JP5347833B2 - 自動製パン器 - Google Patents

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Description

本発明は、主として一般家庭で使用される自動製パン器に関する。
市販の家庭用自動製パン器は、製パン原料を入れたパン容器を本体内の焼成室に入れ、パン容器内の製パン原料を混練ブレードで混練して捏ね上げ、発酵工程を経た後に、パン容器をそのままパン焼き型としてパンを焼き上げる仕組みのものが一般的である(例えば特許文献1参照)。
このような自動製パン器を用いてパンを製造する場合、小麦や米などの穀物を製粉した粉や、そのような製粉した粉に各種の補助原料を混ぜたミックス粉を入手し、これを製パン原料として用いることによってパンを製造していた。すなわち、手元に穀物粒(例えば米粒等)があっても、従来の自動製パン器では、それから直接パンを製造することはできなかった。
特開2000−116526号公報
そこで、本発明は、穀物粒から製粉工程を経ることなくパンを製造するのに便利な仕組みを備えた自動製パン器を提供し、パン製造をより身近なものにすることを目的とする。
上記目的を達成するために本発明の自動製パン器は、パン原料を投入する容器と、パン原料として前記容器に投入された穀物粒を粉砕する粉砕手段と、前記粉砕手段で粉砕された前記穀物粒の粉砕粉を含む前記容器内のパン原料をパン生地に練り上げる混練手段と、前記容器内の温度を調整する温度調整手段と、前記穀物粒の種類に応じたパンの製造工程の選択を可能とする製パン工程選択手段と、前記粉砕手段、前記混練手段、及び前記温度調整手段を制御して、前記製パン工程選択手段で選択されたパンの製造工程を実行させる制御手段と、を本体に備え、前記製パン工程選択手段によって、白米用のパンの製造工程と、玄米用のパンの製造工程との選択が可能で、前記パンの製造工程には、粉砕前の前記穀物粒を液体に浸して吸液させる吸液工程と、吸液した前記穀物粒を粉砕する粉砕工程と、前記穀物粒の粉砕粉を含むパン原料をパン生地に練り上げる混練工程と、練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程と、発酵させたパン生地を焼く焼成工程とが含まれ、前記製パン工程選択手段によって選択可能な白米用と玄米用のパンの製造工程における前記吸液工程の時間が、白米用より玄米用の方が長いことを特徴としている。
本構成によれば、自動製パン器が粉砕手段を有するために、製粉した粉を用いることなく、穀物粒からパンを製造することが可能である。すなわち、本構成の自動製パン器によれば、穀物粉を買い求めることなく、手持ちの穀物粒からパンを焼き上げることが可能である。そして、本構成の自動製パン器は、穀物粒の種類に応じたパンの製造工程の選択を可能とする製パン工程選択手段を有するために、各種穀物粒を用いて適切な条件でパンを焼き上げることが可能である。
白米と玄米ではその硬さが異なる。この点、本構成によれば、穀物粒(米粒)として白米を用いる場合と玄米を用いる場合とで、パンの製造工程が異なるものとされるために、いずれの米粒を用いる場合も適切な条件でパンの製造を行える。
穀物粒は多数の種類があり、その種類によって硬さが異なる。そして、穀物粒の硬さの差が大きいもの同士を同一条件で粉砕した場合には、得られる粉砕粉の粒径に大きな差がでてしまう。玄米は白米に比べて米粒の硬さが硬い。このために、玄米の方が白米に比べて米粒を粉砕し難い。この点、本構成によれば、穀物粒の粉砕の程度に影響を与える工程に要する白米用と玄米用のパンの製造工程における前記吸液工程の時間が、白米用より玄米用の方を長くしてある。このために、各種穀物粒を粉砕した後の粉砕粉の粒径をほぼ同一に揃えることができ、良質なパンの製造を行い易い。
上記構成の自動製パン器において、前記粉砕手段の粉砕ブレードと前記混練手段の混練ブレードとを同軸配置してもよい。これにより、パンの容器の底部という決して広いとは言えない場所に、混練ブレードと粉砕ブレードとをコンパクトに併存させることが可能となる。
上記構成の自動製パン器において、前記製パン工程選択手段によって選択可能な白米用と
玄米用のパンの製造工程における前記粉砕工程の時間が、白米用より玄米用の方が長くてもよい。これにより、良質なパンの製造を行い易い。
上記構成の自動製パン器において、前記粉砕工程は、前記穀物粒を粉砕する粉砕期間と、前記穀物粒に吸液させる吸液期間と、が交互に繰り返されるように設けられ、前記製パン工程選択手段によって選択可能な複数のパンの製造工程の間では、前記粉砕期間及び前記吸液期間の繰り返し回数が、互いに異なっていることとしてもよい。
