[第1の実施の形態]
以下、本発明を実施するための第1の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態のプリント基板電源回路設計装置の構成の説明)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るプリント基板電源回路設計装置の構成を示す図である。図1に示すプリント基板電源回路設計装置では、入力装置1から、LSIを実装したPCBを構成する回路の設計情報と、後述するデータベースを用いた入力情報とがPI特性導出部2に入力される。このPI特性導出部2において、LSIの内部動作に応じた電圧変動特性であるPI特性が導出される。
また、PI特性導出部2に入力された入力情報(設計情報)に加えて、外部ノイズの印加される場所とその特性である外部ノイズ印加情報4がEMS特性導出部3に読み込まれ、LSIの外部ノイズに応じた電圧変動特性であるEMS特性が導出される。
また、PI特性導出部2で導出されたPI特性と、EMS特性導出部3で導出されたEMS特性が、条件可否判定部5に読み込まれ、このPCBの電源回路が、LSIが内部動作及び外部ノイズに対して安定動作するように設計されているかどうかを自動的に判定する。
この条件可否判定部5内には、本発明の特徴部分であるPI判定部6とEMS判定部7の両方を備えている。PI判定部6内において、PI特性導出部2で導出されたPI特性である電圧変動特性と判定基準データベース8に備えられている電圧変動条件とを比較し、PCBの電源回路がLSIの内部動作に対して安定に設計されているかどうかを判定する。
それと並行して、EMS判定部7内において、EMS特性導出部3で導出されたEMS特性である電圧変動特性と判定基準データベース8に備えられている電圧変動条件を比較し、PCBの電源回路が外部ノイズに対して安定に設計されているかどうかを判定する。そして、出力装置9に、判定された結果を出力することにより、システムでの処理が完了する。
(第1の実施の形態における処理の流れを示すフローチャートの説明)
図6は、本発明の第1の実施の形態における処理の流れを示すフローチャートである。図6に示す処理では、回路設計情報の入力処理(ステップS1)から始まる。ここで入力される情報は、図22に示されるようなLSI41及びその他部品が実装されて電源回路を構成しているPCBを例に取ると、そのレイアウトや実装されるLSI41その他の部品の情報等、電源回路における電圧変動特性を導出するのに必要な情報である。
これらの情報は、図1の入力装置1より入力される。次に、入力された回路設計情報から、LSIの内部動作による電源回路の電圧変動特性であるPI特性の導出処理(ステップS2)が行われる。この処理は、図1のPI特性導出部2において行われる。この処理により、PCBにおける電源回路のPI特性が導出される。
次に、図22に示したような外部ノイズの印加される箇所48及びその特性である外部ノイズ印加情報4の読み込み処理(ステップS3)が行われる。この処理は、図1のEMS特性導出部3において行われる。
次に、回路設計情報の入力処理(ステップS1)で入力された入力情報と、外部ノイズ印加情報の読み込み処理(ステップS3)で読み込まれた外部ノイズ印加情報から、外部ノイズによる電源回路の電圧変動特性であるEMS特性の導出処理(ステップS4)が行われる。この処理は、図1のEMS特性導出部3において行われる。
次に、導出されたPI特性及びEMS特性と電圧変動条件との比較処理(ステップS5)が行われる。この処理は、図1の条件可否判定部5において行われる。条件可否判定部5内に備えられたPI判定部6において、判定基準データベース8内に備えられた電圧変動条件と求められたPI特性との比較処理を行い、PCBの電源回路がLSIの内部動作に対し安定に設計されているかどうかが判定される。それと並行して、条件可否判定部5内に備えられたEMS判定部7において、判定基準データベース8内に備えられた電圧変動条件と求められたEMS特性との比較処理を行い、PCBの電源回路が外部ノイズに対し安定に設計されているかどうかが判定される。
次に結果出力処理(ステップS6)において、判定された結果を出力する処理を行う。この処理により結果は、図1に示す出力装置9に出力される。この時出力される結果としては、PCBの電源回路がLSIの内部動作及び外部ノイズに対して安定に設計されているかどうかの判定結果のみでなく、PI特性とEMS特性、及びそれぞれの電源変動条件との比較が図示された結果等が含まれていても良い。これらの結果により、どれだけのマージンを持って設計されているか、どのような周波数範囲が問題となるか等を絶対値的に評価することが可能となる。
また、外部ノイズ特性のパラメータ(振幅、周波数等)をふる(変化させる)ことにより、PCBが外部ノイズに対し、どのような波形を入れればLSIが誤動作するのか、EMSへの耐性を調査する用途にも使用することが可能である。
以上、本発明の第1の実施の形態について説明したが、図1に示す本発明のプリント基板電源回路設計装置は、プリント基板上に実装された半導体集積回路及びその他の部品が接続される電源回路について、半導体集積回路の内部動作によって生じる電源電圧変動の特性であるPI特性を導出するPI特性導出部2と、電源回路に侵入する外部ノイズによって生じる電源電圧変動の特性であるEMS特性を導出するEMS特性導出部3と、PI特性とEMS特性のそれぞれを所定の電圧変動条件と比較する条件可否判定部5と、を有して構成される。
また、図1に示す半導体集積回路評価装置は、プリント基板上に実装された半導体集積回路及びその他の部品が接続される電源回路の設計情報を入力する入力装置1と、設計情報を基に、電源回路におけるPI特性を導出するPI特性導出部2と、設計情報と電源回路に侵入する外部ノイズの情報である外部ノイズ印加情報とを基に、電源回路におけるEMS特性を導出するEMS特性導出部3と、電源回路における電圧変動特性の許容される条件である電圧変動条件を記憶する判定基準データベース8と、PI特性と電圧変動条件とを比較し、電源回路がPI特性に対して条件を満たしているかどうか判定するPI判定部6と、EMS特性と電圧変動条件とを比較し、電源回路がEMS特性に対して条件を満たしているかどうか判定するEMS判定部7と、PI判定部6およびEMS判定部7における判定結果を出力する出力装置9と、を有して構成される。
これにより、PI特性とEMS特性の両方において電圧変動条件を判定することにより、プリント基板において、安定な電源回路系を短時間で精度良く、かつ最適に設計することができる。このため、LSIが内部動作及び外部ノイズに対して安定動作するようにPCBの電源回路を設計できるようになる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第2の実施の形態のプリント基板電源回路設計装置の構成の説明)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係るプリント基板電源回路設計装置の構成を示す図である。図2に示すプリント基板電源回路設計装置が、図1に示す第1の実施の形態のプリント基板電源回路設計装置と構成上異なるのは、図1に示すPI特性導出部2としてPI解析部10が、図1に示すEMS特性導出部3としてEMS解析部13が、それぞれ用いられる点である。他の構成は図1に示すプリント基板電源回路設計装置と同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付している。
このPI解析部10は、入力装置1から入力される回路の設計情報から、PI特性を導出する為の電源回路の等価回路モデルであるPI判定回路モデルを生成するPI判定回路モデル生成部11、及び生成されたPI判定回路モデルを用いてPI特性を導出する演算部12を備える。
一方、EMS解析部13は、入力装置1から入力される回路の設計情報から生成されたPI判定回路モデルと外部ノイズ印加情報4から、EMS特性を導出する為の電源回路の等価回路モデルであるEMS判定回路モデルを生成するEMS判定回路モデル生成部14、及び生成されたEMS判定回路モデルを用いてEMS特性を導出する演算部15を備える。
PI判定回路モデル生成部11は、大きく分けて2種類の処理部を備える。そのうち一方の処理部は、PCBのレイアウト及び断面構造、及び実装される部品の情報等である基板の設計情報及び部品データベースから基板の等価回路モデルを作成する基板等価回路モデル作成部11Aである。この基板等価回路モデル作成部11Aには、基板の断面構造や材質、レイアウト等の情報を入力することによって、基板の配線等の等価回路モデルを作成することが可能である、フィールドソルバ(field solver)を備えていても良い
もう一方の処理部は、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報、及びLSIの内部を構成している部品のデータベースからLSIの等価回路モデルを作成するLSI等価回路モデル作成部11Bである。このLSI等価回路モデル作成部11Bには、前述の特許文献2(特開2001−222573号)に記述されるような、LSIの全回路接続情報からLSIの等価回路モデルを自動的に作成する機能を備えていても良い。また演算部12には、SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)に代表されるような回路解析エンジンや回路解析結果から電磁界放射を計算するような解析エンジンが備えられているとしてよい。
