。
次に、図10に示す詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)が、図6に示す詳細等価回路モデル生成手段12で実行される。この処理において、予めライブラリ上に記述されている関係性に従い、既に生成されている簡易モデルの各基板パネルが、詳細モデル用の基板パネルに置き換えられる。得られる詳細モデルは、図29に示す詳細モデルの構成となっている。
次に、図10に示す回路交流解析処理(ステップS10)が、図6に示す演算手段13で実行される。ここで、生成された図29に示される詳細モデルを用いて、図6の演算手段13内に備えられた回路解析エンジンにより交流解析され、電圧周波数特性が導出される。
このとき、LSIの等価回路モデルの動作部分モデルの電流波形は、交流解析用に周波数特性での表現に変換される。得られた電圧周波数特性は、図30の(b)に示されるような波形になる。ここでは動作部分の電流波形の周期24[MHz]の高周波成分を上限1[GHz]まで求めている。
次に、図10に示す電圧周波数特性と判定基準との比較処理(ステップS5)が、図6に示す電圧周波数条件判定手段6で実行される。ここで、図6に示す判定基準データベース4より入力された電圧周波数条件と解析された電圧周波数特性とを比較する。
ここで、電圧周波数条件は、下限電圧閾値Vfth=0.06[V](10〜100[MHz])及び0.006[V](100[MHz]〜1[GHz])であったとし、電圧周波数特性が一瞬でもこの閾値より上回ったら判定基準を満たさないものとする。
この処理により、図30の(b)に示したように、詳細モデルを用いた交流解析により導出された電圧周波数特性と、下限電圧閾値Vfthの特性を比較する。
次に、図10に示す判定基準を満たしているかどうかの処理(ステップS15)が、図6に示す電圧周波数条件判定手段6で実行される。ここで、図30の(b)より電圧周波数特性は100[MHz]〜1[GHz]の範囲では下限電圧閾値Vfthより大きくなる周波数が存在するため、電圧周波数条件は満たされていないと判定される。
そこで、安定な電源に変更するため、電源回路の変更手法の選択処理(ステップS12)に進む。もし、ここで電圧周波数条件が満たされた場合、図10に示す回路構造及び特性出力処理(ステップS16)に進む。
次に、図10に示す電源回路の変更手法の選択処理(ステップS12)が、図6に示す回路記述変更手段14で実行される。この処理では、電源が安定に設計されていないと判定された場合、判断基準データベース4内に記述されている変更指針より、PCBの構造をどのように変更するか、という手法を選択する。
ここでは、判断基準データベース4内に、「判定基準条件を満たさなかった場合、LSIの左辺の中心から0.5mm離れた位置に0.1[μF]のチップコンデンサ1個を実装する」という回路の変更指針が用意されており、図6の部品データベース19内には、0.1[μF]のチップコンデンサの等価回路モデルが用意されていたものとする。
そこで、電源回路の変更手法として基板パネルの変更を選択し、次のステップとして基板パネル変更処理(ステップS13)に進む。もし、変更指針としてLSIの構造を変えるという方法が用意されていた場合には、電源回路の変更手法としてLSI構成の変更を選択し、次のステップとしてLSI構成変更処理(ステップS14)に進む。
次に、図10に示す基板パネル変更処理(ステップS13)が、図6に示す回路記述変更手段14で実行される。
先ず、図15に示す基板パネル構造変更処理(ステップS36)が、図6に示す回路記述変更手段14で実行される。ここでは、判定基準データベース4内に、「判定基準条件を満たさなかった場合、LSIの左辺の中心から0.5mm離れた位置に0.1[μF]のチップコンデンサ1個を実装する」という回路の変更指針が用意されているので、LSIの左辺の部分の基板パネルの構成が、0.1[μF]のチップコンデンサがLSIの左辺から0.5mm離れた位置に実装された構成になるように記述が変更される。
次に、図15に示す基板構造変更処理(ステップS37)が、図6に示す回路記述変更手段14で行われる。ここで、0.1[μF]のチップコンデンサが接続されるという変更が行われた基板パネルと、他の基板パネルとが接続され、基板パネル変更処理(ステップS13)が終了する。ここで、構造の変更が行われた基板構造は図28の(b)のようになる。この形状は、図6に示すCADデータ及び部品ベース19に自動的に記述される。この処理は、図15のステップS106に相当する。