本構成によれば、穀物粒の粉砕粉の粒径に影響を与える、粉砕期間と吸液期間の繰り返し回数を、穀物粒の種類によって異なるものとしている。このために、各種穀物粒を粉砕した後の粉砕粉の粒径をほぼ同一に揃えることができ、良質なパンの製造を行い易い。そして、本構成の場合には、粉砕期間と吸液期間とを交互に繰り返す構成としているために、粉砕工程の前に吸液工程を設ける必要がなく、パンの製造に要する時間の短縮が可能である。
上記構成の自動製パン器において、前記製パン工程選択手段によって選択可能な複数のパンの製造工程の間では、前記混練工程に要する時間の長さが、互いに異なっていることとしてもよい。
例えば白米粒と玄米粒とでは、粉砕した粉砕粉の状態に差が見られる。このため、穀物粒の種類に応じて、本構成のように混練工程に要する時間の長さを異なる構成とするのも、良質のパンを製造するために必要な場合がある。
本発明によると、穀物粒から製粉工程を経ることなくパンを製造するのに便利な仕組みを備えた自動製パン器を提供することができ、パン製造をより身近なものとできる。
本実施形態の自動製パン器の垂直断面図 図1に示した自動製パン器の蓋を取り除いて上から見た場合の概略平面図 本実施形態の自動製パン器の制御ブロック図 本実施形態の自動製パン器によって米粒からパンを製造する場合に実行されるパンの製造工程を示す図 本発明が適用された自動製パン器の他の実施形態を説明するための図
以下、本発明の自動製パン器の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書に登場する具体的な時間や温度等はあくまでも例示であり、本発明の内容を限定するものではない。
図1は、本実施形態の自動製パン器の垂直断面図である。なお、図1において、図の左側が自動製パン器1の正面(前面)側、図の右側が自動製パン器1の背面(後面)側である。図2は、図1に示した自動製パン器の蓋を取り除いて上から見た場合の概略平面図である。この図1及び図2を参照しながら本実施形態の自動製パン器1の全体構成について説明する。
自動製パン器1は、合成樹脂製の外殻により構成される箱形の本体10を有する。本体10には、その左側面と右側面の両端に連結したコの字状の合成樹脂製ハンドル11が設けられ、これにより運搬容易となっている。本体10の上面前部には操作部20が設けられる。操作部20には、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの製造工程を選択する選択キー等の操作キー群21と、操作キー群21によって設定された内容やエラー等を表示する液晶表示パネル22と、が設けられている。
なお、操作キー群21には、パン原料として使用する穀物粒の種類に応じたパンの製造工程の選択を可能とする製パン工程選択キーが含まれている。具体的には、米粒からパンの製造を行う場合に、白米用のパンの製造工程と、玄米用のパンの製造工程とのうちのいずれかを選択できるように、玄米キー21aが設けられている。自動製パン器1はデフォルトにおいては、玄米キー21aがオフとなっており、白米用のパンの製造工程が選択された状態となっている。そして、玄米キー21aを選択することによって、図示しない玄米コースランプが点灯して、玄米用のパンの製造工程が選択された状態となる。
操作部20から後ろの本体上面は、合成樹脂製の蓋30で覆われる。蓋30は、図示しない蝶番軸で本体10の背面側に取り付けられており、その蝶番軸を支点として垂直面内で回動する構成となっている。蓋30には、詳細は後述する焼成室40を覆う部分に、板金をドーム状に成型した天井31が設けられている。この天井31の頂部は、蓋30に設けられた耐熱ガラスからなる覗き窓32につながっている。
本体10の内部には焼成室40が設けられている。焼成室40は板金製で、上面が開口しており、ここからパン容器50が入れられる。焼成室40は水平断面矩形の周側壁40aと底壁40bとを備える。焼成室40の内部には、加熱装置41が焼成室40に収容されたパン容器50を包囲するように配置されている。この加熱装置41はシーズヒータにより構成されている。
また、本体10の内部には板金製の基台12が設置されている。基台12には、焼成室40の中心にあたる箇所に、アルミニウム合金のダイキャスト成型品からなるパン容器支持部13が固定されている。パン容器支持部13の内部は焼成室40の内部に露出している。