また、EMS判定回路モデル生成部14も、基本的に2つの処理部を備える。一方の処理部は、読み込まれた外部ノイズ印加情報に記されている外部ノイズの特性に合わせて外部ノイズ源のモデル化を行う外部ノイズ源モデル作成部14Aである。もう一方の処理部は、PI判定回路からLSIのノイズ源である動作部分のモデルを外し、読み込まれた外部ノイズ印加情報に記されているノイズの印加箇所に合わせて外部ノイズ源のモデルをPI判定回路に接続することにより、EMS判定回路を作成するPI判定回路モデル修正部14Bである。また演算部15には、演算部12と同様に、SPICEに代表されるような回路解析エンジンや回路解析結果から電磁界放射を計算するような解析エンジンが備えられているとしてよい。
(第2の実施の形態における処理の流れを示すフローチャートの説明)
図7は、本発明の第2の実施の形態における処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートでは、図6に示す第1の実施の形態のフローチャートと比較して、図6に示された電源回路のPI特性導出処理(ステップS2)として、PI判定回路モデル生成処理(ステップS7)と回路解析処理(ステップS8)が、図6に示す電源回路のEMS特性導出処理(ステップS4)として、EMS判定回路モデル生成処理(ステップS9)と回路解析処理(ステップS10)が、それぞれ行われる。
このうちPI判定回路モデル生成処理(ステップS7)は、図2に示すPI判定回路モデル生成部11において行われ、回路解析処理(ステップS8)は、図2に示す演算部12において行われる。一方、EMS判定回路モデル生成処理(ステップS9)は、図2に示すEMS判定回路モデル生成部14において行われ、回路解析処理(ステップS10)は、図2に示す演算部15において行われる。
なお、PI判定回路モデル生成処理(ステップS7)とは、図2に示す入力装置1から入力された回路設計情報から、PI判定回路モデルを作成する処理であり、回路解析処理(ステップS8)とは、作成されたPI判定回路モデルを回路解析する処理である。これらの処理により、PCBの電源回路におけるLSIの内部動作による電圧変動特性であるPI特性が導出される。
また、EMS判定回路モデル生成処理(ステップS9)とは、図2における入力装置1から入力された回路設計情報から作成されたPI判定回路モデルと外部ノイズ印加情報4からEMS判定回路モデルを作成する処理であり、回路解析処理(ステップS10)とは、作成されたEMS判定回路モデルを回路解析する処理である。これらの処理により、PCBの電源回路における外部ノイズによる電圧変動特性であるEMS特性が導出される。
(PI判定回路モデル生成処理(ステップS7)の詳細な説明)
ここで、図9はPI判定回路モデル生成処理(ステップS7)を詳細に説明したフローチャートである。まず、基板情報入力処理(ステップS17)により、PCBのレイアウト及び断面構造、及び実装される部品の情報等である基板の設計情報及び部品データベースが図2に示す入力装置1から入力される。
次に、基板等価回路モデル生成処理(ステップS18)により入力された情報から、PCBにおける実装された部品を含めた基板の等価回路モデルが、図2におけるPI判定回路モデル生成部11において生成される。次にLSI情報入力処理(ステップS19)により、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報、及びLSIの内部を構成している部品のデータベースが、図2における入力装置1から入力される。次に、LSI等価回路モデル生成処理(ステップS20)により、入力された情報からLSIの電源に流れる電流や等価アドミタンス等、LSIの電源系の特性を見積もったLSIの等価回路モデルが、図2におけるPI判定回路モデル生成部11において生成される。
次に、モデル結合処理(ステップS21)により、生成された基板の等価回路モデルとLSIの等価回路モデルが結合されて、PI判定回路モデルが、図2におけるPI判定回路モデル生成部11において生成され、この処理は終了する。ここで、基板等価回路モデルの生成(ステップS17→S18)と、LSI等価回路モデルの生成 (ステップS19→S20)の処理の順序は逆になっても良い。また、先に基板情報入力処理(ステップS17)とLSI情報入力処理(ステップS19)が行われてから、基板等価回路モデル生成処理(ステップS18)と、LSI等価回路モデル生成処理(ステップS20)とが行われるような順序でも良い。
(フィールドソルバを用いた基板等価回路モデル生成の具体的な処理の説明)
図10は、図2に示すPI判定回路モデル生成部11の中で、基板等価回路モデル作成部11Aの内部に、フィールドソルバが備えられている場合の、図9における基板等価回路モデルの生成(ステップS17→S18)の具体的処理を示したフローチャートである。
まず、基板電源構造情報の入力処理(ステップS22)が行われ、基板の電源構造情報が図2における入力装置1から入力される。ここで入力される具体的な情報は、図22に示すようなLSIその他部品が実装されて電源供給系回路を構成しているPCBを例に取ると、その基板電源配線43のレイアウト情報に加え、図25に例示するような基板の電源配線の構造における数値である。
例えば、図25に示す基板の電源配線おける、配線幅W、メタル配線53の導電率、層構成で表される各部の寸法、グランド54の導電率、レジスト51や絶縁層52の誘電率(εr)、誘電正接(tanδ)などの構造、材料特性に関する数値である。なお、層構成55において、符号t−reは、レジスト51の厚み寸法、符号t−liは、メタル配線53の厚み寸法、符号t−inは、絶縁層52の厚み寸法、符号t−gndは、グランド54の厚み寸法、を示している。
基板電源配線43の中で重要なパラメータである配線長は、プリント基板の設計CADシステムで持っている配線情報から容易に抽出することが可能である。図25で例示されているのはあるマイクロストリップライン構造をした配線パターンの基板の構成(断面図)であるが、ここで導電率の代わりに例えば銅などの材料名を入力し、内部のデータベースから導電率に置き換えるなどの処理を行うことも可能である。こうして、基板の電源配線の電気的等価回路を求めるのに必要な各部の配線毎のパラメータ、及び部品のデータベースが入力される。
次に、図10におけるソルバ処理(ステップS23)が実行され、基板配線の等価回路モデルの作成が行われる。この処理は、図2のPI判定回路モデル生成部11内に備えられたフィールドソルバによって行われる。ここで行われる処理とは、マイクロストリップラインに代表されるようなPCBにおける配線パターンの物理的な寸法をもとに、SPICEなどの回路シミュレータで使用するための、抵抗、インダクタンス、キャパシタンス、コンダクタンスで表した単位長さあたりの集中定数もしくは分布定数で表現された等価回路モデルを作成する処理である。
配線パターンの物理的な寸法とは、図25に示すように、レジスト51の電気定数、絶縁層52の電気定数、メタル配線53の線幅W、グランド54とメタル配線53からなる層構成55などである。これらのパラメータは、基板配線情報の入力処理(ステップS22)で入力された値を用いる。
この処理が行われ得られた単位長さ辺りの等価回路モデルの一例を図26に示す。このモデルは集中定数で定義されており、配線の単位長さ辺りの抵抗、インダクタンス、容量の値はそれぞれ、Ru、Lu、Cuとなっていて、コンダクタンスの値は省略された構造になっている。このように記述された単位長さ辺りの配線モデルが配線長分接続されることにより、基板配線の等価回路モデルが生成されるが、勿論分布定数記述で表現されていても構わない。
次に、図10に示す部品データ入力処理(ステップS24)が行われ、実装されているLSI以外の部品のデータベースが、図2における入力装置1から入力される。ここで入力される具体的な情報は、図22に示されるPCBを例にとると、直流電源(レギュレータ)44及び対策部品(チップコンデンサ)45のデータベースであり、ここではデータベース内に各部品の等価回路モデルが入力されるとする。
次に、モデル結合処理(ステップS25)により、ソルバ処理(ステップS23)により生成された基板配線の等価回路モデルと、各部品の等価回路モデルが、実際のPCBのレイアウトに合わせ、図2のPI判定回路モデル生成部11内で結合され、この処理は終了する。こうして、PCBにおける基板等価回路モデルが生成される。
なお、処理の順番としては、部品データ入力処理(ステップS24)が最初に行われた後、基板配線情報の入力処理(ステップS22)とソルバ処理(ステップS23)が行われても良く、先に基板配線情報の入力処理(ステップS22)と部品データ入力処理(ステップS24)を同時に行なわれた後にソルバ処理(ステップS23)が行われても良い。
(図9におけるLSI等価回路モデル生成の具体的な処理の説明)
図11は、図9におけるLSI等価回路モデルの生成(ステップS19→S20)の具体的処理を示したフローチャートである。このとき、図2のPI判定回路モデル生成部11の中で、LSI等価回路モデル作成部11B内部には、特許文献2や特許文献3(特開2004−234618号)に記述されているような、LSI等価回路モデル作成システムが備えてあるものとする。