次に、図10の簡易等価回路モデル生成処理(ステップS7)が、図6の簡易等価回路モデル生成手段9で実行される。ここで、構造の変更が行われたPCBの等価回路モデルが再度生成される。しかし、ここで実行される基板モデルの生成は、構造が変更された基板パネルの部分だけで良く、その他の基板パネルのモデルは既に生成されているため、変更が行われた基板パネルの等価回路モデルだけを再度生成し、既に生成されている他の基板パネルの等価回路モデルと接続することにより、構造変更後の簡易モデルが生成される。
この処理による得られる図28の(b)の簡易モデルは、図31に示すようになり、LSIの左辺側に、400[mΩ]の抵抗と2.60[nH]のインダクタンスが直列に接続された0.1[μF]の等価容量モデルが接続された構成になっている。他のパラメータについては、図29に示した図28の(b)の簡易モデルとの違いは無い。
次に、図10に示す回路過渡解析処理(ステップS8)が、図6に示す演算手段10で実行される。ここで、生成された図29に示される簡易モデルを用いて、図6の演算手段10内に備えられた回路解析エンジンにより過渡解析され、電圧変動特性が導出される。得られた電圧変動特性は図32の(a)に示される波形になる。
次に、図10に示す電圧変動特性と判定基準との比較処理(ステップS3)が、図6に示す電圧変動条件判定手段3で実行される。ここで、判定基準データベース4より入力された電圧変動条件と解析された電圧変動特性を比較する。この処理により、図32の(a)に示したように、簡易モデルを用いた過渡解析により導出された電圧変動特性と、下限電圧閾値Vthの特性を比較する。
次に、図10に示す判定基準を満たしているかどうかの処理(ステップS11)が、図6に示す電圧変動条件判定手段3で実行される。ここで、図32の(a)より電圧変動特性は常に下限電圧閾値Vthより大きくなっているため、電圧変動条件は満たされると判定される。
そこで、次のステップである図10に示す詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)に進む。もし、ここで電圧変動条件が満たされなかった場合、図10に示す電源回路の変更手法の選択処理(ステップS12)に進む。
次に、図10に示す詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)が、図6に示す詳細等価回路モデル生成手段12で行われる。この処理において、予めライブラリ上に記述されている関係性に従い、既に生成されている簡易モデルの各基板パネルが、詳細モデル用の基板パネルに置き換えられる。得られる詳細モデルは、図31に示す詳細モデルの構成となっている。
次に、図10に示す回路交流解析処理(ステップS10)が、図6に示す演算手段13で実行される。ここで、生成された図31に示される詳細モデルを用いて、図6の演算手段13内に備えられた回路解析エンジンにより交流解析され、電圧周波数特性が導出される。得られた電圧周波数特性は図32の(b)に示されるような波形になる。
次に、図10に示す電圧周波数特性と判定基準との比較処理(ステップS5)が、図6に示す電圧周波数条件判定手段6で実行される。ここで、判定基準データベース4より入力された電圧周波数条件と解析された電圧周波数特性を比較する。この処理により、図32の(b)に示したように、詳細モデルを用いた交流解析により導出された電圧周波数特性と、下限電圧閾値Vfthの特性を比較する。
次に、図10に示す判定基準を満たしているかどうかの処理(ステップS15)が、図6に示す電圧周波数条件判定手段6で実行される。ここで、図32の(b)より電圧周波数特性は10〜100[MHz]及び100[MHz]〜1[GHz]の範囲では常に下限電圧閾値Vfthより小さくなるため、電圧周波数条件が満たされていると判定される。
従って、次のステップである図10に示す回路構造及び特性出力処理(ステップS16)に進む。もし判定基準を満たしていなかった場合、再度、電源回路の変更手法の選択処理(ステップS12)に進む。
次に、図10の回路構造及び特性出力処理(ステップS16)が実行され、安定に設計されたPCBの構造、及びその簡易モデルと詳細モデル、及びそれぞれを用いた電圧変動特性と電圧周波数特性(共に判定基準が併記されていても良い)が、図6の出力装置7に出力され、一連の処理が終了する。
ここでは、図28の(b)に示す基板構造、図31に示す簡易モデル及び詳細モデル、図32に示す電圧変動特性及び電圧周波数特性が出力されたとする。また、図6のCADデータ/部品データベース19やLSI設計情報/LSIデータベース18は、一連の処理において最新の構造に記述が変更されているので、安定になる構造が記されていることになる。また、これらの結果から、判定基準データベースのデータや変更指針を更新させて、以降の判定に反映させることも可能である。
また、判定データベース4内に用意されている回路の変更指針は、1種類に限定されず、複数種類用意されていて、変更方法について優先順位を決めておくことも可能である。これにより、PCBの構造の変更の際には、その優先順位に従い、回路構造の変更を試していくことが可能となる。