パン容器支持部13は、パン容器50の底面に固定された筒状の台座51を受け入れてパン容器50を支える。パン容器支持部13の中心には、内軸14aと外軸14bとにより構成される二重軸が垂直に支持されている。内軸14a及び外軸14bの下端は共にパン容器支持部13の下面から突き出ており、内軸14aはプーリ15aに固定され、外軸14bはプーリ15bに固定されている。
パン容器50は板金製で、バケツのような形状をしており、口縁部には手提げ用のハンドル(図示せず)が取り付けられている。パン容器50の水平断面は四隅を丸めた矩形であり、四辺のうち対向する二辺の内面には、垂直方向に延びるうね状の突部50aが形成されている。
パン容器50の底部中心には、混練ブレード52と粉砕ブレード70とが配置されている。内軸53aと外軸53bとにより構成される二重軸が、パン容器50の中心にシール対策を施した上で垂直に支持されている。内軸53aに混練ブレード52が取り付けられており、外軸53bに粉砕ブレード70が取り付けられている。混練ブレード52と粉砕ブレード70との配置は同軸配置であり、これにより、パン容器50の底部という決して広いとは言えない場所に、混練ブレード52と粉砕ブレード70とをコンパクトに併存させることが可能となっている。
混練ブレード52は、平面視略矩形状の板状の羽根を有している。この混練ブレード52は、内軸53aの上端の非円形断面部に単なる嵌め込みで取り付けられており、工具を用いることなく着脱できる。このために、異なる種類の混練ブレードに容易に交換可能である。
粉砕ブレード70は、混練ブレード52の下面に当たらないように外軸53bに取り付けられている。この粉砕ブレード70も単なる嵌め込みで取り付けられるようにしてもよい。粉砕ブレード70は、金属製円板71の上面に複数の切削刃72を散在させたものである(図2参照)。切削刃72は、ジューサーのカッターやおろし金の歯のように形成されている。複数の切削刃72は、放射方向に延びる複数列の横隊を構成している。各横隊における各切削刃突起の円板71の中心からの距離は、横隊毎に前後の横隊と少しずつずれている。このため、複数の切削刃72は、その配置領域全体に満遍なく粉砕作用を及ぼすことができるようになっている。
パン容器50に設けられる内軸53aは、パン容器支持部13に設けられる内軸14aに連結されて動力を伝達される。また、パン容器50に設けられる外軸53bは、パン容器支持部13に設けられる外軸14bに連結されて動力を伝達される。動力伝達手段としては台座51に囲い込まれるカップリング54a、54bが用いられる。カップリング54aを構成する2部材のうち、一方の部材は内軸53aの下端に固定され、他の部材は内軸14aの上端に固定されている。同様に、カップリング54bを構成する2部材のうち、一方の部材は内軸53bの下端に固定され、他の部材は内軸14bの上端に固定されている。
パン容器支持部材13の内周面と台座51の外周面とには、それぞれ図示しない突起が形成されており、これらの突起は周知のバヨネット結合を構成する。パン容器50をパン容器支持部13に取り付ける際、台座51の突起がパン容器支持部13の突起に干渉しないようにしてパン容器50を下ろす。そして、台座51がパン容器支持部13に嵌り込んだ後、パン容器50を水平にひねると、パン容器支持部13の突起の下面に台座51の突起が係合する。これにより、パン容器50が上方に抜けなくなる。また、この操作で、カップリング54aの連結とカップリング54bの連結とが、それぞれ同時に達成される。
なお、パン容器50取り付け時のひねり方向は、混練ブレード52及び粉砕ブレード70の回転方向に一致させている。これにより、混練ブレード52及び粉砕ブレード70が回転してもパン容器50は外れない。
混練用モータ60aは基台12に取り付けられ、粉砕用モータ60bは基台12とは別に本体10に設けられたビーム16に取り付けられている。混練用モータ60aと粉砕用モータ60bとはいずれも竪軸であって、混練用モータ60aの下面からは出力軸61aが突出し、粉砕用モータ60bの下面からは出力軸61bが突出する。混練用モータの出力軸61aにはプーリ62aが固定され、このプーリ62aは内軸14aが固定されるプーリ15aにベルト63aで連結される。粉砕用モータの出力軸61bにはプーリ62bが固定され、このプーリ62bは外軸14bが固定されるプーリ15bにベルト63bで連結される。
なお、混練ブレード52を回転させる内軸14aは、低速・高トルクの回転が求められる。一方、粉砕ブレード70を回転させる外軸14bは高速回転が求められる。このため、プーリ62aはプーリ15aを減速回転させ、プーリ62bはプーリ15bを等速ないし増速回転させるようにプーリ同士の直径比が設定されている。更に、粉砕用モータ60bには高速回転タイプのものが選ばれている。