先ず、図9の処理と同様に、LSI情報入力処理(ステップS19)により、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報、及びLSIの内部を構成している部品のデータベースが、図2に示す入力装置1から入力される。
次に、動作部分モデル生成処理 (ステップS26)により、LSIの設計情報からLSIの電源端子に流れる電流を等価的に流せるように記述されたLSIの動作部分が、図2に示すPI判定回路モデル生成部11において生成される。ここで生成されるLSIの動作部分のモデル21は、図16(a)に記述されたように、電流源で記述することも出来るが、同等の電流を流すトランジスタで記述されていても良く、それらのモデルは特許文献2や特許文献3に示される方法によって設計情報から自動的に生成が可能である。
ここで、LSIの動作部分のモデル21に記述される、もしくはトランジスタ記述されたモデルで等価的に流れる電源電流の波形の一例を図18に示す。この波形は時間変動する電流波形であり、周期T毎に繰り返して流れる様子を表したものであるが、必要に応じて、周波数特性を示す波形に変換しても良い。これらの波形の変換は、フーリエ変換、もしくは逆フーリエ変換によって容易に変換は可能である。
次に、アドミタンスモデル生成処理(ステップS27)により、LSI内の等価的なアドミタンスを表現したアドミタンスモデルが、図2におけるPI判定回路モデル生成部11において生成される。ここで生成される図16(a)に例示したLSIのアドミタンスモデル(Y)22は、容量や抵抗で構成されたモデルで表現出来るが、透過的なトランジスタ記述されたモデルで記述されていても良く、それらのモデルも特許文献2や特許文献3に示される方法によって設計情報から自動的に生成が可能である。
次に、電源分配回路モデル生成処理(ステップS28)により、LSIの電源分配回路モデルが、図2におけるPI判定回路モデル生成部11において生成される。ここで生成される図16(b)に例示される電源分配回路モデル24は、LSIの動作部分モデル21とアドミタンスモデル(Y)22とを合わせたPI特性解析用のLSI電源モデル23と、LSIの2種類の電源端子(電源端子25、GND端子26)間に接続されるモデルである。
例えば、電源分配回路モデル24は、図22に例示したPCBにおいては、LSI41内の電源配線のモデルだけではなく、パッケージ42のモデルを含むものとしても良い。この電源配線のモデルは、データベース内に等価回路モデルを用意しておいて、それを読み込んでも良いが、特許文献3に示される方法から作成しても良く、または構造や材料定数と言ったパラメータである入力情報から、図2のPI判定回路モデル生成部11の中に備えられたフィールドソルバによるソルバ処理によって作成しても良い。
次に、モデル結合処理(ステップS29)により、作成されたLSIの動作部分モデル21とアドミタンスモデル(Y)22と電源分配回路モデル24を結合させ、図16(b)に例示されるようなLSIの等価回路モデルが生成され、この処理は終了する。こうして、PCBに実装されるLSIの等価回路モデルが生成される。なお、各モデルの作成処理(ステップS26,S27,S28)の順番は、適宜前後させることも可能である。
こうした処理の過程により、図7におけるPI判定回路モデル生成処理(ステップS7)により、図22のPCBのPI判定回路モデルの一例は、図27のようになる。図9における基板等価回路モデルの生成(ステップS17,S18)の処理により、基板電源配線モデル63、直流電源モデル64、チップコンデンサモデル65が作成され、図9におけるLSI等価回路モデルの生成(ステップS19,S20)により、LSI電源モデル61、電源分配回路モデル68、パッケージモデル62が作成され、図9におけるモデル結合処理(ステップS21)により、これらのモデルが結合され、PI判定回路モデルを構成する。
同様に図23に例示するような、対策部品としてダンピング抵抗46が実装されたPCB、また図24に例示するような、対策部品としてフェライトビーズ47が実装されたPCBなども、各対策部品のデータベースとして等価回路モデルが用意されていれば、前述した同様の処理を行うことにより、ダンピング抵抗の等価回路モデル66、またはフェライトビーズの等価回路モデル67を用いて、それぞれのPI判定回路モデルの一例は、図29、図31に示される構成になる。
図20は、図27,29,31で例示されたようなPI判定回路モデルについて図7の回路解析処理(ステップS8)を行った場合の、C点での電源電圧変動値(V)69の変動を示した一例である。このPI特性である電圧変動特性が、図2の判定基準データベース8より読み込まれる電圧変動条件を満たしているか、図2のPI判定部6内で自動判定が行われることになる。
ここで、例えば電圧変動条件が、直流電圧VCCより降下する値がΔVDL以内、LSIのスイッチング動作が生じる時間(ex.t=0)から電圧変動が収まるまでの戻り時間(例えばスイッチング動作が生じてから電圧変動の幅が1%以内になるまでの時間)がtRL以内という条件を満たさないといけないとする。
例えば、C点における電源電圧波形Aの特性においては、電圧降下値ΔVDAは「ΔVDA<ΔVDL」という条件は満たしているが、戻り時間tRAは「tRA<ΔtRL」という条件を満たさないので、電圧変動波形が電源電圧波形Aである回路では、LSIは安定動作しないと判定される。一方、C点における電源電圧波形B特性においては、戻り時間tRBは「tRB<ΔtRL」という条件は満たしているが、電圧降下値ΔVDBは「ΔVDB<ΔVDL」という条件を満たさないので、電圧変動波形が電源電圧波形Bである回路でも、LSIは安定動作しないと判定される。
なお、ここで電圧変動条件は電圧降下値と戻り時間の両者で検討することにしたが、電圧降下値だけが条件になっている場合も考えられる。その場合、電圧変動波形が電源電圧波形Aである回路ではLSIは安定動作すると判断され、電源電圧波形Bである回路では安定動作しないと判定されることになる。また、図27,29,31で例示されたようなPI判定回路モデルにおいて、電源電圧変動値(V)69は図示されたC点での電圧変動値をモニターしているが、別のモニター点(例えばLSI電源モデル61の両端子間の電圧)での電源電圧値において、電圧変動条件が設定されていても良い。
(EMS判定回路モデル生成処理(ステップS9)の詳細な説明)
図12は、図7におけるEMS判定回路モデル生成処理(ステップS9)を詳細に説明したフローチャートである。まず、外部ノイズ源モデル生成処理(ステップS30)により、読み込まれた外部ノイズ印加情報4内に記された外部ノイズの特性より、外部ノイズ源モデルが、図2におけるEMS判定回路モデル生成部14において生成される。
ここで生成される外部ノイズ源モデルは電流源で記述することが出来るが、入力される情報によっては電圧源のような他の構造を取ることも可能である。ここで、外部ノイズ源モデルを電流源で示したときの、その波形の一例を図19に示す。図18に示したようにLSI内部の動作部分のモデルの電流波形の一例は繰り返しの波形を示していたが、外部ノイズの波形はある一定時間電流が流れた後は、ずっと電流が流れないような波形となっている。勿論、外部ノイズの特性によっては、他の形状をとることも可能であるし、必要に応じて周波数特性を示す波形に変換しても良い。
次に、PI判定回路モデル修正処理(ステップS31)により、外部ノイズ印加情報4内に記された外部ノイズの印加される場所の情報と、PI判定回路モデル生成処理(ステップS7)で生成されたPI判定回路の構造、及び外部ノイズ源モデル生成処理(ステップS30)により生成された外部ノイズ源モデルから、EMS判定回路モデルが図2におけるEMS判定回路モデル生成部14において生成され、この処理は終了する。
具体的には、PI判定回路モデルからLSI内部動作の際のノイズ源となる動作部分モデルを取り除き、PI判定回路モデルにおける外部ノイズの印加される箇所に相当する箇所に外部ノイズ源モデルを接続する処理となる。ここで、EMS判定回路におけるLSI電源モデルは図17(a)に示すようにLSI内部のアドミタンスモデル(Y)22だけとなり、EMS判定回路モデルにおけるLSIの等価回路モデルは図17(b)に示すようになる。
こうした処理の過程により、図7におけるEMS判定回路モデル生成処理(ステップS9)により、図22のPCBのEMS判定回路モデルの一例は、図28のようになる。このとき、外部ノイズの印加される箇所は、図22に示したような直流電源44と基板電源配線43の接続点であったとする。基本的にLSI電源モデル61が動作部分モデルを外したモデル形状71になり、外部ノイズ源モデル70が直流電源モデル64と基板電源配線モデル63の間に挿入された形状になっている。
同様に図23に例示するような、対策部品としてダンピング抵抗46が実装されたPCB、また図24に例示するような、対策部品としてフェライトビーズ47が実装されたPCBなども、前述した同様の処理を行うことにより、ダンピング抵抗の等価回路モデル66、またはフェライトビーズの等価回路モデル67を用いて、それぞれのEMS判定回路モデルの一例は、図30、図32に示される構成になる。
図21は、図28、30、32で例示されたようなEMS判定回路モデルについて、図7の回路解析処理(ステップS10)を行った場合の、C点での電源電圧変動値(V)72の変動を示した一例である。