この場合の例で言えば、「判定基準条件を満たさなかった場合、LSIの左辺の中心から0.5mm離れた位置に0.1[μF]のチップコンデンサ1個を実装する。それで駄目な場合、LSIの下辺の中心から0.5mm離れた位置に0.1[μF]のチップコンデンサ1個を実装する。それで駄目な場合、LSIの右辺の中心から0.5mm離れた位置に0.1[μF]のチップコンデンサ1個を実装する。・・・」といったように、回路構造の変更を行っても判定基準を満たさなかった場合には、次の回路構造の変更指針が用意されており、判定基準を満たすまで回路構造の変更を行わせることで、自動的に安定に設計された電源回路を有するPCBの構造を得ることが可能になる。
次に、第3の実施例について説明する。この場合のシステムとしては、図7に示される第7の実施の形態によるシステムを用いるものとする。
先ず、用意するPCBのデータとしては図28の(b)に示すものを用いる。このPCBの電源回路を安定に設計されているかどうか判定し、安定でなかった場合は安定になるよう、本実施の形態によるシステムを用いてPCBの構造の変更を行う。
先ず、入力装置1から入力情報を取り込むという信号を発生させ、記憶装置17内に記憶されたCADデータ/部品データベース19から、図28の(b)に示されるPCBのCADデータ及び実装されている部品の等価回路を含んだデータベースが入力される。そのCADデータと連動し、同時に記憶装置17内に記憶されたLSI設計情報/LSIデータベース18から、実装されているLSIの全回路設計情報を含んだ設計情報、及びLSIを構成している部品やパッケージの等価回路を含んだデータベースが入力される。
また同時に、記憶装置17内に記憶された判定基準データベース4から、図28の(a)に示されるPCBにおける電圧変動条件及び電圧周波数条件が入力される。この電圧変動条件及び電圧周波数条件には、観測点の情報とその箇所での瞬時電圧変動特性の判定条件及び電圧周波数特性の判定条件が含まれているものとし、観測点はLSIの直下の点であるとする。
この処理が、図11の回路設計情報入力処理(ステップS1)に相当する。また、この処理は、図12のステップS20及びステップS24に相当し、厳密には、CADデータの入力は図13のステップS103、部品データベースの入力は図13のステップS104、LSI設計情報とLSIデータベースの入力は図14のステップS105の各処理に相当する。
次に、図12に示すステップS21→ステップS23の一連の処理である、基板の等価回路モデルの作成処理が図7に示す等価回路モデル生成手段9で実行される。
先ず、基板パネル分割処理(ステップS21)については、入力された基板構造の情報を、簡易モデルを作成するためにメッシュ分割し、各基板パネル毎の情報を用意する。この場合の基板パネルのサイズは、は解析時間が膨大にならないようにデータベース内に記述されており、ここでは1[mm]×1[mm]に設定されていたものとする。
次に、各基板パネル毎の基板等価回路モデル生成処理(ステップS22)が実行する。この処理において、図13のソルバ処理(ステップS28)が、図7に示す等価回路モデル生成手段9内に備えられたフィールドソルバを用いて実行される。ここで、フィールドソルバに入力される情報は、CADデータからの入力処理(ステップS103)及び基板パネル分割処理(ステップS21)により得られている。この処理により、図19の(b)に示すようなメッシュ構造の等価回路モデルを作成する。
また、図13のモデル結合処理(ステップS30)が実行され、生成されている基板パネルのモデルと実装されているLSI以外の部品のモデルが結合される。この例では、部品データベースからの入力処理(ステップS104)にて入力された直流電源及びチップコンデンサのモデルが、CADデータ上で直流電源が実装されている位置の基板パネルのモデルに結合されるという処理が行われる。こうして、基板パネル毎の等価回路モデルが生成される。
次に、基板等価回路モデル生成処理(ステップS23)が行われ、前処理において生成されている各基板パネルの等価回路モデルを結合し、基板の等価回路モデルが、図7に示す簡易等価回路モデル生成手段9で作成される。
次に、図12に示すLSI等価回路モデル生成処理(ステップS25)が、図7に示す簡易等価回路モデル生成手段9で実行される。
先ず、図14の動作部分モデル生成処理(ステップS32)が行われ、記憶装置17より入力されたLSI設計情報/LSIデータベース18より、LSIの動作部分のモデルが生成される。ここでは、例えば、特許文献3に記述された方法より得られたトランジスタ記述のゲート回路のモデルを、電流源に変換するという手法で生成することが可能である。