図3は、本実施形態の自動製パン器の制御ブロック図である。自動製パン器1は、その動作を制御するための制御装置80を備える。この制御装置80は、本体10内の適所に配置されている。なお、制御装置80は、焼成室40の熱の影響を受け難い位置に配置するのが好ましい。
制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/O(input/output)回路部等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)81と、このマイコン81に電気的に接続された混練用モータ駆動回路82a、粉砕用モータ駆動回路82b、及びヒータ駆動回路83と、を備えている。また、制御装置80が備えるマイコン81には、上述した操作部20の各種キーが電気的に接続されている。更に、マイコン81には、焼成室40の内側に配置され、焼成室40内の温度を検出する温度センサ18が電気的に接続されている。
混練用モータ駆動回路82aは、マイコン81からの指令の下で、混練ブレード52を回転させる混練用モータ60aの駆動を制御する回路である。また、粉砕用モータ駆動回路82bは、マイコン81からの指令の下で、粉砕ブレード70を回転させる粉砕用モータ60bの駆動を制御する回路である。ヒータ駆動回路83は、温度センサ18からの情報を受け取るマイコン81からの指令の下で、シーズヒータからなる加熱装置41の動作を制御する回路である。
マイコン81は、操作部20からの入力信号に基づいてROM等に格納されたパンの製造工程に係るプログラムを読み出し、混練用モータ駆動回路82aを介して混練ブレード52の回転、粉砕用モータ駆動回路82bを介して粉砕ブレード70の回転、ヒータ駆動回路83を介して加熱装置41の加熱動作を制御しながら、自動製パン器1にパンの製造工程を実行させる。
なお、制御装置80は本発明の制御手段の実施形態である。また、混練ブレード52及び混練用モータ60aは本発明の混練手段の実施形態である。また、粉砕ブレード70及び粉砕用モータ60bは本発明の粉砕手段の実施形態である。更に、温度センサ18及び加熱装置41は本発明の温度調整手段の実施形態である。
ところで、粉砕ブレード70は、穀物粒を粉砕するために設けられるものであるが、穀物粒を粉砕する際に熱が発生して、パン容器50内の温度が好ましくない温度まで上昇することがある。このために、自動製パン器1が備える温度調整手段を構成する構成要素に、冷却装置が更に含まれる構成とするのが好ましい。このような冷却装置の構成としては、例えばパン容器50の外面と接するように、水や氷等のクーラント(冷却材)が投入される冷却ジャケットを配置する構成が挙げられる。また、冷水管をパン容器の外面と接するように配置する構成等としてもよい。
続いて、以上のように構成される本実施形態の自動製パン器1によって、穀物粒からパンを製造するフローについて説明する。自動製パン器1は、パン原料として米粒(穀物粒の一例)を用いてパンを製造できるようになっている。そして、米粒からパンを製造するにあたって、上述した玄米キー21aによって、白米用のパンの製造工程と玄米用のパンの製造工程とのうち、いずれの工程を用いてパンを製造するかを選択できるようになっている。
まず、自動製パン器1を用いて白米用のパンの製造工程(白米コース)でパンを製造する場合について説明する。この白米コースを実行するにあたって、ユーザは、パン容器50に混練ブレード52と粉砕ブレード70とを取り付ける。そして、ユーザは、米粒(白米粒)と水をそれぞれ所定量ずつ計量してパン容器50に入れる。なお、ここでは、米粒と水とを混ぜることにしているが、単なる水の代わりに、例えば、だし汁のような味成分を有する液体、果汁、アルコールを含有する液体等としてもよい。ユーザは、米粒と水とを投入したパン容器50を焼成室40に入れて蓋30を閉じ、操作部20によって白米用の製造工程を選択(玄米コースランプが点灯していない状態)し、スタートキーを押す。これにより、白米コースによる米粒からパンを製造する工程が開始される。
なお、自動製パン器1に上述の冷却ジャケットを設ける構成とする場合には、この段階或いは後述の粉砕工程の直前に、冷却ジャケットにクーラントを投入する。クーラントとしては、例えば、水、氷、水と氷を混ぜたもの、保冷用のゲル等を用いることができる。
図4(a)は、自動製パン器によって実行される白米用のパンの製造工程を示す図である。図4(a)に示すように、白米コースでは、吸液工程、粉砕工程、混練工程、発酵工程、ガス抜き工程、発酵工程、焼成工程がこの順で順次遂行される。