このEMS特性である電圧変動特性が、図2の判定基準データベース8より読み込まれる電圧変動条件を満たしているか、図2のEMS判定部7内で自動判定が行われることになる。ここでの電圧変動条件の例もPI判定と同様、直流電圧VCCより降下する値がΔVDL以内、LSIのスイッチング動作が生じる時間から電圧変動が収まるまでの戻り時間がtRL以内という条件を満たさないといけないとする。
例えば、C点における電源電圧波形Cの特性においては、戻り時間tRCは「tRC<ΔtRL」という条件を満たしているが、電圧降下値ΔVDCは「ΔVDC<ΔVDL」という条件は満さないので、電圧変動波形が電源電圧波形C2である回路では、LSIは安定動作しないと判定される。一方、C点における電源電圧波形Dの特性においては、電圧降下値ΔVDD「ΔVDD<ΔVDL」という条件を満たしているが、戻り時間tRDは「tRD<ΔtRL」という条件は満たさないので、電圧変動波形が電源電圧波形Dである回路でも、LSIは安定動作しないと判定される。
なお、ここで電圧変動条件は電圧降下値と戻り時間の両者で検討することにしたが、電圧降下値だけが条件になっている場合も考えられる。その場合、電圧変動波形が電源電圧波形Cである回路ではLSIは安定動作しないと判断され、電源電圧波形Dである回路では安定動作すると判定されることになる。また、図28,30,32で例示されたようなEMS判定回路モデルにおいて、電源電圧変動値(V)72は図示されたC点での電圧変動値をモニターしているが、別のモニター点(例えばLSI電源モデル71の両端子間の電圧)での電源電圧値において、電圧変動条件が設定されていても良い。
こうして、図27,29,31で例示されたようなPI判定回路モデルを、図7の回路解析処理(ステップS8)を行った結果、及び図28,30,32で例示されたようなEMS判定回路モデルを図7の回路解析処理(ステップS10)を行った結果より、PI特性及びEMS特性と判定基準を満たしているかどうかが自動的に判定され、結果出力処理(ステップS6)により、図2の出力装置9に、判定された結果が出力されることになる。
ここで出力される結果は、電源回路がLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定に設計されていたかという判定結果だけでなく、生成されたPI判定回路モデル、EMS判定回路モデル、及び解析されたPI特性とEMS特性と、判定基準データベース内の電圧変動条件との比較が図示された結果等が含まれていても良い。これらの結果により、どれだけのマージンを持って設計されているか、どの周波数範囲で問題があるのか、かつ回路におけるどの部分の特性が支配的であるか等も絶対値的に評価することが可能となる。
ここで、PI判定回路モデル及びEMS判定回路の生成処理、PI特性及びEMS特性の解析処理、及び電源回路がLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定に設計されているかどうかの判定処理は入力したデータに対し一定の処理を行わせるだけであるので、自動化が可能である。このため、LSIやプリント基板配線について深い知識を有さない人間でも、容易に電源回路がLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定に設計されているかどうかを判断することが出来る。また、LSIの等価回路モデルの作成手法及び装置は、既存の技術を流用することが可能であり、基板の等価回路モデル作成用のフィールドソルバや回路解析ツールも市販のものを流用することが可能であるので、本発明のシステムは容易に構築すること可能である。
このようにして、一本の電源配線においてその配線が構成する電源回路がLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定に設計されているかどうかを自動的に判定することが出来、順次、他の配線にも同じ処理を繰り返すことで、PCB上の電源配線全てが構成する電源回路がLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定に設計されているかどうかの判定を行うことも可能になる。
また、作成されるLSIの等価回路モデル、及び基板の等価回路モデルは非常に簡易な構造で表現することが可能であるので、それらを組み合わせることで作成されるPI判定回路モデル及びEMS判定回路モデルを用いて回路解析ツールによりPI特性及びEMS特性を高速に算出することが出来る。従って、PCB上の電源配線全ての電源回路がLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定に設計されているかどうかの判定を、現実的な時間で行うことが可能になる。
また、電源が配線ではなくプレーン形状をしていた場合においても、抵抗、インダクタンス、容量等で表現される等価回路モデルへ変換可能なフィールドソルバを使用することにより、上記システムにおいて電源回路がLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定に設計されているかどうかの判定を行うことが可能になる。
以上、本発明の第2の実施の形態について説明したが、図2示すプリント基板電源回路設計装置においては、電源回路におけるPI特性を導出するPI特性導出部として、設計情報から電源回路におけるPI特性を解析するための等価回路モデルであるPI判定回路モデルを生成するPI判定回路モデル生成部11と、PI判定回路モデルを解析してPI特性を導出する演算部12と、を有するPI解析部10を備える。また、電源回路におけるEMS特性を導出するEMS特性導出部として、外部ノイズ印加情報とPI判定回路モデルから電源回路におけるEMS特性を解析するための等価回路モデルであるEMS判定回路モデルを生成するEMS判定回路モデル生成部14と、EMS判定回路モデルを解析してEMS特性を導出する演算部15と、を有するEMS解析部13を備える。
これにより、PI判定回路モデルとEMS判定回路モデルとを生成し、PI特性の解析およびEMS特性の解析を行うことができる。
また、図2に示すプリント基板電源回路設計装置は、PI判定回路モデル生成部11内に、電源回路の物理構造と電気的特性情報とに基づいて基板の等価回路モデルを作成するフィールドソルバを内部に有する基板等価回路モデル作成部11Aを、有して構成される。これにより、フィールドソルバを使用して、正確な基板等価回路モデルを容易に作成することができる。また、この基板等価回路モデルを基に、PI判定回路モデルを生成することができる。
また、図2に示すプリント基板電源回路設計装置は、PI判定回路モデル生成部11内に、半導体集積回路の情報に基づいて半導体集積回路の等価回路モデルを作成するLSI等価回路モデル作成部11Bを、有して構成される。
これにより、LSI等価回路モデルを作成することができ、このLSI等価回路モデルを基に、PI判定回路モデルを生成することができる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第3の実施の形態のプリント基板電源回路設計装置の構成の説明)
図3に、本発明の第3の実施の形態のシステム構成を示す。本形態は、図2に示す第2の実施の形態のプリント基板電源回路設計装置と比較して、回路記述変更部16を追加した構成になっている。他の構成は図2に示すプリント基板電源回路設計装置と同様であり、同一の構成部分には同一の符号を付している。
この回路記述変更部16は、条件可否判定部5で、PCBの電源回路がLSIの内部動作と外部ノイズに対し、片方もしくは両方に対して安定に設計されていないと判断されたときは、入力装置から入力されたPCBの回路記述を変更して、変更された回路記述を再度PI解析部10内に入力する処理部である。この回路記述変更部16を備えることにより、PCBの電源回路がLSIの内部動作と外部ノイズの両方に対して安定に設計し直すことが可能になる。
(図3のプリント基板電源回路設計装置の処理の流れを示すフローチャートの説明)
図8は本発明の第3の実施の形態のプリント基板電源回路設計装置における処理の流れを示したフローチャートである。このフローチャートは、図7に示された第2の実施の形態における処理の流れを示したフローチャートにおいて、PI特性及びEMS特性と電圧変動条件との比較処理(ステップS5)の後、PI特性とEMS特性の両方が電圧変動条件を満たさなかった場合に、PCBの電源回路を修正し、再度入力する処理(ステップS13〜S16)が行われるフローチャートである。
図7のフローチャートと同様、図3の入力装置1から回路情報の入力処理(ステップS1)が行われ、図3のPI判定回路モデル生成部11内で入力された情報からPI判定回路モデルの生成処理(ステップS7)が行われる。次に、図3の演算部12内でPI判定回路モデルの回路解析処理(ステップS8)が行われる。次に、図7のフローチャートと同様、図3の入力装置1から外部ノイズ印加情報入力処理(ステップS3)が行われ、図3のEMS判定回路モデル生成部14内で入力された情報から生成されたPI判定回路モデルと外部ノイズ印加情報4よりEMS判定回路モデルの生成処理(ステップS9)が行われる。
続いて、図3の演算部15内でEMS判定回路モデルの回路解析処理(ステップS10)が行われ、図3の条件可否判定部5で解析されたPI特性及びEMS特性と図3の判定基準データベース8から読み込まれる電圧変動条件との比較処理(ステップS5)が行われる。