次に、図14のLSIのアドミタンスモデル生成処理(ステップS33)が行われ、LSIの等価アドミタンスのモデルが生成される。ここでは、例えば、特許文献3に記述された方法を適用し、得られた回路の等価内部容量をまとめるという手法で生成することが可能である。
次に、図14のLSIの電源分配回路モデル生成処理(ステップS34)が実行され、LSIのパッケージを含めた電源分配回路の等価回路モデルが生成される。ここでは、部品データベース内に電源分配回路及びパッケージモデルが用意されていたとし、既にこの情報が入力されているので特に何も処理は行われないとする。
次に、図14のモデル結合処理(ステップS35)が実行され、LSIの動作部分モデル、等価アドミタンスモデル、及び電源分配回路モデルが結合され、LSIの等価回路モデルが、図7に示す等価回路モデル生成手段9で作成される。
次に、図12に示す電源回路モデル生成処理が、図7に示す簡易等価回路モデル生成手段9で実行される。生成された基板の等価回路モデルとLSIの等価回路モデルが結合され、求めるべきPCBの簡易モデルが、図7に示す等価回路モデル生成手段9で作成される。生成された簡易モデルは、図31に示す簡易モデルの構成となっている。
次に、図11に示す回路過渡解析処理(ステップS8)が、図7に示す演算手段10で実行される。ここで、生成された図31に示される簡易モデルを用いて、図7の演算手段10内に備えられた回路解析エンジンにより過渡解析され、電圧変動特性が導出される。得られた電圧変動特性は図33の(a)に示されるような波形となる。
次に、図11に示す電圧変動特性と判定基準との比較処理(ステップS3)が、図7に示す電圧変動条件判定手段3で実行される。ここで、図7に示す判定基準データベース4より入力された電圧変動条件と解析された電圧変動特性とを比較する。ここで電圧変動条件は、下限電圧閾値Vth=3.09[V]であったとし、電圧変動特性が一瞬でもこの閾値より下回ったら判定基準を満たさないとする。
この処理により、図33の(a)に示したように、簡易モデルを用いた過渡解析により導出された電圧変動特性と、下限電圧閾値Vthの特性を比較する。
次に、図11に示す判定基準を満たしているかどうかの処理(ステップS11)が、図7に示す電圧変動条件判定手段3で実行される。ここで、図33の(a)より電圧変動特性は常に下限電圧閾値Vthより大きくなっているため、電圧変動条件は満たされると判定される。
そこで、次のステップである図11に示す詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)に進む。もし、ここで電圧変動条件が満たされなかった場合、図11に示す電源回路の変更手法の選択処理(ステップS12)に進む。
次に、図11に示す詳細等価回路モデル生成処理(ステップS9)が、図7に示す詳細等価回路モデル生成手段12で実行される。この処理において、予めライブラリ上に記述されている関係性に従い、既に生成されている簡易モデルの各基板パネルが、詳細モデル用の基板パネルに置き換えられる。得られる詳細モデルは、図31に示す詳細モデルの構成となっている。
次に、図11に示す回路交流解析処理(ステップS10)が、図7に示す演算手段13で実行される。ここで、生成された図31に示される詳細モデルを用いて、図7の演算手段13内に備えられた回路解析エンジンにより交流解析され、電圧周波数特性が導出される。
得られた電圧周波数特性は図33の(b)に示されるような波形になる。ここでは、動作部分の電流波形の周期24[MHz]の高周波成分を上限1[GHz]まで求めている。
次に、図11に示す電圧周波数特性と判定基準との比較処理(ステップS5)が、図7に示す電圧周波数条件判定手段6で実行される。ここで、図7に示す判定基準データベース4より入力された電圧周波数条件と解析された電圧周波数特性とを比較する。
ここで、電圧周波数条件は、下限電圧閾値Vfth=0.006[V](10[MHz]〜1[GHz])であったとし、電圧周波数特性が一瞬でもこの閾値より上回ったら判定基準を満たさないとする。
この処理により、図33の(b)に示したように、詳細モデルを用いた交流解析により導出された電圧周波数特性と、下限電圧閾値Vfthの特性を比較する。
次に、図11に示す判定基準を満たしているかどうかの処理(ステップS15)が、図7に示す電圧周波数条件判定手段6で実行される。ここで、図33の(b)より電圧周波数特性は10[MHz]〜1[GHz]の範囲で下限電圧閾値Vfthより大きくなる周波数が存在するため、電圧周波数条件は満たされていないと判定される。
そこで、詳細電源回路モデルの回路過渡解析処理(ステップS17)に進む。もし、ここで電圧周波数条件が満たされた場合、図11に示す回路構造及び特性出力処理(ステップS16)に進む。