吸液工程は、米粒(白米粒)に液体(水)を含ませることによって、その後に行われる粉砕工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくすることを狙う工程である。この吸液工程では、米粒と水の混合物をパン容器50内で静置した状態で、所定の時間(本実施形態では50分間)放置する。この時間は、例えば、後の粉砕工程を効率良く行える時間として実験的に求められる。
なお、この吸液工程は、吸液効率を高めるために温度を例えば40〜50℃に昇温した状態で行ってもよい。また、吸液工程の初期段階で粉砕ブレード70を回転させ、その後も断続的に粉砕ブレードを回転させるようにしてもよい。このようにすると、米粒の表面に傷をつけることができ、米粒の吸液効率を高められる。
吸液工程が終了すると、制御装置80の指令によって続いて粉砕工程が実行される。この粉砕工程は、米粒を粉砕してペースト化する工程である。制御装置80は、粉砕用モータ60bを制御して粉砕ブレード70を高速回転させる。この粉砕ブレード70の高速回転によって、切削刃72により米粒が粉砕される。この粉砕は、米粒に水が浸み込んだ状態で行われるために、米粒を芯まで容易に粉砕することができる。また、パン容器50の内面に形成された突部50aが米粒と水との混合物の流動を抑制し、粉砕を助ける。更に、混練ブレード52を停止させておけば、混練ブレード52も米粒と水との混合物の流動を抑制し、粉砕を助ける。
粉砕工程は、粉砕ブレード70による粉砕時間が所定の時間(本実施形態では5分)となった時点で終了される。この時間は所望の粒径(或いは粒度分布)の粉砕粉が得られる時間として実験的に求められる。粉砕工程の終了については、例えば操作部20の液晶パネル22における表示や報知音等によってユーザに知らされる。なお、粉砕工程における粉砕ブレード70の回転は、連続回転としてもよいし、間欠回転としてもよい。間欠回転とすることにより、米粒を対流させて満遍なく米粒を粉砕できるために、間欠回転とするのが好ましい。
粉砕工程が終了すると、続いて混練工程が即実行されるのではなく、一時製パン作業が停止するように制御装置80は制御動作を行う。これは、ユーザによってグルテンや、食塩、砂糖、ショートニングといった調味料をパン容器50に投入する期間を与えるためである。ユーザは、グルテンや調味料といったパン原料を好みに応じてパン容器50に投入し、その後、パン容器50の蓋30をして、スタートキーを押す。
ユーザがスタートキーを押すことにより、粉砕工程で粉砕された米粒の粉砕粉を含むパン容器50内のパン原料を生地に練り上げる混練工程が開始される。制御装置80は、混練用モータ60aを制御して混練ブレード52を回転させる。なお、混練ブレード52の回転は低速・高トルクとなっている。
この混練ブレード52の回転によってパン原料は混練され、所定の弾力を有する一つにつながった生地(dough)に練り上げられていく。混練ブレード52が生地を振り回してパン容器50の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。パン容器50の内壁に形成された突部50aが「捏ね」を助ける。混練工程における混練ブレード52の回転は、連続回転としてもよいし、間欠回転としてもよい。混練工程は、混練ブレード52による混練時間が所定の時間(本実施形態では12分)となった時点で終了する。この時間は所望の弾力を有するパン生地が得られる時間として実験的に求められる。
ここで、本明細書では、混練工程が開始され練りが進行した後は、半完成状態であっても「生地」と呼称することとしている。
なお、混練工程においては、制御装置80は加熱装置41を制御して焼成室40の温度が所定の温度(例えば30℃前後)となるように調整する。そして、焼成室40の温度が所定の温度となった時点で生地にイースト菌(例えばドライイースト)が投入される。このイースト菌の投入は、本実施形態の自動製パン器1ではユーザが投入することとしているが、自動投入することとしてもよい。自動製パン器1では、ユーザが投入する構成のために、所定の温度となったことを液晶パネル22の表示や報知音等で知らせることにしている。
混練工程が終了すると、制御装置80の指令によって続いて発酵工程が実行される。この発酵工程では、制御装置80は加熱装置41を制御して、焼成室40の温度を、発酵が進む温度(例えば32℃)にする。そして、発酵が進む環境下で所定の時間(本実施形態では50分)放置される。