その後、図3の条件可否判定部5内で、PI特性及びEMS特性の両者が電圧変動条件を満たすかどうかの判定処理(ステップS11)が行われ、もし両者が条件を満たせば(ステップS11:Yes)、出力処理(ステップS12)が行われ、LSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定に設計されているPCBの構造が図3の出力装置9に出力される。このときの出力結果に、生成されたPI判定回路モデル、EMS判定回路モデル、及び解析されたPI特性及びEMS特性と、電源電圧変動条件との比較が図示された結果等が含まれていても良い。
一方、判定処理(ステップS11)でPI特性及びEMS特性のいずれか一方もしくは両方が判定条件を満たさなかった場合(ステップS11:No)、電源回路の変更手法の選択処理(ステップS13)が、図3の回路記述変更部16内で行われる。この処理において、PI特性及びEMS特性の両方が電圧変動条件を満たすために、対策部品の実装処理(ステップS14)を行うか、基板の変更処理(ステップS15)を行うか、LSIの変更処理(ステップS16)を行うかが決定される。
この選択処理(ステップS13)は、操作者が任意で行うことも可能であるが、データベースに記述されている変更指針により、システムの中で自動的に行われることも可能である。例えば、判定基準データベース8内に、EMS特性が条件を満たさない場合は対策部品の実装処理(ステップS14)が優先的に行われる、と記述されていれば、判定処理でPI特性は条件を満たすがEMS特性は条件を満たしていないと判定されたとき、自動的に対策部品の実装処理(ステップS14)が選択される、といった例が挙げられる。
そして選択された回路の変更処理(ステップS14〜S16の何れか)が、図3の回路記述変更部16内で実行された後、変更された回路記述を図3のPI解析部10に再度入力する。そして、同じ処理(ステップS1→S7→S8→S3→S9→S10→S5)を繰り返し、PI特性及びEMS特性の両方が電圧変動条件を満たすように電源回路が設計されるまでこの処理を繰り返す。このとき、前のステップで作成されたPI判定回路モデル及びEMS判定回路モデルは既に存在しているので、PI判定回路モデル生成処理(ステップS7)及びEMS判定回路モデル生成処理(ステップS9)は、回路の一部のみ改めて実行かつ修正するだけにしても良い。こうして、LSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定に設計されたPCBの電源回路が得られる。
(第3の実施の形態における対策部品実装処理の例についての説明)
図13は、図8の対策部品実装処理(ステップS14)の具体的なフローチャートである。先ず、対策部品データ決定処理(ステップS32)が行われ、データベース内のどの対策部品が回路のどの場所に実装されるか決定される。
対策部品のデータベースはPCB上の部品のデータベースを入力する際、同時に図3の入力装置1から入力されていても良い。対策部品の実装は、改めて電源回路に追加されても良いし、従来ある部品が別の部品に変更されても良い。この決定は操作者が任意で行うことも可能であるが、データベースに記述されている変更指針により、システムの中で自動的に行われることも可能である。
例えば、判定基準データベース8内に、対策部品の数は増やさない、と記述されていれば、自動的に対策部品のデータベースの中から従来実装されている対策部品の代わりに、別の対策部品が同じ位置に実装されるという方法が選択される、といった例が挙げられる。
次に、レイアウト変更処理(ステップS33)が行われ、対策部品の実装変更があったことによるレイアウトの変更が行われる。例えば対策部品が基板の電源配線上に追加されたとき、基板の電源配線の長さが対策部品の実装面積分短くなる、といった例が挙げられる。この処理が終了することで対策部品実装処理(ステップS14)が完了する。
(基板変更処理の具体的な例についての説明)
図14は、図8の基板変更処理(ステップS15)の具体的なフローチャートである。先ず、変更手法選択処理(ステップS34)が行われ、基板上のレイアウトを変更するのか、基板の断面構造や材質等の構造を変更するのかの選択が行われる。この決定は操作者が任意で行うことも可能であるが、データベースに記述されている変更指針により、システムの中で自動的に行われることも可能である。
例えば、判定基準データベース8内に、基板構造の変更はしない、と記述されていれば、自動的にレイアウトの変更を行う方法が選択される、といった例が挙げられる。そうして変更手法選択処理(ステップS34)でレイアウトの変更が選択されたら、レイアウト変更処理(ステップS35)に進み、基板上の電源配線長や配線幅の変更等のレイアウトの変更を行う。この処理においてもどのような変更を行うかは操作者が任意で行うことも可能であるが、データベースに記述されている変更指針により、システムの中で自動的に行われることも可能である。
例えば、判定基準データベース8内に、EMS特性が電圧変動条件を満たさない場合は電源配線幅を1割減にすると記述されていれば、EMS特性が条件を満たしていない場合には自動的に電源配線幅を1割減にするという変更を行う、といった例が挙げられる。
また、変更手法選択(ステップS34)において基板の構造の変更が選択された場合は、基板構造変更処理(ステップS36)に進み、基板の層構造や材質等の変更処理を行う。この処理においてもどのような変更を行うかは操作者が任意で行うことも可能であるが、データベースに記述されている変更指針により、システムの中で自動的に行われることも可能である。例えば、判定基準データベース8内に、EMS特性が電圧変動条件を満たさない場合は電源配線の材質を銅からアルミニウムに変更すると記述されていれば、EMS特性が条件を満たしていない場合には自動的に電源配線の材質を銅からアルミニウムに変更にするという変更を行う、といった例が挙げられる。このレイアウト変更処理(ステップS35)もしくは基板構造変更処理(ステップS36)が終了することで基板変更処理(ステップS15)が完了する。
(LSI変更処理の具体的な例についての説明)
図15は、図8のLSI変更処理(ステップS16)の具体的なフローチャートである。先ず、変更手法選択処理(ステップS37)が行われ、LSIの動作状態を変更するのか、パッケージ構造も含めたLSIの種類の変更を行うのかの選択が行われる。この決定は操作者が任意で行うことも可能であるが、データベースに記述されている変更指針により、システムの中で自動的に行われることも可能である。
例えば、判定基準データベース8内に、LSIの変更は動作状態の変更を優先的に行う、と記述されていれば、自動的に動作状態の変更を行う方法が選択される、といった例が挙げられる。そうして変更手法選択処理(ステップS37)で動作状態の変更が選択されたら、動作状態変更処理(ステップS38)を行い、LSIの動作状態の変更を行う。この処理においてもどのような変更を行うかは操作者が任意で行うことも可能であるが、データベースに記述されている変更指針により、システムの中で自動的に行われることも可能である。
例えば、判定基準データベース8内に、PI特性が電圧変動条件を満たさない場合は動作率を1割減にすると記述されていれば、PI特性が条件を満たしていない場合には自動的にLSIの動作率を1割減にするという変更を行う、といった例が挙げられる。
また、変更手法選択(ステップS37)においてLSIの種類の変更が選択されたら、種類変更処理(ステップS39)に進み、LSIの種類の変更処理を行う。この処理においてもどのような変更を行うかは操作者が任意で行うことも可能であるが、データベースに記述されている変更指針により、システムの中で自動的に行われることも可能である。
例えば、判定基準データベース8内に、PI特性が電圧変動条件を満たさない場合はLSIをチップサイズがワンサイズ大きなタイプに変更すると記述されていれば、PI特性が条件を満たしていない場合には自動的にLSIをチップサイズがワンサイズ大きなタイプに変更にするという変更を行う、といった例が挙げられる。この動作状態変更処理(ステップS38)もしくは種類変更処理(ステップS39)が終了することでLSI変更処理(ステップS16)が完了する。
本実施形態により、LSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定に設計されたPCBの電源回路の構造が得られ、そのPI特性及びEMS特性も求めることが出来る。また図3の判定基準データベース8内に、PI特性及びEMS特性が電圧変動条件を満たさない場合の、PCBの電源回路の構造変更の指針が予め用意されていれば、自動的にPCBの電源回路構造がPI特性及びEMS特性の両方において電圧変動条件が満たされるように構造が変更されるので、自動化が可能であり、LSIやプリント基板配線について深い知識を有さない人間でも、容易に自動的にLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定に設計されたPCBの電源回路の構造が得られるシステムとなっている。
ここで、PI判定回路モデル及びEMS判定回路モデルの生成処理、PI特性及びEMS特性の解析処理、及び電源回路がLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定に設計されているかどうかの判定処理は入力したデータに対し一定の処理を行わせるだけであるので、自動化が可能である。このため、LSIやプリント基板配線について深い知識を有さない人間でも、容易にLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定にPCBの電源回路を設計することが出来る。また、LSIの等価回路モデルの作成手法及び装置は、既存の技術を流用することが可能であり、基板の等価回路モデル作成用のフィールドソルバや回路解析ツールも市販のものを流用することが可能であるので、本発明のプリント基板電源回路設計装置のシステムは容易に構築すること可能である。