次に、図11に示す詳細電源回路モデルの回路過渡解析処理(ステップS17)が、図7に示す詳細電圧変動特性導出手段15で実行される。図31に示される詳細モデルを用いて、図7の詳細電圧変動特性導出手段15内に備えられた回路解析エンジンにより過渡解析され、詳細電圧変動特性が導出される。このときのLSIの動作部分モデルの記述は、簡易モデルと同様の電流の時間変動波形としている。得られた詳細電圧変動特性は図33の(c)に示されるような波形となる。
次に、図11に示す詳細電源変動特性と判定基準との比較処理(ステップS18)が、図7に示す詳細電圧変動条件判定手段16で実行される。ここで、図7に示す判定基準データベース4より入力された電圧変動条件と解析された詳細電圧変動特性を比較する。ここで、詳細電圧変動条件は、前記全圧変動条件と同様に下限電圧閾値Vth=3.09[V]であったとし、詳細電圧変動特性が一瞬でもこの閾値より下回ったら判定基準を満たさないとする。
この処理により、図33の(c)に示したように、詳細モデルを用いた過渡解析により導出された詳細電圧変動特性と、下限電圧閾値Vthの特性を比較する。
次に、図11に示す判定基準を満たしているかどうかの処理(ステップS19)が、図7に示す詳細電圧変動条件判定手段16で実行される。ここで、図33の(c)より詳細電圧変動特性は常に下限電圧閾値Vthより大きくなっているため、詳細電圧変動条件は満たされると判定される。
そこで、次のステップである図11に示す回路構造及び特性出力処理(ステップS16)に進む。もし、ここで詳細電圧変動条件が満たされなかった場合、図11に示す電源回路の変更手法の選択処理(ステップS12)に進む。
次に、図11の回路構造及び特性出力処理(ステップS16)が行われ、安定に設計されたPCBの構造、及びその簡易モデルと詳細モデル、及びそれぞれを用いた電圧変動特性と電圧周波数特性と詳細電圧変動特性(共に判定基準が併記されていても良い)が、図7の出力装置7に出力され、一連の処理が終了する。
ここでは、図28の(b)に示す基板構造、図31に示す簡易モデル及び詳細モデル、図33の(a)〜(c)に示す電圧変動特性及び電圧周波数特性及び詳細電圧変動特性が出力されたとする。また、これらの結果から、判定基準データベースのデータや変更指針を更新させて、以降の判定に反映させることも可能である。
また、図33の(d)に、簡易モデルを使用して電圧変動特性を導出する際の簡易過渡解析時間と、詳細モデルを使用して詳細電圧変動特性を導出する際の詳細過渡解析時間とを比較したグラフを示す。
この場合、簡易過渡解析を用いた場合、詳細過渡解析を用いる場合に比べて、1/100以下の短時間で電圧変動特性を得ることが可能であることが判る。従って、構造の変更に伴う解析には、簡易過渡解析を用いて条件を満たすかどうか判定し、ある程度条件が確定した最終段階で詳細過渡解析を行い確認する、本実施の形態による手法が有効であることが判る。
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、入力データに、LSIの設計情報と動作状態等を含むLSIデータベース、PCBの配線のレイアウト情報等の構造情報と部品の等価回路等を含む部品のデータベース、及び電圧変動条件を含む判定基準のデータベースを用意することにより、LSIやPCBの電源回路の設計に対して深い知識を有していない者でも、LSIの電源回路が安定であるかどうかの判定を行うことが可能になる。また、判定基準を満たさないPCBの電源回路が存在した場合、構造をどのように変更するかの変更指針を用意しておくことにより、判定基準を満たすように、対策部品の実装を行う、レイアウトを変更する等の手法を用いることにより、自動的に安定に設計されたPCBの電源回路の構造を得ることも可能になる。
さらに、LSI及びPCBの特性を再現した等価回路モデルを用いて解析を行うことにより、電源回路が安定に設計されているかどうかを、現実的な時間で容易に判定することが可能となる。また、電圧変動特性を絶対値で導出することが可能であり、定量的な評価を行うことが可能になる。
また、簡易な等価回路モデルを用いての過渡解析を使用するため、電圧変動特性を短時間で導出することができる。そのため、最適な構造が得られるまで複数パターンの解析を行う必要があっても、解析時間を短く済ませることが可能である。また検証のため、最適な構造に対応した詳細なモデルでの解析を行う必要があるが、その場合にも交流解析を用いるため、その処理を加えても解析時間を短く済ませることは可能である。
以上好ましい実施の形態と実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも、上記実施の形態及び実施例に限定されるものでなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。