発酵工程が終了すると、制御装置80の指令によって続いてガス抜き工程が実行される。このガス抜き工程では、制御装置80は混練用モータ60bを制御して混練ブレード52を所定の時間(本実施形態では0.1分)回転させる。この混練ブレード52の回転によって生地に含まれる炭酸ガスが抜かれる。
ガス抜き工程が終了すると、制御装置80の指令によって続いて発酵工程が実行される。この発酵工程では、制御装置80は加熱装置41を制御して、焼成室40の温度を、発酵が進む温度(例えば38℃)にする。そして、発酵が進む環境下で所定の時間(本実施形態では50分)放置される。
発酵工程が終了すると、制御装置80の指令によって続いて焼成工程が実行される。制御装置80は、加熱装置41を制御して、焼成室40の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば125℃)まで上昇させ、焼成環境下で所定の時間(本実施形態では50分)パンを焼く。焼成工程の終了については、例えば操作部20の液晶パネル22における表示や報知音等によってユーザに知らされる。ユーザは、製パン完了を検知すると、蓋30を開けてパン容器50を取り出す。これにより、白米粒からパンを製造する工程が完了となる。
次に、自動製パン器1を用いて玄米用のパンの製造工程(玄米コース)でパンを製造する場合について説明する。この玄米コースを実行するにあたってユーザが行う準備は、上述の白米コースと同様である。ただし、玄米コースでパンを製造する場合には、操作部20の玄米キー21aを押して玄米用のパンの製造工程が実行されるようにコース選択を行った上でスタートキーを押す必要がある。
図4(b)は、自動製パン器によって実行される玄米用のパンの製造工程を示す図である。図4(b)に示すように、玄米コースでは、白米コースと同じく、吸液工程、粉砕工程、混練工程、発酵工程、ガス抜き工程、発酵工程、焼成工程がこの順で順次遂行される。ただし、吸液工程、粉砕工程、及び混練工程に要する時間の長さが白米コースの場合に比べて長くなっている。
玄米は白米に比べて米粒の硬さが硬い。このために、玄米の方が白米に比べて米粒を粉砕し難い。このために、玄米コースでは、玄米粒を粉砕し易くする目的で行う吸液工程に要する時間(吸液時間)の長さを長くしている。また、玄米粒は硬く、白米と同様の粒径まで粉砕しようとすると同一の粉砕時間では不十分である。このために、玄米コースでは、粉砕工程に要する時間(粉砕時間)の長さを長くしている。
また、玄米の粉砕粉は白米の粉砕粉と比べて、その状態がさらさらした状態である。このために、混練工程によって弾力性に富む所望の生地を得るために、混練工程に要する時間(混練時間)の長さを白米の場合に比べて長くしている。
具体的には、玄米コースは、白米コースの場合に比べて吸液工程に要する時間の長さが50分長くされ、粉砕工程に要する時間の長さが8分長くされ、混練工程に要する時間の長さが4分長くされている。ただし、これは一例であり、各工程に要する時間の長さをどの程度長くするかは、適宜変更可能である。
なお、玄米コースの吸液工程、粉砕工程、及び混練工程で行われる具体的動作は、各工程に要する時間の長さが変更される以外は白米コースと同じである。また、玄米コースの発酵工程から焼成工程終了に至るまでの具体的動作は、各工程に要する時間を含めて白米コースと同一である。このため、これらの動作の詳細については説明を省略する。
以上のように、本実施形態の自動製パン器1では、米粒の種類(白米であるか、玄米であるか)に応じたパンの製造工程の選択を可能とする玄米キー21aを設けている。このために、ユーザは、この玄米キー21aによってパン原料(米粒の種類)に応じた適切なパンの製造工程を選択して、米粒から製粉工程を経ることなく美味しいパンを製造することができる。
なお、以上に示した自動製パン器は本発明の一例であり、本発明が適用される自動製パン器の構成は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。
例えば、以上に示した実施形態では、米粒からパンを製造する場合に、白米用のパンの製造工程と、玄米用のパンの製造工程とのうちの一方を選択する構成となっている。しかし、例えば、白米と玄米との中間の米として位置づけられる五分づき米等に対応する他のパンの製造工程を、白米用のパンの製造工程及び玄米用のパンの製造工程とは別に設けて、これについても選択できるようにしても構わない。なお、このような製パン工程の選択を行う選択手段として、以上に示した実施形態では本体10に設けた入力キー(入力ボタン)を採用しているが、この構成に限らず、例えば、タッチパネルやリモコン等を入力手段として採用しても勿論構わない。