このようにして、PCB上の一種類の電源配線において、自動的にその配線が構成する電源回路をLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定に設計変更することが出来、順次、他の電源配線にも同じ処理を繰り返すことで、PCB上の電源配線全てが構成する電源回路をLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定になるよう設計変更することも可能になる。
また、作成されるLSIの等価回路モデル、及び基板の等価回路モデルは非常に簡易な構造で表現することが可能であるので、それらを組み合わせることで作成される電源回路モデルを用いて回路解析ツールによりPI特性及びEMS特性を高速に導出することが出来る。従って、PCB上の電源配線全てが構成する電源回路をLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定になるよう設計変更することも、現実的な時間で行うことが可能になる。
また、電源が配線ではなくプレーン形状をしていた場合においても、抵抗、インダクタンス、容量等で表現される等価回路モデルへ変換可能なフィールドソルバを使用することにより、上記システムにおいて電源回路をLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定になるよう設計変更することが可能になる。
以上、本発明の第3の実施の形態について説明したが、図3に示す本発明のプリント基板電源回路設計装置においては、電源回路におけるPI特性とEMS特性のいずれか一方もしくは両方が電圧変動条件を満たさない場合に、電源回路の構造を変更し、該変更された構造の情報を設計情報として再度入力する回路記述変更部16、を有して構成される。
これにより、電源回路をLSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定になるよう設計変更することが可能になる。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図4は、本発明の第4の実施の形態に係るプリント基板電源回路設計装置の構成を示す図である。本実施の形態は、図2に示す第2の実施の形態のプリント基板電源回路設計装置に、各種の設計情報及びデータベースが記憶される記憶装置17が新たに付加されたシステムである。他の構成は図2に示すプリント基板電源回路設計装置と同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付している。
記憶装置17内には、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等のLSI設計情報、及びLSIの内部を構成している部品の情報を含む、LSI設計情報及びLSIデータベース18が記憶される。また、PCBのレイアウト及び断面構造、及び実装される部品の情報等の基板の設計情報である、CADデータ及び部品データベース19と、外部ノイズ印加情報4と、判定基準データベース8が記憶されている。
この図4に示すプリント基板電源回路設計装置においては、図7のフローチャートにおけるPI判定回路モデルを生成するための回路設計情報の入力(ステップS1)を、図2の入力装置1によって入力する代わりに、必要に応じて記憶装置17内にある、CADデータ及び部品データベース19から必要なデータを自動的に抽出させることが可能である。
ここで述べているCADデータにおける配線情報には、一般的に、配線幅や、配線ルートのXY2軸座標によるルート指定や、配線全長等の情報が含まれ、さらには、接続先の部品名称や型番などの情報を含んでいる。従って、接続先の部品名称から、部品データベースの中でその部品の等価回路モデルを探索し、モデルを選択するという方法を行うことも可能であり、またより実際的である。
またこのとき、入力されたCADデータと連動し、記憶装置17内にある複数のLSIの設計情報及びLSIデータベース18、複数の外部ノイズ印加情報4、及び複数の判定基準データベース8から、必要なデータを抽出することも可能であり、またより実際的である。
具体的には、CADデータから電源回路に接続されるLSIの名称及びパッケージのデータ等を自動的に抽出し、必要なLSIの全回設計情報とパッケージや電源分配回路の情報が含まれたLSIデータベース、その電源回路における外部ノイズ印加情報、及びその電源回路における電圧変動条件の情報が自動的に選択され入力されるような方法である。このとき、入力装置1は使用しなくても良いし、入力を開始する為のアクションを入力する為だけに使用しても良い。この処理は、図10におけるステップS103とS104、及び図11におけるステップS105に相当する。
さらに、図4の条件可否判定部5によって得られた結果を、記憶装置17内にあるCADデータ及び部品データベース19の中に出力(付加)することも可能である。この処理は図7におけるステップS101である。具体的にはCAD上に表示されたその電源回路における基板電源配線や、接続された対策部品の情報にエラーが書き込まれる。
例えばCADデータを図として表示した場合、その部分の色が変わっている等のアラームが出力されるような構造にすれば、ユーザーがその電源回路がLSIの内部動作または外部ノイズに対して不安定であり、電源配線のレイアウトや基板構造、あるいは対策部品の実装位置、数及び種類等を変更して対策を行う必要が一目で判るようになる。また、PI特性が条件を満たさない場合、EMS特性が条件を満たさない場合、両者が条件を満たさない場合で色を変えることにより、どのような対策を行えば良いかの指針も得られることになる。
さらに、図4の条件可否判定部5によって得られた結果を、記憶装置17内にあるCADデータ及び部品データベース19と連動させて、LSI設計情報及びLSIデータベース18の中に出力することも可能である。この処理は図7におけるステップS102である。具体的にはCAD上に表示されたそのLSI及びパッケージの情報にエラーが書き込まれる。
例えばCADデータを図として表示した場合、その部分の色が変わっている等のアラームが出力されるような構造にすれば、ユーザーがその電源回路が不安定であり、LSIの動作状態や種類、パッケージの種類等を変更して対策を行う必要が一目で判るようになる。また、電PI特性が条件を満たさない場合、EMS特性が条件を満たさない場合、両者が条件を満たさない場合で色を変えることにより、どのような対策を行えば良いかの指針も得られることになる。
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図5は、本発明の第5の実施の形態に係るプリント基板電源回路設計装置の構成を示す図である。本実施の形態は、図3に示す第3の実施の形態のプリント基板電源回路設計装置に、各入力情報及びデータベースが記憶された記憶装置17が備えられたシステムである。他の構成は図3に示すプリント基板電源回路設計装置と同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付している。
記憶装置17内には、第4の実施の形態と同様に、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報、及びLSIの内部を構成している部品のデータベース18と、PCBのレイアウト及び断面構造、及び実装される部品の情報等である基板の設計情報であるCADデータ及び部品データベース19と、外部ノイズ印加情報4と、判定基準データベース8が記憶されている。
このシステムにおいて、図8のフローチャートにおけるPI判定回路モデルを生成する為の回路設計情報を図2の入力装置1によって入力する代わりに、必要に応じて記憶装置17内にあるCADデータと部品データベース19から必要なデータを自動的に抽出させることが可能である。
CADデータの電源配線において、接続先の部品名称から、部品データベースの中でその部品の等価回路モデルを探索し、モデルを選択するという方法を行うことも可能であり、またより実際的である。またこのとき、入力されたCADデータと連動し、記憶装置17内にある複数のLSIの設計情報及びLSIデータベース19、複数の外部ノイズ印加情報4、及び複数の判定基準データベース8から、必要なデータを抽出することも可能であり、またより実際的である。
具体的には、CADデータから電源回路に接続されるLSIの名称及びパッケージのデータ等を自動的に抽出し、必要なLSIの全回設計情報とパッケージや電源分配回路の情報が含まれたLSIデータベース、その電源回路における外部ノイズ印加情報、及びその電源回路における電圧変動条件の情報が自動的に選択され入力されるような方法である。このとき、入力装置1は使用しなくても良いし、入力を開始する為のアクションを入力する為だけに使用しても良い。
そして、図8のフローチャートにおいて電源回路の変更処理(ステップS14〜S16のいずれか)を行う際には、記憶装置17内にあるCADデータと部品データベース19、またはLSIの設計情報及びLSIデータベース18に直接働き、構造の変更や種類の変更等の処理が行われ、CADデータがその処理によって記述が変更される。
この処理は、図13におけるステップS106とS107、図14におけるステップS108、及び図15におけるステップS109に相当する。従って、PI特性及びEMS特性の両方が電圧変動条件を満たして図8に記述された処理が完了した際には、PCBのCADデータにおける電源回路は、LSIの内部動作及び外部ノイズに対し安定になるよう設計されていることになり、より実際的なシステム構成になっている。
[第6の実施の形態]
次に本発明の第6の実施の形態について説明する。
図33は、本発明の第6の実施の形態に係るプリント基板電源回路設計装置の構成を示す図である。この第6の実施の形態は、図3に示す第3の実施の形態における回路記述変更部16を回路記述変更部16Aとし、その動作を一部変更(処理機能を追加)した例である。
この第6の実施の形態のプリント基板電源回路設計装置では、PI判定は、第3の実施の形態と同様に、等価回路モデルを作成して電圧変動を回路の時間解析にて導出し、判定基準データベース8に記憶された電圧変動条件と比較して判定する。
そして同時に、そのときの電源インピーダンス特性も同じ等価回路モデルを用いて、回路の周波数解析にて導出しておく(回路の周波数解析は時間解析に比べて充分短い時間で終了できる)。
そして、条件可否判定部5のPI判定部6により、PI特性は電圧変動条件を満たさないと判定された場合は、判定基準データベース8内に用意してある変更指針に従い、電源回路を変更して行く。そして、変更された回路の等価回路モデルで再びPI判定を行う。この時、同時にその回路でも周波数解析を行って、電源インピーダンス特性も導出しておく。
この操作を繰り返すことにより、PI判定に成功するまで(したときを含め)、変更した回路構造とそのときの電圧変動特性、及び電源インピーダンス特性も導出される。もし、PI判定を満たした場合と、満たす一歩手前の回路構造に対して大きな違いがあれば、回路の変更指針で(1ステップ毎の回路変更パターンが大きい場合)、PI判定を満たした等価回路はPI判定の判定基準に対してマージンを持っていると考えられる。
そのため、比較用として、PI判定を満たしたときの電源回路(以下、「達成電源回路」とも記述)と電源インピーダンス特性(以下、「PI達成電源インピーダンス特性」とも記述)と(基本的には使用しない)、PI判定を満たす回路構造への一歩手前の電源回路(以下、「未達電源回路」とも記述)と電源インピーダンス特性(以下、「PI未達電源インピーダンス特性」とも記述)を、達成/未達回路保存部101によりデータベース等へ保存しておく。
次に、PI判定部6によりPI特性を満たしたと判定された場合、次は、EMS判定部7によるEMS判定に移る。この場合、前述のように、PI判定用に作成されている等価回路を少々変更するだけで良い。この回路で、EMS判定を満たせば、問題無く処理を終了し、達成回路選択部103により、この達成電源回路を選択して出力装置9に回路構造等を出力する。
問題はEMS判定を満たしていなかった場合であり、基本的に、EMS判定を満たす場合は、電源インピーダンス特性は大きければ良く、PI判定を満たす場合は、電源インピーダンス特性は小さければ良い、というトレードオフの関係が成り立つ。
ここで、前述のように、PI判定にどれだけマージンがあったか、という問題が生じる。つまり、“PI達成電源インピーダンス特性”と、“PI未達電源インピーダンス特性”の間の電源インピーダンス特性を持った回路構造が正しい、ということになる。その間にはマージンが存在している、というように考えられる。
従って、「マージンが無くなる方向に回路を変更する」、という手法、つまり、電源インピーダンス増加部102により、電源インピーダンスを大きくしていく手法を変更方針として取る。ここで、PI判定を満たしていた回路(達成電源回路)を変更して電源変動特性を回路の時間解析を用いて導出し、判定基準(電圧変動条件)と比較し、判定基準を満たしているかどうか判定するEMS判定を行う。このとき同時に、回路の交流解析を行い、電源インピーダンス特性も導出する。(方法は、PI判定のときと同様の方法を使用する)。このときの処理を便宜上“EMS判定基準回路変更処理”と呼称する。
ここで、EMS判定を満たしたとしても、電源インピーダンス特性が、データベース内に保存した“PI未達電源インピーダンス特性”よりも上に行ってしまった場合、敢えてPI判定回路に変更して、電源変動特性を時間解析に変更しなくても、PI判定は満たさない、と判断出来るため、敢えてPI判定からやり直すことはなく、“EMS判定基準回路変更処理”に戻り、PI判定のマージン内に収まるような他の回路変更手法を選択する、という方法を選択する。なお、他の回路変更手法は、予めデータベース内に用意されている、とする。
また、EMS判定を満たし、かつ電源インピーダンス特性が、PI判定を満たさなかった回路(未達電源回路)より低い場合、PI判定回路に変更して、電源変動特性を時間解析に変更し、PI判定を行う。ここでPI判定を満たせば、問題無く処理を終了し、変更回路選択部104により、この修正された未達電源回路を選択して出力装置9に回路構造等を出力する。
もし、ここでPI判定を満たさなかった場合、このときの電源インピーダンス特性が新たな“PI未達電源インピーダンス特性”になり、データベース内の”PI未達電源インピーダンス特性”を置き換え、また”EMS判定基準回路変更処理”を行う、というステップを取る。
このように、電源インピーダンス特性を各段階で求めておき、“PI達成電源インピーダンス特性”と“PI未達電源インピーダンス特性”を絡めてEMS判定を行うことにより、EMS判定を満たす回路構造で不必要なPI判定処理を行う必要がなくなる。
このように、本発明の第6の実施の形態では、単なる組み合わせとトレードオフの関係だけではない判定を行うことが可能になる。
図34に、電源インピーダンス特性とそのときの処理をまとめた概念図を示す。図34において、横軸は周波数、縦軸が電源インピーダンスを示している。
図34において、特性曲線Aは、PI未達電源インピーダンスの周波数特性を示し、特性曲線Bは、PI達成電源インピーダンスの周波数特性を示している。そして、特性曲線Cに示すように、回路変更後の電源インピーダンスが“PI未達電源インピーダンス”よりも大と判定、すなわち、PI判定を満たさないと判定された場合は、“EMS判定基準回路変更処理へ戻る。
そして、特性曲線Dに示すように、回路変更後の電源インピーダンスが“PI未達電源インピーダンス”よりも小と判定された場合、PI判定回路を構成し、PI判定処理を再度実行、PI判定を満たせばそこで処理終了、満たさなければ“PI未達電源インピーダンス”の情報をこの特性に切り替えた後、“EMS判定基準回路変更処理”へ戻る。
また、図35は、第6の実施の形態のプリント基板電源回路設計装置における上述した処理の流れを整理してフローチャートで示したものである。図35に示すフローチャートにおいては、ステップS1〜S10、およびステップS12〜S16までは、図8に示す第3の実施の形態におけるフローチャートと同様であり、破線で囲まれた部分のステップS51〜S59が、第6の実施の形態における処理に関係する部分である。
以下、図35を参照して、第6の実施の形態に関係する部分の処理の流れについて説明する。
まず、ステップS51において、初回の処理では、達成電源回路がまだ決定されていないので(ステップS51:No)、ステップS52に移行し、PI判定部6により、PI特性が判定基準(電圧変動条件)を満たすか否かが判定される。
そして、ステップS52において。PI特性が電圧変動条件を満たさないと判定された場合は(ステップS52:No)、ステップS13に移行し、第3の実施の形態と同様に判定基準データベース8内に用意してある変更指針に従い、電源回路を変更して行く。そして、変更された回路の等価回路モデルで再びPI判定を行う。この時、同時にその回路でも周波数解析を行って、電源インピーダンス特性も導出しておく。
この操作を繰り返すことにより、PI判定に成功するまで(したときを含め)、変更した回路構造とそのときの電圧変動特性、及び電源インピーダンス特性も導出される。そして、ステップS52においてPI判定に成功したと判定された場合は(ステップS52:Yes)、PI判定を満たしたときの達成電源回路及びその電源インピーダンス特性と、PI判定を満たす回路構造への一歩手前の未達電源回路およびその電源インピーダンス特性を、達成/未達回路保存部101によりデータベース等へ保存しておく(ステップS53)。
次に、EMS判定部7によるEMS判定を行う(ステップS54)。そして、この電源回路(初回は達成電源回路)で、EMS判定を満たし(ステップS54:Yes)、また、達成電源回路の電源インピーダンスの変更中でなければ(ステップS56:No)、問題無く処理を終了し、達成回路選択部103により、この達成電源回路を選択し、出力装置9に回路構造及び特性を出力する(ステップS12)。
一方、ステップS54において、EMS判定を満たしていないと判定された場合は(ステップS54:No)、達成電源回路の電源インピーダンスを大きくしていく方向に電源回路を変更する(ステップS55)。
そして、電源インピーダンスを増加させた達成電源回路について、ステップS1からステップS10までの処理を繰り返し、ステップS54において、EMS特性を満たすと判定されると(ステップS54:Yes)、続いて、ステップS56において、達成電源回路の電源インピーダンス変更中と判定され(ステップS56:Yes)、ステップS57に移行する。