また、以上に示した実施形態では、穀物粒から製粉工程を経ることなくパンを製造する場合に使用する穀物粒が米粒である場合を一例として示している。しかし、本発明は、米粒に限らず、小麦、大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこし、大豆等の穀物粒を原料としてパンを製造する場合にも適用されるものである。その適用例として次のような構成が挙げられる。すなわち、各種穀物粒を、同一のパンの製造工程で製造できるもの同士を集めた複数のグループに分類し、各分類に応じた(言い換えれば、穀物粒の種類に応じた)パンの製造工程を選択してパンを製造できるように自動製パン器を構成することとしてよい。なお、このような構成とする場合には、ユーザが穀物粒の分類がすぐわかるように、例えば、分類表を自動製パン器に刻印しておく等の工夫を行うのが好ましい。
また、以上に示した実施形態では、穀物粒の種類(白米であるか、玄米であるか)に応じて、パンの製造工程のうち、吸液工程、粉砕工程、及び混練工程の3つの工程に要する時間の長さを変更している。しかし、この3つの工程のうちのいずれか一つ、或いは、いずれか2つに要する時間の長さを変更する構成としても構わない。更に、各工程で行う動作を変更するにあたって、時間のみならず、例えば粉砕ブレード70や混練ブレード52の回転の制御方法を変更する等しても構わない。
また、以上に示した実施形態で採用されるパンの製造工程は例示であり、他の製造工程としてもよい。例を挙げると、以上に示した実施形態では、穀物粒(米粒)からパンを製造するにあたって、粉砕工程を行う前に吸液工程を行う構成としているが、この吸液工程を行わない構成としてもよい(図5(a)に示す工程が該当)。ただし、単に吸液工程をなくすのみとすると、粉砕工程における穀物粒の粉砕効率が低下するために、粉砕工程を図5(b)に示すような構成とするのが好ましい。
図5(b)に示す粉砕工程では、粉砕期間(例えば1分)と吸液期間(例えば9分)とが交互に繰り返される構成となっている。この構成の場合、最初の粉砕期間における粉砕は、穀物粒の吸水があまり進んでいないので、吸液工程を経てから粉砕工程を行う場合に比べて粉砕効率は悪い。
しかしながら、図5(b)に示す粉砕工程の場合、最初の粉砕期間の後に行われる吸液期間は、穀物粒がある程度細かくされた後に実行されることになる。このために、穀物粒の表面積が増加した状態で穀物粒に吸液させることになり、高い吸液効率で吸液が行われることになる。したがって、この吸液期間の長さ(9分)は吸液のための時間としては比較的短いが、この時間でも吸液がかなり進む。
また、2回目以降の粉砕期間における穀物粒の粉砕は、先に行われた吸液期間における穀物粒の吸液の効果で、効率良く行うことができる。また、2回目以降の吸液期間の穀物粒の吸液も、先に行われた穀物粒の粉砕の効果で、効率良く行える。すなわち、粉砕期間と吸液期間とを交互に繰り返すことで、穀物粒に水を十分含ませながら、穀物粒を効率良く粉砕することができる。したがって、図5(b)に示す構成によれば、粉砕工程の前に吸液工程を行わなくても、穀物粒を効率良く粉砕できる。そして、この構成の場合、粉砕工程と別に吸液工程を設ける必要がないので、パンの製造工程の時間短縮が図れる。
ところで、図5(b)において、白米コースと玄米コースとでは、粉砕期間と吸液期間との繰り返し回数とを異なる構成とし、玄米コースの方が、繰り返し回数が多い構成としている。これは、上述のように玄米が白米より硬く粉砕が行い難いことを考慮するものである。なお、白米コース、玄米コースとも、粉砕工程後の工程は、以上に示した実施形態と同様としてよい。そして、このように、2つのコースを設けることで、以上に示した実施形態と同様、いずれの米粒を用いる場合にも美味しいパンを製造できる。
なお、吸液工程を設けない以上の例では、白米コースの場合、粉砕期間(1分)と吸液期間(9分)とがそれぞれ4回繰り返され、その後更に1回粉砕期間が行われた時点(すなわち、最初の粉砕ブレードの回転開始から41分経過した時点)で、粉砕工程が終了することとしている。しかし、粉砕工程における粉砕期間及び吸液期間の長さ及び回数はあくまで例示であり、これらの時間の長さや回数は、例えば、穀物粒を所望の粒度(或いは粒度分布)とできる条件を目安に設定すればよく、適宜変更可能である。このことは、玄米コースについても同様である。ただし、白米コースと同様に粉砕期間及び吸液期間を繰り返す場合には、玄米コースの方が白米コースよりも、その繰り返し回数を多く設定する必要がある。