このステップS57において、電源インピーダンスを増加させた達成電源回路の電源インピーダンスが、最初にPI判定を満たさなかった未達電源回路の電源インピーダンスより小と判定された場合は(ステップS57:Yes)、次にPI判定を行う(ステップS58)。ここでPI判定を満たせば(ステップS58:Yes)、問題無く処理を終了し、変更回路選択部104により、この電源インピーダンスが変更された達成電源回路を選択して、出力装置9に回路構造及び特性を出力する(ステップS12)。
一方、ステップS57において、電源インピーダンス変更中の達成電源回路の電源インピーダンス特性が未達電源インピーダンス特性よりも大きい場合(ステップS57:No)、他の回路変更手法を選択する(ステップS59)。なお、この他の回路変更手法は、予め判定基準データベース8内に用意されている。
また、ステップS58において、PI判定を満たさなかった場合(ステップS58:No)、このときの電源インピーダンス特性が新たな未達電源回路及びその未達電源インピーダンス特性になり、データベース内の未達電源回路を置き換え、ステップS55に移行し、前述の”EMS判定基準回路変更処理”を再度行う、というステップを取る。
以上、本発明の第6の実施の形態について説明したが、図33に示す本発明のプリント基板電源回路設計装置においては、回路記述変更部16Aは、電源回路の構造の変更により、PI判定部6によりPI特性が電圧変動条件を満たすとしてPI判定に成功したときの電源回路とその電源インピーダンス特性とを達成電源回路として記憶すると共に、PI判定に成功したときの1つ手前の電源回路とその電源インピーダンス特性とを未達電源回路として記憶する達成/未達回路保存部101と、達成電源回路についてEMS判定部6によりEMS特性の判定を行い、EMS特性が電圧変動条件を満たしている場合は、当該達成電源回路を選択する達成回路選択部103と、達成電源回路のEMS特性が電圧変動条件を満たしていないと判定された場合に、該達成電源回路の電源インピーダンスを大きくする方向に回路を変更する電源インピーダンス増加部102と、電源インピーダンス増加部102により達成電源回路の回路変更を行い、EMS特性が電圧変動条件を満たし、かつ電源インピーダンス特性が、未達電源回路における電源インピーダンス特性よりも低くなる場合に、当該電源インピーダンが増加された達成電源回路を選択する変更回路選択部104と、を有して構成される。
このように、電源インピーダンス特性を各段階で求めておき、“PI達成電源インピーダンス特性”と“PI未達電源インピーダンス特性”を絡めてEMS判定を行うことにより、EMS判定を満たす回路構造で不必要なPI判定処理を行う必要がなくなる。
また、図33に示す本発明のプリント基板電源回路設計装置においては、電源インピーダンス特性は、回路の周波数解析により導出されるように構成される。すなわち、回路の周波数解析は時間解析に比べて充分短い時間で終了できるので、PI判定を短時間で行える。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、図1〜図5、及び図33に示すプリント回路基板設計装置は、内部にコンピュータシステムを有している。
そして、上述した処理に関する一連の処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。
すなわち、プリント回路基板設計装置内における、各処理は、CPU等の中央演算処理装置がROMやRAM等の主記憶装置に上記プログラムを読み出して、情報の加工、演算処理を実行することにより、実現されるものである。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当前記プログラムを実行するようにしても良い。
また、図1〜図5に示すプリント基板電源回路設計装置内の各処理部は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、プリント基板電源回路設計装置の入力装置には、入力デバイスおよび表示装置等(いずれも表示せず)が接続されているものとする。ここで、入力デバイスとしては、キーボード、マウス等のことをいう。表示装置とは、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶表示装置等のことをいう。
以上説明したように、本発明のプリント基板電源回路設計装置は、入力情報として、LSIに関してはLSIの全回路接続情報や内部レイアウト情報が含まれるLSIの設計情報、及び、LSIの正常動作が可能な電圧変動特性の許容値やLSI内部の遅延情報を含んだLSIデータベースを用意し、PCB及び実装される部品に関しては、レイアウト情報であるCADデータ及び部品の等価回路の情報である部品データベースを用意する。そして、それらの入力情報から、LSIの内部動作によって生じる電源電圧変動の特性である電圧変動特性(PI特性)を導出する。
次に、外部ノイズの印加される場所とその特性(波形の形状等)である外部ノイズ印加情報を用意し、先述のLSIの設計情報及びLSIデータベース、CADデータ及び部品データベースを合わせた情報から、外部からのノイズによって生じる電源電圧変動の特性である電圧変動特性(EMS特性)を導出する。次にデータベースに含まれる、その電源回路のLSIの電源電圧変動の許容値の特性であるおける電圧変動条件を読み出し、導出されたPI特性及びEMS特性に対してそれぞれ比較し、その電源回路はLSIの内部動作及び外部ノイズに対して、LSIを安定に動作させることが可能かどうか判定する作業を行う。この処理によって、LSIが実装されたPCBの電源回路が、PI及びEMSそれぞれの特性に対し、安定にLSIを動作させられるよう設計されているかを自動的に判定することが出来る。
また、定量的にPI特性及びEMS特性を導出するには、LSIが実装されたPCBの電源系の特性を精度良く見積もった等価回路のモデルを解析するという手段を用いることによって実現可能である。また、LSIの等価回路モデルの生成手法として、LSIの電源端子に流れる電流を精度良く再現出来るモデルがLSIの設計情報から生成される手法を用いれば、LSIの設計情報から自動的にモデルが生成出来る。
さらに、PCBの電源回路がPI及びEMSそれぞれの特性に対し、安定にLSIを動作させられるよう設計されているかどうかを判定して、PI特性及びEMS特性のいずれか一方もしくは両方が電圧変動条件を満たさなかった場合、PCBの構造情報を自動的に変更することによって、安定かつ低ノイズに設計された回路を自動的に設計するという手法を追加することも出来る。具体的にはノイズ対策部品を実装したり電源の構造や位置を変えたりすることで、PI特性及びEMS特性の両方で電圧変動条件を満たす回路構造にする。対策部品を実装や電源構造の変更等の処理は、回路のレイアウトデータがあればそれほど複雑ではなく、変更した回路での等価回路モデルを作成し、その等価回路モデルにおいてPI特性及びEMS特性を導出し、その両方で電圧変動条件を満たすかどうかを判定することが可能になる。PI特性及びEMS特性の両方で電圧変動条件を満たす電源回路構造が作成されるまでこの操作を繰り返すことにより、自動的にLSIが内部動作及び外部ノイズに対して安定動作するように設計されたPCBの電源回路を設計することが可能になる。
さらに、上記手法を適用したプログラム及びシステムを実現することによって、入力情報及びデータベースから自動的にLSIが内部動作及び外部ノイズに対して安定動作するように設計されたPCBの電源回路を作成することが出来る。また、基板レイアウトの入力情報としてCADデータを使用することにより、容易にPCBの電源回路の設計を行うことができる。
このように、本発明のプリント基板電源回路設計装置においては、入力データにLSIの設計情報と動作状態等を含むLSIデータベース、PCBの配線のレイアウト情報等の構造情報と部品の等価回路等を含む部品のデータベース、外部ノイズの印加される場所と特性である外部ノイズ印加情報、及び電圧変動条件とノイズ条件を含む判定基準のデータベースを用意することにより、LSIやPCBの電源回路の設計に対して深い知識を有していない者でも、LSIが内部動作及び外部ノイズに対して安定動作するようにPCBの電源回路が設計されているかどうかの判定を行うことが可能になる。
また、判定基準を満たさないPCBの電源回路が存在した場合、構造をどのように変更するかの指針を用意しておくことにより、判定基準を満たすように、対策部品の実装を行う、レイアウトを変更する等の手法を用いることが出来て、自動的にLSIが内部動作及び外部ノイズに対して安定動作するように設計されたPCBの電源回路の構造を得ることも可能になる。
さらに、LSI及びPCBの特性を再現した等価回路モデルを用いて解析を行うことにより、LSIが内部動作及び外部ノイズに対して安定動作するように電源回路が設計されているかどうかを、現実的な時間で容易に判定することが可能となる。また、PI特性及びEMS特性として電圧変動の特性を絶対値で導出することが可能であり、定量的な評価を行うことが可能になるので、どれだけマージンのある設計がされているかの評価も可能になる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のプリント回路基板設計装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。