また、吸液工程を設けない以上の例では、粉砕期間の長さは全て同じ(一定の長さ)となっている。しかし、この構成に限定される趣旨でない。すなわち、例えば、初回の粉砕期間の長さは短く設定(例えば10秒等)し、その後は初回に比べて長く設定することとしてもよい。この場合、例えば、2回目以降の粉砕期間の長さは全て同じであってもよいし、徐々に粉砕期間の長さが長くなるようにしてもよい。上述のように、初回の粉砕期間における粉砕は、穀物粒が十分に水を含んでいないので、粉砕効率が悪い。このため、初回の粉砕期間は、穀物粒の表面に傷をつけて吸液しやすい穀物粒を得ることを主な目的とし、粉砕期間の長さをその後に行われる粉砕期間の長さより短めとすることとしてもよい。
また、同様に、吸液工程を設けない以上の例では、吸液期間の長さは全て同じ(一定の長さ)となっている。しかし、この構成に限定される趣旨でなく、各吸液期間の長さを一定の長さとしないこととしてもよい。すなわち、例えば、初回の吸液期間の長さを他の吸液期間の長さよりも長くする等してもよい。
その他、以上に示した実施形態では、自動製パン器は、粉砕ブレードと混練ブレードとの2つのブレードを備える構成とした。しかし、これに限らず、自動製パン器が粉砕と混練とを兼用するブレード1つのみを備える構成等としてもよい。また、自動製パン器の構成について、パン生地のみならず、例えばケーキ生地、パスタ生地、うどん生地等の生地を穀物粒から製造できるように構成してもよい。そして、これらの生地を製造するに際して、穀物粒の種類に応じた生地の製造工程を選択できるように構成してもよい。
本発明は、家庭用の自動製パン器に好適である。
1 自動製パン器
18 温度センサ(温度調整手段の一部)
21a 玄米キー(製パン工程選択手段)
41 加熱装置(温度調整手段の一部)
50 パン容器
52 混練ブレード(混練手段の一部)
60a 混練用モータ(混練手段の一部)
60b 粉砕用モータ(粉砕手段の一部)
70 粉砕ブレード(粉砕手段の一部)
80 制御装置(制御手段)

Claims (5)

  1. パン原料を投入する容器と、
    パン原料として前記容器に投入された穀物粒を粉砕する粉砕手段と、
    前記粉砕手段で粉砕された前記穀物粒の粉砕粉を含む前記容器内のパン原料をパン生地に練り上げる混練手段と、
    前記容器内の温度を調整する温度調整手段と、
    前記穀物粒の種類に応じたパンの製造工程の選択を可能とする製パン工程選択手段と、
    前記粉砕手段、前記混練手段、及び前記温度調整手段を制御して、前記製パン工程選択手段で選択されたパンの製造工程を実行させる制御手段と、
    を本体に備え、
    前記製パン工程選択手段によって、白米用のパンの製造工程と、玄米用のパンの製造工程との選択が可能で、
    前記パンの製造工程には、粉砕前の前記穀物粒を液体に浸して吸液させる吸液工程と、吸液した前記穀物粒を粉砕する粉砕工程と、前記穀物粒の粉砕粉を含むパン原料をパン生地に練り上げる混練工程と、練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程と、発酵させたパン生地を焼く焼成工程とが含まれ、
    前記製パン工程選択手段によって選択可能な白米用と玄米用のパンの製造工程における前記吸液工程の時間が、白米用より玄米用の方が長いことを特徴とする自動製パン器。
  2. 前記粉砕手段の粉砕ブレードと前記混練手段の混練ブレードとを同軸配置したことを特徴とする請求項1に記載の自動製パン器。
  3. 前記製パン工程選択手段によって選択可能な白米用と玄米用のパンの製造工程における前記粉砕工程の時間が、白米用より玄米用の方が長いことを特徴とする請求項1に記載の自動製パン器。
  4. 前記粉砕工程は、前記穀物粒を粉砕する粉砕期間と、前記穀物粒に吸液させる吸液期間と、が交互に繰り返されるように設けられ、
    前記製パン工程選択手段によって選択可能な複数のパンの製造工程の間では、前記粉砕期間及び前記吸液期間の繰り返し回数が、互いに異なっていることを特徴とする請求項1〜
    3のいずれか1項に記載の自動製パン器。
  5. 前記製パン工程選択手段によって選択可能な複数のパンの製造工程の間では、前記混練工程に要する時間の長さが、互いに異なっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動製パン器。
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